説明

酸化物超電導材料及びその製造方法

【課題】 有効なピンニングセンターの導入により、臨界電流密度が高い酸化物バルク超電導体を提供する。
【解決手段】 RE1+xBa2-xCu3y(0≦x≦0.1、6.5≦y≦7.2、REはY、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの群から選ばれた少なくとも一つの元素)結晶中に、ピンニングセンターとしてBaCeO3あるいはBa(Ce1-aa)O3-b(0<a<0.5、0≦b≦0.5、MはZr、Hf、Sn等の金属元素)相の粒子が分散しており、且つ、Pt又はRhの一方又は双方が添加されていることを特徴とする酸化物超電導材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイール、磁気軸受け、超電導モータ、磁気分離装置、超電導バルクマグネット、電流リード、限流器等への利用を目的とした、臨界電流密度、捕捉磁場及び磁気浮上力の大きい酸化物超電導材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
YBa2Cu3y系に代表されるREBa2Cu3y(REは希土類元素、以下、RE123と記す)系酸化物超電導材料は、QMG法あるいはMPMG法等の溶融法の開発により、大きな臨界電流密度を有するバルク状の超電導体が得られている(特許文献1、参照)。
【0003】
このようなバルク超電導体は、磁場との相互作用で大きな磁気浮上力を発生することができ、この力を利用したベアリング、フライホイール等への応用研究が盛んとなってきている。また、臨界電流の大きな超電導体では、強磁場を捕捉して強力な永久磁石として機能させることも可能である。
【0004】
バルク超電導体の捕捉磁場は、試料が均一であると仮定した場合、単純には、臨界電流密度と試料の径との積に比例する。従って、このような応用を考えるには、臨界電流密度が大きく、結晶方位が揃った大きな結晶粒の材料の作製が重要である。
【0005】
強磁場を捕捉したバルク超電導磁石は、磁気分離装置やマグネトロンスパッタ装置等、多方面への適用が検討されている。さらに、バルク超電導体を棒状や線状に加工し、電流リードや限流器等へ応用する研究も盛んに行われている。
【0006】
このようなバルク超電導体の製造方法の一例を以下に示す。まず、原料粉として、例えばRE123及び磁束のピニングセンターとして添加するRE2BaCuO5(以下、RE211と記す)の粉末を所定の割合に混合する。これを所定形状に加圧成形して、前駆体とした後、液相とRE211相が共存する温度に加熱し、RE123相を部分溶融させる。
【0007】
その後、超電導相であるRE123相が生成する温度付近まで冷却し、その温度から、例えば0.05〜10℃/hrの速度で徐冷することにより、RE123相を結晶成長させる。さらに、超電導相の酸素量を調整するために、酸素富化雰囲気中、250〜650℃の温度でアニールを行い、バルク超電導体を得る。
【0008】
以上の方法において、結晶方位の揃った、大きい結晶粒を有するバルク超電導体を得る手法としては、原料粉を成形した前駆体、あるいは、これを溶融した試料に、配向した種結晶を置くか又は埋め込んで接触させ、これを基点として種結晶と同じ方位になるように結晶成長を行うことが有効である。種結晶としては、分解溶融温度の高いSm123系、Nd123系材料が、通常、選択される(特許文献2、参照)。
【0009】
また、バルク超電導材料を大型化する際には、材料の機械強度を改善し、製造時のクラックの発生を抑制することも重要である。材料の機械強度を向上させる方法としては、Agの添加が非常に有効である(例えば、特許文献3、非特許文献1、参照)。
【0010】
Agを予め原料に添加して結晶成長を行うと、材料の製造時におけるクラックの発生が抑制されて、製造歩留りが向上すると共に、材料の捕捉磁場が改善され、高特性のRE−Ba−Cu−O系バルク超電導体を製造することができる。
【0011】
一方、バルク超電導材料の臨界電流密度を高めるには、RE123超電導相中に磁束のピニングセンターとして分散させたRE211(REがNd等の場合には、RE4Ba2Cu210、以下、RE422と記す)の粒子を微細化させることが、これまで有効とされ、その方法として、Pt、Rh、CeO2等を微量添加する方法が用いられている(例えば、非特許文献2、参照)。
【0012】
また、粒径の小さなRE211粉末を原料として使用することにより、結晶成長後の試料中に分散するRE211粒子を小さくすることができ、臨界電流密度を向上できることも報告されている(非特許文献3、参照)。
【0013】
しかしながら、RE211原料が微細になり過ぎた場合、試料内部のRE211粒子の分布が不均一になり、試料各部分において臨界電流密度の大きなばらつきが生じて、局所的に臨界電流密度が非常に高い部分が現れる反面、臨界電流密度が低い部分も生じるため、バルク超電導体全体としての捕捉磁場がかえって低下すると言う問題を生じている(非特許文献4、参照)。
【0014】
また、材料によっては、試料周辺部における核生成により、種結晶からのRE123相の結晶成長が阻害され、大きな結晶粒のバルク体が得られないと言う問題も発生している(非特許文献5、参照)。
【0015】
さらに、例えこれらの問題が解決できたとしても、RE211粒子は、試料の昇温時や、溶融時に粒成長するため、粒径の微細化には限界があり、大型の単一粒のバルク超電導体の臨界電流密度は液体窒素温度(77K)で数万A/cm2程度に止まっている。
【0016】
バルク超電導体の臨界電流密度を向上させるため、RE211相以外の非超電導化合物をピニングセンターとして用いる試みもなされており、例えば、Pt−Ba−Cu−O系化合物が有効なピンニングセンターとなり得ることが報告されている(特許文献4、参照)。また、BaMO3(MはZr、Sn、Ce、Ti)がピンニングセンターとして有効であると言う報告もある(特許文献5、参照)。
【0017】
しかしながら、これらの化合物をピンニングセンターとして添加して、臨界電流密度を高めるためには、これらを、ある程度多量に添加する必要があるが、Pt−Ba−Cu−O系化合物の場合には、添加量がPt換算で2質量%が限界であり、これよりも添加量が多い場合には、化合物の粗大化により臨界電流密度が低下してしまう。
【0018】
また、BaMO3の場合、有効な添加量は1〜10モル%(最適量は2〜5モル%)であり、添加量がこれを超えた場合、化合物の偏析により超電導特性が低下する。
【0019】
また、さらに、その後の研究で、BaZrO3は比較的少量の添加で、BaZrO3とRE211の偏析が起こることが報告されており(例えば、非特許文献6、非特許文献7、参照)、多量のBaZrO3粒子をRE123結晶内に均一に分散させることは困難である。
【0020】
また、BaCeO3はRE123結晶内に取り込まれるものの、添加するにつれて臨界電流密度が低下し、有効なピンニングセンターとしては作用しないことが明らかとなっている(例えば、非特許文献8、参照)。
【0021】
元来、Ce系化合物は、RE211相を微細化する効果があり、0.5〜2質量%程度の微量添加することは有効であるが、これ以上の添加は、超電導転移温度を低下させてしまうことが知られている(例えば、非特許文献9、参照)。
【0022】
したがって、これまでに、RE211(又はRE422)以外の非超電導化合物のピンニングセンターは、殆ど用いられていないのが現状である。
【0023】
【特許文献1】特開平2−153803号公報
【特許文献2】特開平5−193938号公報
【特許文献3】特開平11−180765号公報
【特許文献4】特開平3−68627号公報
【特許文献5】特開平4−16511号公報
【非特許文献1】H. Ikuta et al., Superconductor Science and Technology, Vol.11, p.1345 (1998)
【非特許文献2】N. Ogawa et al., Physica C, Vol.177, p.101 (1991)
【非特許文献3】S. Nariki et al., Superconductor Science and Technology, Vol.13, p.778 (2000)
【非特許文献4】S. Nariki et al., Superconductor Science and Technology, Vol.17, p.S30 (2004)
【非特許文献5】S. Nariki et al., Superconductor Science and Technology, Vol.15, p.648 (2002)
【非特許文献6】A. E. Carrillo et al., Physica C, Vol.336, p.213 (2000)
【非特許文献7】M. Matsui et al., Physica C, Vol.357-360, p.697 (2001)
【非特許文献8】C.-J. Kim et al., Advances in Superconductivity, Vol.17, p.677 (1995)
【非特許文献9】C.-J. Kim et al., Journal of Materials Research, Vol.7, p.2349 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
以上説明してきたように、溶融法により作製したRE−Ba−Cu−O系バルク超電導材料を様々な分野に応用するためには、臨界電流密度を高くすることが重要である。バルク超電導体の臨界電流密度を向上させるためには、材料内に有効なピンニングセンターとして、非超電導化合物を微細分散する方法が最も有効である。
【0025】
従来、非超電導化合物として用いられてきたのは、殆どがRE211相(あるいはRE422相)であるが、前述のように、臨界電流密度の向上には限界があり、大型バルク超電導体の臨界電流密度は、77Kで数万A/cm2程度に止まっていた。一方、RE211以外の非超電導化合物をピンニングセンターとして添加する試みも検討されているが、RE211を超える特性は得られておらず、実用化には至っていない。
【0026】
本発明の目的は、RE211に代わる有効なピンニングセンターをRE−Ba−Cu−O系バルク超電導材料中に微細分散させ、従来よりも臨界電流密度が高い酸化物超電導材料とその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明では、RE−Ba−Cu−O系バルク超電導材料において、有効に作用し得るピンニングセンターを鋭意探索し、従来のRE211の代わりに、BaCeO3に代表されるCe及びBaを含む複合酸化物をRE123相中に分散させ、且つ、Pt又はRhの一方又は双方を添加することにより、高い臨界電流密度を有するバルク超電導材料が得られることを見出した。
【0028】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
【0029】
(1) RE1+xBa2-xCu3y(0≦x≦0.1、6.5≦y≦7.2、REはY、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの群から選ばれた少なくとも一つの元素)結晶中に、Ce及びBaを含む複合酸化物の粒子が分散しており、且つ、Pt又はRhの一方又は双方が添加されていることを特徴とする酸化物超電導材料。
【0030】
(2) 前記RE1+xBa2-xCu3y結晶100モル%に対して、Ce及びBaを含む複合酸化物の量が5〜60モル%の範囲で含有されている前記(1)に記載の酸化物超電導材料。
【0031】
(3) 前記Pt又はRhの一方又は双方の添加量が0.1〜5.0質量%である前記(1)又は(2)に記載の酸化物超電導材料。
【0032】
(4) 前記Ce及びBaを含む複合酸化物がBaCeO3である前記(1)〜(3)の何れかに記載の酸化物超電導材料。
【0033】
(5) 前記Ce及びBaを含む複合酸化物が、Ba(Ce1-aa)O3-b(0<a<0.5、0≦b≦0.5、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属元素の内の少なくとも一つの元素)である前記(1)〜(3)の何れかに記載の酸化物超電導材料。
【0034】
(6) 前記金属元素Mが、Zr、Hf又はSnの群から選ばれる少なくとも一つの元素である前記(5)に記載の酸化物超電導材料。
【0035】
(7) 前記Ce及びBaを含む複合酸化物以外に、50モル%以下のRE2BaCuO5相あるいはRE4-2zBa2+2zCu2-z10-d(0≦z≦0.1、−0.5≦d≦0.5)相の粒子が分散している前記(1)〜(6)の何れかに記載の酸化物超電導材料。
【0036】
(8) 前記Ce及びBaを含む複合酸化物以外に、1〜50質量%のAg粒子が分散している前記(1)〜(7)の何れかに記載の酸化物超電導材料。
【0037】
(9) RE系化合物(ここで、REはY、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの群から選ばれた少なくとも一つの元素)、Ba系化合物、Cu系化合物、Ce系化合物又はこれらの複合化合物にPt又はRhの一方又は双方を添加した混合物を出発物質とし、これを成形して前駆体を作製し、得られた前駆体を部分的に溶融後、冷却して、超電導相を結晶成長させることを特徴とする酸化物超電導材料の製造方法。
【0038】
(10) 前記Ce系化合物がBaCeO3である前記(9)に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【0039】
(11) 前記前駆体中にM系化合物(ここで、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属元素)が、Ceに対してM元素換算で等モル%未満含んでいる前記(9)又は(10)に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【0040】
(12) 前記M系化合物がBa(Ce1-aa)O3-b(0<a<0.5、0≦b≦0.5)である前記(11)に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【0041】
(13) 前記金属元素Mが、Zr、Hf又はSnの群から選ばれる少なくとも一つの元素である前記(11)又は(12)に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【0042】
(14) 前記前駆体中にAg又はAg化合物の一方又は双方をAg換算で1〜50質量%含む前記(9)〜(13)の何れかに記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【0043】
(15) 前記前駆体を部分溶融させる温度が950〜1200℃の範囲にある前記(9)〜(14)の何れかに記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【0044】
(16) 前記超電導相を結晶成長させる前の前駆体あるいは部分溶融体に、種結晶を置くか又は埋め込んだ後、種結晶を基点として超電導相を優先的に結晶成長させる前記(9)〜(15)の何れかに記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【0045】
(17) 前記種結晶がRE’−Ba−Cu−O系結晶(RE’はNd又はSmの内の少なくとも一つの元素である前記(16)に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【0046】
(18) 前記前駆体を部分溶融後、冷却するときの冷却速度が0.05〜10℃/hrの範囲である前記(9)〜(17)の何れかに記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【0047】
(19) 前記結晶成長後、酸素雰囲気において250〜650℃の温度範囲内に加熱、保持する前記(9)〜(18)の何れかに記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、臨界電流密度が非常に高いRE−Ba−Cu−O系超電導材料を、前駆体に添加する原料の工夫による簡便な手法で、低コストで製造することができるので、フライホイール、磁気軸受け、超電導モータ、磁気分離装置、超電導バルクマグネット、電流リード等の超電導バルク材料を利用した産業分野において、極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0050】
本発明が対象としているRE−Ba−Cu−O系バルク超電導体は、RE123超電導相中にCe及びBaを含む複合酸化物の粒子が分散しており、さらに、Pt又はRhの一方又は双方が添加されていることが特徴である。
【0051】
前述のように、Ce及びBaを含む複合酸化物の一つであるBaCeO3は、RE−Ba−Cu−O系超電導体におけるピンニングセンターとして従来から検討されてきたが、超電導転移温度や臨界電流密度が低下すると言う問題があった。
【0052】
本発明は、Pt又はRhの一方又は双方を添加することにより、このような超電導特性の低下が抑制され、Ce及びBaを含む複合酸化物によるピンニング力を効果的に引き出せることを見出したものである。
【0053】
Pt、Rhの添加によって、なぜ超電導特性の低下が抑制できるのか、その原因に関して、詳細は今のところ明らかではないが、試料の分解溶融時における液相成分の流出等が原因で引き起こされる、結晶成長時の組成の不均一化が、Pt、Rhの添加によって抑制されていることが、原因の一つであると推測される。
【0054】
本発明で得られるバルク超電導体中の超電導相であるRE123相の組成は、RE1+xBa2-xCu3y(0≦x≦0.1、6.5≦y≦7.2)で示され、希土類元素の一部がBaサイトを置換していても良い。なお、Ce及びBaを含む複合酸化物の好ましい含有量は、RE123相100モル%に対して、5〜60モル%の範囲である。
【0055】
含有量が5モル%よりも小さい場合には、本発明の効果に乏しく、60モル%よりも大きい場合には、超電導相であるRE123の割合が相対的に低下するため、臨界電流密度を向上させる効果が小さくなる恐れがある。最も高い臨界電流密度が得られる最適量は30〜40モル%である。
【0056】
また、Pt又はRhの一方又は双方の添加量は0.1〜5.0質量%が好ましく、これ以外の範囲では、材料の超電導転移温度が若干低下し、それに伴い臨界電流密度がやや低下する場合がある。
【0057】
本発明におけるCe及びBaを含む複合酸化物として、代表的なものはBaCeO3であり、Pt又はRhの一方又は双方の存在下において、材料中に均一に微細分散させることができる。さらに、本発明においては、BaCeO3中のCeの一部を他の金属元素Mで置換することも有効である。
【0058】
ここで、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属を除く金属元素であり、特に、Cu、Zr、Hf、Sn、W、Mo、Nb、Ta、希土類元素等がその主なものである。中でも、MがZr、Hf、Snの内、少なくとも一つの元素である場合には、BaCeO3に比べて、粒子の大きさをより微細にできるため、臨界電流密度を非常に高くすることが可能である。
【0059】
ただし、Ceの50%以上をMで置換した場合、偏析による超電導特性の低下や、大きな結晶粒の試料が得られなくなる場合があり、置換量は50%未満とすることが好ましい。
【0060】
本発明においては、BaCeO3等、Ce及びBaを含む複合酸化物のピンニング力が強いため、RE211相(REがNd等の場合はRE422相)の添加は必ずしも必須ではない。しかし、RE211(又はRE422)相の添加は、低磁場領域の臨界電流密度をさらに向上させる以外に、RE123相の結晶成長を促進する効果もあるため、若干量添加しても良い。
【0061】
ただし、RE211(又はRE422)相の量が著しく多くなると、不可逆磁場や高磁場領域における臨界電流密度の低下、また、RE123の比率の相対的低下による全体的な臨界電流密度の低下、微細組織の不均一化等の様々な問題が発生する恐れがあるため、RE211(又はRE422)相を添加する場合には、その量は多くても50モル%以下にすることが好ましい。
【0062】
なお、RE422相を添加する場合には、その組成は、通常、RE4Ba2Cu210であるが、必要により、RE4-2zBa2+2zCu2-z10-d(0≦z≦0.1、−0.5≦d≦0.5)組成の固溶体であっても構わない。
【0063】
さらに、本発明においては、既に公知のように、機械強度を改善する目的から、バルク超電導体中にAgを含有させても良い。特に、大型の試料を作製する場合には、Agの添加は非常に効果的である。なお、Agの含有量が1質量%未満の場合には、機械強度改善の効果が殆ど無く、大型の試料を作製した場合、試料中にクラックが入り易い。
【0064】
一方、Agの含有量が50質量%を超える場合には、超電導相の体積率の低下により、臨界電流密度が低下し易い。したがって、Agの含有量は、1〜50質量%の範囲とすることが好ましい。
【0065】
次に、本発明の超電導材料の製造方法について説明する。本発明のバルク体を作製するための主要原料は、RE123、RE23、BaCO3、BaO2、Ba(NO32、CuO、BaCuO2、CeO2、BaCeO3、RE211、RE422等のRE系化合物、Ba系化合物、Cu系化合物、Ce系化合物あるいはこれらの複合化合物にPt又はRhの一方又は双方を添加したものであり、これらの出発原料を所定の割合になるよう混合する。
【0066】
前記金属元素Mを含む場合には、酸化物、水酸化物、炭酸塩等のM系化合物も添加される。また、Agを含有させる場合には、Ag粉末やAg2O、AgNO3等のAg化合物を所定量添加する。通常、RE123粉末とBaCeO3あるいはBa(Ce,M)O3粉末に、Pt又はRhの一方又は双方を添加した混合物を出発原料とするのが、一般的である。
【0067】
BaCeO3あるいはBa(Ce,M)O3粉末は、予めボールミル粉砕した粉末や、湿式法、ゾルゲル法、噴霧熱分解法、気相法等で作製した超微細原料を用いると、結晶成長後のバルク材料中に、これらの化合物粒子をより微細に分散させることができるため、臨界電流密度の向上に非常に効果的である。
【0068】
次の工程は、出発原料の混合粉を成形して前駆体とする工程である。この工程では通常、金型に原料混合粉を充填し、加圧成形する方法が一般的であり、必要により静水圧加圧(CIP)成形も用いられる。なお、場合によっては、成形体を焼成したものを前駆体として用いても構わない。
【0069】
次いで、前駆体を電気炉内に設置し、950〜1200℃に加熱して試料を部分溶融させる。部分溶融後の試料を徐冷して、超電導相を結晶成長させて、バルク超電導体を得る。通常、大きな結晶粒を得るための徐冷速度は、0.05〜10℃/hrの範囲である。徐冷工程における雰囲気は、通常、大気中で構わない。
【0070】
しかしながら、REがLa、Nd、Sm、Eu、Gdである場合には、RE/Ba置換による超電導転移温度低下を抑える目的から、低酸素分圧とすることが望ましい。
【0071】
本発明で、単一粒からなる大型のバルク体を得るためには、超電導相を結晶成長させる前の前駆体あるいは部分溶融体に、1個又は複数個の種結晶を置くか又は埋め込んだ後、種結晶を基点として、超電導相を優先的に結晶成長させることが有効である。
【0072】
この際に用いられる種結晶は、前駆体よりも分解溶融温度が高い必要があり、RE123化合物の中で分解溶融温度が比較的高い、Nd−Ba−Cu−O系結晶、Sm−Ba−Cu−O系結晶あるいはこれらの固溶体を用いることが好ましい。
【0073】
最後に、結晶成長後のバルク体は、通常、酸素量が不足しており、酸素を付加するため、酸素雰囲気において250〜650℃の温度範囲内に加熱、保持することが必要である。この工程を経て、初めて高特性のバルク体が得ることが可能となる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例を比較例と共に説明する。
【0075】
(実施例1)
BaO2とCeO2を1:1の比で混合し、1000℃で仮焼することにより、BaCeO3粉末を合成した。このBaCeO3粉末をY123の100モル%に対して30モル%添加し、さらに、Ptを0.5質量%添加後、混合した。混合粉を一軸プレス成形することにより直径20mm、高さ約13mmの前駆体を作製した。
【0076】
この前駆体の上面に、大きさ2mm程度のNd123系種結晶を設置し、大気中、1040℃で1hr加熱し、前駆体を部分溶融させた。その後、1020℃〜980℃の範囲を0.5℃/hrの速度で徐冷し、123相を結晶成長させた。得られた試料は、c配向した単一結晶粒からなるバルク体であった。
【0077】
バルク体を450℃で100hr、酸素気流中でアニールを行ない、123結晶中に酸素を付加した。酸素アニール後の試料から、大きさ1.5×1.5×0.5mm3程度の試験片を切り出し、超電導量子干渉型磁束計(SQUID)を用いて、磁化率の温度依存性と77Kにおけるヒステリシスループを測定し、超電導転移温度と77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を求めた。
【0078】
図1に、磁化率の温度依存性を示す。超電導転移温度は90.5Kであり、これは、Y211を添加した従来のY系材料とほぼ同じ値であり、30モル%もの多量のBaCeO3を添加したにも拘らず、転移温度の低下は全く見られなかった。
【0079】
図2に、77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す。自己磁場下における臨界電流密度は、70000A/cm2以上の高い値を示した。
【0080】
(比較例1)
BaO2とCeO2を1:1の比で混合し、1000℃で仮焼することにより、BaCeO3粉末を合成した。このBaCeO3粉末をY123の100モル%に対して30モル%添加し、Ptを添加せずに、混合した。混合粉を一軸プレス成形し、直径20mm、高さ約13mmの前駆体を作製した。
【0081】
この前駆体を用いて、実施例1と同様の方法で、Y系バルク超電導体を作製し、超電導転移温度と77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を測定した。
【0082】
図1に、磁化率の温度依存性を示す。超電導転移温度は約89Kで、実施例1の試料よりも低くなり、転移幅も大きくなった。
【0083】
図2に、77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す。転移温度の低下により、臨界電流密度は低くなり、不可逆磁場も3.5T程度の非常に低い値に止まっている。
【0084】
このように、例えBaCeO3粉を添加しても、Ptが無添加の場合には、材料の特性が大きく低下することが分かる。
【0085】
(実施例2)
BaCeO3粉末の含有量をY123の100モル%に対して、5〜50モル%の範囲で変化させて、実施例1と同様の方法により、Y系バルク超電導体を作製した。酸素中でアニール後、各試料の超電導転移温度と77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を測定した。超電導転移温度は、何れの試料も90.5K前後の値を示した。
【0086】
図3に、77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す。何れの試料も低磁場から高磁場の広い範囲において、良好な臨界電流密度特性を示した。
【0087】
(実施例3)
BaO2とCeO2を1:1の比で混合し、1000℃で仮焼することにより、BaCeO3粉末を合成した。一方、Y23、BaO2及びCuOを1:1:1のモル比になるように混合し、900℃で4hr仮焼して、Y211粉末を作製した。
【0088】
作製したBaCeO3粉末及びY211粉末を、Y123に対して、それぞれ30モル%、20モル%添加し、さらに、Ptを0.5質量%添加後、混合した。混合粉を一軸プレス成形することにより、直径20mm、高さ約14mmの前駆体を作製した。
【0089】
この前駆体を用いて、実施例1と同様の方法で、Y系バルク超電導体を作製した。酸素中でアニール後、超電導転移温度と77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を測定した。
【0090】
超電導転移温度は、約90Kであった。図4に、77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を示す。本実施例の試料は、特に2T以下の低磁場領域において、高い臨界電流密度を示している。
【0091】
(比較例2)
BaO2とCeO2を1:1の比で混合し、1000℃で仮焼することにより、BaCeO3粉末を合成した。また、Y23、BaO2及びCuOを1:1:1のモル比になるように混合し、900℃で4hr仮焼して、Y211粉末を作製した。
【0092】
BaCeO3粉末及びY211粉末を、Y123の100モル%に対して、それぞれ30モル%、20モル%添加し、Ptを添加せずに、混合した。混合粉を一軸プレス成形し、直径20mm、高さ約14mmの前駆体を作製した。
【0093】
この前駆体を用いて、実施例1と同様の方法で、Y系バルク超電導体を作製した。酸素中でアニール後、超電導転移温度と77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を測定した。超電導転移温度は約88Kで、実施例3の試料よりも低くなった。
【0094】
図4に、77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す。転移温度の低下により、臨界電流密度は低くなり、不可逆磁場も低い値に止まっている。このように、BaCeO3粉とY211を同時に添加しても、Ptが無添加の場合には、材料の特性が低下することが分かる。
【0095】
(実施例4)
BaO2、CeO2、ZrO2を1:1−a:a(a=0.1、0.25)の比で混合し、1000℃で仮焼することにより、Ba(Ce1-aZra)O3粉末を合成した。Ba(Ce1-aZra)O3粉末をY123の100モル%に対して30モル%添加し、さらにPtを0.5質量%添加後、混合した。混合粉を一軸プレス成形することにより、直径20mm、高さ約13mmの前駆体を作製した。
【0096】
この前駆体を用いて、実施例1と同様の方法で、Y系バルク超電導体を作製した。試料のc軸に平行な断面を切断、研磨後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、微細組織を観察した。さらに、450℃で100hr、酸素気流中でアニールを行ない、Y123結晶中に酸素を付加した。
【0097】
酸素アニール後の試料から、大きさ1.5×1.5×0.5mm3程度の試験片を切り出し、SQUIDを用いて、超電導転移温度と77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を測定した。
【0098】
図5(b)に、Ba(Ce0.75Zr0.25)O3(a=0.25の場合)を添加して得られた試料の微細組織を、実施例1のBaCeO3を添加して得られた試料の微細組織(図5(a))と共に示す。Zr添加により、試料中に分散するBa(Ce,Zr)O3粒子(写真中の白色の粒子)が微細化されていることが明らかである。
【0099】
本実施例のZrを添加した試料の超電導転移温度は90〜90.5Kであり、無添加のものと殆ど変化しなかった。
【0100】
図6に、77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を、実施例1で得られた試料の特性と合わせて示す。Zrをa=0.1及びa=0.25含有する本発明の試料は、非常に高い臨界電流密度を有していることが分かる。
【0101】
(比較例3)
実施例4と同様の方法により、BaZrO3をY123の100モル%に対して30モル%添加し、さらにPtを0.5質量%添加した、Y系バルク超電導体を作製した。酸素中でアニールを行った後、超電導転移温度と77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を測定した。
【0102】
図6に、77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を実施例1及び5の試料の特性と合わせて示す(a=1.0の場合)。この試料では、BaZrO3の偏析が激しく見られ、試料の劣化により、臨界電流密度は極めて低い値となった。
【0103】
(実施例5)
BaO2、CeO2、ZrO2を1:0.75:0.25の比で混合し、900℃で仮焼することによりBa(Ce0.75Zr0.25)O3粉末を合成した。さらに、この粉末をZrO2−Y23ボールを媒体としたボールミルで8hr粉砕した。
【0104】
粉砕後の微粉末をY123の100モル%に対して30モル%添加し、さらに、Ptを0.5質量%添加後、混合した。混合粉を一軸プレス成形することにより、直径20mm、高さ約13mmの前駆体を作製した。この前駆体を用いて、実施例1と同様の方法で、Y系バルク超電導体を作製した。450℃で100hr、酸素アニール後、試料の77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を測定した。
【0105】
図7に、臨界電流密度の磁場依存性を示す。試料中に分散する粒子の微細化により、自己磁場下における臨界電流密度は150000A/cm2を超え、Y系のバルク超電導材料としては、これまでにない非常に高い値を達成した。
【0106】
(実施例6)
BaO2とCeO2を1:1の比で混合し、1000℃で仮焼することにより、BaCeO3粉末を合成した。このBaCeO3粉末を、Dy123の100モル%に対して5モル%添加し、さらにPtを0.5質量%添加後、混合した。混合粉を一軸プレス成形することにより、直径20mm、高さ約13mmの前駆体を作製した。
【0107】
この前駆体の上面に、大きさ2mm程度のNd123系種結晶を設置し、大気中、1040℃で1hr加熱し、前駆体を部分溶融させた。その後、1025℃〜985℃の範囲を0.5℃/hrの速度で徐冷し、Dy123相を結晶成長させた。得られた試料は、c配向した単一結晶粒からなるバルク体であった。
【0108】
バルク体を450℃で100hr、酸素気流中でアニールを行ない、Dy123結晶中に酸素を付加した。酸素アニール後の試料の超電導転移温度と77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を求めた。
【0109】
得られたDy系バルク超電導材料の超電導転移温度は、約91Kであった。図8に、77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す。自己磁場下における臨界電流密度は、実施例2に示した5モル%のBaCeO3を添加したY系材料以上の良好な特性を示している。
【0110】
(実施例7)
実施例6と同様の方法により、BaCeO3粉末をDy123の100モル%に対して30モル%添加し、さらにPtを0.5質量%添加したDy系バルク超電導体を作製した。酸素アニール後の試料の77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を、図8に示す。BaCeO3量の増加により、実施例6の試料よりも、さらに良好な特性が得られた。
【0111】
(実施例8)
BaO2、CeO2、ZrO2を1:0.75:0.25の比で混合し、1000℃で仮焼することにより、Ba(Ce0.75Zr0.25)O3粉末を合成した。この粉末をDy123の100モル%に対して30モル%添加し、さらにPtを0.5質量%添加後、混合した。混合粉を一軸プレス成形することにより、直径20mm、高さ約13mmの前駆体を作製した。
【0112】
この前駆体を用いて、実施例6と同様の方法で、Dy系バルク超電導体を作製した。酸素アニール後、77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を測定した。図8に、臨界電流密度の磁場依存性を示す。自己磁場下における臨界電流密度は、110000A/cm2以上の非常に高い値が得られた。
【0113】
(実施例9)
BaO2とCeO2を1:1の比で混合し、1000℃で仮焼することにより、BaCeO3粉末を合成した。このBaCeO3粉末とNd422粉末を、Nd123の100モル%に対して、それぞれ30モル%及び10モル%添加し、さらにPtを0.5質量%添加後、混合した。混合粉を一軸プレス成形することにより、直径20mm、高さ約14mmの前駆体を作製した。
【0114】
この前駆体の上面に、大きさ1mm程度のMgOを種結晶として設置し、1%O2を含むAr中で、1100℃で1hr加熱し、前駆体を部分溶融させた。その後、1025℃〜1000℃の範囲を0.25℃/hrの速度で徐冷し、Nd123相を結晶成長させた。
【0115】
得られたバルク超電導体を300℃で200hr、酸素気流中でアニールを行ない、Nd123結晶中に酸素を付加した。酸素アニール後の試料の超電導転移温度と、77Kでの臨界電流密度の磁場依存性を求めた。
【0116】
この試料の超電導転移温度は、約94Kであった。図9に、77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す。Nd系材料においても、良好な臨界電流密度特性が得られていることが分かる。
【0117】
(実施例10〜21)
本発明の範囲内で、種々の前駆体原料を用いて、実施例1〜9と同様の方法により、バルク試料を作製した。表1の実施例10〜21、比較例4に、前駆体の組成、及び77K、0.05Tの磁場中における臨界電流密度を示す。
【0118】
ここで、実施例14及び19は、ボールミル粉砕により微細化したBa(Ce,Zr)O3を原料としており、それ以外の実施例では、各元素の酸化物原料を1000℃で仮焼して得られたBaCeO3及びBa(Ce,M)O3-bを原料としている。本発明で得られた酸化物超電導材料は、いずれも高い臨界電流密度を有していることが明らかである。
【0119】
ただし、実施例19、20のように、BaCeO3やBa(Ce,M)O3-bの添加量が少ない場合あるいは多い場合には、他の実施例の試料に比べて、臨界電流密度がやや低い値となった。
【0120】
【表1】

【0121】
(実施例22)
BaO2とCeO2を1:1の比で混合し、1000℃で仮焼することにより、BaCeO3粉末を合成した。また、Gd23、BaO2及びCuOを1:1:1のモル比になるように混合し、900℃で4hr仮焼して、Gd211粉末を作製した。
【0122】
BaCeO3粉末及びGd211粉末をGd123の100モル%に対して、それぞれ30モル%、20モル%添加し、さらにPtを0.5質量%、Ag2O粉末を20質量%添加後、混合した。直径40mmの金型に、約120gの混合粉を充填し、予備的に一軸加圧成形を行った。
【0123】
次いで、1.96×104N/cm2の圧力で静水圧加圧(CIP)成形を行って、前駆体を作製した。1%O2を含むAr中で、1080℃に加熱し、前駆体を部分溶融した。その後、1020℃に温度を下げ、大きさ3mm程度のNd123系種結晶を種付けし、985℃〜955℃の範囲を0.25℃/hrの速度で徐冷することにより、結晶成長を行った。
【0124】
この際、前駆体の上下に5℃の温度勾配を与えながら、徐冷を行った。得られた試料は、直径32mmのc軸配向した単一粒からなる、大型のバルク超電導体であった。次に、得られたバルク体の捕捉磁場を測定した。
【0125】
即ち、450℃で250hr、酸素アニール処理を施したバルク体を、液体窒素中、5Tで磁場中冷却後、外部磁場を0Tに戻し、バルク体上面から1.2mmの位置で、ホール素子を走査して磁場分布を測定した。図10に、バルク体の捕捉磁場分布を示す。
【0126】
捕捉磁場は、同心円状に分布しており、このことは、バルク体全体が単一の結晶粒からなり、マクロなクラックや弱結合がない、極めて良質の超電導体であることを示している。なお、このバルク体の最大捕捉磁場は1.42Tであり、さらにホール素子を、直接、バルク体表面に接触させた場合、約1.6Tの高い値を示した。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】実施例1及び比較例1で得られたY系超電導材料の磁化率の温度依存性を示す図である。縦軸は、各温度で測定された磁化率の値を、10Kで測定された磁化率の値で規格化した値を表示している。
【図2】実施例1及び比較例1で得られたY系超電導材料の77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す図である。
【図3】実施例2で得られた各Y系超電導材料の77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す図である。ここで、BaCeO3量は、100モル%のY123に対する、BaCeO3の含有量である。
【図4】実施例3及び比較例2で得られたY系超電導材料の77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す図である。
【図5】実施例1及び実施例4で得られたY系超電導材料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した組織写真を示す図である。ここで、(a)は、実施例1の試料の組織写真であり、(b)は、実施例4の試料の組織写真である。
【図6】実施例4及び比較例3で得られたY系超電導材料の77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を、実施例1の試料の特性と共に示した図である。ここで、aの値は、Y123に添加した化合物の組成をBa(Ce1-aZra)O3とした場合の、Zr量を示す値である。
【図7】実施例5で得られたY系超電導材料の77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す図である。
【図8】実施例6〜8で得られたDy系超電導材料の77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す図である。
【図9】実施例9で得られたNd系超電導材料の77Kにおける臨界電流密度の磁場依存性を示す図である。
【図10】液体窒素温度(77K)で測定した、実施例22の試料の捕捉磁場分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RE1+xBa2-xCu3y(0≦x≦0.1、6.5≦y≦7.2、REはY、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの群から選ばれた少なくとも一つの元素)結晶中に、Ce及びBaを含む複合酸化物の粒子が分散しており、且つ、Pt又はRhの一方又は双方が添加されていることを特徴とする酸化物超電導材料。
【請求項2】
前記RE1+xBa2-xCu3y結晶100モル%に対して、Ce及びBaを含む複合酸化物の量が5〜60モル%の範囲で含有されている請求項1記載の酸化物超電導材料。
【請求項3】
前記Pt又はRhの一方又は双方の添加量が0.1〜5.0質量%である請求項1又は2に記載の酸化物超電導材料。
【請求項4】
前記Ce及びBaを含む複合酸化物がBaCeO3である請求項1〜3の何れか1項に記載の酸化物超電導材料。
【請求項5】
前記Ce及びBaを含む複合酸化物がBa(Ce1-aa)O3-b(0<a<0.5、0≦b≦0.5、Mは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属元素の内の少なくとも一つの元素)である請求項1〜3の何れか1項に記載の酸化物超電導材料。
【請求項6】
前記金属元素Mが、Zr、Hf又はSnの群から選ばれる少なくとも一つの元素である請求項5記載の酸化物超電導材料。
【請求項7】
前記Ce及びBaを含む複合酸化物以外に、50モル%以下のRE2BaCuO5相あるいはRE4-2zBa2+2zCu2-z10-d(0≦z≦0.1、−0.5≦d≦0.5)相の粒子が分散している請求項1〜6の何れか1項に記載の酸化物超電導材料。
【請求項8】
前記Ce及びBaを含む複合酸化物以外に、1〜50質量%のAg粒子が分散している請求項1〜7の何れか1項に記載の酸化物超電導材料。
【請求項9】
RE系化合物(ここで、REはY、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの群から選ばれた少なくとも一つの元素)、Ba系化合物、Cu系化合物、Ce系化合物又はこれらの複合化合物にPt又はRhの一方又は双方を添加した混合物を出発物質とし、これを成形して前駆体を作製し、得られた前駆体を部分的に溶融後、冷却して、超電導相を結晶成長させることを特徴とする酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項10】
前記Ce系化合物がBaCeO3である請求項9記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項11】
前記前駆体中にM系化合物(ここで、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属元素)が、Ceに対してM元素換算で等モル%未満含んでいる請求項9又は10に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項12】
前記M系化合物がBa(Ce1-aa)O3-b(0<a<0.5、0≦b≦0.5)である請求項11に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項13】
前記金属元素MがZr、Hf又はSnの群から選ばれる少なくとも一つの元素である請求項11又は12に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項14】
前記前駆体中にAg又はAg化合物の一方又は双方をAg換算で1〜50質量%含む請求項9〜13の何れか1項に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項15】
前記前駆体を部分溶融させる温度が950〜1200℃の範囲である請求項9〜14の何れか1項に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項16】
前記超電導相を結晶成長させる前の前駆体あるいは部分溶融体に、種結晶を置くか又は埋め込んだ後、種結晶を基点として超電導相を優先的に結晶成長させる請求項9〜15の何れか1項に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項17】
前記種結晶がRE’−Ba−Cu−O系結晶(RE’はNd又はSmの内の少なくとも一つの元素)である請求項16記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項18】
前記前駆体を部分溶融後、冷却するときの冷却速度が0.05〜10℃/hrの範囲である請求項9〜17の何れか1項に記載の酸化物超電導材料の製造方法。
【請求項19】
前記結晶成長後、酸素雰囲気において250〜650℃の温度範囲内に加熱、保持する請求項9〜18の何れか1項に記載の酸化物超電導材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−62896(P2006−62896A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245480(P2004−245480)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】