説明

酸化還元反応による血漿タンパク質の結合特異性の改変方法

液体培地中に懸濁または溶解した少なくとも1つの血漿タンパク質の結合特異性は、結合特異性の改変を引き起こすのに十分な酸化剤、または電位に暴露することにより改変される。自己抗体のようなマスクされたタンパク質は、結合特異性を改変するためにタンパク質を酸化することにより、血液または血液産物または抽出物より回復されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年6月9日に出願された、米国特許仮出願明細書番号第60/476,607号の出願日の優先権を主張する。仮出願明細書は、これを参照することによって本明細書中に組み込まれている。
【0002】
本発明は、酸化還元反応により改変されうる結合特異性を持つ血漿タンパク質の結合特異性を改変する方法に関する。本発明はさらに、正常な被験者の血液、血清または血漿中に生来存在する自己抗体を非マスク化することにより、自己抗体を得る方法に関する。
【背景技術】
【0003】
「自己免疫疾患(autoimmune disease)」という語句は、免疫システムが誤って自分自身の体の細胞、組織および器官を攻撃する疾患の一群を指す。一般的に、自己免疫疾患は、一般的なタンパク質および脂質のような、体自身の成分に結合する抗体が関与する。自己化合物(またはより一般的には、あまりに共通しているので全ての生物でみられる化合物)に対して結合する抗体が、自己抗体と呼ばれる。例として、リン脂質および/またはリン脂質結合性血漿タンパク質に結合する自己抗体が、全身性エリテマトーデス(SLE)、深部静脈血栓症および反回動脈血栓症、肺塞栓、再発性流産、血小板減少症、舞踏病、てんかん、青色皮斑、特発性肺高血圧、リウマチ状態および多くの膠原病のような疾患に関連する。自己抗体に関連した他の疾患には、多発性硬化症、クローン病、円板状エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、乾癬、糖尿病およびリウマチ関節が含まれる。約80の異なる自己免疫疾患があり、集団的に、これらの疾患は、数百万人が罹患している。
【0004】
自己免疫疾患の病因に関する従来の理論は、これらの疾患は、疾患個体(individual)中の自己抗体の過剰産出によって引き起こされ、恐らく、自己抗体等をコードしている遺伝子の過剰発現による、というものである。この理論によると、罹患している個体の血液は、疾患を引き起こす特定の自己抗体が高いレベルを有し、一方で、正常の個体からの血液には、自己抗体が全く含まれないか、または非常に少ない量である。この理論は、自己免疫疾患を罹患している被験者からの血液または血液産物中に多量の自己抗体が見かけ上、検出可能であり、一方、自己免疫疾患を持たない被験者からの血液または血液産物中では、まったく検出されない、または最小の量の自己抗体しか検出されないという従来のアッセイによって支持される。
【0005】
本発明は、正常の個体からの血液には、事実、広い範囲の種類と特異性において著しい数の自己抗体が含まれるという、本明細書で報告された、驚くべき発見に基づいている。血液または血液産物を酸化によって、本明細書に記述した方法に従い、たとえば、酸化剤または電流により処理すれば、正常の個体の血液または血液産物から、これらの自己抗体を検出し、単離することが可能である。正常な血液中の著しい量の自己抗体の発見は、いままでに報告されておらず、本発明者の知る限りでは、そのような自己抗体が、正常な血液中に著しい量で存在することは、本発明以前には、完全に未知であった。
【0006】
どんな特定の理論にも固執することなく、自己免疫疾患の症状を持たない個体から得た正常の血液を操作することで、自己抗体を得ることが可能であるならば、正常者の免疫系が、これらの自己抗体を日常的に作製し、循環させているのに違いないが、何らかの方法でこれらはその中へマスクされるか、ブロックされるか、または任意の有害な効果をもつことを防止していることは明らかである。
【0007】
正常個体中での、著しい量の自己抗体の発見によって、自己抗体が、(典型的には、その対応する抗原に対する抗体の結合に基づく)標準のアッセイでなぜ検出されないのか、およびなぜ自己抗体が、正常個体における疾患症状を引き起こさないのか、という疑問がわいてくる。
【0008】
本明細書にて記述した以前の実験に基づいて、自己抗体が、通常のスクリーニング手順で、そのような抗体が検出されることなく、そしてそのような抗体が疾患を引き起こすこともなく、正常の血液に含まれるのか、という初期の仮説の解釈は、正常個体中に自己抗体が産生された後に、何らかの形で、それらが隔離された、というものである。隔離は、たとえば、自己抗体を封鎖し、血流の他の成分から分離した状態を保つ能力を持つ低密度または高密度リポタンパク質(LDL、HDL)のような巨大分子、または他の型の微粒子、小胞またはミセルの形態であり得る。このような理論では、自己免疫疾患は、自己抗体それ自体の産出によってではなく、自己抗体を隔離している巨大分子(macromolecules)、微粒子(microparticles)、小胞またはミセルの破壊、崩壊または形成不全によって、ひきおこされうる。この理論は、自己抗体が、振とうおよび加熱を含む試料のきわめて過烈な操作の後に、血液または血清試料から得ることができた、以前の実験によって支持されるようである。
【0009】
しかしながら、本明細書で記述するように、その後の実験において、血液または血液産物を、酸化剤またはDC電流に暴露するような、本発明のより単純な方法で、正常血液から自己抗体を得るのに十分であり得ること、およびこの工程が可逆的であることが示された。さらに、自己抗体が、任意のタイプの存在物(entity)を隔離している巨大分子を含まない、市販されているIvIg産物を処理することによって得ることができることが発見された。これらの実験に基づいて、そのような抗体が通常のスクリーニング手順で検出されることなく、そしてそのような抗体が疾患を引き起こすことなく、どのようにして正常血液が自己抗体を有するのかに関しては、よりあり得る理論は自己抗体が他の抗体とともに自由に循環しているが、自己抗体の抗原結合部位が正常個体において、どうにかしてブロックされるか不活性化される、というものである。このような理論では、自己免疫疾患は、酸化によって自己抗体の抗原結合部位を取り去る(unblock)ことで引き起こされうる。さらに、この理論は、特定の血漿タンパク質の結合特異性が改変されうるという、より一般的な機構を示唆している。
【0010】
本発明の基礎を形成している発見の即時的な実用は、得られる自己抗体のほとんど制限のない供給を与え、自己抗体が、自己免疫および他のaPL関連疾患の実験室診断用の診断キットで、標品として使用可能である。以前は、自己免疫疾患または標準的なアッセイで、自己抗体が陽性である個体から、自己抗体は得られると考えられているために、商業的利用の大量の自己抗体を集めることは、困難であった。個々の患者の静脈切開術から得ることが出来る、または自己抗体に関して試験陽性と判明している、患者の群からの血液をプールすることによって得ることが出来る、そのような血液の量は限られている。米国特許第5,885,793号で記述したような、ファージライブラリーをスクリーニングすることのような、自己抗体を得る他の方法も、難しく、多大な時間がかかりうる。
【0011】
マスクされた抗体の存在または存在しないことに関して、血液試料を試験することは、特定の個体における酸化ストレスに続いて、どんな抗体が現れるかを予兆、または予期しうるので、重要な診断的価値がある。
【発明の開示】
【0012】
酸化還元状態の変化によって改変可能な結合特異性を持つ、血漿タンパク質の結合特異性を変更する方法を提供することが、本発明の目的である。
【0013】
正常の個体由来の血液、血清または血漿から自己抗体を得る方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0014】
前記被験者における自己抗体を不活性化するのに十分な抗酸化剤を、被験者に、投与することによって、自己免疫疾患を持つ被験者を処置する方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0015】
自己免疫疾患を持つ被験者を、前記被験者の自己抗体を体外で不活性化することによって、処置する方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0016】
結合特異性を改変するのに十分な酸化剤またはDC電流を暴露した、少なくとも1つのタンパク質が含まれる生体液、または生体液のタンパク質含有抽出物からなる産物を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0017】
ルーチン臨床アッセイにおいて、自己抗体の存在に関してテスト陰性である1人またはそれ以上の個人由来の、血液、血漿または血清が、自己抗体の存在を示すように処置された当該血液、血漿または血清試料を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0018】
循環タンパク質の結合特異性の改変をもたらす酸化剤や直流電流(DC)を生体液または生体液の抽出物中のタンパク質に暴露させて、タンパク質の酸化還元状態の変化おこすことで改変されうる結合特異性の結合部位を持ち、生体液またはタンパク質を含む生体液の抽出物中に少なくとも一つの循環タンパク質の結合特異性を改変する方法によって、これらと他の目的を達成される。
【0019】
目的はさらに、液体培地中に懸濁または溶解した、少なくとも1つの血漿タンパク質を含む組成物を与える方法であって、前記血漿タンパク質の結合特異性に改変を起こし得るのに十分な、酸化剤またはDC電流に暴露することで、酸化還元状態の変化し、改変されうる結合特異性をもつ血漿タンパク質からなる方法により、達成される。
【0020】
他の実施形態において、本発明は、生体液または生体液の抽出物由来の自己抗体または他のマスクされた循環タンパク質、前記自己抗体または他のマスクされた循環タンパク質が、抗原またはリガンドに結合可能になるように、前記自己抗体または他のマスクされた循環タンパク質の結合特異性を改変するのに十分な酸化剤またはDC電流に暴露すること、それによって、生体液または生体液の抽出物から検出可能および回収可能になること、および自己抗体または他のマスクされた循環タンパク質を、生体液から回収することによって、生体液から、または生体液の抽出物から、自己抗体または他のマスクされた循環タンパク質を得る方法に関する。
【0021】
他の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患を持っている被験者に、被験者中の自己抗体を不活性化するのに十分な量の抗酸化剤を投与することによって、自己免疫疾患を処置する方法に関する。自己免疫疾患を患っている個体の処置には、非マスク化タンパク質を減少させ、マスクされたタンパク質として置換するために、血液の体外処理が含まれうる。
【0022】
他の実施形態において、本発明は、正常者の生体液または抽出物に、どの自己抗体がマスクされているかのスクリーニング方法に関し、つまり酸化および起電力により、暴露される、または非マスク化された場合、個体の自己免疫疾患を引き起こす自己抗体の、可能性のある抗体プロファイルを構築することに関する。
【0023】
特定の非限定例として、血液、血漿または血清、または抽出物から自己抗体が検出と回復可能なように、血液、血漿または血清、または免疫グロブリン混合物のような血液抽出物を、前記血液、血漿、血清または抽出物中に含まれる少なくとも1つの自己抗体の結合特異性の改変を引き起こす酸化剤またはDC電流に暴露しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、生体液または生体液の抽出物中の、少なくとも1つの血漿タンパク質または循環タンパク質の結合特異性を改変する方法に関する。
【0025】
本明細書で使用するところの語句「循環タンパク質(circulating protein)」および「血漿タンパク質(plasma protein)」は、動物の循環系にて天然に存在するタンパク質を意味する。循環タンパク質の例には、抗体および他の血漿タンパク質が含まれる。本発明の方法は、全ての血漿タンパク質または循環タンパク質に普遍的に利用されるということを意味しないが、該タンパク質の酸化還元状態の変化によって改変可能である結合特異性がある特性が任意の血漿タンパク質または循環タンパク質に利用されるということが理解されるべきである。この特性を持つ自己抗体のような循環タンパク質が存在するという、本発明者らの発見は、本発明の基礎を形成する。酸化還元状態での変化によって、変更可能である結合特異性を持つと発見された非抗体タンパク質の例には、キニノゲン(kininogen)およびプロトロンビン(prothrombin)および/またはベータ2糖タンパク質(beta2 glycoprotein)が含まれる。
【0026】
語句「マスクされた循環タンパク質(masked circulating protein)」は、正常の個体中で血液に存在するが、その結合部位が、正常の個体内または正常の個体から取られた試料中では、マスクされているか、またはブロックされているか、あるいは抗原の結合から保護されているので、レセプター−リガンド結合にもとづく従来の結合アッセイによって検出不可能であり、そして、マスクされた循環タンパク質を含む試料を、本発明の方法にしたがった酸化剤または電流に暴露することなどによって、その酸化還元状態を変化させることによって処理する場合に抗原に結合可能になり、それによって試料中で検出可能になる「循環タンパク質」を命名し、説明するために、本発明に新たに造語した。マスクされた循環タンパク質の例は、自己抗体である。本発明者らによって発見されたように、正常の血液中に、著しい量の自己抗体が循環しているが、これらは、抗体−抗原結合に基づく典型的なアッセイで検出されない。本明細書で議論したように、自己抗体の結合特異性を変更するのに十分な酸化−還元条件下に自己抗体を供した場合に、自己抗体は、検出可能および回復可能になる。酸化によって非マスク化される自己抗体には、抗リン脂質、抗核小体(強皮症関連(scleroderma associated))、抗ラミン(核孔で非常に明るい(very bright at nuclear pores))、抗ミトコンドリア(細胞質性(cytoplasmic))、および抗中心小体抗体が含まれる。さらに、最初にHCV(C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus))については陰性とされ、本発明にしたがった処置の後に、HCVについて陽性であるとされる、血液、血清またはIvIg試料が存在することがわかり、このことは、正常な個体が、その循環内に、マスクされた抗HCV抗体を持つことを示唆している。
【0027】
語句、タンパク質の「結合特異性を改変(altering the binding specificity)」は、酸化または還元などによって、タンパク質が改変または変化し、先には特異的に結合不能であった抗原またはリガンドの特異的な結合が可能になる、または先には特異的に結合可能であった抗原またはリガンドの結合が不可能になる過程を意味する。語句「非マスク化(unmasking)」は、マスクされた循環タンパク質の結合特異性が改変され、前記タンパク質が、改変された結合特異性の為に、結合アッセイによって検出可能になる過程を意味する。
【0028】
語句「自己抗体(autoantibody)」は、動物の免疫系によって産出される、そして、自己−抗原、すなわち、動物それ自身によって産出された化合物または抗原に結合する、任意の天然に存在する抗体を意味する。
【0029】
語句「生体液(biological fluid)」には、血漿、血清および全血、唾液、尿、乳および他の分泌物を含む、循環タンパク質を含む任意の体液が含まれる。語句「生体液のタンパク質含有抽出物(protein-containing extract of any biological fluid)」は、免疫グロブリンフラクションのような、生体液から回収または分離された任意の調製物を意味する。本発明で使用しうる血液、血清または血漿は、個体から新鮮に入手でき、または血液銀行または他の血液収集機関から得たプールした血液または血漿調製物のような供給源から得てよい。本発明の目的のために、血液、血清または血漿はまた、期限切れ、または血液銀行または血液収集機関によって標準以下であると分かったコレクションであっても良い。この記述は、ヒト血液、血漿および血清に焦点をあてているが、本発明の同一の工程を動物血液に応用可能であり、獣医学に関する目的に、類似の動物抗体を得ることになる。好ましくは、前記血液、血漿または血清中に含まれうる抗酸化剤の効果を減少させるために、本発明の方法にて使用した血液または血清は、希釈する。
【0030】
本発明の方法において、生体液中の少なくとも1つの循環タンパク質または血漿タンパク質の結合特異性は、前記タンパク質を酸化剤または電流に暴露することによって改変される。たとえば、蛋白質が非マスク化されるために、つまり本方法が実施される前に、蛋白質が結合不能であった抗原に、結合可能になるために、マスク化した循環タンパク質の結合特異性が変わり得る。その結合特異性が改変されたタンパク質は、ついで、特異的結合に基づいた任意の分離方法によって単離、および回収(recover)しうる。
【0031】
酸化剤を使用して本発明を実施する場合、酸化剤は、生物学的分子の酸化還元状態を変化可能である任意の化合物でありうる。より特異的には、酸化剤は、電子供与体として働く他の分子に対して、電子受容体として働くことによって還元される能力のある分子である。酸化剤の例には、限定はしないが、ヘミン(hemin)、クロロフィル、または強酸化金属(strong oxidizing metal)を含む他の環状化合物、および過マンガン酸カリウム(KMnO4)が含まれる。典型的には、酸化剤を使用する際、生体液または抽出物と酸化剤の混合物とを、一定時間、典型的には、約1日〜一晩インキュベートしなければならない。酸化剤は、改変可能な結合特異性を持つタンパク質の結合特異性を改変するのに十分な濃度で、しかし、タンパク質を破壊しない濃度で使用すべきである。自己抗体の場合、異なる種類の自己抗体が、異なる抗酸化剤と、異なって相互作用しうる。たとえば、aPC自己抗体の非マスク化に関では、ヘミンは良い結果ではないが、KMnO4は非常に良い結果である。
【0032】
DC電流を使用して、本発明を実施する場合、本方法は、処置すべき試料を含む導電性溶液中に、陽極および陰極電極を浸すような、任意の電流を伝達する方法によって実施しうる。典型的には、生体液を含む溶液を、改変可能な結合特異性を持つタンパク質の結合特異性を改変するのに、十分な大きさ(magnitude)、および十分な期間の電位に暴露しうる。陽性の結果が、溶液を、数秒間〜数分間、6〜24ボルトの電位に暴露することによってえられうることがわかった。実施例で議論するように、電流への長期の暴露で、結合特異性の改変は可逆的となる。
【0033】
AC電流を用いて、陽性の結果を得る試みは失敗に終わった。
【0034】
特定の理論に関与することなく、自己抗体の場合、この自己抗体のFab部位中の抗原結合部位を酸化するのに十分な量、または時間で、酸化剤または電流に自己抗体を暴露することが好ましい。
【0035】
対象の特定のタンパク質が、酸化還元状態での変化で改変しうる結合特異性をもつタンパク質か、そうでないか、および対象の特定のタンパク質の結合特異性を変更するための任意の組の条件の効果は、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)または他のリガンド−レセプターアッセイによって簡単に決定しうる。酸化還元状態がタンパク質の結合特異性を変えうるか、そうでないかを見るために、タンパク質を酸化還元状態に供した前および後において、そのようなアッセイを実施した。たとえば、特異的自己抗体を回復するのに最適な酸化剤は、単純な実験によって、簡単に決定可能である。
【0036】
本発明のさらなる観点は、自己免疫疾患を罹患している被験者に、被験者中の自己抗体を不活性化するために十分な量の抗酸化剤を投与すること、または前記被験者より血液試料を採取し、前記血液試料を、前記血液試料中の自己抗体を不活性化するのに十分な抗酸化剤または電流に暴露すること、および血液試料を対象に戻すことのいずれかによって、処置する可能性である。
【0037】
本発明のさらなる観点は、自己抗体がマスクされているかどうか、個体において自己免疫疾患を惹起する自己抗体の可能性がある抗体のプロファイルを構築できるか、を決定するために、各個体の生体液または抽出物をスクリーニングする方法である。概括的にいうと、被験者由来の血液、血漿、血清試料を、試料中に検出可能であった自己抗体の量、および/または型を決定するために、アッセイし得る。したがって、被験者由来の血液、血漿、血清は、酸化剤またはDC電流に暴露することで処理され得る、そして前記処理された試料において検出可能な自己抗体の量および/または型を決定するために、前記処理された被験者ゆらいの血漿または血清はアッセイされ得る。したがって、治療工程の前に試料中に検出可能な自己抗体の量および/または型を、治療工程後の試料中の検出可能な自己抗体の量および/または型と比較可能である。
【0038】
未処理の血液、血漿、血清またはIvIg試料、および本発明の方法にしたがって処理した血液、血漿または血清またはIvIg試料を凍結乾燥および輸送または保存が可能であることがわかった。試料を再構成するときに、各個の活性を保持する。
【実施例】
【0039】
本発明を記述するにあたって、以下の実施例が、本発明を実施するために現在知られている最良の態様を含む、本発明の特定の利用を例示するために与えられる。実施例は、ほぼ年代順で示しており、本発明の効果を達成するために必要な成分および手順の理解の進展を示している。これらの特定の実施例は、本明細書に記述した本発明の範囲を限定するものではない。
【0040】
他に言及しない限り、本明細書で記述した実施例1〜17のそれぞれに関して、以下の手順が一般的に使用された。正常aPL陰性被験者由来の、10mlの全血試料、または5mlの血清または血漿、および4〜5mlのパック(packed)された哺乳類赤血球細胞を、30mlのビオメリュー(Biomerieux)ブランドの細菌培養増殖培地(少なくとも以下の成分を含む:蒸留水、ダイズ−カセイン消化ブロス、酵母抽出物、デキストロース、スクロース、ヘミン、メナジオン(ビタミンK3)、ピリドキサールHCl(ビタミンB6)、およびポリアンエトレスルホネートナトリウム(SPS)および活性炭(charcoal))を含むバイアルに加えた。ついで、この混合物を、37℃、18〜22時間で振とう(rocking)ないし振動(shaking)しながらインキュベートした。インキュベーションおよび遠心分離(centrifugation)に続き、インキュベートした血液または血清/RBCを、24の別個のaPL試験結果を与える包括的イン−ハウスELISA(Comprehensive in-house ELISA)aPLフォーマットを用いて、抗リン脂質抗体(aPL)の存在を試験した。試験手順は、以下の文献に、より詳しく記述され、その文献は本明細書に、組み込まれている。Wagenknecht DR他、「抗リン脂質抗体アッセイの進化、評価および解釈(Evolution, Evaluation and Interpretation of Antiphospholipid Antibody Assays)」Clinical Immunology Newsletter, Vol.15, No.2/3(1995)pp.28-38、およびMcIntyre JA他、「ボランティア血液ドナー中の抗リン脂質抗体(aPL)の頻度および特異性(Frequency and Specificities of Antiphospholipid Antibodies(aPL)in Volunteer Blood Donors)」、Immunobiology 207(1):59-63,2003。
【0041】
図1は、包括的イン−ハウスELISA(Comprehensive in-house ELISA)aPLフォーマットを用いて試験した24の別個のaPL特異性を示している。4つの特異性 1)aPS=抗ホスファチジルセリン、2)aCL=抗カルジオリピン、3)aPE=抗ホスファチジルエタノールアミン、および4)aPC=抗ホスファチジルコリン、が評価された。これらのaPL特性のそれぞれに関し、3つの免疫グロブリンアイソタイプ、IgG、IgAおよびIgMを探索した。各特異性および各アイソタイプを、それぞれ緩衝液に希釈したサプリメント(supplement)、10%成体ウシ血漿(ABP)(リン脂質結合血漿タンパク質を含む)、または1%ウシ血清アルブミン(BSA、リン脂質結合血漿タンパク質を欠く)の存在下(依存性)および非存在下(非依存性)で評価した。被験者の血液試料の最終希釈は、1/50〜1/100の間であった。
【0042】
本明細書で記述された種々の実験より得た24種のaPL特異性の結果を以下の図で与えた。陽性/陰性の発見を、上記McIntyre JA、Immunobiologyにて記述されたように、775人の正常血液の供給者由来の試験血漿試料に基づいた多重平均(MoM)で表している。+++の存在は、強力な抗体活性を示している。+および++の表示は、それぞれ低いおよび中程度の抗体活性を示している。図はまた、各aPL特異性およびアイソタイプ組み合わせにおける、正常範囲値を与えている。
【0043】
PL結合タンパク質「依存的」と示された縦列中の陽性結果は、抗リン脂質抗体(aPL)が、示した特定のリン脂質に初期に結合した血漿タンパク質に、実際、結合していることを示している。一般的に、PSおよびCLによって結合可能である血漿タンパク質には以下のものがを内包される:ベータ2−糖タンパク質I、プロトロンビン、プロテインC、プロテインS、アネキシンV、および補体成分因子HおよびC4(例えば、McIntyre, J.A.、Wagenknecht,D.R. およびFaulk,W.P.「抗リン脂質抗体:発見、定義、検出および疾患(Antiphospholipid antibodies: Discovery, definition, detection and disease)」Prog. Lipid Res.42(3):176-237、182ページを参照のこと)。血漿タンパク質結合の生理学的特性は、すべてのリン脂質に関して、以前は知られてはいないが、このような結合は、血漿タンパク質構造の立体構造変化を誘導すると考えられ、それによって、個体の自己抗体によって標的とされる新規なまたはあいまいな(cryptic)エピトープを曝すと考えられる。一般的に、リン脂質PEによって結合可能である血漿タンパク質には、以下のものが含まれる:高分子量および低分子量キニノゲン、第XI因子、プレカリクレインが含まれる。後者2つのタンパク質は、高分子量キニノゲンへの結合の際に、それらの忠実性(Fidelity)に基づき検出可能である。PCに結合する血漿タンパク質はいまだに決定されていない。ある実験において、血漿−タンパク質非依存的なaPLが観察されている(図3を参照のこと)。この活性の可能な解釈は、元来血液試料中に存在する、残余のリン脂質結合血漿タンパク質の存在を表しているということである。
【0044】
実施例1
正常の被験者由来の血液試料を、上記の手順にしたがい、インキュベートし、試験した。aPL ELISAの結果を、図2に示している。図2で示すように、インキュベートした血液試料は、正常者範囲の縦列中で示した正常、未処理血液と比較して、自己抗体の活性の著しい存在を示した。とりわけ、強力な自己抗体活性は、aPS(IgG)、aCL(全てのアイソタイプ)、およびaPE(IgG)のタンパク質依存の部類で示されている。低いIgG aPC自己抗体の活性、または活性が無いことは、早期実施例およびヘミンを酸化剤として使用した手順において、特徴的な発見であった。この結果は、PCに対する自己抗体、特にIgGアイソタイプである自己抗体は、異なっており、恐らく他に行うのと同様の方法では活性化しないことを示している。後半の実験で、aPCの著しいレベルが、KMnO4で処置した試料中で検出可能であることがわかった(データは示していない)。
【0045】
実施例2
7人の健康な被験者から得た血液試料を、上記の手順にしたがってインキュベートおよび試験をした。とりわけ、全ての7人の患者の血液を、20分間以内に得て、同一条件下で20時間インキュベートした。図3は、これらの7つの試料のaPLセロコンバージョン(aPL seroconversion)の範囲を示している複合表である。これらの結果は、異なる個体間に、検出されたaPLレベルならびに存在するアイソタイプにおいて、ばらつきがあることを示している。それにもかかわらず、本発明によって示されたように、各個体が、インキュベーション後に検出できるaPL抗体を持つ。
【0046】
実施例3
最初の実験において、正常被験者由来の血清試料を、上記の基本的な手順にしたがい、インキュベートおよび試験した。インキュベーション混合物では、ウマ赤血球細胞(RBC)を、ヒトRBCの代わりに使用した。aPL ELISAの結果を図4に示している。図4で示したように、著しいaPL活性が、特にaPS(IgGおよびIgM)およびaCL(IgAおよびIgM)に関して得られた。
【0047】
第二の実験において、ヒト血清の代わりに、ウマ血清を、ヒトRBCと共にインキュベートし、上記の基本的な手順にしたがって試験した。aPL ELISAの結果を、図5に示している。図5で示したように、aPL活性は得られなかった。(本実験で使用したELISAアッセイは、aPLを検出するために、ヒト抗体特異的アルカリホスファターゼ標識の抗体プローブを使用したので、インキュベートした試料がウマaPLを含んだかどうかは未知である)。
【0048】
図4および5で要約して示した結果は、すべてのaPLが、第一の実験ではウマRBCを用いているので、ヒトRBCから放出されたのではなく、ヒト血漿由来の本発明のセロコンバージョン過程中に得られ、ヒトRBCのかわりに、ヒト抗体を欠くウマRBCを使用し、陽性の結果を示していること、一方、第二の実験は、ヒトRBCの存在下でウマ血清を使用して、陰性の結果を示していることを明白に示している。
【0049】
実施例4
正常被験者由来の血液試料を、インキュベーションを高い温度(elevated temperature)でのかわりに室温(22℃)で実施したことを除き、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートおよび試験した。図6は、試料が、室温でインキュベートした際には、セロコンバージョンを受けなかったことを示している。これらの結果は、セロコンバージョンの工程が、温度感受性でありうることを示唆している。
【0050】
実施例5
正常被験者由来の血液試料を、活性炭(charcoal)の代わりにインキュベーション混合物中の粒子固体として、0.7mm デガラン(Degalan)(プラスチック)ビーズを使用することを特徴とし、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートおよび試験した。セロコンバージョンを示している初期実験で活性炭を使用したので、活性炭がセロコンバージョン中に特定の役割を果たすかどうかを決めるために、この実験を実施した。図7は、活性炭の代わりにプラスチックビーズを使用した場合にさえ、試料がセロコンバージョンを示したことを示している。これらの結果は、活性炭の役割が、実際は化学的にではなく機械的であり、プラスチック、樹脂またはガラスビーズのような、任意の粒子固体を使用可能であることを示している。任意の特定の説に限定することなしに、粒子成分が、RBC膜上で研磨剤として働き、おそらくこれが、RBC AE1/Band3タンパク質との、またはSNOヘモグロビン遷移分子との、または両方との相互作用によって、RBCからのNOイオンの放出を引き起こすと理論を立てることができる。機械的な研磨の可能性は、実施例6での観察によって支持され、そこでは、ネガティブアッセイ(negative assay)の結果は、振とう(rocking)ないし振動(shaking)されていないインキュベーション混合物でも示されている。粒子固体は自己抗体放出を支援する物理的機能もはたしうる。
【0051】
実施例6
正常被験者由来の血液試料を、インキュベーション混合物を振とうないし振動せずに、静止させたことを除いて、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートし、試験した。図8は、試料を静止させたままである時、セロコンバージョンを受けなかったことを示している。これらの結果は、この運動が固体粒子とRBC間の相互作用を促進しうることを示唆している。試料のインキュベーターへの移動によって産出されるようなわずかな量の運動が、少量のaPL放出を産出しうるが、静止インキュベーション(stationary incubation)条件は、aPL放出を促進しなかった。
【0052】
実施例7
正常被験者由来の血液試料を、遠心によるRBCおよび活性炭のインキュベーションおよび除去の後に、インキュベーション混合物を56℃にて30分間加熱したという追加した特徴で、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートおよび試験した。図9は、検出したaPLの量が、本手順により著しく増加したことを示している。
【0053】
実施例8
Biomerieuxからの細菌培養増殖培地の代わりに、異なる供給業者(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、スパークス(Sparks)、MD)からの細菌培養増殖培地を使用した特徴で、正常被験者由来の血液試料を、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートおよび試験した。図10は、試料が、ベクトンディッキンソン培地中でセロコンバージョンを表したことを示しており、そして、これは本発明の方法が、特定の供給源からの細菌培養増殖培地に依存しないことを示唆している。
【0054】
実施例9
正常被験者由来の血液試料を、インキュベーションを好気性条件下(酸素およびCO2の存在下)のかわりに、嫌気性条件下(窒素下)で実施したという特徴で、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートおよび試験した。図11は、試料が、嫌気性条件下でもセロコンバージョンを示したこと、および本発明の方法が、嫌気性環境に依存しないことを示している。
【0055】
実施例10
正常被験者由来の血液試料を、K562細胞(ヒト造血腫瘍細胞株)を、赤血球細胞の代わりに使用した特徴で、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートおよび試験した。さらに、本発明の方法において典型的に使用したパック(pack)RBCの3〜4mlと比較して、1130万個のK562細胞だけが、培養培地中に存在した。図12は、試料が、セロコンバージョンを示したことを示している。
【0056】
他の実験によって、他の単離された細胞種、リンパ球、単球および好中球とインキュベートした試料が、aPLセロコンバージョンを典型的に示していないことが示された。特に、リンパおよび脊髄系の白血球は、aPL放出を促進せず、L14と命名されたブタBリンパ球の細胞株も促進しなかった(データは示していない)。これらの結果は、K562細胞およびRBCがヘモグロビンを含み、リンパ球、単球および好中球はヘモグロビンを含まないので、ヘモグロビンがインキュベーション混合物中で、鍵となる成分であり得ることを示唆している。
【0057】
実施例11
正常被験者由来の血液試料を、細菌培養増殖培地をヒト細胞を増殖させるために使用される細胞培養培地:RPMIと置換したことを除いて、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートおよび試験した。図13は、セロコンバージョンがおこらなかったことを示している。この実験は、本発明の目的のためには、細菌培養培地中のいくつかの成分の重要性を示している。RPMIが、ヒト細胞のために設計された培養培地である一方で、バイアルブロス(viral broth)に置換したときにaPL放出を促進しない。2つの異なる微生物学バイアルブロスのリストと、RPMIとの成分の比較が、RPMIが、ヘミンおよびビタミンK3と呼ばれるメナジオン(人工プロビタミンK)を欠くことを示す。ヘミンが、RBC由来のイオンのポルフィリンキレーター(Fe+++)であり、メナジオンは、脂溶性ビタミンである。このことは、酸化還元反応が、自己抗体の放出において、役割を果たしうることを示唆している。
【0058】
実施例12
臍帯血試料を、上記の手順にしたがってインキュベートおよび試験した。臍帯血液を新生児の誕生後に取り、また、誕生前に胎盤を子宮壁から分離した。母親血液または新生児臍帯血いずれもが、従来の実験室アッセイにおいて、aPLの存在を示さなかった。本明細書で記述した本発明にしたがって処理した場合、強力なaPL抗体が、図14で示したように、臍帯血試料中での存在を示した。抗体は、IgGのみであり、母由来の抗体と適合可能である知見である。誕生の前に、母親がIgGを胎児へ伝達するので、この実験は、胎児血液中で胎児によってマスクされたままであるトロホブラスト(trophoblast)上の特殊化したFcγレセプター(FcγRn)によって、マスクされた母由来の自己抗体が、胎児に輸送されることを示したようにみられる。本発明の方法によるセロコンバージョンの前に、母親の血液および臍帯血は、aPL陰性であることを示し、そして検出されたIgMまたはIgA免疫グロブリンがなかったので、これらの発見は、セロコンバージョンの後で、臍帯血にて観察されるIgG aPLは、起源は母であるという論点を支持している。FcγRnを発現するトロホブラストは、HLA抗原を発現しないことも興味深い。
【0059】
実施例13
正常被験者由来の血漿試料を、上記の基本的な手順にしたがって、インキュベーション混合物中のRBCに代わってニトロプルシドナトリウム(SNP、200マイクロモーラー)を用いたという特徴で、インキュベートおよび試験した。図15は、試料がセロコンバージョンを提示したことを示している。
【0060】
SNPは、強力な酸化窒素(NO)ドナー(donor)であるので、これらの結果はNOラジカルが、自己抗体の放出に関与するという支持証拠が提供され、RBCからNO-供与体を与える役割を、RBCおよび固体粒子が果たすという説をさらに支持する。ニトロプルシドナトリウムは別として、他のフリーラジカル介在反応も自己抗体の放出を引き起こしうる。
【0061】
実施例14
正常被験者由来の血液試料を、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートし、ループス性抗凝固因子活性に関して試験した。ループス性抗凝固因子または阻害剤は、aPLの他の型であり、典型的に、機能的な実験室アッセイ(functional laboratory assay)によってのみ検出可能である。図16中の結果は、ループス阻害剤陰性個体から採取し、本発明の方法により処理したセロコンバートされた血液中に、強力なループス性抗凝固因子(LA)を示している。dRVVTアッセイ中のセロコンバートしたブロスに、正常な血漿を添加することで、最初に補正(initially corrected)した一方で、結果として1〜2時間のインキュベーションにより、阻害剤が再現された。この時間枠は、混合の研究によって導入された、LAまたは非マスク化抗体が関与するリン脂質結合血漿タンパク質に結合するのにかかる時間として提示される。1:1混合が、因子を欠いた試料中で、凝固時間を補正する十分なレベルの凝固因子を与えるので、凝固因子不足の可能性も除外する。希釈プロトロンビン時間(dPT)は、正常血漿の存在下では補正しなかった。そして凝固時間の延長の増加は、正常血漿とのインキュベーションの後に観察され、これは強力なループス阻害剤を示す。
【0062】
実施例15
五人の正常被験者由来の血液試料を、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートし、他の型の自己抗体の存在を蛍光顕微鏡によって試験した。これらの五人の個体からの血清および血漿試料は、本発明の指導にしたがった処理以前において、陰性であった。図17は、Hep−2細胞株を用いて同定された、追加の自己抗体の特異性を列挙している。抗核小体(強皮症関連)、抗ラミン(核孔で非常に明るい)、抗ミトコンドリア(細胞質性)、および抗中心小体が同定された。この結果は、本発明の方法によって放出された自己抗体は、ELISAに基づく試験以外の、異なる検出法である蛍光顕微鏡によっても検出可能であることを示している。この結果により、aPL以外の多くの型の自己抗体が、その血清および血漿が、ルーチンな実験室解析(routine laboratory analysis)において、これらの抗体に関して陰性であると試験された個体の血液中で、マスクされていることが確認される。
【0063】
これらの結果から、より多くの自己抗体特異性が、本発明により処理された血液を試験することにより、発見されることが期待される。
【0064】
実施例16
正常被験者由来の血液試料を、上記の基本的な手順にしたがってインキュベートし、フローサイトメトリーおよび蛍光共役型抗ヒトIgG抗体を用いて、単球との反応性に関して試験した。比較試験を、未処理プール正常ヒト血清(NHS)、本発明で使用した同一の正常被験者由来の血清、および陽性対照ヒト血清で実施した。(処理した血液は、リンパ球および好中球との自己反応性は示さなかった。データは示していない。)図18は、フローサイトメトリーによって定義したように、細胞の正常被験者の単球ポピュレーション(population)の、前方散乱(大きさ)および側方散乱(粒度)プロファイルを描写している。この細胞の単球ポピュレーションは、CD14モノクローナル抗体との反応性を示すことによって確認した。図19Aは、NHSとの抗単球応答性を示している。示された中央値応答性(median reactivity)は、直線スケール上で、743.50である。図19Bは、正常被験者由来の血清の自己抗単球活性を示しており、この被験者は、自己単球に対する抗体活性を持たない。示された反応性の中央値は、737.00である。図19Cは、本発明にしたがって処理した後、図19Bで示した被験者由来の血液試料の自己抗単球活性を示している。示された中央値は、864.00であり、強力な自己抗単球活性を示している。本発明の教示にしたがって処理した血漿が、1/8の希釈で使用されたという事実にもかかわらず、原液のポジティブコントロールの血清でよりも、単球に対してより大きい反応性を示した。したがって、本実施例は、本発明の方法にしたがって処理した血液または血清試料が、単球を特異的に標的とする自己抗体を放出することを示している。同様の結果が、本発明の教示にしたがって処理した場合に、他の個体からの4つのさらなる試料に関して、文献となっている。
【0065】
実施例17
RELISA(登録商標)スクリーニングアッセイを用いた、抗核抗体(ANA)の存在に関する比較試験を、未処理臍帯血;振とうせずに、本発明の方法にしたがってインキュベートした臍帯血;振とうした本発明にしたがい、処理した臍帯血;ANA陰性の健康的なドナー(ACSとして同定された)由来の未処理血清、および本発明の方法にしたがってインキュベートした、同一のANA陰性、および本発明の方法によって処理された健康的なドナー由来血清について実行した。図20で示したように、顕著な量のANAが、本発明の方法によって処理した臍帯血および血清中で同定された。図16および17での結果から、より多くの自己抗体特異性が、本発明によって処理された血液を試験することによって、発見されるのが待たれる。
【0066】
実施例18
自己抗体の放出の現象における赤血球細胞の役割を理解するために、赤血球細胞を、赤血球細胞の活性を模倣しうるより単純な成分で、置き換えた実験を設計した。本実験において、赤血球細胞と活性炭を、ニトロプルシドナトリウム(SNP)と塩化第二鉄で置き換えた。ニトロプルシドナトリウムが、強力な酸化窒素産出物(nitric oxide powder)であり、RBCがNO-のキャリヤーであると知られているので、この置換を実施した。塩化第二鉄(FeCl3ストック溶液、25μM)を、ヘモグロビン中の鉄との置換物として加えた。
【0067】
細菌培養増殖培地と、5mlのヒト血漿または血清、種々の濃度のニトロプルシドナトリウム(SNP、200μm)、および外因性(exogenous)の塩化第二鉄(4.1μm最終濃度)を含む培養ボトルを、赤血球細胞および活性炭の代わりに使用し、37℃にてインキュベートし、ついで56℃にて30分間加熱した。試料は、aPLのセロコンバージョンを示したが、IgGしか示さなかった(データは示していない)。
【0068】
この結果によって、NO-が、抗体非マスク化に関与していることが示唆され、また、培養ボトル中の固相物質(solid phase material )の機械的な作用が、赤血球細胞を分解させ、NO-を放出することが示唆された。あるいは、NOの放出または修飾によって、ヘモグロビン分子を、酸化還元反応に参加できるようにしうる。
【0069】
実施例19
非マスク化した自己抗体の効果が、血清または血液中の、自己抗体含む巨大分子構造の分解によるのかどうか、あるいは抗体自身の結合特異性の直接的な変化によるのかどうかを決定する目的で、市販されている静脈内免疫グロブリン(IvIg)を、ヒト血漿または血清と置き換えた一連の実験で実施した。市販されているIvIgは、多数のドナー、一般的には1,000〜10,000ドナーからの、プールした血漿のアルコール沈殿フラクションである。一般的には、IvIgは、主にIgGを含み、IgA、IgMおよび他の血漿タンパク質は含まない。未処理IvIgを、ELISA試験によって、自己抗体の存在について試験したときに、試験の結果は陰性である。その調製の方式のために、IvIgはまたリポタンパク質ミセル、小胞または他の巨大分子構造を含まない。したがって、IvIgが、インキュベーション処置の後に、自己抗体の存在に関して陽性であった場合に、自己抗体がIvIg調製物中に、すでに存在するIgG抗体の改変によって得られたものであり、自己抗体を遮蔽する構造または小胞の破壊によるのではないと考えるべきである。
【0070】
以下の実施例において、使用したIvIgの市販されている調製物は、凍結乾燥IvIg(イムノグロブリンイントラベノウス(ヒト)ガンマ−PI.V.、(Immune Globulin Introvenous (Human) Gammar-PI.V.)、アベンティスベーリング(Aventis Behring)、Kankakee、Illinois)であった。
【0071】
5グラムの凍結乾燥IvIgの市販されている調製物を、無菌リン酸緩衝食塩水(PBS、100mg/ml)中に再構築した。1.7mlの再構築したIvIg溶液を細菌培養増殖培地を含む培養ボトル(赤血球細胞または活性炭なし)に加え、37℃にて20時間インキュベートした。インキュベートした混合物は、セロコンバージョンと、aPL IgGの存在を示した(データは示していない)。(予想したように、IgGのみが検出され、IgAまたはIgMは検出されなかった。)
【0072】
同様の実験で、自己抗体が、室温、振動バイアル中でインキュベートした混合物中で検出されたが、37℃ほど良い結果ではなかった(結果は示していない)。
【0073】
約37℃でのIvIg細菌増殖培地混合物の加熱によって、さらなる自己抗体の増加はなかった。
【0074】
対照として、ボトルからだしたそのままのIvIgを、aPLおよび他の自己抗体に関して試験したが、結果は陰性であった。
【0075】
実施例20
実施例19において、自己抗体が、細菌増殖培地中の市販されているIvIg調製物をインキュベートすることによって得られることが示された。次の段階は、細菌培養増殖培地中のどの成分が、検出可能な自己抗体を産出する役割を果たしているかを決定することを試みることである。
【0076】
まず、2%トリプシン処理大豆ブロス(TSB)(それぞれ大豆のカゼインの膵臓消化対パパイヤ消化の比、17:3で、ペプトン類を含む)(残余物は水である(the remainder being water))中のIvIgを、振とうしながら、37℃にて20時間インキュベートした。インキュベートした混合物を、aPLの存在について試験し、結果は陰性であった。
【0077】
次に、IvIgを、大豆ブロス、ニトロプルシドナトリウム(SNP)およびヘミン(鉄(第二鉄)含有プロトポルフィリン)中の試験管内で、37℃にて20時間、振とうしながらインキュベートした。使用した量は、合計1mlの大豆ブロス中、60マイクロリットルのIvIg、5マイクロリットルのSNP、および5マイクロリットルのヘミンであった。インキュベートした混合物は、aPL、特にaPS(15MoM)およびaPE(41MoM)の存在に関して陽性であると試験された(データは示していない)。
【0078】
実施例21
一連の実験を実施して、ヘミンのみとのインキュベーションが、IvIg中、血漿または血清中での自己抗体の出現を引き起こすのに十分でありうるかを決定した。
【0079】
再構築した凍結乾燥IvIg(100mg/mlの濃度)を、ヘミンを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液中に加え、37℃にて20時間インキュベートした。使用した量は、総量1ml中300μlのIvIg溶液と5μlのヘミン溶液(75μg)であった。
【0080】
図21で示したように、インキュベートした混合物は、著しい量のaPSおよびaPE IgGを示しており、それほどにはないにせよ、aCL IgGを示した。
【0081】
血清または血漿を、同様の条件下でヘミンとインキュベートした場合、自己抗体は検出されなかった。
【0082】
実施例22
IvIgをヘミンとともにインキュベートしたとき、自己抗体の存在のために、陽性の結果が得られたが、血清または血漿はヘミンとインキュベートした場合に得られた陰性の結果は、血清または血漿は自己抗体の処理を阻害または干渉する物質を含みうるということを示唆している。
【0083】
一連の実験において、ヒト血清を漸増していった量(本発明者のもの)を、インキュベーションの前にバッチ(batch)に加えたという追加特徴で、実施例21の工程と同様に、IvIgをヘミンとともにTris緩衝液中で、37℃にて20時間、インキュベートした。各分離バッチ(separate batch)を、aPS、aCL、aPEおよびaPC自己抗体の存在について試験し、結果を図22に示している。図22で示した結果は、血清の漸増していった量が、自己リン脂質抗体の放出において、阻害効果を持ったことを示している。同様の結果が、血清を血漿に置換した場合にも見られた(データは示していない)。これらの結果に対する可能な解釈は、第二鉄状態の鉄分子を含み活性酸化剤として知られているヘミンが、結合部位の改変が自己抗原への結合をできるように、特定の免疫グロブリン分子の結合部位を酸化させるために働きうるということである。この工程は、血液中の基質(substance)、おそらく抗酸化剤によって阻害されうる。
【0084】
実施例23
ヒト血清(本発明者のもの)を、Tris緩衝液中1/10に希釈した。一連の実験において、1mlバッチ中のこの希釈した血清を、特に、0μl、10μl、25μlおよび50μlとともにヘミンの量を増加させ、インキュベートした。(以前に、IvIgからのそのような放出を引き起こすのに十分であったけれども、ヘミンそれ自身は、血液または血清から、自己抗体の放出を引き起こすのに十分ではなかったことがわかった。したがって、血清を希釈する目的は、抗酸化物質のような血液中にみられ、干渉する任意の基質の効果を希釈するためである。)バッチをaPS、aCL、aPEおよびaPC自己抗体の存在について試験し、結果を図23に示す。図23に示した結果は、0または10μlのヘミンを加えた場合には、希釈血清中で自己抗体の量が検出されず、25μlのヘミンで著しい量が検出されたことを示している。理由はわからないが、検出された自己抗体の量は、50μlのヘミンでは、少なかった。
【0085】
実施例24
次の一連の実験を、血液中に存在するビタミンCのような抗酸化剤が、自己抗体の放出を阻害しうるかどうかを決定するために設計した。一連の実験において、アスコルビン酸(ビタミンC)の増加量を、ヘミン含有緩衝液に加え、IvIgを添加する前および、インキュベーション前に、30分間混合した追加特徴で、IvIgをヘミンを含むTris緩衝液中でインキュベートした。図24に示したように、1mgのビタミンCで、ヘミン誘導によるaPE放出の約78%阻害があり、この量はビタミンCの生理的な濃度を表している。aPS放出での二相性曲線が存在し、低濃度でのビタミンCは酸化剤として働きえるが、高濃度では抗酸化剤(還元剤)となるという可能性が提起される。
【0086】
実施例25
次の一連の実験は、得られた結果において、ヘミンを溶解した賦形剤(vehicle)が得られた結果に影響を及ぼすかどうか、およびヘミン中の鉄原子が必要かどうかを決定するために設計された。一連の実験で、IvIgを、ヘミン、または他の添加物とともに、Tris緩衝液中でインキュベートした。特に、1例として、ヘミンをNaOHで可溶化した。もう1つの例としては、DMSOにて可溶化した。他の例では、ヘミンと同様の分子であるが、鉄(Fe+++)を含まないヘマトポルフィンIX(hpIX)を、ヘミンの代わりに使用し、NaOHまたはDMSOで可溶化した。他の例において、NaOHおよびDMSOを、対照として(ヘミンまたはhpIXなしで)試験した。図25において示したように、NaOH可溶化ヘミンの使用によって、自己抗体の存在について陽性の結果が得られ、一方でヘミン+DMSO、hpIX+NaOH、hpIX+DMSO、NaOHのみ、およびDMSOのみでは、陽性の結果が得られなかった。
【0087】
実施例26
ヘミンが、抗体の酸化を引き起こしていることをさらに確立するために、当モル量のヘモペキシン(Hpx)を、IvIg PBSヘミン混合物に加えた。Hpxは、ヘム鉄に対して、並はずれて高い結合親和性を持つ抗酸化剤分子である。SciPac(Kent、England)から購入した凍結乾燥Hpxを、10mg/mlで、PBS中に再構築した。図26で示したものは、IvIgGに対するヘミンの増加の濃度と、IvIgGに対し、ヘミンおよびヘミンと当モル濃度のHpxの増加の濃度によって計数した結果である、aPS酸化還元データである。ヘミンとHpx間の1:1結合相互作用が存在するので、Hpxが、ヘミン中に存在する第二鉄イオンの酸化還元能力を打ち消すことができた。
【0088】
実施例27
IvIgの酸化処理によって得ることができる自己抗体の広い範囲および活性を例示するために、一連のウエスタンブロットを、ヘミン処理IvIgまたは未処理IvIgを一次抗体として使用し、抗ヒトHRPタグ化共役物を対照として使用して、3つの異なる細胞株からの細胞溶解物を用いて設定した(HRP=ホースラディッシュペルオキシダーゼ)。ブロットを図27に示す。「B」溶解物は、リンパ腫の患者からのRajaと呼ばれるリンパ球細胞株である。「T」溶解物は、白血病患者からの、Jurkatと呼ばれる、Tリンパ球由来細胞株である。U87MG溶解物は、膠芽細胞腫細胞株(脳腫瘍)である。還元溶解物を、50mg/mlの濃度で、ゲル内に供した。ヘミン処理IvIg調製物を得るために、75μgのヘミンを、6mgのIvIgGを含む1mlのPBSと混和した。インキュベーションを、20時間37℃で実施した。図27において、ヘミン処置IvIgを一次抗体として用いたブロットを、「試験IgG(Test IgG)」と標識し、未処理IvIgを、一次抗体として用いたブロットを、「コントロール(Control)」と標識し、一次抗体なしで、抗ヒトHRPタグ化共役物を適用したブロットを、「二次(Secondary)」と標識した。ヘミン処理および未処理IgG調製物を、それぞれ、1/1000で希釈した。抗ヒトHRPタグ化共役物を、1/5000の希釈で使用した。
【0089】
これらのデータは、ヘミン処理IvIgが、活性を持たない未処理IvIgGおよび共役物対照と比較して、ヒト細胞成分に対して、十分な活性をもつことを明らかに示している。
【0090】
実施例28
次の実験を、ヘミン以外の酸化剤、特に、鉄を含まない酸化剤が非マスク自己抗体に対して効果的でありうるかどうかを決定するために実施した。総容量1mlのリン酸緩衝食塩水中の、100μMの濃度の25μgの過マンガン酸カリウム(KMnO4)と2mgのIvIgの混合物を、37℃にて一晩インキュベートした。インキュベート混合物中、aPCおよびaPSが検出可能であった。aCLが通常では検出されたが、aPEはされなかった(データは示していない)。後に、aPEが検出されなかった理由が、KMnO4が、ELISA試験で使用したPEリン脂質抗原を変更させるからであることがわかった。
【0091】
実施例29
自己抗体が、酸化反応によって非マスク化可能であることが示された後、次の疑問は、電源からの電動力のような電気化学的方法が同様の効果を達成可能であるかどうかであった。
【0092】
IvIgを、リン酸緩衝食塩水溶液中に溶解し、別個の実験で、亜鉛メッキ鋼、銅またはステンレス鋼電極を、9ボルト電池の陽極および陰極に接続し、1〜2分間溶液中に浸した。この期間、泡立ちが溶液中で確認され、PBS溶液の色が変化した(銅ワイヤを使用した場合青色、ステンレス鋼ワイヤを使用した場合褐色、亜鉛メッキ鋼ワイヤを使用した場合緑色)。図28Aおよび28Bで示したように、処理した溶液が、aPL依存試験にてaPS、aCL、aPEおよびaPC自己抗体の存在下で陽性であるとわかり、また、aPL非依存試験でaPS、aPEおよびaPC自己抗体の存在に関して陽性であった。
【0093】
実施例30
溶液との金属の相互作用をさけ、それによって、電流の効果のみを決定するために、黒鉛電極を、金属電極の代わりに使用した。黒鉛は不活性であるが、反応に参加することなしに、導電性溶液中に、電子を通過させることができる。
【0094】
IvIgを、リン酸緩衝食塩水溶液中に溶解し、6ボルト電池の陽極および陰極に接続した黒鉛電極を、60秒間この溶液中に浸した。図29で示したように、処理した溶液が、aPS、aPEおよびaPC自己抗体の存在に関して陽性であるとわかった。
【0095】
実施例31
リン酸緩衝食塩水中のIvIgの溶液に、電流を流すことを含む実験において、pHの著しい増加が観察され、これはおそらくNaOHの形成によるものである。反応を生理学的pHレベルに維持するために、細胞培養培地、RMPIを、リン酸緩衝食塩水と置換した。
【0096】
次の一連の実験を、自己抗体の非マスク化における、電流への暴露の時間の効果を決定するために使用した。IvIgをRMPI中に溶解し、細胞培養培地、および6ボルト電池の陽極および陰極に接続した黒鉛電極を、時間間隔を変えて溶液中に浸した。図30で示したように、依存aPLの最大放出を、電流への暴露の60秒後に得た。不思議なことに、2分間と4分間のあいだで、aPLの量が減少したか、あるいは無くなった。
【0097】
実施例32
先の実験によって、aPL抗体を電流への暴露の後に、IvIgから得ることが出来るが、aPL抗体がさらなる電流への暴露の後に消えたことが示されたので、次なる疑問は、自己抗体の非マスク化が、電流によって逆転可能であったかどうかである。すなわち、ポジティブコントロールの血清を、自己抗体がもはや検出可能ではないように処理可能であるか、どうかである。
【0098】
別の実験において、1:400の希釈でのaCL陽性対照血清、1:75の希釈でのaPEポジティブコントロールの血清、および1:400の希釈でのaPSを、6ボルト電池の陽極および陰極に接続した黒鉛電極を240秒間まで浸すことによって電流に暴露した。図31A〜31Cで示したように、それぞれのコントロールの血清は、そのそれぞれの特異性に対し陰性となった。
【0099】
実施例33
実施例32での結果に基づいて、次の求められる疑問は、自己免疫疾患を患う患者の自己抗体が、患者血清を電流に暴露したときに、再マスク化されるかどうかである。aPSおよびaCLのレベルが増加した患者からの血清を、リン酸緩衝食塩水で1/400に希釈し(PBS中での希釈は、10〜15分で、1,000のOD値を達成する量である)、6ボルト電池の陽極および陰極に接続した黒煙電極を、時間間隔を変えてこの溶液中に沈めた。図32で示したように、自己免疫患者の血清中で検出可能なaCLおよびaPSの量は、30秒後に著しくに減少し、2分後にはもはや観察されなかった。これらの実験を、他の患者の抗体で繰り返し、同様の結果が得られた(データは示していない)。
【0100】
実施例34
初期の実験で、非常に特異的で高いタイターのIgA aPEを持つ患者からの血液試料を、日常的に用いられる微生物学培養ボトル中で、ヘミンに暴露した。ヘミンへの暴露の後、そのIgA aPEが消えたことが観察され、IgG aPS、aCL、およびもっとも飛躍的にIgG aPEの出現が、aPL ELISAで検出された。この時点で、この現象に対する説明は明らかではなかった。
【0101】
電流を用いるより速い非マスク化工程の開発に伴って、高いaPEを持つ他の患者の、より早く結果を確認することが可能になった。この実験において、高いaPEを持つ患者からの血清を1/75までPBS中で希釈し、6ボルト電池の陽極および陰極に接続した黒鉛電極を、時間間隔を変えてこの溶液に浸した。図33で示したように、aPEは、6ボルトDC電流適用で30秒以内に検出されなくなり(マスク化され)、同時にaPSおよびaCL IgGの非マスク化と検出された。新規に非マスク化されたaPLは、30秒付近でピークとなり、暴露の2〜4分後に再びマスク化となった。
【0102】
以上の実験によって取り組んだ重要な技術的観点は、aPE患者を、アッセイで使用した血漿タンパク質希釈液から離して処理したことであり、この場合は、10%成体ウシ血漿(ABP)であった。示してはいない他の実験にて、希釈した患者の血清を、ELISA希釈液にて使用した血漿タンパク質を加える前に、6ボルトEMF状態に暴露した。これらの実験の重要な観点は、EMF効果が、患者の抗体に適用されており、希釈液中で使用した血漿タンパク質中のEMF変化には適用していないことを示すことである。
【0103】
これらの実験データは、酸化還元反応が、異なる抗体特異性の出現および消失を決定しているという所見を支持する。これらの実験からまた学んだことは、酸化還元効果が、抗体結合部位(群)、抗体分子のFab部位に限定されるように見えることである。このことは、ELISAで使用した異種抗ヒト抗体標識共役物(heterologoous antihuman antibody-labeled conjugates)が、抗体分子の異なる抗体重鎖標的(Fc部位)を認識し続けている共役物として影響されなかったからである。したがって、ヒト抗体が、酸化還元によって消費されず、破壊されないので、最も説得力のある説明としては、抗体分子のFab部位中の抗体結合部位が、酸化/還元過程において参加可能な接近可能な電子(accessible electrons that can participate in the oxidation/reduction process)を含む、というものである。
【0104】
実施例35
次の実験は、自己抗体以外の血漿タンパク質が、酸化−還元によって改変した結合特異性を持ちうるかどうかを見るために実施された。これらの実験において、10%成体ウシ血漿(ABP)溶液、タンパク質依存性のaPL結合を決定するために使用したリン脂質結合タンパク質を含む同様の溶液を、時間間隔を変えて、6ボルト電池からの電流に暴露した。ELISAに用いた処理したABP試料を、ついで、ABPの処置がELISAの結果に影響を与えるかを見るために、aPS、aCLおよびaPE陽性患者の血清で、アッセイした。図34で示したように、時間ゼロ(未処理ABP)で、陽性患者の血清は、いつもABP中でaPL応答性を示す。10%ABPを、長期間、酸化−還元に暴露(EMF)した場合、検出されたaPLの量は減少し、2分後では、aPE陽性血清はもはや陽性ではない。これらの結果は、患者のaPL応答性に反応する血漿タンパク質が、電流への暴露によって改変されることを示唆している。たとえば、キニノゲンは、aPE依存的な反応で陽性ELISAシグナルを与えるのに関与している血漿蛋白質であるが(キニノゲンはPEに結合し、ついで抗体がキニノゲンに結合する。しかしながら、aPEは、PEまたはキニノゲンに、非依存的には結合しない)、このことは、ABP試料中のキニノゲンが、酸化還元暴露によって変更されていることを示している。aCLはまた、240秒間暴露にて陰性であり、この患者の血清が、aPL ELISAにて陽性シグナルを産出するために、プロトロンビンおよび/またはベータ2糖タンパク質(または両方が関与しうる)いずれかを要求するので、これらの2つのタンパク質は、酸化還元反応によって変更されたに違いない。同様の2つの血漿タンパク質が、aPS試料中に含まれる。
【0105】
明らかに、本発明の多くの改変および変化は、上記教示に関して可能である。したがって、付随する請求項の範囲内で、本発明は、特に記述された以外にも実施しうることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】下記記述の多くの実施例にて使用した、イン−ハウス(in-house)酵素免疫測定アッセイ(ELISA)によってアッセイした、特定の抗リン脂質抗体(aPL)を列記している表である。
【図2】実施例の最初の項目で記述した方法にしたがって、インキュベートした、正常なaPL陰性被験者由来の血液試料に関する、aPLアッセイ結果を要約している表である。
【図3】実施例の最初の項目で記述した方法にしたがって、インキュベートした、7人の正常aPL陰性個体由来の血液試料のaPLアッセイ結果を要約している構成表である。
【図4】手順中ヒトRBCをウマ赤血球細胞(RBC)で置換したことを特徴とし、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートした正常aPL陰性被験者からの血清試料についての、aPLアッセイ結果を要約している表である。
【図5】ウマ血清をヒト血清の代わりに使用したことをのぞいて、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがって、実施した血清試料のインキュベーションのaPLアッセイ結果を要約している表である。
【図6】インキュベーションを、室温(22℃)にて実施したことをのぞいて、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがって、インキュベートした正常aPL陰性被験者由来の血液試料についてのaPLアッセイ結果を要約している表である。
【図7】0.7mm Degalan(プラスチック)ビーズを、インキュベーション混合物中、粒子個体として使用した特徴で、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートした、正常aPL陰性被験者からの血液試料に関する、aPLアッセイ結果を要約している表である。
【図8】インキュベーション混合物を、振とうまたは振動するかわりに、静止させたままにした以外は、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートした正常aPL陰性被験者由来の血液試料についてのaPLアッセイ結果を要約している表である。
【図9】インキュベーション混合物を、56℃まで30分間加熱した特徴で、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートした、正常aPL陰性被験者由来の血液試料についてのaPLアッセイ結果を要約している表である。
【図10】異なる供給業者(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、Sparks、Md)からの細菌培養増殖培地を、Biomerieuxからの細菌培養増殖培地の代わりに使用したことを特徴とし、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートした、正常aPL陰性被験者由来の血液試料についてのaPLアッセイ結果を要約している表である。
【図11】インキュベーションを、嫌気性条件下で実施したことを特徴とし、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートした、正常aPL陰性被験者由来の血液試料について、aPLアッセイ結果を要約している表である。
【図12】K562細胞(ヒト腫瘍細胞株)をRBCの代わりに用いたことを特徴とし、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートした正常aPL陰性被験者由来の血清試料についてaPLアッセイ結果を要約している表である。
【図13】細菌培養増殖培地からヒト細胞を増殖するために用いた細胞培養培地で置き換えたことを除いて、正常aPL陰性被験者由来の血液試料についてのaPLアッセイ結果を要約している表である。
【図14】正常のaPL陰性母親および幼児からの臍帯血試料についてのaPLアッセイを要約している表である。
【図15】ニトロプルシドナトリウム(SNP)を、インキュベーション混合物中でRBCの代わりに用いたことを特徴とし、実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートした正常aPL陰性被験者由来の血液試料についてのaPLアッセイ結果を要約している表である。
【図16】実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートした、血液試料に関する、ループス抗凝固活性の結果を要約している表である。血液試料は、その血液が、本発明の工程によるセロコンバージョンの前に、ループス抗凝固は陰性である対象から得た。
【図17】実施例の最初の項目で記述した方法にしたがってインキュベートする、血液試料中で同定された、他の型の自己抗体を列記している表である。列記した抗体は、免疫蛍光顕微鏡によって同定した。
【図18】フローサイトメトリーによって、密度勾配分離したヒト白血球細胞に関して定義した、細胞の単球集団の、前方散乱(大きさ)および側方散乱(粒度)プロファイルを示しているグラフである。
【図19A】プールした正常ヒト血清(NHS)の単球応答性を示しているフローサイトメトリーヒストグラムである。ヒストグラム中に、存在するならば、抗体活性を、水平軸にそって中央チャネル値(ログスケール)でのシフトによって測定した。
【図19B】単一な正常被験者由来の血清の単球応答性を示しているフローサイトメトリーヒストグラムである。ヒストグラム中に、存在するならば、抗体活性を、水平軸にそって中央チャネル値(ログスケール)でのシフトによって測定した。
【図19C】実施例の最初の項目で記述した方法にしたがって処理した図19Bで示した被験者由来の血液試料の、単球応答性を示しているフローサイトメトリーヒストグラムである。ヒストグラム中に、存在するならば、抗体活性を、水平軸にそって中央チャネル値(ログスケール)でのシフトによって測定した。
【図19D】陽性対照血清の単球活性を示しているフローサイトメトリーヒストグラムである。ヒストグラム中に、存在するならば、抗体活性を、水平軸にそって中央チャネル値(ログスケール)でのシフトによって測定した。
【図20】RELISA(登録商標)スクリーニングアッセイを用いて、種々の試料の、抗核抗体(ANA)試験の結果を要約している表である。
【図21】トリス緩衝液中で、ヘミンとともにインキュベートした、IvIgの試料に関する、aPLアッセイ結果を要約している表である。
【図22】調製物に加えた、ヒト血清(μl)の量に応じて、ヘミンとともにインキュベートした、連続IvIg調製物中で検出された、(光学密度、ODによって測定されたような)aPS、aCL、aPEおよびaPCの量を示しているグラフである。
【図23】ヘミン(μl)の量に応じて、ヘミンとともにインキュベートした調製物に加えた一連のヒト血清調製物中で検出された(光学密度、ODによって測定されたような)aPS、aCL、aPEおよびaPCの量を示しているグラフである。
【図24】調製物に加えたビタミンC(μl)の量に応じて、ヘミンとビタミンCとともにインキュベートした、連続IvIg調製物中で検出された、(多重平均、MoMsによって測定されたような)aPS、aCL、aPEおよびaPCの量を示しているグラフである。
【図25】NaOH可溶化ヘミン、DMSO可溶化ヘマトポルフィリンIX(hpIX)、NaOH可溶性hpIX、NaOHのみ、DMSOのみ、およびDMSO可溶性ヘミンとともにインキュベートした、連続IvIg調製物中で検出された、(多重平均、MoMsによって測定されたような)aPS、aCL、aPEおよびaPCの量を示しているグラフである。
【図26】増加ヘミン量、および増加ヘミンおよびヘモペキシン(hpx)とともにインキュベートした一連のIvIg調製物中で検出された、(光学密度、ODによって測定されたような)aPSの量を示しているグラフである。
【図27】抗ヒトHRPタグ化共役物を対照として使用したブロットとともに、一次抗体として使用したヘミン処理IvIgおよび未処理IvIgで、3つの細胞溶解物を得たウエスタンブロットを示している。
【図28】図28Aおよび28Bは、9ボルト電池に接続した電極を、IvIgを含むリン酸緩衝食塩水溶液中に2分間浸した、一連のIvIg調製物中で検出した(多重平均、MoMsによって測定されたような)aPL非依存性およびaPL依存性aPS、aCL、aPEおよびaPCの量を示しているグラフである。
【図29】6ボルト電池に接続した電極をIvIgを含むリン酸緩衝食塩水溶液中に60秒間浸した、一連のIvIg調製物中で検出した、(多重平均、MoMsによって測定されたような)aPS、aCL、aPEおよびaPCの量を示しているグラフである。
【図30】浸す時間に応じて、6ボルト電池に接続した電極を、IvIgを含むリン酸緩衝食塩水溶液中に浸した、一連のIvIg調製物中で検出した(多重平均、MoMsによって測定されたような)aPS、aCL、aPEおよびaPCの量を示しているグラフである。
【図31A】6ボルト電池に接続した電極へ、240秒間の暴露前後で、対照溶液中で検出された、それぞれ(多重平均、MoMsによって測定されたような)aCLの量を示しているグラフである。
【図31B】6ボルト電池に接続した電極へ、240秒間の暴露前後で、対照溶液中で検出された、それぞれ(多重平均、MoMsによって測定されたような)aPSの量を示しているグラフである。
【図31C】6ボルト電池に接続した電極へ、240秒間の暴露前後で、対照溶液中で検出された、それぞれ(多重平均、MoMsによって測定されたような)aPEの量を示しているグラフである。
【図32】aPSおよびaCL陽性患者のPBS希釈血清中で検出した、(多重平均、MoMsによって測定されたような)それぞれ、aPSおよびaCLの量を示しているグラフである。この実験で、6ボルトの電池に接続した黒鉛電極を、様々な時間量で希釈血清中に浸した。
【図33】aPE陽性患者のPBS希釈血清中で検出された、それぞれ、(多重平均、MoMsによって測定されたような)aPS、aCL、aPEおよびaPCの量を示しているグラフである。この実験で、6ボルトの電池に接続した黒鉛電極を、様々な時間量で希釈血清中に浸した。
【図34】aPE陽性患者のPBS希釈血清中で検出された、それぞれ、(光学密度、ODによって測定されたような)aPS、aCL、およびaPEの量を示しているグラフである。この実験で、タンパク質依存aPL結合の決定において使用した10%成体ウシ血漿(ABP)を、様々な時間量で、ABP中に、6ボルト電池に接続した黒鉛電極を浸すことによって処置した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体培地中に懸濁または溶解した、少なくとも1つの血漿タンパク質からなる組成物を提供する工程であって、前記血漿タンパク質がその酸化還元状態の変化によって、可逆的に改変可能である結合特異性を有する工程、および
前記組成物を前記血漿タンパク質の結合特異性の可逆的な改変を引き起こすのに十分な酸化剤、または電位に暴露する工程からなる方法。
【請求項2】
前記液体培地が、希釈または未希釈の全血、血清または血漿である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、液体培地中に懸濁または溶解した静脈内免疫グロブリン(IvIg)からなる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記血漿タンパク質が、IgG、IgAまたはIgMアイソタイプの抗体である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記血漿タンパク質が、IgG、IgAまたはIgMアイソタイプの自己抗体である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記血漿タンパク質が、抗体以外の血漿タンパク質である請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤が、ヘミンである請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤が、KMnO4である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤が、クロロフィルである請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤が、電子供与体として働く他の分子に対する電子受容体として働くことによって還元される能力を有する分子である請求項1記載の方法。
【請求項11】
生体液または生体液の抽出物からなる組成物を提供する工程であって、前記生体液またはその抽出物が、酸化還元状態での変化によって改変可能な結合特異性を有する結合部位を持つ少なくとも1つのマスクされた循環タンパク質からなる工程、
前記組成物を、前記マスクされた循環タンパク質の結合特異性の改変を引き起こすのに十分な酸化剤または電位に暴露し、それによって、循環タンパク質を非マスク化する工程、および
前記組成物中の非マスク化循環タンパク質を検出し、または前記組成物から非マスク化循環タンパク質を回収する工程からなる方法。
【請求項12】
前記生体液が、希釈または未希釈全血、血清、血漿または胎盤の臍帯血である請求項11記載の方法。
【請求項13】
抗体含有生体液、または生体液の抗体含有抽出物から、自己抗体を得て単離する方法であって、前記生体液またはその抽出物が、本方法を実施する前に、自己抗原への結合が不可能であり、したがって、レセプター−リガンド結合に基づくアッセイによって検出不可能である自己抗体を含むものであり、前記方法が、
前記生体液またはその抽出物を、自己抗体の結合特異性を改変し、前記自己抗体が、抗原に結合可能になり、それによって、レセプター−リガンド結合分離法によって、前記生体液またはその抽出物から検出可能および回収可能になるのに十分な、酸化剤、またはDC電流へ暴露する工程、および
前記生体液から、自己抗体を回収する工程からなる方法。
【請求項14】
前記生体液が、希釈または未希釈全血、血清または血漿である請求項13記載の方法。
【請求項15】
生体液の前記抗体含有抽出物が、静脈免疫グロブリン(IvIg)である請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記酸化剤が、ヘミンまたはクロロフィルである請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記酸化剤が、KMnO4である請求項13記載の方法。
【請求項18】
自己抗体の抗原結合部位を非マスク化する自己抗体の酸化により引き起こされる自己免疫疾患を処置する方法であって、前記方法が、自己免疫疾患を有する被験者に、前記被験者における自己抗体を不活性化させるのに十分な量の抗酸化剤を投与する工程からなる方法。
【請求項19】
自己抗体の抗原結合部位を非マスク化する自己抗体の酸化により引き起こされる自己免疫疾患を処置する方法であって、前記方法が、
自己免疫疾患を有する被験者から、血液試料を得る工程、
前記血液試料を、前記血液試料中の非マスク化自己抗体を不活性化するのに十分な抗酸化剤またはDC電流に暴露する工程、および
血液試料を被験者に戻す工程からなる方法。
【請求項20】
試料中で検出可能な自己抗体の量および/または種類を決定するために、被験者からの血液、血清または血漿試料をアッセイする工程、
酸化剤またはDC電流に暴露することによって、被験者からの血液、血清または血漿試料を処置する工程、
処置した試料中で検出可能な自己抗体の量および/または種類を決定するために、被験者からの処置した血液、血清または血漿試料をアッセイする工程、および
未処置の試料中で検出可能な自己抗体の量および/または種類を、処置した試料中で検出可能な自己抗体の量および/または種類と比較する工程からなる方法。
【請求項21】
含有された少なくとも1つのタンパク質の結合特異性を改変するのに十分な酸化剤またはDC電流に暴露した、生体液、または生体液のタンパク質含有抽出物を含む製品であって、前記結合特異性が特異的な抗体またはリガンドに関する結合能力を有さないタンパク質から、特異的な抗体またはリガンドに関する結合能力を有するタンパク質に改変された製品。
【請求項22】
前記生体液が、全血、血清または血漿である請求項21記載の製品。
【請求項23】
前記生体液のタンパク質含有抽出物が、静脈免疫グロブリン(IvIg)である請求項21記載の製品。
【請求項24】
前記少なくとも1つのタンパク質が、抗体である請求項21記載の製品。
【請求項25】
前記少なくとも1つのタンパク質が、自己抗体である請求項21記載の製品。
【請求項26】
前記酸化剤が、ヘミンまたはクロロフィルである請求項21記載の製品。
【請求項27】
前記酸化剤がKMnO4である請求項21記載の製品。
【請求項28】
液体培地中に懸濁または溶解した、少なくとも1つの血漿タンパク質からなる組成物を提供する工程であって、前記血漿タンパク質がその酸化還元状態の変化によって、改変可能である結合特異性を有する工程、および
前記組成物を前記血漿タンパク質の結合特異性の改変を引き起こすのに十分な酸化剤、または電位に暴露する工程であって、前記結合特異性が特異的な抗体またはリガンドに関する結合能力を有さない前記血漿タンパク質から、特異的な抗体またはリガンドに関する結合能力を有する血前記漿タンパク質に、改変された工程からなる方法。
【請求項29】
液体培地中に懸濁または溶解した、少なくとも1つの血漿タンパク質を含む組成物を提供する工程であって、前記血漿タンパク質がその酸化還元状態の変化によって、改変可能である結合特異性を有する工程、および
前記組成物を前記血漿タンパク質の結合特異性の改変を引き起こすのに十分な酸化剤、または電位に暴露する工程、および
改変された結合特異性を有する前記血漿タンパク質を検出する工程からなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図31C】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2006−526027(P2006−526027A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515229(P2006−515229)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/017889
【国際公開番号】WO2004/111608
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505430481)
【Fターム(参考)】