説明

酸化物超電導導体

【課題】本発明は、結晶配向性に優れたペロブスカイト構造の中間薄膜を備えた酸化物超電導導体の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、基材と、該基材上に直接あるいは下地層を介し積層された中間薄膜と酸化物超電導層とを具備する酸化物超電導導体であって、前記中間薄膜が、粒子堆積により基材上にあるいは基材上に下地層を介し中間薄膜を形成する際、基材上方の成膜面に対し斜め方向からアシストイオンビームを照射しつつ成膜するイオンビームアシスト成膜法により形成されたペロブスカイト型酸化物の中間薄膜であって、該中間薄膜を構成する複数の結晶の結晶軸のうち2軸が配向され、これら結晶の配向度を示す正極点図において4回対称性を示す中間薄膜であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化物超電導導体に関する。
【背景技術】
【0002】
RE−123系の酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度で超電導性を示し、電流損失が低いため、実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体あるいは磁気コイル等として使用することが要望されている。この酸化物超電導導体の一例構造として、機械的強度の高いテープ状の金属製の基材を用い、その表面にイオンビームアシスト成膜法(IBAD法)により結晶配向性の良好な中間薄膜を形成し、該中間薄膜の表面に成膜法により酸化物超電導層を形成し、その表面にAgなどの良導電材料からなる安定化層を形成した構造の酸化物超電導導体が知られている。(特許文献1参照)
【0003】
また、酸化物超電導層の結晶配向性をより高めるために、IBAD法で結晶配向性を整えつつ成膜した中間薄膜の上に、更にキャップ層を成膜し、キャップ層の結晶配向性をIBAD法による中間薄膜より更に高め、このキャップ層を下地として酸化物超電導層を成膜することで、超電導特性の優れた酸化物超電導導体を製造する技術が提供されている。(特許文献2参照)
【0004】
この種の中間薄膜やキャップ層を備えた積層構造の酸化物超電導導体の一例構造として、図9に示す如く、金属製のテープ状の基材100の上に拡散防止層101を形成後、IBAD法による中間薄膜102を形成し、その上にキャップ層103を形成し、更に酸化物超電導層105を形成し、その上にAgの安定化層106を形成した構造の酸化物超電導導体107が知られている。なお、前記拡散防止層101はAl層とY層の積層構造あるいはこれらのいずれかの単層構造とされることがあり、中間薄膜102はこの例ではMgO層から構成され、キャップ層103はCeO層から構成されている。
また、拡散防止層101を略してIBAD法による中間薄膜102がこれらを兼ねる構造として、基材100の上にIBAD法によるGZO膜(GdZr層)を形成後、キャップ層103を形成し、酸化物超電導層105を積層した構造も提供されている。
前記構造の酸化物超電導導体107において、一例として、拡散防止層101は数10nm〜100nm程度の厚さに形成され、IBAD法によるMgO層は5nm程度の厚さに形成され、キャップ層103は400nm程度の厚さに形成され、酸化物超電導層105は数μm程度の厚さに形成されている。また、IBAD法によるGZO膜は1μm程度の厚さに形成されている。
【0005】
前記IBAD法に従い、中間薄膜102を成膜する方法の一例として図10に示す如く、目的組成のターゲット110に対しイオンガン111からイオンビームを照射してスパッタ粒子112を発生させ、該スパッタ粒子112を基材100上に堆積させると同時に、基材表面の法線に対し所定の角度(θ)傾斜配置したイオン源113からイオンビームを照射することで、結晶配向性に優れた中間薄膜102を成膜することができる。
なお、IBAD法により形成する中間薄膜102の候補として特許文献1には、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、MgO、SrTiOが開示されており、特許文献3にはYSZ、CeO、MgO、SrTiO、LaMnO、SrRuO、Y、Gd、LaSrMnOが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2721595号公報
【特許文献2】特開2004−71359号公報
【特許文献3】特表2007−515053号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ion Beam Assisted Deposition of Biaxially Aligned Oxide Thin Films : (Kevin Glenn Ressler 他: Massachusetts Institute of Technology September 1996 : Fig 6.3 (110)X-ray φ scan of (h00) biaxially aligned LCMO film on quartz : P132-137. )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記積層構造の酸化物超電導導体107においては、酸化物超電導層105の結晶配向性を整えるため、基材100側からの不要元素の拡散を抑制して膜質の劣化を抑制するため、あるいは、全体膜厚を抑制してできるだけ薄型化するため、などの目的において各層の材料開発、膜質改善、製造条件の特定などがなされている。
【0009】
例えば、MgO層は水分と反応性が高い問題があり、水分存在下において長時間使用するとMgOが変質して基材側から剥離するおそれがあり、水と反応性の低い、薄膜の研究開発がなされている。また、MgOの結晶はその上のキャップ層103を構成するCeOの結晶と比較的大きな格子ミスマッチがあり、より良好な結晶配向性を求めるならば、更に格子ミスマッチの少ない材料からなる中間薄膜が求められる。更に、IBAD法によるMgO層は5nm程度の膜厚において結晶配向性に優れるが、成膜法においてMgO層をこれより厚く形成すると、結晶配向性が劣化する問題がある。また、酸化物超電導導体107を構成する各層はできるだけ薄いことが望まれるが、現状の成膜技術において厚さ5nm程度の薄膜を長尺の酸化物超電導導体用に、例えば、数100m〜1kmなどの長さに均一に成膜するのは容易ではなく、他の層と同じレベル、例えば数10nm以上の膜厚で結晶配向性の良好な中間薄膜が望まれている。
【0010】
また、前述のIBAD法によるGZO膜は膜厚1μm程度に形成されているが、この理由は、GZO膜は1μm程度に厚く形成しないと良好な結晶配向性が得られないためである。しかし、酸化物超電導導体は長尺の導体とされるので、成膜法で形成する各膜はできるだけ薄くすることが望ましいという要望があり、IBAD法により結晶配向性を良好とした上にできるだけ薄い膜厚で中間薄膜を形成することが望まれている。
【0011】
なお、非特許文献1に、ペロブスカイト構造のLCMO(La1−xCaMnO)を用いてIBAD法を実施し、成膜実験を行った結果が開示されている。非特許文献1には、成膜温度600℃、アシストイオンビームの入射角度55゜(基板垂直方向から)、アシストイオンビーム電圧75V、膜厚380nm、成膜レート0.26Å/sで成膜した結果、図11に示すLCMO(110)正極点測定結果が得られた、と記載されている。
図11に示す正極点測定結果から、非特許文献1に開示されているLCMO薄膜の配向度(Δφ)は極めて悪く(各回折ピークの裾野部分の広がり角が大きいので、配向度は極めて悪いと推定できる。)、酸化物超電導層の下のキャップ層用の下地として利用できない膜質であることが理解でき、良好な結晶配向性のLCMO(La1−xCaMnO)の中間薄膜が得られていないことを理解できる。
また、特許文献1〜3には前述した如く酸化物超電導導体用の中間薄膜の候補として種々の材料が開示されているが、IBAD法により具体的に良好な結晶配向性でもって金属製の基材上に成膜できた物質として、YSZ、GdZrのみが実施例として開示されていることから、酸化物超電導導体用として結晶配向性の良好な中間薄膜を得るための材料選択と製造は容易ではないと推定できる。
【0012】
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みなされたものであり、ペロブスカイト型酸化物からなり、結晶配向性に優れ、水分の影響を受け難い中間薄膜を備えた酸化物超電導導体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の酸化物超電導導体は、基材と、該基材上に直接あるいは下地層を介し積層された中間薄膜と、該中間薄膜上に直接あるいはキャップ層を介し積層された酸化物超電導層とを具備する酸化物超電導導体であって、前記中間薄膜が、粒子堆積により基材上にあるいは基材上に下地層を介し中間薄膜を形成する際、基材上方の成膜面に対し斜め方向からアシストイオンビームを照射しつつ成膜するイオンビームアシスト成膜法により形成されたペロブスカイト型酸化物の中間薄膜であって、該中間薄膜を構成する複数の結晶の結晶軸のうち2軸が配向され、これら結晶の配向度を示す正極点図において4回対称性を示す中間薄膜であることを特徴とする。
本発明により、正極点図において4回対称性を示す結晶配向性に優れた世界で初めてのペロブスカイト構造の中間薄膜を有し、その上方に酸化物超電導層を積層した構造の酸化物超電導導体を提供できる。正極点図において4回対称性を示す結晶配向性に優れたペロブスカイト構造の中間薄膜は、これまでのIBAD法を用いた中間薄膜の研究開発においても得られておらず、今回初めて提供できることにより、その上に積層する酸化物超電導層の膜質改善に極めて大きな効果をもたらす。
また、ペロブスカイト構造の中間薄膜であれば、その上にCeOのキャップ層を積層した場合、CeOのキャップ層の結晶との格子ミスマッチが少ないので、配向性に優れたキャップ層を得ることが可能となり、その上に酸化物超電導層の薄膜を積層した場合、酸化物超電導層の薄膜をエピタキシャル成膜できるので、優れた超電導特性の酸化物超電導層を得ることができる。
【0014】
本発明において、前記中間薄膜が、ABO型のペロブスカイト型酸化物(ただし、AがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuとYの中から選択される1種または2種以上の場合、BはAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Niの中から選択される1種または2種以上、AがCa、Sr、Ba、Pbの中から選択される1種または2種以上の場合、BはTi、Mn、Fe、Sn、Mo、Zr、Hfの中から選択される1種または2種以上、AがLiの場合、BはNbである。)からなることを特徴とする。
ペロブスカイト構造の中間薄膜としてABO型の構造のペロブスカイト型酸化物を本発明において実現でき、これらペロブスカイト型酸化物を酸化物超電導層あるいはキャップ層の下地として用いた酸化物超電導導体を本発明において実現できる。
【0015】
本発明において前記中間薄膜が、LaNiO、LaMnO、PrMnO、BaTiOのいずれかからなることを特徴とする。
ペロブスカイト型酸化物の中間薄膜としてLaNiO、LaMnOのいずれかを酸化物超電導層あるいはキャップ層の下地として用いた酸化物超電導導体を本発明において実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、正極点図において4回対称性を示す結晶配向性に優れたペロブスカイト型酸化物の中間薄膜を世界で初めて提供できる。正極点図において4回対称性を示す結晶配向性に優れたペロブスカイト型酸化物の中間薄膜は、これまでのIBAD法を用いた中間薄膜の研究開発においても得られておらず、今回初めて提供できることにより、その上に積層する酸化物超電導層の膜質改善に極めて大きな効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る中間薄膜を備えた酸化物超電導導体の第1実施形態を示すもので、図1(A)は部分断面斜視図、図1(B)は中間薄膜の結晶粒の配向状態について説明するための斜視略図、図1(C)は中間薄膜の結晶粒の配向状態を示す平面略図。
【図2】同酸化物超電導導体に備えられる中間薄膜を製造する場合に用いるイオンビームアシスト成膜装置の一例について示す説明図。
【図3】同イオンビームアシスト成膜装置に備えられるイオン源の一例を示す構成図。
【図4】イオンビームアシスト成膜法を長尺の線材に適用する場合に用いられるイオンビームアシスト成膜装置の一例を示す構成図。
【図5】実施例においてイオンビームアシスト成膜法により中間薄膜を形成し、その上にキャップ層を形成した場合のアシストイオンビームの電流値とキャップ層の結晶配向性の指標を示すΔφの関係を示すグラフ。
【図6】実施例において成膜温度を500℃とした場合に得られた中間薄膜上のCeOキャップ層の正極点図。
【図7】実施例において成膜温度を400℃とした場合に得られた中間薄膜上に形成したCeOキャップ層の正極点図。
【図8】実施例において成膜時間を2000秒とした場合に得られた中間薄膜上に形成したCeOキャップ層の正極点図。
【図9】従来の積層構造の酸化物超電導導体の一例を示す構成図。
【図10】一般的なイオンビームアシスト成膜法の一例を示す構成図。
【図11】ペロブスカイト構造のLCMO(La1−xCaMnO)の製造方法にIBAD法を適用することにより得られた非特許文献1に記載の中間薄膜の正極点図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る酸化物超電導導体の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る第1実施形態の酸化物超電導導体1を模式的に示す概略断面図である。
この例の酸化物超電導導体1は、テープ状の基材2の上方に、下地層3と配向層4とキャップ層5と酸化物超電導層6と第1の安定化層7と第2の安定化層8をこの順に積層して酸化物超電導積層体9が形成され、この酸化物超電導積層体9の周面を絶縁被覆層10で覆って構成されている。
【0019】
前記基材2は、通常の酸化物超電導導体の基材として使用することができ、高強度であれば良く、長尺のケーブルとするためにテープ状やシート状あるいは薄板状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。例えば、ステンレス鋼、ハステロイ等のニッケル合金等の各種耐熱性金属材料、もしくはこれら各種金属材料上にセラミックスを配したもの、等が挙げられる。各種耐熱性金属の中でも、ニッケル合金が好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適であり、ハステロイとして、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。基材3の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmの範囲とすることができる。
【0020】
下地層3は、以下に説明する拡散防止層とベッド層の複層構造あるいは、これらのうちどちらか1層からなる構造とすることができる。
下地層3として拡散防止層を設ける場合、拡散防止層は構成元素拡散を防止する目的あるいはその上に形成される他の層の膜質を改善するために形成されたもので、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(GdZr)等から構成される単層構造あるいは複層構造の層であることが望ましく、厚さは例えば10〜400nmである。拡散防止層の厚さが10nm未満となると、拡散防止層のみでは基材2の構成元素の拡散を十分に防止できなくなる虞がある。一方、拡散防止層の厚さが400nmを超えると、拡散防止層の内部応力が増大し、これにより、他の層を含めて全体が基材2から剥離しやすくなる虞がある。また、拡散防止層の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すれば良い。
【0021】
下地層3としてベッド層を設ける場合、ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層は、例えば、イットリア(Y)などの希土類酸化物であり、組成式(α2x(β(1−x)で示されるものが例示できる。より具体的には、Er、CeO、Dy3、Er、Eu、Ho、La等を例示することができ、これらの材料からなる単層構造あるいは複層構造でも良い。ベッド層は、例えばスパッタリング法等の成膜法により形成され、その厚さは例えば10〜100nmである。また、ベッド層の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すれば良い。
なお、下地層3は拡散防止層とベッド層の2層構造でも、これらのどちらかからなる単層構造でも良く、場合によっては下地層3を略しても良い。下地層3を略する場合は、基材2上に直接、以下に説明する配向層4が形成される。
【0022】
配向層4は、単層構造あるいは複層構造のいずれでも良く、その上に積層されるキャップ層5の結晶配向性を制御するために以下に説明するIBAD法により成膜され、2軸配向したペロブスカイト型酸化物の中間薄膜から形成される。
本実施形態において中間薄膜として、ABO(ただし、AがLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuとYの中から選択される1種または2種以上の場合、BはAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Niの中から選択される1種または2種以上、AがCa、Sr、Ba、Pbの中から選択される1種または2種以上の場合、BはTi、Mn、Fe、Sn、Mo、Zr、Hfの中から選択される1種または2種以上、AがLiの場合、BはNbである。)型のペロブスカイト型酸化物の中間薄膜から、配向層4が形成されている。これらペロブスカイト構造の酸化物の中でも、LaNiO、LaMnO、LaAlO、PrMnO、SrTiO、BaTiO、BaZrO、SrHfOのいずれかを選択することができる。
一例として配向層4は、図1(B)に拡大して示す如く複数の結晶粒4aが粒界を介し接合された多結晶薄膜として構成され、各結晶粒4aの内部においては、それら結晶粒4aを構成するペロブスカイト結晶が、それらの結晶軸のc軸を基材2の表面(あるいは下地層3の表面)に対し個々に垂直に向け、ペロブスカイト結晶の結晶軸のa軸をほぼ一方向に揃えて(例えば図1(C)に符号Kで示す結晶軸の分散の角度を所定の範囲に揃えて)配置されている。
【0023】
この配向層4をIBAD(Ion-Beam-Assisted Deposition)法により良好な結晶配向性で成膜するならば、その上に形成するキャップ層5の結晶配向性を良好な値とすることができ、これによりキャップ層5の上に成膜する酸化物超電導層6の結晶配向性を良好なものとして、より優れた超電導特性を発揮できる酸化物超電導層6を得るようにすることができる。
上述のペロブスカイト型酸化物の多結晶薄膜からなる配向層4は、IBAD法における結晶配向度を表す指標である結晶軸分散の半値幅Δφ(FWHM)の値を小さくできるため、特に好適である。
【0024】
前記キャップ層5は、前記配向層5の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層5は、前記配向層4よりも高い面内配向度が得られる可能性がある。
キャップ層5の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層5の材質がCeOである場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
キャップ層5は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが好ましい。PLD法によるCeO層の成膜条件としては、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で行うことができる。
CeOのキャップ層5の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲、より好ましくは100〜5000nmの範囲とすることができる。
【0025】
酸化物超電導層6は通常知られている組成の酸化物超電導体からなるものを広く適用することができ、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、BiSrCan−1Cu4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体からなるものを用いても良いのは勿論である。
酸化物超電導層6は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法)等で積層でき、なかでもレーザ蒸着法が好ましい。酸化物超電導層6の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
【0026】
酸化物超電導層6の上面を覆うように形成されている第1の安定化層7は、Agからなり、スパッタ法などの気相法により成膜されており、その厚さを1〜30μm程度とされる。
第2の安定化層8は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層6が超電導状態から常電導状態に遷移しようとした時に、第1の安定化層7とともに、酸化物超電導層6の電流が転流するバイパスとして機能する。第2の安定化層8を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、ステンレス等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることがら銅製が好ましい。なお、酸化物超電導導体1を超電導限流器に使用する場合は、第2の安定化層8は高抵抗金属材料より構成され、Ni−Cr等のNi系合金などを使用できる。
第2の安定化層8の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10〜300μmとすることが好ましい。
前記被覆層10は、樹脂絶縁層からなり、絶縁テープを巻回するなどの手段により酸化物超電導積層体9の全周を覆うように形成されている。
【0027】
前記構造の酸化物超電導導体1に設けられるIBAD法による配向層4は、例えば図2に示す装置により成膜される。
図2に示す装置は、下地層3を備えたテープ状の基材2をその長手方向に走行するための走行系(図示略)と、その表面が基材2の表面に対して斜めに向いて対峙されたターゲット21と、ターゲット21にイオンを照射するスパッタビーム照射装置22と、基材2の表面に対して斜め方向からイオン(希ガスイオンと酸素イオンの混合イオン)を照射するイオン源23とを有しており、これらの各装置は真空容器(図示略)内に配置されている。なお、図2において符号2Aは基板ホルダを示し、符号21Aはターゲットホルダを示している。
【0028】
本実施形態で用いる真空容器は、外部と成膜空間とを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有するものとされる。この真空容器には、真空容器内にキャリアガスおよび反応ガスを導入するガス供給手段と、真空容器内のガスを排気する排気手段が接続されているが、図2ではこれら供給手段と排気手段を略し、各装置の配置関係のみを示している。
また、イオン源23の一例構成として、図3に示す如く、容器24の内部に、引出電極25とフィラメント26とArガス等の導入管27とを備えて構成され、容器24の先端から希ガス等のイオンをビーム状に平行に照射できる装置を用いることができる。なお、図3に示すイオン源23において、アシストイオンビーム電圧とアシストイオンビーム電流値を適宜調整し、アシストイオンビームのエネルギーを調整することができる。
【0029】
図2、図3に示す装置によって基材2の下地層3上に配向層4を形成するには、真空容器の内部を減圧雰囲気とし、スパッタビーム照射装置22及びイオン源23を作動させる。これにより、スパッタビーム照射装置22からターゲット21にイオンを照射し、ターゲット21の構成粒子を叩き出すか蒸発させて下地層3上にターゲット構成粒子を堆積させることができる。これと同時に、イオン源23から、希ガスイオンと酸素イオンとの混合イオンによるアシストイオンビームを放射し、下地層3の表面(基材2上方の成膜面)に対して所定の入射角度(基材上の成膜面の法線に対する入射角度θ)で照射する。
【0030】
図2、図3に示す装置を用いてIBAD法を実施する場合、アシストイオンビームの入射角度θについては、基材2の成膜面(本実施形態では下地層3の上面)の法線に対し40〜75゜の範囲に設定することが好ましい。
また、アシストイオンビームを照射するイオン源の稼働条件としてイオンビーム電圧を例えば300Vとすると、イオンビーム電流値は300mA〜650mAの範囲を選択できる。
また、アシストイオンビーム電圧は、200〜600Vの範囲が好ましい。アシストイオンビーム電圧をこの範囲とすることで、得られる配向層4の結晶軸分散の半値幅をより小さくすることができる。
配向層4を成膜する際の成膜温度については、300〜1000℃の範囲を選択できる。
【0031】
以上説明のように、下地層3の表面に、ターゲット21の構成粒子を堆積させつつ、所定の入射角度でイオン照射を行うことにより、形成されるスパッタ膜の特定の結晶軸がイオンの入射方向に固定され、ペロブスカイト型酸化物の結晶のc軸が金属基板の表面に対して垂直方向に配向するとともに、ペロブスカイト型酸化物の結晶のa軸どうし(あるいはb軸どうし)が面内において一定方向に配向する(2軸配向する)。このため、IBAD法によって下地層3上に形成されたペロブスカイト型酸化物の配向層4は、高い面内配向度を得ることができる。
【0032】
以下に、配向層4がペロブスカイト型酸化物から構成される場合の特徴について説明する。
以下の表1に、酸化物超電導導体の各層を構成する材料の物質名と格子常数(Å)を示し、各物質ととキャップ層を構成するCeOとの格子ミスマッチを示し、各物質と酸化物超電導層6を構成する材料の一例であるGdBaCu7−x(以下、GdBCOと略記する)との格子ミスマッチの関係を対比して示す。
【0033】
「表1」
物質名 格子常数(Å) CeOとの格子 GdBCOとの格子
ミスマッチ ミスマッチ
MgO 4.21 28.5 −8.3
GZO 5.25 3.0 3.98
SrTiO 3.90 −1.9 −1.03
BaTiO 3.99 −4.1 −3.26
LaMnO 3.89 −1.75 −0.78
LaNiO 3.86 −0.90 0
LaAlO 3.78 1.2 2.12
PrMnO 3.82 0.13 1.05
【0034】
表1において、CeOの格子定数は、5.41あるいは3.825(45゜回転:ルート2分の1倍(ペロブスカイトの場合))で計算した。GdBCOの格子定数:3.86(正確にはGdBCOは斜方晶であり、a軸とb軸の平均値とした。)また、SrTiO以外のペロブスカイトは立方晶ではないが、準立方晶として格子定数を見積りした。
表1の格子ミスマッチ(格子不整合)は、(ae−as)/as×100%の式(ae:エピタキシャル層(上層)の格子定数、as:基板の(下層)の格子定数)に従い計算した。
【0035】
表1に示す対比結果の如く、CeOとの格子ミスマッチは、MgOよりもペロブスカイト酸化物のSrTiO、BaTiO、LaMnO、LaNiO、LaAlO、PrMnOの方が遙かに少なく、IBAD法により良好な結晶配向性で結晶成長させるならば、配向性に優れた配向層4を形成できると想定できる。
【0036】
ここで前述のように、良好な配向性を有する配向層4の上にキャップ層5を形成していると、キャップ層5も良好な配向性を得ることができるとともに、そのキャップ層5上に酸化物超電導層6を形成すると、酸化物超電導層6もキャップ層5の配向性に整合するように結晶化する。よって前記キャップ層5上に形成された酸化物超電導層6は、結晶配向性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層6を構成する結晶粒の1つ1つにおいては、基材2の厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向し、基材2の長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している(2軸配向している)。従って得られた酸化物超電導層6は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、基材2の長さ方向に電気を流し易くなり、十分に高い臨界電流が得られる。
【0037】
以上説明の如く形成された酸化物超電導導体1は、IBAD法により成膜された結晶配向性に優れたペロブスカイト型酸化物の配向層4を備え、その上にキャップ層5を介し結晶配向性に優れた酸化物超電導層6を有しているので、優れた超電導特性を発揮する。
【0038】
図4はIBAD法を実施して長尺の酸化物超電導導体を製造する場合に用いて好適な装置の一例を示す。
図4に示す如く長尺の酸化物超電導導体を製造する場合に適用するイオンビームアシストスパッタ装置30は、テープ状の基材などが配置される成膜領域31に面するようにターゲット32が配置され、このターゲット32に対して斜め方向に対向するようにスパッタイオンソース源33が配置されるとともに、成膜領域31の法線に対し所定の角度で(例えば55゜など)斜め方向から対向するようにアシストイオンソース源35を配置して構成されている。
この例のイオンビームアシストスパッタ装置30は、真空チャンバに収容される形態で設けられる成膜装置であり、テープ状の基材37が対向配置された第1のローラ群38と第2のローラ群39とに複数回往復巻回されて成膜領域31を往復走行される構造などを例示することができる。
【0039】
この実施形態において適用されるイオンソース源33、35は、先に説明した実施形態と同様、容器の内部に、引出電極とフィラメントとArガス等の導入管とを備えて構成され、容器の先端からイオンをビーム状に平行に照射できるものである。
本実施形態で用いる真空チャンバは、外部と成膜空間とを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有するものとされる。この真空チャンバには、真空チャンバ内にキャリアガスおよび反応ガスを導入するガス供給手段と、真空チャンバ内のガスを排気する排気手段が接続されているが、図ではこれら供給手段と排気手段を略し、各装置の配置関係のみを示している。
ここで用いるターゲット32とは、前述した材料の中間薄膜4を形成する場合に見合った組成のターゲットとすることができる。
図4に示す構造のイオンビームアシストスパッタ装置30を用いることでIBAD法を実施し、目的のペロブスカイト型酸化物の中間薄膜4を長尺、例えば数10m〜数100mレベルで長尺の基材37上に成膜し、長尺の酸化物超電導導体を製造する場合に対応できる。
【実施例】
【0040】
「実施例1」
ハステロイC276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ1000mmのテープ状の表面平滑な基材を用意し、表面を洗浄してからスパッタ法によりAlの拡散防止層(厚さ150nm)とYのベッド層(厚さ20nm)を積層した。
次に、以下に説明するイオンビームアシストスパッタ法を用い、(LaNiOのターゲットを用いてテープ基材のベッド層の表面に厚さ50nmのLaNiOの配向層を形成した。
図2に示す構造のイオンビームアシストスパッタ装置を用いてIBAD法を実施し、アシストイオンビームの入射角度は、テープ状基材成膜面の法線に対し、55゜に設定し、成膜温度を500℃、成膜時間を約400秒とした。
【0041】
また、アシストイオンビーム電圧を300Vに固定し、アシストイオンビーム電流値を300mA、350mA、400mA、450mA、500mA、550mA、600mA、650mAに変更して複数の試料を作成した。
また、得られた配向層の上に、膜厚300nmのCeOのキャップ層をレーザー蒸着法で800℃で積層し、得られたCeOのキャップ層をX線測定して回折試験像であるCeO(220)正極点図を求め、結晶軸分散の半値幅(Δφ)を求めた結果を図5に示す。
【0042】
アシストイオンビーム電圧300V、アシストイオンビーム電流値を500mA、成膜時間400秒として得られた試料のCeO(220)正極点図を図6に示す。得られたΔφの値は、300mA:24.4゜、350mA:23.4゜、400mA:23.1゜、450mA:22.6゜、500mA:21.9゜、550mA:22.2゜、600mA:25゜、650mA:25.2゜となった。
なお、配向層の結晶の上にはCeOのキャップ層の結晶がエピタキシャル成長するので、キャップ層の結晶配向性が優れるということは、その下地としての配向層の結晶配向性も優れていることの証明となる。本実施例の条件として配向層の膜厚は薄いので、X線回折による正極点測定データが取りやすいようにCeOのキャップ層を積層している。
【0043】
図5に示す如く300V、500mA、500℃で製造した試料のΔφは21.9゜となり、その条件により得られたキャップ層の(220)正極点図には、図6に示す如く4回対称性が明瞭に現れた。
よって、上述の条件にてIBAD法により4回対称性を示すペロブスカイト構造であり、結晶配向性に優れた配向層を形成できることが判明した。
前記アシストイオンビームの条件において、アシストイオンビーム電圧を300Vとした場合、Δφをより小さくするためには、図5の関係から、適切な範囲を選択することで、より優れたΔφの値を得ることができた。
【0044】
次に、IBAD法によりペロブスカイト構造の配向層を形成する場合の温度依存性を調べるために、アシストイオンビーム電流値を500mA、アシストイオンビーム電圧を300V、成膜時間400秒、アシストイオンビーム入射角を55゜に固定し、この条件において成膜温度を300℃、400℃、500℃、550℃とした場合にそれぞれ得られた試料のCeO(220)正極点図を求めたところ、300℃、400℃では4回対称性性が見られず、図7に示す如く無配向の試料が得られた。これに対し、500℃成膜の場合は図6に示す如く4回対称性が見られ、Δφ=21.9゜が得られ、550℃で成膜した試料についても4回対称性が見られ、Δφ=20.4゜が得られた。
図6、図7に示す結果から、正極点図において4回対称性を示す配向層を得るために成膜温度については500℃以上が望ましく、成膜温度を更に上げるとより良好な配向性が得られると想定できる。。
【0045】
次に、IBAD法によりペロブスカイト構造の配向層を形成する場合の成膜時間依存性を調べるために、アシストイオンビーム電流値を500mA、アシストイオンビーム電圧を300V、成膜温度500℃、アシストイオンビーム入射角を55゜に固定し、成膜時間を2000秒とした場合にそれぞれ得られた試料のCeO(220)正極点図を求め、それらを図8に示した。
成膜時間を2000秒に設定しても図8に示す如く正極点図において4回対称性を示すペロブスカイト構造の配向層を得ることができた。得られた配向層の膜厚を測定したところ、図6に示す試料の場合に成膜時間400秒においては膜厚50nmの配向層が得られ、成膜時間2000秒においては膜厚250nmの配向層が得られた。図8に示す結果と図6に示す結果の対比から、膜厚50nmよりも膜厚250nmの配向層の方が配向性が向上しているので、本発明のペロブスカイト型酸化物の配向層においては膜厚を250nmレベルまで厚くしても配向性が優れている特徴を有する。
このため、長尺の基材上に配向層を均一成膜する場合にある程度膜厚を大きくして全長に渡り膜質の均一性を確保しようとして成膜しても、配向性に優れた配向層を形成できることが分かる。
【0046】
次に、IBAD法によりペロブスカイト構造の配向層を形成する場合の下地層の影響を調べるために、ハステロイ製の基材上に直接ペロブスカイト構造の配向層(LaNiO層)を形成する試験と、ハステロイ製の基材上にAl層を形成した上にペロブスカイト構造の配向層(LaNiO層)を形成する試験と、ハステロイ製の基材上にAl層とY層を形成した上にペロブスカイト構造の配向層(LaNiO層)を形成する試験を行い、それぞれにおいて得られた試料のCeO(220)正極点図を求めた。配向層を成膜する際の条件は、アシストイオンビーム電流値400mA、アシストイオンビーム電圧400V、成膜時間400秒、アシストイオンビーム入射角度55゜、成膜温度500℃に設定した。
その結果、ハステロイ製の基材上に直接配向層を形成した試料ではΔφ=20.1゜が得られ、ハステロイ製の基材上にAl層を介して配向層を形成した試料ではΔφ=17.5゜が得られ、ハステロイ製の基材上にAl層とY層を介して配向層を形成した試料ではΔφ=19.8゜が得られた。
【0047】
更に、上述の正極点図において4回対称性が得られた各試料においてキャップ層上にパルスレーザー蒸着法によりGdBaCu7−xの組成の厚さ1.0μmの酸化物超電導層を形成した。
次に、各試料について、スパッタ法により酸化物超電導層の上面に厚さ8μmのAgからなる第1の安定化層を形成し、更にその上に厚さ300μmのCuの安定化層テープを貼りつけて各酸化物超電導導体を得た。
これら複数の酸化物超電導導体試料を液体窒素に浸漬して通電試験したところ、いずれの試料においても1×10〜2×10A/cmの臨界電流密度(Jc)が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば酸化物超電導送電線や超電導マグネット用のコイル巻線に利用することができる酸化物超電導導体を提供する。
【符号の説明】
【0049】
1…酸化物超電導導体、2…基材、3…下地層、4…配向層、4a…結晶粒、5…キャップ層、6…酸化物超電導層、7…第1の安定化層、8…第2の安定化層、9…酸化物超電導積層体、10…絶縁被覆層、21…ターゲット、21A…ターゲットホルダ、22…イオンガン、23…イオン源、24…容器、25…グリッド、26…フィラメント、27…ガスの導入管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に直接あるいは下地層を介し積層された中間薄膜と、該中間薄膜上に直接あるいはキャップ層を介し積層された酸化物超電導層とを具備する酸化物超電導導体であって、前記中間薄膜が、粒子堆積により基材上にあるいは基材上に下地層を介し中間薄膜を形成する際、基材上方の成膜面に対し斜め方向からアシストイオンビームを照射しつつ成膜するイオンビームアシスト成膜法により形成されたペロブスカイト型酸化物の中間薄膜であって、該中間薄膜を構成する複数の結晶の結晶軸のうち2軸が配向され、これら結晶の配向度を示す正極点図において4回対称性を示す中間薄膜であることを特徴とする酸化物超電導導体。
【請求項2】
前記中間薄膜が、ABO型のペロブスカイト型酸化物(ただし、AがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuとYの中から選択される1種または2種以上の場合、BはAl、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Niの中から選択される1種または2種以上、AがCa、Sr、Ba、Pbの中から選択される1種または2種以上の場合、BはTi、Mn、Fe、Sn、Mo、Zr、Hfの中から選択される1種または2種以上、AがLiの場合、BはNbである。)からなることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体。
【請求項3】
前記中間薄膜が、LaNiO、LaMnOのいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−212571(P2012−212571A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77946(P2011−77946)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】