説明

酸化抑制およびコレステロール抑制組成物

【課題】本発明は、抗酸化作用とコレステロール低下作用の両方を示す上に、安全であり毎日の服用も可能であって生活習慣病等の予防や治療も可能な組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の酸化抑制およびコレステロール抑制組成物は、茶を好気的醗酵した後に嫌気的醗酵したものの水系溶媒による抽出物を有効成分とするか、または茶を好気的醗酵した後に嫌気的醗酵したものの乾燥粉末若しくは当該乾燥粉末の溶液を有効成分とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化作用とコレステロール低下作用の両方を有する組成物、および当該組成物を含有する飲食品等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりによって、活性酸素による害が一般的に知られるようになっている。この活性酸素は、ストレス、ウィルスや化学物質等の浸入、喫煙、紫外線照射などにより生体内で発生し、害を及ぼす。これに対して生体は、スーパーオキシドジスムターゼ等の抗酸化酵素など、活性酸素の消去機構を有している。しかし、かかる消去機構に何らかの異常が生じて生体内で発生した活性酸素を十分に処理できなくなると、生活習慣病やその他の疾患の発症や進行の原因となる。
【0003】
例えばI型糖尿病では、免疫細胞の働きにより生じる活性酸素が膵β細胞を損傷し、インスリンが十分に分泌されなくなることが病因の一つであると考えられる。また、ヒドロキシラジカルや一重項酸素によるDNAの傷害は、発癌や老化につながるとされている。
【0004】
また、食生活の欧米化に伴う脂質摂取量の増加に伴い、高脂血症などの生活習慣病が問題となっている。即ち、脂質の多い食品を習慣的に摂取することによって、血中においてコレステロール等の脂肪分の濃度が上がる。特に、悪玉コレステロールといわれる低比重リポタンパク質(LDL)が生体内で生じた活性酸素により酸化変性すると、動脈硬化症へと進展する。
【0005】
よって、生体内における活性酸素を消失させ、且つ血中コレステロール濃度を低減することは、現代人の健康にとり非常に重要である。
【0006】
最近、緑茶に多く含まれるポリフェノール類が、活性酸素を消失させる抗酸化作用を示すことが話題になっている。その一方で、一般的に、ポリフェノール類にはコレステロール低下作用はないと認識されている。
【0007】
ところが特許文献1には、ポリフェノール類を多量に含むものであるにも関わらず、抗酸化作用だけでなくコレステロール低下作用をも示す組成物が開示されている。この組成物は雲南苦丁茶という中国の茶の抽出物を有効成分とするものである。しかし、当該組成物がコレステロール低下作用を示すといっても、その根拠となる実施例ではボランティアの血液を使用しており、おそらく食餌の制限や統一も図られていないと考えられる上に、コレステロール値が正常である者と異常である者が混在しているなど、データの信頼性に欠けるものである。
【特許文献1】特開2004−315409号公報(特許請求の範囲、段落[0011]、[0022]〜[0026]、[0045]〜[0049])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した様に、緑茶に含まれるポリフェノール類が抗酸化作用を示すことは知られており、また、抗酸化作用とコレステロール低下作用の両方を示す茶の抽出物も公知である。しかし、当該抽出物のコレステロール低下作用には疑問が残る点があり、真に両方の作用を有するものが求められている。
【0009】
そこで、本発明が解決すべき課題は、抗酸化作用とコレステロール低下作用の両方を示す上に、安全であり毎日の服用も可能であって生活習慣病等の予防や治療も可能な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく安全なものを探索したところ、好気的醗酵した後に嫌気的醗酵するという独特の醗酵工程を経た茶が上記特性を示すことを見出した。通常、紅茶やウーロン茶などの醗酵茶は、半醗酵工程や醗酵工程においてポリフェノール類が消失し、抗酸化作用も無くなると考えられている。しかし本発明に係る抽出物は、二段階の醗酵工程を経るにも関わらず、優れたコレステロール低下作用と共に抗酸化作用をも示す。
【0011】
本発明の酸化抑制およびコレステロール抑制組成物は、茶を好気的醗酵した後に嫌気的醗酵したものの水系溶媒による抽出物を有効成分とするか、または茶を好気的醗酵した後に嫌気的醗酵したものの乾燥粉末若しくは当該乾燥粉末の溶液を有効成分とする。
【0012】
抽出物を有効成分とする組成物の場合、水系溶媒として熱水を用いることが好適である。有効成分がより多く抽出され、一層効果が高いと考えられるからである。
【0013】
また、本発明の飲食品と生活習慣病抑制剤は、上記酸化抑制およびコレステロール抑制組成物を含有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、茶を二段階醗酵したものであるため安全性に優れ、毎日の服用も可能である。その上、優れた抗酸化作用とコレステロール低下作用の両方を示すことから、生活習慣病、癌、老化などの予防、進行抑制、治療などに有効である。従って、本発明の組成物は、近年の健康志向に適合するものとして極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の酸化抑制およびコレステロール抑制組成物は、茶を好気的醗酵した後に嫌気的醗酵したものの水系溶媒による抽出物を有効成分とするか、または茶を好気的醗酵した後に嫌気的醗酵したものの乾燥粉末若しくは当該乾燥粉末の溶液を有効成分とする。先ず、本発明組成物の製造方法につき説明する。
【0016】
本発明組成物の原料とする茶の種類等は特に制限されず、一般的なものを使用することができる。例えば、茶としては主に低木のもの(学名:Camellia sinensis)と高木のも
の(学名:C.sinensis var.assamica)があるが、何れを使用してもよい。但し、日本
で一般的な低木の茶を特に制限なく用いることができる。
【0017】
本発明では、茶を二段醗酵する。醗酵前の準備として、葉の組織を適度に破壊するために葉を揉む等してもよいが、蒸煮してもよい。かかる蒸煮は、葉のみで行なってもよいが枝ごと行なってもよい。蒸煮後には葉を枝からとり易くなるため、採取直後に分離するよりも手間がかからないからである。
【0018】
蒸煮は一般的な条件に従って行なえばよく、茶の層へ水蒸気および/または湯気を通じればよい。例えば、いわゆる蒸し器など、底面から水蒸気を通じることができる容器に茶葉或いは茶葉と枝を密に詰め、その下方で水を沸騰させ、当該容器へ水蒸気および/または湯気を通じる。蒸煮の時間は、続いてそのまま醗酵させることができる程度とすればよいが、例えば、水が沸騰してから1〜4時間とすることができ、好ましくは2〜3時間とする。実際には、茶葉の状態や蒸汁の色等を確認しつつ、時間を調節する。
【0019】
なお、蒸煮した場合には、その蒸汁にも有効成分が含まれていると考えられるため、これを醗酵工程で必要な水分として用いることが好ましい。
【0020】
上記前処理を行なった茶葉は、続いて好気的醗酵させる。具体的には、茶葉を高湿下で静置すればよい。例えば、茶葉を容器に入れ、湿度を保つために水や蒸汁を散布した上でカバーをかけ、常温で5〜10日間程度静置すればよい。その間、適度な温度や湿度を保つことが必要であり、茶葉の状態等を確認しつつ、醗酵条件を適宜調節する。また、好気的醗酵に当たり、手で押さえたり或いは足で踏むなど適度な圧力をかけてもよい。さらに、好気的醗酵に適する好気的細菌および/または真菌を添加してもよいが、これらを添加しない場合においても、茶葉自身の酸化酵素や自然に存在する細菌等により醗酵は進行する。
【0021】
続いて、茶葉を嫌気的醗酵させる。この嫌気的醗酵の条件も特に制限されず、公知の方法を用いればよい。例えば伝統的には、好気的醗酵させた茶葉を、圧力をかけながら容器へ密に詰めていき、最終的には容器に蓋をした上でさらに圧力をかけつつ5〜15日程度常温で静置すればよい。嫌気的醗酵工程においても、温度等の条件は、例えば重しの浮き上がり等により醗酵の進行を確認しつつ、適宜調節する。また、上記蒸汁を散布したり、或いは茶葉が漬かるほど添加してもよい。さらに、嫌気的醗酵を行なうための細菌等を添加してもよいが、添加せずに自然に嫌気的醗酵を進行させてもよい。
【0022】
嫌気的醗酵の後においては、茶葉は圧力のために一塊となっているために、適度な大きさに切断することが好ましい。続いて茶葉を乾燥させるが、かかる乾燥が円滑に進むからである。
【0023】
茶葉の乾燥は、機械的に行なってもよいが、天日干しでも十分である。また、乾燥の程度も特に制限されるものではないが、少なくとも保管時に腐敗等しない程度には乾燥させる必要がある。
【0024】
上記方法と同様の方法で製造されるものとしては、高知県で伝統的に製造されている碁石茶を挙げることができる。このお茶は、生産者が一軒のみにまで減った時期もあったが、現在では特産品として生産者も増え、継続的に生産されているものである。
【0025】
本発明組成物の一態様では、上記の通り二段醗酵した茶葉を水系溶媒により抽出し、これを有効成分とする。
【0026】
抽出に用いる水系溶媒は、水、または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒をいう。使用できる水溶性有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド等のアミド類:ジメチルスルホキシド等を挙げることができるが、人体により害が少ないという観点から、水溶性有機溶媒としてはエタノールが好適である。また、水の種類は特に制限されず、精製水、蒸留水、純水、水道水等を特に制限なく使用することができる。好適には、水のみを抽出溶媒として用いる。
【0027】
抽出方法は特に制限されず、常法を用いることができる。例えば、水系溶媒100〜500mLに対して、二段醗酵を経た茶葉を1〜5g程度加え、1分間〜1時間程度抽出すればよい。かかる抽出中、混合物は攪拌しても静置してもよく、また、継続的に加熱したり加熱還流してもよい。好適には、80℃以上の熱水を用いる。有効成分がより多く抽出され、抽出物の効果が一層高いと考えられるからである。
【0028】
抽出物は、そのまま服用してもよいが、凍結乾燥等した後に服用してもよい。
【0029】
本発明組成物の別の態様では、上記の通り二段醗酵した茶葉の乾燥粉末を有効成分とする。具体的には、上記製法において、二段醗酵を経て乾燥された茶葉を、適度に粉砕すればよい。粉砕の程度は特に制限されず、そのまま服用するか或いは他の添加成分や食品と混合するなどといった使用態様に応じて調節すればよい。粉砕の手段も特に制限されず、一般的な粉砕機械を用いればよい。また、このようにして得られた乾燥粉末を前述した水系溶媒に溶解した溶液も、本発明の組成物に包含される。
【0030】
本発明の組成物は、抗酸化作用とコレステロール低下作用の両方を示す。茶にはポリフェノール類が含まれ、ポリフェノール類は抗酸化作用を示すことが知られているが、このポリフェノール類は醗酵工程において失われるため、醗酵工程を経て製造されるウーロン茶や紅茶はポリフェノールを含まず、緑茶の様な抗酸化作用は示さないとされている。それに対して、本発明組成物は、二段階の醗酵工程を経るにも関わらず緑茶と同等か、かえって優れた抗酸化作用を示す。従って、本発明組成物に含まれる成分であって抗酸化作用を示すものは、ポリフェノール類以外であると推測される。
【0031】
本発明の組成物は、抗酸化作用を示すことから、高血圧、糖尿病、高脂血症、動脈硬化症などの生活習慣病の他、癌や老化など、活性酸素が関与する疾患や症状の予防および/または治療効果や、進行の遅延または停止効果を示し得る。
【0032】
また、本発明の組成物は、抗酸化作用に加えてコレステロール低下作用を示す。特に、後述する様に、コレステロール負荷を与えた実験動物の血中コレステロール濃度を顕著に低減できる。よって、特に高脂血症や動脈硬化症の予防および/または治療に有効である。
【0033】
本発明組成物は、飲食品(健康飲食品、機能性飲食品など)として摂取することもできる。本発明組成物は、緑茶を二段醗酵したものであって、通常の医薬品よりも安全で副作用もないと考えられるため、毎日の服用も可能だからである。飲食品として使用する場合には、上記の組成物をそのまま用いても良いが、通常添加される飲食品用添加剤を更に添加しても良い。飲食品用添加剤としては、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤(安定化剤)、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料、栄養補助剤(ビタミン類、カルシウム類、プロテイン、キトサン、レシチンなど)、甘味料などが挙げられる。飲食品の服用量は特に制限されないが、過剰の服用や体質的な問題等から異常が生じない程度の量とすればよいが、活性酸素によるダメージや血中コレステロール値の異常上昇を恒常的に抑制するため、継続的に服用することが望まれる。
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0035】
製造例1 本発明に係る抽出物の製造
抽出物原料である二段醗酵茶は、以下の通り製造した。先ず、茶葉を枝ごと採取し、蒸し桶に入れた上で踏む等して密に詰め、約2時間蒸煮した。その後室温まで放冷し、茶葉から枝を取り除いた。また、得られた蒸汁は別途保管した。蒸煮した茶葉をムシロの上に約50cmの高さで積み上げ、蒸汁を適量ふりかけ、足で踏んで適度な圧力をかけた上でムシロをのせ、そのまま7日間静置して好気的醗酵させた。7日間後、茶葉中の温度は約40℃となっており、茶葉表面には主に白カビが発生していた。次に適量ずつ桶に入れては蒸し汁を散布し、踏み固めることを繰り返して約30cm積層し、最後に木製の蓋をしてさらに重石し、30日間嫌気的醗酵させた。その後、茶葉を約3cm角に切断し、晴天の日を選んで2〜3日天日干しし、乾燥した。
熱水200mLへ得られた茶葉3gを入れ、5分間静置した。次いで吸引濾過して茶葉を除去し、濾液をサンプルとした。
【0036】
比較製造例
前述した二段発酵茶の代わりに、市販の緑茶(森木翠香園製)、ウーロン茶、紅茶、およびプアール茶(それぞれ、小谷穀粉製)を用いたこと以外は、上記製造例1と同様にしてサンプルを調製した。
【0037】
試験例1 各サンプルの抗酸化活性の測定
伏谷らの報告(伏谷秀治ら,薬学雑誌,144(6),388〜394頁(1994年))を参照して、各サンプルの抗酸化活性を測定した。具体的には、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)をメタノールに溶解して濃度100μMの溶液とした。別途、製造例1または比較製造例で調製したサンプルを精製水で1000倍に希釈した。DPPH溶液100μLとサンプル希釈液200μLを混合し、60秒後に電子スピン共鳴(ESR)測定を行なった。ESRスペクトルの測定機器としては、JEOL JEX−RE3X ESRスペクトロメーター(Power:8mW,Field:336.0±10mT,Sweep time:30秒,Modulation:9.45MHz,Time constant:0.1s,Receiver gain:4.0×100
)を用いた。得られたスペクトルにおいて、外部標準であるマンガンのシグナル高さと、DPPHラジカルの5本のピークシグナルのうち3本目の高さの比を用いて、DPPHラジカルの消去率を算出した。得られた結果を、平均値±標準誤差として図1に示し、また、tテストで検討した。図中、(1)は本発明抽出物、(2)は緑茶、(3)はウーロン茶、(4)は紅茶、(5)はプアール茶の結果である。また、「*」は、本発明抽出物に比べてp<0.05で有意であることを示す。
【0038】
図1の通り、本発明に係る抽出物は緑茶より優れた抗酸化作用を有しており、特にウーロン茶等の醗酵茶と比べると有意に優れた抗酸化作用を有していることが明らかとなった。
【0039】
試験例2 各サンプルの抗酸化活性の測定
各サンプルのO2-消去活性を、SOD Assay Kit−WST(Dojindo Molecular Technologies社製)により測定した。このキットは、キサンチンオキシダーゼにより生成したO2-がWST−1と反応することによって、450nm付近に吸収極大を示すWST−1ホルマザンが生成することを利用して、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)様のO2-消去活性を測定するものである。得られた結果を、平均値±標準誤差として図2に示し、また、tテストで検討した。図中、(1)は本発明抽出物、(2)は緑茶、(3)はウーロン茶、(4)は紅茶、(5)はプアール茶の結果である。また、「*」は本発明抽出物に比べてp<0.05で有意であることを示し、「**」は本発明抽出物に比べてp<0.01で有意であることを示す。
【0040】
図2の通り、本発明に係る抽出物は緑茶より優れた抗酸化作用を有しており、特にウーロン茶等の醗酵茶と比べると有意に優れた抗酸化作用を有していることが実証された。
【0041】
試験例3 各サンプルの成人病予防効果の測定
実験動物を用いて、各サンプルの成人病予防効果を調べた。10週齢のKbs:JW系雄性家兎(体重:2.0〜2.1kg)を、北山ラベス株式会社より購入した。購入後、室温(23±2℃)で7日間予備飼育した後、水道水投与群、本発明の抽出物投与群、緑茶投与群へ6匹ずつ分けて実験を行なった。具体的には、各家兎へ1%コレステロール含有飼料を1日75gずつ10週間投与し、高脂血症および動脈硬化症モデルとした。かかるコレステロール負荷と同時に、水道水、本発明の抽出物または緑茶を1日150mLずつ10週間投与した。なお、10週間を超えると実験動物に必要以上のダメージが表れて正確な測定ができなくなるおそれがあるため、測定値の取得は10週間までとした。
【0042】
各サンプル投与前と、投与開始から1週間ごとに、各家兎の耳介動脈より採血した。血液はヘパリン添加採血管に採取した後、直ちに3000rpmで20分間遠心分離し、上清を分取して、測定を行なった。
【0043】
高LDLコレステロール血症の診断基準となるLDLコレステロール(LDL−C)値を、コレテストLDL(第一化学薬品社製)を用い、直接法で測定した。結果を図3に示す。
【0044】
また、血漿中の過酸化脂質量をKikugawaらの方法(Kikugawaら,Analytycal Ciochemistry,202,249-255頁(1992年))を参照し、過酸化脂質とチオバルビツール酸の反応に
より生成する色素(チオバルビツール酸反応生成物)を蛍光測定することにより求めた。具体的には、各サンプル投与から10週目に採血した血液の血漿50μLに、8.1%SDS溶液0.1mLと酢酸緩衝液(pH3.5)0.75mLを加え、混合した。次にBHTの0.8%エタノール溶液25μL、1%TBA溶液0.75mLおよび精製水0.35mLを加え、混合した。5℃にて1時間静置後、95℃で1時間煮沸し、冷却した後に精製水0.5mLとn−BuOH3.0mLを加えて20秒間混合し、抽出した。この抽出液を3000rpmで10分間して得たn−BuOH層の蛍光強度(Ex:515nm,Em
:553nm)を測定した。TEPを標準液とする検量線により、血中の過酸化脂質量を算出
した。得られた結果を、平均値±標準誤差として図4に示し、また、tテストで検討した。図中、(1)は本発明抽出物、(2)は緑茶、(3)は水道水の結果である。また、「*」は本発明抽出物に比べてp<0.05で有意であることを示す。
【0045】
また、各サンプル投与から10週目に家兎を屠殺し、大動脈を摘出した。摘出した大動脈内壁をSudan IVで染色し、粥状斑部分を特定した。結果を図5に示す。
【0046】
さらに、同じく大動脈の内壁をoil red染色し、血管の断面方向におけるアテローム性動脈硬化病変部位を特定した。結果を図6に示す。
【0047】
図3の結果の通り、本発明の抽出物を投与した場合には、水道水や緑茶を投与した場合に比べて、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれるLDLの血中濃度は、顕著に抑制されている。また、図4の結果の通り、血中の過酸化脂質量も、本発明抽出物を投与すれば、緑茶等を投与した場合に比して顕著に低減できる。
【0048】
また、図5の結果の通り、本発明抽出物と緑茶を投与した場合では、粥状斑部分の範囲にはそれほどの差異は認められないが、水道水を投与した場合に比べれば、本発明抽出物を投与した場合、粥状斑部分は明らかに抑制されていることが分かる。
【0049】
さらに図6の結果の通り、本発明抽出物の投与によって、アテローム性動脈硬化病変部位を抑制することができる。その効果は、緑茶を投与した場合よりも明らかに優れている。
【0050】
以上の結果の通り、本発明抽出物の投与により血中コレステロールを低減することができ、さらにコレステロールにより引き起こされる動脈硬化症等をも抑制できることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】各抽出物のDPPHラジカル消去活性を比較するための図である。
【図2】各抽出物のO2-消去活性を比較するための図である。
【図3】本発明抽出物または緑茶が血清コレステロール濃度に与える影響を比較するための図である。
【図4】本発明抽出物または緑茶が血中過酸化脂質量に与える影響を比較するための図である。
【図5】本発明抽出物または緑茶が、血管内壁の粥状斑部分に与える効果を比較するための図である。
【図6】本発明抽出物または緑茶が、血管断面方向のアテローム性動脈硬化症病変部位に与える効果を比較するための図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶を好気的醗酵した後に嫌気的醗酵したものの水系溶媒による抽出物を有効成分とする酸化抑制およびコレステロール抑制組成物。
【請求項2】
水系溶媒として熱水を用いた抽出物を有効成分とする請求項1に記載の酸化抑制およびコレステロール抑制組成物。
【請求項3】
茶を好気的醗酵した後に嫌気的醗酵したものの乾燥粉末を有効成分とする酸化抑制およびコレステロール抑制組成物。
【請求項4】
前記乾燥粉末の溶液を有効成分とする請求項3に記載の酸化抑制およびコレステロール抑制組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の酸化抑制およびコレステロール抑制組成物を含有する飲食品。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の酸化抑制およびコレステロール抑制組成物を含有する生活習慣病抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−314508(P2007−314508A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9080(P2007−9080)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(504174180)国立大学法人高知大学 (174)
【出願人】(506148442)大豊町 (1)
【Fターム(参考)】