説明

酸化窒素放出組成物、デバイス、及び方法

酸化窒素放出組成物であって、固体非晶質シリカを含む外側表面を有するナノ粒子を含み、該外側表面は、それに付着したニトロソチオール含有基を有し、該ナノ粒子は、水系中に分散可能である、酸化窒素放出組成物と、該組成物を含むデバイスと、該組成物及びデバイスを作製並びに使用する方法と、が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、2008年4月21日に出願された米国特許仮出願第61/046,659号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
酸化窒素(NO)は、血液循環、血管新生、創傷治癒、免疫応答、神経伝達、細胞シグナル伝達、細胞増殖、及び細胞生存を含む、多くの重要な生理的プロセスを調節する、短命のガス状フリーラジカルシグナル伝達分子である。NO欠乏は、高血圧、アテローム性動脈硬化症、及び慢性創傷を含む、複数の病態と関連付けられる。
【0003】
NOは、L−アルギニン上の酸化窒素シンターゼ類の作用によって、生体内で発生する。NOは、生体内で急速に分解する(t1/2<5秒)ため、内因性S−ニトロソチオール類は、NO濃度を調節するという、体内での重要な役割を果たす。NOを放出することができる、これらのニトロソチオール類は、NOが生体内で血清アルブミン、システイン、及びグルタチオン等のチオール化分子に結合される際に形成される。
【0004】
NOを化学的に貯蔵し、放出することができる特定の外因性NO供与物質が、治療上の使用に提案されてきた。そのような物質は、ニトロソチオール類、ジアゼニウムジオレート類、ニトロソアミン類、NO−金属錯体類、並びに有機亜硝酸塩類及び硝酸塩類等のNO供与基を含む。N−ジアゼニウムジオレートNO供与物質は、それらが、周囲条件下で安定であり、かつ水性媒体中で分解し、NOを発生させることができるため、大いに注目されてきた。しかしながら、これらの物質の合成は困難である可能性があり(加圧酸化窒素ガスとの反応を必要とする)、規模の拡大が容易ではなく、ジアゼニウムジオレート及び/又はその分解生成物の一部が血液に浸出した場合、場合によっては毒性問題が生じる可能性があるという、いくつかの懸念が存在する。
【0005】
また、外因性S−ニトロソチオール類も、特に、それらの内因性S−ニトロソチオール類との類似性のため、かなり注目されてきた。しかしながら、比較的不安定なS−NO結合によって、これらの物質の実用性は制限されてきた。例えば、小分子ニトロソチオール類は、およそわずか数分から数日という水溶液中での半減期を有することが報告された。
【0006】
したがって、新しいNO供与物質及び組成物への関心、並びにそれらの必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
今、シリカナノ粒子の固体非晶質シリカ表面に付着したニトロソチオール基は、改善された安定性を有し、かつNOを供給することができることが発見された。シリカナノ粒子は、水系中に分散可能であり、特定の実施形態では、ナノ粒子は、ヒドロゲルモノマー又はヒドロゲル中に分布される。そのような組成物は、表面又は隣接する哺乳類の組織物にNOを放出して、特定の種類の創傷の治癒を促進する、抗菌効果を提供する、血小板粘着及び血液凝固を阻害する、血管新生を促す、又は血流を高めて薬の吸収を増加させる等の治療効果を提供するために使用することができる。
【0008】
一実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物が提供され、その組成物は、固体非晶質シリカを含み、ニトロソチオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含み、そのナノ粒子は水系中に分散可能である。
【0009】
別の実施形態では、表面と、表面に隣接して、酸化窒素を放出するための組成物とを含む、医療デバイスが提供され、その組成物は、ニトロソチオール含有基が表面に付着され、固体非晶質シリカを含む、外側表面を有するナノ粒子を含み、そのナノ粒子は水系中に分散可能である。
【0010】
別の実施形態では、上記の医療デバイスと、水、水蒸気、紫外線光、及び可視光を通さないパッケージとを含む、製品であって、酸化窒素を放出するための組成物は、そのパッケージによって包まれて製品提供される。
【0011】
別の実施形態では、被験者を酸化窒素で治療する方法であって、
酸化窒素を放出するための組成物を提供する工程であって、その組成物は、固体非晶質シリカを含み、ニトロソチオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含み、そのナノ粒子は水系中に分散可能である、工程と、
被験者を組成物と接触させる工程と、
組成物又は医療デバイスが被験者に接触する位置で、酸化窒素を放出する工程とを含む、方法が提供される。
【0012】
別の実施形態では、被験者を酸化窒素で治療する方法であって、
表面と、表面に隣接して、酸化窒素を放出するための組成物とを含む、医療デバイスを提供する工程であって、その組成物は、固体非晶質シリカを含み、ニトロソチオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含み、そのナノ粒子が水系中に分散可能である、工程と、
被験者を医療デバイスと接触させる工程と、
医療デバイスが被験者に接触する位置で、酸化窒素を放出する工程と、を含む方法が提供される。
【0013】
別の実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物を含むキットが提供され、その組成物は、固体非晶質シリカを含み、ニトロソチオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含み、そのナノ粒子は水系中に分散可能である、工程と、剤を活性化する工程と、を含む。
【0014】
別の実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物を作製する方法であって、
固体非晶質シリカナノ粒子を提供する工程と、
チオール含有基を固体非晶質シリカナノ粒子の外側表面に固着する工程と、
親水基を含む安定化基を固体非晶質シリカナノ粒子の外側表面に固着する工程と、
ニトロソチオール含有基を形成するために、チオール含有基をニトロシル化する工程と、を含む方法が提供される。
【0015】
別の実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物が提供され、
その組成物は、固体非晶質シリカを含み、チオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含む第1の部分であり、そのナノ粒子は水系中に分散可能である、第1の部分と、
亜硝酸塩源を含む第2の部分と、を含む。
【0016】
別の実施形態では、表面と、表面に隣接して酸化窒素を放出するための組成物と、を含む医療デバイスが提供され、その組成物は、
固体非晶質シリカを含み、チオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含む第1の部分であり、そのナノ粒子は、水系中に分散可能である、第1の部分と、
亜硝酸塩源を含む第2の部分と、を含む。
【0017】
別の実施形態では、被験者を酸化窒素で治療する方法が提供され、その方法は、
酸化窒素を放出するための組成物を提供する工程であって、その組成物は、
固体非晶質シリカを含み、チオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含む第1の部分であって、そのナノ粒子は水系中に分散可能である、第1の部分と、亜硝酸塩源を含む第2の部分と、を含む、工程と、
組成物を提供するために、組成物の第1の部分を組成物の第2の部分と組み合わせる工程であって、ニトロソチオール含有基がナノ粒子の表面に付着される、工程と、
被験者を酸化窒素を放出するための組成物と接触させる工程と、
組成物が被験者に接触する位置で、酸化窒素を放出する工程と、を含む。
【0018】
別の実施形態では、被験者を酸化窒素で治療する方法が提供され、その方法は、
表面と、表面に隣接して、酸化窒素を放出するための組成物とを含む、医療デバイスを提供する工程であって、その組成物は、固体非晶質シリカを含み、チオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含む第一の部分であって、そのナノ粒子は水系中に分散可能である、第1の部分と、亜硝酸塩源を含む第2の部分と、を含む、工程と、
組成物を提供するために、組成物の第1の部分を組成物の第2の部分と組み合わせる工程であって、ニトロソチオール含有基がナノ粒子の表面に付着される、工程と、
被験者を医療デバイスと接触させる工程と、
医療デバイスが被験者に接触する位置で、酸化窒素を放出する工程と、を含む。
【0019】
上記の本発明の概要は、本発明の開示した実施形態のそれぞれ又は全ての実現形態を説明することを意図したものではない。以下の説明は、説明に役立つ実施形態をより詳細に例示する。以下の説明の全体にわたるいくつかの箇所において、複数の実施例の一覧表を通じて、ガイダンスが提供されており、それらの実施例は、様々な組み合わせで用いられ得る。それぞれの事例において、列挙される一覧は代表的な群としてのみ与えられるのであって、限定的な一覧として解釈されるべきではない。
【0020】
定義
本明細書で使用される場合、「固体非晶質シリカ」という用語は、ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸テトラエチル、又はオルトケイ酸テトラメチルを、塩基性条件、例えば、約8〜約10のpH下で縮合させることによって典型的に作製される、完全に高密度化されたシリカを指す。これは、多孔質であり、完全に高密度化されていない、共縮合シリカ、例えば、オルトケイ酸テトラエチルのジ−又はトリ−アミノアルコキシシランとの共縮合とは区別される。しかしながら、固体非晶質シリカ中に、少量の、例えば、5つ以下の、1又は0.5重量%の有機基が存在してもよい。
【0021】
本明細書で使用される場合、「固体非晶質シリカナノ粒子」という用語は、約1ナノメートル〜約100ナノメートルの直径を有する、本質的に球形状の完全に高密度化されたシリカ粒子を指す。これらのナノ粒子は、実質的に凝集されていない状態のままである。特定の実施形態では、ナノ粒子は、大きさが比較的均一である。あるいは、特定の実施形態では、ナノ粒子は、2つ以上の異なる大きさの混合であり、多分散される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「水系中に分散可能」という用語は、分散性の物質、例えば、ナノ粒子を、水系中に均一かつ安定的に懸濁できることを示す。安定的に懸濁されるとは、23℃で少なくとも1週間保たれた後、明白な沈殿なく、分散が均一なままであることを意味する。そのような混合物は、透明又は半透明であり、ナノ粒子が懸濁された状態で、数週間、好ましくは数ヶ月、又は更に長い間、そのままである。
【0023】
本明細書で使用される場合、「水系」という用語は、水及び少なくとも1つの水分散性化合物の組み合わせを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「水分散性化合物」という用語は、水中に均一かつ安定的に懸濁又は溶解することができる化合物を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ヒドロゲル」という用語は、水を吸収するが、架橋から形成される三次元ネットワークの存在のため、水に不溶性である、親水性ポリマーを指す。架橋は、共有結合性であってもイオン性であってもよい。架橋は、あるいは、又は更に、水素結合及び/又はポリマー鎖のもつれであってもよい。
【0026】
ヒドロゲルは、周囲条件下(23℃及び大気圧)で流れないという点で、固体又は半固体のように挙動する。吸収される水には、結合水及び遊離水を含むことができる。結合水は、ポリマー鎖に沿って位置する親水基と関連付けられる。ヒドロゲルによって吸収される更なる水は、ヒドロゲルの空隙及び孔を充填する遊離水である。特定の実施形態では、有用なヒドロゲルは、無水状態で、ヒドロゲルの重量に基づいて少なくとも40重量%を吸収する。ヒドロゲルは、それらの水和度に関わらず、典型的に透明又は半透明である。ヒドロゲルは、一般的に、分散した親水性の粒子を含有する親水性のマトリックスを典型的に含むヒドロコロイドと区別できる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「実質的に脱水された」という用語は、最大で約10重量%の水、好ましくは最大で約5重量%の水を含有するヒドロゲルを指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「透明な」という用語は、組成物のすぐ後ろの組織又は他の構造の状態を観察できるように、人が組成物を十分に透視できる、組成物の特徴を指す。観察され得る状態の例には、組織の潮紅度、創傷の閉鎖度、及び創傷浸出液の量が挙げられる。「透明な」という用語は、0.5cm、好ましくは1cmの長さの経路を通して細胞を見る際の肉眼での外観を指し、クリアが好ましいが、クリア及び半透明を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、「流体」という用語は、室温から体温の温度範囲での液体の物質を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「水性組成物」という用語は、少なくとも50重量%の水からなる液体組成物を指す。
【0031】
「両親媒性化合物」という用語は、親水性領域及び疎水性領域の両方を有する化合物を指す。
【0032】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」という用語、及びそれらの変形は、説明及び特許請求の範囲内のこれらの用語が出現する場所では、制限する意味を有さない。
【0033】
本明細書に列挙される特定の数値範囲が、その範囲内の数が整数のみであることを要求しない限り、本明細書における数値範囲の端点による列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含むことが意図される(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0034】
本明細書で使用される場合、特に指示がない限り、不定冠詞は、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味する。加えて、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容が特に明確に指示しない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「化合物」を含有する組成物の言及は、2つ以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「又は」という用語は、その内容が特に明確に指示しない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0035】
特に指示がない限り、明細書及び添付特許請求の範囲に使用される成分の量、性質の測定等を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されることを理解されたい。したがって、そうではないと指示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲に示される数値パラメータは、近似値であり、これは、本発明の教示を利用する当業者が得ることを求める望ましい特性によって変えることができる。最低限でも、又、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、少なくとも各数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、そして通常の四捨五入方法を適用することによって解釈されなければならない。本発明の広義の範囲を示す数値範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載されている数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、いずれの数値もそれらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、ニトロソチオール基が付着される、固体非晶質シリカ表面を有する、ナノ粒子を提供する。シリカナノ粒子は、水系中に分散可能であり、創傷包帯として使用するため、又は他の治療用途のために、ヒドロゲル中に分散させることができる。ナノ粒子は、酸化窒素(NO)を放出することができる。更に、小分子ニトロソチオール類よりNO放出速度が制御されることが発見された。特定の実施形態では、ナノ粒子上のニトロソチオール基は、水系中で約数日又は数週間の半減期を有し、脱水された組成物中では、大幅により長い半減期を有することができる。比較して、小分子ニトロソチオール類は、約数分〜数日の半減期を有することが既知である。様々な分子のニトロソチオールの寿命のいくつかの例が、W.R.Mathews,S.W.Kerr,The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,267,1529(1993)に与えられている。
【0037】
一実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物が提供され、その組成物は、固体非晶質シリカを含み、ニトロソチオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含み、そのナノ粒子は水系中に分散可能である。
【0038】
特定の状況下、例えば、保存条件が過酷である、又は制御されていない場合では、酸化窒素を放出するための2部型組成物が望まれ得る。したがって、別の実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物が提供され、その組成物は、固体非晶質シリカを含み、チオール含有基が表面に付着される、外側表面を有するナノ粒子を含む第一の部分であって、そのナノ粒子は水系中に分散可能である、第1の部分と、亜硝酸塩源を含む第2の部分と、を含む。
【0039】
組成物の第2の部分を組成物の第1の部分と組み合わせるのを容易にするために、流体を使用することができる。例えば、流体は、第2の部分の第1の部分への流れ、並びに第2の部分の第1の部分との混合又は第2の部分の第1の部分への拡散を提供することができる。これらの実施形態のうちの特定のものでは、流体は、水性組成物である。特定の実施形態では、亜硝酸塩源は、水性組成物中にある。好適な水性組成物は、少なくとも50重量%の水、好ましくは少なくとも75重量%又は少なくとも90重量%の水を含有する。
【0040】
2部型組成物の上述の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、亜硝酸塩源は、亜硝酸塩である。好適な亜硝酸塩には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。アンモニウム塩には、式中、Rが水素であるNR、C1〜4アルキル、又はこれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、チオール含有基をニトロシル化するために、亜硝酸、又は亜硝酸及び亜硝酸塩の組み合わせが使用される。
【0041】
2部型組成物の上述の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、水系は、酸性pHを有する。酸性pHは、ニトロソチオール基の形成においてHを消費する、ニトロシル化に有利な条件を提供する。特定の実施形態では、pHは、好ましくは、約6又は約5以下である。特定の実施形態では、pHは、少なくとも約2又は約3である。
【0042】
上述の組成物のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、ナノ粒子は、固体非晶質シリカナノ粒子である。固体非晶質シリカナノ粒子は、実質的に球形状であり、約1ナノメートル〜約100ナノメートルの直径を有し、表面に付着した基を除き、本質的に、完全に高密度化された非晶質シリカからなる。これらのナノ粒子は、大きさが比較的均一であるか、又は入り混じった大きさを使用することができる。これらのナノ粒子は、例えば、コロイド分散液として、実質的に凝集されていない状態のままである。凝集は、沈殿、ゲル化、又は粘度の大幅な増加をもたらす可能性があるため、望ましくない。
【0043】
本組成物の調製において開始物質として使用することができるシリカナノ粒子は、ナノ粒子が液体媒体に分散したコロイド分散液として提供することができる。そのようなゾルは、水が液体媒体であるヒドロゾル、又は液体媒体が水及び有機液体の両方を含む混合ゾルであることができる。例えば、R.K.IlerによってThe Chemistry of Silica,John Wiley & Sons,New York(1979)に公表されるものに加えて、米国特許第2,801,185号(Iler)及び同第4,522,968号(Dasら)に公表される技術並びに形態の説明を参照されたい。例えば、Ashland,MdにあるNyacol Products,Inc.、Oakbrook、Ill.にあるNalco Chemical Company、及びWilmington、DelにあるE.I.dupont de Nemours and Companyから、様々な粒子の大きさ及び濃度の、有用なシリカヒドロゾルが入手可能である。水中に約10〜約50重量%のシリカナノ粒子の濃度が、一般的に有用である。所望により、シリカヒドロゾルは、例えば、酸を用いて、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を約8〜約9のpHに部分的に中和する(溶液から得られるナトリウム含有量が、酸化ナトリウムに基づいて約1重量%未満となるように)ことによって、調製することができる。電気透析、ケイ酸ナトリウムのイオン交換、ケイ素化合物の加水分解、及びケイ素元素の溶解等、シリカヒドロゾルを調製する他の方法は、上記のIlerによって説明されている。
【0044】
固体非晶質シリカナノ粒子を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、固体非晶質シリカナノ粒子は、約2.0〜約2.3グラム/cmの密度を有する。これらの実施形態のうちの特定のものでは、固体非晶質シリカナノ粒子の密度は、約2.1〜約2.2である。これらの実施形態のうちの特定のものでは、固体非晶質シリカナノ粒子の密度は、約2.2である。
【0045】
あるいは、固体非晶質シリカを含む外側表面を有するナノ粒子を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、固体非晶質シリカナノ粒子であるというよりはむしろ、ナノ粒子は、コアを包囲する固体非晶質シリカを含む外側表面を有し、コアは、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及び酸化セリウムからなる群から選択される金属酸化物を含む。そのようなナノ粒子は、金属酸化物のコロイド粒子で開始し、固体非晶質シリカをコロイド粒子の表面上に堆積させることによって作製することができる。これは、上述されるように、コロイド粒子の表面のケイ酸塩を縮合させることによって行うことができる。粒子上にシリカ層を堆積するための方法は、既知であり、例えば、PhilipseらのLangmuir,10,4451〜4458(1994)に記載される。
【0046】
上述されるように、ニトロソチオール基は、−S−NO官能基を含む。これらの官能基は、例えば、Si−O−Si結合によって、テザー基を介して、共有結合でナノ粒子の表面に付着させることができる。例えば、ナノ粒子の表面上のSi−OH基は、−S−NO基が結合されるテザー基に結合したSi−OH基と縮合させることができる。特定の実施形態では、この目的のために、化学式、
H−S−Y−Si(OR
の化合物が使用され、式中、Rは、C1〜3アルキルであり、Yは2〜10個の原子の鎖長を有するテザー基であり、連鎖内の原子は、炭素、酸素、及び窒素であることができ、連鎖内の原子のうちの少なくとも2つは、隣接する炭素原子であり、任意の2つの酸素原子、窒素原子、又は酸素原子及び窒素原子は、少なくとも2つの炭素原子によって分離される。特定の実施形態では、Yは、C2〜6アルキレンである。アルコキシリル−Si(OR基は、−Si(OH)に加水分解することができ、次いで、これは、ナノ粒子の表面上のSi−OH基と縮合して、ナノ粒子の表面に付着したチオール基を提供することができる。チオール基は、亜硝酸塩イオン(NO)の源と反応して、ニトロソチオール基を提供することができる。上述されるように、組成物が2部型組成物である実施形態では、亜硝酸塩源は、第2の部分内にある。
【0047】
特定の実施形態では、この目的のために、化学式、
Z−Y−Si(OR
の化合物が使用され、式中、Zは、イソシアナート、グリシジル、ハロアルキル、又は酸無水物基であり、Rは、C1〜3アルキルであり、Yは、2〜10個の原子の鎖長を有するテザー基であり、連鎖内の原子は、炭素、酸素、及び窒素であることができ、連鎖内の原子のうちの少なくとも2つは、隣接する炭素原子であり、任意の2つの酸素原子、窒素原子、又は酸素原子及び窒素原子は、少なくとも2つの炭素原子によって分離される。特定の実施形態では、Yは、C2〜6アルキレンである。アルコキシリル−Si(OR基は、−Si(OH)に加水分解することができ、次いで、これは、ナノ粒子の表面上のSi−OH基と縮合して、ナノ粒子の表面に付着したイソシアナート、グリシジル、ハロアルキル、又は酸無水物基を提供することができる。これらの基は、スルフヒドリル含有アミノ酸において見られるものと類似するアミン基、又はスルフヒドリル含有アミノ酸、ペプチド、グリセロール、及び炭水化物において見られるものと類似するヒドロキシル基と反応させることができる。特定の実施形態では、上記式のイソシアナート−、グリシジル−、ハロアルキル−、又は酸無水物−シラン、好ましくはイソシアナート−シランを、溶液中で、スルフヒドリル含有分子(アミノ基又はヒドロキシル基を有する)と反応させ、次いで、粒子の表面に付着するように反応させてもよい。
【0048】
−Si(OR基に加えて、どの他の基が分子中に存在するかによって、ジアルコキシリル、モノ−、ジ、及びトリクロロシリル等の他の連結基が使用されてもよい。例えば、クロロシリル基は、存在するスルフヒドリル基とは安定でない場合があるが、イソシアナート、エポキシ、ハロアルキル、又は無水物基と安定である場合がある。
【0049】
上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、好ましくは、ナノ粒子は、ナノ粒子の表面に付着した安定化基を更に含み、安定化基は、親水基を含む。そのような親水基は、ナノ粒子に付着していない場合、水溶性である。好適な親水基は、−OCHCH−、−COOH、−COOHの塩、−CH(OH)CHOH、−CH(OH)CH(OH)−、−SOH、−SOHの塩、第4級アミノ基、単糖基、オリゴ糖基、複数の任意の前述の基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。複数の任意のこれらの基は、オリゴマー基及びポリマー基を指し、繰り返し単位は、これらの基を含む。安定化基は、粒子の凝集を阻止し、ナノ粒子を水系中に懸濁された状態に保つことによって、ナノ粒子を安定させるべきである。また、安定化基は、そのような安定化基をナノ粒子の表面に有さないナノ粒子と比較して、NOのより持続した放出を提供するように、NOの放出を安定させることができる。NOの放出が安定化される方法は、未知である。しかしながら、他の可能性の中でも特に、安定化基は、隣接する、又は粒子間のニトロソチオール基間の反応の立体阻害をもたらし得、この反応は、そうでなければ−S−S−結合を形成し、NOの望ましくない放出、又は早期放出を引き起こし得る。また、安定化基は、NOの放出を引き起こし得る、ニトロソチオール基が他の分子へ接触することから保護する、又はニトロソチオール基の他の分子への接触率を低減するための障壁も提供し得る。
【0050】
一価の上述される親水基は、末端基として、連鎖に沿って付着した、少なくとも1つの基として、又は連鎖に沿って付着した、少なくとも1つの基及び末端基の組み合わせとして、上述される安定化基鎖と関連付けられる。二価の上述される親水基は、連鎖の一部として、連鎖内の繰り返し単位として、及び特定の実施形態では、好ましくは連鎖の末端部として、上述される安定化基鎖と関連付けられる。二価の基が連鎖の末端部の末端基である際、原子価のうちの1つは、水素又はC1〜4アルキル基、好ましくは水素、メチル、又はエチル基に付着される。末端基は、ナノ粒子表面から最も遠い、連鎖の末端部に付着される。
【0051】
安定化基は、ニトロソチオール基のNO放出を安定させるのに十分な鎖長を有する。しかしながら、安定化基の連鎖は、この連鎖に沿ってどこにでも枝を有し得る。安定化基を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、安定化基は、親水基の水素以外の連鎖原子が含まれる、少なくとも約10個の連鎖原子の鎖長を有する。
【0052】
安定化基を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、安定化基は、親水基の水素以外の連鎖原子が含まれる、約200個以下の連鎖原子の鎖長を有する。これらの実施形態のうちの特定のものでは、安定化基は、約150個以下の連鎖原子の鎖長を有する。
【0053】
安定化基を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、安定化基は、親水基の水素以外の連鎖原子が含まれる、約100個以下の連鎖原子の鎖長を有する。
【0054】
安定化基を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、安定化基は、親水基の水素以外の連鎖原子が含まれる、約20〜約150個の連鎖原子の鎖長を有する。
【0055】
安定化基を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、安定化基は、親水基の水素以外の連鎖原子が含まれる、約20〜約75個の連鎖原子の鎖長を有する。
【0056】
安定化基を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、安定化基は、連鎖を含み、連鎖の原子は、炭素、酸素、窒素、イオウ、及びケイ素からなる群から選択される。例えば、連鎖は、C2〜14アルキレンのうちの少なくとも1つ、及び所望により、−O−、−S−、−SO−、−SO−NR−、−NR−SO−、−NR−SO−NR−、−NR2−C(O)−、−C(O)−NR2−、−NH−C(O)−NH−、−O−C(O)−NH−、−O−C(O)−、−C(O)−O−、−C(O)−、−CH(OH)−、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができ、式中、Rは、H又はメチルである。これらの実施形態のうちの特定のものでは、連鎖の原子は、炭素、酸素、及び窒素である。これらの実施形態のうちの特定のものでは、連鎖の原子は、炭素及び酸素である。特定の実施形態では、任意のこれらの実施形態は、ケイ素原子、好ましくは1つのケイ素原子を更に含む。
【0057】
安定化基を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、安定化基は、ポリ(エチレングリコール)鎖を含む。ポリ(エチレングリコール)鎖は、化学式(−OCHCHO−のオリゴマー基及びポリマー基を指し、式中、mは、少なくとも2である。特定の実施形態では、mは、100以下、50以下、又は25以下である。
【0058】
安定化基は、Si−O−Si結合によって、ナノ粒子の表面に付着させることができる。例えば、ナノ粒子の表面上のSi−OH基は、ナノ粒子に付着した際、安定化基として使用することができる、分子に結合したSi−OH基と縮合させることができる。特定の実施形態では、この目的のために、化学式、
R−(OCHCH−(OCHCH(CH))−A−X−Si(OR
の化合物が使用され、式中、Rは、水素又はC1〜4アルキルであり、xは、10〜100の整数であり、yは、2〜20の整数であり、Xは、C2〜5アルキレンであり、Aは、−O−、−NR’−、−NH−C(O)−NH−、−O−C(O)−NH−、−OC(O)−、−NH−C(O)−、−NH−CH−CH(OH)−、又は−O−CHCH(OH)−であり、R’は、水素又はC1〜4アルキルであり、Rは、C1〜3アルキルである。特定の実施形態では、Rは、メチル、エチル、又はプロピルであり、xは、15〜50の整数であり、yは、2〜15の整数であり、Xは、−CHCHCH−であり、Aは、−NH−C(O)−NH−であり、Rは、メチル又はエチルである。
【0059】
特定の実施形態では、この目的のために、化学式、
R−(OCHCHO−X−Si(OR
の化合物が使用され、式中、Rは、水素又はC1〜4アルキルであり、nは、5〜20の整数であり、Xは、C2〜5アルキレンであり、Rは、C1〜3アルキルである。特定の実施形態では、Rは、メチル、エチル、又はプロピルであり、nは、7〜15の整数であり、Xは、−CHCHCH−であり、Rは、メチル又はエチルである。
【0060】
上記の化学式の化合物のアルコキシリル−Si(OR基は、−Si(OH)に加水分解することができ、次いで、これは、ナノ粒子の表面上のSi−OH基と縮合して、ナノ粒子の表面に付着した安定化基を提供することができる。
【0061】
特定の実施形態では、この目的のために、化学式、
W−X−Si(OR
の化合物が使用され、式中、Wは、単糖又はオリゴ糖であり、糖をXに共有結合で付着させる、接続基を含み、Xは、C2〜5アルキレンであり、Rは、C1〜3アルキルである。好適な接続基には、例えば、−C(O)N−、−C(O)O−等が挙げられる。特定の実施形態では、オリゴ糖は、最大6個の糖単位を含有する。特定の実施形態では、Xは、−CHCHCH−であり、Rは、メチル又はエチルである。アルコキシリル−Si(OR基は、−Si(OH)に加水分解することができ、次いで、これは、ナノ粒子の表面上のSi−OH基と縮合して、ナノ粒子の表面に付着した安定化基を提供することができる。
【0062】
上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、ナノ粒子は、固体非晶質シリカを含む外側表面を有するナノ粒子であるか、又は固体非晶質シリカナノ粒子であるかに関わらず、水系中に分散される。水系は、水及び少なくとも1つの水分散性化合物の組み合わせであることができる。そのような水分散性化合物は、親水基を含む。特定の実施形態では、水分散性化合物は、親水基を有する液体又は低融点(<70℃、好ましくは<40℃)固体有機化合物である。そのような親水基は、例えば、−OH、−C(O)OH、−C(O)−NR−、−CHCHO−、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み、式中、Rは、H、メチル、又はビニルである。これらの実施形態のうちの特定のものでは、水分散性化合物は、低級アルコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリ(エチレングリコール)、ヒドロゲルモノマー、両親媒性化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、水分散性化合物は、低級アルコールである。低級アルコールには、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びn−プロパノールが挙げられる。あるいは、特定の実施形態では、水分散性化合物は、ヒドロゲルモノマーである。
【0063】
好適なヒドロゲルモノマーは、エチレン性不飽和であることができる。モノマー分子当たり1つのエチレン性不飽和基を有するものの例には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ポリ(アルキレンオキシド(メタ)アクリレート(例えば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド(メタ)アクリレート)が挙げられる。
【0064】
モノマー分子当たり2つのエチレン性不飽和基を有する、好適なヒドロゲルモノマーには、例えば、アルコキシル化ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルコキシル化ジ(メタ)アクリレートの例には、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート類、ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート類、及びポリ(エチレングリコール−ラン−プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート等のポリ(アルキレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート類、エトキシル化ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、プロポキシル化ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、及びエトキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート類等のアルコキシル化ジオールジ(メタ)アクリレート類、エトキシル化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート及びプロポキシル化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のアルコキシル化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート類、並びにエトキシル化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート及びプロポキシル化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のアルコキシル化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
モノマー分子当たり3つのエチレン性不飽和基を有する、好適なヒドロゲルモノマーには、例えば、アルコキシル化トリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。アルコキシル化トリ(メタ)アクリレート類の例には、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマートリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類等のアルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類、エトキシル化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート類等のアルコキシル化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート類、並びにエトキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレート類等のアルコキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレート類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
モノマー当たり少なくとも4つのエチレン性不飽和基を有する、好適なヒドロゲルモノマーには、例えば、アルコキシル化テトラ(メタ)アクリレート類及びアルコキシル化ペンタ(メタ)アクリレート類が挙げられる。アルコキシル化テトラ(メタ)アクリレートの例には、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート類等のアルコキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0067】
特定の実施形態では、最終ヒドロゲルが十分に架橋されるようにするために、好ましくは、ヒドロゲルモノマー分子当たりのエチレン性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロイル基)の平均数は、少なくとも1.2と等しい。これは、十分な量の、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するヒドロゲルモノマーを含むことによって達成される。例えば、ヒドロゲルモノマーは、少なくとも1つの、モノマー分子当たり2つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有することができる、又は、少なくとも1つの、モノマー分子当たり1つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートと組み合わせた、少なくとも1つの、モノマー分子当たり2つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートの混合物を含有することができる。別の実施例では、ヒドロゲルモノマーは、少なくとも1つの、モノマー分子当たり3つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有することができる、又は、少なくとも1つの、モノマー分子当たり1つの(メタ)アクリロイル基、モノマー分子当たり2つの(メタ)アクリロイル基、若しくはこれらの混合を有する(メタ)アクリレートと組み合わせた、少なくとも1つの、モノマー分子当たり3つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートの混合物を含有することができる。
【0068】
また、ポリウレタン及びポリ尿素ヒドロゲルの調製に使用するのに好適なヒドロゲルモノマーには、親水性ポリオール類又はポリアミン類を挙げることができる。親水性ポリオール類の例には、例えば、ポリ(エチレングリコール類)、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマーのポリエーテルチオール、グリセリン開始ポリオキシエチレングリコールトリオール等が挙げられる。ポリアミン類には、例えばJEFFAMINES(Huntsman Petrochemical Corp.,Salt Lake Cith,UT)として入手可能なこれらのポリオール類のアミン末端類似体が、例えば挙げられる。
【0069】
また、好適な両親媒性化合物が含まれていてもよく、例えば、ポリ(エチレングリコール)モノラウレート、ポリ(エチレングリコール)モノオレエート、ポリ(エチレングリコール)ミリスチルタローエーテル、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル−ブロック−ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)等の非イオン性界面活性剤が使用されてもよい。
【0070】
ナノ粒子が、固体非晶質シリカを含む外側表面を有するナノ粒子であるか、又は固体非晶質シリカナノ粒子であるかに関わらず、水系中に分散されるもの以外の上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、組成物は、ヒドロゲルを更に含み、ナノ粒子は、ヒドロゲル中に分布される。好適なヒドロゲル類には、共有結合性又はイオン性架橋して、ヒドロゲルを形成する、天然ポリマー類が挙げられる。この目的に好適な天然ポリマー類には、寒天、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、及びアルギン酸塩類等のポリ単糖類、キチン、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース及びセルロース誘導体、並びにペクチンが挙げられる。また、好適なヒドロゲル類には、従来の合成ヒドロゲル類(例えば、上述されるヒドロゲルモノマーのうちの少なくとも1つから作製されたポリマー)、シリコーンヒドロゲル類(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びメタクリロイルオキシエチルトリス(トリメトキシシリルオキシ)シラン等のコポリマー)、ポリウレタンヒドロゲル類(例えば、ジ−又はポリイソシアネートと反応した親水性ポリオール)、及びポリ尿素ヒドロゲル類(例えば、ジ−若しくはポリイソシアナート官能性化合物と反応した、親水性アミン末端ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマー)も挙げられる。多くのヒドロゲル類は、既知であり、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,John Wiley & Sons Inc.,Vol2、691〜722ページ(2002)、及び国際公開第WO 2007/146722号に記載される。これらの実施形態のうちの特定のものでは、ヒドロゲルは、少なくとも1つの、親水基含有エチレン性不飽和化合物の重合生成物を含む。これらの実施形態のうちの特定のものでは、少なくとも1つの、エチレン性不飽和化合物には、ポリエチレングリコールアクリレートメチルエーテル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマージメタクリレート(即ち、ポリ(エチレンオキシド−ラン−プロピレンオキシド)ジメタクリレート)が挙げられる。これらの実施形態のうちの特定のものでは、ヒドロゲルは、ポリ(N−ビニルピロリドン)等の架橋ポリ(N−ビニルラクタム)を含む。この性質のヒドロゲル類は、出願者の係属中の出願、米国第61/022036号に更に記載される。特定の他の実施形態では、ヒドロゲルは、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートの重合(例えば、光重合)生成物を含む。この性質のヒドロゲル類は、国際公開第WO 2007/146722号に更に記載される。あるいは、これらの実施形態のうちの特定のものでは、ヒドロゲルは、イオン性架橋アルギン酸塩を含む。あるいは、これらの実施形態のうちの特定のものでは、ヒドロゲルは、親水性ポリオール及びポリイソシアネートの反応生成物を含む。親水性ポリオール類には、ポリエチレングリコール類等が挙げられる。ポリイソシアネート類には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。あるいは、これらの実施形態のうちの特定のものでは、ヒドロゲルは、架橋グアーガムを含む。
【0071】
本発明のヒドロゲル類は、5〜95%の水の平衡水濃度を有してもよい。つまり、脱イオン水中に定置され、平衡水濃度に到達する(典型的に、それを24時間水面下に浸水させることによって行われる)際、組成物中の水の重量パーセントは、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、及び最も好ましくは少なくとも20%となる。平衡水濃度は、ゲルが十分な一体性を有するように、好ましくは、約95%以下である。好ましくは、平衡含水量は、90重量%以下であり、最も好ましくは、85重量%以下である。
【0072】
ナノ粒子の表面に付着したチオール含有基又はニトロソチオール含有基を有する、本明細書に記載されるナノ粒子は、ナノ粒子をヒドロゲルモノマー中で混合し、モノマーを重合させることによって、ヒドロゲル中に分布されてもよい。得られるポリマーは、既知の放射線若しくは化学架橋方法によって、又はイオン架橋によって、更に架橋されてもよい。ヒドロゲルモノマーは、単一のモノマーであってもよく、又は、例えば、上述されるようなモノマーの混合物であってもよい。モノマーを重合させる前に、水及び低級アルコール等の任意の他の揮発性成分の一部分又は本質的に全てが、減圧下で除去されてもよい。天然ポリマーヒドロゲル中に分散したナノ粒子の分散液をもたらすために、水系中に分散したナノ粒子の分散液に、天然ヒドロゲル形成性ポリマーが添加されてもよい。あるいは、天然ヒドロゲル形成性ポリマーの溶液又は分散液に、ナノ粒子の分散液が添加され、共有結合又はイオン架橋が後続してもよい。ポリアニオン系ポリマー、例えば、アルギン酸塩類は、Ca++、Mg++、Zn++、Fe++、Fe+++、Al+++等の多価金属イオンと、又はポリアミン類と架橋されてもよい。ポリカチオン系ポリマーは、ポリカルボン酸オリゴマー、ポリスルホン酸オリゴマー、ポリ硫酸オリゴマー、ポリホスホン酸オリゴマー、及びポリリン酸オリゴマー等のポリアニオン系化合物と架橋されてもよい。
【0073】
ナノ粒子が、固体非晶質シリカを含む外側表面を有するナノ粒子であるか、又は固体非晶質シリカナノ粒子であるかに関わらず、水系中に分散されるもの以外の上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、ナノ粒子は、ヒドロゲルモノマー又は親水性ポリオール中に分散される。これらの実施形態では、好ましくは、ナノ粒子は、モノマー又はポリオールへの分散を安定させる、ナノ粒子の表面に付着した安定化基を含む。そのような分散液は、水系中に分散したナノ粒子の分散液をモノマー又はポリオールと組み合わせ、水及び所望により任意の他の揮発性成分の一部又は全てを除去することによって調製することができる。
【0074】
組成物がヒドロゲルを更に含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、ヒドロゲルは、複数のヒドロゲルビーズである。そのようなヒドロゲルビーズは、国際公開第WO 2007/146722号に更に記載される。
【0075】
組成物がヒドロゲルを更に含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む、これらの実施形態のうちの特定のものでは、ヒドロゲルは、実質的に脱水される。低減された含水量を有することで、保存中のNOの早期放出を低減することによって、本組成物の保存安定性を高めるのを助長することができる。
【0076】
上述の組成物のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、組成物は、透明である。上述されるように、これは、1cm以下の経路長さを通して組成物を見ることによって判定されてもよい。本組成物で使用されるナノ粒子の粒子の寸法範囲のため、及びこれらのナノ粒子が実質的に凝集されていないため、ナノ粒子は、最小限の光散乱をもたらし、それによって、組成物が透明になることを可能にする。これは、組成物によって被覆される創傷等の構造を目視観察できるようにする。
【0077】
別の実施形態では、表面と、表面に隣接して、酸化窒素を放出するための組成物の上記の実施形態のうちの任意の1つとを含む、医療デバイスが提供される。例えば、酸化窒素を放出するための組成物を、医療デバイスの表面上にコーティングすることができる。表面は、シート、フィルム、織布、ニット、又は不織布布地、繊維、フィラメント、(複数の繊維若しくはフィラメント、又は単繊維で作製された)糸、チューブ等の表面であることができる。表面は、酸化窒素を放出するための組成物をコーティングする前に、1つ以上のコーティング、例えば、接着剤コーティング、プライマーコーティング、又は連結剤を含有するコーティングでコーティングすることができる。
【0078】
医療デバイスの上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物は、第1の部分と、第2の部分とを含む、上述の組成物のうちの任意の1つである。これらの実施形態のうちの特定のものでは、第1の部分の上記の実施形態のうちの任意の1つは、医療デバイスの表面に隣接する、例えば、医療デバイスの表面上にコーティングされる。亜硝酸塩源を含有する、第2の部分の上記の実施形態のうちの任意の1つは、第1の部分と組み合わせるのを容易にするために、含有し、第1の部分に隣接して位置づけることができる。そのような組み合わせは、臨床医によって、適用の前に行うことができ、又はこれは、意図的な混合なく、生じる可能性がある、即ち、これは、包帯が水和する際に受動的に生じる可能性がある。亜硝酸塩源及びチオールが使用時まで分離されている包帯では、確実に残留亜硝酸塩が少なくなる、又は残留亜硝酸塩がなくなるように、チオールのモルが過剰であることが好ましい。
【0079】
医療デバイスの上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、デバイスは、創傷包帯、創傷接触層、創傷充填剤、医療用テープ、手術用の糸、代用血管、ステント、及びカテーテルからなる群から選択される。
【0080】
医療デバイスの上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、デバイスは、創傷包帯である。特定の実施形態では、創傷包帯は、裏材を含み、裏材の表面に隣接して、酸化窒素を放出するための組成物を有する。
【0081】
裏材に好適な裏材物質には、例えば、不織布繊維ウェブ、織布繊維ウェブ、ニット、フィルム等が挙げられる。特定の実施形態では、裏材は、半透明又は透明のポリマー弾性フィルムである。裏材は、水蒸気透過性の高いフィルム裏材であり得る。米国特許第3,645,835号(Hodgson)は、そのようなフィルムを作製する方法、及びそれらの透過性を試験するための方法を記載する。特定の実施形態では、好ましい好適な裏材物質は、米国特許第5,088,483号(Heinecke)及び同第5,160,315号(Heineckeら)に記載される、弾性ポリウレタン、コ−ポリエステル、又はポリエーテルブロックアミドフィルムである。これらのフィルムは、弾力性、高透湿性、及び透明度の特性を有する。
【0082】
特定の実施形態では、創傷包帯は、酸化窒素を放出するための組成物と、裏材層と、ヒドロゲル層に向かいあう裏材層上の接着剤層と、を含む、ヒドロゲル層を含む。特定の実施形態では、接着剤層及び裏材層は、ヒドロゲル層が接着剤層全体を被覆しない場合に、ヒドロゲル層の周囲に境界を形成することができる。接着剤層及び裏材層によって形成される境界は、ヒドロゲル層を、例えば、創傷に対して適切に位置付けられた状態に保つことができ、また、適用表面の周囲の無菌環境を維持するのを助長する。ヒドロゲル層は、連続的であってもよく、又はヒドロゲルを有する領域及びヒドロゲルを有さない領域のパターン形状で、例えば、点、格子等のパターンでコーティングされてもよい。
【0083】
特定の実施形態では、接着剤層及び裏材層は、非常に薄く、かつ可撓性であることができる。適用中、この接着剤層及び裏材層が適切に支持されていない場合、これらは、折り重なり、それら自体に接着し、表面上への適切な適用を妨げる場合がある。接着剤層及び裏材層は、所望により、裏材層の上面(接着剤層及びヒドロゲル層を有する側と反対側)に付着した、取り外し可能な搬送層によって支持される。所望により、接着剤及びヒドロゲル層を接触させるために、剥離ライナーが提供される。剥離ライナーと接着剤層でコーティングされた裏材層との両方は、ヒドロゲル層の縁部を越えて延在する。
【0084】
搬送層は、表面への適用中に裏材層に不適切にしわが寄るのを阻止するために、一般に、裏材層より実質的に剛性である。搬送層は、低粘着コーティングを用いて、又は用いずに、裏材層に熱封止可能であることができる。好適な搬送層には、例えば、ポリエチレン/ビニルアセテートコポリマーでコーティングされた紙及びポリエステルフィルムが挙げられる。搬送層は、包帯を表面に適用した後、搬送層の部分を分離するのを助長するために、穿孔を含んでもよい。
【0085】
裏材層上に接着剤層を形成して、それを接着性にするために、様々な感圧性接着剤を使用することができる。感圧性接着剤は、米国特許第RE 24,906号(Ulrich)に記載されるアクリレートコポリマー等、通常、皮膚に対して適度に適合性があり、かつ「低刺激性」である。特定の実施形態では、有用な接着剤は、米国特許第4,737,410号(Kantner)に記載される、97:3のイソオクチルアクリレート:アクリルアミドコポリマー、又は70:15:15のイソオクチルアクリレート:エチレンオキシドアクリレート:アクリル酸ターポリマーである。更なる有用な接着剤は、米国特許第3,389,827号(Abereら)、同第4,112,213号(Waldman)、同第4,310,509号(Berglund)、及び同第4,323,557号(Rossoら)に記載される。また、米国特許第4,310,509号及び同第4,323,557号に記載されるように、薬剤又は抗菌剤を接着剤に含むことも熟考される。
【0086】
接着剤層は、直接コーティング、ラミネーション、及び熱ラミネーションを含む、様々なプロセスによって裏材層上にコーティングすることができる。
【0087】
本明細書に記載されるように使用するのに好適な剥離ライナーは、クラフト紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、又はこれらの物質の任意の複合物で、作製することができる。フィルムは、好ましくは、フッ素系化学物質又はシリコーンなどの離型剤でコーティングされる。例えば、米国特許第4,472,480号は、低表面エネルギーペルフルオロ化合物ライナーを記載する。フルオロポリマーでコーティングされたポリエステルフィルムが、商標「ScotchPak(商標)」剥離ライナーで3M(St.Paul,MN)から市販されている。市販されているシリコーンでコーティングされた剥離紙の例は、Rexam Release(Bedford Park,Ill.)から入手可能なシリコーン剥離紙であるPOLYSLIK(商標)、及びLOPAREX(Willowbrook,Ill.)によって供給されるシリコーン剥離紙である。シリコン化ポリエチレンテレフタレートフィルムは、H.P.Smith Co.から市販されている。
【0088】
本明細書に記載されるもの等の例示的な包帯構成には、米国特許第6,436,432号の第2欄64行目〜第6欄28行目に記載される、図1〜図4のもの、米国特許第6,903,243号の第3欄65行目〜第4欄43行目に記載される、図1及び図1A〜図1Cのもの、第19欄53行目〜第20欄9行目に記載される、図1のもの、及び米国第2004/0133143号の4ページ段落0046から6ページ段落0077に記載される、図1〜図10のものが挙げられる。
【0089】
第1の部分と、第2の部分とを含む、酸化窒素を放出するための組成物が、上述の組成物のうちの任意の1つである、医療デバイスの上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物の第1の部分及び第2の部分は、それぞれ、障壁物質によって別個に包まれ、好ましくは、障壁物質は、水を通さない。好適な障壁物質は、既知であり、一般に、ポリエチレン等の少なくとも1つのポリマー層、及び金属ホイル、メタライズ層、フッ素化ポリマー層、又は金属酸化物層を含む、多層フィルムである。これらの実施形態のうちの特定のものでは、包まれた第1の部分及び包まれた第2の部分は、破壊される際、第2の部分を第1の部分と組み合わせる、破壊可能な障壁によって分離される。
【0090】
別の実施形態では、医療デバイスの上記の実施形態のうちの任意の1つに係る医療デバイスと、水、水蒸気、紫外線光、及び可視光を通さない、パッケージとを含む、製品が提供され、酸化窒素を放出するための組成物は、パッケージによって包まれて製品提供される。好ましくは、パッケージは、密閉されている。特定の実施形態では、医療デバイス全体が、パッケージによって包まれる。あるいは、医療デバイスの限定部分がパッケージによって包まれ、限定部分は、酸化窒素を放出するための組成物を含む。好適なパッケージ物質には、例えば、保護用及び/又は熱封止可能なポリマー層でコーティングされた金属ホイルが挙げられる。一実施例では、パッケージ物質は、ポリオレフィンでコーティングされたアルミホイルである。パッケージング物質に好適な障壁層及び障壁構成は、例えば、米国特許第7,261,701号に更に記載される。
【0091】
別の実施形態では、被験者を酸化窒素で治療する方法であって、酸化窒素を放出するための組成物の上記の実施形態のうちの任意の1つを含む、酸化窒素を放出するための組成物を提供する工程と、被験者を組成物と接触させる工程と、組成物が被験者に接触する位置で、酸化窒素を放出する工程と、を含む、方法が提供される。
【0092】
別の実施形態では、被験者を酸化窒素で治療する方法であって、表面と、表面に隣接して、酸化窒素を放出するための組成物の上記の実施形態のうちの任意の1つとを含む、医療デバイスの上記の実施形態のうちの任意の1つを提供する工程と、被験者を医療デバイスと接触させる工程と、医療デバイスが被験者に接触する位置で、酸化窒素を放出する工程と、を含む、方法が提供される。
【0093】
被験者を酸化窒素で治療する方法の上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物は、第1の部分と、第2の部分とを含む、上述される組成物のうちの任意の1つである。そのような実施形態では、被験者を酸化窒素で治療する方法は、組成物をもたらすために、組成物の第1の部分を組成物の第2の部分と組み合わせる工程であって、ニトロソチオール含有基がナノ粒子の表面に付着される、工程を更に含む。
【0094】
被験者を酸化窒素で治療するための上記の方法のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、方法は、組成物からの酸化窒素の放出を活性化する工程を更に含む。これらの実施形態のうちの特定のものでは、活性化する工程は、組成物を、水性組成物、体液、チオール含有化合物、アスコルビン酸塩、可視光、紫外線光、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される活性化剤に暴露する工程を含む。
【0095】
組成物を水性組成物若しくは体液に暴露すること等によって、組成物の含水量を増加することによって、組成物からの酸化窒素の放出を活性化することができる、又は放出速度を実質的に増加することができる。水性組成物は、少なくとも50重量%の水、好ましくは少なくとも75又は少なくとも90重量%の水を含有する。また、体液は、水も含有し、創傷浸出液、血液、水性血液成分、粘液、尿等であることができる。
【0096】
また、組成物をチオール含有化合物、アスコルビン酸塩、可視光、紫外線光、もしくはこれらの組み合わせに暴露することによって、組成物からの酸化窒素の放出を活性化することができる、又は放出速度を実質的に増加することができる。チオール含有化合物は、好ましくは、小分子、例えば、約350以下、好ましくは約200以下又は約150以下の分子量を有するチオールである。そのようなチオール含有化合物は、ナノ粒子上の安定化基を貫通し、ニトロソチオール基に到達し、ジスルフィドの形成及びNOの放出をもたらし得る。好適なチオール含有化合物には、例えば、システイン、ペニシラミン、グルタチオン、これらの塩等が挙げられる。非常に低い分子量、例えば、約75未満の分子量を有するチオール含有化合物は、過度の揮発度及び臭気のため、避けられる場合がある。チオール含有化合物を、上記の水性組成物中に含めることができる。
【0097】
組成物からの酸化窒素の放出を増加するために、アスコルビン酸ナトリウム等のアスコルビン酸塩を使用することができる。アスコルビン酸は、ニトロソチオール基と直接反応し、NOを放出し、ナノ粒子上にチオール含有基を形成し、デヒドロアスコルビン酸を形成すると考えられる。アスコルビン酸塩を、上述される水性組成物に含めることができる。また、他の酸化防止剤も有用であり得る。
【0098】
−S−NO官能基は、550〜600及び330〜350ナノメートルで吸収極大を有する。したがって、NOの放出を活性化するため、若しくはNOの放出速度を増加するために、可視光及び/又は紫外線光が使用される際、可視光は、好ましくは、550〜600ナノメートルの範囲の波長を含み、紫外線光は、好ましくは、330〜350ナノメートルの範囲の波長を含む。
【0099】
組成物からの酸化窒素の放出を活性化する工程を含み、活性化する工程が、組成物を活性化剤に暴露する工程を含む、上記の実施形態のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、活性化する工程は、組成物を体液に暴露することによって実施され、体液は、創傷浸出液である。体液が組成物に容易に接触できるようにするために、好ましくは、組成物は、体内組織と密接に接触している。
【0100】
酸化窒素を放出するための組成物が、第1の部分と、第2の部分とを含む場合、好ましくは、第1及び第2の部分は、NOの放出を活性化する前に組み合わせられる。
【0101】
別の実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物の上記の実施形態のうちの任意の1つと、活性化剤とを含む、キットが提供される。
【0102】
別の実施形態では、表面と、表面に隣接して、酸化窒素を放出するための組成物の上記の実施形態のうちの任意の1つとを含む、医療デバイスの上記の実施形態のうちの任意の1つと、活性化剤とを含む、キットが提供される。
【0103】
上記のキットで使用するのに好適な活性化剤には、上述されるように、例えば、水性組成物、チオール含有化合物、アスコルビン酸塩、又はこれらの組み合わせが挙げられる。活性化剤として、可視光であるか及び/又は紫外線光であるかに関わらず、光が使用される際、キットは、上述されるような可視光及び/又は紫外線光を放射する光源を含むことができる。
【0104】
一実施形態では、キットは、チオール含有基がナノ粒子の表面に付着した、ナノ粒子と、物理的に分離された、例えば、別個に含有された、亜硝酸塩源とを有するデバイスを含有する。これらは、使用の前に混合されてもよく、又はこれらは、例えば、上述されるように、酸化窒素を放出するための組成物が、医療デバイスの表面上にコーティングされる場合では、水性組成物がコーティングされたデバイスに拡散することによる拡散及び溶解によって混合されてもよい。
【0105】
別の実施形態では、酸化窒素を放出するための組成物を作製する方法であって、固体非晶質シリカナノ粒子を提供する工程と、チオール含有基を固体非晶質シリカナノ粒子の外側表面に固着する工程と、親水基を含む安定化基を固体非晶質シリカナノ粒子の外側表面に固着する工程と、外側表面であって、ニトロソチオール含有基が表面に付着される、外側表面を有する固体非晶質シリカナノ粒子をもたらすために、チオール含有基をニトロシル化する工程とを含む、方法が提供される。
【0106】
本組成物を作製する上記の方法で有用な固体非晶質シリカナノ粒子は、そのようなナノ粒子を上述の商業供給元から入手することによって提供することができる。あるいは、酸化窒素を放出するための組成物を作製する上記の方法で使用するための固体非晶質シリカナノ粒子は、上述されるように、ケイ酸塩を塩基性条件下で縮合させることによって提供される。これらの実施形態のうちの特定のものでは、ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸テトラエチル、及びオルトケイ酸テトラメチルからなる群から選択される。
【0107】
酸化窒素を放出するための組成物を作製する上記の方法を含む特定の実施形態では、チオール含有基を固体非晶質シリカナノ粒子の外側表面に固着する工程は、アルコキシリル基及びチオール基を含む化合物のアルコキシリル部分を、シリカナノ粒子と反応させることによって実施される。これは、上述されるように実施することができる。
【0108】
酸化窒素を放出するための組成物を作製する上記の方法のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、親水基を含む安定化基を固体非晶質シリカナノ粒子の外側表面に固着する工程は、アルコキシリル基及び親水基を含む化合物のアルコキシリル部分を、シリカナノ粒子と反応させることによって実施される。これは、上述されるように実施することができる。
【0109】
酸化窒素を放出するための組成物を作製する上記の方法のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、チオール含有基をニトロシル化する工程が、チオール含有基を有する粒子を、酸性条件下で亜硝酸塩と反応させることによって実施される。存在するチオール含有基のモル量以上のモル量の亜硝酸塩が使用されてもよい。好適な亜硝酸塩には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。別の実施形態では、チオール含有基をニトロシル化するために、亜硝酸、又は亜硝酸及び亜硝酸塩の組み合わせが使用される。
【0110】
過剰の亜硝酸塩の使用は、NO放出速度を低減することが発見され、ナノ粒子上のニトロソチオール含有基に更なる安定性を追加するために使用することができる。例えば、1.5:1若しくは2:1又はそれ以上の亜硝酸塩対チオール含有基のモル比を使用することができる。NOを放出するための組成物を含む、上述される実施形態のうちの任意の1つでは、組成物は、そのような過剰の亜硝酸塩を含むことができる。特定の実施形態では、1モルのニトロソチオール含有基に対して、0.5モル、1モル、又はそれ以上の亜硝酸塩が存在する。
【0111】
酸化窒素を放出するための組成物を作製する上記の方法のうちの任意の1つを含む特定の実施形態では、その方法は、ニトロソチオール含有基が表面に付着される、外側表面を有する固体非晶質シリカナノ粒子を水系中に分散させる工程を更に含む。好適な水系には、上述されるものが挙げられる。
【0112】
特定の実施形態では、第二鉄イオン等の金属イオンによって触媒される、ニトロソチオールの急速破壊を阻害するために、金属イオン封鎖剤が添加される。好適な金属イオン封鎖剤には、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(EDTA)、1,3−ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(DHEG)、エチレンジアミン−N,N’−ビス(メチレンホスホン酸)(EDDPO)、イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジピコリン酸(DPA)、並びに前述の酸類の塩等のキレート剤が挙げられる。また、CHELEX 100樹脂(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)等の固定化キレート剤も使用することができる。また、金属イオンは、沈殿又は吸着によって、それらを液相から取り出すことによって封鎖されてもよい。
【0113】
本発明の特徴及び利点が、次の例によって更に例示されるが、それはそれらをいかなる意味でも制限するものではない。これらの実施例において列挙されるその特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に制限しないと解釈されるべきである。指示がない限り、全ての部及びパーセントは重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。
【実施例】
【0114】
【表1】

【0115】
実施例1
ニトロソチオール基を有する固体非晶質シリカナノ粒子の調製
NALCO 2326ゾル(50g)を、ボトル内で、エタノール(50g)及びMPTMS(0.838g)と組み合わせた。得られる混合物を、一定にかき混ぜながら、窒素で15分間パージした。次いで、3−メルカプトプロピルシリル基がナノ粒子に付着した、水及びエタノール(1.2:1)中に分散したナノ粒子(ゾルA)をもたらすために、ボトルを封止し、一定にかき混ぜながら8時間、水浴内で70℃で加熱した。
【0116】
上記のゾルAの一部分(75g)をPEOTES(5.656g)と組み合わせた。また、ポリ(アルキレンオキシド)シリル基もナノ粒子に付着した、水及びエタノール中に分散したナノ粒子(ゾルB)をもたらすために、得られる混合物を、一定にかき混ぜながら、窒素でパージし、70℃で8時間加熱した。
【0117】
上記のゾルBの一部分(25g)をボトル内に定置し、ゾルのpHを3に調整するために、1Nの塩酸を添加した。亜硝酸ナトリウム(85.9mg、ゾルBの部分中のナノ粒子の量に対して使用されたMPTMS1モル当たり、1.2モルの亜硝酸ナトリウム及び1.2モルの塩酸)を混合物に添加した。得られるニトロシル化ゾル(ゾルC)は、赤色であり、スルフヒドリル基のニトロソチオール基への変換を示した。ゾルCを、光から保護され、かつ5℃に保たれた、封止されたバイアル瓶内で、窒素下で保存した。
【0118】
実施例2
ニトロシル化ゾルからのNOの放出
本質的に実施例1に記載されるようにニトロシル化ゾルを調製し、水を用いて、1:34で希釈した。得られる希釈されたゾルのpHは、4.5であった。ナノ粒子上の亜硝酸塩基対チオール(スルフヒドリル)基の比は、1.7:1であった。Hewlett−Packard 8452A分光光度計(Agilent Technologies,Santa Clare,CA)を使用して、336ナノメートル、ニトロソチオール基のUV吸光度ピーク波長で、連続して16日間にわたり、ゾルの吸光度を測定した。この期間の間、ゾルを、20℃の室温で、周囲蛍光照明に暴露した。吸光度値のそれぞれを、初期吸光度に関して正規化した。以下の表1に示される結果は、ニトロソチオール基の吸光度の減衰によって見られるように、16日間の期間にわたってNOが放出され、16日目に、ゾルは、残りのニトロソチオール基により、約30パーセントの吸光度を維持したことを示す。
【0119】
【表2】

【0120】
1 (A−A)/A×100=336nmでの吸光度の減少の関数としての放出されたNOの百分率
実施例3
ニトロシル化ゾルからのNOのアスコルビン酸誘発加速放出
実施例2と同様に、別個のニトロシル化ゾルを調製した。1つのゾルに、1.2mMの濃度のアスコルビン酸ナトリウムを添加した。実施例2と同様に、連続して7日間にわたり、ゾルのそれぞれの吸光度を測定した。この期間の間、ゾルは、光から保護され、20℃に保たれた。吸光度値のそれぞれを、実施例2と同様に、初期吸光度に関して正規化し、放出されたNOの百分率を計算した。以下の表2に示される結果は、アスコルビン酸が、NO放出速度の有意な増加をもたらすことを示す。
【0121】
【表3】

【0122】
実施例4
ニトロシル化ゾルからのNOのチオール誘発加速放出
実施例2と同様に、別個のニトロシル化ゾルを調製した。1つのゾルに、0.13Mの濃度の1−プロパンチオールを添加した。実施例2と同様に、連続して6日間にわたり、ゾルのそれぞれの吸光度を測定した。この期間の間、ゾルは、光から保護され、5℃に保たれた。吸光度値のそれぞれを、実施例2と同様に、初期吸光度に関して正規化し、放出されたNOの百分率を計算した。以下の表3に示される結果は、1−プロパンチオールが、NO放出速度の非常に大きな増加をもたらすことを示す。
【0123】
【表4】

【0124】
実施例5
ニトロシル化ゾルの熱安定性
実施例2と同様に、ニトロシル化ゾルを調製した。実施例2と同様に、連続して21日間にわたり、ゾルの吸光度値を測定した。この期間の間、ゾルは、光から保護されたが、それぞれ、20℃、5℃、及び−20℃に保たれた。吸光度値のそれぞれを、実施例2と同様に、初期吸光度に関して正規化し、放出されたNOの百分率を計算した。以下の表4に示される結果は、暗闇では、実施例2の光の下で放出されたNOの量と比較して、非常に少ないNOが放出されたことを示す。また、結果は、NO放出が、より低い温度で大幅に低減されることも示す。したがって、光からの保護及び低下した温度は、保存安定性を高めることができる。
【0125】
【表5】

【0126】
実施例6
ニトロシル化ゾルからのNOの放出における過剰の亜硝酸塩の効果
実施例2と同様に、亜硝酸塩イオン対MPTMSのモル比が、それぞれ、1:1及び1.7:1の別個のニトロシル化ゾルを調製した。実施例2と同様に、連続して21日間にわたり、ゾルのそれぞれのUV吸光度を測定し、初期吸光度に関して正規化し、NO放出の百分率を計算した。この期間の間、ゾルは、光から保護され、5℃に保たれた。以下の表5に示される結果は、過剰の亜硝酸塩が使用された際、大幅に少ないNOが放出されたことを示す。したがって、過剰の亜硝酸塩イオンの存在は、保存安定性を高めることができる。
【0127】
【表6】

【0128】
実施例7
ヒドロゲル中のニトロシル化ナノ粒子
ニトロシル化工程の前に、実施例1と同様に調製したニトロシル化ゾル(25g)を、12,000〜14,000分子量カットオフ膜状管(SPECTRA/POR MOLECULARPORO,Spectrum Laboratories,Inc.,Rancho Dominguez,CA)を使用して、純水中に透析し、次いで、M−PEG(8グラム)に添加し、ロータリーエバポレーター内で減圧下で、得られる混合物中の水/エタノール溶媒の少なくとも約90%を除去した。得られるゾルの赤色によって示されるように、ニトロソチオール基は、依然として存在した。次いで、このゾル(1.7g)を、MAA−PEG(0.90g)、HEMA(0.22g)、CPQ(25mg)、及びEDMAB(25mg)と組み合わせた。得られる混合物を、深さが0.32cmの矩形成形型内に定置し、光開始NO放出を阻止するために、455ナノメートルカットオフフィルタを装備したDENTAL BLUE光(3M ESPE,St.Paul,MNから入手可能)下で5分間光重合させた。得られる非水和ヒドロゲルは、ニトロシル化ゾルの赤色を維持し、ニトロソチオール基の存在を示した。この色は、ヒドロゲルが5℃で光から保護された状態で、数週間安定であった。ヒドロゲルを水中に浸漬した際、赤色は、数時間以内に著しく弱まった。
【0129】
実施例8
ニトロシル化ナノ粒子からのNO放出の抗菌効果
ニトロシル化工程の前に、12,000〜14,000分子量カットオフ膜状管(SPECTRA/POR MOLECULARPORO,Spectrum Laboratories,Inc.,Rancho Dominguez,CA)を使用して、ゾルを純水中に透析したことを除き、実施例1と本質的に同様に、ニトロシル化ゾルを調製した。上述されるように、実施例1(ゾルB)と同様に、非ニトロシル化ゾルを調製し、透析した。ニトロソチオール基が存在する場合に、ニトロソチオール基からのNOの放出を促進するために、ゾルのそれぞれに、塩酸システイン(6mg/gゾル)を添加した。それぞれのゾルの部分を、10倍、100倍、1000倍、及び10,000倍に希釈した。希釈されていないゾル及び希釈されたゾルに、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌を植菌し、37℃で2週間培養した。標準のプレート計数方法によって、2週間にわたり、一定の間隔で、攻撃微生物の生存を評価した。黄色ブドウ球菌の生存評価の結果を、黄色ブドウ球菌を全滅させるのに必要なニトロシル化ナノ粒子の正規化した最小阻止濃度(NMIC)が示される、以下の表6に示す。試験したゾルのいずれにも、緑膿菌に対する有意な抗菌効果は観察されなかった。
【0130】
【表7】

【0131】
実施例9
アルギン酸ヒドロゲルを有する2部型組成物
実施例1(ゾルB)で上述されるように、チオール化ナノ粒子ゾル(ニトロシル化されていない)を調製し、脱イオン水を用いて、1:1で希釈した。ゾルに、約3重量%のアルギン酸ナトリウム(Aldrich Chemical Co.)を添加した。それぞれの区画に充填タブを装備した2区画型ホイル容器の区画Aに、充填タブを通して、得られるアルギン酸塩/ナノ粒子ゾル混合物を注入し、区画Aの体積の一部分は未充填のままにした。そのような容器は、3M ESPE,St.Paul,MNから入手可能である。次いで、ゲル全体に分散した非ニトロシル化ナノ粒子を含有する酸性化アルギン酸ゲルをもたらすために、充填タブを通して、塩酸(〜30mL 1 N、Malinkrodt Specialty Chemicals,Paris,KY)を区画Aに添加した。区画Aを封止するために、充填タブを折り曲げた。充填タブを通して、亜硝酸ナトリウムの飽和溶液を容器の区画Bに注入し、区画Bを封止するために、充填タブを折り曲げた。区画Bを圧搾し、区画を分離しているホイル層を分離することによって、区画Bの内容物を区画Aに注ぎ、亜硝酸塩溶液をアルギン酸ゲルと組み合わせた。区画Aの上端を剥がし、赤いニトロシル化反応生成物を露出した際、ニトロシル化ナノ粒子を含有する、得られるアルギン酸ゲルが観察された。
【0132】
実施例10
ニトロシル化ゾルからのNO放出における、添加した塩酸システイン及び銅イオンの影響
実施例8と同様に、ゾルを純水中に透析したことを除き、実施例1と本質的に同様に、ニトロシル化ゾルを調製した。得られるゾルを、水を用いて、1:29で希釈した。以下のゾル、対照、0.5mMのCu++、1.25mMの塩酸システイン、0.5mMのCu++を有する1.25mMの塩酸システインをもたらすために、得られる希釈されたゾルの4つの1.5mLの部分のそれぞれに、40μLの水、40μLの18mMの臭化第二銅、40μLの47mMの塩酸システイン、40μLの47mMの塩酸システイン及び40μL18mMの臭化第二銅をそれぞれ添加した。Cu++の存在が、例えば、チオールの存在下で、Cu++が最初にCuに還元され、次いで、CuがS−NO基と反応し、NOを放出し、チオレートアニオン及びCu++(チオレートによってCuに還元することができる)を形成する、S−NO基の分解を引き起こすことが既知である。実施例2と同様に、連続して4日間にわたり、336ナノメートルでゾルのUV吸光度(A)を測定した。この期間の間、ゾルは、光から保護され、5℃に保たれた。最初に、ベールの法則(A=εbc)、式中、消散係数εが、900(Mcm)−1、を使用して、S−NO基の濃度を計算し、初期に判定された濃度から、得られる濃度を減算することによって、放出されたNOの量を計算した。結果を表7に示す。塩酸システインの存在は、最初の12時間に、S−NO消費速度を急激に増加させた。残りの期間にわたり、塩酸システインの存在下でのS−NO消費速度は、対照及びCu++含有ゾルと同様であった。
【0133】
チオールは、ニトロソチオールと反応し、NOを放出し、ジスルフィドを形成することが既知である。したがって、塩酸システインの存在下でのNO放出速度の急激な初期の増加は、システインとナノ粒子上のニトロソチオール基との間の反応の結果であり、ジスルフィド基を形成すると考えられる。
【0134】
対照ゾルにおけるNOの徐放は、ニトロソチオール基の単なる解離の結果であり、スルフヒドリル(チオール)基の形成をもたらすと考えられる。Cu++の存在(システインはない)は、ニトロソチオール基の分解に影響を及ぼさない。これらの発見は、ナノ粒子上のニトロソチオール基が、粒子内及び粒子間でのジスルフィド形成に対して立体的に遮蔽されている、あるいは立体的に安定化されているということと一致する証拠を示す。システイン又は1−プロパンチオール等の小チオール分子の場合、小チオールは、安定化基の遮蔽を貫通し、NOを置換し、ジスルフィド基を形成することができる。
【0135】
【表8】

【0136】
実施例11
チオール化ゾルの安定性
実施例1(ゾルB)と同様に、チオール化ゾルを調製した。ゾルを、10ヶ月の期間、暗闇中で室温で保存した。この間、ゾルは、それらの光学的透明度を維持することが発見された。10ヵ月後、実施例1と同様に、ゾル中のチオール化ナノ粒子を亜硝酸塩と反応させ、保存期間前と同様に、ニトロソチオール基を形成することを発見した。これは、チオール基を含有する小分子及びポリマーで生じることが既知である(及び通常、還元剤を用いて回避される)ジスルフィド形成を考慮すると、驚きである。ナノ粒子上のチオール基の安定性は、上述される2部型組成物を可能なものにする。
【0137】
実施例12
ブドウ糖及びニトロソチオール基を有する固体非晶質シリカナノ粒子の調製
チオール化ナノ粒子の調製:
100gのNALCO 2326ゾル(17重量%、Nalco,Napeville,IL)を、ガラス栓、冷却器、及び温度計が取り付けられた、100mLの三ツ口丸底フラスコに入れた。磁気かき混ぜ棒を使用して、ゾルを継続的にかき混ぜた。1〜3のpHに到達するように、1.25mLの濃硝酸を液滴で添加した。加熱マントルを使用して、ゾル温度を70℃(+/−5℃)に上昇させ、24.72gのN−(3−トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド(エタノール中に50重量%、Gelest Inc.,Morrisville,PA)と組み合わせた。得られるゾルを、温度で8時間保ち、次いで、1.52gの3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Alfa Aesar,Ward Hill,MA)を添加した。3−メルカプトプロピルシリル基及び3−グルコンアミドプロピルシリル基を有するナノ粒子を含有する、チオール化ナノ粒子ゾルをもたらすために、得られるゾル混合物を、撹拌しながら温度で更に8時間保った。
【0138】
チオール化ナノ粒子のニトロシル化:
上記のブドウ糖安定化チオール化ナノ粒子ゾル(5g)を、バイアル瓶内に定置し、1Nの塩酸を添加して、ゾルのpHを3に調整した。次いで、ゾルに亜硝酸ナトリウム(0.027g)を添加し、混合するためにボルテックスした。得られるニトロシル化ゾルは赤色であり、スルフヒドリル基のニトロソチオール基への変換を示した。ゾルCを、光から保護され、かつ5℃に保たれた、封止されたバイアル瓶内で保存した。
【0139】
実施例13
成形ヒドロゲル内に組み込まれたナノ粒子からの酸化窒素の発生
チオール化ナノ粒子の調製:
以下のものを、還流冷却器、温度計、及び窒素パージラインが取り付けられた、加熱された三ツ口丸底フラスコ内に定置した:
水中に15重量%のシリカナノ粒子を含有する、200mLのNALCO 2326ゾル(Nalco,Napeville,IL)
200gのエタノール(200プルーフ)
3.35gの3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Alfa Aesar,Ward Hill,MA 01835)。
【0140】
磁気かき混ぜ棒を使用して、フラスコの内容物を継続的にかき混ぜた。加熱する前に、酸素を除去するために、フラスコを窒素で15分間パージした。次いで、それを70℃で7時間加熱した。加熱中、温度は65℃から75℃に変化した。フラスコを室温に冷却し、PEOTES(30.2)gを添加した。フラスコを再び窒素で15分間パージし、次いで、70℃(+/−5℃)に7時間加熱した。ポリ(エチレングリコール)安定化チオール化ナノ粒子ゾルをもたらすために、Buchi R110 ROTAVAPORを使用して、70℃での高速真空蒸留によって、得られる混合物の体積を約100mLに減少させた。
【0141】
チオール化ナノ粒子の成形ヒドロゲルビーズへの組み込み:
最初に、上記のチオール化ナノ粒子ゾル(90mL)、蒸留水(90mL)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(120g、SR415、Sartomer,Exeter,PA)、及び光開始剤(1.2g、IRGACURE 2959、Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)の混合物を調製することによって、上記のチオール化ナノ粒子を含有するヒドロゲルビーズを生産した。次いで、国際公開特許WO2007/146722A1号の図2を参照して実施例1に記載される方法を使用して、光重合によって、1〜4ミリメートルの直径の球状ヒドロゲルビーズを調製した。一時的に、混合物を漏斗内に定置し、混合物は、2mmの直径の開口部を通って漏斗を出た。出る混合物は、UV暴露ゾーンを通って延在する、0.91メートルの長さ、51mmの直径の石英管の垂直軸に沿って落下した。このゾーンは、バルブの長さが、混合物が移動する垂直軸に対して平行となるように、一体化背面反射体に連結された、「H字型」バルブ(長さが25cm)(Fusion UV Systems,Gaithersburg,MDから入手可能)を有する、240ワット/インチ照射器を含んだ。混合物は、球状ヒドロゲルビーズとして、暴露ゾーン及び石英管を出た。
【0142】
ヒドロゲルビーズ内に組み込まれたチオール化ナノ粒子のニトロシル化:
上記の調製されたビーズ(約1グラム)を、100mMの塩酸中に1.0グラムの亜硝酸ナトリウムの10mLの溶液に1時間浸水した。ビーズは、明るい赤色に変化し、ナノ粒子上でのニトロソチオール基の形成を示した。これらのビーズを蒸留水で水洗し、pH7の100mMのリン酸緩衝液中に定置した後、これらは、それらの色をゆっくりと失い、ニトロソチオール基の破壊及び酸化窒素の形成を示した。
【0143】
実施例14
架橋アルギン酸ヒドロゲル中での単糖安定化ナノ粒子の調製及びヒドロゲルからの酸化窒素の発生
実施例12の3−メルカプトプロピルシリル基及び3−グルコンアミドプロピルシリル基を有するナノ粒子を含有する、チオール化ナノ粒子ゾル(0.9mL)を、小さなビーカー内に定置した。40μLの1NのHClを添加することによって、0.077mモルのチオール/gゾルを含有するこのゾルを、pH2に酸性化し、次いで、ナノ粒子をニトロシル化するために、亜硝酸ナトリウムの水溶液(4.78mg/100mLのものを100μL)を添加した。反応は、ゾル中に赤色の外観を伴った。得られるゾルに、1gのアルギン酸ナトリウムの溶液(242gの脱イオン水中に10gのMANUCOL LF、ISP,Wyne,NJから入手可能なアルギン酸ナトリウム)を添加した。得られる混合物をかき混ぜ、次いで、使い捨てピペットを使用して、塩化カルシウムの水溶液(CaCl、10mg/mL)を含有するバイアル瓶に、この混合物を滴下した(1回に1滴)。不透明なピンク色の得られるヒドロゲルビーズを40分間固めた。
【0144】
ヒドロゲルビーズのNO放出を以下のように試験した。既知の量のヒドロゲルビーズを、12ウェル型ペトリプレートのウェル内に分注した:
ウェル1−14個のビーズ(0.53gのヒドロゲルビーズ)
ウェル2−7個のビーズ(0.23gのヒドロゲルビーズ)
ウェル3−5個のビーズ(0.1gのヒドロゲルビーズ)
リン酸緩衝化食塩水(3mL、PBS 10mM、Sigma,St.Louis、MO、カタログ番号P3813)をそれぞれのウェルに添加し、次いで、プレートを、37℃のインキュベータ内に定置した。21.5時間の時点で、それぞれのウェルから1mLの試料を回収し、分析まで−20℃で冷凍した。それぞれのウェル内の流体の残りを除去し、新鮮な3mLのPBS緩衝液をウェルに添加した。累積時間の合計が66時間の時点で、それぞれのウェルから第2の試料を回収し、分析まで−20℃で冷凍した。
【0145】
Cayman Chemical(Ann Arbor,MI、カタログ番号780001)から市販される比色分析キットを使用して、回収された試料の亜硝酸塩及び硝酸塩の合計を分析した。酸化窒素自体は、短い半減期を有し、NO分解の最終生成物は、亜硝酸塩(NO)及び硝酸塩(NO)である。NO及びNOの相対的比率は、様々であり、確実に予測することはできない。したがって、総酸化窒素生成の最良の指標は、NOxと称される、両方の合計である。結果を以下の表8に示す。
【0146】
実施例15
架橋アルギン酸ヒドロゲル中でのポリ(エチレングリコール)安定化ナノ粒子の調製及びヒドロゲルからの酸化窒素の発生
実施例13のポリ(エチレングリコール)安定化チオール化ナノ粒子ゾル(1mL)を小さなビーカー内に定置した。ゾルを、120μLの1NのHClを用いて、pH2に酸性化し、198μLの1.5重量パーセントの亜硝酸ナトリウムを含有する水溶液をゾルに添加した。反応は、ゾル中に赤色の外観を伴った。緩衝液として、100mMの酢酸ナトリウム溶液(200μL)をゾルに添加し、得られる混合物を十分にかき混ぜた。次いで、炭酸ナトリウムの1重量パーセントの水溶液(140μL)を混合物に添加し、実施例14と同様に、続いてアルギン酸ナトリウム(1g)を添加した。得られる混合物をかき混ぜ、次いで、かき混ぜ棒でかき混ぜながら、使い捨てピペットを使用して、塩化カルシウムの水溶液(10mg/mL)を含有するバイアル瓶に、この混合物を滴下した(1回に1滴)。半透明なピンク色の得られるヒドロゲルビーズを10分間固めた。
【0147】
既知の量のヒドロゲルビーズを、NO放出が試験される12ウェル型ペトリプレートのウェル内に分注した:
ウェル1−14個のビーズ(0.53gのヒドロゲルビーズ)
ウェル2−7個のビーズ(0.23gのヒドロゲルビーズ)
ウェル3−5個のビーズ(0.1gのヒドロゲルビーズ)
実施例14と同様に、ヒドロゲルビーズのNO放出を試験し、結果を、表8に示す。
【0148】
【表9】

【0149】
実施例16
乳酸を用いた、架橋親水性(メタ)アクリレートヒドロゲル中でのポリ(エチレングリコール)安定化ナノ粒子の調製及びヒドロゲルからの酸化窒素の発生
本質的に実施例1に記載されるように調製されたゾルB(25mL)を、ビーカー内に定置し、亜硝酸ナトリウム(32mg)をゾルに添加した。得られる混合物をかき混ぜ、870μLの希釈が1:10の乳酸(PURAC 88%高純度乳酸、Batch AR9001D、PURAC America,Lincolnshire,IL)を添加し、pHを2に到達させるために、1.08mLの1Nの塩酸の添加が続いた。
【0150】
55〜70部のM−PEG、10〜15部のMAA−PEG、30〜40部のHEMA、及び10〜20部のHEAからなる親水性(メタ)アクリルシロップ(15.63g)を、1Lの丸底フラスコ内に定置した。上記の酸性化ゾルをシロップに添加し、液体が縮合を停止するまでフラスコをロータリーエバポレーター上に定置した(約12分間)。得られるゾルにEDMAB(111.4mg)及びCPQ(111.6mg)を添加し、かき混ぜて混合した。
【0151】
得られる光重合性シロップ(約2g)を、深さ1mm×直径4.1cmの成形型に注ぎ、クリアな透明ライナーで被覆し、シロップを成形型内に均一に広げた。UVランプ(Black Ray長波長UVランプ、モデルB−100)の下で、455nmカットオフフィルタを通して、シロップを15分間硬化した。得られる硬化ヒドロゲルディスクを成形型及びライナーから取り外し、ヒドロゲルディスクを、乾燥した、暗い環境で保管するために、ホイルで被覆されたデシケータ内で保存した。
【0152】
直径が1.27cmの穴あけポンチを使用して、ヒドロゲルディスクの部分を取り出し、NO放出を試験される6ウェル型ペトリプレートのウェル内に定置した。ウェル内に定置された小さな直径が1.27cmのディスクの厚さは、約1mmであった。10ミリリットルのリン酸緩衝化食塩水をそれぞれのウェルに添加した。プレートを、37℃のインキュベータ内に定置した。25.5、48、72、及び163時間の時点で、それぞれのウェルから1mLの試料を回収した。これらの試料を、分析まで−20℃で冷凍した。それぞれのサンプリングで、ウェル内の流体の残りを除去し、新鮮な9mLのPBS緩衝液をウェルに添加した。9mL(及び10ではない)を添加し戻す理由は、小さなヒドロゲルディスクが約1mLの流体を吸収するためである。これは、培養後2時間未満で吸収され、吸収された体積は、その後、未変化のままである。
【0153】
実施例14と同様に、試料の亜硝酸塩及び硝酸塩の合計を分析した。結果を表9に示す。
【0154】
実施例17
塩酸を用いた、架橋親水性(メタ)アクリレートヒドロゲル中でのポリ(エチレングリコール)安定化ナノ粒子の調製及びヒドロゲルからの酸化窒素の発生
本質的に実施例1に記載されるように調製されたゾルB(25mL)を、ビーカー内に定置し、600μLの1Nの塩酸を添加し、pHを2にした。ゾルに亜硝酸ナトリウム(32mg)を添加し、混合物をかき混ぜた。
【0155】
実施例16に記載される、親水性(メタ)アクリルシロップ(15.28g)を、1Lの丸底フラスコ内に定置した。上記の酸性化ゾルをシロップに添加し、液体が縮合を停止するまでフラスコをロータリーエバポレーター上に定置した(約12分間)。得られるゾルにEDMAB(111.5mg)及びCPQ(112.0mg)を添加し、かき混ぜて混合した。
【0156】
得られる光重合性シロップを、硬化ディスク(厚さ約1mm×直径約4.1cm)にし、実施例16と同様に、ディスクをホイルで被覆されたデシケータ内で保存した。実施例16と同様に、これらのディスクの部分を取り出し、亜硝酸塩及び硝酸塩の合計を測定することによって、NO放出を試験した。結果を表9に示す。
【0157】
実施例18
塩酸を有する架橋親水性(メタ)アクリレートヒドロゲル中でのチオール含有基を有するポリ(エチレングリコール)安定化ナノ粒子の調製
本質的に実施例1に記載されるように調製されたゾルB(25mL)を、ビーカー内に定置し、600μLの1Nの塩酸を添加し、pHを2にした。ゾルに亜硝酸ナトリウム(32mg)を添加し、混合物をかき混ぜた。
【0158】
実施例16に記載される、親水性(メタ)アクリルシロップ(15.45g)を、1Lの丸底フラスコ内に定置した。上記の酸性化ゾルをシロップに添加し、液体が縮合を停止するまでフラスコをロータリーエバポレーター上に定置した(約12分間)。得られるゾルにEDMAB(110.4mg)及びCPQ(112.6mg)を添加し、かき混ぜて混合した。
【0159】
得られる光重合性シロップを、硬化ディスク(厚さ約1mm×直径約4.1cm)にし、実施例16と同様に、ディスクをホイルで被覆されたデシケータ内で保存した。実施例16と同様に、これらのディスクの部分を取り出し、亜硝酸塩及び硝酸塩の合計を試験した。結果を表9に示す。
【0160】
【表10】

【0161】
10mL当たり0.01ミクロモルが、このアッセイの検出限界
実施例16及び17において、UV硬化工程中に、ニトロソチオール基の一部が活性化され、したがって、光に暴露することなく硬化した場合、上記の測定される累積NOxがより低くなると考えられる。
【0162】
実施例19
プレポリマーA:
塩化ベンゾイル(0.58g)を、室温で、不活性雰囲気下で、1738g(1当量)の約5000M.W.のポリエーテルチオール(アタクチック分布を有する、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー)と混ぜる。その後、激しく撹拌しながら、得られる混合物に、191.4g(2.2当量)の2,4トリレンジイソシアネート:2,6トリレンジイソシアネートの80:20の混合物を素早く添加し、穏やかな発熱反応を引き起こす。これを、反応が完了するまで、80〜85℃に維持した。反応が進行してから、反応が完了するまで、混合物の試料の%NCOの滴定が続き、その後すぐに、反応物を室温に冷却する。反応混合物の上部分を、「プレポリマーA」に指定される、100%固体のプレポリマーが残るようにデカントする。これを、防湿ガラス容器内に封止する。
【0163】
プレポリマーB:
プレポリマーAで記載されるように、塩化ベンゾイル(0.415g)を、室温で、不活性雰囲気下で、完全に混合しながら、1738g(1当量)のポリエーテルチオールに添加する。その後、以前は商標名「Mondur」432で販売されていた、337.5g(2.5当量)のポリマーMDIポリイソシアネートを、一定に撹拌しながら、得られる混合物に添加し、発熱を引き起こす。この混合物を、%NCOの滴定によって反応が完了したと判定されるまで、80〜85℃に維持する。「プレポリマーB」に指定される、100%固体のプレポリマーを生成するために、反応物を40℃以下に冷却する。これを、防湿ガラス容器内に封止する。
【0164】
プレポリマーC:
4000M.W.のポリオキシエチレングリコール(2000g、1当量)を、1814g(2.2当量)の2,4:2,6トリレンジイソシアネートの80:20の混合物と反応させ、わずかな発熱をもたらし、これを、反応が完了するまで、70〜75℃に維持した。これは、%NCOの滴定によって判定される。室温に冷却した後、「プレポリマーC」に指定される、プレポリマー反応生成物を回収し、ガラス容器内に封止する。
【0165】
実施例1に従って調製した、水中にニトロソチオール化ナノ粒子が安定して分散した10gの試料(ニトロシル化ゾルC)を、プレポリマーA、B、及びCの4gの試料と混合する。内容物を盛んにかき混ぜ、直ちに、成形型に注ぐ、又は基材上にコーティングする。数分以内に、アミン及び二酸化炭素を生成する、末端イソシアネート基の一部と水との反応、及び尿素結合を形成する、アミンと残りのイソシアネート基との続く反応により、架橋ヒドロゲルが形成される。
【0166】
実施例20
4000M.W.の20.0g(0.01当量)のポリ(エチレングリコール)(PEG)を、20gの約6.9%のSiOである実施例1で生成されたニトロソ化ナノ粒子の水分散液(ニトロシル化ゾルC)と混合する。この分散液は安定である。PEGに分散した、SiOニトロソチオール化ポリ(エチレングリコール)安定化ナノ粒子の6.9%の分散液を生成するために、ロータリーエバポレーター上で水を除去する。PEG分散液を、1.43g(0.01当量)のIsonate 2143L(Dow Chemical,Midland,MIから入手可能な143g/当量の当量を有する修飾MDI)と反応させる。これを十分に混合し、テフロン(登録商標)成形型に注ぎ、反応が完了してポリウレタンヒドロゲルを形成するまで、70〜75℃で硬化する。
【0167】
実施例21
15.0gの3000M.W.のグリセリン開始ポリオキシエチレングリコールトリオール(0.01当量)を、15gの約6.9%のSiOである実施例1で生成されたニトロソ化ナノ粒子の水分散液(ニトロシル化ゾルC)と混合する。この分散液は安定である。グリセリン開始ポリオキシエチレングリコールトリオールに、分散したSiOニトロソチオール化ポリ(エチレングリコール)安定化ナノ粒子の6.9%の分散液を生成するために、ロータリーエバポレーター上で水を除去する。この分散液を、1.43g(0.01当量)のIsonate 2143L(Dow Chemicalから入手可能な143g/当量の当量を有する修飾MDI)と反応させる。これを十分に混合し、テフロン(登録商標)成形型に注ぎ、反応が完了してポリウレタンヒドロゲルを形成するまで、70〜75℃で硬化する。
【0168】
実施例22
架橋グアーガムヒドロゲル中でのポリ(エチレングリコール)安定化ナノ粒子の調製
実施例1(ゾルB)で上述されるように、チオール化ナノ粒子ゾル(非ニトロシル化)を調製した。39固体重量%のポリ(エチレングリコール)安定化チオール化ナノ粒子ゾルをもたらすために、Buchi R−205 ROTAVAPORを使用して、25℃での高速真空蒸留によって、得られる混合物の体積を減少させた。この溶液の2gのアリコートを、実施例1(ゾルC)に記載されるニトロシル化手順に従って、過剰の亜硝酸ナトリウムを用いてニトロシル化した。
【0169】
架橋グアーガムヒドロゲルを生成するために、0.04gのグアーガムを0.3gのプロピレングリコール(Aldrich Chemical Co.)に添加し、得られる溶液を、1.66gの上記のニトロシル化ナノ粒子ゾルに混合した。0.1gの17重量%のテトラホウ酸カリウム溶液を添加することによって、架橋ヒドロゲルを形成した。
【0170】
実施例23及び24
ポリエーテル及びニトロソチオ〜ル基を有する固体非晶質シリカナノ粒子の調製
ポリエーテルシランI(PES−I)の調製:
3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(Sigma−Aldrich)(5.02g)を、100gのジクロロメタン(EM Sciences)中にポリエーテルアミン(JEFFAMINE M−1000、Huntsman)(20.32g)の溶液にゆっくりと添加し、得られる混合物を16時間かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、オフホワイトのろう状の固体として得られるポリエーテル尿素シラン(MW=1247)を分離し、精製することなく使用した。
【0171】
ポリエーテルシランII(PES−II)の調製:
3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(Sigma−Aldrich)(2.48g)を、100gのジクロロメタン(EM Sciences)中にポリエーテルアミン(JEFFAMINE M−2070、Huntsman)(21.75g)の溶液にゆっくりと添加し、得られる混合物を1時間かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、黄色味を帯びた液体として得られるポリエーテル尿素シラン(MW=2317)を分離し、精製することなく使用した。
【0172】
チオール化され、かつポリエーテルが安定化されたナノ粒子の調製:
ガラス栓、冷却器、及び温度計が取り付けられた、500mLの三ツ口丸底フラスコ内で、NALCO 2326ゾル(17重量%、Nalco、Naperville,IL)(200g)を、200gのエタノールと組み合わせた。磁気かき混ぜ棒を使用して、ゾルを継続的にかき混ぜた。加熱マントルを使用して、ゾル温度を80℃(+/−5℃)に上昇させ、3.04gの3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Alfa Aesar,Ward Hill,MA)と組み合わせた。ゾルを温度で8時間維持した。8時間後、15gのアリコートをバイアル瓶に移し、上記で調製されたポリエーテルシラン(3.00gのPES−I又は5.38gのPES−II)をゾルに混合した。PES−I及びPES−IIポリエーテル安定化チオール化ナノ粒子ゾルをもたらすために、バイアル瓶を、70℃(+/−5℃)の油浴内に更に8時間定置した。
【0173】
ポリエーテル安定化チオール化ナノ粒子のニトロシル化:
上記のポリエーテル安定化チオール化ナノ粒子ゾルのそれぞれ(2g)をバイアル瓶内に定置し、ゾルのpHを3に調整するために、1Nの塩酸を添加した。次いで、ゾルに0.01gの亜硝酸ナトリウム(Aldrich、Milwaukee,WI)を添加し、混合するためにボルテックスした。得られるニトロシル化ゾルは赤色であり、メルカプト基のニトロソチオール基への変換を示した。得られるナノ粒子上の亜硝酸塩対チオール(スルフヒドリル)基の比は、2:1であった。
【0174】
ニトロシル化ポリエーテル安定化ナノ粒子ゾルからのNOの放出:
Perkin Elmer Lambda 35分光光度計(Perkin Elmer,Waltham,MA)を使用して、上記で調製されたニトロシル化ゾルの吸光度スペクトルを測定した。550ナノメートル、ニトロソチオール基の可視光吸光度ピーク波長で、連続して16日間にわたり、ゾルの吸光度を測定した。この期間の間、ゾルを、21℃の温度で、周囲蛍光照明に暴露した。吸光度値のそれぞれを、初期吸光度に関して正規化した。以下の表10に示される結果は、ニトロソチオール基の吸光度の減衰によって見られるように、16日間の期間にわたってNOが放出され、16日目に、ゾルは、残りのニトロソチオール基により、PES−Iポリエーテル安定化ナノ粒子(実施例23)の場合に約60パーセントの吸光度を維持し、PES−IIポリエーテル安定化ナノ粒子(実施例24)の場合に約40%の吸光度を維持したことを示す。
【0175】
【表11】

【0176】
1 A/A=正規化した吸光度
2 (A−A)/A×100=550nmでの吸光度の減少の関数としての放出されたNOの百分率。
【0177】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参考として組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨を逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当分野の技術者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体非晶質シリカを備え、ニトロソチオール含有基が付着される外側表面を有し、水系中に分散可能であるナノ粒子を備える、酸化窒素を放出するための組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、固体非晶質シリカナノ粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記固体非晶質シリカナノ粒子が、約2.0〜約2.3グラム/cmの密度を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
固体非晶質シリカを備える前記外側表面が、コアを包囲し、前記コアが、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及び酸化セリウムからなる群から選択される金属酸化物を備える、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、該ナノ粒子の前記表面に付着した安定化基を更に備え、前記安定化基が、−OCHCH−、−COOH、−COOHの塩、−CH(OH)CHOH、−CH(OH)CH(OH)−、−SOH、−SOHの塩、第4級アミノ基、単糖基、オリゴ糖基、複数の任意の前述の基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される親水基を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記安定化基が、前記親水基の水素以外の原子が含まれる、少なくとも約10個の連鎖原子の鎖長を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記安定化基が、前記親水基の水素以外の原子が含まれる、約100個以下の連鎖原子の鎖長を有する、請求項5又は請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記安定化基が、前記親水基の水素以外の原子が含まれる、約20〜約75個の連鎖原子の鎖長を有する、請求項5、6、及び7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記連鎖の前記原子が、炭素、酸素、窒素、イオウ、及びケイ素からなる群から選択される、請求項6、7、及び8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記連鎖の前記原子が、炭素、酸素、及びケイ素である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記安定化基が、ポリ(エチレングリコール)鎖を備える、請求項5〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、水及び少なくとも1つの水分散性化合物の組み合わせである水系中に分散される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの水分散性化合物が、低級アルコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリ(エチレングリコール)、ヒドロゲルモノマー、両親媒性化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ナノ粒子が、ヒドロゲルモノマー中に分散される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、ヒドロゲルを更に備え、前記ナノ粒子が、前記ヒドロゲル中に分布される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ヒドロゲルが、イオン性架橋アルギン酸塩である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ヒドロゲルが、少なくとも1つの、親水基含有エチレン性不飽和化合物の重合生成物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記ヒドロゲルが、複数のヒドロゲルビーズである、請求項15、16、及び17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ヒドロゲルが、実質的に脱水される、請求項15〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、透明である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
表面と、該表面に隣接して、請求項1〜20のいずれか一項に記載の酸化窒素を放出するための組成物と、を備える、医療デバイス。
【請求項22】
前記デバイスが、創傷包帯、創傷接触層、創傷充填剤、医療用テープ、手術用の糸、代用血管、ステント、及びカテーテルからなる群から選択される、請求項21に記載の医療デバイス。
【請求項23】
前記デバイスが、創傷包帯、創傷接触層、又は創傷充填剤である、請求項21又は請求項22に記載の医療デバイス。
【請求項24】
前記創傷包帯が、裏材を備え、前記裏材の表面に隣接して、前記酸化窒素を放出するための組成物を有する、請求項23に記載の医療デバイス。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか一項に記載の医療デバイスと、水、水蒸気、紫外線光、及び可視光を通さないパッケージとを備える、製品であって、前記酸化窒素を放出するための組成物が、前記パッケージによって包まれる、製品。
【請求項26】
被験者を酸化窒素で治療する方法であって、
請求項1〜20のいずれか一項に記載の酸化窒素を放出するための組成物、又は請求項21〜24のいずれか一項に記載の医療デバイスを提供する工程と、
前記被験者を前記組成物又は前記医療デバイスと接触させる工程と、
前記組成物又は前記医療デバイスが前記被験者に接触する位置で、酸化窒素を放出する工程と、を含む、方法。
【請求項27】
前記組成物からの前記酸化窒素の放出を活性化する工程を更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
活性化する工程が、前記組成物を、水性組成物、体液、チオール含有化合物、アスコルビン酸塩、可視光、紫外線光、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される活性化剤に暴露する工程を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
活性化する工程が、前記組成物を体液に暴露することによって実施され、前記体液が、創傷浸出液である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の酸化窒素を放出するための組成物と、活性化剤と、を備える、キット。
【請求項31】
酸化窒素を放出するための組成物を作製する方法であって、
固体非晶質シリカナノ粒子を提供する工程と、
チオール含有基を前記固体非晶質シリカナノ粒子の外側表面に固着する工程と、
親水基を備える安定化基を前記固体非晶質シリカナノ粒子の前記外側表面に固着する工程と、
ニトロソチオール含有基を形成するために、前記チオール含有基をニトロシル化する工程と、を含む、方法。
【請求項32】
前記固体非晶質シリカナノ粒子が、ケイ酸塩を塩基性条件下で縮合させることによってもたらされる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸テトラエチル、及びオルトケイ酸テトラメチルからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記チオール含有基を前記固体非晶質シリカナノ粒子の外側表面に固着する工程が、アルコキシリル基及びチオール基を含む化合物のアルコキシリル部分を、前記シリカナノ粒子と反応させることによって実施される、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
親水基を備える前記安定化基を前記固体非晶質シリカナノ粒子の前記外側表面に固着する工程は、アルコキシリル基及び親水基を含む化合物のアルコキシリル部分を、前記シリカナノ粒子と反応させることによって実施される、請求項31〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記チオール含有基をニトロシル化する工程は、チオール含有基を有する前記シリカナノ粒子を、酸性条件下で亜硝酸塩と反応させることによって実施される、請求項31〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
外側表面であって、ニトロソチオール含有基が前記表面に付着される、外側表面を有する、前記固体非晶質シリカナノ粒子を水系中に分散させる工程を更に含む、請求項31〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
外側表面であって、ニトロソチオール含有基が前記表面に付着される、外側表面を有する、前記固体非晶質シリカナノ粒子をヒドロゲル中に分布させる工程を更に含む、請求項31〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
固体非晶質シリカを備え、チオール含有基が付着される外側表面を有し、水系中に分散可能であるナノ粒子を備える第1の部分と、
亜硝酸塩源を含む第2の部分と、を備える、酸化窒素を放出するための組成物。
【請求項40】
前記亜硝酸塩源が、水性組成物中にある、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記亜硝酸塩源が、亜硝酸塩である、請求項39又は請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記水系が、酸性pHを有する、請求項39、40、及び41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記ナノ粒子が、固体非晶質シリカナノ粒子である、請求項39〜42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記固体非晶質シリカナノ粒子が、約2.0〜約2.3グラム/cmの密度を有する、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記ナノ粒子が、該ナノ粒子の前記表面に付着した安定化基を更に備え、前記安定化基が、−OCHCH−、−COOH、−COOHの塩、−CH(OH)CHOH、−CH(OH)CH(OH)−、−SOH、−SOHの塩、第4級アミノ基、単糖基、オリゴ糖基、複数の任意の前述の基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される親水基を備える、請求項39〜44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記安定化基が、前記親水基の水素以外の原子が含まれる、少なくとも約10個の連鎖原子の鎖長を有する、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記安定化基が、前記親水基の水素以外の原子が含まれる、約100個以下の連鎖原子の鎖長を有する、請求項45又は46に記載の組成物。
【請求項48】
前記安定化基が、前記親水基の水素以外の原子が含まれる、約20〜約75個の連鎖原子の鎖長を有する、請求項45、46、及び47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記連鎖の前記原子が、炭素、酸素、窒素、イオウ、及びケイ素からなる群から選択される、請求項46、47、及び48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記連鎖の前記原子が、炭素、酸素、及びケイ素である、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記安定化基が、ポリ(エチレングリコール)鎖を備える、請求項45〜50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記ナノ粒子が、水及び少なくとも1つの水分散性化合物の組み合わせである水系中に分散される、請求項39〜51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
前記少なくとも1つの水分散性化合物が、低級アルコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリ(エチレングリコール)、ヒドロゲルモノマー、両親媒性化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記ナノ粒子が、ヒドロゲルモノマー中に分散される、請求項39〜51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
前記組成物が、ヒドロゲルを更に備え、前記ナノ粒子が、前記ヒドロゲル中に分布される、請求項39〜51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
前記ヒドロゲルが、イオン性架橋アルギン酸塩である、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記ヒドロゲルが、少なくとも1つの、親水基含有エチレン性不飽和化合物の重合生成物である、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
前記ヒドロゲルが、複数のヒドロゲルビーズである、請求項55〜57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記ヒドロゲルが、実質的に脱水される、請求項55又は58に記載の組成物。
【請求項60】
表面と、該表面に隣接して、請求項39〜59のいずれか一項に記載の酸化窒素を放出するための組成物と、を備える、医療デバイス。
【請求項61】
前記デバイスが、創傷包帯、創傷接触層、又は創傷充填剤である、請求項60に記載の医療デバイス。
【請求項62】
前記創傷包帯が、裏材を備え、前記裏材の表面に隣接して、前記酸化窒素を放出するための組成物を有する、請求項61に記載の医療デバイス。
【請求項63】
前記酸化窒素を放出するための組成物の前記第1の部分及び前記第2の部分が、障壁物質によってそれぞれ別個に包まれ、前記障壁物質が水を通さない、請求項60、61、及び62のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項64】
前記包まれた第1の部分及び前記包まれた第2の部分が、破壊される際、前記第2の部分を前記第1の部分と組み合わせる、破壊可能な障壁によって分離される、請求項63に記載の医療デバイス。
【請求項65】
請求項39〜59のいずれか一項に記載の酸化窒素を放出するための組成物、又は請求項60〜64のいずれか一項に記載の医療デバイスを提供する工程と、
組成物をもたらすために、前記組成物の前記第1の部分を前記組成物の前記第2の部分と組み合わせる工程であって、ニトロソチオール含有基が前記ナノ粒子の前記表面に付着される、工程と、
前記被験者を前記酸化窒素を放出するための組成物又は前記医療デバイスと接触させる工程と、
前記組成物又は前記医療デバイスが前記被験者に接触する位置で、酸化窒素を放出する工程と、を含む、被験者を酸化窒素で治療する方法。
【請求項66】
前記組成物からの前記酸化窒素の放出を活性化する工程を更に含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
活性化する工程が、前記組成物を活性化剤に暴露する工程を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
活性化する工程が、前記組成物を体液に暴露することによって実施され、前記体液が、創傷浸出液である、請求項67に記載の方法。

【公表番号】特表2011−518222(P2011−518222A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506375(P2011−506375)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/041090
【国際公開番号】WO2009/131931
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】