説明

酸化条件下でのシリカの疎水化法

【課題】 疎水性シリカの調製方法の提供。
【解決手段】 一般式RSi(O−)及びRSi(O−)で表される単位で変性したシリカであって、Rが1価であり、任意に単不飽和又は多不飽和の、任意に分枝した、C1〜C24の炭化水素部分であり、前記シリカの総有機ケイ素中に占める、T単位、T単位、及びT単位からなるT単位の相対割合が0.1%を超え、T単位の相対割合(FT1=IT1/(IT1+IT2+IT3))が10%未満であり、T単位の相対割合(FT2=IT2/(IT1+IT2+IT3))が5%を超えるシリカ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性シリカの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動床において微粉シリカの表面をジメチルジクロロシランで変性させる方法が知られている(特許文献1)。ここでは、かなりの割合の未反応のシリカのシラノール単位を有し、表面が変性されて高度に疎水化された疎水性シリカが調製される。このシリカを、例えば、極性の高いコーティング剤又は接着剤及びシーリング剤の流動性制御に使用する場合、前記シリカには未反応のシラノール単位が存在するにもかかわらず、処方過程において前記シリカを混入するために要する時間が長くなる可能性がある。更に、この方法は、高い温度を必要とするため、非経済的でもある。
僅かな揮発性を有するシロキサンによる微粉シリカの変性が、更に知られている(特許文献2)。ここでは、非常に低い割合で未反応シラノール基を有し、高い疎水性を有するシリカが調製される。極性の高いコーティング材料、接着剤、又は、シーリング剤においては、シリカ粒子表面が高度に非極性のシロキサン層で覆われると、前記粒子は、濡れにくくなり、これに伴い、液体媒体中に前記シリカを混入するのに要する時間が長くなる可能性がある。
【0003】
これらの目的は、従来技術を改善することであり、特に、既知の方法により調製される疎水性シリカと比較して、変らない又はより低い残留シラノール含量と相対的に高い極性を有する変性表面とを有するシリカ粒子及びその製造方法を開発することであった。
【0004】
特許文献3では、ジメチルジシリルオキシ単位及びモノメチルトリシリルオキシ単位でシリカの表面を変性させることが開示されている。ここでは、環状シロキサンをシリカと高温(550℃〜600℃)で反応させる。その結果、高い炭素含量を有するシリカ、即ち、より疎水化されたシリカが得られる。特許文献3に記載されている粒子は、低温で反応させた粒子に比較して、より高いメタノール数、即ち、低い極性を有している。高温下での反応は、エネルギーコストがかかるので、非経済的である。また、これらの粒子の欠点は、これらの粒子では表面のシラノール単位の割合がより少ないが、同時により高いメタノール数、即ち、より高い疎水性も有することである。
【0005】
シリカをジメチルジクロロシランとメチルトリクロロシランとで共にシリル化することも知られている。ここでの問題は、これらのシランが実質的に異なる反応性を有するため、D単位及びT単位の分布が不均一になること、そして生成物から精製により除去しなくてはならないHClが多量に形成されることがあることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許発明第1163784号明細書
【特許文献2】欧州特許第686676号明細書
【特許文献3】欧州特許第924269号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、疎水性シリカの調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下によって解決される。
【0009】
本発明は、以下の一般式(I)及び(II)で表される単位で変性されたシリカであって、
SiO− (I)
RSiO− (II)
式中、
Rが1価であり、任意に単不飽和又は多不飽和の、任意に分枝した、C1〜C24の炭化水素基であり、
前記シリカの総有機ケイ素単位中に占める、T単位、T単位、及びT単位からなるT単位の相対割合が0.1%を超え、
単位の割合(FT1=IT1/(IT1+IT2+IT3))が10%未満であり、
単位の相対割合(FT2=IT2/(IT1+IT2+IT3))が5%を超えることを特徴とするシリカに関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による方法により製造されるジメチルジシリルオキシ単位とモノメチルトリシリルオキシ単位とを含む変性表面層をシリカに与えることにより、低い割合の未反応表面シラノール単位と、相対的に極性の高くない表面変性層とを有するシリカが得られることが発見され、これは驚くべき見知であり且つ当業者には決して予見できなかったことである。シリカを、酸化条件下、即ち、例えば、400℃未満の温度の空気中で、ジアルキルジハロシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、及びポリジメチルシロキサン(PDMS)のいずれかと反応させる。これらの反応条件下では、相対的に極性の高いSiOH含有シロキサン鎖が形成される。このSiOH単位は、29Si−CMPAS−NMR分光光度計により、T単位として検出できる。
T単位は、モノアルキルトリシリルオキシ単位R−Si(O−)を意味するものとして理解され、その上付き数字がシロキサン結合の数を示す、即ち、
: R−Si(OR′)−O−Si
: R−Si(OR′)(−O−Si)
: R−Si(−O−Si)
式中、
Rが、Si−C−結合を有し、任意に置換されたアルキル基であってもよく、R′がアルキル基及び水素原子のいずれかであってもよい。
同様に、D単位はジアルキルジシリルオキシ単位(R−)Si(O−)を意味するものとして理解される。
【0011】
本発明により得られるシリカは、以下の一般式(I)及び(II)で表される単位で変性される。
Si(O−) (I)
RSi(O−) (II)
式中、
Rが1価であり、任意に単不飽和又は多不飽和の、任意に分枝した、C1〜C24の炭化水素基である。
【0012】
R基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基(n−ヘキシル基若しくはイソヘキシル基など)、オクチル基(n−オクチル基若しくはイソオクチル基など)、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、又はn−オクタデシル基などのアルキル基であることが好ましい。メチル基であることが特に好ましい。
【0013】
シリカ表面上に存在することが好ましい単位は、ジメチルシリルジオキシ単位(CHSi(O−)及びメチルシリルトリオキシ単位CHSi(O−)である。
【0014】
本発明により得られるシリカの表面は、一般式(I)(=D単位)及び一般式(II)(=T単位)の両方の単位で同時に変性される。前記シリカの総有機ケイ素単位中に占めるT単位の相対割合は0.1%を超えることが好ましく、0.1%〜30%であることが更に好ましく、0.5%〜20%であることがなお更に好ましい。特定の実施形態では、前記T単位の相対割合は、1%〜10%である。個々の有機ケイ素単位の総有機ケイ素単位に占める割合は、例えば、29Si−CPMAS−NMRのスペクトルの対応するシグナル強度の積分により求めることができる。即ちF=I/(I+I)(式中、Fが、T単位の割合であり、I及びIがそれぞれT単位及びD単位のNMRシグナル強度である)により求めることができる。本発明により得られるシリカのT単位は、T、T、及びT単位からなる。T単位の割合(FT1=IT1/(IT1+IT2+IT3)は、10%未満であることが好ましく、5%未満であることが好ましく、1%未満であることが特に好ましい。特定の実施形態では、T単位は、検出できない程度の割合である。
【0015】
単位の相対割合(FT2=IT2/(IT1+IT2+IT3))は、5%を超えることが好ましく、5%〜75%であることが好ましく、10%〜50%であることが特に好ましい。
【0016】
本発明により得られるシリカは、本発明の場合と同量のシリル化剤を使用するが、不活性ガス中で反応することにより得られるシリカに比べ、低い割合の未反応シラノール単位を表面に有する。好ましくは、本発明の場合と同量のシリル化剤を使用するが、不活性ガス中で反応することにより得られる前述シリカの表面のシラノール単位の割合に比べ、前記本発明によって得られるシリカの表面の未反応シラノール単位の割合は、90%以下低下しており、75%以下低下していることが好ましく、50%以下低下していることが特に好ましい。
【0017】
本発明により得られるシリカは、本発明の場合と同量のシリル化剤を使用するが、不活性ガス中での反応で得られるシリカに比較して、同等かより低いメタノール数を有する。好ましくは、前記本発明により得られるシリカのメタノール数は、同量のシリル化剤を使用するが、不活性ガス中での反応で得られる前述のシリカのメタノール数より、50%以下低下しており、25%以下低下していることが好ましく、20%以下低下していることが特に好ましい。
【0018】
本発明により得られるシリカの炭素含量は、0.1重量%を超え、0.1重量%〜10重量%であることが好ましく、0.5重量%〜7.5重量%であることが特に好ましい。
【0019】
本発明により得られるシリカは、低い含有率で抽出可能な有機ケイ素構成成分を有する。好ましくは、この割合は、10重量%未満であり、5重量%未満であることが特に好ましい。
【0020】
本発明により得られるシリカは、300未満のDBP数を有することが好ましく、250〜100のDBP数で有することが好ましく、225〜150のDBP数を有することが特に好ましい。
【0021】
本発明により得られるシリカは、高い比表面積を有する(ドイツ工業規格(DIN)、欧州規格(EN)、国際規格(ISO)9227/ドイツ工業規格(DIN)66132に準拠し評価)。
【0022】
好ましくは、前記比表面積は、10m/g〜450m/gであり、20m/g〜400m/gであるのが好ましく、30m/g〜350m/gであるのが特に好ましい。
【0023】
本発明は更に、一般式(I)及び(II)で表される単位で変性させたシリカの調製方法であって、
一般式(III)で表されるシラン、
SiX (III)
式中、Xがハロゲン、OH、又はORであり、Rは上述の意味を有する、
及び、
一般式(IV)で表されるシロキサン、
(RSiX(O−)1/2)(Si(R)(O−)2/2((−O)1/2SiR) (IV)
式中、X及びRが、上述の意味を有し、
aが2及び3のいずれかであり、
bが0及び1のいずれかであり、但し、a+b=3、
nが1〜10であり、1〜1,000であることが好ましく、3〜100であることが特に好ましく、
使用する前記ポリシロキサンの粘度が0.5mPa・sを超え、1mPa・s〜10mPa・sであることが好ましく、1mPa・s〜1,000mPa・sであることが特に好ましい、
又は、
前記一般式(III)のシラン及び/又は前記一般式(IV)のシロキサンの任意の混合物で前記親水性シリカを含み、
変性が400℃未満の温度下で、例えば空気中、酸素中、亜酸化窒素中などの酸化条件下で行われることを特徴とする調製方法に関する。
【0024】
前記表面変性シリカは、連続式工程で調製してもバッチ式工程で調製してもよく、変性の工程は、1つ以上の工程からなってもよい。前記表面変性シリカが、
(A)、最初に、親水性シリカを調製する工程、
(B)、(1)前記親水性シリカに一般式(III)のシラン、及び一般式(IV)のシロキサン、又は前記一般式(III)のシラン及び/又は前記一般式(IV)のシロキサンの任意の混合物を添加する工程と、(2)次に添加した化合物とシリカとを反応させる工程とにより前記シリカを変性させる工程、及び
(C)余った添加化合物及び副産物を除去してシリカを精製する工程、の個々の工程により行われる調製方法により調製されることが好ましい。
【0025】
表面処理は、変性シリカの部分的酸化をもたらす大気中で行うのが好ましい。即ち、亜酸化窒素中、酸素中、及び空気中のいずれかが好ましく、5容量%を超える濃度の酸素中が好ましく、10容量%を超える濃度の酸素中が特に好ましく、空気中が特に好ましい。
【0026】
添加工程、反応工程、及び精製工程は、バッチ式工程として行っても、連続式工程として行ってもよい。技術的な理由から、連続式反応工程として行うのが好ましい。
【0027】
添加工程(工程B1)は、400℃を超えない温度で行うことが好ましく、−30℃〜250℃で行うことが好ましく、20℃〜150℃で行うことがより好ましく、20℃〜80℃で行うことが特に好ましい。なお特に好ましい実施形態においては、前記添加工程は、30℃〜50℃で行う。
【0028】
滞留時間は、1分〜24時間であることが好ましく、15分〜300分であることが好ましく、空間−時間収率に関係する理由から15分〜240分であることが特に好ましい。
【0029】
前記添加工程の間の圧力は、わずかに減圧した状態の0.2barから100barの超大気圧までの範囲であり、技術上の理由からは、常圧、即ち加圧なしの外圧/大気圧であることが好ましい。
【0030】
一般式(III)のシラン及び一般式(IV)のシロキサンのいずれかは、液体状態で添加することが好ましく、特に粉状のシリカと混合する。これらの化合物は、純粋な形で、及び、既知の工業的に使用される溶媒に溶かした溶液のいずれかで混合することができる。既知の工業的に使用される溶媒の例としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、例えばジエチルエーテル、THF、ジオキサン等のエーテル、例えばヘキサン、トルエン等の炭化水素があげられる。溶液中の濃度は、5重量%〜95重量%であることが好ましく、30重量%〜95重量%であることが好ましく、50重量%〜95重量%であることが特に好ましい。
【0031】
混合は、有効な噴霧技術等のノズル技術及び類似の技術のいずれかによって行うことが好ましく、有効な噴霧技術の例としては、加圧(5bar〜20barであるのが好ましい)した1液ノズルにおける噴霧、加圧(気体及び液体に対し2bar〜20barが好ましい)した2液ノズルにおけるスプレー、及び、可動、回転式、若しくは固定の内部装置を有する噴霧器又は気体−固体交換装置を使用した非常に微細な分配等が挙げられ、これらは一般式(III)のシラン及び一般式(IV)のシロキサンのいずれかを粉状のシリカと共に均一に分配することを可能にする。
【0032】
エアロゾルは、上方から流動化固体上にスプレーしても、前記流動化固体中にスプレーしてもよい。
【0033】
一般式(III)のシラン又は一般式(IV)のシロキサンは、0.1cm/s〜20cm/sの沈降速度で、非常に微細に分散されたエアロゾルとして、添加することが好ましい。
【0034】
一般式(III)のシラン又は一般式(IV)のシロキサンが、分解することなく気化できる化合物、即ち、大気圧下の沸点が200℃未満の化合物である場合、これら化合物は、蒸気の状態で微粉シリカと混合することが好ましい。
【0035】
任意に、一般式(III)のシラン又は一般式(IV)のシロキサンに、液体アルコール若しくは気化アルコール(典型的なアルコールとしてはイソプロパノール、エタノール、及びメタノールが挙げられる)、又は水などのプロトン性溶媒を添加してもよい。前述のプロトン性溶媒の混合物を添加してもよい。シリカ中に対して1重量%〜50重量%のプロトン性溶媒を添加することが好ましく、5重量%〜25重量%が特に好ましい。水を添加することが特に好ましい。
【0036】
また、ルイス酸又はブレンステッド酸の意味での酸特性を有する酸触媒、例えば塩化水素など、及び、ルイス塩基又はブレンステッド塩基の意味での塩基特性を有する塩基触媒、例えばアンモニア又はアミン類(例えばトリエチルアミン)などを更に添加してもよい。これらは、痕跡量、即ち、1,000ppm未満で添加することが好ましい。触媒を添加しないことが、特に好ましい。
【0037】
前記シリカの添加、及び、前記シリカと一般式(III)のシラン又は一般式(IV)のシロキサンとの反応は、機械的流動化及び気体支持流動化のいずれかにより行うことが好ましい。
【0038】
気体支持流動化は、不活性ガスにより行っても、酸素含有プロセスガスにより行ってもよい。気体支持流動化は、空気により行うことが好ましい。流動化のための気体は、0.05cm/s〜5cm/sの範囲の空塔速度で供給することが好ましく、0.5cm/s〜2.5cm/sの範囲の空塔速度で供給することが特に好ましい。
【0039】
排出したガスを再充填することなく、パドル撹拌機、アンカー撹拌機、及び他の適切な撹拌装置により行われる機械的流動化が特に好ましい。
【0040】
前記反応工程(工程B2)は、好ましくは400℃未満の温度で行い、20℃〜380℃の温度で行うことが好ましく、100℃〜350℃の温度で行うことが特に好ましく、そして150℃〜350℃の温度で行うことがなお特に好ましい。
【0041】
前記精製工程(工程C)は、好ましくは20℃〜400℃の精製温度で行い、50℃〜350℃の温度で行うことが好ましく、100℃〜300℃の温度で行うことが特に好ましい。
【0042】
前記精製工程は、動かすことにより行うことが好ましく、ゆっくり動かすこと、そして軽く混合することにより行われることが特に好ましい。撹拌装置は、好ましくは混合及び流動化が生じ、しかし完全な渦は発生しないように調節し作動させるのが有利である。
【0043】
前記精製工程は、更に、好ましくは、0.001cm/s〜10cm/sの空塔速度に、好ましくは0.01cm/s〜1cm/sの空塔速度に相当する多量のガス投入により行ってもよい。これは、前記一般式(II)のシラン、前記シリカ、及び前記変性シリカと反応することのない、即ち、二次反応、分解反応、酸化過程、及び発炎/爆発現象を発生させることのない全ての不活性ガス、例えば、好ましくは、N、Ar、他の希ガス、COなど、又は、酸素含有ガス等、好ましくは空気により行うことができる。
【0044】
特に好ましい実施形態においては、未反応の一般式(III)のシラン又は未反応の一般式(IV)のシロキサン及び排出ガスは、精製工程からシリカの添加工程へとリサイクルされる。これは、部分的に行っても、完全に行ってもよく、精製工程から排出されるガス容量の総体積流量の10%〜90%であることが好ましい。
【0045】
これは、恒温装置中で適切に行われる。このリサイクル工程は、非凝結相において、即ち、気体及び蒸気のいずれかとして行われることが好ましい。このリサイクル工程は、圧力均衡に従う物質輸送として行っても、ガス輸送のための通常技術を用いたシステム、例えば、ファン、ポンプ、圧縮空気隔膜ポンプなどを用いたシステムでコントロールする物質輸送として行ってもよい。非凝結相をリサイクル工程に用いることが好ましいので、リサイクル管を加熱してもよい。
【0046】
未反応の一般式(III)のシラン又は未反応の一般式(IV)のシロキサンのリサイクル、及び排出ガスのリサイクルは、好ましくは、これらの総質量の5重量%〜100重量%であってもよく、30重量%〜80重量%であることが好ましい。リサイクルは、新たに使用するシラン100部に対して、1部〜200部であってもよく、10部〜30部であることが好ましい。
【0047】
変性反応工程から精製工程を経た産物の添加工程へのリサイクルは、連続的に行うのが好ましい。
【0048】
加えて、シリカを機械的に圧縮する方法は、変性工程の際、又は精製工程の後に使用してもよい。シリカの機械的圧縮法の例としては、加圧ローラー、エッジミル及びボールミルなどの粉砕手段、スクリュー又はスクリュウーミキサー、スクリュー突き固め機による連続的に又はバッチ式に用いた圧縮、ブリケット装置を用いた圧縮、適切な真空法を使用した空気又はガス内容物の引き抜きによる圧縮が挙げられる。
【0049】
前記機械的圧縮は、反応工程の工程(II)における、変性工程において、加圧ローラー、ボールミルなどの前述の粉砕装置を用いた圧縮、又はスクリュー、スクリューミキサー、スクリュー突き固め機、若しくはブリケット装置による圧縮により行うのが特に好ましい。
【0050】
なお特に好ましい方法においては、シリカを機械的に圧縮する方法、例えば適切な真空法による空気又はガス内容物の引き抜きによる圧縮法又は加圧ローラーによる圧縮法又はこの2つの圧縮法の組み合わせによる圧縮法を精製工程の後に用いる。
【0051】
更に、特に好ましい方法においては、シリカを脱アグロメレーション化する方法、例えば、ピン固定ディスクミル、ハンマーミル、逆流ミル、インパクトミル、又は粉砕及び分級を組み合わせて行う装置を用いた方法を、精製工程の後に使用することができる。
【0052】
本発明は、更に、本発明により得られるシリカを、粘性付与成分として、低い極性から高い極性を有するシステムにおいて使用する方法に関する。これは、全ての、無溶媒表面コーティング材料、溶媒含有表面コーティング材料、フィルム形成表面コーティング材料、ゴム状から硬質のコーティング、接着剤、シーリング剤、及び埋め込み用化合物、及び他の類似のシステムにあてはまる。
【0053】
本発明によるシリカは、例えば、以下のシステムにおいて使用できる:
エポキシドシステム
ポリウレタンシステム(PU)
ビニルエステル樹脂
不飽和ポリエステル樹脂
低溶媒樹脂システム、いわゆる「高固体」
粉末の形で使用される無溶媒樹脂、例えばコーティング材料など。
【0054】
本発明によるシリカは、これらのシステムにおける流動学的添加剤として、必要とされる必須の粘性、構造粘性、チキソトロピック特性、及び鉛直面での静止を可能にする十分な降伏点を提供する。
【0055】
本発明は、更に、本発明により得られるシリカを、未架橋処方物の貯蔵安定性を改善するために、触媒架橋コーティング、触媒架橋接着剤、及び触媒架橋シーリング剤のいずれか、例えば、水分架橋性1成分ポリウレタン接着剤及び水分架橋性1成分ポリウレタンコーティング材料のいずれかなどの1成分システムにおいて使用する方法に関する。本発明によるシリカは、通常使用される触媒の作用を遅延させる能力を有することで特徴づけられる。通常使用される触媒の例としては、塩基化合物、例えば、トリエチルアミン、エチレンジアミン(トリエチレンジアミンなど)などのアミン類、N−アルキルモルホリン類などのモルホリン類、ピペラジン及びその誘導体若しくはピリジン及びその誘導体;又は、有機金属化合物、例えば、ジブチルスズジラウレート、トリブチルスズアセテート、二塩化ジブチルスズ、及びオクタン酸スズのいずれかなどの有機スズ化合物、若しくは、他の有機金属化合物、例えば、安息香酸コバルト、オクタン酸コバルト、及びナフテン酸コバルトのいずれかなどのコバルト化合物、二塩化ジブチルチタンなどのチタン化合物、及びオクタン酸鉄などの鉄化合物のいずれか、が挙げられる。
【0056】
処方物の総重量に占める本発明によるシリカの割合は、好ましくは0.1重量%〜20重量%であり、0.5重量%〜15重量%であることが好ましく、1重量%〜10重量%であることが特に好ましい。
【0057】
これは、80℃における熱負荷試験において、本発明によるシリカを含有する水分架橋触媒性1成分ポリウレタン接着剤又は水分架橋触媒性1成分ポリウレタンコーティング材料が、本発明によるT単位画分を含有しない疎水性シリカを含有する1成分ポリウレタン接着剤又は1成分ポリウレタンコーティング材料に比較して、実質的により遅い粘性の増加速度を有することを意味する。初期粘性と比較して2倍の粘性に到達するまでに要する時間が、前者は後者に比較して、好ましくは10倍かかり、5倍かかることが好ましく、そして2倍かかることが特に好ましい。
【0058】
本発明により得られるシリカは、更に、流動学的添加剤及び補強材として、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーンポリマー、賦形剤、及び更なる添加剤から調合されるシリコーンエラストマーから構成されるような未架橋又は架橋のシリコーンシステム中に投入してもよい。これらは、例えば、過酸化物で架橋しても、付加反応、いわゆるオレフィン基とSi−H単位とのヒドロシリル化反応を経由して架橋しても、又は、シラノール単位の間での縮合反応、例えば、水の影響下で発生するようなものを経由して架橋してもよい。
【0059】
本発明により得られるシリカは、粉末流動挙動を改善しそして制御するため、及び/又はトナー及び現像剤のいずれかの摩擦電気帯電特性を規制し制御するために使用できる。このようなトナー及び現像剤は、電子写真印刷プロセスにおいて好適に使用することも、直接的画像転写プロセスにおいて使用することもできる。粉末コーティングにおける本発明のシリカの使用についても同様のことが言える。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
不活性ガス中、温度25℃下で、粘度が20mPa・sであるトリメチルシロキシ末端含有シリコーンオイル16gを、1%未満の水分含量及び100ppm未満のHCl含量を有し、比表面積が150m/gである(ドイツ工業規格(DIN)、欧州規格(EN)、国際規格(ISO)9227/ドイツ工業規格(DIN)66132に準拠したBET法により測定)親水性シリカ(HDK(登録商標)V15の商品名でワッカー−ケミー AG、ミュンヘン、ドイツから入手可能)100gに、2液ノズル(圧力は、5bar)を経由した噴霧により添加する。このようにして添加されたシリカを、100Lの乾燥オーブン内、900L/hの速度の空気気流の中で、300℃で2時間反応させる。
表1に分析データを示す。
【0061】
(実施例2(比較例))
不活性ガス中、温度25℃下で、粘度が20mPa・sであるトリメチルシロキシ末端含有シリコーンオイル(F=0%)16gを、1%未満の水分含量及び100ppm未満のHCl含量を有し、比表面積が150m/gである(ドイツ工業規格(DIN)、欧州規格(EN)、国際規格(ISO)9227/ドイツ工業規格(DIN)66132に準拠したBET法により測定)親水性シリカ(HDK(登録商標)V15の商品名でワッカー−ケミー AG、ミュンヘン、ドイツから入手可能)100gに、2液ノズル(圧力は、5bar)を経由した噴霧により添加する。このようにして添加されたシリカを、100Lの乾燥オーブン内、900L/hの速度のN気流の中で、300℃で2時間反応させる。
表1に分析データを示す。
【0062】
(実施例3)
不活性ガス中、温度25℃下で、粘度が約35mPa・sであるOH末端含有シリコーンオイル27gを、1%未満の水分含量及び100ppm未満のHCl含量を有し、比表面積が300m/gである(ドイツ工業規格(DIN)、欧州規格(EN)、国際規格(ISO)9227/ドイツ工業規格(DIN)66132に準拠したBET法により測定)親水性シリカ(HDK(登録商標)T30の商品名でワッカー−ケミー AG、ミュンヘン、ドイツから入手可能)100gに、2液ノズル(圧力は、5bar)を経由した噴霧により添加する。このようにして添加されたシリカを、100Lの乾燥オーブン内、900L/hの速度の空気気流の中で、300℃で2時間反応させる。
表1に分析データを示す。
【0063】
(実施例4)
不活性ガス中、温度25℃下で、1.89gの脱塩水、次に6.4gのジメチルジクロロシランを、1%未満の水分含量及び100ppm未満のHCl含量を有し、比表面積が150m/gである(ドイツ工業規格(DIN)、欧州規格(EN)、国際規格(ISO)9227/ドイツ工業規格(DIN)66132に準拠したBET法により測定)親水性シリカ(HDK(登録商標)V15の商品名でワッカー−ケミー AG、ミュンヘン、ドイツから入手可能)100gに、2液ノズル(圧力は、5bar)を経由した噴霧により添加する。このようにして添加されたシリカを、100Lの乾燥オーブン内、900L/hの速度の空気気流の中で、80℃で1時間、そして300℃で2時間反応させる。
表1に分析データを示す。
【0064】
(実施例5(比較例))
不活性ガス中、温度25℃下で、1.89gの脱塩水、次に6.4gのジメチルジクロロシラン(F=0%)を、1%未満の水分含量及び100ppm未満のHCl含量を有し、比表面積が150m/gである(ドイツ工業規格(DIN)、欧州規格(EN)、国際規格(ISO)9227/ドイツ工業規格(DIN)66132に準拠したBET法により測定)親水性シリカ(HDK(登録商標)V15の商品名でワッカー−ケミー AG、ミュンヘン、ドイツから入手可能)100gに、2液ノズル(圧力は、5bar)を経由した噴霧により添加する。このようにして添加されたシリカを、100Lの乾燥オーブン内、900L/hの速度のN気流の中で、80℃で1時間、そして300℃で2時間反応させる。
表1に分析データを示す。
【0065】
【表1】

【0066】
(分析方法の説明)
1.炭素含量(%)
炭素の元素分析;O気流中、1,000℃を超える温度での試料の燃焼;形成COのIRによる検出及び定量;装置は、LECO244。
2.残留未変性シリカシラノール単位の含量
方法:50:50の水/メタノール溶媒に懸濁したシリカの酸−塩基滴定;等電点pH範囲より上、かつ、シリカの溶解pH範囲より下の範囲での滴定。
100%のSiOH(シリカ表面シラノール単位)を有する未処理シリカ:SiOH−phil=2SiOH/nm
シリル化シリカ:SiOH−silyl。
シリカの残留シラノール含量:残留SiOH(%)=SiOH−silyl/SiOH−phil×100%(G.W.Sears, Anal.Chem.,28(12),(1950),1981と同様)。
3.メタノール数:一定容量のシリカの同じ容量の水−メタノール混合物中での振とう。
メタノール濃度0%から開始。濡れない場合、シリカは、浮かぶ:約5容量%を超えるMeOH含量を有する混合物を用いるべきである。
濡れると、シリカは沈む:水中のMeOHの割合(%)がメタノール数(MN)である。
4.T単位の相対割合(F):CPMASモードで測定した29Si固体状態NMRスペクトラム。
5.初期粘性が2倍に達するまでの時間(t):試験するシリカを、溶解機を使用して、2.3重量%の濃度でMDIプレポリマー(Desmodur E 210、Bayer MaterialScienceから入手可能)中に分散した。この混合物0.33gを、コーン2を有するCAP2000ブルックフィールドレオメーターの測定板に塗布し、0.01gのCOTIN200スズ触媒を添加した。測定は、50min−1の定速度回転下、80℃の温度で行った。測定は、架橋形成した試料の壁面滑りによる不規則な挙動が見られるやいなや中断した。点数データは、5分ごとに記録した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のシリカは、粘性付与成分として、低い極性から高い極性を有するシステムにおいて使用することができ、更には、全ての、無溶媒表面コーティング材料、溶媒含有表面コーティング材料、フィルム形成表面コーティング材料、ゴム状から硬質のコーティング、接着剤、シーリング剤、及び埋め込み用化合物、及び他の類似のシステムに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)及び(II)で表される単位で変性させたシリカであって、
SiO- (I)
RSiO- (II)
Rが1価であり、任意に単不飽和又は多不飽和の、任意に分枝した、C1〜C24の炭化水素基であり、
前記シリカの総有機ケイ素単位中に占める、T単位、T単位、及びT単位からなるT単位の相対割合が0.1%を超え、
単位の相対割合(FT1=IT1/(IT1+IT2+IT3))が10%未満であり、
単位の相対割合(FT2=IT2/(IT1+IT2+IT3))が5%を超えることを特徴とするシリカ。
【請求項2】
R基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基(n−ヘキシル基若しくはイソヘキシル基など)、オクチル基(n−オクチル基若しくはイソオクチル基など)、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、又はn−オクタデシル基などのアルキル基である、請求項1に記載のシリカ。
【請求項3】
シリカ表面上にジメチルシリルジオキシ単位(CHSi(O−)及びメチルシリルトリオキシ単位CHSi(O−)が存在する、請求項1から2のいずれかに記載のシリカ。
【請求項4】
シリカの総有機ケイ素単位中に占める、T単位、T単位、及びT単位からなるT単位の相対割合が0.1%〜30%である、請求項1から3の少なくともいずれかに記載のシリカ。
【請求項5】
単位の割合(FT1=IT1/(IT1+IT2+IT3))が5%未満である請求項1から4の少なくともいずれかに記載のシリカ。
【請求項6】
単位の相対割合(FT2=IT2/(IT1+IT2+IT3))が5%〜75%である、請求項1から5の少なくともいずれかに記載のシリカ。
【請求項7】
一般式(I)及び(II)で表される単位で変性させたシリカの調製方法であって、
一般式(III)で表されるシラン、
SiX (III)
式中、Xがハロゲン、OH、又はORであり、Rは上述の意味を有し、
及び、
一般式(IV)で表されるシロキサン、
(RSiX(O−)1/2)(Si(R)(O−)2/2((−O)1/2SiR) (IV)
式中、X及びRが、上述の意味を有し、
a+b=3という条件付で、
aが2及び3のいずれかであり、
bが0及び1のいずれかであり、
nが1〜10であり、
使用する前記ポリシロキサンの粘度が0.5mPa・sを超え、
又は、
前記一般式(III)のシラン及び/又は前記一般式(IV)のシロキサンの任意の混合物で、親水性シリカを含み、
変性が400℃未満の温度下で、酸化条件下で行われることを特徴とする調製方法。
【請求項8】
シリカをコーティング剤、接着剤、又はシーリング剤の流動性を制御するために使用することを特徴とする、請求項1から7の少なくともいずれかに記載のシリカの使用方法。
【請求項9】
シリカを触媒架橋コーティング剤、接着剤、及びシーリング剤の貯蔵安定性を改善するために使用することを特徴とする、請求項1から7の少なくともいずれかに記載のシリカの使用方法。


【公表番号】特表2011−506259(P2011−506259A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538600(P2010−538600)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067377
【国際公開番号】WO2009/077437
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】