説明

酸性、有機溶媒ベースの多目的マイクロエレクトロニクス洗浄組成物

マイクロエレクトロニクスデバイスまたはナノエレクトロニクスデバイスを洗浄するための洗浄組成物であって、組成物中の唯一の酸および唯一のフッ化物化合物としてのHFと、スルホンおよびセレノンからなる群から選択された少なくとも1種の第一の溶媒と、金属イオン錯化または結合部位を有する、ポリヒドロキシルアルキルアルコールまたはポリヒドロキシルアリールアルコールの少なくとも1種の共溶媒と、水と、任意選択で少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤化合物とを含み、アミン、塩基、およびその他の塩を含まない洗浄組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクス洗浄組成物と、そのような洗浄組成物のマイクロエレクトロニクスデバイスを洗浄する方法での使用、詳細には、ラインCu低集積システムのバックエンドから45nm以下前進させた場所での、より詳細には、金属ハードマスクおよびCoWP金属キャッピング層を用いるものでの使用に関する。本発明の洗浄組成物は、ライン洗浄プロセスのフロントエンドでも有用である。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクスデバイスおよびナノエレクトロニクスデバイスの生産における最近の進歩により、ラインのフロントエンド(FEOL)およびラインのバックエンド(BEOL)の両方のストリッピングまたは洗浄組成物のための新しいストリッピングおよび洗浄組成物が必要とされるようになった。これまで典型的に用いられてきた洗浄組成物は、マイクロエレクトロニクスまたはナノエレクトロニクスプラットフォームの生産で用いられる新しい先端材料に完全に適してはいないことが見出されている。これまで用いられていたストリッピングまたは洗浄組成物は非常に侵襲性があり、かつ/または十分には選択的でないことが多い。これらのより新しいマイクロエレクトロニクスデバイスまたはナノエレクトロニクスデバイスの生産に用いられる、新たに利用される材料には、低(<3)および高(>20)および多孔質誘電体、銅メタライゼーション、フルオロポリマー反射防止コーティング(ARC)、TiおよびTiNで構成されるような特殊ハードマスク、Si/GeまたはGeの歪みウェハー、CoWPおよびCoWBのような金属キャッピング層などの材料がある。これらの新しい材料は、デバイス製造業者に新しく難しい課題を提示する。
【0003】
例えば、Cu/低κ構造の洗浄は、良好な洗浄能力を必要とするだけではなく、並外れた基板適合性も必要とする。Al/SiOまたはAl(Cu)/SiO構造を含有する「伝統的な」または一般の半導体デバイス用に開発されてきた多くのプロセス技術は、Cu/低κおよび高κ構造に適用できない。逆に、多くのCu/低κストリッピング剤は、かなりの調節がなされない限り、Alメタライゼーションには適さない。
【0004】
Cu/低κおよび/または高κ構造の製造プロセスは、異常に硬化したフォトレジスト層、強靭なプラズマエッチング、および/または灰化残留物をしばしば生成する。HF酸、ヒドロキシルアミン、および強アルカリ溶液などのさらに非常に侵襲性のある試薬は、許容される基板適合性を備えた必要とされる洗浄をもたらせないことが多い。
【0005】
フッ化物またはHFベースの水溶液は、伝統的なFEOLおよびBEOLエッチング液および洗浄剤として幅広く使用されてきた。しばしば、これらのタイプのクリーナーは、酸化物エッチング薬または灰残留物除去剤として開発される。例えば、希釈HF(dHF)溶液および緩衝酸化物エッチング物質(BOE、HF/NHF/HOからなる。)は、有効な酸化物(酸化シリコン)除去剤であり限られた残留物クリーナーであるが、一般に、フォトレジストのストリッピングには有効ではない。
【0006】
フッ化物またはHFを含有するいくつかの有機溶媒ベースの溶液または半水性溶液も、多くのBEOL用途で使用されてきた。しかし、これら生成物のほとんどは、プラズマ硬化フォトレジストおよびARCの除去などの多目的用途において、依然として弱いままである。これらの生成物はまた、時に非常に侵襲性があり、選択性が十分ではなく、または、新しく大いに求められている基板適合性と、低および高および多孔質誘電体、銅メタライゼーション、フルオロポリマー反射コーティング(ARC)、TiやTiNのような特殊硬質金属ゲート、Si/GeまたはGeの歪みウェハー、CoWPおよびCoWBのような金属キャッピング層などの新しい挑戦的なタイプの材料を用いた最新のFEOLおよびBEOL用途に関する選択性の要件とを満足させることができない。このように、より新しいマイクロエレクトロニクスおよびナノエレクトロニクスデバイスで用いられているこれらの新しい材料に関連した多目的用途のために、新しい改良されたストリッピングまたは洗浄組成物が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
水溶液では、HFの解離を下記の式で表すことができる:
HF⇔H+F (1)
HF+F⇔HF (2)
HFおよびHFは共に有効なエッチング剤であるが、SiOの主要なエッチング種はHFである。TEOS、低κおよび多孔質低κ誘電体との高い適合性を有するための1つの手法は、HF含量を制御し/低下させることである。pH、酸性、アルカリ性、イオン強度、および溶媒マトリックスも含めいくつかの因子は、HF、F、およびHFの含量に対して著しい影響を及ぼすことになる。本発明によれば、これらフッ化物種の含量を変化させるための1つの新規な方法は、溶液マトリックスの誘電率を制御し/変化させることによる。水は、25℃で78.54という高い誘電率(ε)を有するが、いくつかの有機溶媒は著しく低下した誘電率を有し、例えば、スルホラン、43.3;エチレングリコール、37.7;イソプロパノール、19.9;ジメチルスルホキシド、46.68である。したがって、そのような溶媒の添加は、得られる溶液の誘電率を低下させ、解離していないHFの濃度を高め、重フッ化物、HFを減少させると予測することができる。この発見された概念を使用して、かつその他の特殊な設計上の配慮と結び付けて、必要な洗浄能力をもたらすことができかつ必要な物質適合性を備えた新規な種類の多目的ストリッピング剤またはクリーナーが、本発明により提供される。本発明のストリッピング洗浄組成物は、
組成物中のホスホン酸腐食防止剤以外の唯一の酸および唯一のフッ化物化合物としてのHF、
スルホンおよびセレノンからなる群から選択された少なくとも1種の第一の溶媒、
金属イオン錯化または結合部位を有する、ポリヒドロキシルアルキルアルコールまたはポリヒドロキシルアリールアルコールの少なくとも1種の共溶媒、および
水、ならびに
任意選択で少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤化合物
を含むもの、本質的にこれらからなるもの、またはこれらからなるものであり、
前記洗浄組成物は、アミン、塩基、およびその他の塩を含まず、5.5以下のpHを有する。任意選択で、組成物は、当技術分野で一般に公知の界面活性剤およびその他の金属キレート剤を含有していてもよい。本出願において以後用いられる場合、本発明の洗浄組成物中に存在するこれら成分のパーセンテージに対する言及は、他に特に指示しない限り、洗浄組成物の全重量に基づく重量パーセンテージである。
【0008】
本発明の洗浄組成物は、マイクロエレクトロニクスデバイスまたはナノエレクトロニクスデバイス用のFEOLおよび/またはBEOL洗浄組成物として用いてもよい。本発明の洗浄組成物は、本フォトレジスト、銅メタライゼーション、低誘電体、および硬質金属TiもしくはTiNマスク、反射防止コーティング、またはCoWPもしくはCoWB金属キャッピング層から選択された少なくとも1種の他の要素を有するマイクロエレクトロニクスデバイスまたはナノエレクトロニクスデバイスを洗浄するのに特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の洗浄組成物は、
組成物中のホスホン酸腐食防止剤以外の唯一の酸および唯一のフッ化物化合物としてのHF、
スルホンおよびセレノンからなる群から選択された少なくとも1種の第一の溶媒、
金属イオン錯化または結合部位を有する、ポリヒドロキシルアルキルアルコールまたはポリヒドロキシルアリールアルコールの少なくとも1種の共溶媒、および
水、ならびに
任意選択で少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤化合物
を含むもの、本質的にこれらからなるもの、またはこれらからなるものであり、
前記洗浄組成物は、アミン、塩基、およびその他の塩を含まず、5.5以下のpHを有する。
【0010】
HFは、通常、希釈HFとして用いられ、それによってHF成分だけではなく水成分も同様に提供される。任意の適切な希釈HFを用いることができ、一般に、水:HFが50:1である形のHFとして用いてもよい。本発明の洗浄組成物中に存在するHFの量は、一般に、約0.01%から約10%、好ましくは約0.1%から約5%、より好ましくは約0.1%から約1%に及び、さらにより好ましくは約0.2%となろう。水は、約0.1%から約49%、好ましくは約1%から約40%、より好ましくは約10%から約20%、さらにより好ましくは約18%の量で、本発明の洗浄組成物中に存在することになろう。
【0011】
任意の適切なスルホンまたはセレノン第一の溶媒を本発明の洗浄組成物中に用いることができ、この第一の溶媒は好ましくはスルホン第一の溶媒である。適切な第一の溶媒としては、スルホラン、メチルスルホン、エチルスルホン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジブチルスルホン、メチルフェニルスルホン、2,2’−スルホニルジエタノール、4−(メチルスルホニル)トルエン、エチルフェニルスルホン、ジ−p−トルイルスルホンなどのスルホン、および対応するセレノンを挙げることができ、好ましくはメチルスルホンおよびスルホランであり、より好ましくはスルホランである。組成物の第一の溶媒成分は、一般に、約20%から約60%、好ましくは約25%から約50%、より好ましくは約30%から約40%を構成することになり、一般に好ましくはスルホランとなろう。
【0012】
金属イオン錯化または結合部位を有する、ポリヒドロキシルアルキルアルコールまたはポリヒドロキシルアリールアルコールの任意の適切な共溶媒成分を本発明の洗浄組成物中に用いることができる。ポリヒドロキシルアルキルアルコールは、一般に、約2個から約20個の炭素原子、好ましくは約2個から約10個の炭素原子、より好ましくは約2個から約6個の炭素原子を含有するポリヒドロキシルアルキルアルコールとなろう。そのような適切なポリヒドロキシルアルキルアルコールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、およびグリセロールが含まれるが、これらに限定されるものではない。ポリヒドロキシルアリールアルコールは、一般に、6個から14個の炭素原子、好ましくは6個の炭素原子を含有するポリヒドロキシルアリールアルコールとなろう。そのようなポリヒドロキシルアリールアルコールの例には、カテコールおよびピロガロールが含まれるが、これらに限定されるものではない。ポリヒドロキシル共溶媒は、一般に、約20%から約70%、好ましくは約25%から約60%、より好ましくは約30%から約50%の量で洗浄組成物中に存在することになり、一般に好ましくはエチレングリコールとなろう。
【0013】
任意の適切なホスホン酸腐食防止剤を本発明の組成物中に任意選択で用いてもよい。適切なホスホン酸腐食防止剤としては、例えば、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETPA)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸(methylenephosphonic))1,5,9−トリアザシクロドデカン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸)(DOTRP)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラキス(メチレンホスホン酸)(DOTP)、ニトリロトリス(メチレン)トリホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETAP)、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチレン−1,1−ジホスホン酸、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、および1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸(NOTP)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ホスホン酸腐食防止剤は、アミノトリエチレンホスホン酸である。ホスホン酸腐食防止剤成分は、洗浄組成物中に存在する場合、一般に、約0.01%から約5%、好ましくは約0.01%から約2%、さらにより好ましくは約0.01%から約1%、さらになお好ましくは約0.1%の量で存在することになろう。
【0014】
本発明の洗浄組成物は、任意選択で、その組成物中に任意の適切な界面活性剤を有していてもよい。適切な界面活性剤には、Surfynol(商標)61、Surfynol(商標)465、およびZonyl(商標)FSHが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明の実施形態において、マイクロエレクトロニクスデバイスまたはナノエレクトロニクスデバイスの有効な洗浄は、デバイスの成分または残留物を除去するのに適した任意の時間および温度で、デバイスを本発明の洗浄組成物に接触させることによって行われる。一般に、そのような洗浄は、利用される特定の洗浄組成物および洗浄がなされる特定のマイクロエレクトロニクスデバイスまたはナノエレクトロニクスデバイスに応じて、約30℃から約100℃の温度で、約1分から約40分に及ぶ時間にわたり行われることとなろう。
【0016】
本発明の好ましい洗浄組成物は、HF、スルホラン、エチレングリコール、および水を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなる。本発明の別の好ましい組成物は、HF、スルホラン、エチレングリコール、水、およびアミノトリメチレンホスホン酸を含み、本質的にこれらからなり、またはこれらからなる。本発明の特に好ましい洗浄組成物は、約0.2%のHF、約36.4%のスルホラン、約45.4%のエチレングリコール、および約18%の水を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる洗浄組成物と、約0.2%のHF、約36.3%のスルホラン、約45.4%のエチレングリコール、約18%の水、および約0.1%のアミノトリメチレンホスホン酸を含むか、本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる洗浄組成物とを含む。
【0017】
本発明の洗浄組成物のストリッピングおよび非腐食性能は、下記の本発明の洗浄組成物を利用する下記の試験結果により示されるが、これらに限定されるものではない。本発明の組成物Aは、約0.2%のHF、約36.4%のスルホラン、約45.4%のエチレングリコール、および約18%の水からなる。本発明の組成物Bは、約0.2%のHF、約36.3%のスルホラン、約45.4%のエチレングリコール、約18%の水、および約0.1%のアミノトリメチレンホスホン酸からなる。典型的な従来技術の洗浄組成物の例である比較洗浄組成物を、比較の目的で、試験で用いた。その比較組成物は、dHF(1000:1)水溶液からなり、以後、1000:1 dHFと呼ぶ。
【0018】
5000Åの厚さのPE−TEOS、500Åの厚さのSiC、2600Åの厚さの黒色ダイヤモンド誘電体、500Åの厚さのShipley AR19フルオロポリマーARC、および3000Åの厚さの東京応化TARF−P6111フォトレジストを表面に有する直径200nmのプライムシリコン基板ウェハーを、この実施例では用いた。フォトレジスト、ARC、および誘電体の典型的なエッチングならびにフォトレジストおよびARCの灰化の後、撹拌棒を備えかつ撹拌速度が400rpmでありかつ組成物Aまたは1000:1 dHF比較組成物を含有する小さなビーカ内で、ウェハーを45℃で3分間処理した。1000:1 dHF中で処理したウェハーは完全には洗浄されなかったのに対し、組成物Aで処理したウェハーは完全に洗浄され、即ちウェハーから全ての残留物が完全に除去された。さらに、洗浄組成物Aでは、低k誘電体に対する著しい腐食または損傷は観察されなかった。このように、本発明の洗浄組成物は、特にウェハーに193nmのフォトレジストおよびフルオロポリマーARCが存在する場合、dHFの洗浄に比べて優れた洗浄能力をもたらす。
【0019】
下記の試験は、可能性あるTiNエッチングに関して1000:1 dHFと洗浄組成物Aとを比較するために実施したが、これはTiNが、金属ベースのハードマスクを利用する集積スキームで金属ベースのハードマスクの基礎として一般に使用されるからである。TiNの試験サンプルを、約25℃から約55℃に及ぶ温度で約2分から約16分にわたる時間、洗浄組成物Aおよび1000:1 dHF比較組成物に浸漬した。TiNエッチング速度は、試験の時間および温度の範囲において、組成物Aおよび1000:1 dHFの両方で本質的に同じであった。1000:1 dHFおよび組成物Aの両方は、同様に挙動し、酸化物層により、誘導期間後に厚さ約50nmのTiN被膜を素早く除去することが観察され、本発明の洗浄組成物が、より良好な残留物除去剤が望まれる洗浄の用途で容易にdHFの代わりをすることができることを示し、さらになお、ハードマスクを除去するためのTiNエッチングに関してdHFがもたらすことができるのと本質的に同じ性能が得られる。
【0020】
TiおよびTiNエッチング速度の評価は、本発明の組成物AおよびBの両方に関して評価した。まず、TiおよびTiN金属種を、45℃の組成物Aに10分間浸漬することによって処理し、次いでTiおよびTiNのエッチング速度を決定した。次いで、TiおよびTiN金属種を、45℃、75℃、および90℃の組成物Bに30分間浸漬することによって処理した。オングストローム/分を単位としたエッチング速度を4pt.プローブによって決定した。エッチング速度の結果を表1に示す。データからわかるように、任意選択のホスホン酸腐食防止剤成分の存在によって、本発明の洗浄組成物が、さらに高い温度でもTiおよびTiNに適合可能になる。dHFおよび組成物Aの両方は、高温でTiおよびTiNと不適合であり、したがって、ホスホン酸腐食防止化合物を含有する組成物Bのような組成物を利用することが有利である。
【0021】
【表1】

銅への腐食防止剤の固着は高いビア抵抗をもたらすことがあるが、防止剤のTiまたはTiNハードマスクへの固着は許容される。XPSを使用して、ホスホン酸腐食防止剤が銅に固着しないことを示した。銅上に残された腐食防止剤の存在は、後続の製作または処理ステップ中に、デバイスへの要素の適正な接着を妨げるという課題をもたらす可能性があるのに対し、TiまたはTiNへの腐食防止剤の固着はそのような課題をもたらさない。シリコンウェハー上のTiおよびCu被膜を水(対照)および組成物Bで45℃で10分間処理し、次いで、30秒間のHOによる濯ぎを行い、窒素で乾燥させた。XPSを使用して、腐食防止剤が表面上に残っているかどうかを決定した。N1s領域を使用して、アミノ窒素が表面に存在しているかどうかを見ることにより、腐食防止剤と金属表面との相互作用をモニタした。処理後のCu表面には腐食防止剤は観察されなかったが、処理後のTi表面では腐食防止剤が観察された。
【0022】
Cu上にCoWPがあるブランケットシリコンウェハーを、組成物Aで2分間、35℃で処理し、1000:1 dHF中でも2分間、35℃で処理した。XPSを使用して、処理後の表面を特徴付け、両方の調合物により引き起こされた損傷を比較した。どちらの場合も、酸化および非酸化CoWP(Co 2p3/2、W 4f、およびP 2p)の比較は、これらの調合物が共に、未処理の被膜よりも、CoWP被膜の表面で酸化CoWPのパーセンテージを低下させたことを示す。酸化材料のこの低下は、表2に示されるように、これら被膜中のO%によって確認される。組成物Aおよび1000:1 dHFで共に処理されたCoWPは、未処理のウェハーに対して同等のO%の減少を示す。
【0023】
上述のXPSの結果を使用して、どの調合物がCoWPに対して少ない損傷を与えるかも決定した。表2は、XPS結果の定量分析によって決定されたCo%:Cu%の比を示す。この比の値がより低い場合、より多くの量のCuがウェハーの表面付近で露出し、CoWPの損失が生ずることを示す。組成物Aおよび1000:1 dHFは共に、明らかにCoWPに損傷をもたらすが、組成物Aは、1000:1 dHFよりも少ない損傷をもたらす。
【0024】
【表2】

本発明について、その特定の実施形態を参照しながら本明細書で述べてきたが、本明細書に開示される本発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく、変更、修正、および変形がなされ得ることが理解されよう。したがって、添付される請求項の精神および範囲に含まれる、そのような全ての変更、修正、および変形を包含することが企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロエレクトロニクスデバイスまたはナノエレクトロニクスデバイスを洗浄するための洗浄組成物であって、
該組成物中のホスホン酸腐食防止剤以外の唯一の酸および唯一のフッ化物化合物としてのHF、
スルホンおよびセレノンからなる群から選択された少なくとも1種の第一の溶媒、
金属イオン錯化または結合部位を有する、ポリヒドロキシルアルキルアルコールまたはポリヒドロキシルアリールアルコールの少なくとも1種の共溶媒、および
水、ならびに
任意選択で少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤化合物
を含み、
アミン、塩基、およびその他の塩を含まず、5.5以下のpHを有する洗浄組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の第一の溶媒が、スルホラン、メチルスルホン、エチルスルホン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジブチルスルホン、メチルフェニルスルホン、2,2’−スルホニルジエタノール、4−(メチルスルホニル)トルエン、エチルフェニルスルホン、ジ−p−トルイルスルホンからなる群から選択される、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の第一の溶媒がスルホランである、請求項2に記載の洗浄組成物。
【請求項4】
ポリヒドロキシルアルキルアルコールまたはポリヒドロキシルアリールアルコールの前記少なくとも1種の共溶媒が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、カテコール、およびピロガロールからなる群から選択される、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項5】
ポリヒドロキシルアルキルアルコールまたはポリヒドロキシルアリールアルコールの前記少なくとも1種の共溶媒がエチレングリコールである、請求項4に記載の洗浄組成物。
【請求項6】
前記任意選択の少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤化合物が存在し、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETPA)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸(methylenephosphonic))1,5,9−トリアザシクロドデカン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸)(DOTRP)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラキス(メチレンホスホン酸)(DOTP)、ニトリロトリス(メチレン)トリホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETAP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチレン−1,1−ジホスホン酸、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、および1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸(NOTP)からなる群から選択される、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項7】
前記ホスホン酸腐食防止剤化合物が、アミノトリメチレンホスホン酸である、請求項6に記載の洗浄組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の第一の溶媒が、スルホラン、メチルスルホン、エチルスルホン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジブチルスルホン、メチルフェニルスルホン、2,2’−スルホニルジエタノール、4−(メチルスルホニル)トルエン、エチルフェニルスルホン、ジ−p−トルイルスルホンからなる群から選択され、ポリヒドロキシルアルキルアルコールまたはポリヒドロキシルアリールアルコールの前記少なくとも1種の共溶媒が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、カテコール、およびピロガロールからなる群から選択され、前記任意選択の少なくとも1種のホスホン酸腐食防止剤化合物が存在し、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETPA)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸(methylenephosphonic))1,5,9−トリアザシクロドデカン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸)(DOTRP)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”’−テトラキス(メチレンホスホン酸)(DOTP)、ニトリロトリス(メチレン)トリホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DETAP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチレン−1,1−ジホスホン酸、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、および1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N”−トリス(メチレンホスホン酸(NOTP)からなる群から選択される、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の第一の溶媒がスルホランであり、前記少なくとも1種の共溶媒がエチレングリコールであり、前記ホスホン酸腐食防止剤がアミノトリメチレンホスホン酸である、請求項8に記載の洗浄組成物。
【請求項10】
0.01%から10%のHF;約20%から約60%の第一の溶媒、約20%から約70%の共溶媒、および約0.1%から約40%の水を含み、該パーセンテージが組成物の全重量に対する重量によるものである、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項11】
0.01%から10%のHF;約20%から約60%の第一の溶媒、約20%から約70%の共溶媒、約0.1%から約40%の水、および約0.01%から約5%のホスホン酸化合物を含み、該パーセンテージが組成物の全重量に対する重量によるものである、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項12】
0.001%から10%のHF;約20%から約60%のスルホラン、約20%から約50%のエチレングリコール、および約0.1%から約40%の水を含み、該パーセンテージが組成物の全重量に対する重量によるものである、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項13】
0.01%から10%のHF;約20%から約60%のスルホラン、約20%から約70%のエチレングリコール、約0.1%から約40%の水、および約0.01%から約5%のアミノトリメチレンホスホン酸を含み、該パーセンテージが組成物の全重量に対する重量によるものである、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項14】
約0.2%のHF、約36.4%のスルホラン、約45.4%のエチレングリコール、および約18%の水を含み、該パーセンテージが組成物の全重量に対する重量によるものである、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項15】
約0.2%のHF、約36.3%のスルホラン、約45.4%のエチレングリコール、約18%の水、および約0.1%のアミノトリメチレンホスホン酸を含み、該パーセンテージが組成物の全重量に対する重量によるものである、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項16】
マイクロエレクトロニクスデバイスまたはナノエレクトロニクスデバイスと、請求項1から15のいずれか一項に記載の洗浄組成物とを、フォトレジストを除去するのに十分な時間および温度で接触させるステップを含む、該マイクロエレクトロニクスデバイスまたはナノエレクトロニクスデバイスの洗浄プロセス。
【請求項17】
前記洗浄されるデバイスが、フォトレジストと、銅メタライゼーションと、低誘電体と、硬質金属TiもしくはTiNマスク、反射防止コーティング、またはCoWP金属キャッピング層から選択された少なくとも1種のその他の要素とを有する、請求項16に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−518715(P2012−518715A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552038(P2011−552038)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/020974
【国際公開番号】WO2010/098899
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(592162807)アバントール パフォーマンス マテリアルズ, インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】J T BAKER INCORPORATED
【Fターム(参考)】