説明

酸化珪素粉末の製造方法

【課題】酸化珪素粉末を効率的に低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】 二酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末を、不活性ガス又は減圧下1100℃〜1450℃の温度範囲で加熱して一酸化珪素ガスを発生させ、該一酸化珪素ガスを基体表面に析出させることにより酸化珪素粉末を製造する酸化珪素粉末の製造方法において、前記混合原料粉末を、嵩密度が0.4g/cm以上、安息角が30°以下の球状粉末とすることを特徴とする酸化珪素粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用フィルム蒸着用及びリチウムイオン2次電池負極活物質等として有効とされている酸化珪素粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化珪素粉末の製造方法として、二酸化珪素系酸化物粉末からなる原料混合物を減圧非酸化性雰囲気中で熱処理し、一酸化珪素蒸気を発生させ、この一酸化珪素蒸気を気相中で凝縮させて、0.1μm以下の微細アモルファス状の酸化珪素粉末を連続的に製造する方法(特許文献1)、及び、原料珪素を加熱蒸発させて、表面組織を粗とした基体の表面に蒸着させる方法(特許文献2)が知られている。
【0003】
酸化珪素粉末は高価であり、リチウムイオン2次電池負極活物質材料として本格的な採用を目指した場合、更なるコスト低減が必要となる。そのためには、生産性を大幅に向上でき得る製造装置及び製造方法の確立が必要となってくる。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2で示されたような代表的な酸化珪素製造方法においては、コスト低減を念頭においた方法とはいえず、また、生産性向上のための手段が明記されておらず、必ずしも工業的規模の生産に耐え得る製造方法とはいえない。
【0005】
本発明者らは、上記課題を踏まえ、生産性を上げるため、従来より、種々検討を行い、過去に以下の発明を行った。一つは、特許文献3に開示した方法であり、二酸化珪素粉末を含み、混合度が0.9以上であり、嵩密度が0.3g/cm以上である混合粉末を原料とし、酸化珪素粉末を製造する方法である。また、もう一つは、特許文献4に開示した方法であり、二酸化珪素粉末と金属珪素粉末の混合原料粉末から酸化珪素粉末を製造する方法において、二酸化珪素粉末の平均粒子径が1μm以下、金属珪素粉末の平均粒子径が30μm以下である方法である。
【0006】
特許文献3、4の方法は、反応速度の著しい向上が図れ、それまでの技術に比べ、生産性が大幅に向上することが確認されたが、いまだ市場の要求する生産性には満たないものであり、更なる生産性の向上に向けた技術の確立が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−103815号公報
【特許文献2】特開平9−110412号公報
【特許文献3】特開2001−220122号公報
【特許文献4】特開2007−290890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、酸化珪素粉末を効率的に低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、二酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末を、不活性ガス又は減圧下1100℃〜1450℃の温度範囲で加熱して一酸化珪素ガスを発生させ、該一酸化珪素ガスを基体表面に析出させることにより酸化珪素粉末を製造する酸化珪素粉末の製造方法において、前記混合原料粉末を、嵩密度が0.4g/cm以上、安息角が30°以下の球状粉末とすることを特徴とする酸化珪素粉末の製造方法を提供する。
【0010】
このように、二酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末(以下、単に「混合原料粉末」とも呼ぶ。)を、嵩密度が0.4g/cm以上、安息角が30°以下の球状粉末とすることにより、加熱時の反応性が著しく向上することに加え、ハンドリング性が向上することから、酸化珪素粉末を生産性良く効率的に、すなわち低コストで製造することができる。
【0011】
この場合、前記混合原料粉末を、前記二酸化珪素粉末と前記金属珪素粉末と水との混合物を攪拌造粒機にて造粒して作製することができる。
このような造粒方法を用いて混合原料粉末を作製することにより、上記の嵩密度及び安息角の規定を満たす混合原料粉末を工業的に作製することができる。
【0012】
また、前記混合原料粉末の粒子径を0.5mm〜30mmとすることが好ましい。
このような粒子径の混合原料粉末とすることにより、嵩密度を大きくすることができるとともに、安息角を小さくすることができ、本発明で用いる混合原料粉末の粉体特性を容易に満たすことができる。
【0013】
また、前記混合原料粉末の前記二酸化珪素粉末と前記金属珪素粉末の混合モル比を、1<金属珪素粉末/二酸化珪素粉末<1.1とすることが好ましい。
このような混合モル比とすることにより、反応残(反応のための原料のうち、反応を行った後も未反応のまま残った部分)を少なくし、反応性を高めることができる。
【0014】
また、前記二酸化珪素粉末を、平均粒子径が1μm以下、BET比表面積が50m/g以上のものとすることが好ましい。
また、前記金属珪素粉末を、平均粒子径が30μm以下、BET比表面積が0.5m/g以上のものとすることが好ましい。
【0015】
二酸化珪素粉末及び金属珪素粉末のそれぞれの平均粒子径及びBET比表面積をこのようにすれば、十分な反応性及び反応速度を確保することができる。
【0016】
また、前記混合原料粉末の加熱を100Pa以下の減圧下、1300℃〜1430℃の温度範囲で行うことが好ましい。
このような条件で混合原料粉末の加熱を行うことにより、加熱時の反応性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の酸化珪素粉末の製造方法によれば、二酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末を加熱する際の反応性が著しく向上することに加え、ハンドリング性が向上することから、酸化珪素粉末を生産性良く効率的に、すなわち低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施に用いることができる酸化珪素粉末の製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例にて原料として作製した、酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記のように、特許文献3、4の方法はいまだ市場の要求する生産性には満たないものであり、更なる生産性の向上に向けた技術の確立が求められているという課題があった。
なお、特許文献3、4の酸化珪素粉末の製造方法は、下記の反応スキームに従って進行するものである。
Si(s)+SiO(s) → 2SiO(g) ・・冷却固化により回収
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するための方法について鋭意検討を行った。その結果、上記反応の前の原料である二酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末の粉体特性を規定することで、著しい反応性の向上及び効率的製造が可能となり、上記反応において、酸化珪素粉末の生産性を高め、コストを低減することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0021】
以下、本発明について、さらに詳しく説明する。
【0022】
本発明の酸化珪素粉末の製造方法は、二酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末を、不活性ガス又は減圧下1100℃〜1450℃の温度範囲で加熱して一酸化珪素ガスを発生させ、該一酸化珪素ガスを基体表面に析出させることにより酸化珪素粉末を製造するものであり、基本的な反応スキームは、特許文献3、4に記載された反応と同じく、下記の反応スキームに従って進行するものである。
Si(s)+SiO(s) → 2SiO(g) ・・冷却固化により回収
【0023】
本発明では、上記反応の原料である二酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末を、嵩密度が0.4g/cm以上、安息角が30°以下の球状粉末とすることが重要である。
【0024】
本発明に用いる混合原料粉末の嵩密度は、上記のように0.4g/cm以上とする。この嵩密度は0.45g/cm以上とすることがより好ましい。混合原料粉末の嵩密度を0.4g/cm以上とすることで、混合原料粉末を構成する個々の二酸化珪素粒子の表面と金属珪素粒子の表面との間の距離が近くなり、加熱時の反応性が向上するとともに、仕込みの際の単位炉内容積に対する仕込み量が増加し、生産性が向上する。このように混合原料粉末の嵩密度を0.4g/cm以上とする方法としては、ガス圧、水圧等で圧密化したり、混合原料粉末に水を添加し、その吸着力により圧密化する方法がある。なお、本発明において、嵩密度は、粉体特性測定装置(ホソカワミクロン株式会社製 パウダーテスタPT−R型)記載の方法により測定できる。
【0025】
また、本発明の混合原料粉末の安息角は、上記のように30°以下とする。この安息角は25°以下とすることがより好ましい。混合原料粉末の安息角が30°より大きい場合、流動性が悪く、製造装置内への仕込みに人手と時間がかかり、効率的ではないとともに、製造装置内の仕込容器への充填率が悪くなり、嵩密度が低下する。また、混合原料粉末の安息角が30°より大きい場合には、連続的に原料を供給する方法にて酸化珪素粉末を製造した場合には、供給の脈動が大きくなり、供給量がバラツクといった問題が生じる。一方、本発明のように、安息角が30°以下の混合原料粉末を用いた場合、仕込みの自動化が容易になることに加え、酸化珪素粉末製造中の原料連続供給も安定し、容易となり、酸化珪素粉末の連続製造も可能となる。なお、本発明において、安息角は、粉体特性測定装置(ホソカワミクロン株式会社製 パウダーテスタPT−R型)記載の方法により測定できる。
【0026】
上記の粉体特性(嵩密度及び安息角)を満たすには、混合原料粉末が不定形では困難であり、本発明においては、混合原料粉末の形状は球状とする。混合原料粉末の形状を球状とすることで、粉末の流動性が向上して安息角が30°以下となるし、粉末の充填率も向上することから、嵩密度も0.4g/cm以上とすることができる。
【0027】
なお、本発明で用いる混合原料粉末の粒子径については、0.5mm〜30mmとすることが好ましく、1mm〜20mmとすることが特に好ましい。混合原料粉末の粒子径が0.5mm以上であれば、嵩密度が低下しすぎることはなく、安息角を小さくすることができ、本発明で用いる混合原料粉末の粉体特性を容易に満たすことができる。また、混合原料粉末の粒子径が30mm以下であれば、嵩密度が低下しすぎることはなく、本発明で用いる混合原料粉末の粉体特性を容易に満たすことができる。
【0028】
また、本発明で用いる混合原料粉末の粒度分布に関しては、0.5mm〜30mmの範囲でブロードな(分布の幅が広い)ものとすることが好ましい。粒度分布をブロードなものとすることで粉体の細密充填が可能となり、より嵩密度が大きな混合原料粉末を得ることができる。
【0029】
上記粉体特性を有する球状原料粉末の製造方法については、特に限定されるものではないが、工業的に製造できうる方法としては、二酸化珪素粉末と金属珪素粉末と水との混合物を攪拌造粒機にて造粒する方法が好ましい。
【0030】
本発明に用いる二酸化珪素粉末の平均粒子径は1μm以下とすることが好ましく、0.001〜0.5μmとすることがより好ましく、0.001〜0.1μmとすることがより好ましい。また、本発明に用いる金属珪素粉末の平均粒子径は30μm以下とすることが好ましく、0.05〜30μmとすることがより好ましく、0.1〜20μmとすることが特に好ましい。本発明に用いる二酸化珪素粉末の平均粒子径が1μm以下であれば、あるいは、金属珪素粉末の平均粒子径が30μm以下であれば、十分な反応性を確保でき、反応残を少なくすることができるとともに、十分な反応速度を確保することができ、生産性の低下を避けることができる。本発明において、平均粒子径はレーザー光回折法による粒度分布測定における累積重量平均値D50(又はメジアン径)等として測定することができる。
【0031】
また、本発明に用いる二酸化珪素粉末のBET比表面積は、50m/g以上とすることが好ましく、70m/g〜500m/gとすることがより好ましく、100m/g〜400m/gとすることが特に好ましい。また本発明に用いる金属珪素粉末のBET比表面積は、0.5m/g以上とすることが好ましく、0.5m/g〜50m/gとすることがより好ましく、0.5m/g〜30m/gとすることが特に好ましい。二酸化珪素粉末のBET比表面積が50m/g以上、又は金属珪素粉末のBET比表面積が0.5m/g以上であれば、各々の粒子の接触面積が大きくなることで加熱時の反応性を向上させることができる。なお、このBET比表面積の規定は、Nガス吸着量によって測定するBET1点法にて測定した値である。
【0032】
この場合、使用する二酸化珪素粉末の種類は特に限定しないが、コスト面でヒュームドシリカを用いることが望ましい。また、金属珪素粉末についても特に限定されるものではなく、塊状の金属珪素をボールミル、媒体攪拌型粉砕機、ジェットミル等一般的な粉砕機を用いて、所定の粒度に粉砕することで作製することができる。
【0033】
また、混合原料粉末の二酸化珪素粉末と金属珪素粉末との混合割合は、上記反応式からは等モル混合が理想であるが、本発明者らの検討によれば、若干、金属珪素粉末の混合割合が多い方が、加熱時の反応性が向上することが確認された。これは、金属珪素粉末表面の自然酸化膜あるいは反応炉中の微量酸素の存在が影響しているものと推測される。すなわち、混合原料粉末の二酸化珪素粉末と金属珪素粉末の混合モル比を、1<金属珪素粉末/二酸化珪素粉末<1.1とすることが好ましい。この混合モル比は、1.01≦金属珪素粉末/二酸化珪素粉末≦1.08の範囲であることがより好ましい。金属珪素粉末/二酸化珪素粉末の混合モル比が1を超えていれば、反応残中の二酸化珪素の割合量を少なくすることができ、反応の完全性を高めることができる。また、金属珪素粉末/二酸化珪素粉末の混合モル比が1.1未満であれば、反応残中の金属珪素の割合量を少なくすることができ、同様に反応の完全性を高めることができる。
【0034】
ここで、二酸化珪素粉末と金属珪素粉末の混合条件は特に限定されないが、混合度が高い程、加熱時の反応性は向上する傾向にあり、混合度を上げる手段としてボールミル型混合機、高速剪断型混合機等が好適に用いられる。
【0035】
また、場合によっては、混合原料粉末に水を添加し、その吸着力によって接触効率を上げることもできる。なお、この場合、水を添加、混合後、乾燥したものを原料として用いる。ここで、水の添加率により嵩密度を調整することができ、一般的には水添加率が高いほど、嵩密度が高くなる傾向がある。水/原料粉末の比率は、1以上、1.5未満とすることが好ましく、1.05以上、1.4未満とすることが特に好ましい。水/原料粉末の比率が1以上であれば嵩密度を十分に高くすることができ、容易に本発明の嵩密度の範囲内とすることができる。また、水/原料粉末の比率が1.5未満であれば、混合原料粉末の造粒ができないような事態にはならない。
【0036】
本発明では、上記物性を有する二酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末を、不活性ガス又は減圧下1100℃〜1450℃の温度範囲で加熱して一酸化珪素ガスを発生させる。ここで、加熱時の反応性の向上には、上記反応を行う反応炉の炉内雰囲気、特に真空度が大きく影響する。反応炉内雰囲気は減圧下とすることが望ましく、特に真空度100Pa以下での反応が好ましい。この真空度は、1〜100Paとすることが好ましく、10〜100Pa程度とすることが特に好ましい。また、本発明の反応雰囲気としては、減圧した不活性ガス雰囲気を当然含む。
【0037】
また、この反応温度は上記のように1100℃〜1450℃であり、特に1300〜1430℃が好ましい。反応温度が1100℃より低いと一酸化珪素ガスの蒸気圧が小さく、加熱時の反応性が低下し、反応に長時間を要することで効率が低下するし、逆に1450℃より高い場合、原料である金属珪素粉末が溶融し、反応性が低下する。
【0038】
次に、発生した一酸化珪素ガスを基体表面に析出させることにより酸化珪素粉末を製造する。ここで、一酸化珪素ガスを析出する基体(析出基体)の材質、形状は特に限定されるものではなく、SUS(ステンレス鋼)、銅板、モリブデン、タングステン等の金属、黒鉛、アルミナ、ムライト、炭化珪素、窒化珪素等のセラミックス等がその目的、用途により適宜選定・使用でき、これらの中でも極力Fe、Alを含有しないものが好ましく、また、その強度、コスト優位性からは、Feを含むものではあるがSUSを用いることが好ましい。
【0039】
上記基体上に析出した酸化珪素粉末は、掻き取り等の適宜な手段により回収する。
【0040】
本発明の酸化珪素粉末の製造方法において、混合原料粉末の加熱及び一酸化珪素ガスの析出に用いる装置は、本発明の条件で加熱及び析出を行うことができるものであれば、特に限定されない。例えば、混合原料粉末の加熱と一酸化珪素ガスの析出を、反応炉内に基体を設置することにより行うこともできるし、反応を行うための反応炉と、析出を行うための析出室を個別に配置することもできる。
【0041】
また、反応炉や析出室等の大きさ、形状については特に限定されないが、気密性が悪い場合、基体に析出する析出物の酸素量が多くなるため、100lusec(ルーセック、1リットルの真空容器において、毎秒1μHgの圧力上昇のある洩れ量に相当する。1lusec=1/760atm・ml/sec≒1.32×10−3atm・ml/sec、1lusec≒1.33×10−4Pa・m/sec)以下の漏れ量である気密性の高い装置が好ましい。
【0042】
また、製造方式についても特に限定されるものではなく、連続法、回分法等適宜選定されるが、本発明の混合原料粉末は、流動性が高く、原料供給が容易にできるため、連続法において特に大きな効果を得ることができる。
【0043】
本発明の酸化珪素粉末の製造方法に用いる装置としては、例えば図1に示す連続式の製造装置100を挙げることができる。ここで、図1に示した製造装置100は、混合原料粉末5を加熱して反応させるための容器である反応炉2、及び、反応炉2内に設置され、混合原料粉末5を保持する反応容器4を具備する。混合原料粉末5は、スクリューフィーダー1から連続的に反応炉2内に供給される。また、反応炉2内には、反応容器4の外周にヒーター3が設置されている。ヒーター3は、反応容器4内に供給した混合原料粉末5を加熱し、1100℃〜1450℃の温度範囲に保持することができるものである。また、製造装置100は、反応炉2に連通し、一酸化珪素ガスの析出を行うための析出室6、析出室6内に設置された基体7、及び反応炉2及び析出室6の減圧を行うための真空ポンプ8等を具備する。そのほか、混合原料粉末の加熱を不活性ガス雰囲気下で行う場合には、製造装置100は反応炉2及び析出室6に不活性ガスを流すための機構(不図示)等を具備することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において、平均粒子径はレーザー光回折法による粒度分布測定における累積重量平均値(D50)として測定した値、BET比表面積はNガス吸着量によって測定するBET1点法にて測定した値、嵩密度と安息角は、粉体特性測定装置(ホソカワミクロン株式会社製 パウダーテスタPT−R型)記載の方法により測定した値である。
【0045】
[実施例1]
図1に示す製造装置100を用いて、酸化珪素粉末を製造した。原料は、BET比表面積200m/gのヒュームドシリカ粉末と平均粒子径8μm、BET比表面積4.8m/gの金属珪素粉末とを、金属珪素粉末/二酸化珪素粉末モル比=1.05の割合で混合した混合粉末40kgに水を60kg添加し、攪拌造粒機インテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社製)にて攪拌造粒を行い、150℃で12時間乾燥・脱水した混合原料粉末である。得られた混合原料粉末は、嵩密度=0.52g/cm、安息角=23°、粒径=0.5〜5mmの球状の粒子であった(図2参照)。
【0046】
この混合原料粉末をスクリューフィーダー1に全量仕込んだ後、真空ポンプ(油回転ポンプ)8を作動させ、反応炉2の炉内圧力が100Pa以下に到達した時点で、ヒーター3に通電し、1400℃の温度に昇温・保持した。次に、スクリューフィーダー1を作動させ、2kg/hrの割合で、混合原料粉末5を、内部に容積0.3mの反応容器4が設置されている反応炉2内に供給した。このようにして反応炉2内で混合原料粉末5を加熱することにより発生した一酸化珪素ガスは、析出室6に移動し、析出室6内に設置されているSUS製の基体7の表面に酸化珪素として析出した。この運転を20時間行い、スクリューフィーダー1を停止し、さらに2時間の反応を行った後、ヒーター3への加熱を停止し、運転を終了した。その後、室温まで冷却させ、析出室6内のSUS製の基体7に析出した酸化珪素を回収した。その結果、反応残量は、0.3kg、酸化珪素析出量は、37.3kgであり、運転上特に問題なく、効率的に酸化珪素粉末を製造できることを確認した。
【0047】
[比較例1]
実施例1と同様な混合粉末40kgに水を40kg添加したものを押出し造粒機にて造粒した造粒物を酸化珪素粉末製造用の混合原料粉末として用いた他は、実施例1と同様な方法で酸化珪素粉末を製造した。なお、上記造粒により得られた混合原料粉末は、円柱状であり、嵩密度=0.45g/cm、安息角=38°、粒径=2〜20mmであった。
【0048】
その結果、反応残量は、4.8kg、酸化珪素析出量は、32.5kgであり、実施例1に比べ、生産性に劣るものであった。その原因は、混合原料粉末の流動性が悪いため、その供給時に脈動が起き、供給量のバラツキが大きかったためと推測された。
【0049】
[比較例2]
実施例1と同様な混合粉末40kgに水を30kg添加したものを、実施例1と同じ攪拌造粒機インテンシブミキサー(日本アイリッヒ株式会社製)にて攪拌造粒を行った他は、実施例1と同様な方法で酸化珪素粉末を製造した。なお、上記造粒により得られた混合原料粉末は、嵩密度=0.35g/cm、安息角=28°、粒径=0.1〜3mmの球状に近い粒子であった。
【0050】
その結果、反応残量は、7.2kg、酸化珪素析出量は、26.1kgであり、実施例1に比べ、生産性に劣るものであった。加えて、混合原料粉末供給時に微粉の発生が多く、発生した酸化珪素ガスと同伴されることで、原料微粉末が析出室6に混入してしまった。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1…スクリューフィーダー、 2…反応炉、 3…ヒーター、 4…反応容器、
5…混合原料粉末、 6…析出室、 7…基体、 8…真空ポンプ、
100…酸化珪素粉末の製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化珪素粉末と金属珪素粉末を含む混合原料粉末を、不活性ガス又は減圧下1100℃〜1450℃の温度範囲で加熱して一酸化珪素ガスを発生させ、該一酸化珪素ガスを基体表面に析出させることにより酸化珪素粉末を製造する酸化珪素粉末の製造方法において、前記混合原料粉末を、嵩密度が0.4g/cm以上、安息角が30°以下の球状粉末とすることを特徴とする酸化珪素粉末の製造方法。
【請求項2】
前記混合原料粉末を、前記二酸化珪素粉末と前記金属珪素粉末と水との混合物を攪拌造粒機にて造粒して作製することを特徴とする請求項1に記載の酸化珪素粉末の製造方法。
【請求項3】
前記混合原料粉末の粒子径を0.5mm〜30mmとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸化珪素粉末の製造方法。
【請求項4】
前記混合原料粉末の前記二酸化珪素粉末と前記金属珪素粉末の混合モル比を、1<金属珪素粉末/二酸化珪素粉末<1.1とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の酸化珪素粉末の製造方法。
【請求項5】
前記二酸化珪素粉末を、平均粒子径が1μm以下、BET比表面積が50m/g以上のものとすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の酸化珪素粉末の製造方法。
【請求項6】
前記金属珪素粉末を、平均粒子径が30μm以下、BET比表面積が0.5m/g以上のものとすることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の酸化珪素粉末の製造方法。
【請求項7】
前記混合原料粉末の加熱を100Pa以下の減圧下、1300℃〜1430℃の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の酸化珪素粉末の製造方法。

【図1】
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【図2】
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