説明

酸化銅カソードを用いたアルカリ電池

正極活物質としてCuOを有する電気化学的電池。CuOの比表面積は、CuOの高電圧放電容量を増大させるために、1.0乃至4.0m2/gである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的電池、特にカソード活物質として酸化銅を含むアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化銅は、長年にわたって電気化学的電池の正極活物質として使用されてきた。例えば、酸化銅、特に酸化銅(II)、CuOは、George W. Heise及びN. Corey Cahoon(eds.)により The Primary Battery, John Wiley & Sons, New York, 1971, Vol. I, Chapter 4, pp. 192-205に記載されているような湿電池における活物質であった。酸化銅はまた、水性及び非水性電解質を用いた乾電池において活物質として使用されてきた。負極活物質として亜鉛を用いたアルカリ乾電池、及び負極活物質としてリチウムを用いた非水性電池がその例である。酸化銅電池の設計には、ボタン及び円筒状セルの形状及び平坦、ボビン及びらせん状にねじれた電極形状が含まれる。正極活物質としての酸化銅の利点は、二酸化マンガンのようなその他の通常使用される物質と比較して密度が高いことである。Davisらによる2002年12月3日に登録された米国特許第6,489,056号に開示されているように、CuOはまた、高温において電解二酸化マンガン(EMD)より迅速に負極で発生する水素を吸収しうるので、鉛、水銀、カドミウムを含まない亜鉛負極を有するアルカリ電池においてはEMDの代替物としても有利である。
アルカリZn/CuO電池を放電すると、CuOは金属銅に還元される。他の場合には放電曲線は単一の電圧平坦域を有するが、CuOの電圧対時間放電曲線においては2つの電圧平坦域間に明確な段差が観察される場合もある。2つの電圧平坦域の存在は、放電がCuO及びCu2Oの両方の還元を含み、CuOの還元に対応する高いほうの平坦域(約1.05〜1.1ボルト)、及びCu2Oの還元に対応する低いほうの平坦域(約0.85〜0.88ボルト)を有することを示唆する。放電のメカニズムは非常に複雑で、十分には分からない。
メカニズムは分からないが、従来のZn/CuO電池はほとんど完全にZn/Cu2O電池と同一の低電圧で作用する。2つの平坦域が観察される場合には、第一のそれは期間が短い傾向がある。電池の総容量は高くても、容量の大部分は低電圧において放出される。この低電圧は、“1.5ボルト”Zn/MnO2電池を使用するように設計されているデバイスを作用するには低すぎるかもしれない。低いほうの作用電圧のデバイスは、先行技術にしたがって製造されたアルカリZn/CuO電池を使用して当座は作用しうるかもしれないが、そのようなZn/CuO電池をアルカリZn/MnO2電池の実用的な代替物と考えるにはその時間は短すぎる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の見地から、本発明の目的は、酸化銅正極を有する高容量電気化学的電池を提供することである。
本発明の別の目的は、高電圧終止点まで放電される場合に向上した容量を放出しうる電気化学的電池を提供することである。
本発明の別の目的は、製造するのに経済的な、改良された放電特性を有する酸化銅電気化学的電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の目的は達成され、前述の先行技術の欠点は本発明の電気化学的電池により克服される。
高表面積のCuOを使用すると、比較的高い電圧で容量が放出されるので、平均放電電圧が実質的に上昇することが発見された。理論に縛られることは望まないが、CuOの表面積を増大させることにより、Cu2Oの潜在性を反映させるために迅速に降下するよりむしろ、初期放電がCuOの比較的高い電圧で作用するとされている。このことは、CuOの総容量の大きな割合が比較的高い電圧で放出されることを意味する。
したがって、一面においては、本発明は電池容器、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、正極及び負極間に配置されている隔離板及び電解液を含む電気化学的電池に関する。正極活物質は、試験したときに1.0乃至4.0m2/gのBET比表面積を有するCuOを含む。
本発明の別の面は、密閉電池容器、正極活物質を含む正極、亜鉛を含む負極及び水性アルカリ電解液を含む電気化学的一次電池に関する。正極活物質は粒子状CuOを含み、CuOは、窒素を用いたBET法により測定した比表面積が1.0乃至4.0m2/gで、統一散乱技術を用いたレーザー回折分析により測定したD10値がせいぜい3.0μmである。
本発明の更に別の面は、密閉電池容器、実質的にCuOからなる正極活物質を含む正極、亜鉛を含むゲル化負極、正極及び負極間に配置されている隔離板、及び水酸化カリウムを含む水性アルカリ電解液を含む電気化学的一次電池に関する。正極は中空円筒状であり、隔離板及び負極は中空円筒の内側表面により郭成される空洞内に配置されている。正極活物質は、窒素を用いたBET法により測定した比表面積が1.5乃至3.0m2/gで、統一散乱技術を用いたレーザー回折分析により測定したD10値が1.0乃至2.0μmである粒子状CuOを含む。
本発明のこれら及びその他の特徴、利点及び目的は、以下の詳述、特許請求の範囲及び添付図面を参照することにより当業者には更に理解され認められよう。
【0005】
特に明記されなければ、本明細書においては以下の定義及び方法を用いる。
(1) 粒子状物質の比表面積は、窒素を用いたBrunauer-Emmett-Teller(BET)法により測定された、物質の脱気試料の単位質量あたりの表面積(m2/g)である。この方法は、試料の表面上に吸着されたガスの量の測定に基づき、外部表面積及び内部表面積(通気孔のそれ)の両方を含む。酸化銅の試料は、15℃/分の速度で温度を上昇させ、150℃に1時間保持することにより脱気する。
(2) 酸化銅は、一般式CuxO(式中、xは約0.9乃至約2.2である)のいずれの酸化銅物質でもよい。少量の不純物も存在しうる。
(3) CuOは、一般式CuxO(式中、xは約0.9乃至約1.3である)の酸化銅物質である。
(4) 電極の理論的容量は、公称放電反応にしたがって活物質のすべてが反応すると仮定して、電極における活物質の比容量(アンペア時/g、Ah/g)に基づいて計算された容量(例えば、Ah)である。特に指示がなければ、CuOに関して本明細書において使用する比容量は0.674Ah/gであり、EMDの比容量は、すべてのマンガンが反応してMn+2.67(Mn原子あたり平均約1.33個の電子)になると仮定して0.380Ah/gであり、亜鉛の比容量は0.821Ah/gである。
(5) 粒度分布は、統一散乱技術を用いたレーザー回折分析により測定する。粒度分析は、MICROTRAC(登録商標) X-100 Particle Size Analyzer (米国ペンシルバニア州モントゴメリーにあるMicrotrac, Inc.)または匹敵する結果が得られるその他の装置を用いて物質の試料について実施しうる。
本明細書においては、特に指示がない限り、すべての開示されている特性及び範囲は室温(20〜25℃)において測定された。
【0006】
本発明の電池は、正極活物質としてCuOを含む電池である。使用するCuOは、窒素を用いてBET法により測定した比表面積が1.0乃至4.0m2/gのそれである。
CuOは、アルカリ水溶液電解液電池において正極活物質として使用しうる。アルカリCuO電池は、例えば、亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムを含む種々の負極活物質を含みうる。CuOはまた、負極活物質としてリチウム、アルミニウム及びマグネシウムを用いた非水性電解液電池において正極活物質として使用しうる。
正極活物質としてCuOを用いた電池には、種々の設計が可能である。それらは、ボタン、円筒及び角柱を含む種々の形状を有しうる。それらは、薄い(例えば、印刷された)フィルム、積重ねた平坦なディスクまたはシート、らせん状にねじれた平坦なストリップを含む種々の電極形状、及び一方の電極が反対の極性のもうひとつの電極内の空洞内に配置されている形状を有しうる。後者の電極形状の例には、LeClanche、塩化亜鉛及びアルカリZn/MnO2電池が含まれる。これらの“ボビン”型の設計においては、正極及び負極の一方が中空円筒状であり、他方の電極は中空円筒の内径により郭成される空洞内に、電極間に隔離板を用いて配置されている。
CuO電極及び電池のその他の公知の機能強化も本発明の電池に適合しうる。例えば、少量の硫黄(例えば、CuOの0.5質量%)を正極混合物に添加しうる。硫黄で処理することの利点は、Schumacher及びHeiseにより“The Alkaline Cell with Copper Oxide or Air Depolarizer (1902-1952),”J. Electrochem. Soc., vol. 99, 191C (1952)に、及びSchumacherにより“The Alkaline Copper Oxide:Zinc Cell,”Chapter 4, The Primary Battery, Vol. 1, Eds. G. W. Heise and N. C. Cahoon, John Wiley & Sons Inc., New York (1971), pp. 191-206に開示されている(これらの文献は、ともに参考として本明細書に導入されている)。
【0007】
本発明の電気化学的電池の一実施態様は、典型的な円筒状一次アルカリZn/MnO2電池と同様な電池設計であり、その例は図1に示されている電池のようなLR6(AAサイズ)である。この実施態様においては、CuOは、正極活物質としてのMnO2のすべてまたは一部を置換しうる。図1を参照すると、電池(10)は、側壁(12)、閉鎖底面端部(14)、及び開放上端部(16)を有する缶が構成するハウジングを含む。正極端部カバー(18)は缶底面(14)に溶接されているか付属している。あるいは、缶底面(14)は、正極端部として機能し、別のカバーの必要性を除去するために正極端部カバー(18)の形状を含むように形成されうる。缶の開放上端部(16)には、カバー及びシール組立部品及び負極端部カバー(30)が組み立てられている。缶の側壁(12)の外部表面の周囲には、プラスチックフィルムラベル(20)またはその他のカバーが形成されうる。ラベル(20)は、正極及び負極端部カバー(18)及び(30)の周辺端部に広がっていてもよい。正極(カソード)(22)は、缶の内側表面の周囲に形成されている。正極(22)は缶の一部と直接接しており、缶は正極集電装置として機能して、正極(22)及び正極端部カバー(18)間の電気的接触を提供しうる。負極(アノード)(26)は、正極(22)内の空洞内に、正極(22)及び負極(26)間の隔離板(24)とともに配置されている。負極(26)及び缶底面(14)の間には隔離板の層(38)が配置されている。負極(26)及びカバー(30)間の電気的接触を提供するために、負極集電装置(28)が負極端部カバー(30)から負極(26)に延在している。缶内に電極物質及び電解質を含むために、環状シール(32)が缶の開放上端部(16)内に配置されている。電池(10)からの物質の漏れを所望の程度阻止するために、内部カバー(34)がシール(32)の圧縮支持を提供する。シール(32)はまた、負極端部カバー(30)及び缶の側壁(12)を電気的に絶縁する。カソード(22)及びアノード(26)は、相互に同軸に関して配置されており、共通の軸として電池(10)の縦軸(36)を共有する。本発明による電池には、カソード内の活物質としてCuOを含む。本発明の電池に関する以下の記載は、図1に示される電池設計のタイプの実施態様に関してなされる。特に以下に開示されないかぎり、そのようなアルカリZn/MnO2電池に使用するのに適する設計、成分及び物質は本発明による電池において使用する場合にも適することは理解されるべきである。しかしながら、その他の適する電池設計、成分及び物質も本発明の場合に使用するのに適するかもしれない。
【0008】
缶は、電池の内容物及び外部環境と接触したときに安定である物質であればいずれの物質でも製造しうる。便宜上、外部の電極の集電装置として機能しうる金属のような導電性金属で製造されうる。アルカリ電池の缶は、しばしば冷間圧延鋼から製造される。それらはしばしば腐食を防ぐために外部表面上にニッケルがめっきされる。内部表面はニッケル及びコバルトを含んでもよく、カソードとの接触表面は、カソードと良好に接触するために黒鉛を含む塗膜を有してもよい。
この実施態様においては、カソードは一般的に中空円筒状に形成されうる。これは衝撃成形法を用いて形成されてもよいし、カソードを1種以上の円筒環にあらかじめ形成し、それらを缶内に挿入して、くっつけて単一のカソードとし、外に押しつけて缶の内側表面と良好に接触させてもよい。
カソードは活物質としてCuOを含む。CuOは市販されている。一般的には少量の不純物が望ましく、不純物の望ましい最大量は、アルカリZn/MnO2電池に使用されるMnO2に望ましい量と同様であろう。例えば、99.995%(金属基準)及び他のグレードの酸化銅(II)は、Alpha Aesar(米国マサチューセッツ州ウォード・ヒル)から購入しうる。最良の結果を得るためには、xがせいぜい1.3、好ましくはせいぜい1.05であるCuxOのような高酸化量の物質を使用することが望ましい。物質が多量のCu2Oを有する場合には、Cu2OをCuOに酸化するために物質を処理しうる。これは、制御された環境下で加熱することによりなしうる。これはまた、空気の存在下で物質を強アルカリ水溶液(例えば、9M KOH)で洗浄することによってもなしうる。あるいは、物質が使用される電池が水性アルカリ電池の場合には、物質を空気の存在下でその他のカソード物質及び少量のアルカリ電解液溶液とブレンドしてもよい。CuOはまた、以下に詳細に記載するように、硝酸銅(I)または水酸化銅(II)から化学的に調製しうる。CuOの望ましい粒度分布及び比表面積は、多くの方法により得られる。第一に、異なる源から得られる物質は異なる物性を有しうる。第二に、物質の源に関係なく、例えば、標準篩を用いた連続的篩い分けまたは空気分級により、粒度にしたがって分類しうる。このことはまた、種々のフラクションに種々の比表面積が存在する結果になりうるが、粒度及び表面積間の相関関係は必ずしも強いものではない。第三に、物質を粉砕しうる。第四に、粒度分布及び比表面積に影響を及ぼす種々の条件下で物質を製造しうる。これらの方法の組み合わせもまた使用しうる。
【0009】
CuOの代替物としては、前述の方法の一以上により処理及び十分に酸化される場合にはCu2Oを出発物質として使用しうる。
前述のように、CuOは1.0乃至4.0m2/gの比表面積を有しうる。表面積が1.0m2/g未満の場合には、ほとんど改良された結果は得られないであろう。比表面積が1.5m2/g以上であれば性能は向上し、比表面積が1.7m2/g以上であれば更に向上するであろう。2.0m2/gより大きくなると、比表面積の増大に伴う放電性能の追加の改良は減少し、3.0m2/gより大きくなると追加の改良はほとんどない。比表面積が4.0m2/gより大きい場合には、CuOの破壊的な腐食及び銅イオンのアノード(亜鉛イオンと反応しうる)への移動のために反応性及び溶解性の増大が有効期限を限定しうる。
CuOのような粒子状物質の比表面積は、粒度分布と一般的な相関関係がある。比表面積に影響を及ぼすその他の粒子特性もある。所望の範囲内の比表面積を有するCuOの中央粒度(D50)は、一般的には100μm未満であり、しばしば50μmであるが、D50値単独と比表面積または放電性能のいずれかとの相関関係はほとんどない。しかしながら、微細な粒子と比表面積及び放電性能との両方の間には相関関係が観察された。D10値が3.0μm以下のCuOは十分に機能する。D10値が1.0乃至2.0μmの場合には性能はより向上し、D10値がせいぜい1.7μmの物質において最良の性能が観察された。
比表面積が所望の範囲内のCuOは一次粒子及び凝集一次粒子を含み、一次粒子の寸法は、典型的には0.3乃至5.0μmである。一次粒子の平均寸法が1.0μm以下の場合にCuOは十分に機能する。
CuOのほかに、カソードは1種以上のその他の活物質も含みうる。これらの追加の物質は、選択されるアノード活物質との組み合わせで、アルカリ電池中で単独のカソード活物質として適する物質から選択されうる。
【0010】
アルカリ電池において使用する共同のカソード物質の例には、電解二酸化マンガン(EMD)、化学的二酸化マンガン(CMD)、天然二酸化マンガン(NMD)、その他の二酸化マンガン、酸化銀、酸化水銀、オキシ水酸化ニッケル(β及びγ型を含む)、鉄酸塩及び酸化ビスマス(例えば、Bi2O3)が含まれる。EMDはKerr-McGee Chemical Corp.(米国オクラホマ州オクラホマ市)、Erachem Comilog, Inc.(米国メリーランド州ボルティモア)及びDelta E. M. D. (Pty) Ltd.(南アフリカNelspruit)から入手しうる。CMDはErachem Europe S. A.(ベルギー国ブリュッセル)から入手しうる。酸化銀、オキシ水酸化ニッケル及びその他は市販されている。
非水性電池においてCuOとともに使用しうる共用のカソード物質の例には、硫化鉄(例えば、FeS2及びFeS)、酸化ビスマス(例えば、Bi2O3)、及びTiS2が含まれる。
多くの活物質は比較的不十分な導体であるため、カソードはまた1種以上の導電性物質を含みうる。例には、黒鉛(発泡及び非発泡)、微細な黒鉛化炭素、及び銅及びニッケルのような金属粒子が含まれる。黒鉛は、アルカリZn/MnO2電池においてしばしば使用される。黒鉛は、天然でも、合成でも組み合わせでもよい。黒鉛はまた、発泡でも、非発泡でも、組み合わせでもよい。非発泡黒鉛粉末はTimcal America(米国オハイオ州ウェストレイク)から、発泡黒鉛はSuperior Graphite Co.(米国イリノイ州シカゴ)から市販されている。導電性物質は電池の電解液中において安定で不溶性であるべきである。CuOはEMDより抵抗が大きいため、活物質としてEMDを用いるよりCuOを用いるほうが電池において黒鉛を必要とする。しかしながら、EMD放電生成物はEMDより導電性が低いが、CuOの放電中に製造される銅金属は非常に導電性である。
カソードを強化するためにはバインダーを使用しうる。アルカリ電池において使用しうるバインダーの例には、E. I. DuPont de Nemours & Co., Polymer Products Div.(デラウェア州ウィルミントン)からTEFLONという商標名で入手しうるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びTFE 30Bという製品名で60質量%固体分散液で入手しうるテトラフルオロエチレン樹脂のようなフルオロカーボン樹脂が含まれる。その他のバインダー物質には、Hoechst CelaneseからCOATHYLENEHA 1681という製品名で入手しうるポリエチレン、Kraton Polymers BusinessからG1702という製品名で入手しうるスチレン、エチレン及びプロピレンのジブロックコポリマーが含まれる。ポリアクリルアミド及びポルトランドセメントも使用しうる。ある種のCuOカソード混合物は同様なEMD混合物より強いカソードを形成しうるので、バインダーをほとんど必要としない。
【0011】
カソード混合物の一次加工を改良するためにまたは電池性能を改良するために、種々の添加剤のいずれかをカソードに含みうる(それぞれ、例えば、界面活性剤及びそのすべての開示が参考として本明細書に導入されている、2003年2月25日に登録された米国特許第6,524,250号に開示されているようなニオブをドーピングした二酸化チタン)。性能向上添加剤のその他の例は、参考として本明細書に導入されている以下の米国特許に開示されている。第5,342,712号(1994年8月30日登録)、第5,501,924号(1996年3月26日登録)、第5,569,564号(1996年10月29日登録)、第5,599,644号(1997年2月4日登録)、第5,895,734号(1999年4月20日登録)。ステアリン酸カルシウムはカソード混合物中において離型剤として使用される場合がある。
カソードの特定配合は、一部は選択された活物質及び、1種より多ければ、異なる活物質の割合に依存するであろう。配合はまた、一部は電池の所望の電気的特性に依存するであろう。種々の実施態様が以下に更に詳細に開示される。
隔離板は、1種以上の、イオン伝導性で電気絶縁性の物質を含む。電池を組み立てた後、隔離板が電解液溶液を吸収して保持できれば有利である。CuO、特に中間体放電生成物Cu2Oは通常のアルカリ電解液溶液にいくらか溶解するので、CuOを含む電池において使用される隔離板は、銅イオンがカソードからアノードへ容易に通過できない物質を含みうる。良好な放電性能を確保し、良好な有効期限を提供してアノードにおける過剰な水素ガスの発生を防ぐためには、実質的に銅イオン不透過性の隔離板を使用しうる。溶液から銅イオンを捕捉し、それらがアノードに達するのを妨げるので、セロファンタイプの物質が適する。例えば、隔離板の取り扱いを容易にするために、アルカリZn/MnO2電池隔離板物質として適する物質のような、アノード物質と組み合わせたセロファンの層を使用することが望ましい。銅イオン不透過性隔離板に使用しうる物質の例は、米国ジョージア州スミュルナにあるUCB Filmsから入手しうる製品名215E150のバッテリーグレードのN-メチルアミン-N-オキシドを基剤とするセロファンフィルムである。
【0012】
一般的に使用されるアルカリZn/MnO2電池隔離板物質には、ポリマーフィルム及び織った及び織っていない紙及び布が含まれる。不織物質の例には、日本の高知県にあるNippon Kodoshi Corp.から入手しうるVLZ 105グレード隔離板及び独国ノイエンブルグにあるFreudenberg Vliesstoffe KGから入手しうるグレードFS2100/063及びFS22824のような不織合成繊維の多孔質湿式堆積物質が含まれる。セロファン層と組み合わせて不織層として使用しうる物質の別の例は、PA 25という商標名でPDMから入手しうる、78〜82質量%のPVA及び18〜22質量%のレーヨンを微量の界面活性剤とともに含むものである。単独または織った及び織っていない紙及び布の塗膜として使用しうるポリマー物質の例は、ともに参考として本明細書に導入されている、2002年12月19日に公告された国際特許公告第02/101,852号及び2002年6月7日に公告された国際特許公告第02/18,144号に開示されているようなポリ(アクリル酸-co-4-スチレンスルホン酸ナトリウム)である。銅イオン不透過性層はカソードまたはアノードのいずれかに隣接して配置しうる。
アルカリ電池のアノードはゲル化した亜鉛粒子の混合物を含みうる。亜鉛は、粉末またはフレーク状でも、両者の組み合わせでもよい。ビスマス、インジウム、及びアルミニウムを含むアマルガム化されていない亜鉛合金が使用されうる。好ましくは約110μmのD50を有する亜鉛粉末はUmicore(ベルギー国、ブリュッセル)から入手でき、亜鉛フレーク(例えば、グレード5454.3)はTransmet Corp.(米国オハイオ州コロンバス)から入手できる。
アノードはまた、水、水酸化カリウム電解液、及びゲル化剤も含みうる。Noveon, Inc.(米国オハイオ州クリーブランド)から入手しうるCARBOPOL(登録商標)940のような100%酸の形であるアクリル酸が一般的なゲル化剤である。電池における気体の発生の最少化及び/または放電性能の向上のために、少量のその他の物質もアノード混合物及び/または電解液に添加しうる。そのような物質の例には、In(OH)3、ZnO、及び珪酸ナトリウムが含まれる。
【0013】
完成した未放電電池における電解液中の総水酸化カリウム濃度は、約25乃至約50質量%、一般的には約36乃至約40質量%である。
水酸化ナトリウムは、水酸化カリウムとともに、またはその代わりに使用しうる。放電性能は水酸化カリウムのほうがしばしば良好であるが、水酸化ナトリウムは費用の見地から有利かもしれない。KOHよりNaOHを使用する場合には、電池中の電解液における総濃度は約19質量%でもよい。
アノードの特定組成は、一部は選択した活物質及び電池の作業要件に依存するであろう。
電池におけるアノード及びカソードの相対的な量は、一般的には放電効率を最大するために厳密にバランスをとる。
活物質として亜鉛を用いるアルカリ電池におけるアノード集電装置は、一般的には銅、真鍮及びそれらの合金のような高度に導電性の金属から製造される。それらは、特に亜鉛がアマルガム化されていない場合には水素ガスの発生を低下させるために、しばしば銅より高い水素過電圧を有する金属と混合されるか、及び/またはそれが塗布される。そのような金属の例には、亜鉛、インジウム及び錫が含まれる。
缶の開放端部を閉じて活物質及び電解液を電池内に密閉するにはいずれかの適する手段を使用しうる。これにはしばしば1種以上の金属カバー及びポリマーシールまたはグロメットが含まれる。確立された限界を超える場合には、一般的には、電池から内部圧力を制御放出させるためにカバー、シールまたは缶の一以上に圧力逃がしベントが含まれる。
特にバッテリーが単一の電池を含む場合には、電池は缶側壁の外部表面の周りにカバーを含みうる。所望の電気的特性及びその他の特徴を有する複数の電池バッテリーを形成するためには、複数の電気的に結合した電池をまとめて単一のケースに一緒に入れてもよい。
【0014】
前述のように、カソード混合物の配合は、一部は選択した物質の種類及び電池の所望の電気的特性に依存するであろう。一実施態様においては、電池は活物質としてCuOのみを含む。そのようなカソード混合物は以下の量の乾燥成分を含みうる。
CuO−10〜98質量%、
黒鉛またはその他の導電体−0〜30質量%、
バインダー−0〜20質量%、及び
添加剤−各々0〜25質量%。
円筒状アルカリCuO電池においては、カソードは一般的には80〜98質量%のCuOを含むであろう。薄い印刷された電極を有する電池においては、カソードは10乃至98質量%のCuOを含みうる。
他の実施態様においては、電池は活物質としてCuO及びEMDの両方を含む。EMDのCuOに対する割合が異なる電池は、種々の様式で、あるいは種々の状況で有利でありうる。
表1は、単独のカソード活物質としてCuOを用い、2層の隔離板(Freudenburg FS22824及びUCB 215R150)を有する本発明の実施態様のカソード、アノード及び電解液配合物を示す。電池は、図1に示されるような電極の形状を有するR6寸法の電池である。カソードは、4個の成形環の積み重ねから形成され、最終外径は13.39mm(0.527インチ)、内径は10.49mm(0.413インチ)、及び高さは42.34mm(1.667インチ)である。カソード及び隔離板の内側のアノードの空洞の直径は10.11mm(0.398インチ)である。カソードを形成して隔離板を挿入した後、アノードを電池内に適用する前に、45質量%のKOH溶液を電池に更に1.0g添加する。
前述の記載は、特に、負極活物質として亜鉛を用い、ボビン型電極形状を有する円筒状水性アルカリ電池に関する。しかしながら、本発明はまた、アルミニウム及びマグネシウムアルカリ電池、再充電可能なニッケルアルカリ電池及び、リチウム、アルミニウム及びマグネシウムを基剤とする負極を有する一次及び再充電可能な非水性電池のような、他の電気化学系を有する電池を含む、一次及び再充電可能な電池の両方の他のタイプの電池にも適用しうる。電池の設計及び使用する物質は、電池の電気化学及び電池を使用するデバイス及び環境の種類の使用に適するそれであろう。
【0015】
【表1】

【0016】
本発明によるバッテリー電池は、すでに公知のCuOを含む電池より、以下の利点を一以上含む多くの利点を有する。
・放電時の増大した電池作動電圧、
・高電圧終止点までの増大した電池放電容量、
・“1.5ボルト”アルカリZn/MnO2電池を使用するように設計されているデバイスを満足に作動させるために保持されている適切な電圧、
・本発明のCuOなしでは作動しないデバイスを作動させるために保持されている適切な電圧、
・放電の初期の高電圧のための一定電力放電時のより良好な放電容量、及び
・従来のCuOより良好な高電流及び高電力放電容量。
本発明によるバッテリー電池はまた、カソード活物質としてMnO2のみを用いる電池より、以下の利点を一以上含みうる。
・放電中の増大するカソード導電性、
・MnO2の場合より平坦な放電電圧形状、
・“1.5ボルト”アルカリZn/MnO2電池におけるEMD部分をCuOで置換することにより幅広い電圧終止点までの改良された放電性能、
・EMDと比較して改良された成形特性、
・EMDの場合より必要とされるカソード体積が小さいため、アノードにより大きい利用可能な体積が残る、
・電池の放電状態の指標として有用な、2工程放電電圧形状、及び
・EMDより大きい一定抵抗放電時の容量。
前述の利点のうちいくつかは、以下の実施例及び参照される図面において明らかであろう。例えば、所望の比表面積を有するCuOが45質量%のKOH電解液で浸された半電池においてCuO1gあたり10mAの一定電流(典型的なLR6アルカリZn/MnO2電池の場合、おおよそ100mAに匹敵)で放電されると、Zn/ZnOに対する0.90ボルト以上の電位で放出される容量は実質的に増大する。CuOは、0.90ボルト以上で、CuO1gあたり200mAhより多い、場合によっては250mAhより多い容量を提供しうる。異なる視点から改良を考察すると、CuOの総容量の30%以上、あるいは40%以上が0.90ボルト以上で放出される。
【実施例1】
【0017】
PURATRONIC(登録商標)酸化銅(II)粉末(製品番号10700)は、Alpha Aesar(米国マサチューセッツ州ウォード・ヒル)から入手した。この物質は、通常99.995%のCuO(金属基準)であり、密度は6.3〜6.49g/cm3である。粒度分布及び比表面積を測定するために、CuO物質の試料を試験した。粒度分析は、MICROTRAC(登録商標)X-100 Particle Size Analyzerを用いて実施した。比表面積の測定は、窒素を用い、BET法により実施した。結果は表2に要約する。
CuO物質の試料を走査電子顕微鏡で調べた。物質はずっと小さい一次粒子の大きな凝集体から成っていた。
CuO物質の試料を浸された半電池において電気化学的に評価した。電極混合物は、45質量%のCuO、45質量%のKS6非発泡黒鉛粉末(米国オハイオ州ウェストレイクにあるTimcal America)及び10質量%の9.0M KOH溶液を混合することにより調製した。CuO及び黒鉛を混合し、次いで均質化するまで乳鉢及び乳棒で処理した。KOH溶液を添加し、混合物を再び乳鉢及び乳棒で処理した。
使用した電池本体は、円筒状LUCITE(登録商標)本体を有した。接触タブを有するニッケルめっきしたステンレス鋼集電装置は、接触タブを底面の中心にある穴を貫通させて、電池本体の底面内の穴に設置した。電池本体との集電装置の界面をシールし、タブの穴から電解液が漏れるのを防ぐために、透水性の低いプラスチックフィルム(Pechiney Plastic Packaging, Inc.製のPARAFILM M(登録商標))のディスクを使用した。Carverプレスを用い、352kg/cm2(5,000psi)の印加圧力で、約0.1654gのCuO電極混合物をペレットに形成し、ペレットを電池本体の底面内の集電装置上に置いた。ペレットの上部には3片のセルロース隔離板(コネチカット州ウィンザー・ロックスにあるThe Dexter Corporation製の製品番号9258)を置き、その上に穴を開けたナイロンディスクを置いた。ねじ込みLUCITE(登録商標)ピストンを電池に挿入し、30cm-kgのトルクで締め付けた。次いで電池に約7mlの45質量%KOH溶液を注入し、PARAFILM M(登録商標)でシールした。白金線対極及びHg/HgO対照電極を電池内に挿入した。電池を約30分間平衡させ、電池をCuO活物質1gあたり10mAの電流で連続的に放電させた。電圧は、1.36ボルトを加えることによりZn/ZnO対照電極に対する電圧に数学的に変換した。結果は、x軸にCuOの容量(mAh/g)、y軸にZn/ZnOに対する電圧を示す図2に示す。
【実施例2】
【0018】
約10gの、実施例1において使用したCuO物質と同一の物質を、10片の12.7mm(0.5インチ)のセラミック媒体とともに113g(4オンス)のポリエチレンの瓶に入れ、約12時間粉砕した。実施例1において記載した方法と同一の方法を用い、ボールミル粉砕したCuOの試料を粒度分布、比表面積及び浸された半電池における放電性能について評価した。粒度及び比表面積の結果は表2に要約する。放電の結果は、図2において実施例1の結果と比較する。ボールミル粉砕した物質は約1μmの寸法の一次粒子並びに比較的小さい凝集体を含んだ。
【0019】
【表2】

【実施例3】
【0020】
約8.5gの、実施例1において使用したCuO物質と同一の物質を、2片の12.7mm(0.5インチ)のジルコニア媒体とともにジルコニアのバイアルセットに入れ、高エネルギーModel 8000 Spex Mill(米国ニュージャージー州メタチェンにあるSPEX CertiPrep, Inc.)を用い約2時間粉砕した。実施例1において記載した方法と同一の方法を用い、Spexミル粉砕したCuOの試料を、走査電子顕微鏡を用いて調べ、浸された半電池において試験した。一次粒子の寸法は1μm未満に減少した。放電の結果は、図2において実施例1及び2の結果と比較する。ボールミル粉砕と同様に、Spexミル粉砕により減少した粒度及び増大した比表面積は、未粉砕物質と比較して比較的高い電圧における容量が実質的に増大した。
【実施例4】
【0021】
次の研究は、異なる時間のSpexミル粉砕の効果を評価するために実施した。実施例1において使用したCuO物質の別の試料を入手した。この試料の粒度分布は、多量の非常に大きな粒子のために、まず500μmより大きい粒子を除去するために物質を篩い分けし、26質量%を除去すること以外は実施例1に記載したようにして測定した。試料を異なる時間Spexミル粉砕し、粒度分布を分析した。Spexミル粉砕した物質を篩い分けする必要はなかった。D50、D90及びD10値を表3に要約する。
未粉砕物質は、約230μmに中心がある単一のピークを有した。粉砕した物質は二峰性分布を有した。30分までの粉砕ではD50値が減少したが、追加の粉砕ではD50値が増大した。10分間粉砕した物質のピークは、約3μm (0.8〜10μm)及び約20μm (3〜100μm)に中心があった。30分間の粉砕では微粉の割合が増大したが、第二のピークの平均(25μmへ)及び幅(4〜300μmへ)が増大した。一般的には、追加の粉砕で微細な粒子の割合が減少し、一部の粒子の再凝集を示すが、D10値は減少が続き、一次粒子の寸法の低下を示した。
走査電子顕微鏡を用いた物質の調査は、一部の最大凝集体以外は、一次粒子及び凝集体はほぼ球状(約1.2のアスペクト比)であることを示した。最大凝集体は、一般的には粉砕前及び10分間の粉砕後は約2のアスペクト比を有した。その他の試料の最大凝集体は約1.2のアスペクト比を有した。粉砕により、一次粒子の寸法は、粉砕前の約1〜3μmから約0.3〜2.5μmに減少した。
未粉砕及び粉砕したCuOの比表面積も実施例1に記載したようにして測定し、結果は表3に含める。D50値はそうではなかったが、比表面積及びD10値は粉砕時間の増大に伴って上昇し続けた。
【0022】
【表3】

【0023】
表3中の試料のCuOの放電容量も測定した。以下の点以外は実施例1に記載したようにして電極を製造し、浸された半電池において試験した。電極ペレット質量(0.2786g)、電極混合物におけるCuOの黒鉛に対する質量比(8.2:1)、電極集電装置(ニッケルタブを有する金めっき)、電極混合物(電解液なし)、ペレット成形圧力(844kg/cm2(12,000psi)で1分間)、隔離板(Scimat製の700/73隔離板4層)、対極(金めっきしたニッケルメッシュ)、電解液(ZnOで飽和して濾過した37質量%KOH)、及び対照電極(Carbopol(登録商標)940でゲル化させた37質量%KOH及び3質量%ZnO電解液中の亜鉛線)。0.90ボルトまでの放電容量を表3中の試料のCuOの比表面積の関数としてプロットする。放電容量は、比表面積の増大に伴って増大する。曲線は、約1.5m2/gの比表面積を超えると横ばい状態になりはじめ、比表面積が3.0m2/gを超えると追加の容量がほとんど期待されなくなるであろう。
【実施例5】
【0024】
酸化銅(I)(99%Cu2O、金属基準)はAlfa Aesarから入手した。実施例3における8.5gのCuOの代わりに10.5gのCu2OをSpexミル粉砕すること以外は、実施例1〜3における場合と同様に、物質の試料を調製し、調製時、ボールミル粉砕後及びSpexミル粉砕後に評価した。未粉砕及びボールミル粉砕したCu2O試料の粒度分布及び比表面積は、実施例1〜3においてCuO物質に関して記載したようにして測定し、結果を表4に要約する。未粉砕、ボールミル粉砕及びSpexミル粉砕したCu2O試料を実施例1〜3に記載したようにして電極に製造して、浸された半電池において試験し、結果を図4にプロットする。
【0025】
【表4】

【0026】
実施例1〜3と同様に、Cu2O物質の粒度の減少及び比表面積の増大の結果、比較的高い電圧において放出された放電容量が有意に増大した。
【実施例6】
【0027】
図4における放電曲線の各々において2つの電圧平坦域が観察された。これらの2つの平坦域の存在は、Cu2Oを空気中でKOH電解液溶液と混合する電極混合物の調製中に、Cu2Oの一部がCuOへ酸化する結果とされていた。このことを確認して、Cu2Oの粉砕及び混合中のCu2Oの部分的酸化の両方の影響を評価するために、以下のように追加の電極を製造して試験した。
第一のロットの電極は、実施例5において使用した物質と同一の入手源からの未粉砕Cu2Oを用いて調製した。電極の調製は、電極混合物が各50質量%のCu2O及び黒鉛(KOH溶液なし)を含有したこと、及び電極ペレットは混合物を352kg/cm2(5,000psi)で1分間成形することにより形成したこと以外は、実施例1に記載したようにして実施した。
第二のロットの電極及び浸された半電池は、Spexミル粉砕したCu2Oを使用して第一のロットと同様にして調製した。
第三のロットの電極及び浸された半電池も、電極混合物が45:45:10の質量比でCu2O、黒鉛及び37%KOH溶液を含むこと、及び電極成分を空気の存在下で混合すること以外は、Spexミル粉砕したCu2Oを使用して第二のロットと同様にして調製した。
3つのロットの各々の電極を、電解液溶液がZnOを含まないこと以外は実施例4に記載したようにして浸された半電池中に置き、Cu2O1gあたり10mAの一定電流で放電させた。放電試験の結果は図5に示す。Cu2Oの比表面積が増大しただけでは放電容量はほとんど向上しないが、増大した表面積は空気の存在下で乾燥Cu2O電極成分をKOH溶液とブレンドする効果を増大させた。
【実施例7】
【0028】
CuOを硝酸銅(II)及び水酸化ナトリウムから調製した。30.37gのCu(NO3)2・3H2Oを41.9mlの水に溶解させることにより41.9mlの3M Cu(NO3)2溶液を調製した。50mlの3M NaOHを添加すると、沈殿物としてCu(OH)2が形成した。Cu(OH)2を洗浄、濾過、乾燥して、200℃に24時間加熱すると、CuOが得られた。粒度分布及び比表面積は実施例1に記載したようにして測定した。粒子は、約3μm及び35μmに中心を有するピークがある二峰性分布を有し、D50値は約13.7μmであった。比表面積は約3.28m2/gであった。実施例1に記載したようにして電極を製造して放電させた。放電曲線(x軸にCuOの容量(mAh/g)、y軸にZn/ZnOに対する電圧)は図6に示す。
【実施例8】
【0029】
活物質としてCuOを有するカソードを、完全電池において活物質としてEMDを有するカソードと比較した。CuOを2時間Spexミル粉砕すると、比表面積は2.18m2/gとなった。CuO電池は、平均カソード質量が0.2601g(0.2319gCuO)、平均カソード体積が0.0501cm3、及び対極が白金線の代わりに亜鉛エキスパンデッドメタルであること以外は実施例4と同様であった。EMD電池は、カソードにおいて十分な導電性を提供するためには黒鉛は少ししか必要でないためにEMD:黒鉛の質量比を11.5:1に増大させたこと、平均カソード質量が0.2076g(0.1911gEMD)であること、及びカソードペレットを352kg/cm2(5,000psi)において1分間成形して0.0503cm3の最終体積とすること以外はCuO電池と同様にして製造した。
電池を498Ωの一定抵抗で放電させた(活物質1gあたり約10mAの平均放電)。放電曲線は図7に示す。いくつかの電圧までの平均放電時間を以下の表5において比較する。これらの結果は、アルカリZn/MnO2電池が使用される一般的なタイプのデバイスの最低電圧要件の代表値である電圧まで、カソード物質としての本発明のCuOの優位性を示す。
【0030】
【表5】

【0031】
前述のように、正極活物質としてのCuO及び亜鉛を含む負極を有するアルカリ電池は、“1.5ボルト”電池用途に使用しうる。特に高放電率及び高い最低電圧要件を有するデバイスにおいて更に完全にCuOの容量を使用するためには、CuO電池は約1.0の公称電池電圧を提供するために適するアノード活物質を使用して調製しうる。あるいは、2つの従来の1.5ボルト電池の代わりに3つのZn/CuO電池を使用してもよい。
開示された概念の精神から逸脱することなく本発明に種々の修正及び改良をなしうることは、本発明を実施する者及び当業者により理解されよう。提供される保護の範囲は、特許請求の範囲及び法律により認められる解釈の幅により決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ボビン型構造のアルカリ電池の電池の軸線に沿った横断面図である。
【図2】市販のCuO及び本発明によるCuOを用いて製造した電極の浸された半電池放電曲線を比較するプロットである。
【図3】比表面積の関数としてのCuO放電容量を示すプロットである。
【図4】粉砕した及び未粉砕Cu2Oを用いて製造した電極の浸された半電池放電曲線を比較するプロットである。
【図5】電極混合物とブレンドしたKOHの存在下または不在下の、市販のCu2O及び本発明によるCu2Oを用いて製造した電極の浸された半電池放電曲線を比較するプロットである。
【図6】本発明による化学的に合成したCuOを用いて製造した電極の浸された半電池放電曲線を示すプロットである。
【図7】亜鉛対極に対して放電した、電解二酸化マンガン及び本発明によるCuOを用いて製造した電極の放電曲線を示すプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池容器、
正極活物質を含む正極、
負極活物質を含む負極、
正極及び負極間に配置されている隔離板、及び
電解質、
を含む電気化学的電池であって、正極活物質が、試験したときに1.0乃至4.0m2/gのBET比表面積を有するCuOを含むことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記BET比表面積が、1.5m2/g以上である請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記BET比表面積が、1.7m2/g以上である請求項2記載の電池。
【請求項4】
前記BET比表面積が、せいぜい3.0m2/gである請求項1記載の電池。
【請求項5】
前記CuOが、試験したときに、統一散乱技術を用いたレーザー回折分析により測定したD10値が、せいぜい3.0μmである粒子を含む請求項1記載の電池。
【請求項6】
前記D10値が、1.0乃至2.0μmである請求項5記載の電池。
【請求項7】
前記D10値が、せいぜい1.7μmである請求項6記載の電池。
【請求項8】
前記CuO粒子が、試験したときに、統一散乱技術を用いたレーザー回折分析により測定したD50値が50μm未満である請求項5記載の電池。
【請求項9】
前記正極が、1種以上の追加の活物質を含む請求項1記載の電池。
【請求項10】
前記負極活物質が、亜鉛からなり、前記電解液が、アルカリ水溶液からなる請求項1記載の電池。
【請求項11】
前記正極活物質が、二酸化マンガンを更に含む請求項10記載の電池。
【請求項12】
前記負極活物質が、リチウムを含み、前記電解液が、非水性溶剤中の溶質を含む請求項1記載の電池。
【請求項13】
前記正極活物質が、二硫化鉄を更に含む請求項12記載の電池。
【請求項14】
密閉電池容器、
正極活物質を含む正極、
亜鉛を含む負極、及び
水性アルカリ電解液、
を含む電気化学的一次電池であって、正極活物質が、粒子状CuOを含み、前記CuOの、窒素を用いたBET法により測定した比表面積が、1.0乃至4.0m2/gで、統一散乱技術を用いたレーザー回折分析により測定したD10値が、せいぜい3.0μmである電池。
【請求項15】
前記比表面積が、1.5乃至3.0m2/gである請求項14記載の電池。
【請求項16】
前記D10値が、1.0乃至2.0μmである請求項15記載の電池。
【請求項17】
前記D50値が、50μm未満である請求項16記載の電池。
【請求項18】
前記正極が、中空円筒状であり、隔離板及び前記負極が、前記中空円筒の内部表面により形成される空洞内に配置されている請求項14記載の電池。
【請求項19】
前記正極が、80乃至98質量%のCuOを含む請求項18記載の電池。
【請求項20】
前記電解質が、水酸化カリウムを含み、前記負極が、ゲル化剤を含む請求項18記載の電池。
【請求項21】
前記正極活物質が、電解二酸化マンガンを更に含む請求項14記載の電池。
【請求項22】
前記CuOが、45質量%の水酸化カリウム電解質に浸された試験電池中室温において、Hg/HgO電極に対してCuO1gあたり10mAの一定電流で室温において0.6ボルトまで放電させる場合に、CuO1gあたり200mAhより多く提供しうる請求項14記載の電池。
【請求項23】
前記CuOが、CuO1gあたり250mAhより多く提供しうる請求項22記載の電池。
【請求項24】
前記CuOが、45質量%の水酸化カリウム電解質に浸された試験電池において、室温においてCuO1gあたり10mAの一定電流で放電させる場合に、亜鉛/酸化亜鉛対照電極に対して0.9ボルト以上の電圧において0.6ボルトまでの放電容量の30%以上を提供しうる請求項14記載の電池。
【請求項25】
前記CuOが、0.9以上の電圧において0.6ボルトまでの放電容量の40%以上を提供しうる請求項14記載の電池。
【請求項26】
密閉電池容器、
実質的にCuOからなる正極活物質を含む正極、
亜鉛を含むゲル化負極、
正極及び負極間に配置されている隔離板、及び
水酸化カリウムを含む水性アルカリ電解液、
を含む電気化学的一次電池であって、
前記正極が、中空円筒状であり、前記隔離板及び負極が、前記中空円筒の内部表面により形成される空洞内に配置されており、かつ
正極活物質が、粒子状CuOを含み、前記CuOの、窒素を用いたBET法により測定した比表面積が、1.5乃至3.0m2/gで、統一散乱技術を用いたレーザー回折分析により測定したD10値が、1.0乃至2.0μmであることを特徴とする電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−515753(P2007−515753A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532486(P2006−532486)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/013077
【国際公開番号】WO2004/102699
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504288351)エヴァレディ・バッテリー・カンパニー・インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】