説明

酸化銅粉末

【課題】含銅複合酸化物において容易に高い結晶成長を実現し、作業性にも優れた酸化銅粉末を提供する。
【解決手段】1次粒子の形状が柱状であり、当該1次粒子のSEM粒子径の平均値が、短軸は1nm以上、50nm以下、長軸は、10nm以上、100nm以下であり、且つ、アスペクト比が1.5以上であることを特徴とする酸化銅粉末である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の物質との固相反応において、優れた分散性と反応性とを示す酸化銅粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物超電導体の分野を始めとして各種の分野において、含銅複合酸化物が用いられている。これらの含銅複合酸化物に対しては、ペロブスカイト構造を始めとする各種の結晶構造が十分に成長していることが要求される。そして、当該要求を満足するため、これらの含銅複合酸化物の使用原料や焼成条件に対し、様々な提案がなされている。
本願出願人も、特許文献1において、これらの含銅複合酸化物の製造に適する微細酸化銅粉末の製造方法について開示した。
【0003】
【特許文献1】特公平5−59845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人が特許文献1において開示した方法で製造した微細酸化銅粉末は、微細かつ高い比表面積を有している。この為、超電導材料を例とした場合、有効なペロプスカイト型の構造を得やすく、従来よりも高い超電導特性を発揮する事が可能である。
しかし、当該超電導を始め、各種触媒の分野において、さらに、高い結晶性を有する含銅複合酸化物を容易に製造可能とする酸化銅粉末に対する期待は、大きなものであった。
そこで、本発明者らは、これらの期待に応えるべく、含銅複合酸化物において容易に高い結晶成長を実現し、作業性にも優れた酸化銅粉末の提供を本発明の課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を行った。そして、当該研究の結果、従来の酸化銅粉とは全く異なる、1次粒子が柱状形状を有する酸化銅粉末に想到した。そして、当該1次粒子が微細な柱状形状を有する酸化銅粉末を用いて、含銅複合酸化物の例として酸化物超電導体を製造してみたところ、従来の酸化銅粉末を使用した場合に較べ超電導特性が向上することを確認し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、課題を解決するための第1の手段は、
1次粒子の形状が柱状であり、当該1次粒子の粒子径の平均値が、短軸は1nm以上、50nm以下、長軸は、10nm以上、100nm以下であり、且つ、アスペクト比が1.5以上であることを特徴とする酸化銅粉末である。
【0007】
第2の手段は、
2次粒子が第1の手段に記載の1次粒子の凝集体で構成され、且つ、当該2次粒子の比表面積が40m/g以上、300m/g以下であることを特徴とする酸化銅粉末である。
【0008】
第3の手段は、
2次粒子が第1の手段に記載の1次粒子の凝集体で構成され、且つ、当該2次粒子は前記柱状形状を有する1次粒子がランダムな方向を向いて凝集したものであることを特徴とする酸化銅粉末である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の技術に係る酸化銅粉末と同条件で含銅複合酸化物を製造した場合、より結晶性の優れた含銅複合酸化物を製造することが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(本発明に係る酸化銅粉末の1次粒子)
本発明に係る酸化銅粉末の1次粒子について図面を参照しながら説明する。
ここで、図1は本発明に係る酸化銅粉末(後述する実施例)の5万倍のSEM写真、図2は図1と同じ酸化銅粉末の10万倍のSEM写真である。一方、図3は従来の技術に係る酸化銅粉末(後述する比較例)の5万倍のSEM写真、図4は図3と同じ酸化銅粉末の10万倍のSEM写真である。
【0011】
図1、図2を観れば明らかなように、本発明に係る酸化銅粉末は1次粒子の形状が柱状である。当該1次粒子の柱状形状は、図3、図4に示す従来の技術に係る酸化銅粉末の1次粒子の形状が不定型な形状を有しているのに対して、顕著な特徴である。
【0012】
1次粒子の粒子径の平均値について説明する。
ここで粒子径とは、当該1次粒子を撮影した粒径の確認が可能なSEM写真またはTEM写真を準備し、当該SEMまたはTEM写真からランダムに所定数(本発明においては200個)の1次粒子を選択した。次に当該選択された1次粒子の長軸と短軸とを画像解析により検出し、その測定値を平均化した値である。
【0013】
本発明者らの検討によると、1次粒子の形状が柱状であり、当該1次粒子の粒子径の平均値が、短軸は1nm以上、50nm以下、長軸は、10nm以上、100nm以下であり、且つ、アスペクト比が1.5以上であると、従来の技術に係る当該構成を有さない不定形状の酸化銅粉末と同条件で含銅複合酸化物を製造した場合に、より結晶性の優れた含銅複合酸化物を製造出来ることに想到した。
【0014】
(本発明に係る酸化銅粉末の2次粒子)
本発明に係る酸化銅粉末の2次粒子について図面を参照しながら説明する。
図2から明らかなように、本発明に係る酸化銅粉末の2次粒子は、径が数μm程度の略球状の形状を有している。そして、図1から明らかなように、本発明に係る酸化銅粉末の2次粒子は、上述した柱状形状を有する1次粒子がランダムな方向を向いて凝集したものである。
【0015】
本発明に係る酸化銅粉末の2次粒子は、40m/g〜300m/gの比表面積を有していることが判明した。
一方、従来の技術に係る酸化銅粉末の2次粒子は、径が5μm程度の略球状の形状を有している。そして、図3、図4から明らかなように、従来の技術に係る酸化銅粉末の2次粒子は、上述した不定形形状を有する1次粒子が絡み合って凝集したものである。この結果、従来の技術に係る酸化銅粉末の2次粒子は、40m/g未満の比表面積を有している。
【0016】
上述の特徴が、優れた結晶性をもたらした理由の詳細は未だ解明途中であるが、本発明者らは以下のように推察している。
まず、本発明に係る酸化銅粉末の2次粒子が、柱状形状を有する1次粒子がランダムな方向を向いて凝集したものである為、洗浄が容易で、当該1次粒子間に不純物が残留し難いことが考えられる。これに対し、従来の技術に係る酸化銅粉末の場合、不定形形状を有する1次粒子が絡み合って凝集して2次粒子を形成している為、当該絡み合った1次粒子間に不純物が残留し、この不純物が含銅複合酸化物の成長を阻害しているのではないかと考えている。
【0017】
(本発明に係る酸化銅粉末)
以上説明した、柱状形状を有する1次粒子がランダムな方向を向いて凝集して2次粒子を形成している本発明に係る酸化銅粉末を用いて、含銅複合酸化物である酸化物超電導体を調製した。すると、詳細は実施例にて説明するが、従来の技術に係る酸化銅粉末を用いた場合に比較して、より緩い製造条件であっても含銅複合酸化物の成長が進み、高い超電導特性を発揮することが確認された。
【0018】
本発明者らは、上述の特徴が優れた結晶性をもたらした理由を以下のように推察している。
本発明に係る酸化銅粉末の2次粒子が、柱状形状を有する1次粒子がランダムな方向を向いて凝集したものである為、他の原料と混合され粉砕混合を受ける際に、容易に1次粒子まで解れ、他の原料と十分に混合される。さらに、当該粉砕混合された粉末が焼結される際は、当該十分に混合された柱状1次粒子から固相−液相反応が進み、緩い製造条件であっても含銅複合酸化物の成長が進むのではないかと考えている。
【0019】
さらに、本発明に係る酸化銅粉末は、従来の技術に係る酸化銅粉末と同等の作業性を有している。これは、1次粒子の形状や2次粒子への凝集の形が異なるにも拘わらず、マクロ的にみた2次粒子の形態は、本発明に係る酸化銅粉末も、従来の技術に係る酸化銅粉末も、ほぼ同様なものであることによると考えられる。従って、製造設備等には、何ら改造等が不要のまま、本発明に係る酸化銅粉末を使用できると考えられる。
【0020】
(本発明に係る酸化銅粉末の製造方法)
本発明に係る酸化銅粉末の製造方法例について詳細に説明する。
純度99.9%以上の硝酸銅水和物(Cu(NO・nHO)20kgを60Lタンクに投入する。ここへ35±5Lの純水(導電率1μs)を加え、およそ10分間、撹拌して銅濃度140〜190g/L前後の硝酸銅水溶液とする。
【0021】
上述した硝酸銅水溶液の製造と同時に、15kgの純度95%以上の炭酸水素アンモニウム(NHHCO)を200Lタンク内に投入する。ここへ150±5Lの純水(導電率1μs)を加え、撹拌して濃度100g/L前後の炭酸水素アンモニウム水溶液とする。尚、溶解時間に規定はなく、炭酸水素アンモニウムが完全に溶解するまで撹拌を行う。このときの溶解温度は、20℃以下、さらに好ましくは10℃とする。また、このときの溶液のpHは7.5±0.4の範囲内とすることが望ましい。
【0022】
製造した炭酸水素アンモニウム水溶液を攪拌しながら、硝酸銅水溶液を3L/minの速度で連続添加し逆中和反応を行う。
このときの炭酸水素アンモニウム水溶液の攪拌は、例えば、3枚・1段羽の撹拌機を当該200Lタンクの底部中心から5〜10cmの位置に設置するのが望ましい。また撹拌機の回転速度は150±30rpmとした。
これは、例えば300rpmを超えるような強撹拌を行うと、得られる1次粒子形状が球状もしくは不定形状となり、均一な粒子径を得る事が困難となること。また2次粒子径が1.0〜10.0μm程度の凝集体が混在しているものとなり、均一な径を有する2次粒子径を得ることが困難となることによる。
【0023】
逆中和反応時間は、12±2分間程度として急激な核生成をさせて反応を終了し、熟成時間を15±5分間とするのが望ましい。尚、熟成後のpHは6±0.2程度であることが望ましい。
これは、反応時間を20分間以上としたり、反応後の熟成時間を30分間以上とした場合、溶液のpHが変動して銅が溶解と析出とを繰り返す結果、2次粒子が1.0〜10.
0μm程度の不均一な凝集体となり、2.0〜3.0μm程度の均一な凝集体を得る事が困難となるからである。
このときの反応は吸熱反応である為、液温度は15±5℃程度の範囲となるが、さらに好ましくは10℃以下とする。
【0024】
続いて得られた反応液を、上排出型遠心分離機を用いて固液分離する。
反応液全量を固液分離した後、濾液が排出されなくなったら、当該上排出型遠心分離機投入口より60±3℃の純温水を26.6L/min投入し45分間洗浄を行う。1回約1200Lの純水を用い、計1回温水洗浄を行う。
このとき、純温水の液温が70℃以下であれば、洗浄中の塩基性炭酸銅表面が酸化し始めるのを回避出来、スラリー内部までの均一な純温水洗浄が可能となる。また純温水温度が50℃以上あれば、洗浄時間が長引かず、均一に洗浄が可能となる。
【0025】
当該固液分離を吸引濾過またはフィルタープレスで行うことも考えられる。但し、この場合は、ケーキにひび割れが生じて洗浄が不十分となり易く、銅錯塩と硝酸根、CO等が混在する状態となる。その結果、そのまま乾燥させると、粒子が一部溶解してすぐに固まる為か、崩れた形態の粒子が混在する。さらに、1次粒子間に不純物等が残留し易くなるので好ましくない。
【0026】
こうして得られたスラリー状の塩基性炭酸銅(CuCO・Cu(OH)・nHO)を強制排気型温風乾燥機にて110±10℃の温度で17時間以上乾燥させる。
【0027】
この乾燥後の塩基性炭酸銅の1次粒子を電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)にて確認したところ、その短辺が1nm以上、50nm以下、長辺が10nm以上、100nm以下、且つ、アスペクト比が1.5以上であった。
さらに、2次粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定したところ、径が1〜3μm程度の均一な凝集体である事が確認された。
【0028】
続いて、得られた塩基性炭酸銅の乾燥物をステンレス製バット10枚程度に小分けし、250±5℃の温度範囲内で10時間焼成を行う。
焼成温度が300℃以下であれば、1次粒子の焼結の過促進による2次凝集体の肥大化を回避出来るからである。また、当該焼成時の条件として、焼成バット内の塩基性炭酸銅の層厚を30mm以下とし、下層部まで十分に熱を伝え、未反応な部位を残さないことが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
<酸化銅粉末の製造>
純度99.9%以上の硝酸銅水和物(Cu(NO・nHO)20kgを、60Lタンクに投入する。そこへ35±1Lの純水(導電率1μs)を加え、撹拌機にて10分間溶解を行い、銅濃度が約162g/Lの硝酸銅水溶液とした。このときの溶解温度は10±1℃であり、pHは1.6であった。
並行して、純度95%以上の炭酸水素アンモニウム(NHHCO)15kgを、200Lタンクに投入する。そこへ、150±1Lの純水(導電率1μs)を加え、撹拌機にて、炭酸水素アンモニウムが完全に溶解するまで撹拌を行い、濃度が約100g/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液とした。このときの溶解温度は10±1℃であり、pHは7.6であった。
【0030】
製造した炭酸水素アンモニウム水溶液を、200Lタンクの底部中心から7cmの位置
に設置した3枚・1段羽の撹拌機により150rpm回転速度で攪拌しながら、製造した硝酸銅水溶液を3.5L/minの速度で連続添加し逆中和反応を行った。
当該逆中和反応には、10分間を要した。その後、さらに10分間攪拌を継続し、熟成を行った。熟成後のpHは6.0であった。
【0031】
続いて、逆中和反応後の反応液を、上排出型遠心分離機を用いて固液分離した。
当該反応液の全量を固液分離し濾液が排出されなくなったら、当該上排出型遠心分離機投入口より60℃の温純水を26.6L/min投入し、45分間洗浄を行った。さらに、1200Lの純水を用い、温水洗浄を1回行った。
こうして得られたスラリー状の塩基性炭酸銅(CuCO・Cu(OH)・nHO)を採収し、強制排気型温風乾燥機を用いて110℃で17時間の乾燥を行った。
【0032】
得られた乾燥物を、目開き1mm程度のステンレス製ネットを用いて解砕した後、ステンレス製バット10枚に小分けし、大気雰囲気中にて250℃の温度で10時間焼成を行った。尚、ステンレスバット内の塩基性炭酸銅の層厚を30mmとした。
【0033】
得られた酸化銅粉末の粉体物性を示す。
(1)比表面積 56 m/g
(2)1次粒子径(粒子平均径) 短軸16.5nm、長軸33nm
(3)2次粒子平均径 2.5 μm
(4)(D90値−D10値)/D50値=1.431であるシャープな正規分布であった。
尚、比表面積はBET法にて求めた値である。1次粒子径は電解放出型走査電子顕微鏡にて撮影した画像からの実測値であり、2次平均粒径はWINDOX製Helos&Rodos乾式レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した値である。
尚、実施例にかかる酸化銅粉末の5万倍のSEM写真を図1に、10万倍のSEM写真を図2に示す。
【0034】
<Bi系酸化物超電導体の製造>
製造した酸化銅粉末を用いて、Bi、Pb、Sr、Caの酸化物、もしくは炭酸物と定量混合し、焼成、粉砕を2回程繰り返してBi2223超電導粉末を作成した。そのBi2223粉末を必要量採取して金型に充填した後、1軸プレスにて2t/cmの圧力で成形し、845±3℃で50h熱処理後、冷間等方圧成型機(CIP)にて全圧2t/cmの圧力で中間圧縮を行い、再度850±3℃で50h焼成を3回繰り返して得られた試料を、厚み0.08、幅1mm、長さ20mmに切断加工し、4端子法にて臨界電流密度(Jc)を測定した所、10000A/cmを越える値が確認された。
【0035】
<Y系酸化物超電導体の製造>
製造した酸化銅粉末を用いて、Y、Baの酸化物、もしくは炭酸物と定量混合し、焼成、粉砕を2回程繰り返してY1.0Ba2.0Cu3.0の超電導粉末を作成した。そのY系超電導粉末を必要量採取して円筒金型に充填後、1軸成形機にて0.8t/cm2の圧力で成形し、930℃で30h焼成を行い、Φ25×5mmt程度の超電導焼結体を作成した。
得られた試料を5mm厚に切断加工を施し、ブルカーAXS製ジラトメーターにて線熱膨張率を測定した所、円柱試料の厚み方向側に0.55%、径方向に0.45%熱膨張が確認された。
当該結果から、超電導焼結体試料の径方向にab面、厚み方向にc面が均一に結晶配向していると考えられる。
【0036】
(比較例1)
<酸化銅粉末の製造>
純度99.9%以上の硝酸銅水和物(Cu(NO・nHO)20kgを、200Lタンクに投入する。そこへ35±1Lの純水(導電率1μs)を加え、撹拌機にて10分間溶解を行い、銅濃度が約162g/Lの硝酸銅水溶液とした。このときの溶解温度は21℃であり、pHは1.6であった。
一方、実施例1と同様に製造した炭酸水素アンモニウム水溶液150g/Lを、定量ポンプを用いて上記銅水溶液の入っている200Lタンクに少量ずつ連続的に注入して中和反応を行った。尚、液温度を26℃に制御した。
【0037】
当該中和反応の条件として、反応温度を26℃(±1℃)前後になる様に温度コントローラーを用いて恒温槽内の温度を調節した。また、タンク内の撹拌機の速度を150rpmとして45分間をかけて中和を行った。反応終了後のpHは5.75であった。
さらに1時間攪拌を継続し、熟成を行った。
【0038】
続いて反応液を上排出型遠心分離機にて固液分離を行う。
反応液全量を固液分離した後、濾液が排出されなくなったら上排出型遠心分離機投入口より室温の純水を投入し、およそ3時間程洗浄を行う。当該洗浄は、1回約3000Lの純水を用い、計2回水洗濾過を行った。
当該水洗後のスラリー状の塩基性炭酸銅(CuCO・Cu(OH)・nHO)を、強制排気型温風乾燥機にて110℃の温度で48時間乾燥させた。次いで得られた乾燥物をステンレス製バットに移して、350℃で3時間焼成し酸化銅粉末を得た。
【0039】
得られた酸化銅粉末の粉体物性を示す。
(1)比表面積 7.6 m/g
(2)1次粒子径(粒子平均径) 短軸45nm、長軸65nm
(3)2次粒子平均径 2.1 μm
(4)(D90値−D10値)/D50値=2.748であるブロードな正規分布であった。
尚、測定条件は、実施例1と同様である。
比較例にかかる酸化銅粉末の5万倍のSEM写真を図3に、10万倍のSEM写真を図4に示す。
【0040】
<Bi系酸化物超電導体の製造>
製造した酸化銅粉末を用いて、Bi、Pb、Sr、Caの酸化物、もしくは炭酸物と定量混合し、焼成、粉砕を2回程繰り返してBi2223超電導粉末を作成した。そのBi2223粉末を必要量採取して金型に充填した後、1軸プレスにて2t/cmの圧力で成形し、実施例より厳しく温度制御を行い845±1℃で50h熱処理後、冷間等方圧成型機(CIP)にて全圧2t/cmの圧力で中間圧縮を行い、再度、実施例より厳しく温度制御を行い、850±1℃で50h焼成を3回繰り返して得られた試料を、厚み0.08、幅1mm、長さ20mmに切断加工し、4端子法にて臨界電流密度(Jc)を測定した所、8000A/cmであった。
【0041】
<Y系酸化物超電導体の製造>
製造した酸化銅粉末を用いて、Y、Baの酸化物、もしくは炭酸物と定量混合し、焼成、粉砕を2回程繰り返してY1.0Ba2.0Cu3.0の超電導粉末を作成した。そのY系超電導粉末を必要量採取して円筒金型に充填後、1軸成形機にて0.8t/cm2の圧力で成形し、930℃で30h焼成を行い、Φ25×5mmt程度の超電導焼結体を作成した。
得られた試料を5mm厚に切断加工を施し、ブルカーAXS製ジラトメーターにて線熱膨張率を測定した所、円柱試料の径方向、厚み方向共に0.5%熱膨張が確認された。
当該結果から、超電導焼結体試料の結晶がランダムに配向していると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例にかかる酸化銅粉末の5万倍のSEM写真である。
【図2】実施例にかかる酸化銅粉末の10万倍のSEM写真である。
【図3】比較例にかかる酸化銅粉末の5万倍のSEM写真である。
【図4】比較例にかかる酸化銅粉末の10万倍のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次粒子の形状が柱状であり、当該1次粒子の粒子径の平均値が、短軸は1nm以上、50nm以下、長軸は、10nm以上、100nm以下であり、且つ、アスペクト比が1.5以上であることを特徴とする酸化銅粉末。
【請求項2】
2次粒子が請求項1に記載の1次粒子の凝集体で構成され、且つ、当該2次粒子の比表面積が40m/g以上、300m/g以下であることを特徴とする酸化銅粉末。
【請求項3】
2次粒子が請求項1に記載の1次粒子の凝集体で構成され、且つ、当該2次粒子は前記柱状形状を有する1次粒子がランダムな方向を向いて凝集したものであることを特徴とする酸化銅粉末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−1474(P2009−1474A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167002(P2007−167002)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)