説明

酸化銅ペースト及び金属銅層の製造方法

【課題】高精細で低抵抗な金属銅層を精度よく形成可能な酸化銅ペースト及びこれを用いた金属銅層の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化銅ペーストを、長径の長さの平均値が100nm以上1700nm未満であり、短径の長さの平均値に対する長径の長さの平均値の比が1.2以上20以下である酸化銅粒子群と、分散媒とを含んで構成する。また該酸化銅ペーストを支持体上に付与し、導体化処理することで金属銅層を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化銅ペースト及び金属銅層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路や端子形成等、金属銅の微細パターン形成にはフォトレジストとフォトマスクを用いた手法が用いられてきた。一方、印刷法により金属銅の元になるインクを印刷・金属化して金属銅の微細パターンを形成する手法がコストの低減、工程の削減、投入資材と廃棄物の削減、大面積デバイスへの適用の点から検討されるようになってきた。
【0003】
例えば、銅粒子をバインダー樹脂に混合した樹脂バインダー銅ペーストが提案され、実際に使用されている。しかし、このような樹脂バインダー銅ペーストから形成される導電パターンではペースト内の銅粒子同士の接触で導電性が得られるものの、抵抗が高くなることが問題となっている。さらに、導電パスにおける銅粒子間の接触数が抵抗を増加させる要因となりうるため、銅粒子の小粒径化は導電パスにおける接触数の増加を伴うため、結果として抵抗を増加させることになる。このため線幅が70μm以下であるような微細パターンの形成に必要な銅粒子の小粒径化が、事実上困難である。
【0004】
上記に関連して、銅ナノ粒子を含みバインダーを含まない銅インクやペーストが提案されている。この手法では、パターン形成・乾燥後に導体化処理を行うことにより金属粒子間に金属結合を形成して低抵抗化するため、微細パターン形成性と低抵抗性が両立できると期待されている。
一方、金属銅粒子ではなく、酸化銅粒子の堆積層でパターン形成し、これをギ酸含有不活性ガス中で140〜200℃に加熱することにより、低抵抗の金属銅膜が得られることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/034016号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高精細で低抵抗な金属銅層を精度よく形成可能な酸化銅ペースト及びこれを用いた金属銅層の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 複数の酸化銅粒子を含み、前記酸化銅粒子の3次元形状において、前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を長径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面間距離を短径とした場合に、前記複数の酸化銅粒子について、前記長径の長さの平均値が100nm以上1700nm未満であり、前記短径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が1.2以上20以下である酸化銅粒子群と、分散媒と、を含む酸化銅ペーストである。
【0008】
<2> 前記酸化銅粒子群は、前記長径を与える平行二平面に直行し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面間距離を中径とした場合に、前記複数の酸化銅粒子について、前記長径の長さの平均値が100nm以上1700nm未満であり、前記短径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が1.2以上20以下であり、前記中径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.0以上である前記<1>に記載の酸化銅ペーストである。
【0009】
<3> 前記酸化銅粒子群を含む全粒子の含有率が30質量%以上80質量%以下であり、全粒子中における前記酸化銅粒子群の含有率が50質量%以上である前記<1>又は<2>に記載の酸化銅ペーストである。
【0010】
<4> コーンプレートを装着した粘弾性測定装置で測定されるCassonの平衡粘度が、0.01Pa・s以上200Pa・s以下である前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の酸化銅ペーストである。
【0011】
<5> 前記分散媒は、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa・s未満である有機溶剤を含む前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の酸化銅ペーストである。
【0012】
<6> 金属銅層形成用である前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の酸化銅ペーストである。
【0013】
<7> 支持体上に、前記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の酸化銅ペーストを付与して酸化銅粒子含有層を形成する工程と、前記酸化銅粒子含有層を導体化処理して金属銅層を形成する工程とを有する金属銅層の製造方法である。
【0014】
<8> 前記酸化銅ペーストを付与する方法が、印刷法である前記<7>に記載の製造方法である。
【0015】
<9> 前記導体化処理が、前記酸化銅粒子含有層をギ酸含有雰囲気下で加熱処理する方法である前記<7>又は<8>に記載の製造方法である。
【0016】
<10> 形成された前記金属銅層に、電解めっき処理又は無電解めっき処理する工程を更に含む前記<7>〜<9>のいずれか1つに記載の製造方法である。
【0017】
<11> 前記<7>〜<10>のいずれか1つに記載の製造方法で得られた金属銅層を含む導体配線である。
【0018】
<12> 前記<7>〜<10>のいずれか1つに記載の製造方法で得られた金属銅層を含む電極である。
【0019】
<13> 前記<7>〜<10>のいずれか1つに記載の製造方法で得られた金属銅層を含む熱伝導路である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高精細で低抵抗な金属銅層を精度よく形成可能な酸化銅ペースト及びこれを用いた金属銅層の製造方法を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】製造例1にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図2】製造例2にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図3】製造例1〜3にかかる酸化銅粒子のX線回折スペクトルの一例を示す図である。
【図4】製造例4にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図5】製造例7にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図6】製造例8にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図7】製造例9にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図8】製造例10にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図9】実施例13に用いた酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図10】比較例2に用いた酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図11】比較例3に用いた酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図12】比較例4に用いた酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図13】実施例1にかかる酸化銅ペーストから形成された酸化銅粒子含有層パターンの一例を示す図である。
【図14】実施例13にかかる酸化銅ペーストから形成された酸化銅粒子含有層パターンの一例を示す図である。
【図15】比較例2にかかる酸化銅ペーストから形成された酸化銅粒子含有層パターンの一例を示す図である。
【図16】比較例3にかかる酸化銅ペーストから形成された酸化銅粒子含有層パターンの一例を示す図である。
【図17】実施例1にかかる酸化銅ペーストから形成された金属銅層断面の走査型イオン顕微鏡像の一例を示す図である。
【図18】酸化銅粒子の形状を測長する方法を模式的に示す斜視図である。
【図19】酸化銅粒子の形状を規定するパラメータを模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<酸化銅ペースト>
本発明の酸化銅ペーストは、長径の長さの平均値が100nm以上1700nm未満あり、短径の長さの平均値に対する長径の長さの平均値の比が1.2以上20以下である酸化銅粒子群と、分散媒とを含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。特定の形状を有する酸化銅粒子群を含むことで、高精細で低抵抗な金属銅層を優れた精度で形成することができる。これは例えば以下のように考えることができる。
【0023】
酸化銅ペーストを用いた金属銅層パターンの形成においては、酸化銅ペーストの物性として、酸化銅粒子含有層のパターン形成性と、これを還元雰囲気下で熱処理して導体化する際のパターン形状の安定性とが求められる。ここで分散剤や添加剤(例えば、チキソ性付与剤や粘度調整剤)等によって酸化銅ペーストの物性を調整すると、導体化処理において充分な導電性が得られない場合がある。一方、前記酸化銅粒子群は特定の形状を有していることで分散媒との親和性が高いため、これを含んで構成された酸化銅ペーストは、分散剤や添加剤によって物性を調整しなくてもパターン形成性と形状安定性に優れた物性を示す。そのため導体化処理に際しては高い導電率を有する金属銅層パターンを形成できると考えられる。
【0024】
(酸化銅粒子群)
前記酸化銅ペーストに含まれる酸化銅粒子群は、複数の特定形状の酸化銅粒子(以下、「長粒状酸化銅粒子」ともいう)を含み、前記酸化銅粒子の3次元形状において、前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、その距離が最大になる平行二平面の距離を長径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、その距離が最小となる平行二平面の距離を短径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、その距離が最大となる平行二平面の距離を中径とした場合に、長径の長さの平均値(以下、「平均長径」ともいう)が100nm以上1700nm未満であり、短径の長さの平均値(以下、「平均短径」ともいう)に対する長径の長さの平均値の比(平均長径/平均短径)が1.2以上20以下である。前記長粒状酸化銅粒子は、その特徴的な形状により分散媒への分散性に優れるため、これを含む酸化銅ペーストは支持体への付与適性に優れ、高精細な酸化銅粒子含有層を高精度に形成することができる。また形成された酸化銅粒子含有層を導体化処理する際に低抵抗で緻密な金属銅層を形成することができる。
【0025】
また前記酸化銅粒子群は、前記長径を与える平行二平面に直行し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面間距離を中径とした場合に、前記複数の酸化銅粒子について、前記長径の長さの平均値が100nm以上1700nm未満であり、前記短径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が1.2以上20以下であり、前記中径の長さの平均値(以下、「平均中径」ともいう)に対する前記長径の長さの平均値の比が2.0以上であることが好ましい。
【0026】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子の3次元形状は、3次元透過型電子顕微鏡、FIB/走査型電子顕微鏡、3D X線トモグラフィーなどの粒子の3次元形状の情報が直接得られる観察方法を用いて観察することができる。なお酸化銅粒子の3次元形状の観察は、観察される酸化銅粒子がそれぞれ独立した粒子として識別可能な条件で観察を行なう。例えば20,000倍に拡大し、酸化銅粒子の濃度を適宜希釈して行う。
【0027】
前記酸化銅粒子の形状は長径、短径及び必要に応じて中径のそれぞれの長さの平均値で規定される。ここで長径の長さは、酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面間の距離として与えられる。また小径の長さは、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面間の距離として与えられる。さらに中径の長さは、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面間の距離として与えられる。また長径、中径及び短径のそれぞれの長さの平均値は、任意に選択される20個の酸化銅粒子についてそれぞれ長径、中径及び短径を測定し、それぞれの算術平均値として与えられる。
【0028】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子の長径、中径及び小径の長さは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡を用いて酸化銅粒子の平面像を観察し、観察された平面像から酸化銅粒子の3次元形状を想定して上記と同様にして測定することもできる。例えば1つの平面像について、その平面像の外周に互いに異なる接点で外接し、互いに平行な2本の接線の組を用いて、長径、中径及び小径のそれぞれの長さを測定することができる。なお、観察される個々の酸化銅粒子が独立した粒子として識別可能な条件で観察を行う。例えば走査型電子顕微鏡による観察は20,000倍(加速電圧5kV)で行う。
【0029】
酸化銅粒子の長径、中径及び短径のそれぞれの長さの測定方法を図18に示す模式図を参照しながら説明する。図18に模式的に示す酸化銅粒子1に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となる第一の平行二平面を選択し、第一の平行二平面間の距離として酸化銅粒子1の長径の長さ2が測定される。また前記第一の平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子1に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となる第二の平行二平面を選択し、第二の平行二平面間の距離として酸化銅粒子1の短径の長さ4が測定される。さらに、前記第一の平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子1に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となる第三の平行二平面を選択し、第三の平行二平面間の距離として中径の長さ3が測定される。
【0030】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子は、その長径の長さの平均値が100nm以上1700nm未満であるが、分散性と形成される導体パターンの精細性の観点から、100nm以上1500nm以下であることが好ましく、100nm以上1000nm以下であることがより好ましく、100nm以上600nm以下であることがさらに好ましい。なお、前記酸化銅粒子の長径の長さは上記のようにして測定され、20個の酸化銅粒子についての測定値の算術平均として平均長径が算出される平均長径が100nm未満の酸化銅粒子群を用いて酸化銅ペーストを調製した場合、粒径の低下と共に酸化銅ペーストの粘度が増加するため、所望の粘度に調製した場合に酸化銅ペースト中の酸化銅粒子の濃度が低くなる傾向がある。一方、平均長径が1700nmを超える酸化銅粒子群を用いて酸化銅ペーストを調製した場合には、酸化銅ペーストの印刷適性が低下する傾向があり、さらに後述する酸化銅粒子群の製造方法での合成が困難となる。
【0031】
前記酸化銅粒子は、長径の長さの変動係数が20%以下であることが好ましく、15%以下であることが好ましい。このように粒子形状のばらつきが小さいことで、より分散性が向上する。なお変動係数は標準偏差を平均値で除して求められる。
【0032】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子の好ましい形状は、略球状及び繊維状ではなく、板状、燐片状、針状、棒状又は長粒状(以下、「特定形状」ともいう)である。これらの特定形状の粒子は、平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)が1.2以上20以下である。(平均長径)/(平均短径)はいわゆるアスペクト比であり、その値が1.2未満で1に近いほど球形に近い形状となる。また20を超える場合を繊維状の粒子形状とする。
【0033】
酸化銅粒子群の形状について図19を参照しながら説明する。図19は横軸に平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)をとり、縦軸に平均短径に対する平均中径の比(平均中径/平均短径)をとった場合における酸化銅粒子の形状分布を模式的に示す図である。図19において平均長径/平均短径及び平均中径/平均短径が共に1の場合、酸化銅粒子の形状は球状になる。また例えば、平均中径/平均短径を一定の値(例えば、1)とした場合の粒子形状を、平均長径/平均短径が1より大きくなるに従って、長粒状、棒状、そして針状であると定義する。また例えば、平均長径/平均短径を一定の値(例えば5)とした場合の粒子形状を、平均中径/平均短径が1より大きくなるに従って、長粒状、鱗片状、そして板状であると定義する。なお、長径、中径及び短径の定義上、平均長径/平均短径、平均中径/平均短径及び平均長径/平均中径はすべて1以上である。
【0034】
本発明の酸化銅粒子群は、平均長径/平均短径が1.2以上20以下である。従って本発明の酸化銅粒子群は、図19において、横軸に直交し平均長径/平均短径が1.2である直線と、横軸に直交し平均長径/平均短径が20である直線と、縦軸に直交し平均中径/平均短径が1である直線と、平均長径/平均短径が1であり平均中径/平均短径が1である点を通り、傾き(平均中径/平均短径)/(平均長径/平均短径)が1である直線とで囲まれる領域に属することになる。
【0035】
また本発明の酸化銅粒子群は、平均長径/平均短径が1.2以上20以下であって、平均長径/平均中径が2.0以上であることが好ましい。この場合の酸化銅粒子群は、図19において、横軸に直交し平均長径/平均短径が1.2である直線と、横軸に直交し平均長径/平均短径が20である直線と、縦軸に直交し平均中径/平均短径が1である直線と、平均長径/平均短径が1であり平均中径/平均短径が1である点を通り、傾き(平均中径/平均短径)/(平均長径/平均短径)が1/2である直線とで囲まれる領域に属することになる。
【0036】
酸化銅ペーストを構成する酸化銅粒子群の粒子形状が、球状に近い形状であると、酸化銅ペーストはチキソ性を発現しにくくなり、スクリーン印刷性が低下する傾向になる。また繊維状の粒子形状であると、粒子間の接触面積の増加による相互作用が強くなり、粘度の増加に起因して粒子濃度が低下したり、チキソ性が大きくなりすぎたりするためスクリーン印刷性が低下する傾向になる。
【0037】
前記酸化銅粒子群において、平均長径/平均短径は1.2以上20以下であるが、酸化銅ペーストの印刷適性の観点から、平均長径/平均短径が1.5以上15以下であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましい。また前記酸化銅粒子群において、酸化銅ペーストの印刷適性の観点から、平均中径/平均短径が1以上10以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましい。
【0038】
前記酸化銅粒子群は、酸化銅ペーストの印刷適性の観点から、平均長径が100nm以上1500nm以下であり、平均長径/平均短径が1.5以上15以下であり、平均中径/平均短径が1以上10以下であることが好ましく、平均長径が100nm以上1000nm以下であり、平均長径/平均短径が2.0以上10以下であり、平均中径/平均短径が1以上8以下であることがより好ましく、平均長径が100nm以上600nm以下であり、平均長径/平均短径が2.9以上5.5以下であり、平均中径/平均短径が1以上6以下であることがさらに好ましい。
【0039】
前記酸化銅粒子群は、酸化銅ペーストの印刷適性の観点から、(平均長径)/(平均中径)が2.0以上であることが好ましく、2.2以上であることがより好ましい。(平均長径)/(平均中径)は、{(平均長径)/(平均短径)}/{(平均中径)/(平均短径)}であり、その値が2.0以上である酸化銅粒子の形状は長粒状又は針状となる。一方、その値が2.0未満の酸化銅粒子の形状は鱗片状又は板状となる。
【0040】
前記酸化銅粒子群は、酸化銅ペーストの印刷適性の観点から、平均長径が100nm以上1500nm以下であり、平均長径/平均短径が1.5以上15以下であり、平均長径/平均中径が2.0以上であることが好ましく、平均長径が100nm以上600nm以下であり、平均長径/平均短径が2.9以上5.5以下であり、平均長径/平均中径が2.2以上であることがより好ましい。
【0041】
前記酸化銅粒子群は、前記特定形状の酸化銅粒子を複数含んで構成される。酸化銅粒子群に含まれる特定形状の酸化銅粒子の数は特に制限されず、目的に応じて適宜選択される。
【0042】
前記特定形状の酸化銅粒子を構成する酸化銅としては、酸化第一銅及び酸化第二銅が挙げられる。前記酸化銅粒子は酸化第一銅及び酸化第二銅の少なくとも一方を含んでいればよく、酸化第一銅からなる粒子であっても、酸化第二銅からなる粒子であっても、酸化第一銅及び酸化第二銅を含む粒子のいずれであってもよい。なお、前記特定形状の酸化銅粒子の製造方法については後述する。
【0043】
前記酸化銅粒子群は、前記特定形状の酸化銅粒子に加えて、特定形状とは異なる形状のその他の酸化銅粒子を更に含んでいてもよい。その他の酸化銅粒子の形状としては、略球状、毬栗状等を挙げることができる。その他の酸化銅粒子を含むことで、印刷性等の付与適性、保存安定性、導体化処理特性、導体層の特性などを向上させることができる。具体的には例えば、略球状の酸化銅粒子の添加によって付与適性を調整することができる。また毬栗状の酸化銅粒子を添加することで保存安定性が向上する。
【0044】
その他の酸化銅粒子の粒子径は特に制限されない。例えば一次粒子の数平均粒子径が1nm〜1700nmであることが好ましく、1nm〜1000nmであることがより好ましく、形成される金属銅層の平滑性の観点から、10nm〜500nmであることがさらに好ましい。特にその他の酸化銅粒子は、前記長粒状酸化銅粒子の長径の長さよりも一次粒子の数平均粒子径が小さいことが好ましい。一次粒子の数平均粒子径が小さいその他の酸化銅粒子を含むことで形成される金属銅層の緻密化を促進することができる。なお、その他の酸化銅粒子の一次粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により測定することができる。
【0045】
特定形状の酸化銅粒子を含む酸化銅粒子群におけるその他の酸化銅粒子の含有率は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば酸化銅粒子群中に30体積%以下とすることができ、10体積%以下であることが好ましい。
【0046】
前記酸化銅粒子群は、炭素原子の含有率が3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.7質量%以下であることがさらに好ましい。ここで前記酸化銅粒子群における炭素原子の含有率が2質量%以下であるとは、酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子に、その製造方法に由来する界面活性剤等の有機化合物が実質的に含まれていないことを意味する。酸化銅粒子に有機化合物が実質的に含まれていない酸化銅粒子群を用いて、後述する酸化銅ペーストを調製して導体パターンの製造方法に適用した場合に、より低抵抗の導体パターンを形成することができる。
例えば酸化銅粒子群に含まれる炭素原子の含有率は、燃焼ガス赤外線吸収法により測定される。具体的には例えば、株式会社堀場製作所製のEMIA−Vシリーズを用いて通常の条件で測定される。
【0047】
前記酸化銅ペーストは、酸化銅粒子群に加えて必要に応じてその他の材質の粒子を更に含んでいてもよい。その他の材質の粒子としては、金属銅粒子、銅以外のその他の金属系粒子等を挙げることができる。その他の金属系粒子としては、コバルト、ニッケル、銀、金、モリブデン、マンガン、マグネシウム、鉄及びこれらの酸化物等の粒子を挙げることができる。
前記酸化銅ペーストは、例えば、金属銅粒子を含むことで導体化処理温度を下げることができる。
【0048】
前記その他の材質の粒子の粒子形状は特に制限されず、略球状、扁平状、針状、ブロック状、板状、および鱗片状等が挙げられる。中でも分散性の観点から、略球状、針状及びブロック状の少なくとも1種であることが好ましい。
その他の材質の粒子の粒子径は特に制限されない。中でも一次粒子の数平均粒子径が1nm〜1000nmであることが好ましく、1nm〜500nmであることがより好ましく、形成される金属銅層の平滑性の観点から、10nm〜100nmであることがさらに好ましい。なお、その他の材質の粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により測定することができる。
【0049】
前記酸化銅ペーストは、酸化銅ペーストを付与する方法に応じて適宜選択することが出来る。例えば,スクリーン印刷に用いる場合には酸化銅粒子群及び必要に応じて含まれるその他の材質の粒子を含む全粒子の含有率が30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、50質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上75質量%以下であることがさらに好ましい。また全粒子中における酸化銅粒子群の含有率は、導体化処理後に低抵抗で緻密な金属銅層が得られるという観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。ペーストを付与する方法に応じて適宜選択することが出来る。
【0050】
さらに前記酸化銅ペーストは、導体化処理後に低抵抗で緻密な金属銅層が得られるという観点から、酸化銅粒子群を含む全粒子の含有率が30質量%以上80質量%以下であり、全粒子中における酸化銅粒子群の含有率が50質量%以上であることが好ましく、全粒子の含有率が50質量%以上75質量%以下であり、全粒子中における酸化銅粒子群の含有率が60質量%以上であることがより好ましく、全粒子の含有率が60質量%以上75質量%以下であり、全粒子中における酸化銅粒子群の含有率が70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0051】
(分散媒)
前記分散媒は、有機溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。有機溶剤としては25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満であることが好ましく、1.0×10Pa未満であることがより好ましい。
【0052】
このような有機溶剤としては、例えば以下に示すものが挙げられる。すなわち、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;エチルベンゼン、アニソール、メシチレン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、フェニルアセトニトリル、ベンゾニトリル等の芳香族系溶剤;酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、グリコールスルファイト、乳酸エチル等のエステル系溶剤;1−ブタノール、シクロヘキサノール、α−テルピネオール、グリセリンなどのアルコ−ル系溶剤;シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、1,3−ジオキソラン−2−オン、1,5,5−トリメチルシクロヘキセン−3−オン等のケトン系溶剤;ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコール系溶剤;ジヘキシルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル等のエーテル系溶剤;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;スルホラン等のスルホン系溶剤;マロノニトリルなどのニトリル系溶剤が例示できる。中でも、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、グリコールスルファイト、プロピレンカーボネート及びスルホランから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
前記酸化銅ペーストは、必要に応じて分散剤、表面保護剤、増粘剤、チキソ性付与剤等の添加剤をさらに含んでもよい。酸化銅ペーストが添加剤を含む場合、200℃以下の温度で不揮発性又は非分解性である添加剤の含有率は20質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。添加剤の含有率が前記範囲であることで、200℃以下の低温で体積抵抗率が1×10−7Ω・m以下の導体化が容易になる。また形成される金属銅層中に添加剤の残留に起因するボイドが発生することを抑制できる。
【0054】
前記酸化銅ペーストに含まれる粒子の分散状態における最大粒径は、形成する金属銅層パターンの線幅に応じて適宜選択することができる。例えば、最大粒径は形成する線幅の1/10以下であることが好ましく1/20以下であることがより好ましい。これにより、形成する線状パターンの形状乱れやかすれの発生を抑制できる。また、同様の理由から分散状態での体積平均粒径は、線幅の1/15以下であることが好ましく、1/30以下であることがより好ましい。従って、配線板用途で一般的に用いられるライン幅70μmの細線を形成する場合には、粒子の分散状態での最大粒径は7μm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5μm以下である。また粒子の分散状態での体積平均粒径は、4.7μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.5μm以下である。さらに実装基板等の高精細用途で用いられるライン幅25μmのパターンを形成する場合には、粒子の分散状態での最大粒径は2.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.3μm以下である。また粒子の分散状態での体積平均粒径は、1.7μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8μm以下である。
【0055】
ここで、体積平均粒径及び最大粒径は、粒子のブラウン運動による動的光散乱法に基づいて、光子相関法により測定される。体積平均粒径及び最大粒径の測定は、例えば、ベックマンコールター株式会社製「サブミクロン粒子アナライザーN5型」(商品名)を用いて行うことができる。
【0056】
前記酸化銅ペーストをスクリーン印刷法に適用する場合、細線描画及び印刷再現性の観点から、コーンプレートを装着した粘弾性測定装置で測定されるCassonの平衡粘度が、0.01Pa・s以上200Pa・s以下であることが好ましく、0.1Pa・s以上200Pa・s以下であることがより好ましく、1Pa・s以上200Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0057】
また前記酸化銅ペーストをインクジェット法に適用する場合、25℃における動的粘度が5mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上50mPa・s以下であることがより好ましい。動的粘度が5mPa・s以上であると、ノズルからの吐出時に霧状になることを抑制できる。また絶縁層に着液後の付与形状が良好に維持される。一方100mPa・s以下であると吐出性がより良好になる。なお、「25℃における動的粘度」とは、別言すると、測定温度25℃、せん断速度10/secでのせん断粘度である。
なお、酸化銅ペーストの動的粘度は、例えばコーンプレート治具を装着した動的粘弾性測定装置により測定できる。
【0058】
前記酸化銅ペーストは、例えば前記酸化銅粒子群及び必要に応じて含まれるその他の粒子を分散媒中に分散処理することで調製することができる。分散処理は、石川式攪拌器、自転公転式撹拌機、超薄膜高速回転式分散機、ロールミル、超音波分散機、ビーズミルなどのメディア分散機、ホモミキサーやシルバーソン攪拌機などのキャビテーション攪拌装置、アルテマイザーなどの対向衝突法を用いることができる。また、これらの手法を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0059】
また酸化銅ペーストの調製においては分散処理後に粗粒を除去する処理を行ってもよい。粗粒の除去手法としては、ろ過、遠心分離、メッシュの透過、水篩などを用いることができる。例えば、酸化銅ペーストの付与をスクリーン印刷で行う場合、スクリーンの目開きより大きな粗粒を含んでいると印刷不良の原因となり得る。そのため粗粒の除去処理を行うことが好ましい。なお、印刷時に印刷不良の原因となり得る粗粒は、グラインド・メーターにより確認できる。
【0060】
(酸化銅粒子の製造方法)
前記特定形状の酸化銅粒子は、例えば、水酸化銅を含むpH6.0以上11.0以下の含水組成物を、加熱処理して酸化銅を生成する工程を有し、必要に応じてその他の工程を含む製造方法で製造することができる。水酸化銅を含む含水組成物を特定のpH範囲で加熱処理することで、所望の形状を有する酸化銅粒子から構成される前記酸化銅粒子群を効率よく製造することができる。
【0061】
前記水酸化銅を含む含水組成物は、水酸化銅を含む水系の組成物であればよく、含まれる水酸化銅の態様は特に制限されない。前記含水組成物は、水酸化銅を溶液状態で含んでいても、懸濁状態で含んでいてもよい。前記含水組成物においては、水酸化銅の少なくとも一部が溶液状態で含まれていることが好ましい。
【0062】
前記含水組成物に含まれる水酸化銅の含有量は特に制限されず、酸化銅粒子群の製造条件等に応じて適宜選択される。なかでも酸化銅粒子群の生成効率の観点から、含水組成物中の銅イオン濃度として、0.01mol/kg〜0.15mol/kgであることが好ましく、0.015mol/kg〜0.13mol/kgであることがより好ましく、0.02mol/kg〜0.10mol/kgであることがさらに好ましい。
【0063】
前記製造方法における含水組成物のpHは6.0以上11.0以下であるが、所望のアスペクト比を有する酸化銅粒子を効率よく得る観点から、6.0以上8.5以下であることが好ましく、6.5以上8.3以下であることがより好ましく、7.0以上8.0以下であることがさらに好ましい。
一般に、水酸化銅を含む含水組成物をpHが6未満の条件で加熱処理すると塊状酸化銅粒子が生成する。またpHが11.0を越える条件で加熱処理すると繊維状の酸化銅粒子が生成するが、pH6.0以上11.0以下で加熱処理することで所望のアスペクト比を有する特定形状の酸化銅粒子を得ることができる。さらにpH6.0以上8.5以下で加熱処理することで所望のアスペクト比を有する長粒状の酸化銅粒子を得ることができる。
【0064】
含水組成物のpHの調整は、水溶性塩基又はその水溶液を用いて常法により行なうことができる。水溶性塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;二リン酸カリウム等のリン酸のアルカリ金属塩;ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド等のアルコキシドなどを挙げることができる。
【0065】
含水組成物のpHの測定方法は特に制限されず、通常用いられる手段で測定することができる。例えば、pHメータ(例えば、横河電機株式会社製のパーソナルpH/ORPメータ)で測定することができる。pHの測定値としては、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃)、中性りん酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃))を用いて、2点校正した後、電極を含水組成物に入れて、1分以上経過し安定した後の値を採用する。
【0066】
また加熱処理の温度は、含水組成物に含まれる水酸化銅を酸化銅に変換可能であれば特に制限されない。酸化銅粒子群の生成効率の観点から、60℃以上110℃以下であることが好ましく、60℃以上100℃以下であることがより好ましく、70℃以上95℃以下であることがさらに好ましい。加熱処理の温度が60℃以上であることで水酸化銅から酸化銅への変換反応が効率よく進行する。また110℃以下であると前記含水組成物の沸点を超えることがないため、耐圧容器等を要することがなく生産性が向上する。
【0067】
加熱方法は所望の温度に含水組成物を昇温可能であれば特に制限されず、通常用いられる加熱手段から適宜選択することができる。加熱手段としては例えば、温風乾燥機、恒温槽、ホットプレート、投げ込みヒーター、セラミックヒーター、パイプヒーターなどの抵抗加熱や、赤外線加熱、蒸気加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱、火炎などが挙げられる。
【0068】
前記製造方法は、銅錯体水溶液に塩基性化合物を加えて、前記水酸化銅を含む含水組成物を得る工程をさらに有することが好ましい。これにより所望のpHを有する水酸化銅を含む含水組成物をより効率的に得ることができる。
【0069】
前記銅錯体水溶液に含まれる銅錯体は、2価の銅イオンと配位子とからなる水溶性銅錯体であることが好ましい。ここで水溶性銅錯体とは純水に対して5質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性の銅錯体としてはpH6.0以上11.0以下で酸化銅粒子を生成可能であれば特に制限されず、有機酸塩基を配位子とする有機酸銅錯体であっても、無機酸塩基を配位子とする無機銅錯体であってもよい。
前記有機酸銅錯体を形成する有機酸銅塩としては、例えば、酢酸銅、ギ酸銅、シュウ酸銅、グリオキシル酸銅、クエン酸銅、プロピオン酸銅が挙げられる。また無機銅錯体を形成する無機酸銅塩としては、例えば、硝酸銅、炭酸銅、塩化銅、ヨウ化銅、臭化銅が挙げられる。これらの中でも、酸化銅粒子の生成効率の観点から、有機酸銅塩が好ましく、酢酸銅及びギ酸銅から選ばれる少なくとも一方がより好ましい。
【0070】
前記含水組成物は、少なくとも1種のアルコールをさらに含むことができる。アルコールを含むことで生成する酸化銅粒子の粒子径を小径化することができる。アルコールとしては、アルコール性のヒドロキシ基を有する水溶性化合物であれば特に制限はない。ここで水溶性とは純水に対して10質量%以上溶解することを意味する。前記アルコールはモノアルコールであっても、多価アルコールであってもよい。なかでも、炭素数1〜8の水溶性アルコールであることが好ましく、炭素数1〜6の水溶性アルコールであることがより好ましく、炭素数1〜4の水溶性アルコールであることがさらに好ましい。
【0071】
前記アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、シクロブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、シクロペンタノール、シクロブタンメタノール、1−ヘキサノール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、2−メトキシエタノール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ジヒドロキシアセトン、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、ヒドロキシガンマブチロラクトン、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロピラン−2−オール、3−アセチル−1−プロパノール、酪酸メチル、エチルグリコレート、4−メチル−1−ブタノール、3−エチル−1−プロパノール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、グリコールアルデヒドジメチルアセタール、ジエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、γ−ヒドロキシメチル−γ−ブチロラクトン、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トレオース、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,4−ジオキサン−2,5−ジオール、イノシトールなどが挙げられる。
【0072】
前記含水組成物がアルコールを含む場合、アルコールの含有率はアルコールの種類や所望の粒子径に応じて適宜選択できる。例えば、含水組成物中に10質量%〜50質量%とすることができ、20質量%〜40質量%であることが好ましい。含有率が10質量%以上であると生成する酸化銅粒子の粒子径を効果的に小径化できる。また50質量%以下であると水溶性銅錯体の溶解性が低下することを抑制でき、所望の銅イオン濃度を達成することが容易になる。含水組成物にアルコールを添加する場合、添加順は特に制限されない。例えばpHを調整する前であっても、pHの調整後であってもよい。また前記アルコールは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
前記製造方法は、酸化銅を生成する工程の後に、イオン性化合物の少なくとも一部を除去する洗浄工程をさらに有することが好ましい。これにより、酸化銅ペーストを構成して金属銅層の製造方法に適用した場合に、より高精細でより低抵抗の金属銅層パターンを形成することができる。
【0074】
前記洗浄工程に用いる方法は、酸化銅粒子の生成後に含水組成物に含まれるイオン性化合物の少なくとも一部を除去可能であれば、通常用いられる洗浄方法から適宜選択することができる。洗浄方法として具体的には限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析、純水洗浄、イオン交換樹脂処理、等を挙げることができる。これらの中でも洗浄効率の観点から、限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析及び純水洗浄からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。洗浄方法は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
前記洗浄工程においては、用いられる洗浄液としては特に制限されない。中でもイオン交換水及び精製水が好ましい。また前記洗浄工程は、イオン性化合物の少なくとも一部が除去されればよい。形成される導体パターンの低抵抗性と酸化銅ペーストの分散安定性の観点から、洗浄方法に用いられた洗浄液(好ましくは水)の電気伝導率が5000mS/m以下となるように行なうことが好ましく、1000mS/m以下となるように行なうことがより好ましい。
【0076】
<金属銅層の製造方法>
本発明の金属銅層の製造方法は、支持体上に、前記酸化銅ペーストを付与して酸化銅粒子含有層を形成するパターン形成工程と、前記酸化銅粒子含有層を導体化処理して金属銅層を形成する導体化処理工程とを有し、必要に応じてその他の工程を有して構成される。酸化銅粒子含有層を所望のパターン状に形成することで、緻密で電気伝導性及び熱伝導性に優れる導体パターンを所望の形状に形成することができる。
【0077】
金属銅層を形成する支持体は特に制限されず、目的に応じて通常用いられる絶縁材料から適宜選択することができる。例えばガラス、セラミックス等の無機材料や、配線基板に用いられる有機材料などを挙げることができる。特に後述する導体化処理工程を200℃以下の低温で行う場合は、適用可能な有機材料の選択の幅が広がる。またフィルム状の柔軟な支持体を用いた場合には、柔軟で軽量なデバイスを構成できる。
【0078】
前記酸化銅ペーストを支持体上に付与して酸化銅粒子含有層をパターン形成する方法は、酸化銅粒子含有層を任意の場所に形成可能な手法であれば特に制限はない。このような手法として、インクジェット法、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、転写印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法、ジェットプリンティング印刷法、ディスペンサ法、ジェットディスペンサ法、ニードルディスペンサ法、カンマコータ法、スリットコータ法、ダイコータ法、グラビアコータ法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法、ソフトリソグラフ法、ディップペンリソグラフ法、粒子堆積法、スプレーコータ法、スピンコータ法、ディップコータ法、電着塗装法等を挙げることができる。中でも、インクジェット法、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法、ジェットプリンティング法、ディスペンサ法、ニードルディスペンサ法、カンマコータ法、スリットコータ法、ダイコータ法及びグラビアコータ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法であることが好ましく、線幅70μm以下のパターンを形成可能であることから、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、反転オフセット印刷法、ディスペンサ法、及びニードルディスペンサ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法であることがより好ましい。酸化銅粒子含有層をパターン形成する方法は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
前記絶縁層上に形成される酸化銅粒子含有層の形状は特に制限されず目的に応じて適宜選択することができる。また前記銅酸化物粒子含有層の層厚は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば0.2μm〜50μmとすることができ、導電性及び接続信頼性の観点から0.8μm〜20μmであることが好ましい。
【0080】
前記製造方法は、酸化銅ペースト付与後に、酸化銅ペーストに含まれている分散媒の少なくとも一部を除去する乾燥工程をさらに有していてもよい。付与した酸化銅ペーストを乾燥することで、酸化銅ペーストの流動性が低下して形状が安定する。また続く導体化処理工程における残留分散媒が減少することで、導体化処理への影響を抑制することができる。乾燥工程は、分散媒の少なくとも一部を除去可能であれば特に制限されない。例えば、加熱,減圧あるいは送風により乾燥させる手法を用いることができる。このような手法に適用できる装置として温風乾燥機、減圧乾燥機、減圧オーブン、恒温槽、送風機が挙げられる。また、乾燥温度は30℃〜200℃、乾燥時間0.1時間〜2.0時間で行うことができる。
【0081】
導体化処理工程では、形成された前記酸化銅粒子含有層を導体化処理して金属銅層を形成する。導体化処理の方法は酸化銅を金属銅に還元可能であれば特に制限されない。中でも形成される金属銅層の緻密性の観点から、ギ酸含有雰囲気下で加熱処理する方法であることが好ましい。ギ酸ガスを用いることで、緻密な金属銅膜が生成し、低体積抵抗率で、高い熱伝導性を有する金属銅層を形成することができる。
【0082】
導体化処理に用いるギ酸含有雰囲気におけるギ酸の濃度は、酸化銅を還元可能である限り特に限定されない。例えば、0.01g/L〜2g/Lとすることができる。またギ酸含有雰囲気にはギ酸ガス以外のその他のガス成分が含まれていてもよい。その他のガス成分としてはギ酸と反応しないものであれば特に制限されない。その他のガス成分として酸素を含む場合、酸素とギ酸との混合比率は爆発範囲外であることが好ましい。具体的にはギ酸と空気を混合する場合、ギ酸の濃度が18体積%以下又は51体積%以上であることが好ましい。
【0083】
ギ酸ガスの発生方法は特に制限されない。例えば、液状のギ酸に窒素ガスを流通させギ酸ガスを含む窒素ガスを被処理物である酸化銅粒子含有層に提供する方法、ギ酸の沸点である100℃以上に加熱、あるいは減圧してガス状にした後、被処理物に提供する方法を挙げることができる。
【0084】
また加熱処理の温度は、ギ酸ガスの存在下に酸化銅から金属銅が析出する120℃以上であればよく、処理速度の観点から140℃以上であることが好ましい。処理温度の上限は金属銅層パターンを形成する支持体(例えば基板)の耐熱温度により規定される。さらに処理圧力は、特に制約無く大気圧、減圧、加圧いずれの条件でもよい。
【0085】
前記金属銅層の製造方法は、導体化処理工程で形成された金属銅層に、電解めっき処理又は無電解めっき処理するめっき処理工程をさらに有することが好ましい。これにより所望の膜厚を有する金属銅層を形成することができ、厚膜微細配線を効率よく形成することができる。無電解めっき処理する場合、導体化処理工程で形成された金属銅層は、例えばシード層として機能する。また電解めっき処理する場合、導体化処理工程で形成された金属銅層は、例えば極薄銅層として機能する。
【0086】
以上のようにして形成された金属銅層は、緻密で電気伝導性及び熱伝導性に優れているため、導体配線、電極、熱伝導路、放熱の用途に適している。また,このようにして形成された導体パターンは厚真クビ再配線を形成する場合に,無電解めっきのシード層や電解めっきの極薄銅そうとして利用することもできる。
【0087】
<導体配線>
本発明の導体配線は、前記金属銅層の製造方法で得られた金属銅層を含むものであれば特に制限はされない。前記金属銅層を含むことで電気導電性に優れる。導体配線は、例えば、支持体である絶縁層上に、所望の形状にパターン形成された金属銅層であり、等の用途に適用できる。
【0088】
<電極>
本発明の電極は、前記金属銅層の製造方法で得られた金属銅層を含むものであれば特に制限はされない。前記金属銅層を含むことで電気導電性に優れる。前記電極は例えば、RFIDアンテナの配線等の用途に適用できる。
【0089】
<熱伝導路>
本発明の熱伝導路は、前記金属銅層の製造方法で得られた金属銅層を含むものであれば特に制限はされない。前記金属銅層を含むことで熱伝導性に優れる。前記熱伝導路は、例えば、パワーデバイスのサーマルビア等の用途に適用できる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0091】
[製造例1]
無水酢酸銅(II)3.4g(加熱時の濃度0.022mol/kg)を純水680gに溶解して、銅錯体溶液とした。水酸化ナトリウムを1.0mol/kgとなるように純水に溶解してpH調整剤とした。1Lのポリプロピレン製瓶中で、銅錯体溶液全量とpH調整剤の140.1gを混合して密栓して、手で振り混ぜて水酸化銅を含む含水組成物を得た。pHを測定したところ7.3であった。
この混合液を瓶中に密栓したまま、恒温器中で90℃、5時間加熱したところ、黒色の沈殿を得た。
【0092】
室温に冷却後、上澄みを除き、遠心分離機(11000rpm、10min)にて黒色粉末を分離した。この分離した黒色粉末に純水400mlを加え、超音波洗浄機にかけた後、遠心分離機(11000rpm、15min)にて黒色粉末を分離する操作を2度繰り返して洗浄した。洗浄した黒色粉末を恒温器中、90℃、5時間乾燥させて、酸化銅粒子群を得た。収量1.0g (収率65%)
【0093】
酸化銅粒子群の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の結果、図1に示すように、平均長径が400nm、平均短径が110nmの長粒状の粒子であった。平均長径及び平均短径は20個の酸化銅粒子について測定し、その算術平均として算出した。また平均短径に対する平均長径の比であるアスペクト比(平均長径/平均短径)は3.6であり、平均中径/平均短径は1.0であり、平均長径/平均中径は3.6であった。また長径の変動係数は14.5%であり、長径の長さの標準偏差を平均値で除して求めた。
【0094】
またX線回折(XRD)測定の結果、図3に示すように、酸化銅粒子は酸化第二銅と酸化第一銅との混相であった。
さらに不活性ガス融解−赤外線吸収法(測定装置:堀場製作所製、EMIA−920V)にて測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる酸素分は18.54質量%であった。また燃焼ガス赤外線吸収法(測定装置:堀場製作所製、EMGA−930)で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分は1.45質量%であった。
【0095】
[製造例2]
製造例1において、水酸化銅を含む含水組成物にエタノールを20質量%になるように添加した以外は製造例1と同様に酸化銅粒子を調製した。この際、手で振り混ぜた後のpHは7.6であった。得られた酸化銅粒子の収量は1.2g(収率78%)であった。
【0096】
得られた酸化銅粒子群のSEMによる観察の結果を図2に示す。また、平均長径150nm、平均短径30nmの長粒状の粒子であり、製造例1で得られた酸化銅粒子群に比べて小径化した。また平均長径/平均短径は5.0であり、平均中径/平均短径は1.0であり、平均長径/平均中径は5.0であった。
【0097】
またXRD測定の結果、図3に示すように、酸化銅粒子は酸化第二銅を主成分として構成されていた。
不活性ガス融解−赤外線吸収法にて測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる酸素分は19.4質量%であり、燃焼ガス赤外線吸収法で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分は1.61質量%であった。
【0098】
[製造例3]
製造例1において、水酸化銅を含む含水組成物にエタノールを40質量%になるように添加した以外は製造例1と同様に酸化銅粒子を調製した。この際、手で振り混ぜた後のpHは7.7であった。得られた酸化銅粒子の収量は1.2g(収率78%)であった。
【0099】
得られた酸化銅粒子のSEMによる観察の結果、平均長径120nm、平均短径30nmの長粒状の粒子であり、製造例1で得られた酸化銅粒子群に比べて小径化した。また平均長径/平均短径は4.0であり、平均中径/平均短径は1.0であり、平均長径/平均中径は4.0であった。
【0100】
またXRD測定の結果、図3に示すように、酸化銅粒子は酸化第二銅を主成分として構成されていた。
不活性ガス融解−赤外線吸収法にて測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる酸素分は19.5質量%であり、燃焼ガス赤外線吸収法で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分は1.49質量%であった
【0101】
[製造例4〜6]
製造例1において、無水酢酸銅(II)の添加量を、それぞれ5.0g(0.033mol/kg)、6.8g(0.054mol/kg)、13.6g(0.090mol/kg)とした以外は同様に酸化銅粒子を合成した。
その結果、合成時の原料銅錯体の濃度によらずほぼ同じ粒径の粒子が得られた。下表に合成結果をまとめた。また製造例4で得られた酸化銅粒子群のSEMによる観察の結果を図4に示す。
なお、pH調整剤添加後のpHはそれぞれ7.1、7.4、7.6であった。
さらに燃焼ガス赤外線吸収法で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分はそれぞれ1.33質量%、1.41質量%、1.38質量%であった。
【0102】
[製造例7]
製造例1において、pH調整剤を184g混合した以外は、同様に酸化銅粒子を調製した。この際、手で振り混ぜた後のpHは12.7であった。収量5g(収率89%)であった。
酸化銅粒子のSEMによる観察の結果、図5にSEM写真を示したようリボン状の粒子形状であった。また種々の大きさを有する粒子形状の混合物であり、またリボン状の粒子が重なっていた。任意に選択した20個の酸化銅粒子から算出された平均長径は734nm、長径の変動係数は33.7%であった。また平均長径/平均短径は73.4であり、平均中径/平均短径は25.3であり、平均長径/平均中径は2.9であった。
【0103】
[製造例8〜10]
製造例1において、無水酢酸銅(II)3.4gを純水170gに溶解し、pHを測定しながらpH調整剤を下表に示した所定のpHとなるように加え、銅イオン濃度が0.022mol/kgとなるように調整したこと以外は同様にして酸化銅粒子を合成した。下表に合成結果をまとめた。また酸化銅粒子群のSEMによる観察の結果を図6〜図8に示す。図6は製造例8で得られた酸化銅粒子群である。図7は製造例9で得られた酸化銅粒子群である。図8は実施例10で得られた酸化銅粒子群である。
【0104】
[製造例11]
硝酸銅(II)を純水に溶解し、1.0mol/Lの銅錯体溶液とした。水酸化ナトリウムを純水に溶解し、2.0mol/LのpH調整液とした。200mLのポリプロピレン製瓶中で、100mL純水と銅錯体溶液20mL及びpH調製液20mLを混合して密栓をした後、手で振り混ぜて水酸化銅を含む含水組成物を得た。pHを測定したところ6.4であった。
この混合液を瓶中に密栓したまま恒温器中20℃、9時間放置したところ黒色の沈殿物を得た。
室温で上澄みを除き遠心分離機(11000rpm、10min)にて黒色粉末を分離した。この分離した黒色粉末に純水400mlを加え、超音波洗浄機にかけた後、遠心分離機(11000rpm、15min)にて黒色粉末を分離する操作を2度繰り返して洗浄した。洗浄した黒色粉末を恒温器中、90℃、5時間乾燥させて、酸化銅粒子群を得た。収量1.68g(収率18.9%)。
酸化銅粒子群の操作型電子顕微鏡(SEM)観察の結果、平均長径が320nm、平均短径が21nmの長粒状の粒子であった。また平均長径/平均短径は15.2であり、平均中径/平均短径は3.0であり、平均長径/平均中径は5.0であった。
【0105】
[製造例12]
硝酸銅(II)を純水に溶解し、0.10mol/Lの銅錯体溶液とした。水酸化ナトリウムを純水に溶解し、0.20mol/LのpH調整液とした。200mLのポリプロピレン製瓶中で、100mL純水と銅錯体溶液20mL及びpH調製液20mLを混合して密栓をした後、手で振り混ぜて水酸化銅を含む含水組成物を得た。pHを測定したところ6.4であった。
この混合液を瓶中に密栓したまま恒温器中20℃、5日間放置したところ黒色の沈殿物を得た。
室温で上澄みを除き遠心分離機(11000rpm、10min)にて黒色粉末を分離した。この分離した黒色粉末に純水400mlを加え、超音波洗浄機にかけた後、遠心分離機(11000rpm、15min)にて黒色粉末を分離する操作を2度繰り返して洗浄した。洗浄した黒色粉末を恒温器中、90℃、5時間乾燥させて、酸化銅粒子群を得た。
酸化銅粒子群の操作型電子顕微鏡(SEM)観察の結果、平均長径が206nm、平均短径が77nmの長粒状の粒子であった。また平均長径/平均短径は2.7であり、平均中径/平均短径は1.3であり、平均長径/平均中径は2.1であった。
下表に合成結果をまとめた。なお、表1中「−」は未評価を意味する。
【0106】
【表1】

【0107】
[実施例1]
(酸化銅ペーストの調製)
製造例1で得られた酸化銅粒子25gをポリ容器に秤量し、固形分50質量%となるようにテルピネオール(20℃における蒸気圧:24Pa)25gを加えて混合液を得た。これをシンキー社製攪拌機(あわとり練太郎 ARE−310)で攪拌した後、水浴で冷却しながら日本精機製作所製超音波ホモジナイザUS−600CCVPを用いて、超音波端子深さ約3cm/出力600W/振動数19.5kHz/振幅数26.5μmで途中スパチュラを用いて攪拌しながら合計7分間分散処理した。分散処理後、ナイロンメッシュ(目開き100μm)に通じて異物を除去した後、蓋付きのポリ瓶に内容物を移し、室温で冷却して酸化銅ペーストを得た。
コーンプレートを装着した粘弾性測定装置(Anton Paar社製、MCR−301)を用いてCassonの平衡粘度を測定したところ、0.09Pa・sであった。
【0108】
(スクリーン印刷及び導体化)
PENフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム、膜厚125μm)上に、ナイロンメッシュ刷版(310メッシュ、L/S=100μm/100μm)と、手刷りスクリーン印刷機を用いて、調製した酸化銅ペーストを塗布した。180℃のホットプレート上で15分乾燥させて酸化銅粒子含有層のパターンが形成された試験片を得た。得られた試験片について顕微鏡観察を行い、下記評価基準に従って評価した。
【0109】
(評価基準)
A:L/S=100μm/100μm刷版で印刷時、ショートなく印刷可能であった。
B:L/S=100μm/100μm刷版で印刷時、カスレが生じラインが断裂した。
C:L/S=100μm/100μm刷版で印刷時、にじみが生じライン間がショートした。
【0110】
また形成された酸化銅粒子含有層パターンは、L/S=165μm/35μm、配線高さ3.0μmであった。図13に形成された酸化銅粒子含有層パターンの拡大写真を示した。印刷された酸化銅粒子含有層パターン間に接触(ショート)は無く、酸化銅粒子含有層パターンは独立して形成されており、印刷性良好であった。
【0111】
上記で得られた試験片を、サンプル温度175℃、ギ酸ガス温度60℃、処理時間1時間の処理条件でギ酸ガス処理して、導体層を形成した。
得られた導体層の表面抵抗は2.1×10−2Ω/□であった。またこれをFIB断面加工してSIM観察したところ、平均膜厚690nmであった。図17にSIM写真を示した。なお、導体層の表面抵抗は低抵抗率計(三菱化学株式会社製Loresta−GP(MCP−T610))を用いて4端子4探針法で測定した。
【0112】
[実施例2〜11]
実施例1において、製造例1で得られた酸化銅粒子の代わりに製造例2〜6及び8〜12で得られた酸化銅粒子をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして酸化銅ペーストをそれぞれ調製した。得られた酸化銅ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にしてスクリーン印刷を及び導体化処理を行ない、同様にして評価した。
[実施例12]
実施例1において、製造例1で得られた酸化銅粒子の代わりに棒状酸化銅粒子(ケミライト社製;酸化銅ナノ粒子、平均長径845nm、長径の変動係数8.1%、平均短径115nm、平均長径/平均短径=7.3、平均中径/平均短径=3.0、平均長径/平均中径=2.4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化銅ペーストをそれぞれ調製した。得られた酸化銅ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にしてスクリーン印刷を及び導体化処理を行ない、同様にして評価した。
【0113】
[実施例13]
実施例1において、固形分が60質量%となるようにテルピネオールの配合量を変更したこと以外は実施例1と同様にして酸化銅ペーストを調製した。
【0114】
(スクリーン印刷)
PENフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム、膜厚125μm)上に、ナイロンメッシュ刷版(400メッシュ、L/S=50μm/50μm)と、手刷りスクリーン印刷機を用いて、調製した酸化銅ペーストを塗布した。180℃のホットプレート上で15分乾燥させて酸化銅粒子含有層のパターンが形成された試験片を得た。得られた試験片について顕微鏡観察を行い、下記評価基準に従って評価した。
【0115】
(評価基準)
A°:L/S=50μm/50μm刷版で印刷時、ショートなく印刷可能であった。
B°:L/S=50μm/50μm刷版で印刷時、カスレが生じラインが断裂した。
C°:L/S=50μm/50μm刷版で印刷時、にじみが生じライン間がショートした。
【0116】
また形成された酸化銅粒子含有層パターンは、L/S=73μm/27μm、配線高4.7μmであった。また図14に形成された酸化銅粒子含有層パターンの拡大写真を示した。図14に示すように酸化銅粒子含有層パターンが、互いに接触(ショート)することなく独立して形成されており、印刷性は良好で、A°の評価であった。
【0117】
[比較例1]
実施例1において、製造例1で得られた酸化銅粒子の代わりに製造例7で得られた酸化銅粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして酸化銅ペーストを調製した。
得られた酸化銅ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にしてスクリーン印刷を行ない、同様にして評価した。形成された酸化銅粒子含有層間に接触(ショート)が有り、さらにカスレによるラインの断裂があり、酸化銅粒子含有層パターンの印刷性が悪かった。
【0118】
[比較例2]
実施例1において、製造例1で得られた酸化銅粒子の代わりに球状酸化銅粒子(シーアイ化成社製;酸化銅ナノ粒子、平均長径70nm、長径の変動係数6.7%、平均長径/平均短径=1.0、平均長径/平均中径=1.0を用いたこと以外は実施例1と同様にして酸化銅ペーストを調製した。
【0119】
得られた酸化銅ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にしてスクリーン印刷を行ない、同様にして評価した。さらに実施例1と同様にして導体化処理を行なった。
得られた配線はL/S=190μm/10μm、配線高2.8μmであった。また図15に形成されたパターンの拡大写真を示した。図15に示すように酸化銅粒子含有層パターンが、部分的に接触してショート部分が形成されており、印刷性不良であった。
また導体化処理後の表面抵抗は2.2×10−2Ω/□であった。
【0120】
[比較例3]
実施例1において、製造例1で得られた酸化銅粒子の代わりに板状酸化銅粒子(ケミライト社製、酸化銅ナノ粒子、平均長径1.7μm、長径の変動係数15.7%、平均短径0.08μm、平均長径/平均短径=21.3、平均中径/平均短径=12.0、平均長径/平均中径=1.8)を用いたこと以外は実施例1と同様にして酸化銅ペーストを調製した。
【0121】
得られた酸化銅ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にしてスクリーン印刷を行ない、同様にして評価した。さらに実施例1と同様にして導体化処理を行なった。
得られた配線はL/S=101μm/99μm、配線高8.4μmであった。また図16に形成されたパターンの拡大写真を示した。図16に示すように酸化銅粒子含有層パターンが、部分的に接触してショート部分が形成されており、印刷性不良であった。
また導体化処理後の表面抵抗は7.6×10−2Ω/□であった。
【0122】
[比較例4]
実施例1において、製造例1で得られた酸化銅粒子の代わりに球状酸化銅粒子(中山組社製、酸化銅ナノ粒子、平均長径215nm、長径の変動係数55.0%、平均短径196nm、平均長径/平均短径=1.1、平均中径/平均短径=1.0、平均長径/平均中径=1.1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして酸化銅ペーストを調製した。得られた酸化銅ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にしてスクリーン印刷を及び導体化処理を行ない、同様にして評価した。
【0123】
【表2】

【0124】
以上から、本発明の酸化銅ペーストを用いることで、高精細で低抵抗な金属銅層を精度よく形成可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0125】
1 酸化銅粒子
2 長径の長さ
3 中径の長さ
4 短径の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の酸化銅粒子を含み、前記酸化銅粒子の3次元形状において、前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を長径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面間距離を短径とした場合に、前記複数の酸化銅粒子について、前記長径の長さの平均値が100nm以上1700nm未満であり、前記短径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が1.2以上20以下である酸化銅粒子群と、分散媒と、を含む酸化銅ペースト。
【請求項2】
前記酸化銅粒子群は、前記長径を与える平行二平面に直行し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面間距離を中径とした場合に、前記複数の酸化銅粒子について、前記長径の長さの平均値が100nm以上1700nm未満であり、前記短径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が1.2以上20以下であり、前記中径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.0以上である請求項1に記載の酸化銅ペースト。
【請求項3】
前記酸化銅粒子群を含む全粒子の含有率が30質量%以上80質量%以下であり、全粒子中における前記酸化銅粒子群の含有率が50質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の酸化銅ペースト。
【請求項4】
コーンプレートを装着した粘弾性測定装置で測定されるCassonの平衡粘度が、0.01Pa・s以上200Pa・s以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の酸化銅ペースト。
【請求項5】
前記分散媒は、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa・s未満である有機溶剤を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の酸化銅ペースト。
【請求項6】
金属銅層形成用である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の酸化銅ペースト。
【請求項7】
支持体上に、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の酸化銅ペーストを付与して酸化銅粒子含有層を形成する工程と、前記酸化銅粒子含有層を導体化処理して金属銅層を形成する工程とを有する金属銅層の製造方法。
【請求項8】
前記酸化銅ペーストを付与する方法が、印刷法である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記導体化処理が、前記酸化銅粒子含有層をギ酸含有雰囲気下で加熱処理する方法である請求項7又は請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
形成された前記金属銅層に、電解めっき処理又は無電解めっき処理する工程を更に含む請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の製造方法で得られた金属銅層を含む導体配線。
【請求項12】
請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の製造方法で得られた金属銅層を含む電極。
【請求項13】
請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の製造方法で得られた金属銅層を含む熱伝導路。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−109966(P2013−109966A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254292(P2011−254292)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】