説明

酸化窒素による神経障害の治療デバイス、方法および使用

【課題】糖尿病性末梢神経障害、神経障害による潰瘍などの標的治療のためのデバイスの提供。
【解決手段】デバイス10は酸化窒素(NO)放出ポリマーが治療部位に接触するように配置され、酸化窒素放出ポリマーから治療用量の酸化窒素が放出される。酸化窒素(NO)放出ポリマーは、酸化窒素(NO)の治療用量の放出を調整および制御するキャリア材料とともに一体化される。さらに、前記NO放出ポリマーからの放出されたNOが前記デバイス10から実質的に標的部位の方向に向けられるように、前記NO放出ポリマーが前記第1の膜と前記第2の膜との間に配置されていることを特徴とするデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病の末梢神経障害、血管収縮性障害、動脈硬化性疾患(macro-angiopathy)などの神経障害の治療に関し、糖尿病性の神経障害の結果傷の治癒が遅くなること、糖尿病に起因する血液循環障害、あるいは他の疾病による血流閉塞の治療に係る。特に、酸化窒素(NO)の使用を含み、前記疾病の少なくともいくつかの治療デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は世界で数千万人が患っている。この病気は神経障害や動脈硬化性疾患のリスクを増大する。糖尿病性神経障害の原因は、様々なレベルのインスリンまたは血糖値、および高血糖値である。慢性的な高血糖を原因とする糖尿病性神経障害、神経損傷は、合併症を起こさせ、衰弱させるものであり、痛み、不快感、機能障害の原因となり、利用可能な処置は、一様に成功しない。
【0003】
糖尿病性神経障害は、主に3つのタイプに分けられ、知覚神経障害、自律神経障害、運動神経障害がある。知覚神経障害は、痛み、麻痺、四肢の刺痛を発症し、さらには冒された部位では熱、冷、痛みまたは他の感覚を感じることができなくなる。自律神経障害は、男性の機能不全、膀胱神経障害、糖尿病性の下痢、胃の膨張などを起こす。運動神経障害は、筋肉が衰弱する。
【0004】
糖尿病の直接的、間接的結果として、この病気を患う人は糖尿病性潰瘍を発現する。これらの糖尿病性潰瘍は、身体に起きる小さな痛手(トラウマ)の結果である。糖尿病性神経障害を発現する糖尿病患者は、感覚が減退または無いに等しくなり、これらの潰瘍が急に発現する。この問題に影響する他の要因は、糖尿病神経障害に不随しておきる治癒力の減退および患部への血液循環の減少がある。患部への血液循環の減少は動脈硬化性疾患の結果である。動脈硬化性疾患は血管が肥大して動脈が硬化した状態を言う。これらの潰瘍はしばしばひどく影響を受けた患部を切除することになる。動脈硬化性疾患は閉塞性末梢動脈疾患と類似しており、ここでは同様に治療を進めることとする。
【0005】
糖尿病性神経障害による他の機能不全は、レイナウド症(Raynouds)、レイズ症候群(Reyes syndrome)などの血管収縮に関する疾病がある。
【0006】
ここでの問題点は、神経障害に対する効果的な療法、処置がないことである。アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、アミトリプチリン、デシプラミンおよびカプサイシンなどの薬剤は、糖尿病患者の痛みを和らげるものとして市販されているが、これらの薬は機能不全を改善するものではなく、対処療法であって、薬剤の医薬用原料の活性に対する抵抗性を増すことすらある。患者はこれらの薬をクリームや個別の処方に従って、痛みが激しくなる前に適用する。これを毎日行わなければならないので、この患者にとっては大変な負担となる。これらのクリームや痛みをブロックする組成物は、ある状況下では薬が全ての人に作用するとは限らないと思われる。場合によっては、これらのクリームや組成物は痛みを悪化させたり、目や皮膚を刺激して他の逆効果を生じることもある。1980年後半から1990年前半においては、アルドースレダクターゼ(NADPHを水素供与体として,アルドースをアルジトール(例えばグルコースをソルビトール)に可逆的に転換させる酸化還元酵素)阻害剤が導入された。不幸なことに、充分な効果があることを証明するデータはなく、副作用に関するものが報告された。これらの患者に対する最適なアドバイスは、生活習慣を制御、抑制し、血糖値を出来るだけ正常に近づけ、日々の運動と、健康および体重に気をつけることである。
【0007】
酸化窒素(NO)は、抗生物質のような一般的な治療法の代替法を提供するものとして知られる。酸化窒素は細胞の多くの機能に含まれる高反応性分子である。実際、酸化窒素は免疫システムで重要な役割を果たし、カビ、ウイルス、バクテリアなどの病原菌や一般的な微生物による侵襲に対して自己防衛としてのマクロファージによる活性化分子として用いられる。治癒の改善は、酸化窒素による血液血小板の活性化、凝集を阻害すること、また、インプラントの場所における炎症性反応を抑制することによる。さらに酸化窒素は、治癒に影響し、血管拡張効果も有する。
【0008】
酸化窒素は、抗病原菌、特に抗ウイルス作用、および抗ガン作用、治療濃度における細胞毒性、細胞増殖抑制、殺腫瘍性および殺菌性の作用などを有する。例えば白血病、リンパ腫患者の血液の悪性の細胞に対して、酸化窒素は細胞毒性作用を有する。一般の抗ガン剤に対しては、細胞が抵抗性を有するようになることがあるとしても、酸化窒素は前記血液の病気に対する化学療法薬として用いることができる。例えば多くの抗ガン剤のような悪影響がなく、酸化窒素のこのような抗病原性、抗腫瘍性は本発明の利点である。
【0009】
しかし、酸化窒素は半減期が短いために、ウイルス、バクテリア、カビ、酵母などの感染治療に用いるのは困難であった。このことにより、大量投与によるマイナスの作用や、毒性が問題となる。酸化窒素は血管拡張作用があり、大量に摂取すると体内の血液循環作用を崩壊させるおそれがある。一方、酸化窒素は一旦放出されると、ほんの数秒という非常に短い半減期を有する。従って、酸化窒素の短い半減期と毒性とを管理することは、抗病原菌、抗癌剤の分野における使用を制限する要素となる。
【0010】
近年、水と接触したときに酸化窒素を放出する能力のあるポリマーが見出されている。そのようなポリマーとして、直鎖ポリエチレンイミン(L−PEI)、分岐ポリエチレンイミン(B−PEI)などのポリアルキレンイミンがあり、生体適合性が良いという利点を有する。
【0011】
米国特許5519020には、PEI−CおよびSニトロソ化合物などの水不溶性ポリマーのNONO化複合体に関して記載され、酸化窒素の治療的な放出制御によって治癒速度を速める可能性について述べられている。米国特許5519020によるデバイスの臨床への適用はやけど、やけど治療部位、慢性静脈潰瘍、褥瘡性潰瘍、ハンセン病潰瘍、表皮水疱症、強皮症、乾癬、感染によらない傷口の肥厚などである。しかし、米国特許5519020によるポリマーからの酸化窒素の放出はどのようにも制御されたものではない。しかも、米国特許5519020では神経障害の治療については記載されていない。
【0012】
創傷治癒再生(Wound Repair Regeneration)10巻、No.5、2002年、頁286−294、米国XP002335426のボール マスターズ ケーエス;レイボビッチエス ジェー、ベレム ピー、ウエストジェー エル、ポール-ワーレン エル エーらの文献“糖尿病マウスに酸化窒素放出ポリビニルアルコールヒドロゲルを適用したときの皮膚創傷の治癒効果”には、ポリマーの主鎖に酸化窒素ドナーを共有結合させ、ポリビニルアルコールから紫外線重合開始剤により製造された新規ヒドロゲルのインビトロおよびインビボでの、酸化窒素の治療レベルの報告がある。しかし、放出を制御するものではない。また、神経障害の治療については記載されていない。
【0013】
米国特許6737447には、L−PEIのナノファイバを使用して酸化窒素を放出するコーティング薬剤について記載されている。しかし、米国特許6737447によるポリマーからの酸化窒素の放出は制御されたものではない。また、米国特許6737447では、神経障害の治療については記載されていない。
【0014】
ヨーロッパ特許1300424には、極めて疎水性の酸化窒素放出ポリマーが記載されている。これらのポリマーは広範囲に架橋された、ポリアミン誘導体ジビニルベンゼンジアゼニウムジオラート(diazeniumdiolates)である。しかし、ヨーロッパ特許1300424によるポリマーからの酸化窒素の放出は制御されたものではない。またヨーロッパ特許1300424では、神経障害の治療については記載されていない。
【0015】
米国公開特許2004/0171589には、体内への酸化窒素の部分的、局地的な投与について記載されている。米国公開特許2004/0171589によるデバイスは皮膚の創傷、裂口への使用について2頁、左欄、5〜6行に記載されている。さらに、米国公開特許2004/0171589にはジアゼニウムジオラートの一部を結合させたポリエチレンイミンのミクロスフェアが、半減期が長いことについて、6頁、右欄、1〜5行に記載されている。しかし、米国公開特許2004/0171589によるポリマーからの酸化窒素の放出は制御されたものではない。また米国公開特許2004/0171589では、神経障害の治療については記載されていない。
【0016】
他の例として米国特許5770645には酸化窒素を溶出するポリマーについて記載され、ポリマーの1200原子量当たりNOx基(Xは1または2)を少なくとも1つ有するポリマー誘導体である。1例として、遊離チオール基のニトロシル(nitrosylated)化の為に適当な条件でニトロシル化剤とポリチオレートポリマーを反応させることにより、S-ニトロシル化ポリマーが得られることが述べられている。
【0017】
アクロン(Akron)大学では、酸化窒素を溶出するL−PEI分子が開発された。この分子はインプラントのような医療器具の表面にナノスパン(nano-spun)され、この器具がインプラントされる場合に炎症を減少させ、治癒プロセスが著しく改善されることが示されている。米国特許6737447によれば、直鎖ポリ(エチレンイミン)−ジアゼニウムジオラートのナノファイバを用いて酸化窒素の輸送を提供する医療デバイスのコーティングについて述べられている。直鎖ポリ(エチレンイミン)−ジアゼニウムジオラートは組織を傷つけるような障害を防止して治癒プロセスを補助し、組織、器官に対して酸化窒素を制御しつつ放出する。
【0018】
しかし、米国特許6737447の“制御(controlled)”とは、コーティングからどれくらいの期間酸化窒素が放出されるかを示すものである。従って、米国特許6737447の“制御”と、本発明の“調整(regulating)”とは異なるのである。本発明の“調整”は酸化窒素の様々な放出が可能で、異なる放出履歴を達成することができることであると解釈されるべきである。
【0019】
電気的に紡糸された直鎖ポリ(エチレンイミン)−ジアゼニウムジオラートのナノファイバは、医療デバイスの特徴の変化を最小にしつつ、デバイスの周囲を被覆し、組織に対して酸化窒素を治療レベルで輸送する。ナノファイバの単位重量当たりの小さいサイズおよび広い表面積によって、医療デバイスの他の特性の変化を最小にしつつ、ナノファイバ被覆は単位重量当たりのより広い表面積を提供する。
【0020】
しかし、前記両文献ともに、本発明の技術分野である、糖尿病性神経障害、糖尿病性潰瘍、血管収縮に関する疾病、血管が肥大し硬化する疾病および抗病原菌性に関する酸化窒素の効果、治療改善に関しては全く開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5519020号公報
【特許文献2】米国特許第6737447号公報
【特許文献3】欧州特許1 300 424号公報
【特許文献4】米国特許公開第2004/0171589号公報
【特許文献5】米国特許第5770645号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】レイボビッチ エス ジェー、ベレム ピー、ウエストジェー エル、ポール-ワーレン エル エーら著、創傷治癒再生(Wound Repair Regeneration)10巻、No.5、「糖尿病マウスに酸化窒素放出ポリビニルアルコールヒドロゲルを適用したときの皮膚創傷の治癒効果」2002年、頁286−294、米国XP002335426
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、糖尿病性神経障害、糖尿病性潰瘍、動脈硬化性疾患などの神経障害の治療および予防のための、より改善されたそしてより効果のあるデバイスが必要とされている。神経障害部位に血液循環を増加させ、血管拡張効果を有し、痛みを和らげ、傷を治癒し、使い勝手が良く、経済的で、活性薬剤に対する抵抗性を持たせることなく、肌や目を刺激することなく、そして、糖尿病性神経障害、糖尿病性潰瘍、血管が肥大し硬化する疾病などの神経障害をピンポイントで予防、治療する効果のあるデバイスが望まれているのである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
従って、本発明は上記従来技術の問題点、単独または組み合わされる不利益の一つ以上を、軽減し、緩和し、削除し、本発明の請求の範囲により提供されるデバイスによって、上記言及された不利な問題の一つまたはそれ以上の組合せを解決する。
【0025】
また本発明の一つの目的は、糖尿病性神経障害、糖尿病性潰瘍、血管収縮に関する疾病、動脈硬化性疾患などの神経障害の治療または予防のためのデバイスを提供することである。このデバイスは、影響のある部位に接触するように酸化窒素(NO)放出ポリマーを含み、前記部位に酸化窒素放出ポリマーから治療用量の酸化窒素を放出する。
【0026】
本発明の他の目的は、前記のようなデバイスの製造方法を提供することであり、その方法は、糖尿病性神経障害、糖尿病性潰瘍、動脈硬化性疾患などの神経障害の標的治療・予防のためのデバイスを形成する方法である。この方法には、複数の酸化窒素放出ポリマーファイバを選択すること、酸化窒素放出ファイバを、コンドーム/シース、パッチ/包帯、テープ/被覆などの形態で配置することを含む。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、神経障害の治療または予防のための薬剤としての酸化窒素の使用法を提供することである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は少なくとも従来技術よりも有利であり、患部を標的として酸化窒素にさらし、患部の血液循環を増進し、血管拡張効果、神経に対する効果、痛みを和らげ、傷を治癒し、活性薬剤に対する抵抗性を発現させることなく、肌や目を刺激したり痛みを与えないような有用な効果を同時に与えることができる。
【0029】
本発明の目的、特徴、効果を明らかにし、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1Aは、治療デバイスの実施例10の概略図、図1Bは、本発明の実施例である靴下12を示す図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施例によるテープまたは被覆20の概略図である。
【図3】図3は、本発明の更に別の実施例によるシースまたはプラスター30の概略図である。
【図4】図4は、2種類のポリマー混合物からの酸化窒素の放出挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下には、本発明のデバイスを適用した実施例を中心に説明し、糖尿病性神経障害、糖尿病性末梢神経障害や神経障害からくる潰瘍などの標的治療・予防だけでなく、デバイスの製造方法、酸化窒素の使用についても詳述する。
【0032】
酸化窒素(一酸化窒素、NO)の生理学的、薬理学的な機能は、多くの注目を浴び、研究されている。酸化窒素は酸化窒素シンターゼ(NOS)によりアルギニンを基質として合成される。NOSは構成酵素cNOSに分類され、生体内に通常の状態で存在する。また、誘導酵素iNOSが、ある刺激に応答して多量に製造する。cNOSによって製造される酸化窒素濃度より、iNOSによって製造される酸化窒素濃度の方が2〜3オーダー高く、iNOSは極めて多量の酸化窒素を生産する。
【0033】
iNOSにより生産される場合に酸化窒素が多量に発生すると、酸化窒素が活性酸素と反応して外因性の微生物やガン細胞に攻撃するだけでなく、組織を傷つけ炎症の原因にもなることが知られている。一方、cNOSにより生産される少量の酸化窒素は、生体にとってサイクリックGMP(cGMP)による様々な防御機能を活性化する。例えば、血管拡張反応や、血液循環の増進、抗血小板凝固反応、抗バクテリア反応、抗ガン反応、消化管における吸収の増進、腎臓機能の調整、神経伝達物質の反応、勃起(生殖反応)、学習、食欲増進などである。従来、NOS酵素活性の阻害は、組織の炎症や障害を防止する目的で試みられてきた。それは、生体内で多量の酸化窒素が生成することに起因するものである。しかし、NOS(特にcNOS)の酵素活性(あるいは量で表される)の増進は、酵素活性の促進および酸化窒素の適量の生産による生体の前記多種の防御反応の目的のために試みられたことはなかった。
【0034】
近年、水と接触することにより酸化窒素を放出することができるポリマーが開発された。そのようなポリマーは例えばポリアルキレンイミンであり、L−PEI(直鎖ポリエチレンイミン)やB−PEI(分岐鎖ポリエチレンイミン)などである。これらのポリマーは、酸化窒素を放出した後、生体適合性が良いという利点を有する。
【0035】
本発明の実施例で使用されるこれらのポリマーは電気紡糸、ガス紡糸、エアー紡糸、ウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸などによって製造することができる。電気紡糸は、懸濁ポリマーを荷電することにより製造するものである。特徴的電圧下で、ジェットによって運ばれる電荷とともに適用された電場の相互作用により発生された張力に応じる表面から、ポリマーの細いジェットが放出される。このプロセスは、ナノファイバのような、ポリマー繊維の束を生成する。ポリマー繊維のジェットは処理すべき表面に導入される。
【0036】
さらに、米国特許6382526、同6520425、同6695992には、ポリマー繊維の各種製造プロセス、装置などが記載されている。これらの技術はガス流紡糸を基本とし、繊維を形成することのできる液体または溶液を使用してエアー紡糸の技術により形成される。ガス流紡糸は、本発明のある実施例においてデバイスを作成するのに好適である。
【0037】
本発明の実施例において、図1Bには、靴下12の形態のデバイスが示されている。これは、L−PEIまたは他の酸化窒素放出ポリマーとしてアミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI-セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオールスペルメート(buthanediol spermate))、ポリ(イミノカーボネート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(ビニルクロリド)、ポリジメチルシロキサン、またはこれらの組合せ、および、例えばポリサッカリド主鎖やセルロース主鎖などの不活性な主鎖に前記ポリマーをグラフトした化合物などと、他の好適なキャリア材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せをベース材料として、前記靴下に形成され、酸化窒素放出L−PEIのナノフィラメントが靴下の内部に被覆されて、酸化窒素が放出される。靴下のベース材料は、綿、ポリアクリレート、又は被服業界で使用される他の繊維を用いてもよく、そのような場合、ベース材料には本発明の酸化窒素放出ポリマーが付加される。この実施例は靴下に用いることが容易であることを示しているが、通常の被服としても同様にして患部に適用することができる。本発明の他の実施例における靴下としては、上述の好適なポリマーのナノフィラメントにより内部を被覆したものがある。そのようなポリマーとして、例えば、B−PEI(分岐ポリエチレンイミン)などのポリアルキレンイミンがあり、そのポリマーは酸化窒素を放出したのち、生体適合性に優れるという利点がある。
【0038】
他の例として米国特許5770645には酸化窒素を溶出するポリマーについて記載され、ポリマーの1200原子量当たりNOx基(Xは1または2)を少なくとも1つ有するポリマー誘導体である。1例として、遊離チオール基のニトロシル(nitrosylated)化の為に適当な条件でニトロシル化剤とポリチオレートポリマーを反応させることにより、S-ニトロシル化ポリマーが得られることが述べられている。
【0039】
アクロン(Akron)大学では、酸化窒素を溶出するL−PEI分子が開発された。この分子はインプラントのような体内に永久的にインプラントされる医療器具の表面にナノスパン(nano-spun)され、この器具がインプラントされる場合に炎症を減少させ、治癒プロセスが著しく改善されることが示されている。米国特許6737447によれば、医療用具のコーティングは、直鎖ポリエチレンイミン−ジアゼニウムジオラートのナノファイバを用いた酸化窒素のデリバリーを提供する。直鎖ポリエチレンイミン−ジアゼニウムジオラートは、制御された方法で酸化窒素を放出する。
【0040】
しかし、米国特許6737447の“制御(controlled)”とは、コーティングからどれくらいの期間酸化窒素が放出されるかを示すものである。例えば一度に放出される酸化窒素の量ではない。従って、米国特許6737447の“制御”と、本発明の“調整(regulating)”とは異なるのである。本発明による“制御または調整”は、酸化窒素の様々な放出が可能で、異なる放出履歴を達成することができることであると解釈されるべきである。
【0041】
O-ニトロシル基を含むポリマーもまた酸化窒素を放出するポリマーである。本発明の一実施例では、酸化窒素放出ポリマーはジアゼニウムジオラート基、S-ニトロシル基、O-ニトロシル基、その他これらの組合せの基を含む。
【0042】
本発明のまた別の実施例では、酸化窒素放出ポリマーは、ポリアルキレンイミンジアゼニウムジオラートであり、例えばL−PEI−NO(直鎖(ポリエチレンイミン)ジアゼニウムジオラート)である。酸化窒素放出ポリマーは、ジアゼニウムジオラート基に酸化窒素が含まれ、治療部位での酸化窒素の放出を変化させる。
【0043】
酸化窒素放出ポリマーの他の例としては、アミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI-セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオールスペルメート(buthanediol spermate))、ポリ(イミノカーボネート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(ビニルクロリド)、ポリジメチルシロキサン、またはこれらの組合せ、および、例えばポリサッカリド主鎖やセルロース主鎖などの不活性な主鎖に上記ポリマーをグラフトした化合物などから選択されるものがある。
【0044】
本発明の他の実施例として、酸化窒素放出ポリマーはO-誘導化NONOエートがある。この種のポリマーは、酸化窒素の放出に酵素反応が必要となる場合がある。
【0045】
酸化窒素放出ポリマーとして好適であるポリマーを別の方法で記載するならば、例えばL−PEIのように2級アミン(=N−N)基、あるいは例えばアミノセルロースのような2級アミン(=N−N)をペンダント基として有するポリマーである。
【0046】
本発明の実施例による酸化窒素放出性靴下のナノ紡糸ファイバは最も好ましくはL−PEIを含む。靴下の形状に織られた酸化窒素放出ファイバはL−PEIから製造されることが好ましく、使用に際して放出するための酸化窒素が付加されている。
【0047】
本発明の“ナノ紡糸ファイバ”とは、電気紡糸、エアー紡糸、ウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸などにより得られるナノサイズのファイバを意味する。
【0048】
この靴下の例では、治療したい患部に合わせて適当なサイズのものが作られ、例えば、足、個々のつま先、ふくらはぎ、大腿部、腹部の全体または一部、頸、頭部の全体または一部、肩、上腕、前腕、手またはそれぞれの指などを覆うのに適当な大きさとする。これらのサイズは例えば様々な種類の小、中、大の靴下とすることや、患者の治療部位の大きさに合わせることができる。
【0049】
本発明の実施例による酸化窒素放出性靴下12が患部に適用される例が図1Bに示され、汗やプロトンドナーのスプレーとして、湿気と接するとき、酸化窒素放出性靴下は患部に酸化窒素の放出を開始する。
【0050】
本発明の別の実施例における靴下はその内面が酸化窒素放出ナノ粒子またはミクロスフェアにより被覆されている。これらのナノ粒子またはミクロスフェアは、酸化窒素放出ポリマーから形成され、他の適当な材料によりカプセル化されていても良い。そのような材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せがある。この実施例によるナノ粒子またはミクロスフェアは、汗やプロトンドナーと接触することにより、靴下の内部で、患部に対して酸化窒素の放出を開始する。
【0051】
本発明における「カプセル化」とは、酸化窒素放出ポリマーを3次元マトリクスにより固定することを意味し、フォーム、フィルム、ナノファイバまたはファイバの不織マット、ファイバ、他の酸化窒素放出ポリマーを固定できる材料、包摂するに適した他の材料により包含するものと理解するべきである。
【0052】
また、本発明の他の実施例による靴下は、小型の水袋(ウォーターバッグ)または水を封入したスポンジを含むことができる。この小型の水袋または水を封入したスポンジは、酸化窒素放出性のナノ粒子、ミクロスフェアから酸化窒素の放出を活性化するために用いられる。汗を余りかかない患者にはこの実施例を適用することが好ましい。
【0053】
本発明の別の実施例における酸化窒素放出ポリマーは、マイクロカプセル化されたプロトンドナーと共にあるいはこれと結合して提供することができる。
【0054】
例えば、従来公知の方法において、水または液体を含む水などの、プロトンドナーを含むマイクロカプセルとして最初に製造される。これらのマイクロカプセルは、酸化窒素放出ポリマーの上に適用される。前記適用方法としては、例えば、パターン接着(pattern gluing)などの接着により行われ、あるいは、マイクロカプセルの上に酸化窒素放出ポリマーを紡糸することもできる。こうして、酸化窒素放出ポリマーと、プロトンドナーを包含するマイクロカプセルとのデバイスまたはシステムが製造される。このデバイスまたはシステムを標的部位に適用して、デバイスまたはシステムを圧縮または捻る。圧縮または捻ることによってマイクロカプセルが破壊される。その結果酸化窒素放出ポリマーがプロトンドナーにさらされ、標的部位で酸化窒素放出ポリマーから酸化窒素の放出が開始される。本発明の他の実施例において、マイクロカプセルが破裂するまで加熱または剪断することによって、マイクロカプセル内のプロトンドナーを放出することもできる。
【0055】
さらに別の実施例において、マイクロカプセルが、フィルム、テープ、シース形状とされてもよい。マイクロカプセルのフィルム、テープ、シース上に、酸化窒素放出ポリマーのフィルム、テープ、シースを接着する。好ましくは前記接着をあるパターンに従って行う。そのパターンは、接着されていない領域を含み、そこでは一旦マイクロカプセルが圧縮または捻られることにより破壊されたあと、プロトンドナーが酸化窒素放出ポリマーまで輸送されるスペースを形成する。そしてプロトンドナーが酸化窒素放出ポリマーと接触したのち、酸化窒素の放出が開始される。このように、マイクロカプセルと酸化窒素放出ポリマーとのフィルム、テープ、シースでの組合せを標的部位に適用できる。この組合せが圧縮または捻られた後、標的部位が酸化窒素にさらされる。
【0056】
また別の実施例においては、酸化窒素放出ポリマーが、プロトンドナーを含むマイクロカプセルのフィルム、テープ、シースの上に、直接紡糸される。マイクロカプセルのフィルム、テープ、シースと紡糸された酸化窒素放出ポリマーとの組合せは、標的部位に適用することができる。この組合せが圧縮または捻られた後、標的部位が酸化窒素にさらされる。
【0057】
本発明のデバイスまたはシステムの他の実施例において、活性化インジケータを含むことができる。活性化インジケータは、マイクロカプセルが充分に破壊され、酸化窒素放出ポリマーが充分なプロトンドナーにさらされて有効量の酸化窒素を放出することができることを示す。この活性化インジケータは例えばプロトンドナーを着色することによって得られ、マイクロカプセル内に捕捉される。マイクロカプセルが破壊されたとき、着色されたプロトンドナーは外に放出され、酸化窒素放出ポリマーを充分に湿らせることにより色が視認されるようになる。活性化インジケータとしては他に適当な材料を選択してマイクロカプセル内に入れるか、マイクロ粒子の厚さを適当に選択してマイクロカプセルが破壊されるときの音がでるように構成することもできる。また、芳香剤をプロトンドナーに混ぜてマイクロカプセルを得ることもできる。このシステムまたはデバイスを使用したユーザは、マイクロカプセルが破壊されたのちに放出される芳香剤を匂うことができるのである。
【0058】
別の実施例において、水と接触したときに色が変わる基材をデバイスと組み合わせることもできる。これにより、水カプセルまたは小型の水袋が破壊され、基材が変色することで、活性化を示すことができる。
【0059】
本発明の別の実施例は、デバイスまたはシステムから酸化窒素を一方向にのみ放出させることである。この種の実施例は、本発明のデバイスの一方側を、酸化窒素を殆ど通さない、または実質的に通さないものにすることである。これは、本発明のデバイスの一方の側に適用される材料を、酸化窒素を通さないものにすることで達成される。そのような材料は通常のプラスチック、例えば、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せから選択される。この実施例もまた、酸化窒素放出ポリマーとして、例えばL−PEI(または、前記詳細に説明した酸化窒素放出ポリマーまたはキャリア材料)を、例えば上記プラスチック、ラテックス、綿の表面に電気またはガスジェットにより紡糸することで容易に製造できる。
【0060】
また別の実施例として、膜を用いて前記デバイスを提供することができる。それは、デバイスの第一の側の膜を酸化窒素透過性とし、デバイスの第二の側に別の膜として、酸化窒素の透過性の低い膜または実質的に酸化窒素を通さない膜を用いることである。この実施例では、デバイスの第一の側から放出され、第二の側からの酸化窒素の放出は実質的に阻止される。従って、治療したい領域に到達する酸化窒素の量を高めることができる。
【0061】
酸化窒素放出ポリマーの活性化は、ポリマーが適当なプロトンドナーと接触することにより達成される。プロトンドナーの一例として、水、体液(血液、リンパ液、胆汁、その他)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、フェノール、ナフトール、ポリオール、その他)、酸性緩衝液(リン酸、コハク酸、炭酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、脂肪酸、アミノ酸、その他)、またはこれらの組合せから選択される。
【0062】
プロトンドナーに界面活性剤を加えることによりデバイスの濡れを良くすることが出来る。界面活性剤は表面張力を下げ、活性化液体がデバイスを通過して輸送を容易にする。
【0063】
本発明によるデバイスの別の実施例では、デバイスがポリウレタンまたはポリエチレンのフォームに製造され、図2にテープまたは被覆として示される。このポリウレタンテープまたは被覆は、身体の治療部位に容易に巻き付けることができる。身体の少なくとも接触する側には酸化窒素放出性のL−PEIのナノ粒子、ミクロスフェア、ナノフィラメントが被覆されている。これらの粒子またはフィラメントが、汗などの湿気と接触してテープまたは被膜内にそれが浸透すると、酸化窒素の放出が開始される。
【0064】
この実施例は、靴下によっては取り付けにくい箇所、例えばつま先や指の間、脚の付け根、脇の下などに装着するのに適しているデバイスが得られる。
【0065】
本発明の他の実施例において、テープまたは被覆は他の適当な材料とともに製造することができる。その材料は、ゴムや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せからなる。
【0066】
別の実施例では、ナノ粒子、ミクロスフェアは可溶性のフィルム内に一体化され、治療部位において、汗や、水袋、または水が封入されたスポンジ、或いは水をスプレーすることにより、靴下またはテープ/被膜の中で崩壊し、酸化窒素を放出する。
【0067】
デバイスを治療部位に置くと、糖尿病性神経障害、糖尿病性潰瘍、動脈硬化性疾患などの神経障害の標的治療または予防ができる。
【0068】
本発明の他の実施例において、デバイスは一方向にのみ酸化窒素を放出する。この種の実施例では、靴下またはテープ/被膜の一方の側は酸化窒素を透過しない。これは、靴下またはテープ/被膜の一方の側に酸化窒素を透過しない材料を適用することにより達成される。そのような材料は、通常のプラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せなどから選択することができる。
【0069】
本発明の別の実施例において、デバイスはポリウレタンまたはポリエチレンのシースまたは湿布、パッド、包帯などとして図3に示され、酸化窒素放出ポリマーにより被覆されている。湿布またはシースは、膠などの接着剤を利用して患部に適用される。この実施例は、患部や傷が小さいために、患者が靴下や被覆材/テープなどの全体を被覆するようなことを拒む場合でも適用できるという利点を有する。そして、湿布、シース、パッド、包帯の形態では必要とされる材料もより少なくなるので、製造コストも低くすることができるという利点を有する。
【0070】
この実施例によるデバイスはL−PEIなどの酸化窒素放出ポリマーのナノファイバから製造された粉末を被覆していても良い。
【0071】
本発明の別の実施例では、酸化窒素放出デバイスは、例えば調合薬、ビタミン、ニコチン、ニトログリセリンなどの薬剤放出パッチのための増進器として作用させることもできる。この実施例は、一つの治療によって2つの治癒効果を得ることができるデバイスを提供する。従って、デバイスから酸化窒素が放出されると、そのようなデバイスによって相乗効果が達成される。組成物を有するデバイスを作用させる部位で、酸化窒素は血管拡張作用を有する。組織の血管が拡張すると薬剤が浸透しやすくなり、調合薬剤による治療もよりし易くなる。また、酸化窒素により抗炎症性、抗菌性などの効果もある。よって、予想以上の治療効果が得られる。
【0072】
本発明の別の実施例では、ファイバ、ナノ粒子またはミクロスフェアはゲル中に一体化することができる。ゲルは塗りつけたり、圧縮したりすることができる。酸化窒素の放出はゲル上に水が適用されることにより開始される。ファイバ、ナノ粒子、ミクロスフェアは、使用前に直接混合してヒドロゲル中に一体化することもできる。この実施例では、皮膚のポケット部やコーナーなどに侵入させることにより、治療部位に近い位置で酸化窒素の放出ができるという利点がある。
【0073】
他の実施例として、酸化窒素放出ポリマーを粉体、ナノ粒子、ミクロスフェアなどとしてフォーム(発泡体)と組み合わせることである。フォームとしてはオープンセル構造を有することができ、プロトンドナーを酸化窒素放出ポリマーに輸送するのに適している。フォームの適当な材料はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せ、またはラテックスから選択することができる。
【0074】
別の実施例として、クリーム状、またはゲル状若しくはこれらの組み合わせの形態もできる。酸化窒素放出ポリマーはプロトンドナーにより活性化されるので、デバイスの使用により酸化窒素を放出開始させたいときまで、酸化窒素放出ポリマーをプロトンドナーから隔離することができる。これを遂行する一つの方法は、2つの収容部を有するシリンジを利用することである。一つの収容部にはプロトンドナーゲルが、他方の収容部にはプロトンドナーゲルを排除した、酸化窒素放出ポリマーを含むゲルを収容する。デバイスを使用する場合には、シリンジから絞りだして両方を混ぜ合わせ、プロトンドナーを含む第一のゲルが、酸化窒素放出ポリマーを含む第二のゲルと接触して、酸化窒素の放出が始まる。
【0075】
酸化窒素放出ポリマーからの酸化窒素(NO)の放出は、治療適用量であり、それは0.001〜5000ppm、あるいは0.01〜3000ppm、あるいは0.1〜1000ppm、あるいは1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,または100ppmである。この濃度は何処を測定するかによって様々に変化する。もし、濃度の測定を酸化窒素放出ポリマーの近くで測定すれば1000ppmもしくはそれ以上であり、組織内で測定すれば、1〜1000ppm程度に低下する。
【0076】
本発明の実施例において、デバイスからの酸化窒素の放出の時間帯を制御、調整することが好ましい。これはデバイスに他のポリマーまたは材料を一体化させることにより達成することができる。これらのポリマーまたは材料は以下の何れの材料またはポリマーであってよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せ、またはラテックスから選択される材料を含むことができる。
【0077】
酸化窒素放出ポリマーから酸化窒素の放出を制御し調整するために3つの重要な要素がある。一つは、ジアゾリウムジオラート基などのプロトンドナーと、酸化窒素放出ポリマーとをいかに素早く接触させるか。一つは、酸化窒素放出ポリマーの周囲の酸性環境、そして、酸化窒素放出ポリマーの周囲の温度(高い温度は酸化窒素の放出を促進する)である。
【0078】
本発明の酸化窒素放出ポリマーの一例として、L−PEI−NOとキャリアポリマーとを混合して酸化窒素の放出を遅く、長くするものがある。別の例では、1以上のキャリアポリマーと混合することもでき、必要に応じて放出または分離を調整することができる。例えば、酸化窒素放出ポリマーの周囲環境を疎水性にすれば、初期の放出をゆっくりにすることができる。そして酸化窒素放出ポリマーの周囲環境がより親水性になったとき、第二の期間はより早い放出とすることができる。これは、例えば生分解性ポリマーを使用することによってもでき、第一の期間は低放出であって、疎水性ポリマーが分解されて、親水性ポリマーとなったら酸化窒素のより高い放出が得られる。このように、疎水性キャリアポリマーは、活性プロトンドナー例えば水や体液などは疎水性キャリアポリマーをゆっくりと侵入するから、酸化窒素の遅延放出を与える。一方、親水性ポリマーはその反対の作用がある。親水性ポリマーの一例としてポリエチレンオキシド、疎水性ポリマーの一例としてポリスチレンがある。これらのキャリアポリマーは酸化窒素放出ポリマーと混合して、電気紡糸により適当なファイバに形成することができる。当業者においては、他のポリマーも同様の目的で使用できることが理解されよう。図4は、2つの異なるポリマー混合物からの放出挙動(酸化窒素濃度対 時間)を示した図である。親水性キャリアポリマーと酸化窒素放出ポリマーを酸性環境下で混合した場合(A)と、疎水性キャリアポリマーと酸化窒素放出ポリマーを中性環境下で混合した場合(B)である。
【0079】
一例としては、このキャリアポリマーが疎水性または親水性の特徴を有する別の材料を代わりに使用することもできる。従って、本発明における“キャリア材料”はキャリアポリマーと、親水性または疎水性の特徴を有する他の材料を意味すると解されるべきである。
【0080】
本発明の別の実施例において、L−PEI−NOなどの酸化窒素放出ポリマーからの酸化窒素の放出は、プロトンの存在により影響を受ける。これは、より酸性環境下では酸化窒素の放出が促進されることを意味する。酸化窒素放出ポリマーを活性化することにより、または酸化窒素放出ポリマーとキャリアポリマーに、アスコルビン酸溶液などの酸性液体を混合することにより、酸化窒素の放出を加速することができる。
【0081】
前記キャリアポリマーとキャリア材料は、酸化窒素の放出を調整する以外に他の特徴に影響を与えることもできる。そのような特徴としては機械的強度などである。
【0082】
キャリアポリマーまたはキャリア材料については、酸化窒素放出ポリマーがその中に一体化され、共に紡糸され、或いはその上に紡糸して、本発明の実施例のいずれについても適用することができる。前記紡糸には、電気紡糸、エアー紡糸、ウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸などが含まれる。このような方法により、酸化窒素放出ポリマーと、キャリアポリマーまたはキャリア材料とを含み、酸化窒素の放出特性を予め設定したポリマー混合物のファイバが製造される。これらの特徴は、異なるアプリケーションで異なる放出挙動に合わせることができる。
【0083】
本発明によるデバイス内の酸化窒素放出ポリマーは、銀、例えば水素活性化銀などと結合させることもできる。本発明に従ってデバイス内に銀を結合させ、治癒プロセスをさらに促進する。好ましくは銀はデバイスから銀イオンとして離脱できるとよい。デバイス内に結合された銀はいくつかの利点がある。そのような利点の一つは、酸化窒素放出ポリマーが標的部位で酸化窒素を治療のために放出する間、デバイスがバクテリアやウイルスの増殖を抑えることである。
【0084】
デバイスは、例えばL−PEIを電気紡糸することにより製造できる。L−PEIは特徴的な電圧により荷電され、L−PEIポリマーファイバの束として、細いL−PEIジェットが放出される。このポリマーファイバのジェットは処理部の表面に直接あてることもできる。処理部の表面は、デバイスにとして好適な材料からなる。L−PEIの電気紡糸ファイバは材料に接着し、本発明のデバイスの上にL−PEIの被膜/層を形成する。
【0085】
デバイスのベース材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ポリオレフィン、ラテックス、またはこれらの組合せ、またはラテックスである。酸化窒素放出ポリマーは、本発明のすべての実施例において、これらの材料のいずれとも一体化し、共に紡糸し、或いは表面に紡糸することができる。
【0086】
酸化窒素放出ポリマーは、前記のように2級アミンを、主鎖または側鎖に有していても良い。これにより良好な酸化窒素放出ポリマーを作ることが出来る。2級アミンは強い負電荷を有するので酸化窒素を付加し易い。もし2級アミンの近く、例えば窒素原子の隣接炭素原子に、窒素より高い電気陰性度のリガンドがあると、酸化窒素をポリマーに付加することは非常に困難である。一方、もし2級アミンの近く、例えば窒素原子の隣接炭素原子に、電気的に陽性のリガンドがあると、アミンの電気陰性度が増強されポリマーに酸化窒素を付加する可能性が高くなる。
【0087】
本発明の一つの実施例において、酸化窒素放出ポリマーは塩によって安定化することができる。例えばジアゼニウムジオラート基のような酸化窒素の放出基は、通常陰性であり、陽性のカウンターイオン例えばカチオンは、酸化窒素放出基を安定化するために使用できる。このカチオンは、周期律表の第一または第二グループから選択されるカチオンで、例えば、Na、K、Li、Be2+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、およびSr2+などである。同じ酸化窒素放出ポリマーでも塩が異なると、異なる特徴を有する。このように目的に応じて適当な塩(カチオン)を選択することができる。カチオン安定化ポリマーの例として、L−PEI−Na(例えばL−PEIジアゼニウムジオラートをナトリウムで安定化したもの)や、L−PEI−Ca(例えばL−PEIジアゼニウムジオラートをカルシウムで安定化したもの)がある。
【0088】
本発明の別の実施例として、酸化窒素放出ポリマー、または酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物に、吸収剤を混合するものがある。この実施例は、ポリマーまたはポリマー混合物が吸収剤によって、より早く活性化のための液体(例えば水または体液)を吸収することができるので、酸化窒素の放出が促進されるという利点がある。実施例としては、酸化窒素放出ポリマー、又は酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物に80%(w/w)の吸収剤を混合したもの、酸化窒素放出ポリマー、又は酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物に10〜50%(w/w)の吸収剤を混合したものなどがある。
【0089】
酸化窒素の放出は水などのプロトンドナーによって活性化されるので、酸化窒素放出ポリマーまたは酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物をプロトンドナーと接触を維持することが有利である。もし長期間に渡り酸化窒素を放出することが求められれば、プロトンドナーと、酸化窒素放出ポリマーまたは、酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物との接触を維持するシステムが有効である。従って、本発明の別の実施例では、吸収剤を添加することにより酸化窒素の放出を調整することができる。吸収剤はプロトンドナー(例えば水)を吸収し、長期間に渡って酸化窒素放出ポリマーとプロトンドナーとの接触を維持する。吸収剤は、ポリアクリレート、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、綿、スターチなどである。この吸収剤は充填剤としても使用することができる。この場合の充填剤は、酸化窒素放出ポリマーまたは、酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物に所望の質感を与える。
【0090】
上記のようにして、本発明の範囲内において、デバイスに他の酸化窒素放出ポリマーを電気紡糸することも勿論可能である。
【0091】
本発明のデバイスに採用される酸化窒素放出ポリマーの一実施例においては、純粋な酸化窒素放出ポリマーファイバを得るために電気紡糸される。
【0092】
デバイスの上に酸化窒素放出ポリマーをガス流紡糸、エアー紡糸、ウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸することは、本発明の範囲内である。
【0093】
この製造プロセスにより、酸化窒素放出ポリマーファイバまたはマクロ粒子の表面が治療部位に対して広い接触面積を有するから、酸化窒素放出ポリマーを効率よく使用し、デバイスの生産コストにも効果的である。
【0094】
ここで、本発明のいくつかの可能性のある使用について以下に記載する。
【0095】
治療に使用されるとき治療用量の酸化窒素(NO)を放出するように構成された酸化窒素(NO)放出ポリマーを含むデバイスによって、身体の治療部位の神経障害および潰瘍を治療および/または予防方法であって、酸化窒素放出ポリマーから治療部位に治療用量の酸化窒素を放出することにより、放出された酸化窒素(NO)を使用して身体の表面または内部の前記部位をさらすことを含む。
【0096】
上記による方法は、身体の手足の治療部位を、コンドーム/シース、靴下、パッチ/パッド/包帯、テープ/被膜を適用することにより前記治療部位をさらす(治療する)ことを含む。
【0097】
身体の治療部位における神経障害および潰瘍の治療および/または予防のために酸化窒素(NO)を治療用量使用する。
【0098】
本発明は、各種の適当な形態で使用することができる。本発明の実施例である要素、部品は物理的に、機能的に、論理的に適当な方法により用いることができる。実際、機能性は、単一のユニット、複数のユニット、あるいは他の機能的ユニットの一部として実行される。
【0099】
本発明は前記のように詳細な実施例に関して説明したが、ここに説明した詳細な形態に限定されるものではない。むしろ、本発明は請求項の記載にのみ限定されるものであり、前記の詳細な実施例と同様の他の実施例も、ここに付加された請求項の範囲内である。
【0100】
請求項において、“含む/含んでいる”は他の要素または工程を排除していないことを意味する。さらに、個別に挙げられているが、複数の手段、要素、ステップが伴われることも許容されている。また、個々の特徴は異なる請求項に含まれても良く、これらが有効に結合され、異なる請求項に包含されることは、特徴の組合せが実現可能でないとか有利でないなどを意味するものではない。さらに、単一の関係は複数のそれを排除するものではない。“ひとつ(a)”“ひとつ(an)”“第一(first)”“第二(second)”などは複数を排除していない。請求項の引用は例を明確にするためのものであり、請求の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害、または神経障害と前記神経障害に由来する潰瘍を、身体の標的部位において治療または予防の少なくとも一方を行うように構成されたデバイスであって、
酸化窒素(NO)が放出されるように活性化されることのできる酸化窒素(NO)放出ポリマーと、
前記デバイスの第1の側にありNOに対して浸透性である第1の膜であって、前記第1の側が使用時に標的部位の方向に向けられる側である、第1の膜と、
前記デバイスの第2の側にありNOに対して低浸透性あるいは実質的に非浸透性である第2の膜であって、前記第2の側が使用時に治療部位の方向とは反対方向に向けられる側である、第2の膜と、
を備えており、
前記NO放出ポリマーからの放出されたNOが前記デバイスから実質的に標的部位の方向に向けられるように、前記NO放出ポリマーが前記第1の膜と前記第2の膜との間に配置されていることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記NO放出ポリマーと混合されて、前記NO放出ポリマーからのNOの放出速度及び前記NO放出ポリマーからのNOの放出期間の一方もしくは両方を制御するように構成されたキャリア材料を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記キャリア材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ポリオレフィン、ヒドロゲル、ラテックス、またはこれらの組合せから選択される請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記酸化窒素放出ポリマーが、ナノ粒子またはミクロスフェアの形態である請求項1から3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
前記NO放出ポリマーが、ジアゼニウムジオラート基、S-ニトロシル基、O-ニトロシル基、もしくはこれらの組合せ、または、
前記NO放出ポリマーが、アミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノキトサン、ポリウレタン、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ブタンジオール スペルメート)、ポリエチレンイミン(PEI)、直鎖ポリエチレンイミン(L−PEI)、PEI−セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリ(イミノカーボネート又はこれらの組合せ、及びポリサッカリド(多糖)主鎖あるいはセルロース主鎖のような不活性な主鎖に前記ポリマーがグラフトされているものを含む群、より選択される、請求項1から4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記NO放出ポリマーは、その電荷を通じてポリマーに付加されたNOを含む、請求項1から5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記NO放出ポリマーが、プロトンドナーによって活性化され、
使用前には、前記NO放出ポリマーが、NOの放出を開始するまで、プロトンドナーから分離して保存されている、請求項1から6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記NO放出ポリマーと一体化したキャリア材料をさらに含んでおり、前記キャリア材料が、プロトンドナーにさらされるとき部分的に崩壊する、請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
プロトンドナーバッグ、プロトンドナーを封入したスポンジ、またはマイクロカプセル化されたプロトンドナーをさらに含んでおり、
プロトンドナーが前記NO放出ポリマーと接触してNOの放出を活性化するように、前記プロトンドナーバッグ、前記プロトンドナーを封入したスポンジ、または前記マイクロカプセル化されたプロトンドナーが、開放又は破壊された時にプロトンドナーを放出するように形成されている、請求項7又は8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記プロトンドナーバッグ、前記プロトンドナーを封入したスポンジ、または前記マイクロカプセル化されたプロトンドナーが、界面活性剤を含んでおり、前記界面活性剤がデバイスを通過してプロトンドナーの移動を容易にするように構成されている、請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
前記プロトンドナーが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、フェノール、ナフトール、ポリオール、リン酸塩、コハク酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、脂肪酸、アミノ酸、またはこれらの組合せから選択される、請求項7から10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
キャリア材料とNO放出ポリマーの少なくともいずれか一方と接触して、前記プロトンドナーを吸収するように構成された吸収剤をさらに含む、請求項7から11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが、靴下、テープ、皮膜、パッチ、包帯、湿布からなる群から選択される形態を有する、請求項1から12のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
請求項1記載のデバイスの製造プロセスであって、
前記NO放出ポリマーをNO放出材料に組み込む工程と、
前記NO放出材料を、好適な形状で配置する工程、あるいはキャリアの上に被覆して配置する工程であって、このとき前記NO放出材料は、前記酸化窒素放出ポリマーがNOを放出するように使用されるときに前記標的部位を酸化窒素にさらすように構成されている、前記デバイスの少なくとも一部として形成されており、
前記デバイスの第2の側にありNOに対して低浸透性あるいは実質的に非浸透性である材料を適用する工程と、
前記デバイスの第1の側にありNOに対して浸透性である膜を前記デバイスに提供する工程と、
からなることを特徴とするデバイスの製造プロセス。
【請求項15】
前記NO放出ポリマーをキャリア材料に組み込む前に、前記キャリア材料が前記デバイスで使用されて、前記NO放出ポリマーからのNOの放出速度及び前記NO放出ポリマーからのNOの放出期間の一方もしくは両方を制御し調整するために、前記NO放出ポリマーと前記キャリア材料とを混合する工程を更に備えていることを特徴とする請求項14記載のデバイスの製造プロセス。
【請求項16】
前記配置する工程が、酸化窒素放出ポリマーを、電気紡糸、エアー紡糸、ガス紡糸、ウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、またはゲル紡糸することである請求項14又は15記載の製造プロセス。
【請求項17】
前記NO放出ポリマーが、複数のNO放出ポリマーの粒子、ナノファイバ、ナノ粒子またはミクロスフェア、のいずれかから選択されることを特徴とする請求項14から16のいずれか記載の製造プロセス。
【請求項18】
前記酸化窒素放出ポリマーと前記キャリア材料を混合することが、前記NO放出ポリマーを前記キャリア材料に一体化すること、前記NO放出ポリマーと前記キャリア材料を一緒に紡糸すること、または、キャリア材料の上にNO放出ポリマーを紡糸することのいずれかを含む、請求項16または17記載の製造プロセス。
【請求項19】
プロトンドナーバッグ又はプロトンドナーを封入したスポンジを前記デバイスに配置する工程をさらに含んでおり、
前記プロトンドナーバッグ又は前記プロトンドナーを封入したスポンジの開放又は破壊によってプロトンドナーが放出され、これによりプロトンドナーが前記NO放出ポリマーと接触したときに前記NO放出ポリマーからのNOの放出を活性化するように形成されている、請求項14から18のいずれかに記載のデバイス。
【請求項20】
さらにプロトンドナーをマイクロカプセル化し、前記マイクロカプセルを前記NO放出材料に適用することを含む請求項14又は15記載の製造プロセス。
【請求項21】
前記適用の工程が、パターン化された接着工程、又はマイクロカプセルの上にNO放出材料を紡糸する工程を含む、請求項20記載の製造プロセス。
【請求項22】
マイクロカプセルを第一のフィルム、テープまたはシース内に形成する工程と、
NO放出材料の第二のフィルム、テープまたはシースを形成する工程と、
マイクロカプセルの第一のフィルム、テープまたはシースと、NO放出材料の第二のフィルム、テープまたはシースとを接着する工程と、をさらに含む請求項20記載の製造プロセス。
【請求項23】
マイクロカプセルを第一のフィルム、テープまたはシース内に形成する工程と、
プロトンドナーを含むマイクロカプセルの第一のフィルム、テープまたはシースの上にNO放出材料を直接紡糸する工程と、を含む請求項20記載の製造プロセス。
【請求項24】
前記マイクロカプセルが破壊されたときを示すように構成された活性化インジケータを提供する工程を含む請求項20記載の製造プロセス。
【請求項25】
前記活性化インジケータを提供する工程が、マイクロカプセル内に着色剤を提供する工程、マイクロカプセルの材料を選択する工程もしくはマイクロカプセルが破壊されたとき音が発生するようにマイクロカプセルの壁の厚みを選定する工程、マイクロカプセル内に芳香剤を混合する工程、のいずれかを含む、請求項24記載の製造プロセス。
【請求項26】
前記活性化インジケータを提供する工程が、プロトンドナーと接触したとき色が変わる基材を提供する工程を含む請求項19又は20記載の製造プロセス。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−47241(P2013−47241A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224096(P2012−224096)
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2007−554578(P2007−554578)の分割
【原出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(507271798)ノーラブズ エービー (11)
【Fターム(参考)】