説明

酸化的に分解され得る食品を輸送または保管するシステムおよび方法

【課題】圧力安定した密閉可能なトートを提供する。
【解決手段】酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用な制限された酸素透過性の圧力安定した密閉可能なトート106であって、トートは、a)アノードおよびカソードを備え、水素および酸素を水に変換する能力のある燃料電池104であって、燃料電池はトートの内部にある、燃料電池と、b)トートの内部の水素供給源を維持するのに適している保持要素、または、外部の水素供給源から燃料電池のアノードと気体による連絡をする入口とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)(1)のもとで、2006年6月30日出願の米国仮特許出願第60/818,269号および2006年12月22日出願の第60/871,566号の利益を主張し、両出願は、本明細書にそれらの全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、捕獲された新鮮な魚などの酸化的に分解され得る食品の保管寿命を伸ばすシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
魚、肉、家禽の肉、パン・菓子類の商品、果物、穀物、および野菜などの酸化的に分解され得る食品の保管寿命は、通常の大気環境が存在すると制限される。通常の大気環境において見出されるレベルでの酸素の存在は、臭い、風味、色、および歯ごたえの変化を導き、化学的な影響または好気性腐敗微生物の生長のいずれかによる品質の全体的な劣化という結果になる。
【0004】
MA包装(modified atmosphere packaging)(MAP)は、腐敗有機体および病原菌の抑制によって保管される食物の保管寿命および安全性を向上させるために、用いられてきた。MAPは、食物保管パック内の通常の大気環境を単一の気体または気体の混合物に取り替える。MAPにおいて用いられる気体は、最も多くは、酸素(O)、窒素(N)および二酸化炭素(CO)の組み合わせである。細菌発育抑制の効果は、多くの場合において、濃度の減少したOと濃度の増加したCOとの組み合せによって得られる。非特許文献1。
【0005】
従来のMAPシステムにおいて、MAP気体の組成は、通常の大気環境の最初の取替え後、操作されない。従って、食物パックに存在する気体の組成は、製品への気体の拡散および製品からの気体の拡散と、食物パックへの気体の拡散および食物パックからの気体の拡散と、微生物の代謝の影響とにより、時間の経過に従い変化する傾向にある。
【0006】
MAPシステムおよび関係する技術は、食品の運送および保管のために使用されてきた。しかしながら、これらのシステムは、魚などの酸化的分解の影響を受けやすい食品の配達に関して重大な制限を課した。第1に、そして最も重要なこととして、これらのシステムの冷却および酸素除去のプロセスは、一つの密閉されたコンテナ(典型的には冷蔵貨物コンテナ−冷凍ユニット(refeer unit))に統合され、その結果、開放時に積み荷全体が周囲の大気の状態に曝された。このことは、種々の配達場所に食品を分ける能力を制限し、典型的には、開放時に買い手が製品全体を得ることを必要とした。第2に、酸素除去プロセスをコンテナに統合することは、密閉されたコンテナにおける不注意な開封または時期尚早の開封が製品全体を危険にさらすことを強いた。第3に、酸素除去プロセスを貨物コンテナに統合することは、保管および/または輸送中にコンテナ内において別個の大気の状態を許容せず、それによってプロセスの融通性を制限した。第4に、貨物コンテナの密閉は、特にコンテナ内の気圧がコンテナ外の気圧よりも低くなったとき困難さを呈した。
【0007】
上記に論議されるような従来のMAPシステムの他に、特許文献1によって開示されるような、酸素を除去するために外部の燃料電池を用いて腐りやすい食品を輸送するシステムが開発されてきた。この特許は、密閉されたコンテナの外に燃料電池反応の生成物の少なくとも1つを放出することが必要とされる程度まで、密閉されたコンテナの外部で動作する燃料電池の使用を記述した。さらに、特許文献1(’986特許)に記述されるシステムは、燃料電池に電力を供給するために専用の電源を使用することを必要とした。
【0008】
上記のシステムは、酸化的に分解され得る食品の長期の輸送または保管を望ましくなくする多くの不利な点を有する。従って、輸送および保管中の酸化的に分解され得る物質の保管寿命を増加させ、従来の運送および保管の技術の不利な点のうちの1つ以上を避ける、改良されたシステムに対するニーズが存在する。さらに、輸送される食品のモジュラーパッケージを様々な目的地に輸送し、次いでそれらの目的地においてモジュラーパッケージのすべてより少ないパッケージを、残りのモジュラーパッケージの保存環境を損なわずに、下ろす能力を有することは有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,179,986号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Farber,J.M.1991.Microbiological aspects of modified−atmosphere packaging technology:a review.J.Food Protect.54:58−70
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、食品および特に新鮮な魚の保管寿命を伸ばすことに有用な、トート(tote)、パッケージングモジュール、システム、および方法を提供する。本発明の一局面は、酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用な制限された酸素透過性の圧力安定した密閉可能なトートを提供する。トートは、トートの内部に含まれ、水素および酸素を水に変換する能力のある1つ以上の燃料電池を備えている。一実施形態において、トートは、トートの内部にある水素供給源を維持するのに適している保持要素をさらに備えている。トート内の水素供給源のための保持要素は、好ましくは、水素供給源および燃料電池を保持するように構成される箱である。あるいは、外部の水素供給源が燃料電池のアノードと気体による連絡をして、それによってトートの内部に水素を提供する場合、水素供給源はトートの外部にあり得る。
【0012】
好ましい実施形態において、トートは、へこんだときまたは膨張したときに穴のあかない、柔軟性のある材料、へこみ可能な材料、または膨張可能な材料を備えているトート、および、約0.5atmまでの、外部の圧力と内部の圧力との圧力差までその構造上の完全性を維持する能力のある剛性材料を備えているトートからなる群から選択される。
【0013】
本発明の別の局面は、酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用なパッケージングモジュールであって、該パッケージングモジュールは、制限された酸素透過性の圧力安定した密閉されたトートと、酸化的に分解され得る食品と、水素および酸素を水に変換する能力のある、トートの内部にある燃料電池と、トートの内部にある水素とを備えている、パッケージングモジュールを提供する。
【0014】
本発明のさらに別の局面は、酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用なシステムであって、該システムは、1つ以上のパッケージングモジュールを備えている、システムを提供する。各パッケージングモジュールは、制限された酸素透過性の圧力安定した密閉されたトートと、酸化的に分解され得る食品と、水素および酸素を水に変換する能力のある、トートの内部にある燃料電池と、トートの内部にある水素とを備えている。
【0015】
パッケージングモジュールおよびシステムの好ましい実施形態において、トートは、へこんだときまたは膨張したときに穴のあかない、柔軟性のある材料、へこみ可能な材料、または膨張可能な材料を備えているトート、および、約0.5atmまでの、外部の圧力と内部の圧力との圧力差までその構造上の完全性を維持する能力のある剛性材料を備えているトートからなる群から選択される。一部の実施形態において、パッケージングモジュールは、トートの内部にあり、水素供給源を維持するのに適している保持要素をさらに備えており、好ましくは、トート内の水素供給源のための保持要素は、水素供給源および燃料電池を保持するように構成される箱である。他の実施形態において、外部の水素供給源が燃料電池のアノードと気体による連絡をして、それによってトートの内部に水素を提供する場合、水素供給源はトートの外部にあり得る。
【0016】
さらに好ましい実施形態において、パッケージングモジュールは、輸送または保管中、パッケージングモジュール内の正圧を維持するための気体供給源を含まない。
【0017】
輸送および/または保管される酸化的に分解され得る食品は、好ましくは魚である。より好ましくは、上記魚は、サケと、ティラピアと、マグロと、エビと、トラウトと、ナマズと、アメリカチヌと、シーバスと、ストライプドバスと、レッドドラムと、コバンアジと、コダラと、メルルーサと、オヒョウと、タラと、ホッキョクイワナとからなる群から選択される新たに捕獲された魚である。最も好ましくは、輸送または保管される新鮮な魚は、サケまたはティラピアである。
【0018】
さらに、一部の実施形態において、水素供給源は、嚢状の水素供給源、剛性の容器の水素供給源、または、二酸化炭素および体積で5%未満の水素を含有する気体の混合物のいずれかである。上記のように、水素供給源は、トート/モジュールの内部または外部にあり得る。一部の実施形態において、パッケージングモジュールは、さらにファンを備え、好ましくは、ファンは燃料電池により電力供給される。
【0019】
一部の実施形態において、システムは、パッケージングモジュールの外部にある温度制御システムをさらに備え、食品の新鮮さを維持するのに十分なレベルでモジュール内の温度を維持する。
【0020】
本発明の別の局面は、上記のパッケージングモジュールを用いて、酸化的に分解され得る食品を輸送および/または保管する方法を提供する。上記方法は、酸化的に分解され得る物質を含むパッケージングモジュール内の酸素を除去し、パッケージングモジュール内に酸素の減少した環境を生成するステップと、トートを密閉するステップと、輸送または保管中に燃料電池を動作させ、その結果、トート内に存在する水素によって酸素は水に変換され、トート内に酸素の減少した環境を維持するステップと、トート内の物質を輸送または保管するステップとを包含する。パッケージングモジュールは、制限された酸素透過性の圧力安定した密閉可能なトートと、該トートの内部にある燃料電池と、トートの内部に水素を提供する水素供給源とを備えている。
【0021】
本発明のさらに別の局面は、酸化的に分解され得る食品を輸送および/または保管する方法を提供し、該方法は、酸化的に分解され得る物質を含む、制限された酸素透過性の圧力安定した密閉されたトートを取得するステップであって、トートは燃料電池および水素の供給源を備えているモジュールに接続され、その結果、燃料電池のアノードはトートの環境と直接の連絡する、ステップと、輸送または保管中、燃料電池を動作させ、その結果、トート内の酸素は燃料電池によって水に変換されるステップと、トート内に物質を輸送または保管するステップとを包含する。本発明のこの局面の一部の実施形態において、モジュールは、気体交換の自然の最小化または停止を可能にするのに十分な初期期間後、トートから分離される。一部の実施形態において、初期期間は約0.5〜50時間である。さらに一部の実施形態において、酸素レベルが所定のレベルに達したとき、および所定のレベル未満に維持されるときに、モジュールはトートから接続解除される。一部の実施形態において、酸素の所定のレベルは5%酸素v/v未満である。一部の好ましい実施形態において、酸素の所定のレベルは1%酸素v/v未満である。
【0022】
他の実施形態において、燃料電池は、気体交換の自然の最小化または停止を可能にするのに十分な初期期間後、動作を停止するようにプログラムされる。一部の実施形態において、初期期間は約0.5〜50時間である。さらに他の実施形態において、酸素レベルが所定のレベルに達したとき、および所定のレベル未満に維持されるときに、燃料電池は動作を停止するようにプログラムされる。一部の実施形態において、酸素の所定のレベルは5%酸素v/v未満である。一部の好ましい実施形態において、酸素の所定のレベルは1%酸素v/v未満である。
【0023】
本発明のさらに別の局面は、酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用な、制限された酸素透過性の圧力安定した密閉されたトートを提供し、該トートは、水素および酸素を水に変換する能力のある、トートの内部にある燃料電池と、トートの内部にある水素供給源を維持することが適している保持要素または外部の水素供給源から燃料電池のアノードと気体による連絡をする入口と、燃料電池のアノードと連絡する二酸化炭素リムーバとを備えている。一部の実施形態において、二酸化炭素リムーバは、消石灰を備えている。
【0024】
二酸化炭素リムーバまたは二酸化炭素アブソーバまたは二酸化炭素スクラバは、本明細書において互いに交換可能に用いられる。
【0025】
一実施形態において、酸素除去プロセスはトートに食品を追加する前に行なわれる。別の実施形態において、該プロセスはトートに食品を追加した後に行なわれる。
【0026】
上記方法は、最大100日間の期間、食品を輸送および保管するときに用いられ得る。例えば、保管の期間は、5〜50日間であり、あるいは、15〜45日間である。一部の実施形態において、方法は、輸送または保管中に物質の新鮮さを維持するのに十分なトート内の温度を維持することをさらに包含する。
【0027】
好ましい実施形態において、上記方法は、酸素の減少した環境が1%未満の酸素を含有するように、あるいは、酸素の減少した環境が0.1%未満の酸素を含有するように、あるいは、酸素の減少した環境が0.01%未満の酸素を含有するように、実行される。
【0028】
好ましくは、酸素の減少した環境は、低酸素(<0.1%O)〜無酸素と、二酸化炭素と、窒素と、低水素(<0.1%H)〜無水素とを含有し、二酸化炭素と水素とを含有し、二酸化炭素と窒素とを含有し、窒素を含有し、または、二酸化炭素と、窒素と、水素とを含有する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用な制限された酸素透過性の圧力安定した密閉可能なトートであって、
a)アノードおよびカソードを備え、水素および酸素を水に変換する能力のある燃料電池であって、該燃料電池は該トートの内部にある、燃料電池と、
b)該トートの内部の水素供給源を維持するのに適している保持要素、または、外部の水素供給源から該燃料電池の該アノードと気体による連絡をする入口と
を備えている、トート。
(項目2)
上記トートは、へこんだときまたは膨張したときに穴のあかない、柔軟性のある材料、へこみ可能な材料、または膨張可能な材料を備えているトート、および、約0.5atmまでの、外部の圧力と内部の圧力との圧力差までその構造上の完全性を維持する能力のある剛性材料を備えているトートからなる群から選択される、項目1に記載のトート。
(項目3)
上記トート内の上記水素供給源のための上記保持要素は、該水素供給源および上記燃料電池を保持するように構成される箱である、項目1に記載のトート。
(項目4)
上記トートは、外部の水素供給源から上記燃料電池の上記アノードと気体による連絡をする入口を備えている、項目1に記載のトート。
(項目5)
酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用なパッケージングモジュールであって、
a)制限された酸素透過性の圧力安定した密閉されたトートと、
b)酸化的に分解され得る食品と、
c)カソードおよびアノードを備え、水素および酸素を水に変換する能力のある燃料電池であって、該燃料電池は該トートの内部にある、燃料電池と、
d)該トートの内部または外部にある水素供給源であって、該水素供給源が該トートの外部にあるとき、該トートは該外部の水素供給源から該燃料電池の該アノードと気体による連絡をする入口を備えている、水素供給源と
を備えている、パッケージングモジュール。
(項目6)
上記トートは、へこんだときまたは膨張したときに穴のあかない、柔軟性のある材料、へこみ可能な材料であるか、または膨張可能である材料を備えているトート、および、約0.5atmまでの、外部の圧力と内部の圧力との圧力差までその構造上の完全性を維持する能力のある剛性材料を備えているトートからなる群から選択される、項目5に記載のパッケージングモジュール。
(項目7)
上記水素供給源は上記トートの内部にあり、該トートは該水素供給源を維持するのに適している保持要素をさらに備えている、項目5に記載のパッケージングモジュール。
(項目8)
上記トート内の上記水素供給源のための上記保持要素は、該水素供給源および上記燃料電池を保持するように構成される箱である、項目7に記載のパッケージングモジュール。
(項目9)
上記パッケージングモジュールは、輸送または保管中、該パッケージングモジュール内の正圧を維持するための気体供給源を含まない、項目5に記載のパッケージングモジュール。
(項目10)
上記水素供給源は上記トートの外部にある、項目5に記載のパッケージングモジュール。
(項目11)
上記食品は魚である、項目5に記載のパッケージングモジュール。
(項目12)
上記魚は、サケと、ティラピアと、マグロと、エビと、トラウトと、ナマズと、アメリカチヌと、シーバスと、ストライプドバスと、レッドドラムと、コバンアジと、コダラと、メルルーサと、オヒョウと、タラと、ホッキョクイワナとからなる群から選択される新鮮な魚である、項目11に記載のパッケージングモジュール。
(項目13)
上記新鮮な魚はサケまたはティラピアである、項目12に記載のパッケージングモジュール。
(項目14)
上記水素供給源は、嚢状の水素供給源または剛性の容器の水素供給源からなる群から選択される、項目6に記載のパッケージングモジュール。
(項目15)
上記水素供給源は、気体の混合物であり、該気体の混合物は、二酸化炭素と、体積で5%未満の水素を包含する、項目5に記載のパッケージングモジュール。
(項目16)
ファンをさらに備えている、項目5に記載のパッケージングモジュール。
(項目17)
上記ファンは上記燃料電池により電力供給される、項目16に記載のパッケージングモジュール。
(項目18)
酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用なシステムであって、
a)1つ以上のパッケージングモジュールであって、各パッケージングモジュールは、
i)制限された酸素透過性の圧力安定した密閉されたトートと、
ii)酸化的に分解され得る食品と、
iii)アノードおよびカソードを備え、水素および酸素を水に変換する能力のある燃料電池であって、該燃料電池は該トートの内部にある、燃料電池と、
iv)該トートの内部または外部にある水素供給源であって、該水素供給源が該トートの外部にあるとき、該トートは該外部の水素供給源から該燃料電池の該アノードと気体による連絡をする入口をさらに備えている、水素供給源と
を備えているパッケージングモジュールを備えている、システム。
(項目19)
上記パッケージングモジュールの外部にある温度制御システムをさらに備え、該システムは、上記食品の新鮮さを維持するのに十分なレベルの該モジュール内の温度を維持する、項目18に記載のシステム。
(項目20)
上記トートは、へこんだときまたは膨張したときに穴のあかない、柔軟性のある材料、へこみ可能である材料、または膨張可能である材料を備えているトート、および、約0.5atmまでの、外部の圧力と内部の圧力との圧力差までその構造上の完全性を維持する能力のある剛性材料を備えているトートからなる群から選択される、項目18に記載のシステム。
(項目21)
上記パッケージングモジュールは、上記トートの内部にある水素供給源を維持するのに適している保持要素をさらに備えている、項目18に記載のシステム。
(項目22)
上記トート内の上記水素供給源のための上記保持要素は、該水素供給源および上記燃料電池を保持するように構成される箱である、項目21に記載のシステム。
(項目23)
上記パッケージングモジュールは、輸送または保管中、該パッケージングモジュール内の正圧を維持するための気体供給源を含まない、項目18に記載のシステム。
(項目24)
上記水素供給源は上記トートの外部にあり、該トートは該外部の水素供給源から上記燃料電池の上記アノードと気体による連絡をする入口をさらに備えている、項目18に記載のシステム。
(項目25)
上記食品は魚である、項目18に記載のシステム。
(項目26)
上記魚は、サケと、ティラピアと、マグロと、エビと、トラウトと、ナマズと、アメリカチヌと、シーバスと、ストライプドバスと、レッドドラムと、コバンアジと、コダラと、メルルーサと、オヒョウと、タラと、ホッキョクイワナとからなる群から選択される新鮮な魚である、項目25に記載のシステム。
(項目27)
上記新鮮な魚はサケまたはティラピアである、項目26に記載のシステム。
(項目28)
上記水素供給源は、水素を含む嚢である、項目21に記載のシステム。
(項目29)
上記水素供給源は、気体の混合物であり、該気体の混合物は、二酸化炭素と、体積で5%未満の水素とを含有する、項目21に記載のシステム。
(項目30)
上記パッケージングモジュールはファンをさらに備えている、項目18に記載のシステム。
(項目31)
上記ファンは上記燃料電池により電力供給される、項目30に記載のシステム。
(項目32)
酸化的に分解され得る食品を輸送および/または保管する方法であって、
a)酸化的に分解され得る物質を含むパッケージングモジュール内の酸素を除去し、パッケージングモジュール内に酸素の減少した環境を生成することであって、該パッケージングモジュールは、制限された酸素透過性の圧力安定した密閉可能なトートと、該トートの内部にある燃料電池と、該トートの内部にある水素の供給源とを備えている、ことと、
b)該トートを密閉することと、
c)輸送または保管中に該燃料電池を動作させることであって、その結果、該トート内に存在する水素によって酸素は水に変換され、該トート内で酸素の減少した環境を維持する、ことと、
d)該トート内の物質を輸送または保管することと
を包含する、方法。
(項目33)
上記輸送または保管することは5〜50日間の期間行なわれる、項目32に記載の方法。
(項目34)
上記輸送または保管することは15〜45日間の期間行なわれる、項目33に記載の方法。
(項目35)
輸送または保管中に上記物質の新鮮さを維持するのに十分な上記トート内の温度を維持することをさらに包含する、項目32に記載の方法。
(項目36)
上記トートは、へこんだときまたは膨張したときに穴のあかない、柔軟性のある材料、へこみ可能である材料、または膨張可能である物質を備えているトート、および、約0.5atmまでの、外部の圧力と内部の圧力との圧力差までその構造上の完全性を維持する能力のある剛性材料を備えているトートからなる群から選択される、項目32に記載の方法。
(項目37)
上記トートの内部の水素供給源を維持するのに適している保持要素をさらに備えている、項目32に記載の方法。
(項目38)
上記トート内の上記水素供給源のための上記保持要素は、該水素供給源および上記燃料電池を保持するように構成される箱である、項目37に記載の方法。
(項目39)
上記トートの内部の上記水素は、上記燃料電池の上記アノードと気体による連絡をする外部の水素供給源から供給される、項目32に記載の方法。
(項目40)
上記酸素の減少した環境は、1%未満の酸素を含有する、項目32に記載の方法。
(項目41)
上記酸素の減少した環境は、0.1%未満の酸素を含有する、項目40に記載の方法。
(項目42)
上記酸素の減少した環境は、二酸化炭素を含有する、項目32に記載の方法。
(項目43)
上記酸素の減少した環境は、二酸化炭素と水素とを含有する、項目32に記載の方法。
(項目44)
上記酸素の減少した環境は、窒素を含有する、項目32に記載の方法。
(項目45)
上記酸素の減少した環境は、二酸化炭素と、窒素と、水素とを含有する、項目32に記載の方法。
(項目46)
上記食品は魚である、項目32に記載の方法。
(項目47)
上記魚は、サケと、ティラピアと、マグロと、エビと、トラウトと、ナマズと、アメリカチヌと、シーバスと、ストライプドバスと、レッドドラムと、コバンアジと、コダラと、メルルーサと、オヒョウと、タラと、ホッキョクイワナとからなる群から選択される新鮮な魚である、項目46に記載の方法。
(項目48)
上記新鮮な魚はサケまたはティラピアである、項目47に記載の方法。
(項目49)
上記水素供給源は、気体の混合物であり、該気体の混合物は、二酸化炭素と体積で5%未満の水素を含有する、項目32に記載の方法。
(項目50)
酸化的に分解され得る食品を輸送および/または保管する方法であって、
a)酸化的に分解され得る物質を含む、制限された酸素透過性の圧力安定した密閉されたトートを取得することであって、該トートは燃料電池および水素の供給源を備えているモジュールに接続され、その結果、該燃料電池のアノードは該トートの環境と直接に連絡する、ことと、
b)輸送または保管中に該燃料電池を動作させることであって、その結果、該トート内の酸素は該燃料電池によって水に変換される、ことと、
c)該トート内の物質を輸送または保管することと
を包含する、方法。
(項目51)
上記モジュールは、気体交換の自然の最小化または停止を可能にするのに十分な初期期間後、上記トートから接続解除される、項目50に記載の方法。
(項目52)
上記初期期間は約0.5〜50時間である、項目51に記載の方法。
(項目53)
酸素レベルが所定のレベルに達したとき、および該所定のレベル未満に維持されるときに、上記モジュールは上記トートから接続解除される、項目51に記載の方法。
(項目54)
上記酸素の所定のレベルは5%酸素v/v未満である、項目53に記載の方法。
(項目55)
上記酸素の所定のレベルは1%酸素v/v未満である、項目53に記載の方法。
(項目56)
上記燃料電池は、気体交換の自然の最小化または停止を可能にするのに十分な初期期間後、動作を停止するようにプログラムされる、項目50に記載の方法。
(項目57)
上記初期期間は約0.5〜50時間である、項目56に記載の方法。
(項目58)
酸素レベルが所定のレベルに達したとき、および該所定のレベル未満に維持されるときに、上記燃料電池は動作を停止するようにプログラムされる、項目50に記載の方法。
(項目59)
上記酸素の所定のレベルは5%酸素v/v未満である、項目50に記載の方法。
(項目60)
上記酸素の所定のレベルは1%酸素v/v未満である、項目50に記載の方法。
(項目61)
酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用な制限された酸素透過性の圧力安定した密閉可能なトートであって、
a)水素および酸素を水に変換する能力がある燃料電池であって、該燃料電池は該トートの内部にある、燃料電池と、
b)該トートの内部の水素供給源を維持するのに適している保持要素、または、外部の水素供給源から該燃料電池の該アノードと気体による連絡をする入口と、
c)該燃料電池アノードと連絡する二酸化炭素リムーバと
を備えている、トート。
(項目62)
上記二酸化炭素リムーバは消石灰を含む、項目61に記載のトート。
【0029】
本発明は、添付の図面を参照してさらに記述される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、酸化的に分解され得る物質を輸送または保管するために用いられるパッケージングモジュールの概略図である。
【図2】図2は、コンテナ内に複数のパッケージングモジュールを備えているシステムの概略図である。
【図3】図3は、酸素リムーバの燃料電池実施形態の概略図である。
【図4】図4は、標準のMAPシステムと比較した、パッケージングモジュールを用いる低酸素レベルの持続時間の増加を示すグラフである。
【図5】図5は、2つの燃料電池と、ファンと、起動された活性炭アブソーバおよび二酸化炭素リムーバなどの揮発性スクラバとを備えている燃料電池システムの概略図である。
【図6】図6は、二酸化炭素リムーバを有する酸素リムーバの燃料電池実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(詳細な説明)
本発明は、酸化的に分解され得る食品を輸送および保管するのに有用なシステムおよび方法を包含する。本明細書に記述されるシステムおよび方法は、運送コンテナ内の個々のトートに保管される食品を囲む大気環境から酸素を継続的に除去することを可能にする。
【0032】
本発明に用いられるトートまたはパッケージングモジュールは、以下に、より完全に記述されるように、好ましくは、一体化した温度制御システムを組み込まないで、むしろ、トートまたはパッケージングモジュールが運送される運送コンテナの温度制御システムに頼る。さらに、トートまたはパッケージングモジュールは、輸送および/または運送中に内部圧力の損失(または増加)に耐えるかまたは補償するように設計される。
【0033】
輸送および/または保管中の酸素の除去は、長期間物質の新鮮さを維持するのに適している、制御された酸素の減少した環境を可能にする。その結果、酸化的に分解され得る物質は、従来の運送および保管の技術を用いて現在可能である期間よりも長い期間、輸送および/または保管され得る。本明細書に記述されるシステムおよび方法は、例えば、通常、費用のより掛かる空輸によってのみ供給されるであろう魚などの酸化的に分解され得る物質を市場に輸送するために運送フレイター(shipping freighter)を使用することを可能にする。本発明はまた、例えば、工芸品、原稿、および酸素への最小限の露出に対してさえ保護されることを必要とする他の物質などの、他の酸化的に分解され得る物質の長期の保管および保存を可能にするために用いられ得ることが意図される。そのような実施形態において、保管時間は10年以上までも含むように大幅に増加される。
【0034】
一実施形態において、本発明は、酸化的に分解され得る食品の保管寿命を伸ばすために有用なシステムおよび方法を提供する。好ましい実施形態において、酸化的に分解され得る食品は非呼吸性(non−respiratory)である。非呼吸性食品は呼吸しない。すなわち、これらの食品は、酸素を取り入れて、付随して起る二酸化炭素の放出を行わない。非呼吸性食品の例は、捕獲された新鮮な魚または加工された魚、肉(牛肉、豚肉および子羊の肉など)、家禽の肉(トリ肉、シチメンチョウの肉、ならびに他の野生の鳥類の肉および家禽の肉など)、およびパン・菓子類の商品(パン、トルティーヤ、ペーストリー、パンおよびペーストリーを生成するためのパッケージミックス(packaged mix)の使用、ならびに穀物ベースのスナック食)を含む。本発明のシステムおよび方法によって輸送および/または保管される好ましい非呼吸性食品は、サケ、ティラピア、マグロ、エビ、トラウト、ナマズ、アメリカチヌ、シーバス、ストライプドバス、レッドドラム、コバンアジ、コダラ、メルルーサ、オヒョウ、タラ、ホッキョクイワナ、貝およびその他の海産食品などの捕獲された新鮮な魚または加工された魚を含む。より好ましくは、非呼吸性食品は新鮮なサケまたは新鮮なティラピアであり、最も好ましくは、非呼吸性食品はチリの大西洋において育ったサケである。
【0035】
概して、本発明のシステムおよび方法は、トートを備えているパッケージングモジュールと、輸送および/または保管される酸化的に分解され得る食品と、酸素が存在するとき保管および/または輸送の期間の少なくとも一部の期間に食品を囲む気体環境を制御するように、好ましくは所定のレベル未満に、好ましくは連続的にトートの内部から酸素を除去するデバイスとを伴う。このデバイスは、酸素リムーバ(oxygen remover)とも呼ばれる。一部の場合において、トートの環境から酸素をより効果的に除去するために、2つ以上の酸素リムーバを用いることが望ましい。酸化的に分解され得る食品はトートの中に挿入され、トート内の環境はトート内に酸素の減少した環境を作るために操作される。好ましい実施形態において、トート内の酸素の減少した環境は、真空の適用および/または低酸素気体供給源の導入によって環境をフラッシュ(flush)することによって作られる。トート内をフラッシュした後には、トート内の環境は酸素の減少した環境である。トートは次いで密封される。好ましくは、酸素リムーバは、酸素が存在するときパッケージングモジュール内の酸素の減少した環境を維持し、従って酸化的に分解され得る物質の新鮮さを維持するために、輸送および/または保管の持続期間全体にわたって、動作する。
【0036】
本発明の一局面は、酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管に有用な制限された酸素透過性の圧力安定した密閉可能なトートを提供する。圧力安定したトートは、本明細書において定義される酸素の減少した状態の下で、長期の輸送または保管中に発生する圧力差によりトート内物質の保存を可能にするトートである。この圧力差は、輸送および/または保管中の気体の吸収または放出によるトートに存在する気体の体積の減少または増加の結果である。好ましくは、制限された酸素透過性の圧力安定した密閉可能なトートは、へこんだときまたは膨張したときに穴のあかない、柔軟性がある材料か、へこみ可能であるか、または膨張可能である材料を備えているトートか、または剛性材料を備えているトートのいずれかである。
【0037】
へこんだとき、または膨張したときに穴のあかない、柔軟性がある材料、へこみ可能である材料、または膨張可能である材料から作られるトートは、輸送および/または保管中に正圧を維持するために気体供給源を使用するなどの方法を使用することによって圧力差を補償する必要性を除去する。従って、好ましい実施形態において、トートは、トート内の圧力を維持するために気体供給源の導入を必要としない。これらのトートは、概して、柔軟性のある鋳造物または射出成形されたプラスチックシートから構成される。
【0038】
柔軟性のある材料、へこみ可能である材料、または膨張可能であるトート材料は、制限された酸素透過性の材料の1つである。制限された酸素透過性の材料は、好ましくは、10立方センチメートル/100平方インチ/24時間/atm未満の酸素透過率(OTR)を有し、制限された酸素透過性のより好ましい材料は、5立方センチメートル/100平方インチ/24時間/atm未満のOTRを有する材料であり、制限された酸素透過性のさらにより好ましい材料は、2立方センチメートル/100平方インチ/24時間/atm未満のOTRを有する材料であり、制限された酸素透過性の最も好ましい材料は、1立方センチメートル/100平方インチ/24時間/atm未満のOTRを有する材料である。柔軟性があるトート、へこみ可能であるトート、または膨張可能であるトートを作るために用いられ得る材料の非網羅的リストは、表1に示される。
【0039】
【表1−1】

【0040】
【表1−2】

剛性材料は、その形状を自身で支持し、容易に、折り曲げられたり、へこまされたり、膨張させられたり、または圧縮されたりし得ない任意の材料である。概して、剛性材料から構成されるトートは、成形されたプラスチックもしくは金属または類似の材料から作られ、箱、部屋、船倉、または冷凍コンテナの形式であり得る。剛性材料は、好ましくは、約0.3atmまでの、外部の圧力と内部の圧力との圧力差までその構造上の完全性を維持する能力のある任意の材料であり、より好ましくは、剛性材料は、約0.4atmまでの、外部の圧力と内部の圧力との圧力差までその構造上の完全性を維持する能力があり、最も好ましくは、剛性材料は、約0.5atmまでの、外部の圧力と内部の圧力との圧力差までその構造上の完全性を維持する能力がある。さらに本発明はまた、トート内に存在する気体の体積の減少または増加の結果、生成される圧力差を補償することから利益を得る剛性材料を備えているトートの使用を意図する。圧力差に対する補償は、正圧を維持するために気体供給源を使用することおよび圧力差に応じて膨張または収縮することが可能な嚢(bladder)を使用することを含むが、これらに限定されない、当該分野において公知の多数の方法で達成され得る。剛性材料は、剛性構造を維持する能力のある任意の材料である。剛性材料の例は、ファイバグラスなどのアクリル類(acrylics)と、レクサンなどのポリカーボネート類(polycarbonates)と、ポリエチレンと、ポリプロピレンと、ポリ塩化ビニル(PVC)と、スチレンと、ポリエステルと、ナイラトロンポリウレタンと、ルサイトと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、ポリスルホンなどを含む剛性構造を維持する能力のある剛性プラスチック、および剛性構造を維持する能力のある金属などの他の材料を含むがこれらに限定されない。
【0041】
トートは1つ以上の酸素リムーバをさらに備え、該酸素リムーバは、酸素が存在する限りトート内の環境から酸素を除去する。酸素リムーバは、トートが密閉された後にシステムの中に導入され得る酸素を除去することによって、酸素の減少した環境を維持する。例えば、酸素は、制限された酸素透過性の材料を介して、トートを通る、またはトートの密閉箇所における拡散によって、導入され得る。酸素はまた、トート内の酸化的に分解され得る食品によってまたは食品が入れられているコンテナから放出され得る。
【0042】
好ましい実施形態において、酸素リムーバは分子酸素を消費する燃料電池である。好ましくは、燃料電池は水素燃料電池である。本明細書において用いられる場合、「水素燃料電池」は、酸素および水素を水に変換する能力のある任意のデバイスである。好ましい実施形態において、燃料電池全体はトートの内部にある。このことは、トートまたはパッケージングモジュールの内部に水素を有することによって達成され得る。燃料電池のアノードは水素供給源と連絡する。水素は陽子および電子の生成を可能にする。燃料電池のカソードはトート内の環境(酸素供給源)と連絡する。酸素が存在する場合、アノードによって生成される陽子および電子は、カソードにおいて存在する酸素と相互に作用し水を生成する。好ましい実施形態において、燃料電池は、酸素および水素を水に変換するための外部電源を必要としない。さらなる実施形態において、燃料電池は、燃料電池が動作中でありかつ水素が利用可能であるときを表示するインジケータに接続される。
【0043】
別の実施形態において、物理的な燃料電池は、トートの外部にあるが、アノードおよびカソードにおいて生成される生成物がトートの内部に維持される方法で、トートの気体環境と直接に連絡する。そのような実施形態において、燃料電池は、その生成物がトートの内部に維持されるので、トートの内部にあると解釈される。
【0044】
一実施形態において、水素は純粋の水素気体である。水素供給源は、好ましくは、嚢内、またはトートの内部または外部のいずれかに含まれる他の水素供給源に含まれるが、水素はトートの内部に提供され、その結果、反応プロセス全体がトート内に含まれる。水素は、好ましくは輸送または保管の期間中に水素を提供するような方法で、好ましくは、水素燃料電池のアノードと直接に連絡する。使用されている場合、嚢は、水素気体を含む能力のある任意の材料から作られる。例えば、表1に一覧表にされた材料は嚢の材料として用いられ得る。
【0045】
別の実施形態において、嚢は圧縮されない水素供給源を含む。但し、圧縮された水素の供給源は用いられ得る。
【0046】
なおも別の実施形態において、水素供給源は、トートの内部または外部に含まれる、気体シリンダなどの剛性の容器に含まれるが、水素がトートの内部に提供され、反応プロセスの全体がトート内に含まれる。この実施形態において、水素供給源は、圧縮されるかまたは圧縮されない水素供給源である。剛性のコンテナは、輸送または保管時間の持続時間中に水素を提供するような方法で、水素燃料電池のアノードと直接に連絡する。好ましくは、圧縮された水素は10,000psiaを超えない圧力、および、好ましくは40psiaを超えない圧力に維持される。
【0047】
さらなる実施形態において、水素供給源は化学反応によって生成される。水素を化学的に生成する方法の例は、当該分野において周知であり、PEM電解槽と、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いるアルカリ電解槽と、固体酸化物電解槽とを用いる方法を含む、電解過程による水素の生成、およびホウ水素化ナトリウムからの水素の生成を含む。各々の場合において、水素が燃料電池のアノードに内部において利用可能にされている限り、水素はトートの内部または外部において生成され得る。
【0048】
別の実施形態において、水素供給源は、トートの環境に存在する水素を含有する気体の混合物である。この実施形態において、気体の混合物は、好ましくは、二酸化炭素および水素を含有する。他の実施形態において、気体の混合物は、窒素および水素を含有する。さらなる実施形態において、気体の混合物は、水素、二酸化炭素、および窒素を含有する。他のそのような不活性の気体が気体の混合物に存在し得ることが意図される。気体の混合物に存在する水素の量は、好ましくは体積で10%未満の水素であり、より好ましくは体積で5%未満の水素であり、最も好ましくは体積で2%未満の水素である。この気体の混合物は、酸化的に分解され得る物質の導入前、導入中および導入後、かつトートの密閉前に導入される。
【0049】
用語「トートの内部の水素」または「トートの内部の水素供給源」は、気体の水素がトートの内部にあり、燃料電池のアノードと気体による連絡を行い、その結果水素は、酸素と反応し、水を生成することを意味することは理解される。気体の水素がトート内にあり、酸素と反応するようにアノードと気体による連絡をする場合、水素の最終的な供給源が内部にあるかまたは外部にあるかは重要でない。
【0050】
一部の実施形態において、トートは二酸化炭素リムーバを備えている。二酸化炭素は、PEMを横切ってアノードプレートに透過する能力を有し、それによって、水素がアノードプレートにアクセスすることを妨げる。二酸化炭素リムーバによって燃料電池のアノードプレートから二酸化炭素の一部または全部を除去することは、水素による燃料電池へのアクセスを増加することを可能にし、従って、トート環境から酸素を除去する燃料電池の能力を増加させる。
【0051】
二酸化炭素リムーバにおいて用いられ得る、当該分野において公知の多数のプロセスがある。これらの方法は、吸収法と、圧力スイング吸着(PSA)方法および熱スイング吸着(TSA)方法などの吸着法と、膜ベースの二酸化炭素除去とを含む。二酸化炭素リムーバに用いられ得る化合物は、消石灰と、活性炭と、水酸化リチウムと、酸化銀、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛などの金属酸化物とを含むが、これらに限定されない。二酸化炭素はまた、水素気体または水蒸気などの気体を用いてアノードをパージすることによってアノードから除去され得る。
【0052】
一実施形態において、二酸化炭素リムーバは消石灰を含む。この実施形態の一例において、消石灰は、燃料電池のアノードと蒸気による連絡をするフィルタカートリッジに含まれ、その結果、燃料電池のアノードプレートに存在する二酸化炭素は、消石灰と接触するようになり、消石灰の中に吸収される。特定の実施形態は、図5に示されるように、アノード出口と蒸気による連絡をする単一の消石灰フィルタカートリッジを備えている。別の実施形態において、2つの消石灰フィルタカートリッジは、各々、アノード出口と蒸気による連絡をする(図6)。各々の場合において、消石灰フィルタは、燃料電池のアノードプレートからの二酸化炭素の除去を容易にする。
【0053】
一部の実施形態において、トートは、管、ワイヤなどに対するアクセスを提供するように構成され、その結果、水素などの外部の気体はトートの中に導入され得、または外部の電源はファンおよび酸素リムーバを動作するために用いられ得るように構成される。密閉可能であり、トート内の低酸素の環境を維持し得るフィッティングを用いて、アクセスが提供される。一特定の実施形態において、トートは、外部の供給源から内部の燃料電池水素供給システムの中へ水素を導入することを可能にするように構成される。さらなる実施形態において、外部の水素供給源は、水素を用いて燃料電池をパージすることを助けるように指向される。
【0054】
水素燃料電池とは別の酸素リムーバが、トート内の酸素を除去するために用いられ得る。例えば、鉄含有アブソーバなどの酸素アブソーバ(oxygen absorber)および酸素アドソーバ(oxygen adsorber)が用いられ得る。酸素アブソーバおよびアドソーバは、当該分野において公知であり、市販されている。酸素リムーバはまた、圧力スイング吸着(PSA)方法および膜分離方法を用いるリムーバを含む。
【0055】
触媒システム(白金触媒またはパラジウム触媒などの元素の金属を用いる触媒システムなど)は酸素リムーバとして用いられるが、大きな触媒の表面積を提供するのに必要な粉末を使用することは汚染の危険を冒す。それにもかかわらず、適切な予防手段が講じられる場合、これらの粉末が用いられ得る。そのような予防手段は、PEM燃料電池に存在するような膜電極アセンブリの中に金属触媒を埋め込むことを含む。
【0056】
一実施形態において、トートは、水素供給源がトート内に安定して保持されるように水素供給源を維持するのに適している保持要素をさらに備えている。例えば、保持要素は、水素供給源を安定して保持するように構成される箱である。この実施形態のさらなる局面において、保持要素は、水素供給源および燃料電池の両方を保持するように構成される。他の実施形態において、保持要素はトートの内壁に付着されるスリーブである。このスリーブは、嚢収容(bladder−containing)水素供給源または剛性の容器水素供給源ならびに水素供給源を含むのに適している他のコンテナを保持する能力がある。いずれの場合においても、水素供給源は燃料電池のアノードと直接の連絡をする。
【0057】
パッケージングモジュールにおいて用いられる酸素リムーバが水素燃料電池である場合、水素と酸素との反応の結果として生成される、液体または気体のいずれかの状態である量の水がある。そのように生成された水はトートの中に放出される。水を入れておくとかかまたは除去するための手段をトート内に含むことが望ましくあり得る。例えば、トートは、燃料電池において水が生成されるとき、その水を集めるように構成される、トレーまたはタンクなどの水保持装置をさらに備え得る。あるいは、トートは、水を吸収しかつ入れておくために用いられる乾燥剤または吸着剤を含み得る。適切な乾燥剤および吸着剤は当該分野において周知である。あるいは、水はトート外に放出され得、それにより、乾燥した環境において最適に保管される商品の保管および輸送のための適切な環境を提供する。
【0058】
トートは、物質を囲む酸素の減少した環境を維持するように構成される。酸素の減少した環境は、物質の新鮮さを維持しながら、物質が長期間、保管および/または輸送されることを可能にする。物質の導入に続いてまたはその導入後であるが、トートの密閉前に、トート内の環境が、オプションで、真空の適用および/または低酸素(low oxygen free)気体供給源の導入によって、追い出される。この時点でトート内の環境は酸素の減少した環境である。特定の実施形態において、酸素の減少した環境における酸素のレベルは1%未満の酸素であり、あるいは、酸素の減少した環境における酸素のレベルは0.1%未満の酸素であり、あるいは、酸素の減少した環境における酸素のレベルは0.01%未満の酸素である。
【0059】
一部の実施形態において、低酸素気体供給源は、トートが密閉される前にトートの中に導入される。低酸素気体供給源は、好ましくは、COまたは成分の1つとしてCOを含む気体の混合物から構成される。COは、無色、無臭、不燃性、および細菌発育抑制であり、食物に有毒残留物を残さない。一実施形態において、低酸素気体供給源は100%のCOである。別の実施形態において、低酸素気体供給源はCOと窒素または他の不活性気体との混合物である。不活性気体は、アルゴンと、クリプトンと、ヘリウムと、酸化窒素と、亜酸化窒素と、キセノンとを含むが、これらに限定されない。低酸素気体供給源の独自性(identity)は、食品に適するように変動され得、十分に当該技術の知識および技術内である。例えば、サケの輸送および保管に用いられる低酸素気体供給源は好ましくは100%のCOである。ティラピアなどの他の魚は、好ましくは、低酸素気体供給源として60%のCOおよび40%の窒素を用いて保管または運送される。
【0060】
トートは、酸素などの気体の吸収および低酸素気体供給源を可能にするヘッドスペース容積を含む。一部の実施形態において、ヘッドスペースはトートの内部容積の約5%〜約95%である。他の実施形態において、ヘッドスペースはトートの内部容積の約15%〜約40%であり、あるいは、ヘッドスペースはトートの内部容積の約20%〜35%である。
【0061】
酸素がトート環境において好ましくは所定のレベル未満に存在する限り、内部トート環境がそこから分子酸素を除去することを可能にする酸素リムーバと連絡するように、トートは構成される。トート内の酸素リムーバは、内部トート環境から酸素を除去するように構成され、その結果、酸素レベルは、物質の新鮮さの減少または損傷という結果をもたらすレベルより低いレベルに留まる。この酸素の減少したレベルは、輸送および/または保管の期間中、酸素リムーバによって維持される。酸素の減少した環境における酸素のレベルは、1%未満の酸素であり、より好ましくは、0.1%未満の酸素であり、最も好ましくは、0.01%未満の酸素である。
【0062】
酸素リムーバの能率は、トート内の空気を循環させ、それによってトート環境における酸素リムーバと酸素との接触を容易にするファンを用いることによって、高められ得る。燃料電池を用いる場合、ファンは、特定の実施形態において、燃料電池が水素および酸素を水に変換するときに生成されるエネルギから動作するように構成され得る。
【0063】
トートの完全性に破損があり、予期されない大量の酸素含有空気がトート環境の中に導入される場合、酸素リムーバが、導入された酸素のすべてを除去することは可能ではない。好ましい実施形態において、トートは、トート内の酸素レベルが酸素の減少した環境として記述されるレベルを超えたという事実を人に警告するインジケータをさらに備えている。
【0064】
トートは、オプションで、酸素レベルと、水素レベルと、燃料電池動作と、温度とを監視するモニタを含む。特定の実施形態において、酸素センサ、例えば、トレース酸素センサ(Teledyne)は、トート環境に存在する酸素のレベルを監視するために用いられる。
【0065】
本発明の別の局面は、酸化的に分解され得る物質の輸送および/または保管に有用なパッケージングモジュールを提供する。パッケージングモジュールは、上記のように構成されるトートを備えている。パッケージングモジュールにおいて、トートは密閉され、輸送および/または保管される酸化的に分解され得る物質と、好ましくは所定のレベルより低い酸素が存在する限り、物質を囲む環境から酸素を除去するデバイスとを含む。デバイスは密閉されたトート内に位置する。空気調節、加熱などの温度制御手段は、好ましくは、パッケージングモジュールの中に一体化されていないで、モジュールのサイズは、単一の温度制御手段を備えている貨物コンテナが複数のモジュールを含み得るようなサイズである。そのような場合、各トートが種々の気体環境および種々のパッケージされた物質を有することが可能である。
【0066】
本発明の別の局面は、酸化的に分解され得る食品の輸送および/または保管するシステムを提供する。システムは、好ましくは、複数のパッケージングモジュールを備え、各パッケージングモジュールは、トートと、酸化的に分解され得る食品と、酸素リムーバとを備えている。パッケージングモジュールおよびその構成要素は上に記述されている。
【0067】
システムは、運送フレイターにおいて輸送または保管に適するように構成される。運送フレイターは、システムを輸送および/または保管するために用いられ得る任意のコンテナを意味し、該システムは、海上運送フレイターと、トラック運送フレイター(トラクタ−トレーラなど)と、貨車と、積み荷を輸送する能力のある飛行機とを含むが、これらに限定されない。
【0068】
上記のように、1つ以上のパッケージングモジュールは、単一の運送フレイターにおいて用いられ得、従って、各パッケージングモジュールは、異なる気体環境および異なる食品を有するように構成され得る。さらに、配達時、運送フレイターの開放は、任意のパッケージングモジュールの大気制御の中断という結果とはならず、従って、1つ以上のパッケージングモジュールは1つの場所に、その他のパッケージングモジュールは他の場所に配達され得る。システムにおける各パッケージングモジュールのサイズは、運送の前に、各買い手によって所望される食品の量に対応するように構成され得る。そのように、パッケージングモジュールは、好ましくは、わずか数オンスの食品から50,000ポンドまたはそれを超えるほどの食品を含むようなサイズで作られ得る。1システム当りのパッケージングモジュールの数は、システムを輸送および/または保管するために用いられる運送フレイターのサイズとパッケージングモジュールのサイズとの両方に依存する。1システム当りのパッケージングモジュールの数の特定の例は、以下の特定の実施形態の説明において述べられる。
【0069】
別の実施形態において、システムは、1つ以上のトートを備え、各トートは、酸化的に分解され得る食品を含む。この実施形態において、トートは、酸素リムーバを含む別個のモジュールに分離可能に接続される。酸素リムーバが水素燃料電池である場合、別個のモジュールもまた水素を含む。酸素リムーバは、別個のモジュールが接続されるすべてのトートから酸素を除去するように働く。この実施形態において、物理的な燃料電池は、トートの外部にあるが、アノードおよびカソードにおいて生成される生成物がトートの内部に維持される方法で、トートの気体環境と直接に連絡する。そのような実施形態において、燃料電池は、その生成物がトートの内部に維持されるので、トートの内部にあると解釈される。好ましい実施形態において、トートは剛性のトートであり、別個のモジュールは、接続されたトート内の正圧を維持するために気体供給源をさらに含む。コンテナは、オプションで、酸素レベルと、水素レベルと、トート内の温度とを監視するモニタおよび燃料電池の動作を表示するインジケータを含む。一実施形態において、モジュールは、パッケージングモジュールと同様なサイズである箱である。一実施形態において、モジュールは、システムを輸送および/または保管するために用いられる運送フレイターの壁、蓋、またはドアに付着される。
【0070】
一部の実施形態において、システムおよび/または運送フレイターはまた、酸化的に分解され得る食品の新鮮さを保存するのに十分なパッケージングモジュールの温度を維持する冷却システムも備えている。酸化的に分解され得る食品の新鮮さを保存するのに必要な温度は、この食品の性質に依存する。当業者は、システムまたは運送フレイターにおいて輸送または保管される物質に必要とされる適切な温度を知っているかまたは決定することが可能である。食品の輸送および/または保管に関して、温度は、一般的に、食品の凍結を避けるために32°F(華氏)より低くならない。温度は、一般的に、32〜38°Fの範囲に維持され、より好ましくは32〜35°Fの範囲に維持され、最も好ましくは32〜33°Fの範囲に維持される。例えば、輸送または保管中に魚を保存するための適切な温度は、32〜35°Fの範囲である。温度が食品を保存する範囲内に維持される限り、温度の変動は許容される。一部の実施形態において、トートは、システムまたはコンテナの温度を監視および/または記録するデバイスをさらに備えている。そのようなデバイスは、Sensitech、Temptale、Logtag、Dickson、Marathon、TestoおよびHoboを含む製造業者から市販されている。
【0071】
一実施形態において、システムは、食品保存冷蔵温度でパッケージングモジュールを維持する能力がある。あるいは、システムを輸送および/または保管するために用いられる運送フレイターは、食品保存冷蔵温度でパッケージングモジュールを維持する能力がある冷蔵運送フレイターである。
【0072】
トートの内部の水素のすべてが、燃料電池と反応し、それによってトート内の食品に曝され得るとは限らないことが考えられる。そのような未反応の水素は、本明細書において「過剰水素」と呼ばれ、輸送または保管中にそのような過剰水素に対する食品の暴露を制限することが望ましい。従って、一部の実施形態において、トートまたはシステムは、トート環境に存在する過剰水素に対する食品の曝露を最小にするように構成される。このことは、機械的方法、化学的方法、またはそれらの組み合わせによってトートまたはシステム内の過剰水素を除去することによって、達成され得る。過剰水素を除去する化学的方法の例は、ポリマーまたは水素を吸収する他の化合物から構成される水素シンクの使用を含む。水素を吸収する水素アブソーバとしての使用に適している化合物は、当該分野において公知であり、市販されている(「Hydrogen Getters」Sandia National Laboratories,New Mexico、REB Research & Consulting,Ferndale,MI.)。化合物は、トート内に存在し得るか、または燃料電池のカソードと直接に連絡をし得る。
【0073】
過剰水素は、トート環境内に水素の流入を調節するかまたは停止するために遮断弁またはフローリストリクタを使用することを含む機械的な手段を用いることによって制限され得る(例えば、図5に示されるように)。水素の調節は、水素供給源に接続される酸素センサを用いることによって制御され得、その結果、酸素のレベルが最低の設定点よりも低く下降したとき、水素の流れは最小にされるかまたは除去される。
【0074】
本発明のさらなる局面は、酸化的に分解され得る食品を輸送および保管する方法を提供する。上記方法は、上記のようなパッケージングモジュールおよびシステムを利用する。好ましい実施形態において、上記方法は、酸化的に分解され得る食品の挿入後、パッケージングモジュール内の酸素を除去し、パッケージングモジュール内に酸素の減少した環境を生成することを包含する。酸化的に分解され得る食品の他に、パッケージングモジュールは、制限された酸素透過性の圧力安定した密閉されたトートおよび酸素リムーバを備えている。パッケージングモジュール内の酸素の減少した環境は、例えば、トートをフラッシュするための真空の適用および/または低酸素気体供給源の導入によるトート内の環境をフラッシュすることによって作られる。トート内をフラッシュした後に、トート内の環境は酸素の減少した環境である。トートは次いで密封される。低酸素気体供給源は、好ましくは、COまたは成分の1つとしてCOを含む気体の混合物から構成される。一特定の実施形態において、低酸素気体供給源は100%のCOである。別の実施形態において、低酸素気体供給源はCOと窒素または他の不活性気体との混合物である。不活性気体の例は、アルゴンと、クリプトンと、ヘリウムと、酸化窒素と、亜酸化窒素と、キセノンとを含むが、これらに限定されない。低酸素気体供給源の独自性は、食品に適するように変動され得る。例えば、サケの輸送および保管に用いられる低酸素気体供給源は好ましくは100%のCOである。ティラピアなどの他の魚は、好ましくは、低酸素気体供給源として60%のCOおよび40%の窒素を用いて保管または運送される。
【0075】
パッケージングモジュール内の酸素リムーバは、酸素が存在する限り輸送および/または保管中、動作され、その結果、酸素レベルは、物質の新鮮さの減少または損傷という結果をもたらすレベルより低いレベルに留まる。この酸素減少のレベルは、輸送および/または保管の期間の一部か、しかし好ましくは期間中のいずれかの間、酸素リムーバによって維持される。酸素の減少した環境における酸素のレベルは、1%未満の酸素であり、より好ましくは、0.1%未満の酸素であり、最も好ましくは、0.01%未満の酸素である。
【0076】
特定の実施形態において、ある期間後、パッケージングモジュール内に存在する酸素レベルは、減少したレベルにとどまり、この減少したレベルにおいて、トートの酸素透過性は、十分に低く、食品とトート環境との間の気体の交換から、および/またはトート材料の透過性を介して、発生する酸素のレベルが、酸素のさらなる除去が必要ではない十分に低いレベルに達する。この時点において、燃料電池は動作を停止する。オプションで、燃料電池は、気体交換の自然の最小化または停止を可能にするほど十分な初期期間後、動作を停止するようにプログラムされ得る。
【0077】
必ずしも好ましくはないが、燃料電池は、約0.5〜50時間の期間後に動作を停止するようにプログラムされ得、または燃料電池は、約1〜25時間の期間後に動作を停止するようにプログラムされ得、または燃料電池は、約2〜15時間の期間後に動作を停止するようにプログラムされ得、または燃料電池は、約3〜10時間の期間後に動作を停止するようにプログラムされ得る。
【0078】
あるいは、燃料電池は、酸素レベルが所定のレベルに達し、所定のレベル未満に維持されるとき、動作を停止するようにプログラムされ得る。一実施形態において、酸素レベルは、5%酸素v/vに達し、5%酸素v/v未満に維持される。あるいは、酸素レベルは、1%酸素v/vに達し、1%酸素v/v未満に維持される。あるいは、酸素レベルは、0.1%酸素v/vに達し、0.1%酸素v/v未満に維持される。
【0079】
トートの外部にあるモジュール内に燃料電池が存在する実施形態において、気体交換の自然の最小化もしくは停止を可能にするほど十分な初期期間後、または酸素レベルが上に論議されたパラメータに従う所定のレベルに達するかまたは所定のレベル未満に維持されるとき、モジュールは除去され得る。トート内の正圧を維持するために用いられる任意の気体の外部供給源は、トート内の圧力の変化を補償する必要性が最小化されるために、食品とトート環境との間の気体交換が自然の最小化または停止に達した後、同様に除去され得る。
【0080】
好ましい実施形態において、上記方法は、上記のように酸化的に分解され得る食品を輸送および保管するシステムに関する。従って、好ましい実施形態において、上記方法は、単一の貨物コンテナにおいて1つ以上のパッケージングモジュールを輸送または保管することを包含する。この実施形態において、個々のパッケージングモジュールまたはトートは、システムから別々に取り外し可能である。この特徴は、システムに残っているパッケージングモジュールまたはトートの完全性を妨げることなく、個々のパッケージングモジュールまたはパッケージングモジュールのトートの配達を可能にする。
【0081】
パッケージングモジュールおよび/またはシステムは、次いで、酸化的に分解され得る物質を長期間輸送および保管するために用いられる。好ましくは、長期間は1〜100日間であり、より好ましくは、長期間は5〜50日間であり、より好ましくは、長期間は15〜45日間である。
【0082】
一実施形態において、活性炭、銀および銅などの金属などの材料は、燃料電池に隣接するか燃料電池内のいずれかにおいて用いられ得、過酸化水素、フッ素などの燃料電池の任意の副産物を取り除く。もちろん、そのような吸収物質もまた、トート内の食品から燃料電池を汚染し得る他の気体の生成物を取り除くことは理解される。
【0083】
本明細書に記述されるシステムおよび方法は、標準のMAP技術または他の標準の食物保管方法を用いては可能ではない長期間、酸化的に分解され得る物質が輸送または保管されることを可能にする。上記長期間は、酸化的に分解され得る物質の性質に従って変動し得る。例示の目的のために、新鮮なサケは、本明細書に記述されるシステムを用いる場合、少なくとも30日間の長期間、保存される方法で保管または輸送され得る。対照的に、新鮮なサケは、酸素の減少した環境がない場合、10〜20日間の期間、保存される方法で保管または輸送され得るのみである(実施例を参照されたい)。
【0084】
(特定の実施形態の説明)
以下の説明は、本発明において用いられ得る特定の実施形態を述べる。該特定の実施形態は、本発明の可能な構成および使用のうちの1つにすぎず、いかなる方法においても本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0085】
本発明は、サケなどの魚の輸送および保管に特に適している。特に本発明は、養殖されたチリのサケが運送フレイターによって米国内の目的地に運送されることを可能にする。この輸送の期間(約30日間)は、サケの新鮮さを保存するために、本発明を使用することを必要とする。従来は、チリのサケは、サケがだめになる前に米国内の目的地に到着するために航空便によって運送されなければならない。
【0086】
サケは、図1に示されるようにケースに事前に包装される(prepackaged)。各ケース102は、約38.5ポンドのサケを含む。64個のこれらのケースが1つのトート100内の中に置かれる。トート100は、約48インチ×46インチ×100インチのサイズに作られ、ポリ/ナイロン混合材料から作られる。トートは、CO(および酸素)の吸収を可能にするために約35%だけ大きくされる(oversized)。トートは、1つの事前密閉の端部(図示されていない)および1つの密閉可能な端部106を有する。トートは、パレット(図示されていない)上に事前密閉の端部が下になるように置かれる。パレットは、好ましくは、トートを保護しトートに安定性を与えるため、保護シート(図示されていない)で覆われる。サケの54個のケースはトート内に積み重ねられる。
【0087】
理想的にはサケのケースと同じ寸法を有する別の箱が、トートに追加される。この箱は、複数の水素燃料電池および水素104を含む。一実施形態において、水素は純粋の水素を含む嚢によって提供される。嚢は、燃料電池のアノードと直接に連絡するように構成され、輸送および/または保管の期間中、水素燃料電池がトート内に存在するあらゆる酸素を水に変換することを可能にする。別の実施形態において、水素は、圧縮された水素気体を有する水素シリンダなどの外部供給源から内部に提供される。
【0088】
箱はまた、ファン(図示されていない)を含み、トート内の空気を循環させ、それによって、トート環境において酸素リムーバと酸素との接触を容易にする。ファンは、燃料電池が酸素を水に変換するときに生成されるエネルギから作動される。
【0089】
さらに、箱は、温度記録計(図示されていない)を含み、その結果、輸送および/または保管の期間中、温度変化の記録が行われ得る。同様に、酸素レベル記録計(図示されていない)を含み、その結果、輸送および/または保管の期間中、酸素レベルの記録が行われ得る。箱はまた、インジケータ(図示されていない)を含み、トート内の酸素レベルが所定の最大レベルを超えるとき、または温度が所定の最大レベルに達するかもしくは超えるときに関して警告を提供する。この特定の実施形態において、インジケータは、酸素レベルが0.1%の酸素を超えた場合および温度が38°Fを超える場合、警告する。
【0090】
サケのケースおよび箱は、次いで一体化され(角を揃えられかつひもで縛られ)、トートは、一体化した積み重ねのすべての4つの側面の周りに引き寄せられ、トートの開口端部はヒートシーラ(heat sealer)の中にまとめられる。100%までの二酸化炭素の気体のフラッシュは、残りの酸素が、約5%v/v未満、好ましくは約1%v/v未満になるまで、なされる。トート内の環境がそのように改変された後に、ヒートシールサイクルが開始され、トートは密閉点106において密閉され、パッケージングモジュールを形成する。燃料電池および水素104は、輸送および保管中動作し、トート材料を介してまたはトートのシールにおいて、発散によってパッケージングモジュールの中に導入されるあらゆる酸素を除去する。少量の酸素はまた、パッケージングモジュール内の魚またはパッケージング材料によって放出され得る。用いられる燃料電池の種類は、酸素および水素を水に変換するためにどの外部の電源も必要としないPEM燃料電池である。図3を参照されたい。
【0091】
図3において、燃料電池300は、カソード310およびアノード312を備えている。酸素314がカソード310と気体による連絡をするように、燃料電池300は、トート環境(図示されていない)と気体による連絡をする。トート(図示されていない)の内部または外部のいずれかにある水素供給源316は、アノード312と気体による連絡をし、それによって水素318をアノード表面に提供する。燃料電池は、酸素314および水素318を水320に変換し、それによってトートの環境から酸素を除去する。
【0092】
パッケージングモジュールは、上記のように構成される追加のパッケージングモジュールと共に冷蔵運送フレイターの中に積載される。図2は、貨物コンテナ200内の貨物の一部分を例示し、この場合、複数のパッケージングモジュール100は、互いに積み重ねられ、各モジュールは、燃料電池/水素104および魚のカートン102を含む。このパッケージングモジュールのシステムは、冷蔵海上運送フレイターに積載される。海上運送フレイターは、チリから米国にサケを輸送する。米国における第1の目的地に到着した後、ある数のパッケージングモジュールは海上運送フレイターから取り去られる。この実施形態において、トートの各々は、酸素を除去するために燃料電池を含むので、海上運送フレイターに残っているパッケージングモジュールは、酸素減少の状態の下で、海上運送フレイターまたは第2の運送フレイターもしくは航空運送フレイターによって、他の目的地に輸送され得る。
【0093】
図5は、2つの水素燃料電池、外部の水素供給源、二酸化炭素スクラバ、および活性炭などの揮発性スクラバを含む箱の別の実施例を提供する。特に図5において、箱510は、燃料電池520の内部に水素を提供する外部の水素供給源512を含む。上記のように、水素供給源は、リストリクタ弁514および水素遮断弁516に導管で導かれ、燃料電池における水素量を制御し、過剰水素を回避する。水素遮断弁516は、オプションで、箱510内の真空レベルに従って動かされる。真空センサ518は、水素遮断弁を制御するために用いられ得る。
【0094】
燃料電池520は、アノード表面において二酸化炭素を吸収するように、アノードおよびカソードと連絡する消石灰522を有するアノードおよびカソードを備えている。燃料電池520および消石灰522を通って空気を吹きつけるように動作するファン524は、アノードおよびカソードのすぐ外側において動作する。活性炭素パケット526などの揮発性スクラバは、ファン524の上流に置かれ、燃料電池の動作から生ずるあらゆる副産物(または酸化的に化学変化を起こしやすい物質から生ずる副産物)520を除去する。箱510は、1つ以上のトート(図示されていない)と気体による連絡をするか、または、トートの内部にあり、トートと気体による連絡をする。
【0095】
図6は、本発明によるパッケージングモジュールの例を提供し、この場合、水素供給源および燃料電池は、モジュールの内部にある。特に、パッケージングモジュール600は、魚のカートン650および燃料電池610を含む。燃料電池は、カソード612、アノード614、エンドプレート611、抵抗器負荷613、およびPEMディバイダ615を有する。内部の水素供給源616は、すべてビニール管619から作られる水素ポート618および水素遮断弁620を介してアノード614と気体による連絡をするように備えられている。消石灰フィルタカートリッジ622は、アノード614と気体による連絡をする水素からCOを除去する。上に定義されるように過剰水素は、これも消石灰フィルタカートリッジ622を用いる水素放出鉛管626を介してパージされ得る。遮断弁628は、パージポート630において燃料電池から放出され得る過剰水素の放出をさらに調節する。ポート630は、オプションで、魚のカートン650に対する過剰水素の曝露を回避するように水素アブソーバ(図示されていない)に接続され得る。パッケージングモジュールは、CO/N雰囲気632を含む。ファン634は、カソード612と環境632との気体による連絡を容易にし、その結果、環境内の酸素は燃料電池610によって水に変換される。消石灰フィルタカートリッジは、アノード614の接点から二酸化炭素を除去することを助けるために用いられる。
【実施例】
【0096】
(実施例)
2つのベンチトップの剛性の容器であって、1つは燃料電池つき、1つは燃料電池なしの容器が組み立てられた。密閉可能な蓋を有する2つの9リットルのプラスチックの食物保管容器が変更され、その結果、気体がフラッシュされ、各容器の中に連続的に導入され得た(非常に低い圧力で)。市販されている燃料電池(燃料電池店から購入したhydro−GeniusTMDismantable Fuel Cell Extension Kit)が1つの9リットルの剛性の容器の蓋の中に取り付けられ、その結果、水素はまた、剛性の容器外から(デッドエンドの)燃料電池のアノード側の中に直接に導入され得た。燃料電池のカソード側は、対流プレートが備えられ、容器の気体が燃料電池のカソードに自由に接近することを可能にした。ホウ水素化ナトリウムは、水素気体の化学供給源として(水と混合されるとき)燃料電池店から購入された。ホウ水素化ナトリウム(NaBH)反応器が2つのプラスチックのびんから組み立てられ、その結果、静水圧が加えられ、常時燃料電池の中に水素を押し込み、過剰水素の生成および消費を調整し得た。このことは、長期間(複数日)にわたり、無人の水素の生成および燃料電池の中への水素の導入を可能にした。
【0097】
二酸化炭素の気筒(気体)、調節器、弁および管は、大型の家庭用冷蔵庫と共に購入された。冷蔵庫は、配管され、外部の二酸化炭素が剛性の容器の中に、また水素が燃料電池に継続的に導入されることを可能にした。
【0098】
ベンチトップシステムは、COによって、初期酸素レベルをほぼ1%にまで下げフラッシュさせ、流入弁が開いた状態で流出弁を閉じ、非常に低い定圧のCOの下に両方の容器を維持することによって、試験された。燃料電池が一方の容器から残りの酸素を消費しながら、酸素およびCOの濃度は、時間の経過に従い、(Dansensor)CO/酸素分析器を用いて測定された。燃料電池つきの容器は、酸素レベルを0.1未満に維持する能力があり、一方、燃料電池なしの容器は、酸素レベルを0.3%未満に保持する能力がないことが決定された。
【0099】
第1日目に、新鮮なチリのタイセイヨウサケの切り身が、地域(カリフォルニア州、Sand City)の小売店から直接に購入された。サケは、脂肪のない腰肉が6日前にチリにおいて包装されたことを示すラベルのついたStyrofoamの容器から取り出された。小売店の店員は、6個の切り身(2個ずつ)を小売用陳列トレーに置き、3つのトレーの各々をぴんと張ってラップし、重さを計り、ラベル付けした。
【0100】
これらの3つのパッケージは、氷を付けて実験室に輸送され、実験室において、各トレーは、各パッケージの半分が異なる処理におけるもう一方の半分と直接に比較され得るように、半分に切られた。パッケージの半分は、3つの処理グループに置かれた。すなわち、1.)空気調節、2.)100%CO、燃料電池酸素リムーバなし、3.)100%CO、燃料電池酸素リムーバつき、である。すべての3つの処理は、実験期間中、36°Fで同じ冷蔵庫の中に保管された。酸素およびCOのレベルは毎日監視され、感覚的評価は下記のように行なわれた。酸素の初期除去後、酸素レベルは計器の使用によって検出不能なレベルに維持された。結果は、表2に示されるとおりである。
【0101】
【表2−1】

【0102】
【表2−2】

実験期間中の酸素のレベルは、図4にグラフで示される。
【0103】
(感覚的評価)
冷蔵庫内に3つの処理を置いて7日後、空気調節のものは、36°Fにおいて、臭気によって限界に近く損なわれ、8日目に許容不可であるほど損なわれたと判定された。このことは、空気制御の切り身の生産から約13日間、および36°Fで7日間(温度不明の最初の6日間後)の総貯蔵寿命を立証した。
【0104】
高CO環境における22日(試験が開始される前の6日をプラス)後、燃料電池ありの処理からの切り身および燃料電池なしの処理からの切り身は、容器から取り出され、4人の感覚によるパネリストによって評価された。評価尺度は、5=最も新鮮である、4=新鮮である、3=わずかに新鮮ではない、2=新鮮ではない、1=許容不可である。生の感覚的な結果は表3に示されるとおりである。
【0105】
【表3】

36°Fでの空気におけるさらなる6日間の保管後、残りのサンプルは、生で写真に取られ、「燃料電池なし」のサンプルは、主として、くさい臭い(微生物による傷みではない)および非常に黄色っぽい肉色のために食べるのに適さないように思われた。「燃料電池」のサンプルは、生の色および臭いにおいて、新鮮(4)に格付けされた。これらのサンプルは、次いで、料理され、4人のパネリストによって、風味および歯ごたえに関して評価され、両方の属性において、新鮮(4)に格付けされた。
【0106】
要約すると、「燃料電池あり」サンプルは計34日間の新鮮貯蔵寿命後もなおも新鮮に格付けされ、一方「燃料電池なし」のサンプルは許容不可であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−245005(P2012−245005A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−180921(P2012−180921)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2009−518562(P2009−518562)の分割
【原出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508308824)グローバル フレッシュ フーズ (3)
【Fターム(参考)】