酸化防止剤含有ポリマーの架橋
本発明は、架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料の製造方法に関する。本発明はまた、照射架橋した酸化防止剤含有ポリマーを処理する方法およびそれとともに用いられる材料も提供する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2007年5月1日出願の米国出願第60/915,169号および2007年3月2日出願の同第60/892,682号の優先権を主張するものであり、これらの出願の総ては引用することにより本明細書の開示の範囲とされる。
【発明の背景】
【0002】
技術分野
本発明は、架橋した酸化的に安定なポリマー材料の製造方法に関する。照射架橋した酸化防止剤含有ポリマーを処理する方法およびそれとともに用いられる材料も提供される。
【0003】
背景技術
酸化防止剤含有ポリマー組成物は、電離放射線に曝されると、酸化防止剤のフリーラジカル防御効果から、それらの架橋効率が低下する。ある特定の用途、例えば、耐荷重性ポリマーのような医学的応用では、架橋は耐荷重性ポリマーの摩耗率を低下させるのに有益である。放射線架橋は、ポリマー材料の摩耗率を低下させて、全ての関節再構築物の寿命を延ばすことが明らかになっている。しかしながら、放射線によって生成される残留フリーラジカルによって、耐荷重性ポリマーの長期酸化安定性が損なわれる。そのため、有害な酸化を回避するか、または最小限に抑えるために、残留フリーラジカルを除去するかまたは安定化させることが極めて重要である。照射および融解によるフリーラジカル除去についての一つの方法がMerrillらによって開示されている(米国特許第5,879,400号参照)。これは許容される方法である。しかしながら、かかる融解履歴は、ポリエチレンの結晶化度を低下させて、その機械的特性および疲労特性にも影響を及ぼす(Oral et al., Biomaterials, 27:917-925 (2006)参照)。
【0004】
照射後の融解を回避する他の方法は、とりわけ、MuratogluおよびSpiegelbergによって開示されている方法がある(米国特許第2004/0156879号参照)。これらの方法においては、照射を受けたポリマー材料中のフリーラジカルを安定化させ、長期間の酸化を防ぐために、α−トコフェロールなどの酸化防止剤を使用する。これらの方法のある特定の実施形態によれば、α−トコフェロールは、照射後に接触および拡散によってポリマー材料に組み込むことができる。
【0005】
α−トコフェロールは、酸化を防ぐために、照射を受けたUHMWPE中の残留フリーラジカルの反応性を減少させるか、または排除するために使用することができる。照射を受けたUHMWPEへのα−トコフェロールの組込みは、固化前にα−トコフェロールと前記UHMWPEの粉末とを混合することまたはその粉末の固化後にα−トコフェロールをUHMWPE中に拡散することのいずれかによって達成することができ、これらの方法はどちらも米国出願番号第10/757,551号(米国特許第2004/0156879号)において教示されている。後者の方法は、また固化したUHMWPEに照射した後に行うこともできる。放射線によってUHMWPEが架橋されて、その耐摩耗性が増加するため、α−トコフェロールが存在しないバージン状態の固化UHMWPEに照射することが有益である場合がある。その一方で、架橋と融解は、UHMWPEのある特定の機械的特性および耐疲労性を低下させることが明らかになっている。(Oral et al., Mechanisms of decrease in fatigue crack propagation resistance in irradiated and melted UHMWPE, Biomaterials、27 (2006) 917-925参照)。関節置換術におけるUHMWPEの摩耗は表面現象であり、一方疲労亀裂伝播抵抗は主として本体の特性である。そのため、表面で強く架橋し、本体ではあまり架橋していないUHMWPEが、関節置換術における代替ベアリングとして有益である場合がある。Oralら(Characterization of irradiated blends of α-tocopherol and UHMWPE, Biomaterials, 26 (2005) 6657-6663)によって、UHMWPE中に存在する場合、α−トコフェロールは照射中にそのポリマーの架橋効率を低下させることが示されている。Muratogluら(米国特許第2004/0156879号参照)によれば、とりわけ、照射を受けたUHMWPEへのα−トコフェロールの浸透深さを増加するための高温ドーピング工程および/またはアニール工程が開示されている。Muratogluら(2006年8月18日出願の米国出願番号第11/465,544号、WO2007/024689号として公開されたPCT/US2006/032329号参照)によれば、とりわけ、照射を受けたUHMWPEへのα−トコフェロールの浸透深さを増加するための超臨界二酸化炭素中でのアニールが開示されている。UHMWPEの医療用インプラントは、最大30mmの厚さを有するものであるが、それより大きい場合も時にはある。しかしながら、拡散によるかかる大きなインプラントへのα−トコフェロールの浸透には長い時間がかかり得る。また、いくつかの実施形態においては、α−トコフェロールを、照射を受けたUHMWPEの予備成形物中に拡散し、続いてインプラント完成品を得るためにその予備成形物を機械加工することも好ましい。この予備成形物は、インプラント完成品よりも大きくなければならず、そのため、α−トコフェロールの拡散経路は増加する。
【0006】
フリーラジカルを除去するために、融解(例えば、Muratogluら米国特許第2004/0156879号参照)、機械的変形、および回復(例えば、Muratogluら、米国特許第2005/0124718号参照)または高圧結晶化(例えば、Muratogluら、米国出願番号第10/597,652号、WO2005/074619号として公開されたPCT/US05/003305号参照)(これらの文献は引用することにより本明細書の開示の範囲とされる)など、いくつかのさらなる方法を用いることもできる。
【0007】
照射後の融解もまた、フリーラジカルの除去方法として提案されている。この方法は、前記ポリマーの酸化安定性を損なわないことに成功しているが、前記ポリマーの結晶化度を低下させ、次には前記ポリマーのある特定の機械的特性を低下させる。ある特定のヒト関節用途およびある特定の高応力設計では、ある特定の機械的特性の低下は避けるべきことである。照射後融解の代替アプローチもまた開発されている。例えば、照射後の機械的変形または照射後の酸化防止剤拡散は、照射を受けたポリマーの機械的特性に悪い影響を与えない。別の方法は、前記ポリマーの樹脂、その粉末、またはそのフレークと、酸化防止剤とを混合し、それを電離放射線に曝すことである。
【0008】
上述のように、放射線架橋を前記酸化防止剤の存在下で行う場合には、所望の摩耗減少水準を得るためにより高い放射線量レベルを利用することが必要である。しかしながら、より高い放射線量レベルでは、その酸化防止剤はその効果を単調に失い、前記ポリマーの長期酸化安定性が損なわれる。酸化防止剤含有ポリマーの促進老化に関する初期の研究(100kGyで照射し、圧力容器において酸素中80℃で2週間老化させた0.1重量%および0.3重量%のビタミンE/UHMWPEの混合物、Oral et al. Biomaterials 2005 26(33):6657-6663参照)では、そのポリマーの酸化安定性が影響を受けないことが示された。これらの照射を受けたポリマーを数ヶ月間保存する(例えば、棚に載せて室温において保存する)と、それらは酸化の兆候を示し始めることを我々は見出した。よって、照射を受けた酸化防止剤含有ポリマーは酸化不安定性である可能性がある。促進老化方法は、UHMWPEの長期の実際の老化挙動を示すために広く受け入れられているため、これは予期せぬ結果であった。しかし、促進老化データは、必ずしも実際の老化経験に相関したり、それを再現したりするものではない。
【0009】
ある特定の酸化防止剤を、ある特定のポリマーへ添加することにより、電離放射線に曝された場合にそのポリマーの架橋能力が阻害される。架橋は、一般に、二つのフリーラジカルの再結合反応によって行われる。ある特定の酸化防止剤(ビタミンEなど)では、数多くの可能な機構によってこの再結合反応を阻害することができた。酸化防止剤を含有するポリマーのこの架橋効率低下によって、放射線架橋したバージンポリマー(酸化防止剤を含まない)と同じ架橋密度を達成するためにはより高い放射線量レベルが必要である。より高い放射線量レベルでは、酸化防止剤の活性は、ホストポリマーの架橋効率の向上に有利に低下する。しかしながら、酸化防止剤の活性の低下は、ホストポリマーの酸化安定性を損なうこともあり得た。そのため、酸化防止剤の活性喪失を最小限に抑えながら所望の架橋密度を達成するためには、新しい代替方法およびアプローチが望ましい。
【0010】
本願では、酸化安定性を有する、酸化防止剤をドープした架橋ポリマー材料、例えば、酸化防止剤をドープした架橋超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を、酸化防止剤含有UHMWPEの照射後の熱処理(アニールなど)によって製造するための、当分野では見出されていない方法、およびそれに用いられる材料を開示している。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、概していえば、架橋した酸化的に安定なポリマー材料の製造方法、およびそれによって製造される生成物に関する。さらに詳細には、本発明は、照射架橋した酸化防止剤含有ポリマーの熱処理の方法に関し、それによって、それとともに用いられる材料が提供される。さらに詳細には、本発明は、酸化安定性を有する、酸化防止剤をドープした架橋ポリマー材料、例えば、酸化防止剤含有UHMWPEの照射後のアニールによって製造される、酸化防止剤をドープした架橋超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の製造方法、およびそこに用いられる材料に関する。
【0012】
一つの実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEの製造方法であって、この高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEが、a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、b)当該混合物を固化させ、c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そしてd)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成することを含んでなる工程による製造方法を提供する。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、b)当該混合物を固化させ、c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そしてd)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し(quenching)、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成することを含む工程によって製造される高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0014】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成し、c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有するポリマー材料を形成し、d)固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そしてe)固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成することを含んでなる工程によって製造される高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0015】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成し、c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有するポリマー材料とを形成し、d)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そしてe)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成することを含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0016】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であり、前記混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、前記混合物が約0.13mol/dm3より高い架橋密度を有する、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0017】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であり、前記混合物が室温より高い温度で少なくとも約100kGyの線量で放射線架橋され、その結果として得られる架橋密度が室温照射を受けたポリマー材料のものより高い、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0018】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であり、前記混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、DSCの第1回目の融解サイクル中に(例えば、DSCにおける第1回目の加熱中に)前記混合物が少なくとも二つの融解ピークを有する、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0019】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であって、前記混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、DSCにおける1融解サイクル後に(例えば、DSCにおける第2回目以降の加熱工程中に)前記混合物が約58%未満の結晶化度を有する、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0020】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であって、前記混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、前記混合物がDSCにおける再融解サイクル中に(例えば、DSCにおける第2回目以降の加熱工程中に)少なくとも二つの融解ピークを有する、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0021】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であって、前記混合物が連続して照射され、アニールされる、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0022】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であって、前記ポリエチレンの中温照射誘起破壊(warm irradiation induced fracture)を最小限に抑えるために放射線量の少なくとも一部が100℃未満で投与され、その残りの放射線量が40℃を超えて投与されるように、前記混合物が放射線架橋される、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0023】
別の実施形態においては、前記ポリマー材料は、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形され、それによって界面または連結ハイブリッド材料を形成し、あるいは前記酸化防止剤混合物ポリマー材料は、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形され、それによって界面または連結ハイブリッド材料を形成し、あるいは前記固化酸化防止剤ドープポリマー材料は、別の部品に圧縮成形され、それによって界面および連結ハイブリッド材料を形成し、あるいは前記固化ポリマー材料は、別の部品に圧縮成形され、それによって界面および連結ハイブリッド材料を形成する。
【0024】
別の実施形態においては、照射を受け、融解した材料は、前記酸化防止剤ドープまたは混合ポリマー材料またはインプラントの表面上に圧縮成形される。別の実施形態においては、照射を受け、機械的に変形させ、熱処理した(融点より低い温度で)材料は、前記酸化防止剤ドープまたは混合ポリマー材料またはインプラントの表面上に圧縮成形される。別の実施形態においては、照射を受け、高圧結晶化したポリマー材料は、前記酸化防止剤ドープまたは混合ポリマー材料またはインプラントの表面上に圧縮成形される。
【0025】
別の実施形態においては、本発明は、空間的に制御された酸化防止剤分布を有する耐酸化性の架橋したポリマー材料であって、本明細書において記載する方法のいずれによっても得ることができるポリマー材料を提供する。
【0026】
本発明の一つの態様によれば、前記ドーピングは、前記医療用インプラントを前記酸化防止剤中に、好ましくは、約30分〜約100時間以上、より好ましくは、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、もしくは約16時間浸漬することによって行われ、および/または前記酸化防止剤を約120℃に加熱し、前記ドーピングは約120℃で行われ、ならびに/あるいは前記酸化防止剤をほぼ室温に加温し、前記ドーピングは、室温においてまたは室温〜前記ポリマー材料のピーク融点または約137℃未満の温度で行われ、および/または前記架橋したポリマー材料は、前記架橋したポリマー材料の融解しない温度で加熱される。選択したポリマー材料に応じて、熱処理、均質化、および他の温度は、その選択したポリマー材料の融点を考慮して決定される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、前記ポリマー材料はポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、またはそれらの混合物であり、前記ポリオレフィンは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはそれらの混合物からなる群から選択され、かつ前記ポリマー材料は、粉末、フレーク、粒子など、もしくはそれらの混合物または固化樹脂を含むポリマー樹脂である。
【0028】
本発明の別の態様によれば、ポリマー材料は、水中での平衡後に水が原重量の少なくとも1〜10,000%、一般には原重量の100重量%または重量の99%以下を構成するように水を吸収することができる、ヒドロゲル(ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)、それらの混合物、またはそれらの相互貫入ネットワークなど)である。
【0029】
本発明の別の実施形態においては、前記インプラントは、寛骨臼ライナー、肩関節窩、膝蓋骨コンポーネント、指関節コンポーネント、足関節コンポーネント、肘関節コンポーネント、手根関節コンポーネント、足指関節コンポーネント、人工骨頭、膝脛骨インサート(tibial knee insert)、金属とポリマーの補強ポストを備えた膝脛骨インサート、椎間板、あらゆる関節に対する挿入物装置、縫合糸、腱、心臓弁、ステント、血管移植片からなる群から選択される医療用具を含む。
【0030】
本発明の別の実施形態においては、前記医療用インプラントは、非永久医療用具、例えば、カテーテル、バルーンカテーテル、チューブ、静脈チューブ、または縫合糸である。
【0031】
一つの実施形態においては、前記酸化防止剤ドープまたは混合ポリマー材料は、前記ポリマー材料の融点より低い温度で約1時間〜数日間均質化される。
【0032】
本発明の別の実施形態においては、前記耐酸化性の架橋した医療用インプラント予備成形物は、その照射工程後に、前記酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させ、前記医療用具全体にわたっての酸化安定性を与えるよう、融解しない温度で加熱されて、さらに均質化される。
【0033】
本発明の別の実施形態においては、前記酸化防止剤ドープポリマー材料、前記耐酸化性医療用インプラント予備成形物、または前記医療用インプラント予備成形物は、照射前および/または照射後に、前記ポリマー材料の融点より低い温度で熱的にアニールすることによって均質化される。
【0034】
本発明の別の実施形態においては、前記酸化防止剤は、表面から約5mm以上の深さに、例えば、約3〜5mm、約1〜3mmの深さに、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の深さに拡散される。
【0035】
別の実施形態においては、本発明は、本明細書において記載する方法のいずれによっても得ることができる、高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性(例えば、少なくとも約51%の結晶化度)のポリマー材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】は、酸化プロファイルを、様々なレベルのビタミンEを含有する粉末から製造したUHMWPEサンプルの深さの関数として示す図である。固化後、サンプルに異なる線量レベルで照射した後、水タンク中、40℃において10ヶ月間老化させた。対照には照射した後、老化前にビタミンEでドープした。
【図2】は、固化後に室温において200kGyで照射した後、130℃で8時間アニールした、ビタミンEとUHMWPEの粉末との混合物の電子スピン共鳴シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。ピークサイズの減少は残留フリーラジカルの低減を示す。
【図3】は、固化後に室温において100kGyで照射した後、130℃において8時間アニールした、ビタミンEとUHMWPEの粉末との混合物の電子スピン共鳴シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。ピークサイズの減少は残留フリーラジカルの低減を示す。
【図4】は、残留フリーラジカル含量(スピン/g)を処理条件の関数として示す図である。
【図5】は、固化後、室温、110℃、および120℃において、25kGy/パスの線量率で150kGyにより照射した、ビタミンE(0.2重量%)と、UHMWPEの粉末との混合物の電子スピン共鳴シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。ESRシグナルは、残留フリーラジカルの存在によるものである。ピークサイズの減少は、照射温度の上昇に伴う残留フリーラジカルの低減を示す。
【図6】は、固化後、室温、110℃、および120℃において、100〜200kGyで照射した、ビタミンE(0.2重量%)と、UHMWPEの粉末との混合物についての、室温において100kGyおよび200kGyで照射し続いて130℃において8時間アニールしたサンプルと比較した、電子スピン共鳴シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。
【図7】は、ポリエチレンサンプルを電子線下に固定したままでの電子線照射中のポリエチレンサンプルの加熱を示す図である。熱電対は、電子線入射表面下3mm、5mm、および7mmに入れた。
【図8】は、電子線照射したポリエチレンサンプルの加熱を示す図である。照射は、電子線下で6回のパスで行い、照射前にポリエチレンを強制対流炉で加熱した。
【図9】は、トランス−ビニレン不飽和化(the trans-vinylene unsaturations)を、照射していない0.5%ビタミンE/UHMWPEの混合物または室温(RT)、110℃、および120℃において150kGyで電子線照射した0.5%ビタミンE/UHMWPEの混合物の深さの関数として示す図である。
【図10】は、凡例に示すとおり、異なる温度で25kGy/パスの線量率で150kGyにより照射した、0.1重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物、0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物、および0.5重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の電子スピン共鳴(ESR)シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。ESRシグナルは残留フリーラジカルの存在によるものである。
【図11】は、第1回目の加熱および第2回目の加熱でのDSC結晶化度(X)を、RTで25kGy/パスの線量率で照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の放射線量の関数として示す図である。照射していない対照サンプルも参照用に含める。
【図12】は、第1回目の加熱および第2回目の加熱でのDSC結晶化度(X)を、120℃において25kGy/パスの線量率で照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の放射線量の関数を示す図である。照射していない対照サンプルも参照用に含める。
【図13】は、120℃において様々な放射線量に照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の第1回目の加熱でのDSCサーモグラムを示す図である。
【図14】は、様々な温度において150kGyで照射をした0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の第1回目の加熱でのDSCサーモグラムを示す図である。
【図15】は、120℃において様々な放射線量に照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の第2回目の加熱でのDSCサーモグラムを示す図である。
【図16】は、様々な温度において150kGyで照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の第2回目の加熱でのDSCサーモグラムを示す図である。
【図17】は、RT、110℃、および120℃において照射した0.5%ビタミンE/UHMWPEの混合物についての、電子線入射表面からの深さの関数としてのビタミンE指数(ビタミンE濃度の尺度)を、照射していない0.5%ビタミンE/UHMWPEの混合物サンプルの基礎ビタミンE指数プロファイルとともに示す図である。
【図18】は、様々な放射線架橋UHMWPEのサンプルについて、架橋密度を線量の関数として示す図である。LONGEVITYは、40℃において100kGyで電子線照射し、続いて融解させた。DURASULは、120℃において95kGyで電子線照射し、続いて融解させた。照射温度と混合物のビタミンE濃度は凡例に示す。
【図19】は、En連続アニール研究からのサンプルの架橋密度を示す図である。総てのサンプルを、50kGy電子線線量を適用するごとにアニールした。挿入図では、異なる回数のアニール工程に供し、同じ全照射線量100kGyを用いたサンプルについて、プロットを示している。2サンプルセット、ビタミンEを含有しない1サンプルと0.1重量%ビタミンEを含有する1サンプルとを試験した。
【図20】は、連続照射/アニール研究からのサンプルの引張特性を示す図である。サンプルを、50kGy線量ごとにアニールした。(20A)最大引張強度および(20B)破断点伸びの両方を架橋密度の関数としてプロットしている。
【図21】は、総線量175kGyで、低温照射、続いて中温照射を行うことによって照射したビタミンE/UHMWPEの混合物の最大引張強度(UTS)を示す図である。x軸は、低温および中温で適用した全放射線量に対する低温で適用した放射線量の割合である。
【図22】は、総線量175kGyで、低温照射、続いて中温照射を行うことによって照射したビタミンE/UHMWPEの混合物の架橋密度(mol/dm3)を示す図である。
【図23】は、促進老化に供し、アニールしたサンプルおよびアニールしていないサンプルの酸化指数を示す図である。
【発明の具体的説明】
【0037】
本発明は、架橋した酸化的に安定なポリマー材料の製造方法を提供する。本発明は、照射架橋した酸化防止剤含有ポリマーの熱処理の方法、それによって得ることができる酸化安定性を有する架橋した耐酸化性ポリマー材料、およびそれとともに用いられる材料に関する。
【0038】
本発明は、高放射線量率および/または高温で照射を行った場合に、ホストポリマーの架橋効率が向上するものを提供し、この架橋効率の向上は酸化防止剤の活性の低下と関連している可能性がある。ホストポリマーの架橋効率の向上に関与するこの現象は、数多くの因子と関係しているが、いずれの機構の精度によっても本発明の実施形態または態様の実施は妨げられない。
【0039】
一つの可能な機構は、高温では酸化防止剤のフリーラジカル除去能力が低下し、このため、ホストポリマーの架橋効率が向上するというものである。高温には、ポリマー混合物を外部加熱することによって、および/または高照射線量率でのポリマーの放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)を行うことによって達成される。
【0040】
別の可能な機構は、ホストポリマーが半結晶性である場合に、その結晶性ドメインの一部または全部の融解によって酸化防止剤を含まないポリマーがもたらされ、そのドメインでは架橋効率は低下しないというものである。この融解は、照射中に、ポリマー混合物の放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によって誘導される。この放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、本明細書において教示する数多くの処理パラメーター、例えば線量率、サンプルの初期温度、吸収放射線量などによって決まる。放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、照射を受けたサンプルにおいて放射線量が熱へと変換したことによってもたらされる。大部分の半結晶性ポリマーは、結晶性ドメインのサイズ分布が広いため様々な融点を示す−小さな結晶は低温で融解し、大きな結晶は高温で融解する。例えば、バージンUHMWPEは、一般に、90℃付近で融解し始め、140℃付近まで融解し、ピーク融点は137℃付近である。融解中にサンプルの温度が十分に高いならば、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によって結晶の融解が生じ、これにより照射中に新たな非晶質ポリマーが続いて生成する。大部分の半結晶性ポリマー/酸化防止剤混合物では、酸化防止剤は非晶相に存在し、結晶性ドメインには収容され得ない。放射線による融解(断熱的な融解および部分的に断熱的な融解を含む)によって非晶質含量の増加がもたらされると、新たに形成された酸化防止剤を含まない非晶質ドメインにおいてポリマーの架橋効率が事実上高くなる。酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させるには、照射後の均質化工程が必要であり得る。照射直後(および/または照射中)の温度は、低酸化防止剤領域を自動的に均質化するほどに高くあり得る。
【0041】
ポリマーの初期温度が低い(例えば、室温または40℃付近である)場合でさえも、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、照射中にポリマーの温度を上昇させるほどに高くあり得る。よって、低温電子線照射を受けたポリマーでさえも温度上昇を受け、放射線量レベルに応じて、架橋を妨げる酸化防止剤の能力が低下するより高い温度でしばらく過ごし得る。そのため、ある特定の実施形態のもとに、高線量率を可能にする低温電子線照射は、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)に必要な高線量率が実際には可能でない低温γ線照射よりも有益である。
【0042】
目標架橋密度を達成し、ある特定の特性(例えばポリマーの摩耗率の低下)を得るためには、放射線量を高めて、酸化防止剤によって起こる妨害に対抗する。高温では酸化防止剤によって起こる妨害が低下するため、照射温度を最大限にして、目標架橋密度を達成するのに必要な放射線量レベルを最小限に抑えることが有益であり得る。初期温度および放射線量が高すぎる場合には、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によってポリマーの完全融解が生じる可能性があり、これによりポリマーの結晶化度が低下し、それゆえポリマーの機械的特性が低下する。
【0043】
ある実施形態においては、前記ポリマー混合物は、1パス当たり約1〜1000kGyの線量率で照射される。電子線によって達成することができる照射線量率は、γ線照射によるものよりもはるかに高い。電子線線量率は、一般に、1パス当たり約1〜数百kGyであり、各パスには数秒〜数分の間かかる。前記ポリマー混合物は、ある特定の初期温度にし、照射する。前記線量率は、ポリマーの放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)をもたらすほどに高いものである。照射中のサンプルの温度は、開始温度と用いた放射線量レベルによって決まる。下記式に従い、純粋に放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)状態を想定するものを用いて、その温度を予測することができる:
EQ1=D=ΔHm,i(Ti)+cpΔT
(式中、Dはサンプルによって吸収された放射線量レベルであり、Tiはサンプルの瞬時温度であり、ΔT(=Ti−T0)は、サンプルの瞬時温度(T1)とサンプルの初期温度(T0)の差であり、ΔHm,iはサンプルの瞬時温度までに融解する結晶の融解エンタルピーであり、cpはポリマーの比熱である)。この式は、純粋に放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)状態を想定しているが、照射を受けたサンプルの表面付近でその周囲への多少の熱損失があり、そのサンプルの本体は、特に高線量率では、この式によって予測される温度により密接に従うため、この式は実用的近似である。照射中にある特定の温度が望ましい場合には、前記式を用いて、その照射パラメーターを決める。この実施形態においては、前記放射線量レベルは1kGyを超え得る。より好ましくは、前記放射線量レベルは、25kGy、50kGy、100kGy、150kGy、200kGy以上であり得る。前記線量率は、1パス当たり約1kGy、約10kGy、約25kGy、約75kGy、約100kGy、約150kGy、約200kGy以上または中間的な任意の線量率であり得る。前記初期温度は、室温(RT)より低く、RTであり、RTより高く、約40℃、約50℃、約75℃、約100℃、約110℃、約125℃、約130℃、約135℃以上またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の温度であり得る。前記照射は、電子線、γ線、またはX線を用いて行うことができる。後者の二つは電子線よりも線量率が低く、そのため、高線量率を達成するためには、電子線がより実用的である。
【0044】
別の実施形態においては、前記ポリマー混合物は、γ線または電子線を用いて照射され、続いて、結晶性ドメイン内に取り込まれたフリーラジカルを再結合するためにアニールまたは融解が行われる。前記照射を低温度でおよび/または低線量率で行う場合、架橋密度は、前記照射を受けたポリマー混合物を融点より低い温度でアニールしまたは融解させた後よりも低い。
【0045】
ある特定の実施形態においては、照射工程中に前記ポリマー混合物を完全に融解させることは望ましくない。例えば、所望の架橋密度を達成するのに必要な高線量レベル(100kGyより高い)を用いて、前記ポリマー混合物を放射線による融解(断熱的な融解および部分的に断熱的な融解を含む)に供し、前記混合物の完全融解をもたらすことができた。照射後の融解は、前記サンプルの結晶化度を低下させ、次には前記混合物の機械的特性を低下させる。放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)を最小限に抑え、初期温度を下げ、および/または放射線量を下げるために線量率を低く維持することによって、照射中の前記混合物の完全融解を妨げることができる。ある特定の実施形態においては、前記ポリマー混合物は、より高い初期温度を必要とすることがあるが、かかる場合には放射線による加熱による融解の程度を下げるために低放射線量率を用いることができる。
【0046】
別の実施形態においては、前記ポリマー混合物の放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)の程度を下げるために、照射は複数の工程で行われる。例えば、前記ポリマー混合物には、放射線源(電子線、γ線、またはX線など)下または付近で複数回のパスで照射する。パス間隔は、前記ポリマー混合物を所望の照射温度に冷却し得るように調整することができる。いくつかの実施形態においては、照射パス間に前記サンプルを加熱することが望ましい。
【0047】
別の実施形態においては、前記ポリマーサンプルの初期温度は、照射中に前記ポリマー混合物の温度をそのピーク融点まで上昇させるように調整される。
【0048】
中温照射を受けた混合物のDSC試験では、一般に、第1回目の加熱において三つの融解ピークを示し、第2回目の加熱において二つの融解ピークを示す。第一回目の加熱の最も高い融解ピークの下にある面積を用いて、中温照射中の前記ポリマーにおける融解の程度を決定することができる。
【0049】
別の実施形態においては、混合物の結晶化度は、例えば高圧結晶化によって高められる。この高結晶性混合物は、その後、照射を受ける。この結晶性ドメインはほとんどまたは全く酸化防止剤を含有せず、結果として、その結晶性ドメイン中に生じたフリーラジカルは再結合反応および架橋反応で実行可能である。結晶性ドメイン中のフリーラジカルを再結合させるために、前記混合物には、前記ポリマーを部分的に融解させるのに十分な高い線量率で照射する。あるいは、前記ポリマーを部分的に融解させるために、前記照射を高温で行う。別のアプローチは、結晶性ドメイン中のフリーラジカルを互いに再結合させるために、前記ポリマーを照射後アニールするかまたは融解させることである。これらのアプローチによって、前記混合物の架橋効率の向上がもたらされる。酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させるには、照射後の均質化工程が必要であり得る。
【0050】
別の実施形態においては、ポリマー/酸化防止剤混合物は、バージンポリマーフレークと混合され、固化される。この固化サイクルは、酸化防止剤混合物フレークからバージンフレークへの酸化防止剤のブリードを最小限に抑えるために、可能な限り短く、かつ可能な限り最も低い温度で維持される。この固化したポリマーは、その後、照射を受け、続いて酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させるために、均質化される。
【0051】
あるいは、酸化防止剤を個別フレーク中により深く拡散させ、表面被覆物としてそれが存在することを最小限に抑えるために、前記酸化防止剤ドープフレークをアニールサイクルに供することもできた。これは、固化および/または照射中のドープフレークからバージンフレークまでにわたる酸化防止剤ブリードの程度も下げる。
【0052】
本発明は、照射を受けた酸化防止剤含有ポリマーの酸化安定性を向上させるための様々な方法を提供する。ある実施形態においては、本発明は、ポリマーの酸化安定性を向上させるための方法であり、架橋をもたらす再結合反応を通じておよび/または残留フリーラジカルと酸化防止剤との反応を通じて残留フリーラジカル濃度を低減するための照射ポリマー−酸化防止剤混合物の熱処理(アニールなど)による方法を提供する。後者の反応は、酸化防止剤分子からポリマーへの水素原子の引き抜きによって起こる可能性が高く、その結果としてそのポリマー主鎖上の残留フリーラジカルが消失する。よって、酸化防止剤の存在下での照射を受けたポリマーの熱処理(アニールなど)は、残留フリーラジカル濃度の低減において、酸化防止剤の非存在下で照射を受けたポリマーの熱処理(アニールなど)よりも効果的である。
【0053】
別の実施形態においては、本発明は、ポリマーの酸化安定性を向上させるための方法であり、より多くの酸化防止剤を照射ポリマー−酸化防止剤混合物中に拡散させることによる方法を提供する。この酸化防止剤拡散方法は、Muratogluら(例えば、米国特許第2004/0156879号、2006年8月18日日出願の米国出願番号第11/465,544号、WO 2007/024689として公開されたPCT/US2006/032329号参照(これらの文献は引用することにより本明細書の開示の範囲とされる))において開示されている。
【0054】
別の実施形態においては、本発明は、ポリマーの酸化安定性を向上させるための方法であり、残留フリーラジカルを低減または除去するために、照射を受けた酸化防止剤含有ポリマーを機械的に変形させることによる方法を提供する。(機械的変形方法は、Muratogluら(例えば、米国特許第2004/0156879号、米国特許第2005/0124718号、およびWO2005/074619号として公開されたPCT/US05/003305号参照)(これらの文献は引用することにより本明細書の開示の範囲とされる)によって記載されている。
【0055】
本発明はまた、照射を受けたポリマー中の残留フリーラジカル濃度を、前記材料をその融点より高く加熱することなく、検出不能なレベルにまでも低減させる方法についても記載している。この方法は、照射を受けたサンプルを機械的変形に供することを含み、この機械的変形はそのポリマーの融点未満である。この変形温度は、例えば、UHMWPEの場合には、約135℃の高さであり得た。この変形によって結晶格子内で移動が起こり、これによってその結晶格子内に事前に取り込まれたフリーラジカルは、隣接鎖との架橋または同じ鎖の主鎖に沿ってのトランス−ビニレン不飽和化を通じて再結合が可能になる。この変形の振幅が十分に小さい場合には、塑性流動を避けることができる。結果として、結晶化度は損なわれないはずである。加えて、機械加工コンポーネントにおいて、機械的耐性を失うことなく、前記機械的変形を行うことが可能である。本発明から得られる材料は、残留フリーラジカル濃度が低減している、好ましくは検出可能なフリーラジカルが実質的に存在せず同時に結晶化度およびモジュラスが実質的に損なわれていない、架橋ポリマー材料である。
【0056】
本発明は、前記変形が大きなもの、例えば、チャネルダイ(a channel die)により圧縮比2であり得ることもさらに記載している。この変形は、結晶相内に取り込まれている残留フリーラジカルを移動させるのに十分な塑性変形をもたらすことができる。この変形はポリマーにおける配向を誘導することもでき、この配向によって異方性機械的特性を提供することができ、そしてそれはインプラント製造において有用であり得る。必要でない場合には、ポリマー配向を、その融点より高いまたは低い上昇温度で加熱する追加工程により除去することができる。
【0057】
本発明の別の態様によれば、照射を受けたコンポーネントに高歪み変形を与えることができる。このように、変形による流動中に結晶面同士がすれ違うため、結晶性ドメイン内に取り込まれているフリーラジカルは、隣接する結晶面中のフリーラジカルと反応し得ると思われる。結晶格子内で移動させるために、超音波周波数などの高周波振動を用いることができる。この変形は、増感ガスの存在下または非存在下でポリマー材料の融点より低い高温で行うことができる。超音波によって導入されるエネルギーは、総合温度を上昇させることなく、結晶塑性を与える。
【0058】
本発明はまた、フリーラジカル除去後に、ポリマー材料の融点より低い温度で、さらに加熱する方法も提供する。本発明によれば、融解しない温度でのフリーラジカルの除去は、前記増感ガス方法および/または前記機械的変形方法のいずれかによって達成される。様々な理由で、含有する残留フリーラジカルが低減しているかまたは検出できない架橋ポリマーのさらなる加熱が行われる、例えば:
1.機械的変形、大きなものである場合には(例えば、チャネルダイ変形中圧縮比2)、分子配向を誘導し、そしてそれはある特定の用途には望ましくないことがある(例えば、寛骨臼ライナー)。よって、機械的変形では:
a)配向量を低減するために、さらに高温での機械的変形と冷却後に存続し得る熱応力の一部を低減するためにも、融点未満(例えば、UHMWPEの場合には、約137℃未満)での熱処理を利用する。加熱に続いて、熱応力を最小限に抑えるために、十分なゆっくりとした冷却速度で(例えば、約10℃/時間で)ポリマーを冷却することが望ましい。ある特定の状況下において、配向の低減および/または熱応力の除去を成し遂げるのに融点未満でのアニールが十分でない場合には、ポリマー材料をその融点より高く加熱することができる。
b)結晶性物質を除去し、そのポリマー鎖を低エネルギー、高エントロピー状態に緩和させるために、融点より高い(例えば、UHMWPEの場合には、約137℃より高い)熱処理を利用することができる。この緩和は、ポリマーにおける配向の低減をもたらし、熱応力を実質的に低減する。その後、熱応力を最小限に抑えるために、十分なゆっくりとした冷却速度で(例えば、約10℃/時間で)室温への冷却を行う。
2.照射前、照射中、および/または照射後の増感環境との接触、この接触によって、接触させない場合の照射とその後または同時の融解後に起こる結晶化度の低下と比較して、結晶化度が実質的に低下していないポリマー材料が生み出される。増感環境と接触させたポリマー材料の結晶化度、そして放射線処理したポリマー材料の結晶化度は、そのポリマーを融点より高く(例えば、UHMWPEの場合には、約137℃より高く)加熱することによって低下する。その後、熱応力を最小限に抑えるために、十分なゆっくりとした冷却速度で(例えば、約10℃/時間で)室温への冷却を行う。
【0059】
本明細書において記載するように、機械的変形によって放射線架橋したUHMWPE中の残留フリーラジカルを除去することができることは証明されている。本発明はまた、最初にUHMWPEを、例えば、圧縮によって、固体状態または溶融状態のいずれかで新たな形状に変形することができることも提供する。本発明の方法によれば、UHMWPEの機械的変形を溶融状態で行う場合には、ポリマーを荷重下で結晶化して、新しい変形形状を維持する。変形工程に続いて、変形したUHMWPEのサンプルに融点より低い温度で照射して、架橋し、これにより残留フリーラジカルが生成する。これらのフリーラジカルを除去するために、照射を受けたポリマー試料を、変形および照射を受けたポリマー材料の融点未満の温度に(例えば、UHMWPEの場合には、約135℃まで)加熱して、形状記憶により最初の形状を部分的に回復させることができる。一般に、最初の形状の約80〜90%を回復することが予想される。この回復中に結晶は移動を受け、これによりフリーラジカルの再結合および除去が促進され得る。上記の工程は、「逆IBMA(reverse-IBMA)」と呼ばれている。この逆IBMA(融解および機械的アニールしない温度での逆照射(reverse-irradiation below the melt and mechanicalannealing))技術は、UHMWPEをベースとする医療用具の大規模製造にその技術をもたらすという観点から好適な工程であり得る。
【0060】
別の実施形態においては、本発明は、ポリマーの酸化安定性を向上させるための方法であり、ビタミンE欠損領域を形成するために、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークと、ビタミンE含有の樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、固化させることによる方法を提供する。照射に続いて、前記サンプルを融解しない温度でアニールして、残留フリーラジカルを急冷するとともに、さらにそのビタミンEをそれまでビタミンEが欠損していた領域中に拡散させる。
【0061】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
d)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0062】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
d)当該固化したポリマー材料を高圧下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0063】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
d)当該固化したポリマー材料を超臨界流体の存在下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0064】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
d)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0065】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、
d)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷する工程、および
e)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0066】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成する工程、
c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと低酸化防止剤領域/ドメインを有するポリマー材料を形成する工程、
d)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
e)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0067】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成する工程、
c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有するポリマー材料を形成する工程、
d)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
e)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含む工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0068】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、約0.13mol/dm3より高い架橋密度を提供する、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0069】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で少なくとも約100kGyの線量で放射線架橋され、その結果としてその架橋密度が室温照射を受けたUHMWPEのものより高いものとなる、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0070】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、第1回目の融解サイクル中に(例えば、DSCにおける第1回目の加熱中に)少なくとも二つの融解ピークを提供する、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0071】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、1融解サイクル後に(例えば、DSCにおける第2回目以降の加熱工程中に)約58%未満の結晶化度を提供する、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0072】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、再融解サイクル中に(例えば、DSCにおける第2回目以降の加熱工程中に)少なくとも二つの融解ピークを提供する、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0073】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が連続して照射され、アニールされる、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0074】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリエチレンの中温照射誘起破壊を最小限に抑えるために放射線量の少なくとも一部が100℃未満で投与され、その残りの放射線量が40℃を超えて投与されるように、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が放射線架橋される、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0075】
本明細書において記載される方法による固化したポリマー材料は、室温においてまたはそのポリマー材料の融点より低い高温で照射することができる。
【0076】
本発明のある特定の実施形態においては、本明細書において開示する方法工程(混合する工程、混合する工程、固化させる工程、急冷する工程、照射する工程、アニールする工程、機械的に変形させる工程、ドープする工程、均質化する工程、加熱する工程、融解させる工程、および最終生成物(医療用インプラントなど)を包装する工程を含む)はいずれも、増感ガスおよび/または液体もしくはそれらの混合物、不活性ガス、空気、真空、および/または超臨界流体の存在下で行うことができる。
【0077】
本明細書において記載する方法による固化し照射架橋したポリマー材料は、さらに酸化防止剤をドープすることができる。
【0078】
本明細書において記載する方法により固化し、照射架橋したポリマー材料は、さらにそのポリマー材料の融点より低い温度で酸化防止剤をドープし、均質化することができる。
【0079】
別の実施形態においては、本発明は、上記の方法によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具を提供する。
【0080】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具であって、前記ポリマー材料が、固化、照射、加熱、および/またはアニールまたは急冷工程後に続いて機械加工される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具を提供する。
【0081】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具であって、前記ポリマー材料の結晶化度が約51%より高い、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具を提供する。
【0082】
本発明のある態様によれば、ポリマー材料中へのα−トコフェロールの拡散の制限は、照射後に必要なα−トコフェロールの拡散経路を短くすることによって克服される。これは、その本体(一般にはその内部領域)においてα−トコフェロール濃度がより高く、表面(外部領域)においてα−トコフェロール濃度がより低いポリマー物を作り出すことによって成し遂げられる。このポリマー物に照射すると、架橋による摩耗減少の必要がない本体の高α−トコフェロール領域は、α−トコフェロールが存在しないかまたは存在が少ない場合よりも低い最終架橋密度を有する。その一方で、その表面は、α−トコフェロールを含まないかまたはより低い濃度のα−トコフェロールを含む。そのため、その表面は、照射中にα−トコフェロールの非存在下において照射を受けた材料と同等のレベルに架橋され、摩耗率が低下する。架橋は、インプラントの耐摩耗性を向上させるために、関節面上および関節面付近でのみ必要である。ポリマー材料の表面および本体とは、一般に、それぞれ、外部領域および内部領域を示しているが、一般には、これらの2領域間に分離境界はない。これらの領域はむしろ勾配のように遷移するものであり、対象のサイズおよび形状ならびに用いる樹脂に基づいて異なり得る。
【0083】
α−トコフェロールを含むUHMWPEの照射によりポリマー材料の架橋効率が低下し、さらにα−トコフェロールの酸化防止能力も低下する。しかし、いくつかの実施形態においては、照射工程(群)後にもポリマー材料の本体中に酸化を防ぐのになお十分な酸化防止能力が存在するように、本体に十分なα−トコフェロールが存在する。従って、照射後、このポリマー物は、本体では耐酸化性であり、表面では高度に架橋している。しかしながら、その表面には、ポリマー物を酸化し、その機械的特性を低下させ得る不安定なフリーラジカルがまだ含まれている可能性がある。低α−トコフェロール表面領域において酸化を防ぐためには、照射を受けた物を、次の方法の一以上を用いることによって処理することができる:
(1)照射を受けたポリマー材料の融点より低い高温で拡散させることによりα−トコフェロールをドープすること、
(2)UHMWPEを機械的に変形させ、続いて前記物の融点より低い温度でまたは高い温度で加熱すること、および/あるいは
(3)前記物を高圧結晶化または高圧アニールすること、
一以上のこれらの処理後、前記物中では前記フリーラジカルは安定しているかまたは実質的に除去されている。
【0084】
いくつかの実施形態においては、前記ポリマー材料の酸化安定性を長期的に損なわないように、前記ポリマー材料において表面にも本体中にも残るなお十分な酸化防止能力が存在するため、上述の四つの安定化技術はいずれも用いない。例えば、空間的に変化する酸化防止剤濃度を有するポリマー材料は、室温より高い高温で、好ましくは約40℃で、40℃より高い温度で、75℃で、75℃より高い温度で、約100℃で、約110℃で、または約120℃で照射する。
【0085】
架橋を薄表面層に制限するというこのアプローチの別の利点は、架橋が前記ポリマー物全体にわたって均等に分布している場合にはそうであったように、前記ポリマー物の全体的な本体機械的特性が照射していないUHMWPEと比較しても変わらなかったということである。
【0086】
本発明の別の付加な利点は、α−トコフェロールのドーピングを高温で行って、拡散時間を短くすることができるということである。
【0087】
実施形態は総て、α−トコフェロールを酸化防止剤として用いて記載しているが、任意の他の酸化防止剤または酸化防止剤の混合物も用いることができる。
【0088】
一つの実施形態によれば、前記ポリマー材料は、インプラント形状、インプラント形状に機械加工することができる予備成形物、または任意の他の形状を有する物である。
【0089】
一つの実施形態においては、前記ポリマー物は、高α−トコフェロール領域と低α−トコフェロール領域とを含めて調製され、前記低α−トコフェロール領域はその表面(外部領域)の一箇所以上に存在し、前記高α−トコフェロール領域はその本体(一般には内部領域)中にある。
【0090】
前記ポリマー物において、高α−トコフェロール領域と、低α−トコフェロール領域とからはじめることについての利点は、放射線架橋が主として低α−トコフェロール領域(大部分の実施形態においては関節面)に制限されるため、架橋によるインプラントの機械的特性の低下が最小限に抑えられるということである。
【0091】
別の実施形態においては、前記固化したポリマー材料は、直接圧縮成形(DCM)によって製造される。DCM金型に、α−トコフェロールを含有するポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークと、α−トコフェロールを含まないバージンポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを組み合わせて充填する。その後、この金型を加熱し、加圧して、DCM工程を完了する。このようにして形成された固化ポリマー材料は、高α−トコフェロール領域と、低α−トコフェロール領域とからなる。最初のα−トコフェロール含有の樹脂、その粉末、またはそのフレーク中のα−トコフェロール濃度は、DCM工程、そしてその後の照射および清浄工程を通じてその酸化防止効率を保持するのに十分に高くあってよい。この濃度は、約0.0005重量%〜約20重量%以上間、好ましくは約0.005重量%〜約5.0重量%間、好ましくは約0.3重量%、または好ましくは約0.5重量%である。固化ポリマー物において高α−トコフェロール領域と低α−トコフェロール領域の空間分布を作るためには、DCM金型に前記樹脂、その粉末、またはそのフレークのいずれかあるいは両方を充填する。特に、高温および期間が典型的である場合の固化において、一つの問題点は、混合物樹脂、その粉末、またはそのフレーク領域からバージンの樹脂、その粉末、またはそのフレーク領域へのα−トコフェロールの拡散である。このような拡散は、影響を受けるバージンの樹脂、その粉末、またはそのフレーク領域におけるその後の架橋の効率を低下させる。この拡散工程は、高α−トコフェロール領域と低α−トコフェロール領域の空間分布を作ることによって、混合物領域のα−トコフェロール含量を最適化することによって、固化温度を下げることによって、かつ/または固化時間を短縮することによって制御することができる。
【0092】
いくつかの実施形態においては、前記高α−トコフェロール領域は前記ポリマー物のコアに制限され、前記バージンポリマー材料は、前記低α−トコフェロール領域の厚さが約0.01mm〜20mm間、より好ましくは約1mm〜5mm間、またはより好ましくは約3mmであるその外殻に制限される。
【0093】
いくつかの実施形態においては、前記外層は前記ポリマー物の一以上のフェースにのみ制限される。例えば、ポリマー物は、DCM工程を通じて2層のポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレーク(0.3重量%または0.5重量%α−トコフェロールを含有する1層とα−トコフェロールを含まない1バージン層)を圧縮成形することによって製造される。前記2種の樹脂、その粉末、またはそのフレークを金型に入れる順序によって、低α−トコフェロールとなる前記ポリマー物のフェースが決まり、その低α−トコフェロール領域の厚さは用いたバージンの樹脂、その粉末、またはそのフレークの量によって決まる。このポリマー物は、続いて照射し、α−トコフェロールをドープし、均質化し、ポリマーインプラントを形作るために一以上のフェースで機械加工し、包装し、滅菌する。
【0094】
いくつかの実施形態においては、前記高α−トコフェロール領域は、α−トコフェロール含有の樹脂、その粉末、またはそのフレークと、バージンポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークの混合物とから成形される。
【0095】
いくつかの実施形態においては、前記α−トコフェロール含有の樹脂、その粉末、またはそのフレークと、前記バージンポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとは、成形前に乾式混合され、それによって前記ポリマー物全体の高α−トコフェロール領域と低α−トコフェロール領域の分布が作られる。
【0096】
いくつかの実施形態においては、前記バージンポリマー領域は、インプラントの関節ベアリング面に制限される。
【0097】
いくつかの実施形態においては、前記α−トコフェロール含有の樹脂、その粉末、またはそのフレークは、DCM工程の前に部分的または完全固化を受ける。このα−トコフェロール含有ポリマー材料予備成形部品によって、完成品におけるα−トコフェロールの空間分布に対するより正確な制御が可能になる。例えば、部分的にまたは完全に固化した樹脂、その粉末、またはそのフレークを、バージンの樹脂、その粉末、またはそのフレークで囲んだ金型に入れ、さらに固化させて、ポリマー物の外殻に低α−トコフェロール領域を有し、ポリマー物の本体に高α−トコフェロール領域を有するポリマー物を作出する。
【0098】
別の実施形態においては、ポリマーコンポーネントは、空間的に制御された高α−トコフェロール領域と、低α−トコフェロール領域とを含めて、上記のようにDCMによって製造される。このコンポーネントは、続いて電子線照射によって処理される。電子線照射は、照射方向に勾配架橋効果を有することが知られているが、これは必ずしも、寛骨臼カップなどの曲面を有するコンポーネントに最適化されるとは限らず、そのような場合、架橋は関節面上の場所によって様々である。本体において最小限の架橋へと漸減する均一表面架橋を作出するためには、電子線照射とともに、高α−トコフェロール領域の空間分布を用いる。照射後、ポリマーコンポーネントにα−トコフェロールをドープする。このコンポーネントは、表面において架橋し安定しており、表面からの深さが増すとともに架橋していない安定した材料へと遷移する。
【0099】
いくつかの実施形態においては、前記ビタミンE/ポリマー材料混合の樹脂、その粉末、またはそのフレーク混合物は非常に高いビタミンE濃度を有するため、この樹脂、その粉末、またはそのフレーク混合物を純樹脂、その粉末、またはそのフレークとともに固化させた場合に、界面にビタミンEの急勾配が生じる。この固化部品は、その後、好ましくは純低α−トコフェロール領域においてポリマーを架橋するために照射を受ける。続いて、この部品を加熱して、α−トコフェロールを高α−トコフェロール本体領域から低α−トコフェロール表面領域まで拡散させる。
【0100】
いくつかの実施形態においては、ビタミンE−ポリマー材料(例えば、UHMWPE)混合物およびバージンポリマーの樹脂、その粉末、またはそのフレークは、界面を作るために、一緒に成形される。混合物および/またはバージン樹脂の量は、所望のバージンポリマー材料厚さを得るように調整する。あるいは、バージンポリマー層の所望の厚さを得るために、成形部品/材料を機械加工する。この機械加工した成形部品/材料に照射し、続いて以下を行う:
ビタミンEをドープし、ポリマー材料の融点より低い温度で均質化するか、または
フリーラジカルを除去するためにドープせずに融解しない温度で加熱する(例えば、異なる期間)か、
または大量のビタミンEを混合物層からバージン層中に拡散させるために、長い十分な期間融解しない温度で加熱する(例えば、異なる期間、混合物領域からバージン領域までの拡散を促進するために異なる混合物組成物を用いる)か、
または高圧結晶化/アニールし、それによって医療用具を形成する。この医療用具は、この段階で用いることができ、またはネット形状のインプラントを得るため、酸化表面層を除去するためにさらに機械加工することもできる。この装置/インプラントは、包装し、滅菌することもできる。
【0101】
別の実施形態においては、前記酸化防止剤ドープまたは混合物ポリマー材料は、前記ポリマー材料の融点より低い温度で所望の期間均質化され、例えば、前記酸化防止剤ドープまたは混合物ポリマー材料は、室温〜約135℃、〜137℃(例えばUHMWPEの場合)で約1時間〜数日、〜1週間以上均質化される。好ましくは、この均質化は、室温より高い温度で、好ましくは約90℃〜約135℃、より好ましくは約80℃〜約100℃、より好ましくは約120℃〜約125℃、最も好ましくは約130℃で行われる。
【0102】
均質化の目的は、固化ポリマー材料の内部にわたるα−トコフェロールの濃度プロファイルを空間的により均一にすることである。ポリマー材料のドーピングが終了した後、α−トコフェロール浴から固化ポリマー材料を取り出し、ポリマー材料の表面から余分なα−トコフェロールを取り除くために十分に拭き取る。均質化工程中は、このポリマー材料を不活性雰囲気(窒素、アルゴン、および/または同類のもの)中にまたは空気中に置く。この均質化は、超臨界流体(例えば、二酸化炭素など)の入ったチャンバー中でも行うことができる。
【0103】
別の実施形態においては、前記DCM工程は、前記固化ポリマー物の不可欠な部分となる金属部品を用いて行われる。例えば、α−トコフェロール含有ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークと、バージンポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとの組合せは、その後の照射工程中でのポリマー材料の架橋が関節面において妨げられないように、高α−トコフェロール領域と、低α−トコフェロール領域との空間的に制御された分布を有する金属製寛骨臼カップまたは脛骨ベースプレートに直接圧縮成形される。例えば、多孔質脛骨金属ベースプレートを金型に入れ、α−トコフェロール混合物ポリマーの樹脂、その粉末、またはそのフレークを上に加えた後、バージンポリマーの樹脂、その粉末、またはそのフレークを最後に加える。固化後、この物は、金属部品付近に、さらに本体にα−トコフェロールを多く含むが、関節面ではα−トコフェロールは少なく、そのため、その後の照射中での表面層の架橋が可能になる。この物へのα−トコフェロールのドーピングは、関節面付近にフリーラジカルを安定化させるために照射後に行われる。DCMによる固化前に、前記金属部品の孔にその厚さの半分にワックスまたは石膏物質を充填することができ、前記金属部品の残る無充填の半分を通じてポリエチレンと連結する。この孔充填剤は、金属の孔中へのα−トコフェロールの注入を防ぐために、照射工程とその後のα−トコフェロールドーピング工程を通して維持される。いくつかの実施形態においては、前記物は、インプラントを形作るために、ドーピング後に機械加工される。
【0104】
別の実施形態においては、前記ポリマー物に不可欠な金属部品が二以上存在する。
【0105】
別の実施形態においては、前記ポリマー物に不可欠な金属部品の一つまたはいくつかまたは総ては、ヒト体内に埋め込むと骨成長を可能にする多孔質金属部品である。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記ポリマー物に不可欠な金属部品の一つまたはいくつかまたは総ては、非多孔質金属部品である。
【0107】
一つの実施形態においては、前記固化ポリマー物は、電離放射線(γ線、電子線、またはX線など)を用いて線量レベル約1〜約10,000kGy間、好ましくは約25〜約250kGy、好ましくは約50〜約150kGy、好ましくは約65kGy、好ましくは約85kGy、または好ましくは約100kGyで照射される。
【0108】
別の実施形態においては、前記照射を受けたポリマー物は、前記物をα−トコフェロール浴中に室温においてまたは高温で一定時間入れることによってα−トコフェロールをドープされる。
【0109】
別の実施形態においては、前記ドープポリマー物は、前記ポリマー物の融点より低い温度で加熱される。
【0110】
一つの実施形態においては、前記インプラントの金属メッシュは、前記インプラントの選択的ドーピング中に金属メッシュの孔中へのα−トコフェロールの注入を防ぐまたは減少させるために、封止剤を用いて封止される。好ましくは、この封止剤は水溶性である。しかし、他の封止剤も用いられる。前記インプラントが受ける最終清浄工程でこの封止剤は除去される。あるいは、追加の封止剤除去工程が用いられる。水、生理食塩水、水溶性ポリマー(例えばポリビニルアルコール)の水溶液、水溶性ワックス、焼き石膏などのような封止剤が用いられる。加えて、多孔質金属コンポーネントの孔内でSU−8などのようなフォトレジストを硬化させてよい。処理後、この封止剤は、酸エッチングまたはプラズマエッチングによって除去し得る。
【0111】
別の実施形態においては、前記ポリエチレン−多孔質金属モノブロックは、ドーピング中、前記ポリマー材料はα−トコフェロール中に十分に浸漬されるが、多孔質金属は、α−トコフェロール表面の完全に上方にあるかまたは部分的にのみ浸漬されるように、ドープされる。これにより金属メッシュの孔中へのα−トコフェロールの注入が減少する。
【0112】
さらに別の実施形態においては、前記ドープポリマー物は、医療用インプラントを形成するために機械加工される。いくつかの実施形態においては、前記機械加工は、金属部品が、少なくとも一つ存在するならば、存在しない側面で行われる。
【0113】
多くの実施形態においては、前記医療用具は、包装され、滅菌される。
【0114】
本発明の別の態様では、前記医療用具は、包装と滅菌の前に清浄される。
【0115】
他の実施形態においては、インプラントコンポーネントにおける前記酸化防止剤(ビタミンEなど)濃度プロファイルは、いくつかの異なる方法によって、様々な処理工程に従って、そして異なる順序で制御することができる、例えば:
I.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、インプラントを機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープすること、
II.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、インプラントを機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、均質化すること、
III.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、インプラントを機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること、
IV.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、予備成形物を機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、インプラントを機械加工すること、
V.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、予備成形物を機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、インプラントを機械加工すること、
VI.前記酸化防止剤と、ポリエチレンその樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、予備成形物を機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、インプラントを機械加工し、前記酸化防止剤を抽出すること、
VII.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、インプラントを機械加工し、前記酸化防止剤をドープし、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること、
VIII.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、インプラントを機械加工し、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること、
IX.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、予備成形物を機械加工し(machining prefoms)、前記酸化防止剤をドープし、前記酸化防止剤を抽出し、インプラントを機械加工すること、
X.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、予備成形物を機械加工し(machining prefoms)、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出し、インプラントを機械加工すること、
XI.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、予備成形物を機械加工し(machining prefoms)、前記酸化防止剤をドープし、インプラントを機械加工し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること、および/または
XII.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、予備成形物を機械加工し(machining prefoms)、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、インプラントを機械加工し、均質化し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること。
【0116】
別の実施形態においては、上記工程は総て、さらにその後、清浄、包装、および滅菌(γ線照射、電子線照射、エチレンオキシドまたはガスプラズマ滅菌)が行われる。
【0117】
方法および一連の照射:
放射線化学を用いたポリマーおよびポリマー合金の選択的制御操作は、別の態様では、ポリマーに照射する方法を選択することによって行うことができる。使用する照射方法は、単独でまたは本発明の他の態様(選択するポリマーまたはポリマー合金など)との組合せで、照射を受けたポリマーの全体的特性に寄与する。
【0118】
γ線照射または電子放射を用いてよい。一般に、γ線照射は、電子線照射より高い放射線浸透深さを与える。しかしながら、γ線照射は、一般に、低い放射線量率を提供し、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深く広範囲の酸化が起こる可能性がある。酸化は、不活性ガス(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウムなど)中で、または真空下でγ線照射を行うことによって減少させるまたは防ぐことができる。電子線照射は、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、照射が空気中で行われる場合には、広範囲の酸化の危険性が減少する。加えて、所望の線量レベルが高い(例えば、20Mrad)場合には、γ線照射を1日かけて行ってよいが、実用的でない生産時間となる。その一方で、電子線の線量率は、照射パラメーター(コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力など)を変更することによって調整することができる。適当なパラメーターを用いて、20Mradの溶融照射(a 20 Mrad melt-irradiation)を、例えば、10分足らずで終えることができる。電子線の浸透は、100万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーに依存する。大部分のポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーでは約1cmの浸透、10MeVのビームエネルギーでは約4cmの浸透となる。電子線照射が好ましい場合には、所望の浸透深さは、ビームエネルギーに基づいて調整することができる。従って、好ましい浸透深さ、時間制限、および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。
【0119】
ある特定の実施形態によれば、前記架橋したポリマー材料は、融解履歴を有し得、これは前記ポリマー材料を、架橋についての照射と同時にまたは照射の後に融解させるということを意味する。他の実施形態によれば、前記架橋したポリマー材料にはかかる融解履歴はない。
【0120】
IMS、CIR、CISM、WIR、およびWIAMを含む様々な照射方法を、照射し、同時のまたはその後の融解を行う融解履歴を有する架橋したポリマー材料について、以下により詳細に定義し、記載する:
(i)溶融状態での照射(Irradiation in the Molten State)(IMS):
溶融照射(MIR)、または溶融状態での照射(「IMS」)は、米国特許第5,879,400号に詳細に記載されている。IMS工程では、照射すべきポリマーをその融点以上に加熱する。その後、そのポリマーに照射する。照射後、そのポリマーを冷却する。
【0121】
照射前に、ポリマーをその融点以上に加熱し、この温度を、ポリマー鎖をもつれた状態にするのに十分な時間維持する。十分な時間は、例えば、約5分〜約3時間の範囲であってよい。
【0122】
γ線照射または電子放射を用いてよい。一般に、γ線照射は、電子線照射より高い放射線浸透深さを与える。しかしながら、γ線照射は、一般に、低い放射線量率を提供し、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深い酸化が起こる可能性がある。酸化は、不活性ガス(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウムなど)中で、または真空下でγ線照射を行うことによって減少させるまたは防ぐことができる。電子線照射は、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、照射が空気中で行われる場合には、広範囲の酸化の危険性が減少する。加えて、所望の線量レベルが高い(例えば、20Mrad)場合には、γ線照射を1日かけて行ってよいが、実用的でない生産時間となる。その一方で、電子線の線量率は、照射パラメーター(コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力など)を変更することによって調整することができる。適当なパラメーターを用いて、20Mradの溶融照射を、例えば、10分足らずで終えることができる。電子線の浸透は、100万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーに依存する。大部分のポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーでは約1cmの浸透、10MeVのビームエネルギーでは約4cmの浸透となる。電子線の浸透は、照射温度の上昇とともに少し増加することが知られている。電子線照射が好ましい場合には、所望の浸透深さは、ビームエネルギーに基づいて調整することができる。従って、好ましい浸透深さ、時間制限および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。
【0123】
ある特定のポリマーについての溶融照射温度は、そのポリマーのDSC(第1回目の加熱サイクル中に10℃/分の加熱速度で測定される)ピーク融点(「PMT」)によって決まる。一般に、IMS工程における照射温度は、PMTよりも少なくとも約2℃高く、より好ましくはPMTよりも約2℃〜約20℃間高く、最も好ましくはPMTよりも約5℃〜約10℃間高い。
【0124】
許容総線量の例示的な範囲は、米国特許第5,879,400号、同第6,641,617号、および国際出願WO97/29793により詳細に開示されている。例えば、好ましくは約1Mradまたはこれを上回る総線量を用いる。より好ましくは、約20Mradを上回る総線量を用いる。
【0125】
電子線IMSにおいては、電子によって蓄積された一部のエネルギーが熱に変換される。これは、主として、照射中にサンプルが熱的に絶縁される程度に依存する。良好な断熱性である場合には、発生した熱の大部分は、周囲へ逃すことなく、照射温度より高い温度へのポリマーの放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)へと導かれる。この加熱は、周囲への熱損失を最小限に抑えるのに十分な高い線量率を用いることによっても誘導することもできた。状況によって、加熱は、照射を受けているサンプルにとっては有害であることがある。ポリマーに照射すると照射中に水素ガスなどのガス状副生成物が生成する。照射中に、ガス状副生成物の迅速な拡大を引き起こしそれによってそれらをポリマーから拡散させないほどに加熱が迅速で高い場合には、そのポリマーはキャビテーションすることがある。このキャビテーションは、構造中に欠陥(空洞部分、亀裂など)の形成をもたらし、このような欠陥が、次には、ポリマーの機械的特性やそのポリマーから製造された装置のin vivo性能に悪影響を与えるかもしれないという点から望ましくない。
【0126】
温度上昇は、線量レベル、絶縁レベル、および/または線量率によって決まる。照射段階で用いる線量レベルは、所望の特性に基づいて決定される。一般に、断熱は、ポリマーの冷却とポリマーの所望の照射温度での温度維持を回避するために用いられる。よって、温度上昇は、照射についての最大線量率を決定することによって制御することができる。
【0127】
電子放射を利用する本発明の実施形態においては、電子の浸透深さを変更し、それによって、照射後の架橋度を制御するために、電子のエネルギーを変化させることができる。好適な電子エネルギーの範囲は、米国特許第5,879,400号、同第6,641,617号、および国際出願WO 97/29793により詳細に開示されている。一つの実施形態においては、前記エネルギーは約0.5MeV〜約12MeVである。別の実施形態においては、前記エネルギーは約1MeV〜10MeVである。別の実施形態においては、前記エネルギーは約10MeVである。
【0128】
(ii)低温照射(CIR):
低温照射は、米国特許第6,641,617号、米国特許第6,852,772号、およびWO97/29793号に詳細に記載されている。低温照射工程においては、ポリマーを室温または室温未満で準備する。好ましくは、ポリマーの温度は約20℃である。その後、そのポリマーに照射する。低温照射の一つの実施形態においては、前記ポリマーは、そのポリマーの結晶の少なくとも部分的な融解が起こるほどの熱をそのポリマーにおいて発生させるのに十分な高い総線量でおよび/または十分な高い線量率で照射してよい。
【0129】
γ線照射または電子放射を用いてよい。一般に、γ線照射は、電子線照射より高い線量浸透深さを与える。しかしながら、γ線照射は、一般に、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深い酸化が起こる可能性がある。酸化は、不活性ガス(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウムなど)中で、または真空下でγ線照射を行うことによって減少させるまたは防ぐことができる。電子線照射は、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、広範囲の酸化の危険性が減少する。従って、好ましい浸透深さ、時間制限、および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。
【0130】
照射総線量は、照射を受けたポリマーの特性を制御するパラメーターとして選択してよい。特に、照射を受けたポリマーにおける架橋度を制御するために、照射線量を変化させることができる。好ましい線量レベルは、ポリマーの分子量と照射後に得ることができる所望の特性によって決まる。一般に、CIRでの線量レベルの増加は、耐摩耗性の増加につながる。
【0131】
許容総線量の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および同第6,852,772号、国際出願 WO97/29793号、ならびに下記実施形態により詳細に開示されている。一つの実施形態においては、許容総線量は約0.5MRad〜約1,000Mradである。別の実施形態においては、許容総線量は約1MRad〜約100MRadである。さらに別の実施形態においては、許容総線量は約4MRad〜約30MRadである。さらに他の実施形態においては、許容総線量は約20MRadまたは約15MRadである。
【0132】
電子放射を利用する場合には、電子のエネルギーも、照射を受けたポリマーの特性を調整するために変化させることができるパラメーターである。特に、電子エネルギーの違いによって電子のポリマー中への浸透深さは異なる。実際の電子エネルギーは約0.1MeV〜16MeVの範囲であり、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量浸透レベルを与える。最大浸透に好ましい電子エネルギーは約10MeVであり、Studer (Daniken, Switzerland)またはE-Beam Services (New Jersey, USA)などのベンダーを通じて商業的に入手可能である。ポリマーの表面層が優先的に架橋され、表面からの距離の関数として架橋密度勾配を示す実施形態においては、より低い電子エネルギーが好ましいかもしれない。
【0133】
(iii)中温照射(WIR):
中温照射は、米国特許第6,641,617号およびWO97/29793号に詳細に記載されている。中温照射工程では、ポリマーを室温より高い温度でそのポリマーの融点より低い温度で準備する。その後、そのポリマーに照射する。中温照射の一つの実施形態においては、「中温照射断熱融解(warm irradiation adiabatic melting)」または「WIAM」と呼ばれている。理論的な意味において、断熱(的)とは、周囲への熱伝達がないことを意味する。実質的な意味において、このような加熱は、本明細書において、そして本明細書において引用する文献において開示されているように、絶縁、照射線量率、および照射期間を組み合わせることによって行うことができる。しかしながら、照射によって加熱を引き起こすが、周囲へのエネルギー損失がまだあるという状況がある。さらに、総ての中温照射が、断熱的なものを示すとは限らない。中温照射はまた、非断熱的な加熱または部分的に(例えば発生した熱の約10〜75%が周囲へ失われる)断熱的な加熱も含み得る。WIRの総ての実施形態においては、前記ポリマーは、そのポリマーの結晶の少なくとも部分的な融解(総てではないが一部の分子が結晶状態から非晶状態へと遷移することを意味する)が起こるほどの熱をそのポリマーにおいて発生させるのに十分な高い総線量でかつ/または十分な高い線量率で照射してよい。
【0134】
前記ポリマーは、その融点より低いが、好ましくは室温より高い任意の温度で準備してよい。温度の選択は、ポリマーの比熱および融解エンタルピーならびに用いた総線量レベルに依存する。ポリマーの最終温度は、その融点より低くても高くてもよいという基準によって好ましい温度範囲を算出するために、米国特許第6,641,617号および国際出願WO97/29793号において提供される式を用いてよい。所望の温度へのポリマーの予熱は、不活性環境中(例えば窒素下、アルゴン下、ネオン下、またはヘリウム下など、またはそれらの組合せ下)でまたは非不活性環境(例えば空気)中で行ってよい。
【0135】
一般論として、ポリマーの照射前加熱温度は、DSCにおける、第1回目の加熱中10℃/分の加熱速度でのピーク融点(PMT)量に基づいて調整することができる。一つの実施形態においては、前記ポリマーは約20℃〜ほぼPMTに加熱される。別の実施形態においては、前記ポリマーは約90℃に予熱される。別の実施形態においては、前記ポリマーは約100℃に加熱される。別の実施形態においては、前記ポリマーは、PMTより低い約30℃およびPMTより低い2℃に予熱される。別の実施形態においては、前記ポリマーは、PMTより低い約12℃に予熱される。
【0136】
WIRのWIAM実施形態においては、照射後の前記ポリマーの温度は、前記ポリマーの融点以上である。照射後の許容温度の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および国際出願WO 97/29793号により詳細に開示されている。一つの実施形態においては、照射後許容温度は、ほぼ室温〜PMT、または約40℃〜PMT、または約100℃〜PMT、または約110℃〜PMT、または約120℃〜PMT、または約PMT〜約200℃である。これらの温度範囲は、ポリマーのPMTに依存し、かなり高くなり、水和レベルの低下を伴う。別の実施形態においては、照射後許容温度は約145℃〜約190℃である。さらに別の実施形態においては、照射後許容温度は約145℃〜約190℃である。さらに別の実施形態においては、照射後許容温度は約150℃である。
【0137】
WIRにおいては、γ線照射または電子放射を用いてよい。一般に、γ線照射は、電子線照射より高い線量浸透深さを与える。しかしながら、γ線照射は、一般に、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深い酸化が起こる可能性がある。酸化は、不活性ガス(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウムなど)中で、または真空下においてγ線照射を行うことによって減少させるまたは防ぐことができる。電子線照射は、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、広範囲の酸化の危険性が減少する。従って、好ましい浸透深さ、時間制限、および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。WIRのWIAM実施形態においては、電子放射を用いる。
【0138】
照射総線量は、照射を受けたポリマーの特性を制御するパラメーターとしても選択してよい。特に、照射を受けたポリマーにおける架橋度を制御するために、照射線量を変化させることができる。許容総線量の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および国際出願WO 97/29793号により詳細に開示されている。
【0139】
照射線量率もまた、所望の結果が得られるように変化させてもよい。WIAM工程では線量率は優れた変数である。好ましい照射線量率は、電子線下で1回のパスで総所望線量レベルを投与することとなるであろう。また、電子線下で複数回のパスで総線量レベルを送達することもでき、各回で総線量の(均等な、または不均等な)分量を送達する。しかし、これは実効線量率の低下をもたらすであろう。
【0140】
許容線量率の範囲は、米国特許第6,641,617号および国際出願WO 97/29793号により詳細に例示される。一般に、許容線量率は、0.5Mrad/パス〜50Mrad/パス間で変化する。許容線量率の上限は、照射によって生じるキャビテーション/亀裂に対するポリマーの抵抗性によって決まる。
【0141】
電子放射を利用する場合には、電子のエネルギーも、照射を受けたポリマーの特性を調整するために変化させることができるパラメーターである。特に、電子エネルギーの違いによって電子のポリマー中への浸透深さは異なる。実際の電子エネルギーは約0.1MeV〜16MeVの範囲であり、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量浸透レベルを与える。最大浸透に好ましい電子エネルギーは約10MeVであり、Studer (Daniken, Switzerland)またはE-Beam Services (New Jersey, USA)などのベンダーを通じて商業的に入手可能である。ポリマーの表面層が優先的に架橋され、表面からの距離の関数として架橋密度勾配を示す実施形態においては、より低い電子エネルギーが好ましい可能性がある。
【0142】
(iv)その後の融解(SM)−検出可能な残留フリーラジカルの実質的な除去:
用いるポリマーまたはポリマー合金、そしてポリマーにその融点より低い温度で照射するか否かにより、照射工程後にその材料中に残留フリーラジカルが存在し得る。電離放射線を用いて融点より低い温度で照射を受けたポリマーには、架橋が含まれるだけでなく、長寿命のフリーラジカルも取り込まれる。照射中に生成されたフリーラジカルの一部は、結晶性領域内におよび/または結晶性ラメラ表面に取り込まれた状態になり、長期的に酸化による不安定化をもたらすことになる(Kashiwabara, H. S. Shimada, and Y. Hori, Radiat. Phys. Chem., 1991, 37(1): p. 43-46、 Jahan, M. S. and C. Wang, Journal of Biomedical Materials Research, 1991, 25: p. 1005-1017、 Sutula, L. C., et al., Clinical Orthopedic Related Research, 1995, 3129: p. 1681-1689参照)。そのため、ポリマーの長期酸化不安定性をなくすのに、取り込まれたこれらの残留フリーラジカルを加熱により除去することが望ましい場合がある。Jahan M. S. and C. Wang, Journal of Biomedical Materials Research, 1991, 25: p. 1005-1017、 Sutula, L. C., et al., Clinical Orthopedic Related Research, 1995, 319: p. 28-4.
【0143】
残留フリーラジカルは、ポリマーを、用いるポリマーの融点より高い温度で加熱することによって低減し得る。加熱によって残留フリーラジカルを互いに再結合させることができる。ある特定の系で、照射後予備成形物に検出可能な残留フリーラジカルが実質的に含まれない場合には、後の加熱工程を省略してよい。また、ある特定の系で、残留フリーラジカルの濃度が、装置性能の低下をもたらさないほどに低い場合には、加熱工程を省略してよい。
【0144】
検出可能なフリーラジカルが実質的に存在しないところまでのフリーラジカルの低減は、ポリマーをその融点より高い温度で加熱することによって達成することができる。この加熱により、ポリマーの結晶から生じる拘束をなくすのに十分な移動性が分子に与えられ、それによって残留フリーラジカルの本質的に総てが再結合可能になる。好ましくは、前記ポリマーは、ピーク融点(PMT)〜ポリマーの分解温度(Td)間の温度、より好ましくはPMTより高い約3℃〜Td間、より好ましくはPMTより高い約10℃〜PMTより高い50℃間、より好ましくは約10℃〜PMTより高い12℃間、最も好ましくはPMTより高い約15℃に加熱される。
【0145】
ある特定の実施形態においては、許容レベルの残留フリーラジカルが存在する可能性があり、その場合には、照射後アニールも前記ポリマーの融点未満で行うことができ、かかるフリーラジカルの効果は酸化防止剤によって最小限に抑えるかまたは除去することができる。
【0146】
(v)連続照射:
γ線または電子線放射のいずれかを用いてポリマーに連続的に照射する。電子線の場合には、照射は電子線下で複数回のパスで行われ、γ線放射線の場合には、照射はγ線源を通じて複数回のパスで行われる。所望により、各照射パス間にまたは一部の照射パス間にポリマーを熱処理する。この熱処理は、ポリマーの融点以下に加熱することであり得る。いずれの工程での照射も、中温照射、低温照射、または溶融照射、またはそれらの任意の組合せであり得る。例えば、各架橋工程ではポリマーに30kGyで照射し、それをまず約120℃に加熱し、その後照射サイクルごとに約120℃で約5時間アニールする。
【0147】
(vi)混合物およびドーピング:
上述のように、架橋したポリマー材料(the cross-liked polymeric material)は、所望により、融解履歴を有し得、これはポリマー材料を、照射と同時に(concurrent with)または照射の後に融解させるということを意味する。このポリマー材料は、固化および照射の前に酸化防止剤と混合することができる。また、この固化したポリマー材料は、照射前または照射後に酸化防止剤をドープすることができ、所望により、照射と同時に(concurrent with)または照射の後に融解させることができた。さらに、ポリマー材料は、固化前に酸化防止剤と混合することができ、固化後に(照射と任意選択の融解前後に)酸化防止剤をドープすることもできる。このポリマー材料は、工程中の異なる時間に抽出に供することができ、複数回抽出することもできる。
【0148】
ポリマー材料は、α−トコフェロール(ビタミンEなど)、δ−トコフェロール、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、または没食子酸デドシル(dedocyl gallates)、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、および有機酸、ならびにそれらの塩、オルトリン酸塩、酢酸トコフェロール、リコピン、またはそれらの組合せを含むいかなる酸化防止剤とも混合することができる。
【0149】
定義および他の実施形態:
「酸化防止剤」とは、当技術分野において公知のものを示す(例えば、WO 01/80778号、米国特許第6,448,315号参照)。α−およびδ−トコフェロール、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、または没食子酸デドシル(dedocyl gallates)、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、および有機酸、ならびにそれらの塩、オルトリン酸塩、リコピン、酢酸トコフェロール。好ましい酸化防止剤はビタミンEである。
【0150】
「高圧結晶化」とは、本明細書において記載するように、本発明に従って、高圧結晶化したポリエチレンの製造方法を示す。
【0151】
「高圧アニール」とは、本明細書において記載するように、本発明に従って、高圧結晶化したポリエチレンの製造方法を示す。
【0152】
「空間的に制御された酸化防止剤分布」との用語は、所望の量の酸化防止剤または酸化防止剤の混合物が、酸化防止剤分布勾配を有するように、ポリマー材料中に拡散または混合されるなど、制御された形での酸化防止剤の分布を示す。酸化防止剤の空間分布は、ポリマー材料内での領域の形成を可能にし、酸化防止剤含量の高い領域と低い領域を与え、このポリマー材料は、空間的に制御された酸化防止剤分布を有する医療用インプラントまたは予備成形物と呼ぶことができる。
【0153】
「超臨界流体」とは、当技術分野において公知のもの、例えば、超臨界プロパン、アセチレン、二酸化炭素(CO2)を示す。これに関して、臨界温度とは、その温度を超えると、圧力だけではガスが液化し得ない温度である。臨界温度においてある物質がガスとしてその液体との平衡状態で存在し得る圧力が臨界圧である。超臨界流体状態は、一般に、流体が、超臨界流体、そしてそれによって超臨界流体混合物が得られるような温度および圧力にさらされているということを意味し、その温度は超臨界温度(CO2の場合31.3℃である)を超え、その圧力は超臨界圧(CO2の場合73.8バールである)を超える。さらに詳細には、超臨界状態とは、混合物、例えば、酸化防止剤を含むUHMWPEの、高い温度および圧力での、超臨界流体混合物が形成され、その後その混合物からCO2が蒸発する場合に、酸化防止剤をドープしたUHMWPEが得られるという状態を示す(例えば、米国特許第6,448,315号およびWO02/26464号参照)。
【0154】
本明細書において言及する用語「圧縮成形」とは、一般に、当技術分野において公知のものに関し、具体的には、ポリマー材料を高温成形することに関し、この場合、ポリマー材料は、樹脂、粉末、またはフレーク形態を含むあらゆる物理的状態にあり、スラブ形態にまたは医療用インプラント、例えば、脛骨インサート、寛骨臼ライナー、関節窩ライナー、膝蓋骨、またはユニコンパートメンタルインサート、あらゆる関節に対する挿入物装置の金型に圧縮され、機械加工することができる。
【0155】
本明細書において言及する用語「直接圧縮成形」(DCM)とは、一般に、当技術分野において公知のものに関し、具体的には、ポリエチレンをベースとする装置、例えば、医療用インプラントに適用可能な成形に関し、この場合、樹脂、粉末、またはフレーク形態を含むあらゆる物理的状態にあるポリエチレンが、固相支持体、例えば、金属裏打ち、金属製メッシュ、または溝、アンダーカット、または孔を含む金属表面に圧縮される。圧縮成形は、医療用インプラントのコンポーネント、例えば、脛骨インサート、寛骨臼ライナー、関節窩ライナー、膝蓋骨、あらゆる関節に対する挿入物装置またはユニコンパートメンタルインサートを製造するための、樹脂、粉末、フレーク、および粒子を含む様々な状態でのポリエチレンの高温圧縮成形も含む。
【0156】
用語「機械的変形」とは、材料の融点未満で起こる変形、本質的には材料の「冷間加工」を示す。変形モードとしては、一軸、チャネルフロー、一軸圧縮、二軸圧縮、振動圧縮、引張、一軸引張、二軸引張、超音波振動、曲げ、平面応力圧縮(チャネルダイ)、ねじり、または前記のいずれかの組合せが含まれる。変形は静的でも動的でもあり得る。動的変形は、小または大振幅式変形モードの組合せであり得る。超音波周波数を用いることができる。総ての変形は、増感ガスの存在下でおよび/または高温で行うことができる。
【0157】
用語「変形状態」とは、固体または溶融状態における、本明細書において記載するような機械的変形などの変形工程後のポリマー材料の状態を示す。変形工程の後、固体または溶融状態の変形したポリマー材料は、変形した形状または新たに獲得した変形状態を維持しながら固化/結晶化させる。
【0158】
「IBMA」とは、融解しない温度での照射および機械的アニールを示す。「IBMA」は、以前は「CIMA」(低温照射および機械的アニール(Cold Irradiation and Mechanically Annealed))とも呼ばれた。
【0159】
用語「機械的に連結される」とは、一般に、ポリマー材料と相手面を連結することを示し、これは、圧縮成形、熱、および照射を含む様々な方法によって行われ、それによって連結界面を形成し、連結したポリマー材料を「形状記憶」させる。かかる連結界面を有する装置のコンポーネントは、「ハイブリッド材料」と呼ぶことができる。かかるハイブリッド材料を有する医療用インプラントは実質的に無菌の界面を含む。
【0160】
用語「実質的に無菌の」とは、対象の無菌、例えば、界面またはハイブリッド材料または界面を含む医療用インプラントについての、その界面が医学的に許容されるほど無菌である、すなわち感染を起こさないかまたは再手術を必要としない、状態を示す。
【0161】
「金属製メッシュ」とは、様々な孔径、例えば、0.1〜3mmの多孔質金属表面を示す。多孔質表面はいくつかの異なる方法によって得ることができ、例えば、結合剤を加えて金属粉末を焼結し、続いて、この結合剤を除去して、多孔質表面を残すか、直径0.1〜3mmの短い金属繊維を焼結するか、または開放連続細孔構造を提供するために、異なるサイズの金属製メッシュを重ね合わせて焼結する。
【0162】
「骨セメント」とは、当技術分野において医療用具を骨に結合するのに用いる接着剤として公知のものを示す。一般に、骨セメントは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)から製造される。骨セメントはリン酸カルシウムからも製造することができる。
【0163】
「高温圧縮成形」とは、圧力および温度下で新しい形状を与えるためのあらゆる形態(例えば、樹脂、粉末、フレーク、または粒子)のポリマー材料の圧縮成形を示す。高温(ポリマー材料の融点より高い)圧縮成形中に、ポリマー材料をその融点より高い温度で加熱し、所望の形状の金型に加圧し、圧力下で冷却させて、所望の形状を維持する。
【0164】
「形状記憶」とは、当技術分野において、融解時に好ましい高エントロピー形状を得る、ポリマー材料(例えば、UHMWPE)の特性として公知のものを示す。好ましい高エントロピー形状は、樹脂、粉末、またはフレークを圧縮成形によって固化させた場合に得られる。
【0165】
用語「検出可能な残留フリーラジカルが実質的に存在しない」とは、酸化的分解が回避されるほどにフリーラジカルが除去されたポリマーコンポーネントの状態を示し、これは、電子スピン共鳴(ESR)によって評価することができる。用語「検出可能な残留フリーラジカル」とは、ESRによって検出可能なフリーラジカルの最低水準以上を示す。最新式の計器で検出可能なフリーラジカルの最低水準は約1014スピン/gであり、従って、用語「検出可能な」とは、ESRによる1014スピン/gの検出限界を示す。
【0166】
数値および範囲に関する用語「約」または「およそ」とは、本発明を意図した通りに実行できるように、例えば、本明細書に含まれる教示から当業者には明らかであるように、所望の架橋度を有しおよび/またはフリーラジカルの所望の欠乏または急冷を受けるように、引用した値または範囲に近似するかまたは近い値または範囲を示す。これは、少なくとも部分的には、ポリマー組成物の様々な特性に起因する。従って、これらの用語は、系統的誤差から生じる値の範囲を超えた値を包含する。これらの用語は黙示的であることを明示する。
【0167】
「ポリマー材料」または「ポリマー」は、ポリエチレン、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含み、約500,000を超える、好ましくは約1,000,000を超える、より好ましくは約2,000,000を超える分子量を有する直鎖状の非分枝鎖エチレンを示す。分子量は約8,000,000以上にも達する場合が多い。初期平均分子量とは、照射前のUHMWPE出発材料の平均分子量を意味する。米国特許第5,879,400号、1999年7月16日出願のPCT/US99/16070号、および1997年2月11日出願のPCT/US97/02220号参照。用語「ポリエチレン物」または「ポリマー物」または「ポリマー」とは、一般に、本明細書において開示する任意の「ポリマー材料」を含んでなる物を示す。
【0168】
「ポリマー材料」または「ポリマー」はまた、水中での平衡後に水が原重量の少なくとも1〜10,000%、一般には原重量の100重量%または重量の99%以下を構成するように水を吸収することができる、ヒドロゲル(ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリエチレングリコール)、それらの混合物、またはそれらの相互貫入ネットワークなど)も包含する。
【0169】
「ポリマー材料」または「ポリマー」は、樹脂、フレーク、粉末、固化したストック、インプラントの形態であり得、酸化防止剤(群)などの添加剤を含有し得る。「ポリマー材料」または「ポリマー」はまた、異なる濃度の添加剤(酸化防止剤など)を含有する異なる樹脂、フレーク、または粉末の一以上の混合物でもあり得る。樹脂、フレーク、または粉末の混合物は、当技術分野で公知の混合技術によって行うことができる。「ポリマー材料」はまた、これらの混合物の固化ストックでもあり得る。
【0170】
「混合(すること)」とは、一般に、ポリオレフィンを予め固化させた形態で添加剤と混合することを示す。両方の構成成分が固体である場合には、混合は、第3の成分、例えば2成分の混合を媒介し、その後、その液体を蒸発させることによって除去される液体を用いることによって行うことができる。添加剤が液体、例えばα−トコフェロールである場合には、固体を大量の液体と混合し、その後固体ポリマーを用いて所望の濃度に希釈して、混合物を均質にすることができる。添加剤が酸化防止剤、例えばビタミンE、またはα−トコフェロールでもある場合には、混合したポリマー材料に酸化防止剤をドープもする。ポリマー材料は、本明細書において、ポリオレフィンと可塑剤との混合、例えばα−トコフェロールを混合し、固化したUHMWPEの樹脂粉末にも適用される。ポリマー材料は、本明細書において、添加剤、ポリオレフィン、および可塑剤の混合、例えばα−トコフェロール中に浸漬したUHMWPEにも適用される。
【0171】
一つの実施形態においては、UHMWPEのフレークは、α−トコフェロールと混合され、好ましくは、そのUHMWPE/α−トコフェロール混合は、α−トコフェロールをUHMWPEのフレーク中に拡散させるために、加熱される。前記UHMWPE/α−トコフェロール混合は、一部のフレークはα−トコフェロール含量が低く、一部のフレークはα−トコフェロール含量が高いUHMWPEのフレークの混合物を得るために、バージンUHMWPEのフレークとさらに混合される。この混合物は、その後、固化され、照射される。照射中に低α−トコフェロール領域は低α−トコフェロール領域(the α-tocopherol poor regions)に比べ、高度に架橋する。照射後、この混合物は、α−トコフェロールを高α−トコフェロール領域から低α−トコフェロール領域まで拡散させ、ポリマー全体にわたって酸化安定性を得るために、均質化される。
【0172】
本発明による生成物および方法は、様々な種類のポリマー材料、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、またはポリオレフィン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状の低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、コポリマーまたはそれらの混合物を含む)にも適用される。本発明による生成物および方法は、様々な種類のヒドロゲル、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、コポリマーまたはそれらの混合物、あるいはコポリマーまたはポリオレフィンを含むこれらの混合物にも適用される。ポリマー材料は、本明細書において、様々な形態のポリエチレン、例えば、樹脂、粉末、フレーク、粒子、粉末、またはそれらの混合物、または上記のいずれかに由来する固化形態にも適用される。ポリマー材料は、本明細書において、様々な形態のヒドロゲル、例えば、フィルム、押出成形物、フレーク、粒子、粉末、またはそれらの混合物、あるいは上記のいずれかに由来する固化形態にも適用される。
【0173】
用語「添加剤」とは、ベースポリマーに50v/v%未満で加えることができる材料を示す。この材料は、ベースポリマーの分子量より低い分子量を有する有機または無機材料であり得る。添加剤はポリマー材料に異なる特性を与えることができる、例えば、添加剤は可塑剤、核形成剤、または酸化防止剤であり得る。
【0174】
用語「可塑剤」とは、当技術分野において公知のもの、ベースポリマーの分子量より低い分子量を有する材料、例えば照射していないまたは架橋した超高分子量ポリエチレン中ビタミンE(α−トコフェロール)または高分子量ポリエチレン中の低分子量ポリエチレンを示し、どちらの場合も、超高分子量ポリエチレンがベースポリマーである。可塑剤は、一般に、ベースポリマーに約20重量%未満で加えられる。可塑剤は、一般に、柔軟性を増加させ、ポリマー材料を軟らかくする。
【0175】
用語「可塑化」または「可塑化すること」とは、可塑剤が、それと接触しているポリマー材料に与える特性を示す。これらの特性には、限定されるものではないが、破断点伸びの増加、剛性の低下、および延性の増加が含まれ得る。
【0176】
「核形成剤」とは、当技術分野で公知の添加剤、ポリマー材料の結晶化速度を増加させる、ベースポリマーの分子量より低い分子量を有する有機または無機材料を示す。一般に、有機カルボン酸塩、例えば炭酸カルシウムは、ポリオレフィンに対する良好な核形成剤である。また、核形成剤は、一般に、0.5重量%のような低濃度で用いられる。
【0177】
「架橋性ポリマー材料」とは、ポリマー材料を示し、例えば、UHMWPEは、架橋用化学薬品(過酸化物および/またはシランなど)および/または照射を使用する方法を含む様々なアプローチによって架橋させることができる。架橋に好ましいアプローチでは照射を使用する。架橋したUHMWPEは、米国特許第5,879,400号、米国特許第6,641,617号、およびPCT/US97/02220号の教示に従って低温照射、中温照射、または溶融照射によっても得ることができる。
【0178】
「固化したポリマー材料」とは、固体、固化したバーストック、ストックから機械加工した固体材料、または本明細書において記載する、固化させることができるあらゆる形態(例えば、樹脂、粉末、フレーク、粒子、またはそれらの混合物)に由来するポリマー材料の半固体形態を示す。固化したポリマー材料は、スラブ、ブロック、固体バーストック、機械加工したコンポーネント、フィルム、チューブ、バルーン、予備成形物、インプラント、完成した医療用具、または未完成の装置の形態でもあり得る。
【0179】
「結晶化度」とは、結晶性であるポリマーの割合を意味する。結晶化度は、サンプルの重量(グラム数で表示した重量)、融解中にサンプルによって吸収された熱(E、J/gで表示)およびポリエチレン結晶の融解熱(ΔH=291J/g)を知り、ASTM F2625などまたはそれらの後継による次の式:
結晶化度%=E/w・ΔH
を用いることによって算出される。
【0180】
引張「弾性率」は、標準試験ASTM 638 M IIIなどまたはそれらの後継を用いて決定される歪みについての公称応力と対応する歪みとの比率を意味する。
【0181】
用語「非永久装置」とは、当技術分野において、数ヶ月より短い期間体内に埋め込むことを目的とする装置として公知のものを示す。非永久装置の中には、体内に数秒間〜数分間存在するものもあれば、数日、数週間、または数ヶ月まで埋め込むことができるものもある。非永久装置としては、例えば、カテーテル、チューブ、静脈チューブ、および縫合糸が挙げられる。
【0182】
「医薬品」とは、本明細書において記載するように、粉末、懸濁液、エマルジョン、粒子、フィルム、ケーキ、または成形した形態にある薬物を示す。薬物は、独立したものにも、医療用具のコンポーネントとして組み込むこともできる。
【0183】
用語「圧力チャンバー」とは、内部圧力を大気圧より高いレベルに上昇させることができる容器またはチャンバーを示す。
【0184】
用語「包装物」とは、医療用具を中に入れて包装および/または輸送する容器または容器群を示す。包装物には、いくつかのレベルの材料が含まれ、それらとしては、バッグ、ブリスターパック、熱収縮性包装物、箱、アンプル、ビン、チューブ、トレーなどまたはそれらの組合せが挙げられる。単一コンポーネントをいくつかの個別タイプの包装物で輸送してよく、例えば、そのコンポーネントをバッグに入れ、それを次にトレーに載せ、それを次に箱に入れることができる。組立品全体を滅菌し、輸送することができる。包装材料としては、限定されるものではないが、硫酸紙、多層ポリエチレン、ナイロン6、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリ塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーフィルム、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーが挙げられる。
【0185】
用語「封止(すること)」とは、チャンバーまたは包装物の開口部を閉鎖することによってチャンバーまたは包装物を外部環境から隔離する工程を示す。封止は様々な手段によって達成することができ、それらの手段には、熱適用(例えば、熱封止すること)、接着剤の使用、クリンプ加工、冷成形、ステープル留め、または加圧が挙げられる。
【0186】
用語「ブリスターパック」とは、包装された内容物を取り出すために剥がすかまたは穴を開ける蓋などが付いた硬質プラスチックボウルからなる包装物を示す。蓋は、アルミニウム、またはガス透過性メンブラン(例えばTyvek)製である場合が多い。ブリスターパックは、吹込成形されることが多く、吹込成形はプラスチックをその変形温度より高く加熱し、その際に加圧ガスがプラスチックを必要な形状にするという工程である。
【0187】
用語「熱収縮性包装物」とは、内部に高度の配向を有するプラスチックフィルム、バッグ、またはチューブを示す。熱を適用すると、配向した鎖が縮むにつれて包装物は収縮し、医療用具の周囲をぴったりと包み込むことが多い。
【0188】
用語「椎間板システム」とは、脊柱の中で脊椎を分離する人工椎間板を示す。このシステムは一種類の材料から構成されていても、または複合構造(例えば、金属エッジを含む架橋したUHMWPE)でもあり得る。
【0189】
用語「バルーンカテーテル」とは、当技術分野において、血管または類似物の内部の空間を広げるために用いられる装置として公知のものを示す。バルーンカテーテルは、通常、膨脹可能な先端を有する薄壁ポリマー装置であり、閉塞した動脈、ステントを広げることができ、または血圧を測定するのに用いることができる。一般的に用いられるポリマーバルーンとしては、例えば、ポリエーテル−ブロック コ−ポリアミドポリマー(PeBAX(登録商標))、ナイロン、およびポリエチレンテレフタレート(PET)バルーンが挙げられる。バルーンおよびカテーテルに一般的に用いられるポリマー材料としては、例えば、ポリエーテルとポリアミドとのコポリマー(例えば、PeBAX(登録商標))、ポリアミド、ポリエステル(例えば、PET)、およびカテーテル製造に用いられるエチレンビニルアルコール(EVA)が挙げられる。
【0190】
医療用チューブ:静脈チューブを含む医療用チューブに用いられる材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリオレフィン、および混合物もしくは合金(熱可塑性エラストマーなど)、ポリアミド/イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、または様々なフルオロポリマーが挙げられる。
【0191】
用語「ステント」とは、当技術分野において、体の脈管(血管など)を開放した状態にしておくのに用いられる金属製またはポリマー製ケージ用装置として公知のものを示す。ステントは、通常、折りたたまれた状態で体内に導入され、体内の所望の場所でバルーンカテーテルにより拡張され、そこにとどまる。
【0192】
「溶融転移温度」とは、材料中の総ての結晶性ドメインが消失する最低温度を示す。
【0193】
本発明における用語「界面」とは、インプラントが、あるコンポーネントが別の部品(金属または非金属コンポーネントなど)と接触する配置にある時に形成される、医療用具におけるニッチとして定義され、これはポリマーと金属または別のポリマー材料との界面を形成する。例えば、ポリマー−ポリマーまたはポリマー−金属の界面は、医療用人工器官、例えば整形外科用関節および骨置換品(例えば、股関節部、膝、肘、または足関節置換物)中にある。
【0194】
ポリエチレンと、密に接触する工場組み立て部品とを含む医療用インプラントは界面を形成する。ほとんどの場合、界面はガス滅菌工程中にエチレンオキシドガスまたはガスプラズマに容易に接近することができない。
【0195】
「照射」、本発明の一つの態様においては、好ましくは電離する種類の放射線を用いる。本発明の別の態様によれば、約25kGy〜約1000kGyの範囲の電離放射線量を用いる。放射線量は、約25kGy、約50kGy、約65kGy、約75kGy、約100kGy、約150kGy、約200kGy、約300kGy、約400kGy、約500kGy、約600kGy、約700kGy、約800kGy、約900kGy、もしくは約1000kGy、もしくは約1000kGyを超える、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値であり得る。好ましくは、放射線量は、約25kGy〜約150kGy間または約50kGy〜約100kGyであり得る。γ線、X線、および/または電子線を含むこれらの種類の放射線は、細菌、ウイルス、または界面を含む医療用インプラントを汚染する可能性がある他の微生物因子を殺すかまたは不活性化させ、それによって製品の無菌性を達成する。本発明によれば、電子照射またはγ線照射であってよい照射は、酸素を含む空気雰囲気中で行うことができ、この際、雰囲気中の酸素濃度は少なくとも1%、2%、4%、もしくは約22%まで、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値である。別の態様では、照射を不活性雰囲気中で行うことができ、この際、雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど、またはそれらの組合せからなる群から選択されるガスを含む。照射は、増感ガス(アセチレンなど)または混合物または不活性ガスもしくは不活性ガス(群)を含む増感ガス中でも行うこともできる。また、照射は真空中でも行うこともできる。さらに、照射は、室温においても、または室温〜ポリマー材料の融点間でも、またはポリマー材料の融点より高い温度でも行うこともできる。照射は、電子線、γ線、および/またはX線を用いて任意の温度でまたは任意の線量率で行うことができる。照射温度は、ポリマーの融点より低い場合も高い場合もある。ポリマーは、加熱し、その後照射する。あるいは、ビームによって発生した熱、すなわち放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によって、ポリマーの温度を高めることができる。照射工程の後に、ポリマーは、融解させるために加熱することができ、またはアニールのためにその融点より低い温度に加熱することができる。これらの照射後熱処理は、空気中で、不活性ガス中でおよび/または真空中で行うことができる。また、照射は、放射線量をわずかに増加させて行うことができ、いくつかの実施形態においては、これらの一連の漸増照射に熱処理を割り込ませることができる。連続照射は、約1kGy、約10kGy、約20kGy、約30kGy、約40kGy、約50kGy、約100kGy、またはそれ以上の放射線量増分で行うことができる。各増加間にまたは一部の増加間にポリマーを融解工程および/またはアニール工程により熱処理することができる。照射後の熱処理とは、主として、照射によって生成されるポリマー中の残留フリーラジカルを低減または除去し、および/または結晶性物質を除去し、および/またはポリマー中に存在し得るあらゆる抽出可能物の除去を手助けすることである。
【0196】
本発明の好ましい特徴によれば、照射は増感雰囲気中で行ってよい。この増感雰囲気は、ポリマー中に拡散するのに十分な小さな分子サイズでありかつ照射によって多官能性グラフト化部分として作用する、ガス状物質を含んでなってもよい。例としては、置換または非置換ポリ不飽和炭化水素、例えば、アセチレン系炭化水素(アセチレンなど)、共役または非共役オレフィン系炭化水素(ブタジエンおよび(メタ)アクリレートモノマーなど)、一塩化硫黄が挙げられ、クロロ−トリ−フルオロエチレン(CTFE)またはアセチレンが特に好ましい。「ガス状」とは、本明細書において、増感雰囲気がその臨界温度よりも高温または低温で、照射温度で気相にあることを意味する。
【0197】
電子放射を利用する場合には、電子のエネルギーも、照射を受けたポリマーの特性を調整するために変化させることができるパラメーターである。特に、電子エネルギーの違いによって電子のポリマー中への浸透深さは異なる。実際の電子エネルギーは約0.1MeV〜16MeVの範囲であり、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量浸透レベルを与える。最大浸透に好ましい電子エネルギーは約10MeVであり、Studer (Daniken, Switzerland)またはE-Beam Services (New Jersey, USA)などのベンダーを通じて商業的に入手可能である。ポリマーの表面層が優先的に架橋され、表面からの距離の関数として架橋密度勾配を示す実施形態においては、より低い電子エネルギーが好ましいかもしれない。
【0198】
用語「線量率」とは、放射を行う速度を示す。線量率は数多くの方法によって制御することができる。一つの方法は、電子線の出力、スキャン幅、コンベヤー速度、および/またはサンプルとスキャンホーンとの距離を変えることによるものである。別の方法は、照射を複数回のパスで行い、必要に応じて、間に冷却工程または加熱工程を加えることによるものである。γ線およびX線放射の場合には、線量率を、サンプルと放射線源との距離、放射線源の強度、放射線源によるサンプル通過速度によって制御する。
【0199】
しかしながら、γ線照射は、一般に、低い放射線量率を提供し、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深い酸化が起こる可能性がある。電子線照射、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、照射が空気中で行われる場合には、広範囲の酸化の危険性が減少する。加えて、所望の線量レベルが高い(例えば、20Mrad)場合には、γ線照射を1日かけて行ってよいが、実用的でない生産時間となる。その一方で、電子線の線量率は、照射パラメーター(コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力など)を変更することによって調整することができる。適当なパラメーターを用いて、20Mradの溶融照射を、例えば10分足らずで終えることができる。電子線の浸透は、100万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーに依存する。大部分のポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーでは約1cmの浸透、10MeVのビームエネルギーでは約4cmの浸透となる。電子線の浸透は、照射温度の上昇とともに少し、増加することが知られている。電子線照射が好ましい場合には、所望の浸透深さは、ビームエネルギーに基づいて調整することができる。従って、好ましい浸透深さ、時間制限および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。
【0200】
許容線量率の範囲は、国際出願WO 97/29793号に例示されている。一般に、許容線量率は、0.5Mrad/パス〜50Mrad/パス間で変化する。許容線量率の上限は、照射によって生じるキャビテーション/亀裂に対するポリマーの抵抗性によって決まる。
【0201】
電子放射を利用する場合には、電子のエネルギーも、照射を受けたポリマーの特性を調整するために変化させることができるパラメーターである。特に、電子エネルギーの違いによって電子のポリマー中への浸透深さは異なる。実際の電子エネルギーは約0.1MeV〜16MeVの範囲であり、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量浸透レベルを与える。最大浸透に好ましい電子エネルギーは約10MeVであり、Studer (Daniken, Switzerland)またはE-Beam Services (New Jersey, USA)などのベンダーを通じて商業的に入手可能である。ポリマーの表面層が優先的に架橋され、表面からの距離の関数として架橋密度勾配を示す実施形態においては、より低い電子エネルギーが好ましいかもしれない。
【0202】
本発明の別の態様によれば、許可された米国特許第7,205,339号(この方法論は引用することにより本明細書の開示の範囲とされる)に開示されているように、前記ポリマー予備成形物は照射方向に垂直な方向にも架橋密度勾配を有し、この場合、架橋密度勾配を与えるように、照射中に部分的に放射を遮断するためにポリマー予備成形物の一部を優先的に保護し、そして架橋密度勾配が望ましい場合に優先的な保護を用い、その架橋密度勾配は優先的に保護されたポリマー予備成形物上で照射方向に垂直な方向に存在する。
【0203】
「金属部品」:本発明によれば、ポリマー材料との界面を形成する部品は、例えば、金属である。ポリマー材料と機能的関係にある金属部品は、本発明によれば、例えば、コバルトクロム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金またはニッケルコバルト合金から製造することができる。
【0204】
「非金属部品」:本発明によれば、ポリマー材料との界面を形成する部品は、例えば、非金属である。ポリマー材料と機能的関係にある非金属部品は、本発明によれば、例えば、セラミック材料から製造することができる。
【0205】
用語「不活性雰囲気」とは、酸素含有量が1%以下である環境、より好ましくは、滅菌工程中にポリマー材料中のフリーラジカルが架橋を形成し酸化しない、酸化体を含まない状態を示す。不活性雰囲気は、O2を避けるために用い、そうしない場合にはUHMWPEなどのポリマー材料を含んでなる医療用具を酸化させることになる。不活性雰囲気条件(窒素、アルゴン、ヘリウム、またはネオンなど)は、電離放射線によりポリマー製医療用インプラントを滅菌するために用いられる。
【0206】
不活性雰囲気条件(窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、または真空など)は、電離放射線により医療用インプラント中のポリマー−金属および/またはポリマー−ポリマー界面を滅菌するためにも用いられる。
【0207】
不活性雰囲気条件は、不活性ガス、不活性流体、または不活性液体媒質、例えば、窒素ガスまたはシリコーン油も示す。
【0208】
「無酸素環境」とは、酸素含有量が21%〜22%未満、好ましくは酸素含有量が2%未満の窒素などのガスを含有する環境を示す。無酸素環境中の酸素濃度は、少なくとも約1%、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、もしくは約22%まで、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値でもあり得る。
【0209】
用語「真空」とは、感知できる量のガスを含まない環境を示し、滅菌工程中にポリマー材料中のフリーラジカルが架橋を形成し、酸化しないことになる。真空は、O2を避けるために用い、そうしない場合にはUHMWPEなどのポリマー材料を含んでなる医療用具を酸化させることになる。真空条件は、電離放射線によりポリマー製医療用インプラントを滅菌するために用いることができる。
【0210】
真空条件は、市販の真空ポンプを用いて作り出すことができる。また、真空条件は、電離放射線により医療用インプラント中のポリマー−金属および/またはポリマー−ポリマー界面を滅菌する際にも用いることができる。
【0211】
「増感環境」または「増感雰囲気」とは、残留フリーラジカルと反応して、残留フリーラジカルの再結合を促進することができる増感ガスおよび/または液体成分(群)を含有する(室温の)ガスおよび/または液体の混合物を示す。ガスはアセチレン、クロロ−トリフルオロエチレン(CTFE)、エチレンなどであってよい。ガスまたはそれらのガスの混合物は希ガス(例えば窒素、アルゴン、ネオンなど)を含有していてよい。前記混合物中には、二酸化炭素または一酸化炭素などの他のガスも存在していてよい。装置製造中に処理材料の表面を機械加工する場合には、ガス混合物は酸素などの酸化ガスも含有し得る。増感環境は、異なる数の炭素を有するジエン、またはそれらの液体および/またはガスの混合物であり得る。増感液体成分の例はオクタジエンまたは他のジエンであり、これらは他の増感液体および/または非増感液体(ヘキサンまたはヘプタンなど)と混合することができる。増感環境としては、増感ガス、例えばアセチレン、エチレン、もしくは同様のガスもしくはガスの混合物、または増感液体、例えば、ジエンを挙げることができる。この環境は、室温から材料の融点より低い温度までの範囲の温度に加熱する。
【0212】
本発明のある特定の実施形態においては、増感ガスおよび/または液体もしくはそれらの混合物、不活性ガス、空気、真空、および/または超臨界流体は、本明細書において開示する方法工程(混合する(bending)工程、混合する(mixing)工程、固化させる工程、急冷する工程、照射する工程、アニールする工程、機械的に変形させる工程、ドープする工程、均質化する工程、加熱する工程、融解させる工程、および最終生成物(医療用インプラントなど)を包装する工程を含む)のいずれにおいても存在し得る。
【0213】
「残留フリーラジカル」とは、ポリマーをγ線または電子線照射などの電離放射線に曝した場合に生成するフリーラジカルを示す。フリーラジカルの一部は互いに再結合して、架橋を形成するが、一部は結晶性ドメイン内に取り込まれた状態になる。取り込まれたフリーラジカルはまた、残留フリーラジカルとも呼ばれる。
【0214】
本発明の一つの態様によれば、電離放射(γ線または電子線など)中に生成した、ポリマー中の残留フリーラジカルのレベルは、好ましくは電子スピン共鳴を用いて決定し、適切に処理して、フリーラジカルを低減させる。
【0215】
「滅菌」:本発明の一つの態様においては、ポリマー材料(架橋したUHMWPEなど)を含む医療用インプラントの滅菌工程を開示する。この工程は、γ線または電子線放射で、例えば、約25〜70kGyの範囲の線量レベルでの電離滅菌により、あるいはエチレンオキシドまたはガスプラズマでのガス滅菌により医療用インプラントを滅菌することを含む。
【0216】
本発明の別の態様は、ポリマー材料(架橋したUHMWPEなど)を含む医療用インプラントの滅菌工程を開示する。この工程は、γ線または電子線放射で、例えば、25〜200kGyの範囲の線量レベルでの電離滅菌により医療用インプラントを滅菌することを含む。滅菌の線量レベルは、照射に用いる標準的なレベルよりも高い。これは、滅菌中に医療用インプラントを架橋させるかまたはさらに架橋させるためである。
【0217】
本発明の一つの態様は、製造工程中に医療用インプラントのポリマーコンポーネントにドープした後、ポリマー材料の融点に応じた期間加熱することによって、酸化防止剤の均一性を増加させる工程を開示する。例えば、好ましい温度は約137℃以下である。本発明の別の態様は、空気中、酸素を含む雰囲気中で行うことができ、この際、酸素濃度は少なくとも約1%、2%、4%、もしくは約22%まで、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値である、加熱工程を開示する。別の態様においては、本発明は、インプラントを不活性雰囲気と接触させながら行うことができ、この際、不活性雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど、またはそれらの組合せからなる群から選択されるガスを含む、加熱工程を開示する。別の態様においては、本発明は、インプラントを非酸化性媒質(不活性液状媒体など)と接触させながら行うことができ、この際、媒質は酸素含有量が約1%以下である、加熱工程を開示する。別の態様では、本発明は、インプラントを真空中において行うことができる加熱工程を開示する。
【0218】
用語「放射線による熱」とは、照射工程中に電子またはγ線によって蓄積されたエネルギーの一部が熱へと変換された結果として発生した熱を示す。放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、主として、照射中にサンプルが熱的に絶縁される程度に依存する。良好な断熱性である場合には、発生した熱の大部分は、周囲へ逃すことなく、照射温度より高い温度へのポリマーの放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱)へと導かれる。この加熱は、周囲への熱損失を最小限に抑えるのに十分な高い線量率を用いることによっても誘導することもできた。この放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、数多くの処理パラメーター(例えば線量率、サンプルの初期温度、吸収放射線量など)に依存する。放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、照射を受けたサンプルにおいて放射線量が熱へと変換された結果である。サンプルの温度が融解中に十分な高さである場合には、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)により結晶の融解が起こる。ポリマーの初期温度が低い(例えば、室温付近または40℃)場合でさえも、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、照射中にポリマーの温度を上昇させるほどに高いものであり得る。初期温度および放射線量が高すぎる場合には、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によってポリマーの完全融解が起こる可能性がある。
【0219】
理論熱力学においては、「断熱的な加熱」とは、周囲への熱伝達がないことを示すということも言及しておかなければならない。実施に際して、例えば、新しいポリマー材料の作出において、「断熱的な加熱」とは、十分な大多数の熱エネルギーが出発材料に与えられ、周囲には伝達されないという状況を示す。このような断熱的な加熱は、本明細書において、そして本明細書において引用する文献において開示されているように、絶縁、照射線量率、および照射期間を組み合わせることによって行うことができる。よって、理論的な意味において断熱的な加熱にほぼ近いものが、実質的な意味において断熱的な加熱となる。しかしながら、総ての中温照射が「断熱的な加熱」を示すとは限らない。中温照射は、また非断熱的な加熱または部分的に(例えば発生した熱の10〜75%が周囲へと失われる)断熱的な加熱も与え得る。
【0220】
本発明のある態様においては、室温照射とは、ポリマー材料が周囲と同じ温度であり、照射前または照射中に外部発熱体による加熱を受けないということを示す。しかしながら、照射自体がポリマー材料を温める可能性がある。一部の例では、放射線量はより低く、それによりポリマー材料中の温度の上昇はわずかに起こるだけであるが、他の一部の例では、放射線量がより高く、それによりポリマー材料中の温度の大幅な上昇が起こる。同様に、線量率も照射中のポリマー材料の加熱において重要な役割を果たす。低線量率においては、温度上昇はより小さく、一方、線量率が高いほど放射線が与える加熱は断熱的な状態となり、ポリマー材料の温度の上昇が大きくなる。これらの例のいずれにおいても、放射線以外の加熱源が存在しない限り、この工程は室温照射と考えられる。
【0221】
本発明の別の態様においては、酸化防止剤の均一性を増加させるためのインプラントの加熱方法を記載する。UHMWPEなどのポリマー原材料を含んでなる医療用具を、酸化防止剤のドーピング工程後に、一般に、約137℃以下の温度に加熱する。この医療用具は、酸化防止剤の所望の均一性に達するまで、不活性媒質中で加熱状態にしておく。
【0222】
用語「融点未満で」または「融解しない温度で」とは、ポリマー材料、例えばポリエチレン(UHMWPEなど)の融点より低い温度を示す。用語「融点未満で」または「融解しない温度で」とは、約145℃より低い温度を示し、これはポリマー材料の融点によって異なり(例えば、約145℃、140℃、または135℃)、さらに処理するポリマー材料の特性、例えば、平均分子量および分子量範囲、バッチ変動などによっても異なる。融点は、一般に、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の加熱速度で測定する。このようにして測定されるピーク融点を融点と呼び、また結晶相から非晶相への温度の遷移範囲とも呼び、例えば、あるグレードのUHMWPEではおよそ137℃で、起こる。融点を測定し、照射とアニールの温度を決定するために、出発ポリマー材料についての融解研究を行うことが望ましい場合がある。一般に、ポリマー材料の融点は、ポリマー材料を圧力下におくと、上昇する。
【0223】
用語「加熱(すること)」とは、所望の加熱温度におけるまたは所望の加熱温度へのポリマーの熱処理を示す。一つの態様においては、加熱は、約10℃/分の速度で所望の加熱温度へ行うことができる。別の態様においては、加熱は、所望の加熱温度で所望の期間行うことができる。言い換えれば、加熱するポリマーを、融解しないまたは融解を超える所望の温度において、所望の期間加熱し続けることができる。所望の加熱温度におけるまたは所望の加熱温度への加熱時間は、少なくとも1分〜48時間〜数週間であり得る。一つの態様においては、加熱時間は約1時間〜約24時間である。別の態様においては、加熱は、照射前または照射後に、本明細書において記載する総ての期間行うことができる。加熱温度とは、本発明による加熱についての熱的条件を示す。加熱は、照射中、照射前、および/または照射後を含む工程のあらゆる時点において行うことができる。加熱は、発熱体を用いて行うことができる。他のエネルギー源としては、環境および照射が挙げられる。
【0224】
用語「アニール(すること)」とは、本発明によるポリマーの加熱または熱処理条件を示す。アニール(すること)とは、一般に、ポリマーをそのピーク融点より低い所望の温度において所望の期間加熱し続けることを示す。アニール時間は少なくとも1分〜数週間であり得る。一つの態様においては、アニール時間は約4時間〜約48時間、好ましくは24〜48時間、より好ましくは約24時間である。「アニール温度」とは、本発明によるアニールについての熱的条件を示す。アニールは、照射中、照射前、および/または照射後を含む工程のあらゆる時点において行うことができる。
【0225】
本発明のある特定の実施形態においては、アニールは、例えば、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン またはヘリウム)中で、真空中で、空気中で、および/または増感雰囲気(例えば、アセチレン)中で行うことができる。
【0226】
用語「接触した」とは、増感物質がその目的の機能を果たせるようにする、物理的近接または接触を含む。好ましくは、ポリマー組成物または予備成形物を、増感物質中に浸漬されるように十分に接触させ、これによって十分な接触を確保する。浸漬は、サンプルを特定の環境中に適当な温度で十分な期間入れることとして定義され、例えば、サンプルの酸化防止剤溶液中への浸漬である。この環境は、室温〜材料の融点より低い温度範囲の温度に加熱する。接触時間は、少なくとも約1分〜数週間であり、この期間は環境の温度によって異なる。
【0227】
用語「非酸化性」とは、ASTM F2102または同等の規格に従ってポリマー材料を空気中80℃の炉において5週間老化させた後に酸化指数(A.U.)が約0.5未満であるポリマー材料の状態を示す。よって、非酸化性の架橋したポリマー材料は、一般に、老化期間後、約0.5未満の酸化指数(A.U.)を示す。
【0228】
用語「酸化的に安定な」、「酸化安定性」、または「耐酸化性の」とは、ポリマー材料を空気中80℃の炉において5週間老化させた後に酸化指数(A.U.)が約0.1未満であるポリマー材料の状態を示す。よって、酸化的に安定なまたは耐酸化性の、架橋したポリマー材料は、一般に、老化期間後、約0.1未満の酸化指数(A.U.)を示す。
【0229】
用語ポリマー材料の「表面」とは、一般に、ポリマー材料またはポリマーサンプルまたはポリマー材料を含んでなる医療用具の、厚さが約1.0μm〜約2cm、好ましくは約1.0mm〜約5mm、より好ましくは約2mmである材料外部領域を示す。
【0230】
用語ポリマー材料の「本体」とは、一般に、ポリマー材料の表面からポリマー材料の中心までの、厚さが約1.0μm〜約2cm、好ましくは約1.0mm〜約5mm、より好ましくは約2mmである、材料内部領域を示す。しかしながら、この本体は、より高い濃度の酸化防止剤と接触する可能性がある、ポリマー材料の選択側面またはフェース(任意の選択表面を含む)を含み得る。
【0231】
用語ポリマー材料の「表面」および「本体」とは、一般に、それぞれ、外部領域および内部領域を示すが、一般には、これらの二領域間に分離境界はない。これらの領域はむしろ勾配のように遷移するものである。これらの領域は対象の大きさおよび形状ならびに用いる樹脂に基づいて異なり得る。
【0232】
用語「ドープすること(ドーピング)」とは、当技術分野で公知の一般的な工程(例えば、米国特許第6,448,315号および同第5,827,904号参照)を示す。これに関して、ドープすること(ドーピング)とは、一般に、本明細書において記載するように、ある特定の条件下でポリマー材料を酸化防止剤と接触させることを示し、例えば、超臨界条件下でのUHMWPEへの酸化防止剤のドーピングである。
【0233】
酸化防止剤のドーピングをポリマー材料の融点より高い温度で行う本発明のある特定の実施形態においては、酸化防止剤をドープしたポリマー材料は、照射後に残留フリーラジカルを除去するために、融解を超えてさらに加熱するか、またはアニールすることができる。酸化防止剤(ビタミンEなど)の存在下でのポリマー材料の溶融照射は、ビタミンE濃度分布を変化させ得、さらにポリマー材料の機械的特性も変化させ得る。これらの変化は、結晶化度の変化によっておよび/またはある特定の濃度のビタミンEの可塑化効果によって生じ得る。
【0234】
一つの実施形態によれば、ポリマー材料の表面は、酸化防止剤とほとんどまたは全く接触せず、ポリマー材料の本体はより高い濃度の酸化防止剤と接触する。
【0235】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の表面は酸化防止剤と全く接触せず、ポリマー材料の本体はより高い濃度の酸化防止剤と接触する。
【0236】
一つの実施形態によれば、ポリマー材料の本体は酸化防止剤とほとんどまたは全く接触せず、ポリマー材料の表面はより高い濃度の酸化防止剤と接触する。
【0237】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の本体は酸化防止剤と全く接触せず、ポリマー材料の表面はより高い濃度の酸化防止剤と接触する。
【0238】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の表面およびポリマー材料の本体は同じ濃度の酸化防止剤と接触する。
【0239】
一つの実施形態によれば、ポリマー材料の表面は、約0重量%〜約50重量%、好ましくは約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.01重量%〜約0.5重量%間、より好ましくは約0.2重量%の酸化防止剤を含み得る。別の実施形態によれば、ポリマー材料の本体は、約0重量%〜約50重量%、好ましくは約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.01重量%〜約0.5重量%間、より好ましくは約0.2重量%、好ましくは約0.2重量%〜約1%重量%間、好ましくは約0.5重量%を含み得る。
【0240】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の酸化防止剤濃度は、約1ppm〜約10,000ppm、好ましくは約100ppm、約500ppm、約1000ppm、約2000ppm、約3000ppm、約5000ppm、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値までであり得る。
【0241】
別の実施形態によれば、放射線量は、所望の架橋密度を達成するために、酸化防止剤の濃度に応じて調整される。同じ架橋密度を達成するためには、一般に、酸化防止剤濃度が高いほどより高い線量レベルが必要である。
【0242】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の表面およびポリマー材料の本体は同じ濃度の酸化防止剤を含む。
【0243】
さらに詳しくは、固化したポリマー材料には、この材料を酸化防止剤の溶液中に浸漬することによって酸化防止剤をドープすることができる。これにより酸化防止剤をポリマー中に拡散させることができる。例えば、ポリマー材料を100%酸化防止剤中に浸漬することができる。また、ポリマー材料を酸化防止剤溶液中に浸漬することができ、この酸化防止剤溶液には酸化防止剤濃度を希釈するために担体溶媒を用いることができる。酸化防止剤の拡散深さを増加するために、ポリマー材料を、より長い期間、より高い温度で、より高い圧力で、および/または超臨界流体の存在下でドープすることができる。
【0244】
酸化防止剤は、表面から約5mm以上の深さに、例えば、約3〜5mm、約1〜3mmの深さに、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の深さに拡散させることができる。
【0245】
ドーピング工程は、ポリマー材料、医療用インプラント、または装置を酸化防止剤(ビタミンEなど)とともに、約半時間〜最大数日間、好ましくは約1時間〜24時間、より好ましくは1時間〜16時間浸漬することを必要とする場合がある。酸化防止剤は、室温においてまたは約137℃まで加熱し、ドーピングは、室温においてまたは約137℃までの温度で行うことができる。好ましくは、酸化防止剤溶液は、約100℃〜135℃間または約110℃〜130℃間の温度に加熱し、ドーピングは、約100℃〜135℃間または約110℃〜130℃間の温度で行う。より好ましくは、酸化防止剤溶液は約120℃に加熱し、ドーピングは約120℃で行う。
【0246】
照射ポリマー材料の融点より高い温度での(例えば、UHMWPEの場合には、137℃より高い温度での)拡散によるα−トコフェロールドーピングは、減圧下、周囲圧力下、高圧下、および/または密閉チャンバー中で、約0.1時間〜最大数日間、好ましくは約0.5時間〜6時間以上、より好ましくは約1時間〜5時間行うことができる。酸化防止剤は、約137℃〜約400℃、より好ましくは約137℃〜約200℃、より好ましくは約137℃〜約160℃の温度であり得る。
【0247】
ドーピング工程および/または照射工程の後に、追加の均質化工程を続けることができる。用語「均質化」とは、ポリマー材料、医療用インプラント、または装置内の酸化防止剤濃度の空間的均一性を向上するための空気中でのまたは無酸素環境中での加熱工程を示す。また、均質化は、照射工程の前および/または照射工程の後に行うこともできる。加熱は、ピーク融点より高くまたはピーク融点より低い温度でまたはピーク融点において行ってよい。酸化防止剤ドープまたは混合物ポリマー材料は、ポリマー材料のピーク融点より低いまたはピーク融点より高いまたはピーク融点の温度で所望の期間均質化することができ、例えば、酸化防止剤ドープまたは混合物ポリマー材料は、室温〜約400℃で約1時間〜数日間均質化することができる。好ましくは、均質化は、90℃〜180℃、より好ましくは100℃〜137℃、より好ましくは120℃〜135℃、最も好ましくは130℃で行う。均質化は、好ましくは、約1時間〜数日〜2週間以上、より好ましくは約12時間〜300時間以上、より好ましくは約280時間、またはより好ましくは約200時間行う。より好ましくは、均質化は、約130℃で約36時間または約120℃で約24時間行う。ポリマー材料、医療用インプラントまたは装置は、均質化工程中、不活性雰囲気(窒素、アルゴン、および/または同様のもの)中に、真空下に、または空気中におく。均質化は、超臨界流体(例えば二酸化炭素など)を含むチャンバー中でも行うことができる。超臨界流体の圧力は、約1000〜約3000psi以上、より好ましくは約1500psiであり得る。また、加圧によりUHMWPEの融点が高まることもわかっている。加えた圧力によってUHMWPEの融点が137℃を超えて上昇した場合には、融点未満での均質化には137℃より高い温度を用いることができる。
【0248】
均質化は、酸化防止剤の高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域までの拡散を促進する。拡散は、一般に、温度が高いほど速い。融点より高い温度では、結晶性ドメインからの拡散の障害が取り除かれ、より速く均質化が起こる。溶融均質化(Melt-homogenization)およびその後の再結晶化により、主にポリマーの結晶化度の低下のために機械的特性が低下する可能性がある。これは、ある特定の用途には許容され、望ましいことさえある。例えば、機械的特性の低下が望ましくない用途では、均質化は、融点未満で行うことができる。あるいは、融解しないまたは融解を超える温度で均質化したサンプルを、機械的特性をさらに向上させるために、高圧結晶化に供してもよい。
【0249】
ポリマー材料、医療用インプラント、または装置は、均質化工程中、不活性雰囲気(窒素、アルゴン、および/または同様のもの)中に、真空下に、または空気中におく。均質化は、超臨界流体(例えば、二酸化炭素など)を含むチャンバー中でも行うことができる。超臨界流体の圧力は、1000〜3000psi以上、より好ましくは約1500psiであり得る。均質化は、酸化防止剤拡散前におよび/または酸化防止剤拡散後におよび/または酸化防止剤拡散中に行うことができる。
【0250】
上記に記載する、各組成物および態様、ならびに各方法および態様は、本明細書に含まれる教示に合致する様々な方法で別のものと組み合わせることができる。本発明の実施形態および態様に従って、総ての方法および各方法における工程を、本明細書に含まれる教示に合致する方法で任意の順序で適用することができ、何度も繰り返すことができる。
【0251】
本発明を次の実施例によりさらに詳細に記載するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0252】
ビタミンE:特に断りのない限り、本明細書において記載する試験には、ビタミンE(Acros(商標) 99%D−α−トコフェロール、Fisher Brand)を用いた。用いたビタミンEは、色が非常に明るい黄色であり、室温において粘性の液体である。その融点は2〜3℃である。
【0253】
ビタミンE指数(A.U.)の決定:UHMWPE中のビタミンE含量を定量するためにフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いる。無次元パラメーターであるビタミンE指数を測定することによってビタミンE含量を定量するためにFTIR(別名赤外線顕微鏡)を用いる。
【0254】
α−トコフェロールに関する吸収ピークは1265cm−1に存在し、これを1895cm−1のメチレンピークに対して正規化する。この割合をビタミンE指数として報告する。
【0255】
サンプルを、サンプルの厚さ方向に100〜200μm厚間のスライスにミクロトーミングすることによって調製する。厚さ方向にα-トコフェロールが広がらないように、切片は、スキャン方向に対して直角にミクロトーミングしなければならない。スライスをFTIR顕微鏡の移動ステージに載せ、表面からサンプルの本体まで特定の間隔でFTIRスペクトルを収集する。
【0256】
ビタミンE指数は、その指数を既知量のビタミンEを含むUHMWPEの切片から作成した較正曲線と比較することによって、絶対濃度へと変換することができる。
【0257】
実施例1.照射したUHMWPE/ビタミンE混合物の棚老化
0.02重量%、0.05重量%、および0.1重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物を圧縮成形によって調製した。混合物に空気中、室温において150kGyおよび200kGyでγ線照射し、その後、試験サンプルを機械加工した。次いで、混合物を、40℃に保った水タンク中に10ヶ月間浸漬することによって老化させた。対照サンプルは、UHMWPEに空気中、室温において150kGyまたは200kGyいずれかでγ線照射し、続いてビタミンE中に120℃で2時間浸漬し、その後120℃で2時間均質化することによって製造した。対照サンプルを空気中でγ線滅菌し、40℃に保った同じ水タンク中で10ヶ月間老化させた。
【0258】
試験サンプルを、ASTM F2102に従って、切断し、ミクロトーミングし、赤外線顕微鏡を用いて分析した。照射を受けた混合物は酸化を受けた、これに対し、対照は検出可能な酸化を示さなかった(図1参照)。図1は、酸化プロファイルを、様々なレベルのビタミンEを含有する粉末から製造したUHMWPEのサンプルの深さの関数として示す。固化後、サンプルに異なる線量レベルで照射した後、水タンク中、40℃で10ヶ月間老化させた。対照には照射した後、老化前にビタミンEでドープした(図1参照)。図1では、水中、40℃での10ヶ月のリアルタイム老化後に、ビタミンEを混合し照射したサンプルが検出可能な酸化を示したことが分かる。酸化は表面において最大であり、開放表面からの深さとともに減少した。酸化は、放射線量レベルが高くなるとともにおよび/またはビタミンE濃度が低くなるとともに酸化は高まった。これに対し、混合し照射したサンプルでは、照射後にビタミンEをドープしたサンプルは10ヶ月後にごくわずかな酸化レベルを示した(IR法の検出限界は酸化指数約0.1である)。照射し、ビタミンEをドープしたサンプルと、混合した後照射したサンプルとの違いは、前者のサンプルではビタミンEが照射を受けないということである。このため、その酸化防止剤の活性は放射線による影響を受けていない状態である。これに対し、後者のサンプルではビタミンEが照射を受けるため、酸化防止剤の能力の一部が弱まり、これにより、図1に示されるように、リアルタイム酸化が起こる。そのため、長期酸化不安定性を防ぐためには、照射を受けた混合物をさらに安定化させる必要がある。興味深いことに、同様の試料での促進老化試験では長期試験で確認された酸化の違いは検出できなかった。
【0259】
実施例2.照射したUHMWPE/ビタミンE混合物のアニール
0.01重量%および0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物を調製し、2.5MeVで作動するバンデグラーフ型電子線発生装置を用いて総吸収放射線量200kGy(図2参照)または100kGy(図3参照)のいずれかで照射した。照射は、空気中、室温において線量率25kGy/パスおよびコンベヤー速度20cm/分とした。各サンプルの半分を、空気中、130℃において8時間アニールした(図4参照)。照射を受けただけのサンプルと、照射しアニールしたサンプルとの両方において電子スピン共鳴(ESR)測定を行った。ESRにより、アニールによる残留フリーラジカル濃度の著しい低減が示された。
【0260】
【表1】
【0261】
図2は、固化後に室温において200kGyで照射した後、130℃において8時間アニールした、ビタミンEとUHMWPEの粉末の混合物の電子スピン共鳴シグナルを示している。ピークサイズの減少は残留フリーラジカルの低減を示す(図2参照)。図3は、固化後に室温において100kGyで照射した後、130℃で8時間アニールした、ビタミンEとUHMWPEの粉末との混合物の電子スピン共鳴シグナルを示す。ピークサイズの減少は残留フリーラジカルの低減を示す(図3参照)。図4は、残留フリーラジカル含量(スピン/g)を処理条件の関数として示している。表1は、アニール前後の照射ビタミンE混合物のフリーラジカル濃度を示している。アニールによってフリーラジカル含量が低減し、この低減はビタミンE濃度の増加とともに効果が高まった。
【0262】
実施例3.照射した混合物の残留フリーラジカル濃度に対する照射温度の効果
0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物を調製し、2.5MeVで作動するバンデグラーフ型電子線発生装置を用いて総吸収放射線量200kGyまたは100kGyのいずれかに照射した。照射は、空気中、室温、110℃、または120℃において線量率25kGy/パスおよびコンベヤー速度20cm/分とした(図5参照)。図5は、固化後、室温、110℃、および120℃において150kGyで照射した、ビタミンE(0.2重量%)とUHMWPEの粉末の混合物の電子スピン共鳴シグナルを示している。ピークサイズの減少は照射温度の上昇に伴う残留フリーラジカルの低減を示す(図5参照)。三つの試験サンプルの総てを用いて電子スピン共鳴(ESR)測定を行った。ESRにより、照射温度の上昇に伴う残留フリーラジカル(residual freer radicals)濃度の著しい低減が示された。
【0263】
実施例4.中温照射と照射後アニールの比較
上記実施例2および実施例3のサンプルのESRデータを比較した(図6参照)。図6は、固化後、室温、110℃、および120℃において100〜200kGyで照射した、ビタミンE(0.2重量%)とUHMWPEの粉末の混合物についての、室温において100kGyおよび200kGyで照射し、続いて130℃において8時間アニールしたサンプルと比較した、電子スピン共鳴シグナルを示している(図6参照)。低温照射を受けた混合物のアニールは、中温照射よりも良好なフリーラジカルの急冷をもたらした。そのため、これらの混合物の長期安定性をさらに向上させるためは、中温照射した混合物のアニールも有益である。
【0264】
実施例5.照射した混合物の長期促進老化−アニールの効果
実施例4のサンプルを、ASTM F2003−02に従って促進老化に供する(70℃、5気圧 O2 2週間)。アニールしたサンプルは、アニールしなかったサンプルと比較して酸化が著しく減少した。
【0265】
実施例6.照射した混合物中へのビタミンEの拡散
実施例3のサンプルをビタミンE中に120℃において2時間浸漬し、続いてアルゴン中、130℃で12日間均質化を行う。サンプルを、ASTM F2003−02に従って促進老化に供する(70℃、5気圧 O2 2週間)。浸漬/均質化したサンプルは、ドープしなかったサンプルと比較して酸化が減少した。
【0266】
実施例7.照射した混合物の室温においての機械的変形
(i)室温において照射した実施例3のサンプルを室温において機械的に変形させる。変形後、サンプルを120℃に加熱して、その材料をその形状に回復させる。ESRを用いてフリーラジカル濃度を測定し、機械的変形後にフリーラジカル濃度が著しく低減することが分かる。ASTM F2003−02に従って促進老化を行う(70℃、5気圧 O2 2週間)。機械的に変形させたサンプルは、変形させなかったサンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
(ii)120℃において照射した実施例3のサンプルを室温において機械的に変形させる。変形後、サンプルを120℃に加熱して、その材料をその形状に回復させる。ESRを用いてフリーラジカル濃度を測定し、機械的変形後にフリーラジカル濃度が著しく低減することが分かる。ASTM F2003−02に従って促進老化を行う(70℃、5気圧 O2 2週間)。機械的に変形させたサンプルは、変形させなかったサンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
【0267】
実施例8:室温より高い温度で照射した混合物の室温においての機械的変形
(i)室温において照射した実施例3のサンプルを処方物の融点より低い温度で機械的に変形させる。変形後、サンプルを120℃に加熱して、その材料をその形状に回復させる。ESRを用いてフリーラジカル濃度を測定し、機械的変形後にフリーラジカル濃度が著しく低減することが分かる。ASTM F2003−02に従って促進老化を行う(70℃、5気圧 O2 2週間)。機械的に変形させたサンプルは、変形させなかったサンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
(ii)120℃で照射した実施例3のサンプルを処方物の融点より低い温度で機械的に変形させる。変形後、サンプルを120℃に加熱して、その材料をその形状に回復させる。ESRを用いてフリーラジカル濃度を測定し、機械的変形後にフリーラジカル濃度が著しく低減することが分かる。ASTM F2003−02に従って促進老化を行う(70℃、5気圧 O2 2週間)。機械的に変形させたサンプルは、変形させなかったサンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
【0268】
実施例9: ビタミンE−UHMWPEの粉末およびバージンUHMWPEの粉末の混合物
0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合粉末をバージンUHMWPEの粉末と50−50混合物として混合し、続いて固化を行って、ビタミンE欠損領域を形成する。
固化した材料に、電子線またはγ線放射を用いて線量最大200kGyで、室温または材料の融点より低い温度のいずれかで照射する。次いで、材料を120℃で100時間アニールして、ビタミンEを材料中に均質化する。得られた材料は、ESRで測定した際に測定可能な残留フリーラジカルを示さず、融点未満でアニールした不安定な照射サンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
【0269】
実施例10.UHMWPE/ビタミンE混合物の調製
UHMWPE/ビタミンE混合物は、まず、UHMWPEの粉末とビタミンEを機械的に混合し、それによって高濃度UHMWPE/ビタミンE混合物を形成することによって、調製した。この高濃度混合物をさらに、ビタミンEを含まないバージンUHMWPEの粉末で希釈して、所望のビタミンE濃度を得る。次に、希釈した混合物をブロックに圧縮成形した。試験サンプルは、これらのブロックから機械加工し、下記試験に用いた。
【0270】
実施例11.電子線照射した混合物における断熱温度上昇−2.5MeVでのステーショナリー照射
0.2重量%ビタミンEを混合したGUR 1050 UHMWPEを寸法3インチx3インチx1インチの矩形ブロックに機械加工した。電子線入射表面として示した、3インチx3インチの表面の一つから2mm、5mm、および7mmのところにドリルで三つの穴を開けた。これらの穴に熱電対を入れ、高温テープでしっかり固定した。次に、前記ブロックを、まずグラスファイバー断熱材で、次にアルミニウム箔で包んだ。このようにして、電子線入射表面を除く総ての表面を断熱し、照射中におけるリアルタイムの温度上昇を測定した。ブロックには、2.5MeV バンデグラーフ型電子線発生装置を用いて、ブロックの電子線入射表面を電子線に向けて照射した。コンベヤーベルトは利用せず、電子線下で静止ブロックを用いて照射を行った。放射線量率は約100kGy/分であった。温度上昇は、データ収集ボードを用い、照射中の時間の関数として電子線入射表面からの三つの異なる深さにおいて記録した。図7は、照射中に測定した温度上昇を示している。温度上昇は、電子線放射線の熱エネルギーへの変換に起因するものであった。1kGy=1J/gであることに留意する。最初のうちは、温度は式:エネルギー=比熱x温度変化に従って直線的に増加した。その後、90℃付近ではポリエチレン結晶の融解が始まり、エネルギーの一部が結晶の融解エンタルピーに用いられたために温度上昇速度の減速が起こった。およそ140℃では、熱電対付近のポリエチレンが完全に融解したために温度上昇速度の急激な増加が起こり、温度は、融解したポリエチレンの比熱で上式に従って直線的に上昇し続けたが、この増加は90℃より低い温度での増加より低い。温度上昇は、電子カスケードにおいて電子が最高点に達する電子線入射表面下5mmにおいてより速かったことにも留意する(実施例12参照)。3mmの深さでは、温度上昇の遅れは主として周囲への熱損失に起因しており、決して断熱的ではない加熱が生じた。7mmでは、放射線による加熱条件はより良好であったが、電子カスケードの減少により放射線量率が低下し、それゆえ温度の低下が起こった。
【0271】
実施例12.低温および中温電子線照射した混合物における断熱温度上昇−2.5MeVでの25kGy/パス照射
0.2w%UHMWPE/ビタミンE混合ストック材料の二つのブロック(3インチx3インチx1インチ)を空気対流炉中で約100〜105℃に加熱した。熱電対は、電子線入射表面から3mm、5mm、および7mmのところに入れた。実施例11に記載のとおりにブロックを断熱し、照射のためにコンベヤーベルト上に置いた。線量率は1パス当たり25kGyであった。温度上昇は、照射中の時間の関数として記録した。照射は合計約250kGy放射線量で6パス間続けた。図8は、熱電対を備えた両方のブロックにおいて記録した温度上昇を示している。ブロックの温度は、コンベヤーベルト上でブロックが電子線に達するまでゆっくりと低下した。電子線下では、温度上昇はかなり急速であり、固定照射例での上記の上昇と同様であった。ブロックは電子線下を通過した後、ブロックが電子線に戻るまで温度は低下した。最大温度上昇は、電子カスケードが最高点に達する電子線入射表面下5mmにおいて測定された。電子線下をさらに通過させると、ブロックの温度は連続的に増加した。ある特定の実施形態においては、ポリエチレンを1回のパスで照射することもあれば、複数回のパスで照射することもある。パスの回数および1パス当たりの放射線量を調整して、照射後にポリエチレンにおいて所望の最終温度を達成することができる。
【0272】
実施例13.混合物の低温および中温照射(2.5MeV)
ビタミンE/UHMWPEの混合物のブロック(3インチx3インチx1インチ)を、2.5MeV バンデグラーフ型発生装置(HVRL, MIT)を用いて照射した。照射は、三つの異なる温度、すなわち室温、110℃、および120℃で行った。0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%および1重量%のビタミンE/UHMWPEの混合物から機械加工した四つのブロックを室温照射とした。110℃照射では、室温においてのブロックと同じビタミンE濃度を有する12のブロックを用いた。室温照射および110℃照射の両方において、各混合物の1ブロックを75kGy、100kGy、および150kGyで照射した。120℃照射では、同じビタミンE混合ブロックを用いた。120℃照射での放射線量レベルは、75kGy、100kGy、150kGy、175kGy、および200kGyであった。放射線量率は25kGy/パスであった。これらの照射ブロックのいくつかを、残留ラジカル濃度については電子スピン共鳴を用いて、電子線カスケード効果についてはFTIRを用いて、熱的特性の変化についてはDSCを用いて、そして架橋密度については熱キシレン中での膨潤を用いて、試験した。
【0273】
実施例14.照射した混合物の電子カスケード(2.5MeV)
2.5MeV バンデグラーフ型発生装置(the 2.5MeV Van de Graff geneartor)を用いて室温(room tempetaure)、110℃、および120℃で150kGyで照射した0.5重量%混合物におけるトランス−ビニレン不飽和化を定量することにより、電子線の浸透深さを決定するために、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いた。FTIRはまた、照射中にポリマーで生じる電子カスケードの測定も可能である。このカスケードは、ポリマーのホスト原子から放出される二次電子の数の増加によるものである。二次電子の発生により実効吸収放射線量が高まり、これによりポリマーにおける放射の効果が徐々に増加する。しかしながら、深さの増加に伴って、一次電子はエネルギーを遊離し、これにより電子の有効浸透が急激に減少する。
【0274】
トランス−ビニレン分析をフーリエ変換赤外分光法(FTIR, Bio-Rad FTS2000, Natick MA)を用いて行った。滑走式ミクロトーム(モデル90−91−1177, LKB-Produkter AB, Bromma, Sweden)を用いて薄片(〜150μm)を切断し、続いてASTM規格F2381−04に従って400グリットのサンドペーパー(Buehler Ltd., Lake Bluff IL)で両面を磨いた。その後、薄片においてFTIRを行った。厚さ全体にわたって深さ間隔で赤外スペクトルを収集した。トランス−ビニレンレベルは、950cm−1〜980cm−1の吸光度を積分することによって算出されるトランス−ビニレン指数(TVI)として定量した。ASTM規格F2381−04に従って、積分を1330cm−1〜1396cm−1の吸光度に対して正規化した。
【0275】
図9は、低温および110℃および120℃照射した試験サンプルについて、TVIを、電子線入射表面からの深さの関数として示している。カスケード効果は、室温照射を用いた場合よりも高温で勾配を示した。中温照射は室温においての照射よりも浸透を増加させることも明白であった。照射温度の上昇に伴ってTVIは増加した。
【0276】
実施例15.中温および低温照射した混合物における残留フリーラジカル(2.5MeV)
残留フリーラジカル濃度に対する温度およびビタミンE濃度の効果を確認するために、低温および中温照射したUHMWP/ビタミンE混合物の電子スピン共鳴を行った。試験サンプルには、室温において、110℃で、および120℃において、150kGyで照射した0.2重量%混合物、室温においておよび120℃で150kGyで照射した0.1重量%混合物、室温においておよび120℃において150kGyで照射した0.5%混合物を含めた。照射は、2.3MeV バンデグラーフ型発生装置を用いて行った。ESR試験サンプルは、寸法3mmx3mmx20mmの直角プリズム形態に機械加工した。ESRサンプルの長軸は、電子線入射表面の面内部にあり、総ての試験サンプルにおいて電子線入射表面下およそ3〜6mmにあった。図5および図10は、試験サンプルから記録したESRシグナルを示している。表2は、ESRを用いて測定したスピン濃度を示している。照射温度の上昇に伴って、スピン濃度の低減と関連したESRシグナルの著しい低下があった。ビタミンE濃度の増加によっても残留フリーラジカル濃度は低減した。
【0277】
【表2】
【0278】
実施例16.中温および低温照射した混合物の熱的特性(2.5MeV)
照射した混合物のいくつかの熱的特性を調査するために、示差走査熱量測定(DSC)を用いた。試験サンプルには、室温において250kGyで照射した0.2重量%混合物、110℃において100kGyで照射した0.2重量%混合物、120℃において150kGyで照射した0.2重量%混合物、120℃において175kGyで照射した0.2重量%混合物、および110℃において150kGyで照射した0.2重量%混合物を含めた。
【0279】
DSC分析では、試料を、最初は、−20℃に冷却し、その温度で2分間維持した。次いで、これらの試料を180℃に加熱し、続いて−20℃に冷却し戻し、180℃に再加熱した。この手順の加熱部分も冷却部分も10℃/分の速度で行った。総ての分析は、−20℃から180℃への第1回目の加熱部分および第2回目の加熱部分のサーモグラムに基づいた。ピーク融点および接線開始融点(the tangential onset melting point)を記録した。20℃〜160℃のサーモグラムを積分することによって結晶化度を定量し、100%結晶性UHMWPEの場合には融解エンタルピー291J/gと仮定して結晶化度を算出した。
【0280】
図11および図12は、第1回目の加熱および第2回目の加熱でのDSC中に測定した結晶化度(X)の変化を示す。照射温度の上昇とともに結晶化度が低下し、この効果は第1回目の加熱においてより顕著であった(図11)。サンプルを120℃で照射した場合には、さらに、放射線量の増加に伴って、結晶化度が低下し、低下速度は第2回目の加熱よりも第1回目の加熱において高かった。
【0281】
図13および図14は、研究した試験サンプルの第1回目の加熱のサーモグラムを示しており、図15および図16は、研究した試験サンプルの第2回目の加熱のサーモグラムを示している。放射線量の増加に伴って、低い方の融解ピークの強度は、高い方の融解ピークの強度を犠牲にして増加し、これにより高い方の融解中の結晶(これらはより厚い結晶となると思われる)の集団が減少したこと、そしてこれらの結晶が低い方の融点の結晶へと変換された可能性が高いことが示された。同様に、照射温度の上昇に伴って、低い方の融解ピークは第1回目および第2回目のDSCの加熱サーモグラムの両方に現われた。低い方の温度ピークの高さは放射線量とともに高まった。表3には、照射した混合物の第1回目の加熱および第2回目の加熱について測定したピーク融点および結晶化度、ならびに第1回目の冷却サイクルについての結晶化エンタルピーを記載している−結晶化エンタルピーは、291J/gを用いて正規化することによって、結晶化度へと変換したことに留意すること。
【0282】
【表3】
【0283】
実施例17.混合物中のビタミンEに対する低温および中温照射の効果(2.5MeV)
1262cm−1のビタミンE吸光度を定量することによって照射によるビタミンE濃度の変化を定量するために、またFTIRを用いた。フーリエ変換赤外分光法(FTIR, Bio-Rad FTS2000, Natick MA)を用いてα−トコフェロール濃度プロファイルを決定した。分析のために、滑走式ミクロトーム(モデル90−91−1177, LKB-Produkter AB, Bromma, Sweden)を用いて薄片(〜150μm)を切断した。サンプルの一方の端から他方の端まで深さ間隔で赤外スペクトルを収集し、各スペクトルを32の個別赤外線スキャンの平均として記録した。α−トコフェロール指数を算出するために、スペクトルを分析した。α−トコフェロール指数は、1850cm−1〜1985cm−1のポリエチレン骨格吸光度に対して正規化した、1245cm−1〜1275cm−1のα−トコフェロール吸光度下の面積として定義された。
【0284】
図17は、ビタミンE指数を、電子線入射表面からの深さの関数として示している。表面は電子線の全浸透深さより厚いため、我々は、異なる照射温度におけるビタミンEの濃度に対する電子線の効果を確認することができた。ビタミンE指数プロファイル分析では、電子線入射表面からおよそ1cmを超えて存在する、ポリエチレンの照射を受けていない部分において、0.5重量%混合物のビタミンE指数はおよそ0.1であることが分かった。しかしながら、ブロックの照射を受けた部分では、ビタミンE指数は約0.04のレベルに低下し、低下の程度は照射温度と無関係であった。よって、FTIRのビタミンE検出能力に対する照射の効果は照射温度に依存しないように思われる。
【0285】
実施例18.中温および低温照射した混合物の架橋密度(2.5MeV)
図18は、異なる照射UHMWPEの架橋密度に対する放射線量の効果を示している。照射したUHMWPE/ビタミンE混合物のいくつかの架橋密度について、熱キシレンを用いて調査した。試験サンプルを、照射したブロックの電子線入射表面下3〜6mmから得た。図18の凡例には、この調査に含めた試験サンプルを記載している。サンプルを切断し、微量天秤で秤量した後、キシレン中に130℃で2時間入れた。次いで、サンプルを熱キシレンから移動させ、ティッシュペーパーでふき取った後すぐに、前秤量したバイアルに入れ、そのバイアルを、キシレンの蒸発を防ぐために封止した。前秤量したバイアルを秤量し、膨潤したポリエチレン試験サンプルの重量を決定した。膨潤の程度を、膨潤比(試験サンプルの最初の量に対する最終量の割合)を算出することによって決定した。134℃におけるポリエチレンの密度およびキシレン密度を用いて、試験サンプルの最終重量から試験サンプルの最終量を算出した。同様に、試験サンプルの最初の量を、室温においてのポリエチレンの密度を用いることによって決定した。我々は、室温においても130℃においてもポリエチレンの密度がおよそ0.99g/cm3であると考える。130℃におけるキシレンの密度は0.75g/cm3であるとした。ASTM F2565によって提供される式を用いることによって架橋密度を算出するために、膨潤比を用いた。また、膨潤試験には、40℃において100kGyで照射し、続いて融解させたバージンUHMWPEブロックおよび120℃で95kGyで照射した後融解させたバージンUHMWPEのブロックも含め、いずれの照射にも電子線を用いた。
【0286】
バージンUHMWPEの膨潤試験では、放射線量レベルは同等であるにもかかわらず、室温において100kGyで照射し、続いて融解させたサンプル(LONGEVITYに匹敵)で、120℃において95kGyで照射し、続いて融解させたサンプル(DURASULに匹敵)よりも高い見かけの架橋密度を示した。架橋密度のこの違いは、架橋工程によって形成されるH結合とY結合の割合に起因する。H結合は、二つの炭素一次フリーラジカルの再結合の結果であり、これにより4アームの架橋を生じる。Y結合は、ポリエチレン鎖の主鎖に沿った一次炭素フリーラジカルと別のポリエチレン分子の鎖末端に存在するフリーラジカルとの反応の結果であり、これにより3アームの架橋を形成する。高温では、エチレンをベースとするポリマーの照射中に、H結合に対するY結合の割合が高まることが報告されている。Y結合は、H結合よりもネットワークを制限することが少なく、結果として同等の架橋密度においてY結合をより多く有するポリマーの膨潤は、H結合をより多く有するものよりも大きい。そのため、ほぼ同じ放射線量レベルでの低温照射と中温照射との違いは、見かけの架橋密度測定量に関しては、H結合とY結合の相対濃度と明らかに関係がある。
【0287】
架橋密度は、予想通り、放射線量レベルの増加とともに。驚くべきことに、120℃とRTで100kGyより高い線量で照射を行った場合に、ビタミンE混合物の架橋密度はより高く、100kGyより低い線量ではその全く逆であった。150kGyでは、放射線量レベルの増加とともに架橋密度が高まった。DURASULとLONGEVITYの比較(ビタミンE無添加)では、120℃で照射したDURASULの場合に40℃ LONGEVITYよりも架橋密度が高かった。ビタミンEの添加は、低温照射サンプルと高温照射サンプル間の架橋密度の交差をより高い放射線量レベルへとシフトさせるように思われる。
【0288】
実施例19.中温照射対低温照射した純粋ビタミンEその後のIR、GC/MS
周囲実験室空気条件(20%酸素、79%窒素)下でビタミンE(α−トコフェロール)の純粋な分割量(aliquot)をバイアルに入れる。1組のバイアルを120℃に加熱した後、電子線源を用いて100kGy、150kGy、および200kGyで照射する。もう1組のバイアルを室温において同じ照射線量に照射する。その後、α−トコフェロールのクロマン基におけるヒドロキシル基の喪失を、照射温度の関数として定量的に評価するために、赤外線分光法およびガスクロマトグラフィー/質量分析を用いてビタミンEサンプルを分析する。
【0289】
実施例20:インプラント例
整形外科用、歯科用または他の用途のハイブリッドインプラントは、ポリエチレン粉末またはフレークを多孔質金属シェルまたは裏打ちに直接固化させることによって、調製することができる。多孔質金属裏打ちは、インプラントとの骨結合を促進し、固定を行う。実施例1に従ってビタミンEと混合したUHMWPEのフレーク(GUR 1020またはGUR 1050)は、股関節部インプラント、膝インプラント、または上下肢インプラント形状の多孔質金属構築物に圧縮成形することができる。このハイブリッドシステムは、材料の融点より低い温度(140℃未満)で、照射中に材料の融点を超える温度上昇をさせない速度で、50kGy〜200kGy間の線量に中温照射することができる。電子線下、100℃の温度で1〜2回のパスで150kGyの照射線量を用いることができる。あるいは、裏打ちから離れているポリエチレンはその融点を超えて上昇する一方で、多孔質金属裏打ちと接触しているポリエチレンはその融点を超えて上昇することがないように、照射中に金属裏打ちを選択的に冷却することができる。この装置は融解しない温度でさらにアニールすることができ、または電離放射線、エチレンオキシド、またはガスプラズマによる清浄および滅菌後にそのままで用いることができる。
【0290】
モジュール式システムに用いるポリエチレンインプラント(金属インプラントに組み込まれる)にも同様の工程を用いることができる。この製造工程では、ビタミンEにより安定化したポリエチレンをスラブ、バー、ロッド、または予備成形物に成形する。材料は、上記実施例に従って中温照射し、その後機械加工することができ、または中温照射前に機械加工することができる。あるいは、ビタミンEにより安定化したポリエチレンは、最終完成形状に直接圧縮成形した後、中温照射することができる。モジュール式インプラントは、股関節部、膝、および上下肢に用いることができる。
【0291】
実施例21:ビタミンEを含有するUHMWPEの連続照射およびアニール
0重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、および0.5重量%の濃度のビタミンEを含有するパック形UHMWPE(GUR 1050)サンプル(直径2.5、1cm厚)を用いた。パックを電子線照射線量100kGy、150kGy、および200kGyで供した。線量を50kGy増加させるごとに、パックを空気中で130℃で8時間アニールした。よって、例えば、150kGy照射サンプルは3回アニールした。研究のために調製したサンプルのリストを表4に示す。
【0292】
【表4】
【0293】
サンプルの架橋密度は、130℃でのキシレン中での膨潤によって、重量測定により決定した。架橋密度の値のグラフを図19に示している。データは、線量の低減およびビタミンE含量の増加に伴う架橋密度の低下を示している。低ビタミンE濃度(0.01〜0.02重量%)ではビタミンE含量の増加に伴って架橋密度のわずかな増加が起こるように思われるが、これらの差は統計的に有意ではなかった。
【0294】
図19の挿入図では、0重量%および0.1重量%ビタミンEを含有するサンプルについての架橋密度に対するアニールの効果を示している。これらのサンプルを100kGyで照射し、続いて0回、1回、および2回アニールした。2回アニールするサンプルには、50kGyの線量の後に、そしてまた残る50kGyの線量の後にアニールした。1回アニールするサンプルには、全100kGyの線量を施した後にアニールした。これらのデータからは、バージンサンプル組内または0.1重量%サンプル組内において架橋密度に有意差は認められなかった。よって、アニールは架橋密度に対してごくわずかな効果しかないと思われる。
【0295】
図20Aおよび図20Bは、連続照射およびアニールに供したサンプルについての、最大引張強度(UTS)および破断点伸びを、架橋密度の関数として示している。UTSおよび伸びのデータはいずれも架橋密度の増加とともに低下し、これについては予想される。興味深いことに、UTSデータは、一般的な傾向に沿い、総てのデータポイントは本質的に同じ傾向線にある。伸びデータは、それぞれ異なる傾向に沿い、この場合も総てのデータポイントはそれにかなり密接に沿う。これは、ある特定の架橋密度では、ビタミンE濃度、アニール工程の回数、および総照射線量にかかわらず、同じような機械的特性が予想されるということを示唆している。
【0296】
実施例22.ビタミンE/UHMWPEの混合物の低温照射、その後の中温照射
理論的解釈−この研究は、UHMWPE/ビタミンE混合物の機械的特性が低温照射、その後の中温照射によって影響を受けるか否かを確かめるために行った。低温照射、その後の中温照射の利益は、線量レベルが高いときに中温電子線照射中のUHMWPEバーの過熱関連亀裂を避けることである−この方法では、線量の一部を事前に低温(100℃未満)で投与し、そのようにして高温(室温より高い)で投与するときに残る線量によって亀裂が起こらないようにする。
【0297】
0.15重量%および0.3重量%ビタミンEと混合したUHMWPEを用いた。これらのビタミンE混合UHMWPEのおよそ1cm厚のブロックをまず室温において照射し、続いて、対流炉中で100℃に少なくとも18時間加熱し、この温度で照射した。サンプルが受けた総線量は175kGyであった、低温照射線量は25kGy間隔で増加した。電子線照射(2.5MeV)を25kGy/パスで用いた。照射したブロックから薄片(3.2mm)を機械加工し、これらの薄片からドッグボーンを打ち抜いた。引張機械的検査、架橋密度測定(キシレン中での膨潤による)および結晶化度測定(示差走査熱量測定)を行った。
【0298】
低温照射した後、中温照射を行ったビタミンE/UHMWPEの混合物のUTSは175−kGy低温照射したUHMWPEと比較して少し低く、175−kGy中温照射したUHMWPEよりも少し高かったが有意差はなかった(図21)。0.3重量%ビタミンEを混合し、その後照射したUHMWPEのUTSは、0.15重量%混合物よりも著しく高かった(図22)。続いて175kGyで照射した0.15重量%混合物の架橋密度では、低温照射線量の増加の関数として有意な傾向は認められなかった。架橋密度は、同じ方法を用いて融解させないLONGEVITYについて前に得られた結果と同等であった。そのため、耐摩耗性が高いことが予想される。低温照射線量を増加すると、破断までの伸び(The elongation-to-break)(EAB)は徐々に低下し、これは機械的特性の喪失を最小限に抑えるために最終的な中温照射を行うことによって、いくらか利益が得られるかもしれないことを示唆している。
【0299】
実施例23:ビタミンE−UHMWPEの混合物の酸化安定性に対する照射後アニールの効果
0.01重量%、0.02重量%、および0.05重量%ビタミンEを含有するGUR 1050のブロックを、3MeV電子線を用いて100kGyで照射した。各ブロックの半分を130℃で8時間アニールした、残りの半分はアニールしなかった。アニールしたサンプルとアニールしなかったサンプル両方の一部を、ASTM F2003−02に基づく改変プロトコールに従って老化させた(5気圧 O2 70℃で4週間)。
【0300】
老化させたサンプルについてFTIRにより測定した酸化指数(OI)の値を図23に示している。OIは、1370cm−1の参照ピークに対する1740cm−1のピークの割合として算出した。0.01%アニール老化サンプルはプロットした他のサンプルよりも著しく高いOI値を有していた。0.01%非アニール老化サンプルについては、脆すぎてミクロトーミングできなかったため、データは得られず、総てのサンプルの中で最も著しい酸化を受けたことが分かる。0.02重量%および0.05重量%非アニール老化サンプルは両方とも、4週間の老化後、比較的低い(<0.25)が測定可能な表面OI値を有したが、一方0.02重量%および0.05重量%アニール老化サンプルでは測定可能な酸化は認められず、アニールによってそれらの酸化耐性が向上することが分かる。
【0301】
表5に総てのサンプルの引張特性を報告している。ある特定のビタミンE濃度では、老化前にアニールしたサンプルとアニールしなかったサンプルとの間に統計的に有意な差はない。これは、アニール単独ではUHMWPE/ビタミンE混合物の機械的特性に対して測定可能な効果がないことを示している。
【0302】
【表5】
【0303】
老化後、0.01重量%混合物(アニールしたものとアニールしなかったものの両方)の機械的特性において著しい低下があり、OIデータと一致した。高度に酸化した0.01%アニール老化サンプルはより低い機械的特性を示したが、0.01重量%非アニール老化サンプルは脆すぎて全く試験することができなかった−よって、照射した0.01%混合物に関しては、アニールは保護効果があった。0.02重量%および0.05重量%サンプルは上記のような強い特性の低下を示さず、これらのOI値が0.25を決して超えないことを考えれば驚くことではない。しかしながら、0.02重量%サンプルでは機械的特性のわずかな低下が起こる。例えば、0.02%非アニール老化サンプルの最大引張強度(UTS)および伸びは、非アニール非老化サンプルより低かった。しかしながら、0.02%アニール老化サンプルでは0.02%アニール非老化サンプルに対して機械的特性のこのような低下はなかった。また、0.05%非アニール老化サンプルおよび0.05%アニール老化サンプルのいずれにおいてもそれらの非老化対照物に対して械的特性の著しい低下は認められない。
【0304】
機械的特性の結果から、アニールしなかった場合、老化後に最も低い濃度0.02%で機械的特性が低下したことを考えれば、非アニール材料(a unnannealed material)の場合の、この放射線量100kGyでの最低許容ビタミンE濃度は0.05重量%であることが分かる。しかしながら、アニールした材料の場合、サンプルをアニールしたときに濃度0.02%において機械的特性の著しい低下が認められないため、最低許容ビタミンE濃度は0.02重量%である。よって、アニールの重要な利益は、より低いビタミンE濃度の使用を可能にし、次には処理中に、より低い放射線量を使用することを可能にする、ということである。
【0305】
本記載、特定の実施例、およびデータは、例示的な実施形態を示しているが、単に例示として示しており、本発明を限定すべきものではないと理解すべきである。本発明の範囲内の様々な変形および改変は、本明細書において含まれる考察、開示、およびデータから当業者には明らかとなり、従って、本発明の開示の一部と考えられる。
【関連出願】
【0001】
本願は、2007年5月1日出願の米国出願第60/915,169号および2007年3月2日出願の同第60/892,682号の優先権を主張するものであり、これらの出願の総ては引用することにより本明細書の開示の範囲とされる。
【発明の背景】
【0002】
技術分野
本発明は、架橋した酸化的に安定なポリマー材料の製造方法に関する。照射架橋した酸化防止剤含有ポリマーを処理する方法およびそれとともに用いられる材料も提供される。
【0003】
背景技術
酸化防止剤含有ポリマー組成物は、電離放射線に曝されると、酸化防止剤のフリーラジカル防御効果から、それらの架橋効率が低下する。ある特定の用途、例えば、耐荷重性ポリマーのような医学的応用では、架橋は耐荷重性ポリマーの摩耗率を低下させるのに有益である。放射線架橋は、ポリマー材料の摩耗率を低下させて、全ての関節再構築物の寿命を延ばすことが明らかになっている。しかしながら、放射線によって生成される残留フリーラジカルによって、耐荷重性ポリマーの長期酸化安定性が損なわれる。そのため、有害な酸化を回避するか、または最小限に抑えるために、残留フリーラジカルを除去するかまたは安定化させることが極めて重要である。照射および融解によるフリーラジカル除去についての一つの方法がMerrillらによって開示されている(米国特許第5,879,400号参照)。これは許容される方法である。しかしながら、かかる融解履歴は、ポリエチレンの結晶化度を低下させて、その機械的特性および疲労特性にも影響を及ぼす(Oral et al., Biomaterials, 27:917-925 (2006)参照)。
【0004】
照射後の融解を回避する他の方法は、とりわけ、MuratogluおよびSpiegelbergによって開示されている方法がある(米国特許第2004/0156879号参照)。これらの方法においては、照射を受けたポリマー材料中のフリーラジカルを安定化させ、長期間の酸化を防ぐために、α−トコフェロールなどの酸化防止剤を使用する。これらの方法のある特定の実施形態によれば、α−トコフェロールは、照射後に接触および拡散によってポリマー材料に組み込むことができる。
【0005】
α−トコフェロールは、酸化を防ぐために、照射を受けたUHMWPE中の残留フリーラジカルの反応性を減少させるか、または排除するために使用することができる。照射を受けたUHMWPEへのα−トコフェロールの組込みは、固化前にα−トコフェロールと前記UHMWPEの粉末とを混合することまたはその粉末の固化後にα−トコフェロールをUHMWPE中に拡散することのいずれかによって達成することができ、これらの方法はどちらも米国出願番号第10/757,551号(米国特許第2004/0156879号)において教示されている。後者の方法は、また固化したUHMWPEに照射した後に行うこともできる。放射線によってUHMWPEが架橋されて、その耐摩耗性が増加するため、α−トコフェロールが存在しないバージン状態の固化UHMWPEに照射することが有益である場合がある。その一方で、架橋と融解は、UHMWPEのある特定の機械的特性および耐疲労性を低下させることが明らかになっている。(Oral et al., Mechanisms of decrease in fatigue crack propagation resistance in irradiated and melted UHMWPE, Biomaterials、27 (2006) 917-925参照)。関節置換術におけるUHMWPEの摩耗は表面現象であり、一方疲労亀裂伝播抵抗は主として本体の特性である。そのため、表面で強く架橋し、本体ではあまり架橋していないUHMWPEが、関節置換術における代替ベアリングとして有益である場合がある。Oralら(Characterization of irradiated blends of α-tocopherol and UHMWPE, Biomaterials, 26 (2005) 6657-6663)によって、UHMWPE中に存在する場合、α−トコフェロールは照射中にそのポリマーの架橋効率を低下させることが示されている。Muratogluら(米国特許第2004/0156879号参照)によれば、とりわけ、照射を受けたUHMWPEへのα−トコフェロールの浸透深さを増加するための高温ドーピング工程および/またはアニール工程が開示されている。Muratogluら(2006年8月18日出願の米国出願番号第11/465,544号、WO2007/024689号として公開されたPCT/US2006/032329号参照)によれば、とりわけ、照射を受けたUHMWPEへのα−トコフェロールの浸透深さを増加するための超臨界二酸化炭素中でのアニールが開示されている。UHMWPEの医療用インプラントは、最大30mmの厚さを有するものであるが、それより大きい場合も時にはある。しかしながら、拡散によるかかる大きなインプラントへのα−トコフェロールの浸透には長い時間がかかり得る。また、いくつかの実施形態においては、α−トコフェロールを、照射を受けたUHMWPEの予備成形物中に拡散し、続いてインプラント完成品を得るためにその予備成形物を機械加工することも好ましい。この予備成形物は、インプラント完成品よりも大きくなければならず、そのため、α−トコフェロールの拡散経路は増加する。
【0006】
フリーラジカルを除去するために、融解(例えば、Muratogluら米国特許第2004/0156879号参照)、機械的変形、および回復(例えば、Muratogluら、米国特許第2005/0124718号参照)または高圧結晶化(例えば、Muratogluら、米国出願番号第10/597,652号、WO2005/074619号として公開されたPCT/US05/003305号参照)(これらの文献は引用することにより本明細書の開示の範囲とされる)など、いくつかのさらなる方法を用いることもできる。
【0007】
照射後の融解もまた、フリーラジカルの除去方法として提案されている。この方法は、前記ポリマーの酸化安定性を損なわないことに成功しているが、前記ポリマーの結晶化度を低下させ、次には前記ポリマーのある特定の機械的特性を低下させる。ある特定のヒト関節用途およびある特定の高応力設計では、ある特定の機械的特性の低下は避けるべきことである。照射後融解の代替アプローチもまた開発されている。例えば、照射後の機械的変形または照射後の酸化防止剤拡散は、照射を受けたポリマーの機械的特性に悪い影響を与えない。別の方法は、前記ポリマーの樹脂、その粉末、またはそのフレークと、酸化防止剤とを混合し、それを電離放射線に曝すことである。
【0008】
上述のように、放射線架橋を前記酸化防止剤の存在下で行う場合には、所望の摩耗減少水準を得るためにより高い放射線量レベルを利用することが必要である。しかしながら、より高い放射線量レベルでは、その酸化防止剤はその効果を単調に失い、前記ポリマーの長期酸化安定性が損なわれる。酸化防止剤含有ポリマーの促進老化に関する初期の研究(100kGyで照射し、圧力容器において酸素中80℃で2週間老化させた0.1重量%および0.3重量%のビタミンE/UHMWPEの混合物、Oral et al. Biomaterials 2005 26(33):6657-6663参照)では、そのポリマーの酸化安定性が影響を受けないことが示された。これらの照射を受けたポリマーを数ヶ月間保存する(例えば、棚に載せて室温において保存する)と、それらは酸化の兆候を示し始めることを我々は見出した。よって、照射を受けた酸化防止剤含有ポリマーは酸化不安定性である可能性がある。促進老化方法は、UHMWPEの長期の実際の老化挙動を示すために広く受け入れられているため、これは予期せぬ結果であった。しかし、促進老化データは、必ずしも実際の老化経験に相関したり、それを再現したりするものではない。
【0009】
ある特定の酸化防止剤を、ある特定のポリマーへ添加することにより、電離放射線に曝された場合にそのポリマーの架橋能力が阻害される。架橋は、一般に、二つのフリーラジカルの再結合反応によって行われる。ある特定の酸化防止剤(ビタミンEなど)では、数多くの可能な機構によってこの再結合反応を阻害することができた。酸化防止剤を含有するポリマーのこの架橋効率低下によって、放射線架橋したバージンポリマー(酸化防止剤を含まない)と同じ架橋密度を達成するためにはより高い放射線量レベルが必要である。より高い放射線量レベルでは、酸化防止剤の活性は、ホストポリマーの架橋効率の向上に有利に低下する。しかしながら、酸化防止剤の活性の低下は、ホストポリマーの酸化安定性を損なうこともあり得た。そのため、酸化防止剤の活性喪失を最小限に抑えながら所望の架橋密度を達成するためには、新しい代替方法およびアプローチが望ましい。
【0010】
本願では、酸化安定性を有する、酸化防止剤をドープした架橋ポリマー材料、例えば、酸化防止剤をドープした架橋超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を、酸化防止剤含有UHMWPEの照射後の熱処理(アニールなど)によって製造するための、当分野では見出されていない方法、およびそれに用いられる材料を開示している。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、概していえば、架橋した酸化的に安定なポリマー材料の製造方法、およびそれによって製造される生成物に関する。さらに詳細には、本発明は、照射架橋した酸化防止剤含有ポリマーの熱処理の方法に関し、それによって、それとともに用いられる材料が提供される。さらに詳細には、本発明は、酸化安定性を有する、酸化防止剤をドープした架橋ポリマー材料、例えば、酸化防止剤含有UHMWPEの照射後のアニールによって製造される、酸化防止剤をドープした架橋超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の製造方法、およびそこに用いられる材料に関する。
【0012】
一つの実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEの製造方法であって、この高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEが、a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、b)当該混合物を固化させ、c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そしてd)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成することを含んでなる工程による製造方法を提供する。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、b)当該混合物を固化させ、c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そしてd)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し(quenching)、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成することを含む工程によって製造される高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0014】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成し、c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有するポリマー材料を形成し、d)固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そしてe)固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成することを含んでなる工程によって製造される高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0015】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成し、c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有するポリマー材料とを形成し、d)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そしてe)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成することを含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0016】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であり、前記混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、前記混合物が約0.13mol/dm3より高い架橋密度を有する、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0017】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であり、前記混合物が室温より高い温度で少なくとも約100kGyの線量で放射線架橋され、その結果として得られる架橋密度が室温照射を受けたポリマー材料のものより高い、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0018】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であり、前記混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、DSCの第1回目の融解サイクル中に(例えば、DSCにおける第1回目の加熱中に)前記混合物が少なくとも二つの融解ピークを有する、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0019】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であって、前記混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、DSCにおける1融解サイクル後に(例えば、DSCにおける第2回目以降の加熱工程中に)前記混合物が約58%未満の結晶化度を有する、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0020】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であって、前記混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、前記混合物がDSCにおける再融解サイクル中に(例えば、DSCにおける第2回目以降の加熱工程中に)少なくとも二つの融解ピークを有する、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0021】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であって、前記混合物が連続して照射され、アニールされる、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0022】
別の実施形態においては、本発明は、一またはそれ以上の種類のポリマーと、添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)との混合物を含んでなる高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料であって、前記ポリエチレンの中温照射誘起破壊(warm irradiation induced fracture)を最小限に抑えるために放射線量の少なくとも一部が100℃未満で投与され、その残りの放射線量が40℃を超えて投与されるように、前記混合物が放射線架橋される、高度に架橋した酸化的に安定なポリマー材料を提供する。
【0023】
別の実施形態においては、前記ポリマー材料は、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形され、それによって界面または連結ハイブリッド材料を形成し、あるいは前記酸化防止剤混合物ポリマー材料は、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形され、それによって界面または連結ハイブリッド材料を形成し、あるいは前記固化酸化防止剤ドープポリマー材料は、別の部品に圧縮成形され、それによって界面および連結ハイブリッド材料を形成し、あるいは前記固化ポリマー材料は、別の部品に圧縮成形され、それによって界面および連結ハイブリッド材料を形成する。
【0024】
別の実施形態においては、照射を受け、融解した材料は、前記酸化防止剤ドープまたは混合ポリマー材料またはインプラントの表面上に圧縮成形される。別の実施形態においては、照射を受け、機械的に変形させ、熱処理した(融点より低い温度で)材料は、前記酸化防止剤ドープまたは混合ポリマー材料またはインプラントの表面上に圧縮成形される。別の実施形態においては、照射を受け、高圧結晶化したポリマー材料は、前記酸化防止剤ドープまたは混合ポリマー材料またはインプラントの表面上に圧縮成形される。
【0025】
別の実施形態においては、本発明は、空間的に制御された酸化防止剤分布を有する耐酸化性の架橋したポリマー材料であって、本明細書において記載する方法のいずれによっても得ることができるポリマー材料を提供する。
【0026】
本発明の一つの態様によれば、前記ドーピングは、前記医療用インプラントを前記酸化防止剤中に、好ましくは、約30分〜約100時間以上、より好ましくは、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、もしくは約16時間浸漬することによって行われ、および/または前記酸化防止剤を約120℃に加熱し、前記ドーピングは約120℃で行われ、ならびに/あるいは前記酸化防止剤をほぼ室温に加温し、前記ドーピングは、室温においてまたは室温〜前記ポリマー材料のピーク融点または約137℃未満の温度で行われ、および/または前記架橋したポリマー材料は、前記架橋したポリマー材料の融解しない温度で加熱される。選択したポリマー材料に応じて、熱処理、均質化、および他の温度は、その選択したポリマー材料の融点を考慮して決定される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、前記ポリマー材料はポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、またはそれらの混合物であり、前記ポリオレフィンは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはそれらの混合物からなる群から選択され、かつ前記ポリマー材料は、粉末、フレーク、粒子など、もしくはそれらの混合物または固化樹脂を含むポリマー樹脂である。
【0028】
本発明の別の態様によれば、ポリマー材料は、水中での平衡後に水が原重量の少なくとも1〜10,000%、一般には原重量の100重量%または重量の99%以下を構成するように水を吸収することができる、ヒドロゲル(ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)、それらの混合物、またはそれらの相互貫入ネットワークなど)である。
【0029】
本発明の別の実施形態においては、前記インプラントは、寛骨臼ライナー、肩関節窩、膝蓋骨コンポーネント、指関節コンポーネント、足関節コンポーネント、肘関節コンポーネント、手根関節コンポーネント、足指関節コンポーネント、人工骨頭、膝脛骨インサート(tibial knee insert)、金属とポリマーの補強ポストを備えた膝脛骨インサート、椎間板、あらゆる関節に対する挿入物装置、縫合糸、腱、心臓弁、ステント、血管移植片からなる群から選択される医療用具を含む。
【0030】
本発明の別の実施形態においては、前記医療用インプラントは、非永久医療用具、例えば、カテーテル、バルーンカテーテル、チューブ、静脈チューブ、または縫合糸である。
【0031】
一つの実施形態においては、前記酸化防止剤ドープまたは混合ポリマー材料は、前記ポリマー材料の融点より低い温度で約1時間〜数日間均質化される。
【0032】
本発明の別の実施形態においては、前記耐酸化性の架橋した医療用インプラント予備成形物は、その照射工程後に、前記酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させ、前記医療用具全体にわたっての酸化安定性を与えるよう、融解しない温度で加熱されて、さらに均質化される。
【0033】
本発明の別の実施形態においては、前記酸化防止剤ドープポリマー材料、前記耐酸化性医療用インプラント予備成形物、または前記医療用インプラント予備成形物は、照射前および/または照射後に、前記ポリマー材料の融点より低い温度で熱的にアニールすることによって均質化される。
【0034】
本発明の別の実施形態においては、前記酸化防止剤は、表面から約5mm以上の深さに、例えば、約3〜5mm、約1〜3mmの深さに、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の深さに拡散される。
【0035】
別の実施形態においては、本発明は、本明細書において記載する方法のいずれによっても得ることができる、高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性(例えば、少なくとも約51%の結晶化度)のポリマー材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】は、酸化プロファイルを、様々なレベルのビタミンEを含有する粉末から製造したUHMWPEサンプルの深さの関数として示す図である。固化後、サンプルに異なる線量レベルで照射した後、水タンク中、40℃において10ヶ月間老化させた。対照には照射した後、老化前にビタミンEでドープした。
【図2】は、固化後に室温において200kGyで照射した後、130℃で8時間アニールした、ビタミンEとUHMWPEの粉末との混合物の電子スピン共鳴シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。ピークサイズの減少は残留フリーラジカルの低減を示す。
【図3】は、固化後に室温において100kGyで照射した後、130℃において8時間アニールした、ビタミンEとUHMWPEの粉末との混合物の電子スピン共鳴シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。ピークサイズの減少は残留フリーラジカルの低減を示す。
【図4】は、残留フリーラジカル含量(スピン/g)を処理条件の関数として示す図である。
【図5】は、固化後、室温、110℃、および120℃において、25kGy/パスの線量率で150kGyにより照射した、ビタミンE(0.2重量%)と、UHMWPEの粉末との混合物の電子スピン共鳴シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。ESRシグナルは、残留フリーラジカルの存在によるものである。ピークサイズの減少は、照射温度の上昇に伴う残留フリーラジカルの低減を示す。
【図6】は、固化後、室温、110℃、および120℃において、100〜200kGyで照射した、ビタミンE(0.2重量%)と、UHMWPEの粉末との混合物についての、室温において100kGyおよび200kGyで照射し続いて130℃において8時間アニールしたサンプルと比較した、電子スピン共鳴シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。
【図7】は、ポリエチレンサンプルを電子線下に固定したままでの電子線照射中のポリエチレンサンプルの加熱を示す図である。熱電対は、電子線入射表面下3mm、5mm、および7mmに入れた。
【図8】は、電子線照射したポリエチレンサンプルの加熱を示す図である。照射は、電子線下で6回のパスで行い、照射前にポリエチレンを強制対流炉で加熱した。
【図9】は、トランス−ビニレン不飽和化(the trans-vinylene unsaturations)を、照射していない0.5%ビタミンE/UHMWPEの混合物または室温(RT)、110℃、および120℃において150kGyで電子線照射した0.5%ビタミンE/UHMWPEの混合物の深さの関数として示す図である。
【図10】は、凡例に示すとおり、異なる温度で25kGy/パスの線量率で150kGyにより照射した、0.1重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物、0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物、および0.5重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の電子スピン共鳴(ESR)シグナル(カウントと磁場(ガウス))を示す図である。ESRシグナルは残留フリーラジカルの存在によるものである。
【図11】は、第1回目の加熱および第2回目の加熱でのDSC結晶化度(X)を、RTで25kGy/パスの線量率で照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の放射線量の関数として示す図である。照射していない対照サンプルも参照用に含める。
【図12】は、第1回目の加熱および第2回目の加熱でのDSC結晶化度(X)を、120℃において25kGy/パスの線量率で照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の放射線量の関数を示す図である。照射していない対照サンプルも参照用に含める。
【図13】は、120℃において様々な放射線量に照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の第1回目の加熱でのDSCサーモグラムを示す図である。
【図14】は、様々な温度において150kGyで照射をした0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の第1回目の加熱でのDSCサーモグラムを示す図である。
【図15】は、120℃において様々な放射線量に照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の第2回目の加熱でのDSCサーモグラムを示す図である。
【図16】は、様々な温度において150kGyで照射した0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物の第2回目の加熱でのDSCサーモグラムを示す図である。
【図17】は、RT、110℃、および120℃において照射した0.5%ビタミンE/UHMWPEの混合物についての、電子線入射表面からの深さの関数としてのビタミンE指数(ビタミンE濃度の尺度)を、照射していない0.5%ビタミンE/UHMWPEの混合物サンプルの基礎ビタミンE指数プロファイルとともに示す図である。
【図18】は、様々な放射線架橋UHMWPEのサンプルについて、架橋密度を線量の関数として示す図である。LONGEVITYは、40℃において100kGyで電子線照射し、続いて融解させた。DURASULは、120℃において95kGyで電子線照射し、続いて融解させた。照射温度と混合物のビタミンE濃度は凡例に示す。
【図19】は、En連続アニール研究からのサンプルの架橋密度を示す図である。総てのサンプルを、50kGy電子線線量を適用するごとにアニールした。挿入図では、異なる回数のアニール工程に供し、同じ全照射線量100kGyを用いたサンプルについて、プロットを示している。2サンプルセット、ビタミンEを含有しない1サンプルと0.1重量%ビタミンEを含有する1サンプルとを試験した。
【図20】は、連続照射/アニール研究からのサンプルの引張特性を示す図である。サンプルを、50kGy線量ごとにアニールした。(20A)最大引張強度および(20B)破断点伸びの両方を架橋密度の関数としてプロットしている。
【図21】は、総線量175kGyで、低温照射、続いて中温照射を行うことによって照射したビタミンE/UHMWPEの混合物の最大引張強度(UTS)を示す図である。x軸は、低温および中温で適用した全放射線量に対する低温で適用した放射線量の割合である。
【図22】は、総線量175kGyで、低温照射、続いて中温照射を行うことによって照射したビタミンE/UHMWPEの混合物の架橋密度(mol/dm3)を示す図である。
【図23】は、促進老化に供し、アニールしたサンプルおよびアニールしていないサンプルの酸化指数を示す図である。
【発明の具体的説明】
【0037】
本発明は、架橋した酸化的に安定なポリマー材料の製造方法を提供する。本発明は、照射架橋した酸化防止剤含有ポリマーの熱処理の方法、それによって得ることができる酸化安定性を有する架橋した耐酸化性ポリマー材料、およびそれとともに用いられる材料に関する。
【0038】
本発明は、高放射線量率および/または高温で照射を行った場合に、ホストポリマーの架橋効率が向上するものを提供し、この架橋効率の向上は酸化防止剤の活性の低下と関連している可能性がある。ホストポリマーの架橋効率の向上に関与するこの現象は、数多くの因子と関係しているが、いずれの機構の精度によっても本発明の実施形態または態様の実施は妨げられない。
【0039】
一つの可能な機構は、高温では酸化防止剤のフリーラジカル除去能力が低下し、このため、ホストポリマーの架橋効率が向上するというものである。高温には、ポリマー混合物を外部加熱することによって、および/または高照射線量率でのポリマーの放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)を行うことによって達成される。
【0040】
別の可能な機構は、ホストポリマーが半結晶性である場合に、その結晶性ドメインの一部または全部の融解によって酸化防止剤を含まないポリマーがもたらされ、そのドメインでは架橋効率は低下しないというものである。この融解は、照射中に、ポリマー混合物の放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によって誘導される。この放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、本明細書において教示する数多くの処理パラメーター、例えば線量率、サンプルの初期温度、吸収放射線量などによって決まる。放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、照射を受けたサンプルにおいて放射線量が熱へと変換したことによってもたらされる。大部分の半結晶性ポリマーは、結晶性ドメインのサイズ分布が広いため様々な融点を示す−小さな結晶は低温で融解し、大きな結晶は高温で融解する。例えば、バージンUHMWPEは、一般に、90℃付近で融解し始め、140℃付近まで融解し、ピーク融点は137℃付近である。融解中にサンプルの温度が十分に高いならば、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によって結晶の融解が生じ、これにより照射中に新たな非晶質ポリマーが続いて生成する。大部分の半結晶性ポリマー/酸化防止剤混合物では、酸化防止剤は非晶相に存在し、結晶性ドメインには収容され得ない。放射線による融解(断熱的な融解および部分的に断熱的な融解を含む)によって非晶質含量の増加がもたらされると、新たに形成された酸化防止剤を含まない非晶質ドメインにおいてポリマーの架橋効率が事実上高くなる。酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させるには、照射後の均質化工程が必要であり得る。照射直後(および/または照射中)の温度は、低酸化防止剤領域を自動的に均質化するほどに高くあり得る。
【0041】
ポリマーの初期温度が低い(例えば、室温または40℃付近である)場合でさえも、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、照射中にポリマーの温度を上昇させるほどに高くあり得る。よって、低温電子線照射を受けたポリマーでさえも温度上昇を受け、放射線量レベルに応じて、架橋を妨げる酸化防止剤の能力が低下するより高い温度でしばらく過ごし得る。そのため、ある特定の実施形態のもとに、高線量率を可能にする低温電子線照射は、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)に必要な高線量率が実際には可能でない低温γ線照射よりも有益である。
【0042】
目標架橋密度を達成し、ある特定の特性(例えばポリマーの摩耗率の低下)を得るためには、放射線量を高めて、酸化防止剤によって起こる妨害に対抗する。高温では酸化防止剤によって起こる妨害が低下するため、照射温度を最大限にして、目標架橋密度を達成するのに必要な放射線量レベルを最小限に抑えることが有益であり得る。初期温度および放射線量が高すぎる場合には、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によってポリマーの完全融解が生じる可能性があり、これによりポリマーの結晶化度が低下し、それゆえポリマーの機械的特性が低下する。
【0043】
ある実施形態においては、前記ポリマー混合物は、1パス当たり約1〜1000kGyの線量率で照射される。電子線によって達成することができる照射線量率は、γ線照射によるものよりもはるかに高い。電子線線量率は、一般に、1パス当たり約1〜数百kGyであり、各パスには数秒〜数分の間かかる。前記ポリマー混合物は、ある特定の初期温度にし、照射する。前記線量率は、ポリマーの放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)をもたらすほどに高いものである。照射中のサンプルの温度は、開始温度と用いた放射線量レベルによって決まる。下記式に従い、純粋に放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)状態を想定するものを用いて、その温度を予測することができる:
EQ1=D=ΔHm,i(Ti)+cpΔT
(式中、Dはサンプルによって吸収された放射線量レベルであり、Tiはサンプルの瞬時温度であり、ΔT(=Ti−T0)は、サンプルの瞬時温度(T1)とサンプルの初期温度(T0)の差であり、ΔHm,iはサンプルの瞬時温度までに融解する結晶の融解エンタルピーであり、cpはポリマーの比熱である)。この式は、純粋に放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)状態を想定しているが、照射を受けたサンプルの表面付近でその周囲への多少の熱損失があり、そのサンプルの本体は、特に高線量率では、この式によって予測される温度により密接に従うため、この式は実用的近似である。照射中にある特定の温度が望ましい場合には、前記式を用いて、その照射パラメーターを決める。この実施形態においては、前記放射線量レベルは1kGyを超え得る。より好ましくは、前記放射線量レベルは、25kGy、50kGy、100kGy、150kGy、200kGy以上であり得る。前記線量率は、1パス当たり約1kGy、約10kGy、約25kGy、約75kGy、約100kGy、約150kGy、約200kGy以上または中間的な任意の線量率であり得る。前記初期温度は、室温(RT)より低く、RTであり、RTより高く、約40℃、約50℃、約75℃、約100℃、約110℃、約125℃、約130℃、約135℃以上またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の温度であり得る。前記照射は、電子線、γ線、またはX線を用いて行うことができる。後者の二つは電子線よりも線量率が低く、そのため、高線量率を達成するためには、電子線がより実用的である。
【0044】
別の実施形態においては、前記ポリマー混合物は、γ線または電子線を用いて照射され、続いて、結晶性ドメイン内に取り込まれたフリーラジカルを再結合するためにアニールまたは融解が行われる。前記照射を低温度でおよび/または低線量率で行う場合、架橋密度は、前記照射を受けたポリマー混合物を融点より低い温度でアニールしまたは融解させた後よりも低い。
【0045】
ある特定の実施形態においては、照射工程中に前記ポリマー混合物を完全に融解させることは望ましくない。例えば、所望の架橋密度を達成するのに必要な高線量レベル(100kGyより高い)を用いて、前記ポリマー混合物を放射線による融解(断熱的な融解および部分的に断熱的な融解を含む)に供し、前記混合物の完全融解をもたらすことができた。照射後の融解は、前記サンプルの結晶化度を低下させ、次には前記混合物の機械的特性を低下させる。放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)を最小限に抑え、初期温度を下げ、および/または放射線量を下げるために線量率を低く維持することによって、照射中の前記混合物の完全融解を妨げることができる。ある特定の実施形態においては、前記ポリマー混合物は、より高い初期温度を必要とすることがあるが、かかる場合には放射線による加熱による融解の程度を下げるために低放射線量率を用いることができる。
【0046】
別の実施形態においては、前記ポリマー混合物の放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)の程度を下げるために、照射は複数の工程で行われる。例えば、前記ポリマー混合物には、放射線源(電子線、γ線、またはX線など)下または付近で複数回のパスで照射する。パス間隔は、前記ポリマー混合物を所望の照射温度に冷却し得るように調整することができる。いくつかの実施形態においては、照射パス間に前記サンプルを加熱することが望ましい。
【0047】
別の実施形態においては、前記ポリマーサンプルの初期温度は、照射中に前記ポリマー混合物の温度をそのピーク融点まで上昇させるように調整される。
【0048】
中温照射を受けた混合物のDSC試験では、一般に、第1回目の加熱において三つの融解ピークを示し、第2回目の加熱において二つの融解ピークを示す。第一回目の加熱の最も高い融解ピークの下にある面積を用いて、中温照射中の前記ポリマーにおける融解の程度を決定することができる。
【0049】
別の実施形態においては、混合物の結晶化度は、例えば高圧結晶化によって高められる。この高結晶性混合物は、その後、照射を受ける。この結晶性ドメインはほとんどまたは全く酸化防止剤を含有せず、結果として、その結晶性ドメイン中に生じたフリーラジカルは再結合反応および架橋反応で実行可能である。結晶性ドメイン中のフリーラジカルを再結合させるために、前記混合物には、前記ポリマーを部分的に融解させるのに十分な高い線量率で照射する。あるいは、前記ポリマーを部分的に融解させるために、前記照射を高温で行う。別のアプローチは、結晶性ドメイン中のフリーラジカルを互いに再結合させるために、前記ポリマーを照射後アニールするかまたは融解させることである。これらのアプローチによって、前記混合物の架橋効率の向上がもたらされる。酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させるには、照射後の均質化工程が必要であり得る。
【0050】
別の実施形態においては、ポリマー/酸化防止剤混合物は、バージンポリマーフレークと混合され、固化される。この固化サイクルは、酸化防止剤混合物フレークからバージンフレークへの酸化防止剤のブリードを最小限に抑えるために、可能な限り短く、かつ可能な限り最も低い温度で維持される。この固化したポリマーは、その後、照射を受け、続いて酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させるために、均質化される。
【0051】
あるいは、酸化防止剤を個別フレーク中により深く拡散させ、表面被覆物としてそれが存在することを最小限に抑えるために、前記酸化防止剤ドープフレークをアニールサイクルに供することもできた。これは、固化および/または照射中のドープフレークからバージンフレークまでにわたる酸化防止剤ブリードの程度も下げる。
【0052】
本発明は、照射を受けた酸化防止剤含有ポリマーの酸化安定性を向上させるための様々な方法を提供する。ある実施形態においては、本発明は、ポリマーの酸化安定性を向上させるための方法であり、架橋をもたらす再結合反応を通じておよび/または残留フリーラジカルと酸化防止剤との反応を通じて残留フリーラジカル濃度を低減するための照射ポリマー−酸化防止剤混合物の熱処理(アニールなど)による方法を提供する。後者の反応は、酸化防止剤分子からポリマーへの水素原子の引き抜きによって起こる可能性が高く、その結果としてそのポリマー主鎖上の残留フリーラジカルが消失する。よって、酸化防止剤の存在下での照射を受けたポリマーの熱処理(アニールなど)は、残留フリーラジカル濃度の低減において、酸化防止剤の非存在下で照射を受けたポリマーの熱処理(アニールなど)よりも効果的である。
【0053】
別の実施形態においては、本発明は、ポリマーの酸化安定性を向上させるための方法であり、より多くの酸化防止剤を照射ポリマー−酸化防止剤混合物中に拡散させることによる方法を提供する。この酸化防止剤拡散方法は、Muratogluら(例えば、米国特許第2004/0156879号、2006年8月18日日出願の米国出願番号第11/465,544号、WO 2007/024689として公開されたPCT/US2006/032329号参照(これらの文献は引用することにより本明細書の開示の範囲とされる))において開示されている。
【0054】
別の実施形態においては、本発明は、ポリマーの酸化安定性を向上させるための方法であり、残留フリーラジカルを低減または除去するために、照射を受けた酸化防止剤含有ポリマーを機械的に変形させることによる方法を提供する。(機械的変形方法は、Muratogluら(例えば、米国特許第2004/0156879号、米国特許第2005/0124718号、およびWO2005/074619号として公開されたPCT/US05/003305号参照)(これらの文献は引用することにより本明細書の開示の範囲とされる)によって記載されている。
【0055】
本発明はまた、照射を受けたポリマー中の残留フリーラジカル濃度を、前記材料をその融点より高く加熱することなく、検出不能なレベルにまでも低減させる方法についても記載している。この方法は、照射を受けたサンプルを機械的変形に供することを含み、この機械的変形はそのポリマーの融点未満である。この変形温度は、例えば、UHMWPEの場合には、約135℃の高さであり得た。この変形によって結晶格子内で移動が起こり、これによってその結晶格子内に事前に取り込まれたフリーラジカルは、隣接鎖との架橋または同じ鎖の主鎖に沿ってのトランス−ビニレン不飽和化を通じて再結合が可能になる。この変形の振幅が十分に小さい場合には、塑性流動を避けることができる。結果として、結晶化度は損なわれないはずである。加えて、機械加工コンポーネントにおいて、機械的耐性を失うことなく、前記機械的変形を行うことが可能である。本発明から得られる材料は、残留フリーラジカル濃度が低減している、好ましくは検出可能なフリーラジカルが実質的に存在せず同時に結晶化度およびモジュラスが実質的に損なわれていない、架橋ポリマー材料である。
【0056】
本発明は、前記変形が大きなもの、例えば、チャネルダイ(a channel die)により圧縮比2であり得ることもさらに記載している。この変形は、結晶相内に取り込まれている残留フリーラジカルを移動させるのに十分な塑性変形をもたらすことができる。この変形はポリマーにおける配向を誘導することもでき、この配向によって異方性機械的特性を提供することができ、そしてそれはインプラント製造において有用であり得る。必要でない場合には、ポリマー配向を、その融点より高いまたは低い上昇温度で加熱する追加工程により除去することができる。
【0057】
本発明の別の態様によれば、照射を受けたコンポーネントに高歪み変形を与えることができる。このように、変形による流動中に結晶面同士がすれ違うため、結晶性ドメイン内に取り込まれているフリーラジカルは、隣接する結晶面中のフリーラジカルと反応し得ると思われる。結晶格子内で移動させるために、超音波周波数などの高周波振動を用いることができる。この変形は、増感ガスの存在下または非存在下でポリマー材料の融点より低い高温で行うことができる。超音波によって導入されるエネルギーは、総合温度を上昇させることなく、結晶塑性を与える。
【0058】
本発明はまた、フリーラジカル除去後に、ポリマー材料の融点より低い温度で、さらに加熱する方法も提供する。本発明によれば、融解しない温度でのフリーラジカルの除去は、前記増感ガス方法および/または前記機械的変形方法のいずれかによって達成される。様々な理由で、含有する残留フリーラジカルが低減しているかまたは検出できない架橋ポリマーのさらなる加熱が行われる、例えば:
1.機械的変形、大きなものである場合には(例えば、チャネルダイ変形中圧縮比2)、分子配向を誘導し、そしてそれはある特定の用途には望ましくないことがある(例えば、寛骨臼ライナー)。よって、機械的変形では:
a)配向量を低減するために、さらに高温での機械的変形と冷却後に存続し得る熱応力の一部を低減するためにも、融点未満(例えば、UHMWPEの場合には、約137℃未満)での熱処理を利用する。加熱に続いて、熱応力を最小限に抑えるために、十分なゆっくりとした冷却速度で(例えば、約10℃/時間で)ポリマーを冷却することが望ましい。ある特定の状況下において、配向の低減および/または熱応力の除去を成し遂げるのに融点未満でのアニールが十分でない場合には、ポリマー材料をその融点より高く加熱することができる。
b)結晶性物質を除去し、そのポリマー鎖を低エネルギー、高エントロピー状態に緩和させるために、融点より高い(例えば、UHMWPEの場合には、約137℃より高い)熱処理を利用することができる。この緩和は、ポリマーにおける配向の低減をもたらし、熱応力を実質的に低減する。その後、熱応力を最小限に抑えるために、十分なゆっくりとした冷却速度で(例えば、約10℃/時間で)室温への冷却を行う。
2.照射前、照射中、および/または照射後の増感環境との接触、この接触によって、接触させない場合の照射とその後または同時の融解後に起こる結晶化度の低下と比較して、結晶化度が実質的に低下していないポリマー材料が生み出される。増感環境と接触させたポリマー材料の結晶化度、そして放射線処理したポリマー材料の結晶化度は、そのポリマーを融点より高く(例えば、UHMWPEの場合には、約137℃より高く)加熱することによって低下する。その後、熱応力を最小限に抑えるために、十分なゆっくりとした冷却速度で(例えば、約10℃/時間で)室温への冷却を行う。
【0059】
本明細書において記載するように、機械的変形によって放射線架橋したUHMWPE中の残留フリーラジカルを除去することができることは証明されている。本発明はまた、最初にUHMWPEを、例えば、圧縮によって、固体状態または溶融状態のいずれかで新たな形状に変形することができることも提供する。本発明の方法によれば、UHMWPEの機械的変形を溶融状態で行う場合には、ポリマーを荷重下で結晶化して、新しい変形形状を維持する。変形工程に続いて、変形したUHMWPEのサンプルに融点より低い温度で照射して、架橋し、これにより残留フリーラジカルが生成する。これらのフリーラジカルを除去するために、照射を受けたポリマー試料を、変形および照射を受けたポリマー材料の融点未満の温度に(例えば、UHMWPEの場合には、約135℃まで)加熱して、形状記憶により最初の形状を部分的に回復させることができる。一般に、最初の形状の約80〜90%を回復することが予想される。この回復中に結晶は移動を受け、これによりフリーラジカルの再結合および除去が促進され得る。上記の工程は、「逆IBMA(reverse-IBMA)」と呼ばれている。この逆IBMA(融解および機械的アニールしない温度での逆照射(reverse-irradiation below the melt and mechanicalannealing))技術は、UHMWPEをベースとする医療用具の大規模製造にその技術をもたらすという観点から好適な工程であり得る。
【0060】
別の実施形態においては、本発明は、ポリマーの酸化安定性を向上させるための方法であり、ビタミンE欠損領域を形成するために、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークと、ビタミンE含有の樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、固化させることによる方法を提供する。照射に続いて、前記サンプルを融解しない温度でアニールして、残留フリーラジカルを急冷するとともに、さらにそのビタミンEをそれまでビタミンEが欠損していた領域中に拡散させる。
【0061】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
d)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0062】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
d)当該固化したポリマー材料を高圧下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0063】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
d)当該固化したポリマー材料を超臨界流体の存在下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0064】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
d)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0065】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物を固化させる工程、
c)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、
d)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷する工程、および
e)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0066】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成する工程、
c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと低酸化防止剤領域/ドメインを有するポリマー材料を形成する工程、
d)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
e)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含んでなる工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0067】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEであって、
a)酸化防止剤(例えば、ビタミンE)と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合する工程、
b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成する工程、
c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有するポリマー材料を形成する工程、
d)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射する工程、および
e)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な、高結晶性ポリマー材料を形成する工程
を含む工程によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性UHMWPEを提供する。
【0068】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、約0.13mol/dm3より高い架橋密度を提供する、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0069】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で少なくとも約100kGyの線量で放射線架橋され、その結果としてその架橋密度が室温照射を受けたUHMWPEのものより高いものとなる、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0070】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、第1回目の融解サイクル中に(例えば、DSCにおける第1回目の加熱中に)少なくとも二つの融解ピークを提供する、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0071】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、1融解サイクル後に(例えば、DSCにおける第2回目以降の加熱工程中に)約58%未満の結晶化度を提供する、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0072】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が室温より高い温度で放射線架橋され、再融解サイクル中に(例えば、DSCにおける第2回目以降の加熱工程中に)少なくとも二つの融解ピークを提供する、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0073】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が連続して照射され、アニールされる、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0074】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物であって、前記ポリエチレンの中温照射誘起破壊を最小限に抑えるために放射線量の少なくとも一部が100℃未満で投与され、その残りの放射線量が40℃を超えて投与されるように、前記ポリマー材料/添加剤(酸化防止剤(例えば、ビタミンE)など)混合物が放射線架橋される、高度に架橋した、酸化的に安定なポリマー混合物を提供する。
【0075】
本明細書において記載される方法による固化したポリマー材料は、室温においてまたはそのポリマー材料の融点より低い高温で照射することができる。
【0076】
本発明のある特定の実施形態においては、本明細書において開示する方法工程(混合する工程、混合する工程、固化させる工程、急冷する工程、照射する工程、アニールする工程、機械的に変形させる工程、ドープする工程、均質化する工程、加熱する工程、融解させる工程、および最終生成物(医療用インプラントなど)を包装する工程を含む)はいずれも、増感ガスおよび/または液体もしくはそれらの混合物、不活性ガス、空気、真空、および/または超臨界流体の存在下で行うことができる。
【0077】
本明細書において記載する方法による固化し照射架橋したポリマー材料は、さらに酸化防止剤をドープすることができる。
【0078】
本明細書において記載する方法により固化し、照射架橋したポリマー材料は、さらにそのポリマー材料の融点より低い温度で酸化防止剤をドープし、均質化することができる。
【0079】
別の実施形態においては、本発明は、上記の方法によって製造される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具を提供する。
【0080】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具であって、前記ポリマー材料が、固化、照射、加熱、および/またはアニールまたは急冷工程後に続いて機械加工される、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具を提供する。
【0081】
別の実施形態においては、本発明は、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具であって、前記ポリマー材料の結晶化度が約51%より高い、高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性医療用具を提供する。
【0082】
本発明のある態様によれば、ポリマー材料中へのα−トコフェロールの拡散の制限は、照射後に必要なα−トコフェロールの拡散経路を短くすることによって克服される。これは、その本体(一般にはその内部領域)においてα−トコフェロール濃度がより高く、表面(外部領域)においてα−トコフェロール濃度がより低いポリマー物を作り出すことによって成し遂げられる。このポリマー物に照射すると、架橋による摩耗減少の必要がない本体の高α−トコフェロール領域は、α−トコフェロールが存在しないかまたは存在が少ない場合よりも低い最終架橋密度を有する。その一方で、その表面は、α−トコフェロールを含まないかまたはより低い濃度のα−トコフェロールを含む。そのため、その表面は、照射中にα−トコフェロールの非存在下において照射を受けた材料と同等のレベルに架橋され、摩耗率が低下する。架橋は、インプラントの耐摩耗性を向上させるために、関節面上および関節面付近でのみ必要である。ポリマー材料の表面および本体とは、一般に、それぞれ、外部領域および内部領域を示しているが、一般には、これらの2領域間に分離境界はない。これらの領域はむしろ勾配のように遷移するものであり、対象のサイズおよび形状ならびに用いる樹脂に基づいて異なり得る。
【0083】
α−トコフェロールを含むUHMWPEの照射によりポリマー材料の架橋効率が低下し、さらにα−トコフェロールの酸化防止能力も低下する。しかし、いくつかの実施形態においては、照射工程(群)後にもポリマー材料の本体中に酸化を防ぐのになお十分な酸化防止能力が存在するように、本体に十分なα−トコフェロールが存在する。従って、照射後、このポリマー物は、本体では耐酸化性であり、表面では高度に架橋している。しかしながら、その表面には、ポリマー物を酸化し、その機械的特性を低下させ得る不安定なフリーラジカルがまだ含まれている可能性がある。低α−トコフェロール表面領域において酸化を防ぐためには、照射を受けた物を、次の方法の一以上を用いることによって処理することができる:
(1)照射を受けたポリマー材料の融点より低い高温で拡散させることによりα−トコフェロールをドープすること、
(2)UHMWPEを機械的に変形させ、続いて前記物の融点より低い温度でまたは高い温度で加熱すること、および/あるいは
(3)前記物を高圧結晶化または高圧アニールすること、
一以上のこれらの処理後、前記物中では前記フリーラジカルは安定しているかまたは実質的に除去されている。
【0084】
いくつかの実施形態においては、前記ポリマー材料の酸化安定性を長期的に損なわないように、前記ポリマー材料において表面にも本体中にも残るなお十分な酸化防止能力が存在するため、上述の四つの安定化技術はいずれも用いない。例えば、空間的に変化する酸化防止剤濃度を有するポリマー材料は、室温より高い高温で、好ましくは約40℃で、40℃より高い温度で、75℃で、75℃より高い温度で、約100℃で、約110℃で、または約120℃で照射する。
【0085】
架橋を薄表面層に制限するというこのアプローチの別の利点は、架橋が前記ポリマー物全体にわたって均等に分布している場合にはそうであったように、前記ポリマー物の全体的な本体機械的特性が照射していないUHMWPEと比較しても変わらなかったということである。
【0086】
本発明の別の付加な利点は、α−トコフェロールのドーピングを高温で行って、拡散時間を短くすることができるということである。
【0087】
実施形態は総て、α−トコフェロールを酸化防止剤として用いて記載しているが、任意の他の酸化防止剤または酸化防止剤の混合物も用いることができる。
【0088】
一つの実施形態によれば、前記ポリマー材料は、インプラント形状、インプラント形状に機械加工することができる予備成形物、または任意の他の形状を有する物である。
【0089】
一つの実施形態においては、前記ポリマー物は、高α−トコフェロール領域と低α−トコフェロール領域とを含めて調製され、前記低α−トコフェロール領域はその表面(外部領域)の一箇所以上に存在し、前記高α−トコフェロール領域はその本体(一般には内部領域)中にある。
【0090】
前記ポリマー物において、高α−トコフェロール領域と、低α−トコフェロール領域とからはじめることについての利点は、放射線架橋が主として低α−トコフェロール領域(大部分の実施形態においては関節面)に制限されるため、架橋によるインプラントの機械的特性の低下が最小限に抑えられるということである。
【0091】
別の実施形態においては、前記固化したポリマー材料は、直接圧縮成形(DCM)によって製造される。DCM金型に、α−トコフェロールを含有するポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークと、α−トコフェロールを含まないバージンポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを組み合わせて充填する。その後、この金型を加熱し、加圧して、DCM工程を完了する。このようにして形成された固化ポリマー材料は、高α−トコフェロール領域と、低α−トコフェロール領域とからなる。最初のα−トコフェロール含有の樹脂、その粉末、またはそのフレーク中のα−トコフェロール濃度は、DCM工程、そしてその後の照射および清浄工程を通じてその酸化防止効率を保持するのに十分に高くあってよい。この濃度は、約0.0005重量%〜約20重量%以上間、好ましくは約0.005重量%〜約5.0重量%間、好ましくは約0.3重量%、または好ましくは約0.5重量%である。固化ポリマー物において高α−トコフェロール領域と低α−トコフェロール領域の空間分布を作るためには、DCM金型に前記樹脂、その粉末、またはそのフレークのいずれかあるいは両方を充填する。特に、高温および期間が典型的である場合の固化において、一つの問題点は、混合物樹脂、その粉末、またはそのフレーク領域からバージンの樹脂、その粉末、またはそのフレーク領域へのα−トコフェロールの拡散である。このような拡散は、影響を受けるバージンの樹脂、その粉末、またはそのフレーク領域におけるその後の架橋の効率を低下させる。この拡散工程は、高α−トコフェロール領域と低α−トコフェロール領域の空間分布を作ることによって、混合物領域のα−トコフェロール含量を最適化することによって、固化温度を下げることによって、かつ/または固化時間を短縮することによって制御することができる。
【0092】
いくつかの実施形態においては、前記高α−トコフェロール領域は前記ポリマー物のコアに制限され、前記バージンポリマー材料は、前記低α−トコフェロール領域の厚さが約0.01mm〜20mm間、より好ましくは約1mm〜5mm間、またはより好ましくは約3mmであるその外殻に制限される。
【0093】
いくつかの実施形態においては、前記外層は前記ポリマー物の一以上のフェースにのみ制限される。例えば、ポリマー物は、DCM工程を通じて2層のポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレーク(0.3重量%または0.5重量%α−トコフェロールを含有する1層とα−トコフェロールを含まない1バージン層)を圧縮成形することによって製造される。前記2種の樹脂、その粉末、またはそのフレークを金型に入れる順序によって、低α−トコフェロールとなる前記ポリマー物のフェースが決まり、その低α−トコフェロール領域の厚さは用いたバージンの樹脂、その粉末、またはそのフレークの量によって決まる。このポリマー物は、続いて照射し、α−トコフェロールをドープし、均質化し、ポリマーインプラントを形作るために一以上のフェースで機械加工し、包装し、滅菌する。
【0094】
いくつかの実施形態においては、前記高α−トコフェロール領域は、α−トコフェロール含有の樹脂、その粉末、またはそのフレークと、バージンポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークの混合物とから成形される。
【0095】
いくつかの実施形態においては、前記α−トコフェロール含有の樹脂、その粉末、またはそのフレークと、前記バージンポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとは、成形前に乾式混合され、それによって前記ポリマー物全体の高α−トコフェロール領域と低α−トコフェロール領域の分布が作られる。
【0096】
いくつかの実施形態においては、前記バージンポリマー領域は、インプラントの関節ベアリング面に制限される。
【0097】
いくつかの実施形態においては、前記α−トコフェロール含有の樹脂、その粉末、またはそのフレークは、DCM工程の前に部分的または完全固化を受ける。このα−トコフェロール含有ポリマー材料予備成形部品によって、完成品におけるα−トコフェロールの空間分布に対するより正確な制御が可能になる。例えば、部分的にまたは完全に固化した樹脂、その粉末、またはそのフレークを、バージンの樹脂、その粉末、またはそのフレークで囲んだ金型に入れ、さらに固化させて、ポリマー物の外殻に低α−トコフェロール領域を有し、ポリマー物の本体に高α−トコフェロール領域を有するポリマー物を作出する。
【0098】
別の実施形態においては、ポリマーコンポーネントは、空間的に制御された高α−トコフェロール領域と、低α−トコフェロール領域とを含めて、上記のようにDCMによって製造される。このコンポーネントは、続いて電子線照射によって処理される。電子線照射は、照射方向に勾配架橋効果を有することが知られているが、これは必ずしも、寛骨臼カップなどの曲面を有するコンポーネントに最適化されるとは限らず、そのような場合、架橋は関節面上の場所によって様々である。本体において最小限の架橋へと漸減する均一表面架橋を作出するためには、電子線照射とともに、高α−トコフェロール領域の空間分布を用いる。照射後、ポリマーコンポーネントにα−トコフェロールをドープする。このコンポーネントは、表面において架橋し安定しており、表面からの深さが増すとともに架橋していない安定した材料へと遷移する。
【0099】
いくつかの実施形態においては、前記ビタミンE/ポリマー材料混合の樹脂、その粉末、またはそのフレーク混合物は非常に高いビタミンE濃度を有するため、この樹脂、その粉末、またはそのフレーク混合物を純樹脂、その粉末、またはそのフレークとともに固化させた場合に、界面にビタミンEの急勾配が生じる。この固化部品は、その後、好ましくは純低α−トコフェロール領域においてポリマーを架橋するために照射を受ける。続いて、この部品を加熱して、α−トコフェロールを高α−トコフェロール本体領域から低α−トコフェロール表面領域まで拡散させる。
【0100】
いくつかの実施形態においては、ビタミンE−ポリマー材料(例えば、UHMWPE)混合物およびバージンポリマーの樹脂、その粉末、またはそのフレークは、界面を作るために、一緒に成形される。混合物および/またはバージン樹脂の量は、所望のバージンポリマー材料厚さを得るように調整する。あるいは、バージンポリマー層の所望の厚さを得るために、成形部品/材料を機械加工する。この機械加工した成形部品/材料に照射し、続いて以下を行う:
ビタミンEをドープし、ポリマー材料の融点より低い温度で均質化するか、または
フリーラジカルを除去するためにドープせずに融解しない温度で加熱する(例えば、異なる期間)か、
または大量のビタミンEを混合物層からバージン層中に拡散させるために、長い十分な期間融解しない温度で加熱する(例えば、異なる期間、混合物領域からバージン領域までの拡散を促進するために異なる混合物組成物を用いる)か、
または高圧結晶化/アニールし、それによって医療用具を形成する。この医療用具は、この段階で用いることができ、またはネット形状のインプラントを得るため、酸化表面層を除去するためにさらに機械加工することもできる。この装置/インプラントは、包装し、滅菌することもできる。
【0101】
別の実施形態においては、前記酸化防止剤ドープまたは混合物ポリマー材料は、前記ポリマー材料の融点より低い温度で所望の期間均質化され、例えば、前記酸化防止剤ドープまたは混合物ポリマー材料は、室温〜約135℃、〜137℃(例えばUHMWPEの場合)で約1時間〜数日、〜1週間以上均質化される。好ましくは、この均質化は、室温より高い温度で、好ましくは約90℃〜約135℃、より好ましくは約80℃〜約100℃、より好ましくは約120℃〜約125℃、最も好ましくは約130℃で行われる。
【0102】
均質化の目的は、固化ポリマー材料の内部にわたるα−トコフェロールの濃度プロファイルを空間的により均一にすることである。ポリマー材料のドーピングが終了した後、α−トコフェロール浴から固化ポリマー材料を取り出し、ポリマー材料の表面から余分なα−トコフェロールを取り除くために十分に拭き取る。均質化工程中は、このポリマー材料を不活性雰囲気(窒素、アルゴン、および/または同類のもの)中にまたは空気中に置く。この均質化は、超臨界流体(例えば、二酸化炭素など)の入ったチャンバー中でも行うことができる。
【0103】
別の実施形態においては、前記DCM工程は、前記固化ポリマー物の不可欠な部分となる金属部品を用いて行われる。例えば、α−トコフェロール含有ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークと、バージンポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとの組合せは、その後の照射工程中でのポリマー材料の架橋が関節面において妨げられないように、高α−トコフェロール領域と、低α−トコフェロール領域との空間的に制御された分布を有する金属製寛骨臼カップまたは脛骨ベースプレートに直接圧縮成形される。例えば、多孔質脛骨金属ベースプレートを金型に入れ、α−トコフェロール混合物ポリマーの樹脂、その粉末、またはそのフレークを上に加えた後、バージンポリマーの樹脂、その粉末、またはそのフレークを最後に加える。固化後、この物は、金属部品付近に、さらに本体にα−トコフェロールを多く含むが、関節面ではα−トコフェロールは少なく、そのため、その後の照射中での表面層の架橋が可能になる。この物へのα−トコフェロールのドーピングは、関節面付近にフリーラジカルを安定化させるために照射後に行われる。DCMによる固化前に、前記金属部品の孔にその厚さの半分にワックスまたは石膏物質を充填することができ、前記金属部品の残る無充填の半分を通じてポリエチレンと連結する。この孔充填剤は、金属の孔中へのα−トコフェロールの注入を防ぐために、照射工程とその後のα−トコフェロールドーピング工程を通して維持される。いくつかの実施形態においては、前記物は、インプラントを形作るために、ドーピング後に機械加工される。
【0104】
別の実施形態においては、前記ポリマー物に不可欠な金属部品が二以上存在する。
【0105】
別の実施形態においては、前記ポリマー物に不可欠な金属部品の一つまたはいくつかまたは総ては、ヒト体内に埋め込むと骨成長を可能にする多孔質金属部品である。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記ポリマー物に不可欠な金属部品の一つまたはいくつかまたは総ては、非多孔質金属部品である。
【0107】
一つの実施形態においては、前記固化ポリマー物は、電離放射線(γ線、電子線、またはX線など)を用いて線量レベル約1〜約10,000kGy間、好ましくは約25〜約250kGy、好ましくは約50〜約150kGy、好ましくは約65kGy、好ましくは約85kGy、または好ましくは約100kGyで照射される。
【0108】
別の実施形態においては、前記照射を受けたポリマー物は、前記物をα−トコフェロール浴中に室温においてまたは高温で一定時間入れることによってα−トコフェロールをドープされる。
【0109】
別の実施形態においては、前記ドープポリマー物は、前記ポリマー物の融点より低い温度で加熱される。
【0110】
一つの実施形態においては、前記インプラントの金属メッシュは、前記インプラントの選択的ドーピング中に金属メッシュの孔中へのα−トコフェロールの注入を防ぐまたは減少させるために、封止剤を用いて封止される。好ましくは、この封止剤は水溶性である。しかし、他の封止剤も用いられる。前記インプラントが受ける最終清浄工程でこの封止剤は除去される。あるいは、追加の封止剤除去工程が用いられる。水、生理食塩水、水溶性ポリマー(例えばポリビニルアルコール)の水溶液、水溶性ワックス、焼き石膏などのような封止剤が用いられる。加えて、多孔質金属コンポーネントの孔内でSU−8などのようなフォトレジストを硬化させてよい。処理後、この封止剤は、酸エッチングまたはプラズマエッチングによって除去し得る。
【0111】
別の実施形態においては、前記ポリエチレン−多孔質金属モノブロックは、ドーピング中、前記ポリマー材料はα−トコフェロール中に十分に浸漬されるが、多孔質金属は、α−トコフェロール表面の完全に上方にあるかまたは部分的にのみ浸漬されるように、ドープされる。これにより金属メッシュの孔中へのα−トコフェロールの注入が減少する。
【0112】
さらに別の実施形態においては、前記ドープポリマー物は、医療用インプラントを形成するために機械加工される。いくつかの実施形態においては、前記機械加工は、金属部品が、少なくとも一つ存在するならば、存在しない側面で行われる。
【0113】
多くの実施形態においては、前記医療用具は、包装され、滅菌される。
【0114】
本発明の別の態様では、前記医療用具は、包装と滅菌の前に清浄される。
【0115】
他の実施形態においては、インプラントコンポーネントにおける前記酸化防止剤(ビタミンEなど)濃度プロファイルは、いくつかの異なる方法によって、様々な処理工程に従って、そして異なる順序で制御することができる、例えば:
I.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、インプラントを機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープすること、
II.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、インプラントを機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、均質化すること、
III.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、インプラントを機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること、
IV.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、予備成形物を機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、インプラントを機械加工すること、
V.前記酸化防止剤と、ポリエチレンの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、予備成形物を機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、インプラントを機械加工すること、
VI.前記酸化防止剤と、ポリエチレンその樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、その混合物を固化させ、予備成形物を機械加工し、(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、インプラントを機械加工し、前記酸化防止剤を抽出すること、
VII.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、インプラントを機械加工し、前記酸化防止剤をドープし、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること、
VIII.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、インプラントを機械加工し、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること、
IX.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、予備成形物を機械加工し(machining prefoms)、前記酸化防止剤をドープし、前記酸化防止剤を抽出し、インプラントを機械加工すること、
X.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、予備成形物を機械加工し(machining prefoms)、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出し、インプラントを機械加工すること、
XI.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、予備成形物を機械加工し(machining prefoms)、前記酸化防止剤をドープし、インプラントを機械加工し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること、および/または
XII.固化したポリマー材料を(前記ポリマー材料の融点より低い温度で)放射線架橋し、予備成形物を機械加工し(machining prefoms)、前記酸化防止剤をドープし、均質化し、インプラントを機械加工し、均質化し、余分な前記酸化防止剤または前記酸化防止剤の少なくとも一部を抽出/溶出すること。
【0116】
別の実施形態においては、上記工程は総て、さらにその後、清浄、包装、および滅菌(γ線照射、電子線照射、エチレンオキシドまたはガスプラズマ滅菌)が行われる。
【0117】
方法および一連の照射:
放射線化学を用いたポリマーおよびポリマー合金の選択的制御操作は、別の態様では、ポリマーに照射する方法を選択することによって行うことができる。使用する照射方法は、単独でまたは本発明の他の態様(選択するポリマーまたはポリマー合金など)との組合せで、照射を受けたポリマーの全体的特性に寄与する。
【0118】
γ線照射または電子放射を用いてよい。一般に、γ線照射は、電子線照射より高い放射線浸透深さを与える。しかしながら、γ線照射は、一般に、低い放射線量率を提供し、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深く広範囲の酸化が起こる可能性がある。酸化は、不活性ガス(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウムなど)中で、または真空下でγ線照射を行うことによって減少させるまたは防ぐことができる。電子線照射は、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、照射が空気中で行われる場合には、広範囲の酸化の危険性が減少する。加えて、所望の線量レベルが高い(例えば、20Mrad)場合には、γ線照射を1日かけて行ってよいが、実用的でない生産時間となる。その一方で、電子線の線量率は、照射パラメーター(コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力など)を変更することによって調整することができる。適当なパラメーターを用いて、20Mradの溶融照射(a 20 Mrad melt-irradiation)を、例えば、10分足らずで終えることができる。電子線の浸透は、100万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーに依存する。大部分のポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーでは約1cmの浸透、10MeVのビームエネルギーでは約4cmの浸透となる。電子線照射が好ましい場合には、所望の浸透深さは、ビームエネルギーに基づいて調整することができる。従って、好ましい浸透深さ、時間制限、および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。
【0119】
ある特定の実施形態によれば、前記架橋したポリマー材料は、融解履歴を有し得、これは前記ポリマー材料を、架橋についての照射と同時にまたは照射の後に融解させるということを意味する。他の実施形態によれば、前記架橋したポリマー材料にはかかる融解履歴はない。
【0120】
IMS、CIR、CISM、WIR、およびWIAMを含む様々な照射方法を、照射し、同時のまたはその後の融解を行う融解履歴を有する架橋したポリマー材料について、以下により詳細に定義し、記載する:
(i)溶融状態での照射(Irradiation in the Molten State)(IMS):
溶融照射(MIR)、または溶融状態での照射(「IMS」)は、米国特許第5,879,400号に詳細に記載されている。IMS工程では、照射すべきポリマーをその融点以上に加熱する。その後、そのポリマーに照射する。照射後、そのポリマーを冷却する。
【0121】
照射前に、ポリマーをその融点以上に加熱し、この温度を、ポリマー鎖をもつれた状態にするのに十分な時間維持する。十分な時間は、例えば、約5分〜約3時間の範囲であってよい。
【0122】
γ線照射または電子放射を用いてよい。一般に、γ線照射は、電子線照射より高い放射線浸透深さを与える。しかしながら、γ線照射は、一般に、低い放射線量率を提供し、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深い酸化が起こる可能性がある。酸化は、不活性ガス(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウムなど)中で、または真空下でγ線照射を行うことによって減少させるまたは防ぐことができる。電子線照射は、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、照射が空気中で行われる場合には、広範囲の酸化の危険性が減少する。加えて、所望の線量レベルが高い(例えば、20Mrad)場合には、γ線照射を1日かけて行ってよいが、実用的でない生産時間となる。その一方で、電子線の線量率は、照射パラメーター(コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力など)を変更することによって調整することができる。適当なパラメーターを用いて、20Mradの溶融照射を、例えば、10分足らずで終えることができる。電子線の浸透は、100万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーに依存する。大部分のポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーでは約1cmの浸透、10MeVのビームエネルギーでは約4cmの浸透となる。電子線の浸透は、照射温度の上昇とともに少し増加することが知られている。電子線照射が好ましい場合には、所望の浸透深さは、ビームエネルギーに基づいて調整することができる。従って、好ましい浸透深さ、時間制限および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。
【0123】
ある特定のポリマーについての溶融照射温度は、そのポリマーのDSC(第1回目の加熱サイクル中に10℃/分の加熱速度で測定される)ピーク融点(「PMT」)によって決まる。一般に、IMS工程における照射温度は、PMTよりも少なくとも約2℃高く、より好ましくはPMTよりも約2℃〜約20℃間高く、最も好ましくはPMTよりも約5℃〜約10℃間高い。
【0124】
許容総線量の例示的な範囲は、米国特許第5,879,400号、同第6,641,617号、および国際出願WO97/29793により詳細に開示されている。例えば、好ましくは約1Mradまたはこれを上回る総線量を用いる。より好ましくは、約20Mradを上回る総線量を用いる。
【0125】
電子線IMSにおいては、電子によって蓄積された一部のエネルギーが熱に変換される。これは、主として、照射中にサンプルが熱的に絶縁される程度に依存する。良好な断熱性である場合には、発生した熱の大部分は、周囲へ逃すことなく、照射温度より高い温度へのポリマーの放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)へと導かれる。この加熱は、周囲への熱損失を最小限に抑えるのに十分な高い線量率を用いることによっても誘導することもできた。状況によって、加熱は、照射を受けているサンプルにとっては有害であることがある。ポリマーに照射すると照射中に水素ガスなどのガス状副生成物が生成する。照射中に、ガス状副生成物の迅速な拡大を引き起こしそれによってそれらをポリマーから拡散させないほどに加熱が迅速で高い場合には、そのポリマーはキャビテーションすることがある。このキャビテーションは、構造中に欠陥(空洞部分、亀裂など)の形成をもたらし、このような欠陥が、次には、ポリマーの機械的特性やそのポリマーから製造された装置のin vivo性能に悪影響を与えるかもしれないという点から望ましくない。
【0126】
温度上昇は、線量レベル、絶縁レベル、および/または線量率によって決まる。照射段階で用いる線量レベルは、所望の特性に基づいて決定される。一般に、断熱は、ポリマーの冷却とポリマーの所望の照射温度での温度維持を回避するために用いられる。よって、温度上昇は、照射についての最大線量率を決定することによって制御することができる。
【0127】
電子放射を利用する本発明の実施形態においては、電子の浸透深さを変更し、それによって、照射後の架橋度を制御するために、電子のエネルギーを変化させることができる。好適な電子エネルギーの範囲は、米国特許第5,879,400号、同第6,641,617号、および国際出願WO 97/29793により詳細に開示されている。一つの実施形態においては、前記エネルギーは約0.5MeV〜約12MeVである。別の実施形態においては、前記エネルギーは約1MeV〜10MeVである。別の実施形態においては、前記エネルギーは約10MeVである。
【0128】
(ii)低温照射(CIR):
低温照射は、米国特許第6,641,617号、米国特許第6,852,772号、およびWO97/29793号に詳細に記載されている。低温照射工程においては、ポリマーを室温または室温未満で準備する。好ましくは、ポリマーの温度は約20℃である。その後、そのポリマーに照射する。低温照射の一つの実施形態においては、前記ポリマーは、そのポリマーの結晶の少なくとも部分的な融解が起こるほどの熱をそのポリマーにおいて発生させるのに十分な高い総線量でおよび/または十分な高い線量率で照射してよい。
【0129】
γ線照射または電子放射を用いてよい。一般に、γ線照射は、電子線照射より高い線量浸透深さを与える。しかしながら、γ線照射は、一般に、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深い酸化が起こる可能性がある。酸化は、不活性ガス(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウムなど)中で、または真空下でγ線照射を行うことによって減少させるまたは防ぐことができる。電子線照射は、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、広範囲の酸化の危険性が減少する。従って、好ましい浸透深さ、時間制限、および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。
【0130】
照射総線量は、照射を受けたポリマーの特性を制御するパラメーターとして選択してよい。特に、照射を受けたポリマーにおける架橋度を制御するために、照射線量を変化させることができる。好ましい線量レベルは、ポリマーの分子量と照射後に得ることができる所望の特性によって決まる。一般に、CIRでの線量レベルの増加は、耐摩耗性の増加につながる。
【0131】
許容総線量の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および同第6,852,772号、国際出願 WO97/29793号、ならびに下記実施形態により詳細に開示されている。一つの実施形態においては、許容総線量は約0.5MRad〜約1,000Mradである。別の実施形態においては、許容総線量は約1MRad〜約100MRadである。さらに別の実施形態においては、許容総線量は約4MRad〜約30MRadである。さらに他の実施形態においては、許容総線量は約20MRadまたは約15MRadである。
【0132】
電子放射を利用する場合には、電子のエネルギーも、照射を受けたポリマーの特性を調整するために変化させることができるパラメーターである。特に、電子エネルギーの違いによって電子のポリマー中への浸透深さは異なる。実際の電子エネルギーは約0.1MeV〜16MeVの範囲であり、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量浸透レベルを与える。最大浸透に好ましい電子エネルギーは約10MeVであり、Studer (Daniken, Switzerland)またはE-Beam Services (New Jersey, USA)などのベンダーを通じて商業的に入手可能である。ポリマーの表面層が優先的に架橋され、表面からの距離の関数として架橋密度勾配を示す実施形態においては、より低い電子エネルギーが好ましいかもしれない。
【0133】
(iii)中温照射(WIR):
中温照射は、米国特許第6,641,617号およびWO97/29793号に詳細に記載されている。中温照射工程では、ポリマーを室温より高い温度でそのポリマーの融点より低い温度で準備する。その後、そのポリマーに照射する。中温照射の一つの実施形態においては、「中温照射断熱融解(warm irradiation adiabatic melting)」または「WIAM」と呼ばれている。理論的な意味において、断熱(的)とは、周囲への熱伝達がないことを意味する。実質的な意味において、このような加熱は、本明細書において、そして本明細書において引用する文献において開示されているように、絶縁、照射線量率、および照射期間を組み合わせることによって行うことができる。しかしながら、照射によって加熱を引き起こすが、周囲へのエネルギー損失がまだあるという状況がある。さらに、総ての中温照射が、断熱的なものを示すとは限らない。中温照射はまた、非断熱的な加熱または部分的に(例えば発生した熱の約10〜75%が周囲へ失われる)断熱的な加熱も含み得る。WIRの総ての実施形態においては、前記ポリマーは、そのポリマーの結晶の少なくとも部分的な融解(総てではないが一部の分子が結晶状態から非晶状態へと遷移することを意味する)が起こるほどの熱をそのポリマーにおいて発生させるのに十分な高い総線量でかつ/または十分な高い線量率で照射してよい。
【0134】
前記ポリマーは、その融点より低いが、好ましくは室温より高い任意の温度で準備してよい。温度の選択は、ポリマーの比熱および融解エンタルピーならびに用いた総線量レベルに依存する。ポリマーの最終温度は、その融点より低くても高くてもよいという基準によって好ましい温度範囲を算出するために、米国特許第6,641,617号および国際出願WO97/29793号において提供される式を用いてよい。所望の温度へのポリマーの予熱は、不活性環境中(例えば窒素下、アルゴン下、ネオン下、またはヘリウム下など、またはそれらの組合せ下)でまたは非不活性環境(例えば空気)中で行ってよい。
【0135】
一般論として、ポリマーの照射前加熱温度は、DSCにおける、第1回目の加熱中10℃/分の加熱速度でのピーク融点(PMT)量に基づいて調整することができる。一つの実施形態においては、前記ポリマーは約20℃〜ほぼPMTに加熱される。別の実施形態においては、前記ポリマーは約90℃に予熱される。別の実施形態においては、前記ポリマーは約100℃に加熱される。別の実施形態においては、前記ポリマーは、PMTより低い約30℃およびPMTより低い2℃に予熱される。別の実施形態においては、前記ポリマーは、PMTより低い約12℃に予熱される。
【0136】
WIRのWIAM実施形態においては、照射後の前記ポリマーの温度は、前記ポリマーの融点以上である。照射後の許容温度の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および国際出願WO 97/29793号により詳細に開示されている。一つの実施形態においては、照射後許容温度は、ほぼ室温〜PMT、または約40℃〜PMT、または約100℃〜PMT、または約110℃〜PMT、または約120℃〜PMT、または約PMT〜約200℃である。これらの温度範囲は、ポリマーのPMTに依存し、かなり高くなり、水和レベルの低下を伴う。別の実施形態においては、照射後許容温度は約145℃〜約190℃である。さらに別の実施形態においては、照射後許容温度は約145℃〜約190℃である。さらに別の実施形態においては、照射後許容温度は約150℃である。
【0137】
WIRにおいては、γ線照射または電子放射を用いてよい。一般に、γ線照射は、電子線照射より高い線量浸透深さを与える。しかしながら、γ線照射は、一般に、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深い酸化が起こる可能性がある。酸化は、不活性ガス(窒素、アルゴン、ネオン、またはヘリウムなど)中で、または真空下においてγ線照射を行うことによって減少させるまたは防ぐことができる。電子線照射は、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、広範囲の酸化の危険性が減少する。従って、好ましい浸透深さ、時間制限、および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。WIRのWIAM実施形態においては、電子放射を用いる。
【0138】
照射総線量は、照射を受けたポリマーの特性を制御するパラメーターとしても選択してよい。特に、照射を受けたポリマーにおける架橋度を制御するために、照射線量を変化させることができる。許容総線量の例示的な範囲は、米国特許第6,641,617号および国際出願WO 97/29793号により詳細に開示されている。
【0139】
照射線量率もまた、所望の結果が得られるように変化させてもよい。WIAM工程では線量率は優れた変数である。好ましい照射線量率は、電子線下で1回のパスで総所望線量レベルを投与することとなるであろう。また、電子線下で複数回のパスで総線量レベルを送達することもでき、各回で総線量の(均等な、または不均等な)分量を送達する。しかし、これは実効線量率の低下をもたらすであろう。
【0140】
許容線量率の範囲は、米国特許第6,641,617号および国際出願WO 97/29793号により詳細に例示される。一般に、許容線量率は、0.5Mrad/パス〜50Mrad/パス間で変化する。許容線量率の上限は、照射によって生じるキャビテーション/亀裂に対するポリマーの抵抗性によって決まる。
【0141】
電子放射を利用する場合には、電子のエネルギーも、照射を受けたポリマーの特性を調整するために変化させることができるパラメーターである。特に、電子エネルギーの違いによって電子のポリマー中への浸透深さは異なる。実際の電子エネルギーは約0.1MeV〜16MeVの範囲であり、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量浸透レベルを与える。最大浸透に好ましい電子エネルギーは約10MeVであり、Studer (Daniken, Switzerland)またはE-Beam Services (New Jersey, USA)などのベンダーを通じて商業的に入手可能である。ポリマーの表面層が優先的に架橋され、表面からの距離の関数として架橋密度勾配を示す実施形態においては、より低い電子エネルギーが好ましい可能性がある。
【0142】
(iv)その後の融解(SM)−検出可能な残留フリーラジカルの実質的な除去:
用いるポリマーまたはポリマー合金、そしてポリマーにその融点より低い温度で照射するか否かにより、照射工程後にその材料中に残留フリーラジカルが存在し得る。電離放射線を用いて融点より低い温度で照射を受けたポリマーには、架橋が含まれるだけでなく、長寿命のフリーラジカルも取り込まれる。照射中に生成されたフリーラジカルの一部は、結晶性領域内におよび/または結晶性ラメラ表面に取り込まれた状態になり、長期的に酸化による不安定化をもたらすことになる(Kashiwabara, H. S. Shimada, and Y. Hori, Radiat. Phys. Chem., 1991, 37(1): p. 43-46、 Jahan, M. S. and C. Wang, Journal of Biomedical Materials Research, 1991, 25: p. 1005-1017、 Sutula, L. C., et al., Clinical Orthopedic Related Research, 1995, 3129: p. 1681-1689参照)。そのため、ポリマーの長期酸化不安定性をなくすのに、取り込まれたこれらの残留フリーラジカルを加熱により除去することが望ましい場合がある。Jahan M. S. and C. Wang, Journal of Biomedical Materials Research, 1991, 25: p. 1005-1017、 Sutula, L. C., et al., Clinical Orthopedic Related Research, 1995, 319: p. 28-4.
【0143】
残留フリーラジカルは、ポリマーを、用いるポリマーの融点より高い温度で加熱することによって低減し得る。加熱によって残留フリーラジカルを互いに再結合させることができる。ある特定の系で、照射後予備成形物に検出可能な残留フリーラジカルが実質的に含まれない場合には、後の加熱工程を省略してよい。また、ある特定の系で、残留フリーラジカルの濃度が、装置性能の低下をもたらさないほどに低い場合には、加熱工程を省略してよい。
【0144】
検出可能なフリーラジカルが実質的に存在しないところまでのフリーラジカルの低減は、ポリマーをその融点より高い温度で加熱することによって達成することができる。この加熱により、ポリマーの結晶から生じる拘束をなくすのに十分な移動性が分子に与えられ、それによって残留フリーラジカルの本質的に総てが再結合可能になる。好ましくは、前記ポリマーは、ピーク融点(PMT)〜ポリマーの分解温度(Td)間の温度、より好ましくはPMTより高い約3℃〜Td間、より好ましくはPMTより高い約10℃〜PMTより高い50℃間、より好ましくは約10℃〜PMTより高い12℃間、最も好ましくはPMTより高い約15℃に加熱される。
【0145】
ある特定の実施形態においては、許容レベルの残留フリーラジカルが存在する可能性があり、その場合には、照射後アニールも前記ポリマーの融点未満で行うことができ、かかるフリーラジカルの効果は酸化防止剤によって最小限に抑えるかまたは除去することができる。
【0146】
(v)連続照射:
γ線または電子線放射のいずれかを用いてポリマーに連続的に照射する。電子線の場合には、照射は電子線下で複数回のパスで行われ、γ線放射線の場合には、照射はγ線源を通じて複数回のパスで行われる。所望により、各照射パス間にまたは一部の照射パス間にポリマーを熱処理する。この熱処理は、ポリマーの融点以下に加熱することであり得る。いずれの工程での照射も、中温照射、低温照射、または溶融照射、またはそれらの任意の組合せであり得る。例えば、各架橋工程ではポリマーに30kGyで照射し、それをまず約120℃に加熱し、その後照射サイクルごとに約120℃で約5時間アニールする。
【0147】
(vi)混合物およびドーピング:
上述のように、架橋したポリマー材料(the cross-liked polymeric material)は、所望により、融解履歴を有し得、これはポリマー材料を、照射と同時に(concurrent with)または照射の後に融解させるということを意味する。このポリマー材料は、固化および照射の前に酸化防止剤と混合することができる。また、この固化したポリマー材料は、照射前または照射後に酸化防止剤をドープすることができ、所望により、照射と同時に(concurrent with)または照射の後に融解させることができた。さらに、ポリマー材料は、固化前に酸化防止剤と混合することができ、固化後に(照射と任意選択の融解前後に)酸化防止剤をドープすることもできる。このポリマー材料は、工程中の異なる時間に抽出に供することができ、複数回抽出することもできる。
【0148】
ポリマー材料は、α−トコフェロール(ビタミンEなど)、δ−トコフェロール、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、または没食子酸デドシル(dedocyl gallates)、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、および有機酸、ならびにそれらの塩、オルトリン酸塩、酢酸トコフェロール、リコピン、またはそれらの組合せを含むいかなる酸化防止剤とも混合することができる。
【0149】
定義および他の実施形態:
「酸化防止剤」とは、当技術分野において公知のものを示す(例えば、WO 01/80778号、米国特許第6,448,315号参照)。α−およびδ−トコフェロール、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、または没食子酸デドシル(dedocyl gallates)、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、および有機酸、ならびにそれらの塩、オルトリン酸塩、リコピン、酢酸トコフェロール。好ましい酸化防止剤はビタミンEである。
【0150】
「高圧結晶化」とは、本明細書において記載するように、本発明に従って、高圧結晶化したポリエチレンの製造方法を示す。
【0151】
「高圧アニール」とは、本明細書において記載するように、本発明に従って、高圧結晶化したポリエチレンの製造方法を示す。
【0152】
「空間的に制御された酸化防止剤分布」との用語は、所望の量の酸化防止剤または酸化防止剤の混合物が、酸化防止剤分布勾配を有するように、ポリマー材料中に拡散または混合されるなど、制御された形での酸化防止剤の分布を示す。酸化防止剤の空間分布は、ポリマー材料内での領域の形成を可能にし、酸化防止剤含量の高い領域と低い領域を与え、このポリマー材料は、空間的に制御された酸化防止剤分布を有する医療用インプラントまたは予備成形物と呼ぶことができる。
【0153】
「超臨界流体」とは、当技術分野において公知のもの、例えば、超臨界プロパン、アセチレン、二酸化炭素(CO2)を示す。これに関して、臨界温度とは、その温度を超えると、圧力だけではガスが液化し得ない温度である。臨界温度においてある物質がガスとしてその液体との平衡状態で存在し得る圧力が臨界圧である。超臨界流体状態は、一般に、流体が、超臨界流体、そしてそれによって超臨界流体混合物が得られるような温度および圧力にさらされているということを意味し、その温度は超臨界温度(CO2の場合31.3℃である)を超え、その圧力は超臨界圧(CO2の場合73.8バールである)を超える。さらに詳細には、超臨界状態とは、混合物、例えば、酸化防止剤を含むUHMWPEの、高い温度および圧力での、超臨界流体混合物が形成され、その後その混合物からCO2が蒸発する場合に、酸化防止剤をドープしたUHMWPEが得られるという状態を示す(例えば、米国特許第6,448,315号およびWO02/26464号参照)。
【0154】
本明細書において言及する用語「圧縮成形」とは、一般に、当技術分野において公知のものに関し、具体的には、ポリマー材料を高温成形することに関し、この場合、ポリマー材料は、樹脂、粉末、またはフレーク形態を含むあらゆる物理的状態にあり、スラブ形態にまたは医療用インプラント、例えば、脛骨インサート、寛骨臼ライナー、関節窩ライナー、膝蓋骨、またはユニコンパートメンタルインサート、あらゆる関節に対する挿入物装置の金型に圧縮され、機械加工することができる。
【0155】
本明細書において言及する用語「直接圧縮成形」(DCM)とは、一般に、当技術分野において公知のものに関し、具体的には、ポリエチレンをベースとする装置、例えば、医療用インプラントに適用可能な成形に関し、この場合、樹脂、粉末、またはフレーク形態を含むあらゆる物理的状態にあるポリエチレンが、固相支持体、例えば、金属裏打ち、金属製メッシュ、または溝、アンダーカット、または孔を含む金属表面に圧縮される。圧縮成形は、医療用インプラントのコンポーネント、例えば、脛骨インサート、寛骨臼ライナー、関節窩ライナー、膝蓋骨、あらゆる関節に対する挿入物装置またはユニコンパートメンタルインサートを製造するための、樹脂、粉末、フレーク、および粒子を含む様々な状態でのポリエチレンの高温圧縮成形も含む。
【0156】
用語「機械的変形」とは、材料の融点未満で起こる変形、本質的には材料の「冷間加工」を示す。変形モードとしては、一軸、チャネルフロー、一軸圧縮、二軸圧縮、振動圧縮、引張、一軸引張、二軸引張、超音波振動、曲げ、平面応力圧縮(チャネルダイ)、ねじり、または前記のいずれかの組合せが含まれる。変形は静的でも動的でもあり得る。動的変形は、小または大振幅式変形モードの組合せであり得る。超音波周波数を用いることができる。総ての変形は、増感ガスの存在下でおよび/または高温で行うことができる。
【0157】
用語「変形状態」とは、固体または溶融状態における、本明細書において記載するような機械的変形などの変形工程後のポリマー材料の状態を示す。変形工程の後、固体または溶融状態の変形したポリマー材料は、変形した形状または新たに獲得した変形状態を維持しながら固化/結晶化させる。
【0158】
「IBMA」とは、融解しない温度での照射および機械的アニールを示す。「IBMA」は、以前は「CIMA」(低温照射および機械的アニール(Cold Irradiation and Mechanically Annealed))とも呼ばれた。
【0159】
用語「機械的に連結される」とは、一般に、ポリマー材料と相手面を連結することを示し、これは、圧縮成形、熱、および照射を含む様々な方法によって行われ、それによって連結界面を形成し、連結したポリマー材料を「形状記憶」させる。かかる連結界面を有する装置のコンポーネントは、「ハイブリッド材料」と呼ぶことができる。かかるハイブリッド材料を有する医療用インプラントは実質的に無菌の界面を含む。
【0160】
用語「実質的に無菌の」とは、対象の無菌、例えば、界面またはハイブリッド材料または界面を含む医療用インプラントについての、その界面が医学的に許容されるほど無菌である、すなわち感染を起こさないかまたは再手術を必要としない、状態を示す。
【0161】
「金属製メッシュ」とは、様々な孔径、例えば、0.1〜3mmの多孔質金属表面を示す。多孔質表面はいくつかの異なる方法によって得ることができ、例えば、結合剤を加えて金属粉末を焼結し、続いて、この結合剤を除去して、多孔質表面を残すか、直径0.1〜3mmの短い金属繊維を焼結するか、または開放連続細孔構造を提供するために、異なるサイズの金属製メッシュを重ね合わせて焼結する。
【0162】
「骨セメント」とは、当技術分野において医療用具を骨に結合するのに用いる接着剤として公知のものを示す。一般に、骨セメントは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)から製造される。骨セメントはリン酸カルシウムからも製造することができる。
【0163】
「高温圧縮成形」とは、圧力および温度下で新しい形状を与えるためのあらゆる形態(例えば、樹脂、粉末、フレーク、または粒子)のポリマー材料の圧縮成形を示す。高温(ポリマー材料の融点より高い)圧縮成形中に、ポリマー材料をその融点より高い温度で加熱し、所望の形状の金型に加圧し、圧力下で冷却させて、所望の形状を維持する。
【0164】
「形状記憶」とは、当技術分野において、融解時に好ましい高エントロピー形状を得る、ポリマー材料(例えば、UHMWPE)の特性として公知のものを示す。好ましい高エントロピー形状は、樹脂、粉末、またはフレークを圧縮成形によって固化させた場合に得られる。
【0165】
用語「検出可能な残留フリーラジカルが実質的に存在しない」とは、酸化的分解が回避されるほどにフリーラジカルが除去されたポリマーコンポーネントの状態を示し、これは、電子スピン共鳴(ESR)によって評価することができる。用語「検出可能な残留フリーラジカル」とは、ESRによって検出可能なフリーラジカルの最低水準以上を示す。最新式の計器で検出可能なフリーラジカルの最低水準は約1014スピン/gであり、従って、用語「検出可能な」とは、ESRによる1014スピン/gの検出限界を示す。
【0166】
数値および範囲に関する用語「約」または「およそ」とは、本発明を意図した通りに実行できるように、例えば、本明細書に含まれる教示から当業者には明らかであるように、所望の架橋度を有しおよび/またはフリーラジカルの所望の欠乏または急冷を受けるように、引用した値または範囲に近似するかまたは近い値または範囲を示す。これは、少なくとも部分的には、ポリマー組成物の様々な特性に起因する。従って、これらの用語は、系統的誤差から生じる値の範囲を超えた値を包含する。これらの用語は黙示的であることを明示する。
【0167】
「ポリマー材料」または「ポリマー」は、ポリエチレン、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含み、約500,000を超える、好ましくは約1,000,000を超える、より好ましくは約2,000,000を超える分子量を有する直鎖状の非分枝鎖エチレンを示す。分子量は約8,000,000以上にも達する場合が多い。初期平均分子量とは、照射前のUHMWPE出発材料の平均分子量を意味する。米国特許第5,879,400号、1999年7月16日出願のPCT/US99/16070号、および1997年2月11日出願のPCT/US97/02220号参照。用語「ポリエチレン物」または「ポリマー物」または「ポリマー」とは、一般に、本明細書において開示する任意の「ポリマー材料」を含んでなる物を示す。
【0168】
「ポリマー材料」または「ポリマー」はまた、水中での平衡後に水が原重量の少なくとも1〜10,000%、一般には原重量の100重量%または重量の99%以下を構成するように水を吸収することができる、ヒドロゲル(ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリエチレングリコール)、それらの混合物、またはそれらの相互貫入ネットワークなど)も包含する。
【0169】
「ポリマー材料」または「ポリマー」は、樹脂、フレーク、粉末、固化したストック、インプラントの形態であり得、酸化防止剤(群)などの添加剤を含有し得る。「ポリマー材料」または「ポリマー」はまた、異なる濃度の添加剤(酸化防止剤など)を含有する異なる樹脂、フレーク、または粉末の一以上の混合物でもあり得る。樹脂、フレーク、または粉末の混合物は、当技術分野で公知の混合技術によって行うことができる。「ポリマー材料」はまた、これらの混合物の固化ストックでもあり得る。
【0170】
「混合(すること)」とは、一般に、ポリオレフィンを予め固化させた形態で添加剤と混合することを示す。両方の構成成分が固体である場合には、混合は、第3の成分、例えば2成分の混合を媒介し、その後、その液体を蒸発させることによって除去される液体を用いることによって行うことができる。添加剤が液体、例えばα−トコフェロールである場合には、固体を大量の液体と混合し、その後固体ポリマーを用いて所望の濃度に希釈して、混合物を均質にすることができる。添加剤が酸化防止剤、例えばビタミンE、またはα−トコフェロールでもある場合には、混合したポリマー材料に酸化防止剤をドープもする。ポリマー材料は、本明細書において、ポリオレフィンと可塑剤との混合、例えばα−トコフェロールを混合し、固化したUHMWPEの樹脂粉末にも適用される。ポリマー材料は、本明細書において、添加剤、ポリオレフィン、および可塑剤の混合、例えばα−トコフェロール中に浸漬したUHMWPEにも適用される。
【0171】
一つの実施形態においては、UHMWPEのフレークは、α−トコフェロールと混合され、好ましくは、そのUHMWPE/α−トコフェロール混合は、α−トコフェロールをUHMWPEのフレーク中に拡散させるために、加熱される。前記UHMWPE/α−トコフェロール混合は、一部のフレークはα−トコフェロール含量が低く、一部のフレークはα−トコフェロール含量が高いUHMWPEのフレークの混合物を得るために、バージンUHMWPEのフレークとさらに混合される。この混合物は、その後、固化され、照射される。照射中に低α−トコフェロール領域は低α−トコフェロール領域(the α-tocopherol poor regions)に比べ、高度に架橋する。照射後、この混合物は、α−トコフェロールを高α−トコフェロール領域から低α−トコフェロール領域まで拡散させ、ポリマー全体にわたって酸化安定性を得るために、均質化される。
【0172】
本発明による生成物および方法は、様々な種類のポリマー材料、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、またはポリオレフィン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状の低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、コポリマーまたはそれらの混合物を含む)にも適用される。本発明による生成物および方法は、様々な種類のヒドロゲル、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、コポリマーまたはそれらの混合物、あるいはコポリマーまたはポリオレフィンを含むこれらの混合物にも適用される。ポリマー材料は、本明細書において、様々な形態のポリエチレン、例えば、樹脂、粉末、フレーク、粒子、粉末、またはそれらの混合物、または上記のいずれかに由来する固化形態にも適用される。ポリマー材料は、本明細書において、様々な形態のヒドロゲル、例えば、フィルム、押出成形物、フレーク、粒子、粉末、またはそれらの混合物、あるいは上記のいずれかに由来する固化形態にも適用される。
【0173】
用語「添加剤」とは、ベースポリマーに50v/v%未満で加えることができる材料を示す。この材料は、ベースポリマーの分子量より低い分子量を有する有機または無機材料であり得る。添加剤はポリマー材料に異なる特性を与えることができる、例えば、添加剤は可塑剤、核形成剤、または酸化防止剤であり得る。
【0174】
用語「可塑剤」とは、当技術分野において公知のもの、ベースポリマーの分子量より低い分子量を有する材料、例えば照射していないまたは架橋した超高分子量ポリエチレン中ビタミンE(α−トコフェロール)または高分子量ポリエチレン中の低分子量ポリエチレンを示し、どちらの場合も、超高分子量ポリエチレンがベースポリマーである。可塑剤は、一般に、ベースポリマーに約20重量%未満で加えられる。可塑剤は、一般に、柔軟性を増加させ、ポリマー材料を軟らかくする。
【0175】
用語「可塑化」または「可塑化すること」とは、可塑剤が、それと接触しているポリマー材料に与える特性を示す。これらの特性には、限定されるものではないが、破断点伸びの増加、剛性の低下、および延性の増加が含まれ得る。
【0176】
「核形成剤」とは、当技術分野で公知の添加剤、ポリマー材料の結晶化速度を増加させる、ベースポリマーの分子量より低い分子量を有する有機または無機材料を示す。一般に、有機カルボン酸塩、例えば炭酸カルシウムは、ポリオレフィンに対する良好な核形成剤である。また、核形成剤は、一般に、0.5重量%のような低濃度で用いられる。
【0177】
「架橋性ポリマー材料」とは、ポリマー材料を示し、例えば、UHMWPEは、架橋用化学薬品(過酸化物および/またはシランなど)および/または照射を使用する方法を含む様々なアプローチによって架橋させることができる。架橋に好ましいアプローチでは照射を使用する。架橋したUHMWPEは、米国特許第5,879,400号、米国特許第6,641,617号、およびPCT/US97/02220号の教示に従って低温照射、中温照射、または溶融照射によっても得ることができる。
【0178】
「固化したポリマー材料」とは、固体、固化したバーストック、ストックから機械加工した固体材料、または本明細書において記載する、固化させることができるあらゆる形態(例えば、樹脂、粉末、フレーク、粒子、またはそれらの混合物)に由来するポリマー材料の半固体形態を示す。固化したポリマー材料は、スラブ、ブロック、固体バーストック、機械加工したコンポーネント、フィルム、チューブ、バルーン、予備成形物、インプラント、完成した医療用具、または未完成の装置の形態でもあり得る。
【0179】
「結晶化度」とは、結晶性であるポリマーの割合を意味する。結晶化度は、サンプルの重量(グラム数で表示した重量)、融解中にサンプルによって吸収された熱(E、J/gで表示)およびポリエチレン結晶の融解熱(ΔH=291J/g)を知り、ASTM F2625などまたはそれらの後継による次の式:
結晶化度%=E/w・ΔH
を用いることによって算出される。
【0180】
引張「弾性率」は、標準試験ASTM 638 M IIIなどまたはそれらの後継を用いて決定される歪みについての公称応力と対応する歪みとの比率を意味する。
【0181】
用語「非永久装置」とは、当技術分野において、数ヶ月より短い期間体内に埋め込むことを目的とする装置として公知のものを示す。非永久装置の中には、体内に数秒間〜数分間存在するものもあれば、数日、数週間、または数ヶ月まで埋め込むことができるものもある。非永久装置としては、例えば、カテーテル、チューブ、静脈チューブ、および縫合糸が挙げられる。
【0182】
「医薬品」とは、本明細書において記載するように、粉末、懸濁液、エマルジョン、粒子、フィルム、ケーキ、または成形した形態にある薬物を示す。薬物は、独立したものにも、医療用具のコンポーネントとして組み込むこともできる。
【0183】
用語「圧力チャンバー」とは、内部圧力を大気圧より高いレベルに上昇させることができる容器またはチャンバーを示す。
【0184】
用語「包装物」とは、医療用具を中に入れて包装および/または輸送する容器または容器群を示す。包装物には、いくつかのレベルの材料が含まれ、それらとしては、バッグ、ブリスターパック、熱収縮性包装物、箱、アンプル、ビン、チューブ、トレーなどまたはそれらの組合せが挙げられる。単一コンポーネントをいくつかの個別タイプの包装物で輸送してよく、例えば、そのコンポーネントをバッグに入れ、それを次にトレーに載せ、それを次に箱に入れることができる。組立品全体を滅菌し、輸送することができる。包装材料としては、限定されるものではないが、硫酸紙、多層ポリエチレン、ナイロン6、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリ塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーフィルム、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーが挙げられる。
【0185】
用語「封止(すること)」とは、チャンバーまたは包装物の開口部を閉鎖することによってチャンバーまたは包装物を外部環境から隔離する工程を示す。封止は様々な手段によって達成することができ、それらの手段には、熱適用(例えば、熱封止すること)、接着剤の使用、クリンプ加工、冷成形、ステープル留め、または加圧が挙げられる。
【0186】
用語「ブリスターパック」とは、包装された内容物を取り出すために剥がすかまたは穴を開ける蓋などが付いた硬質プラスチックボウルからなる包装物を示す。蓋は、アルミニウム、またはガス透過性メンブラン(例えばTyvek)製である場合が多い。ブリスターパックは、吹込成形されることが多く、吹込成形はプラスチックをその変形温度より高く加熱し、その際に加圧ガスがプラスチックを必要な形状にするという工程である。
【0187】
用語「熱収縮性包装物」とは、内部に高度の配向を有するプラスチックフィルム、バッグ、またはチューブを示す。熱を適用すると、配向した鎖が縮むにつれて包装物は収縮し、医療用具の周囲をぴったりと包み込むことが多い。
【0188】
用語「椎間板システム」とは、脊柱の中で脊椎を分離する人工椎間板を示す。このシステムは一種類の材料から構成されていても、または複合構造(例えば、金属エッジを含む架橋したUHMWPE)でもあり得る。
【0189】
用語「バルーンカテーテル」とは、当技術分野において、血管または類似物の内部の空間を広げるために用いられる装置として公知のものを示す。バルーンカテーテルは、通常、膨脹可能な先端を有する薄壁ポリマー装置であり、閉塞した動脈、ステントを広げることができ、または血圧を測定するのに用いることができる。一般的に用いられるポリマーバルーンとしては、例えば、ポリエーテル−ブロック コ−ポリアミドポリマー(PeBAX(登録商標))、ナイロン、およびポリエチレンテレフタレート(PET)バルーンが挙げられる。バルーンおよびカテーテルに一般的に用いられるポリマー材料としては、例えば、ポリエーテルとポリアミドとのコポリマー(例えば、PeBAX(登録商標))、ポリアミド、ポリエステル(例えば、PET)、およびカテーテル製造に用いられるエチレンビニルアルコール(EVA)が挙げられる。
【0190】
医療用チューブ:静脈チューブを含む医療用チューブに用いられる材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリオレフィン、および混合物もしくは合金(熱可塑性エラストマーなど)、ポリアミド/イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、または様々なフルオロポリマーが挙げられる。
【0191】
用語「ステント」とは、当技術分野において、体の脈管(血管など)を開放した状態にしておくのに用いられる金属製またはポリマー製ケージ用装置として公知のものを示す。ステントは、通常、折りたたまれた状態で体内に導入され、体内の所望の場所でバルーンカテーテルにより拡張され、そこにとどまる。
【0192】
「溶融転移温度」とは、材料中の総ての結晶性ドメインが消失する最低温度を示す。
【0193】
本発明における用語「界面」とは、インプラントが、あるコンポーネントが別の部品(金属または非金属コンポーネントなど)と接触する配置にある時に形成される、医療用具におけるニッチとして定義され、これはポリマーと金属または別のポリマー材料との界面を形成する。例えば、ポリマー−ポリマーまたはポリマー−金属の界面は、医療用人工器官、例えば整形外科用関節および骨置換品(例えば、股関節部、膝、肘、または足関節置換物)中にある。
【0194】
ポリエチレンと、密に接触する工場組み立て部品とを含む医療用インプラントは界面を形成する。ほとんどの場合、界面はガス滅菌工程中にエチレンオキシドガスまたはガスプラズマに容易に接近することができない。
【0195】
「照射」、本発明の一つの態様においては、好ましくは電離する種類の放射線を用いる。本発明の別の態様によれば、約25kGy〜約1000kGyの範囲の電離放射線量を用いる。放射線量は、約25kGy、約50kGy、約65kGy、約75kGy、約100kGy、約150kGy、約200kGy、約300kGy、約400kGy、約500kGy、約600kGy、約700kGy、約800kGy、約900kGy、もしくは約1000kGy、もしくは約1000kGyを超える、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値であり得る。好ましくは、放射線量は、約25kGy〜約150kGy間または約50kGy〜約100kGyであり得る。γ線、X線、および/または電子線を含むこれらの種類の放射線は、細菌、ウイルス、または界面を含む医療用インプラントを汚染する可能性がある他の微生物因子を殺すかまたは不活性化させ、それによって製品の無菌性を達成する。本発明によれば、電子照射またはγ線照射であってよい照射は、酸素を含む空気雰囲気中で行うことができ、この際、雰囲気中の酸素濃度は少なくとも1%、2%、4%、もしくは約22%まで、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値である。別の態様では、照射を不活性雰囲気中で行うことができ、この際、雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど、またはそれらの組合せからなる群から選択されるガスを含む。照射は、増感ガス(アセチレンなど)または混合物または不活性ガスもしくは不活性ガス(群)を含む増感ガス中でも行うこともできる。また、照射は真空中でも行うこともできる。さらに、照射は、室温においても、または室温〜ポリマー材料の融点間でも、またはポリマー材料の融点より高い温度でも行うこともできる。照射は、電子線、γ線、および/またはX線を用いて任意の温度でまたは任意の線量率で行うことができる。照射温度は、ポリマーの融点より低い場合も高い場合もある。ポリマーは、加熱し、その後照射する。あるいは、ビームによって発生した熱、すなわち放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によって、ポリマーの温度を高めることができる。照射工程の後に、ポリマーは、融解させるために加熱することができ、またはアニールのためにその融点より低い温度に加熱することができる。これらの照射後熱処理は、空気中で、不活性ガス中でおよび/または真空中で行うことができる。また、照射は、放射線量をわずかに増加させて行うことができ、いくつかの実施形態においては、これらの一連の漸増照射に熱処理を割り込ませることができる。連続照射は、約1kGy、約10kGy、約20kGy、約30kGy、約40kGy、約50kGy、約100kGy、またはそれ以上の放射線量増分で行うことができる。各増加間にまたは一部の増加間にポリマーを融解工程および/またはアニール工程により熱処理することができる。照射後の熱処理とは、主として、照射によって生成されるポリマー中の残留フリーラジカルを低減または除去し、および/または結晶性物質を除去し、および/またはポリマー中に存在し得るあらゆる抽出可能物の除去を手助けすることである。
【0196】
本発明の好ましい特徴によれば、照射は増感雰囲気中で行ってよい。この増感雰囲気は、ポリマー中に拡散するのに十分な小さな分子サイズでありかつ照射によって多官能性グラフト化部分として作用する、ガス状物質を含んでなってもよい。例としては、置換または非置換ポリ不飽和炭化水素、例えば、アセチレン系炭化水素(アセチレンなど)、共役または非共役オレフィン系炭化水素(ブタジエンおよび(メタ)アクリレートモノマーなど)、一塩化硫黄が挙げられ、クロロ−トリ−フルオロエチレン(CTFE)またはアセチレンが特に好ましい。「ガス状」とは、本明細書において、増感雰囲気がその臨界温度よりも高温または低温で、照射温度で気相にあることを意味する。
【0197】
電子放射を利用する場合には、電子のエネルギーも、照射を受けたポリマーの特性を調整するために変化させることができるパラメーターである。特に、電子エネルギーの違いによって電子のポリマー中への浸透深さは異なる。実際の電子エネルギーは約0.1MeV〜16MeVの範囲であり、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量浸透レベルを与える。最大浸透に好ましい電子エネルギーは約10MeVであり、Studer (Daniken, Switzerland)またはE-Beam Services (New Jersey, USA)などのベンダーを通じて商業的に入手可能である。ポリマーの表面層が優先的に架橋され、表面からの距離の関数として架橋密度勾配を示す実施形態においては、より低い電子エネルギーが好ましいかもしれない。
【0198】
用語「線量率」とは、放射を行う速度を示す。線量率は数多くの方法によって制御することができる。一つの方法は、電子線の出力、スキャン幅、コンベヤー速度、および/またはサンプルとスキャンホーンとの距離を変えることによるものである。別の方法は、照射を複数回のパスで行い、必要に応じて、間に冷却工程または加熱工程を加えることによるものである。γ線およびX線放射の場合には、線量率を、サンプルと放射線源との距離、放射線源の強度、放射線源によるサンプル通過速度によって制御する。
【0199】
しかしながら、γ線照射は、一般に、低い放射線量率を提供し、より長い時間を必要とする。そのため、特にγ線照射が空気中で行われる場合には、より深い酸化が起こる可能性がある。電子線照射、一般に、より限られた線量浸透深さを与え、必要な時間はより短い。そのため、照射が空気中で行われる場合には、広範囲の酸化の危険性が減少する。加えて、所望の線量レベルが高い(例えば、20Mrad)場合には、γ線照射を1日かけて行ってよいが、実用的でない生産時間となる。その一方で、電子線の線量率は、照射パラメーター(コンベヤー速度、スキャン幅、および/またはビーム出力など)を変更することによって調整することができる。適当なパラメーターを用いて、20Mradの溶融照射を、例えば10分足らずで終えることができる。電子線の浸透は、100万電子ボルト(MeV)で測定されるビームエネルギーに依存する。大部分のポリマーは、約1g/cm3の密度を示し、2〜3MeVのビームエネルギーでは約1cmの浸透、10MeVのビームエネルギーでは約4cmの浸透となる。電子線の浸透は、照射温度の上昇とともに少し、増加することが知られている。電子線照射が好ましい場合には、所望の浸透深さは、ビームエネルギーに基づいて調整することができる。従って、好ましい浸透深さ、時間制限および許容酸化レベルに基づいて、γ線照射または電子線照射を用いてよい。
【0200】
許容線量率の範囲は、国際出願WO 97/29793号に例示されている。一般に、許容線量率は、0.5Mrad/パス〜50Mrad/パス間で変化する。許容線量率の上限は、照射によって生じるキャビテーション/亀裂に対するポリマーの抵抗性によって決まる。
【0201】
電子放射を利用する場合には、電子のエネルギーも、照射を受けたポリマーの特性を調整するために変化させることができるパラメーターである。特に、電子エネルギーの違いによって電子のポリマー中への浸透深さは異なる。実際の電子エネルギーは約0.1MeV〜16MeVの範囲であり、それぞれ、0.5mm〜8cmの近似等線量浸透レベルを与える。最大浸透に好ましい電子エネルギーは約10MeVであり、Studer (Daniken, Switzerland)またはE-Beam Services (New Jersey, USA)などのベンダーを通じて商業的に入手可能である。ポリマーの表面層が優先的に架橋され、表面からの距離の関数として架橋密度勾配を示す実施形態においては、より低い電子エネルギーが好ましいかもしれない。
【0202】
本発明の別の態様によれば、許可された米国特許第7,205,339号(この方法論は引用することにより本明細書の開示の範囲とされる)に開示されているように、前記ポリマー予備成形物は照射方向に垂直な方向にも架橋密度勾配を有し、この場合、架橋密度勾配を与えるように、照射中に部分的に放射を遮断するためにポリマー予備成形物の一部を優先的に保護し、そして架橋密度勾配が望ましい場合に優先的な保護を用い、その架橋密度勾配は優先的に保護されたポリマー予備成形物上で照射方向に垂直な方向に存在する。
【0203】
「金属部品」:本発明によれば、ポリマー材料との界面を形成する部品は、例えば、金属である。ポリマー材料と機能的関係にある金属部品は、本発明によれば、例えば、コバルトクロム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金またはニッケルコバルト合金から製造することができる。
【0204】
「非金属部品」:本発明によれば、ポリマー材料との界面を形成する部品は、例えば、非金属である。ポリマー材料と機能的関係にある非金属部品は、本発明によれば、例えば、セラミック材料から製造することができる。
【0205】
用語「不活性雰囲気」とは、酸素含有量が1%以下である環境、より好ましくは、滅菌工程中にポリマー材料中のフリーラジカルが架橋を形成し酸化しない、酸化体を含まない状態を示す。不活性雰囲気は、O2を避けるために用い、そうしない場合にはUHMWPEなどのポリマー材料を含んでなる医療用具を酸化させることになる。不活性雰囲気条件(窒素、アルゴン、ヘリウム、またはネオンなど)は、電離放射線によりポリマー製医療用インプラントを滅菌するために用いられる。
【0206】
不活性雰囲気条件(窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、または真空など)は、電離放射線により医療用インプラント中のポリマー−金属および/またはポリマー−ポリマー界面を滅菌するためにも用いられる。
【0207】
不活性雰囲気条件は、不活性ガス、不活性流体、または不活性液体媒質、例えば、窒素ガスまたはシリコーン油も示す。
【0208】
「無酸素環境」とは、酸素含有量が21%〜22%未満、好ましくは酸素含有量が2%未満の窒素などのガスを含有する環境を示す。無酸素環境中の酸素濃度は、少なくとも約1%、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、もしくは約22%まで、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値でもあり得る。
【0209】
用語「真空」とは、感知できる量のガスを含まない環境を示し、滅菌工程中にポリマー材料中のフリーラジカルが架橋を形成し、酸化しないことになる。真空は、O2を避けるために用い、そうしない場合にはUHMWPEなどのポリマー材料を含んでなる医療用具を酸化させることになる。真空条件は、電離放射線によりポリマー製医療用インプラントを滅菌するために用いることができる。
【0210】
真空条件は、市販の真空ポンプを用いて作り出すことができる。また、真空条件は、電離放射線により医療用インプラント中のポリマー−金属および/またはポリマー−ポリマー界面を滅菌する際にも用いることができる。
【0211】
「増感環境」または「増感雰囲気」とは、残留フリーラジカルと反応して、残留フリーラジカルの再結合を促進することができる増感ガスおよび/または液体成分(群)を含有する(室温の)ガスおよび/または液体の混合物を示す。ガスはアセチレン、クロロ−トリフルオロエチレン(CTFE)、エチレンなどであってよい。ガスまたはそれらのガスの混合物は希ガス(例えば窒素、アルゴン、ネオンなど)を含有していてよい。前記混合物中には、二酸化炭素または一酸化炭素などの他のガスも存在していてよい。装置製造中に処理材料の表面を機械加工する場合には、ガス混合物は酸素などの酸化ガスも含有し得る。増感環境は、異なる数の炭素を有するジエン、またはそれらの液体および/またはガスの混合物であり得る。増感液体成分の例はオクタジエンまたは他のジエンであり、これらは他の増感液体および/または非増感液体(ヘキサンまたはヘプタンなど)と混合することができる。増感環境としては、増感ガス、例えばアセチレン、エチレン、もしくは同様のガスもしくはガスの混合物、または増感液体、例えば、ジエンを挙げることができる。この環境は、室温から材料の融点より低い温度までの範囲の温度に加熱する。
【0212】
本発明のある特定の実施形態においては、増感ガスおよび/または液体もしくはそれらの混合物、不活性ガス、空気、真空、および/または超臨界流体は、本明細書において開示する方法工程(混合する(bending)工程、混合する(mixing)工程、固化させる工程、急冷する工程、照射する工程、アニールする工程、機械的に変形させる工程、ドープする工程、均質化する工程、加熱する工程、融解させる工程、および最終生成物(医療用インプラントなど)を包装する工程を含む)のいずれにおいても存在し得る。
【0213】
「残留フリーラジカル」とは、ポリマーをγ線または電子線照射などの電離放射線に曝した場合に生成するフリーラジカルを示す。フリーラジカルの一部は互いに再結合して、架橋を形成するが、一部は結晶性ドメイン内に取り込まれた状態になる。取り込まれたフリーラジカルはまた、残留フリーラジカルとも呼ばれる。
【0214】
本発明の一つの態様によれば、電離放射(γ線または電子線など)中に生成した、ポリマー中の残留フリーラジカルのレベルは、好ましくは電子スピン共鳴を用いて決定し、適切に処理して、フリーラジカルを低減させる。
【0215】
「滅菌」:本発明の一つの態様においては、ポリマー材料(架橋したUHMWPEなど)を含む医療用インプラントの滅菌工程を開示する。この工程は、γ線または電子線放射で、例えば、約25〜70kGyの範囲の線量レベルでの電離滅菌により、あるいはエチレンオキシドまたはガスプラズマでのガス滅菌により医療用インプラントを滅菌することを含む。
【0216】
本発明の別の態様は、ポリマー材料(架橋したUHMWPEなど)を含む医療用インプラントの滅菌工程を開示する。この工程は、γ線または電子線放射で、例えば、25〜200kGyの範囲の線量レベルでの電離滅菌により医療用インプラントを滅菌することを含む。滅菌の線量レベルは、照射に用いる標準的なレベルよりも高い。これは、滅菌中に医療用インプラントを架橋させるかまたはさらに架橋させるためである。
【0217】
本発明の一つの態様は、製造工程中に医療用インプラントのポリマーコンポーネントにドープした後、ポリマー材料の融点に応じた期間加熱することによって、酸化防止剤の均一性を増加させる工程を開示する。例えば、好ましい温度は約137℃以下である。本発明の別の態様は、空気中、酸素を含む雰囲気中で行うことができ、この際、酸素濃度は少なくとも約1%、2%、4%、もしくは約22%まで、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値である、加熱工程を開示する。別の態様においては、本発明は、インプラントを不活性雰囲気と接触させながら行うことができ、この際、不活性雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど、またはそれらの組合せからなる群から選択されるガスを含む、加熱工程を開示する。別の態様においては、本発明は、インプラントを非酸化性媒質(不活性液状媒体など)と接触させながら行うことができ、この際、媒質は酸素含有量が約1%以下である、加熱工程を開示する。別の態様では、本発明は、インプラントを真空中において行うことができる加熱工程を開示する。
【0218】
用語「放射線による熱」とは、照射工程中に電子またはγ線によって蓄積されたエネルギーの一部が熱へと変換された結果として発生した熱を示す。放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、主として、照射中にサンプルが熱的に絶縁される程度に依存する。良好な断熱性である場合には、発生した熱の大部分は、周囲へ逃すことなく、照射温度より高い温度へのポリマーの放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱)へと導かれる。この加熱は、周囲への熱損失を最小限に抑えるのに十分な高い線量率を用いることによっても誘導することもできた。この放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、数多くの処理パラメーター(例えば線量率、サンプルの初期温度、吸収放射線量など)に依存する。放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、照射を受けたサンプルにおいて放射線量が熱へと変換された結果である。サンプルの温度が融解中に十分な高さである場合には、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)により結晶の融解が起こる。ポリマーの初期温度が低い(例えば、室温付近または40℃)場合でさえも、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)は、照射中にポリマーの温度を上昇させるほどに高いものであり得る。初期温度および放射線量が高すぎる場合には、放射線による加熱(断熱的な加熱および部分的に断熱的な加熱を含む)によってポリマーの完全融解が起こる可能性がある。
【0219】
理論熱力学においては、「断熱的な加熱」とは、周囲への熱伝達がないことを示すということも言及しておかなければならない。実施に際して、例えば、新しいポリマー材料の作出において、「断熱的な加熱」とは、十分な大多数の熱エネルギーが出発材料に与えられ、周囲には伝達されないという状況を示す。このような断熱的な加熱は、本明細書において、そして本明細書において引用する文献において開示されているように、絶縁、照射線量率、および照射期間を組み合わせることによって行うことができる。よって、理論的な意味において断熱的な加熱にほぼ近いものが、実質的な意味において断熱的な加熱となる。しかしながら、総ての中温照射が「断熱的な加熱」を示すとは限らない。中温照射は、また非断熱的な加熱または部分的に(例えば発生した熱の10〜75%が周囲へと失われる)断熱的な加熱も与え得る。
【0220】
本発明のある態様においては、室温照射とは、ポリマー材料が周囲と同じ温度であり、照射前または照射中に外部発熱体による加熱を受けないということを示す。しかしながら、照射自体がポリマー材料を温める可能性がある。一部の例では、放射線量はより低く、それによりポリマー材料中の温度の上昇はわずかに起こるだけであるが、他の一部の例では、放射線量がより高く、それによりポリマー材料中の温度の大幅な上昇が起こる。同様に、線量率も照射中のポリマー材料の加熱において重要な役割を果たす。低線量率においては、温度上昇はより小さく、一方、線量率が高いほど放射線が与える加熱は断熱的な状態となり、ポリマー材料の温度の上昇が大きくなる。これらの例のいずれにおいても、放射線以外の加熱源が存在しない限り、この工程は室温照射と考えられる。
【0221】
本発明の別の態様においては、酸化防止剤の均一性を増加させるためのインプラントの加熱方法を記載する。UHMWPEなどのポリマー原材料を含んでなる医療用具を、酸化防止剤のドーピング工程後に、一般に、約137℃以下の温度に加熱する。この医療用具は、酸化防止剤の所望の均一性に達するまで、不活性媒質中で加熱状態にしておく。
【0222】
用語「融点未満で」または「融解しない温度で」とは、ポリマー材料、例えばポリエチレン(UHMWPEなど)の融点より低い温度を示す。用語「融点未満で」または「融解しない温度で」とは、約145℃より低い温度を示し、これはポリマー材料の融点によって異なり(例えば、約145℃、140℃、または135℃)、さらに処理するポリマー材料の特性、例えば、平均分子量および分子量範囲、バッチ変動などによっても異なる。融点は、一般に、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の加熱速度で測定する。このようにして測定されるピーク融点を融点と呼び、また結晶相から非晶相への温度の遷移範囲とも呼び、例えば、あるグレードのUHMWPEではおよそ137℃で、起こる。融点を測定し、照射とアニールの温度を決定するために、出発ポリマー材料についての融解研究を行うことが望ましい場合がある。一般に、ポリマー材料の融点は、ポリマー材料を圧力下におくと、上昇する。
【0223】
用語「加熱(すること)」とは、所望の加熱温度におけるまたは所望の加熱温度へのポリマーの熱処理を示す。一つの態様においては、加熱は、約10℃/分の速度で所望の加熱温度へ行うことができる。別の態様においては、加熱は、所望の加熱温度で所望の期間行うことができる。言い換えれば、加熱するポリマーを、融解しないまたは融解を超える所望の温度において、所望の期間加熱し続けることができる。所望の加熱温度におけるまたは所望の加熱温度への加熱時間は、少なくとも1分〜48時間〜数週間であり得る。一つの態様においては、加熱時間は約1時間〜約24時間である。別の態様においては、加熱は、照射前または照射後に、本明細書において記載する総ての期間行うことができる。加熱温度とは、本発明による加熱についての熱的条件を示す。加熱は、照射中、照射前、および/または照射後を含む工程のあらゆる時点において行うことができる。加熱は、発熱体を用いて行うことができる。他のエネルギー源としては、環境および照射が挙げられる。
【0224】
用語「アニール(すること)」とは、本発明によるポリマーの加熱または熱処理条件を示す。アニール(すること)とは、一般に、ポリマーをそのピーク融点より低い所望の温度において所望の期間加熱し続けることを示す。アニール時間は少なくとも1分〜数週間であり得る。一つの態様においては、アニール時間は約4時間〜約48時間、好ましくは24〜48時間、より好ましくは約24時間である。「アニール温度」とは、本発明によるアニールについての熱的条件を示す。アニールは、照射中、照射前、および/または照射後を含む工程のあらゆる時点において行うことができる。
【0225】
本発明のある特定の実施形態においては、アニールは、例えば、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン またはヘリウム)中で、真空中で、空気中で、および/または増感雰囲気(例えば、アセチレン)中で行うことができる。
【0226】
用語「接触した」とは、増感物質がその目的の機能を果たせるようにする、物理的近接または接触を含む。好ましくは、ポリマー組成物または予備成形物を、増感物質中に浸漬されるように十分に接触させ、これによって十分な接触を確保する。浸漬は、サンプルを特定の環境中に適当な温度で十分な期間入れることとして定義され、例えば、サンプルの酸化防止剤溶液中への浸漬である。この環境は、室温〜材料の融点より低い温度範囲の温度に加熱する。接触時間は、少なくとも約1分〜数週間であり、この期間は環境の温度によって異なる。
【0227】
用語「非酸化性」とは、ASTM F2102または同等の規格に従ってポリマー材料を空気中80℃の炉において5週間老化させた後に酸化指数(A.U.)が約0.5未満であるポリマー材料の状態を示す。よって、非酸化性の架橋したポリマー材料は、一般に、老化期間後、約0.5未満の酸化指数(A.U.)を示す。
【0228】
用語「酸化的に安定な」、「酸化安定性」、または「耐酸化性の」とは、ポリマー材料を空気中80℃の炉において5週間老化させた後に酸化指数(A.U.)が約0.1未満であるポリマー材料の状態を示す。よって、酸化的に安定なまたは耐酸化性の、架橋したポリマー材料は、一般に、老化期間後、約0.1未満の酸化指数(A.U.)を示す。
【0229】
用語ポリマー材料の「表面」とは、一般に、ポリマー材料またはポリマーサンプルまたはポリマー材料を含んでなる医療用具の、厚さが約1.0μm〜約2cm、好ましくは約1.0mm〜約5mm、より好ましくは約2mmである材料外部領域を示す。
【0230】
用語ポリマー材料の「本体」とは、一般に、ポリマー材料の表面からポリマー材料の中心までの、厚さが約1.0μm〜約2cm、好ましくは約1.0mm〜約5mm、より好ましくは約2mmである、材料内部領域を示す。しかしながら、この本体は、より高い濃度の酸化防止剤と接触する可能性がある、ポリマー材料の選択側面またはフェース(任意の選択表面を含む)を含み得る。
【0231】
用語ポリマー材料の「表面」および「本体」とは、一般に、それぞれ、外部領域および内部領域を示すが、一般には、これらの二領域間に分離境界はない。これらの領域はむしろ勾配のように遷移するものである。これらの領域は対象の大きさおよび形状ならびに用いる樹脂に基づいて異なり得る。
【0232】
用語「ドープすること(ドーピング)」とは、当技術分野で公知の一般的な工程(例えば、米国特許第6,448,315号および同第5,827,904号参照)を示す。これに関して、ドープすること(ドーピング)とは、一般に、本明細書において記載するように、ある特定の条件下でポリマー材料を酸化防止剤と接触させることを示し、例えば、超臨界条件下でのUHMWPEへの酸化防止剤のドーピングである。
【0233】
酸化防止剤のドーピングをポリマー材料の融点より高い温度で行う本発明のある特定の実施形態においては、酸化防止剤をドープしたポリマー材料は、照射後に残留フリーラジカルを除去するために、融解を超えてさらに加熱するか、またはアニールすることができる。酸化防止剤(ビタミンEなど)の存在下でのポリマー材料の溶融照射は、ビタミンE濃度分布を変化させ得、さらにポリマー材料の機械的特性も変化させ得る。これらの変化は、結晶化度の変化によっておよび/またはある特定の濃度のビタミンEの可塑化効果によって生じ得る。
【0234】
一つの実施形態によれば、ポリマー材料の表面は、酸化防止剤とほとんどまたは全く接触せず、ポリマー材料の本体はより高い濃度の酸化防止剤と接触する。
【0235】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の表面は酸化防止剤と全く接触せず、ポリマー材料の本体はより高い濃度の酸化防止剤と接触する。
【0236】
一つの実施形態によれば、ポリマー材料の本体は酸化防止剤とほとんどまたは全く接触せず、ポリマー材料の表面はより高い濃度の酸化防止剤と接触する。
【0237】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の本体は酸化防止剤と全く接触せず、ポリマー材料の表面はより高い濃度の酸化防止剤と接触する。
【0238】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の表面およびポリマー材料の本体は同じ濃度の酸化防止剤と接触する。
【0239】
一つの実施形態によれば、ポリマー材料の表面は、約0重量%〜約50重量%、好ましくは約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.01重量%〜約0.5重量%間、より好ましくは約0.2重量%の酸化防止剤を含み得る。別の実施形態によれば、ポリマー材料の本体は、約0重量%〜約50重量%、好ましくは約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.01重量%〜約0.5重量%間、より好ましくは約0.2重量%、好ましくは約0.2重量%〜約1%重量%間、好ましくは約0.5重量%を含み得る。
【0240】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の酸化防止剤濃度は、約1ppm〜約10,000ppm、好ましくは約100ppm、約500ppm、約1000ppm、約2000ppm、約3000ppm、約5000ppm、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の値までであり得る。
【0241】
別の実施形態によれば、放射線量は、所望の架橋密度を達成するために、酸化防止剤の濃度に応じて調整される。同じ架橋密度を達成するためには、一般に、酸化防止剤濃度が高いほどより高い線量レベルが必要である。
【0242】
別の実施形態によれば、ポリマー材料の表面およびポリマー材料の本体は同じ濃度の酸化防止剤を含む。
【0243】
さらに詳しくは、固化したポリマー材料には、この材料を酸化防止剤の溶液中に浸漬することによって酸化防止剤をドープすることができる。これにより酸化防止剤をポリマー中に拡散させることができる。例えば、ポリマー材料を100%酸化防止剤中に浸漬することができる。また、ポリマー材料を酸化防止剤溶液中に浸漬することができ、この酸化防止剤溶液には酸化防止剤濃度を希釈するために担体溶媒を用いることができる。酸化防止剤の拡散深さを増加するために、ポリマー材料を、より長い期間、より高い温度で、より高い圧力で、および/または超臨界流体の存在下でドープすることができる。
【0244】
酸化防止剤は、表面から約5mm以上の深さに、例えば、約3〜5mm、約1〜3mmの深さに、またはその辺りのもしくはそれらの間の任意の深さに拡散させることができる。
【0245】
ドーピング工程は、ポリマー材料、医療用インプラント、または装置を酸化防止剤(ビタミンEなど)とともに、約半時間〜最大数日間、好ましくは約1時間〜24時間、より好ましくは1時間〜16時間浸漬することを必要とする場合がある。酸化防止剤は、室温においてまたは約137℃まで加熱し、ドーピングは、室温においてまたは約137℃までの温度で行うことができる。好ましくは、酸化防止剤溶液は、約100℃〜135℃間または約110℃〜130℃間の温度に加熱し、ドーピングは、約100℃〜135℃間または約110℃〜130℃間の温度で行う。より好ましくは、酸化防止剤溶液は約120℃に加熱し、ドーピングは約120℃で行う。
【0246】
照射ポリマー材料の融点より高い温度での(例えば、UHMWPEの場合には、137℃より高い温度での)拡散によるα−トコフェロールドーピングは、減圧下、周囲圧力下、高圧下、および/または密閉チャンバー中で、約0.1時間〜最大数日間、好ましくは約0.5時間〜6時間以上、より好ましくは約1時間〜5時間行うことができる。酸化防止剤は、約137℃〜約400℃、より好ましくは約137℃〜約200℃、より好ましくは約137℃〜約160℃の温度であり得る。
【0247】
ドーピング工程および/または照射工程の後に、追加の均質化工程を続けることができる。用語「均質化」とは、ポリマー材料、医療用インプラント、または装置内の酸化防止剤濃度の空間的均一性を向上するための空気中でのまたは無酸素環境中での加熱工程を示す。また、均質化は、照射工程の前および/または照射工程の後に行うこともできる。加熱は、ピーク融点より高くまたはピーク融点より低い温度でまたはピーク融点において行ってよい。酸化防止剤ドープまたは混合物ポリマー材料は、ポリマー材料のピーク融点より低いまたはピーク融点より高いまたはピーク融点の温度で所望の期間均質化することができ、例えば、酸化防止剤ドープまたは混合物ポリマー材料は、室温〜約400℃で約1時間〜数日間均質化することができる。好ましくは、均質化は、90℃〜180℃、より好ましくは100℃〜137℃、より好ましくは120℃〜135℃、最も好ましくは130℃で行う。均質化は、好ましくは、約1時間〜数日〜2週間以上、より好ましくは約12時間〜300時間以上、より好ましくは約280時間、またはより好ましくは約200時間行う。より好ましくは、均質化は、約130℃で約36時間または約120℃で約24時間行う。ポリマー材料、医療用インプラントまたは装置は、均質化工程中、不活性雰囲気(窒素、アルゴン、および/または同様のもの)中に、真空下に、または空気中におく。均質化は、超臨界流体(例えば二酸化炭素など)を含むチャンバー中でも行うことができる。超臨界流体の圧力は、約1000〜約3000psi以上、より好ましくは約1500psiであり得る。また、加圧によりUHMWPEの融点が高まることもわかっている。加えた圧力によってUHMWPEの融点が137℃を超えて上昇した場合には、融点未満での均質化には137℃より高い温度を用いることができる。
【0248】
均質化は、酸化防止剤の高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域までの拡散を促進する。拡散は、一般に、温度が高いほど速い。融点より高い温度では、結晶性ドメインからの拡散の障害が取り除かれ、より速く均質化が起こる。溶融均質化(Melt-homogenization)およびその後の再結晶化により、主にポリマーの結晶化度の低下のために機械的特性が低下する可能性がある。これは、ある特定の用途には許容され、望ましいことさえある。例えば、機械的特性の低下が望ましくない用途では、均質化は、融点未満で行うことができる。あるいは、融解しないまたは融解を超える温度で均質化したサンプルを、機械的特性をさらに向上させるために、高圧結晶化に供してもよい。
【0249】
ポリマー材料、医療用インプラント、または装置は、均質化工程中、不活性雰囲気(窒素、アルゴン、および/または同様のもの)中に、真空下に、または空気中におく。均質化は、超臨界流体(例えば、二酸化炭素など)を含むチャンバー中でも行うことができる。超臨界流体の圧力は、1000〜3000psi以上、より好ましくは約1500psiであり得る。均質化は、酸化防止剤拡散前におよび/または酸化防止剤拡散後におよび/または酸化防止剤拡散中に行うことができる。
【0250】
上記に記載する、各組成物および態様、ならびに各方法および態様は、本明細書に含まれる教示に合致する様々な方法で別のものと組み合わせることができる。本発明の実施形態および態様に従って、総ての方法および各方法における工程を、本明細書に含まれる教示に合致する方法で任意の順序で適用することができ、何度も繰り返すことができる。
【0251】
本発明を次の実施例によりさらに詳細に記載するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0252】
ビタミンE:特に断りのない限り、本明細書において記載する試験には、ビタミンE(Acros(商標) 99%D−α−トコフェロール、Fisher Brand)を用いた。用いたビタミンEは、色が非常に明るい黄色であり、室温において粘性の液体である。その融点は2〜3℃である。
【0253】
ビタミンE指数(A.U.)の決定:UHMWPE中のビタミンE含量を定量するためにフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いる。無次元パラメーターであるビタミンE指数を測定することによってビタミンE含量を定量するためにFTIR(別名赤外線顕微鏡)を用いる。
【0254】
α−トコフェロールに関する吸収ピークは1265cm−1に存在し、これを1895cm−1のメチレンピークに対して正規化する。この割合をビタミンE指数として報告する。
【0255】
サンプルを、サンプルの厚さ方向に100〜200μm厚間のスライスにミクロトーミングすることによって調製する。厚さ方向にα-トコフェロールが広がらないように、切片は、スキャン方向に対して直角にミクロトーミングしなければならない。スライスをFTIR顕微鏡の移動ステージに載せ、表面からサンプルの本体まで特定の間隔でFTIRスペクトルを収集する。
【0256】
ビタミンE指数は、その指数を既知量のビタミンEを含むUHMWPEの切片から作成した較正曲線と比較することによって、絶対濃度へと変換することができる。
【0257】
実施例1.照射したUHMWPE/ビタミンE混合物の棚老化
0.02重量%、0.05重量%、および0.1重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物を圧縮成形によって調製した。混合物に空気中、室温において150kGyおよび200kGyでγ線照射し、その後、試験サンプルを機械加工した。次いで、混合物を、40℃に保った水タンク中に10ヶ月間浸漬することによって老化させた。対照サンプルは、UHMWPEに空気中、室温において150kGyまたは200kGyいずれかでγ線照射し、続いてビタミンE中に120℃で2時間浸漬し、その後120℃で2時間均質化することによって製造した。対照サンプルを空気中でγ線滅菌し、40℃に保った同じ水タンク中で10ヶ月間老化させた。
【0258】
試験サンプルを、ASTM F2102に従って、切断し、ミクロトーミングし、赤外線顕微鏡を用いて分析した。照射を受けた混合物は酸化を受けた、これに対し、対照は検出可能な酸化を示さなかった(図1参照)。図1は、酸化プロファイルを、様々なレベルのビタミンEを含有する粉末から製造したUHMWPEのサンプルの深さの関数として示す。固化後、サンプルに異なる線量レベルで照射した後、水タンク中、40℃で10ヶ月間老化させた。対照には照射した後、老化前にビタミンEでドープした(図1参照)。図1では、水中、40℃での10ヶ月のリアルタイム老化後に、ビタミンEを混合し照射したサンプルが検出可能な酸化を示したことが分かる。酸化は表面において最大であり、開放表面からの深さとともに減少した。酸化は、放射線量レベルが高くなるとともにおよび/またはビタミンE濃度が低くなるとともに酸化は高まった。これに対し、混合し照射したサンプルでは、照射後にビタミンEをドープしたサンプルは10ヶ月後にごくわずかな酸化レベルを示した(IR法の検出限界は酸化指数約0.1である)。照射し、ビタミンEをドープしたサンプルと、混合した後照射したサンプルとの違いは、前者のサンプルではビタミンEが照射を受けないということである。このため、その酸化防止剤の活性は放射線による影響を受けていない状態である。これに対し、後者のサンプルではビタミンEが照射を受けるため、酸化防止剤の能力の一部が弱まり、これにより、図1に示されるように、リアルタイム酸化が起こる。そのため、長期酸化不安定性を防ぐためには、照射を受けた混合物をさらに安定化させる必要がある。興味深いことに、同様の試料での促進老化試験では長期試験で確認された酸化の違いは検出できなかった。
【0259】
実施例2.照射したUHMWPE/ビタミンE混合物のアニール
0.01重量%および0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物を調製し、2.5MeVで作動するバンデグラーフ型電子線発生装置を用いて総吸収放射線量200kGy(図2参照)または100kGy(図3参照)のいずれかで照射した。照射は、空気中、室温において線量率25kGy/パスおよびコンベヤー速度20cm/分とした。各サンプルの半分を、空気中、130℃において8時間アニールした(図4参照)。照射を受けただけのサンプルと、照射しアニールしたサンプルとの両方において電子スピン共鳴(ESR)測定を行った。ESRにより、アニールによる残留フリーラジカル濃度の著しい低減が示された。
【0260】
【表1】
【0261】
図2は、固化後に室温において200kGyで照射した後、130℃において8時間アニールした、ビタミンEとUHMWPEの粉末の混合物の電子スピン共鳴シグナルを示している。ピークサイズの減少は残留フリーラジカルの低減を示す(図2参照)。図3は、固化後に室温において100kGyで照射した後、130℃で8時間アニールした、ビタミンEとUHMWPEの粉末との混合物の電子スピン共鳴シグナルを示す。ピークサイズの減少は残留フリーラジカルの低減を示す(図3参照)。図4は、残留フリーラジカル含量(スピン/g)を処理条件の関数として示している。表1は、アニール前後の照射ビタミンE混合物のフリーラジカル濃度を示している。アニールによってフリーラジカル含量が低減し、この低減はビタミンE濃度の増加とともに効果が高まった。
【0262】
実施例3.照射した混合物の残留フリーラジカル濃度に対する照射温度の効果
0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合物を調製し、2.5MeVで作動するバンデグラーフ型電子線発生装置を用いて総吸収放射線量200kGyまたは100kGyのいずれかに照射した。照射は、空気中、室温、110℃、または120℃において線量率25kGy/パスおよびコンベヤー速度20cm/分とした(図5参照)。図5は、固化後、室温、110℃、および120℃において150kGyで照射した、ビタミンE(0.2重量%)とUHMWPEの粉末の混合物の電子スピン共鳴シグナルを示している。ピークサイズの減少は照射温度の上昇に伴う残留フリーラジカルの低減を示す(図5参照)。三つの試験サンプルの総てを用いて電子スピン共鳴(ESR)測定を行った。ESRにより、照射温度の上昇に伴う残留フリーラジカル(residual freer radicals)濃度の著しい低減が示された。
【0263】
実施例4.中温照射と照射後アニールの比較
上記実施例2および実施例3のサンプルのESRデータを比較した(図6参照)。図6は、固化後、室温、110℃、および120℃において100〜200kGyで照射した、ビタミンE(0.2重量%)とUHMWPEの粉末の混合物についての、室温において100kGyおよび200kGyで照射し、続いて130℃において8時間アニールしたサンプルと比較した、電子スピン共鳴シグナルを示している(図6参照)。低温照射を受けた混合物のアニールは、中温照射よりも良好なフリーラジカルの急冷をもたらした。そのため、これらの混合物の長期安定性をさらに向上させるためは、中温照射した混合物のアニールも有益である。
【0264】
実施例5.照射した混合物の長期促進老化−アニールの効果
実施例4のサンプルを、ASTM F2003−02に従って促進老化に供する(70℃、5気圧 O2 2週間)。アニールしたサンプルは、アニールしなかったサンプルと比較して酸化が著しく減少した。
【0265】
実施例6.照射した混合物中へのビタミンEの拡散
実施例3のサンプルをビタミンE中に120℃において2時間浸漬し、続いてアルゴン中、130℃で12日間均質化を行う。サンプルを、ASTM F2003−02に従って促進老化に供する(70℃、5気圧 O2 2週間)。浸漬/均質化したサンプルは、ドープしなかったサンプルと比較して酸化が減少した。
【0266】
実施例7.照射した混合物の室温においての機械的変形
(i)室温において照射した実施例3のサンプルを室温において機械的に変形させる。変形後、サンプルを120℃に加熱して、その材料をその形状に回復させる。ESRを用いてフリーラジカル濃度を測定し、機械的変形後にフリーラジカル濃度が著しく低減することが分かる。ASTM F2003−02に従って促進老化を行う(70℃、5気圧 O2 2週間)。機械的に変形させたサンプルは、変形させなかったサンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
(ii)120℃において照射した実施例3のサンプルを室温において機械的に変形させる。変形後、サンプルを120℃に加熱して、その材料をその形状に回復させる。ESRを用いてフリーラジカル濃度を測定し、機械的変形後にフリーラジカル濃度が著しく低減することが分かる。ASTM F2003−02に従って促進老化を行う(70℃、5気圧 O2 2週間)。機械的に変形させたサンプルは、変形させなかったサンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
【0267】
実施例8:室温より高い温度で照射した混合物の室温においての機械的変形
(i)室温において照射した実施例3のサンプルを処方物の融点より低い温度で機械的に変形させる。変形後、サンプルを120℃に加熱して、その材料をその形状に回復させる。ESRを用いてフリーラジカル濃度を測定し、機械的変形後にフリーラジカル濃度が著しく低減することが分かる。ASTM F2003−02に従って促進老化を行う(70℃、5気圧 O2 2週間)。機械的に変形させたサンプルは、変形させなかったサンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
(ii)120℃で照射した実施例3のサンプルを処方物の融点より低い温度で機械的に変形させる。変形後、サンプルを120℃に加熱して、その材料をその形状に回復させる。ESRを用いてフリーラジカル濃度を測定し、機械的変形後にフリーラジカル濃度が著しく低減することが分かる。ASTM F2003−02に従って促進老化を行う(70℃、5気圧 O2 2週間)。機械的に変形させたサンプルは、変形させなかったサンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
【0268】
実施例9: ビタミンE−UHMWPEの粉末およびバージンUHMWPEの粉末の混合物
0.2重量%ビタミンE/UHMWPEの混合粉末をバージンUHMWPEの粉末と50−50混合物として混合し、続いて固化を行って、ビタミンE欠損領域を形成する。
固化した材料に、電子線またはγ線放射を用いて線量最大200kGyで、室温または材料の融点より低い温度のいずれかで照射する。次いで、材料を120℃で100時間アニールして、ビタミンEを材料中に均質化する。得られた材料は、ESRで測定した際に測定可能な残留フリーラジカルを示さず、融点未満でアニールした不安定な照射サンプルと比較して著しく減少した酸化を示す。
【0269】
実施例10.UHMWPE/ビタミンE混合物の調製
UHMWPE/ビタミンE混合物は、まず、UHMWPEの粉末とビタミンEを機械的に混合し、それによって高濃度UHMWPE/ビタミンE混合物を形成することによって、調製した。この高濃度混合物をさらに、ビタミンEを含まないバージンUHMWPEの粉末で希釈して、所望のビタミンE濃度を得る。次に、希釈した混合物をブロックに圧縮成形した。試験サンプルは、これらのブロックから機械加工し、下記試験に用いた。
【0270】
実施例11.電子線照射した混合物における断熱温度上昇−2.5MeVでのステーショナリー照射
0.2重量%ビタミンEを混合したGUR 1050 UHMWPEを寸法3インチx3インチx1インチの矩形ブロックに機械加工した。電子線入射表面として示した、3インチx3インチの表面の一つから2mm、5mm、および7mmのところにドリルで三つの穴を開けた。これらの穴に熱電対を入れ、高温テープでしっかり固定した。次に、前記ブロックを、まずグラスファイバー断熱材で、次にアルミニウム箔で包んだ。このようにして、電子線入射表面を除く総ての表面を断熱し、照射中におけるリアルタイムの温度上昇を測定した。ブロックには、2.5MeV バンデグラーフ型電子線発生装置を用いて、ブロックの電子線入射表面を電子線に向けて照射した。コンベヤーベルトは利用せず、電子線下で静止ブロックを用いて照射を行った。放射線量率は約100kGy/分であった。温度上昇は、データ収集ボードを用い、照射中の時間の関数として電子線入射表面からの三つの異なる深さにおいて記録した。図7は、照射中に測定した温度上昇を示している。温度上昇は、電子線放射線の熱エネルギーへの変換に起因するものであった。1kGy=1J/gであることに留意する。最初のうちは、温度は式:エネルギー=比熱x温度変化に従って直線的に増加した。その後、90℃付近ではポリエチレン結晶の融解が始まり、エネルギーの一部が結晶の融解エンタルピーに用いられたために温度上昇速度の減速が起こった。およそ140℃では、熱電対付近のポリエチレンが完全に融解したために温度上昇速度の急激な増加が起こり、温度は、融解したポリエチレンの比熱で上式に従って直線的に上昇し続けたが、この増加は90℃より低い温度での増加より低い。温度上昇は、電子カスケードにおいて電子が最高点に達する電子線入射表面下5mmにおいてより速かったことにも留意する(実施例12参照)。3mmの深さでは、温度上昇の遅れは主として周囲への熱損失に起因しており、決して断熱的ではない加熱が生じた。7mmでは、放射線による加熱条件はより良好であったが、電子カスケードの減少により放射線量率が低下し、それゆえ温度の低下が起こった。
【0271】
実施例12.低温および中温電子線照射した混合物における断熱温度上昇−2.5MeVでの25kGy/パス照射
0.2w%UHMWPE/ビタミンE混合ストック材料の二つのブロック(3インチx3インチx1インチ)を空気対流炉中で約100〜105℃に加熱した。熱電対は、電子線入射表面から3mm、5mm、および7mmのところに入れた。実施例11に記載のとおりにブロックを断熱し、照射のためにコンベヤーベルト上に置いた。線量率は1パス当たり25kGyであった。温度上昇は、照射中の時間の関数として記録した。照射は合計約250kGy放射線量で6パス間続けた。図8は、熱電対を備えた両方のブロックにおいて記録した温度上昇を示している。ブロックの温度は、コンベヤーベルト上でブロックが電子線に達するまでゆっくりと低下した。電子線下では、温度上昇はかなり急速であり、固定照射例での上記の上昇と同様であった。ブロックは電子線下を通過した後、ブロックが電子線に戻るまで温度は低下した。最大温度上昇は、電子カスケードが最高点に達する電子線入射表面下5mmにおいて測定された。電子線下をさらに通過させると、ブロックの温度は連続的に増加した。ある特定の実施形態においては、ポリエチレンを1回のパスで照射することもあれば、複数回のパスで照射することもある。パスの回数および1パス当たりの放射線量を調整して、照射後にポリエチレンにおいて所望の最終温度を達成することができる。
【0272】
実施例13.混合物の低温および中温照射(2.5MeV)
ビタミンE/UHMWPEの混合物のブロック(3インチx3インチx1インチ)を、2.5MeV バンデグラーフ型発生装置(HVRL, MIT)を用いて照射した。照射は、三つの異なる温度、すなわち室温、110℃、および120℃で行った。0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%および1重量%のビタミンE/UHMWPEの混合物から機械加工した四つのブロックを室温照射とした。110℃照射では、室温においてのブロックと同じビタミンE濃度を有する12のブロックを用いた。室温照射および110℃照射の両方において、各混合物の1ブロックを75kGy、100kGy、および150kGyで照射した。120℃照射では、同じビタミンE混合ブロックを用いた。120℃照射での放射線量レベルは、75kGy、100kGy、150kGy、175kGy、および200kGyであった。放射線量率は25kGy/パスであった。これらの照射ブロックのいくつかを、残留ラジカル濃度については電子スピン共鳴を用いて、電子線カスケード効果についてはFTIRを用いて、熱的特性の変化についてはDSCを用いて、そして架橋密度については熱キシレン中での膨潤を用いて、試験した。
【0273】
実施例14.照射した混合物の電子カスケード(2.5MeV)
2.5MeV バンデグラーフ型発生装置(the 2.5MeV Van de Graff geneartor)を用いて室温(room tempetaure)、110℃、および120℃で150kGyで照射した0.5重量%混合物におけるトランス−ビニレン不飽和化を定量することにより、電子線の浸透深さを決定するために、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いた。FTIRはまた、照射中にポリマーで生じる電子カスケードの測定も可能である。このカスケードは、ポリマーのホスト原子から放出される二次電子の数の増加によるものである。二次電子の発生により実効吸収放射線量が高まり、これによりポリマーにおける放射の効果が徐々に増加する。しかしながら、深さの増加に伴って、一次電子はエネルギーを遊離し、これにより電子の有効浸透が急激に減少する。
【0274】
トランス−ビニレン分析をフーリエ変換赤外分光法(FTIR, Bio-Rad FTS2000, Natick MA)を用いて行った。滑走式ミクロトーム(モデル90−91−1177, LKB-Produkter AB, Bromma, Sweden)を用いて薄片(〜150μm)を切断し、続いてASTM規格F2381−04に従って400グリットのサンドペーパー(Buehler Ltd., Lake Bluff IL)で両面を磨いた。その後、薄片においてFTIRを行った。厚さ全体にわたって深さ間隔で赤外スペクトルを収集した。トランス−ビニレンレベルは、950cm−1〜980cm−1の吸光度を積分することによって算出されるトランス−ビニレン指数(TVI)として定量した。ASTM規格F2381−04に従って、積分を1330cm−1〜1396cm−1の吸光度に対して正規化した。
【0275】
図9は、低温および110℃および120℃照射した試験サンプルについて、TVIを、電子線入射表面からの深さの関数として示している。カスケード効果は、室温照射を用いた場合よりも高温で勾配を示した。中温照射は室温においての照射よりも浸透を増加させることも明白であった。照射温度の上昇に伴ってTVIは増加した。
【0276】
実施例15.中温および低温照射した混合物における残留フリーラジカル(2.5MeV)
残留フリーラジカル濃度に対する温度およびビタミンE濃度の効果を確認するために、低温および中温照射したUHMWP/ビタミンE混合物の電子スピン共鳴を行った。試験サンプルには、室温において、110℃で、および120℃において、150kGyで照射した0.2重量%混合物、室温においておよび120℃で150kGyで照射した0.1重量%混合物、室温においておよび120℃において150kGyで照射した0.5%混合物を含めた。照射は、2.3MeV バンデグラーフ型発生装置を用いて行った。ESR試験サンプルは、寸法3mmx3mmx20mmの直角プリズム形態に機械加工した。ESRサンプルの長軸は、電子線入射表面の面内部にあり、総ての試験サンプルにおいて電子線入射表面下およそ3〜6mmにあった。図5および図10は、試験サンプルから記録したESRシグナルを示している。表2は、ESRを用いて測定したスピン濃度を示している。照射温度の上昇に伴って、スピン濃度の低減と関連したESRシグナルの著しい低下があった。ビタミンE濃度の増加によっても残留フリーラジカル濃度は低減した。
【0277】
【表2】
【0278】
実施例16.中温および低温照射した混合物の熱的特性(2.5MeV)
照射した混合物のいくつかの熱的特性を調査するために、示差走査熱量測定(DSC)を用いた。試験サンプルには、室温において250kGyで照射した0.2重量%混合物、110℃において100kGyで照射した0.2重量%混合物、120℃において150kGyで照射した0.2重量%混合物、120℃において175kGyで照射した0.2重量%混合物、および110℃において150kGyで照射した0.2重量%混合物を含めた。
【0279】
DSC分析では、試料を、最初は、−20℃に冷却し、その温度で2分間維持した。次いで、これらの試料を180℃に加熱し、続いて−20℃に冷却し戻し、180℃に再加熱した。この手順の加熱部分も冷却部分も10℃/分の速度で行った。総ての分析は、−20℃から180℃への第1回目の加熱部分および第2回目の加熱部分のサーモグラムに基づいた。ピーク融点および接線開始融点(the tangential onset melting point)を記録した。20℃〜160℃のサーモグラムを積分することによって結晶化度を定量し、100%結晶性UHMWPEの場合には融解エンタルピー291J/gと仮定して結晶化度を算出した。
【0280】
図11および図12は、第1回目の加熱および第2回目の加熱でのDSC中に測定した結晶化度(X)の変化を示す。照射温度の上昇とともに結晶化度が低下し、この効果は第1回目の加熱においてより顕著であった(図11)。サンプルを120℃で照射した場合には、さらに、放射線量の増加に伴って、結晶化度が低下し、低下速度は第2回目の加熱よりも第1回目の加熱において高かった。
【0281】
図13および図14は、研究した試験サンプルの第1回目の加熱のサーモグラムを示しており、図15および図16は、研究した試験サンプルの第2回目の加熱のサーモグラムを示している。放射線量の増加に伴って、低い方の融解ピークの強度は、高い方の融解ピークの強度を犠牲にして増加し、これにより高い方の融解中の結晶(これらはより厚い結晶となると思われる)の集団が減少したこと、そしてこれらの結晶が低い方の融点の結晶へと変換された可能性が高いことが示された。同様に、照射温度の上昇に伴って、低い方の融解ピークは第1回目および第2回目のDSCの加熱サーモグラムの両方に現われた。低い方の温度ピークの高さは放射線量とともに高まった。表3には、照射した混合物の第1回目の加熱および第2回目の加熱について測定したピーク融点および結晶化度、ならびに第1回目の冷却サイクルについての結晶化エンタルピーを記載している−結晶化エンタルピーは、291J/gを用いて正規化することによって、結晶化度へと変換したことに留意すること。
【0282】
【表3】
【0283】
実施例17.混合物中のビタミンEに対する低温および中温照射の効果(2.5MeV)
1262cm−1のビタミンE吸光度を定量することによって照射によるビタミンE濃度の変化を定量するために、またFTIRを用いた。フーリエ変換赤外分光法(FTIR, Bio-Rad FTS2000, Natick MA)を用いてα−トコフェロール濃度プロファイルを決定した。分析のために、滑走式ミクロトーム(モデル90−91−1177, LKB-Produkter AB, Bromma, Sweden)を用いて薄片(〜150μm)を切断した。サンプルの一方の端から他方の端まで深さ間隔で赤外スペクトルを収集し、各スペクトルを32の個別赤外線スキャンの平均として記録した。α−トコフェロール指数を算出するために、スペクトルを分析した。α−トコフェロール指数は、1850cm−1〜1985cm−1のポリエチレン骨格吸光度に対して正規化した、1245cm−1〜1275cm−1のα−トコフェロール吸光度下の面積として定義された。
【0284】
図17は、ビタミンE指数を、電子線入射表面からの深さの関数として示している。表面は電子線の全浸透深さより厚いため、我々は、異なる照射温度におけるビタミンEの濃度に対する電子線の効果を確認することができた。ビタミンE指数プロファイル分析では、電子線入射表面からおよそ1cmを超えて存在する、ポリエチレンの照射を受けていない部分において、0.5重量%混合物のビタミンE指数はおよそ0.1であることが分かった。しかしながら、ブロックの照射を受けた部分では、ビタミンE指数は約0.04のレベルに低下し、低下の程度は照射温度と無関係であった。よって、FTIRのビタミンE検出能力に対する照射の効果は照射温度に依存しないように思われる。
【0285】
実施例18.中温および低温照射した混合物の架橋密度(2.5MeV)
図18は、異なる照射UHMWPEの架橋密度に対する放射線量の効果を示している。照射したUHMWPE/ビタミンE混合物のいくつかの架橋密度について、熱キシレンを用いて調査した。試験サンプルを、照射したブロックの電子線入射表面下3〜6mmから得た。図18の凡例には、この調査に含めた試験サンプルを記載している。サンプルを切断し、微量天秤で秤量した後、キシレン中に130℃で2時間入れた。次いで、サンプルを熱キシレンから移動させ、ティッシュペーパーでふき取った後すぐに、前秤量したバイアルに入れ、そのバイアルを、キシレンの蒸発を防ぐために封止した。前秤量したバイアルを秤量し、膨潤したポリエチレン試験サンプルの重量を決定した。膨潤の程度を、膨潤比(試験サンプルの最初の量に対する最終量の割合)を算出することによって決定した。134℃におけるポリエチレンの密度およびキシレン密度を用いて、試験サンプルの最終重量から試験サンプルの最終量を算出した。同様に、試験サンプルの最初の量を、室温においてのポリエチレンの密度を用いることによって決定した。我々は、室温においても130℃においてもポリエチレンの密度がおよそ0.99g/cm3であると考える。130℃におけるキシレンの密度は0.75g/cm3であるとした。ASTM F2565によって提供される式を用いることによって架橋密度を算出するために、膨潤比を用いた。また、膨潤試験には、40℃において100kGyで照射し、続いて融解させたバージンUHMWPEブロックおよび120℃で95kGyで照射した後融解させたバージンUHMWPEのブロックも含め、いずれの照射にも電子線を用いた。
【0286】
バージンUHMWPEの膨潤試験では、放射線量レベルは同等であるにもかかわらず、室温において100kGyで照射し、続いて融解させたサンプル(LONGEVITYに匹敵)で、120℃において95kGyで照射し、続いて融解させたサンプル(DURASULに匹敵)よりも高い見かけの架橋密度を示した。架橋密度のこの違いは、架橋工程によって形成されるH結合とY結合の割合に起因する。H結合は、二つの炭素一次フリーラジカルの再結合の結果であり、これにより4アームの架橋を生じる。Y結合は、ポリエチレン鎖の主鎖に沿った一次炭素フリーラジカルと別のポリエチレン分子の鎖末端に存在するフリーラジカルとの反応の結果であり、これにより3アームの架橋を形成する。高温では、エチレンをベースとするポリマーの照射中に、H結合に対するY結合の割合が高まることが報告されている。Y結合は、H結合よりもネットワークを制限することが少なく、結果として同等の架橋密度においてY結合をより多く有するポリマーの膨潤は、H結合をより多く有するものよりも大きい。そのため、ほぼ同じ放射線量レベルでの低温照射と中温照射との違いは、見かけの架橋密度測定量に関しては、H結合とY結合の相対濃度と明らかに関係がある。
【0287】
架橋密度は、予想通り、放射線量レベルの増加とともに。驚くべきことに、120℃とRTで100kGyより高い線量で照射を行った場合に、ビタミンE混合物の架橋密度はより高く、100kGyより低い線量ではその全く逆であった。150kGyでは、放射線量レベルの増加とともに架橋密度が高まった。DURASULとLONGEVITYの比較(ビタミンE無添加)では、120℃で照射したDURASULの場合に40℃ LONGEVITYよりも架橋密度が高かった。ビタミンEの添加は、低温照射サンプルと高温照射サンプル間の架橋密度の交差をより高い放射線量レベルへとシフトさせるように思われる。
【0288】
実施例19.中温照射対低温照射した純粋ビタミンEその後のIR、GC/MS
周囲実験室空気条件(20%酸素、79%窒素)下でビタミンE(α−トコフェロール)の純粋な分割量(aliquot)をバイアルに入れる。1組のバイアルを120℃に加熱した後、電子線源を用いて100kGy、150kGy、および200kGyで照射する。もう1組のバイアルを室温において同じ照射線量に照射する。その後、α−トコフェロールのクロマン基におけるヒドロキシル基の喪失を、照射温度の関数として定量的に評価するために、赤外線分光法およびガスクロマトグラフィー/質量分析を用いてビタミンEサンプルを分析する。
【0289】
実施例20:インプラント例
整形外科用、歯科用または他の用途のハイブリッドインプラントは、ポリエチレン粉末またはフレークを多孔質金属シェルまたは裏打ちに直接固化させることによって、調製することができる。多孔質金属裏打ちは、インプラントとの骨結合を促進し、固定を行う。実施例1に従ってビタミンEと混合したUHMWPEのフレーク(GUR 1020またはGUR 1050)は、股関節部インプラント、膝インプラント、または上下肢インプラント形状の多孔質金属構築物に圧縮成形することができる。このハイブリッドシステムは、材料の融点より低い温度(140℃未満)で、照射中に材料の融点を超える温度上昇をさせない速度で、50kGy〜200kGy間の線量に中温照射することができる。電子線下、100℃の温度で1〜2回のパスで150kGyの照射線量を用いることができる。あるいは、裏打ちから離れているポリエチレンはその融点を超えて上昇する一方で、多孔質金属裏打ちと接触しているポリエチレンはその融点を超えて上昇することがないように、照射中に金属裏打ちを選択的に冷却することができる。この装置は融解しない温度でさらにアニールすることができ、または電離放射線、エチレンオキシド、またはガスプラズマによる清浄および滅菌後にそのままで用いることができる。
【0290】
モジュール式システムに用いるポリエチレンインプラント(金属インプラントに組み込まれる)にも同様の工程を用いることができる。この製造工程では、ビタミンEにより安定化したポリエチレンをスラブ、バー、ロッド、または予備成形物に成形する。材料は、上記実施例に従って中温照射し、その後機械加工することができ、または中温照射前に機械加工することができる。あるいは、ビタミンEにより安定化したポリエチレンは、最終完成形状に直接圧縮成形した後、中温照射することができる。モジュール式インプラントは、股関節部、膝、および上下肢に用いることができる。
【0291】
実施例21:ビタミンEを含有するUHMWPEの連続照射およびアニール
0重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、および0.5重量%の濃度のビタミンEを含有するパック形UHMWPE(GUR 1050)サンプル(直径2.5、1cm厚)を用いた。パックを電子線照射線量100kGy、150kGy、および200kGyで供した。線量を50kGy増加させるごとに、パックを空気中で130℃で8時間アニールした。よって、例えば、150kGy照射サンプルは3回アニールした。研究のために調製したサンプルのリストを表4に示す。
【0292】
【表4】
【0293】
サンプルの架橋密度は、130℃でのキシレン中での膨潤によって、重量測定により決定した。架橋密度の値のグラフを図19に示している。データは、線量の低減およびビタミンE含量の増加に伴う架橋密度の低下を示している。低ビタミンE濃度(0.01〜0.02重量%)ではビタミンE含量の増加に伴って架橋密度のわずかな増加が起こるように思われるが、これらの差は統計的に有意ではなかった。
【0294】
図19の挿入図では、0重量%および0.1重量%ビタミンEを含有するサンプルについての架橋密度に対するアニールの効果を示している。これらのサンプルを100kGyで照射し、続いて0回、1回、および2回アニールした。2回アニールするサンプルには、50kGyの線量の後に、そしてまた残る50kGyの線量の後にアニールした。1回アニールするサンプルには、全100kGyの線量を施した後にアニールした。これらのデータからは、バージンサンプル組内または0.1重量%サンプル組内において架橋密度に有意差は認められなかった。よって、アニールは架橋密度に対してごくわずかな効果しかないと思われる。
【0295】
図20Aおよび図20Bは、連続照射およびアニールに供したサンプルについての、最大引張強度(UTS)および破断点伸びを、架橋密度の関数として示している。UTSおよび伸びのデータはいずれも架橋密度の増加とともに低下し、これについては予想される。興味深いことに、UTSデータは、一般的な傾向に沿い、総てのデータポイントは本質的に同じ傾向線にある。伸びデータは、それぞれ異なる傾向に沿い、この場合も総てのデータポイントはそれにかなり密接に沿う。これは、ある特定の架橋密度では、ビタミンE濃度、アニール工程の回数、および総照射線量にかかわらず、同じような機械的特性が予想されるということを示唆している。
【0296】
実施例22.ビタミンE/UHMWPEの混合物の低温照射、その後の中温照射
理論的解釈−この研究は、UHMWPE/ビタミンE混合物の機械的特性が低温照射、その後の中温照射によって影響を受けるか否かを確かめるために行った。低温照射、その後の中温照射の利益は、線量レベルが高いときに中温電子線照射中のUHMWPEバーの過熱関連亀裂を避けることである−この方法では、線量の一部を事前に低温(100℃未満)で投与し、そのようにして高温(室温より高い)で投与するときに残る線量によって亀裂が起こらないようにする。
【0297】
0.15重量%および0.3重量%ビタミンEと混合したUHMWPEを用いた。これらのビタミンE混合UHMWPEのおよそ1cm厚のブロックをまず室温において照射し、続いて、対流炉中で100℃に少なくとも18時間加熱し、この温度で照射した。サンプルが受けた総線量は175kGyであった、低温照射線量は25kGy間隔で増加した。電子線照射(2.5MeV)を25kGy/パスで用いた。照射したブロックから薄片(3.2mm)を機械加工し、これらの薄片からドッグボーンを打ち抜いた。引張機械的検査、架橋密度測定(キシレン中での膨潤による)および結晶化度測定(示差走査熱量測定)を行った。
【0298】
低温照射した後、中温照射を行ったビタミンE/UHMWPEの混合物のUTSは175−kGy低温照射したUHMWPEと比較して少し低く、175−kGy中温照射したUHMWPEよりも少し高かったが有意差はなかった(図21)。0.3重量%ビタミンEを混合し、その後照射したUHMWPEのUTSは、0.15重量%混合物よりも著しく高かった(図22)。続いて175kGyで照射した0.15重量%混合物の架橋密度では、低温照射線量の増加の関数として有意な傾向は認められなかった。架橋密度は、同じ方法を用いて融解させないLONGEVITYについて前に得られた結果と同等であった。そのため、耐摩耗性が高いことが予想される。低温照射線量を増加すると、破断までの伸び(The elongation-to-break)(EAB)は徐々に低下し、これは機械的特性の喪失を最小限に抑えるために最終的な中温照射を行うことによって、いくらか利益が得られるかもしれないことを示唆している。
【0299】
実施例23:ビタミンE−UHMWPEの混合物の酸化安定性に対する照射後アニールの効果
0.01重量%、0.02重量%、および0.05重量%ビタミンEを含有するGUR 1050のブロックを、3MeV電子線を用いて100kGyで照射した。各ブロックの半分を130℃で8時間アニールした、残りの半分はアニールしなかった。アニールしたサンプルとアニールしなかったサンプル両方の一部を、ASTM F2003−02に基づく改変プロトコールに従って老化させた(5気圧 O2 70℃で4週間)。
【0300】
老化させたサンプルについてFTIRにより測定した酸化指数(OI)の値を図23に示している。OIは、1370cm−1の参照ピークに対する1740cm−1のピークの割合として算出した。0.01%アニール老化サンプルはプロットした他のサンプルよりも著しく高いOI値を有していた。0.01%非アニール老化サンプルについては、脆すぎてミクロトーミングできなかったため、データは得られず、総てのサンプルの中で最も著しい酸化を受けたことが分かる。0.02重量%および0.05重量%非アニール老化サンプルは両方とも、4週間の老化後、比較的低い(<0.25)が測定可能な表面OI値を有したが、一方0.02重量%および0.05重量%アニール老化サンプルでは測定可能な酸化は認められず、アニールによってそれらの酸化耐性が向上することが分かる。
【0301】
表5に総てのサンプルの引張特性を報告している。ある特定のビタミンE濃度では、老化前にアニールしたサンプルとアニールしなかったサンプルとの間に統計的に有意な差はない。これは、アニール単独ではUHMWPE/ビタミンE混合物の機械的特性に対して測定可能な効果がないことを示している。
【0302】
【表5】
【0303】
老化後、0.01重量%混合物(アニールしたものとアニールしなかったものの両方)の機械的特性において著しい低下があり、OIデータと一致した。高度に酸化した0.01%アニール老化サンプルはより低い機械的特性を示したが、0.01重量%非アニール老化サンプルは脆すぎて全く試験することができなかった−よって、照射した0.01%混合物に関しては、アニールは保護効果があった。0.02重量%および0.05重量%サンプルは上記のような強い特性の低下を示さず、これらのOI値が0.25を決して超えないことを考えれば驚くことではない。しかしながら、0.02重量%サンプルでは機械的特性のわずかな低下が起こる。例えば、0.02%非アニール老化サンプルの最大引張強度(UTS)および伸びは、非アニール非老化サンプルより低かった。しかしながら、0.02%アニール老化サンプルでは0.02%アニール非老化サンプルに対して機械的特性のこのような低下はなかった。また、0.05%非アニール老化サンプルおよび0.05%アニール老化サンプルのいずれにおいてもそれらの非老化対照物に対して械的特性の著しい低下は認められない。
【0304】
機械的特性の結果から、アニールしなかった場合、老化後に最も低い濃度0.02%で機械的特性が低下したことを考えれば、非アニール材料(a unnannealed material)の場合の、この放射線量100kGyでの最低許容ビタミンE濃度は0.05重量%であることが分かる。しかしながら、アニールした材料の場合、サンプルをアニールしたときに濃度0.02%において機械的特性の著しい低下が認められないため、最低許容ビタミンE濃度は0.02重量%である。よって、アニールの重要な利益は、より低いビタミンE濃度の使用を可能にし、次には処理中に、より低い放射線量を使用することを可能にする、ということである。
【0305】
本記載、特定の実施例、およびデータは、例示的な実施形態を示しているが、単に例示として示しており、本発明を限定すべきものではないと理解すべきである。本発明の範囲内の様々な変形および改変は、本明細書において含まれる考察、開示、およびデータから当業者には明らかとなり、従って、本発明の開示の一部と考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料の製造方法であって、
a)酸化防止剤と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、
b)当該混合物を固化させ、
c)当該固化したポリマー材料を、室温より高い温度で、かつ前記ポリマー材料の融点より低い温度で照射し、そして
d)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それにより高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料の製造方法であって、
a)酸化防止剤と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、
b)当該混合物を固化させ、
c)当該固化したポリマー材料を、室温より高い温度で、かつ前記ポリマー材料の融点より低い温度で照射し、そして
d)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それにより高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成すること
を含んでなる、方法。
【請求項3】
高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料の製造方法であって、
a)酸化防止剤と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、
b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それにより高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成し、
c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有するポリマー材料を形成し、
d)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そして
e)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で該ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成すること
を含んでなる、方法。
【請求項4】
前記混合物を、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークと混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記照射を受けたポリマー材料中の残留フリーラジカルが、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低いかまたは高い温度で機械的変形により急冷される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー材料の結晶化度が約51%より高い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
一またはそれ以上の種類の樹脂、フレーク、または粉末が、異なる濃度の酸化防止剤と混合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー材料が、その照射工程後に、前記酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させ、前記ポリマー材料全体にわたっての酸化安定性を与えるよう、融解しない温度で加熱されて、さらに均質化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー材料が、照射前および/または照射後に、前記ポリマー材料の融点より低い温度で熱処理されることによって均質化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料に、酸化防止剤が、前記ポリマー材料の融点より低い温度で拡散させることによりさらにドープされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ドーピングが、前記医療用インプラントを前記酸化防止剤中に約0.1時間〜約72時間浸漬することによって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化防止剤がビタミンEである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料の一部または全部が、さらに前記ポリマー材料の融点より低い温度で熱処理される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化防止剤混合ポリマー材料、前記固化ポリマー材料、または高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料が、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形され、それにより界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー材料が、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ヒドロゲル、またはそれらの混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオレフィンが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記照射が、約1%〜約22%の間の酸素を含有する雰囲気中で行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記照射が、不活性雰囲気中で行われ、前記雰囲気が、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど、およびそれらの組合せからなる群から選択されるガスを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線量が約25〜約1000kGy間である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線量が、約65kGy、約75kGy、または約100kGyである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記架橋したポリマー材料中のフリーラジカルの低減が、前記ポリマー材料を非酸化性媒質と接触させて加熱することによって達成され、前記非酸化性媒質が、不活性ガス、不活性流体、またはアセチレンなどのアセチレン系炭化水素、ブタジエンおよび(メタ)アクリレートモノマーなどの共役または非共役オレフィン系炭化水素、ならびにクロロ−トリ−フルオロエチレン(CTFE)またはアセチレンを含む一塩化硫黄からなる群から選択されるポリ不飽和炭化水素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料が、前記ポリマー材料の融点より低い温度で約1時間〜数日間さらに均質化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料が、融点より低い温度でさらに均質化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記固化したポリマー材料が、約40℃、約75℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、または約135℃の温度において照射される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記固化したポリマー材料が、室温より高い温度で、かつ約135℃より低いか、約130℃より低いか、約120℃より低いか、約110℃より低いか、約100℃より低いか、約75℃より低いか、または約40℃より低い温度において照射される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法によって製造されたポリマー材料を含む、医療用具。
【請求項27】
前記ポリマー材料が、固化、照射、加熱、および/またはアニールまたは急冷工程後に続いて機械加工される、請求項26に記載の医療用具。
【請求項28】
エタノールを含む約50重量%酸化防止剤の溶液中に浸漬されるものである、請求項26に記載の医療用具。
【請求項29】
超臨界流体中で酸化防止剤と接触され、拡散され、または均質化される、請求項26に記載の医療用具。
【請求項30】
前記超臨界流体がCO2である、請求項27に記載の医療用具。
【請求項31】
寛骨臼ライナー、肩関節窩、膝蓋骨コンポーネント、指関節コンポーネント、足関節コンポーネント、肘関節コンポーネント、手根関節コンポーネント、足指関節コンポーネント、人工骨頭、膝脛骨インサート(tibial knee insert)、金属とポリマーとの補強ポストを備えた膝脛骨インサート、椎間板、あらゆる関節に対する挿入物装置、縫合糸、腱、心臓弁、ステント、および血管移植片からなる群から選択されるものである、請求項26に記載の医療用具。
【請求項32】
医療用具が非永久医療用具であり、前記非永久医療用具がカテーテル、バルーンカテーテル、チューブ、静脈チューブ、および縫合糸からなる群から選択されるものである、請求項26に記載の医療用具。
【請求項33】
包装され、電離放射線またはガス滅菌により滅菌され、それによって無菌の高度に架橋した酸化的に安定な高結晶性医療用具となる、請求項26に記載の医療用具。
【請求項1】
高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料の製造方法であって、
a)酸化防止剤と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、
b)当該混合物を固化させ、
c)当該固化したポリマー材料を、室温より高い温度で、かつ前記ポリマー材料の融点より低い温度で照射し、そして
d)当該固化したポリマー材料を空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度でアニールし、それにより高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料の製造方法であって、
a)酸化防止剤と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、
b)当該混合物を固化させ、
c)当該固化したポリマー材料を、室温より高い温度で、かつ前記ポリマー材料の融点より低い温度で照射し、そして
d)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それにより高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成すること
を含んでなる、方法。
【請求項3】
高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料の製造方法であって、
a)酸化防止剤と、UHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、
b)当該混合物と、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークとを混合し、それにより高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成し、
c)前記組成物を固化させ、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有するポリマー材料を形成し、
d)当該固化したポリマー材料をその融点より低い温度で照射し、そして
e)その残留フリーラジカルを、空気中でまたは不活性環境下で該ポリマー材料の融点より低い温度で機械的変形により急冷し、それによって高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料を形成すること
を含んでなる、方法。
【請求項4】
前記混合物を、バージンUHMWPEの樹脂、その粉末、またはそのフレークと混合し、それによって高酸化防止剤領域/ドメインと、低酸化防止剤領域/ドメインとを有する組成物を形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記照射を受けたポリマー材料中の残留フリーラジカルが、空気中でまたは不活性環境下で前記ポリマー材料の融点より低いかまたは高い温度で機械的変形により急冷される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー材料の結晶化度が約51%より高い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
一またはそれ以上の種類の樹脂、フレーク、または粉末が、異なる濃度の酸化防止剤と混合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー材料が、その照射工程後に、前記酸化防止剤を高酸化防止剤領域から低酸化防止剤領域まで拡散させ、前記ポリマー材料全体にわたっての酸化安定性を与えるよう、融解しない温度で加熱されて、さらに均質化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー材料が、照射前および/または照射後に、前記ポリマー材料の融点より低い温度で熱処理されることによって均質化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料に、酸化防止剤が、前記ポリマー材料の融点より低い温度で拡散させることによりさらにドープされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ドーピングが、前記医療用インプラントを前記酸化防止剤中に約0.1時間〜約72時間浸漬することによって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化防止剤がビタミンEである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料の一部または全部が、さらに前記ポリマー材料の融点より低い温度で熱処理される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化防止剤混合ポリマー材料、前記固化ポリマー材料、または高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料が、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形され、それにより界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー材料が、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ヒドロゲル、またはそれらの混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオレフィンが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記照射が、約1%〜約22%の間の酸素を含有する雰囲気中で行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記照射が、不活性雰囲気中で行われ、前記雰囲気が、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど、およびそれらの組合せからなる群から選択されるガスを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線量が約25〜約1000kGy間である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線量が、約65kGy、約75kGy、または約100kGyである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記架橋したポリマー材料中のフリーラジカルの低減が、前記ポリマー材料を非酸化性媒質と接触させて加熱することによって達成され、前記非酸化性媒質が、不活性ガス、不活性流体、またはアセチレンなどのアセチレン系炭化水素、ブタジエンおよび(メタ)アクリレートモノマーなどの共役または非共役オレフィン系炭化水素、ならびにクロロ−トリ−フルオロエチレン(CTFE)またはアセチレンを含む一塩化硫黄からなる群から選択されるポリ不飽和炭化水素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料が、前記ポリマー材料の融点より低い温度で約1時間〜数日間さらに均質化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記高度に架橋した、酸化的に安定な高結晶性ポリマー材料が、融点より低い温度でさらに均質化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記固化したポリマー材料が、約40℃、約75℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、または約135℃の温度において照射される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記固化したポリマー材料が、室温より高い温度で、かつ約135℃より低いか、約130℃より低いか、約120℃より低いか、約110℃より低いか、約100℃より低いか、約75℃より低いか、または約40℃より低い温度において照射される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法によって製造されたポリマー材料を含む、医療用具。
【請求項27】
前記ポリマー材料が、固化、照射、加熱、および/またはアニールまたは急冷工程後に続いて機械加工される、請求項26に記載の医療用具。
【請求項28】
エタノールを含む約50重量%酸化防止剤の溶液中に浸漬されるものである、請求項26に記載の医療用具。
【請求項29】
超臨界流体中で酸化防止剤と接触され、拡散され、または均質化される、請求項26に記載の医療用具。
【請求項30】
前記超臨界流体がCO2である、請求項27に記載の医療用具。
【請求項31】
寛骨臼ライナー、肩関節窩、膝蓋骨コンポーネント、指関節コンポーネント、足関節コンポーネント、肘関節コンポーネント、手根関節コンポーネント、足指関節コンポーネント、人工骨頭、膝脛骨インサート(tibial knee insert)、金属とポリマーとの補強ポストを備えた膝脛骨インサート、椎間板、あらゆる関節に対する挿入物装置、縫合糸、腱、心臓弁、ステント、および血管移植片からなる群から選択されるものである、請求項26に記載の医療用具。
【請求項32】
医療用具が非永久医療用具であり、前記非永久医療用具がカテーテル、バルーンカテーテル、チューブ、静脈チューブ、および縫合糸からなる群から選択されるものである、請求項26に記載の医療用具。
【請求項33】
包装され、電離放射線またはガス滅菌により滅菌され、それによって無菌の高度に架橋した酸化的に安定な高結晶性医療用具となる、請求項26に記載の医療用具。
【図1】
【図7】
【図8】
【図9】
【図15】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図7】
【図8】
【図9】
【図15】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2010−529213(P2010−529213A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552820(P2009−552820)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/055643
【国際公開番号】WO2008/109515
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(392015468)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (14)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITAL CORPORATION
【出願人】(505271116)ケンブリッジ、ポリマー、グループ、インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE POLYMER GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/055643
【国際公開番号】WO2008/109515
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(392015468)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (14)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITAL CORPORATION
【出願人】(505271116)ケンブリッジ、ポリマー、グループ、インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE POLYMER GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
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