説明

酸化還元電位測定装置

【課題】
【解決手段】酸化還元電位測定電極1と、比較電極2と、温度検出手段3と、を有する酸化還元電位測定装置100において、比較電極2の単極電位と温度との関係を示すテーブルデータを記憶する単極電位情報記憶手段12と;テーブルデータに基づいて温度検出手段3からの出力信号に対応する比較電極2の単極電位を求め、酸化還元電位測定電極1及び比較電極2からの出力信号に基づいて両電極間の電位差を求め、これら電位差と単極電位とから酸化還元電位Eh値を計算する信号処理手段10と;信号処理手段10により計算された酸化還元電位Eh値を示す情報を出力する手段14と;を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検液の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定装置に関するものであり、より詳細には、被検液の温度に応じて被検液の酸化還元電位Eh値を容易に求めることのできる酸化還元電位測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化還元電位測定装置は、ある物質が他の物質を酸化、或いは還元する力の度合いを測定するのに用いられている。酸化還元可逆平衡状態にある水溶液に水素電極と白金電極を挿入すると、1つの可逆電池が構成され、その溶液の酸化還元平衡状態に応じて一定の電位差が検出される。この電位差のことを酸化還元電位(Oxidation-Reduction Potential)と呼び、英語の頭文字をとってORPと表現している。酸化還元電位は、下記式(ネルンストの式)で表すことができる。
Eh=E+(RT/nF)×ln([Ox]/[Red])
(但し、[Ox]:酸化物の活量、[Red]:還元物の活量、E:[Ox]=[Red]のときの酸化還元電位(標準電位差)、F:ファラデー定数、n:1分子あたり授受される電子の数、R:気体定数、T:水溶液の温度(絶対温度))
【0003】
前記式のEは、[Ox]=[Red]のときの酸化還元電位であり、それぞれの酸化還元系において固有の値を有している。ところで、標準水素電極であるNHE(Normal Hydrogen Electrode)は、水素イオンの活量が1であるような溶液、例えば1.18mol塩酸溶液中に白金黒をつけた白金電極を浸し、1気圧の水素ガスを通じて得られる。標準水素電極の電位はすべての温度において0mVであると約束され、国際的な基準電極として受け入れられている。酸化還元電位Ehは、前記NHEを基準にしたときの電位として表される。しかしながら、水素電極は構成が複雑で実用的でないため、酸化還元電位の測定は、通常、白金電極等の酸化還元電位測定電極(測定電極)と比較電極を被検液の中に入れ、その時の指示値を読み取ることにより行われる。この場合に使用される比較電極は前記標準水素電極とは異なり、銀/塩化銀電極やカロメル電極(甘コウ電極)が用いられるので、得られた前記指示値は正しい酸化還元電位Eh値ではない。酸化還元電位Eh値を得るためには、標準水素電極と比較電極との電位差の値(以下、比較電極の「単極電位」という。)を測定値に加える必要がある。
【0004】
そのため、従来、測定者が、測定電極と比較電極との間の電位差の測定値から、温度と比較電極の単極電位との関係を示す表を利用して計算することで、被検液の酸化還元電位Eh値を求めている。
【0005】
或いは、指示値をシフトさせる機能を有する装置では、被検液の温度を測定して、その温度における比較電極の単極電位を上記の表を利用して求め、その単極電位分だけ測定値をシフトさせて指示させることで、被検液の酸化還元電位Eh値を指示させることができる。しかし、この方法では、温度が変われば、測定値をシフトさせる値を設定し直す必要がある。
【0006】
このように、従来、被検液の酸化還元電位Eh値を測定するには、測定者の手計算、又は温度が変わる毎のシフト値の設定が必要であり、作業が煩わしく、間違いが生じる可能性もある。
【0007】
ここで、特許文献1は、酸化還元電位測定電極の良否判断のためにメモリを使用する酸化還元電極良否判定装置を開示する。即ち、特許文献1の発明では、温度変化に対する酸化還元電位の変化特性が明らかなチェック液の、温度変化に対する酸化還元電位の変化特性データテーブルを予め記憶したメモリを用意する。そして、酸化還元電位測定電極の良否判断の際に、そのメモリ内の情報を用いて、酸化還元電位測定電極が浸漬されたチェック液の温度に応じた電位の許容範囲を計算し、測定電位がその許容範囲内か否かを判断する。特許文献1においては、酸化還元電位Eh値を指示することについては言及されておらず、又酸化還元電位Eh値を指示しようとする場合の上述のような問題についも何ら言及されていない。
【特許文献1】特開平3−261854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、簡便に被検液の酸化還元電位Eh値を求めることのできる酸化還元電位測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る酸化還元電位測定装置にて達成される。要約すれば、本発明は、酸化還元電位測定電極と、比較電極と、温度検出手段と、を有する酸化還元電位測定装置において、前記比較電極の単極電位と温度との関係を示すテーブルデータを記憶する単極電位情報記憶手段と;前記テーブルデータに基づいて前記温度検出手段からの出力信号に対応する前記比較電極の単極電位を求め、前記酸化還元電位測定電極及び前記比較電極からの出力信号に基づいて両電極間の電位差を求め、前記電位差と前記単極電位とから酸化還元電位Eh値を計算する信号処理手段と;前記信号処理手段により計算された酸化還元電位Eh値を示す情報を出力する手段と;を有することを特徴とする酸化還元電位測定装置である。
【0010】
本発明の一実施態様によると、酸化還元電位測定装置は更に、前記電位差を示す情報を出力する手段を有する。
【0011】
本発明の一実施態様によると、酸化還元電位測定装置は更に、前記電位差に所定値を加算又は減算してシフトさせる手段と、前記電位差が前記所定値だけシフトされた値を示す情報を出力する手段と、を有する。
【0012】
本発明の一実施態様によると、前記情報を出力する手段は、情報を表示する表示手段、情報を記録媒体に印字する印字手段、情報を当該酸化還元電位測定装置に通信可能に接続された機器に送信する送信手段、又は情報を記憶媒体に記憶させる書き込み手段であってよい。
【0013】
本発明の一実施態様によると、前記単極電位情報記憶手段は、種類の異なる複数の比較電極に対応して、複数の前記テーブルデータを記憶する。そして、酸化還元電位測定装置は更に、比較電極の種類を示す情報を前記信号処理手段に伝達する伝達手段を有していてよい。前記伝達手段は、比較電極の種類を示す情報を操作者の操作により入力する入力手段、又は前記比較電極と共に前記信号処理手段に対して着脱可能な、比較電極の種類を示す情報が付帯された識別手段であってよい。好ましい一実施態様では、前記識別手段は、前記比較電極と共に前記信号処理手段に対して着脱可能な記憶媒体である。ここで、前記種類の異なる複数の比較電極は、内部電極及び/又は電極内部液が互いに異なるものであってよい。
【0014】
即ち、測定電極と比較電極との間の電位差の測定値から酸化還元電位Eh値を計算するには、比較電極の単極電位をその測定値に加える必要があるが、その比較電極の電位は温度との関係から導きだされる。従って、比較電極の単極電位と温度との関係を示すテーブルを用意し、測定時の被検液の温度から、その温度の時の比較電極の単極電位を求め、求められた単極電位を測定値に加えるように演算処理し、被検液の酸化還元電位Eh値として直接表示できるようにする。尚、酸化還元電位Eh値を表示するモードに加えて、測定電極と比較電極との間の電位差の値をそのまま表示するモード、その電位差をシフトさせた値を表示させるモードのうち少なくとも1つを設け、所望に応じて選択できるようにすることができる。測定者は目的に合わせてこれらのモードを使い分けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測定者による手計算やシフト値の設定をすることなく、直接酸化還元電位Eh値を表示させることができる。従って、本発明によれば、簡便に被検液の酸化還元電位Eh値を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る酸化還元電位測定装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】
実施例1
図1は、本発明に係る酸化還元電位測定装置の一実施例を示す概略ブロック図である。本実施例では、酸化還元電位測定装置100は、酸化還元電位測定電極(測定電極)1、比較電極2、及び被検液の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ3が一体的に形成された酸化還元測定用複合電極(以下「ORP複合電極」という。)Aと、本体Bとを有し、こらが接続されて使用される。本実施例では、測定電極1は白金電極である。又、本実施例では、比較電極2は、内部電極として塩化銀電極を使用し、内部液として3.3mol/lの塩化カリウム(KCl)を使用する、3.3mol/L塩化銀電極である。温度センサ3は測温抵抗体を備える。
【0018】
本体Bは、概して、ORP複合電極Aを接続するための本体側コネクタ5、ORP複合電極Aからの出力信号を増幅し、A/D変換するための増幅回路6、温度検出回路7、切換器8及びA/D変換器9、ORP複合電極Aからの出力信号を処理する信号処理手段としてのCPU回路10、測定結果を表示するための表示器14、測定の開始又は終了指示や各種設定をCPU回路10に入力するための操作部15、ACアダプタ4のコードL2が接続される電源ジャック16、及び装置の作動電力を供給する電源回路17等を有する。
【0019】
ORP複合電極Aが備える測定電極1、比較電極2及び温度センサ3は、リードL1、及び電極側コネクタ(図示せず)を介して、本体Bの本体側コネクタ5に接続される。測定を行う際には、ORP複合電極A(即ち、測定電極1、比較電極2及び温度センサ3)が、容器内に収容された被検液S中に浸漬される。測定電極1及び比較電極2からの出力信号は、増幅回路6によって適当に増幅される。又、温度センサ3からの出力信号は、温度検出回路7によって適当に増幅される。増幅回路6及び温度回路7によって増幅されたアナログ信号は、切換器8を介して選択的にA/D変換器9に入力され、ディジタル信号に変換された後に、それぞれCPU回路10に入力される。CPU回路10の演算部11は、入力された信号から、測定電極1と比較電極2との間の電位差に対応する測定データ(電位差データ)、及び被検液Sの温度に対応する測定データ(温度データ)を得るために必要な計算処理を行う。得られた電位差データ、温度データは、CPU回路10に設けられた測定データ記憶部13に一時的に記憶される。測定データ記憶部13はRAMで構成される。
【0020】
一方、CPU回路10に設けられた比較電極の単極電位の温度依存性に係る情報を記憶する単極電位情報記憶手段としてのテーブルデータ記憶部12には、比較電極2としての3.3mol/L塩化銀電極の単極電位と温度との関係を示す、下記表1のようなテーブルデータ(温度−電位テーブル)が予め記憶されている。テーブルデータ記憶部12はROMで構成される。尚、この3.3mol/L塩化銀電極の単極電位は、それと標準水素電極との電位差の値に一致する。
【0021】
【表1】

【0022】
そして、CPU回路10は、測定データ記憶部13に一時的に記憶されている、電位差データと、その電位差データが得られた時の温度データとを演算部11に読み込むと共に、その温度データに対応する比較電極2の単極電位データをテーブルデータ記憶部12から選択して演算部11に読み込む。そして、演算部11において、電位差データに単極電位データを加える演算処理を行い、酸化還元電位Eh値を計算する。CPU回路10は、算出された酸化還元電位Eh値を示す情報を表示器14に出力し、表示器14において酸化還元電位Eh値を表示させる。本実施例では、表示器14が、計算された酸化還元電位Eh値を示す情報を出力する手段として機能する。
【0023】
尚、本実施例では、測定値の表示方法として、上述の酸化還元電位Eh値を表示するモードに加えて、測定電極1と比較電極2との間の電位差に対応する電圧値(mV)をそのまま表示するモード、更には測定電極1と比較電極2との間の電位差に対応する電圧値を所望量だけシフトさせた値(mV)を表示させるモードを選択できるようになっている。操作部15には、測定結果の表示方法を指定するモード選択キーが設けられており、測定者が操作部15から入力することで、測定値の表示方法を選択する情報が操作部15からCPU回路10に入力される。又、操作部15には、測定電極1と比較電極2との間の電位差の測定値をシフトさせる値を入力するシフト値入力キーが設けられており、電位差の測定値をシフトさせて表示するモードを選択する場合は、測定者は操作部15においてシフト値も入力する。これにより、シフト値を示す情報が操作部15からCPU回路10に入力される。CPU10は、操作部15から入力された測定値の表示方法を指定する情報に応じて、上述のいずれかの表示方法で測定結果を表示器14に表示させる。即ち、本実施例では、表示器14は、測定電極1と比較電極2との間の電位差を示す情報を出力する手段、又は該電位差が前記所定値だけシフトされた値を示す情報を出力する手段としても機能する。又、CPU回路10は、測定電極1と比較電極2との間の電位差に所定値を加算又は減算してシフトさせる手段としての機能も有する。尚、被検液Sの温度情報、比較電極2の単極電位等の必要な情報をも同時に表示するようにしてもよい。
【0024】
図2は、上述の酸化還元電位測定装置100におけるCPU回路10の処理手順の概略を示すフローチャートである。酸化還元電位測定装置100の電源が投入されると(S101)、装置の初期化処理を行う(S102)。次いで、測定電極1と比較電極2との間の電位差、被検液Sの温度をそれぞれ測定し、測定データをそれぞれ測定データ記憶部13に記憶させる(S103、S104)。次いで、別途操作部15からCPU回路10に入力されている測定値の表示方法を指定する情報を確認する(S105)。
【0025】
S105において、測定値の表示方法として酸化還元電位Eh値を表示するモードが選択されていると判断した場合は、測定データ記憶部13から電位差データと温度データを演算部11に読み込むと共に、テーブルデータ記憶部12から温度データに対応する単極電位データを選択して演算部11に読み込み、演算部11において電位差データに単極電位データを加算して、酸化還元電位Eh値を計算する(S106)。次いで、算出された酸化還元電位Eh値を示す情報、更には被検液の温度を示す情報を表示器14に出力して、表示器14においてその酸化還元電位Eh値、更には温度を表示させる(S107)。
【0026】
又、S105において、測定値の表示方法として測定電極1と比較電極2との間の電位差をそのまま表示するモードが選択されていると判断した場合は、測定データ記憶部13から電位差データと温度データを読み込み、電位差を示す情報、更には温度を示す情報を表示器14に出力して、表示器14において電位差(mV)、更には温度を表示させる(S107)。
【0027】
更に、S105において、測定値の表示方法として電位差を所望量シフトさせて表示するモードが選択されていると判断した場合は、測定データ記憶部13から電位差データと温度データを演算部11に読み込むと共に、別途操作部15からCPU回路10に入力されて記憶されているシフト値データを演算部11に読み込み、電位差データに対しシフト値データを加算又は減算する。そして、測定電極1と比較電極2との間の電位差が所望量だけシフトされた値を示す情報、更には温度を示す情報を表示器14に出力して、表示器14においてそのシフトされた値(mV)、更には温度を表示させる(S107)。
【0028】
このように、本実施例によれば、測定者による手計算やシフト値の設定をすることなく、直接、酸化還元電位Eh値を表示させることができる。従って、本実施例によれば、簡便に被検液の酸化還元電位Eh値を出力することができる。又、酸化還元電位Eh値の他に、従来同様、測定電極と比較電極との間の電位差をそのまま又は所望量だけシフトさせて表示することも可能とすることで、測定者が目的に合わせてこれらの表示方法を使い分けることができる。
【0029】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の酸化還元電位測定装置の基本構成は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略し、本実施例にて特徴的な点を以下に説明する。
【0030】
図3及び図4は本実施例の酸化還元電位測定装置100の概略ブロック図である。本実施例では、酸化還元電位測定装置100は、複数種類の比較電極2を使用することができる。本実施例では、比較電極2として飽和甘コウ電極(内部電極が塩化第1水銀、内部液が飽和塩化カリウム)、飽和塩化銀電極(内部電極が塩化銀、内部液が飽和塩化カリウム)、3.3mol/L塩化銀電極(内部電極が塩化銀、内部液が3.3mol/Lの塩化カリウム)を使用することができる。特に、本実施例では、上記3種類の比較電極2をそれぞれ備えたORP複合電極A1、A2、A3を、本体Bに対して交換して接続し、使用することができるようになっている。
【0031】
ここで、比較電極の単極電位の温度依存性は、典型的にはその比較電極の内部液によって、理論値が決まっている。従って、本実施例では、CPU回路10のテーブルデータ記憶部12に、上記3種類の比較電極のそれぞれに対応する単極電位と温度との関係を示す、下記表2のようなテーブルデータ(温度−電位テーブル)が予め記憶されている。そして、どの種類の比較電極2を使用するのか、或いはどの種類の比較電極2が本体Bに接続されているのかを設定できるようにする。尚、この3種類の比較電極の単極電位は、これと標準水素電極との電位差の値に一致する。
【0032】
又、表2においては、便宜的に、各種類の比較電極2について温度欄は共通に示しているが、テーブルデータの記憶形態はこれに限定されるものではない。本発明において、種類の異なる複数の比較電極に対応して複数のテーブルデータを記憶するとは、比較電極の種類に対応して温度データから単極電位データを選択することのできる、任意の形態で単極電位と温度との関係を記憶させることを包含する。換言すれば、本実施例では、テーブルデータ記憶部12は、種類の異なる比較電極のそれぞれに対応して比較電極の単極電位と温度との関係を示すテーブルデータを記憶する複数の記憶領域を有する。
【0033】
【表2】

【0034】
例えば、図3に示すように、使用する比較電極2の種類を示す情報をCPU回路10に伝達する手段として、比較電極2の種類を示す情報を操作者の操作により入力する入力手段である操作部15を使用することができる。この場合、操作部15には、使用する比較電極2(即ち、本実施例では使用するORP複合電極A1、A2、A3)を指定する電極種類選択キーが設けられ、測定者が操作部15から入力することで、使用する比較電極2(即ち、本実施例では使用するORP複合電極A1、A2、A3)の種類を示す情報が操作部15からCPU回路10に入力される。
【0035】
又、本実施例のように、ORP複合電極A(即ち、比較電極2)が本体Bに対して交換して接続されるようになっている場合には、比較電極2の種類を示す情報をCPU回路10に伝達する手段として、比較電極2(即ち、本実施例ではORP複合電極A1、A2、A3)に、比較電極2と共に本体B(即ち、CPU回路10)に対して着脱可能な識別手段を設けることができる。識別手段は、本体B側で認識可能な任意の形体のものであってよい。
【0036】
例えば、図4に示すように、比較電極2の種類をCPU回路10に伝達する識別手段として、ORP複合電極A1、A2、A3に設けられた、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory:電気的消去書き込み可能な読み出し専用メモリ)等の、比較電極2と共に本体B(即ち、CPU回路10)に対して着脱可能な記憶媒体である識別情報記憶手段20を使用することができる。即ち、識別情報記憶手段20に、ORP複合電極A1、A2、A3がそれぞれ搭載した比較電極の種類を示す情報(識別情報)を記憶させる。識別情報記憶手段20は、例えば、本体B側のコネクタ5にORP複合電極AのリードL1を接続するための電極側のコネクタ(図示せず)に設けることができる。これにより、ORP複合電極A1、A2、A3を本体Bに接続した状態で、所定のタイミングでCPU回路10が識別情報記憶手段20の内容を読み込み、比較電極2の種類を認識することができる。このように、記憶媒体付きの比較電極であれば、そのID情報から、内部液として何を用いたものであるのかなど、その種類を示す情報を本体B側で自動取得することが可能である。
【0037】
尚、比較電極2の種類をCPU回路10に入力する識別手段は、上記EEPROMとされる識別情報記憶手段20に限定されるものではない。例えば、識別手段としての記憶媒体の形体としては、EEPROMの他に、フラッシュメモリー、電池バックアップ付きRAM、EPROM、ワンタイムROM、メモリ付きCPUなどが挙げられる。更に、識別手段としては、スイッチ、アナログスイッチ、抵抗器、コンデンサなどの物理量若しくは状態変更手段;電圧発生器、電流発生器、光発生器などの物理量発生手段;物理的形状変化;又はバーコードなども使用し得る。これらの識別手段も上記同様、例えば、本体B側のコネクタ5にORP複合電極AのリードL1を接続するための電極側のコネクタ(図示せず)に設けることができる。これらの識別手段には、少なくとも比較電極の種類を識別可能な情報を予め付帯させておく。
【0038】
一方、本体B側には、識別手段に付帯された情報を認識するための認識手段が設けられる。識別手段が記憶媒体であれば、その記憶内容を読み込み、認識する手段(図4に示す実施例では、本実施例ではCPU回路10がその機能を有する。)。その他、上記各種の識別手段に対応して、これを認識可能な認識手段を本体B側に設けることができる。例えば、識別手段が物理量若しくは状態変更手段である場合、認識手段はその物理量若しくは状態の変化を認識するための手段とし、識別手段が物理量発生手段であれば、認識手段はその物理量を受容し識別するための手段とし、識別手段が物理的形状変化であれば、その物理的形状変化を識別するための手段とし、更に識別手段がバーコードであれば、認識手段はバーコードを識別するための手段とすればよい。但し、コスト、或いは情報伝達の容易さ、更には付帯させることの可能な情報量などの点で、識別手段は、好ましくは、電子的なメモリとされる記憶媒体である。この記憶媒体は、装置本体側の認識手段との間で無線にて通信可能な非接触型のものであってもよい。
【0039】
そして、本実施例では、CPU回路10の演算部11は、伝達された比較電極2の種類を示す情報から、使用する或いは接続されている比較電極2(即ち、本実施例ではORP複合電極)の種類を認識する。酸化還元電位Eh値を計算するために、比較電極2の単極電位をテーブルデータ記憶部12から演算部11に読み込む際には、その比較電極2の種類に対応するテーブルデータから、温度データに対応する単極電位を選択して読み込む。その他の処理手順は実施例1と同様である。
【0040】
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上記各実施例の態様に限定されるものではないことを理解されたい。
【0041】
例えば、上記各実施例では、測定結果を示す情報を出力する手段として表示器14を使用したが、本発明はこれに限定されるものではない。測定結果を示す情報を出力する手段は、測定結果を記録紙等の記録媒体に印字する手段として、例えば本体Bに設けられるか又は本体Bに対して通信可能に接続された印字装置であってもよい。又、測定結果を示す情報を出力手段は、測定結果を示す情報を酸化還元電位測定装置100に通信可能に接続された機器(例えば、パーソナルコンピュータなど)に送信する送信手段であってもよい。更に、測定結果を示す情報を出力する手段は、本体Bに搭載された記憶媒体(例えば、ハードディスクなどの磁気的な記憶媒体、或いはRAMなどの電子的な記憶媒体)又は本体Bに着脱可能な記憶媒体(例えば、フレキシブルディスクなどの磁気的な記憶媒体、或いはフラッシュメモリーなどの電子的な記憶媒体)に測定結果を示す情報を書き込む手段であってもよい。
【0042】
又、上記各実施例では、測定電極1と比較電極2とは、ORP複合電極Aとして一体的に構成されるものとして説明したが、本発明はこの構成に何ら限定されるものではない。測定電極1と比較電極2とが別個に構成され、それぞれ本体Bに接続されていてもよい。測定電極1と比較電極2とが別個に構成される場合、実施例2にて説明した識別手段は、比較電極2に設ける。同様に、温度センサ3も、ORP複合電極Aに一体的に設けられたものに何ら限定されるものではなく、単体として、又は測定電極1若しくは比較電極2のいずれかと一体的に設けられたものであってもよい。
【0043】
又、上記各実施例では、比較電極の単極電位と温度との関係を示すテーブルデータを記憶する単極電位情報記憶手段は、本体内に設けられるものとして説明した。一般的にスペース等において余裕のある本体にこの記憶手段を設けることで、比較的大量のデータを比較的低コストにて記憶することが可能である。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、比較電極(測定電極と一体的に複合電極とされていてもよい。)が本体に対して着脱可能である場合などにおいて、該電極自体に単極電位情報記憶手段を設けてもよい。これにより、実施例2で説明したように、信号処理手段に比較電極の種類を示す情報を伝達する手段を特別に設けることなく、常に、使用する比較電極の種類等に即して温度に応じた単極電位を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る酸化還元電位測定装置の一実施例の概略ブロック図である。
【図2】本発明に従う酸化還元電位測定装置の処理手順の概略を示すフローチャート図である。
【図3】本発明に係る酸化還元電位測定装置の他の実施例の概略ブロック図である。
【図4】本発明に係る酸化還元電位測定装置の他の実施例の概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0045】
1 酸化還元電位測定電極
2 比較電極
3 温度センサ(温度検出手段)
10 CPU回路(信号処理手段)
11 演算部
12 テーブルデータ記憶部(単極電位情報記憶手段)
13 測定データ記憶部
14 表示器
15 操作部
20 識別情報記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元電位測定電極と、比較電極と、温度検出手段と、を有する酸化還元電位測定装置において、
前記比較電極の単極電位と温度との関係を示すテーブルデータを記憶する単極電位情報記憶手段と、
前記テーブルデータに基づいて前記温度検出手段からの出力信号に対応する前記比較電極の単極電位を求め、前記酸化還元電位測定電極及び前記比較電極からの出力信号に基づいて両電極間の電位差を求め、前記電位差と前記単極電位とから酸化還元電位Eh値を計算する信号処理手段と、
前記信号処理手段により計算された酸化還元電位Eh値を示す情報を出力する手段と、
を有することを特徴とする酸化還元電位測定装置。
【請求項2】
更に、前記電位差を示す情報を出力する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項3】
更に、前記電位差に所定値を加算又は減算してシフトさせる手段と、前記電位差が前記所定値だけシフトされた値を示す情報を出力する手段と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項4】
前記情報を出力する手段は、情報を表示する表示手段、情報を記録媒体に印字する印字手段、情報を当該酸化還元電位測定装置に通信可能に接続された機器に送信する送信手段、又は情報を記憶媒体に記憶させる書き込み手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項5】
前記単極電位情報記憶手段は、種類の異なる複数の比較電極に対応して、複数の前記テーブルデータを記憶することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項6】
更に、比較電極の種類を示す情報を前記信号処理手段に伝達する伝達手段を有することを特徴とする請求項5に記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項7】
前記伝達手段は、比較電極の種類を示す情報を操作者の操作により入力する入力手段、又は前記比較電極と共に前記信号処理手段に対して着脱可能な、比較電極の種類を示す情報が付帯された識別手段であることを特徴とする請求項6に記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項8】
前記識別手段は、前記比較電極と共に前記信号処理手段に対して着脱可能な記憶媒体であることを特徴とする請求項7に記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項9】
前記種類の異なる複数の比較電極は、内部電極及び/又は電極内部液が互いに異なることを特徴とする請求項5〜8のいずれかの項に記載の酸化還元電位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−33344(P2007−33344A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219731(P2005−219731)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)