酸化銅粒子及びその製造方法
【課題】分散性に優れる酸化銅粒子を提供する。
【解決手段】複数の酸化銅粒子を含み、酸化銅粒子の3次元形状において、酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を長径とし、長径を与える平行二平面に直交し且つ酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面の距離を短径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を中径とした場合に、複数の酸化銅粒子について、長径の長さの平均値が100nm以上600nm以下であり、短径の長さの平均値に対する長径の長さの平均値の比が2.9以上5.5以下であり、中径の長さの平均値に対する長径の長さの平均値の比が2.0以上である酸化銅粒子群。
【解決手段】複数の酸化銅粒子を含み、酸化銅粒子の3次元形状において、酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を長径とし、長径を与える平行二平面に直交し且つ酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面の距離を短径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を中径とした場合に、複数の酸化銅粒子について、長径の長さの平均値が100nm以上600nm以下であり、短径の長さの平均値に対する長径の長さの平均値の比が2.9以上5.5以下であり、中径の長さの平均値に対する長径の長さの平均値の比が2.0以上である酸化銅粒子群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化銅粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路や端子形成等、金属銅の微細パターン形成にはフォトレジストとフォトマスクを用いた手法が用いられてきた。一方、印刷法により金属銅の元になるインクを印刷・金属化して金属銅の微細パターンを形成する手法がコストの低減、工程の削減、投入資材と廃棄物の削減、大面積デバイスへの適用の点から検討されるようになってきた。
【0003】
例えば、銅粒子をバインダー樹脂に混合した樹脂バインダー銅ペーストが提案され、実際に使用されている。しかし、このような樹脂バインダー銅ペーストから形成された導電パターンでは銅粒子同士の接触で導電性が得られるものの、抵抗が高くなることが問題となっている。さらに、導電パスにおける銅粒子間の接触数が抵抗を増加させる要因となりうるため、銅粒子の小粒径化は導電パスにおける接触数の増加を伴うため、結果として抵抗を増加させることになる。このため線幅が70μm以下であるような微細パターンの形成に必要な銅粒子の小粒径化が、事実上困難である。
【0004】
上記に関連して、銅ナノ粒子を含みバインダーを含まない銅インクやペーストが提案されている。この手法では、パターン形成・乾燥後に導体化処理を行うことにより金属粒子間に金属結合を形成して低抵抗化するため、微細パターン形成性と低抵抗性が両立できると期待されている。
一方、金属銅粒子ではなく、酸化銅粒子の堆積層でパターン形成し、これをギ酸含有不活性ガス中で140〜200℃に加熱することにより、低抵抗の金属銅膜が得られることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また銅塩水溶液にアルカリ剤を加えて水酸化銅を析出させ、これを還元することで板状の銅粒子を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/034016号パンフレット
【特許文献2】特開平11−350009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化銅粒子を用いた金属銅パターン形成においては、分散媒への分散性に優れた酸化銅粒子及びその製造方法が求められている。
本発明は、分散性に優れる酸化銅粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 複数の酸化銅粒子を含み、前記酸化銅粒子の3次元形状において、前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を長径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面の距離を短径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を中径とした場合に、前記複数の酸化銅粒子について、長径の長さの平均値が100nm以上600nm以下であり、前記短径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.9以上5.5以下であり、前記中径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.0以上である酸化銅粒子群である。
【0008】
<2> 炭素原子の含有率が2質量%以下である前記<1>に記載の酸化銅粒子群である。
【0009】
<3> 水酸化銅を含むpH6以上8.5以下の含水組成物を、加熱処理して酸化銅を生成する工程を有する前記<1>又は<2>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0010】
<4> 前記加熱処理の温度が、60℃以上100℃以下である前記<3>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0011】
<5> 銅錯体の水溶液に塩基性化合物を加えて、前記含水組成物を得る工程をさらに有する前記<3>又は<4>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0012】
<6> 前記銅錯体は、2価の銅イオンと配位子とからなる水溶性銅錯体である前記<5>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0013】
<7> 前記含水組成物は、アルコールをさらに含む前記<3>〜<6>のいずれか1項に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0014】
<8> 前記酸化銅を生成する工程の後に、イオン性化合物の少なくとも一部を除去する洗浄工程をさらに有する前記<3>〜<7>のいずれか1項に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0015】
<9> 前記洗浄工程は、限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析及び純水洗浄からなる群より選ばれる少なくとも1種の洗浄処理を含む前記<8>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分散性に優れる酸化銅粒子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】酸化銅粒子の形状を測長する方法を模式的に示す斜視図である。
【図2】酸化銅粒子の形状を規定するパラメータを模式的に説明するグラフである。
【図3】実施例1にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図4】実施例2にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図5】実施例1〜3にかかる酸化銅粒子のX線回折スペクトルの一例を示す図である。
【図6】実施例4にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図7】比較例1にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図8】実施例7にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図9】実施例8にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図10】実施例8にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図11】実施例9にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図12】実施例9にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図13】比較例2にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図14】比較例3にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図15】比較例3にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図16】比較例4にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図17】比較例4にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図18】本実施形態にかかる酸化銅ペーストから形成された酸化銅粒子含有層パターンの一例を示す図である。
【図19】本実施形態にかかる酸化銅ペーストから形成された金属銅パターン断面の走査型イオン顕微鏡像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0019】
<酸化銅粒子群>
本発明の酸化銅粒子群は、複数の酸化銅粒子を含み、前記酸化銅粒子の3次元形状において、前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、その距離が最大になる平行二平面の距離を長径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、その距離が最小となる平行二平面の距離を短径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、その距離が最大となる平行二平面の距離を中径とした場合に、前記複数の酸化銅粒子について、長径の長さの平均値(以下、「平均長径」ともいう)が100nm以上600nm以下であり、前記短径の長さの平均値(以下、「平均短径」ともいう)に対する前記長径の長さの平均値の比が2.9以上5.5以下であり、前記中径の長さの平均値(以下、「平均中径」ともいう)に対する前記長径の長さの平均値の比が2.0以上である。
【0020】
酸化銅粒子群が特定の形状を有する酸化銅粒子で構成され、前記長径、中径及び短径が特定の関係を満たすことで、分散媒への分散性に優れ、さらにこの酸化銅粒子群を用いて構成したペースト組成物は優れたスクリーン印刷性を発現する。よって後述のするように、これを用いて酸化銅ペーストを構成して導体パターンの製造方法に適用した場合に、高精細で低抵抗の導体パターンを形成することができる。
【0021】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子の3次元形状は、3次元透過型電子顕微鏡、FIB/走査型電子顕微鏡、3D X線トモグラフィーなどの粒子の3次元形状の情報が直接得られる観察方法を用いて観察することができる。なお酸化銅粒子の3次元形状の観察は例えば20,000倍で行う。また観察される酸化銅粒子がそれぞれ独立した粒子として識別可能な条件で観察を行なう。
【0022】
前記酸化銅粒子の形状は長径、中径及び短径のそれぞれの長さの平均値で規定される。ここで長径の長さは、酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面間の距離として与えられる。また小径の長さは、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面間の距離として与えられる。さらに中径の長さは、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面間の距離として与えられる。また長径、中径及び短径のそれぞれの長さの平均値は、任意に選択される20個の酸化銅粒子についてそれぞれ長径、中径及び短径を測定し、それぞれの算術平均値として与えられる。
【0023】
前記酸化銅粒子は、長径の長さの変動係数が20%以下であることが好ましく、15%以下であることが好ましい。このように粒子形状のばらつきが小さいことで、より分散性が向上する。一方、酸化銅粒子の形状が塊状やリボン状等の場合には、個々の酸化銅粒子の大きさのばらつきが大きくなりすぎて(例えば、変動係数が20%を超えるため)意味のある平均値が得られない。なお変動係数は標準偏差を平均値で除して求められる。
【0024】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子の長径、中径及び小径の長さは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡を用いて酸化銅粒子の平面像を観察し、観察された平面像から酸化銅粒子の3次元形状を想定して上記と同様にして測定することもできる。例えば1つの平面像について、その平面像の外周に互いに異なる接点で外接し、互いに平行な2本の接線の組を用いて、長径、中径及び小径のそれぞれの長さを測定することができる。なお、走査型電子顕微鏡による観察は20,000倍(加速電圧5kV)で行う。また観察される個々の酸化銅粒子が独立した粒子として識別可能な条件で観察を行なう。
【0025】
酸化銅粒子の長径、中径及び短径のそれぞれの長さの測定方法を図1に示す模式図を参照しながら説明する。図1に模式的に示す酸化銅粒子1に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となる第一の平行二平面を選択し、第一の平行二平面間の距離として酸化銅粒子1の長径の長さ2が測定される。また前記第一の平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子1に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となる第二の平行二平面を選択し、第二の平行二平面間の距離として酸化銅粒子1の短径の長さ4が測定される。さらに、前記第一の平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子1に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となる第三の平行二平面を選択し、第三の平行二平面間の距離として中径の長さ3が測定される。
【0026】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子は、その長径の長さの平均値が100nm以上600nm以下であるが、分散性と形成される導体パターンの精細性の観点から、110nm以上550nm以下であることが好ましく、120nm以上500nm以下であることがより好ましい。なお、前記酸化銅粒子の長径の長さは上記のようにして測定され、20個の酸化銅粒子についての測定値の算術平均として平均長径が算出される平均長径が100nm未満の酸化銅粒子群を用いて酸化銅ペーストを調製した場合、粒径の低下と共に酸化銅ペーストの粘度が増加するため、所望の粘度に調製した場合に酸化銅ペースト中の酸化銅粒子の濃度が低くなる傾向がある。一方、平均長径が600nmを超える酸化銅粒子群を用いて酸化銅ペーストを調製した場合には、酸化銅パーストの印刷適性が低下する傾向があり、さらに後述する酸化銅粒子群の製造方法での合成が困難となる。
【0027】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子の好ましい形状は、酸化銅粒子として一般的な形状である略球状や、板状及び針状ではなく、長粒状の粒子である。ここで長粒状とは、平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)が2.9以上5.5以下であり、平均中径に対する平均長径の比(平均長径/平均中径)が2.0以上であることを意味する。(平均長径値)/(平均短径)はいわゆるアスペクト比であり、その値が2.9未満で1に近いほど球形に近い形状となる。またその値が2.9以上で5.5以下の場合を長粒状又は鱗片状の粒子形状とする。更に5.5を超える場合を針状又は板状の粒子形状とする。また(平均長径)/(平均中径)は、{(平均長径)/(平均短径)}/{(平均中径)/(平均短径)}であり、その値が2.0以上である場合を長粒状又は針状の粒子形状とする。一方2.0未満の場合を鱗片状又は板状とする。
【0028】
酸化銅粒子群の形状について図2を参照しながら説明する。図2は横軸に平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)をとり、縦軸に平均短径に対する平均中径の比(平均中径/平均短径)をとった場合における酸化銅粒子の形状分布を模式的に示す図である。図2において平均長径/平均短径及び平均中径/平均短径が共に1の場合、酸化銅粒子の形状は球状になる。また例えば、平均中径/平均短径を一定の値(例えば、1)とした場合の粒子形状を、平均長径/平均短径が1より大きくなるに従って、長粒状、棒状、そして針状であると定義する。また例えば、平均長径/平均短径を一定の値(例えば2.9以上5.5以下)とした場合の粒子形状を、平均中径/平均短径が1より大きくなるに従って、長粒状、鱗片状、そして板状であると定義する。なお、長径、中径及び短径の定義上、平均長径/平均短径、平均中径/平均短径及び平均長径/平均短径はすべて1以上である。
【0029】
本発明の酸化銅粒子群は、平均長径/平均短径が2.9以上5.5以下であり、平均長径/平均中径が2.0以上である。従って本発明の酸化銅粒子群は、図2において、横軸に直交し平均長径/平均短径が2.9である直線と、横軸に直交し平均長径/平均短径が5.5である直線と、縦軸に直交し平均中径/平均短径が1である直線と、平均長径/平均短径が2であり平均中径/平均短径が1である点を通り、傾き(平均中径/平均短径)/(平均長径/平均短径)が1/2である直線とで囲まれる領域に属することになる。
【0030】
酸化銅ペーストを構成する酸化銅粒子群の粒子形状が、球状に近い形状であると、酸化銅ペーストはチキソ性を発現しにくくなり、スクリーン印刷性が低下する傾向になる。また板状、鱗片状及び針状の粒子形状であると、粒子間の接触面積の増加による相互作用が強くなり、粘度の増加に起因して粒子濃度が低下したり、チキソ性が大きくなりすぎたりするためスクリーン印刷性が低下する傾向になる。
【0031】
前記酸化銅粒子群において、平均長径/平均短径は2.9以上5.5以下であるが、分散性と酸化銅ペーストを構成した場合の印刷適性の観点から、平均長径/平均短径が2.9以上5.0以下であることが好ましい。また前記酸化銅粒子群において、平均長径/平均中径は2.0以上であるが、分散性と酸化銅ペーストを構成した場合の印刷適性の観点から、平均長径/平均中径が2.5以上であることが好ましい。
【0032】
さらに前記酸化銅粒子群は、分散性と酸化銅ペーストを構成した場合の印刷適性の観点から、平均長径が110nm以上550nm以下であり、平均長径/平均短径が2.9以上5.5以下であり、平均長径/平均中径が2.0以上であることが好ましく、平均長径が120nm以上500nm以下であり、平均長径/平均短径が2.9以上5.0以下であり、平均長径/平均中径が2.5以上であることがより好ましい。
【0033】
前記酸化銅粒子を構成する酸化銅としては、酸化第一銅及び酸化第二銅が挙げられる。前記酸化銅粒子は酸化第一銅及び酸化第二銅の少なくとも一方を含んでいればよく、酸化第一銅からなる粒子であっても、酸化第二銅からなる粒子であっても、酸化第一銅及び酸化第二銅を含む粒子のいずれであってもよい。
【0034】
前記酸化銅粒子群は、炭素原子の含有率が3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.7質量%以下であることがさらに好ましい。ここで前記酸化銅粒子群における炭素原子の含有率が2質量%以下であるとは、酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子に、その製造方法に由来する表面処理剤や原料の有機銅錯体等の有機化合物や分散性や耐酸化性が実質的に含まれていないことを意味する。酸化銅粒子に有機化合物が実質的に含まれていない酸化銅粒子群を用いて、後述する酸化銅ペーストを調製して導体パターンの製造方法に適用した場合に、より低抵抗の導体パターンを形成することができる。
なお、酸化銅粒子群に含まれる炭素原子の含有率は、燃焼ガス赤外線吸収法により測定される。具体的には例えば、株式会社堀場製作所製のEMIA−Vシリーズを用いて通常の条件で測定される。
【0035】
<酸化銅粒子群の製造方法>
本発明の酸化銅粒子群の製造方法は、水酸化銅を含むpH6以上8.5以下の含水組成物を、加熱処理して酸化銅を生成する工程を有し、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
水酸化銅を含む含水組成物を特定のpH範囲で加熱処理することで、所望の形状を有する酸化銅粒子から構成される前記酸化銅粒子群を効率よく製造することができる。
【0036】
前記水酸化銅を含む含水組成物は、水酸化銅を含む水系の組成物であればよく、含まれる水酸化銅の態様は特に制限されない。前記含水組成物は、水酸化銅を溶液状態で含んでいても、懸濁状態で含んでいてもよい。前記含水組成物においては、水酸化銅の少なくとも一部が溶液状態で含まれていることが好ましい。
【0037】
前記含水組成物に含まれる水酸化銅の含有量は特に制限されず、酸化銅粒子群の製造条件等に応じて適宜選択される。なかでも酸化銅粒子群の生成効率の観点から、含水組成物中の銅イオン濃度として、0.01mol/kg〜0.15mol/kgであることが好ましく、0.015mol/kg〜0.13mol/kgであることがより好ましく、0.02mol/kg〜0.10mol/kgであることがさらに好ましい。
【0038】
前記製造方法における含水組成物のpHは6以上8.5以下であるが、所望のアスペクト比を有する酸化銅粒子を効率よく得る観点から、6.5以上8.3以下であることが好ましく、7.0以上8.0以下であることがより好ましい。
一般に、水酸化銅を含む含水組成物をpH8.7以上の条件で加熱処理すると板状の酸化銅粒子が生成するが、pH6以上8.5以下で加熱処理することで所望のアスペクト比を有する長粒状の酸化銅粒子を得ることができる。
【0039】
含水組成物のpHの調整は、水溶性塩基又はその水溶液を用いて常法により行なうことができる。水溶性塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;二リン酸カリウム等のリン酸のアルカリ金属塩;ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド等のアルコキシドなどを挙げることができる。
【0040】
含水組成物のpHの測定方法は特に制限されず、通常用いられる手段で測定することができる。例えば、pHメータ(例えば、横河電機株式会社製のパーソナルpH/ORPメータ)で測定することができる。pHの測定値としては、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃)、中性りん酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃))を用いて、2点校正した後、電極を含水組成物に入れて、1分以上経過し安定した後の値を採用する。
【0041】
また加熱処理の温度は、含水組成物に含まれる水酸化銅を酸化銅に変換可能であれば特に制限されない。酸化銅粒子群の生成効率の観点から、60℃以上110℃以下であることが好ましく、60℃以上100℃以下であることがより好ましく、70℃以上95℃以下であることがさらに好ましい。加熱処理の温度が60℃以上であることで水酸化銅から酸化銅への変換反応が効率よく進行する。また110℃以下であると前記含水組成物の沸点を超えることがないため、耐圧容器等を要することがなく生産性が向上する。
【0042】
加熱方法は所望の温度に含水組成物を昇温可能であれば特に制限されず、通常用いられる加熱手段から適宜選択することができる。加熱手段としては例えば、温風乾燥機、恒温槽、ホットプレート、投げ込みヒーター、セラミックヒーター、パイプヒーターなどの抵抗加熱や、赤外線加熱、蒸気加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱、火炎などが挙げられる。
【0043】
前記製造方法は、銅錯体水溶液に塩基性化合物を加えて、前記水酸化銅を含む含水組成物を得る工程をさらに有することが好ましい。これにより所望のpHを有する水酸化銅を含む含水組成物をより効率的に得ることができる。
【0044】
前記銅錯体水溶液に含まれる銅錯体は、2価の銅イオンと配位子とからなる水溶性銅錯体であることが好ましい。ここで水溶性銅錯体とは純水に対して5質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性の銅錯体としてはpH6以上8.5以下で酸化銅粒子を生成可能であれば特に制限されず、有機酸塩基を配位子とする有機酸銅錯体であっても、無機酸塩基を配位子とする無機銅錯体であってもよい。
前記有機酸銅錯体を形成する有機酸銅塩としては、例えば、酢酸銅、ギ酸銅、シュウ酸銅,グリオキシル酸銅,クエン酸銅,プロピオン酸銅が挙げられる。また無機銅錯体を形成する無機酸銅塩としては、例えば、硝酸銅、炭酸銅,塩化銅,ヨウ化銅,臭化銅が挙げられる。これらの中でも、酸化銅粒子の生成効率の観点から、有機酸銅塩が好ましく、酢酸銅及びギ酸銅から選ばれる少なくとも一方がより好ましい。
【0045】
前記含水組成物は、少なくとも1種のアルコールをさらに含むことができる。アルコールを含むことで生成する酸化銅粒子の粒子径をより小径化することができる。アルコールとしては、アルコール性のヒドロキシ基を有する水溶性化合物であれば特に制限はない。ここで水溶性とは純水に対して10質量%以上溶解することを意味する。前記アルコールはモノアルコールであっても、多価アルコールであってもよい。なかでも、炭素数1〜8の水溶性アルコールであることが好ましく、炭素数1〜6の水溶性アルコールであることがより好ましく、炭素数1〜4の水溶性アルコールであることがさらに好ましい。
【0046】
前記アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、シクロブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、シクロペンタノール、シクロブタンメタノール、1−ヘキサノール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、2−メトキシエタノール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ジヒドロキシアセトン、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、ヒドロキシガンマブチロラクトン、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロピラン−2−オール、3−アセチル−1−プロパノール、酪酸メチル、エチルグリコレート、4−メチル−1−ブタノール、3−エチル−1−プロパノール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、グリコールアルデヒドジメチルアセタール、ジエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、γ−ヒドロキシメチル−γ−ブチロラクトン、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トレオース、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,4−ジオキサン−2,5−ジオール、イノシトールなどが挙げられる。
【0047】
前記含水組成物がアルコールを含む場合、アルコールの含有率はアルコールの種類や所望の粒子径に応じて適宜選択できる。例えば、含水組成物中に10質量%〜50質量%とすることができ、20質量%〜40質量%であることが好ましい。含有率が10質量%以上であると生成する酸化銅粒子の粒子径を効果的に小径化できる。また50質量%以下であると水溶性銅錯体の溶解性が低下することを抑制でき、所望の銅イオン濃度を達成することが容易になる。
含水組成物にアルコールを添加する場合、添加順は特に制限されない。例えばpHを調整する前であっても、pHの調整後であってもよい。また前記アルコールは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
前記製造方法は、酸化銅を生成する工程の後に、イオン性化合物の少なくとも一部を除去する洗浄工程をさらに有することが好ましい。イオン性不純物は,分散液中で粒子間の静電反撥力を減少させ分散性,分散安定性を低下させる。洗浄工程により、酸化銅ペーストを構成した場合に、より高濃度で安定した酸化銅ペーストを調製することができる。
【0049】
前記洗浄工程に用いる方法は、酸化銅粒子の生成後に含水組成物に含まれるイオン性化合物の少なくとも一部を除去可能であれば、通常用いられる洗浄方法から適宜選択することができる。洗浄方法として具体的には限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析、純水洗浄、イオン交換樹脂処理等を挙げることができる。これらの中でも洗浄効率の観点から、限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析及び純水洗浄からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。洗浄方法は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
前記洗浄工程においては、用いられる洗浄液としては特に制限されない。中でもイオン交換水及び精製水が好ましい。また前記洗浄工程は、イオン性化合物の少なくとも一部が除去されればよい。形成される導体パターンの低抵抗性とペーストの安定性の観点から、洗浄方法に用いられた洗浄液(好ましくは水)の電気伝導率が5000mS/m以下となるように行なうことが好ましく、1000mS/m以下となるように行なうことがより好ましい。
【0051】
前記酸化銅粒子群は、特定の形状を有する酸化銅粒子から構成されることから、分散媒への分散性に優れ、導体パターン形成用の酸化銅ペーストの調製に好適に適用される。導体パターン形成用の酸化銅ペーストとして用いることで、高精細で低抵抗な導体パターンを形成することができる。さらに形成される導体パターンは、緻密な結晶構造を有し、低い体積抵抗率と高い熱伝導率を有する。前記酸化銅ペースト及びこれを用いた導体パターン形成方法は、例えば、国際公開2011/034016号パンフレット等を参照することができる。
また前記酸化銅粒子群は、従来の酸化銅粒子として一般的な形状である略球形状や、板状は異なる長粒状の形状を有し、媒体に対する分散安定性に優れることから、前記導体パターン形成用の酸化銅ペースト以外に、着色塗料、抗菌塗料、放熱パターン形成等に適用することができる。
【0052】
(酸化銅ペースト)
導体パターン形成用の酸化銅ペーストは、例えば、少なくとも1種の前記酸化銅粒子群(以下、単に「酸化銅粒子」ともいう)と、分散媒とを含み、必要応じてその他の成分を含んで構成される。前記酸化銅粒子を含む酸化銅ペーストは、高精細で低抵抗な導体パターンを形成することができる。これは例えば以下のように考えることができる。
酸化銅ペーストを用いた導体パターンの形成においては、酸化銅ペーストの物性として、酸化銅粒子を含むパターンの形成性と、これを還元雰囲気下で熱処理して導体化する際のパターン形状の安定性とが求められる。ここで分散剤や添加剤(例えば、チキソ性付与剤や粘度調整剤)等によって酸化銅ペーストの物性を調整すると、導体化処理において充分な導電性が得られない場合がある。一方、前記酸化銅粒子は特定の形状を有していることで分散媒との親和性が高いため、これを含んで構成された酸化銅ペーストは、分散剤や添加剤によって物性を調整しなくてもパターン形成性と形状安定性に優れた物性を示す。そのため導体化処理に際しては高い導電率を有する導体パターンを形成できると考えることができる。
【0053】
酸化銅ペーストにおける酸化銅粒子の含有率は、酸化銅ペーストを付与する方法等に応じて適宜選択することができる。例えば1質量%〜95質量%とすることができ、20質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0054】
前記分散媒は、有機溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。有機溶剤としては25℃における蒸気圧が1.34×103Pa未満であることが好ましく、1.0×103Pa未満であることがより好ましい。
このような有機溶剤としては、例えば以下に示すものが挙げられる。すなわち、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;エチルベンゼン、アニソール、メシチレン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、フェニルアセトニトリル、ベンゾニトリル等の芳香族系溶剤;酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、グリコールスルファイト、乳酸エチル等のエステル系溶剤;1−ブタノール、シクロヘキサノール、α−テルピネオール、グリセリンなどのアルコ−ル系溶剤;シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、1,3−ジオキソラン−2−オン、1,5,5−トリメチルシクロヘキセン−3−オン等のケトン系溶剤;ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコール系溶剤;ジヘキシルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル等のエーテル系溶剤;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;スルホラン等のスルホン系溶剤;マロノニトリルなどのニトリル系溶剤が例示できる。中でも、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、グリコールスルファイト、プロピレンカーボネート及びスルホランから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
前記酸化銅ペーストは、前記酸化銅粒子に加え必要に応じて、他の銅系粒子を含有してもよい。他の銅系粒子としては前記酸化銅粒子以外の形状を有する酸化銅粒子や、金属銅粒子等を挙げることができる。他の銅系粒子をさらに含むことで、印刷性等の付与適性、保存安定性、導体化処理特性、導体層の特性などを向上させることができる。例えば、小粒径の銅系粒子や球状の銅系粒子の添加によって付与適性を調整することができる。また毬栗状の銅系粒子を添加することで保存安定性が向上する。また金属銅粒子を添加することで導体化処理温度を低下させることができる。さらに小粒径の銅系粒子を添加することで形成される導体層の緻密化を促進することができる。
【0056】
他の銅系粒子を含有率は、前記酸化銅粒子群で得られるパターン形成性等を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば前記酸化銅粒子に対して30体積%以下とすることができる。
【0057】
前記酸化銅ペーストは、前記酸化銅粒子及び必要応じて含まれる他の銅系粒子に加え、その他の金属系粒子をさらに含んでいてもよい。その他の金属系粒子としては、コバルト、ニッケル、銀、金、モリブデン、マンガン、マグネシウム、鉄及びこれらの酸化物等を含む粒子を挙げることができる
【0058】
前記その他の金属系粒子の粒子形状は特に制限されず、略球状、扁平状、針状、ブロック状、板状、および鱗片状等が挙げられる。中でも分散性の観点から、略球状、針状及びブロック状の少なくとも1種であることが好ましい。
その他の金属系粒子の粒子径は特に制限されない。中でも一次粒子の数平均粒子径が1nm〜1000nmであることが好ましく、1nm〜500nmであることがより好ましく、形成される導体層の平滑性の観点から、10nm〜100nmであることがさらに好ましい。なお、その他の金属系粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により測定することができる。
【0059】
その他の金属系粒子の含有率は、前記酸化銅粒子群で得られるパターン形成性等を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば前記酸化銅粒子に対して10体積%以下とすることができる。
【0060】
前記酸化銅ペーストは、必要に応じて分散剤、表面保護剤、増粘剤、チキソ性付与剤等の添加剤をさらに含んでもよい。酸化銅ペーストが添加剤を含む場合、200℃以下の温度で不揮発性又は非分解性である添加剤の含有率は20質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。添加剤の含有率が前記範囲であることで、200℃以下の低温で体積抵抗率が1×10−7Ω・m以下の導体化が容易になる。また形成される導体層中に添加剤の残留に起因するボイドが発生することを抑制できる。
【0061】
前記酸化銅ペーストに含まれる粒子の分散状態における最大粒径は、形成する導体パターンの線幅に応じて適宜選択することができる。例えば、最大粒径は形成する線幅の1/10以下であることが好ましく1/20以下であることがより好ましい。これにより、形成する線状パターンの形状乱れやかすれの発生を抑制できる。また、同様の理由から分散状態での体積平均粒径は、線幅の1/15以下であることが好ましく、1/30以下であることがより好ましい。
【0062】
従って、配線板用途で一般的に用いられるライン幅70μmの細線を形成する場合には、粒子の分散状態での最大粒径は7μm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5μm以下である。また粒子の分散状態での体積平均粒径は、4.7μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.5μm以下である。さらに実装基板等の高精細用途で用いられるライン幅25μmのパターンを形成する場合には、粒子の分散状態での最大粒径は2.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.3μm以下である。また粒子の分散状態での体積平均粒径は、1.7μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8μm以下である。ここで、体積平均粒径及び最大粒径は、粒子のブラウン運動による動的光散乱法に基づいて、光子相関法により測定される。体積平均粒径及び最大粒径の測定は、例えば、ベックマンコールター株式会社製「サブミクロン粒子アナライザーN5型」(商品名)を用いて行うことができる。
【0063】
前記酸化銅ペーストをインクジェット法に適用する場合、25℃における動的粘度が5mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上50mPa・s以下であることがより好ましい。動的粘度が5mPa・s以上であると、ノズルからの吐出時に霧状になることを抑制できる。また絶縁層に着液後の付与形状が良好に維持される。一方100mPa・s以下であると吐出性がより良好になる。なお、「25℃における動的粘度」とは、別言すると、測定温度25℃、せん断速度10/secでのせん断粘度である。なお、酸化銅ペーストの動的粘度は、例えばコーンプレート治具を装着した動的粘弾性測定装置により測定できる。
【0064】
前記酸化銅ペーストをスクリーン印刷法に適用する場合、細線描画及び印刷再現性の観点から、コーンプレートを装着した粘弾性測定装置で測定されるCassonの平衡粘度が、0.01Pa・s以上200Pa・s以下であることが好ましく、0.1Pa・s以上200Pa・s以下であることがより好ましく、1Pa・s以上200Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0065】
前記酸化銅ペーストは、例えば前記酸化銅粒子群及び必要に応じて含まれる他の銅系粒子やその他の金属系粒子を分散媒中に分散処理することで調製することができる。分散処理は、石川式攪拌器、自転公転式撹拌機、超薄膜高速回転式分散機、ロールミル、超音波分散機、ビーズミルなどのメディア分散機、ホモミキサーやシルバーソン攪拌機などのキャビテーション攪拌装置、アルテマイザーなどの対向衝突法を用いることができる。また、これらの手法を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0066】
また分散処理後に粗粒を除去する処理を行ってもよい。粗粒の除去手法としては、ろ過、遠心分離、メッシュの透過、水篩などを用いることができる。
例えば、酸化銅ペーストの付与をスクリーン印刷で行う場合、スクリーンの目開きより大きな粗粒を含んでいると印刷不良の原因となり得る。そのため粗粒の除去処理を行うことが好ましい。なお、印刷時に印刷不良の原因となり得る粗粒は、グラインド・メーターにより確認できる。
【0067】
[導体パターンの製造方法]
前記酸化銅ペーストを用いる導体パターンの製造方法は、例えば、酸化銅ペーストを絶縁層上に付与して酸化銅粒子含有層を形成する工程と、形成された酸化銅粒子含有層をギ酸ガスの存在下に熱処理して酸化銅を金属銅に還元する導体化処理工程とを有し、必要に応じてその他の工程を有して構成される。
酸化銅粒子含有層を所望のパターン状に形成することで、緻密で電気伝導性及び熱伝導性に優れる導体パターンを所望の形状に形成することができる。
【0068】
導体パターンを形成する絶縁層は特に制限されず、目的に応じて通常用いられる絶縁層から適宜選択することができる。例えばガラス、セラミックス等の無機材料や、配線基板に用いられる有機材料などを挙げることができる。特に後述する導体化処理工程を200℃以下の低温で行う場合は、適用可能な有機材料の選択の幅が広がる。またフィルム状の柔軟な絶縁層を用いた場合には、柔軟で軽量なデバイスを構成できる。
【0069】
前記酸化銅ペーストを絶縁層上に付与して酸化銅粒子含有層をパターニングする方法は、酸化銅粒子含有層を任意の場所に形成可能な手法であれば特に制限はない。このような手法として、インクジェット法、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、転写印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法、ジェットプリンティング印刷法、ディスペンサ法、ジェットディスペンサ法、ニードルディスペンサ法、カンマコータ法、スリットコータ法、ダイコータ法、グラビアコータ法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法、ソフトリソグラフ法、ディップペンリソグラフ法、粒子堆積法、スプレーコータ法、スピンコータ法、ディップコータ法、電着塗装法等を挙げることができる。中でも、インクジェット法、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法、ジェットプリンティング法、ディスペンサ法、ニードルディスペンサ法、カンマコータ法、スリットコータ法、ダイコータ法及びグラビアコータ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法であることが好ましく、線幅70μm以下のパターンを形成可能であることから、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、反転オフセット印刷法、ディスペンサ法、及びニードルディスペンサ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法であることがより好ましい。
【0070】
前記絶縁層上に形成される酸化銅粒子含有層の形状は特に制限されず目的に応じて適宜選択することができる。また前記銅酸化物粒子含有層の層厚は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば0.2μm〜50μmとすることができ、導電性及び接続信頼性の観点から0.8μm〜20μmであることが好ましい。
【0071】
前記製造方法は、酸化銅ペースト付与後に、酸化銅ペーストに含まれている分散媒の少なくとも一部を除去する乾燥工程をさらに有していてもよい。付与した酸化銅ペーストを乾燥することで、酸化銅ペーストの流動性が低下して形状が安定する。また続く導体化処理工程における残留分散媒が減少することで、導体化処理への影響を抑制することができる。乾燥工程は、分散媒の少なくとも一部を除去可能であれば特に制限されない。例えば、加熱,減圧あるいは送風により乾燥させる手法を用いることができる。このような手法に適用できる装置として温風乾燥機、減圧乾燥機、減圧オーブン、恒温槽、送風機が挙げられる。また、乾燥温度は30℃〜200℃、乾燥時間0.1時間〜2.0時間で行うことができる。
【0072】
導体化処理工程では、形成された前記酸化銅粒子含有層をギ酸ガスの存在下に熱処理して酸化銅を金属銅に還元して導体パターンを形成する。ギ酸ガスを用いることで、緻密な金属銅膜が生成し、低体積抵抗率で、高い熱伝導性を有する導体パターンを形成することができる。
【0073】
導体化処理に用いるギ酸ガスの濃度は酸化銅を還元可能である限り特に限定されない。例えば、0.01g/L〜2g/Lとすることができる。またギ酸ガス以外のその他のガス成分が含まれていてもよい。その他のガス成分としてはギ酸と反応しないものであれば特に制限されない。その他のガス成分として酸素を含む場合、酸素とギ酸との混合比率は爆発範囲外であることが好ましい。具体的にはギ酸と空気を混合する場合、ギ酸の濃度が18体積%以下又は51体積%以上であることが好ましい。
【0074】
ギ酸ガスの発生方法は特に制限されない。例えば、液状のギ酸に窒素ガスを流通させギ酸ガスを含む窒素ガスを被処理物に提供する方法、ギ酸の沸点である100℃以上に加熱、あるいは減圧してガス状にした後、被処理物に提供する方法を挙げることができる。
【0075】
また熱処理の温度は、ギ酸ガスの存在下に酸化銅から金属銅が析出する120℃以上であればよく、処理速度の観点から140℃以上であることが好ましい。処理温度の上限は導体パターンを形成する絶縁層(例えば基板)の耐熱温度により規定される。さらに処理圧力は、特に制約無く大気圧、減圧、加圧いずれの条件でもよい。
【0076】
以上のようにして形成された金属銅を含む導体パターンは、緻密で電気伝導性及び熱伝導性に優れているため、導体配線、電極、熱伝導路、放熱の用途に適している。
また、このようにして形成された導体パターンは、厚膜微細配線を形成する場合に、無電解めっきのシード層や電解メッキの極薄銅層として利用することもできる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0078】
[実施例1]
(酸化銅粒子の合成)
無水酢酸銅(II)3.4g(加熱時の濃度0.022mol/kg)を純水680gに溶解して、銅錯体溶液とした。水酸化ナトリウムを1.0mol/kgとなるように純水に溶解してpH調整剤とした。1Lのポリプロピレン製瓶中で、銅錯体溶液全量とpH調整剤の140.1gを混合して密栓して、手で振り混ぜて水酸化銅を含む含水組成物を得た。pHを横河電機製のパーソナルpHセンサpH72−21JAAで測定したところ7.3であった。
この混合液を瓶中に密栓したまま、恒温器中で90℃、5時間加熱したところ、黒色の沈殿を得た。
【0079】
室温に冷却後、上澄みを除き、遠心分離機(11000rpm、10min)にて黒色粉末を分離した。この分離した黒色粉末に純水400mlを加え、超音波洗浄機にかけた後、遠心分離機(11000rpm、15min)にて黒色粉末を分離する操作を2度繰り返して洗浄した。洗浄した黒色粉末を恒温器中、90℃、5時間乾燥させて、酸化銅粒子群を得た。収量1.0g(収率65%)
【0080】
酸化銅粒子群の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の結果、図3に示すように、平均長径が400nm、平均中径が110nm、平均短径が110nmの長粒状の粒子であった。平均長径、平均中径及び平均短径は任意に選択した20個の酸化銅粒子についてそれぞれ測定し、その算術平均として算出した。平均長径/平均短径は3.6であり、平均長径/平均中径は3.6であった。また長径の変動係数は、長径の長さの標準偏差を平均値で除して求めた。
【0081】
またX線回折(XRD)測定の結果、図5に示すように、酸化銅粒子は酸化第二銅と酸化第一銅との混相であった。
さらに不活性ガス融解−赤外線吸収法(測定装置:堀場社製、EMIA−920V)にて測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる酸素分は18.54質量%であった。また燃焼ガス赤外線吸収法(測定装置:堀場社製、EMGA−930)で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分は1.45質量%であった。
【0082】
[実施例2]
(酸化銅粒子の合成)
実施例1において、水酸化銅を含む含水組成物にエタノールを20質量%になるように添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化銅粒子を合成した。この際、手で振り混ぜた後のpHは7.6であった。得られた酸化銅粒子の収量は1.2g(収率78%)であった。
【0083】
得られた酸化銅粒子群のSEMによる観察の結果を図4に示す。また、平均長径150nm、平均短径30nmの長円状の粒子であり、実施例1で得られた酸化銅粒子群に比べて小径化した。また平均長径/平均短径は5.0であり、平均長径/平均中径は5.0であった。
【0084】
またXRD測定の結果、図5に示すように、酸化銅粒子は酸化第二銅を主成分として構成されていた。
不活性ガス融解−赤外線吸収法にて測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる酸素分は19.4質量%であり、燃焼ガス赤外線吸収法で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分は1.61質量%であった。
【0085】
[実施例3]
実施例1において、水酸化銅を含む含水組成物にエタノールを40質量%になるように添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化銅粒子を合成した。この際、手で振り混ぜた後のpHは7.7であった。得られた酸化銅粒子の収量は1.2g(収率78%)であった。
【0086】
得られた酸化銅粒子のSEMによる観察の結果、平均長径120nm、平均短径30nmの長円状の粒子であり、実施例1で得られた酸化銅粒子群に比べて小径化した。また平均長径/平均短径は4.0であり、平均長径/平均中径は4.0であった。
【0087】
またXRD測定の結果、図5に示すように、酸化銅粒子は酸化第二銅を主成分として構成されていた。
不活性ガス融解−赤外線吸収法にて測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる酸素分は19.5質量%であり、燃焼ガス赤外線吸収法で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分は1.49質量%であった
【0088】
[実施例4〜6]
実施例1において、無水酢酸銅(II)の添加量を、それぞれ5.0g(0.033mol/kg)、6.8g(0.045mol/kg)、13.6g(0.090mol/kg)としたこと以外は同様にして酸化銅粒子を合成した。
その結果、合成時の原料銅イオン濃度によらずほぼ同じ粒径及び粒子形状の酸化銅粒子群が得られた。下表に合成結果をまとめた。また実施例4で得られた酸化銅粒子群のSEMによる観察の結果を図6に示す。
なお、pH調整剤添加後のpHはそれぞれ7.1、7.4、7.6であった。
さらに燃焼ガス赤外線吸収法で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分はそれぞれ1.33質量%、1.41質量%、1.38質量%であった
【0089】
[比較例1]
実施例1において、pH調整剤を184g混合したこと以外は同様にして酸化銅粒子を合成した。この際、手で振り混ぜた後のpHは12.7であった。収量5g(収率89%)であった。
酸化銅粒子のSEMによる観察の結果、図7にSEM写真を示したようにリボン状の粒子形状であった。また種々の大きさを有する粒子形状の混合物であり、またリボン状の粒子が重なっていた。任意に選択した20個の酸化銅粒子から算出された平均長径は734nm、長径の変動係数は33.7%であった。また平均長径/平均短径は73.4であり、平均長径/平均中径は2.9であった。
【0090】
[実施例7〜9、比較例2〜4]
実施例1において、無水酢酸銅(II)3.4gを純水170gに溶解した。pHを測定しながらpH調整剤を下表に示した所定のpHとなるように加え、銅イオン濃度が0.022mol/kgとなるように調整したこと以外は同様にして酸化銅粒子を合成した。下表に合成結果をまとめた。また酸化銅粒子群のSEMによる観察の結果を図8〜図17に示す。図8は実施例7で得られた酸化銅粒子群である。図9及び図10は実施例8で得られた酸化銅粒子群である。図11及び図12は実施例9で得られた酸化銅粒子群である。図13は比較例2で得られた酸化銅粒子群である。図14及び図15は比較例3で得られた酸化銅粒子群である。図16及び図17は比較例4で得られた酸化銅粒子群である。
【0091】
また合成時のpHが5.5の場合である比較例2においては、塊状の酸化銅粒子が生成し、個々の粒子の短径及び中径を測長することが困難であった。合成時のpHが9.4の場合である比較例3においては、鱗片状の酸化銅粒子が生成した。合成時のpHが11.6の場合である比較例4においては、リボン状の酸化銅粒子が生成した。
【0092】
[評価1]
上記で得られた酸化銅粒子を用いた酸化銅ペーストを調製し、分散性の指標となる印刷性を以下のようにして評価した。評価結果を表1に示した。
(酸化銅ペーストの調製)
実施例1で得られた酸化銅粒子25gをポリ容器に秤量し、固形分50体積%となるようにテルピネオール25gを加えて混合液を得た。これをシンキー社製攪拌機(あわとり練太郎 ARE−310)で攪拌した後、水浴で冷却しながら日本精機製作所製超音波ホモジナイザUS−600CCVPを用いて、超音波端子深さ約3cm/出力600W/振動数19.5kHz/振幅数26.5μmで途中スパチュラを用いて攪拌しながら合計7分間分散処理した。分散処理後、ナイロンメッシュ(目開き100μm)に通じて粗粒を除去した後、蓋付きのポリ瓶に内容物を移し、室温で冷却して酸化銅ペーストを得た。
【0093】
(スクリーン印刷)
PENフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム、膜厚50μm)上に、ナイロンメッシュ刷版(L/S=100μm/100μm)と、手刷りスクリーン印刷機を用いて、調製した酸化銅ペーストを塗布してパターン印刷を行い、下記評価基準に従って評価した。
【0094】
(評価基準)
A:L/S=100μm/100μm刷版で印刷時、ショートなく印刷可能であった。
B:L/S=100μm/100μm刷版で印刷時、にじみが生じライン間がショートした。
C:L/S=100μm/100μm刷版で印刷時、カスレが生じラインが断裂した。
D:ナイロンメッシュ(目開き100μm)透過時に多量の粗粒がメッシュ上に残った。
【0095】
【表1】
【0096】
本発明の酸化銅粒子群を用いて調製した酸化銅ペーストは、分散性が良好でスクリーン印刷適性に優れることが分かる。
一方、比較例2で得られた酸化銅粒子群を用いた場合は、分散媒との親和性が悪く分散媒と分離が生じた。また比較例1及び比較例4で得られた酸化銅粒子群を用いた場合には、分散性が悪く粗粒が生じナイロンメッシュ(目開き100μm)を透過において、多量の粗粒が残った。比較例3で得られた酸化銅粒子群を用いて調製した酸化銅ペーストでは、スクリーン印刷時にかすれが生じ、印刷性が悪かった。
以上から、pH6.0から8.5で合成した酸化銅粒子を酸化銅ペースト原料として適用可能だと判断できる。また平均短径に対する平均長径の比が2.9以上5.5以下であり、平均中径に対する平均長径の比が2.0以上の長粒状の粒子が適していると判断できる。
【0097】
[評価2]
(スクリーン印刷及び導体化)
実施例1で得られた酸化銅粒子群を用いて調製した酸化銅ペーストを用い、上記と同様にして酸化銅粒子含有層のパターン形成を行った。具体的には以下の通りである。PENフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム、膜厚50μm)上に、ナイロンメッシュ刷版(L/S=100μm/100μm)と、手刷りスクリーン印刷機を用いて、調製した酸化銅ペーストを塗布した。180℃のホットプレート上で15分乾燥させて酸化銅を含むパターンが形成された試験片を得た。形成されたパターンは、L/S=165μm/45μm、配線高さ3.0μmであった。また図18に形成されたパターンの拡大写真を示した。
【0098】
上記で得られた試験片を、サンプル温度175℃、ギ酸ガス温度60℃、処理時間1時間の処理条件でギ酸ガス処理して、導体層を形成した。
得られた導体層の体積抵抗率は2.1×10−7Ω・mであった。またこれをFIB断面加工してSIM観察したところ、平均膜厚690nmであった。図19にSIM写真を示した。
【0099】
以上から、本発明の酸化銅粒子群は分散媒への分散性に優れ、酸化銅ペーストを構成した場合に、優れた印刷適性を有しパターン形成性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0100】
1 酸化銅粒子
2 長径の長さ
3 中径の長さ
4 短径の長さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化銅粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路や端子形成等、金属銅の微細パターン形成にはフォトレジストとフォトマスクを用いた手法が用いられてきた。一方、印刷法により金属銅の元になるインクを印刷・金属化して金属銅の微細パターンを形成する手法がコストの低減、工程の削減、投入資材と廃棄物の削減、大面積デバイスへの適用の点から検討されるようになってきた。
【0003】
例えば、銅粒子をバインダー樹脂に混合した樹脂バインダー銅ペーストが提案され、実際に使用されている。しかし、このような樹脂バインダー銅ペーストから形成された導電パターンでは銅粒子同士の接触で導電性が得られるものの、抵抗が高くなることが問題となっている。さらに、導電パスにおける銅粒子間の接触数が抵抗を増加させる要因となりうるため、銅粒子の小粒径化は導電パスにおける接触数の増加を伴うため、結果として抵抗を増加させることになる。このため線幅が70μm以下であるような微細パターンの形成に必要な銅粒子の小粒径化が、事実上困難である。
【0004】
上記に関連して、銅ナノ粒子を含みバインダーを含まない銅インクやペーストが提案されている。この手法では、パターン形成・乾燥後に導体化処理を行うことにより金属粒子間に金属結合を形成して低抵抗化するため、微細パターン形成性と低抵抗性が両立できると期待されている。
一方、金属銅粒子ではなく、酸化銅粒子の堆積層でパターン形成し、これをギ酸含有不活性ガス中で140〜200℃に加熱することにより、低抵抗の金属銅膜が得られることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また銅塩水溶液にアルカリ剤を加えて水酸化銅を析出させ、これを還元することで板状の銅粒子を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/034016号パンフレット
【特許文献2】特開平11−350009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化銅粒子を用いた金属銅パターン形成においては、分散媒への分散性に優れた酸化銅粒子及びその製造方法が求められている。
本発明は、分散性に優れる酸化銅粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 複数の酸化銅粒子を含み、前記酸化銅粒子の3次元形状において、前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を長径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面の距離を短径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を中径とした場合に、前記複数の酸化銅粒子について、長径の長さの平均値が100nm以上600nm以下であり、前記短径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.9以上5.5以下であり、前記中径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.0以上である酸化銅粒子群である。
【0008】
<2> 炭素原子の含有率が2質量%以下である前記<1>に記載の酸化銅粒子群である。
【0009】
<3> 水酸化銅を含むpH6以上8.5以下の含水組成物を、加熱処理して酸化銅を生成する工程を有する前記<1>又は<2>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0010】
<4> 前記加熱処理の温度が、60℃以上100℃以下である前記<3>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0011】
<5> 銅錯体の水溶液に塩基性化合物を加えて、前記含水組成物を得る工程をさらに有する前記<3>又は<4>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0012】
<6> 前記銅錯体は、2価の銅イオンと配位子とからなる水溶性銅錯体である前記<5>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0013】
<7> 前記含水組成物は、アルコールをさらに含む前記<3>〜<6>のいずれか1項に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0014】
<8> 前記酸化銅を生成する工程の後に、イオン性化合物の少なくとも一部を除去する洗浄工程をさらに有する前記<3>〜<7>のいずれか1項に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【0015】
<9> 前記洗浄工程は、限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析及び純水洗浄からなる群より選ばれる少なくとも1種の洗浄処理を含む前記<8>に記載の酸化銅粒子群の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分散性に優れる酸化銅粒子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】酸化銅粒子の形状を測長する方法を模式的に示す斜視図である。
【図2】酸化銅粒子の形状を規定するパラメータを模式的に説明するグラフである。
【図3】実施例1にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図4】実施例2にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図5】実施例1〜3にかかる酸化銅粒子のX線回折スペクトルの一例を示す図である。
【図6】実施例4にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図7】比較例1にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図8】実施例7にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図9】実施例8にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図10】実施例8にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図11】実施例9にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図12】実施例9にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図13】比較例2にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図14】比較例3にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図15】比較例3にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図16】比較例4にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図17】比較例4にかかる酸化銅粒子の走査型電子顕微鏡像の一例を示す図である。
【図18】本実施形態にかかる酸化銅ペーストから形成された酸化銅粒子含有層パターンの一例を示す図である。
【図19】本実施形態にかかる酸化銅ペーストから形成された金属銅パターン断面の走査型イオン顕微鏡像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0019】
<酸化銅粒子群>
本発明の酸化銅粒子群は、複数の酸化銅粒子を含み、前記酸化銅粒子の3次元形状において、前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、その距離が最大になる平行二平面の距離を長径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、その距離が最小となる平行二平面の距離を短径とし、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、その距離が最大となる平行二平面の距離を中径とした場合に、前記複数の酸化銅粒子について、長径の長さの平均値(以下、「平均長径」ともいう)が100nm以上600nm以下であり、前記短径の長さの平均値(以下、「平均短径」ともいう)に対する前記長径の長さの平均値の比が2.9以上5.5以下であり、前記中径の長さの平均値(以下、「平均中径」ともいう)に対する前記長径の長さの平均値の比が2.0以上である。
【0020】
酸化銅粒子群が特定の形状を有する酸化銅粒子で構成され、前記長径、中径及び短径が特定の関係を満たすことで、分散媒への分散性に優れ、さらにこの酸化銅粒子群を用いて構成したペースト組成物は優れたスクリーン印刷性を発現する。よって後述のするように、これを用いて酸化銅ペーストを構成して導体パターンの製造方法に適用した場合に、高精細で低抵抗の導体パターンを形成することができる。
【0021】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子の3次元形状は、3次元透過型電子顕微鏡、FIB/走査型電子顕微鏡、3D X線トモグラフィーなどの粒子の3次元形状の情報が直接得られる観察方法を用いて観察することができる。なお酸化銅粒子の3次元形状の観察は例えば20,000倍で行う。また観察される酸化銅粒子がそれぞれ独立した粒子として識別可能な条件で観察を行なう。
【0022】
前記酸化銅粒子の形状は長径、中径及び短径のそれぞれの長さの平均値で規定される。ここで長径の長さは、酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面間の距離として与えられる。また小径の長さは、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面間の距離として与えられる。さらに中径の長さは、前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面間の距離として与えられる。また長径、中径及び短径のそれぞれの長さの平均値は、任意に選択される20個の酸化銅粒子についてそれぞれ長径、中径及び短径を測定し、それぞれの算術平均値として与えられる。
【0023】
前記酸化銅粒子は、長径の長さの変動係数が20%以下であることが好ましく、15%以下であることが好ましい。このように粒子形状のばらつきが小さいことで、より分散性が向上する。一方、酸化銅粒子の形状が塊状やリボン状等の場合には、個々の酸化銅粒子の大きさのばらつきが大きくなりすぎて(例えば、変動係数が20%を超えるため)意味のある平均値が得られない。なお変動係数は標準偏差を平均値で除して求められる。
【0024】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子の長径、中径及び小径の長さは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡を用いて酸化銅粒子の平面像を観察し、観察された平面像から酸化銅粒子の3次元形状を想定して上記と同様にして測定することもできる。例えば1つの平面像について、その平面像の外周に互いに異なる接点で外接し、互いに平行な2本の接線の組を用いて、長径、中径及び小径のそれぞれの長さを測定することができる。なお、走査型電子顕微鏡による観察は20,000倍(加速電圧5kV)で行う。また観察される個々の酸化銅粒子が独立した粒子として識別可能な条件で観察を行なう。
【0025】
酸化銅粒子の長径、中径及び短径のそれぞれの長さの測定方法を図1に示す模式図を参照しながら説明する。図1に模式的に示す酸化銅粒子1に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となる第一の平行二平面を選択し、第一の平行二平面間の距離として酸化銅粒子1の長径の長さ2が測定される。また前記第一の平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子1に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となる第二の平行二平面を選択し、第二の平行二平面間の距離として酸化銅粒子1の短径の長さ4が測定される。さらに、前記第一の平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子1に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となる第三の平行二平面を選択し、第三の平行二平面間の距離として中径の長さ3が測定される。
【0026】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子は、その長径の長さの平均値が100nm以上600nm以下であるが、分散性と形成される導体パターンの精細性の観点から、110nm以上550nm以下であることが好ましく、120nm以上500nm以下であることがより好ましい。なお、前記酸化銅粒子の長径の長さは上記のようにして測定され、20個の酸化銅粒子についての測定値の算術平均として平均長径が算出される平均長径が100nm未満の酸化銅粒子群を用いて酸化銅ペーストを調製した場合、粒径の低下と共に酸化銅ペーストの粘度が増加するため、所望の粘度に調製した場合に酸化銅ペースト中の酸化銅粒子の濃度が低くなる傾向がある。一方、平均長径が600nmを超える酸化銅粒子群を用いて酸化銅ペーストを調製した場合には、酸化銅パーストの印刷適性が低下する傾向があり、さらに後述する酸化銅粒子群の製造方法での合成が困難となる。
【0027】
前記酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子の好ましい形状は、酸化銅粒子として一般的な形状である略球状や、板状及び針状ではなく、長粒状の粒子である。ここで長粒状とは、平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)が2.9以上5.5以下であり、平均中径に対する平均長径の比(平均長径/平均中径)が2.0以上であることを意味する。(平均長径値)/(平均短径)はいわゆるアスペクト比であり、その値が2.9未満で1に近いほど球形に近い形状となる。またその値が2.9以上で5.5以下の場合を長粒状又は鱗片状の粒子形状とする。更に5.5を超える場合を針状又は板状の粒子形状とする。また(平均長径)/(平均中径)は、{(平均長径)/(平均短径)}/{(平均中径)/(平均短径)}であり、その値が2.0以上である場合を長粒状又は針状の粒子形状とする。一方2.0未満の場合を鱗片状又は板状とする。
【0028】
酸化銅粒子群の形状について図2を参照しながら説明する。図2は横軸に平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)をとり、縦軸に平均短径に対する平均中径の比(平均中径/平均短径)をとった場合における酸化銅粒子の形状分布を模式的に示す図である。図2において平均長径/平均短径及び平均中径/平均短径が共に1の場合、酸化銅粒子の形状は球状になる。また例えば、平均中径/平均短径を一定の値(例えば、1)とした場合の粒子形状を、平均長径/平均短径が1より大きくなるに従って、長粒状、棒状、そして針状であると定義する。また例えば、平均長径/平均短径を一定の値(例えば2.9以上5.5以下)とした場合の粒子形状を、平均中径/平均短径が1より大きくなるに従って、長粒状、鱗片状、そして板状であると定義する。なお、長径、中径及び短径の定義上、平均長径/平均短径、平均中径/平均短径及び平均長径/平均短径はすべて1以上である。
【0029】
本発明の酸化銅粒子群は、平均長径/平均短径が2.9以上5.5以下であり、平均長径/平均中径が2.0以上である。従って本発明の酸化銅粒子群は、図2において、横軸に直交し平均長径/平均短径が2.9である直線と、横軸に直交し平均長径/平均短径が5.5である直線と、縦軸に直交し平均中径/平均短径が1である直線と、平均長径/平均短径が2であり平均中径/平均短径が1である点を通り、傾き(平均中径/平均短径)/(平均長径/平均短径)が1/2である直線とで囲まれる領域に属することになる。
【0030】
酸化銅ペーストを構成する酸化銅粒子群の粒子形状が、球状に近い形状であると、酸化銅ペーストはチキソ性を発現しにくくなり、スクリーン印刷性が低下する傾向になる。また板状、鱗片状及び針状の粒子形状であると、粒子間の接触面積の増加による相互作用が強くなり、粘度の増加に起因して粒子濃度が低下したり、チキソ性が大きくなりすぎたりするためスクリーン印刷性が低下する傾向になる。
【0031】
前記酸化銅粒子群において、平均長径/平均短径は2.9以上5.5以下であるが、分散性と酸化銅ペーストを構成した場合の印刷適性の観点から、平均長径/平均短径が2.9以上5.0以下であることが好ましい。また前記酸化銅粒子群において、平均長径/平均中径は2.0以上であるが、分散性と酸化銅ペーストを構成した場合の印刷適性の観点から、平均長径/平均中径が2.5以上であることが好ましい。
【0032】
さらに前記酸化銅粒子群は、分散性と酸化銅ペーストを構成した場合の印刷適性の観点から、平均長径が110nm以上550nm以下であり、平均長径/平均短径が2.9以上5.5以下であり、平均長径/平均中径が2.0以上であることが好ましく、平均長径が120nm以上500nm以下であり、平均長径/平均短径が2.9以上5.0以下であり、平均長径/平均中径が2.5以上であることがより好ましい。
【0033】
前記酸化銅粒子を構成する酸化銅としては、酸化第一銅及び酸化第二銅が挙げられる。前記酸化銅粒子は酸化第一銅及び酸化第二銅の少なくとも一方を含んでいればよく、酸化第一銅からなる粒子であっても、酸化第二銅からなる粒子であっても、酸化第一銅及び酸化第二銅を含む粒子のいずれであってもよい。
【0034】
前記酸化銅粒子群は、炭素原子の含有率が3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.7質量%以下であることがさらに好ましい。ここで前記酸化銅粒子群における炭素原子の含有率が2質量%以下であるとは、酸化銅粒子群を構成する酸化銅粒子に、その製造方法に由来する表面処理剤や原料の有機銅錯体等の有機化合物や分散性や耐酸化性が実質的に含まれていないことを意味する。酸化銅粒子に有機化合物が実質的に含まれていない酸化銅粒子群を用いて、後述する酸化銅ペーストを調製して導体パターンの製造方法に適用した場合に、より低抵抗の導体パターンを形成することができる。
なお、酸化銅粒子群に含まれる炭素原子の含有率は、燃焼ガス赤外線吸収法により測定される。具体的には例えば、株式会社堀場製作所製のEMIA−Vシリーズを用いて通常の条件で測定される。
【0035】
<酸化銅粒子群の製造方法>
本発明の酸化銅粒子群の製造方法は、水酸化銅を含むpH6以上8.5以下の含水組成物を、加熱処理して酸化銅を生成する工程を有し、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
水酸化銅を含む含水組成物を特定のpH範囲で加熱処理することで、所望の形状を有する酸化銅粒子から構成される前記酸化銅粒子群を効率よく製造することができる。
【0036】
前記水酸化銅を含む含水組成物は、水酸化銅を含む水系の組成物であればよく、含まれる水酸化銅の態様は特に制限されない。前記含水組成物は、水酸化銅を溶液状態で含んでいても、懸濁状態で含んでいてもよい。前記含水組成物においては、水酸化銅の少なくとも一部が溶液状態で含まれていることが好ましい。
【0037】
前記含水組成物に含まれる水酸化銅の含有量は特に制限されず、酸化銅粒子群の製造条件等に応じて適宜選択される。なかでも酸化銅粒子群の生成効率の観点から、含水組成物中の銅イオン濃度として、0.01mol/kg〜0.15mol/kgであることが好ましく、0.015mol/kg〜0.13mol/kgであることがより好ましく、0.02mol/kg〜0.10mol/kgであることがさらに好ましい。
【0038】
前記製造方法における含水組成物のpHは6以上8.5以下であるが、所望のアスペクト比を有する酸化銅粒子を効率よく得る観点から、6.5以上8.3以下であることが好ましく、7.0以上8.0以下であることがより好ましい。
一般に、水酸化銅を含む含水組成物をpH8.7以上の条件で加熱処理すると板状の酸化銅粒子が生成するが、pH6以上8.5以下で加熱処理することで所望のアスペクト比を有する長粒状の酸化銅粒子を得ることができる。
【0039】
含水組成物のpHの調整は、水溶性塩基又はその水溶液を用いて常法により行なうことができる。水溶性塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;二リン酸カリウム等のリン酸のアルカリ金属塩;ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド等のアルコキシドなどを挙げることができる。
【0040】
含水組成物のpHの測定方法は特に制限されず、通常用いられる手段で測定することができる。例えば、pHメータ(例えば、横河電機株式会社製のパーソナルpH/ORPメータ)で測定することができる。pHの測定値としては、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃)、中性りん酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃))を用いて、2点校正した後、電極を含水組成物に入れて、1分以上経過し安定した後の値を採用する。
【0041】
また加熱処理の温度は、含水組成物に含まれる水酸化銅を酸化銅に変換可能であれば特に制限されない。酸化銅粒子群の生成効率の観点から、60℃以上110℃以下であることが好ましく、60℃以上100℃以下であることがより好ましく、70℃以上95℃以下であることがさらに好ましい。加熱処理の温度が60℃以上であることで水酸化銅から酸化銅への変換反応が効率よく進行する。また110℃以下であると前記含水組成物の沸点を超えることがないため、耐圧容器等を要することがなく生産性が向上する。
【0042】
加熱方法は所望の温度に含水組成物を昇温可能であれば特に制限されず、通常用いられる加熱手段から適宜選択することができる。加熱手段としては例えば、温風乾燥機、恒温槽、ホットプレート、投げ込みヒーター、セラミックヒーター、パイプヒーターなどの抵抗加熱や、赤外線加熱、蒸気加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱、火炎などが挙げられる。
【0043】
前記製造方法は、銅錯体水溶液に塩基性化合物を加えて、前記水酸化銅を含む含水組成物を得る工程をさらに有することが好ましい。これにより所望のpHを有する水酸化銅を含む含水組成物をより効率的に得ることができる。
【0044】
前記銅錯体水溶液に含まれる銅錯体は、2価の銅イオンと配位子とからなる水溶性銅錯体であることが好ましい。ここで水溶性銅錯体とは純水に対して5質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性の銅錯体としてはpH6以上8.5以下で酸化銅粒子を生成可能であれば特に制限されず、有機酸塩基を配位子とする有機酸銅錯体であっても、無機酸塩基を配位子とする無機銅錯体であってもよい。
前記有機酸銅錯体を形成する有機酸銅塩としては、例えば、酢酸銅、ギ酸銅、シュウ酸銅,グリオキシル酸銅,クエン酸銅,プロピオン酸銅が挙げられる。また無機銅錯体を形成する無機酸銅塩としては、例えば、硝酸銅、炭酸銅,塩化銅,ヨウ化銅,臭化銅が挙げられる。これらの中でも、酸化銅粒子の生成効率の観点から、有機酸銅塩が好ましく、酢酸銅及びギ酸銅から選ばれる少なくとも一方がより好ましい。
【0045】
前記含水組成物は、少なくとも1種のアルコールをさらに含むことができる。アルコールを含むことで生成する酸化銅粒子の粒子径をより小径化することができる。アルコールとしては、アルコール性のヒドロキシ基を有する水溶性化合物であれば特に制限はない。ここで水溶性とは純水に対して10質量%以上溶解することを意味する。前記アルコールはモノアルコールであっても、多価アルコールであってもよい。なかでも、炭素数1〜8の水溶性アルコールであることが好ましく、炭素数1〜6の水溶性アルコールであることがより好ましく、炭素数1〜4の水溶性アルコールであることがさらに好ましい。
【0046】
前記アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、シクロブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、シクロペンタノール、シクロブタンメタノール、1−ヘキサノール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、2−メトキシエタノール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ジヒドロキシアセトン、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、ヒドロキシガンマブチロラクトン、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロピラン−2−オール、3−アセチル−1−プロパノール、酪酸メチル、エチルグリコレート、4−メチル−1−ブタノール、3−エチル−1−プロパノール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、グリコールアルデヒドジメチルアセタール、ジエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、γ−ヒドロキシメチル−γ−ブチロラクトン、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トレオース、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,4−ジオキサン−2,5−ジオール、イノシトールなどが挙げられる。
【0047】
前記含水組成物がアルコールを含む場合、アルコールの含有率はアルコールの種類や所望の粒子径に応じて適宜選択できる。例えば、含水組成物中に10質量%〜50質量%とすることができ、20質量%〜40質量%であることが好ましい。含有率が10質量%以上であると生成する酸化銅粒子の粒子径を効果的に小径化できる。また50質量%以下であると水溶性銅錯体の溶解性が低下することを抑制でき、所望の銅イオン濃度を達成することが容易になる。
含水組成物にアルコールを添加する場合、添加順は特に制限されない。例えばpHを調整する前であっても、pHの調整後であってもよい。また前記アルコールは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
前記製造方法は、酸化銅を生成する工程の後に、イオン性化合物の少なくとも一部を除去する洗浄工程をさらに有することが好ましい。イオン性不純物は,分散液中で粒子間の静電反撥力を減少させ分散性,分散安定性を低下させる。洗浄工程により、酸化銅ペーストを構成した場合に、より高濃度で安定した酸化銅ペーストを調製することができる。
【0049】
前記洗浄工程に用いる方法は、酸化銅粒子の生成後に含水組成物に含まれるイオン性化合物の少なくとも一部を除去可能であれば、通常用いられる洗浄方法から適宜選択することができる。洗浄方法として具体的には限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析、純水洗浄、イオン交換樹脂処理等を挙げることができる。これらの中でも洗浄効率の観点から、限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析及び純水洗浄からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。洗浄方法は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
前記洗浄工程においては、用いられる洗浄液としては特に制限されない。中でもイオン交換水及び精製水が好ましい。また前記洗浄工程は、イオン性化合物の少なくとも一部が除去されればよい。形成される導体パターンの低抵抗性とペーストの安定性の観点から、洗浄方法に用いられた洗浄液(好ましくは水)の電気伝導率が5000mS/m以下となるように行なうことが好ましく、1000mS/m以下となるように行なうことがより好ましい。
【0051】
前記酸化銅粒子群は、特定の形状を有する酸化銅粒子から構成されることから、分散媒への分散性に優れ、導体パターン形成用の酸化銅ペーストの調製に好適に適用される。導体パターン形成用の酸化銅ペーストとして用いることで、高精細で低抵抗な導体パターンを形成することができる。さらに形成される導体パターンは、緻密な結晶構造を有し、低い体積抵抗率と高い熱伝導率を有する。前記酸化銅ペースト及びこれを用いた導体パターン形成方法は、例えば、国際公開2011/034016号パンフレット等を参照することができる。
また前記酸化銅粒子群は、従来の酸化銅粒子として一般的な形状である略球形状や、板状は異なる長粒状の形状を有し、媒体に対する分散安定性に優れることから、前記導体パターン形成用の酸化銅ペースト以外に、着色塗料、抗菌塗料、放熱パターン形成等に適用することができる。
【0052】
(酸化銅ペースト)
導体パターン形成用の酸化銅ペーストは、例えば、少なくとも1種の前記酸化銅粒子群(以下、単に「酸化銅粒子」ともいう)と、分散媒とを含み、必要応じてその他の成分を含んで構成される。前記酸化銅粒子を含む酸化銅ペーストは、高精細で低抵抗な導体パターンを形成することができる。これは例えば以下のように考えることができる。
酸化銅ペーストを用いた導体パターンの形成においては、酸化銅ペーストの物性として、酸化銅粒子を含むパターンの形成性と、これを還元雰囲気下で熱処理して導体化する際のパターン形状の安定性とが求められる。ここで分散剤や添加剤(例えば、チキソ性付与剤や粘度調整剤)等によって酸化銅ペーストの物性を調整すると、導体化処理において充分な導電性が得られない場合がある。一方、前記酸化銅粒子は特定の形状を有していることで分散媒との親和性が高いため、これを含んで構成された酸化銅ペーストは、分散剤や添加剤によって物性を調整しなくてもパターン形成性と形状安定性に優れた物性を示す。そのため導体化処理に際しては高い導電率を有する導体パターンを形成できると考えることができる。
【0053】
酸化銅ペーストにおける酸化銅粒子の含有率は、酸化銅ペーストを付与する方法等に応じて適宜選択することができる。例えば1質量%〜95質量%とすることができ、20質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0054】
前記分散媒は、有機溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。有機溶剤としては25℃における蒸気圧が1.34×103Pa未満であることが好ましく、1.0×103Pa未満であることがより好ましい。
このような有機溶剤としては、例えば以下に示すものが挙げられる。すなわち、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;エチルベンゼン、アニソール、メシチレン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、フェニルアセトニトリル、ベンゾニトリル等の芳香族系溶剤;酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、グリコールスルファイト、乳酸エチル等のエステル系溶剤;1−ブタノール、シクロヘキサノール、α−テルピネオール、グリセリンなどのアルコ−ル系溶剤;シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、1,3−ジオキソラン−2−オン、1,5,5−トリメチルシクロヘキセン−3−オン等のケトン系溶剤;ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコール系溶剤;ジヘキシルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル等のエーテル系溶剤;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;スルホラン等のスルホン系溶剤;マロノニトリルなどのニトリル系溶剤が例示できる。中でも、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、グリコールスルファイト、プロピレンカーボネート及びスルホランから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
前記酸化銅ペーストは、前記酸化銅粒子に加え必要に応じて、他の銅系粒子を含有してもよい。他の銅系粒子としては前記酸化銅粒子以外の形状を有する酸化銅粒子や、金属銅粒子等を挙げることができる。他の銅系粒子をさらに含むことで、印刷性等の付与適性、保存安定性、導体化処理特性、導体層の特性などを向上させることができる。例えば、小粒径の銅系粒子や球状の銅系粒子の添加によって付与適性を調整することができる。また毬栗状の銅系粒子を添加することで保存安定性が向上する。また金属銅粒子を添加することで導体化処理温度を低下させることができる。さらに小粒径の銅系粒子を添加することで形成される導体層の緻密化を促進することができる。
【0056】
他の銅系粒子を含有率は、前記酸化銅粒子群で得られるパターン形成性等を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば前記酸化銅粒子に対して30体積%以下とすることができる。
【0057】
前記酸化銅ペーストは、前記酸化銅粒子及び必要応じて含まれる他の銅系粒子に加え、その他の金属系粒子をさらに含んでいてもよい。その他の金属系粒子としては、コバルト、ニッケル、銀、金、モリブデン、マンガン、マグネシウム、鉄及びこれらの酸化物等を含む粒子を挙げることができる
【0058】
前記その他の金属系粒子の粒子形状は特に制限されず、略球状、扁平状、針状、ブロック状、板状、および鱗片状等が挙げられる。中でも分散性の観点から、略球状、針状及びブロック状の少なくとも1種であることが好ましい。
その他の金属系粒子の粒子径は特に制限されない。中でも一次粒子の数平均粒子径が1nm〜1000nmであることが好ましく、1nm〜500nmであることがより好ましく、形成される導体層の平滑性の観点から、10nm〜100nmであることがさらに好ましい。なお、その他の金属系粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により測定することができる。
【0059】
その他の金属系粒子の含有率は、前記酸化銅粒子群で得られるパターン形成性等を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば前記酸化銅粒子に対して10体積%以下とすることができる。
【0060】
前記酸化銅ペーストは、必要に応じて分散剤、表面保護剤、増粘剤、チキソ性付与剤等の添加剤をさらに含んでもよい。酸化銅ペーストが添加剤を含む場合、200℃以下の温度で不揮発性又は非分解性である添加剤の含有率は20質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。添加剤の含有率が前記範囲であることで、200℃以下の低温で体積抵抗率が1×10−7Ω・m以下の導体化が容易になる。また形成される導体層中に添加剤の残留に起因するボイドが発生することを抑制できる。
【0061】
前記酸化銅ペーストに含まれる粒子の分散状態における最大粒径は、形成する導体パターンの線幅に応じて適宜選択することができる。例えば、最大粒径は形成する線幅の1/10以下であることが好ましく1/20以下であることがより好ましい。これにより、形成する線状パターンの形状乱れやかすれの発生を抑制できる。また、同様の理由から分散状態での体積平均粒径は、線幅の1/15以下であることが好ましく、1/30以下であることがより好ましい。
【0062】
従って、配線板用途で一般的に用いられるライン幅70μmの細線を形成する場合には、粒子の分散状態での最大粒径は7μm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5μm以下である。また粒子の分散状態での体積平均粒径は、4.7μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.5μm以下である。さらに実装基板等の高精細用途で用いられるライン幅25μmのパターンを形成する場合には、粒子の分散状態での最大粒径は2.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.3μm以下である。また粒子の分散状態での体積平均粒径は、1.7μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8μm以下である。ここで、体積平均粒径及び最大粒径は、粒子のブラウン運動による動的光散乱法に基づいて、光子相関法により測定される。体積平均粒径及び最大粒径の測定は、例えば、ベックマンコールター株式会社製「サブミクロン粒子アナライザーN5型」(商品名)を用いて行うことができる。
【0063】
前記酸化銅ペーストをインクジェット法に適用する場合、25℃における動的粘度が5mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上50mPa・s以下であることがより好ましい。動的粘度が5mPa・s以上であると、ノズルからの吐出時に霧状になることを抑制できる。また絶縁層に着液後の付与形状が良好に維持される。一方100mPa・s以下であると吐出性がより良好になる。なお、「25℃における動的粘度」とは、別言すると、測定温度25℃、せん断速度10/secでのせん断粘度である。なお、酸化銅ペーストの動的粘度は、例えばコーンプレート治具を装着した動的粘弾性測定装置により測定できる。
【0064】
前記酸化銅ペーストをスクリーン印刷法に適用する場合、細線描画及び印刷再現性の観点から、コーンプレートを装着した粘弾性測定装置で測定されるCassonの平衡粘度が、0.01Pa・s以上200Pa・s以下であることが好ましく、0.1Pa・s以上200Pa・s以下であることがより好ましく、1Pa・s以上200Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0065】
前記酸化銅ペーストは、例えば前記酸化銅粒子群及び必要に応じて含まれる他の銅系粒子やその他の金属系粒子を分散媒中に分散処理することで調製することができる。分散処理は、石川式攪拌器、自転公転式撹拌機、超薄膜高速回転式分散機、ロールミル、超音波分散機、ビーズミルなどのメディア分散機、ホモミキサーやシルバーソン攪拌機などのキャビテーション攪拌装置、アルテマイザーなどの対向衝突法を用いることができる。また、これらの手法を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0066】
また分散処理後に粗粒を除去する処理を行ってもよい。粗粒の除去手法としては、ろ過、遠心分離、メッシュの透過、水篩などを用いることができる。
例えば、酸化銅ペーストの付与をスクリーン印刷で行う場合、スクリーンの目開きより大きな粗粒を含んでいると印刷不良の原因となり得る。そのため粗粒の除去処理を行うことが好ましい。なお、印刷時に印刷不良の原因となり得る粗粒は、グラインド・メーターにより確認できる。
【0067】
[導体パターンの製造方法]
前記酸化銅ペーストを用いる導体パターンの製造方法は、例えば、酸化銅ペーストを絶縁層上に付与して酸化銅粒子含有層を形成する工程と、形成された酸化銅粒子含有層をギ酸ガスの存在下に熱処理して酸化銅を金属銅に還元する導体化処理工程とを有し、必要に応じてその他の工程を有して構成される。
酸化銅粒子含有層を所望のパターン状に形成することで、緻密で電気伝導性及び熱伝導性に優れる導体パターンを所望の形状に形成することができる。
【0068】
導体パターンを形成する絶縁層は特に制限されず、目的に応じて通常用いられる絶縁層から適宜選択することができる。例えばガラス、セラミックス等の無機材料や、配線基板に用いられる有機材料などを挙げることができる。特に後述する導体化処理工程を200℃以下の低温で行う場合は、適用可能な有機材料の選択の幅が広がる。またフィルム状の柔軟な絶縁層を用いた場合には、柔軟で軽量なデバイスを構成できる。
【0069】
前記酸化銅ペーストを絶縁層上に付与して酸化銅粒子含有層をパターニングする方法は、酸化銅粒子含有層を任意の場所に形成可能な手法であれば特に制限はない。このような手法として、インクジェット法、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、転写印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法、ジェットプリンティング印刷法、ディスペンサ法、ジェットディスペンサ法、ニードルディスペンサ法、カンマコータ法、スリットコータ法、ダイコータ法、グラビアコータ法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法、ソフトリソグラフ法、ディップペンリソグラフ法、粒子堆積法、スプレーコータ法、スピンコータ法、ディップコータ法、電着塗装法等を挙げることができる。中でも、インクジェット法、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、反転オフセット印刷法、ジェットプリンティング法、ディスペンサ法、ニードルディスペンサ法、カンマコータ法、スリットコータ法、ダイコータ法及びグラビアコータ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法であることが好ましく、線幅70μm以下のパターンを形成可能であることから、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、反転オフセット印刷法、ディスペンサ法、及びニードルディスペンサ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法であることがより好ましい。
【0070】
前記絶縁層上に形成される酸化銅粒子含有層の形状は特に制限されず目的に応じて適宜選択することができる。また前記銅酸化物粒子含有層の層厚は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば0.2μm〜50μmとすることができ、導電性及び接続信頼性の観点から0.8μm〜20μmであることが好ましい。
【0071】
前記製造方法は、酸化銅ペースト付与後に、酸化銅ペーストに含まれている分散媒の少なくとも一部を除去する乾燥工程をさらに有していてもよい。付与した酸化銅ペーストを乾燥することで、酸化銅ペーストの流動性が低下して形状が安定する。また続く導体化処理工程における残留分散媒が減少することで、導体化処理への影響を抑制することができる。乾燥工程は、分散媒の少なくとも一部を除去可能であれば特に制限されない。例えば、加熱,減圧あるいは送風により乾燥させる手法を用いることができる。このような手法に適用できる装置として温風乾燥機、減圧乾燥機、減圧オーブン、恒温槽、送風機が挙げられる。また、乾燥温度は30℃〜200℃、乾燥時間0.1時間〜2.0時間で行うことができる。
【0072】
導体化処理工程では、形成された前記酸化銅粒子含有層をギ酸ガスの存在下に熱処理して酸化銅を金属銅に還元して導体パターンを形成する。ギ酸ガスを用いることで、緻密な金属銅膜が生成し、低体積抵抗率で、高い熱伝導性を有する導体パターンを形成することができる。
【0073】
導体化処理に用いるギ酸ガスの濃度は酸化銅を還元可能である限り特に限定されない。例えば、0.01g/L〜2g/Lとすることができる。またギ酸ガス以外のその他のガス成分が含まれていてもよい。その他のガス成分としてはギ酸と反応しないものであれば特に制限されない。その他のガス成分として酸素を含む場合、酸素とギ酸との混合比率は爆発範囲外であることが好ましい。具体的にはギ酸と空気を混合する場合、ギ酸の濃度が18体積%以下又は51体積%以上であることが好ましい。
【0074】
ギ酸ガスの発生方法は特に制限されない。例えば、液状のギ酸に窒素ガスを流通させギ酸ガスを含む窒素ガスを被処理物に提供する方法、ギ酸の沸点である100℃以上に加熱、あるいは減圧してガス状にした後、被処理物に提供する方法を挙げることができる。
【0075】
また熱処理の温度は、ギ酸ガスの存在下に酸化銅から金属銅が析出する120℃以上であればよく、処理速度の観点から140℃以上であることが好ましい。処理温度の上限は導体パターンを形成する絶縁層(例えば基板)の耐熱温度により規定される。さらに処理圧力は、特に制約無く大気圧、減圧、加圧いずれの条件でもよい。
【0076】
以上のようにして形成された金属銅を含む導体パターンは、緻密で電気伝導性及び熱伝導性に優れているため、導体配線、電極、熱伝導路、放熱の用途に適している。
また、このようにして形成された導体パターンは、厚膜微細配線を形成する場合に、無電解めっきのシード層や電解メッキの極薄銅層として利用することもできる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0078】
[実施例1]
(酸化銅粒子の合成)
無水酢酸銅(II)3.4g(加熱時の濃度0.022mol/kg)を純水680gに溶解して、銅錯体溶液とした。水酸化ナトリウムを1.0mol/kgとなるように純水に溶解してpH調整剤とした。1Lのポリプロピレン製瓶中で、銅錯体溶液全量とpH調整剤の140.1gを混合して密栓して、手で振り混ぜて水酸化銅を含む含水組成物を得た。pHを横河電機製のパーソナルpHセンサpH72−21JAAで測定したところ7.3であった。
この混合液を瓶中に密栓したまま、恒温器中で90℃、5時間加熱したところ、黒色の沈殿を得た。
【0079】
室温に冷却後、上澄みを除き、遠心分離機(11000rpm、10min)にて黒色粉末を分離した。この分離した黒色粉末に純水400mlを加え、超音波洗浄機にかけた後、遠心分離機(11000rpm、15min)にて黒色粉末を分離する操作を2度繰り返して洗浄した。洗浄した黒色粉末を恒温器中、90℃、5時間乾燥させて、酸化銅粒子群を得た。収量1.0g(収率65%)
【0080】
酸化銅粒子群の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の結果、図3に示すように、平均長径が400nm、平均中径が110nm、平均短径が110nmの長粒状の粒子であった。平均長径、平均中径及び平均短径は任意に選択した20個の酸化銅粒子についてそれぞれ測定し、その算術平均として算出した。平均長径/平均短径は3.6であり、平均長径/平均中径は3.6であった。また長径の変動係数は、長径の長さの標準偏差を平均値で除して求めた。
【0081】
またX線回折(XRD)測定の結果、図5に示すように、酸化銅粒子は酸化第二銅と酸化第一銅との混相であった。
さらに不活性ガス融解−赤外線吸収法(測定装置:堀場社製、EMIA−920V)にて測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる酸素分は18.54質量%であった。また燃焼ガス赤外線吸収法(測定装置:堀場社製、EMGA−930)で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分は1.45質量%であった。
【0082】
[実施例2]
(酸化銅粒子の合成)
実施例1において、水酸化銅を含む含水組成物にエタノールを20質量%になるように添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化銅粒子を合成した。この際、手で振り混ぜた後のpHは7.6であった。得られた酸化銅粒子の収量は1.2g(収率78%)であった。
【0083】
得られた酸化銅粒子群のSEMによる観察の結果を図4に示す。また、平均長径150nm、平均短径30nmの長円状の粒子であり、実施例1で得られた酸化銅粒子群に比べて小径化した。また平均長径/平均短径は5.0であり、平均長径/平均中径は5.0であった。
【0084】
またXRD測定の結果、図5に示すように、酸化銅粒子は酸化第二銅を主成分として構成されていた。
不活性ガス融解−赤外線吸収法にて測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる酸素分は19.4質量%であり、燃焼ガス赤外線吸収法で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分は1.61質量%であった。
【0085】
[実施例3]
実施例1において、水酸化銅を含む含水組成物にエタノールを40質量%になるように添加したこと以外は実施例1と同様にして酸化銅粒子を合成した。この際、手で振り混ぜた後のpHは7.7であった。得られた酸化銅粒子の収量は1.2g(収率78%)であった。
【0086】
得られた酸化銅粒子のSEMによる観察の結果、平均長径120nm、平均短径30nmの長円状の粒子であり、実施例1で得られた酸化銅粒子群に比べて小径化した。また平均長径/平均短径は4.0であり、平均長径/平均中径は4.0であった。
【0087】
またXRD測定の結果、図5に示すように、酸化銅粒子は酸化第二銅を主成分として構成されていた。
不活性ガス融解−赤外線吸収法にて測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる酸素分は19.5質量%であり、燃焼ガス赤外線吸収法で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分は1.49質量%であった
【0088】
[実施例4〜6]
実施例1において、無水酢酸銅(II)の添加量を、それぞれ5.0g(0.033mol/kg)、6.8g(0.045mol/kg)、13.6g(0.090mol/kg)としたこと以外は同様にして酸化銅粒子を合成した。
その結果、合成時の原料銅イオン濃度によらずほぼ同じ粒径及び粒子形状の酸化銅粒子群が得られた。下表に合成結果をまとめた。また実施例4で得られた酸化銅粒子群のSEMによる観察の結果を図6に示す。
なお、pH調整剤添加後のpHはそれぞれ7.1、7.4、7.6であった。
さらに燃焼ガス赤外線吸収法で測定した乾燥酸化銅粒子中に含まれる炭素分はそれぞれ1.33質量%、1.41質量%、1.38質量%であった
【0089】
[比較例1]
実施例1において、pH調整剤を184g混合したこと以外は同様にして酸化銅粒子を合成した。この際、手で振り混ぜた後のpHは12.7であった。収量5g(収率89%)であった。
酸化銅粒子のSEMによる観察の結果、図7にSEM写真を示したようにリボン状の粒子形状であった。また種々の大きさを有する粒子形状の混合物であり、またリボン状の粒子が重なっていた。任意に選択した20個の酸化銅粒子から算出された平均長径は734nm、長径の変動係数は33.7%であった。また平均長径/平均短径は73.4であり、平均長径/平均中径は2.9であった。
【0090】
[実施例7〜9、比較例2〜4]
実施例1において、無水酢酸銅(II)3.4gを純水170gに溶解した。pHを測定しながらpH調整剤を下表に示した所定のpHとなるように加え、銅イオン濃度が0.022mol/kgとなるように調整したこと以外は同様にして酸化銅粒子を合成した。下表に合成結果をまとめた。また酸化銅粒子群のSEMによる観察の結果を図8〜図17に示す。図8は実施例7で得られた酸化銅粒子群である。図9及び図10は実施例8で得られた酸化銅粒子群である。図11及び図12は実施例9で得られた酸化銅粒子群である。図13は比較例2で得られた酸化銅粒子群である。図14及び図15は比較例3で得られた酸化銅粒子群である。図16及び図17は比較例4で得られた酸化銅粒子群である。
【0091】
また合成時のpHが5.5の場合である比較例2においては、塊状の酸化銅粒子が生成し、個々の粒子の短径及び中径を測長することが困難であった。合成時のpHが9.4の場合である比較例3においては、鱗片状の酸化銅粒子が生成した。合成時のpHが11.6の場合である比較例4においては、リボン状の酸化銅粒子が生成した。
【0092】
[評価1]
上記で得られた酸化銅粒子を用いた酸化銅ペーストを調製し、分散性の指標となる印刷性を以下のようにして評価した。評価結果を表1に示した。
(酸化銅ペーストの調製)
実施例1で得られた酸化銅粒子25gをポリ容器に秤量し、固形分50体積%となるようにテルピネオール25gを加えて混合液を得た。これをシンキー社製攪拌機(あわとり練太郎 ARE−310)で攪拌した後、水浴で冷却しながら日本精機製作所製超音波ホモジナイザUS−600CCVPを用いて、超音波端子深さ約3cm/出力600W/振動数19.5kHz/振幅数26.5μmで途中スパチュラを用いて攪拌しながら合計7分間分散処理した。分散処理後、ナイロンメッシュ(目開き100μm)に通じて粗粒を除去した後、蓋付きのポリ瓶に内容物を移し、室温で冷却して酸化銅ペーストを得た。
【0093】
(スクリーン印刷)
PENフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム、膜厚50μm)上に、ナイロンメッシュ刷版(L/S=100μm/100μm)と、手刷りスクリーン印刷機を用いて、調製した酸化銅ペーストを塗布してパターン印刷を行い、下記評価基準に従って評価した。
【0094】
(評価基準)
A:L/S=100μm/100μm刷版で印刷時、ショートなく印刷可能であった。
B:L/S=100μm/100μm刷版で印刷時、にじみが生じライン間がショートした。
C:L/S=100μm/100μm刷版で印刷時、カスレが生じラインが断裂した。
D:ナイロンメッシュ(目開き100μm)透過時に多量の粗粒がメッシュ上に残った。
【0095】
【表1】
【0096】
本発明の酸化銅粒子群を用いて調製した酸化銅ペーストは、分散性が良好でスクリーン印刷適性に優れることが分かる。
一方、比較例2で得られた酸化銅粒子群を用いた場合は、分散媒との親和性が悪く分散媒と分離が生じた。また比較例1及び比較例4で得られた酸化銅粒子群を用いた場合には、分散性が悪く粗粒が生じナイロンメッシュ(目開き100μm)を透過において、多量の粗粒が残った。比較例3で得られた酸化銅粒子群を用いて調製した酸化銅ペーストでは、スクリーン印刷時にかすれが生じ、印刷性が悪かった。
以上から、pH6.0から8.5で合成した酸化銅粒子を酸化銅ペースト原料として適用可能だと判断できる。また平均短径に対する平均長径の比が2.9以上5.5以下であり、平均中径に対する平均長径の比が2.0以上の長粒状の粒子が適していると判断できる。
【0097】
[評価2]
(スクリーン印刷及び導体化)
実施例1で得られた酸化銅粒子群を用いて調製した酸化銅ペーストを用い、上記と同様にして酸化銅粒子含有層のパターン形成を行った。具体的には以下の通りである。PENフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム、膜厚50μm)上に、ナイロンメッシュ刷版(L/S=100μm/100μm)と、手刷りスクリーン印刷機を用いて、調製した酸化銅ペーストを塗布した。180℃のホットプレート上で15分乾燥させて酸化銅を含むパターンが形成された試験片を得た。形成されたパターンは、L/S=165μm/45μm、配線高さ3.0μmであった。また図18に形成されたパターンの拡大写真を示した。
【0098】
上記で得られた試験片を、サンプル温度175℃、ギ酸ガス温度60℃、処理時間1時間の処理条件でギ酸ガス処理して、導体層を形成した。
得られた導体層の体積抵抗率は2.1×10−7Ω・mであった。またこれをFIB断面加工してSIM観察したところ、平均膜厚690nmであった。図19にSIM写真を示した。
【0099】
以上から、本発明の酸化銅粒子群は分散媒への分散性に優れ、酸化銅ペーストを構成した場合に、優れた印刷適性を有しパターン形成性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0100】
1 酸化銅粒子
2 長径の長さ
3 中径の長さ
4 短径の長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の酸化銅粒子を含み、
前記酸化銅粒子の3次元形状において、前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を長径とし、
前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面の距離を短径とし、
前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を中径とした場合に、
前記複数の酸化銅粒子について、前記長径の長さの平均値が100nm以上600nm以下であり、前記短径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.9以上5.5以下であり、前記中径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.0以上である酸化銅粒子群。
【請求項2】
炭素原子の含有率が2質量%以下である請求項1に記載の酸化銅粒子群。
【請求項3】
水酸化銅を含むpH6.0以上8.5以下の含水組成物を、加熱処理して酸化銅を生成する工程を有する請求項1又は請求項2に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項4】
前記加熱処理の温度が、60℃以上100℃以下である請求項3に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項5】
銅錯体の水溶液に塩基性化合物を加えて、前記含水組成物を得る工程をさらに有する請求項3又は請求項4に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項6】
前記銅錯体は、2価の銅イオンと配位子とからなる水溶性銅錯体である請求項5に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項7】
前記含水組成物は、アルコールをさらに含む請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項8】
前記酸化銅を生成する工程の後に、イオン性化合物の少なくとも一部を除去する洗浄工程をさらに有する請求項3〜請求項7のいずれか1項に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項9】
前記洗浄工程は、限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析及び純水洗浄からなる群より選ばれる少なくとも1種の洗浄処理を含む請求項8に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項1】
複数の酸化銅粒子を含み、
前記酸化銅粒子の3次元形状において、前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を長径とし、
前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面の距離を短径とし、
前記長径を与える平行二平面に直交し且つ前記酸化銅粒子に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を中径とした場合に、
前記複数の酸化銅粒子について、前記長径の長さの平均値が100nm以上600nm以下であり、前記短径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.9以上5.5以下であり、前記中径の長さの平均値に対する前記長径の長さの平均値の比が2.0以上である酸化銅粒子群。
【請求項2】
炭素原子の含有率が2質量%以下である請求項1に記載の酸化銅粒子群。
【請求項3】
水酸化銅を含むpH6.0以上8.5以下の含水組成物を、加熱処理して酸化銅を生成する工程を有する請求項1又は請求項2に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項4】
前記加熱処理の温度が、60℃以上100℃以下である請求項3に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項5】
銅錯体の水溶液に塩基性化合物を加えて、前記含水組成物を得る工程をさらに有する請求項3又は請求項4に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項6】
前記銅錯体は、2価の銅イオンと配位子とからなる水溶性銅錯体である請求項5に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項7】
前記含水組成物は、アルコールをさらに含む請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項8】
前記酸化銅を生成する工程の後に、イオン性化合物の少なくとも一部を除去する洗浄工程をさらに有する請求項3〜請求項7のいずれか1項に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【請求項9】
前記洗浄工程は、限外濾過、精密濾過、遠心分離、透析及び純水洗浄からなる群より選ばれる少なくとも1種の洗浄処理を含む請求項8に記載の酸化銅粒子群の製造方法。
【図5】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−107799(P2013−107799A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254293(P2011−254293)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
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