説明

酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法とタール含浸設備、タール含浸酸化鉄含有固体物質の高炉への利用方法、及び、タール含有ガスの利用方法

【課題】廃プラスチックを初めとする有機系廃棄物を、鉄鉱石やペレット等の製鉄プロセスの酸化鉄原料に効率良く保持させることができる酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法及びタール含浸装置を提供する。
【解決手段】移動層型反応器に、酸化鉄含有固体物質を、上部から装入して内部に充填させて底部から排出するとともに、乾留、高温媒体との直接接触、酸素含有ガスによる部分燃焼、又は、酸素含有ガスと水蒸気による水蒸気改質の少なくともいずれかで有機系廃棄物を処理して生成したタール含有ガスを、下部から導入して内部を上昇させて上部から排気することで、前記移動層型反応器内で、前記タール含有ガスと前記酸化鉄含有固体物質とを対向流で接触させて、前記酸化鉄含有固体物質に、前記タール含有ガス中のタールを含浸させ、前記底部から排出される前記タール分が含浸した酸化鉄含有固体物質を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃プラスチックを初めとする有機系廃棄物を、鉄鉱石やペレット等の製鉄プロセスの酸化鉄原料の還元剤や燃料として有効利用するとともに、含水酸化鉄含有鉄鉱石の改質処理を行うことを目的とする酸化鉄含有固体物質の前処理方法、及び、前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックを初めとする有機系廃棄物の処理方法は、従来、単純焼却や埋立てが中心であったが、循環型社会促進が近年の大きな社会的課題となっていることから、有機系廃棄物を資源として有効利用することが強く求められている。
【0003】
そこで、廃プラスチックを資源として有効利用可能な技術として、例えば、特許文献1及び2に記載されているように、廃プラスチックを造粒や成型した後、高炉の羽口から造粒プラスチックを吹き込んで、高炉の還元剤や燃料として有効利用したり、コークス炉内に石炭とともに成型プラスチックを装入して乾留し、廃プラスチックを、コークスやタール、コークス炉ガス(COG)にケミカルリサイクルする方法など、製鉄プロセスの有する大量生産能力や高温の熱エネルギーをうまく活用して、廃プラスチックを有効利用する方法が提案され、実用化されている。
【0004】
しかしながら、製鉄プロセスを活用した既存の廃プラスチック処理方法の抱える課題として、国内の高炉やコークス炉の基数は限られており、新設も殆ど行われないことから、高炉の羽口やコークス炉に直接装入して処理することが可能な廃プラスチックの量には限界があり、製鉄プロセスを活用した廃プラスチックの資源化を、更に促進するためには、新たな方法の開発が必要であることが挙げられる。
【0005】
また、バイオマス系を初めとする廃プラスチック以外の有機系廃棄物についても、廃プラスチックと同様に、製鉄プロセスの有する大量生産能力や高温の熱エネルギーを活用する有効利用技術が求められている。
【0006】
そこで、プラスチックを初めとする有機系廃棄物を製鉄プロセスを活用して資源化する新たな方法として、例えば、特許文献3及び4に記載されているように、プラスチックやバイオマス等の有機系廃棄物を、鉄含有粒子とともに炉内に装入して熱分解し、有機系廃棄物の熱分解生成物である炭素含有物質を、鉄鉱石等の鉄酸化物に付着させ、炭素含有物質が付着した鉄酸化物を、製鉄プロセス原燃料として利用する方法が提案されている。
【0007】
特許文献3の例では、プラスチックを含んだ有機系廃棄物を、鉄鉱石や製鉄ダスト等の鉄酸化物とともに、シャフト炉方式や流動層方式等の炉内で500〜600℃程度で熱分解し、有機系廃棄物の熱分解により副生したタールや煤等の炭素含有物質を、鉄酸化物に付着させ、続いて、同一炉内の高温領域において、炭素含有物質が付着した鉄酸化物を還元して、溶銑又は固体還元鉄を製造する。
【0008】
特許文献4の例では、バイオマス等の有機系廃棄物を、流動床方式等の炉内で鉄鉱石や酸洗スラッジ等の鉄分含有粒子とともに、反応温度600℃〜700℃程度で熱分解・ガス化し、発生したタール、チャー、コーク等の炭素含有物質を、鉄分含有粒子に付着させ、炭素含有物質が付着した鉄分含有粒子を、高炉、焼結機などの製鉄プラント原料に利用する。
【0009】
【特許文献1】特開2001−49263公報
【特許文献2】特開平9−202907公報
【特許文献3】特開2003−147419公報
【特許文献4】特開2004−131642公報
【非特許文献1】「材料とプロセス」Vol.8、No4(1995)、P841、2.3項、40〜41行目
【非特許文献2】「材料とプロセス」Vol.8、No4(1995)、P864、Fig.1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3及び4を初めとする既存の有機系廃棄物の炭素含有物質を鉄含有粒子に付着させる方法が抱える課題として、例えば、特許文献3及び4等に記載されている既存の方法では、有機系廃棄物と鉄含有粒子とを、同じ反応器内に一緒に装入して有機系廃棄物を熱分解・ガス化させるため、有機系廃棄物の熱分解・ガス化により生成したタール含有ガスと鉄含有粒子の温度差が原理的に小さく、発生したタール含有ガス中の気相タール成分が鉄含有粒子上に吸着や凝縮し難い点が挙げられる。
【0011】
また、反応器にシャフト炉方式を用いた既存の方法の課題として、多量のプラスチックを鉄含有粒子とともに、シャフト炉の炉頂から装入すると、炉内で昇温されたプラスチックの軟化・溶融を要因とする通気性阻害や、ガス偏流、棚つり等のトラブルが発生し易いために、安定操業が難しく、安定操業確保のためには、プラスチックと鉄含有粒子の混合物を予め造粒した後、シャフト炉に装入する等の工夫が必要となって、重厚な前処理工程を要することが挙げられる。
【0012】
さらに、特許文献3及び4を初めとする既存の有機系廃棄物の炭素含有物質を鉄含有粒子に付着させる方法の抱える別の課題として、含水酸化鉄含有鉄鉱石への適用が困難であることが挙げられる。
【0013】
従来、製鉄プロセスの鉄鉱石原料には、ヘマタイト系の良質の鉄鉱石が多く使用されてきたが、近年、良質鉱石の枯渇が進んできていることから、劣質鉱石の使用拡大技術の確立が求められており、中でも、含水酸化鉄であるゲーサイトを主要成分の一つとして含み、結晶水が3質量%程度以上含まれる、マラマンバ鉱石やピソライト鉱石等のような含水酸化鉄含有鉄鉱石の使用拡大技術が求められている。
【0014】
しかしながら、既存の有機系廃棄物の炭素含有物質を鉄含有粒子に付着させる方法は、炉内の雰囲気温度を有機系廃棄物の熱分解温度以上(500〜600℃程度以上)に保持する必要があること、一方で、含水酸化鉄含有鉄鉱石は、250℃程度以上の温度雰囲気となると、結晶水の脱離が進行し、結晶水が脱離した鉱石は、強度が著しく低下して粉化し易くなることにより、含水酸化鉄含有鉄鉱石の塊鉱石を、特許文献3及び4を初めとする既存の方法を用いて、シャフト炉方式等の高温の炉内に装入すると、炉内で塊鉱石中の結晶水が脱離して塊鉱石が粉化し、処理後の塊鉱石を、直接、高炉に装入して使用することが困難となる。
【0015】
そこで、本発明は、鉄鉱石やペレット等の酸化鉄含有固体物質に有機系廃棄物の炭素含有物質を効率良く保持させることができる酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法及びタール含浸装置を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明の好適な形態においては、酸化鉄含有固体物質が含水酸化鉄含有鉄鉱石の場合でも、有機系廃棄物の炭素含有物質を効率良く保持するとともに、含水酸化鉄含有鉄鉱石のシャフト炉内での粉化を抑制して、高炉に装入可能な塊鉱石とすることができる、酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法及びタール含浸装置の提供を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、鉄鉱石やペレット等の酸化鉄含有固体物質に、有機系廃棄物の炭素含有物質を、安定操業の下で効率良く保持させる方法について鋭意検討した。
【0018】
その結果、酸化鉄含有固体物質を装入した移動層型反応器に、廃プラスチック等の有機系廃棄物を熱分解して生成したタール成分を含有する熱分解ガスを、前記移動層型反応器の下部から導入し、酸化鉄含有固体物質を、前記移動層型反応器の上部から装入して、移動層型反応器内でタール成分を含有する熱分解ガスと酸化鉄含有固体物質とを対向流で接触させ、前記移動層型反応器内の酸化鉄含有固体物質は高さ方向に温度勾配を設けて、移動層上部の酸化鉄含有固体物質温度よりも、移動層下部の酸化鉄含有固体物質温度を高温にすることにより、以下、1)〜3)の作用を発現して、有機系廃棄物の炭素含有物質を酸化鉄含有固体物質中に効率良く保持することが可能であることを見出した。
【0019】
1)熱分解ガス中タール分の反応器内酸化鉄含有固体物質充填層への高分散作用
移動層型反応器下部から導入された高温の熱分解ガスは、反応器内を上昇する際に、反応器内の酸化鉄含有固体物質層で抜熱されて、徐々にガス温度が低下し、熱分解ガス中タール分は、ガス温度低下に伴って、高沸点のタール留分から順次凝縮して、酸化鉄含有固体物質層に保持される。
【0020】
この際、移動層型反応器内の酸化鉄含有固体物質層は、高さ方向の温度勾配を設けているため、熱分解ガス中タール分が一気に凝縮して、一部の酸化鉄含有固体物質のみに偏って保持されることなく、移動層型反応器全体に高分散されて、酸化鉄含有固体物質中に効率的に保持される。
【0021】
2)酸化鉄含有固体物質付着高沸点タール分のコーク化進行による安定保持作用
移動層型反応器内下層部の高沸点タール分が吸着・凝縮した酸化鉄含有固体物質は、反応器内を降下する際、鉱石温度上昇に伴って吸着・凝縮したタール分が再加熱され、脱水素や側鎖基脱離等のガス発生を伴うコーキング反応が生じて、タール分の重質化・炭素質化が進行し、タール分が酸化鉄含有固体物質中に安定的に保持される。
【0022】
3)酸化鉄含有固体物質付着低沸点タール分の反応器内タール循環による高分散促進作用及び重質化作用
移動層型反応器内上層部の低沸点タール分が吸着した酸化鉄含有固体物質は、反応器内を降下する際に、鉱石温度上昇に伴って、吸着・凝縮したタール分が再気化し、再気化したタール分は、熱分解ガスに同伴して反応器内を上昇して、反応管内上部の低温酸化鉄含有固体物質層で再度トラップされ、酸化鉄含有固体物質とともに降下する。
【0023】
酸化鉄含有固体物質とともに降下したタール分は、加熱されて再度気化し、反応器内でのタール分の凝縮/気化のサイクルが繰り返されてタール循環が生じてタール分の高分散が促進される。
【0024】
さらに、反応器内のタール循環過程で低沸点タール分の環化・縮合等の反応が進行して、低沸点タール分が重質化し、加熱しても再揮発せずに、酸化鉄含有固体物質中に安定保持されるタール成分に変化して、酸化鉄含有固体物質中に保持可能なタール割合が増大する。
【0025】
本発明は、上記知見に基づき、上述の課題を解決するために提案されたもので、その要旨とするところは、以下の(1)〜(12)に示す通りである。
【0026】
(1)第1の発明は、移動層型反応器に、酸化鉄含有固体物質を、上部から装入して内部に充填させて底部から排出するとともに、乾留、高温媒体との直接接触、酸素含有ガスによる部分燃焼、又は、酸素含有ガスと水蒸気による水蒸気改質の少なくともいずれかで有機系廃棄物を処理して生成したタール含有ガスを、下部から導入して内部を上昇させて、上部から排気することで、前記移動層型反応器内で、前記タール含有ガスと前記酸化鉄含有固体物質とを対向流で接触させて、前記酸化鉄含有固体物質に、前記タール含有ガス中のタールを含浸させ、前記底部から排出される前記タール分が含浸した酸化鉄含有固体物質を回収する酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法であることを特徴とする。
【0027】
(2)第2の発明は、前記(1)記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法において、移動層型反応器に、酸化鉄含有固体物質を、上部から装入して内部に充填させて底部から排出するとともに、乾留、高温媒体との直接接触、酸素含有ガスによる部分燃焼、又は、酸素含有ガスと水蒸気による水蒸気改質の少なくともいずれかで有機系廃棄物を処理して生成したタール含有ガスを、下部から導入して内部を上昇させて、上部から排気することで、前記移動層型反応器内で、前記タール含有ガスと前記酸化鉄含有固体物質とを対向流で接触させて、前記酸化鉄含有固体物質に、前記タール含有ガス中のタールを含浸させ、更に、前記移動層型反応器内に充填された前記酸化鉄含有固体物質に、高さ方向の温度勾配を設けて、前記移動層内上部の酸化鉄含有固体物質温度よりも、前記移動層内下部の酸化鉄含有固体物質温度を高温とし、かつ、前記移動層型反応器の底部から排出する酸化鉄含有固体物質温度を、移動層型反応器下部から導入するタール含有ガス温度よりも低温として、前記酸化鉄含有固体物質中に含浸されたタールを保持して、前記底部から排出される前記タール分が含浸した酸化鉄含有固体物質を回収することを特徴とする。
【0028】
(3)第3の発明は、前記(1)又は(2)に記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法において、前記酸化鉄含有固体物質を、含水酸化鉄含有鉄鉱石とし、前記移動層型反応器内に装入する前記含水酸化鉄含有鉄鉱石の温度を、含水酸化鉄含有鉄鉱石中の結晶水分解温度未満とすることを特徴とする。
【0029】
(4)第4の発明は、前記(3)記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法において、前記移動層型反応器から回収するタール分を保持した酸化鉄含有固体物質の温度を、前記高含水酸化鉄含有鉄鉱石の結晶水分解温度以上とすることを特徴とする。
【0030】
(5)第5の発明は、前記(3)又は(4)に記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法において、前記含水酸化鉄含有鉄鉱石が、ピソライト鉱石、マラマンバ鉱石の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0031】
(6)第6の発明は、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法において、前記底部から排出されるタールを保持した酸化鉄含有固体物質を、熱交換器を用いて冷却するとともに、顕熱を取り出した後に回収し、前記取り出した顕熱を用いて、前記移動層型反応器に装入する酸化鉄含有固体物質を予熱することを特徴とする。
【0032】
(7)第7の発明は、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法において、前記有機系廃棄物が容器包装リサイクル法で規定される「その他プラスチック製容器包装」であることを特徴とする。
【0033】
(8)第8の発明は、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法で回収した酸化鉄含有固体物質を、製鉄プロセス高炉原料として利用するタール含浸酸化鉄含有固体物質の高炉への利用方法であることを特徴とする。
【0034】
(9)第9の発明は、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法で用いる移動層型反応器の上部から排出したタール含有ガスを、精製した後、精製ガスを製鉄所副生ガス代替として使用するタール含有ガスの利用方法であることを特徴とする。
【0035】
(10)第10の発明は、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法で用いる移動層型反応器の上部から排出したタール含有ガスを、塩酸ガス除去後に、製鉄所のコークス炉ガス処理工程に導入し、コークス炉ガスの一部として使用するタール含有ガスの利用方法であることを特徴とする。
【0036】
(11)第11の発明は、乾留、高温媒体との直接接触、酸素含有ガスによる部分燃焼、又は、酸素含有ガスと水蒸気による水蒸気改質の少なくともいずれかにより、有機系廃棄物からタール含有ガスを製造するタール含有ガス製造装置と、酸化鉄含有固体物質を上部から装入して内部に充填させて底部から排出するとともに、前記タール含有ガスを下部から導入して内部を上昇させて上部から排気する構造を備えた移動層型反応器とを有する酸化鉄含有固体物質へのタール含浸設備であることを特徴とする。
【0037】
(12)第12の発明は、前記(11)記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸設備において、前記移動層型反応器の底部から排出される酸化鉄含有固体物質を、冷却するとともに、保有顕熱を回収する熱交換方式の酸化鉄含有固体物質冷却装置と、前記酸化鉄含有固体物質冷却装置で回収した顕熱で前記移動層型反応器に装入する酸化鉄含有固体物質を乾燥及び予熱する酸化鉄含有固体物質予熱装置とを、さらに有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、第1の実施形態に係る本発明の酸化鉄含有固体物質の前処理方法及び前処理装置を実施するための設備構成の一例を示す図である。
【0039】
有機系廃棄物として廃プラスチックを用い、原料廃プラスチック1を、乾留、高温媒体との直接接触、酸素含有ガスによる部分燃焼、酸素含有ガス及び水蒸気による水蒸気改質の少なくともいずれかに基づくタール含有ガス発生炉2に装入して、ガス状のタール分を含有したタール含有ガス3を発生させる。
【0040】
タール含有ガス発生炉2に必要な機能は、炉内で有機系廃棄物の熱分解反応、部分酸化反応、水蒸気改質反応等の反応を起こして、有機系廃棄物の高分子結合を切断し、ガス状のタール分を含んだガスを生成することであり、該機能を満たしていれば、方式としては、特に限定するところはない。
【0041】
なお、有機系廃棄物の高分子結合を切断してタール含有ガスを得るためには、反応温度条件として、400℃程度以上が必要である。
【0042】
乾留方式については、例えば、外熱キルン炉等を初めとする、既存の方式が適用可能であり、高温媒体との直接接触方式については、例えば、高温の流動化ガスや流動化媒体を用いる流動層炉等を初めとする既存の方式が適用可能であり、酸素含有ガスによる部分燃焼方式については、例えば、流動化ガスに酸素含有ガスを用いた流動層炉や有機系廃棄物とともに酸素含有ガスを吹き込む噴流床炉等を初めとする、既存の方式が適用可能である。
【0043】
酸素含有ガス及び水蒸気による水蒸気改質方式については、有機系廃棄物を酸素含有ガス及び水蒸気とともに、噴流床炉等に直接装入する既存の方式や、有機系廃棄物を乾留、高温媒体との直接接触、酸素含有ガスによる部分燃焼して得た熱分解ガスを、酸素含有ガス及び水蒸気とともに改質炉に導入する既存の方式が適用可能である。
【0044】
タール含有ガス発生炉2で生成したタール含有ガス3は、酸化鉄含有固体物質を装入した縦型式の移動層型反応器5に、移動層型反応器5の下部から導入して、移動層型反応器5内の酸化鉄含有固体物質6と対向流で接触させ、酸化鉄含有固体物質との接触後、タール含有ガス8を、移動層型反応器5の上部から排気する。
【0045】
ここで、移動層型反応器5へのタール含有ガス3の導入位置、及び、酸化鉄含有固体物質との接触後のタール含有ガス8の排気位置は、移動層型反応器5内において、酸化鉄含有固体物質6とタール含有ガス3とが対向流で接触可能な位置であれば、特に限定するところはない。
【0046】
タール含有ガス3の導入位置については、例えば、図2のような移動層型反応器5の下部側面の選定や、例えば、図3のような移動層型反応器5の炉底部近傍の選定が可能である。酸化鉄含有固体物質接触後タール含有ガス8の排気位置については、例えば、図2及び図3のような移動層型反応器5の上部側面の選定や、例えば、図4のような移動層型反応器5の炉頂部近傍の選定が可能である。
【0047】
移動層型反応器5内の酸化鉄含有固体物質6には、移動層の高さ方向に温度勾配を設けて、移動層内上部の酸化鉄含有固体物質温度よりも、移動層内下部の酸化鉄含有固体物質温度を高温とする。
【0048】
移動層型反応器5の下部から導入された500〜900℃程度の高温のタール含有ガス3は、移動層型反応器5内を上昇(図中、B、参照)する際に、タール含有ガスよりも温度が低い酸化鉄含有固体物質層で抜熱されて、徐々にガス温度が低下し、タール含有ガス3中のタール分は、ガス温度低下に伴って、高沸点のタール留分から順次凝縮して、酸化鉄含有固体物質層に移行し、鉱石中に保持される。
【0049】
この際、移動層型反応器5内の酸化鉄含有固体物質層には、高さ方向の温度勾配を設けているので、熱分解ガス3中タール分が一気に凝縮して、一部の酸化鉄含有固体物質のみに偏って保持されることなく、移動層型反応器5全体に高分散され、酸化鉄含有固体物質中にタールを効率的に保持することが可能となる。
【0050】
移動層型反応器5内下層部の高沸点タール分を含浸した酸化鉄含有固体物質は、移動層型反応器5内を降下する際に、酸化鉄含有固体物質温度が上昇して、鉱石中タール分が再加熱され、移動層型反応器5内下層部で、脱水素や側鎖基脱離等のガス発生を伴うコーキング反応が生じて、タール分の重質化、炭素質化が進行し、炭素分が酸化鉄含有固体物質中に、より安定化される。
【0051】
移動層型反応器5内上層部の低沸点タール分を含浸した酸化鉄含有固体物質は、移動層型反応器5内を降下(図中、A、参照)する際に、酸化鉄含有固体物質温度が上昇して、タール分が再気化し、再気化したタール分は、熱分解ガス3に同伴して、移動層型反応器5内を上昇し、さらに、上部の低温酸化鉄含有固体物質層で、再度、トラップされて酸化鉄含有固体物質中に含浸して、酸化鉄含有固体物質とともに降下する。
【0052】
酸化鉄含有固体物質に含浸して降下したタール分は、加熱されて、再々、気化し、移動層型反応器5内でタール分の凝縮・気化のサイクルが繰り返されて、タール循環が生じて、移動層型反応器内でのタール分の高分散が促進される。
【0053】
さらに、移動層型反応器5内でのタール循環過程で、低沸点タール分の環化・縮合等の反応が進行して、低沸点タール分が重質化し、酸化鉄含有固体物質中の低沸点タール分が、加熱されても再揮発しないタール成分に変化して、鉱石中に安定保持されるタール割合が増大する。
【0054】
移動層型反応器5に装入する酸化鉄含有固体物質の種類としては、鉄鉱石や酸化鉄を含むペレット等を適用することが可能である。また、移動層型反応器5に装入する酸化鉄含有固体物質の粒度については、粒径が小さすぎると、タール含有ガスの通気性が悪くなって操業安定性が低下するので、粒径φ1mm程度以上とすることが望ましい。
【0055】
移動層型反応器5から排出された処理後酸化鉄含有固体物質は、粒径φ10mm程度以上の大粒径の酸化鉄含有固体物質を原料とする場合は、高炉原料として利用可能であり、小粒径の酸化鉄含有固体物質を原料とする場合には、焼結機原料として利用することが好ましい。いずれの場合も、焼結機や高炉でのコークス使用量や石炭使用量を低減することが可能となる。
【0056】
図5は、第4の実施形態に係る本発明の酸化鉄含有固体物質の前処理方法及び前処理装置を実施するための設備構成の一例を示す図である。タール付着酸化鉄含有物質7を、タール付着酸化鉄含有固体物質冷却装置10に装入して冷却し、冷却後のタール付着酸化鉄含有固体物質11を回収し、製鉄原料として使用する。
【0057】
タール付着酸化鉄含有固体物質冷却装置10の方式としては、特に限定するところはなく、既存の直接熱交換方式又は間接熱交換方式の熱交換器を適用することが可能であるが、図5では、窒素ガスによる直接熱交換方式の熱交換器を用いた例を示した。
【0058】
タール付着酸化鉄含有固体物質冷却装置10には、酸化鉄含有固体物質冷却ガス12を導入し、タール付着酸化鉄含有物質7の冷却及び顕熱回収を行って、顕熱回収後ガス13を得る。酸化鉄含有固体物質6を、酸化鉄含有固体物質予熱装置15に装入し、酸化鉄含有固体物質予熱装置15に、顕熱回収後ガス13を導入し、酸化鉄含有固体物質6を乾燥・予熱する。
【0059】
また、従来技術にない本発明の新たな特徴として、含水酸化鉄含有鉄鉱石の強度を向上することが可能であることが挙げられる。含水酸化鉄含有鉄鉱石とは、含水酸化鉄であるゲーサイトを多く含み、結晶水を3質量%程度以上含む鉄鉱石であり、例えば、マラマンバ鉱石やピソライト鉱石等が該当する。
【0060】
高炉に、含水酸化鉄含有鉄鉱石の塊鉱石を装入すると、高炉上部で、結晶水分解に伴う鉱石強度の劣化が生じて、鉱石が粉化するため、含水酸化鉄含有鉄鉱石の塊鉱石の使用量を増加すると、高炉内の通気性が阻害されて、高炉操業が不安定化したり、生産性が低下する等の問題が生じることが広く知られている。
【0061】
上記課題に対し、本発明の方法は、移動層型反応器5に装入する酸化鉄含有固体物質として、含水酸化鉄含有鉄鉱石の塊鉱石を用い、移動層型反応器5入口から装入する塊鉱石の温度を、塊鉱石中の結晶水が分解しない温度とし、移動層型反応器出口から回収する塊鉱石の温度を、塊鉱石の結晶水分解温度以上とすることにより、移動層型反応器5内で、結晶水分解反応をゆるやかに進行させながら、結晶水分解で生じた細孔内へタールを吸着・凝縮させた鉄鉱石を生成して、結晶水分解に伴う塊鉱石の強度劣化を抑制するものである。
【0062】
含水酸化鉄含有鉄鉱石の結晶水分解は、例えば、非特許文献1及び2に記載されているように、250℃程度から始まり、350℃程度でほぼ完了することが知られており、本発明者らの測定でも、同様な結果が得られた。
【0063】
したがって、移動層型反応器5入口から装入する含水酸化鉄含有鉄鉱石の塊鉱石の温度条件としては、結晶水が分解しない250℃程度以下が好ましく、移動層型反応器出口から回収する塊鉱石の温度条件としては、結晶水が分解する350℃程度以上が好ましい。なお、結晶水が分解する温度は、事前に、示差熱分析や熱重量分析等で確認しておくことが好ましい。
【0064】
一方、特許文献3や、特許文献4を初めとする既存の有機系廃棄物の炭素含有物質を鉄含有粒子に付着させる方法を、含水酸化鉄含有鉄鉱石の塊鉱石に適用した場合には、炉内の雰囲気温度を、有機系廃棄物の熱分解温度である500℃程度以上とする必要があるために、炉内で結晶水分解に伴う鉱石の粉化が生じることから、高炉へ装入可能な塊鉱石を製造することは困難である。
【0065】
なお、図1や図5では、有機系廃棄物として廃プラスチックを用いた例を示したが、廃プラスチック以外にも、例えば、バイオマスや廃ゴム類等のような熱分解反応によってタール成分が生成される有機系廃棄物質であれば、本発明を適用することが可能である。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
実施例1として、図5に示す設備構成を用い、有機系廃棄物として、容リプラを使用し、酸化鉄含有物質として、粒径φ1mm〜φ10mm、炭素含有率0.1質量%未満、結晶水含有率2質量%のヘマタイト系鉱石(以下鉱石と記す)を用い、容リプラ処理規模150t/日、鉄鉱石処理規模1000t/日で処理した例を示す。
【0067】
タール含有ガス発生炉2は、外熱式ロータリーキルンを用い、酸化鉄含有固体物質予熱装置15及びタール含浸後酸化鉄含有固体物質冷却装置10は、窒素ガスを熱媒体とする直接熱交換方式の熱交換器を用いた。
【0068】
タール含有ガス発生炉に容リプラを装入して、容リプラを熱分解処理し、ガス温度が約650℃のタール含有ガスを発生させ、発生したタール含有ガスを、鉱石を充填した移動層型反応器の下部から導入し、移動層型反応器内の鉱石と対向流で接触させた。
【0069】
鉱石は、まず、酸化鉄含有固体物質予熱装置を通過させて乾燥するとともに、約150℃まで予熱した後、移動層型反応器に装入した。移動層型反応器内の鉱石温度は、反応器内最上部近傍で、約150℃、反応器内最下部近傍で、約400℃であった。
【0070】
移動層型反応器から排出された処理後の鉱石は、タール含浸後酸化鉄含有固体物質冷却装置を通過させて、窒素ガスで100℃以下に冷却して回収した。タール含浸後酸化鉄含有固体物質冷却装置で、処理後鉱石と窒素ガスとの熱交換により得た顕熱は、酸化鉄含有固体物質予熱装置に装入される鉱石の予熱に用いた。
【0071】
回収した鉱石中の炭素含有率は、平均で約4質量%であり、本発明により、容リプラ中に含まれるC分を、鉱石中に多量に保持させることができた。また、回収した鉱石中の炭素含有率のばらつき範囲は3〜5質量%程度となり、本発明により、タール含有ガス中のタール分が、移動層型反応器内の鉱石全体に高分散されて、タール分を鉱石中に効率的に保持させることができた。また、移動層型反応器通過後のタール含有ガスは、精製し、得られた約3500Nm3/hrの精製ガスを、製鉄所副生ガス代替として利用した。
【0072】
(比較例1)
比較例1として、流動床方式の反応器内で、有機系廃棄を鉄鉱石とともに、反応温度650℃で熱分解・ガス化する特許文献4の方法を用い、有機系廃棄物は、実施例1と同様に容リプラを使用し、酸化鉄含有物質も、実施例1と同様に、粒径φ1mm〜φ10mmのヘマタイト系鉱石(以下、鉱石と記す)を用い、実施例1と同様に、容リプラ処理規模150t/日、鉄鉱石処理規模1000t/日で処理した例を示す。
【0073】
流動床方式の反応器から排出された鉱石中の炭素含有率は、約1質量%以下となり、比較例1の方法は、タール含有ガスと鉱石との温度差が原理的に小さいこと、実施例1のような反応器内でのタール循環作用がないことにより、鉱石中に安定保持されるタール割合が低くなって、容リプラ中の炭素分を、鉱石中へ効率的に移行することができなかった。
【0074】
(実施例2)
実施例2として、図5に示す設備構成を用い、有機系廃棄物として、容リプラを使用し、酸化鉄含有物質として、粒径φ10mm〜φ30mm、結晶水含有率8質量%、炭素含有率0.1質量%未満のピソライト鉱石を主体とする含水酸化鉄含有鉄鉱石(以下、鉱石と記す)を用い、容リプラ処理規模150t/日、鉄鉱石処理規模1000t/日で処理した例を示す。
【0075】
タール含有ガス発生炉2は、外熱式ロータリーキルンを用い、酸化鉄含有固体物質予熱装置15及びタール含浸後酸化鉄含有固体物質冷却装置10は、窒素ガスを熱媒体とする直接熱交換方式の熱交換器を用いた。外熱式ロータリーキルン方式のタール含有ガス発生炉に容リプラを装入して、容リプラを熱分解処理して、ガス温度が約650℃のタール含有ガスを発生させ、発生したタール含有ガスを、鉱石を充填した移動層型反応器の下部から導入し、移動層型反応器内の鉱石と対向流で接触させた。
【0076】
鉱石は、まず、酸化鉄含有固体物質予熱装置を通過させて乾燥するとともに、約150℃まで予熱した後、移動層型反応器に装入した。移動層型反応器内の含水酸化鉄含有鉄鉱石温度は、反応器内最上部近傍で、約150℃、反応器内最下部近傍で、約350℃であった。
【0077】
移動層型反応器から排出された鉱石は、タール含浸後酸化鉄含有固体物質冷却装置を通過させて、100℃以下まで冷却した後、回収した。回収した鉱石中の炭素含有率は、平均で約6質量%であり、本発明により、容リプラ中に含まれるC分を、鉱石中に多量に保持させることができた。
【0078】
また、回収した鉱石中の炭素含有率のばらつき範囲は5〜7質量%程度であり、実施例1と同様に、本発明によりタール含有ガス中のタール分が、移動層型反応器内の鉱石全体に高分散されて、タール分を鉱石中に、効率的に保持することができた。
【0079】
回収した処理後鉱石の強度については、タール含有ガスで処理せずに、350℃で加熱して結晶水を分解させた鉱石の還元粉化指数RDI(JIS M 8720)が50%程度(粉率50%程度)であったのに対し、本発明のタール含浸方法で処理して回収した鉱石の還元粉化指数(RDI)は、30%程度(粉率30%程度)となり、本発明により、含水酸化鉄含有鉄鉱石を、高炉使用に問題のないレベルの強度を有する鉱石に改質することができた。
【0080】
なお、通常の高炉操業においては、炉内粉化による通気阻害を回避するため、装入原料の還元粉化指数を40%程度以下で管理するのが一般的である。
【0081】
また、移動層内での鉱石層の棚つり等も発生せず、安定した操業の下で、鉱石へのタール含浸処理を行うことができた。
【0082】
(比較例2)
比較例2として、有機系廃棄物を鉄鉱石と一緒に反応器上部から装入する移動層方式の反応器内で、反応温度650℃で熱分解・ガス化する方法を用い、有機系廃棄物として実施例2と同様に、容リプラを使用し、酸化鉄含有物質として、実施例2と同様に、結晶水含有率8質量%、粒径φ10mm〜φ30mmのピソライト鉱石を主体とする含水酸化鉄含有鉄鉱石(以下鉱石と記す)を用い、実施例2と同様に、容リプラ処理規模150t/日、鉄鉱石処理規模1000t/日で処理した例を示す。
【0083】
移動層から回収された鉄鉱石は、50%以上が粉化していた。比較例2の方法で、粉化割合が多い要因は、比較例2の方法は、移動層反応器内で、鉱石と容リプラが同時に昇温されること、及び、容リプラ熱分解温度(400〜500℃程度)よりも、鉄鉱石の結晶水分解温度の方が低温であることにより、結晶水が分解した鉱石がタール付着が生じる前に移動層内で粉化したことであると考えられる。
【0084】
また、比較例2の方法は、移動層炉内でのガス偏流や棚つりが生じて、安定性の低い操業結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の発明に係る装置の設備例を示す図である。
【図2】本発明の第1の発明に係る装置のタール含有ガスの導入位置及び酸化鉄含有固体物質接触後タール含有ガスの排気位置の例を示す図である。
【図3】本発明の第1の発明に係る装置のタール含有ガスの導入位置及び酸化鉄含有固体物質接触後タール含有ガスの排気位置の別の例を示す図である。
【図4】本発明の第1の発明に係る装置のタール含有ガスの導入位置及び酸化鉄含有固体物質接触後タール含有ガスの排気位置の別の例を示す図である。
【図5】本発明の第4の発明に係る装置の設備例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 原料廃プラスチック
2 タール含有ガス発生炉
3 タール含有ガス
4 不燃物、灰分
5 移動層型反応器
6 酸化鉄含有固体物質
7 処理後酸化鉄含有固体物質
8 酸化鉄含有固体物質接触後タール含有ガス
9 乾燥・予熱後酸化鉄含有固体物質
10 タール含浸後酸化鉄含有固体物質冷却装置
11 冷却後のタール含浸後酸化鉄含有固体物質
12 酸化鉄含有固体物質冷却ガス
13 顕熱回収後ガス
14 酸化鉄含有固体物質予熱後排ガス
15 酸化鉄含有固体物質予熱装置
A 酸化鉄含有固体物質の流れ
B タール含有ガスの流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動層型反応器に、酸化鉄含有固体物質を、上部から装入して内部に充填させて底部から排出するとともに、乾留、高温媒体との直接接触、酸素含有ガスによる部分燃焼、又は、酸素含有ガスと水蒸気による水蒸気改質の少なくともいずれかで有機系廃棄物を処理して生成したタール含有ガスを、下部から導入して内部を上昇させて、上部から排気することで、前記移動層型反応器内で、前記タール含有ガスと前記酸化鉄含有固体物質とを対向流で接触させて、前記酸化鉄含有固体物質に、前記タール含有ガス中のタールを含浸させ、前記底部から排出される前記タール分が含浸した酸化鉄含有固体物質を回収することを特徴とする酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法。
【請求項2】
移動層型反応器に、酸化鉄含有固体物質を、上部から装入して内部に充填させて底部から排出するとともに、乾留、高温媒体との直接接触、酸素含有ガスによる部分燃焼、又は、酸素含有ガスと水蒸気による水蒸気改質の少なくともいずれかで有機系廃棄物を処理して生成したタール含有ガスを、下部から導入して内部を上昇させて、上部から排気することで、前記移動層型反応器内で、前記タール含有ガスと前記酸化鉄含有固体物質とを対向流で接触させて、前記酸化鉄含有固体物質に、前記タール含有ガス中のタールを含浸させ、更に、前記移動層型反応器内に充填された前記酸化鉄含有固体物質に、高さ方向の温度勾配を設けて、前記移動層内上部の酸化鉄含有固体物質温度よりも、前記移動層内下部の酸化鉄含有固体物質温度を高温とし、かつ、前記移動層型反応器の底部から排出する酸化鉄含有固体物質温度を、移動層型反応器下部から導入するタール含有ガス温度よりも低温として、前記酸化鉄含有固体物質中に含浸されたタールを保持して、前記底部から排出される前記タール分が含浸した酸化鉄含有固体物質を回収することを特徴とする酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法。
【請求項3】
前記酸化鉄含有固体物質を、含水酸化鉄含有鉄鉱石とし、前記移動層型反応器内に装入する前記含水酸化鉄含有鉄鉱石の温度を、含水酸化鉄含有鉄鉱石中の結晶水分解温度未満とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法。
【請求項4】
前記移動層型反応器から回収するタール分を保持した酸化鉄含有固体物質の温度を、前記含水酸化鉄含有鉄鉱石の結晶水分解温度以上とすることを特徴とする請求項3に記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法。
【請求項5】
前記含水酸化鉄含有鉄鉱石が、ピソライト鉱石、マラマンバ鉱石の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項3又は4に記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法。
【請求項6】
前記底部から排出されるタールを保持した酸化鉄含有固体物質を、熱交換器を用いて冷却するとともに、顕熱を取り出した後に回収し、前記取り出した顕熱を用いて、前記移動層型反応器に装入する酸化鉄含有固体物質を予熱することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法。
【請求項7】
前記有機系廃棄物が容器包装リサイクル法で規定される「その他プラスチック製容器包装」であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法で回収した酸化鉄含有固体物質を、製鉄プロセス高炉原料として利用することを特徴とするタール含浸酸化鉄含有固体物質の高炉への利用方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法で用いる移動層型反応器の上部から排出したタール含有ガスを、精製した後、精製ガスを製鉄所副生ガス代替として使用することを特徴とするタール含有ガスの利用方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸方法で用いる移動層型反応器の上部から排出したタール含有ガスを、塩酸ガス除去後に、製鉄所のコークス炉ガス処理工程に導入し、コークス炉ガスの一部として使用することを特徴とするタール含有ガスの利用方法。
【請求項11】
乾留、高温媒体との直接接触、酸素含有ガスによる部分燃焼、又は、酸素含有ガスと水蒸気による水蒸気改質の少なくともいずれかにより、有機系廃棄物からタール含有ガスを製造するタール含有ガス製造装置と、酸化鉄含有固体物質を上部から装入して内部に充填させて底部から排出するとともに、前記タール含有ガスを下部から導入して内部を上昇させて上部から排気する構造を備えた移動層型反応器とを有することを特徴とする酸化鉄含有固体物質へのタール含浸設備。
【請求項12】
前記移動層型反応器の底部から排出される酸化鉄含有固体物質を、冷却するとともに、保有顕熱を回収する熱交換方式の酸化鉄含有固体物質冷却装置と、前記酸化鉄含有固体物質冷却装置で回収した顕熱で前記移動層型反応器に装入する酸化鉄含有固体物質を乾燥及び予熱する酸化鉄含有固体物質予熱装置とを、さらに有することを特徴とする請求項11に記載の酸化鉄含有固体物質へのタール含浸設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−112959(P2009−112959A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289811(P2007−289811)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】