説明

酸化触媒、吸着材及び有害物質浄化材

【課題】Ptを用いずとも有害物質を酸化することが可能な、酸化触媒を提供すること。
【解決手段】遷移金属化合物及び窒素含有有機物、又は、遷移金属化合物、窒素含有有機物及び窒素非含有炭素化合物、を焼成させてなる炭素材料から構成され、NO、CO、NH及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれる対象物質の少なくとも1種を酸化する、酸化触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化触媒、吸着材及び有害物質浄化材に関する。
【背景技術】
【0002】
有害物質を除去するために、種々の触媒や吸着材が用いられている。例えば、特許文献1には、白金化合物を担持した光触媒により、強い刺激臭を持つ悪臭化合物であるアンモニアを分解できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−55747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、有害物質を酸化して除去する触媒には、その酸化活性を高く保持するために、Ptが担持されている場合が多い。しかし、Ptは非常に高価であり、埋蔵量も少なく資源制約があることから、長期に亘って安定的な供給がなされない可能性がある。
【0005】
また、有害物質を吸着して除去する吸着材として、例えば活性炭があるが、活性炭を製造するためには、炭素化工程の後に、より大きい表面積を形成させるための賦活工程が必要となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、Ptを用いずとも、有害物質を酸化することが可能な、酸化触媒を提供することにある。本発明の目的はまた、活性炭のような賦活工程を経なくても有害物質を吸着できる吸着材、有害物質の浄化が可能な有害物質浄化材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(i)又は(ii)を焼成させてなる炭素材料から構成され、NO、CO、NH及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれる対象物質(酸化対象化合物)の少なくとも1種を酸化する酸化触媒を提供する。
(i)遷移金属化合物及び窒素含有有機物
(ii)遷移金属化合物、窒素含有有機物及び窒素非含有炭素化合物
【0008】
炭素材料としては、フタロシアニン含有フラン樹脂を熱処理して粉砕したカーボンアロイ微粒子が、燃料電池用の電極の基材として使用可能なことが特開2004−362802号公報に示されているが、上記(i)又は(ii)を焼成させてなる炭素材料が、酸化作用を有し、NO、CO、NH又は芳香族炭化水素用酸化触媒として有用であるという知見が今回新たに見出された。
【0009】
上記酸化触媒は、上記対象物質を10℃以上で酸化することが好ましい。
【0010】
本酸化触媒は低温における活性が高く、10℃以上という低温環境においても、対象物質であるNO、CO、NH又は芳香族炭化水素を酸化することができる。
【0011】
また、本酸化触媒は、上記対象物質のうち芳香族炭化水素については、200℃以上で酸化することが好ましい。
【0012】
温度が200℃以上であると、本酸化触媒の活性が向上し、芳香族炭化水素を酸化する能力が格段に優れるようになる。
【0013】
上記酸化触媒は、炭素材料に担持された、Pd、Rh、Ni、Co、Fe、Ce、Cu、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Bi、Mn及びその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の担持材料をさらに備えるようにしてもよい。
【0014】
上記担持材料を担持することによって、酸化触媒の活性がさらに向上し、特に芳香族炭化水素等の酸化能力が極めて良好になる。
【0015】
また、本発明は、以下の(i)又は(ii)を焼成させてなる炭素材料から構成され、NO、NO、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドからなる群より選ばれる対象物質(吸着対象化合物)の少なくとも1種を吸着する吸着材を提供する。
(i)遷移金属化合物及び窒素含有有機物
(ii)遷移金属化合物、窒素含有有機物及び窒素非含有炭素化合物
【0016】
上述のように、本炭素材料は、酸化作用を有することのみならず、吸着作用を有し、NO、NO、ホルムアルデヒド又はアセトアルデヒド用吸着材として有用である。
【0017】
上記吸着材は、上記対象物質を10℃以上で吸着することが好ましい。
【0018】
本吸着材は、低温における吸着力が高く、10℃以上という低温環境においても、対象物質であるNOやNO、ホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドを吸着することができる。
【0019】
本発明はまた、上述した酸化触媒及び吸着材の少なくとも一方を含む、有害物質浄化材を提供する。なお、本発明においては、有害物質は悪臭化合物を含むものとする。本発明の酸化触媒や吸着材を、有害物質浄化材として適用することで、有害物質を高い効率で浄化することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、Ptを用いずとも、有害物質を酸化することが可能な、酸化触媒を提供することができる。また、活性炭のような賦活工程を経なくても、有害物質を吸着できる吸着材を提供することができる。これにより、有害物質を除去することが可能な、浄化材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】NO、CO、NH又は芳香族炭化水素の濃度を測定する装置の概略図である。
【図2】測定する装置における反応管の概略図である。
【図3】実施例1のNO等の濃度とNOの吸着・脱着挙動を示す図である。
【図4】実施例2の温度別のCOの転化率の比較を示す図である。
【図5】実施例3の温度別のNHの転化率の比較を示す図である。
【図6】実施例4の温度別のトルエンの転化率の比較を示す図である。
【図7】比較例1のNO等の濃度とNOの吸着・脱着挙動を示す図である。
【図8】比較例2のNO等の濃度とNOの吸着・脱着挙動を示す図である。
【図9】各浄化材上でのNO収率及びNO吸着量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態の酸化触媒又は吸着材を構成する炭素材料は、以下の(i)又は(ii)を焼成させてなる。このような炭素材料はその炭素骨格に窒素原子がドープし、遷移金属元素を含有しているカーボンアロイ材であり活性が高い。
(i)遷移金属化合物及び窒素含有有機物
(ii)遷移金属化合物、窒素含有有機物及び窒素非含有炭素化合物
【0023】
上記炭素材料を生成する上で、窒素含有有機物が窒素源としてだけでなく、炭素源として十分に炭素を含有している場合には、上記(i)を原料とし、炭素源がより必要な場合には、上記(ii)を原料として焼成する。
【0024】
ここで、窒素非含有炭素化合物としては、特に制限されないが、例えば、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリフルフリルアルコール、フラン樹脂、フェノール樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、ピッチ、ポリ塩化ビニリデン、ポリメタクリル酸等の汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチック、ポリスルフォン等のスーパーエンジニアリングプラスチック、又はアイオノマー樹脂等を用いることができる。また石炭などの無機物を用いることもできる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でもコスト、炭素化収率の観点から、ポリメタクリル酸が好ましい。
【0025】
また、窒素含有有機物としては、例えば、ポリピロール等のピロール化合物、フタロシアニン錯体、ポリイミド、ポリカルボジイミド等のイミド化合物、ポリアミド等のアミド化合物、ポリイミダゾール等のイミダゾール化合物、リグニン、バイオマス、ポリビニルピリジン、メラミン樹脂、ユリア樹脂、キレート樹脂、フミン酸、ポリアニリン、ポリアクリロニトリル、ε-カプロラクタム、タンパク質等を用いることができ、この中でもε-カプロラクタムが好ましい。
【0026】
遷移金属としては、周期表の3族から12族の第4周期に属する元素を用いることができ、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)が好ましく、遷移金属化合物としては、上記遷移金属の塩、水酸化物、酸化物、窒化物、硫化物、炭素化物、錯体、高分子錯体を用いることができ、このうち特に、塩化コバルト、酸化コバルト、フタロシアニンコバルト、塩化鉄、酸化鉄、フタロシアニン鉄が好ましい。Co,Fe,Mn,Ni,Cu,Ti,Cr,Zn及びその化合物は、炭素触媒の触媒活性を向上させる。
【0027】
上記(i)又は(ii)は、溶媒に溶解させて混合させることにより前駆組成物にしてもよい。溶媒は、これらの窒素非含有炭素化合物、窒素含有有機物及び遷移金属化合物を溶解させることができるものであれば特に制限されないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどを用いることができる。
【0028】
また、上記(i)又は(ii)の混合物にカーボンブラック等の炭素添加物を加えることも好ましい。炭素添加物を加えることによって、炭素材料の活性能を向上させることができる。
【0029】
上記(i)又は(ii)を焼成する際には、生成される炭素材料への不純物の混入を防ぐために、窒素等でパージされた不活性雰囲気で焼成することが好ましい。
【0030】
また、生成された炭素材料は、ボールミル等の粉砕で微粒子化することができる。さらに、目開きの異なる篩いを用い、粗大物を取り除き、均一な微粒子にすることによって、炭素材料の表面積が増大し、浄化材としての活性が向上する。
【0031】
窒素非含有炭素化合物と窒素含有有機物の配合割合は、焼成後の炭素材料中の窒素原子量が、炭素材料の全重量に対し、0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上20質量%以下となるように配合することが好ましい。
【0032】
上記(i)、(ii)、又はそれらを溶媒に溶解させて混合させた前駆組成物の炭素化処理は、800〜1000℃で0.5〜2時間行うことが好ましく、特に900℃〜1000℃で0.5〜2時間行うことが好ましい。
【0033】
また、本炭素材料には、ホウ素原子及び/又はカルコゲン化合物をドープさせてもよい。ホウ素原子及び/又はカルコゲン化合物をドープした炭素材料は、窒素原子をドープする炭素材料よりも活性が向上する。ホウ素原子及び/又はカルコゲン化合物を炭素材料にドープさせるには、ホウ素含有有機物として、例えばホウ酸、ホウ酸塩、ハロゲン化ホウ酸塩などを、カルコゲン化合物として酸化物、硫化物などを、上記(i)又は(ii)の混合物に加えればよい。
【0034】
本酸化触媒は、室温においても、NOを酸化することができる。NOの酸化の温度は10℃以上が好ましいが、10℃以上25℃以下とすると転化率が向上する。
【0035】
また、10℃前後においても、COを酸化することができる。COの酸化の温度は10℃以上が好ましいが、100℃以上になると活性が向上することによってCOからCOへの転化率が向上し、150℃以上になるとさらに転化率が向上し、200℃以上になると転化率はほぼ100%になり、ほぼ完全にCOを浄化できる。
【0036】
NHについても10℃前後において酸化することができる。NHの酸化の温度は10℃以上が好ましいが、100℃以上になると活性が向上することによってNHの転化率が向上し、200℃以上になるとさらに転化率が向上し、400℃以上になると転化率はほぼ100%になり、ほとんど完全にNHを浄化できる。
【0037】
また、本酸化触媒は、好ましくは10℃以上、より好ましくは200℃以上の酸化雰囲気において、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を酸化することができる。250℃以上になると芳香族炭化水素の転化率が向上し、300℃以上になると、さらに転化率が向上する。350℃以上になると転化率はほぼ100%になり、ほとんど完全に炭化水素を浄化できる。
【0038】
なお、上記で述べた、NO、CO、NH又は芳香族炭化水素の酸化における温度と転化率の関係は、触媒量によって変動する。つまり、触媒量を調整することによって、酸化能が向上し、より低い温度で転化率を向上させることができる。例えば、COについても、本炭素材料からなる酸化触媒の量を調整することによって、常温においてほぼ完全にCOを酸化除去することが可能となる。
【0039】
また、本酸化触媒は、上述したNO、CO、NH又は芳香族炭化水素以外の有害物質を酸化して浄化することができ、例えば、硫化水素(HS)やメルカプタン化合物も酸化することができる。なお、硫化水素については酸化後に発生する硫黄は本炭素材料の表面に吸着すると考えられるが、例えば、本炭素材料を一定時間後に取り替えることによって、酸化触媒として使用することができる。
【0040】
さらに、本触媒は、有害物質の浄化用途に限られず、他のガスに含まれるNO、CO、NH又は芳香族炭化水素等を浄化することもできる。例えば、燃料電池の燃料として、天然ガス等を改質して得た水素に含まれる微量のCOを除去する酸化触媒の用途に適し、燃料電池の燃料極にガスを供給するためのCO除去装置に本酸化触媒を配置し、あるいは本酸化触媒を燃料電池の燃料極触媒と混合して燃料極部分に用いることで、水素中のCOをCOに酸化し、電極触媒の被毒を防止することもできる。
【0041】
本酸化触媒は炭素材料に、Pd、Rh、Ni、Co、Fe、Ce、Cu、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Bi、Mn及びその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の担持材料を担持することによって、上述した対象物質(特に、芳香族炭化水素)の酸化活性を向上させることができる。上記担持材料は、特に、Pd又はRhであると酸化活性が高くなることから好ましい。炭素材料の重量を基準として、Pd又はRhは、0.01〜5重量%の割合で炭素材料に担持されていることが好ましく、0.1〜3重量%担持されていることがより好ましく、0.5〜2重量%担持されていることが特に好ましい。
【0042】
ここで、炭素材料にPd又はRhを担持させる場合には、まず、担持させたい量のPdを含んだPdCl、あるいは担持させたい量のRhを含んだRh(NOの水溶液を調製する。その水溶液に炭素材料を室温で混合させ、1〜5時間攪拌する。その水溶液を70〜100℃で10〜20時間保持し、水分を蒸発させる。その結果得られる金属原子などが担持した炭素材料を十分研磨することによって、Pd又はRhを担持した炭素材料を得ることができる。なお、金属原子などの担持量は、投入した試料量からの簡易計算で求めることができ、精度を高くして分析する場合には、ICP発光分析装置などを用いることもできる。
【0043】
また、本炭素材料は、上述のとおり、有害物質を吸着する吸着材としても機能し、例えば、NO(NO、NO)やホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどが吸着することによって有害物質を浄化することができる。特に、本炭素材料は、10℃以上の室温においても、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド化合物を高濃度に吸着することができ、10℃以上25℃以下においては、さらにその吸着特性が向上する。ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドが本炭素材料に吸着されることを確認するには、例えば、市販のテドラーバック内に本炭素材料とホルムアルデヒドやアセトアルデヒドのガスを封入し、一定時間経過後、ガス検知管でそれらのガス濃度を測定することによって定量分析することができる。
【0044】
図1は、NOCO、NH又は芳香族炭化水素の濃度を測定する装置の概略図である。標準ガスポンベ1、マスフローコントローラー2、反応管3、冷却器5、ガス分析装置6などで構成される測定装置は、まず、標準ガスポンベ1から上記の各ガスを発生させ、マスフローコントローラー2によりガスの流量が制御され、反応管3へ導入される。そして、ガスが入った反応管3が必要に応じて電気加熱炉4により加熱される。各ガスは反応管3内の酸化触媒10により酸化される。反応後のガスは、冷却器5において水蒸気が抜かれた後、ガス分析装置6で組成が分析される。ガス分析装置6は、例えば、ガスクロマトグラフィーで、O2、CO、CO2、トルエンなどの芳香族炭化水素等の定量分析を行うことができ、NO、NO、NO2、CO等は、例えば、NO分析計で定量的に分析することができる。また、NHについては、紫外可視分光光度計で定量分析を行うことができる。
【0045】
図2は、上記測定装置の一部である反応管の概略図である。反応管3は石英でできており、酸化触媒10はその中心部に充填することが好ましい。そして、モデルガスを炭素材料のある部分に分布させるために酸化触媒10の両側に石英砂11や石英ウール12を詰めることもできる。
【0046】
酸化触媒の性能は、以下の算出式により各ガスの転化率として評価することができる。
NO転化率=(入口のNOモル流量−出口のNOモル流量)/(入口のNOモル流量)×100%
CO転化率=(入口のCOモル流量−出口のCOモル流量)/(入口のCOモル流量)×100%
NH転化率=(入口のNHモル流量−出口のNHモル流量)/(入口のNHモル流量)×100%
芳香族炭化水素の転化率=(入口の芳香族炭化水素のモル流量−出口の芳香族炭化水素のモル流量)/(入口の芳香族炭化水素のモル流量)×100%
炭素バランス=(出口の炭素総モル流量−入口の炭素総モル流量)/(入口の炭素総モル流量)×100%
NO2収率=(出口のNO2モル流量)/(入口のNOモル流量+入口のNO2モル流量)×100%
【0047】
上記の転化率は、NOやCO、NHや芳香族炭化水素がどの程度、酸化触媒によって酸化されたかを示しており、転化率は高い方がよく酸化されていることを示し、100%であれば完全にNOやCO、NHや芳香族炭化水素が酸化されたことを示す。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
本実施例で酸化触媒又は吸着材として使用する炭素材料は、以下のように調製した。
【0050】
まず、1.5gのポリメタクリル酸を20gのジメチルホルムアミドに溶解させた。その後、1.5gの酸化コバルト(日清紡ホールディングス製)と1.5gのε-カプロラクタム(東京化成工業株式会社製)、1.5gのn-ブチル化メラミン樹脂(製品名:ユーバン21R、三井化学株式会社)を6時間攪拌して混合溶液を得た。こうして前駆組成物を得た。なお、酸化コバルトは、国際公開第2007/049549号パンフレットに記載の方法に準じて電気透析処理により製造した。
【0051】
次に、前駆組成物の炭素化処理を行った。すなわち、前駆組成物を石英管に入れ、楕円面反射型赤外線ゴールドイメージ炉にて、当該石英管に50分間窒素パージした。そして、加熱を開始し、ゴールドイメージ炉の温度を、1℃/分の昇温速度で室温から900℃まで昇温した。その後、この石英管を900℃で1時間保持した。こうして前駆組成物が炭素化されることにより生成された炭素材料を得た。
【0052】
さらに、炭素材料の粉砕処理を行った。すなわち、遊星ボールミル(製品名:P−7、フリッチュジャパン株式会社)内に1.5cm径の窒化ケイ素ボールをセットし、炭素化処理により得られた炭素材料を回転速度800rpmで60分間粉砕した。粉砕した炭素材料を取り出し、目開き46μmの篩で分級した。
【0053】
上記で得られた炭素材料を内径6mmの石英反応管の中心部に充填し、ガス分布のために炭素材料層の両側にそれぞれ0.5gの石英砂を詰めた。
【0054】
ガスの分析は、ガスクロマトグラフィー(製品名:GC−14B、(株)島津製作所製))でO2、CO、N2O、CO2、炭化水素、トルエン等の芳香族炭化水素等の定量分析を行った。また、NO、NO、NO2、CO、SO2等は、NO分析計(製品名:PG−250、(株)堀場製作所製))で定量分析を行った。また、NH3については、紫外可視分光光度計(製品名:V−530、日本分光社製))で定量分析を行った。
【0055】
(実施例1)
反応管内に上記炭素材料を100mg入れ、1000ppmのNO、15%O2、及びHeからなるガスを室温25℃環境下で反応管に150mL/分で3時間流し、NO、NO等の濃度を測定した。その後、NOの濃度がゼロレベルに戻るまで25℃でHeを150mL/分で流し、反応管をクリーニングした。その後、30℃から10℃/分の割合で600℃まで上昇させ、Heを150ml/分流した。脱着曲線を用いて、積分計算により炭素材料表面に吸着したNO量を算出したその結果を図3に示す。
【0056】
図3のとおり、実験開始から200分後に飽和状態になり、NOの濃度は約600ppmになった。すなわち、室温で60%のNOは炭素材料によりNOへ酸化された。また、炭素材料表面に吸着したNO量を算出したところ、約748μmol/gであった。
【0057】
(実施例2)
反応管内に、上記炭素材料を100mg入れ、2500ppmのCO、15%O2、及びHeからなるガスを反応管へ流し(150mL/分、F/w:90000mL/(g・h))、COの転化率を測定した。その結果を図4に示す。
【0058】
図4のとおり、25℃において19.7%、50℃において17.2%のCOがCOに酸化され、低温における酸化効果を確認した。また、100℃から150℃にかけてはCOの転化率は15.2%から31.1%であったが、200℃においては97.3%、250℃においては99.8%と高いCO転化率を示した。
【0059】
(実施例3)
反応管内に、上記炭素材料を0.1g入れ、2000ppmのNH/Airのガスを反応管へ流し(200mL/分、F/w:120000mL/(g・h))、NHの転化率を測定した。その結果を図5に示す。
【0060】
図5のとおり、常温である25℃付近で5%のNHの酸化が確認でき、100℃では約55%、200℃では約65%のNHの転化率を示した。NHを100%酸化できるのは400℃であった。
【0061】
(実施例4)
反応管内に、上記炭素材料を50mg入れ、500ppmのトルエン/Airのガスを反応管へ流し(30mL/分、F/w:36000mL/(g・h))、トルエンの転化率を測定した。その結果を図6に示す。
【0062】
図6のとおり、トルエンは175℃付近ではわすかしか酸化されず、200℃において3%酸化された。その後温度が上昇するにつれて転化率もゆるやかに上昇し、250℃において17%、275℃において約40%の転化率を示した。
【0063】
(実施例5)
本炭素材料30mgを27℃の環境下で3Lのテドラーバックに収納し、アセトアルデヒドの濃度が20ppmの空気をテドラーバックへ注入した。24時間後、テドラーバック内のアセトアルデヒドの濃度を、ガス検知管(ガステック製)を用いて測定したところ、アセトアルデヒドの濃度は0ppmであり、テドラーバック中のアセトアルデヒドが本炭素材料に吸着され、除去されたことを確認した。
【0064】
(実施例6)
アセトアルデヒドの濃度が20ppmの空気をホルムアルデヒドの濃度が50ppmの空気に代えた以外は実施例5と同様に測定したところ、ホルムアルデヒドの濃度は24時間後には0ppmであり、テドラーバック中のホルムアルデヒドが本炭素材料に吸着され、除去されたことを確認した。
【0065】
(比較例1)
実施例1と同様に、市販のアルミナ材(添川理化学株式会社製)を用いて、NO、NO等の濃度と、NOの吸着、脱着挙動を測定した。図7のとおり、アルミナ材においては、NOは約50ppmとわずかしか酸化されなかった。また、表面に吸着したNO量は約117μmol/gと、実施例1の炭素材料と比較してわずかな量であった。
【0066】
(比較例2)
実施例1と同様に、2.5重量%の白金を担持したPt/アルミナ材を用いて、NO、NO等の濃度と、NOの吸着、脱着挙動を測定した。図8のとおり、Pt/アルミナ材においても、NOは107ppmとわずかしか酸化されなかった。また、表面に吸着したNO量は約532μmol/gと実施例1の炭素材料より少なかった。
【0067】
(比較例3)
実施例1と同様に、1.7重量%のAgを担持した、Ag/アルミナ材を用いて、NO、NO等の濃度と、NOの吸着、脱着挙動を測定した。Ag/アルミナ材においても、NOはわずかしか酸化されなかった。また、図9のとおり、表面に吸着したNO量は約315μmol/gと実施例1の炭素材料より少なかった。
【0068】
(比較例4)
実施例1と同様にして、浄化材を用いない場合のNO、NO等の濃度と、NOの吸着、脱着挙動を測定した。浄化材を用いない場合、NOはわずかしか酸化されなかった。NOの収率は、5.0%であった(図9)。
【0069】
(比較例5)
実施例2と同様に、2.5重量%の白金を担持したPt/アルミナ材を用いて、COの転化率を測定した。図4のとおり、Pt/アルミナ材においては、100℃までの低温領域ではCOの酸化はわずかであった。しかし、150℃以上ではCOは100%COへ酸化された。
【0070】
(比較例6)
実施例3と同様に、1.8重量%の白金を担持したPt/アルミナ材を用いて、NHの転化率を測定した。図5のとおり、Pt/アルミナ材においては、150℃までの領域ではNHの酸化はほとんどみられなかった。しかし、250℃以上ではNHは100%酸化された。
【0071】
(比較例7)
本炭素材料の代わりに、水蒸気賦活活性炭(製品名:白鷺TC、日本エンバイドケミカルズ社製)を用いたこと以外は実施例5と同様に測定したところ、アセトアルデヒドの残存量は10ppmであり、完全にアセトアルデヒドを除去することはできなかった。
【0072】
(比較例8)
本炭素材料の代わりに、水蒸気賦活活性炭(製品名:白鷺TC、日本エンバイドケミカルズ社製)を用いたこと以外は実施例6と同様に測定したところ、ホルムアルデヒドの残存量は30ppmであり、完全にホルムアルデヒドを除去することはできなかった。
【符号の説明】
【0073】
1・・・標準ガスボンベ、2・・・マスフローコントローラー、3・・・反応管、4・・・電気加熱路、5・・・冷却器、6・・・ガス分析装置、10・・・酸化触媒、11・・・石英砂、12・・・石英ウール、13・・・熱電対。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属化合物及び窒素含有有機物、又は、
遷移金属化合物、窒素含有有機物及び窒素非含有炭素化合物、を焼成させてなる炭素材料から構成され、
NO、CO、NH及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれる対象物質の少なくとも1種を酸化する、酸化触媒。
【請求項2】
前記対象物質を10℃以上で酸化する、請求項1に記載の酸化触媒。
【請求項3】
前記対象物質が芳香族炭化水素であり、該芳香族炭化水素を200℃以上で酸化する、請求項1に記載の酸化触媒。
【請求項4】
前記炭素材料に担持された、Pd、Rh、Ni、Co、Fe、Ce、Cu、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Bi、Mn及びその化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の担持材料をさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項5】
遷移金属化合物及び窒素含有有機物、又は、
遷移金属化合物、窒素含有有機物及び窒素非含有炭素化合物、を焼成させてなる炭素材料から構成され、
NO、NO、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドからなる群より選ばれる対象物質の少なくとも1種を吸着する、吸着材。
【請求項6】
前記対象物質を10℃以上で吸着する、請求項5に記載の吸着材。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸化触媒及び請求項5又は6に記載の吸着材の少なくとも一方を含む、有害物質浄化材。







【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−11166(P2011−11166A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158819(P2009−158819)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(591004733)
【出願人】(000158895)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】