酸化触媒を調製する方法及びその方法によって調製された触媒
分散した金属原子を含む酸化セリウムの膜を形成するために、酸化セリウム及び金属物質は、共に、アルゴン大気下で少なくとも一つのターゲットから基板にスパッタされることを特徴とし、酸化セリウム及び、金、白金、パラジウム、スズ、ルテニウムまたはニッケルからなる群より選出される金属を有する酸化触媒を、酸化セリウム及び金属をターゲットから基板までスパッタリングすることによって、調製する方法。特定のAu−CeO2及びPt−CeO2触媒はこの方法を使用することにより調製される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化セリウム及び金、白金、パラジウム、スズ、ルテニウムまたはニッケルからなる群より選出された金属を有する酸化触媒を酸化セリウム及び金属をターゲットから基板までスパッタリングすることによって調製するための方法に関する。さらに、本発明は、同様の方法で調製された触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化セリウム、CeO2及び金属の組合せを基にした酸化触媒は、非特許文献にも特許文献にも報告されている。
【0003】
Science(2003)に掲載されたFuらの研究は反応生成物として二酸化炭素と水素を産する水の一酸化炭素との反応に用いるCeO2−Au触媒の触媒活性について記載する。これは、炭化水素の改質による水素の生成や直接メタノール型燃料電池(DMFC)におけるメタノール及びエタノールの酸化に重要な反応である。この研究において、共沈法及びCeO2表面への金の塗布という伝統的な技術によって調製された粉末状のCeO2−Au触媒システムが使用された。
【0004】
EP1724012A1の特許出願は、5〜20nmの平均一次粒子径また同様にそのような結晶体の団粒が20〜100nmのサイズであるCeO2結晶体上に蒸着させた金触媒について記載する。
【0005】
EP1920831A2の特許出願は、1つの金属としてはCe、もう1つの金属として、Ga、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Yt、Zr、Mo、Ag、La、Pr、NdまたはAuの2つの金属酸化物の混合による組合せに基づいたディーゼルエンジンの排気ガスにおける固体粒子の酸化に用いる触媒について記載する。所望した組成の触媒物質は液体溶液からの沈殿によって調製される。
【0006】
他の複数の特許出願は、他の金属とCeO2の組合せを利用した酸化触媒を取り扱う。すなわち、EP1676625A1、EP1683574A1、EP1787719A2、EP1889651A1、EP1852181A1、及びWO2005/100249A1である。それらの出願において、触媒は伝統的な製法、例えば溶液からの沈殿、によって生成される。
【0007】
幾つかの触媒物質はスパッタリングによって調製される。この技術において、高エネルギーイオン、一般にアルゴン、によってターゲット物質から飛散した粒子(原子、分子)の流出で薄膜は基板上に蒸着する。Sputter Deposition、AVS Education Committee Book Series、Vol.2(2003) ISBN 0−7354−0105−5に掲載されたW.D.Westwoodの研究はあらゆる種類のスパッタリング技術について記載する。多くの場合、マグネトロンと呼ばれる装置がスパッタリングに使用される。
【0008】
EP0682982A2の特許出願は一体化した酸化基板上に基底金属の中間膜を蒸着させることによって触媒活性金属の付着力を高め得る方法について記載する。基底金属は希土類中の金属元素またはマンガンのいずれかである。触媒活性貴金属(この場合白金)はこの膜上に蒸着させる。
【0009】
上記触媒の主要な欠点としては、触媒活性が低過ぎることまた、貴金属(主に金及び白金)の含有量が高すぎることのいずれかがある。さらに、CeO2と貴金属を含む粉末の触媒は、CeO2中の活性金属の分散度が低過ぎることに苦慮する。前述の触媒の別の一般的な欠点は被毒に対する抵抗性が低いことである。
【0010】
周知の金属−CeO2触媒を調製する技術では、例えば、直接型燃料電池におけるメタノールまたはエタノールの酸化において使用されるのに十分活性のある触媒を生産することができない。
【0011】
貴金属の過度な使用はその様な触媒の生産費の増加を齎す。貴金属の含有量の多い触媒の大量生産は環境にも負荷がかかる。
【発明の開示】
【0012】
本発明は、貴金属の含有量が実質的により低いことを求める一方、従来の触媒物質と比べ、同等、またはより高い触媒活性を示す触媒を供給することを目的とする。本発明は、例えば、微量なCOを含む工業生産された水素ガスにおいて、除去するためにはとても高価となる一酸化炭素の存在に対し高い耐性を特徴とする、水素燃料電池に用いる高活性触媒を供給することを他の目的とする。さらに本発明は、エンジンがガスを排出する燃焼方式を改善する際に、水の一酸化炭素との反応による水素の発生過程に応用できる触媒、及び、多くの他の化学反応に触媒作用を及ぼすことに応用できる触媒を供給することを他の目的とする。
【0013】
分散した金属原子を含む酸化セリウムの膜を形成するために、酸化セリウムと金属物質は少なくとも一つのターゲットから同時に基板にスパッタされることを特徴とする、酸化セリウム及び金、白金、パラジウム、スズ、ルテニウムまたはニッケルからなる群より選出された金属を含む酸化触媒を、酸化セリウム及び金属をターゲットから基板までスパッタリングすることにより調整する方法によって本発明の目的は成し遂げられ、記載した欠陥を克服した。
【0014】
あるいは、酸化セリウムは一ターゲットから、金属物質は別のターゲットから基板へ同時にスパッタリングされるかもしれない。これにより、要求された特定の構造及び特性の触媒を得るためにスパッタリング過程の調整を改善することが可能になる。
【0015】
記載の方法により、基板上のその成膜中に金属原子を用いた酸化セリウム薄膜を継続的にドーピングし、酸化セリウム膜内に金属を原子レベルで分散させることが可能になり、金属原子がイオンの形で存在するようになる。
【0016】
さらに、この方法により、酸化セリウムとの金属原子の相互作用、その高い触媒活性及び、例えば燃料電池内で反応中の水素に含まれる一酸化炭素の存在に対する耐性のように触媒毒に対する高い抵抗力が達成される。
【0017】
下記の記述は本発明により調製され得る金又は白金/CeO2触媒の様々な特定の実施形態について言及する。
【0018】
酸化セリウム膜の表面に金が1〜20nmの大きさのクラスターの形態で分散されたAu−CeO2触媒。この詳細な実施形態において、触媒の界面活性は上記で述べたように有意に改善される。
【0019】
Au+1及びAu+3カチオンの形態の金を、触媒内の金の総量の25〜99重量%有するAu−CeO2触媒。その様な触媒は触媒の薄膜膜の表面及び内部の両者で高い触媒活性を示す。この機能強化は触媒に存在する金のイオン性に起因する。
【0020】
Au+1及びAu+3カチオンの形態の金を、Au−CeO2膜の原子総量の0.01〜4原子重量%有するAu−CeO2触媒。この場合、触媒内の物質の総量に対するAu+1及びAu+3のカチオンの原子濃度は4原子%未満に維持され、触媒生産中の金の消費は実質的に減少するが、触媒活性は高い状態のままである。
【0021】
Pt+2及びPt+4カチオンの形態の白金を、触媒内の白金の総量の30〜100重量%有するPt−CeO2触媒。
【0022】
イオン形態の白金が高濃度で存在するため、例えば直接水素燃料プロトン交換燃料電池内で進行している反応等、いくつかの化学反応では、高選択性の触媒活性が達成される。
【0023】
Pt+2及びPt+4カチオンの形態の白金を、Pt−CeO2膜の原子総量の0.01〜4原子重量%有するPt−CeO2触媒。例え触媒の生産中の白金の消費が実質的に減少したとしても、前述の金触媒の場合のように、触媒活性は高いままである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の詳細を以下の絵や図によって記載する。
【図1a】単一の複合ターゲットとスパッタリング装置(マグネトロン)の概略横断面図である。
【図1b】2つの単一ターゲットを含む2つのマグネトロンの概略横断面図である。
【図2】酸化セリウム膜内の金属原子の図表示である。
【図3】酸化セリウム内の金属原子の別の図表示である。
【図4a】ドープされた金以外の触媒の表面形態の顕微鏡画像である。
【図4b】Au−CeO2触媒の表面形態の顕微鏡画像である。
【図4c】Au−CeO2触媒の厚さを示す顕微鏡画像である。
【図5】Pt−CeO2触媒の表面形態の顕微鏡画像である。
【図6】燃料電池の概略断面図である。
【図7】Pt/Ru参照触媒を用いた燃料電池の比出力の図を表す。
【図8】Pt−CeO2触媒、試料Hを用いた燃料電池の出力の図を表す。
【図9】Au−CeO2触媒の光電子スペクトル(XPS)を示す。
【図10】Pt−CeO2触媒の光電子スペクトル(XPS)を示す。
【図11】Au−CeO2触媒試料メタノールを用いた燃料電池の比出力の図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例1
酸化物及び金属の高周波スパッタリングを行うための装置として、マグネトロンとも呼ばれるスパッタリング装置を、図1a及び図1bの概略横断面図にて示す。
【0026】
図1aで示したマグネトロンはCeO2板10及びCeO2板10上の金属物質12からなるいわゆる複合ターゲットを有する。金属物質はワイヤの形状を取り得、金属物質としてAu、Pt、Pd、Sn、Ru、Niの群の中からどれかの金属が使用され得る。触媒の薄膜を徐々に形成するために、アルゴンイオンによってターゲット10及び12からスパッタされた原子の流れ19を、例えばシリコン板のような基板14上に蒸着させる。マグネトロンを高周波AC電源16に接続する。曲線18によって磁力線を表す。0.6Paのとても低いアルゴン圧下で、スパッタリングは行われる。基板14上のCeO2薄膜の蒸着と成長の際に、薄膜はCeO2膜内に分散され与えられた金属原子で継続的にドープされる。仮に、前記金属元素の少なくとも一つでドープされるとすれば、そのような薄膜は高い触媒効率を示す、そのことは実験的に証明された。図1bには、各ターゲットと2つのマグネトロンを有するスパッタリング装置の代替実施形態を示す。左のマグネトロンはCeO2板10ターゲットを有し、右のマグネトロンは金属物質12ターゲットを有する、それらは基板14上に形成された触媒CeO2膜をドープするために設計された。
【0027】
金でドーピングする場合、触媒活性は、光電子分光法(XPS)測定により検出されたAu+1及びAu+3の存在によって示される。周知の触媒物質において、カチオン体の金は全く含まれない、または無視できる程度の密度で存在している。図2及び図3では本発明による、酸化セリウム膜内に分散された金イオンからなる触媒の薄膜の図表示が示されている。金原子22、23、24またはカチオンは各々、高周波のスパッタリングを用いて酸化セリウムCeO2膜21内に拡散される。更なる詳細は以下に記述するが、XPS測定は金属及びイオンの形態の金原子の分布を明らかにする。酸化セリウム膜内に分散する金原子の性質により、それらの原子は1〜20nmの大きさのクラスターの形態で、表面上に分離する傾向がある。走査型電子顕微鏡法を用いて得た図4bの触媒の薄膜の顕微鏡画像において、それらクラスター44ははっきりと確認できる。それらの表面上に、原子形態Au0の原子24として金は存在している。触媒の薄膜内に分散された金がAu+3カチオン22の形態で存在している一方、金イオンはAu+1カチオン23の形態でクラスター内の原子のAu0殻の下に存在している。
【0028】
白金でドーピングする場合、触媒活性は光電子分光法(XPS)測定により検出されたPt+2及びPt+4の存在によって示される。白金のほぼ100%は、イオンの形態で存在し、分光測定では、金属の白金Pt+0の存在を少しも証明しなかった。白金の原子は金ほど速くCeO2内に移動しないため、白金クラスターの形成は金の場合ほど充分ではない。
【0029】
上記触媒の触媒特性は、触媒を直接型燃料電池に統合することによって確認された。触媒を有する燃料電池の仕組みを図6に描く。燃料電池触媒システムの効率測定に用いる基本量はアノード表面のmW/cm2で計測された比出力である。
【0030】
Au−CeO2触媒を用いた燃料電池は、燃料としてのメタノールを用いて、非常に高い比出力を示した。燃料としてメタノールを使用すると、燃料電池内では、金属−CeO2触媒によって触媒される下記化学反応が進行する。
アノード:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e−
カソード:(3/2)O2+6H++6e−→3H2O
【0031】
それに対し、Pt−CeO2触媒を用いた燃料電池はメタノールの場合には高い比出力を示さなかったが、燃料として水素を使用した場合には高い比出力を示した。これは、メタノール分子が金原子23、24と反応するためである。Au1+は触媒薄膜の表面に分離した、それを図2に示す。白金を使用した際、金属原子の表面への移動はさほど実質的ではない。大きなメタノール分子が触媒のPt−CeO2薄膜内に分散することができないため、上記反応は緩慢に進む。代わりに燃料として水素を用いると、金属−CeO2触媒によって触媒された下記化学反応が燃料電池内で進行する。
アノード:H2→2H++2e−
カソード:4H++4e−+O2→2H2O
水素燃料を用いたPt−CeO2燃料電池は、非常に優れた電流特性を示す。それは、アノードの上記反応機構にて述べたように、電子を放出するPt+2及びPt+4のイオンの存在下で反応が行われる場所である、触媒薄膜に小さな水素原子が素早く入り込むことができるためである。水素原子は触媒表面でH2分子の分離によって生成される。
【0032】
本発明による触媒は、以下の方法で調製された。CeO2薄膜の蒸着及び、それらと同時発生の金属(Au、Pt、Pd、Sn、Ru、またはNi)でのドーピングは前述したマグネトロンを使用する非反応性で高周波のマグネトロンスパッタリング技術を用いて、行われた。マグネトロンを配置した仕組みを図1に示す。
【0033】
例2
本比較例において、純物質のCeO2はスパッタされ、一方で、二番目及び三番目の実行においては、CeO2の蒸着膜は金で共にドープされた。スパッタリングは80Wの力をマグネトロンに印加し、シリコンで作られた基板14より90mm離れて配置された5.08cmの直径を有する円形のCeO2板10ターゲットから実施された。スパッタリングは0.6Paの定圧のアルゴン大気下で、基板を室温に保ち、行われた。触媒薄膜の成膜速度は1nm/minであった。蒸着時間は、触媒薄膜の所望の厚さを得る事で決まり、通常20〜60分であった。CeO2薄膜(Auドープしていないもの)の上面図42を図4aに示す。
例3
【0034】
Auワイヤ(直径1mm、長さ10mm)の形状の金属物質は、ラジアル方向にCeO2ターゲット上に配置された。実施形態1では、単一のAuワイヤのみがターゲット上に配置された。実施形態2では、2つの同一の上記のようなAuワイヤがターゲット上に配置された。蒸着条件は例2においてと全く同一であった。
【0035】
実施形態1及び実施形態2で得た金でドープされたCeO2薄膜を有する触媒を異なる実験技術で分析し、燃料電池における該触媒活性を評価した。
【0036】
走査型電子顕微鏡法を用いて、触媒の薄膜の表面形態及び厚さを調査した。図4では、触媒の薄膜上の3つの図を示した。図4cは実施形態2で得た触媒薄膜の断面図41を示す。図4bは同一薄膜の上面図42を示す。図4cにおける薄膜の厚さを走査型電子顕微鏡によって65nmであると計測した。CeO2薄膜表面の多結晶構造は、上面図42より明らかである。図2において図解した金原子23、24のクラスター44は、触媒表面上に形成された。CeO2膜内に分散した金原子の表面に移動するという傾向が金のクラスターの形成を促進する。
【0037】
光電子分光法を用いて、Au−CeO2触媒の特性を調査し、その活性は、メタノールを燃料として使用する燃料電池、いわゆる直接メタノール型燃料電池において実証された。図9にて、Au−CeO2触媒のAu 4fの電子準位の光電子スペクトル(XPS)を示す。このスペクトルは、Au 4f5/2とAu 4f7/2の2つのダブレットから成り、金の化学状態がAu+及びAu3+であることを表す。
【0038】
例4
例3からのAu−CeO2触媒の特性の計測に用いる燃料電池の概略図を図6に描く。それは、プロトンの交換(プロトン膜交換燃料電池、PEM)のために一般的に使用されるナフィオン膜67を用いた、燃料電池である。
【0039】
以下の要素が図示されている:アノード61、カソード62、燃料給入口63、過剰燃料の排出管64、酸素取り入れ口65、未使用の酸素及び水蒸気の排気管66。アノード触媒は、膜67と接触する形で、微細多孔質なGDL(テフロン(登録商標)化した東レのカーボン紙)上に蒸着させた。電圧、電流を板69間で計測した。ナフィオン膜67は、過酸化水素、希硫酸、及び水での煮沸を含む標準的な過程で処理された。燃料電池のカソード62は標準的に調整された。すなわち、炭素基板上のPt粉末をナフィオン溶液と混合し、微細多孔質なGDL(東レのテフロン(登録商標)化したカーボン紙)上に蒸着させた。触媒膜上の白金の含有量は5mg/cm2である。
【0040】
メタノールは燃料として使用され、30ml/minに調整された流量でアノード61に供給された。30ml/minに調節された流量で酸素をカソード62に与えた。計測は摂氏23度で行い、燃料及び酸素は共に大気圧下で供給された。分極V−1曲線を図11に示すが、ここで図のx軸は燃料電池の電圧を表し、左のy軸は燃料電池の電流を表し、右のy軸は燃料電池の出力を表す。電圧曲線を110と表示し、電流曲線を120と表示した。燃料電池内の触媒の全面積は1cm2であった。その特定の触媒で得られた最大出力密度130は、0.67mW/cm2であった。
【0041】
例5
Pt−CeO2物質を用いて、2つの異なる実施形態が達成された。スパッタリングは例2及び例3と同一のマグネトロンを使用する事により実施された。スパッタリング条件も、例2及び例3と同様にした。実施形態3において、ワイヤ状(直径0.5mm、長さ10mm)の単一の白金(Pt)金属物質12は、CeO2板10ターゲット上にラジアル方向に配置され、それを図1bに示す。実施形態4において、上記寸法の2つの同一のPtワイヤをターゲット上に配置した。
【0042】
実施形態3及び実施形態4で得られた白金でドープされたCeO2薄層を有する触媒は、光電子放出分光法を用いて分析され、燃料電池におけるそれらの触媒の活性は、評価された。
【0043】
図5に、カーボンナノチューブによって覆われた燃料電池の微細多孔質なGDL(東レ、テフロン(登録商標)化したカーボン紙)上に蒸着した、実施形態4で得た触媒表面を示す。走査型電子顕微鏡により、画像を取得した。
【0044】
図10に、Pt−CeO2触媒の光電子スペクトル(XPS)を示す。白金原子がPt+2及びPt+4といったイオン体で存在していることはスペクトル分析によって示され得る。
【0045】
燃料電池で使用される、実施形態3及び実施形態4からの触媒の特性は、下記の通りであった。例2及び例3に類似して、プロトン交換のための膜を有する燃料電池は、使用され、それを図6に示す。しかしこの場合、水素は、30.0ml/minに調整された流量で、アノード61に供給される燃料として使用された。カソード62に供給される酸素の流量は、30.0ml/minに調整された。
【0046】
実施形態4で得たPt−CeO2の分極V−1曲線(前述)を図8に描く。燃料電池における触媒の総面積は1cm2であった。出力電圧曲線は81と表示し、出力電流曲線は、82と表示した。実施5からの触媒と共に得た最大電力密度は12.3mW/cm2 83であった。触媒上の白金の含有量は約2.5x10−4mg/cm2であった。Pt−CeO2の厚さ及びその密度からその数値は計算された。上記数値を基に、白金の重量あたりの最大出力電力は70 W/mg(Pt)と決められた。
【0047】
例6
実施形態5の基準値の測定。基準値を得るために、実施形態5は前述の実施形態と同様に、市販の触媒、アノード上にはPtRu(50%Pt ,50%Ru)、カソード上にはPt/C、を用いて、前述の燃料電池で行われた。触媒活性は、実施例5においてと同一の条件下で評価された。実験6からのPtRu参照触媒の分極V−1曲線は図7に描かれた。該触媒で得られた最大電力密度73は、196mW/cm2であった。触媒中の白金の重量あたりの最大出力電力は、39.2mW/mg(Pt/Ru)と決められた。これは、標準PtRu(アノード)及びPt/C(カソード)触媒を用いたプロトン交換膜を有する燃料電池の典型的な文献値である。このように、燃料電池の正確で標準的な機能性が実証された。
【0048】
本発明の例2から5までは、上記方法で調製された金属−CeO2薄膜に基づいた物質の高い触媒活性を明示した。新しいPt−CeO2触媒を使用することにより、燃料電池の明確な出力電力は、標準触媒に比べ、1mgの白金に関し、約3桁高まる。水素を燃料とした燃料電池の場合、本触媒の水素に含有する一酸化炭素に対する高い耐性が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による方法及び触媒は、水の一酸化炭素との反応における水素の生成を目的とし、燃焼機関の排出ガスの改善を目的とし、及び酸化セリウム及び金、白金、Pd、Sn、Ni、Ruの群のうち少なくとも一つの金属の薄膜を有する、別の化学反応の触媒として、
主に燃料電池で使用され得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化セリウム及び金、白金、パラジウム、スズ、ルテニウムまたはニッケルからなる群より選出された金属を有する酸化触媒を酸化セリウム及び金属をターゲットから基板までスパッタリングすることによって調製するための方法に関する。さらに、本発明は、同様の方法で調製された触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化セリウム、CeO2及び金属の組合せを基にした酸化触媒は、非特許文献にも特許文献にも報告されている。
【0003】
Science(2003)に掲載されたFuらの研究は反応生成物として二酸化炭素と水素を産する水の一酸化炭素との反応に用いるCeO2−Au触媒の触媒活性について記載する。これは、炭化水素の改質による水素の生成や直接メタノール型燃料電池(DMFC)におけるメタノール及びエタノールの酸化に重要な反応である。この研究において、共沈法及びCeO2表面への金の塗布という伝統的な技術によって調製された粉末状のCeO2−Au触媒システムが使用された。
【0004】
EP1724012A1の特許出願は、5〜20nmの平均一次粒子径また同様にそのような結晶体の団粒が20〜100nmのサイズであるCeO2結晶体上に蒸着させた金触媒について記載する。
【0005】
EP1920831A2の特許出願は、1つの金属としてはCe、もう1つの金属として、Ga、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Yt、Zr、Mo、Ag、La、Pr、NdまたはAuの2つの金属酸化物の混合による組合せに基づいたディーゼルエンジンの排気ガスにおける固体粒子の酸化に用いる触媒について記載する。所望した組成の触媒物質は液体溶液からの沈殿によって調製される。
【0006】
他の複数の特許出願は、他の金属とCeO2の組合せを利用した酸化触媒を取り扱う。すなわち、EP1676625A1、EP1683574A1、EP1787719A2、EP1889651A1、EP1852181A1、及びWO2005/100249A1である。それらの出願において、触媒は伝統的な製法、例えば溶液からの沈殿、によって生成される。
【0007】
幾つかの触媒物質はスパッタリングによって調製される。この技術において、高エネルギーイオン、一般にアルゴン、によってターゲット物質から飛散した粒子(原子、分子)の流出で薄膜は基板上に蒸着する。Sputter Deposition、AVS Education Committee Book Series、Vol.2(2003) ISBN 0−7354−0105−5に掲載されたW.D.Westwoodの研究はあらゆる種類のスパッタリング技術について記載する。多くの場合、マグネトロンと呼ばれる装置がスパッタリングに使用される。
【0008】
EP0682982A2の特許出願は一体化した酸化基板上に基底金属の中間膜を蒸着させることによって触媒活性金属の付着力を高め得る方法について記載する。基底金属は希土類中の金属元素またはマンガンのいずれかである。触媒活性貴金属(この場合白金)はこの膜上に蒸着させる。
【0009】
上記触媒の主要な欠点としては、触媒活性が低過ぎることまた、貴金属(主に金及び白金)の含有量が高すぎることのいずれかがある。さらに、CeO2と貴金属を含む粉末の触媒は、CeO2中の活性金属の分散度が低過ぎることに苦慮する。前述の触媒の別の一般的な欠点は被毒に対する抵抗性が低いことである。
【0010】
周知の金属−CeO2触媒を調製する技術では、例えば、直接型燃料電池におけるメタノールまたはエタノールの酸化において使用されるのに十分活性のある触媒を生産することができない。
【0011】
貴金属の過度な使用はその様な触媒の生産費の増加を齎す。貴金属の含有量の多い触媒の大量生産は環境にも負荷がかかる。
【発明の開示】
【0012】
本発明は、貴金属の含有量が実質的により低いことを求める一方、従来の触媒物質と比べ、同等、またはより高い触媒活性を示す触媒を供給することを目的とする。本発明は、例えば、微量なCOを含む工業生産された水素ガスにおいて、除去するためにはとても高価となる一酸化炭素の存在に対し高い耐性を特徴とする、水素燃料電池に用いる高活性触媒を供給することを他の目的とする。さらに本発明は、エンジンがガスを排出する燃焼方式を改善する際に、水の一酸化炭素との反応による水素の発生過程に応用できる触媒、及び、多くの他の化学反応に触媒作用を及ぼすことに応用できる触媒を供給することを他の目的とする。
【0013】
分散した金属原子を含む酸化セリウムの膜を形成するために、酸化セリウムと金属物質は少なくとも一つのターゲットから同時に基板にスパッタされることを特徴とする、酸化セリウム及び金、白金、パラジウム、スズ、ルテニウムまたはニッケルからなる群より選出された金属を含む酸化触媒を、酸化セリウム及び金属をターゲットから基板までスパッタリングすることにより調整する方法によって本発明の目的は成し遂げられ、記載した欠陥を克服した。
【0014】
あるいは、酸化セリウムは一ターゲットから、金属物質は別のターゲットから基板へ同時にスパッタリングされるかもしれない。これにより、要求された特定の構造及び特性の触媒を得るためにスパッタリング過程の調整を改善することが可能になる。
【0015】
記載の方法により、基板上のその成膜中に金属原子を用いた酸化セリウム薄膜を継続的にドーピングし、酸化セリウム膜内に金属を原子レベルで分散させることが可能になり、金属原子がイオンの形で存在するようになる。
【0016】
さらに、この方法により、酸化セリウムとの金属原子の相互作用、その高い触媒活性及び、例えば燃料電池内で反応中の水素に含まれる一酸化炭素の存在に対する耐性のように触媒毒に対する高い抵抗力が達成される。
【0017】
下記の記述は本発明により調製され得る金又は白金/CeO2触媒の様々な特定の実施形態について言及する。
【0018】
酸化セリウム膜の表面に金が1〜20nmの大きさのクラスターの形態で分散されたAu−CeO2触媒。この詳細な実施形態において、触媒の界面活性は上記で述べたように有意に改善される。
【0019】
Au+1及びAu+3カチオンの形態の金を、触媒内の金の総量の25〜99重量%有するAu−CeO2触媒。その様な触媒は触媒の薄膜膜の表面及び内部の両者で高い触媒活性を示す。この機能強化は触媒に存在する金のイオン性に起因する。
【0020】
Au+1及びAu+3カチオンの形態の金を、Au−CeO2膜の原子総量の0.01〜4原子重量%有するAu−CeO2触媒。この場合、触媒内の物質の総量に対するAu+1及びAu+3のカチオンの原子濃度は4原子%未満に維持され、触媒生産中の金の消費は実質的に減少するが、触媒活性は高い状態のままである。
【0021】
Pt+2及びPt+4カチオンの形態の白金を、触媒内の白金の総量の30〜100重量%有するPt−CeO2触媒。
【0022】
イオン形態の白金が高濃度で存在するため、例えば直接水素燃料プロトン交換燃料電池内で進行している反応等、いくつかの化学反応では、高選択性の触媒活性が達成される。
【0023】
Pt+2及びPt+4カチオンの形態の白金を、Pt−CeO2膜の原子総量の0.01〜4原子重量%有するPt−CeO2触媒。例え触媒の生産中の白金の消費が実質的に減少したとしても、前述の金触媒の場合のように、触媒活性は高いままである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の詳細を以下の絵や図によって記載する。
【図1a】単一の複合ターゲットとスパッタリング装置(マグネトロン)の概略横断面図である。
【図1b】2つの単一ターゲットを含む2つのマグネトロンの概略横断面図である。
【図2】酸化セリウム膜内の金属原子の図表示である。
【図3】酸化セリウム内の金属原子の別の図表示である。
【図4a】ドープされた金以外の触媒の表面形態の顕微鏡画像である。
【図4b】Au−CeO2触媒の表面形態の顕微鏡画像である。
【図4c】Au−CeO2触媒の厚さを示す顕微鏡画像である。
【図5】Pt−CeO2触媒の表面形態の顕微鏡画像である。
【図6】燃料電池の概略断面図である。
【図7】Pt/Ru参照触媒を用いた燃料電池の比出力の図を表す。
【図8】Pt−CeO2触媒、試料Hを用いた燃料電池の出力の図を表す。
【図9】Au−CeO2触媒の光電子スペクトル(XPS)を示す。
【図10】Pt−CeO2触媒の光電子スペクトル(XPS)を示す。
【図11】Au−CeO2触媒試料メタノールを用いた燃料電池の比出力の図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例1
酸化物及び金属の高周波スパッタリングを行うための装置として、マグネトロンとも呼ばれるスパッタリング装置を、図1a及び図1bの概略横断面図にて示す。
【0026】
図1aで示したマグネトロンはCeO2板10及びCeO2板10上の金属物質12からなるいわゆる複合ターゲットを有する。金属物質はワイヤの形状を取り得、金属物質としてAu、Pt、Pd、Sn、Ru、Niの群の中からどれかの金属が使用され得る。触媒の薄膜を徐々に形成するために、アルゴンイオンによってターゲット10及び12からスパッタされた原子の流れ19を、例えばシリコン板のような基板14上に蒸着させる。マグネトロンを高周波AC電源16に接続する。曲線18によって磁力線を表す。0.6Paのとても低いアルゴン圧下で、スパッタリングは行われる。基板14上のCeO2薄膜の蒸着と成長の際に、薄膜はCeO2膜内に分散され与えられた金属原子で継続的にドープされる。仮に、前記金属元素の少なくとも一つでドープされるとすれば、そのような薄膜は高い触媒効率を示す、そのことは実験的に証明された。図1bには、各ターゲットと2つのマグネトロンを有するスパッタリング装置の代替実施形態を示す。左のマグネトロンはCeO2板10ターゲットを有し、右のマグネトロンは金属物質12ターゲットを有する、それらは基板14上に形成された触媒CeO2膜をドープするために設計された。
【0027】
金でドーピングする場合、触媒活性は、光電子分光法(XPS)測定により検出されたAu+1及びAu+3の存在によって示される。周知の触媒物質において、カチオン体の金は全く含まれない、または無視できる程度の密度で存在している。図2及び図3では本発明による、酸化セリウム膜内に分散された金イオンからなる触媒の薄膜の図表示が示されている。金原子22、23、24またはカチオンは各々、高周波のスパッタリングを用いて酸化セリウムCeO2膜21内に拡散される。更なる詳細は以下に記述するが、XPS測定は金属及びイオンの形態の金原子の分布を明らかにする。酸化セリウム膜内に分散する金原子の性質により、それらの原子は1〜20nmの大きさのクラスターの形態で、表面上に分離する傾向がある。走査型電子顕微鏡法を用いて得た図4bの触媒の薄膜の顕微鏡画像において、それらクラスター44ははっきりと確認できる。それらの表面上に、原子形態Au0の原子24として金は存在している。触媒の薄膜内に分散された金がAu+3カチオン22の形態で存在している一方、金イオンはAu+1カチオン23の形態でクラスター内の原子のAu0殻の下に存在している。
【0028】
白金でドーピングする場合、触媒活性は光電子分光法(XPS)測定により検出されたPt+2及びPt+4の存在によって示される。白金のほぼ100%は、イオンの形態で存在し、分光測定では、金属の白金Pt+0の存在を少しも証明しなかった。白金の原子は金ほど速くCeO2内に移動しないため、白金クラスターの形成は金の場合ほど充分ではない。
【0029】
上記触媒の触媒特性は、触媒を直接型燃料電池に統合することによって確認された。触媒を有する燃料電池の仕組みを図6に描く。燃料電池触媒システムの効率測定に用いる基本量はアノード表面のmW/cm2で計測された比出力である。
【0030】
Au−CeO2触媒を用いた燃料電池は、燃料としてのメタノールを用いて、非常に高い比出力を示した。燃料としてメタノールを使用すると、燃料電池内では、金属−CeO2触媒によって触媒される下記化学反応が進行する。
アノード:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e−
カソード:(3/2)O2+6H++6e−→3H2O
【0031】
それに対し、Pt−CeO2触媒を用いた燃料電池はメタノールの場合には高い比出力を示さなかったが、燃料として水素を使用した場合には高い比出力を示した。これは、メタノール分子が金原子23、24と反応するためである。Au1+は触媒薄膜の表面に分離した、それを図2に示す。白金を使用した際、金属原子の表面への移動はさほど実質的ではない。大きなメタノール分子が触媒のPt−CeO2薄膜内に分散することができないため、上記反応は緩慢に進む。代わりに燃料として水素を用いると、金属−CeO2触媒によって触媒された下記化学反応が燃料電池内で進行する。
アノード:H2→2H++2e−
カソード:4H++4e−+O2→2H2O
水素燃料を用いたPt−CeO2燃料電池は、非常に優れた電流特性を示す。それは、アノードの上記反応機構にて述べたように、電子を放出するPt+2及びPt+4のイオンの存在下で反応が行われる場所である、触媒薄膜に小さな水素原子が素早く入り込むことができるためである。水素原子は触媒表面でH2分子の分離によって生成される。
【0032】
本発明による触媒は、以下の方法で調製された。CeO2薄膜の蒸着及び、それらと同時発生の金属(Au、Pt、Pd、Sn、Ru、またはNi)でのドーピングは前述したマグネトロンを使用する非反応性で高周波のマグネトロンスパッタリング技術を用いて、行われた。マグネトロンを配置した仕組みを図1に示す。
【0033】
例2
本比較例において、純物質のCeO2はスパッタされ、一方で、二番目及び三番目の実行においては、CeO2の蒸着膜は金で共にドープされた。スパッタリングは80Wの力をマグネトロンに印加し、シリコンで作られた基板14より90mm離れて配置された5.08cmの直径を有する円形のCeO2板10ターゲットから実施された。スパッタリングは0.6Paの定圧のアルゴン大気下で、基板を室温に保ち、行われた。触媒薄膜の成膜速度は1nm/minであった。蒸着時間は、触媒薄膜の所望の厚さを得る事で決まり、通常20〜60分であった。CeO2薄膜(Auドープしていないもの)の上面図42を図4aに示す。
例3
【0034】
Auワイヤ(直径1mm、長さ10mm)の形状の金属物質は、ラジアル方向にCeO2ターゲット上に配置された。実施形態1では、単一のAuワイヤのみがターゲット上に配置された。実施形態2では、2つの同一の上記のようなAuワイヤがターゲット上に配置された。蒸着条件は例2においてと全く同一であった。
【0035】
実施形態1及び実施形態2で得た金でドープされたCeO2薄膜を有する触媒を異なる実験技術で分析し、燃料電池における該触媒活性を評価した。
【0036】
走査型電子顕微鏡法を用いて、触媒の薄膜の表面形態及び厚さを調査した。図4では、触媒の薄膜上の3つの図を示した。図4cは実施形態2で得た触媒薄膜の断面図41を示す。図4bは同一薄膜の上面図42を示す。図4cにおける薄膜の厚さを走査型電子顕微鏡によって65nmであると計測した。CeO2薄膜表面の多結晶構造は、上面図42より明らかである。図2において図解した金原子23、24のクラスター44は、触媒表面上に形成された。CeO2膜内に分散した金原子の表面に移動するという傾向が金のクラスターの形成を促進する。
【0037】
光電子分光法を用いて、Au−CeO2触媒の特性を調査し、その活性は、メタノールを燃料として使用する燃料電池、いわゆる直接メタノール型燃料電池において実証された。図9にて、Au−CeO2触媒のAu 4fの電子準位の光電子スペクトル(XPS)を示す。このスペクトルは、Au 4f5/2とAu 4f7/2の2つのダブレットから成り、金の化学状態がAu+及びAu3+であることを表す。
【0038】
例4
例3からのAu−CeO2触媒の特性の計測に用いる燃料電池の概略図を図6に描く。それは、プロトンの交換(プロトン膜交換燃料電池、PEM)のために一般的に使用されるナフィオン膜67を用いた、燃料電池である。
【0039】
以下の要素が図示されている:アノード61、カソード62、燃料給入口63、過剰燃料の排出管64、酸素取り入れ口65、未使用の酸素及び水蒸気の排気管66。アノード触媒は、膜67と接触する形で、微細多孔質なGDL(テフロン(登録商標)化した東レのカーボン紙)上に蒸着させた。電圧、電流を板69間で計測した。ナフィオン膜67は、過酸化水素、希硫酸、及び水での煮沸を含む標準的な過程で処理された。燃料電池のカソード62は標準的に調整された。すなわち、炭素基板上のPt粉末をナフィオン溶液と混合し、微細多孔質なGDL(東レのテフロン(登録商標)化したカーボン紙)上に蒸着させた。触媒膜上の白金の含有量は5mg/cm2である。
【0040】
メタノールは燃料として使用され、30ml/minに調整された流量でアノード61に供給された。30ml/minに調節された流量で酸素をカソード62に与えた。計測は摂氏23度で行い、燃料及び酸素は共に大気圧下で供給された。分極V−1曲線を図11に示すが、ここで図のx軸は燃料電池の電圧を表し、左のy軸は燃料電池の電流を表し、右のy軸は燃料電池の出力を表す。電圧曲線を110と表示し、電流曲線を120と表示した。燃料電池内の触媒の全面積は1cm2であった。その特定の触媒で得られた最大出力密度130は、0.67mW/cm2であった。
【0041】
例5
Pt−CeO2物質を用いて、2つの異なる実施形態が達成された。スパッタリングは例2及び例3と同一のマグネトロンを使用する事により実施された。スパッタリング条件も、例2及び例3と同様にした。実施形態3において、ワイヤ状(直径0.5mm、長さ10mm)の単一の白金(Pt)金属物質12は、CeO2板10ターゲット上にラジアル方向に配置され、それを図1bに示す。実施形態4において、上記寸法の2つの同一のPtワイヤをターゲット上に配置した。
【0042】
実施形態3及び実施形態4で得られた白金でドープされたCeO2薄層を有する触媒は、光電子放出分光法を用いて分析され、燃料電池におけるそれらの触媒の活性は、評価された。
【0043】
図5に、カーボンナノチューブによって覆われた燃料電池の微細多孔質なGDL(東レ、テフロン(登録商標)化したカーボン紙)上に蒸着した、実施形態4で得た触媒表面を示す。走査型電子顕微鏡により、画像を取得した。
【0044】
図10に、Pt−CeO2触媒の光電子スペクトル(XPS)を示す。白金原子がPt+2及びPt+4といったイオン体で存在していることはスペクトル分析によって示され得る。
【0045】
燃料電池で使用される、実施形態3及び実施形態4からの触媒の特性は、下記の通りであった。例2及び例3に類似して、プロトン交換のための膜を有する燃料電池は、使用され、それを図6に示す。しかしこの場合、水素は、30.0ml/minに調整された流量で、アノード61に供給される燃料として使用された。カソード62に供給される酸素の流量は、30.0ml/minに調整された。
【0046】
実施形態4で得たPt−CeO2の分極V−1曲線(前述)を図8に描く。燃料電池における触媒の総面積は1cm2であった。出力電圧曲線は81と表示し、出力電流曲線は、82と表示した。実施5からの触媒と共に得た最大電力密度は12.3mW/cm2 83であった。触媒上の白金の含有量は約2.5x10−4mg/cm2であった。Pt−CeO2の厚さ及びその密度からその数値は計算された。上記数値を基に、白金の重量あたりの最大出力電力は70 W/mg(Pt)と決められた。
【0047】
例6
実施形態5の基準値の測定。基準値を得るために、実施形態5は前述の実施形態と同様に、市販の触媒、アノード上にはPtRu(50%Pt ,50%Ru)、カソード上にはPt/C、を用いて、前述の燃料電池で行われた。触媒活性は、実施例5においてと同一の条件下で評価された。実験6からのPtRu参照触媒の分極V−1曲線は図7に描かれた。該触媒で得られた最大電力密度73は、196mW/cm2であった。触媒中の白金の重量あたりの最大出力電力は、39.2mW/mg(Pt/Ru)と決められた。これは、標準PtRu(アノード)及びPt/C(カソード)触媒を用いたプロトン交換膜を有する燃料電池の典型的な文献値である。このように、燃料電池の正確で標準的な機能性が実証された。
【0048】
本発明の例2から5までは、上記方法で調製された金属−CeO2薄膜に基づいた物質の高い触媒活性を明示した。新しいPt−CeO2触媒を使用することにより、燃料電池の明確な出力電力は、標準触媒に比べ、1mgの白金に関し、約3桁高まる。水素を燃料とした燃料電池の場合、本触媒の水素に含有する一酸化炭素に対する高い耐性が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による方法及び触媒は、水の一酸化炭素との反応における水素の生成を目的とし、燃焼機関の排出ガスの改善を目的とし、及び酸化セリウム及び金、白金、Pd、Sn、Ni、Ruの群のうち少なくとも一つの金属の薄膜を有する、別の化学反応の触媒として、
主に燃料電池で使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウム及び、金及び白金からなる群より選出された金属を含む層を有する酸化触媒であって、
非反応性の高周波マグネトロン技術を使用し、ターゲットから基板まで酸化セリウムをスパッタリングすることにより、酸化セリウム膜を形成する過程と、及び、
金属カチオンの含有量が該膜内の原子総量の0.01〜4原子重量%になるまで、金属原子を同一のまたは別のターゲットからスパッタリングすることによって該膜を同時に連続してドープする過程と、
を含む方法により調製される酸化触媒。
【請求項2】
触媒中の金の総量の25〜99重量%のAu+1及びAu+3カチオンの形態の金を有する、請求項1により調製された酸化触媒。
【請求項3】
触媒中の白金の総量に対し、30〜100重量%のPt+2及びPt+4カチオンの形態の白金を有する、請求項1により調製された酸化触媒。
【請求項4】
前記酸化セリウム膜の表面に金が1〜20nm大きさのクラスターの形態で分散された、請求項2により調製された酸化触媒。
【請求項1】
酸化セリウム及び、金及び白金からなる群より選出された金属を含む層を有する酸化触媒であって、
非反応性の高周波マグネトロン技術を使用し、ターゲットから基板まで酸化セリウムをスパッタリングすることにより、酸化セリウム膜を形成する過程と、及び、
金属カチオンの含有量が該膜内の原子総量の0.01〜4原子重量%になるまで、金属原子を同一のまたは別のターゲットからスパッタリングすることによって該膜を同時に連続してドープする過程と、
を含む方法により調製される酸化触媒。
【請求項2】
触媒中の金の総量の25〜99重量%のAu+1及びAu+3カチオンの形態の金を有する、請求項1により調製された酸化触媒。
【請求項3】
触媒中の白金の総量に対し、30〜100重量%のPt+2及びPt+4カチオンの形態の白金を有する、請求項1により調製された酸化触媒。
【請求項4】
前記酸化セリウム膜の表面に金が1〜20nm大きさのクラスターの形態で分散された、請求項2により調製された酸化触媒。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4a.4b.4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4a.4b.4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−505735(P2012−505735A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531341(P2011−531341)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/CZ2009/000122
【国際公開番号】WO2010/043189
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511088243)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/CZ2009/000122
【国際公開番号】WO2010/043189
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511088243)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]