酸化還元電位水溶液を使用する皮膚潰瘍の治療方法
少なくとも24時間安定である酸化還元電位(ORP)水溶液を投与することによる、患者の皮膚潰瘍及び関連する合併症を治療する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この特許出願は、2006年1月20日に出願された米国仮特許出願第60/760,635号;2006年1月20日に出願された同第60/760,567号;2006年1月20日に出願された同第60/760,645号;2006年1月20日に出願された同第60/760,557号;2005年10月27日に出願された同第60/730,743号;2005年5月2日に出願された同第60/676,883号;2005年3月31日に出願された同第60/667,101号;及び2005年3月23日に出願された同第60/664,361号の利益を主張しており;これらのそれぞれは参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
皮膚潰瘍は、重大な臨床上の問題であり、例えば、壊疽、全身性炎症症候群、及び敗血症などのよりいっそう重篤な合併症を引き起こし得る。これらの合併症が四肢の皮膚潰瘍で起こった場合、現在の治療レジメンは、患者に疑う余地のない影響がある大腿切断(AKA)、下腿切断(BKA)、および指切断を含む切断を必要とする可能性がある。
【0003】
皮膚潰瘍には、静脈不全症、動脈不全症、虚血性の圧迫、及び神経障害性を含む多くの原因がある。静脈性皮膚潰瘍は、脚皮膚潰瘍の最も一般的なタイプであり、男性よりも女性の方が罹患しやすい。静脈性皮膚潰瘍は、静脈性高血圧及び静脈瘤と関連している。典型的には、静脈性皮膚潰瘍は、浅くて痛みを伴う。動脈性皮膚潰瘍は、心臓病又は脳血管疾患、脚の跛行、インポテンス、及び脚尖部の痛みの病歴のある高齢の患者に典型的に見られる。付随性の静脈疾患が動脈性潰瘍の症例の最大25%に存在する。皮膚の褥瘡は、組織虚血に由来する。皮膚の褥瘡は一般的に深く、またしばしば骨の隆起の上に位置する。神経障害性の皮膚潰瘍は、外傷、長期の圧迫、例えば糖尿病、神経障害又はハンセン病の患者における足の底面と通常関連している。
【0004】
静脈不全症は下肢皮膚潰瘍の一般的な原因であり、全症例の80%までを占めている。合衆国における静脈不全症を持つおおよそ700万人のうち、おおよそ100万人が静脈性脚潰瘍を発症している。静脈性脚潰瘍のコストは合衆国で1年あたり10億ドルであると見積もられており、患者あたりの平均コストは40,000ドルを超えている。静脈性皮膚潰瘍は、歳をとるにつれてより一般的になり、60歳と80歳との間の年齢で最大の有病率である。しかしながら、より若い患者もまた静脈性皮膚潰瘍を発症し、大きな罹患率、及び労働からの離脱時間をもたらしている。de Araujo他,ANN.INTERN.MED. 2003 138(4):326−34。
【0005】
皮膚の褥瘡は、高齢者における罹患率の別の主要な原因であり、また、老人ホームに入っている人において医療及び看護のコストを劇的に増大させる最も重要な介護の問題である。特に脚の皮膚の褥瘡は非常に一般的であり、高齢の動けない患者の間では治癒するのが難しい。くるぶし、かかと、又はその両方における皮膚の褥瘡は、皮下組織に乏しい骨の隆起上の小さい領域に集中した圧迫、せん断、又は摩擦の結果として発症する。治療されない皮膚の褥瘡は悪化して蜂巣炎、慢性感染症、又は骨髄炎に繋がる可能性がある。Landi他,ANN. INTERN. MED. 2003 139(8):635−41。
【0006】
糖尿病もまた足皮膚潰瘍のよくある原因である。米国における糖尿病の罹患率は、約500万人の診断未確定の人も含めると、現在約6%、即ち1800万人を超えている。さらに、2型糖尿病は米国において増加しているようである。糖尿病は米国における非外傷性の切断原因の筆頭である。米国の糖尿病患者における下肢切断(LEA)の総数は、毎年80,000を超えている。糖尿病性のLEA後の3年死亡率は、35%と50%との間である。米国での糖尿病性のLEAに対する直接的なコストは、2001年の額で、つま先切断についての22,000ドルから、大腿切断についての51,300ドルにまで及ぶ。糖尿病患者において、足の皮膚潰瘍はLEAの約85%に先行している。米国の糖尿病患者において、新たな足の皮膚潰瘍の1年間での発生率は、1.0%から2.6%にまで及ぶ。V. R. Driver他, DIABETES CARE 2005 28:248−253.
【0007】
従来の糖尿病性足潰瘍の治療は、清拭、血管再開通術、ドレッシング、及び存在するあらゆる感染症の治療を含む。清拭は、感染症の可能性を低くするために、全ての残屑及び壊死物質を取り除くべきである。一般的に推奨されるのは、非接着性のドレッシングが常に糖尿病性足潰瘍を覆うべきであり、閉鎖ドレッシングが感染の危険を低くし得るということである。
【0008】
湿性壊疽及び乾燥壊疽の両方が糖尿病性の足で起こり得る。湿性壊疽は、軟部組織感染症又は潰瘍に続発する敗血性動脈炎によって引き起こされる。乾燥壊疽は、動脈灌流の重篤な減少に続発し、重篤な慢性虚血において起こる。外科的な清拭が続く血管再開通術は糖尿病における足潰瘍の治療に推奨されている。抗生物質は治療の重要な要素であるが、抗生物質のみでの感染症の治療は通常、糖尿病性足感染症の大部分を解消するには不十分である。米国糖尿病協会合意声明(American Diabetes Association Consensus Statement),DIABETES CARE 2003 26:3333−3341。従って、とりわけ糖尿病における足皮膚潰瘍治療の更なる方法に対する必要性が存在する。
【0009】
感染症が臨床上の役割を持つ慢性皮膚潰瘍の範囲は、重症虚血肢(CLI)、糖尿病性足潰瘍、下腿切断(BKA)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、及び慢性静脈不全症(CVI)を含む。これらの状態における感染症の役割は、軽微なものから重篤なものまで及び得るが、たいていの症例において重大な役割を持っているようである。感染した皮膚潰瘍は、全身への抗生物質をしばしば必要とし、また、下肢にある場合は切断を必要とする可能性もある。
【0010】
切断の必要性を減少させる皮膚潰瘍の治療方法を開発する必要がある。85歳を超える患者において、一次切断術(PA)は、13〜17%という極度に高い死亡率をいまだに持っている。最高リスク患者において、多くが末期であるため、切断後30日の周術期死亡率は4〜30%、罹患率は20〜37%にまで及び得る。CLI患者は、感染症、敗血症、及び進行性腎不全を患う。BKA後のリハビリテーションの成功は、患者の3分の2未満で達成され;大腿切断後、その割合は患者の半分未満である。全体としては、切断を必要とする全患者の50%未満が完全な可動性をこれまで達成している。CLI患者については、3年後50%を超える死亡率であり、下肢救済に対してBKA後の死亡率は2倍であるという、芳しくない全体的な予後がある。更に、合衆国におけるCLI治療の全コストは、1年あたり100億〜200億ドルと見積もられている。同様に、切断患者のフォローアップ又は長期のケア及び治療の年間コストは、肢が救済された場合よりも顕著に大きい。
【0011】
潰瘍のタイプ及び重篤度によっては、臨床像は、急性の全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、又は敗血性ショックへと進行し得る。全身性炎症反応症候群(SIRS)は、末端器官の損傷も同定可能な菌血症も伴わない、全身炎症の特徴を含む症候群である。SIRSは、敗血症、重症敗血症、又は敗血性ショックからは分けられ異なっている。SIRSから敗血症への変わり目の要所は、血中の同定された病原体の存在である。SIRSの病態生理学は、以下に限定されないが、補体活性化、サイトカイン及びアラキドン酸代謝物分泌、細胞性免疫の刺激、凝固カスケードの活性化、及び液性免疫機構を含む。臨床的にはSIRSは、頻脈、頻呼吸、低血圧、低灌流、乏尿、白血球増加又は白血球減少、発熱又は低体温、代謝性アシドーシス、及び量支持の必要性によって特徴付けられる。SIRSは、全ての臓器システムに影響する可能性があり、多臓器不全症候群(MODS)をもたらす可能性がある。このように、初期のステージ(即ち、SIRS)でさえ、潰瘍部位及び血中において、多臓器不全の確立及び死に寄与する炎症性サイトカインの蓄積がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、皮膚潰瘍を治療する新たな方法の必要性が残されている。本発明はそのような方法を提供する。本発明のこれら及び他の利点は、更なる本発明の特徴と共に、本明細書に与えた本発明の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本発明は、患者の状態を予防又は治療する方法を提供し、該方法は治療有効量の、少なくとも約24時間安定である酸化還元電位(ORP)水溶液を患者に投与することを含む。状態は、例えば、本発明のORP水溶液で治療可能な病状、病気、傷害、アレルギーなどを含み得る。
【0014】
本発明は、少なくとも約24時間安定である酸化還元電位(ORP)水溶液を投与することによる患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。本発明はまた、アノード水及びカソード水を含む酸化還元電位水溶液を投与することによる患者の皮膚潰瘍を治療する方法にも関する。一つの実施態様において、本発明の方法で使用されるORP水溶液は、1種以上の遊離塩素種を含み、また少なくとも約2ヶ月間安定である。ORP水溶液は、好ましくはアノード水及びカソード水を含む。
【0015】
別の実施態様において、ORP水溶液は約15ppmから約35ppmの量の次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの量の次亜塩素酸ナトリウムを含み、少なくとも約1週間安定で、且つ約6.2から約7.8のpHを有する。
【0016】
本発明はまた、患者の皮膚潰瘍を治療する方法も提供し、該方法は、ORP水溶液で皮膚潰瘍を洗浄及び/又は洗い、ORP水溶液中に皮膚潰瘍を浸し、ORP水溶液で飽和した創傷ドレッシングで皮膚潰瘍をドレッシングし、そして任意で、洗い、洗浄し、浸し、そしてドレッシングする工程を繰り返すことを含み、ここでORP水溶液は好ましくは約6.4から約7.8のpHを有する。一つの実施態様において、皮膚潰瘍は少なくとも約2分間浸され、そして、任意で、少なくとも約2分間乾かされ、そしてドレッシングが適用される。
【0017】
本発明は更に、患者の皮膚潰瘍の微生物負荷を減少させる方法を提供し、該方法は、皮膚潰瘍における微生物負荷及び局所炎症過程を減少させるのに有効な量でORP水溶液を患者に投与することを含む。本発明は更に、再発率を減少させ、四肢潰瘍と関連する切断の可能性を減少させる方法を提供し、且つ該方法は、有効量のORP水溶液を患者に投与することを含む。
【0018】
本発明は更に、壊疽に付随し、且つSIRS又は敗血症の発症と関係する多臓器不全を予防する方法を提供し、該方法は、少なくとも約24時間安定である治療有効量の酸化還元電位(ORP)水溶液を患者に投与して、皮膚潰瘍部位で炎症細胞からの新たな炎症促進性分子の分泌を阻害し、皮膚潰瘍の微生物負荷を減少させることを含む。ORP水溶液は、患者の皮膚潰瘍組織をこの溶液に接触させることによって投与され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、酸化還元電位(ORP)水溶液を皮膚潰瘍を治療するのに有効な量で患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供し、ここで溶液は約6.4から約7.8のpHを有し、且つ少なくとも約1週間安定である。ORP水溶液は、好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定であり、より好ましくは少なくとも約1年間安定である。ORP水溶液は、好ましくは約7.4から約7.6のpHを有する。
【0020】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、アノード水及びカソード水を含み得る。カソード水は好ましくは、溶液の約10体積%から約50体積%の量で、ORP水溶液中に存在する。カソード水はより好ましくは、溶液の約20体積%から約40体積%の量で存在する。或いは、アノード水は、溶液の約50体積%から約90体積%の量で、ORP水溶液中に存在する。
【0021】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、少なくとも1種の遊離塩素種を含み得る。遊離塩素種は、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、又はそれらの組み合わせを含み得る。好ましくは、遊離塩素種は、次亜塩素酸である。他の遊離塩素種が存在しても良い。
【0022】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、例えば、約10ppmから約400ppmの量の遊離塩素種から構成され得る。好ましくは、遊離塩素種は、約15ppmから約50ppmの量で存在する。より好ましくは、遊離塩素種は、以下から選択される:約15ppmから約35ppmの量で存在する次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの量で存在する次亜塩素酸ナトリウム、又は約15ppmから約35ppmの量で存在する次亜塩素酸と約25ppmから約50ppmの量で存在する次亜塩素酸ナトリウムとの組み合わせ。
【0023】
本発明は、任意の好適な方法でORP水溶液を投与することによる、患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。例えば、ORP水は、溶液で皮膚潰瘍を洗うこと又は洗浄することによって患者に投与され得る。或いは、ORP水溶液は、この溶液中に皮膚潰瘍を浸すことによって患者に投与され得る。皮膚潰瘍は、任意の好適な長さの時間、通常少なくとも約1分間、好ましくは少なくとも約2分間、ORP水溶液に浸され得る。
【0024】
別の実施態様において、ORP水溶液は、溶液で飽和した創傷ドレッシングで皮膚潰瘍をドレッシングすることによって患者に投与され得る。飽和した創傷ドレッシングは、充分な時間の間創傷と接触したままにされて創傷を治療し得る。好ましくは、飽和した創傷ドレッシングは、例えば、1日に1度、又は1日あたり複数回のように定期的に交換されて、創傷への新たなドレッシングを提供する。
【0025】
本発明は更に、(1)酸化還元電位(ORP)水溶液で潰瘍を洗うこと又は洗浄すること;(2)潰瘍をORP水溶液中に浸すこと;(3)ORP水溶液で飽和した創傷ドレッシングで潰瘍をドレッシングすること、及び(4)任意で工程(1)〜(3)を繰り返すこと、を含む皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。更に、ORP水溶液技術に基づくゲルもまた、創傷を覆うためのドレッシング又はガーゼに適用され得る。該方法の工程(1)〜(3)は、皮膚潰瘍を治療するのに必要なだけ繰り返して良い。
【0026】
皮膚潰瘍は、創傷へのORP水溶液の適用の前又は後のいずれかに任意で清拭され得る。好ましくは、皮膚潰瘍はORP水溶液を適用する前に清拭される。皮膚潰瘍はまた、ORP水溶液で飽和した創傷ドレッシングの適用に先立っても清拭され得る。
【0027】
皮膚潰瘍は、最初の3〜4日間、洗浄、洗うこと、及び/又は浸すことによって1日に1度清潔にされて、関連する感染を適切に制御し得る。潰瘍は、石鹸及び水道水で洗われ、清拭され、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、又は必要に応じてそれ以上頻繁にORP水溶液をスプレーされ得る。清潔にした後、潰瘍は、任意の好適な時間の間(通常約60分から約120分、好ましくは約15分から約60分、より好ましくは約5分から約15分)、ORP水溶液に浸されるか、さもなければORP水溶液で湿潤され得る。潰瘍は任意で更なる上昇(rising)に供され得る。皮膚潰瘍を湿潤させた後、創傷は、好ましくは、湿潤ゲル(その有効成分はORP水溶液であり得る)で覆われ、乾いたドレッシングが適用される。湿潤ゲルは更にORP水溶液を含み得る。この手順は任意で、治療の最初の72時間の間、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、又はより頻繁に繰り返される。その後、この手順は、臨床評価に従って、3から4日に1度任意で繰り返されうる。
【0028】
本発明に従って治療される患者は、ヒト又は獣医患者(例、非ヒトの哺乳動物)であり得る。ORP水溶液が適用される皮膚潰瘍は、患者のどこに位置していても良く、皮膚潰瘍は、頭、首、上肢、手、指、胴体、性器、下肢、足(foot)、つま先、足(paw)、蹄、又はそれらの組み合わせに位置するが、これらに限定されない。一患者の複数の皮膚潰瘍が同時に治療され得る。
【0029】
本発明は、あらゆる深さ、形状、又は大きさの皮膚潰瘍の治療を提供する。治療に好適な皮膚潰瘍は、例としては、表層表皮に限られる潰瘍、表皮基底層を保っている潰瘍、表皮を貫く潰瘍、真皮を巻き込んでいる潰瘍、真皮を通って皮下組織まで貫く潰瘍、並びに筋肉、脂肪、及び骨を含む深部組織まで貫く潰瘍を含む。皮膚潰瘍はあらゆる形状(例えば、丸、楕円、線状、又は不規則な形状)であり得る。例えば、少なくとも約1mm2、少なくとも約5mm2、少なくとも約1cm2、又は少なくとも約2cm2の表面積を含む任意の好適な表面積を有する皮膚潰瘍が治療され得る。
【0030】
本発明は、例えば、動脈不全症、静脈不全症、リンパ管不全症、神経障害、圧迫、外傷、又はそれらの組み合わせを原因とする、患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。
【0031】
患者における様々なタイプの皮膚潰瘍が、本発明に従うORP水溶液で治療され得る。例えば、以下の皮膚潰瘍が治療に好適である:糖尿病性足潰瘍、虚血性潰瘍、壊疽性潰瘍、静脈うっ滞性潰瘍、褥瘡性潰瘍、又は外傷性潰瘍。本発明は更に、これらに限定されないが例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、喫煙、塞栓、糖尿病、動脈炎症、移植片対宿主病、レイノー病、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、又はそれらの組み合わせを原因とする動脈不全症の患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。
【0032】
本発明は更に、これらに限定されないが例えば、うっ血性心不全、静脈炎、凝血、静脈弁異常、遺伝的要因、又はそれらの組み合わせを原因とする静脈不全症の患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。これらに限定されないが例えば、鎌状赤血球貧血、凝固能亢進状態、白血球停滞、過粘稠症候群、DIC、又はそれらの組み合わせを原因とする血管内血流異常の患者における皮膚潰瘍も治療され得る。
【0033】
本発明はまた、これらに限定されないが例えば、腫瘍塞栓、フィラリア症(filarasis)、又はそれらの組み合わせを原因とするリンパ管不全症の患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。同様に、本発明は、これらに限定されないが例えば、うっ血性心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、栄養失調、又はそれらの組み合わせを原因とする浮腫の患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。
【0034】
本発明は、圧迫虚血が患者の不動、麻痺、肥満、又はそれらの組み合わせに起因する皮膚の褥瘡の治療方法を含む。本発明は更に、神経障害患者における皮膚潰瘍の治療方法を提供し、ここで神経障害は、これらに限定されないが例えば、糖尿病、尿毒症、毒素、アミロイド、多発性硬化症、遺伝性神経障害、又はそれらの組み合わせを原因とする。
【0035】
本発明はまた、代謝疾患(例えば、糖尿病、通風など)、炎症状態(例えば、狼瘡、混合性結合組織病、関節リウマチ、あらゆるタイプの原発性又は続発性脈管炎、過敏反応、多形性紅斑、水疱性皮膚病、尋常性天疱瘡など)、感染症(例えば、疱疹、ハンセン病、水痘帯状疱疹、敗血症など)、新生物(例えば、皮膚癌(skin caner)、血管種など)、変性疾患(例えば、強皮症、モルフェアなど)、遺伝病(例えば、鎌状赤血球貧血など)、外傷/環境傷害(例えば、擦り傷、放射線照射、術後瘻孔など)、又はそれらの組み合わせを原因とする、患者の皮膚潰瘍を治療する方法も提供する。
【0036】
本発明の方法は、単一の皮膚潰瘍又は複数の皮膚潰瘍を有する患者を治療するために使用され得る。
【0037】
皮膚潰瘍は、本発明に従って他の療法(therapries)と組み合わせて、ORP水溶液で治療され得る。限定するものではないが例えば、静脈うっ滞性脚潰瘍は、必要なだけの数の静脈における硬化療法を含み得る総合的な外来治療の一部として、ORP水溶液を投与することによって治療され得る。硬化療法の各セッション後、治療した静脈の閉鎖を助けるために、患者はクラス2のコンプレッションストッキングを履き得る。ストッキングを履いている必要のある時間の長さは、注射された静脈の大きさによって、約3日間から約3週間まで変動する。圧迫包帯が任意で使用される。好適な患者においては、伏在静脈切除術も行われ得る。
【0038】
本発明は更に、糖尿病患者の足潰瘍である皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。本発明は、(1)潰瘍を清拭すること;(2)ORP水溶液で潰瘍を洗うこと又は洗浄すること;(3)少なくとも2分間潰瘍を溶液中に浸すこと;(4)少なくとも約2分間潰瘍を乾かすこと;(5)溶液で飽和した創傷ドレッシングで潰瘍をドレッシングすること;及び(6)任意で工程(1)〜(5)を繰り返すこと、を含む糖尿病患者の足潰瘍を治療する方法を提供し、ここで潰瘍は、糖尿病患者におけるグレード2又はグレード3の感染足潰瘍であり、該潰瘍は少なくとも約2.0cm2の表面積を有する。糖尿病患者の足潰瘍を治療するそのような方法は、潰瘍が実質的に治癒されるまで任意の好適な回数だけ工程(1)〜(5)を繰り返すことを含み得る。好ましくは、工程(1)〜(5)は少なくとも1度繰り返される。
【0039】
本発明は、酸化還元電位(ORP)水溶液を投与することによって患者の皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の再発率を減少する方法、患者の皮膚潰瘍の裂開の可能性を減少する方法、及び患者の皮膚潰瘍に起因する切断の可能性を減少する方法を提供する。
【0040】
更なる実施態様において、本発明は、ORP水溶液を投与することを含む、皮膚潰瘍に起因する全身性炎症反応症候群(SIRS)の発生率を低減する方法を対象としている。本発明は更に、ORP水溶液を投与することを含む、皮膚潰瘍に起因する敗血症の発生率を低減する方法を含む。全身性炎症反応症候群(SIRS)は、末端器官の損傷も同定可能な菌血症(bactereia)も伴わない、全身炎症の特徴を含む症候群である。SIRSは、敗血症、重症敗血症、又は敗血性ショックからは分けられ異なっている。SIRSから敗血症への変わり目の要所は、血中の同定された病原体の存在である。SIRSの病態生理学は、以下に限定されないが、補体活性化、サイトカイン及びアラキドン酸代謝物分泌、細胞性免疫の刺激、凝固カスケードの活性化、及び液性免疫機構を含む。ポビドンヨード治療の患者に対する、ORP水溶液治療の患者でのSIRS又は敗血症の発生率の低下によって測定したとき、本発明に従ったSIRS又は敗血症の発生率の減少は、任意の量、通常少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%であり得る。
【0041】
本発明は更に、ORP水溶液を投与することによって患者の皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の微生物負荷を減少する方法を提供する。
【0042】
本発明の文脈において、患者(例、動物、特にヒト)に投与される治療有効量は、適当な時間枠にわたって患者において治療的又は予防的な反応をもたらすのに充分でなければならない。投与量は、当該分野で周知の方法を使用して容易に決定され得る。当業者は、任意の特定の患者に対する具体的な投薬量レベルは様々な因子に依存することを認識するであろう。例えば、投与量は、使われる特定のORP水溶液の強度、状態の重篤度、患者の体重、患者の年齢、患者の肉体的及び精神的状態、全般的な健康、性別、食事などに基づいて決定され得る。投与量の規模はまた、特定のORP水溶液の投与に付随し得るあらゆる副作用の存在、性質、及び程度に基づいて決定され得る。可能であれば常に、副作用を最小に維持することが望ましい。
【0043】
具体的な投薬量のために考慮され得る因子としては、例えば、生物学的利用能、代謝プロファイル、投与時間、投与経路、排出率、特定の患者における特定のORP水溶液と関連する薬力学などが含まれ得る。他の因子としては、例えば、治療される特定の状態に関するORP水溶液の効力又は有効性、治療過程前又は治療過程中に現れる症状の重篤度などが含まれ得る。場合によっては、治療有効量を構成するものは、部分的に、1種以上のアッセイ(例、特定の状態の治療又は予防のための特定のORP水溶液の有効性を、合理的に、臨床的に予測するバイオアッセイ)の使用によっても決定され得る。
【0044】
本発明のORP水溶液は、患者(例、ヒト)に対して、例えば既存の状態を治療するために、単独で又は1種以上のほかの治療剤との組み合わせで、治療的に投与され得る。本発明のORP水溶液はまた、状態と関連する1種以上の原因因子に曝露された患者(例、ヒト)に対して、単独で又は1種以上のほかの治療剤との組み合わせで、予防的に投与され得る。例えば、本発明のORP水溶液は、1種以上の感染症原因微生物(例、ウイルス、細菌及び/又は真菌)に曝露された糖尿病患者に対して好適に投与され得、患者における感染症の可能性を予防的に阻害又は低減し、或いはそのような曝露の結果として発症する感染症の重篤性を低減する。即ち、ORP水溶液は、汚染され、コロニー形成され、又は重篤にコロニー形成された皮膚潰瘍における感染症の発症を防ぎ得る。
【0045】
当業者は、本発明のORP水溶液を投与する好適な方法が利用可能であり、そして、一つより多い投与経路が使用され得るが、特定の経路が他の経路よりもより即時的でより効果的な反応を提供し得ることを理解するであろう。治療有効量は、個々の患者においてORP水溶液の「有効レベル」を達成するために必要な投与量であり得る。治療有効量は、例えば、患者における状態を予防又は治療するために、本発明のORP水の血中レベル、組織内レベル、及び/又は細胞内レベルを達成するために個々の患者に投与される必要がある量として定義され得る。
【0046】
投薬の好ましいエンドポイントとして有効レベルが使用される場合、実際の投与量及び投与計画は、例えば、薬物動態、分布、代謝などにおける個体差によって変化し得る。有効レベルはまた、本発明のORP水溶液が本発明のORP水溶液以外の1種以上の治療剤(例、1種以上の抗感染剤、1種以上の「緩和剤」、「調節剤」又は「中和剤」(例、米国特許第5,334,383号及び同第5,622,848号で記載されたようなもの)、1種以上の抗炎症剤など)との組み合わせで使用される場合、変化し得る。
【0047】
適当な指標が、有効レベルを決定し、及び/又はモニターするために使用され得る。例えば、有効レベルは、適当な患者サンプル(例、血液及び/又は組織)の直接的な分析(例、分析化学)又は間接的な分析(例、臨床化学的指標を用いる)によって決定され得る。有効レベルはまた、例えば、尿代謝産物の濃度、状態と関連するマーカー(例、ウイルス感染の場合のウイルスの数)の変化、組織病理学及び免疫化学分析、状態と関連する症状の低減などのような直接的又は間接的な観察によっても決定され得る。
【0048】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、当該分野で公知の任意の好適な投与方法を使用して投与され得る。本発明に従って使用されるORP水溶液は、当該分野で知られる、1種以上の医薬的に許容される担体、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、又は希釈剤との組み合わせで投与され得る。本発明に従って使用されるORP水溶液は、ゲル、軟膏などの有効成分でもあり得る。当業者は、本発明に従ったORP水の投与のための適当な製剤及び投与方法を容易に決定出来る。投与量におけるいかなる必要な調整も当業者によって容易になされ得、例えば、副作用、患者の全体的な状態の変化などのような他の因子を考慮して、治療されている状態の性質又は重篤度に対処する。
【0049】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、浮腫を減少し血流を増大させるために使用される陰圧器具の洗浄溶液としても使用され得る。好適な陰圧器具には、例えば、Kinetic Concepts社によって合衆国で販売されているV.A.C.(登録商標)及びV.A.C.(登録商標) Instill(商標)器具のような、1種以上の持続陰圧吸引(vacuum assisted wound closure)の器具が含まれ得る。ORP水溶液は、微生物負荷を減少しながら炎症−アレルギーのプロセスを制御することにより器具と相乗的に作用し得ると考えられる。従って、器具は、断続的又は連続的な洗浄によって開放の潰瘍に適用されて、本発明に従って組織感染又は壊死を治療又は予防し得る。
【0050】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、皮膚潰瘍を清拭するために使用される水手術(hydrosurgery)器具のための洗浄溶液としても使用され得る。好適な水手術器具には、例えば、Smith and Nephewによって合衆国で販売されているVersaJet器具、Medaxisによって欧州で販売されているDebritom、DeRoyalによって合衆国及び欧州で販売されているJetOx、又はイタリアで販売されているPulsaVacが含まれ得る。ORP水溶液は、創傷中の微生物負荷を減少すること、及び清拭手順の間の感染性の霧の形成を回避することによって、該器具と相乗的に作用し得ると考えられている。従って、該器具を使用して、本発明に従って、連続的な洗浄で潰瘍を清拭し、感染プロセスを減少し、感染性の霧の形成を回避し得る。
【0051】
生体工学皮膚(Apligraf,Organogenesis社,カントン)、無細胞の皮膚代替物(Oasis Wound Matrix,Healthpoint)、ORP水溶液の超音波適用、及び局所酸素補充又は高圧酸素治療(例、高圧ブーツ、Vent−Ox System)を含むいくつかの補助療法が、本発明に従って任意で利用され得る。
【0052】
好ましくは、ORP溶液は、例えば患者の皮膚潰瘍に接触するように、液体又はゲルとして投与される。本発明のORP水溶液はまた、スチーム又はスプレーとしても投与され得る。更に、本発明のORP水溶液が、エアロゾル化、ネブライゼーション、又はアトマイゼーションによっても投与され得る。本発明のORP水溶液は、エアロゾル化、ネブライゼーション、又はアトマイゼーションによって投与される場合、約0.1ミクロンから約100ミクロン、好ましくは約1ミクロンから約10ミクロンの範囲の直径を持つ液滴の形態で好適に投与される。
【0053】
例示的なネブライザーは、米国特許第5,312,281号、同第5,287,847号及び同第6,598,602号に記載されている。米国特許第5,312,281号は超音波ネブライザーを記載しており、これは、水又は液体を低温で霧化し、霧のサイズを調整することが出来ると報告されている。更に、米国特許第5,287,847号は、医薬のエアロゾルを新生児、子供、及び成人に送達するための、測量可能な流速及び排出体積を有する気体ネブライジング装置を記載している。更には、米国特許第5,063,922号は超音波アトマイザーを記載している。
【0054】
本発明の方法はまた、本発明のORP水溶液で治療可能な感染症の予防又は治療のために使用され得る。該感染症は、例えば、感染性微生物のような1以上の感染性病原体によって引き起こされうる。このような微生物には、例えば、ウイルス、細菌、及び真菌が含まれ得る。ウイルスには、例えば、疱疹ウイルス、ポックスウイルス、及びパピローマウイルスからなる群から選択される1以上のウイルスが含まれ得る。細菌には、例えば、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、及びMycobaterium tuberculosisからなる群から選択される1以上の細菌が含まれ得る。真菌には、例えば、Candida albicans、Histoplasma capsulatum、Aspergillusスピーシズ、及び皮膚糸状菌からなる群から選択される1以上の真菌が含まれ得る。
【0055】
本発明は更に、例えば壊死皮膚潰瘍床のような障害のある又は損傷した組織を治療する方法を提供し、該方法は、障害のある又は損傷した組織を、治療有効量の本発明のORP水溶液と接触させることを含む。任意の好適な方法が、障害のある又は損傷した組織を接触させるために使用され得、本発明に従って障害のある又は損傷した組織を治療する。例えば、障害のある又は損傷した組織は、該組織を本発明のORP水溶液で洗浄して、障害のある又は損傷した組織をORP水と接触させることにより、本発明に従って治療され得る。或いは(そして更には)、本発明のORP水溶液は、スチーム又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、ネブライゼーション、又はアトマイゼーションによって、本明細書で記載する通りに、投与され得、障害のある又は損傷した組織をORP水と接触させる。
【0056】
本発明の方法は、例えば手術によって障害を持った又は損傷した組織の治療において使用され得る。例えば、本発明の方法は、切開によって障害を持った又は損傷した組織、或いは瘻孔を残した組織を治療するために使用され得る。更に、本発明の方法は、口腔外科手術、グラフト手術、インプラント手術、トランスプラント手術、焼灼、切断、放射線照射、化学療法、およびそれらの組み合わせによって障害を持った又は損傷した組織の治療のために使用され得る。口腔外科手術は、例えば、例として根管手術、抜歯、歯肉手術などのような歯科外科手術を含み得る。
【0057】
本発明の方法はまた、必ずしも手術によって引き起こされたものではない、1種以上の熱傷、切り傷、擦り傷、こすれ、発疹、潰瘍、刺創、及びそれらの組み合わせなどにより障害を持った又は損傷した組織を治療することも含む。本発明の方法はまた、感染した、障害のある又は損傷した組織、或いは感染症によって障害を持った又は損傷した組織を治療するためにも使用され得る。このような感染症は、例えば、本明細書で記載したような、ウイルス、細菌、及び真菌からなる群から選択される1種以上の微生物のような1種以上の感染性病原体によって引き起こされ得る。
【0058】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、生物の表面(例、皮膚)を含む表面を殺菌するために使用され得、該方法は、表面を、抗感染量の本発明のORP水溶液と接触させることを含む。本発明の方法に従って、表面は、任意の好適な方法を使用して接触され得る。例えば、表面は、表面を本発明のORP水溶液で洗浄することにより接触され、本発明に従って表面を殺菌し得る。更に、表面は、本発明のORP水溶液を、本明細書で記載したようにスチーム又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、ネブライゼーション、又はアトマイゼーションによって、表面に塗布することによって接触され、本発明に従って表面が殺菌され得る。更には、本発明のORP水溶液は、本明細書で記載するようなクリーニングワイプで表面に塗布され得る。本発明に従って表面を殺菌することにより、表面から感染性微生物がクレンジングされ得、それにより、例えば糖尿病患者の足潰瘍に関連する感染症又は他の合併症(例、再発、裂開、及び/又は切断)の可能性を低下させる。或いは(又は更に)、本発明のORP水溶液は、感染症に対する障壁を提供して、それにより本発明に従って表面を殺菌し得るように、表面に塗布される。ORP水溶液はまた、長い手術の間中、器具を殺菌するため又はその無菌性を保つためにも使用され得る。
【0059】
ORP水溶液は、生物の、無生物の、又はそれらの組み合わせである表面を殺菌するために使用され得る。生物表面には、例えば、例として口腔、洞腔、頭蓋腔、腹腔、及び胸腔のような1種以上の体腔内の組織が含まれ得る。口腔内の組織には、例えば、口組織、歯肉組織、舌組織、及び咽喉組織が含まれる。生物組織には、皮膚、筋肉組織、骨組織、臓器組織、粘膜組織、無細胞及び細胞性の代用皮膚、他の生物工学組織、植皮片、胚性及び成熟幹細胞、又は分化した細胞(例、繊維芽細胞、ケラチノサイト)、及びそれらの組み合わせもまた含まれ得る。無生物表面には、例えば、外科的に移植可能な器具、人工装具、及び医療器具、並びに手術中に露出され得る内部器官、内臓、筋肉などの表面が含まれる。
【0060】
局所投与のために、ORP水溶液は単独で、又は増強した効力を与えるために担体(例、増粘剤)との組み合わせで投与され得る。
【0061】
本発明の製剤に存在している水の量は、通常、製剤の重量に基づいて、約10重量%から約95重量%である。好ましくは、存在している水の量は、約50重量%から約90重量%である。
【0062】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、実質的に、正常な組織及び正常な哺乳動物細胞への毒性を持たないことが見出されている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、真核細胞の生存能力の有意な減少、哺乳動物細胞におけるアポトーシスの有意な増加、細胞加齢の有意な加速、及び/又は有意な酸化的DNA損傷を引き起こさない。無毒性は特に有利であって、また、本発明に従って投与されるORP水溶液の殺菌力は過酸化水素とおおよそ同等であるが、正常な組織及び正常な哺乳動物細胞への毒性が過酸化水素よりもかなり低いことを考えると、恐らくそれは驚くべきことである。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液が、例えばヒトを含む哺乳動物における使用にとって安全であることを示している。
【0063】
本発明に従って投与されるORP水溶液において、細胞の生存率は、約30分間のORP水溶液への曝露後に、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約70%、更により好ましくは少なくとも約75%である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、最大で約30分以下のORP水溶液との接触で(例えば、ORP水溶液との、約30分又は約5分の接触後)、好ましくは細胞の最大でわずか約10%まで、より好ましくは細胞の最大でわずか約5%まで、更により好ましくは細胞の最大でわずか約3%までに、アネキシンVを細胞表面に露出させる。更には、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液への慢性的な曝露後に、好ましくは細胞の約15%未満、より好ましくは細胞の約10%未満、更により好ましくは細胞の約5%未満に、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素を発現させる。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、生理食塩水溶液によって引き起こされるのと同じ割合の酸化的DNA付加物形成(例えば、同等の条件下で処理された細胞において過酸化水素によって通常引き起こされる酸化的DNA付加物形成の約20%未満、酸化的DNA付加物形成の約10%未満、又は酸化的DNA付加物形成の約5%以下)を引き起こす。
【0064】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、有意なRNA分解を生じない。従って、ORP水溶液への約30分間の曝露後、又は約30分間の曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されて変性ゲル電気泳動によって分析されるRNAは、典型的には有意なRNA分解を示さず、また典型的には真核生物のリボソームRNA(即ち、28S及び18S)に対応する2本の別個の(discreet)バンドを示し、これは、本発明に従って投与されるORP水溶液がRNAを実質的に無傷のままにすることを示している。同様に、ORP水溶液への、約30分の曝露後、又は曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されたRNAは、構成的なヒトGAPDH(グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)遺伝子の逆転写及び増幅(RT−PCR)に供されて、RT−PCR産物のゲル電気泳動で強いGAPDHバンドを生じ得る。対照的に、同様の時間の間HPで処理された細胞は、有意なRNA分解を示し、GAPDHのRT−PCR産物はあったとしてもごくわずかである。
【0065】
驚くべきことに、本発明に従って投与されるORP水溶液は、一次炎症を引き起こす生物学的カスケードの一つである肥満細胞の脱顆粒の非常に有効な阻害剤であることが分かっている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、肥満細胞が抗原で活性化されていようが、カルシウムイオノフォアで活性化されていようが関係なく、肥満細胞の脱顆粒を阻害する。これも驚くべきことだが、本発明に従って投与されるORP水溶液は、肥満細胞におけるヒスタミン及び炎症促進性サイトカインの分泌を非選択的に阻害することも分かっている。例えば、本発明のORP水溶液は、例えば、肥満細胞におけるTNF−α及びMIP1−αの分泌を阻害し得る。本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、他のサイトカイン分泌細胞における炎症促進性サイトカインの分泌も阻害し得ると考えられている。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液は、広い抗アレルギー効果及び抗炎症効果を示すはずであり、感染皮膚潰瘍患者における予後を悪化させるSIRS及び多臓器不全の確立を治療又は予防するために望ましいことを示している。
【0066】
ORP水溶液は、更に増粘剤を含む本発明に従う局所投与のための製剤として投与され得る。任意の好適な増粘剤が使用されて、通常ORP水溶液単独よりも大きい所望の粘度を有する製剤を提供し得る。利用される増粘剤は、好ましくは、ORP水溶液及び製剤中の他の任意の成分と適合する。好適な増粘剤は、これらに限定されないが、ポリマー及びヒドロキシエチルセルロースを含む。好適なポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得、また任意で架橋されている。他の好適な増粘剤は、当該分野で一般に知られている(例えば、HANDBOOK OF COSMETIC AND PERSONAL CARE ADDITIVES,第2版,Ashe他編(2002)、及びHANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS,第4版,Rowe他編(2003)を参照)。
【0067】
一つの実施態様において、増粘剤は、例えば以下の一般構造:
【0068】
【化1】
【0069】
を有する高分子量の、架橋された、アクリル酸ベースのポリマーを含み得る、アクリル酸ベースのポリマーからなる群から選択される。
【0070】
そのようなポリマーは、ノベオン社によりCarbopol(登録商標)という商標名で販売されている。Carbopol(登録商標)ポリマーは、通常、様々なパーソナルケア製品、医薬品、及び家庭用クリーナーにおいて、増粘剤、懸濁化剤、及び安定剤として使用されるレオロジー調節剤として供給されている。Carbopol(登録商標)ポリマーは、固体(例、粉末)又は液体のいずれかの形態で使用され得る。
【0071】
本発明での使用に好適なアクリル酸ベースのポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。好適なホモポリマーは、好ましくはアリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで、架橋され得る。好適なアクリル酸のコポリマーは、長鎖(C10〜C30)アルキルアクリレートによって修飾され得、また、例えばアリルペンタエリスリトールで、架橋され得る。
【0072】
Carbopol(登録商標)ポリマーは、最大の粘度を達成するために好ましくは中和される。供給時、Carbopol(登録商標)ポリマーは、水素結合によってコイル構造で保持された、乾燥した、きついコイル状の酸性分子として存在し得る。いったん水又は別の溶媒中に分散すると、そのようなポリマーは水和して部分的にコイルを解き始め得る。Carbopol(登録商標)ポリマーから最大の増粘性を達成する一つの方法は、酸性ポリマーを塩に変換することによる。これは水酸化ナトリウム(NaOH)又はトリエタノールアミン(TEA)のような一般的な塩基で中和することにより、容易に達成されて、長鎖ポリマーの「コイルを解き」、有効な増粘形態を提供する。
【0073】
好適な増粘剤は、好ましくは、製剤にとって所望の粘度、並びに外観、せん断抵抗性、イオン抵抗性、及び熱安定性のような他の特徴をもたらす。例えば、Carbopol(登録商標)934は、3000センチポアズ(cps)より大きい粘度の(透明ゲルではなく)懸濁液又は乳濁液のいずれかの製剤にとって好ましい。Carbopol(登録商標)974Pは、代わりに、その利点である生体接着性のために使用され得る。
【0074】
任意の好適な量の増粘剤が製剤中に含まれ得、該製剤の所望の粘度をもたらす。通常、増粘剤の量は、製剤の重量に基づいて、約0.1重量%から約50重量%であり得る。好ましくは、増粘剤の量は、約0.1重量%から約10重量%である。
【0075】
増粘剤の量はまた、ORP水溶液の体積に基づき得、例えば、約0.1%重量/体積(mg/mL)から約50%重量/体積(mg/mL)である。一つの実施態様において、増粘剤の量は、約0.1% w/vから約10% w/vである。
【0076】
例示的な製剤は、ORP水溶液250mLあたり約0.1gから約50mg、ORP水溶液250mLあたり約1mgから約20mg、又はORP水溶液250mLあたり約3mgから約15mgの増粘剤を含み得る。
【0077】
アクリル酸ベースのポリマーが低濃度で使用される場合、製剤は滑るような感覚で容易に流れ得る。より高濃度のそのような粘性(theckness)では、製剤は、高い粘度を持ち得、偽塑性で流れにくくなり得る。せん断力がミキサー又はポンプによって適用される場合、見かけ上の粘度は減少し得、製剤はポンプされ得る。
【0078】
本発明の製剤は、任意で中和剤を含み得る。任意の好適な中和剤が使用されて、製剤の所望のpHをもたらし得る。好適な中和剤には、例えば、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、アンモニア、水酸化カリウム、L−アルギニン、AMP−95、ニュートロールTE(Neutrol TE)、トリスアミノ(Tris Amino)、エソミン(Ethomeen)、ジ−イソプロパノールアミン、及びトリ−イソプロパノールアミンを含む。他の中和剤は、当該分野で一般に知られている(例えば、HANDBOOK OF COSMETIC AND PERSONAL CARE ADDITIVES,第2版,Ashe他編(2002)、及びHANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS,第4版,Rowe他編(2003)を参照)。好適な中和剤は、液体又は固体の形態のいずれであっても良い。
【0079】
増粘剤がCarbopol(登録商標)のようなアクリル酸ベースのポリマーであるとき、好ましくは中和剤トリエタノールアミンが使用される。中和剤は、製剤をゲルに変換する。
【0080】
任意の好適な量の中和剤が本発明の製剤に含まれ得る。通常、中和剤の量は、製剤の重量に基づいて、約0.1重量%から約50重量%である。好ましくは、中和剤の量は、製剤の重量に基づいて、約0.1重量%から約10重量%である。体積に基づくと、中和剤の量は、ORP水溶液の体積に基づいて、約1体積%から約50体積%の量で存在し得る。
【0081】
液体形態で添加される場合、中和剤は、ORP水溶液250mLあたり約1mLから約100mLの量で添加され得る。好ましくは、中和剤の量は、ORP水溶液250mLあたり約10mLから約90mgである。
【0082】
製剤は着色料、香料、緩衝液、生理学的に許容される担体及び/又は賦形剤などのような更なる成分を更に含有しても良い。好適な着色料の例には、これらに限定されないが、二酸化チタン、酸化鉄、カルバゾールバイオレット、酸化クロム−コバルト−アルミニウム、4−ビス[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−9,10−アントラセンジオンビス(2−プロペン酸)エステルコポリマーなどが含まれる。任意の好適な香料が使用され得る。
【0083】
本発明の製剤は、任意の好適な手段によって調製され得る。ORP水溶液及び増粘剤のような製剤の成分は、任意の形式で共に混合されて均質な混合物をもたらし得る。好ましくは、これらの成分は電動混合又は他の好適な器具を用いて数分間共に混合されて、均一性を確実にする。製剤の成分は、通常約400rpmから約1000rpm、好ましくは約500rpmから約800rpm、より好ましくは約500rpmから約600rpmで混合される。
【0084】
製剤は、均質な混合物をもたらすのに充分な時間混合されるが、通常は全ての成分を合わせてから約1分から約10分である。
【0085】
増粘剤が粉末(power)形態の場合、まず篩過されて大きな塊を粉砕し、均質な製剤の調製を可能にし得る。
【0086】
トリエタノールアミンのような中和剤は、ORP水溶液及び増粘剤を含有する製剤に引き続き添加され得る。上記のように、トリエタノールアミンの添加は、Carbopol(登録商標)のような増粘剤がコイルを解いて所望の粘度を有する製剤をもたらすのを可能にし得る。
【0087】
着色料又は香料はまた、Carbopol(登録商標)のような増粘剤がORP水に溶解される前又は後のいずれかであるが、中和工程の前に、混合物に添加され得る。
【0088】
本発明の製剤中のORP水溶液の化学的性質は、典型的には、ORP水溶液のみでのそれと同じである。ORP水溶液の性質は、増粘剤及び任意の中和剤の添加後でさえ、好ましくは残ったままである。例えば、ORP水溶液自体及びORP水溶液を含有する製剤のpH及び殺菌力は、好ましくは通常同じである。最も好ましくは、本明細書で記載するORP水溶液の臨床上関連する全ての特徴は、本発明の製剤に当てはまる。
【0089】
例えば、本発明の製剤は、好ましくは少なくとも約20時間、好ましくは少なくとも約2日間、安定である。より好ましくは、製剤は、少なくとも約1週間(例、1週間、2週間、3週間、4週間など)、更により好ましくは少なくとも約2ヶ月安定である。
【0090】
製剤のpHは好ましくは、約6から約8である。より好ましくは約6.2から約7.8であり、最も好ましくは約7.4から約7.6である。
【0091】
製剤は、患者に局所投与するために好適な任意の形態(これらに限定されないが、ゲル、ローション、クリーム、ペースト、軟膏などが含まれる)で存在し得、これらの形態は当該分野で公知である(例えば、Modern Pharmaceutics,第3版,Banker他編(1996)を参照)。ゲルは典型的に、3次元構造を有する半固体の乳濁物又は懸濁物である。別の実施態様において、製剤はゲル形態である。
【0092】
ペーストは通常、水性又は脂性ビヒクル中に分散した大部分の固体(例、約20%から約50%)を大抵含有する半固体の懸濁物である。ローションは典型的に、水ベースのビヒクル及び揮発物(約50%より多い)を含有する液体乳濁物であり、注ぐのに十分低い粘度(30,000cps未満)を有する。軟膏及びクリームは好ましくは、他の揮発性成分とともに担体の一部として炭化水素又はポリエチレングリコールを含有し得る半固体の乳濁物又は懸濁物である。
【0093】
本発明の製剤がゲルの形態である場合、ゲルの粘度は、好ましくは、約10,000から約100,000センチポアズ(cps)の範囲(例、約15,000cps、約20,000cps、約25,000cps、約30,000cps、約35,000cps、約40,000cps、約45,000cps、約50,000cps、約55,000cps、約60,000cps、約65,000cps、約70,000cps、約75,000cps、約80,000cps、約85,000cps、約90,000cps、約95,000cps、又はそれらの範囲、又はそのような値の範囲の粘度)内である。
【0094】
ゲルのpHは好ましくは、約6.0から約8.0までの範囲内である。このpHを超えると、Carbopol(登録商標)ポリマーのような増粘剤の粘度は、可能性がある。好ましくは、ゲルのpHは約6.4から約7.8であり、より好ましくは約7.4から約7.6である。
【0095】
本発明の製剤は、様々な状態を治療するために、ヒト及び/又は動物を含む患者への局所投与に好適である。具体的には、製剤は、動物(例、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、トリ)及びヒトに適用され得る。局所投与は、皮膚及び生物組織への適用、並びに他の投与経路を含む。
【0096】
本発明に従って治療され得る患者の状態には、例えば、手術/開放創傷クレンジング剤;皮膚病原体の殺菌(例えば、細菌、マイコプラズマ、ウイルス、真菌、プリオンに対して);創傷の殺菌(例、戦闘の創傷);創傷治癒の促進;熱傷治癒の促進;皮膚真菌の治療;乾癬;水虫;耳の感染症(例、外耳炎);外傷性創傷;急性、亜慢性及び慢性の感染症(例、後者の例である糖尿病性足感染症)、褥瘡、皮膚剥削術、清拭された創傷、レーザー・リサーフェシング、ドナー部位/移植片、滲出性の部分層創傷及び全層創傷、表層の負傷(裂傷、切り傷、擦り傷、軽い皮膚過敏)、急性又は慢性の炎症又は過敏症を伴うあらゆる皮膚潰瘍、及びヒト又は動物の身体の上又は身体中の他の医療用途が含まれる。本発明に従って治療される潰瘍には、膿瘍、分泌物、又は壊死組織が存在していても良く、していなくても良い。
【0097】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、治療有効量で使用又は塗布されて、細菌、ウイルス、及び/又は病原菌に対する所望の治療効果を提供し得る。治療有効量は、治療中又は予防される状態の改善をもたらす製剤の量を含み得る。例えば、感染症を治療するために使用される場合、治療有効量は、感染症の程度を減少させる及び/又は更なる感染症を予防するのに有効な量を含み得る。当業者に理解されるように、製剤を投与することに由来する製剤の効力は、短期間(即ち、数日)及び/又は長期間(例、数ヶ月)であり得る。
【0098】
ORP水溶液又はその製剤は、患者への所望の効果が観察されるまで、充分な時間(例、約1日、約2日、数日、約1週間、又は数週間)にわたって更に塗布され得る。
【0099】
ORP水溶液又はその製剤は任意の好適な形式で塗布され得る。例えば、一定量のORP水溶液又はその製剤が治療される患者の表面に塗布されて、それから患者自身の指を使用してむらなく広げられ得る。或いは、保健医療提供者が製剤を患者の組織に塗布し得る。好適な手段(例えば、使い捨てワイプ又は布)が製剤を塗布するために使用され得る。
【0100】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば電解プロセス又は酸化還元反応による酸化還元法によって製造され得、そこでは電気エネルギーが水溶液中で1つ以上の化学変化を引き起こすために使用される。好適なORP水溶液を調製する例示的な方法は、例えば、米国特許出願公開US2005/0139808号及び同US2005/0142157号に記載されている。
【0101】
電解プロセスにおいて、電気エネルギーは、電流形態での一つの点から別の点への電荷の伝導によって、水中に導入され、水中を運ばれる。電荷が生じ、そこで存続するためには、水中に電荷担体がなければならず、また、その担体を動かす力がなければならない。電荷担体は、金属及び半導体の場合のように電子であり得、又は溶液の場合は陽イオン及び陰イオンであり得る。還元反応はカソードで起こり、酸化反応はアノードで起こる。起こると考えられている還元反応及び酸化反応の少なくとも一部は、国際出願WO03/048421 A1号に記載されている。
【0102】
本明細書で使用される場合、アノードで製造される水をアノード水といい、カソードで製造される水をカソード水という。アノード水は、典型的には、電解反応で製造される酸化種を含有し、カソード水は、典型的には、該反応からの還元種を含有する。アノード水は通常低pHであり、典型的には約1から約6.8である。アノード水は好ましくは、例えば塩素気体、塩化物イオン、塩酸、及び/又は次亜塩素酸、或いは1種以上のそれらの前駆物質を含む様々な形態の塩素を含有する。例えば酸素気体、及び恐らくは、製造中に形成される1種以上の他の酸化水種(例、過酸化物及び/又はオゾンの生成物)、又はそれらの1種以上の前駆物質を含む様々な形態の酸素もまた、好ましくは存在する。カソード水は通常高pHであり、典型的には約7.2から約11である。カソード水は、水素気体、ヒドロキシルラジカル、及び/又はナトリウムイオンを含有し得る。
【0103】
本発明のORP水溶液は、酸性であっても、中性であっても、塩基性であっても良く、通常、約1から約14のpHを有する。このpHでは、ORP水溶液は、ORP水溶液と接触する表面又は傷害対象(例、ヒトの皮膚)を損傷することなく、硬い表面へ好適な量で安全に塗布され得る。典型的には、ORP水溶液のpHは約3から約8である。より好ましくは、ORP水溶液のpHは、約6.4から約7.8であり、最も好ましくは、pHは約7.4から約7.6である。
【0104】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、約−1000ミリボルト(mV)から約+1150ミリボルト(mV)の酸化還元電位を持ち得る。この電位は、溶液が、金属電極によって感知されて同溶液中の参照電極と比較される、溶液が電子を受容又は受け渡すいずれかの傾向(即ち、可能性)の尺度である。この電位は、例えば、例えば銀/塩化銀電極のような標準参照に対するORP水溶液のミリボルト単位での電位を測定することを含む、標準的な技術によって測定され得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、約−400mVから約+1300mVの電位を有する。より好ましくは、ORP水溶液は、約0mVから約+1250mVの電位を有し、更により好ましくは、約+500mVから約+1250mVの電位を有する。更により好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、約+800mVから約+1100mVの電位を有し、最も好ましくは、約+800mVから約+1000mVの電位を有する。
【0105】
様々なイオン種及び他の種が、本発明に従って投与されるORP水溶液中に存在し得る。例えば、ORP水溶液は、塩素(例、遊離塩素、及び任意で、結合塩素)、及び溶解酸素、並びに任意でオゾン及び過酸化物(例、過酸化水素)を含有し得る。1種以上のこれらの種の存在は、少なくとも、細菌及び真菌、並びにウイルスのような様々な微生物を殺すORP水溶液の殺菌能に寄与すると考えられている。
【0106】
遊離塩素には、典型的に、これらに限定されないが、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO−)、及び次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、他の分子又はラジカル塩素種、及びそれらの前駆物質が含まれる。次亜塩素酸の次亜塩素酸イオンに対する割合は、pHに依存する。pH7.4では、次亜塩素酸レベルは、典型的には約25ppmから約75ppmである。温度もまた遊離塩素成分の割合に影響を与える。
【0107】
結合塩素は、典型的に、塩素及び窒素含有化合物の生成物(例、塩素及びアンモニア又は有機アミンの生成物(例、クロラミン))を意味する。結合塩素は、ORP水溶液中に任意で存在するが、好ましくは約20ppm未満の量で存在する。
【0108】
1種以上の塩素種及び酸素、並びに任意でオゾン及び過酸化水素が、任意の好適な量でORP水溶液中に存在し得る。これらの成分のレベルは、当該分野で公知の方法を含む任意の好適な方法によって測定され得る。
【0109】
遊離塩素及び任意で結合塩素の両方を含む、総塩素含有量は、約10パーツ・パー・ミリオン(ppm)から約400ppm、例えば約10パーツppmから約200ppm、約20ppmから約150ppm、約30ppmから約100ppm、約30から約80ppm、或いは、例えば約50ppmから約200ppm、又は約80ppmから約150ppmであり得る。
【0110】
塩素含有量は、DPD比色法(Lamotte社、チェスタータウン、メリーランド州)、又は、例えばEnvironmental Protection Agencyによって確立された方法などの他の公知の方法のような、当該分野で公知の方法によって測定され得る。DPD比色法においては、遊離塩素のN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)との反応によって黄色が形成され、その強度が、パーツ・パー・ミリオンでの出力を与える目盛り付きの熱量計で測定される。ヨウ化カリウムの更なる添加により、溶液がピンク色に転じ、総塩素値が得られる。存在する結合塩素の量は、総塩素から遊離塩素を引くことによって決定され得る。
【0111】
ORP水溶液中に存在する酸化化学種の総量は、好ましくは、約2ミリモル濃度(mM)の範囲内であり、また、前記の塩素種、1種以上の更なる酸化水種(例、1種以上の酸素種)、並びにCl−、ClO3、Cl2−、及びClOxのような測定が難しい可能性がある更なる種を含み得る。
【0112】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、鉄への曝露時に遊離ラジカル(例えば、ヒドロキシルラジカルなど)を生じ得る1種以上の酸化水種を含む。ORP水溶液は、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、二酸化塩素(ClO2)、過酸化物(例、過酸化水素(H2O2)、及びオゾン(O3)のような、その製造中に生成される1種以上の化合物を任意で含み得るが、水酸化ナトリウム、二酸化塩素、過酸化水素、及びオゾンは、潜在的に、次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応して、それらの消費及び他の化学種の生成をもたらし得る。
【0113】
本発明のORP水溶液は、通常、少なくとも約24時間、典型的には少なくとも約2日間、安定である。より典型的には、この水溶液は、少なくとも約1週間(例、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間など)、好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定である。より好ましくは、ORP水溶液は、その調製後少なくとも約6ヶ月間安定である。更により好ましくは、ORP水溶液は、少なくとも約1年間、最も好ましくは少なくとも約3年間安定である。
【0114】
従来のORP水溶液は、極度に限られた品質保持期限を持っており、通常わずか数時間である。この短い寿命の結果、従来のORP水溶液の使用は、使用される場所の近くで製造がなされることを必要としている。実用的な観点から、これは、施設(例、病院のような保健医療施設)が従来のORP水溶液を製造するために必要な設備を購入し、保管し、維持しなければならないことを意味する。更には、従来の生成技術は、広まった使用(例えば、保健医療施設での通常の殺菌剤として)を可能にするのに充分な商業規模の量を製造することができなくなってきている。
【0115】
従来のORP水溶液と違い、本発明に従って投与されるORP水溶液は、その調製後、少なくとも約20時間安定である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、通常、環境的に安全であり、従ってコストのかかる廃棄手順の必要性を回避する。
【0116】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは少なくとも約1週間(例、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間など)安定であり、より好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、更により好ましくは、少なくとも約6ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、更により好ましくは少なくとも約1年間安定であり、最も好ましくは約1年間を超えて(例、少なくとも約2年又は少なくとも約3年)安定である。
【0117】
安定性は、ORP水溶液が、通常の保存条件下(例、室温)でその調製後所定の時間の間、1種以上の使用(例えば、肥満細胞の脱顆粒の阻害、ヒスタミン及びサイトカイン分泌の阻害、汚染除去、殺菌、消毒、抗菌クレンジング、及び創傷クレンジング)のために好適なままである能力に基づいて測定され得る。本発明に従って投与されるORP水溶液の安定性はまた、加速条件下(例、約30℃から約60℃)での保存によっても測定され得、ここでORP水溶液は、好ましくは約90日間まで、より好ましくは約180日間まで安定である。。
【0118】
安定性はまた、ORP水溶液の寿命の間に溶液中に存在する1種以上の種(又はその前駆物質)の経時的な濃度に基づいても測定され得る。1種以上の種(例、遊離塩素、次亜塩素酸、及び1種以上の更なる酸化水種)の濃度は、好ましくは、ORP水溶液の調製後少なくとも約2ヶ月間、初期濃度の約70%以上に維持される。1種以上のこれらの種の濃度は、より好ましくは、ORP水溶液の調製後少なくとも約2ヶ月間、初期濃度の約80%以上に維持される。更により好ましくは、1種以上のそのような種の濃度は、ORP水溶液の調製後少なくとも約2ヶ月間、更により好ましくは初期濃度の約90%以上に、最も好ましくは初期濃度の約95%以上に維持される。
【0119】
安定性はまた、ORP水溶液への曝露後にサンプル中に存在する生物の量の減少に基づいても測定され得る。生物濃度の減少の測定は、例えば、細菌、真菌、酵母、又はウイルスを含む任意の好適な生物に基づいてなされ得る。好適な生物は、例えば、Escherichia coli、Staphylococcus aureus、Candida albicans、及びBacillus athrophaeus(かつてのB. subtilis)を含み得る。
【0120】
安定性はまた、ORP水溶液への曝露後、サンプル中に存在するエンドトキシン(例、リポ多糖類(lipopolysacharides))、成長因子、サイトカイン、並びに他のタンパク質及び脂質の量の減少に基づいても測定され得る。
【0121】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、生きた微生物の濃度を約4log(104)減少させることが出来る低レベル殺菌剤として機能し得、また、生きた微生物の濃度を約6log(106)減少させることが出来る高レベル殺菌剤としても機能し得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、1分間の曝露後の総生物濃度において、少なくとも約約4log(about an about four log)(104)の減少をもたらすことが可能である。ORP水溶液は、より好ましくは、溶液の調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、生物濃度の約104〜約106の減少が可能である。ORP水溶液は、更により好ましくは、ORP水溶液の調製の少なくとも約1年後の測定で、そして最も好ましくは、ORP水溶液の調製の約1年よりも後(例、少なくとも約2年又は少なくとも約3年)の測定で、生物濃度の約104〜約106の減少が可能である。
【0122】
例えば、ORP水溶液は、ORP水溶液の調製の少なくとも2ヶ月後の測定で、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Enterococcus hirae、Acinetobacter baumannii、Acinetobacterスピーシズ、Bacteroides fragilis、Enterobacter aerogenes、Enterococcus faecalis、バンコマイシン耐性Enterococcus faecium(VRE、MDR)、Haemophilus influenzae、Klebsiella oxytoca、Klebsiella pneumoniae、Micrococcus luteus、Proteus mirabilis、Serratia marcescens、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Candida albicans及びCandida tropicalisからなる群から選択される生きた微生物サンプルの濃度を、30秒以内の曝露で、少なくとも約5log(105)減少させることが可能である。
【0123】
一つの実施態様において、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、及びCandida albicansを含むがこれらに限定されない生きた微生物サンプルを、約1分間以内の曝露で、約1×106と約1×108生物/mlとの間の初期濃度から、約0生物/mlの最終濃度へ減少させ得る。これは、生物濃度の約6log(106)乃至約8log(108)の減少に相当する。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、又はCandida albicans生物の約106〜約108の減少を達成し得る。
【0124】
或いは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、約5分間以内の曝露で、Bacillus athrophaeus胞子の胞子懸濁液の濃度において約6log(106)の減少を生じ得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、Bacillus athrophaeus胞子の濃度において約106の減少を達成し得る。ORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製の少なくとも2ヶ月後の測定で、約30秒以内の曝露で、Bacillus athrophaeus胞子の胞子懸濁液の濃度において約4log(104)の減少が可能である。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、Bacillus athrophaeus胞子の濃度において、この減少を達成することが可能である。
【0125】
ORP水溶液はまた、ORP水溶液の調製の少なくとも2ヶ月後の測定で、約5分から約10分以内の曝露で、Aspergillis niger胞子のような真菌胞子の濃度において約6log(106)の減少が可能である。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも6ヶ月後、より好ましくは調製の少なくとも1年後の測定で、真菌胞子の濃度においてこの減少を達成することが可能である。
【0126】
本発明に従って投与されるORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、約5分から約10分の曝露後、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びアデノウイルスのようなウイルスの濃度において3log(103)を上回る減少を生じ得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、ウイルスの濃度において>103の減少を達成し得る。
【0127】
本発明に従って投与されるORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、約5分間の曝露で、Mycobacterium bovisの増殖を完全に阻害し得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、マイコバクテリウムの濃度において完全な阻害を達成し得る。
【0128】
一つの実施態様において、本発明のORP水溶液は、1種以上の塩素種を含む。好ましくは、存在する塩素種は、遊離塩素種である。遊離塩素種は、次亜塩素酸(HOCl)、次亜塩素酸イオン(OCl−)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、塩化物イオン(Cl−)、溶解した塩素気体(Cl2)、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0129】
遊離塩素種の総量は、約10パーツ・パー・ミリオン(ppm)から約400ppmであり、例えば、約20ppmから約150ppm、約30ppmから約100ppm、約30から約80ppm、又は約50ppmから約200ppm、約80ppmから約150ppm、約10ppmから約400ppm、好ましくは約50ppm及び約200ppm、最も好ましくは約50ppm及び約80ppmであり得る。次亜塩素酸の量は、通常約15ppm及び約75ppmであり、好ましくは約25ppm及び約35ppmである。次亜塩素酸ナトリウムの量は、通常約25ppmから約50ppmの範囲内である。二酸化塩素レベルは、5ppm未満で任意に存在する。一つの実施態様において、ORP水溶液は、1種以上の塩素種又は1種以上のその前駆物質、及び1種以上の更なる酸化水種又は1種以上のその前駆物質、及び任意で過酸化水素を含み、その調製から少なくとも約24時間、好ましくは少なくとも約1週間、より好ましくは少なくとも約2ヶ月間、及び更により好ましくは少なくとも約6ヶ月間安定である。更により好ましくは、このようなORP水溶液は、少なくとも約1年間、最も好ましくは約1年間を超えて(例、少なくとも約2年又は少なくとも約3年)安定である。
【0130】
同じく好ましくは、ORP水溶液は、1種以上の塩素種(例、次亜塩素酸(hyprochlorous acid)及び次亜塩素酸ナトリウム)又は1種以上のその前駆物質、及び1種以上の更なる酸化水種(例、酸素)又は1種以上のその前駆物質を含み、pHが約6から約8、より好ましくは約6.2から約7.8、最も好ましくは約7.4から約7.6である。本発明に従って投与される例示的なORP水溶液は、例えば、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウム、約1ppmから約4ppmの1種以上の更なる酸化水種を含み得、pHが約6.2から約7.8までであり、且つ少なくとも約1週間(例、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、又は約1年を超えて(例えば、少なくとも約2年又は少なくとも約3年))安定であり得る。
【0131】
本発明に従って、治療有効量のORP水溶液は、単独で、又は1種以上の更なる治療剤との組み合わせで投与されて、腹膜炎を治療又は予防し得るか、或いはそれと関連する癒着又は膿瘍の形成を予防し得る。例えば、ORP水溶液は、1種以上の更なる治療剤(例、抗感染剤(例、抗細菌剤(例えば抗生物質など)、抗真菌剤、及び抗ウイルス剤)、抗炎症剤、組み換えタンパク質又は抗体、1種以上の合成薬、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の化合物)と併用して投与され得る。ORP水溶液と併用するそのような治療剤の投与には、例えば、ORP水溶液の投与前、投与中(例、同時(contemporaneously)、同時投与又は組み合わせで)、又は投与後などの、1種以上のそのような更なる剤の投与が含まれ得る。
【0132】
好適な抗生物質には、限定するものではないが、ペニシリン、セファロスポリン又は他のβ−ラクタム、マクロライド(例、エリスロマイシン、6−O−メチルエリスロマイシン、及びアジスロマイシン)、フルオロキノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、アミノグリコシド、クリンダマイシン、キノロン、メトロニダゾール、バンコマイシン、クロラムフェニコール、それらの抗菌的に有効な誘導体、及びそれらの組み合わせが含まれ得る。好適な抗感染剤にはまた、例えば、アンホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、ケトコナゾール、ミコナゾール、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせのような抗真菌剤も含まれ得る。好適な抗炎症剤には、例えば、1種以上の抗炎症薬(例、1種以上の抗炎症性ステロイド、又は1種以上の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID))が含まれ得る。例示的な抗炎症薬には、例えば、シクロフィリン、FK結合タンパク質、抗サイトカイン抗体(例、抗TNF)、ステロイド、及びNSAIDが含まれ得る。
【0133】
本発明に従って使用されるORP水溶液での治療によって制御され、減少され、殺され、又は根絶され得る生物には、例えば、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Enterococcus hirae、Acinetobacter baumannii、Acinetobacterスピーシズ、Bacteroides fragilis、Enterobacter aerogenes、Enterococcus faecalis、バンコマイシン耐性Enterococcus faecium(VRE,MDR)、Haemophilus influenzae、Klebsiella oxytoca、Klebsiella pneumoniae、Micrococcus luteus、Proteus mirabilis、Serratia marcescens、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Salmonella choleraesuis、Shigella dysenteriae、及び他の感受性細菌、並びに酵母(例、Trichophyton mentagrophytes、Candida albicans、及びCandida tropicalis)が含まれる。ORP水溶液はまた、例えば、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ライノウイルス、インフルエンザ(例、A型インフルエンザ)、肝炎(例、A型肝炎)、コロナウイルス(例えば重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となる)、ロタウイルス、鳥インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純疱疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルス、及び他の感受性ウイルスを含むウイルスを制御し、減少し、殺し、又は根絶するために、本発明に従って使用され得る。
【0134】
本発明に従って、ORP水溶液は、単独で、又はORP水溶液に存在する1種以上の種と好ましくは適合する1種以上の治療上許容される担体(例、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、希釈剤、それらの組み合わせなど)との組み合わせで投与され得る。当業者は、本発明に従って使用されるORP水溶液を投与するための適当な製剤及び方法を容易に決定することが出来る。例えば、ORP水溶液を含有するゲルベースの製剤の使用は、微生物に対する障壁を与えると同時に腹腔の水分を維持するために使用され得る。好適なゲル製剤は、例えば、米国特許出願公開US2005/0142157号に記載されている。
【0135】
投与量における任意の必要な調節が当業者によって容易になされて、臨床上関連する1以上の因子(例、副作用、患者の全体的な状態の変化など)を考慮して治療している状態の性質及び/又は重篤度に対処し得る。例えば、ORP水溶液は、約25%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、約50%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、約75%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、約90%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、約95%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、又は約99%(重量/重量又は体積/体積)以上の好適な担体とさえも、ORP水溶液を混ぜること又は希釈することによって製剤化され得る。好適な担体には、例えば水(例、蒸留水、無菌水(例、注射用の無菌水)、無菌生理食塩水など)が含まれ得る。好適な担体にはまた、米国特許出願第10/916,278号に記載の1種以上の担体も含まれ得る。例示的な製剤には、例えば、ORP水溶液が無菌水又は無菌生理食塩水で希釈された溶液も含まれ得、ここでORP水溶液は、治療用途及び/又は治療上関連する他の任意の因子に依存し、約25%(体積/体積)、約50%(体積/体積)、約75%(体積/体積)、約90%(体積/体積)、約95%(体積/体積)、又は99%(体積/体積)以上で希釈されている。
【0136】
ORP水溶液はまた、様々な量のイオン及び糖質を含んで、体組織、臓器、及び腔との適合性の目的で、溶液を低浸透圧、等浸透圧、又は高浸透圧にし得る。例示的な製剤には、例えば、腎臓患者の腹腔に適用するために溶液の浸透圧を増加させるために、ORP水溶液に、その製造前、製造中、又は製造後に塩化ナトリウム及びグルコースが添加された溶液を含み得る。或いは、ORP水溶液を等浸透圧にして非経口注射に適合させるために、最終濃度0.9%の塩化ナトリウムがORP溶液中で達成され得る。
【0137】
ORP水溶液はまた、必要に応じて、溶液を汚染し得る発熱物質、エンドトキシンなどの含有量を低減させるよう処理され得る。
【0138】
調製後、ORP水溶液は、例えば、病院、養護施設、医院、外来外科センター、歯科医院などを含む保健医療施設のようなエンドユーザーへの配給及び販売のために、1種以上の好適な容器(例、密封容器)に移され得る。好適な容器には、例えば、容器に入れられたORP水溶液の無菌性及び安定性を維持する密封容器が含まれ得る。容器は、ORP水溶液と適合する任意の材料で造られ得る。好ましくは、容器は通常、ORP水溶液中に存在する1種以上のイオン又は他の種と非反応性である。
【0139】
好ましくは、容器はプラスチック又はガラスから構成される。プラスチックは、容器が棚に保存されることが可能であるよう、硬質であり得る。或いは、容器は、柔軟であっても良い(例、例えば柔軟な袋のような軟質プラスチック製の容器)。好適なプラスチックには、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル・テレフタラート(PET)、ポリオレフィン、シクロオレフィン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、及びそれらの混合物が含まれ得る。好ましくは、容器は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択される1種以上のポリエチレンを含む。最も好ましくは、容器は高密度ポリエチレン製である。
【0140】
容器は、好ましくは、ORP水溶液の分配を可能にする開口部を有する。容器の開口部は、任意の好適な形式で密封され得る。例えば、容器は、ネジ切りキャップ又は栓で密封され得る。任意で、開口部はホイルの層で更に密封され得る。
【0141】
密封容器の上部の気体は、空気、或いはORP水溶液又はORP水溶液を含有する製剤の他の成分と反応しない他の好適な気体であり得る。好適な上部の気体には、窒素、酸素、及びそれらの混合物が含まれる。
【0142】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、アノード水(例、電解セルのアノード室で製造された水)とカソード水(例、電解セルのカソード室で製造された水)との混合物を含み得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば溶液の約10体積%から約90体積%までの量のカソード水を含有する。より好ましくは、カソード水は、ORP水溶液中に、溶液の約10体積%から約50体積%、更により好ましくは溶液の約20体積%から約40体積%(例、溶液の約20体積%から約30体積%)の量で存在する。更に、アノード水は、ORP水溶液中に、例えば溶液の約50体積%から約90体積%の量で存在し得る。例示的なORP水溶液は、約10体積%から約50体積%のカソード水、及び約50体積%から約90体積%のアノード水を含有し得る。アノード水及びカソード水は、図3に示した3室の電解セルを使用して製造され得る。
【0143】
アノード水及びカソード水の両方を含有するORP水溶液は、酸性であっても、中性であっても、又は塩基性であっても良く、pHが、好ましくは約1から約14、より好ましくは約3から約8、更により好ましくは約6.4から約7.8、最も好ましくは約7.4から約7.6である。
【0144】
好ましい実施態様において、ORP水溶液は、感染足潰瘍を治療するのに有効な量で感染足潰瘍を持つ糖尿病患者に投与される。ORP水溶液を投与され得るそのような患者は、I型糖尿病又はII型糖尿病のいずれかに診断され得る。治療に好適な糖尿病患者は、0.8以上の(ドップラーによる測定での)足関節/上腕指数、30mmHg以上の経皮酸素分圧(TcPO2)値、及び足における触知可能な脈(足背動脈又は後脛骨動脈のいずれか)で明らかなような足への充分な循環を有し得る。更に、低い足関節−上腕指数の患者もまた、限定ではなく例えば切断を予防するために治療され得る。切断が必要な場合、ORP水溶液はまた、切断断端を治療するためにも使用され得る。
【0145】
本発明に従った治療に好適な足潰瘍は、排他的にではないが通常、足の内果又は外果(距骨突起)表面又はその下に位置している。そのような潰瘍は、真皮を通じて皮下組織にまで広がり得、筋肉、腱の露出があり得るが、骨及び/又は関節包の露出は無い。肉芽形成の問題が潰瘍に任意で存在し得る。治療される潰瘍の表面積は、約2.0cm2以上であり得る。
【0146】
好ましくは、本発明の方法は、PEDIS分類に従ってグレード2又はグレード3のいずれかである感染した糖尿病性足潰瘍を治療するのに有効な量でORP水溶液を投与することを含む。グレード2(軽度)の感染症は、皮膚及び皮下組織のみに関与し、深部組織又は全身的徴候には関与が無い。患者はまた、以下の1つ以上を示し得る:(1)局所的腫脹又は硬結;(2)局所的な温感;(3)局所的な圧痛又は痛み;(4)潰瘍辺縁から0.5〜2cmの紅斑;及び(5)膿性分泌物。グレード3(中度)の感染症は、約2cm(2 about cm)より大きい紅斑、及びグレード2の感染症が示す状態の少なくとも一つ、或いは膿瘍、敗血性関節炎(sceptic arthritis)、及び筋膜炎のような皮膚及び皮下組織よりも深部の感染症関与構造によって特徴付けられる。
【0147】
ORP水溶液は、任意の好適な方法を使用して、例えば、潰瘍を洗うこと、洗浄すること、浸すこと、又はドレッシングすることによって局所的に、皮膚潰瘍患者の任意の場所に投与され得る。好ましくは、潰瘍は、洗われ且つ浸され、洗われ且つドレッシングされ、又は浸され且つドレッシングされる。より好ましくは、潰瘍は、洗われ、浸され、且つドレッシングされる。潰瘍の洗浄は、本発明に従って行われ得る。潰瘍洗浄の送達圧力は、潰瘍治癒の促進における重要な要素である。約5psiから約10psiの送達圧力が、周囲の正常組織への損傷を最小化すると同時に残屑及び細菌を潰瘍から取り除くために、本発明に従って使用され得る。
【0148】
ORP水溶液の投与前に、皮膚潰瘍は好ましくは清拭治療に付され、過角化した、壊死した、さもなければ病気の組織が、健康にみえる組織にまで取り除かれる。潰瘍の清拭において、創傷周縁は、健康な出血している組織まで切除される。潰瘍は、清拭の後で残屑を掃除され得る。
【0149】
洗うこと、ドレッシング、及び浸すことの間に、皮膚潰瘍を任意の好適な時間の間、空気乾燥させておいても良い。好ましくは、皮膚潰瘍は、約2分間空気乾燥される。
【0150】
皮膚潰瘍は、潰瘍表面に直接ORP水溶液を塗布することにより(例えばORP水溶液を潰瘍の上に注ぐことにより)洗われ得る。皮膚潰瘍は、部分的又は完全に潰瘍をORP水溶液に沈めることによって浸される。潰瘍は、任意の好適な時間の間浸り得る。通常、皮膚潰瘍は、少なくとも1分間、ORP水溶液中に浸される。好ましくは、皮膚潰瘍は、少なくとも約2分間、及び数時間もの間、好ましくは約60分もの間、好ましくは約15分もの間、浸される。塗布は、潰瘍がひどく感染している場合に限りそれが改善するまで、最初の週については毎日、又は週に2度行われ得る。潰瘍はORP水溶液で飽和した湿った創傷ドレッシングを適用することによってドレッシングされ得る。湿った創傷ドレッシングに加えて、潰瘍は任意で、乾いたガーゼ及び粘着性カバーでドレッシングされ得る。
【0151】
皮膚潰瘍への創傷ドレッシングの適用において、ガーゼは典型的に、潰瘍の大きさに切られる。ガーゼは、ORP水溶液で飽和され得、過剰な溶液はいずれもガーゼから絞り出される。ドレッシングは好ましくはORP水溶液で過飽和にされないが、過飽和のドレッシングは本発明の方法を実施するために有効であり得る。好ましくは充分な量の浸されたガーゼが適用されて創傷を満たすが創傷に詰めはしない。その後、乾いたガーゼ及びテープが、浸されたガーゼに適用されて、それを足潰瘍上の適当な位置に保持し得る。
【0152】
本発明の一つの実施態様において、患者の皮膚潰瘍は、最初にORP水溶液で洗われる。潰瘍を洗うために使用されるORP水溶液の量は、好ましくは残屑を取り除くのに充分である。次に、皮膚潰瘍は任意の好適な時間、好ましくは少なくとも約2分間、ORP水溶液に浸される。患者の足潰瘍はそれから、任意で、任意の好適な時間、好ましくは少なくとも約2分間、空気乾燥される。乾燥後、足潰瘍は、ORP水溶液で飽和させておいた湿った創傷ドレッシングでドレッシングされ得る。乾いたガーゼ及び粘着性カバーが、任意で湿った創傷ドレッシングの上に適用され得る。
【0153】
皮膚潰瘍を洗い、浸し、及びドレッシングする工程は、好適な間隔で繰り返され得る。好ましくは、潰瘍が洗われ、浸され、ドレッシングされる手順は、おおよそ1ヶ月に1度、おおよそ1週間に1度、おおよそ1日に1度、又は1日に数回、繰り返される。ORP水溶液を使用する潰瘍の治療は、潰瘍が充分治癒するまで続けられ得、それは少なくとも1度手順を繰り返すことを必要とし得る。皮膚潰瘍の治癒は、創傷生検培養物から得られた細菌数の減少又は創傷閉鎖率によって測定され得る。
【0154】
別の実施態様において、本発明の方法は、3週間にわたる、皮膚潰瘍を洗い、浸し、ドレッシングする3つの治療を伴う。好ましくは、ORP水溶液で湿った新たなガーゼドレッシングが足潰瘍に適用される治療過程中、毎日のドレッシング交換が行われる。潰瘍上のドレッシングは、1日に1回以上、例えば1日に2回又は3回、ドレッシングが汚れたら交換され得る。好ましくは、創傷の清拭が、各週の手順前に行われて(preformed)、壊死又は過角化した組織を取り除く。
【0155】
本発明はまた、皮膚潰瘍における微生物負荷を低減させるのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍における(in of a skin ulcer)微生物負荷を低減させる方法も提供する。好ましくは、溶液は、pHが約6.4から約7.8までであり且つ少なくとも約1週間安定であり、或いは溶液はpHが約6.4から約7.8までであり且つアノード水及びカソード水を含む。微生物負荷は、足潰瘍の陽性の治療前培養物及び治療後培養物の数によって、並びに足潰瘍からの治療前培養物及び治療後培養物から単離される細菌株の数によって決定され得る。微生物負荷は、例えばウイルス、細菌、及び真菌を含む1種以上の生物に起因し得る。
【0156】
本発明に従うORP水溶液を投与することは、従来の治療法と比べ、皮膚潰瘍の治癒を加速し得る。本発明に従った治癒の加速は、これらに限定されないが、より速い創傷の閉鎖、肉芽組織のより速い成長、全身性合併症の予防、抗生物質使用の低減、及びより短い入院を与え得る。本発明に従った治癒の加速は、ポビドンヨード治療患者と比べ、ORP水溶液治療患者において、約5日以上治癒時間を低減させ得る(例えば約7日早い、例えば10日早い)。
【0157】
本発明は更にまた、潰瘍を治療するのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することに起因する副作用の可能性を減少させる方法を提供する。
【0158】
本発明は更に、患者の皮膚潰瘍の再発率(例、治療後の再発)を減少させる方法を提供し、該方法は、皮膚潰瘍再発の可能性を減少させるのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することを含む。好ましくは、溶液はpHが約6.4から約7.8であり且つ少なくとも約1週間安定であるか、或いはpHが約6.4から約7.8であり且つアノード水及びカソード水を含む。
【0159】
本発明は更に、皮膚潰瘍の裂開の可能性を減少させるのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍の裂開の可能性(例、治療後)を減少させる方法を提供する。好ましくは、溶液はpHが約6.4から約7.8であり且つ少なくとも1週間安定であるか、或いはpHが約6.4から約7.8であり且つアノード水及びカソード水を含む。本発明に従った裂開の可能性の減少は、例えばポビドンヨード治療患者と比べたORP水溶液治療患者における裂開の発生率の低減による測定で、例えば少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、可能性を減少させることを含み得る。
【0160】
本発明は更にまた、切断の可能性を減少させるのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍に起因する切断の可能性を減少する方法を提供する。好ましくは、溶液はpHが約6.4から約7.8であり且つ少なくとも1週間安定であるか、或いは溶液はpHが約6.4から約7.8であり且つアノード水及びカソード水を含む。本発明に従った切断の可能性の減少は、例えばポビドンヨード治療患者と比べたORP水溶液治療患者における切断の数の低減による測定で、例えば少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%、切断の可能性を減少させ得る。
【0161】
ORP水溶液は更に、設備上に存在する生物のレベルを所望のレベルへ減少させるのに充分な時間設備をORP水溶液と接触させることによって殺菌及び消毒(例、医療設備又は歯科用設備の殺菌及び消毒)するために塗布され得る。硬い表面の殺菌及び消毒のために、ORP水溶液は、ORP水溶液が保存されている容器から直接硬い表面へ塗布され得る。例えば、ORP水溶液は、硬い表面へ、注がれ、スプレーされ、又は他の方法で直接塗布され得る。ORP水溶液はその後、例えば、布、織物、又は紙タオルのような好適な素地を使用して、硬い表面上に広げられ得る。病院の適用においては、素地は好ましくは無菌である。或いは、ORP水溶液は、最初に、布、織物、又は紙タオルのような素地に塗布され得る。湿った素地はその後、硬い表面と接触される。或いは、ORP水溶液は、本明細書で記載したようにして、空気中に溶液を分散させることによって硬い表面に塗布され得る。或いは、ORP水溶液は、ゲルとして塗布されて、皮膚潰瘍を湿潤及び保護したままにし得る。ORP水溶液は、同様の形式で、ヒト及び動物へ塗布され得る。
【0162】
床、壁、及び天井のような硬い表面へORP水溶液を塗布するために、道具が任意で使用され得る。例えば、ORP水溶液は、床への塗布のためにモップの頭に分配され得る。ORP水溶液を硬い表面に塗布するための他の好適な道具は、米国特許第6,663,306号に記載されている。
【0163】
本発明は更に、水不溶性の素地及び本明細書で記載したORP水溶液を含むクリーニングワイプを提供し、ここでORP水溶液は素地上に分配される。ORP水溶液は、素地へ、浸み込まされ、コートされ、覆われ、又は他の方法で塗布され得る。好ましくは、素地は、配給前にORP水溶液で前処理される。
【0164】
好適な素地は、例えば、任意の好適な水不溶性の吸収素材又は吸着素材で作られたクリーニングワイプを含み得る。多種の素材が素地として使用され得る。それは、充分な湿潤強度、磨耗性、ロフト(loft)、及び多孔性を有しているべきであり、また、ORP水溶液の安定性に、目的とする使用を不可能にするほどの悪影響を与えてはならない。例としては、不織素地、織素地、ハイドロエンタングル素地、及びスポンジが含まれる。
【0165】
素地は、1以上の層を持っても良い。各層は、同じ又は異なる構成及び磨耗性を持ち得る。異なる構成は、異なる組み合わせの素材の使用、又は異なる製造プロセスの使用、或いはそれらの組み合わせから生じ得る。従って、素地は、ORP水溶液を治療される表面へ送達するためのビヒクルを提供し得る。
【0166】
素地は、単一の不織シート又は複合的な不織シートであり得る。不織シートは、木材パルプ、合成繊維、天然繊維、及びそれらの混合から作られ得る。素地に使用するために好適な合成繊維には、限定するものではないが、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、他のセルロースポリマー、及びそのような繊維の混合物が含まれる。不織物には、メルトブローン、コフォーム(coform)、エアレイド、スパンボンド、ウェットレイド、ボンデッド−カーデッド(bonded−carded)織物素材、ハイドロエンタングル(スパンレースとしても知られる)素材、及びそれらの組み合わせを含む、不織繊維シート素材が含まれ得る。これらの素材には、合成繊維若しくは天然繊維、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。結合剤が素地中に任意で存在し得る。
【0167】
好適な不織の水不溶性素地の例には、セルロース100%のWadding Grade 1804、ポリプロピレン100%のニードルパンチ素材NB 701−2.8−W/R、セルロースと合成繊維との混合のHydraspun 8579、及び70%ビスコース/30%PESのCode 9881が含まれる。クリーニングワイプに使用するのに好適な不織素地の更なる例は、米国特許第4,781,974号、第4,615,937号、第4,666,621号、及び第5,908,707号、並びに国際特許出願公開WO98/03713号、WO97/40814号、及びWO96/14835号に記載されている。
【0168】
素地は、コットン繊維、コットン/ナイロンの混合、又は他の繊維製品のような織素材から作られても良い。スポンジを作る際に使用される再生セルロース、ポリウレタンフォームなどもまた使用に好適であり得る。
【0169】
素地の液体負荷容量は、その乾燥重量の少なくとも約50%〜1000%、好ましくは少なくとも約200%〜約800%であるべきである。これは素地の重量の約1/2倍から10倍の負荷として表される。素地の重量は、非制限的に、1平方メートルあたり約0.01から約1000グラムまで、最も好ましくは約25から約120グラム/m2まで(「基本重量」と呼ぶ)変化し得、適当な形状及び寸法に切られ、打ち抜かれ、又は他の方法で寸法化され得るシート又は織物として存在し得る。クリーニングワイプは、好ましくは約25から約250ニュートン/m、より好ましくは約75〜170ニュートン/mの特定の湿潤引っ張り強さを好ましくは有する。
【0170】
ORP水溶液は、任意の好適な方法により、素地に分配され、浸み込まされ、コートされ、覆われ、又は他の方法で塗布される。例えば、素地の各部分は、個別の量のORP水溶液で処理され得る。好ましくは、ORP水溶液による素地素材の連続織物の一括処理がなされる。素地素材の織物全体がORP水溶液に浸されても良い。或いは、素地織物が巻かれるとき、又は不織素地の作製中でさえも、ORP水溶液は織物上にスプレー又は定量され得る。多量の個別に切断及び寸法化された素地の部分は、製造者によって、容器中でORP水溶液を染み込まされ、又はコートされ得る。
【0171】
クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、任意で更なる成分を含んでも良い。例えば、クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、更に、ポリマー、界面活性剤、多糖、ポリカルボン酸塩、ポリビニルアルコール、溶媒、キレート剤、緩衝液、増粘剤、染料、着色料、香料、及びそれらの混合物を含んでも良い。これらの任意成分は、ORP水溶液の安定性に、目的の最終用途を不可能にするほどの悪影響を与えてはならない。クリーニングワイプに任意で含まれ得る様々な成分の例は、米国特許第6,340,663号、第6,649,584号、及び第6,624,135号に記載されている。好適なクリーニングワイプは更に、米国特許出願公開第2005/0139808号に記載されている。
【0172】
或いは、本発明のORP水溶液は、空気のような気体状の媒体を通じて環境中に分散され得る。ORP水溶液は、任意の好適な手段によって空気中に分散され得る。例えば、ORP水溶液は、任意の好適な寸法の液滴に形成されて室内に分散され得る。環境中にORP水溶液を分散する好適な方法は、米国特許出願公開第2005/139808号に記載されている。
【0173】
ORP水溶液は、例えば米国特許出願公開第2005/0139808号に記載されたような、漂白剤及び好適な家庭用添加剤を任意で含有し得る。
【0174】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、アノード室、カソード室、及びアノード室とカソード室との間に位置する塩溶液室を含む少なくとも1つの電解セルを使用して製造され、ここで少なくとも一部のアノード水及びカソード水は、ORP水溶液がアノード水及びカソード水を含むように混ぜ合わせられる。例示的なORP水溶液の調製に使用され得る例示的な3室の電解セルの図解を図1に示す。
【0175】
電解セル100は、アノード室102、カソード室104、及び塩溶液室106を有する。塩溶液室は、アノード室102とカソード室104との間に位置する。アノード室102は、流入口108及び流出口110を有し、アノード室102を通る水の流れを可能にしている。カソード室104は同様に、流入口112及び流出口114を有し、カソード室104を通る水の流れを可能にしている。塩溶液室106は、流入口116及び流出口118を有する。電解セル100は、好ましくはハウジングを含み、全ての構成要素をひとまとめに保つ。
【0176】
アノード室102は、アノード電極120及び陰イオン交換膜122によって塩溶液室から分離されている。アノード電極120は、アノード電極120と塩溶液室106との間に位置する膜122と共に、アノード室102に隣接していても良い。或いは、膜122は、膜122と塩溶液室106との間に位置するアノード電極120と共に、アノード室102に隣接していても良い。
【0177】
カソード室104は、カソード電極124及びカソードイオン交換膜126によって塩溶液室から分離されている。カソード電極124は、カソード電極124と塩溶液室106との間に位置する膜126と共に、カソード室104に隣接していても良い。或いは、膜126は、膜126と塩溶液室106との間に位置するカソード電極124と共に、カソード室104に隣接していても良い。
【0178】
電極は、好ましくは、金属から構成され、電位がアノード室とカソード室との間に印加されるのを可能にする。金属電極は、好ましくは平面的であり、イオン交換膜と同様の寸法及び断面積を持つ。電極は、好ましくは、イオン交換膜の表面のかなりの部分がそれぞれのアノード室及びカソード室中で水に露出されるように構成されている。これは、イオン種の塩溶液室とアノード室とカソード室との間の移動を可能にする。好ましくは、電極は、電極表面にわたって均等に配置された複数の通路又は開口部を有する。
【0179】
電位源は、アノード電極120及びカソード電極124に接続され、アノード室102で酸化反応を、カソード室104で還元反応を引き起こす。
【0180】
電解セル100で使用されるイオン交換膜122及び126は、任意の好適な素材で構成されて、塩溶液室106とアノード室102との間での例えば塩化物イオン(Cl−)のようなイオンの交換、及び塩溶液塩溶液室106とカソード室104との間での例えばナトリウムイオン(Na+)のようなイオンの交換を可能にし得る。アノードイオン交換膜122及びカソードイオン交換膜126は、同一又は異なる構成素材から造られていても良い。好ましくは、アノードイオン交換膜は、フッ素化ポリマーを含む。好適なフッ素化ポリマーには、例えば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、並びにペルフルオロスルホン酸/PTFEコポリマー及びペルフルオロスルホン酸/TFEコポリマーのようなコポリマーが含まれる。イオン交換膜は、素材の単層又は複数層から構成され得る。好適なイオン交換膜ポリマーには、Nafion(登録商標)という商標のもとで販売されている1以上のイオン交換膜ポリマーが含まれ得る。
【0181】
電解セル100のアノード室102及びカソード室104のための水源は、任意の好適な給水であり得る。水は、都市の上水道からであっても良く、或いはその代わりに電解セルでの使用に先立って前処理されても良い。好ましくは、水は前処理され、軟水、精製水、蒸留水、及び脱イオン化水からなる群から選択される。より好ましくは、前処理された水源は、逆浸透及びUV光精製機器を使用して得られた超純水である。
【0182】
塩溶液室106で使用される塩水溶液は、ORP水溶液を製造するために好適なイオン種を含む任意の塩水溶液であり得る。好ましくは、塩水溶液は、塩化ナトリウム(NaCl)塩水溶液(一般的に生理食塩水溶液とも呼ばれる)である。他の好適な塩溶液は、塩化カリウム、塩化アンモニウム、及び塩化マグネシウムのような他の塩化物塩、並びにカリウム塩及び臭素塩のような他のハロゲン塩を含む。塩溶液は、塩の混合物を含有しても良い。
【0183】
図2は、本発明と関連して有用な3室の電解セルで製造される様々なイオン種であると考えられているものを示している。3室の電解セル200は、アノード室202、カソード室204、及び塩溶液室206を含む。アノード208及びカソード210への好適な電流の印加時に、塩溶液室206を通って流れる塩溶液中に存在するイオンは、アノードイオン交換膜212及びカソードイオン交換膜214を通じて、アノード室202及びカソード室204を通って流れる水中にそれぞれ移動する。
【0184】
図2は、本発明で有用な3室の電解セルで製造される様々なイオン種であると考えられているものを示している。3室の電解セル200は、アノード室202、カソード室204、及び塩溶液室206を含む。アノード208及びカソード210への好適な電流の印加時に、塩溶液室206を通って流れる塩溶液中に存在するイオンは、アノードイオン交換膜212及びカソードイオン交換膜214を通じて、アノード室202及びカソード室204を通って流れる水中にそれぞれ移動する。
【0185】
陽イオンは、塩溶液室206を通って流れる塩溶液216から、カソード室204を通って流れるカソード水218へ移動する。陰イオンは、塩溶液室206を通って流れる塩溶液216から、アノード室202を通って流れるアノード水220へ移動する。
【0186】
好ましくは、塩溶液216は、ナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl−)イオンとの両方を含有する塩化ナトリウム(NaCl)水溶液である。陽イオンNa+は、塩溶液216からカソード水218へ移動する。陰イオンCl−は、塩溶液216からアノード水220へ移動する。
【0187】
ナトリウムイオン及び塩化物イオンは、アノード室202及びカソード室204において、更なる反応を受け得る。例えば、塩化物イオンは、アノード水220中に存在する様々な酸素含有イオン及び他の種(例、酸素フリーラジカル、O2、O3)と反応してClOn−及びClO−を産生し得る。酸素フリーラジカル、水素イオン(H+)、酸素(O2として)、及び、任意でオゾン(O3)及び過酸化物(例、過酸化水素)の形成を含む他の反応も、アノード室202で起こり得る。カソード室204において、水素気体(H2)、水酸化物イオン(OH−)、水酸化ナトリウム(NaOH)、及び他のラジカルが形成され得る。
【0188】
ORP水溶液を製造するための方法及び装置はまた、少なくとも2つの3室の電解セルも利用し得る。2つの本発明の電解セルを使用するORP水溶液の製造方法の図解を図3に示す。
【0189】
方法300は、2つの3室の電解セル、具体的には第一電解セル302及び第二電解セル304を含む。水は、水源305から第一電解セル302のアノード室306及びカソード室308へ、並びに第二電解セル304のアノード室310及びカソード室312へ、移送され、ポンプされ、又は他の方法で分配される。典型的には、本発明の方法は、約1リットル/分から約50リットル/分のORP水溶液を製造し得る。製造容量は、更なる電解セルを使用することによって増加され得る。例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の3室の電解セルが、本発明のORP水溶液の生産量を増加するために使用され得る。
【0190】
アノード室306及びアノード室310で生産されるアノード水は、混合タンク314に集められる。カソード室308及びカソード室312で生産されるカソード水の一部は、混合タンク314に集められてアノード水と合わさる。この方法で生産されるカソード水の残りの部分は廃棄される。カソード水は、混合タンク314への添加前に、任意でガス分離器316及び/又はガス分離器318に供され得る。ガス分離器は、製造プロセス中にカソード水中で形成される水素気体のような気体を除去する。
【0191】
混合タンク314は、循環ポンプ315に任意で連結されて、電解セル302及び304からのアノード水とカソード水の一部との均一な混合を可能にする。更に、混合タンク314は、ORP水溶液のレベル及びpHをモニターするのに好適な器具を任意で含み得る。ORP水溶液は、混合タンクの場所又はその近くでの殺菌又は消毒に適用するために、ポンプ317を通じて混合タンク314から移送され得る。或いは、ORP水溶液は、遠い場所(例、倉庫、病院など)への出荷のために好適な容器に分配され得る。
【0192】
方法300は、塩溶液循環システムを更に含み、第一電解セル302の塩溶液室322へ、及び第二電解セル304の塩溶液室324へ、塩溶液を提供する。塩溶液は塩タンク320で調製される。塩溶液は、ポンプ321を通じて塩溶液室322及び324へ移送される。好ましくは、塩溶液は、最初に塩溶液室322、続いて塩溶液室324を通って順番に流れる。或いは、塩溶液は、同時に両方の塩溶液室へポンプされ得る。
【0193】
塩タンク320へ戻る前に、塩溶液は、混合タンク314中の熱交換器326を通って流れて、必要に応じてORP水溶液の温度を制御し得る。
【0194】
塩溶液中に存在するイオンは、第一電解セル302及び第二電解セル304において、時間と共に枯渇する。更なるイオン源が混合タンク320に定期的に加えられて、アノード水及びカソード水へ移送されるイオンを置換し得る。更なるイオン源は、時間と共に下がる(即ち、酸性化する)傾向がある塩溶液のpHを一定に保つために使用され得る。更なるイオン源は、例えば塩化ナトリウムのような塩を含む任意の好適な化合物であり得る。好ましくは、水酸化ナトリウムが混合タンク320へ添加されて、アノード水及びカソード水へ移送されるナトリウムイオン(Na+)を置換する。
【0195】
方法が少なくとも2つの3室の電解セルを利用する場合、各電解セルは、好ましくは、アノード室、カソード室、及びアノード室とカソード室とを分離する塩溶液室を含む。装置は、好ましくは、電解セルにより製造されたアノード水、及び1以上の電解セルで製造されたカソード水の一部を回収するための混合タンクを含む。好ましくは、装置は更に、塩循環システムを含み、電解セルの塩溶液室に供給される塩溶液のリサイクルを可能にする。
【0196】
以下の実施例は本発明を更に明らかにするが、当然ながら、決して本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0197】
実施例1〜3
これらの実施例は、本発明のORP水溶液の独特な特徴を示している。実施例1〜3におけるORP水溶液サンプルを本明細書に記載した方法に従って分析し、各サンプル中に存在するイオン種及び他の化学種の物理的特性及びレベルを決定した。二酸化塩素、オゾン、及び過酸化水素について得られた結果は、そのような種を測定するために使用される標準試験に基づいているが、これらの結果は、肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。更に、二酸化塩素、オゾン、及び過酸化水素は、次亜塩素酸塩と反応して、それらの消費及び他の種(例、HCl及びO2)の産生をもたらすことが報告されている。pH、酸化還元電位(ORP)及び存在するイオン種を、各ORP水溶液サンプルについて、表1に記した。
【0198】
【表1】
【0199】
ORP水溶液は、殺菌、消毒、及び/又はクリーニングに使用するために好適な物理的特徴を有する。
【0200】
実施例4〜10
これらの実施例は、本発明に従う、ORP水溶液への様々な量での漂白剤の添加について示している。特に、これらの実施例は、組成物の抗菌活性及び織物を漂白する能力を示している。
【0201】
10%のClorox(登録商標)漂白溶液を、蒸留水を使用して調製した。それから以下の溶液を10%漂白溶液を使用して調製した:80%ORP水溶液/20%漂白剤(実施例4);60%ORP水溶液/40%漂白剤(実施例5);40%ORP水溶液/60%漂白剤(実施例6);20%ORP水溶液/80%漂白剤(実施例7);及び0%ORP水溶液/100%漂白剤(実施例8)。比較のため、100%ORP水溶液/0%漂白剤(実施例9)、及び0.01%Tween20界面活性剤を含むORP水溶液(実施例10)を含む2つのコントロール溶液も使用した。これらのサンプルの物理的特徴、特にpH、酸化還元電位(ORP)、全塩素(Cl−)含有量、次亜塩素酸(HClO−)含有量、二酸化塩素含有量、及び過酸化物含有量を決定し、表2に記した。
【0202】
【表2】
【0203】
漂白剤の一部として添加した塩化物イオンの大きなボーラスは、n.d.記号で示したとおり、二酸化塩素及び過酸化物のレベルの正確な測定を妨げた。また、二酸化塩素及び過酸化物について得られた結果は、そのような種を測定するために使用される標準試験に基づいているが、これらの結果は、肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。更に、二酸化塩素、オゾン、及び過酸化水素は、次亜塩素酸塩と反応して、それらの消費及び他の種(例、HCl及びO2)の産生をもたらすことが報告されている。これらの実施例が示すように、ORP水溶液の次亜塩素酸レベルは、漂白剤の添加の有り無しで同様である。
【0204】
実施例4〜10のサンプルを、Bacillus subtilis var. niger胞子(SPS Medical of Rush,New Yorkから入手したATCC #9372)を使用する高胞子カウント試験に供した。胞子の懸濁液を(無菌フード中での蒸発によって)100マイクロリットルあたり4×106胞子まで濃縮した。胞子の懸濁液サンプル100マイクロリットルを、実施例4〜10の各サンプル900マイクロリットルと混合した。サンプルを、表3に記すように1から5分間、室温で培養した。示した時間に、100マイクロリットルの培養サンプルを個々のTSAプレート上にプレートし、35℃±2℃で24時間培養した後、各プレート上に生じたコロニー数を決定した。コントロールプレートは、開始時の胞子濃度が>1×106胞子/100マイクロリットルであることを示していた。様々なサンプルについての様々な培養時間でのバチルス胞子の濃度(2度の決定の平均として)を表3に記す。
【0205】
【表3】
【0206】
これらの結果が示すように、漂白剤(10%の漂白剤水溶液として)の濃度が上昇するにつれて、殺されるバチルス胞子の量は2〜3分間培養したサンプルについて減少する。しかしながら、5分間培養したサンプルについては、漂白剤の濃度はバチルス胞子を殺すのに影響しない。更に、結果は、ORP水溶液へ0.01%界面活性剤を添加しても、胞子を殺すのが減らないことを示している。
【0207】
実施例4〜10のサンプルを織物の漂白試験に供した。サンプルを試験した織物は、紺色の染みの斑点の付いた100%レーヨンの子供用Tシャツであった。染みの付いた織物の2インチ四方の切れ端を50mLプラスチックチューブ中に置いた。織物の各切れ端を実施例4〜10の溶液のサンプルで覆った。完全な漂白が得られるまでの経過時間(織物の白色化によって決定した)を表4に記す。
【0208】
【表4】
【0209】
これらの実施例が示すように、組成物中のORP水溶液の濃度が上昇するにつれ、完全な漂白が達成されるまでの時間が増加する。
【0210】
実施例11
この実施例は、例示的なORP水溶液であるMicrocynの有効な抗菌性溶液としての使用を示している。
【0211】
Microcyn酸化還元電位水を使用して、インビトロでの時間−殺菌評価を行った。Microcynを、Tentative Final Monograph,Federal Register,17 June 1994,vol.59:116,pg.31444に記載されたようにして、50の異なる微生物株− −25のAmerican Type Culture Collection(ATCC)の株及び25のそれらと同種の臨床分離株−のチャレンジ懸濁液に対して評価した。各チャレンジ株の初期集団からのパーセント減少率及びLog10減少率を、30秒間、1分間、3分間、5分間、7分間、9分間、11分間、13分間、15分間、及び20分間のMicrocynへの曝露後に決定した。全ての寒天プレートを重複して行い、Microcynを99%(v/v)濃度で評価した。全ての試験は、米国連邦規則第21条第58章に定められた通り、優良試験所基準に従って行った。
【0212】
以下の表に、5.0Log10を上回って減少した、試験した全ての集団についての30秒の曝露指標での上述したインビトロでの時間−殺菌評価の結果をまとめた。
【0213】
【表5−1】
【0214】
【表5−2】
【0215】
【表5−3】
【0216】
【表5−4】
【0217】
これらの微生物の減少を5.0Log10未満で測定したが、Microcynはまた、表5に含まれない残りの3種に対する抗菌活性も示した。より具体的には、Microcynへの30秒の曝露により、Streptococcus pneumoniae (臨床分離株; BSLI #072605Spn1)の集団は、4.5Log10(これはこの種に対する検出限度である)を超えて減少した。更に、Candida tropicalis (ATCC #750)でのチャレンジにおいて、Microcynは、30秒の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。それに加えて、Candida tropicalis (BSLI #042905Ct)でのチャレンジにおいて、Microcynは、20分の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。
【0218】
このインビトロの時間−殺菌評価の例示的な結果は、Microcyn酸化還元電位水が、広い範囲のチャレンジ微生物に対して急速な(即ち、殆どの場合、30秒未満)抗菌活性を示すことを示している。評価した50のグラム陽性、グラム陰性、及び酵母種のうちの47の微生物集団は、製品への30秒以内の曝露で、5.0Log10を超えて減少した。
【0219】
実施例12
この実施例は、例示的なORP水溶液であるMicrocynの、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)及び0.9%塩化ナトリウム洗浄液(USP)に対する抗菌活性の比較を示している。
【0220】
インビトロの時間−殺菌評価を、参照製品としてHIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)及び無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液(USP)を使用して実施例11で述べたようにして行った。各参照製品を、Tentative Final Monographに具体的に示された10のAmerican Type Culture Collection(ATCC)株の懸濁液に対して評価した。収集したデータをその後、実施例11で記録されたMicrocynの微生物減少活性に対して分析した。
【0221】
Microcyn酸化還元電位水は、チャレンジ株のうち5つの微生物集団を、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液で観察されるのと遜色無い水準まで減少させた。MicrocynとHIBICLENS(登録商標)との両方とも、以下の種:Escherichia coli (ATCC #11229及びATCC #25922)、Pseudomonas aeruginosa (ATCC #15442及びATCC #27853)、及びSerratia marcescens (ATCC #14756)への30秒の曝露後、5.0Log10を超える微生物の減少を与えた。更に、上記表5に示したように、Microcynは、Micrococcus luteus (ATCC #7468)に対して、30秒の曝露後に5.8420Log10の減少を与えることによる優れた抗菌活性を示した。しかしながら、30秒の曝露後、HIBICLENS(登録商標)は試験の検出限度(この具体的ケースにおいては、4.8Log10を上回る)まで集団を減少させたため、Micrococcus luteus (ATCC #7468)の活性のHIBICLENS(登録商標)との直接的な比較は不可能であった。なお、無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液は、上述した6つのチャレンジ株のそれぞれの微生物集団を、全20分の曝露後に0.3Log10未満減少させた。
【0222】
Microcyn酸化還元電位水は、試験した4つのチャレンジ株:Enterococcus faecalis (ATCC #29212)、Staphylococcus aureus (ATCC #6538及びATCC #29213)、及びStaphylococcus epidermidis (ATCC #12228)について、HIBICLENS(登録商標)と塩化ナトリウム洗浄液の両方よりも強い抗菌活性を与えた。以下の表にこれら4種についてのインビトロの時間−殺菌評価の微生物減少結果をまとめた。
【0223】
【表6−1】
【0224】
【表6−2】
【0225】
この比較のインビトロの時間−殺菌評価の結果は、Microcyn酸化還元電位水が、Escherichia coli (ATCC #11229及びATCC #25922)、Pseudomonas aeruginosa (ATCC #15442及びATCC #27853)、Serratia marcescens (ATCC #14756)、及びMicrococcus luteus (ATCC #7468)に対してHIBICLENS(登録商標)と遜色ない抗菌活性を示すだけでなく、Enterococcus faecalis (ATCC #29212)、Staphylococcus aureus (ATCC #6538及びATCC #29213)及びStaphylococcus epidermidis (ATCC #12228)に対してより有効な治療を与えることを示している。表6に示したように、Microcynは、一部の種において、より急速な抗菌反応(即ち、30秒未満)を実証している。更に、Microcynへの曝露は、表6に記載した全ての種において全微生物のより大きな減少をもたらす。
【0226】
実施例13
この実施例は、本発明に従って使用される例示的なORP水溶液Microcynの安定性、無毒性、及び抗菌活性を示している。
【0227】
Mycrocynは、殺菌、消毒、及び創傷消毒活性を持つ中性pHの超酸化溶液である。Microcynは、純水及び塩(NaCl)から調製され、低濃度のナトリウム(例、<55ppm)及び塩素(例、<80ppm)、7.2から7.8の範囲のpH、及び840mVから960mVの範囲の酸化還元電位を有する。Microcyn60は、一つの濃度のみで生産され、活性化したり希釈したりする必要は無い。この溶液は、逆浸透によって得られる水から生産され、それから高電圧及び塩化ナトリウムによって生み出される電気化学勾配にさらされる。この方法中、電気化学勾配が生み出される複数の室で形成する反応性種が制御された方法で選択され、Microcynを作り出す。その結果は、高い酸化還元電位(+840mVから+960mV)及びその結果として高い抗菌活性を与える制御されたフリーラジカル含有量を有する溶液である。
【0228】
次亜塩素酸及び次亜塩素酸ナトリウムがMicrocyn中に含まれる最も豊富な成分であり、とりわけ塩化物イオンのような他の物は微量濃度である。出願人は特定の理論に縛られることを望んでいないが、殺菌効果は必ずしも完全に塩素の量に依存するわけではなく、酸素の反応性種及び/又は酸素、或いは1種以上のその前駆物質の含有量にも依存し得ると考えられている。また、文献で報告された他の超酸化溶液と比較して、Microcynは中性pH(6.4〜7.8)であり、また腐食性でなく、2年までの保存中安定である。これらの全ての特徴が、高水準の殺菌剤として有効であって、且つ無生物表面及び生物表面(例、組織)の両方での使用に適合する超酸化溶液の製造を可能にした。
【0229】
Microcynは、2年間の間その殺菌活性を失うことなく、4から65℃という広く変動する範囲の温度条件で保存できることを、加速安定試験は示した。棚上での長期安定性というこの特性もまた、製造後すぐに使用される場合のみ有効である既に報告された超酸化溶液との違いである。換言すれば、Microcynは抗菌活性を失うことなく極端な条件でさえも保存され分配され得るが、他の溶液は、その溶液を使用しようと試みる全ての病院において専門的且つ高価な機械によって製造されなければならない。それにもかかわらず、製造者は、一度Microcynの容器を開封したら、同一の活性及び一貫性のある結果を保証するために30日以内に使用することを推奨している。
【0230】
Microcynの用量は皮膚の単位面積当たりに塗布される容量の変化のみによって変化し得る。毒物学的研究において、無傷の皮膚に局所的に塗布されるMicrocynの用量は、0.05と0.07mL/cm2との間で変化し、急性皮膚毒性の研究及び皮膚刺激の調査においては、8.0mL/cm2までであり、そして深い創傷におけるその塗布を調査したものでは、Microcynは0.09mL/cm2という用量で塗布された。
【0231】
4から24時間の曝露での単回塗布を使用した、Microcynを無傷の皮膚に局所的に塗布する毒物学的研究を行った。1日に1回又は2回、7日間のMicrocynの複数回塗布をラットの深い創傷について判定した。
【0232】
Microcynの急性刺激及び皮膚毒性に関する影響を評価する2つの研究をウサギの無傷の皮膚で行った。死体解剖時の皮膚における臨床的兆候、皮膚刺激、又は異常は、Microcynに曝露された動物のいずれにも見られなかった。
【0233】
深い創傷に局所的に塗布したMicrocynからの局所的及び全身の毒性の特徴付けをラットで評価した。異常も、血液化学又は血液細胞学のパラメータの有意な差異も観察されず、死体解剖において異常性も観察されなかった。皮膚刺激類別、並びに創傷及び塗布した場所の周囲の組織の組織病理は、Microcynで処理した創傷と生理食塩水溶液で処理したコントロール群の創傷とでいかなる差異も示さなかった。創傷治癒過程中のII型コラーゲンの沈着も、免疫組織化学による測定では、Microcynの使用で変化しなかった。
【0234】
Microcynの全身毒性も、マウスにおける腹腔内注射を用いて評価した。このために、5匹のマウスに腹腔内経路で単回用量のMicrocyn(50mL/kg)を注射した。同様にして、5匹のコントロールのマウスに単回用量の生理食塩水溶液(0.9%の塩化ナトリウム)(50mL/kg)を注射した。この調査において、単回腹腔内用量のMicrocyn(そのLD50は50mL/kgを上回っている)を受けたいずれの動物においても、死亡も全身毒性のいかなる証拠も観察されなかった。
【0235】
Mycrocynを、その吸収を可能とし、また、製品のあらゆる内在性の毒性効果を特徴付けるために、ラットに経口経路で投与した。このために、単回用量(4.98mL/kg)をSprague−Dawley株の3匹のアルビノラットに食道管経路で投与した。死亡も無く、また、単回経口用量のMicrocynに曝露されたいずれの動物の死体解剖においても、臨床的症状も異常も無かった。
【0236】
局所的に塗布したMicrocynの眼刺激の可能性についても、ウサギで評価した。眼球経路を通じた局所投与によるMicrocynに曝露されたいずれの動物においても、眼刺激も他のいかなる臨床的徴候も観察されなかった。
【0237】
Microcynをラットに吸入経路で適用し、吸入による潜在的な急性毒性を決定した。全ての動物は、曝露後の活動性及び立毛において、非常にわずか又はわずかの減少を示したが、全ての動物は翌日には無症候性であった。吸入によってMicrocynに曝露された動物の死体解剖では、死亡も異常も観察されなかった。
【0238】
Microcynでの皮膚感作の可能性の評価を、改変した閉塞パッチ法(Buehler)を使用してモルモットで行った。簡易処理のチャレンジ後のコントロール群の動物においても、当該処理でのチャレンジ後に評価(誘導によって処理)した動物においても、刺激は観察されなかった。従って、Microcynは感作反応を引き起こさない。
【0239】
インビボ腹部創傷における微生物負荷のMicrocynでの低減をラットで評価した。壁を外科的に開き、更に合成メッシュで閉じ、その後既知のE coli細菌負荷で感染させた。これらの実験において、Microcynは、細菌負荷の低減において生理食塩水溶液よりも優れていることを示した。巨視的評価では、創傷は生理食塩水群においてのみ重度に感染した。Microcyn群においては、メッシュは動物の腹壁に完全に取り込まれた。1群あたり30動物での定量培養は微生物負荷のより良い低減を示しており、生理食塩水溶液での99.969%の低減に対してMicrocynは微生物負荷を99.997%低減させていた。更に、膿瘍形成が、MIcrocynでの7匹の動物及び生理食塩水溶液処理した17匹の動物において存在した。
【0240】
このように、経口及び吸入経路、又は腹腔内注射によって、無傷の皮膚、深く開いた皮膚の創傷、結膜嚢内に適用されたとき、Microcynは製品と関連する副作用を示さなかった。また、優れた消毒及び美容の結果で、皮膚及び粘膜における非常に多様な性質の創傷を持った500人を超える患者を治療した実験もある。従って、局所的に塗布されたMicrocynは、この臨床試験において、有効且つ良好な耐容性のはずである。
【0241】
Microcynは、透明な240mLのPETボトルに詰められる。この製品は環境温度で保存され、ボトルが開封されなければ、2年間まで棚上で安定なままである。開封された場合、全ての製品を90日未満に使用することが推奨される。その高い生物学的安全性のプロファイルから、Microcynは汚染又は腐食の危険性無しで流しに空けられ得る。
【0242】
Microcynを用いた複数の微生物試験が合衆国及びメキシコの両方において行われてきた。90%を超える細菌の根絶が曝露の最初の数秒において起こる。この基準に従ってMicrocynが示す抗細菌及び抗真菌活性を表7にまとめた。
【0243】
【表7】
【0244】
殺胞子活性試験をPAHO[汎米保健機構]/WHOのプロトコールに従って行った。
【0245】
Microcynはヒト免疫不全ウイルス(SF33株)のウイルス負荷を5分間で3logを超えて減少させることが分かった。これを、Microcynで処理したウイルスの試験において、細胞変性効果がないこと及びAgp24のレベルによって確かめた。(これらの試験は、米国環境保護庁の殺ウイルス剤プロトコール(DIS/TSS−7/1981年11月12日)に従って行った。)
【0246】
Microcynの殺ウイルス活性は、米国でHIVに対して行われた研究で確認され、またListeria monocytogenes、MRSA、及びMycobacterium bovisに対するその活性もまた実証されている。このように、Microcynは、推奨される通りに投与される場合、1分から15分の曝露で、細菌、真菌、ウイルス、及び胞子を根絶し得ることが示されている。
【0247】
実施例14
この実施例は、患者への局所投与に好適な本発明の製剤を提供する。製剤は:
成分 量
ORP水溶液 250mL
Carbopol(登録商標)ポリマー粉末(増粘剤) 15g
トリエタノールアミン(中和剤) 80mL
を含有する。
【0248】
実施例15
この実施例は、患者への局所投与に好適な本発明の製剤を提供する。製剤は:
成分 量
ORP水溶液 1000mL
Carbopol(登録商標)ポリマー粉末(増粘剤) 15g
トリエタノールアミン(中和剤) 80mL
を含有する。
【0249】
実施例16
この実施例は、患者への局所投与に好適な本発明の製剤を提供する。製剤は:
成分 量
ORP水溶液 250mL
Carbopol(登録商標)ポリマー粉末(増粘剤) 7g
トリエタノールアミン(中和剤) 12mL
を含有する。
【0250】
実施例17
この実施例は、ORP水溶液及び増粘剤を含む本発明の製剤の製造を記載する。
【0251】
ORP水溶液を、ガラスビーカーやビンなどの好適な容器に入れる。Carbopol(登録商標)974Pポリマーは粗い篩(又はざる)を通過させ、それにより急速な散布が可能になり、それと同時にあらゆる大きな凝集体が壊れる。ポリマーCarbopol(登録商標)974Pをそれから、増粘剤として添加する。Carbopol(登録商標)ポリマーをゆっくり添加して、凝集塊の形成を防止し、こうして過度に長い混合サイクルを回避する。
【0252】
この溶液をCarbopol(登録商標)ポリマーの添加中に急速に混合し、その結果、粉末は室温で溶解する。それから中和剤トリエタノールアミンを溶液に加え、均一なゲルが得られるまで電動ミキサー又は他の好適な器具を使って混合する。Carbopol(登録商標)ポリマー組成物への中和剤の添加は、製剤をゲルに変換する。
【0253】
実施例18
この研究は、感染した糖尿病性足潰瘍の治療のために、本発明に従う例示的なORP水溶液Microcynを使用することの、従来の創傷療法と比較しての有効性を示している。
【0254】
この研究は、感染した糖尿病性足潰瘍の治療におけるMicrocynのレジメンを「コントロール」のレジメンと比較した、前向きランダム化単盲検対照調査であった。患者が研究の基準に合致しており且つ糖尿病性足外来を訪れた場合に、患者を任意抽出した。任意抽出は、Microcyn又はコントロールのいずれかへの交互の割り当てによるものであった。患者は、Microcyn治療又はコントロール治療を受けているかどうかについて知らされなかった。しかしながら、もし患者がどちらの治療を受けているのかに気付いてしまっても、彼らを研究に不適格とはしなかった。
【0255】
45人の患者を20週間の研究に登録した。患者は、感染した糖尿病性足潰瘍を示した場合、選別するのに適格であるとした。患者は、任意の研究に関連する治療を受ける前にインフォームド・コンセントに署名した。研究集団の中で、45人の任意抽出された患者のうち8人(18%)を、研究の脚における重度動脈閉塞のため、最初の判定後直ちに研究から除外した。その患者達を、患肢救済又は大切断術のいずれかのために血管外科医に移した。他の患者は研究中に脱落しなかった。
【0256】
Microcyn群とコントロール群との間で、あらゆる人口統計的な特徴に関して統計的に有意な差異はなかった(表8及び表9)。
【0257】
【表8】
【0258】
【表9】
【0259】
患者は、研究の間、壊死又は過角化した組織を取り除くために、研究潰瘍の激しい清拭を受けた。2つの研究群の患者は、石鹸及びMicrocynをポビドンヨード及び生理食塩水でのすすぎの代わりに使用した以外は同様の治療レジメンを受けた。全ての研究の創傷は、湿った創傷環境を与えるのに使用するゲルの塗布、ガーゼ、及び粘着性カバーからなる同一のドレッシングを受けた。潰瘍が体重負荷領域にある場合、可能な限り体重負荷を避ける指示に加えて、潰瘍部位の圧力を緩和するための、体重負荷を取る特別注文成型の挿入物を患者に与えた。両方の治療群の全患者を最初は毎日診察し、その後は創傷の状態によって、3日毎又は1週間に1度診察を受けるよう要求した。
【0260】
研究のエンドポイントは以下であった:主要事象−悪臭、蜂巣炎の減少、治癒、及び安全性−重度の有害事象。データ分析により、治療と臭気の減少、蜂巣炎及び治療との間の関連性が明らかとなった(表10)。コントロール群においては患者のわずか4分の1(25%)であるのに対して、Microcyn介入群の全ての患者(100%)が悪臭の減少を示した。コントロール群での約44%に対して、蜂巣炎の減少を示したMicrocyn介入群の患者の割合は約81%であった。1)創傷における感染症から肉芽組織の形成への進行、及び2)創傷周囲の健常組織の発達として定義される治癒がMicrocyn介入群で観察され、それぞれ約90%及び94%であった。コントロール群では、これらの値はそれぞれ63%及び31%であった。
【0261】
【表10】
【0262】
このように、Microcynで治療した患者は、悪臭、蜂巣炎の減少、及び治癒に関して、従来療法のみで治療した患者と比較して、重要な臨床的有益性を示した。
【0263】
実施例19
この実施例は、糖尿病性足潰瘍の治療について、並びに微生物負荷(micorbial load)及び/又は糖尿病性足潰瘍と関係する合併症(特に、再発、裂開、及び切断)の減少についての、例示的なORP水溶液Dermacynの有効性を示している。
【0264】
末梢血管疾患がある感染症は、糖尿病性の足の病気における切断の危険性の最も重要な予後因子の一つであるとみなされている。抗生物質療法、深部感染症の外科治療、及び清毒ドレッシングは、糖尿病性の足における感染症の治療に一般に使用されている。治癒している糖尿病性創傷の感染症の局所的な制御の価値は、創傷治癒にとって重要であると認識されている。
【0265】
これは、オープンラベル(盲検ではない)の単一施設研究であった。全対象の全体的な治療は、通常の抗生物質療法、手術、及び体重負荷緩和を含んでいた。Dermacyn治療群(群D)を予め募集した。この群の全ての対象を治療した時点で、ポビドンヨード治療対象であるコントロール群(群C)についてのデータを診療記録から遡って集めた。
【0266】
対象は、18歳より上の男女であって、糖尿病歴、少なくとも1つのHbAC1読み取り、及びテキサス大学の分類(T.U.C.)を使用したステージII/III B〜D潰瘍(全て足首より下に位置していた)を有していた。群Dの治療完了後、群Cを、データを集める前に、年齢、糖尿病の持続期間、及びT.U.C.を使用しての潰瘍形成の分類についてマッチさせた。
【0267】
(Dermacyn又はポビドンヨードの使用は別として、)同じ治療が両方の群に与えられるように、臨床科医の標準ケアプロトコールに従って、全ての対象に治療を与えた。全ての対象は、治療の開始前の少なくとも1週間は抗生物質療法にかかっていた。微生物学的な検体を登録時(又はコントロール群においては治療の開始相当時)、及びその後は外科的閉鎖治療まで毎月採った。Dermacynを含んだガーゼ又はポビドンヨードを含んだガーゼを使用して、局所治療を毎日行った。
【0268】
治療は、2つのステージに関わっていた:
【0269】
ステージI − 対象は潰瘍の清拭を受けた。その後対象は、Dermacyn又はポビドンヨードのいずれかに浸されたガーゼを次の24時間創傷部位に塗布された。これらのドレッシングを毎日交換した。末梢血管疾患を持つ全ての対象に、いかなる待機手術を行う前に、血管内技術又はバイパス手術を使用する血管再開通術を勧めた。T.U.C.のIII B/D病変を有する対象において、骨感染の外科治療を行った(外骨切除術(esostectomy)小切断)を行った。最終的な閉鎖手術を行う10〜20日前に対象を退院させた。
【0270】
ステージII − 対象をその後、必要に応じて、清拭及び手術(即ち、保存手術、小手術、又は大手術)のために再入院させた。対象に、手術後、Dermacyn又はポビドンヨードのいずれか(前に割り当てた通り)に浸したガーゼを創傷部位に塗布し、24時間そのままにしておいた。これらのドレッシングをその後毎日交換した。
【0271】
第一義的転帰の測定は、(登録時及び手術時又はフォローアップ中の陽性培養物の数によって示される)微生物負荷の減少であった。第二義的転帰の測定は、治癒時間(日数)、再発(日数)、再手術のタイプ(保存手術、小手術、又は大手術)、裂開、及び局部的な副作用であった。分析は、手術時の微生物学的転帰に対する治療の効果の基本記述統計及び統計分析からなる。手術時の微生物負荷に対するDermacyn治療の効果を分析するために、手術時の微生物負荷を成功転帰又は不成功転帰に二分した。このとき、ゼロの細菌株を成功とみなし、任意のゼロでない数の細菌株を不成功とみなした。二つの治療群の間での成功の微生物学的転帰の比率の差異を、フィッシャーの正確検定を使用して統計的有意性についてテストした。更に、成功転帰の確率についてのオッズ比をロジスティック回帰によって計算した。これらの分析は事後分析であった。
【0272】
データを218人の対象について記録したが、その内の110人はDermacynで治療し(群D)、108人はポビドンヨードで治療した(群C)。対象の平均年齢は、69.6歳であり、33.5%は女性であった。登録時の糖尿病の平均持続期間は、17.4年であった。人口統計的な特徴は2つのグループ間で良くバランスが取れていた。基準の人口統計を表11及び表12に与えた。
【0273】
【表11】
【0274】
【表12】
【0275】
群C(27人)よりも群D(39人)において多くの対象が登録時に一つの細菌株しか持っていなかったが、細菌株の平均数は2つの群間で良くバランスが取れていた。手術時(又はフォローアップ時)の微生物負荷の減少は、群Cにおいてよりも群Dにおいて有意に大きかった。成功の転帰を手術後の細菌株がゼロであるとして定義する場合、治療が成功であった対象の数は、群Cにおける74に対して、群Dにおいて97であった。微生物学的な成功の割合における治療群間の差異は、有意であった(p<0.001,フィッシャーの正確検定)。これと合致して、成功の転帰についてのオッズ比は、Dermacynで治療した患者について3.4(95% CI 1.7〜7.0)であった。
手術前後の細菌株の数の概要(カテゴリー別)を表13に示し、また、成功の微生物学的な転帰の概要(成功の転帰は、手術後の細菌株がゼロであるとして定義している)を表14に示す。
【0276】
【表13】
【0277】
【表14】
【0278】
平均治癒時間は、群C(58日)よりも群D(45.2日)において僅かに短かった。治癒時間の概要を表15に示す。再発率は、群D(10の再発)よりも群C(12の再発)において僅かに高かった。再潰瘍形成(再発)の概要を表16に示す。
【0279】
【表15】
【0280】
【表16】
【0281】
群C(47人)においてよりも群D(60人)において多くの対象が保存手術治療を受け、群Cの61人に対して、群Dの50人の対象が何らかの形態の切断を必要とした(表17に示した)。手術のタイプの概要を表18に示す。
【0282】
【表17】
【0283】
【表18】
【0284】
外科的裂開(感染症又は虚血のため、手術後治癒しない状況)の発生は、群D(14人)よりも群C(21人)において僅かに高かった。外科的裂開の概要を表19に示す。
【0285】
【表19】
【0286】
群Cにおいては18例報告されたのに対して、群Dにおいては局部副作用の報告はなかった。局部副作用の割合の概要を表20に示す。
【0287】
【表20】
【0288】
この実施例は、例示的なORP水溶液Dermacynでの治療は、従来の療法で観察されたものよりも少ない細菌株の単離、より少ない局部副作用、より少ない外科的裂開、及びより短い治癒時間をもたらしたことを示している。従って、この実施例は、Dermacynを用いた糖尿病性足潰瘍の治療は、従来のポビドンヨードの局部療法を超える治療上の利点を有していることを示すと考えられる。
【0289】
実施例20
この研究は、静脈うっ滞性皮膚潰瘍の治療に対する例示的なORP水溶液Dermacyn(M60)の有効性を示している。
【0290】
少なくとも10年の持続期間の静脈瘤に起因しており(resultin from)、長さ又は幅が少なくとも3cmであって、且つ足関節:上腕圧指数が少なくとも0.8である静脈うっ滞性皮膚潰瘍を持つ全部で61人の成人(56人の女性、5人の男性)を含めた。12ヶ月にわたって、35人の患者(31人の女性、4人の男性)を静脈硬化療法、圧迫包帯法、及びDermacynで治療した。結果を、静脈硬化療法、圧迫包帯法、及びポビドンヨードで治療したヒストリカル・コントロール群(25人の女性、1人の男性)で得られた結果と比較した。年齢分布(表21)及び潰瘍の部位(表22)は、2つの群について同様であった。
【0291】
【表21】
【0292】
【表22】
【0293】
コントロール群は82の潰瘍、Dermacyn治療群は100の潰瘍を含んでいた。
【0294】
いずれかの剤(即ち、Dermacyn又はポビドンヨード)のいずれかを用いた毎日1度の創傷の殺菌が推奨された。抗生物質をコントロール患者の65.4%及びDermacyn治療患者の68.6%に投与した。フォローアップは、患者の参照の脚の潰瘍が治癒するまで又は最低12ヶ月間続けた。
【0295】
主要なエンドポイントは、生活の質であった。この目的のために、有効なQOL−SF36尺度を使用した(Sam他,EUR J VASC ENDOVASC SURG. 2004,28:253−256)。第二義的な転帰は、試験脚の潰瘍の完全な治癒及び有害事象であった。図4は、コントロールと比較した、Dermacyn群の患者における全体的な身体活動の改善を示す。更に、コントロール群においてはわずか47%であるのに対して、Dermacynで治療した潰瘍の78%が9ヶ月までに治癒した(図5参照)。
【0296】
塗布時に見つかった唯一の副作用は、Dermacyn治療患者の最大30%の患者における灼熱感であった。この感覚は、自己限定的であり、最大で数分続いた。それはまた、Dermacyn治療患者でなされた機能的な改善を示す図6で観察され得るように、塗布の2日目又は3日目には消失し、治癒過程に影響しなかった。更に、Dermacyn治療患者は、ORP水治療による痛みの強さの改善を示した(図7)。Dermacyn治療患者はまた、活力、社会的機能、及び全体的な精神的健康の改善を示した。
【0297】
この研究は、Dermacynで治療した静脈脚皮膚潰瘍は、研究中、ポビドンヨードで治療された静脈脚皮膚潰瘍と比較して、より良い生活の質であったことを示す。
【0298】
実施例21
この調査は、踝より遠位の壊死組織(潰瘍)の治療においてVersajet(商標)(Smith & Nephew)ジェット洗浄システムの交換溶液として本発明に従って使用される例示的なORP水溶液であるDermacynの、標準レジメンと比較した安全性及び有効性を説明するために実施され得る。
【0299】
これは、前向きランダム化二重盲検対照研究である。約30人の患者(Dermacyn群は約20人/コントロール群は約10人)をこの研究に登録する。この研究の集団は下肢潰瘍(例、糖尿病性足潰瘍、静脈うっ滞性潰瘍)の患者である。患者が研究への登録に適格であるためには、全ての研究包含基準及び除外基準を0日目までに満たしていなければならない。包含基準は以下である:患者は18歳以上である;患者の下肢潰瘍には壊死組織が存在し、ジェット洗浄システムによる機械的な清拭の候補である;患者の潰瘍は踝より遠位に位置している;患者の潰瘍表面積は1.0cm2以上である;患者の潰瘍は真皮を通って皮下組織にまで広がっており(肉芽組織が存在しても良い)、筋肉又は腱の露出があり得るが骨及び/又は関節包の関与は無い;及び患者のドップラー足関節−上腕指数は、0.8以上のABIであるか、又は患者のつま先の圧力は40mmHg以上である。
【0300】
除外基準は以下である:患者は治療肢のいずれかの部分に壊疽の臨床上の証拠がある;患者の潰瘍は研究期間中に切除又は切断されることが見込まれている;患者は全身性炎症反応症候群(SIRS)に付随する兆候を有している;患者の潰瘍は1cm2未満の総表面積である;研究員の意見では、患者をこの研究の候補として不適当にする1種以上の病状(腎臓、肝臓、血液、神経、又は免疫の病気を含む)を患者は有している;患者は既知の能動的なアルコール及び薬物の乱用を有する;患者は副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤又は細胞毒性剤を経口又は非経口で受けているか、又は研究の過程中にそのような剤を必要とすることが予期される;患者は塩素に対する既知のアレルギーを持っている;患者の潰瘍は骨髄炎を伴っている;及び患者は、患者がこの研究を完了する能力を著しく危うくする何らかの状態を有している。
【0301】
インフォームド・コンセントを得た後、包含基準及び除外基準にかなえば、患者を以下の治療の一つに任意抽出する(2:1の任意抽出):治療−ジェット洗浄システムとDermacyn、及びヒドロゲル創傷ドレッシングレジメンの使用;コントロール−生理食塩水(ジェット洗浄システムでの標準的な治療)、及びヒドロゲル創傷ドレッシングレジメンの使用。
【0302】
Dermacynに任意抽出された各患者は、患者の創傷の機械的な清拭中に、Versajetジェット洗浄システムを用いた研究製品Dermacynの適用を受ける。Versajetの標準的な圧力設定を糖尿病性足潰瘍(踝よりも遠位である)に使用する。清拭後、Dermacynを残屑のない創傷床をすすぐのに充分な量で創傷に塗布する。創傷をヒドロゲルドレッシングで覆う。ドレッシングを変える度に、創傷をDermacynで洗い流し、新たなヒドロゲルドレッシングで覆う。研究員による特別な定めの無い限り、ドレッシングは3日毎に変える。臨床反応因子(CFR)((1)創傷における細菌の減少、(2)創傷面積の減少、及び(3)肉芽組織の発達)を週に1度の来診中に決定する。
【0303】
コントロールの各患者は、患者の創傷の機械的な清拭の間、Versajetジェット洗浄システムによるコントロール製品(生理食塩水溶液)の塗布を受ける。清拭後、生理食塩水を、残屑のない創傷床をすすぐのに充分な量で創傷に塗布する。創傷をヒドロゲルドレッシングで覆う。ドレッシングを変える度に、創傷を生理食塩水で洗い流し、新たなヒドロゲルドレッシングで覆う。研究員による特別の定めが無い限り、ドレッシングは3日毎に変える。週に1度の来診中に臨床反応因子を決定する。
【0304】
創傷の清拭を週に1度の各来診時に行っても良い。あらゆる壊死組織を創傷判定前にジェット洗浄で清拭する。潰瘍からの残屑をDermacyn又は生理食塩水のいずれか(任意抽出に依存する)ですすぐ。訪問の間、患者は、ドレッシングを変える度に、Dermacyn又は生理食塩水(任意抽出に依存する)で創傷をすすぐ。創傷の写真を訪問毎、清拭後に撮る。
【0305】
主要な効力エンドポイントは:(1)創傷における細菌の減少、(2)創傷面積の減少、及び(3)肉芽組織の発達である。安全性を、この研究で任意抽出された全ての患者で判定する。突発的で重篤な有害事象の処置を記録する。
【0306】
実施例22
この研究は、Jet−Ox NDシステムで使用される標準レジメンと比較した、下肢潰瘍における壊死組織の治療におけるJet−Ox ND洗浄システムの交換溶液としての、例示的なORP水溶液Dermacynの安全性及び効力を示す。
【0307】
Jet−Ox NDシステムは、無菌生理食塩水の制御されたスプレー洗浄を通じて、その下の正常組織を損傷することなく、慢性創傷から壊死組織を取り除く。この研究は生理食塩水をDermacynに交換するが、それは同等のスプレー洗浄効果を与え、創傷が閉じるのを妨げ得る創傷の細菌負荷を更に減少させることが見込まれる。
【0308】
20人の患者を研究する(任意抽出して、10人のDermacyn患者及び10人のコントロール患者を得る)。包含基準は以下である:患者は18歳より上である;患者は、膝よりも下に壊死組織が存在する下肢潰瘍を有し、Jet−Ox洗浄システムでの機械的な清拭の候補である;患者の潰瘍は適格審査の来診の30日よりも前に存在していた;潰瘍の表面積は、1cm2よりも大きく、潰瘍は真皮を通じて皮下組織にまで広がっており(肉芽組織が存在しても良い)、筋肉、腱の露出があり得るが骨又は包の露出は無い;患者のドップラーによる足関節/上腕指数は0.8よりも大きく、且つ/又は患者のつま先の圧力は40mmHgよりも高い;及び患者は足背動脈及び/又は後脛骨動脈に触診可能な脈拍を有している。
【0309】
以下の除外基準がある:腎臓、肝臓、血液、神経、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)若しくは後天性免疫不全症候群(AIDS)を有するものを含む免疫不全患者;研究者の意見では、患者を研究には不適切な候補とするもの;感染後の臨床的徴候を有する創傷;治療の肢のいずれかの部分の壊疽;潰瘍は露出した骨を表に出している(骨のポジティブなプローブ)か、又は下にある骨髄炎の他の証拠を潰瘍部位に有している;感染潰瘍が研究期間中に切断又は切除されるという予期;アルブミンが2.0よりも低いことで明らかな重篤な栄養失調;既知のアルコール又は薬物乱用;経口又は非経口で、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤又は細胞毒性剤、クマジン、ヘパリンを受けている患者、或いは患者は研究の過程中にそのような剤を必要とすることが予想される;及び患者は塩素に対する既知のアレルギーを持っている。
【0310】
各個体を、2つの治療群;Dermacyn又は生理食塩水のうち1つに任意抽出する。標的潰瘍は機械的な清拭を受け、続いてDermacyn又は生理食塩水のいずれかで創傷を洗浄し、ヒドロゲルドレッシングで包帯をする。実験室での研究(血液学、血清生化学、及び必要に応じて妊娠テスト)、非侵襲的な末梢血管の研究、病歴及び身体検査、潰瘍のトレース、並びに潰瘍の写真撮影と共に定量培養用の中心の創傷生検を採る。
【0311】
Jet−Ox ND洗浄システムを、Dermacyn又は生理食塩水、ヒドロゲル及び包帯素材と共に分配する。家庭での使用のための説明書が提供される。来診は、適正審査、任意抽出を伴う登録[0日目]、清拭、写真撮影、及び判定を伴う毎週の来診を含む。有効性は、(1)創傷における細菌の減少、(2)創傷面積の減少、及び(3)研究の過程中の肉芽組織の発達によって決定する。この研究で任意抽出される全ての患者において、安全性を判定する。突発的で重篤な有害事象の処置を記録する。
【0312】
実施例23
この実施例は、過酸化水素(HP)に対する例示的なORP水溶液の、ヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)の生存能力に対する影響を示している。この潜在的な毒性を調べるために、HDFをインビトロでORP水溶液及び過酸化水素(HP)に曝露した。HPは真核細胞に対して毒性であることが知られており、アポトーシス及び壊死を増加させ、且つ細胞の生存能力を減少させる。この実施例において、細胞の生存能力、アポトーシス、及び壊死を、5分及び30分間純粋なORP水溶液及び880mM HP(HPの清毒用途で採用される濃度)に曝露したHDFで測定した。
【0313】
HDFの培養物を、この調査の目的でプールし、一緒に冷凍保存した3つの異なる包皮から得た。全ての実験について、2倍体細胞のみを使用した。細胞周期の分析において、DNAの2倍性を、少なくとも20,000の合計事象から収集したCV 7%未満の単一G0−G1ピーク及び対応するG2/Mピークの存在として定義した。図8A〜8Cは、曝露時間5分及び30分をそれぞれ白棒及び黒棒で表した結果を開示している。これらのパラメータの同時分析を、同じ細胞集団中で、A)7−アミノアクチノマイシンD(7AAD)、B)アネキシンV−FITC、及びC)ヨウ化プロピジウムを使用するフローサイトメトリーによって行った。図8A〜8Cは、平均±SD(n=3)で表したパーセント値を開示している。
【0314】
細胞の生存率は、5分間のORP水溶液及びHPへの曝露後、それぞれ75%及び55%であった(図8A)。曝露を30分に延長した場合、細胞の生存率は、それぞれ60%及び5%にまで更に減少した。15%の細胞がフローサイトメトリー分析において両方の時間でヨウ化プロピジウムを取り込んだため、明らかにORP水溶液は壊死による細胞死を引き起こした(図8C)。いかなる特定の理論に縛られることも望んでいないが、細胞は、成長因子又はイオンの添加無しでORP水溶液のみの中に保たれたため、この結果はMicrocynの低張性(13mOsm)によって引き起こされた浸透圧効果が原因であり得る。ORP水溶液で処理された細胞の3%しか細胞表面にアネキシンV(アポトーシスマーカー)を露出させなかったため(図8B)、アポトーシスはORP水溶液が細胞死を引き起こすメカニズムでは無いようである。このパーセンテージは、コントロール群で測定されたものと実質的に同様であった。一方、HPは、5分及び30分の曝露後、処理した細胞の20%及び75%で壊死を、15%及び20%でアポトーシスをそれぞれ引き起こした。つまり、これらの結果は、(未希釈の)ORP水溶液はHDFに対して、清毒的な濃度のHPと比べてはるかに低い毒性であることを示している。
【0315】
実施例24
この実施例は、HDFにおける酸化的DNA損傷及びDNA付加物8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)の形成への、過酸化水素(HP)と比較した例示的なORP水溶液の影響を示している。細胞内での8−OHdG付加物の産生は、DNAの特定残基での酸化損傷のマーカーであることが知られている。加えて、この付加物の高い細胞内のレベルは変異誘発、発癌、及び細胞の老化と相関している。
【0316】
図9は、30分間のコントロール処理、ORP水溶液処理、及びHP処理後のHDF由来のDNAサンプル中に存在する8−OHdG付加物のレベルを示している。DNAを、曝露後直ちに(T0,白棒)又はチャレンジ期間から3時間後(T3,黒棒)に抽出した。DNAを消化し、製造者の使用説明書のとおりにELISAキットによって8−OHdG付加物を測定した。値は平均±SD(n=3)で示した(ng/mL)。30分間のORP水溶液への曝露は、処理した細胞における付加物の形成を、30分間のインキュベーション後のコントロール細胞と比較して増加させなかった。一方、高希釈HP−致死未満の非治療的なHP濃度(500μM HP)まで下げた−での処理、30分間の500μM HPでの処理は、8−OHdG付加物の数を、コントロール処理又はORP水溶液処理した細胞と比べて約25倍増加させた。
【0317】
ORP水溶液で処理した細胞は、ORP水溶液への曝露後3時間にわたり、補充DMEM中に入れたままにしておいた場合、8−OHdG付加物のレベルを減少させることが可能であった。同じ3時間の回復期間を与えたにも関わらず、HP処理した細胞はそれでもまだ、コントロール処理又はORP水溶液処理した細胞よりも約5倍多い付加物を示した。つまり、これらの結果は、ORP水溶液への急性曝露は有意なDNA酸化損傷を誘導しないことを示している。これらの結果はまた、ORP水溶液は、インビトロ又はインビボでの変異誘発又は発癌を引き起こさないらしいことを示している。
【0318】
実施例25
この実施例は、HPと対比した、低濃度の例示的なORP水溶液への慢性曝露の、HDFへの影響を示している。慢性の酸化ストレスは細胞の早期老化を引き起こすことが知られている。長期の酸化ストレスを模倣するために、20集団の倍増の間、初代HDF培養物を低濃度のORP水溶液(10%)又は非致死性のHP濃度(5μM)に慢性的に曝露した。SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現及び活性は、以前からインビボ及びインビトロでの老化過程と関連付けられてきた。この実施例においては、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現を、ORP水溶液又はHPへのHDFの1ヶ月の連続的な曝露後に分析した。結果を図10に示している。酵素SA−β−ガラクトシダーゼの発現は、20の顕微鏡視野における青色の細胞の数をカウントすることにより分析した。(染色パターンの例については、パネルAを参照されたい。)パネルBは、SA−β−ガラクトシダーゼを過剰発現した細胞の数が示すように(n=3)、HP処理のみが細胞老化を加速させたことを示している。低用量のHPでの慢性的な処理は、SA−β−Galの発現を86%の細胞で増加させたが、一方でORP水溶液での処理はこのタンパク質の過剰発現を引き起こさなかった。この実施例から、ORP水溶液は細胞の早期老化を引き起こすものではないことが結論付けられ得る。
【0319】
実施例26
この実施例は、例示的なORP水溶液を使用した毒性調査の結果を示している。
【0320】
急性の全身毒性調査をマウスで行い、例示的なORP水溶液であるMicrocyn60の潜在的な全身毒性を決定した。単回用量(50mL/kg)のMicrocyn60を5匹のマウスに腹腔内注射した。5匹のコントロールのマウスに単回用量(50mL/kg)の生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を注射した。全ての動物を、注射後すぐ、注射から4時間後、及び以後7日間毎日1回、死亡及び有害反応について観察した。全ての動物の体重も、注射前及び7日目に再度計量した。調査の間には、死亡はなかった。全ての動物は、調査を通じて臨床的に正常であるように見えた。全ての動物は体重が増加した。この調査から見積もられたMicrocyn60の急性腹腔内LD50は、50mL/kgより大きい。この実施例は、Microcyn60は有意な毒性を持たず、本発明に従った治療的な使用について安全であるはずであることを示している。
【0321】
実施例27
この実施例は、例示的なORP水溶液の潜在的な細胞遺伝毒性を決定するために行った調査を表している。
【0322】
例示的なORP水溶液(Microcyn 10%)を使用して微小核試験を行い、マウスへのORP水溶液の腹腔内注射の変異誘発の可能性を評価した。哺乳動物でのインビボの微小核試験は、マウスの多染性赤血球の染色体又は分裂装置への損傷を引き起こす物質の同定のために使用されている。この損傷は、ラギング染色体の断片又は分離した染色体全体を含有する細胞内構造である「微小核」の形成をもたらす。ORP水溶液の調査は、各10匹(オス5匹/メス5匹)のマウスの3つの群を含んだ:試験群、ORP水溶液を投与する;ネガティブコントロール群、0.9% NaCl溶液を投与する;及びポジティブコントロール群、変異原性のシクロホスファミド溶液を投与する。試験群及びネガティブコントロール群に、それぞれORP水溶液又は0.9% NaCl溶液の腹腔内注射(12.5ml/kg)を連続2日間(1日目及び2日目)与えた。ポジティブコントロールのマウスに、シクロホスファミド(8mg/mL,12.5ml/kg)の単回の腹腔内注射を2日目に与えた。何らかの有害反応について、全てのマウスを注射後すぐに観察した。全ての動物は、調査を通じて臨床的に正常であるように見え、いずれの群においても毒性の兆候は見られなかった。3日目に全てのマウスの体重を量り殺した。
【0323】
殺したマウスから大腿を摘出し、骨髄を抽出し、各マウスについて二重で塗抹標本を行った。各動物の骨髄のスライドを倍率40倍で読み取った。骨髄毒性の指標である、多染性赤血球(PCE)の正染性赤血球(NCE)に対する割合を、各マウスについて少なくとも合計200の赤血球をカウントすることにより決定した。それから、マウス1匹あたり最低2000の記録可能な(scoreble)PCEを微小核化多染性赤血球の発生について評価した。データの統計解析は、統計ソフトウェアパッケージ(Statview 5.0,SAS Institute Inc.,USA)のマン・ホイットニー検定(5%のリスク閾値)を使用して行った。
【0324】
ポジティブコントロールのマウスは、それらの各ネガティブコントロールと比較して、統計的に有意に低いPCE/NCE比を有したが(雄:0.77対0.90、及び雌:0.73対1.02)、これは処理した骨髄へのシクロホスファミドの毒性を示している。しかしながら、ORP水溶液で処理したマウスとネガティブコントロールとの間には、PCE/NCE比に統計的に有意な差異は無かった。同様に、ポジティブコントロールのマウスは、ORP水溶液で処理したマウス(雄:11.0対1.4/雌:12.6対0.8)及びネガティブコントロール(雄:11.0対0.6/雌:12.6対1.0)の両方と比較して、微小核を有する多染性赤血球を統計的に有意に多く持っていた。ORP水溶液で処理したマウスとネガティブコントロールのマウスとの間には、微小核を有する多染性赤血球の数に統計的に有意な差異は無かった。
【0325】
この実施例は、10%のMicrocynは、マウスへの腹腔内注射後に毒性効果も変異原性効果も引き起こさなかったことを示している。
【0326】
実施例28
この調査は、例示的なORP水溶液Dermacynには毒性がないことを示している。
【0327】
この調査はISO 10993−5:1999基準に従って行い、例示的なORP水溶液Dermacynが細胞毒性を引き起こす可能性を決定した。0.1mLのDermacynを含むフィルターディスクをアガロース表面に置き、マウス繊維芽細胞(L−929)の単層に直接重層した。調製したサンプルを、5% CO2の存在下37℃での24時間のインキュベーション後、細胞毒性の損傷について観察した。観察結果をポジティブ及びネガティブコントロールのサンプルと比較した。Dermacynを含有するサンプルは細胞溶解又は毒性のいかなる証拠も示さず、一方ポジティブ及びネガティブコントロールは予想された通りであった。
【0328】
この調査に基づき、Dermacynはマウス繊維芽細胞に対して細胞毒性効果を生じないと結論付けた。
【0329】
実施例29
この調査は16匹のラットで行い、例示的なORP水溶液Dermacynの局所耐容性、及び全層皮膚創傷治癒のモデルにおける創傷床の組織病理へのその影響を評価した。創傷を対象ラットの両側に作った。治癒プロセスの間、皮膚切片を左側又は右側のいずれかに置いた(例、それぞれDermacyn処理及び生理食塩水処理)。
【0330】
Dermacyn及び生理食塩水処理した外科創傷部位のマッソントリクローム染色切片及びII型コラーゲン染色切片を有資格の獣医病理学者によって評価した。結合組織の増殖の現れとしての2型コラーゲンの発現量、繊維芽細胞の形態及びコラーゲンの形成、横断面における新表皮の存在、炎症及び皮膚潰瘍化の程度について、切片を判定した。
【0331】
知見は、Dermacynはラットにおいて十分に耐容されたことを示す。いずれかの側の創傷(それぞれDermacyn処理及び生理食塩水処理)からの皮膚切片において、処理に関連する組織病理学的な病変は無かった。生理食塩水処理及びDermacyn処理した創傷部位の間に、関連性のある組織病理学的な差異は無く、Dermacyn処理は十分な耐容性であることを示していた。生理食塩水処理及びDermacyn処理した創傷部位の間に、2型コラーゲン発現の有意な差異は無く、Dermacynは創傷治癒の間、繊維芽細胞又はコラーゲンの同化に副作用を及ぼさないことを示している。
【0332】
実施例30
この実施例は、肥満細胞の脱顆粒の阻害における、例示的なORP水溶液(Mycrocyn)の有効性を示している。肥満細胞は、I型過敏症疾患において主要な役割を果たすものとして認識されてきた。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、及びアトピー性喘息で観察される複数の臨床症状は、異なる罹患組織にある肥満細胞のIgE抗原刺激によって引き起こされる。アトピー性喘息の発症機序について現在認められている見解は、アレルゲンが、いわゆる反応の初期段階においてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、キニニス(kininis)、血小板活性化因子(PAF)などのメディエイターをIgE保有肺肥満細胞(MC)が放出するよう誘発することによってプロセスを開始させることである。次にこれらのメディエイターが気管支収縮を誘導し、及び血管透過性及び粘液産生を増強する。このモデルに従うと、肥満細胞の活性化後、これらの細胞は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5及びIL−6を含む様々な炎症促進性サイトカインを分泌し、それらは好酸球、好塩基球、Tリンパ球、血小板、及び単核食細胞などの他の炎症細胞の局所的な動員及び活性化に関与する。次にこれらの動員された細胞が、後に自律的になる可能性があり且つ喘息の症状を悪化させる可能性のある炎症反応の発生に寄与する。この後期段階の反応は、周囲組織の可塑的変化を誘導し得る長期の炎症プロセスの構成要素となる(図11参照)。従って、MCは抗原刺激炎症/免疫系細胞によるサイトカイン放出のモデルを提供する。
【0333】
肥満細胞の抗原刺激は、IgEの高親和性受容体(FcεRI受容体)の活性化を通じて起こるが、該受容体はIgEと結合した後、受容体結合IgEと特異的抗原との相互作用によって集合し得る多量体タンパク質である。その構造は、IgE結合α鎖、シグナル伝達能力を増幅する役目をするβ鎖、及びコードされた免疫受容体チロシンベースの(ITAM)活性化モチーフを通じた主要なシグナル伝達因子であるジスルフィド結合した2つのγ鎖、という4つのポリペプチドを含む。この受容体の架橋によって活性化されるシグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウス及びラットの腹膜肥満細胞、並びにMC−9などの他の肥満細胞株を使用して特徴付けられてきた。これら全てにおいて、IgEに結合した抗原の存在が、肥満細胞の脱顆粒、カルシウム動員、細胞骨格再構成、及びサイトカイン産生を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Etsなど)の活性化を引き起こす。
【0334】
成熟したマウスのBMMCにモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を取り除き、細胞を生理的緩衝液(Tyrode’s Buffer/BSA)中に再懸濁した。その後細胞を異なる濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間37℃で処理した。緩衝液を取り除き、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃での30分間の培養中に様々な濃度の抗原(ジニトロフェノールに結合したヒトアルブミン)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清及びペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼ活性の測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する(hydrolize)能力に基づく比色分析反応を使用した。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図12)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が増加するにつれて有意に減少することを示している。
【0335】
驚くべきことに、肥満細胞の脱顆粒に対するORP水溶液(Microcyn)の阻害効果は、臨床的に有効な“肥満細胞安定剤”及び確立されている抗アレルギー性化合物クロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))で観察されたものと少なくとも類似である(図13)。脱顆粒を、刺激された細胞のペレット及び上清におけるβ−ヘキソサミニダーゼの酵素活性によって再度測定したが、それにはこの酵素が異なった糖質を加水分解(hydrolize)する能力に基づく比色分析反応を使用した。抗DNPモノクローナルIgEをロードした細胞を、15分間の前培養有り又は無しで、クロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))を用いて刺激した。クロモグリク酸塩は、脱顆粒の低減においてORP水溶液よりも有効でなかった(図12と図13とを比較されたい;これらは共に少なくとも約50%の脱顆粒の低減を達成している)。
【0336】
実施例31
この実施例は、例示的なORP水溶液の、カルシウムイオノフォアによる肥満細胞活性化に対する阻害活性を示している。
【0337】
肥満細胞は、カルシウムイオノフォアによって引き起こされるカルシウム流動の活性化を通じて刺激され得る。カルシウムイオノフォアによって活性化されるシグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウス及びラットの腹膜肥満細胞、並びにMC−9などの他の肥満細胞株を使用して特徴付けられてきた。これらの系の全てにおいて、カルシウム動員は、肥満細胞の脱顆粒(例、ヒスタミン放出)、細胞骨格再構成、及びサイトカインの産生及び分泌を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(例、NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Ets)の活性化を引き起こす。
【0338】
成熟したマウスの骨髄由来肥満細胞(BMMC)にモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を取り除き、細胞を生理的緩衝液(Tyrode’s Buffer/BSA)中に再懸濁した。その後細胞を異なる濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間37℃で処理した。緩衝液を取り除き、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃での30分間の培養中にカルシウムイオノフォア(100mM A23187)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清及びペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼ活性の測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する能力に基づく比色分析反応を使用した。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図14)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が増加するにつれて有意に減少することを示している。
【0339】
これらの結果は、ORP水溶液がヒスタミン放出の非特異的な阻害剤であることを示している。従って、ORP水溶液は(様々な濃度であっても)、刺激(例、抗原又はイオノフォア)とは独立に、肥満細胞の脱顆粒を阻害する。いずれの理論によっても縛られることを望まないが、ORP水溶液は恐らく、原形質膜及び/又は細胞骨格のレベルで分泌経路系を変更する。ORP水溶液の作用機序は非特異的であると考えられているため、ORP水溶液は、広範な臨床応用の可能性を持ちうると考えられる。
【0340】
実施例32
この実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のサイトカイン遺伝子の転写の活性化に対する影響を示している。
【0341】
図15A及び15Bは、実施例30で記載したようにして15分間様々な濃度のORP水溶液で処理し、抗原によって更に刺激した肥満細胞からのRNAse保護アッセイである。刺激後、mRNAをアフィニティークロマトグラフィーカラム(RNAeasy kit,Qiagene)を使用して抽出し、RNAse保護アッセイを標準的なキット条件(Clontech,Becton & Dickinson)を使用して行い、抗原チャレンジ後の異なるサイトカインのmRNA産生を検出した。サイトカインには、TNF−α、LIF、IL13、M−CSF、IL6、MIF、及びL32が含まれていた。
【0342】
図15A及び15Bは、ORP溶液水(Microcyn)が、実験に用いたORP水溶液又は抗原の濃度に関わらず、肥満細胞における抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを変更しなかったことを示している。
【0343】
この研究において、炎症促進性遺伝子の転写物レベル(即ち、刺激された肥満細胞のRNA含有量)は、ORP水溶液処理した肥満細胞において、様々な濃度の抗原での刺激後に変化しなかった。従って、ORP水溶液は、これらのサイトカインの分泌経路を、それらの転写に影響を与えることなく阻害した。
【0344】
実施例33
この実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のTNF−α分泌に対する阻害活性を示している。
【0345】
実施例30で記載したように、肥満細胞を様々な濃度のORP水溶液で15分間処理し、更に抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、TNF−αレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な時間(2〜8時間)で回収した。サンプルを凍結し更に市販のELISAキット(Biosource)を用い製造者の指示に従って分析した。
【0346】
図16は、ORP水溶液処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたTNF−αのレベルが、非処理細胞と比較して顕著に減少することを示している。
【0347】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のTNF−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手順後様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0348】
実施例34
この実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のMIP 1−α分泌に対する阻害活性を示している。
【0349】
実施例30で記載したように、肥満細胞を様々な濃度の例示的なORP水溶液(Microcyn)で15分間処理し、更に抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、MIP 1−αのレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な時間(2〜8時間)で回収した。サンプルを凍結し更に市販のELISAキット(Biosource)を用い製造者の指示に従って分析した。
【0350】
図17は、ORP水溶液処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたMIP 1−αのレベルが、非処理細胞と比較して顕著に減少したことを示している。
【0351】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のMIP 1−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手順後の様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0352】
実施例30〜33及びこの実施例は、ORP水溶液がIgE受容体架橋によって開始される初期段階及び後期段階のアレルギー反応を阻害することが可能であることを更に示している。
【0353】
実施例35
この実施例は、例示的なORP水溶液Microcynの、第一度、第二度、及び第三度の小児熱傷における抗菌活性、入院の短縮、及び美容結果の向上を示している。
【0354】
この研究は、ORP水溶液での臨床結果、並びに動物モデルにおける熱傷中のPseudomonasを除去するためのORP水溶液の安全性及び効果の知見に基づいて設計した。
【0355】
このパイロット試験の主要なエンドポイントは、感染症の局部的な制御であった。
【0356】
皮膚への表層−部分層、深部−部分層、及び全層熱傷と診断され2004年3月から2005年3月までにメキシコのグアダラハラ市民病院に入院した64人の継続的な患者を研究群(即ち、ORP水溶液)(男性35人、女性29人)に入れた。その施設において2003年内に同様の熱傷を示した対となる症例の過去に遡った分析をコントロール群とした(男性40人、女性24人)。コントロール群は、銀溶液/軟膏で治療されていた。2つの群の年齢分布は同様であった(図18)。熱傷の原因もまた、2つの群で同様であり、火、沸騰水、及び電気を含んでいた。熱傷の程度を表23に示す。
【0357】
【表23】
【0358】
登録時、研究群の全ての患者は、Jetoxシステムを使用した外科的な清拭及びORP水溶液の高圧洗浄を受けた。多量の分泌を伴う第三度の全層熱傷のみ、ORP水溶液に浸したガーゼで覆った。しかしながら、ほとんどの患者はオープンな様式で治療した。そうすることで、大部分の子供は毎日入浴することができ、損傷上部にゲル又はドレッシングを使用することなく1日に3度ORP水溶液を(スプレー形態で)受けることができた。定性的細菌学のために、登録時及び1週間の治療後に組織生検を創傷床から得た。全層熱傷において、必要であれば植皮を使用した。コントロール群の患者を同様にして治療したが、ORP水溶液の代わりに銀溶液を使用した。病院のプロトコールの一部として、Staph aureus陽性培養の場合又は患者が別施設から移されてきた場合は、患者に抗生物質をそのまま続けた。
【0359】
この試験において、コントロール群での46人に対して、わずか6人のORP水溶液群の患者が抗生物質を受けた(表24)。これにも関わらず、陽性培養は、治療後、それぞれ6人及び22人の患者から得られた(表25参照)。しかしながら、ORP水溶液群の患者は一人も、入院中にも退院後にも、明らかな感染の徴候を示さなかった。
【0360】
【表24】
【0361】
【表25】
【0362】
ORP水溶液治療した子供はまた、より少ない痛みを訴えたようであった。
【0363】
入院は、ORP水溶液群において、コントロール群に対してほぼ50%短縮された(それぞれ14.8日対28.6日)。第一度、第二度、及び第三度熱傷を別々に分析した場合でも、入院は、コントロールの患者に対してORP水溶液治療患者で短縮された(表26)。
【0364】
【表26】
【0365】
しかしながら、熱傷の大きさに基づいた結果の分析では、どちらの療法が優れているかを示すことができなかった(図19)。
【0366】
この施設での1日の入院コストは、患者1人あたり約1,800ドルであったため、ORP水溶液は、入院するのに患者1人あたり平均24,660ドル節約した。従来の標準的な熱傷治療を使用するよりも、ORP水溶液治療患者において、直径10cmまでの第三度熱傷が植皮の必要なく完全に治癒し、より良い美容結果且つより少ないキレート化であったことも示唆された。
【0367】
従って、例示的なORP水溶液は、全層の熱傷を持つ患者の微生物負荷及び入院の長さを低減させる。痛みの減少及び瘢痕化の改善(improve scarring)などの他の利点がこの研究によって示唆された。
【0368】
出版物、特許出願、及び特許を含む本明細書で挙げた全ての文献は、各文献が個別且つ具体的に参照によって組み込まれると表示され、その全体が本明細書に示されたのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0369】
本発明を説明する文脈(特に添付の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がないか又は明らかに文脈に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」は、別段の記載が無ければ、オープンエンドの用語(即ち、「含むが、それに限定されない」ということを意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値を個別に言及する簡易な方法としての役目を持つことを単に意図しており、各個別の値は、それが個別に本明細書に引用されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書で記載した全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、或いは明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書で与えた、任意及び全ての例、又は例示的な言葉使い(例、「のような(such as)」の使用は、本発明をより良く明らかにすることを単に意図しており、別段の請求が無ければ、本発明の範囲を制限しない。本明細書中の言葉使いは、あらゆる非請求の要素が本発明の実施に不可欠であることを指示していると解釈されてはならない。
【0370】
本発明の好ましい実施態様を、発明者らが知っている本発明を実施するための最良の形態を含めて本明細書で記載している。これらの好ましい実施態様の変形は、上述の記載を読めば当業者には明らかとなり得る。発明者らは、当業者がそのような変形を好適に採用することを予期しており、また、発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載したのとは別の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙した対象の、適用法によって認められるあらゆる修正及び同等物を含む。更に、上述の要素のあらゆる可能な変形でのあらゆる組み合わせが、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0371】
【図1】本発明に従って使用する酸化還元電位水溶液を製造するための3室の電解セルの概略図である。
【図2】3室の電解セルを示しており、本発明に従って使用する酸化還元電位水溶液を製造するための例示的な製造プロセスで生成されたイオン種を表している。
【図3】本発明に従って投与される例示的な酸化還元電位水を製造するプロセスの模式的フローダイアグラムである。
【図4】コントロール及びORP水溶液治療(Dermacyn)患者が歩くことが出来るメートル数の図式的な比較を表している。
【図5】コントロール及びORP水溶液治療(M60)患者における潰瘍が治癒するのに必要な月数の図式的な比較を表している(>=12m,12ヶ月以上;10−11m,10〜11ヶ月;7−9m,7〜9ヶ月;4−6m、4〜6ヶ月;<=3m、3ヶ月以下)(群内の全ての潰瘍のパーセンテージ)。
【図6】記載した課題を実行する能力に基づいた、ORP水溶液(Derma)治療の前後の患者の機能状態の図式的な比較を表している。
【図7】ORP水溶液(M60)治療の前後の患者によって報告された潰瘍に関連する痛みの図式的な比較を表している。
【図8A】過酸化水素(HP)に対する、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス、及び壊死の図式的な比較を表している。
【図8B】過酸化水素(HP)に対する、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス、及び壊死の図式的な比較を表している。
【図8C】過酸化水素(HP)に対する、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス、及び壊死の図式的な比較を表している。
【図9】500μM過酸化水素(HP)に対する、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したHDFにおける8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)付加物のレベルの図式的な比較を表している。
【図10A】過酸化水素(HP)に対する、低濃度の例示的なORP水溶液(MCN)への慢性曝露後のHDF中のβ−ガラクトシダーゼと関連する老化の発現を示している。
【図10B】過酸化水素(HP)に対する、低濃度の例示的なORP水溶液(MCN)への慢性曝露後のHDF中のβ−ガラクトシダーゼと関連する老化の発現を示している。
【図11】肥満細胞活性化と関連する生物学的事象を表している。
【図12】様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図13】クロモグリク酸塩で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への、例示的なORP水溶液(MCN)の影響を比較して示している。
【図14】様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化及びカルシウムイオノフォア(A23187)活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図15A】ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAse保護アッセイである。
【図15B】ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAse保護アッセイである。
【図16】様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるTNF−α分泌の図式的な比較である。
【図17】様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるMIP1−α分泌の図式的な比較である。
【図18】例示的なORP水溶液(研究群)又は標準的治療法(コントロール群)で治療した小児熱傷患者における年齢分布のグラフ表示である。
【図19】例示的なORP水溶液(研究群)又は標準的治療法(コントロール群)で治療した患者の入院日数を、熱傷を負った体表面積のパーセンテージで分類した図式的な比較である。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この特許出願は、2006年1月20日に出願された米国仮特許出願第60/760,635号;2006年1月20日に出願された同第60/760,567号;2006年1月20日に出願された同第60/760,645号;2006年1月20日に出願された同第60/760,557号;2005年10月27日に出願された同第60/730,743号;2005年5月2日に出願された同第60/676,883号;2005年3月31日に出願された同第60/667,101号;及び2005年3月23日に出願された同第60/664,361号の利益を主張しており;これらのそれぞれは参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
皮膚潰瘍は、重大な臨床上の問題であり、例えば、壊疽、全身性炎症症候群、及び敗血症などのよりいっそう重篤な合併症を引き起こし得る。これらの合併症が四肢の皮膚潰瘍で起こった場合、現在の治療レジメンは、患者に疑う余地のない影響がある大腿切断(AKA)、下腿切断(BKA)、および指切断を含む切断を必要とする可能性がある。
【0003】
皮膚潰瘍には、静脈不全症、動脈不全症、虚血性の圧迫、及び神経障害性を含む多くの原因がある。静脈性皮膚潰瘍は、脚皮膚潰瘍の最も一般的なタイプであり、男性よりも女性の方が罹患しやすい。静脈性皮膚潰瘍は、静脈性高血圧及び静脈瘤と関連している。典型的には、静脈性皮膚潰瘍は、浅くて痛みを伴う。動脈性皮膚潰瘍は、心臓病又は脳血管疾患、脚の跛行、インポテンス、及び脚尖部の痛みの病歴のある高齢の患者に典型的に見られる。付随性の静脈疾患が動脈性潰瘍の症例の最大25%に存在する。皮膚の褥瘡は、組織虚血に由来する。皮膚の褥瘡は一般的に深く、またしばしば骨の隆起の上に位置する。神経障害性の皮膚潰瘍は、外傷、長期の圧迫、例えば糖尿病、神経障害又はハンセン病の患者における足の底面と通常関連している。
【0004】
静脈不全症は下肢皮膚潰瘍の一般的な原因であり、全症例の80%までを占めている。合衆国における静脈不全症を持つおおよそ700万人のうち、おおよそ100万人が静脈性脚潰瘍を発症している。静脈性脚潰瘍のコストは合衆国で1年あたり10億ドルであると見積もられており、患者あたりの平均コストは40,000ドルを超えている。静脈性皮膚潰瘍は、歳をとるにつれてより一般的になり、60歳と80歳との間の年齢で最大の有病率である。しかしながら、より若い患者もまた静脈性皮膚潰瘍を発症し、大きな罹患率、及び労働からの離脱時間をもたらしている。de Araujo他,ANN.INTERN.MED. 2003 138(4):326−34。
【0005】
皮膚の褥瘡は、高齢者における罹患率の別の主要な原因であり、また、老人ホームに入っている人において医療及び看護のコストを劇的に増大させる最も重要な介護の問題である。特に脚の皮膚の褥瘡は非常に一般的であり、高齢の動けない患者の間では治癒するのが難しい。くるぶし、かかと、又はその両方における皮膚の褥瘡は、皮下組織に乏しい骨の隆起上の小さい領域に集中した圧迫、せん断、又は摩擦の結果として発症する。治療されない皮膚の褥瘡は悪化して蜂巣炎、慢性感染症、又は骨髄炎に繋がる可能性がある。Landi他,ANN. INTERN. MED. 2003 139(8):635−41。
【0006】
糖尿病もまた足皮膚潰瘍のよくある原因である。米国における糖尿病の罹患率は、約500万人の診断未確定の人も含めると、現在約6%、即ち1800万人を超えている。さらに、2型糖尿病は米国において増加しているようである。糖尿病は米国における非外傷性の切断原因の筆頭である。米国の糖尿病患者における下肢切断(LEA)の総数は、毎年80,000を超えている。糖尿病性のLEA後の3年死亡率は、35%と50%との間である。米国での糖尿病性のLEAに対する直接的なコストは、2001年の額で、つま先切断についての22,000ドルから、大腿切断についての51,300ドルにまで及ぶ。糖尿病患者において、足の皮膚潰瘍はLEAの約85%に先行している。米国の糖尿病患者において、新たな足の皮膚潰瘍の1年間での発生率は、1.0%から2.6%にまで及ぶ。V. R. Driver他, DIABETES CARE 2005 28:248−253.
【0007】
従来の糖尿病性足潰瘍の治療は、清拭、血管再開通術、ドレッシング、及び存在するあらゆる感染症の治療を含む。清拭は、感染症の可能性を低くするために、全ての残屑及び壊死物質を取り除くべきである。一般的に推奨されるのは、非接着性のドレッシングが常に糖尿病性足潰瘍を覆うべきであり、閉鎖ドレッシングが感染の危険を低くし得るということである。
【0008】
湿性壊疽及び乾燥壊疽の両方が糖尿病性の足で起こり得る。湿性壊疽は、軟部組織感染症又は潰瘍に続発する敗血性動脈炎によって引き起こされる。乾燥壊疽は、動脈灌流の重篤な減少に続発し、重篤な慢性虚血において起こる。外科的な清拭が続く血管再開通術は糖尿病における足潰瘍の治療に推奨されている。抗生物質は治療の重要な要素であるが、抗生物質のみでの感染症の治療は通常、糖尿病性足感染症の大部分を解消するには不十分である。米国糖尿病協会合意声明(American Diabetes Association Consensus Statement),DIABETES CARE 2003 26:3333−3341。従って、とりわけ糖尿病における足皮膚潰瘍治療の更なる方法に対する必要性が存在する。
【0009】
感染症が臨床上の役割を持つ慢性皮膚潰瘍の範囲は、重症虚血肢(CLI)、糖尿病性足潰瘍、下腿切断(BKA)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、及び慢性静脈不全症(CVI)を含む。これらの状態における感染症の役割は、軽微なものから重篤なものまで及び得るが、たいていの症例において重大な役割を持っているようである。感染した皮膚潰瘍は、全身への抗生物質をしばしば必要とし、また、下肢にある場合は切断を必要とする可能性もある。
【0010】
切断の必要性を減少させる皮膚潰瘍の治療方法を開発する必要がある。85歳を超える患者において、一次切断術(PA)は、13〜17%という極度に高い死亡率をいまだに持っている。最高リスク患者において、多くが末期であるため、切断後30日の周術期死亡率は4〜30%、罹患率は20〜37%にまで及び得る。CLI患者は、感染症、敗血症、及び進行性腎不全を患う。BKA後のリハビリテーションの成功は、患者の3分の2未満で達成され;大腿切断後、その割合は患者の半分未満である。全体としては、切断を必要とする全患者の50%未満が完全な可動性をこれまで達成している。CLI患者については、3年後50%を超える死亡率であり、下肢救済に対してBKA後の死亡率は2倍であるという、芳しくない全体的な予後がある。更に、合衆国におけるCLI治療の全コストは、1年あたり100億〜200億ドルと見積もられている。同様に、切断患者のフォローアップ又は長期のケア及び治療の年間コストは、肢が救済された場合よりも顕著に大きい。
【0011】
潰瘍のタイプ及び重篤度によっては、臨床像は、急性の全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、又は敗血性ショックへと進行し得る。全身性炎症反応症候群(SIRS)は、末端器官の損傷も同定可能な菌血症も伴わない、全身炎症の特徴を含む症候群である。SIRSは、敗血症、重症敗血症、又は敗血性ショックからは分けられ異なっている。SIRSから敗血症への変わり目の要所は、血中の同定された病原体の存在である。SIRSの病態生理学は、以下に限定されないが、補体活性化、サイトカイン及びアラキドン酸代謝物分泌、細胞性免疫の刺激、凝固カスケードの活性化、及び液性免疫機構を含む。臨床的にはSIRSは、頻脈、頻呼吸、低血圧、低灌流、乏尿、白血球増加又は白血球減少、発熱又は低体温、代謝性アシドーシス、及び量支持の必要性によって特徴付けられる。SIRSは、全ての臓器システムに影響する可能性があり、多臓器不全症候群(MODS)をもたらす可能性がある。このように、初期のステージ(即ち、SIRS)でさえ、潰瘍部位及び血中において、多臓器不全の確立及び死に寄与する炎症性サイトカインの蓄積がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、皮膚潰瘍を治療する新たな方法の必要性が残されている。本発明はそのような方法を提供する。本発明のこれら及び他の利点は、更なる本発明の特徴と共に、本明細書に与えた本発明の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本発明は、患者の状態を予防又は治療する方法を提供し、該方法は治療有効量の、少なくとも約24時間安定である酸化還元電位(ORP)水溶液を患者に投与することを含む。状態は、例えば、本発明のORP水溶液で治療可能な病状、病気、傷害、アレルギーなどを含み得る。
【0014】
本発明は、少なくとも約24時間安定である酸化還元電位(ORP)水溶液を投与することによる患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。本発明はまた、アノード水及びカソード水を含む酸化還元電位水溶液を投与することによる患者の皮膚潰瘍を治療する方法にも関する。一つの実施態様において、本発明の方法で使用されるORP水溶液は、1種以上の遊離塩素種を含み、また少なくとも約2ヶ月間安定である。ORP水溶液は、好ましくはアノード水及びカソード水を含む。
【0015】
別の実施態様において、ORP水溶液は約15ppmから約35ppmの量の次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの量の次亜塩素酸ナトリウムを含み、少なくとも約1週間安定で、且つ約6.2から約7.8のpHを有する。
【0016】
本発明はまた、患者の皮膚潰瘍を治療する方法も提供し、該方法は、ORP水溶液で皮膚潰瘍を洗浄及び/又は洗い、ORP水溶液中に皮膚潰瘍を浸し、ORP水溶液で飽和した創傷ドレッシングで皮膚潰瘍をドレッシングし、そして任意で、洗い、洗浄し、浸し、そしてドレッシングする工程を繰り返すことを含み、ここでORP水溶液は好ましくは約6.4から約7.8のpHを有する。一つの実施態様において、皮膚潰瘍は少なくとも約2分間浸され、そして、任意で、少なくとも約2分間乾かされ、そしてドレッシングが適用される。
【0017】
本発明は更に、患者の皮膚潰瘍の微生物負荷を減少させる方法を提供し、該方法は、皮膚潰瘍における微生物負荷及び局所炎症過程を減少させるのに有効な量でORP水溶液を患者に投与することを含む。本発明は更に、再発率を減少させ、四肢潰瘍と関連する切断の可能性を減少させる方法を提供し、且つ該方法は、有効量のORP水溶液を患者に投与することを含む。
【0018】
本発明は更に、壊疽に付随し、且つSIRS又は敗血症の発症と関係する多臓器不全を予防する方法を提供し、該方法は、少なくとも約24時間安定である治療有効量の酸化還元電位(ORP)水溶液を患者に投与して、皮膚潰瘍部位で炎症細胞からの新たな炎症促進性分子の分泌を阻害し、皮膚潰瘍の微生物負荷を減少させることを含む。ORP水溶液は、患者の皮膚潰瘍組織をこの溶液に接触させることによって投与され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、酸化還元電位(ORP)水溶液を皮膚潰瘍を治療するのに有効な量で患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供し、ここで溶液は約6.4から約7.8のpHを有し、且つ少なくとも約1週間安定である。ORP水溶液は、好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定であり、より好ましくは少なくとも約1年間安定である。ORP水溶液は、好ましくは約7.4から約7.6のpHを有する。
【0020】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、アノード水及びカソード水を含み得る。カソード水は好ましくは、溶液の約10体積%から約50体積%の量で、ORP水溶液中に存在する。カソード水はより好ましくは、溶液の約20体積%から約40体積%の量で存在する。或いは、アノード水は、溶液の約50体積%から約90体積%の量で、ORP水溶液中に存在する。
【0021】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、少なくとも1種の遊離塩素種を含み得る。遊離塩素種は、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、又はそれらの組み合わせを含み得る。好ましくは、遊離塩素種は、次亜塩素酸である。他の遊離塩素種が存在しても良い。
【0022】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、例えば、約10ppmから約400ppmの量の遊離塩素種から構成され得る。好ましくは、遊離塩素種は、約15ppmから約50ppmの量で存在する。より好ましくは、遊離塩素種は、以下から選択される:約15ppmから約35ppmの量で存在する次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの量で存在する次亜塩素酸ナトリウム、又は約15ppmから約35ppmの量で存在する次亜塩素酸と約25ppmから約50ppmの量で存在する次亜塩素酸ナトリウムとの組み合わせ。
【0023】
本発明は、任意の好適な方法でORP水溶液を投与することによる、患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。例えば、ORP水は、溶液で皮膚潰瘍を洗うこと又は洗浄することによって患者に投与され得る。或いは、ORP水溶液は、この溶液中に皮膚潰瘍を浸すことによって患者に投与され得る。皮膚潰瘍は、任意の好適な長さの時間、通常少なくとも約1分間、好ましくは少なくとも約2分間、ORP水溶液に浸され得る。
【0024】
別の実施態様において、ORP水溶液は、溶液で飽和した創傷ドレッシングで皮膚潰瘍をドレッシングすることによって患者に投与され得る。飽和した創傷ドレッシングは、充分な時間の間創傷と接触したままにされて創傷を治療し得る。好ましくは、飽和した創傷ドレッシングは、例えば、1日に1度、又は1日あたり複数回のように定期的に交換されて、創傷への新たなドレッシングを提供する。
【0025】
本発明は更に、(1)酸化還元電位(ORP)水溶液で潰瘍を洗うこと又は洗浄すること;(2)潰瘍をORP水溶液中に浸すこと;(3)ORP水溶液で飽和した創傷ドレッシングで潰瘍をドレッシングすること、及び(4)任意で工程(1)〜(3)を繰り返すこと、を含む皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。更に、ORP水溶液技術に基づくゲルもまた、創傷を覆うためのドレッシング又はガーゼに適用され得る。該方法の工程(1)〜(3)は、皮膚潰瘍を治療するのに必要なだけ繰り返して良い。
【0026】
皮膚潰瘍は、創傷へのORP水溶液の適用の前又は後のいずれかに任意で清拭され得る。好ましくは、皮膚潰瘍はORP水溶液を適用する前に清拭される。皮膚潰瘍はまた、ORP水溶液で飽和した創傷ドレッシングの適用に先立っても清拭され得る。
【0027】
皮膚潰瘍は、最初の3〜4日間、洗浄、洗うこと、及び/又は浸すことによって1日に1度清潔にされて、関連する感染を適切に制御し得る。潰瘍は、石鹸及び水道水で洗われ、清拭され、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、又は必要に応じてそれ以上頻繁にORP水溶液をスプレーされ得る。清潔にした後、潰瘍は、任意の好適な時間の間(通常約60分から約120分、好ましくは約15分から約60分、より好ましくは約5分から約15分)、ORP水溶液に浸されるか、さもなければORP水溶液で湿潤され得る。潰瘍は任意で更なる上昇(rising)に供され得る。皮膚潰瘍を湿潤させた後、創傷は、好ましくは、湿潤ゲル(その有効成分はORP水溶液であり得る)で覆われ、乾いたドレッシングが適用される。湿潤ゲルは更にORP水溶液を含み得る。この手順は任意で、治療の最初の72時間の間、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、又はより頻繁に繰り返される。その後、この手順は、臨床評価に従って、3から4日に1度任意で繰り返されうる。
【0028】
本発明に従って治療される患者は、ヒト又は獣医患者(例、非ヒトの哺乳動物)であり得る。ORP水溶液が適用される皮膚潰瘍は、患者のどこに位置していても良く、皮膚潰瘍は、頭、首、上肢、手、指、胴体、性器、下肢、足(foot)、つま先、足(paw)、蹄、又はそれらの組み合わせに位置するが、これらに限定されない。一患者の複数の皮膚潰瘍が同時に治療され得る。
【0029】
本発明は、あらゆる深さ、形状、又は大きさの皮膚潰瘍の治療を提供する。治療に好適な皮膚潰瘍は、例としては、表層表皮に限られる潰瘍、表皮基底層を保っている潰瘍、表皮を貫く潰瘍、真皮を巻き込んでいる潰瘍、真皮を通って皮下組織まで貫く潰瘍、並びに筋肉、脂肪、及び骨を含む深部組織まで貫く潰瘍を含む。皮膚潰瘍はあらゆる形状(例えば、丸、楕円、線状、又は不規則な形状)であり得る。例えば、少なくとも約1mm2、少なくとも約5mm2、少なくとも約1cm2、又は少なくとも約2cm2の表面積を含む任意の好適な表面積を有する皮膚潰瘍が治療され得る。
【0030】
本発明は、例えば、動脈不全症、静脈不全症、リンパ管不全症、神経障害、圧迫、外傷、又はそれらの組み合わせを原因とする、患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。
【0031】
患者における様々なタイプの皮膚潰瘍が、本発明に従うORP水溶液で治療され得る。例えば、以下の皮膚潰瘍が治療に好適である:糖尿病性足潰瘍、虚血性潰瘍、壊疽性潰瘍、静脈うっ滞性潰瘍、褥瘡性潰瘍、又は外傷性潰瘍。本発明は更に、これらに限定されないが例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、喫煙、塞栓、糖尿病、動脈炎症、移植片対宿主病、レイノー病、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、又はそれらの組み合わせを原因とする動脈不全症の患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。
【0032】
本発明は更に、これらに限定されないが例えば、うっ血性心不全、静脈炎、凝血、静脈弁異常、遺伝的要因、又はそれらの組み合わせを原因とする静脈不全症の患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。これらに限定されないが例えば、鎌状赤血球貧血、凝固能亢進状態、白血球停滞、過粘稠症候群、DIC、又はそれらの組み合わせを原因とする血管内血流異常の患者における皮膚潰瘍も治療され得る。
【0033】
本発明はまた、これらに限定されないが例えば、腫瘍塞栓、フィラリア症(filarasis)、又はそれらの組み合わせを原因とするリンパ管不全症の患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。同様に、本発明は、これらに限定されないが例えば、うっ血性心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、栄養失調、又はそれらの組み合わせを原因とする浮腫の患者の皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。
【0034】
本発明は、圧迫虚血が患者の不動、麻痺、肥満、又はそれらの組み合わせに起因する皮膚の褥瘡の治療方法を含む。本発明は更に、神経障害患者における皮膚潰瘍の治療方法を提供し、ここで神経障害は、これらに限定されないが例えば、糖尿病、尿毒症、毒素、アミロイド、多発性硬化症、遺伝性神経障害、又はそれらの組み合わせを原因とする。
【0035】
本発明はまた、代謝疾患(例えば、糖尿病、通風など)、炎症状態(例えば、狼瘡、混合性結合組織病、関節リウマチ、あらゆるタイプの原発性又は続発性脈管炎、過敏反応、多形性紅斑、水疱性皮膚病、尋常性天疱瘡など)、感染症(例えば、疱疹、ハンセン病、水痘帯状疱疹、敗血症など)、新生物(例えば、皮膚癌(skin caner)、血管種など)、変性疾患(例えば、強皮症、モルフェアなど)、遺伝病(例えば、鎌状赤血球貧血など)、外傷/環境傷害(例えば、擦り傷、放射線照射、術後瘻孔など)、又はそれらの組み合わせを原因とする、患者の皮膚潰瘍を治療する方法も提供する。
【0036】
本発明の方法は、単一の皮膚潰瘍又は複数の皮膚潰瘍を有する患者を治療するために使用され得る。
【0037】
皮膚潰瘍は、本発明に従って他の療法(therapries)と組み合わせて、ORP水溶液で治療され得る。限定するものではないが例えば、静脈うっ滞性脚潰瘍は、必要なだけの数の静脈における硬化療法を含み得る総合的な外来治療の一部として、ORP水溶液を投与することによって治療され得る。硬化療法の各セッション後、治療した静脈の閉鎖を助けるために、患者はクラス2のコンプレッションストッキングを履き得る。ストッキングを履いている必要のある時間の長さは、注射された静脈の大きさによって、約3日間から約3週間まで変動する。圧迫包帯が任意で使用される。好適な患者においては、伏在静脈切除術も行われ得る。
【0038】
本発明は更に、糖尿病患者の足潰瘍である皮膚潰瘍を治療する方法を提供する。本発明は、(1)潰瘍を清拭すること;(2)ORP水溶液で潰瘍を洗うこと又は洗浄すること;(3)少なくとも2分間潰瘍を溶液中に浸すこと;(4)少なくとも約2分間潰瘍を乾かすこと;(5)溶液で飽和した創傷ドレッシングで潰瘍をドレッシングすること;及び(6)任意で工程(1)〜(5)を繰り返すこと、を含む糖尿病患者の足潰瘍を治療する方法を提供し、ここで潰瘍は、糖尿病患者におけるグレード2又はグレード3の感染足潰瘍であり、該潰瘍は少なくとも約2.0cm2の表面積を有する。糖尿病患者の足潰瘍を治療するそのような方法は、潰瘍が実質的に治癒されるまで任意の好適な回数だけ工程(1)〜(5)を繰り返すことを含み得る。好ましくは、工程(1)〜(5)は少なくとも1度繰り返される。
【0039】
本発明は、酸化還元電位(ORP)水溶液を投与することによって患者の皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の再発率を減少する方法、患者の皮膚潰瘍の裂開の可能性を減少する方法、及び患者の皮膚潰瘍に起因する切断の可能性を減少する方法を提供する。
【0040】
更なる実施態様において、本発明は、ORP水溶液を投与することを含む、皮膚潰瘍に起因する全身性炎症反応症候群(SIRS)の発生率を低減する方法を対象としている。本発明は更に、ORP水溶液を投与することを含む、皮膚潰瘍に起因する敗血症の発生率を低減する方法を含む。全身性炎症反応症候群(SIRS)は、末端器官の損傷も同定可能な菌血症(bactereia)も伴わない、全身炎症の特徴を含む症候群である。SIRSは、敗血症、重症敗血症、又は敗血性ショックからは分けられ異なっている。SIRSから敗血症への変わり目の要所は、血中の同定された病原体の存在である。SIRSの病態生理学は、以下に限定されないが、補体活性化、サイトカイン及びアラキドン酸代謝物分泌、細胞性免疫の刺激、凝固カスケードの活性化、及び液性免疫機構を含む。ポビドンヨード治療の患者に対する、ORP水溶液治療の患者でのSIRS又は敗血症の発生率の低下によって測定したとき、本発明に従ったSIRS又は敗血症の発生率の減少は、任意の量、通常少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%であり得る。
【0041】
本発明は更に、ORP水溶液を投与することによって患者の皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の微生物負荷を減少する方法を提供する。
【0042】
本発明の文脈において、患者(例、動物、特にヒト)に投与される治療有効量は、適当な時間枠にわたって患者において治療的又は予防的な反応をもたらすのに充分でなければならない。投与量は、当該分野で周知の方法を使用して容易に決定され得る。当業者は、任意の特定の患者に対する具体的な投薬量レベルは様々な因子に依存することを認識するであろう。例えば、投与量は、使われる特定のORP水溶液の強度、状態の重篤度、患者の体重、患者の年齢、患者の肉体的及び精神的状態、全般的な健康、性別、食事などに基づいて決定され得る。投与量の規模はまた、特定のORP水溶液の投与に付随し得るあらゆる副作用の存在、性質、及び程度に基づいて決定され得る。可能であれば常に、副作用を最小に維持することが望ましい。
【0043】
具体的な投薬量のために考慮され得る因子としては、例えば、生物学的利用能、代謝プロファイル、投与時間、投与経路、排出率、特定の患者における特定のORP水溶液と関連する薬力学などが含まれ得る。他の因子としては、例えば、治療される特定の状態に関するORP水溶液の効力又は有効性、治療過程前又は治療過程中に現れる症状の重篤度などが含まれ得る。場合によっては、治療有効量を構成するものは、部分的に、1種以上のアッセイ(例、特定の状態の治療又は予防のための特定のORP水溶液の有効性を、合理的に、臨床的に予測するバイオアッセイ)の使用によっても決定され得る。
【0044】
本発明のORP水溶液は、患者(例、ヒト)に対して、例えば既存の状態を治療するために、単独で又は1種以上のほかの治療剤との組み合わせで、治療的に投与され得る。本発明のORP水溶液はまた、状態と関連する1種以上の原因因子に曝露された患者(例、ヒト)に対して、単独で又は1種以上のほかの治療剤との組み合わせで、予防的に投与され得る。例えば、本発明のORP水溶液は、1種以上の感染症原因微生物(例、ウイルス、細菌及び/又は真菌)に曝露された糖尿病患者に対して好適に投与され得、患者における感染症の可能性を予防的に阻害又は低減し、或いはそのような曝露の結果として発症する感染症の重篤性を低減する。即ち、ORP水溶液は、汚染され、コロニー形成され、又は重篤にコロニー形成された皮膚潰瘍における感染症の発症を防ぎ得る。
【0045】
当業者は、本発明のORP水溶液を投与する好適な方法が利用可能であり、そして、一つより多い投与経路が使用され得るが、特定の経路が他の経路よりもより即時的でより効果的な反応を提供し得ることを理解するであろう。治療有効量は、個々の患者においてORP水溶液の「有効レベル」を達成するために必要な投与量であり得る。治療有効量は、例えば、患者における状態を予防又は治療するために、本発明のORP水の血中レベル、組織内レベル、及び/又は細胞内レベルを達成するために個々の患者に投与される必要がある量として定義され得る。
【0046】
投薬の好ましいエンドポイントとして有効レベルが使用される場合、実際の投与量及び投与計画は、例えば、薬物動態、分布、代謝などにおける個体差によって変化し得る。有効レベルはまた、本発明のORP水溶液が本発明のORP水溶液以外の1種以上の治療剤(例、1種以上の抗感染剤、1種以上の「緩和剤」、「調節剤」又は「中和剤」(例、米国特許第5,334,383号及び同第5,622,848号で記載されたようなもの)、1種以上の抗炎症剤など)との組み合わせで使用される場合、変化し得る。
【0047】
適当な指標が、有効レベルを決定し、及び/又はモニターするために使用され得る。例えば、有効レベルは、適当な患者サンプル(例、血液及び/又は組織)の直接的な分析(例、分析化学)又は間接的な分析(例、臨床化学的指標を用いる)によって決定され得る。有効レベルはまた、例えば、尿代謝産物の濃度、状態と関連するマーカー(例、ウイルス感染の場合のウイルスの数)の変化、組織病理学及び免疫化学分析、状態と関連する症状の低減などのような直接的又は間接的な観察によっても決定され得る。
【0048】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、当該分野で公知の任意の好適な投与方法を使用して投与され得る。本発明に従って使用されるORP水溶液は、当該分野で知られる、1種以上の医薬的に許容される担体、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、又は希釈剤との組み合わせで投与され得る。本発明に従って使用されるORP水溶液は、ゲル、軟膏などの有効成分でもあり得る。当業者は、本発明に従ったORP水の投与のための適当な製剤及び投与方法を容易に決定出来る。投与量におけるいかなる必要な調整も当業者によって容易になされ得、例えば、副作用、患者の全体的な状態の変化などのような他の因子を考慮して、治療されている状態の性質又は重篤度に対処する。
【0049】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、浮腫を減少し血流を増大させるために使用される陰圧器具の洗浄溶液としても使用され得る。好適な陰圧器具には、例えば、Kinetic Concepts社によって合衆国で販売されているV.A.C.(登録商標)及びV.A.C.(登録商標) Instill(商標)器具のような、1種以上の持続陰圧吸引(vacuum assisted wound closure)の器具が含まれ得る。ORP水溶液は、微生物負荷を減少しながら炎症−アレルギーのプロセスを制御することにより器具と相乗的に作用し得ると考えられる。従って、器具は、断続的又は連続的な洗浄によって開放の潰瘍に適用されて、本発明に従って組織感染又は壊死を治療又は予防し得る。
【0050】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、皮膚潰瘍を清拭するために使用される水手術(hydrosurgery)器具のための洗浄溶液としても使用され得る。好適な水手術器具には、例えば、Smith and Nephewによって合衆国で販売されているVersaJet器具、Medaxisによって欧州で販売されているDebritom、DeRoyalによって合衆国及び欧州で販売されているJetOx、又はイタリアで販売されているPulsaVacが含まれ得る。ORP水溶液は、創傷中の微生物負荷を減少すること、及び清拭手順の間の感染性の霧の形成を回避することによって、該器具と相乗的に作用し得ると考えられている。従って、該器具を使用して、本発明に従って、連続的な洗浄で潰瘍を清拭し、感染プロセスを減少し、感染性の霧の形成を回避し得る。
【0051】
生体工学皮膚(Apligraf,Organogenesis社,カントン)、無細胞の皮膚代替物(Oasis Wound Matrix,Healthpoint)、ORP水溶液の超音波適用、及び局所酸素補充又は高圧酸素治療(例、高圧ブーツ、Vent−Ox System)を含むいくつかの補助療法が、本発明に従って任意で利用され得る。
【0052】
好ましくは、ORP溶液は、例えば患者の皮膚潰瘍に接触するように、液体又はゲルとして投与される。本発明のORP水溶液はまた、スチーム又はスプレーとしても投与され得る。更に、本発明のORP水溶液が、エアロゾル化、ネブライゼーション、又はアトマイゼーションによっても投与され得る。本発明のORP水溶液は、エアロゾル化、ネブライゼーション、又はアトマイゼーションによって投与される場合、約0.1ミクロンから約100ミクロン、好ましくは約1ミクロンから約10ミクロンの範囲の直径を持つ液滴の形態で好適に投与される。
【0053】
例示的なネブライザーは、米国特許第5,312,281号、同第5,287,847号及び同第6,598,602号に記載されている。米国特許第5,312,281号は超音波ネブライザーを記載しており、これは、水又は液体を低温で霧化し、霧のサイズを調整することが出来ると報告されている。更に、米国特許第5,287,847号は、医薬のエアロゾルを新生児、子供、及び成人に送達するための、測量可能な流速及び排出体積を有する気体ネブライジング装置を記載している。更には、米国特許第5,063,922号は超音波アトマイザーを記載している。
【0054】
本発明の方法はまた、本発明のORP水溶液で治療可能な感染症の予防又は治療のために使用され得る。該感染症は、例えば、感染性微生物のような1以上の感染性病原体によって引き起こされうる。このような微生物には、例えば、ウイルス、細菌、及び真菌が含まれ得る。ウイルスには、例えば、疱疹ウイルス、ポックスウイルス、及びパピローマウイルスからなる群から選択される1以上のウイルスが含まれ得る。細菌には、例えば、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、及びMycobaterium tuberculosisからなる群から選択される1以上の細菌が含まれ得る。真菌には、例えば、Candida albicans、Histoplasma capsulatum、Aspergillusスピーシズ、及び皮膚糸状菌からなる群から選択される1以上の真菌が含まれ得る。
【0055】
本発明は更に、例えば壊死皮膚潰瘍床のような障害のある又は損傷した組織を治療する方法を提供し、該方法は、障害のある又は損傷した組織を、治療有効量の本発明のORP水溶液と接触させることを含む。任意の好適な方法が、障害のある又は損傷した組織を接触させるために使用され得、本発明に従って障害のある又は損傷した組織を治療する。例えば、障害のある又は損傷した組織は、該組織を本発明のORP水溶液で洗浄して、障害のある又は損傷した組織をORP水と接触させることにより、本発明に従って治療され得る。或いは(そして更には)、本発明のORP水溶液は、スチーム又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、ネブライゼーション、又はアトマイゼーションによって、本明細書で記載する通りに、投与され得、障害のある又は損傷した組織をORP水と接触させる。
【0056】
本発明の方法は、例えば手術によって障害を持った又は損傷した組織の治療において使用され得る。例えば、本発明の方法は、切開によって障害を持った又は損傷した組織、或いは瘻孔を残した組織を治療するために使用され得る。更に、本発明の方法は、口腔外科手術、グラフト手術、インプラント手術、トランスプラント手術、焼灼、切断、放射線照射、化学療法、およびそれらの組み合わせによって障害を持った又は損傷した組織の治療のために使用され得る。口腔外科手術は、例えば、例として根管手術、抜歯、歯肉手術などのような歯科外科手術を含み得る。
【0057】
本発明の方法はまた、必ずしも手術によって引き起こされたものではない、1種以上の熱傷、切り傷、擦り傷、こすれ、発疹、潰瘍、刺創、及びそれらの組み合わせなどにより障害を持った又は損傷した組織を治療することも含む。本発明の方法はまた、感染した、障害のある又は損傷した組織、或いは感染症によって障害を持った又は損傷した組織を治療するためにも使用され得る。このような感染症は、例えば、本明細書で記載したような、ウイルス、細菌、及び真菌からなる群から選択される1種以上の微生物のような1種以上の感染性病原体によって引き起こされ得る。
【0058】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、生物の表面(例、皮膚)を含む表面を殺菌するために使用され得、該方法は、表面を、抗感染量の本発明のORP水溶液と接触させることを含む。本発明の方法に従って、表面は、任意の好適な方法を使用して接触され得る。例えば、表面は、表面を本発明のORP水溶液で洗浄することにより接触され、本発明に従って表面を殺菌し得る。更に、表面は、本発明のORP水溶液を、本明細書で記載したようにスチーム又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、ネブライゼーション、又はアトマイゼーションによって、表面に塗布することによって接触され、本発明に従って表面が殺菌され得る。更には、本発明のORP水溶液は、本明細書で記載するようなクリーニングワイプで表面に塗布され得る。本発明に従って表面を殺菌することにより、表面から感染性微生物がクレンジングされ得、それにより、例えば糖尿病患者の足潰瘍に関連する感染症又は他の合併症(例、再発、裂開、及び/又は切断)の可能性を低下させる。或いは(又は更に)、本発明のORP水溶液は、感染症に対する障壁を提供して、それにより本発明に従って表面を殺菌し得るように、表面に塗布される。ORP水溶液はまた、長い手術の間中、器具を殺菌するため又はその無菌性を保つためにも使用され得る。
【0059】
ORP水溶液は、生物の、無生物の、又はそれらの組み合わせである表面を殺菌するために使用され得る。生物表面には、例えば、例として口腔、洞腔、頭蓋腔、腹腔、及び胸腔のような1種以上の体腔内の組織が含まれ得る。口腔内の組織には、例えば、口組織、歯肉組織、舌組織、及び咽喉組織が含まれる。生物組織には、皮膚、筋肉組織、骨組織、臓器組織、粘膜組織、無細胞及び細胞性の代用皮膚、他の生物工学組織、植皮片、胚性及び成熟幹細胞、又は分化した細胞(例、繊維芽細胞、ケラチノサイト)、及びそれらの組み合わせもまた含まれ得る。無生物表面には、例えば、外科的に移植可能な器具、人工装具、及び医療器具、並びに手術中に露出され得る内部器官、内臓、筋肉などの表面が含まれる。
【0060】
局所投与のために、ORP水溶液は単独で、又は増強した効力を与えるために担体(例、増粘剤)との組み合わせで投与され得る。
【0061】
本発明の製剤に存在している水の量は、通常、製剤の重量に基づいて、約10重量%から約95重量%である。好ましくは、存在している水の量は、約50重量%から約90重量%である。
【0062】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、実質的に、正常な組織及び正常な哺乳動物細胞への毒性を持たないことが見出されている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、真核細胞の生存能力の有意な減少、哺乳動物細胞におけるアポトーシスの有意な増加、細胞加齢の有意な加速、及び/又は有意な酸化的DNA損傷を引き起こさない。無毒性は特に有利であって、また、本発明に従って投与されるORP水溶液の殺菌力は過酸化水素とおおよそ同等であるが、正常な組織及び正常な哺乳動物細胞への毒性が過酸化水素よりもかなり低いことを考えると、恐らくそれは驚くべきことである。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液が、例えばヒトを含む哺乳動物における使用にとって安全であることを示している。
【0063】
本発明に従って投与されるORP水溶液において、細胞の生存率は、約30分間のORP水溶液への曝露後に、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約70%、更により好ましくは少なくとも約75%である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、最大で約30分以下のORP水溶液との接触で(例えば、ORP水溶液との、約30分又は約5分の接触後)、好ましくは細胞の最大でわずか約10%まで、より好ましくは細胞の最大でわずか約5%まで、更により好ましくは細胞の最大でわずか約3%までに、アネキシンVを細胞表面に露出させる。更には、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液への慢性的な曝露後に、好ましくは細胞の約15%未満、より好ましくは細胞の約10%未満、更により好ましくは細胞の約5%未満に、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素を発現させる。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、生理食塩水溶液によって引き起こされるのと同じ割合の酸化的DNA付加物形成(例えば、同等の条件下で処理された細胞において過酸化水素によって通常引き起こされる酸化的DNA付加物形成の約20%未満、酸化的DNA付加物形成の約10%未満、又は酸化的DNA付加物形成の約5%以下)を引き起こす。
【0064】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、有意なRNA分解を生じない。従って、ORP水溶液への約30分間の曝露後、又は約30分間の曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されて変性ゲル電気泳動によって分析されるRNAは、典型的には有意なRNA分解を示さず、また典型的には真核生物のリボソームRNA(即ち、28S及び18S)に対応する2本の別個の(discreet)バンドを示し、これは、本発明に従って投与されるORP水溶液がRNAを実質的に無傷のままにすることを示している。同様に、ORP水溶液への、約30分の曝露後、又は曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されたRNAは、構成的なヒトGAPDH(グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)遺伝子の逆転写及び増幅(RT−PCR)に供されて、RT−PCR産物のゲル電気泳動で強いGAPDHバンドを生じ得る。対照的に、同様の時間の間HPで処理された細胞は、有意なRNA分解を示し、GAPDHのRT−PCR産物はあったとしてもごくわずかである。
【0065】
驚くべきことに、本発明に従って投与されるORP水溶液は、一次炎症を引き起こす生物学的カスケードの一つである肥満細胞の脱顆粒の非常に有効な阻害剤であることが分かっている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、肥満細胞が抗原で活性化されていようが、カルシウムイオノフォアで活性化されていようが関係なく、肥満細胞の脱顆粒を阻害する。これも驚くべきことだが、本発明に従って投与されるORP水溶液は、肥満細胞におけるヒスタミン及び炎症促進性サイトカインの分泌を非選択的に阻害することも分かっている。例えば、本発明のORP水溶液は、例えば、肥満細胞におけるTNF−α及びMIP1−αの分泌を阻害し得る。本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、他のサイトカイン分泌細胞における炎症促進性サイトカインの分泌も阻害し得ると考えられている。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液は、広い抗アレルギー効果及び抗炎症効果を示すはずであり、感染皮膚潰瘍患者における予後を悪化させるSIRS及び多臓器不全の確立を治療又は予防するために望ましいことを示している。
【0066】
ORP水溶液は、更に増粘剤を含む本発明に従う局所投与のための製剤として投与され得る。任意の好適な増粘剤が使用されて、通常ORP水溶液単独よりも大きい所望の粘度を有する製剤を提供し得る。利用される増粘剤は、好ましくは、ORP水溶液及び製剤中の他の任意の成分と適合する。好適な増粘剤は、これらに限定されないが、ポリマー及びヒドロキシエチルセルロースを含む。好適なポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得、また任意で架橋されている。他の好適な増粘剤は、当該分野で一般に知られている(例えば、HANDBOOK OF COSMETIC AND PERSONAL CARE ADDITIVES,第2版,Ashe他編(2002)、及びHANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS,第4版,Rowe他編(2003)を参照)。
【0067】
一つの実施態様において、増粘剤は、例えば以下の一般構造:
【0068】
【化1】
【0069】
を有する高分子量の、架橋された、アクリル酸ベースのポリマーを含み得る、アクリル酸ベースのポリマーからなる群から選択される。
【0070】
そのようなポリマーは、ノベオン社によりCarbopol(登録商標)という商標名で販売されている。Carbopol(登録商標)ポリマーは、通常、様々なパーソナルケア製品、医薬品、及び家庭用クリーナーにおいて、増粘剤、懸濁化剤、及び安定剤として使用されるレオロジー調節剤として供給されている。Carbopol(登録商標)ポリマーは、固体(例、粉末)又は液体のいずれかの形態で使用され得る。
【0071】
本発明での使用に好適なアクリル酸ベースのポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。好適なホモポリマーは、好ましくはアリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで、架橋され得る。好適なアクリル酸のコポリマーは、長鎖(C10〜C30)アルキルアクリレートによって修飾され得、また、例えばアリルペンタエリスリトールで、架橋され得る。
【0072】
Carbopol(登録商標)ポリマーは、最大の粘度を達成するために好ましくは中和される。供給時、Carbopol(登録商標)ポリマーは、水素結合によってコイル構造で保持された、乾燥した、きついコイル状の酸性分子として存在し得る。いったん水又は別の溶媒中に分散すると、そのようなポリマーは水和して部分的にコイルを解き始め得る。Carbopol(登録商標)ポリマーから最大の増粘性を達成する一つの方法は、酸性ポリマーを塩に変換することによる。これは水酸化ナトリウム(NaOH)又はトリエタノールアミン(TEA)のような一般的な塩基で中和することにより、容易に達成されて、長鎖ポリマーの「コイルを解き」、有効な増粘形態を提供する。
【0073】
好適な増粘剤は、好ましくは、製剤にとって所望の粘度、並びに外観、せん断抵抗性、イオン抵抗性、及び熱安定性のような他の特徴をもたらす。例えば、Carbopol(登録商標)934は、3000センチポアズ(cps)より大きい粘度の(透明ゲルではなく)懸濁液又は乳濁液のいずれかの製剤にとって好ましい。Carbopol(登録商標)974Pは、代わりに、その利点である生体接着性のために使用され得る。
【0074】
任意の好適な量の増粘剤が製剤中に含まれ得、該製剤の所望の粘度をもたらす。通常、増粘剤の量は、製剤の重量に基づいて、約0.1重量%から約50重量%であり得る。好ましくは、増粘剤の量は、約0.1重量%から約10重量%である。
【0075】
増粘剤の量はまた、ORP水溶液の体積に基づき得、例えば、約0.1%重量/体積(mg/mL)から約50%重量/体積(mg/mL)である。一つの実施態様において、増粘剤の量は、約0.1% w/vから約10% w/vである。
【0076】
例示的な製剤は、ORP水溶液250mLあたり約0.1gから約50mg、ORP水溶液250mLあたり約1mgから約20mg、又はORP水溶液250mLあたり約3mgから約15mgの増粘剤を含み得る。
【0077】
アクリル酸ベースのポリマーが低濃度で使用される場合、製剤は滑るような感覚で容易に流れ得る。より高濃度のそのような粘性(theckness)では、製剤は、高い粘度を持ち得、偽塑性で流れにくくなり得る。せん断力がミキサー又はポンプによって適用される場合、見かけ上の粘度は減少し得、製剤はポンプされ得る。
【0078】
本発明の製剤は、任意で中和剤を含み得る。任意の好適な中和剤が使用されて、製剤の所望のpHをもたらし得る。好適な中和剤には、例えば、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、アンモニア、水酸化カリウム、L−アルギニン、AMP−95、ニュートロールTE(Neutrol TE)、トリスアミノ(Tris Amino)、エソミン(Ethomeen)、ジ−イソプロパノールアミン、及びトリ−イソプロパノールアミンを含む。他の中和剤は、当該分野で一般に知られている(例えば、HANDBOOK OF COSMETIC AND PERSONAL CARE ADDITIVES,第2版,Ashe他編(2002)、及びHANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS,第4版,Rowe他編(2003)を参照)。好適な中和剤は、液体又は固体の形態のいずれであっても良い。
【0079】
増粘剤がCarbopol(登録商標)のようなアクリル酸ベースのポリマーであるとき、好ましくは中和剤トリエタノールアミンが使用される。中和剤は、製剤をゲルに変換する。
【0080】
任意の好適な量の中和剤が本発明の製剤に含まれ得る。通常、中和剤の量は、製剤の重量に基づいて、約0.1重量%から約50重量%である。好ましくは、中和剤の量は、製剤の重量に基づいて、約0.1重量%から約10重量%である。体積に基づくと、中和剤の量は、ORP水溶液の体積に基づいて、約1体積%から約50体積%の量で存在し得る。
【0081】
液体形態で添加される場合、中和剤は、ORP水溶液250mLあたり約1mLから約100mLの量で添加され得る。好ましくは、中和剤の量は、ORP水溶液250mLあたり約10mLから約90mgである。
【0082】
製剤は着色料、香料、緩衝液、生理学的に許容される担体及び/又は賦形剤などのような更なる成分を更に含有しても良い。好適な着色料の例には、これらに限定されないが、二酸化チタン、酸化鉄、カルバゾールバイオレット、酸化クロム−コバルト−アルミニウム、4−ビス[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−9,10−アントラセンジオンビス(2−プロペン酸)エステルコポリマーなどが含まれる。任意の好適な香料が使用され得る。
【0083】
本発明の製剤は、任意の好適な手段によって調製され得る。ORP水溶液及び増粘剤のような製剤の成分は、任意の形式で共に混合されて均質な混合物をもたらし得る。好ましくは、これらの成分は電動混合又は他の好適な器具を用いて数分間共に混合されて、均一性を確実にする。製剤の成分は、通常約400rpmから約1000rpm、好ましくは約500rpmから約800rpm、より好ましくは約500rpmから約600rpmで混合される。
【0084】
製剤は、均質な混合物をもたらすのに充分な時間混合されるが、通常は全ての成分を合わせてから約1分から約10分である。
【0085】
増粘剤が粉末(power)形態の場合、まず篩過されて大きな塊を粉砕し、均質な製剤の調製を可能にし得る。
【0086】
トリエタノールアミンのような中和剤は、ORP水溶液及び増粘剤を含有する製剤に引き続き添加され得る。上記のように、トリエタノールアミンの添加は、Carbopol(登録商標)のような増粘剤がコイルを解いて所望の粘度を有する製剤をもたらすのを可能にし得る。
【0087】
着色料又は香料はまた、Carbopol(登録商標)のような増粘剤がORP水に溶解される前又は後のいずれかであるが、中和工程の前に、混合物に添加され得る。
【0088】
本発明の製剤中のORP水溶液の化学的性質は、典型的には、ORP水溶液のみでのそれと同じである。ORP水溶液の性質は、増粘剤及び任意の中和剤の添加後でさえ、好ましくは残ったままである。例えば、ORP水溶液自体及びORP水溶液を含有する製剤のpH及び殺菌力は、好ましくは通常同じである。最も好ましくは、本明細書で記載するORP水溶液の臨床上関連する全ての特徴は、本発明の製剤に当てはまる。
【0089】
例えば、本発明の製剤は、好ましくは少なくとも約20時間、好ましくは少なくとも約2日間、安定である。より好ましくは、製剤は、少なくとも約1週間(例、1週間、2週間、3週間、4週間など)、更により好ましくは少なくとも約2ヶ月安定である。
【0090】
製剤のpHは好ましくは、約6から約8である。より好ましくは約6.2から約7.8であり、最も好ましくは約7.4から約7.6である。
【0091】
製剤は、患者に局所投与するために好適な任意の形態(これらに限定されないが、ゲル、ローション、クリーム、ペースト、軟膏などが含まれる)で存在し得、これらの形態は当該分野で公知である(例えば、Modern Pharmaceutics,第3版,Banker他編(1996)を参照)。ゲルは典型的に、3次元構造を有する半固体の乳濁物又は懸濁物である。別の実施態様において、製剤はゲル形態である。
【0092】
ペーストは通常、水性又は脂性ビヒクル中に分散した大部分の固体(例、約20%から約50%)を大抵含有する半固体の懸濁物である。ローションは典型的に、水ベースのビヒクル及び揮発物(約50%より多い)を含有する液体乳濁物であり、注ぐのに十分低い粘度(30,000cps未満)を有する。軟膏及びクリームは好ましくは、他の揮発性成分とともに担体の一部として炭化水素又はポリエチレングリコールを含有し得る半固体の乳濁物又は懸濁物である。
【0093】
本発明の製剤がゲルの形態である場合、ゲルの粘度は、好ましくは、約10,000から約100,000センチポアズ(cps)の範囲(例、約15,000cps、約20,000cps、約25,000cps、約30,000cps、約35,000cps、約40,000cps、約45,000cps、約50,000cps、約55,000cps、約60,000cps、約65,000cps、約70,000cps、約75,000cps、約80,000cps、約85,000cps、約90,000cps、約95,000cps、又はそれらの範囲、又はそのような値の範囲の粘度)内である。
【0094】
ゲルのpHは好ましくは、約6.0から約8.0までの範囲内である。このpHを超えると、Carbopol(登録商標)ポリマーのような増粘剤の粘度は、可能性がある。好ましくは、ゲルのpHは約6.4から約7.8であり、より好ましくは約7.4から約7.6である。
【0095】
本発明の製剤は、様々な状態を治療するために、ヒト及び/又は動物を含む患者への局所投与に好適である。具体的には、製剤は、動物(例、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、トリ)及びヒトに適用され得る。局所投与は、皮膚及び生物組織への適用、並びに他の投与経路を含む。
【0096】
本発明に従って治療され得る患者の状態には、例えば、手術/開放創傷クレンジング剤;皮膚病原体の殺菌(例えば、細菌、マイコプラズマ、ウイルス、真菌、プリオンに対して);創傷の殺菌(例、戦闘の創傷);創傷治癒の促進;熱傷治癒の促進;皮膚真菌の治療;乾癬;水虫;耳の感染症(例、外耳炎);外傷性創傷;急性、亜慢性及び慢性の感染症(例、後者の例である糖尿病性足感染症)、褥瘡、皮膚剥削術、清拭された創傷、レーザー・リサーフェシング、ドナー部位/移植片、滲出性の部分層創傷及び全層創傷、表層の負傷(裂傷、切り傷、擦り傷、軽い皮膚過敏)、急性又は慢性の炎症又は過敏症を伴うあらゆる皮膚潰瘍、及びヒト又は動物の身体の上又は身体中の他の医療用途が含まれる。本発明に従って治療される潰瘍には、膿瘍、分泌物、又は壊死組織が存在していても良く、していなくても良い。
【0097】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、治療有効量で使用又は塗布されて、細菌、ウイルス、及び/又は病原菌に対する所望の治療効果を提供し得る。治療有効量は、治療中又は予防される状態の改善をもたらす製剤の量を含み得る。例えば、感染症を治療するために使用される場合、治療有効量は、感染症の程度を減少させる及び/又は更なる感染症を予防するのに有効な量を含み得る。当業者に理解されるように、製剤を投与することに由来する製剤の効力は、短期間(即ち、数日)及び/又は長期間(例、数ヶ月)であり得る。
【0098】
ORP水溶液又はその製剤は、患者への所望の効果が観察されるまで、充分な時間(例、約1日、約2日、数日、約1週間、又は数週間)にわたって更に塗布され得る。
【0099】
ORP水溶液又はその製剤は任意の好適な形式で塗布され得る。例えば、一定量のORP水溶液又はその製剤が治療される患者の表面に塗布されて、それから患者自身の指を使用してむらなく広げられ得る。或いは、保健医療提供者が製剤を患者の組織に塗布し得る。好適な手段(例えば、使い捨てワイプ又は布)が製剤を塗布するために使用され得る。
【0100】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば電解プロセス又は酸化還元反応による酸化還元法によって製造され得、そこでは電気エネルギーが水溶液中で1つ以上の化学変化を引き起こすために使用される。好適なORP水溶液を調製する例示的な方法は、例えば、米国特許出願公開US2005/0139808号及び同US2005/0142157号に記載されている。
【0101】
電解プロセスにおいて、電気エネルギーは、電流形態での一つの点から別の点への電荷の伝導によって、水中に導入され、水中を運ばれる。電荷が生じ、そこで存続するためには、水中に電荷担体がなければならず、また、その担体を動かす力がなければならない。電荷担体は、金属及び半導体の場合のように電子であり得、又は溶液の場合は陽イオン及び陰イオンであり得る。還元反応はカソードで起こり、酸化反応はアノードで起こる。起こると考えられている還元反応及び酸化反応の少なくとも一部は、国際出願WO03/048421 A1号に記載されている。
【0102】
本明細書で使用される場合、アノードで製造される水をアノード水といい、カソードで製造される水をカソード水という。アノード水は、典型的には、電解反応で製造される酸化種を含有し、カソード水は、典型的には、該反応からの還元種を含有する。アノード水は通常低pHであり、典型的には約1から約6.8である。アノード水は好ましくは、例えば塩素気体、塩化物イオン、塩酸、及び/又は次亜塩素酸、或いは1種以上のそれらの前駆物質を含む様々な形態の塩素を含有する。例えば酸素気体、及び恐らくは、製造中に形成される1種以上の他の酸化水種(例、過酸化物及び/又はオゾンの生成物)、又はそれらの1種以上の前駆物質を含む様々な形態の酸素もまた、好ましくは存在する。カソード水は通常高pHであり、典型的には約7.2から約11である。カソード水は、水素気体、ヒドロキシルラジカル、及び/又はナトリウムイオンを含有し得る。
【0103】
本発明のORP水溶液は、酸性であっても、中性であっても、塩基性であっても良く、通常、約1から約14のpHを有する。このpHでは、ORP水溶液は、ORP水溶液と接触する表面又は傷害対象(例、ヒトの皮膚)を損傷することなく、硬い表面へ好適な量で安全に塗布され得る。典型的には、ORP水溶液のpHは約3から約8である。より好ましくは、ORP水溶液のpHは、約6.4から約7.8であり、最も好ましくは、pHは約7.4から約7.6である。
【0104】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、約−1000ミリボルト(mV)から約+1150ミリボルト(mV)の酸化還元電位を持ち得る。この電位は、溶液が、金属電極によって感知されて同溶液中の参照電極と比較される、溶液が電子を受容又は受け渡すいずれかの傾向(即ち、可能性)の尺度である。この電位は、例えば、例えば銀/塩化銀電極のような標準参照に対するORP水溶液のミリボルト単位での電位を測定することを含む、標準的な技術によって測定され得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、約−400mVから約+1300mVの電位を有する。より好ましくは、ORP水溶液は、約0mVから約+1250mVの電位を有し、更により好ましくは、約+500mVから約+1250mVの電位を有する。更により好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、約+800mVから約+1100mVの電位を有し、最も好ましくは、約+800mVから約+1000mVの電位を有する。
【0105】
様々なイオン種及び他の種が、本発明に従って投与されるORP水溶液中に存在し得る。例えば、ORP水溶液は、塩素(例、遊離塩素、及び任意で、結合塩素)、及び溶解酸素、並びに任意でオゾン及び過酸化物(例、過酸化水素)を含有し得る。1種以上のこれらの種の存在は、少なくとも、細菌及び真菌、並びにウイルスのような様々な微生物を殺すORP水溶液の殺菌能に寄与すると考えられている。
【0106】
遊離塩素には、典型的に、これらに限定されないが、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO−)、及び次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、他の分子又はラジカル塩素種、及びそれらの前駆物質が含まれる。次亜塩素酸の次亜塩素酸イオンに対する割合は、pHに依存する。pH7.4では、次亜塩素酸レベルは、典型的には約25ppmから約75ppmである。温度もまた遊離塩素成分の割合に影響を与える。
【0107】
結合塩素は、典型的に、塩素及び窒素含有化合物の生成物(例、塩素及びアンモニア又は有機アミンの生成物(例、クロラミン))を意味する。結合塩素は、ORP水溶液中に任意で存在するが、好ましくは約20ppm未満の量で存在する。
【0108】
1種以上の塩素種及び酸素、並びに任意でオゾン及び過酸化水素が、任意の好適な量でORP水溶液中に存在し得る。これらの成分のレベルは、当該分野で公知の方法を含む任意の好適な方法によって測定され得る。
【0109】
遊離塩素及び任意で結合塩素の両方を含む、総塩素含有量は、約10パーツ・パー・ミリオン(ppm)から約400ppm、例えば約10パーツppmから約200ppm、約20ppmから約150ppm、約30ppmから約100ppm、約30から約80ppm、或いは、例えば約50ppmから約200ppm、又は約80ppmから約150ppmであり得る。
【0110】
塩素含有量は、DPD比色法(Lamotte社、チェスタータウン、メリーランド州)、又は、例えばEnvironmental Protection Agencyによって確立された方法などの他の公知の方法のような、当該分野で公知の方法によって測定され得る。DPD比色法においては、遊離塩素のN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)との反応によって黄色が形成され、その強度が、パーツ・パー・ミリオンでの出力を与える目盛り付きの熱量計で測定される。ヨウ化カリウムの更なる添加により、溶液がピンク色に転じ、総塩素値が得られる。存在する結合塩素の量は、総塩素から遊離塩素を引くことによって決定され得る。
【0111】
ORP水溶液中に存在する酸化化学種の総量は、好ましくは、約2ミリモル濃度(mM)の範囲内であり、また、前記の塩素種、1種以上の更なる酸化水種(例、1種以上の酸素種)、並びにCl−、ClO3、Cl2−、及びClOxのような測定が難しい可能性がある更なる種を含み得る。
【0112】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、鉄への曝露時に遊離ラジカル(例えば、ヒドロキシルラジカルなど)を生じ得る1種以上の酸化水種を含む。ORP水溶液は、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、二酸化塩素(ClO2)、過酸化物(例、過酸化水素(H2O2)、及びオゾン(O3)のような、その製造中に生成される1種以上の化合物を任意で含み得るが、水酸化ナトリウム、二酸化塩素、過酸化水素、及びオゾンは、潜在的に、次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応して、それらの消費及び他の化学種の生成をもたらし得る。
【0113】
本発明のORP水溶液は、通常、少なくとも約24時間、典型的には少なくとも約2日間、安定である。より典型的には、この水溶液は、少なくとも約1週間(例、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間など)、好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定である。より好ましくは、ORP水溶液は、その調製後少なくとも約6ヶ月間安定である。更により好ましくは、ORP水溶液は、少なくとも約1年間、最も好ましくは少なくとも約3年間安定である。
【0114】
従来のORP水溶液は、極度に限られた品質保持期限を持っており、通常わずか数時間である。この短い寿命の結果、従来のORP水溶液の使用は、使用される場所の近くで製造がなされることを必要としている。実用的な観点から、これは、施設(例、病院のような保健医療施設)が従来のORP水溶液を製造するために必要な設備を購入し、保管し、維持しなければならないことを意味する。更には、従来の生成技術は、広まった使用(例えば、保健医療施設での通常の殺菌剤として)を可能にするのに充分な商業規模の量を製造することができなくなってきている。
【0115】
従来のORP水溶液と違い、本発明に従って投与されるORP水溶液は、その調製後、少なくとも約20時間安定である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、通常、環境的に安全であり、従ってコストのかかる廃棄手順の必要性を回避する。
【0116】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは少なくとも約1週間(例、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間など)安定であり、より好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、更により好ましくは、少なくとも約6ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、更により好ましくは少なくとも約1年間安定であり、最も好ましくは約1年間を超えて(例、少なくとも約2年又は少なくとも約3年)安定である。
【0117】
安定性は、ORP水溶液が、通常の保存条件下(例、室温)でその調製後所定の時間の間、1種以上の使用(例えば、肥満細胞の脱顆粒の阻害、ヒスタミン及びサイトカイン分泌の阻害、汚染除去、殺菌、消毒、抗菌クレンジング、及び創傷クレンジング)のために好適なままである能力に基づいて測定され得る。本発明に従って投与されるORP水溶液の安定性はまた、加速条件下(例、約30℃から約60℃)での保存によっても測定され得、ここでORP水溶液は、好ましくは約90日間まで、より好ましくは約180日間まで安定である。。
【0118】
安定性はまた、ORP水溶液の寿命の間に溶液中に存在する1種以上の種(又はその前駆物質)の経時的な濃度に基づいても測定され得る。1種以上の種(例、遊離塩素、次亜塩素酸、及び1種以上の更なる酸化水種)の濃度は、好ましくは、ORP水溶液の調製後少なくとも約2ヶ月間、初期濃度の約70%以上に維持される。1種以上のこれらの種の濃度は、より好ましくは、ORP水溶液の調製後少なくとも約2ヶ月間、初期濃度の約80%以上に維持される。更により好ましくは、1種以上のそのような種の濃度は、ORP水溶液の調製後少なくとも約2ヶ月間、更により好ましくは初期濃度の約90%以上に、最も好ましくは初期濃度の約95%以上に維持される。
【0119】
安定性はまた、ORP水溶液への曝露後にサンプル中に存在する生物の量の減少に基づいても測定され得る。生物濃度の減少の測定は、例えば、細菌、真菌、酵母、又はウイルスを含む任意の好適な生物に基づいてなされ得る。好適な生物は、例えば、Escherichia coli、Staphylococcus aureus、Candida albicans、及びBacillus athrophaeus(かつてのB. subtilis)を含み得る。
【0120】
安定性はまた、ORP水溶液への曝露後、サンプル中に存在するエンドトキシン(例、リポ多糖類(lipopolysacharides))、成長因子、サイトカイン、並びに他のタンパク質及び脂質の量の減少に基づいても測定され得る。
【0121】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、生きた微生物の濃度を約4log(104)減少させることが出来る低レベル殺菌剤として機能し得、また、生きた微生物の濃度を約6log(106)減少させることが出来る高レベル殺菌剤としても機能し得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、1分間の曝露後の総生物濃度において、少なくとも約約4log(about an about four log)(104)の減少をもたらすことが可能である。ORP水溶液は、より好ましくは、溶液の調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、生物濃度の約104〜約106の減少が可能である。ORP水溶液は、更により好ましくは、ORP水溶液の調製の少なくとも約1年後の測定で、そして最も好ましくは、ORP水溶液の調製の約1年よりも後(例、少なくとも約2年又は少なくとも約3年)の測定で、生物濃度の約104〜約106の減少が可能である。
【0122】
例えば、ORP水溶液は、ORP水溶液の調製の少なくとも2ヶ月後の測定で、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Enterococcus hirae、Acinetobacter baumannii、Acinetobacterスピーシズ、Bacteroides fragilis、Enterobacter aerogenes、Enterococcus faecalis、バンコマイシン耐性Enterococcus faecium(VRE、MDR)、Haemophilus influenzae、Klebsiella oxytoca、Klebsiella pneumoniae、Micrococcus luteus、Proteus mirabilis、Serratia marcescens、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Candida albicans及びCandida tropicalisからなる群から選択される生きた微生物サンプルの濃度を、30秒以内の曝露で、少なくとも約5log(105)減少させることが可能である。
【0123】
一つの実施態様において、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、及びCandida albicansを含むがこれらに限定されない生きた微生物サンプルを、約1分間以内の曝露で、約1×106と約1×108生物/mlとの間の初期濃度から、約0生物/mlの最終濃度へ減少させ得る。これは、生物濃度の約6log(106)乃至約8log(108)の減少に相当する。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、又はCandida albicans生物の約106〜約108の減少を達成し得る。
【0124】
或いは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、約5分間以内の曝露で、Bacillus athrophaeus胞子の胞子懸濁液の濃度において約6log(106)の減少を生じ得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、Bacillus athrophaeus胞子の濃度において約106の減少を達成し得る。ORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製の少なくとも2ヶ月後の測定で、約30秒以内の曝露で、Bacillus athrophaeus胞子の胞子懸濁液の濃度において約4log(104)の減少が可能である。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、Bacillus athrophaeus胞子の濃度において、この減少を達成することが可能である。
【0125】
ORP水溶液はまた、ORP水溶液の調製の少なくとも2ヶ月後の測定で、約5分から約10分以内の曝露で、Aspergillis niger胞子のような真菌胞子の濃度において約6log(106)の減少が可能である。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも6ヶ月後、より好ましくは調製の少なくとも1年後の測定で、真菌胞子の濃度においてこの減少を達成することが可能である。
【0126】
本発明に従って投与されるORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、約5分から約10分の曝露後、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びアデノウイルスのようなウイルスの濃度において3log(103)を上回る減少を生じ得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、ウイルスの濃度において>103の減少を達成し得る。
【0127】
本発明に従って投与されるORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製の少なくとも約2ヶ月後の測定で、約5分間の曝露で、Mycobacterium bovisの増殖を完全に阻害し得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製の少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製の少なくとも約1年後の測定で、マイコバクテリウムの濃度において完全な阻害を達成し得る。
【0128】
一つの実施態様において、本発明のORP水溶液は、1種以上の塩素種を含む。好ましくは、存在する塩素種は、遊離塩素種である。遊離塩素種は、次亜塩素酸(HOCl)、次亜塩素酸イオン(OCl−)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、塩化物イオン(Cl−)、溶解した塩素気体(Cl2)、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0129】
遊離塩素種の総量は、約10パーツ・パー・ミリオン(ppm)から約400ppmであり、例えば、約20ppmから約150ppm、約30ppmから約100ppm、約30から約80ppm、又は約50ppmから約200ppm、約80ppmから約150ppm、約10ppmから約400ppm、好ましくは約50ppm及び約200ppm、最も好ましくは約50ppm及び約80ppmであり得る。次亜塩素酸の量は、通常約15ppm及び約75ppmであり、好ましくは約25ppm及び約35ppmである。次亜塩素酸ナトリウムの量は、通常約25ppmから約50ppmの範囲内である。二酸化塩素レベルは、5ppm未満で任意に存在する。一つの実施態様において、ORP水溶液は、1種以上の塩素種又は1種以上のその前駆物質、及び1種以上の更なる酸化水種又は1種以上のその前駆物質、及び任意で過酸化水素を含み、その調製から少なくとも約24時間、好ましくは少なくとも約1週間、より好ましくは少なくとも約2ヶ月間、及び更により好ましくは少なくとも約6ヶ月間安定である。更により好ましくは、このようなORP水溶液は、少なくとも約1年間、最も好ましくは約1年間を超えて(例、少なくとも約2年又は少なくとも約3年)安定である。
【0130】
同じく好ましくは、ORP水溶液は、1種以上の塩素種(例、次亜塩素酸(hyprochlorous acid)及び次亜塩素酸ナトリウム)又は1種以上のその前駆物質、及び1種以上の更なる酸化水種(例、酸素)又は1種以上のその前駆物質を含み、pHが約6から約8、より好ましくは約6.2から約7.8、最も好ましくは約7.4から約7.6である。本発明に従って投与される例示的なORP水溶液は、例えば、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウム、約1ppmから約4ppmの1種以上の更なる酸化水種を含み得、pHが約6.2から約7.8までであり、且つ少なくとも約1週間(例、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、又は約1年を超えて(例えば、少なくとも約2年又は少なくとも約3年))安定であり得る。
【0131】
本発明に従って、治療有効量のORP水溶液は、単独で、又は1種以上の更なる治療剤との組み合わせで投与されて、腹膜炎を治療又は予防し得るか、或いはそれと関連する癒着又は膿瘍の形成を予防し得る。例えば、ORP水溶液は、1種以上の更なる治療剤(例、抗感染剤(例、抗細菌剤(例えば抗生物質など)、抗真菌剤、及び抗ウイルス剤)、抗炎症剤、組み換えタンパク質又は抗体、1種以上の合成薬、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の化合物)と併用して投与され得る。ORP水溶液と併用するそのような治療剤の投与には、例えば、ORP水溶液の投与前、投与中(例、同時(contemporaneously)、同時投与又は組み合わせで)、又は投与後などの、1種以上のそのような更なる剤の投与が含まれ得る。
【0132】
好適な抗生物質には、限定するものではないが、ペニシリン、セファロスポリン又は他のβ−ラクタム、マクロライド(例、エリスロマイシン、6−O−メチルエリスロマイシン、及びアジスロマイシン)、フルオロキノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、アミノグリコシド、クリンダマイシン、キノロン、メトロニダゾール、バンコマイシン、クロラムフェニコール、それらの抗菌的に有効な誘導体、及びそれらの組み合わせが含まれ得る。好適な抗感染剤にはまた、例えば、アンホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、ケトコナゾール、ミコナゾール、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせのような抗真菌剤も含まれ得る。好適な抗炎症剤には、例えば、1種以上の抗炎症薬(例、1種以上の抗炎症性ステロイド、又は1種以上の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID))が含まれ得る。例示的な抗炎症薬には、例えば、シクロフィリン、FK結合タンパク質、抗サイトカイン抗体(例、抗TNF)、ステロイド、及びNSAIDが含まれ得る。
【0133】
本発明に従って使用されるORP水溶液での治療によって制御され、減少され、殺され、又は根絶され得る生物には、例えば、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Enterococcus hirae、Acinetobacter baumannii、Acinetobacterスピーシズ、Bacteroides fragilis、Enterobacter aerogenes、Enterococcus faecalis、バンコマイシン耐性Enterococcus faecium(VRE,MDR)、Haemophilus influenzae、Klebsiella oxytoca、Klebsiella pneumoniae、Micrococcus luteus、Proteus mirabilis、Serratia marcescens、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Salmonella choleraesuis、Shigella dysenteriae、及び他の感受性細菌、並びに酵母(例、Trichophyton mentagrophytes、Candida albicans、及びCandida tropicalis)が含まれる。ORP水溶液はまた、例えば、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ライノウイルス、インフルエンザ(例、A型インフルエンザ)、肝炎(例、A型肝炎)、コロナウイルス(例えば重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となる)、ロタウイルス、鳥インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純疱疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルス、及び他の感受性ウイルスを含むウイルスを制御し、減少し、殺し、又は根絶するために、本発明に従って使用され得る。
【0134】
本発明に従って、ORP水溶液は、単独で、又はORP水溶液に存在する1種以上の種と好ましくは適合する1種以上の治療上許容される担体(例、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、希釈剤、それらの組み合わせなど)との組み合わせで投与され得る。当業者は、本発明に従って使用されるORP水溶液を投与するための適当な製剤及び方法を容易に決定することが出来る。例えば、ORP水溶液を含有するゲルベースの製剤の使用は、微生物に対する障壁を与えると同時に腹腔の水分を維持するために使用され得る。好適なゲル製剤は、例えば、米国特許出願公開US2005/0142157号に記載されている。
【0135】
投与量における任意の必要な調節が当業者によって容易になされて、臨床上関連する1以上の因子(例、副作用、患者の全体的な状態の変化など)を考慮して治療している状態の性質及び/又は重篤度に対処し得る。例えば、ORP水溶液は、約25%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、約50%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、約75%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、約90%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、約95%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体、又は約99%(重量/重量又は体積/体積)以上の好適な担体とさえも、ORP水溶液を混ぜること又は希釈することによって製剤化され得る。好適な担体には、例えば水(例、蒸留水、無菌水(例、注射用の無菌水)、無菌生理食塩水など)が含まれ得る。好適な担体にはまた、米国特許出願第10/916,278号に記載の1種以上の担体も含まれ得る。例示的な製剤には、例えば、ORP水溶液が無菌水又は無菌生理食塩水で希釈された溶液も含まれ得、ここでORP水溶液は、治療用途及び/又は治療上関連する他の任意の因子に依存し、約25%(体積/体積)、約50%(体積/体積)、約75%(体積/体積)、約90%(体積/体積)、約95%(体積/体積)、又は99%(体積/体積)以上で希釈されている。
【0136】
ORP水溶液はまた、様々な量のイオン及び糖質を含んで、体組織、臓器、及び腔との適合性の目的で、溶液を低浸透圧、等浸透圧、又は高浸透圧にし得る。例示的な製剤には、例えば、腎臓患者の腹腔に適用するために溶液の浸透圧を増加させるために、ORP水溶液に、その製造前、製造中、又は製造後に塩化ナトリウム及びグルコースが添加された溶液を含み得る。或いは、ORP水溶液を等浸透圧にして非経口注射に適合させるために、最終濃度0.9%の塩化ナトリウムがORP溶液中で達成され得る。
【0137】
ORP水溶液はまた、必要に応じて、溶液を汚染し得る発熱物質、エンドトキシンなどの含有量を低減させるよう処理され得る。
【0138】
調製後、ORP水溶液は、例えば、病院、養護施設、医院、外来外科センター、歯科医院などを含む保健医療施設のようなエンドユーザーへの配給及び販売のために、1種以上の好適な容器(例、密封容器)に移され得る。好適な容器には、例えば、容器に入れられたORP水溶液の無菌性及び安定性を維持する密封容器が含まれ得る。容器は、ORP水溶液と適合する任意の材料で造られ得る。好ましくは、容器は通常、ORP水溶液中に存在する1種以上のイオン又は他の種と非反応性である。
【0139】
好ましくは、容器はプラスチック又はガラスから構成される。プラスチックは、容器が棚に保存されることが可能であるよう、硬質であり得る。或いは、容器は、柔軟であっても良い(例、例えば柔軟な袋のような軟質プラスチック製の容器)。好適なプラスチックには、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル・テレフタラート(PET)、ポリオレフィン、シクロオレフィン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、及びそれらの混合物が含まれ得る。好ましくは、容器は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択される1種以上のポリエチレンを含む。最も好ましくは、容器は高密度ポリエチレン製である。
【0140】
容器は、好ましくは、ORP水溶液の分配を可能にする開口部を有する。容器の開口部は、任意の好適な形式で密封され得る。例えば、容器は、ネジ切りキャップ又は栓で密封され得る。任意で、開口部はホイルの層で更に密封され得る。
【0141】
密封容器の上部の気体は、空気、或いはORP水溶液又はORP水溶液を含有する製剤の他の成分と反応しない他の好適な気体であり得る。好適な上部の気体には、窒素、酸素、及びそれらの混合物が含まれる。
【0142】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、アノード水(例、電解セルのアノード室で製造された水)とカソード水(例、電解セルのカソード室で製造された水)との混合物を含み得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば溶液の約10体積%から約90体積%までの量のカソード水を含有する。より好ましくは、カソード水は、ORP水溶液中に、溶液の約10体積%から約50体積%、更により好ましくは溶液の約20体積%から約40体積%(例、溶液の約20体積%から約30体積%)の量で存在する。更に、アノード水は、ORP水溶液中に、例えば溶液の約50体積%から約90体積%の量で存在し得る。例示的なORP水溶液は、約10体積%から約50体積%のカソード水、及び約50体積%から約90体積%のアノード水を含有し得る。アノード水及びカソード水は、図3に示した3室の電解セルを使用して製造され得る。
【0143】
アノード水及びカソード水の両方を含有するORP水溶液は、酸性であっても、中性であっても、又は塩基性であっても良く、pHが、好ましくは約1から約14、より好ましくは約3から約8、更により好ましくは約6.4から約7.8、最も好ましくは約7.4から約7.6である。
【0144】
好ましい実施態様において、ORP水溶液は、感染足潰瘍を治療するのに有効な量で感染足潰瘍を持つ糖尿病患者に投与される。ORP水溶液を投与され得るそのような患者は、I型糖尿病又はII型糖尿病のいずれかに診断され得る。治療に好適な糖尿病患者は、0.8以上の(ドップラーによる測定での)足関節/上腕指数、30mmHg以上の経皮酸素分圧(TcPO2)値、及び足における触知可能な脈(足背動脈又は後脛骨動脈のいずれか)で明らかなような足への充分な循環を有し得る。更に、低い足関節−上腕指数の患者もまた、限定ではなく例えば切断を予防するために治療され得る。切断が必要な場合、ORP水溶液はまた、切断断端を治療するためにも使用され得る。
【0145】
本発明に従った治療に好適な足潰瘍は、排他的にではないが通常、足の内果又は外果(距骨突起)表面又はその下に位置している。そのような潰瘍は、真皮を通じて皮下組織にまで広がり得、筋肉、腱の露出があり得るが、骨及び/又は関節包の露出は無い。肉芽形成の問題が潰瘍に任意で存在し得る。治療される潰瘍の表面積は、約2.0cm2以上であり得る。
【0146】
好ましくは、本発明の方法は、PEDIS分類に従ってグレード2又はグレード3のいずれかである感染した糖尿病性足潰瘍を治療するのに有効な量でORP水溶液を投与することを含む。グレード2(軽度)の感染症は、皮膚及び皮下組織のみに関与し、深部組織又は全身的徴候には関与が無い。患者はまた、以下の1つ以上を示し得る:(1)局所的腫脹又は硬結;(2)局所的な温感;(3)局所的な圧痛又は痛み;(4)潰瘍辺縁から0.5〜2cmの紅斑;及び(5)膿性分泌物。グレード3(中度)の感染症は、約2cm(2 about cm)より大きい紅斑、及びグレード2の感染症が示す状態の少なくとも一つ、或いは膿瘍、敗血性関節炎(sceptic arthritis)、及び筋膜炎のような皮膚及び皮下組織よりも深部の感染症関与構造によって特徴付けられる。
【0147】
ORP水溶液は、任意の好適な方法を使用して、例えば、潰瘍を洗うこと、洗浄すること、浸すこと、又はドレッシングすることによって局所的に、皮膚潰瘍患者の任意の場所に投与され得る。好ましくは、潰瘍は、洗われ且つ浸され、洗われ且つドレッシングされ、又は浸され且つドレッシングされる。より好ましくは、潰瘍は、洗われ、浸され、且つドレッシングされる。潰瘍の洗浄は、本発明に従って行われ得る。潰瘍洗浄の送達圧力は、潰瘍治癒の促進における重要な要素である。約5psiから約10psiの送達圧力が、周囲の正常組織への損傷を最小化すると同時に残屑及び細菌を潰瘍から取り除くために、本発明に従って使用され得る。
【0148】
ORP水溶液の投与前に、皮膚潰瘍は好ましくは清拭治療に付され、過角化した、壊死した、さもなければ病気の組織が、健康にみえる組織にまで取り除かれる。潰瘍の清拭において、創傷周縁は、健康な出血している組織まで切除される。潰瘍は、清拭の後で残屑を掃除され得る。
【0149】
洗うこと、ドレッシング、及び浸すことの間に、皮膚潰瘍を任意の好適な時間の間、空気乾燥させておいても良い。好ましくは、皮膚潰瘍は、約2分間空気乾燥される。
【0150】
皮膚潰瘍は、潰瘍表面に直接ORP水溶液を塗布することにより(例えばORP水溶液を潰瘍の上に注ぐことにより)洗われ得る。皮膚潰瘍は、部分的又は完全に潰瘍をORP水溶液に沈めることによって浸される。潰瘍は、任意の好適な時間の間浸り得る。通常、皮膚潰瘍は、少なくとも1分間、ORP水溶液中に浸される。好ましくは、皮膚潰瘍は、少なくとも約2分間、及び数時間もの間、好ましくは約60分もの間、好ましくは約15分もの間、浸される。塗布は、潰瘍がひどく感染している場合に限りそれが改善するまで、最初の週については毎日、又は週に2度行われ得る。潰瘍はORP水溶液で飽和した湿った創傷ドレッシングを適用することによってドレッシングされ得る。湿った創傷ドレッシングに加えて、潰瘍は任意で、乾いたガーゼ及び粘着性カバーでドレッシングされ得る。
【0151】
皮膚潰瘍への創傷ドレッシングの適用において、ガーゼは典型的に、潰瘍の大きさに切られる。ガーゼは、ORP水溶液で飽和され得、過剰な溶液はいずれもガーゼから絞り出される。ドレッシングは好ましくはORP水溶液で過飽和にされないが、過飽和のドレッシングは本発明の方法を実施するために有効であり得る。好ましくは充分な量の浸されたガーゼが適用されて創傷を満たすが創傷に詰めはしない。その後、乾いたガーゼ及びテープが、浸されたガーゼに適用されて、それを足潰瘍上の適当な位置に保持し得る。
【0152】
本発明の一つの実施態様において、患者の皮膚潰瘍は、最初にORP水溶液で洗われる。潰瘍を洗うために使用されるORP水溶液の量は、好ましくは残屑を取り除くのに充分である。次に、皮膚潰瘍は任意の好適な時間、好ましくは少なくとも約2分間、ORP水溶液に浸される。患者の足潰瘍はそれから、任意で、任意の好適な時間、好ましくは少なくとも約2分間、空気乾燥される。乾燥後、足潰瘍は、ORP水溶液で飽和させておいた湿った創傷ドレッシングでドレッシングされ得る。乾いたガーゼ及び粘着性カバーが、任意で湿った創傷ドレッシングの上に適用され得る。
【0153】
皮膚潰瘍を洗い、浸し、及びドレッシングする工程は、好適な間隔で繰り返され得る。好ましくは、潰瘍が洗われ、浸され、ドレッシングされる手順は、おおよそ1ヶ月に1度、おおよそ1週間に1度、おおよそ1日に1度、又は1日に数回、繰り返される。ORP水溶液を使用する潰瘍の治療は、潰瘍が充分治癒するまで続けられ得、それは少なくとも1度手順を繰り返すことを必要とし得る。皮膚潰瘍の治癒は、創傷生検培養物から得られた細菌数の減少又は創傷閉鎖率によって測定され得る。
【0154】
別の実施態様において、本発明の方法は、3週間にわたる、皮膚潰瘍を洗い、浸し、ドレッシングする3つの治療を伴う。好ましくは、ORP水溶液で湿った新たなガーゼドレッシングが足潰瘍に適用される治療過程中、毎日のドレッシング交換が行われる。潰瘍上のドレッシングは、1日に1回以上、例えば1日に2回又は3回、ドレッシングが汚れたら交換され得る。好ましくは、創傷の清拭が、各週の手順前に行われて(preformed)、壊死又は過角化した組織を取り除く。
【0155】
本発明はまた、皮膚潰瘍における微生物負荷を低減させるのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍における(in of a skin ulcer)微生物負荷を低減させる方法も提供する。好ましくは、溶液は、pHが約6.4から約7.8までであり且つ少なくとも約1週間安定であり、或いは溶液はpHが約6.4から約7.8までであり且つアノード水及びカソード水を含む。微生物負荷は、足潰瘍の陽性の治療前培養物及び治療後培養物の数によって、並びに足潰瘍からの治療前培養物及び治療後培養物から単離される細菌株の数によって決定され得る。微生物負荷は、例えばウイルス、細菌、及び真菌を含む1種以上の生物に起因し得る。
【0156】
本発明に従うORP水溶液を投与することは、従来の治療法と比べ、皮膚潰瘍の治癒を加速し得る。本発明に従った治癒の加速は、これらに限定されないが、より速い創傷の閉鎖、肉芽組織のより速い成長、全身性合併症の予防、抗生物質使用の低減、及びより短い入院を与え得る。本発明に従った治癒の加速は、ポビドンヨード治療患者と比べ、ORP水溶液治療患者において、約5日以上治癒時間を低減させ得る(例えば約7日早い、例えば10日早い)。
【0157】
本発明は更にまた、潰瘍を治療するのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することに起因する副作用の可能性を減少させる方法を提供する。
【0158】
本発明は更に、患者の皮膚潰瘍の再発率(例、治療後の再発)を減少させる方法を提供し、該方法は、皮膚潰瘍再発の可能性を減少させるのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することを含む。好ましくは、溶液はpHが約6.4から約7.8であり且つ少なくとも約1週間安定であるか、或いはpHが約6.4から約7.8であり且つアノード水及びカソード水を含む。
【0159】
本発明は更に、皮膚潰瘍の裂開の可能性を減少させるのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍の裂開の可能性(例、治療後)を減少させる方法を提供する。好ましくは、溶液はpHが約6.4から約7.8であり且つ少なくとも1週間安定であるか、或いはpHが約6.4から約7.8であり且つアノード水及びカソード水を含む。本発明に従った裂開の可能性の減少は、例えばポビドンヨード治療患者と比べたORP水溶液治療患者における裂開の発生率の低減による測定で、例えば少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、可能性を減少させることを含み得る。
【0160】
本発明は更にまた、切断の可能性を減少させるのに有効な量で酸化還元電位水溶液を患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍に起因する切断の可能性を減少する方法を提供する。好ましくは、溶液はpHが約6.4から約7.8であり且つ少なくとも1週間安定であるか、或いは溶液はpHが約6.4から約7.8であり且つアノード水及びカソード水を含む。本発明に従った切断の可能性の減少は、例えばポビドンヨード治療患者と比べたORP水溶液治療患者における切断の数の低減による測定で、例えば少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%、切断の可能性を減少させ得る。
【0161】
ORP水溶液は更に、設備上に存在する生物のレベルを所望のレベルへ減少させるのに充分な時間設備をORP水溶液と接触させることによって殺菌及び消毒(例、医療設備又は歯科用設備の殺菌及び消毒)するために塗布され得る。硬い表面の殺菌及び消毒のために、ORP水溶液は、ORP水溶液が保存されている容器から直接硬い表面へ塗布され得る。例えば、ORP水溶液は、硬い表面へ、注がれ、スプレーされ、又は他の方法で直接塗布され得る。ORP水溶液はその後、例えば、布、織物、又は紙タオルのような好適な素地を使用して、硬い表面上に広げられ得る。病院の適用においては、素地は好ましくは無菌である。或いは、ORP水溶液は、最初に、布、織物、又は紙タオルのような素地に塗布され得る。湿った素地はその後、硬い表面と接触される。或いは、ORP水溶液は、本明細書で記載したようにして、空気中に溶液を分散させることによって硬い表面に塗布され得る。或いは、ORP水溶液は、ゲルとして塗布されて、皮膚潰瘍を湿潤及び保護したままにし得る。ORP水溶液は、同様の形式で、ヒト及び動物へ塗布され得る。
【0162】
床、壁、及び天井のような硬い表面へORP水溶液を塗布するために、道具が任意で使用され得る。例えば、ORP水溶液は、床への塗布のためにモップの頭に分配され得る。ORP水溶液を硬い表面に塗布するための他の好適な道具は、米国特許第6,663,306号に記載されている。
【0163】
本発明は更に、水不溶性の素地及び本明細書で記載したORP水溶液を含むクリーニングワイプを提供し、ここでORP水溶液は素地上に分配される。ORP水溶液は、素地へ、浸み込まされ、コートされ、覆われ、又は他の方法で塗布され得る。好ましくは、素地は、配給前にORP水溶液で前処理される。
【0164】
好適な素地は、例えば、任意の好適な水不溶性の吸収素材又は吸着素材で作られたクリーニングワイプを含み得る。多種の素材が素地として使用され得る。それは、充分な湿潤強度、磨耗性、ロフト(loft)、及び多孔性を有しているべきであり、また、ORP水溶液の安定性に、目的とする使用を不可能にするほどの悪影響を与えてはならない。例としては、不織素地、織素地、ハイドロエンタングル素地、及びスポンジが含まれる。
【0165】
素地は、1以上の層を持っても良い。各層は、同じ又は異なる構成及び磨耗性を持ち得る。異なる構成は、異なる組み合わせの素材の使用、又は異なる製造プロセスの使用、或いはそれらの組み合わせから生じ得る。従って、素地は、ORP水溶液を治療される表面へ送達するためのビヒクルを提供し得る。
【0166】
素地は、単一の不織シート又は複合的な不織シートであり得る。不織シートは、木材パルプ、合成繊維、天然繊維、及びそれらの混合から作られ得る。素地に使用するために好適な合成繊維には、限定するものではないが、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、他のセルロースポリマー、及びそのような繊維の混合物が含まれる。不織物には、メルトブローン、コフォーム(coform)、エアレイド、スパンボンド、ウェットレイド、ボンデッド−カーデッド(bonded−carded)織物素材、ハイドロエンタングル(スパンレースとしても知られる)素材、及びそれらの組み合わせを含む、不織繊維シート素材が含まれ得る。これらの素材には、合成繊維若しくは天然繊維、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。結合剤が素地中に任意で存在し得る。
【0167】
好適な不織の水不溶性素地の例には、セルロース100%のWadding Grade 1804、ポリプロピレン100%のニードルパンチ素材NB 701−2.8−W/R、セルロースと合成繊維との混合のHydraspun 8579、及び70%ビスコース/30%PESのCode 9881が含まれる。クリーニングワイプに使用するのに好適な不織素地の更なる例は、米国特許第4,781,974号、第4,615,937号、第4,666,621号、及び第5,908,707号、並びに国際特許出願公開WO98/03713号、WO97/40814号、及びWO96/14835号に記載されている。
【0168】
素地は、コットン繊維、コットン/ナイロンの混合、又は他の繊維製品のような織素材から作られても良い。スポンジを作る際に使用される再生セルロース、ポリウレタンフォームなどもまた使用に好適であり得る。
【0169】
素地の液体負荷容量は、その乾燥重量の少なくとも約50%〜1000%、好ましくは少なくとも約200%〜約800%であるべきである。これは素地の重量の約1/2倍から10倍の負荷として表される。素地の重量は、非制限的に、1平方メートルあたり約0.01から約1000グラムまで、最も好ましくは約25から約120グラム/m2まで(「基本重量」と呼ぶ)変化し得、適当な形状及び寸法に切られ、打ち抜かれ、又は他の方法で寸法化され得るシート又は織物として存在し得る。クリーニングワイプは、好ましくは約25から約250ニュートン/m、より好ましくは約75〜170ニュートン/mの特定の湿潤引っ張り強さを好ましくは有する。
【0170】
ORP水溶液は、任意の好適な方法により、素地に分配され、浸み込まされ、コートされ、覆われ、又は他の方法で塗布される。例えば、素地の各部分は、個別の量のORP水溶液で処理され得る。好ましくは、ORP水溶液による素地素材の連続織物の一括処理がなされる。素地素材の織物全体がORP水溶液に浸されても良い。或いは、素地織物が巻かれるとき、又は不織素地の作製中でさえも、ORP水溶液は織物上にスプレー又は定量され得る。多量の個別に切断及び寸法化された素地の部分は、製造者によって、容器中でORP水溶液を染み込まされ、又はコートされ得る。
【0171】
クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、任意で更なる成分を含んでも良い。例えば、クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、更に、ポリマー、界面活性剤、多糖、ポリカルボン酸塩、ポリビニルアルコール、溶媒、キレート剤、緩衝液、増粘剤、染料、着色料、香料、及びそれらの混合物を含んでも良い。これらの任意成分は、ORP水溶液の安定性に、目的の最終用途を不可能にするほどの悪影響を与えてはならない。クリーニングワイプに任意で含まれ得る様々な成分の例は、米国特許第6,340,663号、第6,649,584号、及び第6,624,135号に記載されている。好適なクリーニングワイプは更に、米国特許出願公開第2005/0139808号に記載されている。
【0172】
或いは、本発明のORP水溶液は、空気のような気体状の媒体を通じて環境中に分散され得る。ORP水溶液は、任意の好適な手段によって空気中に分散され得る。例えば、ORP水溶液は、任意の好適な寸法の液滴に形成されて室内に分散され得る。環境中にORP水溶液を分散する好適な方法は、米国特許出願公開第2005/139808号に記載されている。
【0173】
ORP水溶液は、例えば米国特許出願公開第2005/0139808号に記載されたような、漂白剤及び好適な家庭用添加剤を任意で含有し得る。
【0174】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、アノード室、カソード室、及びアノード室とカソード室との間に位置する塩溶液室を含む少なくとも1つの電解セルを使用して製造され、ここで少なくとも一部のアノード水及びカソード水は、ORP水溶液がアノード水及びカソード水を含むように混ぜ合わせられる。例示的なORP水溶液の調製に使用され得る例示的な3室の電解セルの図解を図1に示す。
【0175】
電解セル100は、アノード室102、カソード室104、及び塩溶液室106を有する。塩溶液室は、アノード室102とカソード室104との間に位置する。アノード室102は、流入口108及び流出口110を有し、アノード室102を通る水の流れを可能にしている。カソード室104は同様に、流入口112及び流出口114を有し、カソード室104を通る水の流れを可能にしている。塩溶液室106は、流入口116及び流出口118を有する。電解セル100は、好ましくはハウジングを含み、全ての構成要素をひとまとめに保つ。
【0176】
アノード室102は、アノード電極120及び陰イオン交換膜122によって塩溶液室から分離されている。アノード電極120は、アノード電極120と塩溶液室106との間に位置する膜122と共に、アノード室102に隣接していても良い。或いは、膜122は、膜122と塩溶液室106との間に位置するアノード電極120と共に、アノード室102に隣接していても良い。
【0177】
カソード室104は、カソード電極124及びカソードイオン交換膜126によって塩溶液室から分離されている。カソード電極124は、カソード電極124と塩溶液室106との間に位置する膜126と共に、カソード室104に隣接していても良い。或いは、膜126は、膜126と塩溶液室106との間に位置するカソード電極124と共に、カソード室104に隣接していても良い。
【0178】
電極は、好ましくは、金属から構成され、電位がアノード室とカソード室との間に印加されるのを可能にする。金属電極は、好ましくは平面的であり、イオン交換膜と同様の寸法及び断面積を持つ。電極は、好ましくは、イオン交換膜の表面のかなりの部分がそれぞれのアノード室及びカソード室中で水に露出されるように構成されている。これは、イオン種の塩溶液室とアノード室とカソード室との間の移動を可能にする。好ましくは、電極は、電極表面にわたって均等に配置された複数の通路又は開口部を有する。
【0179】
電位源は、アノード電極120及びカソード電極124に接続され、アノード室102で酸化反応を、カソード室104で還元反応を引き起こす。
【0180】
電解セル100で使用されるイオン交換膜122及び126は、任意の好適な素材で構成されて、塩溶液室106とアノード室102との間での例えば塩化物イオン(Cl−)のようなイオンの交換、及び塩溶液塩溶液室106とカソード室104との間での例えばナトリウムイオン(Na+)のようなイオンの交換を可能にし得る。アノードイオン交換膜122及びカソードイオン交換膜126は、同一又は異なる構成素材から造られていても良い。好ましくは、アノードイオン交換膜は、フッ素化ポリマーを含む。好適なフッ素化ポリマーには、例えば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、並びにペルフルオロスルホン酸/PTFEコポリマー及びペルフルオロスルホン酸/TFEコポリマーのようなコポリマーが含まれる。イオン交換膜は、素材の単層又は複数層から構成され得る。好適なイオン交換膜ポリマーには、Nafion(登録商標)という商標のもとで販売されている1以上のイオン交換膜ポリマーが含まれ得る。
【0181】
電解セル100のアノード室102及びカソード室104のための水源は、任意の好適な給水であり得る。水は、都市の上水道からであっても良く、或いはその代わりに電解セルでの使用に先立って前処理されても良い。好ましくは、水は前処理され、軟水、精製水、蒸留水、及び脱イオン化水からなる群から選択される。より好ましくは、前処理された水源は、逆浸透及びUV光精製機器を使用して得られた超純水である。
【0182】
塩溶液室106で使用される塩水溶液は、ORP水溶液を製造するために好適なイオン種を含む任意の塩水溶液であり得る。好ましくは、塩水溶液は、塩化ナトリウム(NaCl)塩水溶液(一般的に生理食塩水溶液とも呼ばれる)である。他の好適な塩溶液は、塩化カリウム、塩化アンモニウム、及び塩化マグネシウムのような他の塩化物塩、並びにカリウム塩及び臭素塩のような他のハロゲン塩を含む。塩溶液は、塩の混合物を含有しても良い。
【0183】
図2は、本発明と関連して有用な3室の電解セルで製造される様々なイオン種であると考えられているものを示している。3室の電解セル200は、アノード室202、カソード室204、及び塩溶液室206を含む。アノード208及びカソード210への好適な電流の印加時に、塩溶液室206を通って流れる塩溶液中に存在するイオンは、アノードイオン交換膜212及びカソードイオン交換膜214を通じて、アノード室202及びカソード室204を通って流れる水中にそれぞれ移動する。
【0184】
図2は、本発明で有用な3室の電解セルで製造される様々なイオン種であると考えられているものを示している。3室の電解セル200は、アノード室202、カソード室204、及び塩溶液室206を含む。アノード208及びカソード210への好適な電流の印加時に、塩溶液室206を通って流れる塩溶液中に存在するイオンは、アノードイオン交換膜212及びカソードイオン交換膜214を通じて、アノード室202及びカソード室204を通って流れる水中にそれぞれ移動する。
【0185】
陽イオンは、塩溶液室206を通って流れる塩溶液216から、カソード室204を通って流れるカソード水218へ移動する。陰イオンは、塩溶液室206を通って流れる塩溶液216から、アノード室202を通って流れるアノード水220へ移動する。
【0186】
好ましくは、塩溶液216は、ナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl−)イオンとの両方を含有する塩化ナトリウム(NaCl)水溶液である。陽イオンNa+は、塩溶液216からカソード水218へ移動する。陰イオンCl−は、塩溶液216からアノード水220へ移動する。
【0187】
ナトリウムイオン及び塩化物イオンは、アノード室202及びカソード室204において、更なる反応を受け得る。例えば、塩化物イオンは、アノード水220中に存在する様々な酸素含有イオン及び他の種(例、酸素フリーラジカル、O2、O3)と反応してClOn−及びClO−を産生し得る。酸素フリーラジカル、水素イオン(H+)、酸素(O2として)、及び、任意でオゾン(O3)及び過酸化物(例、過酸化水素)の形成を含む他の反応も、アノード室202で起こり得る。カソード室204において、水素気体(H2)、水酸化物イオン(OH−)、水酸化ナトリウム(NaOH)、及び他のラジカルが形成され得る。
【0188】
ORP水溶液を製造するための方法及び装置はまた、少なくとも2つの3室の電解セルも利用し得る。2つの本発明の電解セルを使用するORP水溶液の製造方法の図解を図3に示す。
【0189】
方法300は、2つの3室の電解セル、具体的には第一電解セル302及び第二電解セル304を含む。水は、水源305から第一電解セル302のアノード室306及びカソード室308へ、並びに第二電解セル304のアノード室310及びカソード室312へ、移送され、ポンプされ、又は他の方法で分配される。典型的には、本発明の方法は、約1リットル/分から約50リットル/分のORP水溶液を製造し得る。製造容量は、更なる電解セルを使用することによって増加され得る。例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の3室の電解セルが、本発明のORP水溶液の生産量を増加するために使用され得る。
【0190】
アノード室306及びアノード室310で生産されるアノード水は、混合タンク314に集められる。カソード室308及びカソード室312で生産されるカソード水の一部は、混合タンク314に集められてアノード水と合わさる。この方法で生産されるカソード水の残りの部分は廃棄される。カソード水は、混合タンク314への添加前に、任意でガス分離器316及び/又はガス分離器318に供され得る。ガス分離器は、製造プロセス中にカソード水中で形成される水素気体のような気体を除去する。
【0191】
混合タンク314は、循環ポンプ315に任意で連結されて、電解セル302及び304からのアノード水とカソード水の一部との均一な混合を可能にする。更に、混合タンク314は、ORP水溶液のレベル及びpHをモニターするのに好適な器具を任意で含み得る。ORP水溶液は、混合タンクの場所又はその近くでの殺菌又は消毒に適用するために、ポンプ317を通じて混合タンク314から移送され得る。或いは、ORP水溶液は、遠い場所(例、倉庫、病院など)への出荷のために好適な容器に分配され得る。
【0192】
方法300は、塩溶液循環システムを更に含み、第一電解セル302の塩溶液室322へ、及び第二電解セル304の塩溶液室324へ、塩溶液を提供する。塩溶液は塩タンク320で調製される。塩溶液は、ポンプ321を通じて塩溶液室322及び324へ移送される。好ましくは、塩溶液は、最初に塩溶液室322、続いて塩溶液室324を通って順番に流れる。或いは、塩溶液は、同時に両方の塩溶液室へポンプされ得る。
【0193】
塩タンク320へ戻る前に、塩溶液は、混合タンク314中の熱交換器326を通って流れて、必要に応じてORP水溶液の温度を制御し得る。
【0194】
塩溶液中に存在するイオンは、第一電解セル302及び第二電解セル304において、時間と共に枯渇する。更なるイオン源が混合タンク320に定期的に加えられて、アノード水及びカソード水へ移送されるイオンを置換し得る。更なるイオン源は、時間と共に下がる(即ち、酸性化する)傾向がある塩溶液のpHを一定に保つために使用され得る。更なるイオン源は、例えば塩化ナトリウムのような塩を含む任意の好適な化合物であり得る。好ましくは、水酸化ナトリウムが混合タンク320へ添加されて、アノード水及びカソード水へ移送されるナトリウムイオン(Na+)を置換する。
【0195】
方法が少なくとも2つの3室の電解セルを利用する場合、各電解セルは、好ましくは、アノード室、カソード室、及びアノード室とカソード室とを分離する塩溶液室を含む。装置は、好ましくは、電解セルにより製造されたアノード水、及び1以上の電解セルで製造されたカソード水の一部を回収するための混合タンクを含む。好ましくは、装置は更に、塩循環システムを含み、電解セルの塩溶液室に供給される塩溶液のリサイクルを可能にする。
【0196】
以下の実施例は本発明を更に明らかにするが、当然ながら、決して本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0197】
実施例1〜3
これらの実施例は、本発明のORP水溶液の独特な特徴を示している。実施例1〜3におけるORP水溶液サンプルを本明細書に記載した方法に従って分析し、各サンプル中に存在するイオン種及び他の化学種の物理的特性及びレベルを決定した。二酸化塩素、オゾン、及び過酸化水素について得られた結果は、そのような種を測定するために使用される標準試験に基づいているが、これらの結果は、肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。更に、二酸化塩素、オゾン、及び過酸化水素は、次亜塩素酸塩と反応して、それらの消費及び他の種(例、HCl及びO2)の産生をもたらすことが報告されている。pH、酸化還元電位(ORP)及び存在するイオン種を、各ORP水溶液サンプルについて、表1に記した。
【0198】
【表1】
【0199】
ORP水溶液は、殺菌、消毒、及び/又はクリーニングに使用するために好適な物理的特徴を有する。
【0200】
実施例4〜10
これらの実施例は、本発明に従う、ORP水溶液への様々な量での漂白剤の添加について示している。特に、これらの実施例は、組成物の抗菌活性及び織物を漂白する能力を示している。
【0201】
10%のClorox(登録商標)漂白溶液を、蒸留水を使用して調製した。それから以下の溶液を10%漂白溶液を使用して調製した:80%ORP水溶液/20%漂白剤(実施例4);60%ORP水溶液/40%漂白剤(実施例5);40%ORP水溶液/60%漂白剤(実施例6);20%ORP水溶液/80%漂白剤(実施例7);及び0%ORP水溶液/100%漂白剤(実施例8)。比較のため、100%ORP水溶液/0%漂白剤(実施例9)、及び0.01%Tween20界面活性剤を含むORP水溶液(実施例10)を含む2つのコントロール溶液も使用した。これらのサンプルの物理的特徴、特にpH、酸化還元電位(ORP)、全塩素(Cl−)含有量、次亜塩素酸(HClO−)含有量、二酸化塩素含有量、及び過酸化物含有量を決定し、表2に記した。
【0202】
【表2】
【0203】
漂白剤の一部として添加した塩化物イオンの大きなボーラスは、n.d.記号で示したとおり、二酸化塩素及び過酸化物のレベルの正確な測定を妨げた。また、二酸化塩素及び過酸化物について得られた結果は、そのような種を測定するために使用される標準試験に基づいているが、これらの結果は、肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。更に、二酸化塩素、オゾン、及び過酸化水素は、次亜塩素酸塩と反応して、それらの消費及び他の種(例、HCl及びO2)の産生をもたらすことが報告されている。これらの実施例が示すように、ORP水溶液の次亜塩素酸レベルは、漂白剤の添加の有り無しで同様である。
【0204】
実施例4〜10のサンプルを、Bacillus subtilis var. niger胞子(SPS Medical of Rush,New Yorkから入手したATCC #9372)を使用する高胞子カウント試験に供した。胞子の懸濁液を(無菌フード中での蒸発によって)100マイクロリットルあたり4×106胞子まで濃縮した。胞子の懸濁液サンプル100マイクロリットルを、実施例4〜10の各サンプル900マイクロリットルと混合した。サンプルを、表3に記すように1から5分間、室温で培養した。示した時間に、100マイクロリットルの培養サンプルを個々のTSAプレート上にプレートし、35℃±2℃で24時間培養した後、各プレート上に生じたコロニー数を決定した。コントロールプレートは、開始時の胞子濃度が>1×106胞子/100マイクロリットルであることを示していた。様々なサンプルについての様々な培養時間でのバチルス胞子の濃度(2度の決定の平均として)を表3に記す。
【0205】
【表3】
【0206】
これらの結果が示すように、漂白剤(10%の漂白剤水溶液として)の濃度が上昇するにつれて、殺されるバチルス胞子の量は2〜3分間培養したサンプルについて減少する。しかしながら、5分間培養したサンプルについては、漂白剤の濃度はバチルス胞子を殺すのに影響しない。更に、結果は、ORP水溶液へ0.01%界面活性剤を添加しても、胞子を殺すのが減らないことを示している。
【0207】
実施例4〜10のサンプルを織物の漂白試験に供した。サンプルを試験した織物は、紺色の染みの斑点の付いた100%レーヨンの子供用Tシャツであった。染みの付いた織物の2インチ四方の切れ端を50mLプラスチックチューブ中に置いた。織物の各切れ端を実施例4〜10の溶液のサンプルで覆った。完全な漂白が得られるまでの経過時間(織物の白色化によって決定した)を表4に記す。
【0208】
【表4】
【0209】
これらの実施例が示すように、組成物中のORP水溶液の濃度が上昇するにつれ、完全な漂白が達成されるまでの時間が増加する。
【0210】
実施例11
この実施例は、例示的なORP水溶液であるMicrocynの有効な抗菌性溶液としての使用を示している。
【0211】
Microcyn酸化還元電位水を使用して、インビトロでの時間−殺菌評価を行った。Microcynを、Tentative Final Monograph,Federal Register,17 June 1994,vol.59:116,pg.31444に記載されたようにして、50の異なる微生物株− −25のAmerican Type Culture Collection(ATCC)の株及び25のそれらと同種の臨床分離株−のチャレンジ懸濁液に対して評価した。各チャレンジ株の初期集団からのパーセント減少率及びLog10減少率を、30秒間、1分間、3分間、5分間、7分間、9分間、11分間、13分間、15分間、及び20分間のMicrocynへの曝露後に決定した。全ての寒天プレートを重複して行い、Microcynを99%(v/v)濃度で評価した。全ての試験は、米国連邦規則第21条第58章に定められた通り、優良試験所基準に従って行った。
【0212】
以下の表に、5.0Log10を上回って減少した、試験した全ての集団についての30秒の曝露指標での上述したインビトロでの時間−殺菌評価の結果をまとめた。
【0213】
【表5−1】
【0214】
【表5−2】
【0215】
【表5−3】
【0216】
【表5−4】
【0217】
これらの微生物の減少を5.0Log10未満で測定したが、Microcynはまた、表5に含まれない残りの3種に対する抗菌活性も示した。より具体的には、Microcynへの30秒の曝露により、Streptococcus pneumoniae (臨床分離株; BSLI #072605Spn1)の集団は、4.5Log10(これはこの種に対する検出限度である)を超えて減少した。更に、Candida tropicalis (ATCC #750)でのチャレンジにおいて、Microcynは、30秒の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。それに加えて、Candida tropicalis (BSLI #042905Ct)でのチャレンジにおいて、Microcynは、20分の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。
【0218】
このインビトロの時間−殺菌評価の例示的な結果は、Microcyn酸化還元電位水が、広い範囲のチャレンジ微生物に対して急速な(即ち、殆どの場合、30秒未満)抗菌活性を示すことを示している。評価した50のグラム陽性、グラム陰性、及び酵母種のうちの47の微生物集団は、製品への30秒以内の曝露で、5.0Log10を超えて減少した。
【0219】
実施例12
この実施例は、例示的なORP水溶液であるMicrocynの、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)及び0.9%塩化ナトリウム洗浄液(USP)に対する抗菌活性の比較を示している。
【0220】
インビトロの時間−殺菌評価を、参照製品としてHIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)及び無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液(USP)を使用して実施例11で述べたようにして行った。各参照製品を、Tentative Final Monographに具体的に示された10のAmerican Type Culture Collection(ATCC)株の懸濁液に対して評価した。収集したデータをその後、実施例11で記録されたMicrocynの微生物減少活性に対して分析した。
【0221】
Microcyn酸化還元電位水は、チャレンジ株のうち5つの微生物集団を、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液で観察されるのと遜色無い水準まで減少させた。MicrocynとHIBICLENS(登録商標)との両方とも、以下の種:Escherichia coli (ATCC #11229及びATCC #25922)、Pseudomonas aeruginosa (ATCC #15442及びATCC #27853)、及びSerratia marcescens (ATCC #14756)への30秒の曝露後、5.0Log10を超える微生物の減少を与えた。更に、上記表5に示したように、Microcynは、Micrococcus luteus (ATCC #7468)に対して、30秒の曝露後に5.8420Log10の減少を与えることによる優れた抗菌活性を示した。しかしながら、30秒の曝露後、HIBICLENS(登録商標)は試験の検出限度(この具体的ケースにおいては、4.8Log10を上回る)まで集団を減少させたため、Micrococcus luteus (ATCC #7468)の活性のHIBICLENS(登録商標)との直接的な比較は不可能であった。なお、無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液は、上述した6つのチャレンジ株のそれぞれの微生物集団を、全20分の曝露後に0.3Log10未満減少させた。
【0222】
Microcyn酸化還元電位水は、試験した4つのチャレンジ株:Enterococcus faecalis (ATCC #29212)、Staphylococcus aureus (ATCC #6538及びATCC #29213)、及びStaphylococcus epidermidis (ATCC #12228)について、HIBICLENS(登録商標)と塩化ナトリウム洗浄液の両方よりも強い抗菌活性を与えた。以下の表にこれら4種についてのインビトロの時間−殺菌評価の微生物減少結果をまとめた。
【0223】
【表6−1】
【0224】
【表6−2】
【0225】
この比較のインビトロの時間−殺菌評価の結果は、Microcyn酸化還元電位水が、Escherichia coli (ATCC #11229及びATCC #25922)、Pseudomonas aeruginosa (ATCC #15442及びATCC #27853)、Serratia marcescens (ATCC #14756)、及びMicrococcus luteus (ATCC #7468)に対してHIBICLENS(登録商標)と遜色ない抗菌活性を示すだけでなく、Enterococcus faecalis (ATCC #29212)、Staphylococcus aureus (ATCC #6538及びATCC #29213)及びStaphylococcus epidermidis (ATCC #12228)に対してより有効な治療を与えることを示している。表6に示したように、Microcynは、一部の種において、より急速な抗菌反応(即ち、30秒未満)を実証している。更に、Microcynへの曝露は、表6に記載した全ての種において全微生物のより大きな減少をもたらす。
【0226】
実施例13
この実施例は、本発明に従って使用される例示的なORP水溶液Microcynの安定性、無毒性、及び抗菌活性を示している。
【0227】
Mycrocynは、殺菌、消毒、及び創傷消毒活性を持つ中性pHの超酸化溶液である。Microcynは、純水及び塩(NaCl)から調製され、低濃度のナトリウム(例、<55ppm)及び塩素(例、<80ppm)、7.2から7.8の範囲のpH、及び840mVから960mVの範囲の酸化還元電位を有する。Microcyn60は、一つの濃度のみで生産され、活性化したり希釈したりする必要は無い。この溶液は、逆浸透によって得られる水から生産され、それから高電圧及び塩化ナトリウムによって生み出される電気化学勾配にさらされる。この方法中、電気化学勾配が生み出される複数の室で形成する反応性種が制御された方法で選択され、Microcynを作り出す。その結果は、高い酸化還元電位(+840mVから+960mV)及びその結果として高い抗菌活性を与える制御されたフリーラジカル含有量を有する溶液である。
【0228】
次亜塩素酸及び次亜塩素酸ナトリウムがMicrocyn中に含まれる最も豊富な成分であり、とりわけ塩化物イオンのような他の物は微量濃度である。出願人は特定の理論に縛られることを望んでいないが、殺菌効果は必ずしも完全に塩素の量に依存するわけではなく、酸素の反応性種及び/又は酸素、或いは1種以上のその前駆物質の含有量にも依存し得ると考えられている。また、文献で報告された他の超酸化溶液と比較して、Microcynは中性pH(6.4〜7.8)であり、また腐食性でなく、2年までの保存中安定である。これらの全ての特徴が、高水準の殺菌剤として有効であって、且つ無生物表面及び生物表面(例、組織)の両方での使用に適合する超酸化溶液の製造を可能にした。
【0229】
Microcynは、2年間の間その殺菌活性を失うことなく、4から65℃という広く変動する範囲の温度条件で保存できることを、加速安定試験は示した。棚上での長期安定性というこの特性もまた、製造後すぐに使用される場合のみ有効である既に報告された超酸化溶液との違いである。換言すれば、Microcynは抗菌活性を失うことなく極端な条件でさえも保存され分配され得るが、他の溶液は、その溶液を使用しようと試みる全ての病院において専門的且つ高価な機械によって製造されなければならない。それにもかかわらず、製造者は、一度Microcynの容器を開封したら、同一の活性及び一貫性のある結果を保証するために30日以内に使用することを推奨している。
【0230】
Microcynの用量は皮膚の単位面積当たりに塗布される容量の変化のみによって変化し得る。毒物学的研究において、無傷の皮膚に局所的に塗布されるMicrocynの用量は、0.05と0.07mL/cm2との間で変化し、急性皮膚毒性の研究及び皮膚刺激の調査においては、8.0mL/cm2までであり、そして深い創傷におけるその塗布を調査したものでは、Microcynは0.09mL/cm2という用量で塗布された。
【0231】
4から24時間の曝露での単回塗布を使用した、Microcynを無傷の皮膚に局所的に塗布する毒物学的研究を行った。1日に1回又は2回、7日間のMicrocynの複数回塗布をラットの深い創傷について判定した。
【0232】
Microcynの急性刺激及び皮膚毒性に関する影響を評価する2つの研究をウサギの無傷の皮膚で行った。死体解剖時の皮膚における臨床的兆候、皮膚刺激、又は異常は、Microcynに曝露された動物のいずれにも見られなかった。
【0233】
深い創傷に局所的に塗布したMicrocynからの局所的及び全身の毒性の特徴付けをラットで評価した。異常も、血液化学又は血液細胞学のパラメータの有意な差異も観察されず、死体解剖において異常性も観察されなかった。皮膚刺激類別、並びに創傷及び塗布した場所の周囲の組織の組織病理は、Microcynで処理した創傷と生理食塩水溶液で処理したコントロール群の創傷とでいかなる差異も示さなかった。創傷治癒過程中のII型コラーゲンの沈着も、免疫組織化学による測定では、Microcynの使用で変化しなかった。
【0234】
Microcynの全身毒性も、マウスにおける腹腔内注射を用いて評価した。このために、5匹のマウスに腹腔内経路で単回用量のMicrocyn(50mL/kg)を注射した。同様にして、5匹のコントロールのマウスに単回用量の生理食塩水溶液(0.9%の塩化ナトリウム)(50mL/kg)を注射した。この調査において、単回腹腔内用量のMicrocyn(そのLD50は50mL/kgを上回っている)を受けたいずれの動物においても、死亡も全身毒性のいかなる証拠も観察されなかった。
【0235】
Mycrocynを、その吸収を可能とし、また、製品のあらゆる内在性の毒性効果を特徴付けるために、ラットに経口経路で投与した。このために、単回用量(4.98mL/kg)をSprague−Dawley株の3匹のアルビノラットに食道管経路で投与した。死亡も無く、また、単回経口用量のMicrocynに曝露されたいずれの動物の死体解剖においても、臨床的症状も異常も無かった。
【0236】
局所的に塗布したMicrocynの眼刺激の可能性についても、ウサギで評価した。眼球経路を通じた局所投与によるMicrocynに曝露されたいずれの動物においても、眼刺激も他のいかなる臨床的徴候も観察されなかった。
【0237】
Microcynをラットに吸入経路で適用し、吸入による潜在的な急性毒性を決定した。全ての動物は、曝露後の活動性及び立毛において、非常にわずか又はわずかの減少を示したが、全ての動物は翌日には無症候性であった。吸入によってMicrocynに曝露された動物の死体解剖では、死亡も異常も観察されなかった。
【0238】
Microcynでの皮膚感作の可能性の評価を、改変した閉塞パッチ法(Buehler)を使用してモルモットで行った。簡易処理のチャレンジ後のコントロール群の動物においても、当該処理でのチャレンジ後に評価(誘導によって処理)した動物においても、刺激は観察されなかった。従って、Microcynは感作反応を引き起こさない。
【0239】
インビボ腹部創傷における微生物負荷のMicrocynでの低減をラットで評価した。壁を外科的に開き、更に合成メッシュで閉じ、その後既知のE coli細菌負荷で感染させた。これらの実験において、Microcynは、細菌負荷の低減において生理食塩水溶液よりも優れていることを示した。巨視的評価では、創傷は生理食塩水群においてのみ重度に感染した。Microcyn群においては、メッシュは動物の腹壁に完全に取り込まれた。1群あたり30動物での定量培養は微生物負荷のより良い低減を示しており、生理食塩水溶液での99.969%の低減に対してMicrocynは微生物負荷を99.997%低減させていた。更に、膿瘍形成が、MIcrocynでの7匹の動物及び生理食塩水溶液処理した17匹の動物において存在した。
【0240】
このように、経口及び吸入経路、又は腹腔内注射によって、無傷の皮膚、深く開いた皮膚の創傷、結膜嚢内に適用されたとき、Microcynは製品と関連する副作用を示さなかった。また、優れた消毒及び美容の結果で、皮膚及び粘膜における非常に多様な性質の創傷を持った500人を超える患者を治療した実験もある。従って、局所的に塗布されたMicrocynは、この臨床試験において、有効且つ良好な耐容性のはずである。
【0241】
Microcynは、透明な240mLのPETボトルに詰められる。この製品は環境温度で保存され、ボトルが開封されなければ、2年間まで棚上で安定なままである。開封された場合、全ての製品を90日未満に使用することが推奨される。その高い生物学的安全性のプロファイルから、Microcynは汚染又は腐食の危険性無しで流しに空けられ得る。
【0242】
Microcynを用いた複数の微生物試験が合衆国及びメキシコの両方において行われてきた。90%を超える細菌の根絶が曝露の最初の数秒において起こる。この基準に従ってMicrocynが示す抗細菌及び抗真菌活性を表7にまとめた。
【0243】
【表7】
【0244】
殺胞子活性試験をPAHO[汎米保健機構]/WHOのプロトコールに従って行った。
【0245】
Microcynはヒト免疫不全ウイルス(SF33株)のウイルス負荷を5分間で3logを超えて減少させることが分かった。これを、Microcynで処理したウイルスの試験において、細胞変性効果がないこと及びAgp24のレベルによって確かめた。(これらの試験は、米国環境保護庁の殺ウイルス剤プロトコール(DIS/TSS−7/1981年11月12日)に従って行った。)
【0246】
Microcynの殺ウイルス活性は、米国でHIVに対して行われた研究で確認され、またListeria monocytogenes、MRSA、及びMycobacterium bovisに対するその活性もまた実証されている。このように、Microcynは、推奨される通りに投与される場合、1分から15分の曝露で、細菌、真菌、ウイルス、及び胞子を根絶し得ることが示されている。
【0247】
実施例14
この実施例は、患者への局所投与に好適な本発明の製剤を提供する。製剤は:
成分 量
ORP水溶液 250mL
Carbopol(登録商標)ポリマー粉末(増粘剤) 15g
トリエタノールアミン(中和剤) 80mL
を含有する。
【0248】
実施例15
この実施例は、患者への局所投与に好適な本発明の製剤を提供する。製剤は:
成分 量
ORP水溶液 1000mL
Carbopol(登録商標)ポリマー粉末(増粘剤) 15g
トリエタノールアミン(中和剤) 80mL
を含有する。
【0249】
実施例16
この実施例は、患者への局所投与に好適な本発明の製剤を提供する。製剤は:
成分 量
ORP水溶液 250mL
Carbopol(登録商標)ポリマー粉末(増粘剤) 7g
トリエタノールアミン(中和剤) 12mL
を含有する。
【0250】
実施例17
この実施例は、ORP水溶液及び増粘剤を含む本発明の製剤の製造を記載する。
【0251】
ORP水溶液を、ガラスビーカーやビンなどの好適な容器に入れる。Carbopol(登録商標)974Pポリマーは粗い篩(又はざる)を通過させ、それにより急速な散布が可能になり、それと同時にあらゆる大きな凝集体が壊れる。ポリマーCarbopol(登録商標)974Pをそれから、増粘剤として添加する。Carbopol(登録商標)ポリマーをゆっくり添加して、凝集塊の形成を防止し、こうして過度に長い混合サイクルを回避する。
【0252】
この溶液をCarbopol(登録商標)ポリマーの添加中に急速に混合し、その結果、粉末は室温で溶解する。それから中和剤トリエタノールアミンを溶液に加え、均一なゲルが得られるまで電動ミキサー又は他の好適な器具を使って混合する。Carbopol(登録商標)ポリマー組成物への中和剤の添加は、製剤をゲルに変換する。
【0253】
実施例18
この研究は、感染した糖尿病性足潰瘍の治療のために、本発明に従う例示的なORP水溶液Microcynを使用することの、従来の創傷療法と比較しての有効性を示している。
【0254】
この研究は、感染した糖尿病性足潰瘍の治療におけるMicrocynのレジメンを「コントロール」のレジメンと比較した、前向きランダム化単盲検対照調査であった。患者が研究の基準に合致しており且つ糖尿病性足外来を訪れた場合に、患者を任意抽出した。任意抽出は、Microcyn又はコントロールのいずれかへの交互の割り当てによるものであった。患者は、Microcyn治療又はコントロール治療を受けているかどうかについて知らされなかった。しかしながら、もし患者がどちらの治療を受けているのかに気付いてしまっても、彼らを研究に不適格とはしなかった。
【0255】
45人の患者を20週間の研究に登録した。患者は、感染した糖尿病性足潰瘍を示した場合、選別するのに適格であるとした。患者は、任意の研究に関連する治療を受ける前にインフォームド・コンセントに署名した。研究集団の中で、45人の任意抽出された患者のうち8人(18%)を、研究の脚における重度動脈閉塞のため、最初の判定後直ちに研究から除外した。その患者達を、患肢救済又は大切断術のいずれかのために血管外科医に移した。他の患者は研究中に脱落しなかった。
【0256】
Microcyn群とコントロール群との間で、あらゆる人口統計的な特徴に関して統計的に有意な差異はなかった(表8及び表9)。
【0257】
【表8】
【0258】
【表9】
【0259】
患者は、研究の間、壊死又は過角化した組織を取り除くために、研究潰瘍の激しい清拭を受けた。2つの研究群の患者は、石鹸及びMicrocynをポビドンヨード及び生理食塩水でのすすぎの代わりに使用した以外は同様の治療レジメンを受けた。全ての研究の創傷は、湿った創傷環境を与えるのに使用するゲルの塗布、ガーゼ、及び粘着性カバーからなる同一のドレッシングを受けた。潰瘍が体重負荷領域にある場合、可能な限り体重負荷を避ける指示に加えて、潰瘍部位の圧力を緩和するための、体重負荷を取る特別注文成型の挿入物を患者に与えた。両方の治療群の全患者を最初は毎日診察し、その後は創傷の状態によって、3日毎又は1週間に1度診察を受けるよう要求した。
【0260】
研究のエンドポイントは以下であった:主要事象−悪臭、蜂巣炎の減少、治癒、及び安全性−重度の有害事象。データ分析により、治療と臭気の減少、蜂巣炎及び治療との間の関連性が明らかとなった(表10)。コントロール群においては患者のわずか4分の1(25%)であるのに対して、Microcyn介入群の全ての患者(100%)が悪臭の減少を示した。コントロール群での約44%に対して、蜂巣炎の減少を示したMicrocyn介入群の患者の割合は約81%であった。1)創傷における感染症から肉芽組織の形成への進行、及び2)創傷周囲の健常組織の発達として定義される治癒がMicrocyn介入群で観察され、それぞれ約90%及び94%であった。コントロール群では、これらの値はそれぞれ63%及び31%であった。
【0261】
【表10】
【0262】
このように、Microcynで治療した患者は、悪臭、蜂巣炎の減少、及び治癒に関して、従来療法のみで治療した患者と比較して、重要な臨床的有益性を示した。
【0263】
実施例19
この実施例は、糖尿病性足潰瘍の治療について、並びに微生物負荷(micorbial load)及び/又は糖尿病性足潰瘍と関係する合併症(特に、再発、裂開、及び切断)の減少についての、例示的なORP水溶液Dermacynの有効性を示している。
【0264】
末梢血管疾患がある感染症は、糖尿病性の足の病気における切断の危険性の最も重要な予後因子の一つであるとみなされている。抗生物質療法、深部感染症の外科治療、及び清毒ドレッシングは、糖尿病性の足における感染症の治療に一般に使用されている。治癒している糖尿病性創傷の感染症の局所的な制御の価値は、創傷治癒にとって重要であると認識されている。
【0265】
これは、オープンラベル(盲検ではない)の単一施設研究であった。全対象の全体的な治療は、通常の抗生物質療法、手術、及び体重負荷緩和を含んでいた。Dermacyn治療群(群D)を予め募集した。この群の全ての対象を治療した時点で、ポビドンヨード治療対象であるコントロール群(群C)についてのデータを診療記録から遡って集めた。
【0266】
対象は、18歳より上の男女であって、糖尿病歴、少なくとも1つのHbAC1読み取り、及びテキサス大学の分類(T.U.C.)を使用したステージII/III B〜D潰瘍(全て足首より下に位置していた)を有していた。群Dの治療完了後、群Cを、データを集める前に、年齢、糖尿病の持続期間、及びT.U.C.を使用しての潰瘍形成の分類についてマッチさせた。
【0267】
(Dermacyn又はポビドンヨードの使用は別として、)同じ治療が両方の群に与えられるように、臨床科医の標準ケアプロトコールに従って、全ての対象に治療を与えた。全ての対象は、治療の開始前の少なくとも1週間は抗生物質療法にかかっていた。微生物学的な検体を登録時(又はコントロール群においては治療の開始相当時)、及びその後は外科的閉鎖治療まで毎月採った。Dermacynを含んだガーゼ又はポビドンヨードを含んだガーゼを使用して、局所治療を毎日行った。
【0268】
治療は、2つのステージに関わっていた:
【0269】
ステージI − 対象は潰瘍の清拭を受けた。その後対象は、Dermacyn又はポビドンヨードのいずれかに浸されたガーゼを次の24時間創傷部位に塗布された。これらのドレッシングを毎日交換した。末梢血管疾患を持つ全ての対象に、いかなる待機手術を行う前に、血管内技術又はバイパス手術を使用する血管再開通術を勧めた。T.U.C.のIII B/D病変を有する対象において、骨感染の外科治療を行った(外骨切除術(esostectomy)小切断)を行った。最終的な閉鎖手術を行う10〜20日前に対象を退院させた。
【0270】
ステージII − 対象をその後、必要に応じて、清拭及び手術(即ち、保存手術、小手術、又は大手術)のために再入院させた。対象に、手術後、Dermacyn又はポビドンヨードのいずれか(前に割り当てた通り)に浸したガーゼを創傷部位に塗布し、24時間そのままにしておいた。これらのドレッシングをその後毎日交換した。
【0271】
第一義的転帰の測定は、(登録時及び手術時又はフォローアップ中の陽性培養物の数によって示される)微生物負荷の減少であった。第二義的転帰の測定は、治癒時間(日数)、再発(日数)、再手術のタイプ(保存手術、小手術、又は大手術)、裂開、及び局部的な副作用であった。分析は、手術時の微生物学的転帰に対する治療の効果の基本記述統計及び統計分析からなる。手術時の微生物負荷に対するDermacyn治療の効果を分析するために、手術時の微生物負荷を成功転帰又は不成功転帰に二分した。このとき、ゼロの細菌株を成功とみなし、任意のゼロでない数の細菌株を不成功とみなした。二つの治療群の間での成功の微生物学的転帰の比率の差異を、フィッシャーの正確検定を使用して統計的有意性についてテストした。更に、成功転帰の確率についてのオッズ比をロジスティック回帰によって計算した。これらの分析は事後分析であった。
【0272】
データを218人の対象について記録したが、その内の110人はDermacynで治療し(群D)、108人はポビドンヨードで治療した(群C)。対象の平均年齢は、69.6歳であり、33.5%は女性であった。登録時の糖尿病の平均持続期間は、17.4年であった。人口統計的な特徴は2つのグループ間で良くバランスが取れていた。基準の人口統計を表11及び表12に与えた。
【0273】
【表11】
【0274】
【表12】
【0275】
群C(27人)よりも群D(39人)において多くの対象が登録時に一つの細菌株しか持っていなかったが、細菌株の平均数は2つの群間で良くバランスが取れていた。手術時(又はフォローアップ時)の微生物負荷の減少は、群Cにおいてよりも群Dにおいて有意に大きかった。成功の転帰を手術後の細菌株がゼロであるとして定義する場合、治療が成功であった対象の数は、群Cにおける74に対して、群Dにおいて97であった。微生物学的な成功の割合における治療群間の差異は、有意であった(p<0.001,フィッシャーの正確検定)。これと合致して、成功の転帰についてのオッズ比は、Dermacynで治療した患者について3.4(95% CI 1.7〜7.0)であった。
手術前後の細菌株の数の概要(カテゴリー別)を表13に示し、また、成功の微生物学的な転帰の概要(成功の転帰は、手術後の細菌株がゼロであるとして定義している)を表14に示す。
【0276】
【表13】
【0277】
【表14】
【0278】
平均治癒時間は、群C(58日)よりも群D(45.2日)において僅かに短かった。治癒時間の概要を表15に示す。再発率は、群D(10の再発)よりも群C(12の再発)において僅かに高かった。再潰瘍形成(再発)の概要を表16に示す。
【0279】
【表15】
【0280】
【表16】
【0281】
群C(47人)においてよりも群D(60人)において多くの対象が保存手術治療を受け、群Cの61人に対して、群Dの50人の対象が何らかの形態の切断を必要とした(表17に示した)。手術のタイプの概要を表18に示す。
【0282】
【表17】
【0283】
【表18】
【0284】
外科的裂開(感染症又は虚血のため、手術後治癒しない状況)の発生は、群D(14人)よりも群C(21人)において僅かに高かった。外科的裂開の概要を表19に示す。
【0285】
【表19】
【0286】
群Cにおいては18例報告されたのに対して、群Dにおいては局部副作用の報告はなかった。局部副作用の割合の概要を表20に示す。
【0287】
【表20】
【0288】
この実施例は、例示的なORP水溶液Dermacynでの治療は、従来の療法で観察されたものよりも少ない細菌株の単離、より少ない局部副作用、より少ない外科的裂開、及びより短い治癒時間をもたらしたことを示している。従って、この実施例は、Dermacynを用いた糖尿病性足潰瘍の治療は、従来のポビドンヨードの局部療法を超える治療上の利点を有していることを示すと考えられる。
【0289】
実施例20
この研究は、静脈うっ滞性皮膚潰瘍の治療に対する例示的なORP水溶液Dermacyn(M60)の有効性を示している。
【0290】
少なくとも10年の持続期間の静脈瘤に起因しており(resultin from)、長さ又は幅が少なくとも3cmであって、且つ足関節:上腕圧指数が少なくとも0.8である静脈うっ滞性皮膚潰瘍を持つ全部で61人の成人(56人の女性、5人の男性)を含めた。12ヶ月にわたって、35人の患者(31人の女性、4人の男性)を静脈硬化療法、圧迫包帯法、及びDermacynで治療した。結果を、静脈硬化療法、圧迫包帯法、及びポビドンヨードで治療したヒストリカル・コントロール群(25人の女性、1人の男性)で得られた結果と比較した。年齢分布(表21)及び潰瘍の部位(表22)は、2つの群について同様であった。
【0291】
【表21】
【0292】
【表22】
【0293】
コントロール群は82の潰瘍、Dermacyn治療群は100の潰瘍を含んでいた。
【0294】
いずれかの剤(即ち、Dermacyn又はポビドンヨード)のいずれかを用いた毎日1度の創傷の殺菌が推奨された。抗生物質をコントロール患者の65.4%及びDermacyn治療患者の68.6%に投与した。フォローアップは、患者の参照の脚の潰瘍が治癒するまで又は最低12ヶ月間続けた。
【0295】
主要なエンドポイントは、生活の質であった。この目的のために、有効なQOL−SF36尺度を使用した(Sam他,EUR J VASC ENDOVASC SURG. 2004,28:253−256)。第二義的な転帰は、試験脚の潰瘍の完全な治癒及び有害事象であった。図4は、コントロールと比較した、Dermacyn群の患者における全体的な身体活動の改善を示す。更に、コントロール群においてはわずか47%であるのに対して、Dermacynで治療した潰瘍の78%が9ヶ月までに治癒した(図5参照)。
【0296】
塗布時に見つかった唯一の副作用は、Dermacyn治療患者の最大30%の患者における灼熱感であった。この感覚は、自己限定的であり、最大で数分続いた。それはまた、Dermacyn治療患者でなされた機能的な改善を示す図6で観察され得るように、塗布の2日目又は3日目には消失し、治癒過程に影響しなかった。更に、Dermacyn治療患者は、ORP水治療による痛みの強さの改善を示した(図7)。Dermacyn治療患者はまた、活力、社会的機能、及び全体的な精神的健康の改善を示した。
【0297】
この研究は、Dermacynで治療した静脈脚皮膚潰瘍は、研究中、ポビドンヨードで治療された静脈脚皮膚潰瘍と比較して、より良い生活の質であったことを示す。
【0298】
実施例21
この調査は、踝より遠位の壊死組織(潰瘍)の治療においてVersajet(商標)(Smith & Nephew)ジェット洗浄システムの交換溶液として本発明に従って使用される例示的なORP水溶液であるDermacynの、標準レジメンと比較した安全性及び有効性を説明するために実施され得る。
【0299】
これは、前向きランダム化二重盲検対照研究である。約30人の患者(Dermacyn群は約20人/コントロール群は約10人)をこの研究に登録する。この研究の集団は下肢潰瘍(例、糖尿病性足潰瘍、静脈うっ滞性潰瘍)の患者である。患者が研究への登録に適格であるためには、全ての研究包含基準及び除外基準を0日目までに満たしていなければならない。包含基準は以下である:患者は18歳以上である;患者の下肢潰瘍には壊死組織が存在し、ジェット洗浄システムによる機械的な清拭の候補である;患者の潰瘍は踝より遠位に位置している;患者の潰瘍表面積は1.0cm2以上である;患者の潰瘍は真皮を通って皮下組織にまで広がっており(肉芽組織が存在しても良い)、筋肉又は腱の露出があり得るが骨及び/又は関節包の関与は無い;及び患者のドップラー足関節−上腕指数は、0.8以上のABIであるか、又は患者のつま先の圧力は40mmHg以上である。
【0300】
除外基準は以下である:患者は治療肢のいずれかの部分に壊疽の臨床上の証拠がある;患者の潰瘍は研究期間中に切除又は切断されることが見込まれている;患者は全身性炎症反応症候群(SIRS)に付随する兆候を有している;患者の潰瘍は1cm2未満の総表面積である;研究員の意見では、患者をこの研究の候補として不適当にする1種以上の病状(腎臓、肝臓、血液、神経、又は免疫の病気を含む)を患者は有している;患者は既知の能動的なアルコール及び薬物の乱用を有する;患者は副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤又は細胞毒性剤を経口又は非経口で受けているか、又は研究の過程中にそのような剤を必要とすることが予期される;患者は塩素に対する既知のアレルギーを持っている;患者の潰瘍は骨髄炎を伴っている;及び患者は、患者がこの研究を完了する能力を著しく危うくする何らかの状態を有している。
【0301】
インフォームド・コンセントを得た後、包含基準及び除外基準にかなえば、患者を以下の治療の一つに任意抽出する(2:1の任意抽出):治療−ジェット洗浄システムとDermacyn、及びヒドロゲル創傷ドレッシングレジメンの使用;コントロール−生理食塩水(ジェット洗浄システムでの標準的な治療)、及びヒドロゲル創傷ドレッシングレジメンの使用。
【0302】
Dermacynに任意抽出された各患者は、患者の創傷の機械的な清拭中に、Versajetジェット洗浄システムを用いた研究製品Dermacynの適用を受ける。Versajetの標準的な圧力設定を糖尿病性足潰瘍(踝よりも遠位である)に使用する。清拭後、Dermacynを残屑のない創傷床をすすぐのに充分な量で創傷に塗布する。創傷をヒドロゲルドレッシングで覆う。ドレッシングを変える度に、創傷をDermacynで洗い流し、新たなヒドロゲルドレッシングで覆う。研究員による特別な定めの無い限り、ドレッシングは3日毎に変える。臨床反応因子(CFR)((1)創傷における細菌の減少、(2)創傷面積の減少、及び(3)肉芽組織の発達)を週に1度の来診中に決定する。
【0303】
コントロールの各患者は、患者の創傷の機械的な清拭の間、Versajetジェット洗浄システムによるコントロール製品(生理食塩水溶液)の塗布を受ける。清拭後、生理食塩水を、残屑のない創傷床をすすぐのに充分な量で創傷に塗布する。創傷をヒドロゲルドレッシングで覆う。ドレッシングを変える度に、創傷を生理食塩水で洗い流し、新たなヒドロゲルドレッシングで覆う。研究員による特別の定めが無い限り、ドレッシングは3日毎に変える。週に1度の来診中に臨床反応因子を決定する。
【0304】
創傷の清拭を週に1度の各来診時に行っても良い。あらゆる壊死組織を創傷判定前にジェット洗浄で清拭する。潰瘍からの残屑をDermacyn又は生理食塩水のいずれか(任意抽出に依存する)ですすぐ。訪問の間、患者は、ドレッシングを変える度に、Dermacyn又は生理食塩水(任意抽出に依存する)で創傷をすすぐ。創傷の写真を訪問毎、清拭後に撮る。
【0305】
主要な効力エンドポイントは:(1)創傷における細菌の減少、(2)創傷面積の減少、及び(3)肉芽組織の発達である。安全性を、この研究で任意抽出された全ての患者で判定する。突発的で重篤な有害事象の処置を記録する。
【0306】
実施例22
この研究は、Jet−Ox NDシステムで使用される標準レジメンと比較した、下肢潰瘍における壊死組織の治療におけるJet−Ox ND洗浄システムの交換溶液としての、例示的なORP水溶液Dermacynの安全性及び効力を示す。
【0307】
Jet−Ox NDシステムは、無菌生理食塩水の制御されたスプレー洗浄を通じて、その下の正常組織を損傷することなく、慢性創傷から壊死組織を取り除く。この研究は生理食塩水をDermacynに交換するが、それは同等のスプレー洗浄効果を与え、創傷が閉じるのを妨げ得る創傷の細菌負荷を更に減少させることが見込まれる。
【0308】
20人の患者を研究する(任意抽出して、10人のDermacyn患者及び10人のコントロール患者を得る)。包含基準は以下である:患者は18歳より上である;患者は、膝よりも下に壊死組織が存在する下肢潰瘍を有し、Jet−Ox洗浄システムでの機械的な清拭の候補である;患者の潰瘍は適格審査の来診の30日よりも前に存在していた;潰瘍の表面積は、1cm2よりも大きく、潰瘍は真皮を通じて皮下組織にまで広がっており(肉芽組織が存在しても良い)、筋肉、腱の露出があり得るが骨又は包の露出は無い;患者のドップラーによる足関節/上腕指数は0.8よりも大きく、且つ/又は患者のつま先の圧力は40mmHgよりも高い;及び患者は足背動脈及び/又は後脛骨動脈に触診可能な脈拍を有している。
【0309】
以下の除外基準がある:腎臓、肝臓、血液、神経、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)若しくは後天性免疫不全症候群(AIDS)を有するものを含む免疫不全患者;研究者の意見では、患者を研究には不適切な候補とするもの;感染後の臨床的徴候を有する創傷;治療の肢のいずれかの部分の壊疽;潰瘍は露出した骨を表に出している(骨のポジティブなプローブ)か、又は下にある骨髄炎の他の証拠を潰瘍部位に有している;感染潰瘍が研究期間中に切断又は切除されるという予期;アルブミンが2.0よりも低いことで明らかな重篤な栄養失調;既知のアルコール又は薬物乱用;経口又は非経口で、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤又は細胞毒性剤、クマジン、ヘパリンを受けている患者、或いは患者は研究の過程中にそのような剤を必要とすることが予想される;及び患者は塩素に対する既知のアレルギーを持っている。
【0310】
各個体を、2つの治療群;Dermacyn又は生理食塩水のうち1つに任意抽出する。標的潰瘍は機械的な清拭を受け、続いてDermacyn又は生理食塩水のいずれかで創傷を洗浄し、ヒドロゲルドレッシングで包帯をする。実験室での研究(血液学、血清生化学、及び必要に応じて妊娠テスト)、非侵襲的な末梢血管の研究、病歴及び身体検査、潰瘍のトレース、並びに潰瘍の写真撮影と共に定量培養用の中心の創傷生検を採る。
【0311】
Jet−Ox ND洗浄システムを、Dermacyn又は生理食塩水、ヒドロゲル及び包帯素材と共に分配する。家庭での使用のための説明書が提供される。来診は、適正審査、任意抽出を伴う登録[0日目]、清拭、写真撮影、及び判定を伴う毎週の来診を含む。有効性は、(1)創傷における細菌の減少、(2)創傷面積の減少、及び(3)研究の過程中の肉芽組織の発達によって決定する。この研究で任意抽出される全ての患者において、安全性を判定する。突発的で重篤な有害事象の処置を記録する。
【0312】
実施例23
この実施例は、過酸化水素(HP)に対する例示的なORP水溶液の、ヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)の生存能力に対する影響を示している。この潜在的な毒性を調べるために、HDFをインビトロでORP水溶液及び過酸化水素(HP)に曝露した。HPは真核細胞に対して毒性であることが知られており、アポトーシス及び壊死を増加させ、且つ細胞の生存能力を減少させる。この実施例において、細胞の生存能力、アポトーシス、及び壊死を、5分及び30分間純粋なORP水溶液及び880mM HP(HPの清毒用途で採用される濃度)に曝露したHDFで測定した。
【0313】
HDFの培養物を、この調査の目的でプールし、一緒に冷凍保存した3つの異なる包皮から得た。全ての実験について、2倍体細胞のみを使用した。細胞周期の分析において、DNAの2倍性を、少なくとも20,000の合計事象から収集したCV 7%未満の単一G0−G1ピーク及び対応するG2/Mピークの存在として定義した。図8A〜8Cは、曝露時間5分及び30分をそれぞれ白棒及び黒棒で表した結果を開示している。これらのパラメータの同時分析を、同じ細胞集団中で、A)7−アミノアクチノマイシンD(7AAD)、B)アネキシンV−FITC、及びC)ヨウ化プロピジウムを使用するフローサイトメトリーによって行った。図8A〜8Cは、平均±SD(n=3)で表したパーセント値を開示している。
【0314】
細胞の生存率は、5分間のORP水溶液及びHPへの曝露後、それぞれ75%及び55%であった(図8A)。曝露を30分に延長した場合、細胞の生存率は、それぞれ60%及び5%にまで更に減少した。15%の細胞がフローサイトメトリー分析において両方の時間でヨウ化プロピジウムを取り込んだため、明らかにORP水溶液は壊死による細胞死を引き起こした(図8C)。いかなる特定の理論に縛られることも望んでいないが、細胞は、成長因子又はイオンの添加無しでORP水溶液のみの中に保たれたため、この結果はMicrocynの低張性(13mOsm)によって引き起こされた浸透圧効果が原因であり得る。ORP水溶液で処理された細胞の3%しか細胞表面にアネキシンV(アポトーシスマーカー)を露出させなかったため(図8B)、アポトーシスはORP水溶液が細胞死を引き起こすメカニズムでは無いようである。このパーセンテージは、コントロール群で測定されたものと実質的に同様であった。一方、HPは、5分及び30分の曝露後、処理した細胞の20%及び75%で壊死を、15%及び20%でアポトーシスをそれぞれ引き起こした。つまり、これらの結果は、(未希釈の)ORP水溶液はHDFに対して、清毒的な濃度のHPと比べてはるかに低い毒性であることを示している。
【0315】
実施例24
この実施例は、HDFにおける酸化的DNA損傷及びDNA付加物8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)の形成への、過酸化水素(HP)と比較した例示的なORP水溶液の影響を示している。細胞内での8−OHdG付加物の産生は、DNAの特定残基での酸化損傷のマーカーであることが知られている。加えて、この付加物の高い細胞内のレベルは変異誘発、発癌、及び細胞の老化と相関している。
【0316】
図9は、30分間のコントロール処理、ORP水溶液処理、及びHP処理後のHDF由来のDNAサンプル中に存在する8−OHdG付加物のレベルを示している。DNAを、曝露後直ちに(T0,白棒)又はチャレンジ期間から3時間後(T3,黒棒)に抽出した。DNAを消化し、製造者の使用説明書のとおりにELISAキットによって8−OHdG付加物を測定した。値は平均±SD(n=3)で示した(ng/mL)。30分間のORP水溶液への曝露は、処理した細胞における付加物の形成を、30分間のインキュベーション後のコントロール細胞と比較して増加させなかった。一方、高希釈HP−致死未満の非治療的なHP濃度(500μM HP)まで下げた−での処理、30分間の500μM HPでの処理は、8−OHdG付加物の数を、コントロール処理又はORP水溶液処理した細胞と比べて約25倍増加させた。
【0317】
ORP水溶液で処理した細胞は、ORP水溶液への曝露後3時間にわたり、補充DMEM中に入れたままにしておいた場合、8−OHdG付加物のレベルを減少させることが可能であった。同じ3時間の回復期間を与えたにも関わらず、HP処理した細胞はそれでもまだ、コントロール処理又はORP水溶液処理した細胞よりも約5倍多い付加物を示した。つまり、これらの結果は、ORP水溶液への急性曝露は有意なDNA酸化損傷を誘導しないことを示している。これらの結果はまた、ORP水溶液は、インビトロ又はインビボでの変異誘発又は発癌を引き起こさないらしいことを示している。
【0318】
実施例25
この実施例は、HPと対比した、低濃度の例示的なORP水溶液への慢性曝露の、HDFへの影響を示している。慢性の酸化ストレスは細胞の早期老化を引き起こすことが知られている。長期の酸化ストレスを模倣するために、20集団の倍増の間、初代HDF培養物を低濃度のORP水溶液(10%)又は非致死性のHP濃度(5μM)に慢性的に曝露した。SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現及び活性は、以前からインビボ及びインビトロでの老化過程と関連付けられてきた。この実施例においては、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現を、ORP水溶液又はHPへのHDFの1ヶ月の連続的な曝露後に分析した。結果を図10に示している。酵素SA−β−ガラクトシダーゼの発現は、20の顕微鏡視野における青色の細胞の数をカウントすることにより分析した。(染色パターンの例については、パネルAを参照されたい。)パネルBは、SA−β−ガラクトシダーゼを過剰発現した細胞の数が示すように(n=3)、HP処理のみが細胞老化を加速させたことを示している。低用量のHPでの慢性的な処理は、SA−β−Galの発現を86%の細胞で増加させたが、一方でORP水溶液での処理はこのタンパク質の過剰発現を引き起こさなかった。この実施例から、ORP水溶液は細胞の早期老化を引き起こすものではないことが結論付けられ得る。
【0319】
実施例26
この実施例は、例示的なORP水溶液を使用した毒性調査の結果を示している。
【0320】
急性の全身毒性調査をマウスで行い、例示的なORP水溶液であるMicrocyn60の潜在的な全身毒性を決定した。単回用量(50mL/kg)のMicrocyn60を5匹のマウスに腹腔内注射した。5匹のコントロールのマウスに単回用量(50mL/kg)の生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を注射した。全ての動物を、注射後すぐ、注射から4時間後、及び以後7日間毎日1回、死亡及び有害反応について観察した。全ての動物の体重も、注射前及び7日目に再度計量した。調査の間には、死亡はなかった。全ての動物は、調査を通じて臨床的に正常であるように見えた。全ての動物は体重が増加した。この調査から見積もられたMicrocyn60の急性腹腔内LD50は、50mL/kgより大きい。この実施例は、Microcyn60は有意な毒性を持たず、本発明に従った治療的な使用について安全であるはずであることを示している。
【0321】
実施例27
この実施例は、例示的なORP水溶液の潜在的な細胞遺伝毒性を決定するために行った調査を表している。
【0322】
例示的なORP水溶液(Microcyn 10%)を使用して微小核試験を行い、マウスへのORP水溶液の腹腔内注射の変異誘発の可能性を評価した。哺乳動物でのインビボの微小核試験は、マウスの多染性赤血球の染色体又は分裂装置への損傷を引き起こす物質の同定のために使用されている。この損傷は、ラギング染色体の断片又は分離した染色体全体を含有する細胞内構造である「微小核」の形成をもたらす。ORP水溶液の調査は、各10匹(オス5匹/メス5匹)のマウスの3つの群を含んだ:試験群、ORP水溶液を投与する;ネガティブコントロール群、0.9% NaCl溶液を投与する;及びポジティブコントロール群、変異原性のシクロホスファミド溶液を投与する。試験群及びネガティブコントロール群に、それぞれORP水溶液又は0.9% NaCl溶液の腹腔内注射(12.5ml/kg)を連続2日間(1日目及び2日目)与えた。ポジティブコントロールのマウスに、シクロホスファミド(8mg/mL,12.5ml/kg)の単回の腹腔内注射を2日目に与えた。何らかの有害反応について、全てのマウスを注射後すぐに観察した。全ての動物は、調査を通じて臨床的に正常であるように見え、いずれの群においても毒性の兆候は見られなかった。3日目に全てのマウスの体重を量り殺した。
【0323】
殺したマウスから大腿を摘出し、骨髄を抽出し、各マウスについて二重で塗抹標本を行った。各動物の骨髄のスライドを倍率40倍で読み取った。骨髄毒性の指標である、多染性赤血球(PCE)の正染性赤血球(NCE)に対する割合を、各マウスについて少なくとも合計200の赤血球をカウントすることにより決定した。それから、マウス1匹あたり最低2000の記録可能な(scoreble)PCEを微小核化多染性赤血球の発生について評価した。データの統計解析は、統計ソフトウェアパッケージ(Statview 5.0,SAS Institute Inc.,USA)のマン・ホイットニー検定(5%のリスク閾値)を使用して行った。
【0324】
ポジティブコントロールのマウスは、それらの各ネガティブコントロールと比較して、統計的に有意に低いPCE/NCE比を有したが(雄:0.77対0.90、及び雌:0.73対1.02)、これは処理した骨髄へのシクロホスファミドの毒性を示している。しかしながら、ORP水溶液で処理したマウスとネガティブコントロールとの間には、PCE/NCE比に統計的に有意な差異は無かった。同様に、ポジティブコントロールのマウスは、ORP水溶液で処理したマウス(雄:11.0対1.4/雌:12.6対0.8)及びネガティブコントロール(雄:11.0対0.6/雌:12.6対1.0)の両方と比較して、微小核を有する多染性赤血球を統計的に有意に多く持っていた。ORP水溶液で処理したマウスとネガティブコントロールのマウスとの間には、微小核を有する多染性赤血球の数に統計的に有意な差異は無かった。
【0325】
この実施例は、10%のMicrocynは、マウスへの腹腔内注射後に毒性効果も変異原性効果も引き起こさなかったことを示している。
【0326】
実施例28
この調査は、例示的なORP水溶液Dermacynには毒性がないことを示している。
【0327】
この調査はISO 10993−5:1999基準に従って行い、例示的なORP水溶液Dermacynが細胞毒性を引き起こす可能性を決定した。0.1mLのDermacynを含むフィルターディスクをアガロース表面に置き、マウス繊維芽細胞(L−929)の単層に直接重層した。調製したサンプルを、5% CO2の存在下37℃での24時間のインキュベーション後、細胞毒性の損傷について観察した。観察結果をポジティブ及びネガティブコントロールのサンプルと比較した。Dermacynを含有するサンプルは細胞溶解又は毒性のいかなる証拠も示さず、一方ポジティブ及びネガティブコントロールは予想された通りであった。
【0328】
この調査に基づき、Dermacynはマウス繊維芽細胞に対して細胞毒性効果を生じないと結論付けた。
【0329】
実施例29
この調査は16匹のラットで行い、例示的なORP水溶液Dermacynの局所耐容性、及び全層皮膚創傷治癒のモデルにおける創傷床の組織病理へのその影響を評価した。創傷を対象ラットの両側に作った。治癒プロセスの間、皮膚切片を左側又は右側のいずれかに置いた(例、それぞれDermacyn処理及び生理食塩水処理)。
【0330】
Dermacyn及び生理食塩水処理した外科創傷部位のマッソントリクローム染色切片及びII型コラーゲン染色切片を有資格の獣医病理学者によって評価した。結合組織の増殖の現れとしての2型コラーゲンの発現量、繊維芽細胞の形態及びコラーゲンの形成、横断面における新表皮の存在、炎症及び皮膚潰瘍化の程度について、切片を判定した。
【0331】
知見は、Dermacynはラットにおいて十分に耐容されたことを示す。いずれかの側の創傷(それぞれDermacyn処理及び生理食塩水処理)からの皮膚切片において、処理に関連する組織病理学的な病変は無かった。生理食塩水処理及びDermacyn処理した創傷部位の間に、関連性のある組織病理学的な差異は無く、Dermacyn処理は十分な耐容性であることを示していた。生理食塩水処理及びDermacyn処理した創傷部位の間に、2型コラーゲン発現の有意な差異は無く、Dermacynは創傷治癒の間、繊維芽細胞又はコラーゲンの同化に副作用を及ぼさないことを示している。
【0332】
実施例30
この実施例は、肥満細胞の脱顆粒の阻害における、例示的なORP水溶液(Mycrocyn)の有効性を示している。肥満細胞は、I型過敏症疾患において主要な役割を果たすものとして認識されてきた。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、及びアトピー性喘息で観察される複数の臨床症状は、異なる罹患組織にある肥満細胞のIgE抗原刺激によって引き起こされる。アトピー性喘息の発症機序について現在認められている見解は、アレルゲンが、いわゆる反応の初期段階においてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、キニニス(kininis)、血小板活性化因子(PAF)などのメディエイターをIgE保有肺肥満細胞(MC)が放出するよう誘発することによってプロセスを開始させることである。次にこれらのメディエイターが気管支収縮を誘導し、及び血管透過性及び粘液産生を増強する。このモデルに従うと、肥満細胞の活性化後、これらの細胞は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5及びIL−6を含む様々な炎症促進性サイトカインを分泌し、それらは好酸球、好塩基球、Tリンパ球、血小板、及び単核食細胞などの他の炎症細胞の局所的な動員及び活性化に関与する。次にこれらの動員された細胞が、後に自律的になる可能性があり且つ喘息の症状を悪化させる可能性のある炎症反応の発生に寄与する。この後期段階の反応は、周囲組織の可塑的変化を誘導し得る長期の炎症プロセスの構成要素となる(図11参照)。従って、MCは抗原刺激炎症/免疫系細胞によるサイトカイン放出のモデルを提供する。
【0333】
肥満細胞の抗原刺激は、IgEの高親和性受容体(FcεRI受容体)の活性化を通じて起こるが、該受容体はIgEと結合した後、受容体結合IgEと特異的抗原との相互作用によって集合し得る多量体タンパク質である。その構造は、IgE結合α鎖、シグナル伝達能力を増幅する役目をするβ鎖、及びコードされた免疫受容体チロシンベースの(ITAM)活性化モチーフを通じた主要なシグナル伝達因子であるジスルフィド結合した2つのγ鎖、という4つのポリペプチドを含む。この受容体の架橋によって活性化されるシグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウス及びラットの腹膜肥満細胞、並びにMC−9などの他の肥満細胞株を使用して特徴付けられてきた。これら全てにおいて、IgEに結合した抗原の存在が、肥満細胞の脱顆粒、カルシウム動員、細胞骨格再構成、及びサイトカイン産生を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Etsなど)の活性化を引き起こす。
【0334】
成熟したマウスのBMMCにモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を取り除き、細胞を生理的緩衝液(Tyrode’s Buffer/BSA)中に再懸濁した。その後細胞を異なる濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間37℃で処理した。緩衝液を取り除き、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃での30分間の培養中に様々な濃度の抗原(ジニトロフェノールに結合したヒトアルブミン)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清及びペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼ活性の測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する(hydrolize)能力に基づく比色分析反応を使用した。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図12)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が増加するにつれて有意に減少することを示している。
【0335】
驚くべきことに、肥満細胞の脱顆粒に対するORP水溶液(Microcyn)の阻害効果は、臨床的に有効な“肥満細胞安定剤”及び確立されている抗アレルギー性化合物クロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))で観察されたものと少なくとも類似である(図13)。脱顆粒を、刺激された細胞のペレット及び上清におけるβ−ヘキソサミニダーゼの酵素活性によって再度測定したが、それにはこの酵素が異なった糖質を加水分解(hydrolize)する能力に基づく比色分析反応を使用した。抗DNPモノクローナルIgEをロードした細胞を、15分間の前培養有り又は無しで、クロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))を用いて刺激した。クロモグリク酸塩は、脱顆粒の低減においてORP水溶液よりも有効でなかった(図12と図13とを比較されたい;これらは共に少なくとも約50%の脱顆粒の低減を達成している)。
【0336】
実施例31
この実施例は、例示的なORP水溶液の、カルシウムイオノフォアによる肥満細胞活性化に対する阻害活性を示している。
【0337】
肥満細胞は、カルシウムイオノフォアによって引き起こされるカルシウム流動の活性化を通じて刺激され得る。カルシウムイオノフォアによって活性化されるシグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウス及びラットの腹膜肥満細胞、並びにMC−9などの他の肥満細胞株を使用して特徴付けられてきた。これらの系の全てにおいて、カルシウム動員は、肥満細胞の脱顆粒(例、ヒスタミン放出)、細胞骨格再構成、及びサイトカインの産生及び分泌を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(例、NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Ets)の活性化を引き起こす。
【0338】
成熟したマウスの骨髄由来肥満細胞(BMMC)にモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を取り除き、細胞を生理的緩衝液(Tyrode’s Buffer/BSA)中に再懸濁した。その後細胞を異なる濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間37℃で処理した。緩衝液を取り除き、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃での30分間の培養中にカルシウムイオノフォア(100mM A23187)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清及びペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼ活性の測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する能力に基づく比色分析反応を使用した。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図14)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が増加するにつれて有意に減少することを示している。
【0339】
これらの結果は、ORP水溶液がヒスタミン放出の非特異的な阻害剤であることを示している。従って、ORP水溶液は(様々な濃度であっても)、刺激(例、抗原又はイオノフォア)とは独立に、肥満細胞の脱顆粒を阻害する。いずれの理論によっても縛られることを望まないが、ORP水溶液は恐らく、原形質膜及び/又は細胞骨格のレベルで分泌経路系を変更する。ORP水溶液の作用機序は非特異的であると考えられているため、ORP水溶液は、広範な臨床応用の可能性を持ちうると考えられる。
【0340】
実施例32
この実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のサイトカイン遺伝子の転写の活性化に対する影響を示している。
【0341】
図15A及び15Bは、実施例30で記載したようにして15分間様々な濃度のORP水溶液で処理し、抗原によって更に刺激した肥満細胞からのRNAse保護アッセイである。刺激後、mRNAをアフィニティークロマトグラフィーカラム(RNAeasy kit,Qiagene)を使用して抽出し、RNAse保護アッセイを標準的なキット条件(Clontech,Becton & Dickinson)を使用して行い、抗原チャレンジ後の異なるサイトカインのmRNA産生を検出した。サイトカインには、TNF−α、LIF、IL13、M−CSF、IL6、MIF、及びL32が含まれていた。
【0342】
図15A及び15Bは、ORP溶液水(Microcyn)が、実験に用いたORP水溶液又は抗原の濃度に関わらず、肥満細胞における抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを変更しなかったことを示している。
【0343】
この研究において、炎症促進性遺伝子の転写物レベル(即ち、刺激された肥満細胞のRNA含有量)は、ORP水溶液処理した肥満細胞において、様々な濃度の抗原での刺激後に変化しなかった。従って、ORP水溶液は、これらのサイトカインの分泌経路を、それらの転写に影響を与えることなく阻害した。
【0344】
実施例33
この実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のTNF−α分泌に対する阻害活性を示している。
【0345】
実施例30で記載したように、肥満細胞を様々な濃度のORP水溶液で15分間処理し、更に抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、TNF−αレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な時間(2〜8時間)で回収した。サンプルを凍結し更に市販のELISAキット(Biosource)を用い製造者の指示に従って分析した。
【0346】
図16は、ORP水溶液処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたTNF−αのレベルが、非処理細胞と比較して顕著に減少することを示している。
【0347】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のTNF−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手順後様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0348】
実施例34
この実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のMIP 1−α分泌に対する阻害活性を示している。
【0349】
実施例30で記載したように、肥満細胞を様々な濃度の例示的なORP水溶液(Microcyn)で15分間処理し、更に抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、MIP 1−αのレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な時間(2〜8時間)で回収した。サンプルを凍結し更に市販のELISAキット(Biosource)を用い製造者の指示に従って分析した。
【0350】
図17は、ORP水溶液処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたMIP 1−αのレベルが、非処理細胞と比較して顕著に減少したことを示している。
【0351】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のMIP 1−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手順後の様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0352】
実施例30〜33及びこの実施例は、ORP水溶液がIgE受容体架橋によって開始される初期段階及び後期段階のアレルギー反応を阻害することが可能であることを更に示している。
【0353】
実施例35
この実施例は、例示的なORP水溶液Microcynの、第一度、第二度、及び第三度の小児熱傷における抗菌活性、入院の短縮、及び美容結果の向上を示している。
【0354】
この研究は、ORP水溶液での臨床結果、並びに動物モデルにおける熱傷中のPseudomonasを除去するためのORP水溶液の安全性及び効果の知見に基づいて設計した。
【0355】
このパイロット試験の主要なエンドポイントは、感染症の局部的な制御であった。
【0356】
皮膚への表層−部分層、深部−部分層、及び全層熱傷と診断され2004年3月から2005年3月までにメキシコのグアダラハラ市民病院に入院した64人の継続的な患者を研究群(即ち、ORP水溶液)(男性35人、女性29人)に入れた。その施設において2003年内に同様の熱傷を示した対となる症例の過去に遡った分析をコントロール群とした(男性40人、女性24人)。コントロール群は、銀溶液/軟膏で治療されていた。2つの群の年齢分布は同様であった(図18)。熱傷の原因もまた、2つの群で同様であり、火、沸騰水、及び電気を含んでいた。熱傷の程度を表23に示す。
【0357】
【表23】
【0358】
登録時、研究群の全ての患者は、Jetoxシステムを使用した外科的な清拭及びORP水溶液の高圧洗浄を受けた。多量の分泌を伴う第三度の全層熱傷のみ、ORP水溶液に浸したガーゼで覆った。しかしながら、ほとんどの患者はオープンな様式で治療した。そうすることで、大部分の子供は毎日入浴することができ、損傷上部にゲル又はドレッシングを使用することなく1日に3度ORP水溶液を(スプレー形態で)受けることができた。定性的細菌学のために、登録時及び1週間の治療後に組織生検を創傷床から得た。全層熱傷において、必要であれば植皮を使用した。コントロール群の患者を同様にして治療したが、ORP水溶液の代わりに銀溶液を使用した。病院のプロトコールの一部として、Staph aureus陽性培養の場合又は患者が別施設から移されてきた場合は、患者に抗生物質をそのまま続けた。
【0359】
この試験において、コントロール群での46人に対して、わずか6人のORP水溶液群の患者が抗生物質を受けた(表24)。これにも関わらず、陽性培養は、治療後、それぞれ6人及び22人の患者から得られた(表25参照)。しかしながら、ORP水溶液群の患者は一人も、入院中にも退院後にも、明らかな感染の徴候を示さなかった。
【0360】
【表24】
【0361】
【表25】
【0362】
ORP水溶液治療した子供はまた、より少ない痛みを訴えたようであった。
【0363】
入院は、ORP水溶液群において、コントロール群に対してほぼ50%短縮された(それぞれ14.8日対28.6日)。第一度、第二度、及び第三度熱傷を別々に分析した場合でも、入院は、コントロールの患者に対してORP水溶液治療患者で短縮された(表26)。
【0364】
【表26】
【0365】
しかしながら、熱傷の大きさに基づいた結果の分析では、どちらの療法が優れているかを示すことができなかった(図19)。
【0366】
この施設での1日の入院コストは、患者1人あたり約1,800ドルであったため、ORP水溶液は、入院するのに患者1人あたり平均24,660ドル節約した。従来の標準的な熱傷治療を使用するよりも、ORP水溶液治療患者において、直径10cmまでの第三度熱傷が植皮の必要なく完全に治癒し、より良い美容結果且つより少ないキレート化であったことも示唆された。
【0367】
従って、例示的なORP水溶液は、全層の熱傷を持つ患者の微生物負荷及び入院の長さを低減させる。痛みの減少及び瘢痕化の改善(improve scarring)などの他の利点がこの研究によって示唆された。
【0368】
出版物、特許出願、及び特許を含む本明細書で挙げた全ての文献は、各文献が個別且つ具体的に参照によって組み込まれると表示され、その全体が本明細書に示されたのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0369】
本発明を説明する文脈(特に添付の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がないか又は明らかに文脈に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」は、別段の記載が無ければ、オープンエンドの用語(即ち、「含むが、それに限定されない」ということを意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値を個別に言及する簡易な方法としての役目を持つことを単に意図しており、各個別の値は、それが個別に本明細書に引用されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書で記載した全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、或いは明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書で与えた、任意及び全ての例、又は例示的な言葉使い(例、「のような(such as)」の使用は、本発明をより良く明らかにすることを単に意図しており、別段の請求が無ければ、本発明の範囲を制限しない。本明細書中の言葉使いは、あらゆる非請求の要素が本発明の実施に不可欠であることを指示していると解釈されてはならない。
【0370】
本発明の好ましい実施態様を、発明者らが知っている本発明を実施するための最良の形態を含めて本明細書で記載している。これらの好ましい実施態様の変形は、上述の記載を読めば当業者には明らかとなり得る。発明者らは、当業者がそのような変形を好適に採用することを予期しており、また、発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載したのとは別の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙した対象の、適用法によって認められるあらゆる修正及び同等物を含む。更に、上述の要素のあらゆる可能な変形でのあらゆる組み合わせが、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0371】
【図1】本発明に従って使用する酸化還元電位水溶液を製造するための3室の電解セルの概略図である。
【図2】3室の電解セルを示しており、本発明に従って使用する酸化還元電位水溶液を製造するための例示的な製造プロセスで生成されたイオン種を表している。
【図3】本発明に従って投与される例示的な酸化還元電位水を製造するプロセスの模式的フローダイアグラムである。
【図4】コントロール及びORP水溶液治療(Dermacyn)患者が歩くことが出来るメートル数の図式的な比較を表している。
【図5】コントロール及びORP水溶液治療(M60)患者における潰瘍が治癒するのに必要な月数の図式的な比較を表している(>=12m,12ヶ月以上;10−11m,10〜11ヶ月;7−9m,7〜9ヶ月;4−6m、4〜6ヶ月;<=3m、3ヶ月以下)(群内の全ての潰瘍のパーセンテージ)。
【図6】記載した課題を実行する能力に基づいた、ORP水溶液(Derma)治療の前後の患者の機能状態の図式的な比較を表している。
【図7】ORP水溶液(M60)治療の前後の患者によって報告された潰瘍に関連する痛みの図式的な比較を表している。
【図8A】過酸化水素(HP)に対する、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス、及び壊死の図式的な比較を表している。
【図8B】過酸化水素(HP)に対する、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス、及び壊死の図式的な比較を表している。
【図8C】過酸化水素(HP)に対する、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス、及び壊死の図式的な比較を表している。
【図9】500μM過酸化水素(HP)に対する、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したHDFにおける8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)付加物のレベルの図式的な比較を表している。
【図10A】過酸化水素(HP)に対する、低濃度の例示的なORP水溶液(MCN)への慢性曝露後のHDF中のβ−ガラクトシダーゼと関連する老化の発現を示している。
【図10B】過酸化水素(HP)に対する、低濃度の例示的なORP水溶液(MCN)への慢性曝露後のHDF中のβ−ガラクトシダーゼと関連する老化の発現を示している。
【図11】肥満細胞活性化と関連する生物学的事象を表している。
【図12】様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図13】クロモグリク酸塩で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への、例示的なORP水溶液(MCN)の影響を比較して示している。
【図14】様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化及びカルシウムイオノフォア(A23187)活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図15A】ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAse保護アッセイである。
【図15B】ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAse保護アッセイである。
【図16】様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるTNF−α分泌の図式的な比較である。
【図17】様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるMIP1−α分泌の図式的な比較である。
【図18】例示的なORP水溶液(研究群)又は標準的治療法(コントロール群)で治療した小児熱傷患者における年齢分布のグラフ表示である。
【図19】例示的なORP水溶液(研究群)又は標準的治療法(コントロール群)で治療した患者の入院日数を、熱傷を負った体表面積のパーセンテージで分類した図式的な比較である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが約6.4から約7.8までであり且つ少なくとも約1週間安定である酸化還元電位(ORP)水溶液を、皮膚潰瘍を治療するのに有効な量で患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍を治療する方法。
【請求項2】
溶液が少なくとも約2ヶ月間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶液が少なくとも約1年間安定である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
pHが約7.4から約7.6である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
溶液がアノード水及びカソード水を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
カソード水が溶液の約10体積%から約50体積%の量で存在する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
カソード水が溶液の約20体積%から約40体積%の量で存在する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
アノード水が溶液の約50体積%から約90体積%の量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
溶液が少なくとも1種の遊離塩素種を含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
遊離塩素種が次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
遊離塩素種の量が約10ppmから約400ppmである、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
遊離塩素種が約15ppmから約35ppmの量で存在する次亜塩素酸である、請求項9〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
遊離塩素種が約25ppmから約50ppmの量で存在する次亜塩素酸ナトリウムである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
溶液が約15ppmから約35ppmの量の次亜塩素酸及び約25ppmから約50ppmの量の次亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
溶液で皮膚潰瘍を洗うこと又は洗浄することによって溶液が患者に投与される、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
溶液に皮膚潰瘍を浸すことによって溶液が患者に投与される、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
皮膚潰瘍が少なくとも約1分間溶液に浸される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
皮膚潰瘍が少なくとも約2分間溶液に浸される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
溶液で飽和した創傷ドレッシングで皮膚潰瘍をドレッシングすることにより溶液が患者に投与される、請求項15〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
創傷ドレッシングが毎日交換される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
(1)酸化還元電位(ORP)水溶液で潰瘍を洗うこと又は洗浄すること;(2)ORP水溶液に潰瘍を浸すこと;(3)ORP水溶液で飽和した創傷ドレッシングで潰瘍をドレッシングすること、及び(4)任意で工程(1)〜(3)を繰り返すことを含む、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
皮膚潰瘍が清拭される、請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
皮膚潰瘍が糖尿病患者の足潰瘍である、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
(1)潰瘍を清拭すること;(2)ORP水溶液で潰瘍を洗うこと又は洗浄すること;(3)少なくとも2分間潰瘍を溶液に浸すこと;(4)少なくとも約2分間潰瘍を乾かすこと;(5)該溶液で飽和した創傷ドレッシングで潰瘍をドレッシングすること;及び(6)任意で工程(1)〜(5)を繰り返すことを含み、ここで皮膚潰瘍は糖尿病患者の感染したグレード2又はグレード3の足潰瘍であって、該潰瘍が少なくとも約2.0cm2の表面積を持つ、請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1度工程(1)〜(5)を繰り返すことを更に含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
潰瘍が実質的に治癒するまで工程(1)〜(5)が繰り返される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
皮膚潰瘍が上肢にある、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
皮膚潰瘍が手又は指にある、請求項27記載の方法。
【請求項29】
潰瘍が下肢にある、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
潰瘍が足にある、請求項29記載の方法。
【請求項31】
皮膚潰瘍が、動脈不全症、静脈不全症、リンパ管不全症、圧迫、神経障害、外傷、又はそれらの組み合わせを原因とする、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
皮膚潰瘍が、代謝疾患、炎症性疾患、感染症、腫瘍性疾患、変性疾患、又は遺伝病、或いはそれらの組み合わせを原因とする、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
潰瘍が糖尿病を原因とする、請求項31又は32記載の方法。
【請求項34】
潰瘍がアテローム性動脈硬化症を原因とする、請求項31又は32記載の方法。
【請求項35】
圧迫が患者の不動、麻痺、又は肥満の結果である、請求項31又は32記載の方法。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の微生物負荷を低減させる方法。
【請求項37】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の再発率を減少させる方法。
【請求項38】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の裂開の可能性を減少させる方法。
【請求項39】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍に起因する切断の可能性を減少させる方法。
【請求項40】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍に起因する全身性炎症反応症候群の可能性を減少させる方法。
【請求項41】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍に起因する敗血症の可能性を減少させる方法。
【請求項1】
pHが約6.4から約7.8までであり且つ少なくとも約1週間安定である酸化還元電位(ORP)水溶液を、皮膚潰瘍を治療するのに有効な量で患者に投与することを含む、患者の皮膚潰瘍を治療する方法。
【請求項2】
溶液が少なくとも約2ヶ月間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶液が少なくとも約1年間安定である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
pHが約7.4から約7.6である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
溶液がアノード水及びカソード水を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
カソード水が溶液の約10体積%から約50体積%の量で存在する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
カソード水が溶液の約20体積%から約40体積%の量で存在する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
アノード水が溶液の約50体積%から約90体積%の量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
溶液が少なくとも1種の遊離塩素種を含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
遊離塩素種が次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
遊離塩素種の量が約10ppmから約400ppmである、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
遊離塩素種が約15ppmから約35ppmの量で存在する次亜塩素酸である、請求項9〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
遊離塩素種が約25ppmから約50ppmの量で存在する次亜塩素酸ナトリウムである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
溶液が約15ppmから約35ppmの量の次亜塩素酸及び約25ppmから約50ppmの量の次亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
溶液で皮膚潰瘍を洗うこと又は洗浄することによって溶液が患者に投与される、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
溶液に皮膚潰瘍を浸すことによって溶液が患者に投与される、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
皮膚潰瘍が少なくとも約1分間溶液に浸される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
皮膚潰瘍が少なくとも約2分間溶液に浸される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
溶液で飽和した創傷ドレッシングで皮膚潰瘍をドレッシングすることにより溶液が患者に投与される、請求項15〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
創傷ドレッシングが毎日交換される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
(1)酸化還元電位(ORP)水溶液で潰瘍を洗うこと又は洗浄すること;(2)ORP水溶液に潰瘍を浸すこと;(3)ORP水溶液で飽和した創傷ドレッシングで潰瘍をドレッシングすること、及び(4)任意で工程(1)〜(3)を繰り返すことを含む、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
皮膚潰瘍が清拭される、請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
皮膚潰瘍が糖尿病患者の足潰瘍である、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
(1)潰瘍を清拭すること;(2)ORP水溶液で潰瘍を洗うこと又は洗浄すること;(3)少なくとも2分間潰瘍を溶液に浸すこと;(4)少なくとも約2分間潰瘍を乾かすこと;(5)該溶液で飽和した創傷ドレッシングで潰瘍をドレッシングすること;及び(6)任意で工程(1)〜(5)を繰り返すことを含み、ここで皮膚潰瘍は糖尿病患者の感染したグレード2又はグレード3の足潰瘍であって、該潰瘍が少なくとも約2.0cm2の表面積を持つ、請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1度工程(1)〜(5)を繰り返すことを更に含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
潰瘍が実質的に治癒するまで工程(1)〜(5)が繰り返される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
皮膚潰瘍が上肢にある、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
皮膚潰瘍が手又は指にある、請求項27記載の方法。
【請求項29】
潰瘍が下肢にある、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
潰瘍が足にある、請求項29記載の方法。
【請求項31】
皮膚潰瘍が、動脈不全症、静脈不全症、リンパ管不全症、圧迫、神経障害、外傷、又はそれらの組み合わせを原因とする、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
皮膚潰瘍が、代謝疾患、炎症性疾患、感染症、腫瘍性疾患、変性疾患、又は遺伝病、或いはそれらの組み合わせを原因とする、請求項1〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
潰瘍が糖尿病を原因とする、請求項31又は32記載の方法。
【請求項34】
潰瘍がアテローム性動脈硬化症を原因とする、請求項31又は32記載の方法。
【請求項35】
圧迫が患者の不動、麻痺、又は肥満の結果である、請求項31又は32記載の方法。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の微生物負荷を低減させる方法。
【請求項37】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の再発率を減少させる方法。
【請求項38】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍の裂開の可能性を減少させる方法。
【請求項39】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍に起因する切断の可能性を減少させる方法。
【請求項40】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍に起因する全身性炎症反応症候群の可能性を減少させる方法。
【請求項41】
請求項1〜35のいずれか1項記載の方法に従って皮膚潰瘍を治療することを含む、患者の皮膚潰瘍に起因する敗血症の可能性を減少させる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図10A】
【図11】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図10A】
【図11】
【図15A】
【図15B】
【公表番号】特表2008−534517(P2008−534517A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503291(P2008−503291)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/011252
【国際公開番号】WO2006/102681
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(505234465)オキュラス イノヴェイティヴ サイエンシズ、インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/011252
【国際公開番号】WO2006/102681
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(505234465)オキュラス イノヴェイティヴ サイエンシズ、インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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