説明

酸化自己熱型改質装置および燃料電池システム

【課題】改質効率を向上させることが可能な、構造が簡単で安価な酸化自己熱型改質装置を提供する。また、発電効率を高めることが可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】原料と水蒸気との混合物の改質反応により水素を主成分とする改質ガスを生成する改質層と、原料または改質ガスの一部を酸化して熱を発生させる酸化発熱層とを有する反応管と、酸化発熱層に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給手段と、反応管の外周に高温燃焼ガスを接触させて該反応管内を加熱する加熱手段とを備え、反応管は、一端が閉じられ、且つ、該閉じられた端部において内管と外管とが連通する二重管構造を有し、改質層は内管内に位置し、酸化発熱層は外管と内管との間隙部に位置し、反応管の内管内に混合物を供給する混合物供給流路と、間隙部から改質ガスを排出する改質ガス排出流路とを更に備えることを特徴とする酸化自己熱型改質装置。また、該酸化自己熱型改質装置を備える燃料電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素または脂肪族アルコールと、水蒸気との混合物を改質触媒に接触させ、改質反応により水素を主成分とする改質ガスを製造するための改質装置に関し、特には、装置内での酸化熱を改質反応に利用し得る酸化自己熱型の改質装置に関するものである。また、本発明は、該酸化自己熱型改質装置を備える燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化水素または脂肪族アルコールと、水蒸気との混合物を改質触媒に接触させて水素を主成分とする改質ガスを製造するための改質装置として、改質触媒および酸化触媒からなる触媒層に炭化水素または脂肪族アルコールと、水蒸気と、酸素とを供給し、炭化水素または脂肪族アルコールの一部を酸化発熱させることで吸熱反応である改質反応に必要な熱量が供給されるようにした、酸化自己熱型の改質装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上述したような酸化自己熱型の改質装置において、触媒層内の温度分布を緩やかなものとして、原料スリップの発生や、化学平衡上水素濃度の低い(比較的メタン濃度が高い)改質ガスの生成を防ぐことを可能にした改質装置として、内管および外管からなる2重管構造の改質管に改質触媒および酸化触媒を充填し、炭化水素または脂肪族アルコールと、水蒸気と、酸素とを、内管から外管にUターンするガスフローで流すようにした酸化自己熱型改質装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、上述した2重管構造の改質管を用いた酸化自己熱型改質装置では、改質管入口側での酸化反応による発熱を外側(改質管出口側)の触媒層に伝えることで触媒層の温度分布発生を抑制することができるものの、炭化水素または脂肪族アルコールと、水蒸気と、酸素との混合物を触媒層に供給しているため、耐酸化性の劣る触媒、例えばRu系触媒を改質触媒として使用することが困難であった。また、改質反応の原料として供給する炭化水素または脂肪族アルコールの一部を燃焼させて改質に必要な熱量を得ているため、改質効率(水素発生量/原料供給量)が低下してしまうという問題があった。
【0005】
これに対し、固体酸化物形燃料電池(SOFC)と、改質装置とを備える固体酸化物形燃料電池モジュールにおいて、固体酸化物形燃料電池から発生する排熱を改質装置の改質反応に無駄なく使用しつつ、改質反応に要する熱量が不足する場合には改質装置内で酸化発熱反応を進行させて熱量を補うことで、固体酸化物形燃料電池モジュールを熱自立させる手法が開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
そして、上述の固体酸化物形燃料電池モジュールでは、改質装置での改質反応に耐酸化性の劣る触媒を使用することができるように、改質装置として、3重円管構造を有し、円筒形状の2層の改質層(内側改質層および外側改質層)と、該改質層より下流側に位置する円筒形状の酸化発熱層とが、半径方向内側から内側改質層、酸化発熱層、外側改質層の順に配置されていると共に、酸化発熱層へ酸化性ガスを直接供給するための酸化性ガス導入管が設けられている改質装置が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−192201号公報
【特許文献2】特開2003−306306号公報
【特許文献3】特開2007−227237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、上述した固体酸化物形燃料電池モジュールの改質装置では、触媒層を、改質触媒を含む改質層と、酸化触媒を含む酸化発熱層とに分離し、酸化発熱層のみに酸化性ガスを供給しているので、耐酸化性の劣る触媒を改質層に使用することができるが、酸化発熱層で発生した熱の伝熱性を高めるために3重円管構造を採用しているため、構造が複雑となり、小型化するのが困難であると共に、製造コストがかかるという問題があった。
【0009】
また、化学平衡上、改質ガスの組成は触媒層出口の温度に影響を受け、触媒層出口の温度が高いほど改質ガスの水素含有量が高くなるところ、上述した固体酸化物形燃料電池モジュールの改質装置では、内側改質層および外側改質層と、酸化発熱層とが、半径方向内側から内側改質層、酸化発熱層、外側改質層の順に配置されており、改質ガスは中央の酸化発熱層を通って排出されている。従って、改質反応に要する熱量が不足している場合のみ酸化発熱反応を進行させる上記改質装置では、固体酸化物形燃料電池から発生する排熱の大部分が外側改質層での改質反応に利用されてしまい酸化発熱層および内側改質層まで充分に伝わらないという問題があった。そのため、該改質装置では、触媒層出口、即ち酸化発熱層の出口で改質ガスの温度が低下して改質ガスの水素含有量が低下することを防止すると共に、内側改質層での改質反応に必要な熱量を補うためには、結局酸化発熱層で酸化発熱反応を進行させなければならないという点で改良の余地があった。
【0010】
そのため、安価で製造することが可能であると共に、外部から供給される熱を効率的に利用することで酸化発熱層での酸化発熱反応に使用される原料や改質ガスの量をより低減する(改質効率を向上させる)ことが可能な、構造が簡単な酸化自己熱型改質装置が求められていた。
【0011】
また、一般に、固体酸化物形燃料電池(SOFC)等の燃料電池の燃料利用率(発電に使用された改質ガスの量/供給した改質ガスの量)は70〜85%程度であるところ、発電中の燃料電池からは未燃ガス(H、CO、CH)を含んだオフガスが必ず排出されることとなる。そのため、発電時に燃料電池自身から生じる熱や、オフガス中の未燃ガスを燃焼させることにより生じる燃焼熱を有効に利用することで発電効率(発電量/改質ガス供給量)を高めることが可能な燃料電池システムが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の酸化自己熱型改質装置は、炭化水素および脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも一種の原料と水蒸気との混合物の改質反応により水素を主成分とする改質ガスを生成する改質層と、前記原料または前記改質ガスの一部を酸化して熱を発生させる酸化発熱層とを有する反応管と、前記酸化発熱層に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給手段と、前記反応管の外周に高温燃焼ガスを接触させて該反応管内を加熱する加熱手段とを備える酸化自己熱型の改質装置であって、前記反応管は、一端が閉じられ、且つ、該閉じられた端部において内管と外管とが連通する二重管構造を有し、前記酸化発熱層は、少なくとも一部に酸化触媒が充填されており、且つ、前記外管と前記内管との間隙部に位置し、前記改質層は、少なくとも一部に改質触媒が充填されており、且つ、前記内管内に位置し、前記反応管の前記内管内に前記混合物を供給する混合物供給流路と、前記間隙部から改質ガスを排出する改質ガス排出流路とを更に備えることを特徴とする。このように、改質層を酸化発熱層の前段側に配置すると共に酸化発熱層に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給手段を設ければ、改質層の改質触媒に酸化性ガスが直接接触することがないので、耐酸化性の劣る改質触媒を改質層に使用することができる。また、反応管を二重管構造とすれば、三重円管構造にする場合と比較して装置を小型化することができるだけでなく、装置を安価で製造することが可能となる。更に、反応管の半径方向内側に改質層を、半径方向外側に酸化発熱層を配置すると共に、反応管内を加熱する加熱手段を設ければ、酸化発熱層を効率的に加熱して酸化発熱層出口で水素含有量の多い高温の改質ガスを得ることができると共に、外部から供給される熱を改質層における改質反応に利用して改質効率を向上させることもできる。なお、本発明において、水素を主成分とするとは、改質ガスのうち、水分を除いたドライベースで、50体積%以上が水素であることを指す。
【0013】
ここで、本発明の酸化自己熱型改質装置は、前記反応管の前記一端とは反対側の他端に、前記混合物供給流路および前記改質ガス排出流路を有する流路部を備え、前記他端では、前記混合物供給流路が前記内管に接続していると共に、前記改質ガス排出流路が前記間隙部に接続しており、前記流路部では、前記改質ガス排出流路が、前記混合物供給流路より前記外管と前記流路部との接続部に近い側に位置していることが好ましい。反応管の内管と外管とは閉じられた端部において連通しており、改質層での改質反応により生成した改質ガスは間隙部を通って排出されるところ、該閉じられた端部とは反対側の端部(他端)に混合物供給流路および改質ガス排出流路を設けた場合、原料の改質層への導入および改質ガスの間隙部からの排出のために複雑な配管を設ける必要がなく、装置を容易に製造することができるからである。
【0014】
また、本発明の酸化自己熱型改質装置は、前記反応管を複数本有し、各反応管の混合物供給流路と、改質ガス排出流路とがそれぞれ共通していることが好ましい。このようにすれば、改質装置のコンパクト化を図れると共に、装置の配置の自由度が高まるからである。また、反応管と高温燃焼ガスとの接触面積が増加し、改質層へ熱を充分に供給することができるからである。更に、改質装置を例えば燃料電池モジュールの内部に設置して使用する場合に、配置の自由度を生かして燃料電池と近接して配置することが可能で、燃料電池からの輻射熱を複数の反応管で有効に利用することができ、燃料電池モジュールの熱利用効率の向上に寄与することも可能となるからである。
【0015】
更に、本発明の酸化自己熱型改質装置は、前記混合物供給流路への前記混合物の入口部と、前記改質ガス排出流路からの前記改質ガスの出口部とが、それぞれ前記反応管を挟んで反対側に位置していることが好ましい。このようにすれば、例えば複数の反応管を備えた酸化自己熱型改質装置であっても、各反応管に関し、入口部から出口部までの距離が等しくなるからである。即ち、各反応管について流体の流れる距離をほぼ等しくすることができ、全反応管に対して混合物をほぼ均一に供給分配することができ、改質反応をほぼ均一に進行させることができるからである。
【0016】
また、本発明の酸化自己熱型改質装置は、前記流路部を備えることに加え、前記加熱手段が、前記高温燃焼ガスを前記一端から前記他端へ向かう方向へ流して前記反応管内を加熱することが好ましい。改質ガスを固体酸化物形燃料電池等の高温で運転する燃料電池の燃料として使用する場合、改質ガスを高温(例えば700〜800℃)で改質装置から排出することが好ましいところ、高温燃焼ガスが供給される側に改質ガス排出流路が位置していれば、改質ガス排出流路中での改質ガスの温度低下を防止することができるからである。また、高温燃焼ガスの流れ方向に関し、改質ガス排出流路よりも下流側に混合物供給流路が位置しているので、混合物供給流路の温度が高くなり難く、混合物供給流路内でのコーキングの発生を防止できるからである。
【0017】
更に、本発明の酸化自己熱型改質装置は、前記酸化性ガス供給手段が、前記内管の内側に配置されて前記反応管の前記改質層より前記一端側まで延在する酸化性ガス供給管であることが好ましい。内管の内側に配置した酸化性ガス供給管から酸化性ガスを供給すれば、簡素な構成で酸化発熱層での酸化反応に必要な酸化性ガスを供給することができるからである。なお、本発明の酸化自己熱型改質装置においては、改質触媒として耐酸化性の劣る触媒を利用することができるよう、酸化性ガス供給管は閉じられた端部側まで延在していなければならない。即ち、酸化性ガス供給管からの酸化性ガスの噴き出し位置は改質層より下流側(酸化発熱層側)に位置していなければならない。
【0018】
また、本発明の酸化自己熱型改質装置は、前記改質触媒がRuを含んでいることが好ましい。本発明の酸化自己熱型改質装置では、酸化発熱層が改質層の後段側に位置しているので、耐酸化性は劣るものの活性が高く、コーキングを発生させ難い長寿命なRu系触媒を使用することができるからである。
【0019】
更に、本発明の酸化自己熱型改質装置は、前記原料が、軽油、灯油、ガソリンおよびナフサからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの原料は、炭素数が大きいと共に、取り扱いおよび保管が容易で、且つ、安価で入手することができるからである。
【0020】
また、本発明の燃料電池システムは、上述した酸化自己熱型改質装置と、前記酸化自己熱型改質装置から排出された改質ガスを燃料として利用する燃料電池と、前記燃料電池から排出されるオフガスを燃焼してオフガス燃焼ガスを生じる燃焼装置とを備え、前記高温燃焼ガスが前記オフガス燃焼ガスであることを特徴とする。このように、燃料電池から排出されるオフガスを燃焼した際に生じるオフガス燃焼ガスを高温燃焼ガスとして改質反応に利用すれば、発電効率を高めることが可能となる。
【0021】
そして、本発明の燃料電池システムは、上述した酸化自己熱型改質装置と、前記酸化自己熱型改質装置から排出された改質ガスを燃料として利用する燃料電池と、前記燃料電池から排出されるオフガスを燃焼してオフガス燃焼ガスを生じる第1の燃焼装置と、炭化水素または脂肪族アルコールを燃焼してバーナー燃焼ガスを生じる第2の燃焼装置とを備え、前記高温燃焼ガスが前記オフガス燃焼ガス及び/または前記バーナー燃焼ガスであることを特徴とする。このように、上述した酸化自己熱型改質装置を用いれば、燃料電池システムの省スペース化および低コスト化を図ることができる。また、炭化水素または脂肪族アルコールを燃焼してバーナー燃焼ガスを生じる第2の燃焼装置を設けることにより、燃料電池の運転状況に影響を受けることなく反応管を加熱することができる。なお、本発明において、第1の燃焼装置と第2の燃焼装置とは、別々の燃焼装置であっても良いし、オフガスと、炭化水素または脂肪族アルコールとの双方を燃焼することができる単一の燃焼装置であっても良い。
【0022】
ここで、本発明の燃料電池システムは、前記燃料電池が固体酸化物形燃料電池であることが好ましい。燃料電池として固体酸化物形燃料電池を用いた場合、発熱する固体酸化物形燃料電池からの輻射熱も酸化発熱層の加熱および改質層での改質反応に利用することができるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の酸化自己熱型改質装置によれば、安価で製造することが可能であると共に、外部から供給される熱を効率的に利用することで改質効率を向上させることが可能な、構造が簡単な酸化自己熱型改質装置を提供することができる。また、本発明の燃料電池システムによれば、発電効率を高めることが可能な燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の酸化自己熱型改質装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す酸化自己熱型改質装置を断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、本発明の酸化自己熱型改質装置の一例を示す斜視図であり、図2は、図1に示す酸化自己熱型改質装置100の断面を示す説明図である。そして、図1および図2に示す酸化自己熱型改質装置100は、例えば、燃料電池の燃料となる改質ガスの製造に用いることができ、本実施形態では、酸化自己熱型改質装置100は、固体酸化物形燃料電池を用いた燃料電池システムの一部に用いられている。
【0026】
ここで、図1および2に示すように、酸化自己熱型改質装置100は、3本の反応管110と、該反応管110の下部に設けられた流路部としてのマニホールド120とを備えており、原料および水蒸気の混合物を改質して水素を主成分とする改質ガスを生成するために用いられる。そして、この酸化自己熱型改質装置100の反応管110は、加熱手段としての燃焼装置(図示せず)から排出される燃焼ガスと、固体酸化物形燃料電池からの輻射熱により加熱される。なお、本発明の酸化自己熱型改質装置において、反応管の数は任意の数とすることができ、また、マニホールドの形状およびマニホールド上の反応管の配置も任意の形とすることができる。具体的には、マニホールド上の反応管の配置は、直線、L字形、V字形、U字形、波形、円形、三角形、四角形、五角形、六角形、その他の多角形、ジグザグ形などとすることができる。或いは、反応管は、マニホールド上に複数列に配置しても良い。更に、マニホールドの平面形状(反応管側から見た形状)は、上記の反応管の配置に応じて適当な形状とすることができ、例えば、正方形、長方形、三角形、円形、L字形、V字形、U字形、ジグザグ形などとすることができる。なお、反応管の大きさは、必要な触媒量および燃焼ガスを用いた加熱に必要な表面積に応じて決定することができる。
【0027】
この酸化自己熱型改質装置100の反応管110は、図2に示すように、上側の端部が閉じた外管111と、内管112とを備えた二重管構造を有しており、内管112が下方に突出した逆凸字状をしている。また、反応管110の内管112より内側には、酸化性ガスとしての空気や酸素を供給するための酸化性ガス供給管118が設けられている。そして、外管111と内管112との間の間隙部には酸化触媒からなる酸化触媒層114と、伝熱粒子からなる伝熱粒子層115とで構成された酸化発熱層116が設けられており、内管112内には改質触媒からなる改質層113が設けられている。なお、改質触媒、酸化触媒および伝熱粒子は、外管111および内管112の下部に設けられたメッシュ117により支持されており、このメッシュ117は、改質触媒、酸化触媒および伝熱粒子は通過させないが、原料、水蒸気および改質ガスは通過させるように構成されている。また、外管111および内管112からなる二重管構造は、直径の異なる2つの管を後に詳細に説明するマニホールド120に溶接し固定することで形成されている。
【0028】
ここで、改質層113を構成する改質触媒としては、通常使用されている水蒸気改質触媒を用いることができ、例えば、Ru、Ni、W、Co、Rh、Pt等をアルミナ、シリカ、ジルコニア等の担体に担持した触媒を内管112内に充填して改質層113とすることができる。
【0029】
また、酸化発熱層116の一部を構成する酸化触媒としては、高温で劣化しにくいPt、Pd等を上記担体に担持した酸化触媒等を用いることができ、該酸化触媒の添加量は、改質による吸熱を補い酸化自己熱型改質装置100を熱自立させるのに必要で、且つ、酸化性ガスを完全に反応させられる量以上とすることが好ましい。更に、伝熱粒子としては、酸化触媒を用いた酸化反応により生じた熱を伝熱することが可能な粒子、例えばSiC粒子などを用いることができる。なお、図2に示す酸化自己熱型改質装置100の酸化発熱層116では、伝熱粒子を充填した上に酸化触媒を充填して酸化触媒層114および伝熱粒子層115からなる酸化発熱層116を形成したが、本発明の酸化自己熱型改質装置の酸化発熱層はこれに限定されることはない。具体的には、酸化発熱層は、(1)上述した酸化触媒と、NiやRh等を担持した改質触媒との混合物を外管と内管との間隙部に充填して形成しても良く、(2)酸化触媒と、伝熱粒子との混合物を外管と内管との間隙部に充填して形成しても良く、(3)酸化触媒と、改質触媒と、伝熱粒子との混合物を外管と内管との間隙部に充填して形成しても良い。
【0030】
酸化性ガス供給管118は、酸化反応に用いる酸化性ガスを酸化発熱層116の酸化触媒に供給できるものであれば特に制限はないが、改質層113の改質触媒が酸化性ガスにより劣化しないように、改質層113の後段側に酸化性ガスの噴出し口を設けることが好ましい。そして、この酸化自己熱型改質装置100では、酸化性ガス供給管118は、その先端が改質層113の上端から上に突出する長さとされており、該先端には酸化性ガス噴出し口が設けられている。
【0031】
反応管110の下部に設けられたマニホールド120は、反応管110の外管111と内管112との間の間隙部から改質ガスを排出するための改質ガス排出流路121と、反応管110の内管112へ原料および水蒸気の混合物を供給するための混合物供給流路122と、酸化性ガス供給管118を介して酸化発熱層116へ酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給流路123とからなる。そして、図2に示すように、このマニホールド120の改質ガス排出流路121、混合物供給流路122および酸化性ガス供給流路123は、3本の反応管110に共通した流路となっている。なお、改質ガス排出流路121は反応管110の外管111と内管112との間の間隙部と連通しており、混合物供給流路122は内管112と連通しており、酸化性ガス供給流路123は酸化性ガス供給管118と連通している。
【0032】
また、マニホールド120は、上側から順に改質ガス排出流路121、混合物供給流路122、酸化性ガス供給流路123が一体的に積層した構造を有しているので、反応管110の外管111とマニホールド120との接続部124までの距離は、改質ガス排出流路121が最も近く、次に混合物供給流路122が近く、酸化性ガス供給流路123が最も遠い。なお、上記接続部124までの距離の比較は、例えば、マニホールド120の鉛直方向同位置で、各流路の高さ方向中心(図2の点A,B,C参照)からの距離を比較することにより行うことができる。
【0033】
更に、マニホールド120では、混合物供給流路122内へ混合物が供給される入口部と、改質ガス排出流路121から改質ガスが排出される出口部とが、反応管110を挟んでマニホールド120のそれぞれ反対側に位置している。このようにすれば、各反応管110への混合物の分配を概ね均一にすることができる。
【0034】
また、マニホールド120では、酸化性ガス供給流路123内へ酸化性ガスが供給される入口部も、改質ガス排出流路121の出口部とは反対側、即ち混合物供給流路122の入口部と同じ側に位置している。このようにすることは、各反応管110への酸化性ガスの分配を均一にすることができるという観点から好ましい。
【0035】
反応管110を加熱する燃焼ガスを生成する燃焼装置(図示せず)としては、既知の燃焼装置を用いることができる。そして、この燃焼装置から排出された高温(500℃以上。好ましくは、500℃以上1000℃以下)の燃焼ガスは、反応管110の上方から下方へ向けて吹き付けられ、酸化発熱層116出口での改質ガスの温度を高温に維持するための熱や、反応管110内の改質層113における改質反応に必要な熱を供給するのに用いられる。なお、上記燃焼装置において燃焼ガスを生成する際に燃焼させるものとしては、炭化水素、脂肪族アルコール、燃料電池から排出されるオフガスが挙げられ、発電効率の向上という観点からは、燃料電池の運転時にはオフガスを用い、燃料電池の始動時や停止時のみ、炭化水素や、脂肪族アルコールを用いることが好ましい。
【0036】
上述した酸化自己熱型改質装置100に供給する原料としては、炭化水素および脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも一種の原料を用いることができ、炭化水素及び脂肪族アルコールとしては、特に限定されるものではなく、炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン等のガス、軽油、ガソリン、ナフサ、灯油等の液体燃料を用いることができ、脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール等を用いることができる。なお、原料としては、これらの中でも、炭素数の大きい炭化水素、即ち、軽油、ガソリン、ナフサ、灯油が好ましく、灯油が特に好ましい。また、原料と混合する水蒸気は、熱交換器などを用いて水を蒸発させて得ることができる。そして、これら原料および水蒸気は、図示しない混合器で混合した後に酸化自己熱型改質装置100へと供給することができる。
【0037】
そして、酸化自己熱型改質装置100では、混合物供給流路122を介して供給された原料および水蒸気の混合物を改質層113において例えば温度400〜800℃で改質することにより、水素を主成分とする改質ガスが製造される。具体的には、図2に示す通り、反応管110に供給された混合物は、改質層113をアップフローで通り改質された後、反応管110上部の閉じた端部で折り返して外管111と内管112との間の間隙部内に入り、酸化発熱層116をダウンフローで通って改質ガス排出流路121から排出される。ここで、改質層113における改質反応に必要な熱量は、上述した燃焼ガス等により外部から供給され得るが、燃料電池の始動時や急激な負荷変動時など熱量が不足する場合には、酸化発熱層116に酸化性ガスを供給し、混合物の改質により生じた改質ガスや原料の一部を酸化させて得た熱を利用しても良い。
【0038】
なお、酸化自己熱型改質装置100で生成した改質ガスは、複数のセルを積み重ねてなる通常の固体酸化物形燃料電池に供給され、燃料として利用される。ここで、固体酸化物形燃料電池は、700〜800℃の高温で運転するため、酸化自己熱型改質装置100を適当な位置に配置すれば、固体酸化物形燃料電池からの輻射熱も反応管110の加熱に用いることができる。また、上述した通り、固体酸化物形燃料電池から排出されるオフガスは燃焼装置での燃焼ガスの生成に利用することができる。
【0039】
上述したような酸化自己熱型改質装置100によれば、反応管110内の酸化発熱層116が反応管110の表面側に位置しているので、外部から供給される熱を効率的に利用し、水素含有量が高い、高温の改質ガスを排出することができる。また、燃焼ガスを用いて反応管110の改質層113にも熱を供給しており、燃料電池の始動時や急激な負荷変動時などの改質反応に必要な熱量が不足する場合にのみ酸化発熱層116で原料や改質ガスを酸化すれば良いので、酸化性ガスを常に供給する必要が無く、改質効率を向上させることができる。更に、反応管110は二重管構造であるので、酸化自己熱型改質装置100は低コストで容易に製造することができる。
【0040】
また、上述したような酸化自己熱型改質装置100を備える燃料電池システムによれば、オフガスを燃焼させて酸化自己熱型改質装置へ熱を供給しているので、発電効率を向上させることができる。
【0041】
なお、本発明の酸化自己熱型改質装置は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、例えば、酸化性ガスは、反応管の上部側から供給するようにしても良い。また、酸化性ガスを、反応管1本に対し複数本の配管で供給するようにしても良い。更に、酸化性ガスを、反応管の側面から挿入した配管を用いて供給するようにしても良い。
【符号の説明】
【0042】
100 酸化自己熱型改質装置
110 反応管
111 外管
112 内管
113 改質層
114 酸化触媒層
115 伝熱粒子層
116 酸化発熱層
117 メッシュ
118 酸化性ガス供給管
120 マニホールド
121 改質ガス排出流路
122 混合物供給流路
123 酸化性ガス供給流路
124 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素および脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも一種の原料と水蒸気との混合物の改質反応により水素を主成分とする改質ガスを生成する改質層と、前記原料または前記改質ガスの一部を酸化して熱を発生させる酸化発熱層とを有する反応管と、
前記酸化発熱層に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給手段と、
前記反応管の外周に高温燃焼ガスを接触させて該反応管内を加熱する加熱手段と、
を備える酸化自己熱型の改質装置であって、
前記反応管は、一端が閉じられ、且つ、該閉じられた端部において内管と外管とが連通する二重管構造を有し、
前記酸化発熱層は、少なくとも一部に酸化触媒が充填されており、且つ、前記外管と前記内管との間隙部に位置し、
前記改質層は、少なくとも一部に改質触媒が充填されており、且つ、前記内管内に位置し、
前記反応管の前記内管内に前記混合物を供給する混合物供給流路と、前記間隙部から改質ガスを排出する改質ガス排出流路とを更に備えることを特徴とする、酸化自己熱型改質装置。
【請求項2】
前記反応管の前記一端とは反対側の他端に、前記混合物供給流路および前記改質ガス排出流路を有する流路部を備え、
前記他端では、前記混合物供給流路が前記内管に接続していると共に、前記改質ガス排出流路が前記間隙部に接続しており、
前記流路部では、前記改質ガス排出流路が、前記混合物供給流路より前記外管と前記流路部との接続部に近い側に位置していることを特徴とする、請求項1に記載の酸化自己熱型改質装置。
【請求項3】
前記反応管を複数本有し、
各反応管の混合物供給流路と、改質ガス排出流路とがそれぞれ共通していることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸化自己熱型改質装置。
【請求項4】
前記混合物供給流路への前記混合物の入口部と、前記改質ガス排出流路からの前記改質ガスの出口部とが、それぞれ前記反応管を挟んで反対側に位置していることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の酸化自己熱型改質装置。
【請求項5】
前記加熱手段が、前記高温燃焼ガスを前記一端から前記他端へ向かう方向へ流して前記反応管内を加熱することを特徴とする、請求項2〜4の何れかに記載の酸化自己熱型改質装置。
【請求項6】
前記酸化性ガス供給手段が、前記内管の内側に配置されて前記反応管の前記改質層より前記一端側まで延在する酸化性ガス供給管であることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の酸化自己熱型改質装置。
【請求項7】
前記改質触媒がRuを含んでいることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の酸化自己熱型改質装置。
【請求項8】
前記原料が、軽油、灯油、ガソリンおよびナフサからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の酸化自己熱型改質装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の酸化自己熱型改質装置と、
前記酸化自己熱型改質装置から排出された改質ガスを燃料として利用する燃料電池と、
前記燃料電池から排出されるオフガスを燃焼してオフガス燃焼ガスを生じる燃焼装置と、
を備え、
前記高温燃焼ガスが前記オフガス燃焼ガスであることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
請求項1〜8の何れかに記載の酸化自己熱型改質装置と、
前記酸化自己熱型改質装置から排出された改質ガスを燃料として利用する燃料電池と、
前記燃料電池から排出されるオフガスを燃焼してオフガス燃焼ガスを生じる第1の燃焼装置と、
炭化水素または脂肪族アルコールを燃焼してバーナー燃焼ガスを生じる第2の燃焼装置と、
を備え、
前記高温燃焼ガスが前記オフガス燃焼ガス及び/または前記バーナー燃焼ガスであることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項11】
前記燃料電池が固体酸化物形燃料電池であることを特徴とする、請求項9または10に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−235348(P2010−235348A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82980(P2009−82980)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】