説明

酸化性塩素化合物の粘液組成体

【課題】次亜塩素酸塩に粘性を付与することにより、温度、衝撃、保管条件での初期粘性を保持する、安全にして安定な住居洗浄用に優れた効果を発揮する組成体の提供。
【解決手段】次亜塩素酸塩を、苛性ソーダやキレート剤の水溶液の中で、セピオライト鉱物と特定のアルキルスルホン酸ソーダとヒドロキシアルキル−アミンを結合したアルキルアミンオキシドを配合して、安定組成体とすることによる、臭気の減退や洗浄力を発揮する粘液組成体。

【発明の詳細な説明】
【技術の分野】
【0001】
本発明は次亜塩素酸塩(Na)に代表されるアルカリ酸化性塩素化合物の物性として粘性を付与して、より安全にして安定な住居用洗浄用に優れた効果を発揮する組成体に関するものである。
次亜塩素酸塩は酸化性塩素化合物として殺菌(特にカビ類),漂白,消臭などの諸効果を発揮する、最も普及している物質であるが、一方では強アルカリで刺激性が強いことや、金属や有機質を変質させるなどの弊害もあり、そのより有利な形態の商品が求められているところである。
しかし次亜塩素酸塩は、その強力な酸化作用とによる重篤な副作用を発生する諸刃の剣の様な物質であり、極めて限定された中でその改良や改質が求められている。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸塩に粘性を付与することに関しては、古くから特殊な粘土類を併用する技術がUSP3558496,USP3843543,特開昭59−168994などで開示されてきた。
特に特開昭59−168994は珪酸マグネシウム系粘土類とアルキルフェノール系界面活性剤による具体的な方法が示されている。
【0003】
また更に、特開昭60−124700では、次亜塩素酸塩に優れた相性を有するアルキルアミンオキシドを用いて、安定性にも優れ、乾燥にも優れた組成体を示してあり、実際に市販して普及している。今日においてもこの種の物として高分子ポリマー(アクリル系,カルボキシル系,セルロース系)を用いて粘性を付与しているものであり、共通項としてアルキルアミンオキシドを含有している。
【0004】
しかし次亜塩素酸塩に恒久の粘性を付与することは、温度,衝撃,保管条件によって初期粘性が担保されていないので、そのまま商品化されたものが沢山あり、当該次亜塩素酸塩の臭気が減退し、一方ではカビ,ヌメリ,石鹸カスなどの洗浄に強力な力を発揮するに至っていない現実は否めない。
つまり曖昧な形で粘度を付与したジェルタイプの組成体が上市されて、どのメーカーの物も似たり寄ったり類似品が氾濫している様子が窺える。
一方で界面活性剤がPRTR,GHS,REACHなどの法令によって、その取引が規制され、またそのラインが年々上昇し、これらの対処法も必要なものである。
【発明の内容】

【本発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は今までと現状の次亜塩素酸塩の組成体の粘性をより完全にキープして、安全安心安定粘性体を模索すべく、過去の経験を重視しながら、21世紀の環境対応に符合する為の課題を克服する事を目的として、種々の組み合わせを、最も合理的で、且つプラスアルファの効果をいくつも有する、一石二鳥の効果を目指したものである。
【0006】
本発明は3種の特定した物質を具体的に厳密に選別し、次亜塩素酸塩を封じ込ませる方法で、その上にコンプレックス体が包覆し、塩素の発生を抑制することを突き止めた。
【0007】
特に従来のポリマーでは、次亜塩素酸塩と苛性ソーダの組み合わせには、時により強固なポリマーで封じ込めると、過分に塩素の働きが委縮されてしまう。また、界面活性剤も単にアミンオキシドに固執していては事の解決を図れなく、また珪酸マグネシウム自体の比重により、無機質であって水中で懸濁から沈降しやすく、長期安定性について不安がある。
【0008】
本発明では、そこで従来の方法を精査し、次亜塩素酸塩に対して相性が良く、従来の常用の粘度系成分やアミンオキシドの構造に注目し、より安定な錯体を形成することを重視し、しかも特定の塩類を含ませた物(NaOHを前提として)が、驚異的な効果を発揮することを見いだしたものである。
このディテールの検討こそが本発明の骨子となっており、その一つでも逸脱したら、たちまち効果は失墜する事となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は次亜塩素酸ソーダの安定性を確保するものとして、まず苛性ソーダを0.2〜4%、キレート剤として有機酸又は/及びポリシリケートを具備する。
【0010】
界面活性剤のアルキルスルホン酸ソーダ(しかもNaClをバイプロで生成した物)と、ジヒドロキシアルキル(C1〜4)アルキル(C12〜15)アミンオキシドを組み合わせたものを選び出して、以下の様に組成していく。
次亜塩素酸ソーダ(NaOCl)とキレート剤を馴染みやすくするため、グルコン酸ソーダ,クエン酸ソーダとxNaOySiO(x,yは1〜4)からなるポリシリケートを伴い、この中にNaOHを0.2〜4%含ませる。この強アルカリの電解水にセピオライト系鉱物を包覆させる。セピオライトは珪酸マグネシウム系で、マグネシウム塩が塩素の行動をコントロールすると共に、開閉弁の様に隔離して塩素の発生量を制御する。この事はベントナイトなどでは見られない特異な現象である。
【0011】
次に界面活性剤の組み合わせがあって、はじめて上記組成が有効となる。この組み合わせはSAS(アルキルスルホン酸ソーダ)とアミンオキサイドの配合体である。
まず、アルキルスルホン酸ソーダはn−パラフィンを酸化するのにクロロスルホン酸を用いて、これを苛性ソーダで中和してNaClをバイプロダクトとして生成するものが良い。一口にSASと言っても硫酸ソーダをバイプロに含むものは無い。
今ひとつ、アミンオキサイド、これは次亜塩素酸ソーダとの相性が良く、殆どの次亜塩素酸商品の汎用の界面活性剤で、R−N(CH−O(RはC12〜18のアルキル基)で表せる両性イオンの性質を有する。即ち強力アルカリ下ではアニオンリッチとなり、酸性下ではカチオン効果である。
しかし不都合なことに、このアミンオキサイドは酸化剤の下で有害なフリーアミンを生ずることで、PRTRその他の法令の中で規制されることである。即ち、水溶性をリードするヒドロキシル基(−OH)が無いことである。
【0012】
本発明は第一に次亜塩素酸塩(NaOCl)と相性を良くするキレート剤を必携することでNaOClの安定性が良くなる。具体的に、グルコン酸ソーダ,クエン酸ソーダ,乳酸ソーダ,スルファミン酸ソーダ、中でもグルコン酸ソーダが優れている。
また無機塩としてはxNaOy・SiOのポリシリケートが好ましい。
これに苛性ソーダと協働してNaOClの力を向上させる他、飛散しやすい塩素(Cl)のの発散を安定化させる。
【0013】
そしてセピオライトの登場である。強アルカリ下、セピオライトはゲル状になる。セピオライトは(CH(OH)MgSi1230・6〜8HOを一般式として、アルカリ(−OH)下、共有結合によって強力なゲル構造を形成し、フリーの塩素(Cl)を包摂してしまうのである。他のベントナイトは、ドロマイト,ゼオライトなどには無い。
こうしてペースト状(粘状)次亜塩素酸塩の組成体が形成されるが、セピオライトは経時変化で遊離し易く、水中に懸濁させるために次の組み合わせが最高に優れている事を見いだした。
【0014】
即ち、NaCl(食塩)をバイプロ形成するアルキルスルホン酸ソーダと特殊アミンオキシド、つまり水酸基(−OH)を両有するジヒドロキシアルキルアミンオキシドの組み合わせである。これは

基がセピオライト,苛性ソーダ,アルカリの−OHと相互に結合して、懸濁分散体を形成し、恒久な一体化合物を形成させる。
また、アルキルスルホン酸ソーダとHAAOの前駆体があり、この界面活性剤とのコンビが型にはめるように完璧に符合するわけである。
この組み合わせは単なるAOの採用だけではなく、厳しく検討されなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
即ち本発明は次亜塩素酸塩(NaClO)を有効成分として4〜7%(6%を中心)を、次の通りの条件を満たしていなければならない。
(1)次亜塩素酸塩(NaClO):3〜7%(6%中心)
(2)苛性ソーダ(NaOH):0.2〜4%(2%中心)
(3)ゼオライト鉱物:0.5〜15%(3〜10%中心)
及び2つの界面活性剤の組み合わせ、
(4)アルキルスルホン酸ソーダ(RSONa(NaCl),RはC12〜18(C15中心))で、しかもNaClをバイプロで生成するもの:0.2〜16%(0.5〜6%)
(5)ヒドロキシアルキルアミンオキシド(HAAO):0.5〜2%(0.8〜1%)

であり、必要によってキレート剤として有機酸塩又は/及びポリシリケート(nNaO・mSiO・xHO,mとnは1〜5の正数)を0.2〜2%含有することをベストする。これら構成物中に粘状(ペースト状)化物を加え、極めて安定にして強力な組成体を形成する。
【0016】
本発明は上記組成を成し、更に必要に応じてフレグランス,蛍光剤,けんま材,光触媒,ソルベント,他の界面活性剤,顔料(色素),ポリマー組成体,ポリマー(メチルセルロース,トレハロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ポリアクリル酸ソーダ,ポリビニルピロリドン,ビニルメチルエーテル−マレイン酸重合物,シラン化合物(ポリシリコーン油状体))などの機能性添加剤を併用することは有効塩素の存在を干渉しない程度で利用する事も妨げない。
【0017】
また本発明の類似品として、苛性ソーダを苛性カリやアルカノールアミン、セピオライトをベントナイトやクレーやドロマイトを併用したり、高分子ポリマー(キサンタンガム,メチルセルロース,メタアクリル酸ソーダ,トレハロース,プルラン,シクロデキストリンなど)を併用したり代替することで、同様の発明となる事に配慮しなければならない。
【本発明の効果】
【0018】
かくして本発明は、次の通り今まで次亜塩素酸塩の水溶液として提供され、使用されてきた域を超越して、更に大幅な使用範囲をカバーする事となる。
まず第一に、本発明の外観はセピオライトの黄土状の粘液体であり、これが施工した部位に付着することで目的に対して正確に使用できる。しかも固着した糊状となるのでみだりに残留せず、当該汚れ(カビ,ヌメリ,糞便,石鹸カス,スケール,細菌類,グリース,油状物など)に優れた効果を奏する。
【0019】
そればかりか、セピオライトの塩素吸着力が塩素臭を抑制し、殆ど無いに等しい臭気となることで、作業性がはかどり、最少量で最大の効果を発揮する。また排水しても、環境汚染に繋がる事を最小限に留める。
アミンオキシドはこの点で心配な界面活性剤であるが、本発明ではHAAOにOH基を導入し、より水状化しやすく安心できる。
またこれらの効果により、同種の2〜3倍の期間に亘り安定であり、更に機能的である事が期待される。
以下、本発明の具体例を挙げて従来品との比較を実証する。
【0020】
実施例−1
【表−1】

【0021】
以上の試作品について、いくつかの成果を確認した。
▲1▼粘度[mPa・s]:20℃で直後と、40℃で2カ月
▲2▼外観(評価は下記の通り)
◎…殆ど変りない
○…分離又は白濁気味・発泡
×…分離・白濁・汚水状
▲3▼有効塩素[%](Av−Cl,ヨード澱粉ハイポ滴定法):20℃で直後と、40℃で2カ月
▲4▼塩素臭:5人のモニターの嗅覚官能テスト(3ステージ評価,点数は下記の通り,満点は25点)
殆ど無し…5点
微かにあり…3点
かなりの塩素臭…1点
【表−2】

【0022】
実施例−2
【表−3】

【0023】
以上の試作品について、いくつかの成果を確認した。
▲1▼粘度[mPa・s]:20℃で直後と、40℃で2カ月
▲2▼外観(評価は下記の通り)
◎…殆ど変りない
○…分離又は白濁気味・発泡
×…分離・白濁・汚水状
▲3▼有効塩素[%](Av−Cl,ヨード澱粉ハイポ滴定法):20℃で直後と、40℃で2カ月
▲4▼塩素臭:5人のモニターの嗅覚官能テスト(評価は下記の通り)
◎…殆ど無し
○…微かにあり
×かなりの塩素臭又は異臭
【表−4】

これらの事実から検証するに、本発明の構成要件のみが次亜塩素酸塩の商品として決定的に優れている事が判明した。
【0024】
実施例−2
本発明と、本発明に近似するSASとAO(アミンオキシド)を併用する従来例(特開昭60−124700)の両者について、下記の結果を確認した。
【表−5】

【0025】
[確認法:その1]
各サンプルを遠心分離器にかけて、1000rpmで3分と5分回転させて、中味の状況を観察する。
評価は下記の通り(n=3,満点は15点)。
変化なし…5点
少し減粘…4点
液状で分離するところあり…3点
分離や亀裂を認める…2点
かなり分離や減粘する…1点
【表−6】

[確認法:その2]
直後と40℃で2カ月経過後の粘度変化(20℃)を粘度計で計測する(n=3の平均)。
【表−7】

[確認法:その3]
直後と40℃で90日経過後の有効塩素減少率をヨード澱粉ハイポ法で計測する(n=3の平均)。
【表−8】

[確認法:その4]
酸性物質と混用した時のフリー塩素(f−Cl)の発生量を見る。
テスト法は、200ml栓付三角フラスコにサンプル10gを静置してから、1N硝酸(pH1.8)水溶液10mlと20mlを滴下してから封栓し、10秒後に開栓してフラスコ内の臭気を3人のモニターによる官能(嗅覚)法でテストした。評価は下記の通り。
◎…殆ど気にならない程度の塩素臭
○…僅かな塩素臭あり
△…かなり塩素臭あり
×…強烈な塩素臭(刺激臭)
【表−9】

[確認法:その5]
垂直なタイル目地に発生させたカビにサンプルを適量塗布し、30分後のカビの除去性能を調べた。試作直後の物と40℃で2カ月放置した物の2種について調べた。評価は下記の通り。
◎…殆ど除去
○…少し残る
△…半分くらい残る
×…80%程残る
【表−10】

[確認法:その6]
鏡の上に、油性黒マジック,ラッカー塗料(赤),グリース汚れ(重油)を塗布し、その上から試作品を適量塗布して30分後の汚れの落ち具合をテストした(n=3の合計点、満点は15点)。評価は下記の通り。
80%以上落ちている…5点
半分以上落ちている…4点
2/3程度残る…3点
70%以上残る…2点
【表−11】

[確認法:その7]
人の毛髪を約5gシャーレに入れ、その上からサンプルを10g滴下して良くかき混ぜ、常温で15分及び30分放置した後の毛髪の状態を観察した。評価は下記の通り。
◎…ほぼ完溶
○…約20%程残った
△…約半分程度残った
×…約70%以上残った
【表−11】

【0026】
以上、本発明の試作サンプルは従来例と比較して、次亜塩素酸塩の特徴を残しながら、完全なる粘状物に仕上げた結果は、極めて優れている事がわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸塩の粘稠液として下記(1)〜(5)の組成からなる酸化性塩素化合物の粘液組成体
(1)次亜塩素酸塩(Na,K)、有効成分として3〜7%
(2)セピオライト鉱物(珪酸マグネシウム)、5〜15%
(3)苛性ソーダ(NaOH),0.2〜4%
(4)アルキルスルホン酸ソーダ(RSOH,RはC12〜18のアルキル基)、0.2〜10%
(5)高アルキルジヒドロキシアルキルアミンオキシド、0.5〜20%


【公開番号】特開2012−158734(P2012−158734A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31352(P2011−31352)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(509036300)株式会社東企 (13)
【Fターム(参考)】