説明

酸化物半導体膜及び半導体装置

【課題】バンドギャップが大きく、且つ結合エネルギーを安定な状態にする酸化物半導体膜を提供する。また、バンドギャップが大きく、且つ結合エネルギーを安定な状態にする酸化物半導体膜を具備する半導体装置を提供する。
【解決手段】インジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造の酸化物半導体膜とする。また、当該結晶構造において、ランタンは酸素が6配位した構造とし、インジウムは酸素が5配位した構造とする。酸化物半導体膜の結晶構造中にランタンを用いることで、インジウム、ガリウム、亜鉛及び酸素を有する結晶構造の酸化物半導体膜よりもバンドギャップが大きく、結合エネルギーを大きくした酸化物半導体膜とすることができる。また、該酸化物半導体膜を用いた半導体装置の特性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸化物半導体膜及び該酸化物半導体膜を具備する半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジスタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トランジスタの活性層に用いることのできる、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)及び酸素(O)を含む酸化物半導体(以下、IGZO)は、シリコンの半導体よりも広いバンドギャップの特性を有している。しかしながら、IGZOは、酸素欠損により特性が変化するため、酸素を放出しないような酸化物半導体膜への改善が求められている。またIGZOは、バンドギャップがシリコンより広いものの、酸化物半導体膜の絶縁破壊耐圧の向上及び光劣化の抑制のため、さらに広いバンドギャップとすることが求められている。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、結晶構造の結合エネルギーをIGZOよりも大きくすることで、酸化物半導体膜内の酸素の結合を安定にし、且つIGZOよりバンドギャップを大きくすることのできる酸化物半導体膜、及び該酸化物半導体膜を具備する半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、インジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造の酸化物半導体膜とする。また、当該結晶構造において、ランタンは酸素が6配位した構造とし、インジウムは酸素が5配位した構造とする。酸化物半導体膜の結晶構造中にランタンを用いることで、インジウム、ガリウム、亜鉛及び酸素を有する結晶構造の酸化物半導体膜よりもバンドギャップが大きく、結晶構造の結合エネルギーを大きくした酸化物半導体膜とすることができる。
【0009】
本発明の一態様は、一般式InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)の結晶を含む酸化物半導体膜である。
【0010】
本発明の一態様は、酸化インジウム層、酸化ランタン層及び酸化亜鉛層が層状に配列した結晶構造を有し、結晶構造の一般式は、InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)である酸化物半導体膜である。
【0011】
本発明の一態様において、酸化ランタン層は、ランタン原子を酸素原子が6配位した構造を有し、酸化インジウム層は、インジウム原子を酸素原子が5配位した構造を有する酸化物半導体膜が好ましい。
【0012】
本発明の一態様において、酸化物半導体膜、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極を有し、酸化物半導体膜は、一般式InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)で表される結晶を含む膜である半導体装置である。
【0013】
本発明の一態様において、酸化物半導体膜、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極を有し、酸化物半導体膜は、酸化インジウム層、酸化ランタン層及び酸化亜鉛層が層状に配列した結晶構造を有する膜であり、結晶構造の一般式は、InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)である半導体装置である。
【0014】
本発明の一態様において、酸化ランタン層はランタン原子に酸素原子が6配位した構造であり、酸化インジウム層はインジウム原子に酸素原子が5配位した構造である半導体装置が好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様により、IGZOよりバンドギャップを大きくし、且つ結晶構造の結合エネルギーを大きくした酸化物半導体膜とすることができる。また、該酸化物半導体膜を具備することで絶縁破壊耐圧に優れ、且つ光を照射した際の劣化を低減し、長期間の使用に際しても、しきい値電圧等の電気的特性が変動しにくく、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】酸化物半導体の結晶構造を説明するモデル図。
【図2】酸化物半導体内の原子の結合状態について説明するモデル図。
【図3】酸化物半導体の結晶構造を説明するモデル図。
【図4】酸化物半導体の結晶構造を説明するモデル図。
【図5】酸化物半導体の結晶構造を説明するモデル図。
【図6】半導体装置の一態様の平面図及び断面図。
【図7】半導体装置の一態様の平面図及び断面図。
【図8】半導体装置の作製方法の一例を示す図。
【図9】半導体装置の作製方法の一例を示す図。
【図10】半導体装置の一態様の平面図及び断面図。
【図11】半導体装置の一態様の平面図及び断面図。
【図12】半導体装置の一形態を示す断面図、平面図及び回路図。
【図13】半導体装置の一形態を示す回路図及び斜視図。
【図14】半導体装置の一形態を示す断面図及び平面図。
【図15】半導体装置の一形態を示す回路図。
【図16】半導体装置の一形態を示すブロック図。
【図17】半導体装置の一形態を示すブロック図。
【図18】半導体装置の一形態を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態及び実施例について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って本実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じ物を指し示す符号は異なる図面間において共通とする。
【0018】
なお、各実施の形態及び実施例の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0019】
なお本明細書にて用いる第1、第2、第3、乃至第N(Nは2以上の自然数)という用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、酸化物半導体膜内に含まれる結晶構造の一例について詳細に説明する。
【0021】
図1(A)、(B)は、酸化物半導体膜が有するインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造の単位格子についてのモデル図を示したものである。
【0022】
なお図1(A)、(B)に示す結晶構造の単位格子についてのモデル図は、密度汎関数理論に基づく平面波―擬ポテンシャル法を用いた第一原理計算により構造が最適化されたものである。図1(A)、(B)に示すように結晶構造の単位格子は、六方晶の層状の結晶構造をとることができる。
【0023】
なお、図1(A)に示す、インジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する単位格子のモデル図は、一般式InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)で結晶構造の組成を表すと、x=1、y=1における結晶構造を表すものである。この場合、インジウム:ランタン:亜鉛の組成比が1:1:1[原子百分率]となり、一般式InLaZnOで表すことができる。なおInLaZnOは、1:1:1[原子百分率]の組成比又はその近傍の組成比である酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により酸化物半導体膜を作製することができる。なお一般式InLa(2−x)Zn3+yにおいて、xは0より大きく2未満の数としてもよいが、ランタンよりもインジウムの割合を大きくしておくことで、電界効果移動度を大きくすることができるため、好適である。
【0024】
なお前述の一般式において、インジウム及びランタンの組成比を決める変数xについて、下限を1、上限を2としている。これは本実施の形態の結晶構造のように、酸化インジウム層、酸化ランタン層及び酸化亜鉛層が層状をなす結晶構造を保つことのできる組成比として、導出されたものである。例えば、変数xが1より小さければ、インジウムがランタンに比べて少なくなるため、結晶構造を保ちにくくなる。また、変数xが2以上であれば、ランタンがなくなるため、所望の効果が得られなくなる。従って一般式InLa(2−x)Zn3+yにおいて、xは1以上2未満としている。
【0025】
なお前述の一般式において、酸化亜鉛の組成比を決める変数yについて、下限を1、上限を6としている。これは本実施の形態の結晶構造のように、酸化インジウム層、酸化ランタン層及び酸化亜鉛層が層状をなす結晶構造を保つことのできる組成比として、導出されたものである。例えば、変数yが1より小さければ、インジウム及びランタンに比べて亜鉛が少なくなるため、結晶構造を保ちにくくなる。また、変数yが6以上であれば、インジウム及びランタンに比べて亜鉛が多くなるため、酸化亜鉛が単体で析出しやすくなる。従って一般式InLa(2−x)Zn3+yにおいて、yは1以上6未満としている。
【0026】
なお前述の一般式において、本実施の形態では、酸化物半導体膜を構成する元素の組み合わせとして、インジウム、ランタン、亜鉛、酸素を示しているが、インジウムを他の元素に置きかえることも可能である。その場合、前述の一般式をMLa(2−x)Zn3+yと表すことができる。なお前述の一般式において、Mには3価で、ランタンよりイオン半径の小さい元素が入り、一例としては、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、セリウム、ネオジム、プロメチウム、ガドリウム、ユーロピウム、ルテチウム等を用いればよい。
【0027】
図1(A)は、横方向をa軸、奥行き方向をb軸、縦方向をc軸とした場合の、インジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する単位格子のモデル図である。図1(A)に示すように結晶構造の単位格子は、層状の結晶構造をとることができる。該結晶構造の基本骨格は、IGZOの結晶構造と同じである。
【0028】
図1(A)に示す単位格子のモデル図では、酸化インジウム層(In−O層)、酸化ランタン層(La−O層)及び酸化亜鉛層(Zn−O層)が層状に配列した結晶構造を有する。該結晶構造は、第一原理計算により導出された、インジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を最適化したものである。
【0029】
なお図1(A)に示す単位格子のモデル図の結晶構造は、言い換えれば、酸化ランタン層の間に、酸化インジウム層及び酸化亜鉛層が挿入された構造ともいえる。一方、IGZOの結晶構造であるホモロガス相の結晶構造は、酸化インジウム層の間に、酸化ガリウム層及び酸化亜鉛層が挿入された構造である。
【0030】
図1(B)では、図1(A)に示す単位格子のモデル図を、c軸方向から観察した場合の単位格子のモデル図について示したものである。図1(B)に示すように、c軸方向において、該結晶構造のモデル図のインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素といった各原子が配列していることがわかる。
【0031】
なお本実施の形態の構成は、図1(B)に示すように、単位格子のab面の垂直方向にあるc軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している構成でもよいし、c軸がab面に対して傾きを有する構成でもよい。c軸がab面に対して傾きを有する場合、ab面に対するc軸の傾きは、85°以上95°以下の範囲が好適である。
【0032】
次いで図2(A)、(B)では、図1(A)で示したインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する単位格子のモデル図におけるランタン原子及びインジウム原子に着目した結晶構造内のモデル図を示す。
【0033】
図2(A)は、図1(A)で示した単位格子のモデル図中のインジウム原子及びインジウム原子周辺の酸素原子に着目して、抜き出して示した結晶構造内のモデル図である。また図2(B)は、図1(A)で示した単位格子のモデル図中のランタン原子及びランタン原子周辺の酸素原子に着目して、抜き出して示した結晶構造内のモデル図である。
【0034】
図2(A)に示すインジウム原子に着目した結晶構造内のモデル図では、インジウム原子に酸素原子が5配位した構造となっている。また図2(B)に示すランタン原子に着目した結晶構造内のモデル図では、ランタン原子に酸素原子が6配位した構造となっている。なお、特に図示しないが亜鉛原子には、酸素原子が4配位した構造となっている。
【0035】
すなわち、図1(A)に示す単位格子のモデル図の結晶構造は、酸素原子が6配位した酸化ランタン層の間に、酸素原子が5配位した酸化インジウム層及び酸素原子が4配位した酸化亜鉛層を有する構造である。一方、IGZOの結晶構造であるホモロガス相の結晶構造は、酸素原子が6配位した酸化インジウム層の間に、酸素原子が5配位した酸化ガリウム層及び酸素原子が4配位した酸化亜鉛層を有する構造である。
【0036】
図2(A)に示す5配位の金属−酸素間の結合距離は、酸素原子に隣接する原子の種類によるものの、0209nm、0.213nm、0.224nmと見積もることができる。また図2(B)に示す6配位の金属―酸素間の結合距離は、酸素原子に隣接する原子の種類によるものの、0242nm、0.253nmと見積もることができる。すなわち、6配位の金属−酸素間の結合距離は、5配位の金属−酸素間の結合距離よりも大きくなる。これは、金属原子への酸素原子の配位数の増加によって、金属−酸素間の結合が弱まるためである。
【0037】
本実施の形態の構成のように、配位数の異なる金属原子が結晶構造中にある場合、イオン半径の大きい金属を配位数の大きい位置となるようにすることで、結晶構造の結合エネルギーをより増加させることができる。
【0038】
本実施の形態における金属原子のインジウム原子及びランタン原子に着目すると、ランタン原子は、インジウム原子よりイオン半径が大きい。従って、図1(A)、図2(A)及び図2(B)に示すように、ランタン原子に酸素原子が6配位した構造とし、インジウム原子に酸素原子が5配位した構造とすることで、結晶構造の結合エネルギーを増加させることができる。
【0039】
一方で、IGZOの結晶構造であるホモロガス相の結晶構造は、6配位の金属原子であるインジウム原子、5配位の金属原子であるガリウム原子に着目すると、インジウム原子はランタン原子より、またガリウム原子はインジウム原子よりイオン半径が小さい。従って、図1(A)、図2(A)及び図2(B)に示すように、ランタン原子に酸素原子が6配位した構造とし、インジウム原子に酸素原子が5配位した構造とすることで、IGZOの結晶構造であるホモロガス相の結晶構造よりも、結晶構造の結合エネルギーを増加させることができる。
【0040】
またランタン原子は電気陰性度がインジウム原子に比べて小さく、結合する酸素との間で電気陰性度の絶対値を大きくすることができる。従ってランタン原子に対して酸素原子を6配位とする構造とすることで、IGZOの結晶構造中の6配位のインジウム原子よりも、クーロン力による金属−酸素間の結合を強くすることができる。またインジウム原子は電気陰性度がガリウム原子に比べて小さく、結合する酸素との間で電気陰性度の絶対値を大きくすることができる。従ってインジウム原子に対して酸素原子を5配位とする構造とすることで、IGZOの結晶構造中の5配位のガリウム原子よりも、クーロン力による金属−酸素間の結合を強くすることができる。金属−酸素間の結合を強くし、酸素の脱離による電荷等のキャリアの生成が抑制することで、本実施の形態で示す酸化物半導体膜を具備するトランジスタ等の半導体装置は、オフ状態でのリーク電流、すなわちオフ電流を低減することができる。
【0041】
なお図1(A)に示す結晶構造の単位格子についてのモデル図において、構造を密度汎関数理論に基づく平面波―擬ポテンシャル法を用いた第一原理計算により結晶構造を最適化して、状態密度を算出して得られるバンドギャップと、IGZOの結晶構造で同様の手法を用いて状態密度を算出して得られるバンドギャップとを比較すると、図1(A)に示す結晶構造の単位格子についてのモデル図より求められるバンドギャップは、IGZOの結晶構造より求められるバンドギャップよりも大きく見積もることができる。
【0042】
なお図1(A)で示すインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造は、図3に示すように単位格子301による繰り返しが酸化物半導体膜全体にわたって広がり、酸化物半導体膜全体が結晶構造となるものであってもよい。また、酸化物半導体膜の一部が非晶質化した領域となり、結晶構造を有する領域との混合領域を形成する構造であってもよい。
【0043】
なお図1乃至図3では、一般式InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)で結晶構造の組成を表すと、x=1、y=1における結晶構造を一例として示したが、他の組成比であってもよい。例えば、x=1.5、y=1とした場合の結晶構造の単位格子を、図1(A)、(B)と同様にして、図4(A)、(B)に示す。この場合、インジウム:ランタン:亜鉛の組成比が3:1:2[原子百分率]となり、一般式In1.5La0.5ZnOで表すことができる。
【0044】
なお図4(A)、(B)に示す結晶構造の単位格子についてのモデル図は、密度汎関数理論に基づく平面波―擬ポテンシャル法を用いた第一原理計算により構造が最適化されたものである。図4(A)、(B)に示すように結晶構造の単位格子は、六方晶の層状の結晶構造をとることができる。
【0045】
また図4(B)では、図4(A)に示す単位格子のモデル図を、c軸方向から観察した場合の単位格子のモデル図について示したものである。図4(B)に示すように、c軸方向において、該結晶構造のモデル図のインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素といった各原子が配列していることがわかる。なお図1(B)と同様に、c軸が傾きを有する構成であってもよい。
【0046】
図4(A)に示す単位格子のモデル図においては、c軸に垂直な方向から見て層状に形成される酸化インジウム層、酸化ランタン層及び酸化亜鉛層が、混在して層状に形成されることとなる。該結晶構造は、第一原理計算により導出された、インジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を最適化したものである。
【0047】
図4(A)に示す単位格子のモデル図では、酸化ランタンと酸化インジウムとが混在した層(LaO−InO層)、酸化インジウムと酸化亜鉛とが混在した層(InO−ZnO層)とが積層した結晶構造となる。酸化ランタンと酸化インジウムとが混在した層(LaO−InO層)において、金属原子は酸素原子を6配位とする構造となる。
【0048】
従って、図4(A)に示す結晶構造を有する酸化物半導体膜においても、図1(A)と同様に、イオン半径の大きい金属原子であるランタン原子を、酸素原子の配位数の大きい位置となるようにすることで、結晶構造の結合エネルギーを増加させることができる。
【0049】
本実施の形態における金属原子のインジウム原子及びランタン原子に着目すると、ランタン原子は、インジウム原子よりイオン半径が大きい。従って、図4(A)に示すように、ランタン原子及びインジウム原子に酸素原子が6配位した構造とし、インジウム原子に酸素原子が5配位した構造とすることで、図1(A)と同様に、結晶構造の結合エネルギーを増加させることができる。
【0050】
なお図4(A)で示すインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造は、図5に示すように単位格子501による繰り返しが酸化物半導体膜全体にわたって広がり、酸化物半導体膜全体が結晶構造となるものであってもよい。また、酸化物半導体膜の一部が非晶質化した領域となり、結晶構造を有する領域との混合領域を形成する構造であってもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態の構成では、ランタンを含む結晶構造の酸化物半導体膜とし、ランタンを酸素が6配位した位置とすることで、IGZOよりも結晶構造の結合エネルギー及びバンドギャップを大きくした酸化物半導体膜とすることができる。
【0052】
本実施の形態は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0053】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一態様を図6乃至図9を用いて説明する。
【0054】
図6(A)及び図6(B)に半導体装置の例としてトランジスタ420の平面図及び断面図を示す。図6(A)は、トランジスタ420の平面図であり、図6(B)は、図6(A)のX1−Y1における断面図である。なお、図6(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ420の構成要素の一部(例えば、絶縁膜407)を省略して図示している。
【0055】
図6(A)及び図6(B)に示すトランジスタ420は、絶縁表面を有する基板400上に、下地絶縁膜436と、ソース電極405a及びドレイン電極405bと、チャネル長方向の一方の側面においてソース電極と接し、チャネル長方向の他方の側面においてドレイン電極と接する酸化物半導体膜403と、酸化物半導体膜403、ソース電極405a及びドレイン電極405bの上面と接するゲート絶縁膜402と、ゲート絶縁膜402を介して酸化物半導体膜403上に設けられたゲート電極401と、ゲート電極401のチャネル長方向の側面の一方と接する側壁412aと、ゲート電極401のチャネル長方向の側面の他方と接する側壁412bと、を含んで構成される。
【0056】
トランジスタ420において、側壁412aの少なくとも一部は、ゲート絶縁膜402を介してソース電極405a上に設けられている。また、側壁412bの少なくとも一部は、ゲート絶縁膜402を介してドレイン電極405b上に設けられている。側壁412a及び側壁412bは、導電性材料を含んでいる。よって、側壁412a及び側壁412bは、ゲート電極401の一部として機能することが可能であるため、ゲート絶縁膜402を介してソース電極405a又はドレイン電極405bと重畳する領域を、実質的にLov領域とすることができる。
【0057】
また、図6に示すトランジスタ420は、側壁412a、側壁412b及びゲート電極401上に設けられた絶縁膜407と、絶縁膜407上に設けられた配線層435a及び配線層435bを構成要素に含めてもよい。配線層435aは、絶縁膜407及びゲート絶縁膜402に設けられた開口を介して、ソース電極405aと電気的に接続し、配線層435bは、絶縁膜407及びゲート絶縁膜402に設けられた開口を介してドレイン電極405bと電気的に接続している。
【0058】
また、トランジスタ420において導電性材料を含む側壁を設けない場合、Lov領域の形成のためには線幅の細い酸化物半導体膜と線幅の細いゲート電極との精密なアライメントが要求され、トランジスタの微細化に伴ってその要求精度はより高くなる。しかしながら、本実施の形態で示すトランジスタ420は、ゲート電極401のチャネル長方向の側面に、導電性材料を含む側壁412a及び側壁412bを有するため、該側壁412a及び側壁412bと、ソース電極405a又はドレイン電極405bとが重畳する領域も実質的にLov領域として機能することが可能である。したがって、ゲート電極401を形成する際のアライメントの自由度を向上させることができ、歩留まりよく、オン電流の低下を抑制したトランジスタ420を提供することが可能となる。
【0059】
また、酸化物半導体膜403は、実施の形態1に示した一般式InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)で表すことにできる、インジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体膜である。該酸化物半導体膜を具備することで、バンドギャップが大きいことによりIGZOより絶縁破壊耐圧に優れ、且つ光を照射した際の劣化が低減された半導体装置とすることができる。また、結晶構造の結合エネルギーを大きくすることにより、長期間の使用に際しても、しきい値電圧等の電気的特性が変動しにくく、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0060】
また、図7(A)及び図7(B)に、図6(A)及び図6(B)に示すトランジスタ420とは異なる構成のトランジスタ422の平面図及び断面図を示す。図7(A)は、トランジスタ422の平面図であり、図7(B)は、図7(A)のX2−Y2における断面図である。なお、図7(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ422の構成要素の一部(例えば、絶縁膜407)を省略して図示している。
【0061】
図7(A)及び図7(B)に示すトランジスタ422と、図6(A)及び図6(B)に示すトランジスタ420との相違点は、酸化物半導体膜403の側面の形状である。図4(A)及び図4(B)に示すトランジスタ422においては、酸化物半導体膜403は、ソース電極405a又はドレイン電極405bと接する側面において、テーパ形状を有している。酸化物半導体膜403の側面をテーパ形状とすることで、ソース電極405a及びドレイン電極405bとなる導電膜を被覆性よく形成することができる。
【0062】
以下、図8及び図9を用いて、本実施の形態のトランジスタの作製工程の例について説明する。なお、以下では、トランジスタ422の作製工程を例示する。
【0063】
まず、絶縁表面を有する基板400上に、下地絶縁膜436を形成する。
【0064】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理工程に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板、プラスチック基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0065】
下地絶縁膜436は、酸化シリコン膜、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を含む膜から選ばれた、単層又は積層構造とすることができる。但し、下地絶縁膜436は、酸化物絶縁膜を含む単層又は積層構造として、該酸化物絶縁膜が後に形成される酸化物半導体膜403と接する構造とするのが好ましい。なお、下地絶縁膜436は、必ずしも設けなくともよい。
【0066】
下地絶縁膜436は化学量論的組成比を超える酸素を含む領域(以下、酸素過剰領域とも表記する)を有すると、下地絶縁膜436に含まれる過剰な酸素によって、後に形成される酸化物半導体膜403の酸素欠損を補填することが可能であるため好ましい。下地絶縁膜436が積層構造の場合は、少なくとも酸化物半導体膜403と接する層において酸素過剰領域を有するのが好ましい。下地絶縁膜436に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて下地絶縁膜436を成膜すればよい。又は、成膜後の下地絶縁膜436に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオンのいずれかを含む)を注入して、酸素過剰領域を形成しても良い。酸素の注入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0067】
次いで、下地絶縁膜436上に酸化物半導体膜413を成膜する(図8(A)参照)。酸化物半導体膜413の膜厚は、例えば、3nm乃至30nm、好ましくは5nm乃至20nmとする。酸化物半導体膜413は、一般式InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)で表すことにできる、インジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体の組成比のスパッタリングターゲットを用いて成膜する。成膜時の基板温度は室温以上450℃以下とする。
【0068】
酸化物半導体膜413の成膜方法は、スパッタリング法を用いる。また、酸化物半導体膜413は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタリング装置、所謂CPスパッタリング装置(Columner Plasma Sputtering system)を用いて成膜してもよい。
【0069】
酸化物半導体膜413を形成する際、できる限り酸化物半導体膜413に含まれる水素濃度を低減させることが好ましい。水素濃度を低減させるには、例えば、スパッタリング法を用いて成膜を行う場合には、スパッタリング装置の処理室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、及び希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。
【0070】
また、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入して成膜を行うことで、成膜された酸化物半導体膜413の水素濃度を低減させることができる。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素分子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等の排気能力が高いため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜413に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0071】
また、基板400を高温に保持した状態で酸化物半導体膜413を形成することも、酸化物半導体膜413中に含まれうる不純物濃度を低減するのに有効である。基板400を加熱する温度としては、150℃以上450℃以下とすればよい。
【0072】
酸化物半導体膜413に用いる酸化物半導体としては、実施の形態1で示した、インジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体膜を用いる。そのため、バンドギャップが大きいことによりIGZOより絶縁破壊耐圧に優れ、且つ光を照射した際の劣化が低減された半導体装置とすることができる。また、結晶構造の結合エネルギーを大きくすることにより、長期間の使用に際しても、しきい値電圧等の電気的特性が変動しにくく、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0073】
また、酸化物半導体膜413を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0074】
酸化物半導体膜413の成膜前に、酸化物半導体膜413の成膜表面に平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨法)、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。
【0075】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行うことができる。逆スパッタリングとは、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。逆スパッタリングを行うと、酸化物半導体膜413の成膜表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することができる。
【0076】
平坦化処理として、研磨処理、ドライエッチング処理、プラズマ処理は複数回行ってもよく、それらを組み合わせて行ってもよい。また、組み合わせて行う場合、工程順も特に限定されず、酸化物半導体膜413の成膜表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0077】
また、酸化物半導体膜413に、当該酸化物半導体膜413に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化又は脱水素化)するための熱処理を行うのが好ましい。熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、又は基板の歪み点未満とする。熱処理は減圧下又は窒素雰囲気下などで行うことができる。
【0078】
この熱処理によって、n型不純物である水素を酸化物半導体から除去することができる。例えば、脱水化又は脱水素化処理後の酸化物半導体膜413に含まれる水素濃度を、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下とすることができる。
【0079】
なお、脱水化又は脱水素化のための熱処理は、酸化物半導体膜413の成膜後であればトランジスタ422の作製工程においてどのタイミングで行ってもよい。但し、ゲート絶縁膜402又は絶縁膜407として酸化アルミニウム膜を用いる場合には、当該酸化アルミニウム膜を形成する前に行うのが好ましい。また、脱水化又は脱水素化のための熱処理は、複数回行ってもよく、他の加熱処理と兼ねてもよい。
【0080】
なお、下地絶縁膜436として酸素を含む下地絶縁膜436を設ける場合、脱水化又は脱水素化のための熱処理を酸化物半導体膜413の島状への加工前に行うと、下地絶縁膜436に含まれる酸素が熱処理によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0081】
熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0082】
また、熱処理で酸化物半導体膜413を加熱した後、加熱温度を維持、又はその加熱温度から徐冷しながら同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の二窒化酸素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガス又は二窒化酸素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導入する酸素ガス又は二窒化酸素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガス又は二窒化酸素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又は二窒化酸素ガスの作用により、脱水化又は脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体膜413を高純度化及び電気的にi型(真性)化することができる。
【0083】
また、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して膜中に酸素を供給してもよい。
【0084】
脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜に、酸素を導入して膜中に酸素を供給することによって、酸化物半導体膜を高純度化、及び電気的にi型(真性)化することができる。高純度化し、電気的にi型(真性)化した酸化物半導体膜を有するトランジスタは、電気特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0085】
酸素の導入工程は、酸化物半導体膜に酸素導入する場合、酸化物半導体膜に直接導入してもよいし、後に形成されるゲート絶縁膜402や絶縁膜407などの他の膜を通過して酸化物半導体膜403へ導入してもよい。酸素を他の膜を通過して導入する場合は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いればよいが、露出された酸化物半導体膜413へ直接酸素を導入する場合は、上記の方法に加えてプラズマ処理なども用いることができる。
【0086】
酸化物半導体膜への酸素の導入は、脱水化又は脱水素化処理を行った後であればよく、特に限定されない。また、上記脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜への酸素の導入は複数回行ってもよい。
【0087】
次いで、酸化物半導体膜413をフォトリソグラフィ工程により加工して、島状の酸化物半導体膜403を形成する。ここで、島状の酸化物半導体膜403への加工に用いるマスクは、フォトリソグラフィ法などによって形成されたマスクに、スリミング処理を行って、より微細なパターンを有するマスクとするのが好ましい。
【0088】
スリミング処理としては、例えば、ラジカル状態の酸素(酸素ラジカル)などを用いるアッシング処理を適用することができる。ただし、スリミング処理はフォトリソグラフィ法などによって形成されたマスクをより微細なパターンに加工できる処理であれば、アッシング処理に限定する必要はない。また、スリミング処理によって形成されるマスクによってトランジスタのチャネル長(L)が決定されることになるため、当該スリミング処理としては制御性の良好な処理を適用することができる。
【0089】
スリミング処理の結果、フォトリソグラフィ法などによって形成されたマスクを、露光装置の解像限界以下、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下の線幅まで微細化することが可能である。例えば、線幅は、30nm以上2000nm以下、好ましくは50nm以上350nm以下とすることができる。これにより、トランジスタのさらなる微細化を達成することができる。
【0090】
次いで、島状の酸化物半導体膜403上に、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜415を成膜する(図8(B)参照)。
【0091】
導電膜415は後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方又は双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜又はそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。又は、導電性の金属酸化物を用いて導電膜415を形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In−SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In−ZnO)又はこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0092】
次に導電膜415に研磨(切削、研削)処理を行い、酸化物半導体膜403が露出するように導電膜415の一部を除去する。該研磨処理によって、酸化物半導体膜403と重畳する領域の導電膜415が除去され、該領域に開口を有する導電膜415aが形成される(図8(C)参照)。研磨(切削、研削)方法としては化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理を好適に用いることができる。本実施の形態では、CMP処理によって酸化物半導体膜403と重畳する領域の導電膜415を除去する。
【0093】
なお、CMP処理は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けてCMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うのが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによって、ソース電極405a、ドレイン電極405b、酸化物半導体膜403の表面の平坦性をより向上させることができる。
【0094】
なお、本実施の形態では、酸化物半導体膜403と重畳する領域の導電膜405の除去にCMP処理を用いたが、他の研磨(研削、切削)処理を用いてもよい。又は、CMP処理等の研磨処理と、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)処理や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。例えば、CMP処理後、ドライエッチング処理やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)を行い、処理表面の平坦性向上を図ってもよい。研磨処理に、エッチング処理、プラズマ処理などを組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、導電膜415の材料、膜厚、及び表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0095】
なお、本実施の形態においては、導電膜415aの上端部は、酸化物半導体膜403の上端部と概略一致している。但し、導電膜415a(又は、導電膜415aを加工して形成されるソース電極405a及びドレイン電極405b)の形状は導電膜415を除去する研磨処理の条件によって異なる。例えば、酸化物半導体膜403の表面より膜厚方向に後退した形状となる場合がある。
【0096】
次いで、導電膜415aをフォトリソグラフィ工程により加工して、ソース電極405a及びドレイン電極405b(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成する(図8(D)参照)。
【0097】
なお、本実施の形態では、導電膜415を成膜し、研磨処理によって酸化物半導体膜403と重畳する領域の導電膜415を除去した後に、選択的にエッチング処理してソース電極405a及びドレイン電極405bへと加工する方法を示したが、本発明の実施の形態はこれに限られない。成膜後の導電膜415を選択的にエッチング処理して加工したのち、研磨処理によって酸化物半導体膜403と重畳する領域の導電膜415を除去することで、ソース電極405a及びドレイン電極405bを形成してもよい。但し、研磨処理に先立ってエッチング処理を行う場合には、エッチング処理によって酸化物半導体膜403と重畳する領域の導電膜415は除去しないものとする。
【0098】
本実施の形態で示すトランジスタの作製方法では、ソース電極405a及びドレイン電極405bの形成する際に、酸化物半導体膜403と重畳する領域の導電膜415を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング処理を用いないため、ソース電極405a及びドレイン電極405bのチャネル長方向の幅が微細化されている場合でも精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきを少ない微細な構造を有するトランジスタ420を歩留まりよく作製することができる。
【0099】
また、酸化物半導体膜403と重畳する領域の導電膜415を除去することで、酸化物半導体膜403と、ソース電極405a又はドレイン電極405bとが、酸化物半導体膜403のチャネル長方向の側面において接する構成とすることが可能となる。酸化物半導体膜403は膜厚が3nm乃至30nm、好ましくは5nm乃至20nmと小さいため、その側面においてソース電極405a又はドレイン電極405bと接することで、ソース電極405a又はドレイン電極405bとの接触面積を低減することができ、接触界面におけるコンタクト抵抗を増大させることができる。したがって、トランジスタ422のチャネル長(L)を短くしても、ソース電極405aとドレイン電極405bとの電界を緩和して、しきい値電圧の変動などの短チャネル効果を抑制することができる。
【0100】
次いで、酸化物半導体膜403、ソース電極405a及びドレイン電極405b上にゲート絶縁膜402を形成する。
【0101】
ゲート絶縁膜402は、1nm以上20nm以下の膜厚で、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いて形成することができる。また、ゲート絶縁膜402は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置、所謂CPスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0102】
なお、ゲート絶縁膜402が厚いほど短チャネル効果が顕著となり、しきい値電圧がマイナス側へシフトしやすい傾向となる。しかしながら、本実施の形態のトランジスタの作製方法においては、ソース電極405a、ドレイン電極405b及び酸化物半導体膜403の上面が研磨処理によって平坦化されているため、膜厚の薄いゲート絶縁膜402を被覆性よく形成することができる。
【0103】
ゲート絶縁膜402の材料としては、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、又は窒化酸化シリコン等を用いることができる。ゲート絶縁膜402は、酸化物半導体膜403と接する部分において酸素を含むことが好ましい。特に、ゲート絶縁膜402は、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在することが好ましく、例えば、ゲート絶縁膜402として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とするのが好ましい。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402として、SiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜を用いる。この酸化シリコン膜をゲート絶縁膜402として用いることで、酸化物半導体膜403に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。さらに、ゲート絶縁膜402は、作製するトランジスタのサイズやゲート絶縁膜402の段差被覆性を考慮して形成することが好ましい。
【0104】
また、ゲート絶縁膜402の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiO(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁膜402は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0105】
次いで、ゲート絶縁膜402を介して島状の酸化物半導体膜403上にゲート電極401を形成する(図9(A)参照)。ゲート電極401は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等により形成することができる。また、ゲート電極401の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、ゲート電極401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極401は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0106】
また、ゲート電極401の材料は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。また、上記導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0107】
また、ゲート絶縁膜402と接するゲート電極401の一層として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIGZO膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いることができる。これらの膜は5eV(電子ボルト)、好ましくは5.5eV(電子ボルト)以上の仕事関数を有し、ゲート電極として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。
【0108】
なお、ゲート電極401は、ゲート絶縁膜402上に設けられた導電膜(図示しない)を、マスクを用いて加工することによって形成することができる。ここで、加工に用いるマスクは、フォトリソグラフィ法などによって形成されたマスクに、スリミング処理を行って、より微細なパターンを有するマスクとするのが好ましい。
【0109】
次にゲート電極401及びゲート絶縁膜402上に導電性材料を含む膜を成膜し、当該導電性材料を含む膜をエッチングして側壁412a及び側壁412bを形成する(図9(B)参照)。
【0110】
側壁412a及び側壁412bは、導電性を有していればよく、例えばタングステン、又はチタン等の金属膜、又は、リン、ボロン等の不純物元素を含むシリコン膜等を加工して形成することができる。または、ゲート電極401及びゲート絶縁膜402上に多結晶シリコン膜を成膜し、エッチングによってゲート電極401に接する側壁を形成した後、該側壁にリン、ボロン等の不純物元素をドーピングによって導入した後、活性化のための熱処理を行って導電性を有する側壁412a及び側壁412bとしてもよい。
【0111】
次いで、ゲート絶縁膜402、ゲート電極401、側壁412a及び側壁412b上に絶縁膜407を形成する。
【0112】
絶縁膜407は、プラズマCVD法、スパッタリング法、または蒸着法等により成膜することができる。絶縁膜407は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜などを用いることができる。
【0113】
また、絶縁膜407として、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ランタン膜、酸化バリウム膜)、または金属窒化物膜(例えば、窒化アルミニウム膜)も用いることができる。
【0114】
絶縁膜407は、単層でも積層でもよく、例えば酸化シリコン膜及び酸化アルミニウム膜の積層を用いることができる。酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高く、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜403への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜403からの放出を防止する保護膜として機能するため好ましい。
【0115】
絶縁膜407は、スパッタリング法など、絶縁膜407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することが好ましい。
【0116】
酸化物半導体膜403の成膜時と同様に、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した絶縁膜407に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0117】
本実施の形態では、絶縁膜407として、ゲート電極401に接する側から酸化アルミニウム膜と酸化シリコン膜の積層構造を用いるものとする。なお、酸化アルミニウム膜を高密度(膜密度3.2g/cm以上、好ましくは3.6g/cm以上)とすることによって、トランジスタ420に安定な電気特性を付与することができる。膜密度はラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、X線反射率測定法(XRR:X−Ray Reflection)によって測定することができる。
【0118】
次いで、絶縁膜407及びゲート絶縁膜402に、ソース電極405a又はドレイン電極405bに達する開口を形成し、開口に配線層435a及び配線層435bを形成する(図6(C)参照)。配線層435a及び配線層435bを用いて他のトランジスタや素子と接続させ、様々な回路を形成することができる。
【0119】
配線層435a及び配線層435bはゲート電極401、ソース電極405a、又はドレイン電極405bと同様の材料及び方法を用いて形成することができ、例えば、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下側又は上側の一方または双方にチタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、配線層435a、配線層435bに用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(ITO)、酸化インジウム酸化亜鉛(In−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0120】
例えば、配線層435a及び配線層435bとして、モリブデン膜の単層、窒化タンタル膜と銅膜との積層、又は窒化タンタル膜とタングステン膜との積層などを用いることができる。
【0121】
以上の工程によって、本実施の形態のトランジスタ422が形成される。
【0122】
なお、島状の酸化物半導体膜403のチャネル長方向の長さを、ゲート電極401のチャネル長方向の長さよりも長くすることで、ゲート電極401を形成するためにアライメントの自由度をより向上させることができる。この場合、トランジスタのチャネル長を縮小するために、酸化物半導体膜403に不純物領域を設けてもよい。
【0123】
例えば、図10(A)及び図10(B)に示すトランジスタ424、及び図11(A)及び図11(B)に示すトランジスタ426は、ゲート電極401形成後、当該ゲート電極401をマスクとして酸化物半導体膜403へ不純物を導入して、自己整合的に不純物領域403a及び不純物領域403bを形成した例である。
【0124】
トランジスタ424は、トランジスタ420と同様の構成を有し、トランジスタ424に含まれる酸化物半導体膜403が、ドーパントを含む一対の不純物領域(不純物領域403a及び不純物領域403b)と、一対の不純物領域に挟まれたチャネル形成領域403cと、を有する点で、トランジスタ420と相違する。また、図11(A)及び図11(B)に示すトランジスタ426は、トランジスタ422と同様の構成を有し、トランジスタ426に含まれる酸化物半導体膜403が、ドーパントを含む一対の不純物領域(不純物領域403a及び不純物領域403b)と、一対の不純物領域に挟まれたチャネル形成領域403cと、を有する点で、トランジスタ422と相違する。なお、図10(A)は、トランジスタ424の平面図であり、図10(B)は、図10(A)のX3−Y3における断面図である。また、図11(A)は、トランジスタ426の平面図であり、図11(B)は、図11(A)のX4−Y4における断面図である。
【0125】
ドーパントは、酸化物半導体膜403の導電率を変化させる不純物である。ドーパントの導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0126】
チャネル長方向にチャネル形成領域403cを挟んで一対の不純物領域を含む酸化物半導体膜を有することにより、トランジスタ424、426はオン特性(例えば、オン電流及び電界効果移動度)が高く、高速動作、高速応答が可能なトランジスタとすることができる。
【0127】
本実施の形態は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0128】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本明細書に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の一例を、図面を用いて説明する。
【0129】
図12は、半導体装置の構成の一例である。図12(A)に、半導体装置の断面図を、図12(B)に半導体装置の平面図を、図12(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。ここで、図12(A)は、図12(B)のC1−C2、及びD1−D2における断面に相当する。
【0130】
図12(A)及び図12(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料、本実施の形態では、本実施の形態1に示すインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタ162を有するものである。トランジスタ162としては、実施の形態2で示すトランジスタ420の構造を適用する例である。
【0131】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0132】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、情報を保持するために酸化物半導体を用いた実施の形態2に示すようなトランジスタをトランジスタ162として用いる他、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0133】
図12(A)におけるトランジスタ160は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板100に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上に設けられたゲート電極110と、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
【0134】
基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁膜106が設けられており、トランジスタ160を覆うように絶縁膜128、及び絶縁膜130が設けられている。なお、トランジスタ160において、ゲート電極110の側面に側壁絶縁膜(サイドウォール絶縁膜)を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120としてもよい。
【0135】
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ160は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。本実施の形態では、トランジスタ160を覆うように絶縁膜を2層形成する。但し絶縁膜は、単層としてもよいし、3層以上の積層としてもよい。トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、トランジスタ160上に形成された絶縁膜にCMP処理を施して、平坦化した絶縁膜128、絶縁膜130を形成し、同時にゲート電極110の上面を露出させる。
【0136】
絶縁膜128、絶縁膜130は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。絶縁膜128、絶縁膜130は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0137】
また、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁膜128、絶縁膜130を形成してもよい。
【0138】
なお、本実施の形態において、絶縁膜として窒化シリコン膜、絶縁膜130として酸化シリコン膜を用いる。
【0139】
絶縁膜130表面において、酸化物半導体膜144形成領域に、平坦化処理を行うことが好ましい。本実施の形態では、研磨処理(例えばCMP処理)により十分に平坦化した(好ましくは絶縁膜130表面の平均面粗さは0.15nm以下)絶縁膜130上に酸化物半導体膜144を形成する。
【0140】
図12(A)に示すトランジスタ162は、チャネル形成領域を有する酸化物半導体膜にインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタである。ここで、トランジスタ162に含まれる酸化物半導体膜144は、高純度化されたものであることが望ましい。高純度化された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ特性のトランジスタ162を得ることができる。
【0141】
トランジスタ162は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0142】
トランジスタ162はチャネル長方向の側面において電極層142aまたは電極層142bと接する酸化物半導体膜144を含む。よって、酸化物半導体膜144と、電極層142a又は電極層142bとが接する領域の抵抗を高めることができるため、ソースとドレイン間の電界を緩和することができる。したがって、トランジスタサイズの縮小に伴う短チャネル効果を抑制することができる。
【0143】
また、トランジスタ162は、ゲート電極148のチャネル長方向の側面に導電性材料を含む側壁137a、137bを有することで、当該導電性材料を含む側壁137a、137bがゲート絶縁膜146を介して電極層142a又は電極層142bと重畳するため、実質的にLov領域を有するトランジスタとすることができ、トランジスタ162のオン電流の低下を抑制することが可能となる。
【0144】
トランジスタ162上には、層間絶縁膜135、絶縁膜150が単層または積層で設けられている。本実施の形態では、絶縁膜150として、酸化アルミニウム膜を用いる。酸化アルミニウム膜を高密度(膜密度3.2g/cm以上、好ましくは3.6g/cm以上)とすることによって、トランジスタ162に安定な電気特性を付与することができる。
【0145】
また、ゲート絶縁膜146を介して、トランジスタ162の電極層142aと重畳する領域には、導電層153が設けられており、電極層142aと、ゲート絶縁膜146と、導電層153とによって、容量素子164が構成される。すなわち、トランジスタ162の電極層142aは、容量素子164の一方の電極として機能し、導電層153は、容量素子164の他方の電極として機能する。なお、容量が不要の場合には、容量素子164を設けない構成とすることもできる。また、容量素子164は、別途、トランジスタ162の上方に設けてもよい。
【0146】
本実施の形態において、導電層153は、トランジスタ162のゲート電極148と同一の作製工程によって形成することができる。なお、ゲート電極148の側面に側壁137a及び側壁137bを形成する工程において、導電層の側面にも同様に側壁を設けてもよい。
【0147】
絶縁膜150上にはトランジスタ162と、他のトランジスタを接続するための配線156が設けられている。配線156は、絶縁膜150、層間絶縁膜135及びゲート絶縁膜146などに形成された開口に形成された電極層136を介して電極層142bと電気的に接続される。
【0148】
図12(A)及び図12(B)において、トランジスタ160と、トランジスタ162とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ160のソース領域またはドレイン領域と酸化物半導体膜144の一部が重畳するように設けられているのが好ましい。また、トランジスタ162及び容量素子164が、トランジスタ160の少なくとも一部と重畳するように設けられている。例えば、容量素子164の導電層153は、トランジスタ160のゲート電極110と少なくとも一部が重畳して設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0149】
なお、電極層142b及び配線156の電気的接続は、電極層136を設けずに電極層142b及び配線156を直接接触させて行ってもよい。また、間に介する電極層は、複数でもよい。
【0150】
次に、図12(A)及び図12(B)に対応する回路構成の一例を図12(C)に示す。
【0151】
図12(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方は、容量素子164の電極の他方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0152】
図9(C)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0153】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極、および容量素子164に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0154】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ160のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0155】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ160のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位Vとすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ160は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0156】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0157】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域を有する酸化物半導体膜にインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体膜を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0158】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁膜の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0159】
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0160】
本実施の形態は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0161】
(実施の形態4)
本実施の形態においては、実施の形態2に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置について、実施の形態3に示した構成と異なる構成について、図13及び図14を用いて説明を行う。
【0162】
図13(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、図13(B)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、図13(A)に示す半導体装置について説明を行い、続けて図13(B)に示す半導体装置について、以下説明を行う。
【0163】
図13(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ162のソース電極又はドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ162のゲート電極とは電気的に接続され、トランジスタ162のソース電極又はドレイン電極と容量素子254の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0164】
次に、図13(A)に示す半導体装置(メモリセル250)に、情報の書き込みおよび保持を行う場合について説明する。
【0165】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子254の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、容量素子254の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0166】
チャネル形成領域を有する酸化物半導体膜にインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは、容量素子254に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
【0167】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ162がオン状態となると、浮遊状態であるビット線BLと容量素子254とが導通し、ビット線BLと容量素子254の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電位の変化量は、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子254に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0168】
例えば、容量素子254の第1の端子の電位をV、容量素子254の容量をC、ビット線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル250の状態として、容量素子254の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0169】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
【0170】
このように、図13(A)に示す半導体装置は、トランジスタ162のオフ電流が極めて小さいという特徴から、容量素子254に蓄積された電荷は長時間にわたって保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0171】
次に、図13(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0172】
図13(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図13(A)に示したメモリセル250を複数有するメモリセルアレイ251a及び251bを有し、下部に、メモリセルアレイ(メモリセルアレイ251a及び251b)を動作させるために必要な周辺回路253を有する。なお、周辺回路253は、メモリセルアレイ251と電気的に接続されている。
【0173】
図13(B)に示した構成とすることにより、周辺回路253をメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及び251b)の直下に設けることができるため半導体装置の小型化を図ることができる。
【0174】
周辺回路253に設けられるトランジスタは、トランジスタ162とは異なる半導体材料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0175】
なお、図13(B)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251aと、メモリセルアレイ251b)が積層された構成を例示したが、積層するメモリセルの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルを積層する構成としても良い。
【0176】
次に、図13(A)に示したメモリセル250の具体的な構成について図14を用いて説明を行う。
【0177】
図14は、メモリセル250の構成の一例である。図14(A)に、メモリセル250の断面図を、図14(B)にメモリセル250の平面図をそれぞれ示す。ここで、図14(A)は、図14(B)のF1−F2、及びG1−G2における断面に相当する。
【0178】
図14(A)及び図14(B)に示すトランジスタ162は、実施の形態2で示した構成と同一の構成とすることができる。
【0179】
ゲート絶縁膜146を介して、トランジスタ162の電極層142aと重畳する領域には、導電層262が設けられており、電極層142aと、ゲート絶縁膜146と、導電層262とによって、容量素子254が構成される。すなわち、トランジスタ162の電極層142aは、容量素子254の一方の電極として機能し、導電層262は、容量素子254の他方の電極として機能する。
【0180】
トランジスタ162及び容量素子254上には、層間絶縁膜135及び絶縁膜256が単層または積層で設けられている。そして、絶縁膜256上にはメモリセル250と、隣接するメモリセル250を接続するための配線260が設けられている。配線260は、絶縁膜256、層間絶縁膜135及びゲート絶縁膜146などに形成された開口を介してトランジスタ162の電極層142bと電気的に接続されている。但し、配線260と電極層142bとを直接接続してもよい。なお、配線260は、図14(A)の回路図におけるビット線BLに相当する。
【0181】
図14(A)及び図14(B)において、トランジスタ162の電極層142bは、隣接するメモリセルに含まれるトランジスタのソース電極としても機能することができる。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0182】
図14(A)に示す平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0183】
以上のように、多層に形成された複数のメモリセルは、チャネル形成領域を有する酸化物半導体膜にインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタにより形成されている。チャネル形成領域を有する酸化物半導体膜にインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0184】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、チャネル形成領域を有する酸化物半導体膜にインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
【0185】
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0186】
本実施の形態は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0187】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態3、及び実施の形態4で示した半導体装置を携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器に応用した場合の例を図15乃至図18を用いて説明する。
【0188】
携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器においては、画像データの一時記憶などにSRAMまたはDRAMが使用されている。SRAMまたはDRAMが使用される理由としてはフラッシュメモリでは応答が遅く、画像処理では不向きであるためである。一方で、SRAMまたはDRAMを画像データの一時記憶に用いた場合、以下の特徴がある。
【0189】
通常のSRAMは、図15(A)に示すように1つのメモリセルがトランジスタ801〜806の6個のトランジスタで構成されており、それをXデコーダー807、Yデコーダー808にて駆動している。トランジスタ803とトランジスタ805、トランジスタ804とトランジスタ806はインバータを構成し、高速駆動を可能としている。しかし1つのメモリセルが6トランジスタで構成されているため、セル面積が大きいという欠点がある。デザインルールの最小寸法をFとしたときにSRAMのメモリセル面積は通常100〜150Fである。このためSRAMはビットあたりの単価が各種メモリの中で最も高い。
【0190】
それに対して、DRAMはメモリセルが図15(B)に示すようにトランジスタ811、保持容量812によって構成され、それをXデコーダー813、Yデコーダー814にて駆動している。1つのセルが1トランジスタ1容量の構成になっており、面積が小さい。DRAMのメモリセル面積は通常10F以下である。ただし、DRAMは常にリフレッシュが必要であり、書き換えをおこなわない場合でも電力を消費する。
【0191】
しかし、先の実施の形態で説明した半導体装置のメモリセル面積は、10F前後であり、且つ頻繁なリフレッシュは不要である。したがって、メモリセル面積が縮小され、且つ消費電力が低減することができる。
【0192】
図16に携帯機器のブロック図を示す。図16に示す携帯機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェイス(IF)909を有している。一般にメモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成されており、この部分に実施の形態3または実施の形態4で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0193】
図17に、ディスプレイのメモリ回路950に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用した例を示す。図17に示すメモリ回路950は、メモリ952、メモリ953、スイッチ954、スイッチ955およびメモリコントローラ951により構成されている。また、メモリ回路は、画像データ(入力画像データ)からの信号線、メモリ952、及びメモリ953に記憶されたデータ(記憶画像データ)を読み出し、及び制御を行うディスプレイコントローラ956と、ディスプレイコントローラ956からの信号により表示するディスプレイ957が接続されている。
【0194】
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成される(入力画像データA)。入力画像データAは、スイッチ954を介してメモリ952に記憶される。そしてメモリ952に記憶された画像データ(記憶画像データA)は、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介してディスプレイ957に送られ、表示される。
【0195】
入力画像データAに変更が無い場合、記憶画像データAは、通常30〜60Hz程度の周期でメモリ952からスイッチ955を介して、ディスプレイコントローラ956から読み出される。
【0196】
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データAに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像データB)を形成する。入力画像データBはスイッチ954を介してメモリ953に記憶される。この間も定期的にメモリ952からスイッチ955を介して記憶画像データAは読み出されている。メモリ953に新たな画像データ(記憶画像データB)が記憶し終わると、ディスプレイ957の次のフレームより、記憶画像データBは読み出され、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介して、ディスプレイ957に記憶画像データBが送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データがメモリ952に記憶されるまで継続される。
【0197】
このようにメモリ952及びメモリ953は交互に画像データの書き込みと、画像データの読み出しを行うことによって、ディスプレイ957の表示をおこなう。なお、メモリ952及びメモリ953はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割して使用してもよい。実施の形態3または実施の形態4で説明した半導体装置をメモリ952及びメモリ953に採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0198】
図18に電子書籍のブロック図を示す。図18はバッテリー1001、電源回路1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。
【0199】
ここでは、図18のメモリ回路1007に実施の形態3または実施の形態4で説明した半導体装置を使用することができる。メモリ回路1007の役割は書籍の内容を一時的に保持する機能を持つ。機能の例としては、ユーザーがハイライト機能を使用する場合などがある。ユーザーが電子書籍を読んでいるときに、特定の箇所にマーキングをしたい場合がある。このマーキング機能をハイライト機能と言い、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどによって、周囲との違いを示すことである。ユーザーが指定した箇所の情報を記憶し、保持する機能である。この情報を長期に保存する場合にはフラッシュメモリ1004にコピーしても良い。このような場合においても、実施の形態3または実施の形態4で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0200】
以上のように、本実施の形態に示す携帯機器には、実施の形態3または実施の形態4に係る半導体装置が搭載されている。このため、読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力を低減した携帯機器が実現される。
【0201】
本実施の形態は、他の実施の形態及び実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0202】
本実施例では、実施の形態1で説明した、本発明の一形態におけるランタン原子を用いることにより、IGZOの結晶構造の結合エネルギーに比べて結合エネルギーが増加することを第1原理計算により算出した。
【0203】
結合エネルギー(Ebinding)は、結合エネルギーを結晶構造の持つ全結合の解離エネルギーの総和とする場合、以下の式(1)から算出される。
【0204】
binding=ΣE(atom)―E(total) (1)
【0205】
式(1)において、E(atom)は結晶構造中に存在する各原子のエネルギー、E(total)は結晶のエネルギーを表す。すなわち式(1)より、結合エネルギーが大きいほど、その結晶構造は安定である。結晶構造が安定となることで、金属−酸素間の結合を強くし、酸素の脱離を抑制することができる。
【0206】
計算には密度汎関数法のプログラムであるCASTEPを用いた。密度汎関数の方法として平面波基底擬ポテンシャル法を用い、汎関数はGGA―PBEを用いた。カットオフエネルギーは380eVを用いた。k点のグリッド数は9×9×3とした。
【0207】
結合エネルギーの算出に用いる結晶構造は、IGZOの結晶構造(InGaZnO:モデル名、InGaZO)では、対称性R−3(国際番号:148)の単位セル構造を用いた。またインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造において、ランタン原子を酸素原子が5配位の位置とした結晶構造(InLaZnO:モデル名、InLaZO)では、上記IGZOの結晶構造におけるガリウム原子の位置の原子をランタン原子に置き換えたものを用いた。またインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造において、ランタン原子を酸素原子が6配位の位置とした結晶構造(InLaZnO:モデル名、LaInZO)では、IGZOの結晶構造におけるインジウム原子の位置の原子をランタン原子に、ガリウム原子の位置の原子をインジウム原子に置き換えたものを用いた。
【0208】
以下の表1に、それぞれの結合エネルギーEbindingの値を示す。
【0209】
【表1】

【0210】
表1の値から、IGZOの結晶構造におけるガリウム原子をランタン原子に置き換えることで、結合エネルギーを大きくすることができ、結晶構造を安定にできることが分かった。また、ランタン原子を酸素原子が6配位の位置とした結晶構造であるモデル名LaInZOの結晶構造が、ランタン原子を酸素原子が5配位の位置とした結晶構造であるモデル名InLaZOの結晶構造よりも、結合エネルギーが大きく、結晶構造を安定にできることが分かった。
【実施例2】
【0211】
本実施例では、密度汎関数理論に基づく平面波―擬ポテンシャル法を用いた第一原理計算により構造最適化を行い、最適化された結晶構造に対してエネルギー状態密度を計算した。
【0212】
計算プログラムには第一原理計算ソフトCASTEPを用いた。汎関数はGGA−PBEを、擬ポテンシャルはUltrasoftをそれぞれ用いた。カットオフエネルギーは380eV、k点の数は構造最適化では4×4×1、状態密度計算では5×5×3とした。
【0213】
結晶構造の最適化に用いる結晶構造は、IGZOの結晶構造(InGaZnO:モデル名、InGaZO)では、対称性R−3(国際番号:148)の単位格子をa軸方向及びb軸方向にそれぞれ2倍した結晶構造を用いた。またインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造において、ランタン原子を酸素原子が5配位の位置とした結晶構造(InLaZnO:モデル名、InLaZO)では、上記IGZOの結晶構造におけるガリウム原子の位置の原子をランタン原子に置き換えたものを用いた。またインジウム、ランタン、亜鉛及び酸素を有する結晶構造において、ランタン原子を酸素原子が6配位の位置とした結晶構造(InLaZnO:モデル名、LaInZO)では、IGZOの結晶構造におけるインジウム原子の位置の原子をランタン原子に、ガリウム原子の位置の原子をインジウム原子に置き換えたものを用いた。
【0214】
最適化されたいずれの構造もバンドギャップを有しているので、絶縁体または半導体的な状態密度を有することが分かる。そこで、状態密度からバンドギャップを算出した。以下の表2に、それぞれのバンドギャップの値を示す。
【0215】
【表2】

【0216】
なお、密度汎関数法ではバンドギャップが小さく見積もられる傾向があり、実際のIGZO結晶のバンドギャップは3.2eV程度と、表2に示すバンドギャップよりも大きい。
【0217】
表2の値から、IGZOの結晶構造におけるガリウム原子をランタン原子に置き換えることで、バンドギャップを大きくできることが分かった。また、ランタン原子を酸素原子が6配位の位置とした結晶構造であるモデル名LaInZOの結晶構造は、ランタン原子を酸素原子が5配位の位置とした結晶構造であるモデル名InLaZOの結晶構造よりも、バンドギャップを大きくできることが分かった。
【0218】
本実施例は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0219】
301 単位格子
501 単位格子
100 基板
106 素子分離絶縁膜
108 ゲート絶縁膜
110 ゲート電極
116 チャネル形成領域
120 不純物領域
124 金属化合物領域
128 絶縁膜
130 絶縁膜
135 層間絶縁膜
136 電極層
137a 側壁
137b 側壁
142a 電極層
142b 電極層
144 酸化物半導体膜
146 ゲート絶縁膜
148 ゲート電極
150 絶縁膜
153 導電層
156 配線
160 トランジスタ
162 トランジスタ
164 容量素子
250 メモリセル
251 メモリセルアレイ
251a メモリセルアレイ
251b メモリセルアレイ
253 周辺回路
254 容量素子
256 絶縁膜
260 配線
262 導電層
400 基板
401 ゲート電極
402 ゲート絶縁膜
403 酸化物半導体膜
403a 不純物領域
403b 不純物領域
403c チャネル形成領域
405 導電膜
405a ソース電極
405b ドレイン電極
407 絶縁膜
412a 側壁
412b 側壁
413 酸化物半導体膜
415 導電膜
415a 導電膜
420 トランジスタ
422 トランジスタ
424 トランジスタ
426 トランジスタ
435a 配線層
435b 配線層
436 下地絶縁膜
801 トランジスタ
803 トランジスタ
804 トランジスタ
805 トランジスタ
806 トランジスタ
807 Xデコーダー
808 Yデコーダー
811 トランジスタ
812 保持容量
813 Xデコーダー
814 Yデコーダー
901 RF回路
902 アナログベースバンド回路
903 デジタルベースバンド回路
904 バッテリー
905 電源回路
906 アプリケーションプロセッサ
907 CPU
908 DSP
909 インターフェイス
910 フラッシュメモリ
911 ディスプレイコントローラ
912 メモリ回路
913 ディスプレイ
914 表示部
915 ソースドライバ
916 ゲートドライバ
917 音声回路
918 キーボード
919 タッチセンサ
950 メモリ回路
951 メモリコントローラ
952 メモリ
953 メモリ
954 スイッチ
955 スイッチ
956 ディスプレイコントローラ
957 ディスプレイ
1001 バッテリー
1002 電源回路
1003 マイクロプロセッサ
1004 フラッシュメモリ
1005 音声回路
1006 キーボード
1007 メモリ回路
1008 タッチパネル
1009 ディスプレイ
1010 ディスプレイコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)の結晶を含む酸化物半導体膜。
【請求項2】
酸化インジウム層、酸化ランタン層及び酸化亜鉛層が層状に配列した結晶構造を有し、
前記結晶構造の一般式は、InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)である酸化物半導体膜。
【請求項3】
請求項2において、前記酸化ランタン層は、ランタン原子が酸素原子を6配位した構造を有し、前記酸化インジウム層は、インジウム原子が酸素原子を5配位した構造を有する酸化物半導体膜。
【請求項4】
酸化物半導体膜、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極を有し、
前記酸化物半導体膜は、一般式InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)で表される結晶を含む膜である半導体装置。
【請求項5】
酸化物半導体膜、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極を有し、
前記酸化物半導体膜は、酸化インジウム層、酸化ランタン層及び酸化亜鉛層が層状に配列した結晶構造を有する膜であり、前記結晶構造の一般式は、InLa(2−x)Zn3+y(xは1以上2未満の数、yは1以上6未満の数)である半導体装置。
【請求項6】
請求項5において、前記酸化ランタン層は、ランタン原子が酸素原子を6配位した構造を有し、前記酸化インジウム層は、インジウム原子を酸素原子が5配位した構造を有する半導体装置。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−84735(P2013−84735A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223214(P2011−223214)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】