説明

酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去方法および酸性ガス除去装置

【課題】二酸化炭素等の酸性ガスの回収量が高い酸性ガス吸収剤、並びにこれを用いた酸性ガス除去装置及び酸性ガス除去方法を提供する。
【解決手段】下記一般式1で表される第2級アミン化合物であって、


・・・(1)式1中、R10及びR11はいずれか一方が炭素数2〜5の置換又は非置換のアルキル基で他方が炭素数1〜5の置換又は非置換のアルキル基であり、RとR11が結合して環式構造を形成してもよく、環式構造の場合はR10とR11は炭素数1〜5の置換または非置換のアルキル基であり、R12はヒドロキシアルキル基である化合物、を少なくとも1種含有する吸収剤、並びにこれを用いた酸性ガス除去装置及び酸性ガス除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、酸性ガス吸収剤、ならびにこれを用いた酸性ガス除去装置および酸性ガス除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の一因として二酸化炭素(CO)濃度の上昇による温室効果が指摘され、地球規模で環境を守る国際的な対策が急務となっている。COの発生源としては産業活動によるところが大きく、その排出抑制への機運が高まっている。
【0003】
COをはじめとする酸性ガスの濃度の上昇を抑制するための技術としては、省エネルギー製品の開発、排出する酸性ガスの分離回収技術、酸性ガスの資源としての利用や隔離貯留させる技術、酸性ガスを排出しない自然エネルギーや原子力エネルギーなどの代替エネルギーへの転換などがある。
【0004】
現在までに研究されてきた酸性ガス分離技術としては、吸収法、吸着法、膜分離法、深冷法などがある。中でも吸収法は、ガスを大量に処理するのに適しており、工場や発電所への適用が検討されている。
【0005】
したがって、化石燃料を使用する火力発電所などの設備を対象に、化石燃料(石炭、石油、天然ガス等)を燃焼する際に発生する排ガスを化学吸収剤と接触させ、燃焼排ガス中のCOを除去して回収する方法、さらに回収されたCOを貯蔵する方法が世界中で行われている。また、化学吸収剤を用いてCO以外に硫化水素(HS)等の酸性ガスを除去することが提案されている。
【0006】
一般に、吸収法において使用される化学吸収剤としてモノエタノールアミン(MEA)に代表されるアルカノールアミン類が1930年代ころから開発されており、現在も使用されている(例えば特許文献1参照。)。この方法は、経済的でありまた除去装置の大型化が容易である。
【0007】
既存に広く使用されるアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノールアミン、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、プロピルアミノエタノール、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノ−1−メチルエタノールなどがある。
【0008】
特に、1級のモノエタノールアミンは、反応速度が速いため広く使用されてきた。しかし、この化合物は、腐食性を有しており、劣化し易く、また再生に要するエネルギーが高いという課題がある。一方、3級のメチルジエタノールアミンは、腐食性は低く、また再生に要するエネルギーも低いものの、吸収速度が低いという欠点を有する。したがって、これらの点を改善した、新しい吸着剤の開発が要求されている。
【0009】
近年、酸性ガスの吸収剤として、アミン系化合物の中でも、特に構造的に立体障害を有するアルカノールアミンに対する研究が盛んに試みられている(例えば特許文献2参照。)。立体障害を有するアルカノールアミンは、酸性ガスの選択度が非常に高く、また再生に要するエネルギーが少ないという長所を有している。
【0010】
立体障害を有するアミン系化合物の反応速度は、その立体構造によって決定される反応の障害の程度に依存する。
【0011】
一方、アルカノールアミン類とは異なる構造を有するアミン系化合物として、環状アミンを吸収剤として使用する方法も知られている(特許文献1及び特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−307519号公報
【特許文献2】特許第2871334号公報
【特許文献3】特開2009−6275号公報
【特許文献4】米国特許4112052号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、これらの技術でも、酸性ガス吸収量や酸性ガス吸収速度などの酸性ガス吸収能力に関してはいまだ不十分であり、ガス吸収能力のさらなる向上が求められている。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、二酸化炭素等の酸性ガスの回収量が高い酸性ガス吸収剤、並びにこれを用いた酸性ガス除去装置および酸性ガス除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施形態の酸性ガス吸収剤は、下記一般式(1)で表される第2級アミン化合物を少なくとも1種含有する。
【化1】

・・・(1)
(上記式(1)中、R10、R11は、いずれか一方が炭素数2〜5の置換又は非置換のアルキル基を表し、他方が炭素数1〜5の置換又は非置換のアルキル基を表す。R12はヒドロキシアルキル基を表す。R10、R11はそれぞれ同一あっても異なっていてもよく、これらが結合して環式構造を形成していてもよい。R10、R11が環式構造を形成する場合、R10、R11は炭素数1〜5の置換または非置換のアルキル基を表す。)
【0016】
実施形態の酸性ガス除去方法は、酸性ガスを含有するガスと、上記した実施形態に係る酸性ガス吸着剤とを接触させて、前記酸性ガスを含むガスから酸性ガスを除去するものである。
【0017】
実施形態の酸性ガス除去装置は、酸性ガスを含有するガスと酸性ガス吸着剤とを接触させて前記ガスから酸性ガスを除去する吸収塔と、酸性ガスを吸収した前記酸性ガス吸着剤から酸性ガスを除去して該酸性ガス吸着剤を再生する再生塔と、を有し、前記再生塔で再生した前記酸性ガス吸着剤を前記吸収塔で再利用する酸性ガス除去装置であって、上記した実施形態に係る酸性ガス吸着剤を用いてなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態の酸性ガス除去装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について詳細に説明する。
実施形態の酸性ガス吸収剤は、下記一般式(1)で表される第2級アミン化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする。
【0020】
【化2】

・・・(1)
(上記式(1)中、R10、R11は、いずれか一方が炭素数2〜5の置換又は非置換のアルキル基を表し、他方が炭素数1〜5の置換又は非置換のアルキル基を表す。R12はヒドロキシアルキル基を表す。R10、R11はそれぞれ同一あっても異なっていてもよく、これらが結合して環式構造を形成していてもよい。R10、R11が環式構造を形成する場合、R10、R11は炭素数1〜5の置換または非置換のアルキル基を表す。)
【0021】
従来より、アミノ化合物が有する立体障害は、二酸化炭素吸収時の生成物に対する影響が大きく、低反応熱を示す重炭酸イオンの生成に有利に働くことが知られている。
このような知見に基づき、立体障害の効果をさらに大きく得るため本願発明者が検討した結果、上記一般式(1)に示す化合物(例えば2−(シクロペンチルアミノ)エタノール)が、従来の分岐構造を有するアミノ化合物より、さらに低反応熱性を得られ、二酸化炭素吸収量が高められることを見出した。
【0022】
すなわち、上記一般式(1)の第2級アミン化合物は、ヒドロキシアルキル基(R12)が窒素原子に結合しており、さらにこの窒素原子に結合した一つの炭素原子に二つのアルキル基(R10、R11)が結合した分岐構造を有している。
【0023】
このように、分岐状のアルキル基が窒素原子に直接結合した上記一般式(1)の第2級アミン化合物は、立体障害の大きい構造を有する。このため、二酸化炭素(CO)等の酸性ガスに対し、高い反応性を有し、高い酸性ガス吸収量を得ることができる。
【0024】
上記の一般式(1)で表される第2級アミン化合物(以下、第2級アミン化合物(1)と示す。)を、例えば水などの溶媒に溶解させることにより、酸性ガスの吸収能力の高い酸性ガス吸収剤を得ることができる。
以下の実施態様では、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明するが、本発明の実施形態に係る酸性ガス吸収剤は、硫化水素等、その他の酸性ガスに関しても同様の効果を得ることができる。
【0025】
上記式(1)中、R10、R11は、窒素原子に結合した炭素原子に結合する基である。R10、R11は、いずれか一方が炭素数2〜5の置換又は非置換のアルキル基を表し、他方が炭素数1〜5の置換又は非置換のアルキル基を表す。R10、R11は、同一のものであってもよく、異なっていてもよい。
炭素数1〜5の置換又は非置換のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基等の分岐あるいは直鎖状の炭化水素基を用いることができ、これらの炭化水素基は、Si、O、N、S等のヘテロ原子を含有していてもよい。
炭素数1〜5の置換又は非置換のアルキル基としては、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0026】
炭素数2〜5の置換又は非置換のアルキル基としては、例えばエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基等の分岐あるいは直鎖状の炭化水素基を用いることができ、これらの炭化水素基は、Si、O、N、S等のヘテロ原子を含有していてもよい。
炭素数2〜5の置換又は非置換のアルキル基としては、より好ましくはエチル基である。
【0027】
10、R11の少なくともいずれか一方が、炭素数2以上のアルキル基である、第2級アミン化合物(1)は、酸性ガスとの反応における反応熱が小さく、酸性ガスに対し、優れた反応性を有する。
また、R10、R11のいずれか一方が、炭素数2以上のアルキル基である第2級アミン化合物(1)は、R10、R11の双方がメチル基である第2級アミン化合物と比較して沸点が高く、吸収液からの揮発が生じ難い。
【0028】
10、R11は連結して、環式構造を形成していてもよい。R10、R11が環式構造を形成する場合、R10、R11は炭素数1〜5の置換または非置換のアルキル基を表す。
このような環式構造としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基を挙げることができる。
【0029】
10、R11が環式構造を形成することで、第2級アミン化合物(1)の揮発性が抑えられる。このため、排気ガスを処理する過程で、大気中に放出されるアミン成分の量が低減された酸性ガス除去剤とすることができる。また、R10、R11が環式構造を形成することで、上記式(1)の第2級アミン化合物の酸性ガスとの反応時の反応熱が低減される。
上記の環式構造の中でも、溶解性の観点から、シクロペンチル基、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0030】
12は、ヒドロキシアルキル基である。二酸化炭素との反応性を向上させる観点からは、炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル基が好ましい。R12のヒドロキシアルキル基は、より好ましくは2−ヒドロキシエチル基である。
【0031】
分岐状アルキル基が窒素原子に結合した第2級アミン化合物(1)としては、以下の化合物が挙げられる。すなわち、第2級アミン化合物(1)としては、2−(2−ブチルアミノ)エタノール、2−(2−ペンチルアミノ)エタノール、2−(2−ヘキシルアミノ)エタノール、2−(3−ペンチルアミノ)エタノール、2−(3−ヘキシルアミノ)エタノール、2−(3−ヘプチルアミノ)エタノール、2−(4−ヘプチルアミノ)エタノール、2−(4−オクチルアミノ)エタノール、2−(5−ノニルアミノ)エタノール、3−(2−ブチルアミノ)プロパノール、3−(2−ペンチルアミノ)プロパノール、3−(2−ヘキシルアミノ)プロパノール、3−(3−ペンチルアミノ)プロパノール、3−(3−ヘキシルアミノ)プロパノール、3−(3−ヘプチルアミノ)プロパノール、3−(4−ヘプチルアミノ)プロパノール、3−(4−オクチルアミノ)プロパノール、3−(5−ノニルアミノ)プロパノール、4−(2−ブチルアミノ)ブタノール、4−(2−ペンチルアミノ)ブタノール、4−(2−ヘキシルアミノ)ブタノール、4−(3−ペンチルアミノ)ブタノール、4−(3−ヘキシルアミノ)ブタノール、4−(3−ヘプチルアミノ)ブタノール、4−(4−ヘプチルアミノ)ブタノール、4−(4−オクチルアミノ)ブタノール、4−(5−ノニルアミノ)ブタノール、2−(シクロプロピルアミノ)エタノール、2−(シクロブチルアミノ)エタノール、2−(シクロペンチルアミノ)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−(シクロヘプチルアミノ)エタノール、2−(シクロオクチルアミノ)エタノール、3−(シクロプロピルアミノ)プロパノール、3−(シクロブチルアミノ)プロパノール、3−(シクロペンチルアミノ)プロパノール、3−(シクロヘキシルアミノ)プロパノール、3−(シクロヘプチルアミノ)プロパノール、3−(シクロオクチルアミノ)プロパノール、4−(シクロプロピルアミノ)プロパノール、4−(シクロブチルアミノ)ブタノール、4−(シクロペンチルアミノ)ブタノール、4−(シクロヘキシルアミノ)ブタノール、4−(シクロヘプチルアミノ)ブタノール、4−(シクロオクチルアミノ)ブタノールなどが挙げられる。 なお、第2級アミン化合物(1)としては、上記の群から選択された、1種の化合物または2種以上の化合物を混合したものを用いることができる。
【0032】
第2級アミン化合物(1)としては、上記の高沸点を有する第2級アミン化合物(第2級アミノアルコール類)がよい。COを吸収した酸性ガス吸収剤は、120℃程度の高温域で加熱して再生される。このため、第2級アミン化合物(1)としては、加熱した際に再生塔から放出され難い、高沸点の第2級アミン化合物を用いることが好ましい。このため、第2級アミン化合物(1)としては、炭素数の多いアルキル基を用いることが好ましい。特に、環式構造を有する第2級アミン化合物が好ましい。
【0033】
なお、第2級アミン化合物(1)としては、上記の群より選択された1種の化合物を用いることができ、または上記の群より選択された2種以上の化合物を混合したものを用いることも可能である。
【0034】
酸性ガス吸着剤に含まれる第2級アミン化合物(1)の含有量は、10〜55質量%であることが好ましい。
一般に、アミン成分の濃度が高い方が単位容量当たりの二酸化炭素の吸収量、脱離量が多く、また二酸化炭素の吸収速度、脱離速度が速いため、エネルギー消費の面やプラント設備の大きさ、処理効率の面においては好ましい。
しかし、吸収液中のアミン成分の濃度が高すぎると、吸収液に含まれる水が、二酸化炭素吸収に対する活性剤としての機能を十分に発揮できなくなる。また、吸収液中のアミン成分の濃度が高すぎると、吸収液の粘度が上昇するなどの欠点が無視できなくなる。
【0035】
第2級アミン化合物(1)の含有量が55質量%以下の場合、吸収液の粘度の上昇や、活性剤としての水の機能低下などの現象は見られない。また、第2級アミン化合物(1)の含有量を10質量%以上とすることで、十分な二酸化炭素の吸収量、吸収速度を得ることができ、優れた処理効率を得ることができる。
【0036】
第2級アミン化合物(1)の含有量が10〜55質量%の範囲にある酸性ガス吸収剤は、二酸化炭素回収用として用いた場合、二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度が高いだけでなく、二酸化炭素脱離量及び二酸化炭素脱離速度も高い。このため、二酸化炭素の回収を効率的に行える点で有利である。
第2級アミン化合物(1)の含有量は、より好ましくは20〜50質量%である。
【0037】
第2級アミン化合物(1)は、アルカノールアミン類および/または下記一般式(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物(以下、ヘテロ環状アミン化合物(2)と示す。)からなる反応促進剤と混合して使用することが好ましい。
【0038】
【化3】

・・・(2)
【0039】
上記式(2)中、Rは水素原子または炭素数1〜4の置換もしくは非置換のアルキル基を表し、Rは炭素原子に結合した炭素数1〜4の置換または非置換のアルキル基を表す。nは1〜3の整数を表し、mは1〜4の整数を表し、pは0〜12の整数を表す。nが2〜3の場合には、窒素原子同士は直接結合していない。
【0040】
本実施形態では、例えば第2級アミン化合物(1)と、アルカノールアミン類および/またはヘテロ環状アミン化合物(2)からなる反応促進剤とを混合し、これらの混合物を例えば水溶液としたものを、酸性ガス吸収剤として用いることができる。
第2級アミン化合物(1)を、アルカノールアミン類および/またはヘテロ環状アミン化合物(2)と混合して用いることで、第2級アミン化合物(1)の単位モル当たりの二酸化炭素吸収量や、酸性ガス吸収剤の単位体積当たりの二酸化炭素吸収量および二酸化炭素吸収速度をより一層向上させることができる。
また、第2級アミン化合物(1)を、アルカノールアミン類および/またはヘテロ環状アミン化合物(2)と混合して用いることで、二酸化炭素吸収後に酸性ガスを分離するエネルギー(酸性ガス脱離エネルギー)も低下し、酸性ガス吸収剤を再生させる際のエネルギーを低減することができる。
【0041】
アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−ジプロパノールアミン、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、プロピルアミノエタノール、ジエタノールアミン、ビス(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)アミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノ−1−メチルエタノール、2-メチルアミノエタノール、2-エチルアミノエタノール、2-プロピルアミノエタノール、n-ブチルアミノエタノール、2-(イソプロピルアミノ)エタノール、3-エチルアミノプロパノール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、アルカノールアミン類としては、第3級アミンと酸性ガスとの反応性をより向上させる観点から、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0043】
ヘテロ環状アミン化合物(2)としては、アゼチジン、1−メチルアゼチジン、1−エチルアゼチジン、2−メチルアゼチジン、2−アゼチジルメタノール、2−(2−アミノエチル)アゼチジン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2−メチルピロリジン、2−ブチルピロリジン、2−ピロリジルメタノール、2−(2−アミノエチル)ピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2−エチルピペリジン、3−プロピルピペリジン、4−エチルピペリジン、2−ピペリジルメタノール、3−ピペリジルエタノール、2−(2−アミノエチル)ピロリジン、ヘキサヒドロ−1H−アゼピン、ヘキサメチレンテトラミン、ピペラジン、ピぺラジン誘導体等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、特にピぺラジン誘導体は、酸性ガス吸収剤の二酸化炭素吸収量および吸収速度向上の観点から望ましい。
ピペラジン誘導体は第2級アミン化合物であり、一般に、第2級アミノ基の窒素原子が二酸化炭素と結合し、カルバメートイオンを形成することで、反応初期段階における吸収速度の向上に寄与する。さらに第2級アミノ基の窒素原子は、これに結合した二酸化炭素を重炭酸イオン(HCO)に転換する役割を担っており、反応後半段階の速度向上に寄与する。
【0045】
ピぺラジン誘導体としては、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジンのうちの少なくとも1種類であることがより好ましい。
【0046】
酸性ガス吸着剤に含まれる反応促進剤(アルカノールアミン類および/またはヘテロ環状アミン化合物(2))の含有量は、1〜20質量%であることが好ましい。酸性ガス吸着剤に含まれる反応促進剤の含有量が1質量%未満であると、二酸化炭素吸収速度を向上させる効果を十分に得られないおそれがある。酸性ガス吸着剤に含まれる反応促進剤の含有量が20質量%を超えると、吸収剤の粘度が過度に高くなり、かえって反応性が低下するおそれがある。反応促進剤(アルカノールアミン類および/またはヘテロ環状アミン化合物(2))の含有量は、より好ましくは5〜15質量%である。
【0047】
酸性ガス吸収剤には、上記のアミン化合物および反応促進剤の他に、プラント設備の腐食を防止するためのリン酸系等の防食剤や、泡立ち防止のためのシリコーン系等の消泡剤や、酸性ガス吸収剤の劣化防止のための酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0048】
本実施形態に係る酸性ガス除去方法は、酸性ガスを含有する排気ガスと、上記の実施形態で説明したアミン化合物を溶媒に溶解させてなる酸性ガス吸収剤とを接触させ、酸性ガスを含む排気ガスから酸性ガスを吸収分離して除去するようにしたものである。
【0049】
二酸化炭素の吸収分離工程の基本的な構成は、酸性ガス吸収剤に、二酸化炭素を含有する排気ガスを接触させて、酸性ガス吸収剤に二酸化炭素を吸収させる工程(二酸化炭素吸収工程)と、上記二酸化炭素吸収工程で得られた、二酸化炭素が吸収された酸性ガス吸収剤を加熱して、二酸化炭素を脱離して回収する工程(二酸化炭素分離工程)とを含む。
【0050】
二酸化炭素を含むガスを、上記の酸性ガス吸収剤を含む水溶液に接触させる方法は特に限定されないが、例えば、酸性ガス吸収剤中に二酸化炭素を含むガスをバブリングさせて吸収する方法、二酸化炭素を含むガス気流中に酸性ガス吸収剤を霧状に降らす方法(噴霧乃至スプレー方式)、あるいは磁製や金属網製の充填材の入った吸収塔内で二酸化炭素を含むガスと酸性ガス吸収剤を向流接触させる方法などによって行われる。
【0051】
二酸化炭素を含むガスを水溶液に吸収させる時の酸性ガス吸収剤の温度は、通常室温から60℃以下で行われる。好ましくは50℃以下、より好ましくは20〜45℃程度で行われる。
低温度で行うほど、酸性ガスの吸収量は増加するが、処理温度の下限値は、プロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定される。二酸化炭素吸収時の圧力は通常ほぼ大気圧で行われる。吸収性能を高めるためより高い圧力まで加圧することもできるが、圧縮のために要するエネルギー消費を抑えるため大気圧下で行うのが好ましい。
【0052】
二酸化炭素吸収工程において、上述した実施形態に係るアミン化合物を10〜55質量%含む酸性ガス吸収剤の二酸化炭素吸収時(40℃)における二酸化炭素吸収量は、吸収剤中に含まれるアミン1mol当り0.26〜0.62mol程度であり、二酸化炭素の吸収を開始した時点から数分経過後の二酸化炭素吸収速度は0.029〜0.038mol/L/min程度である。
【0053】
ここで、二酸化炭素飽和吸収量は、酸性ガス吸収剤中の無機炭素量を赤外線式ガス濃度測定装置で測定した値であり、また、二酸化炭素吸収速度は、二酸化炭素の吸収を開始した時点から数分経過した時点において赤外線式二酸化炭素計を用いて測定した値である。
【0054】
二酸化炭素を吸収した酸性ガス吸収剤から二酸化炭素を分離し、純粋なあるいは高濃度の二酸化炭素を回収する方法としては、蒸留と同じく酸性ガス吸収剤を加熱して釜で泡立てて脱離する方法、棚段塔、スプレー塔、磁製や金属網製の充填材の入った再生塔内で液界面を広げて加熱する方法などが挙げられる。これにより、カルバミン酸アニオンや重炭酸イオンから二酸化炭素が遊離して放出される。
【0055】
二酸化炭素分離時の酸性ガス吸収剤温度は通常70℃以上で行われ、好ましくは80℃以上、より好ましくは90〜120℃程度で行われる。温度が高いほど吸収量は増加するが、温度を上げると吸収液の加熱に要するエネルギーが増すため、その温度はプロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定される。二酸化炭素脱離時の圧力は通常ほぼ大気圧で行われる。脱離性能を高めるためより低い圧力まで減圧することもできるが、減圧のために要するエネルギー消費を抑えるため大気圧下で行うのが好ましい。
【0056】
上述した実施形態に係るアミン化合物を10〜55質量%含む水溶液の二酸化炭素脱離時(80℃)における二酸化炭素脱離量は、吸収剤中に含まれるアミン1mol当り0.15〜0.47mol程度である。
【0057】
二酸化炭素を分離した後の酸性ガス吸収剤は、再び二酸化炭素吸収工程に送られ循環使用(リサイクル)される。また、二酸化炭素吸収の際に生じた熱は、一般的には水溶液のリサイクル過程において再生塔に注入される水溶液の予熱のために熱交換器で熱交換されて冷却される。
【0058】
このようにして回収された二酸化炭素の純度は、通常、95〜99体積%程度と極めて純度が高いものである。この純粋な二酸化炭素あるいは高濃度の二酸化炭素は、化学品、あるいは高分子物質の合成原料、食品冷凍用の冷剤等として用いられる。その他、回収した二酸化炭素を、現在技術開発されつつある地下等へ隔離貯蔵することも可能である。
【0059】
上述した工程のうち、酸性ガス吸収剤から二酸化炭素を分離して酸性ガス吸収剤を再生する工程が、最も多量のエネルギーを消費する部分であり、この工程で、全体工程の約50〜80%程度のエネルギーが消費される。従って、酸性ガス吸収剤の再生工程における消費エネルギーを低減することにより、二酸化炭素の吸収分離工程のコストを低減でき、排気ガスからの酸性ガス除去を、経済的に有利に行うことができる。
【0060】
本実施形態によれば、上記の実施形態の酸性ガス吸収剤を用いることで、二酸化炭素脱離(再生工程)のために必要なエネルギーを低減することができる。このため、二酸化炭素の吸収分離工程を、経済的に有利な条件で行うことができる。
【0061】
また、上述した実施形態に係るアミン化合物は、従来より酸性ガス吸収剤として用いられてきた2−アミノエタノール等のアルカノールアミン類と比較して、炭素鋼などの金属材料に対し、著しく高い耐腐食性を有している。したがって、このような酸性ガス吸収剤を用いた酸性ガス除去方法とすることで、例えばプラント建設において、高コストの高級耐食鋼を用いる必要がなくなり、コスト面で有利である。
【0062】
本実施形態に係る酸性ガス除去装置は、酸性ガスを含有するガスと酸性ガス吸着剤とを接触させて前記ガスから酸性ガスを除去する吸収塔と、酸性ガスを吸収した前記酸性ガス吸着剤から酸性ガスを除去して該酸性ガス吸着剤を再生する再生塔と、を有し、前記再生塔で再生した前記酸性ガス吸着剤を前記吸収塔で再利用する酸性ガス除去装置であって、前記酸性ガス吸着剤として、例えば上記の実施形態に係る酸性ガス吸収剤を用いたものである。
【0063】
図1は、実施形態の酸性ガス除去装置の概略図である。この酸性ガス除去装置1は、酸性ガスを含むガス(以下、排気ガスと示す。)と酸性ガス吸着剤とを接触させ、この排気ガスから酸性ガスを吸収させて除去する吸収塔2と、酸性ガスを吸収した酸性ガス吸着剤から酸性ガスを分離し、酸性ガス吸着剤を再生する再生塔3と、を備えている。以下、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明する。
【0064】
図1に示すように、火力発電所から排出される燃焼排ガス等の、二酸化炭素を含む排気ガスが、ガス供給口4を通って吸収塔2下部へ導かれる。この排気ガスは、吸収塔2に押し込められ、吸収塔2上部の酸性ガス吸収剤供給口5から供給された酸性ガス吸収剤と接触する。酸性ガス吸収剤としては、上述した実施形態に係る酸性ガス吸収剤を使用する。
【0065】
酸性ガス吸収剤のpH値は、少なくとも9以上に調整すればよいが、排気ガス中に含まれる有害ガスの種類、濃度、流量等によって、適宜最適条件を選択することがよい。
また、この酸性ガス吸収剤には、上記のアミン系化合物、および水などの溶媒の他に、二酸化炭素の吸収性能を向上させる含窒素化合物、酸化防止剤、pH調整剤等、その他化合物を任意の割合で含有していてもよい。
【0066】
このように、排気ガスが酸性ガス吸収剤と接触することで、この排気ガス中の二酸化炭素が酸性ガス吸収剤に吸収され除去される。二酸化炭素が除去された後の排気ガスは、ガス排出口6から吸収塔2外部に排出される。
【0067】
二酸化炭素を吸収した酸性ガス吸収剤は、熱交換器7、加熱器8に送液され、加熱された後、再生塔3に送液される。再生塔3内部に送液された酸性ガス吸収剤は、再生塔3の上部から下部に移動し、この間に、酸性ガス吸収剤中の二酸化炭素が脱離し、酸性ガス吸収剤が再生する。
【0068】
再生塔3で再生した酸性ガス吸収剤は、ポンプ9によって熱交換器7、吸収液冷却器10に送液され、酸性ガス吸収剤供給口5から吸収塔2に戻される。
【0069】
一方、酸性ガス吸収剤から分離された二酸化炭素は、再生塔3上部において、還流ドラム11から供給された還流水と接触し、再生塔3外部に排出される。
二酸化炭素が溶解した還流水は、還流冷却器12で冷却された後、還流ドラム11において、二酸化炭素を伴う水蒸気が凝縮した液体成分と分離される。この液体成分は、回収二酸化炭素ライン13により二酸化炭素回収工程に導かれる。一方、二酸化炭素が分離された還流水は、還流水ポンプ14で再生塔3に送液される。
【0070】
本実施形態の酸性ガス除去装置1によれば、二酸化炭素の吸収特性および脱離特性に優れた酸性ガス吸収剤を用いることで、効率の高い二酸化炭素の吸収除去を行うことが可能となる。
【0071】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明したが、上記の実施例は、本発明の一例として挙げたものであり、本発明を限定するものではない。
また、上記の各実施形態の説明では、酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去装置および酸性ガス除去方法において、本発明の説明に直接必要とされない部分等についての記載を省略したが、これらについて必要とされる各要素を適宜選択して用いることができる。
【0072】
その他、本発明の要素を具備し、本発明の趣旨に反しない範囲で当業者が適宜設計変更しうる全ての酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去装置および酸性ガス除去方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【実施例】
【0073】
以下、本発明について実施例、比較例を参照してさらに詳細な説明を行うが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールを45質量%、ピペラジンを5質量%となるように水に溶解させ、50mlの水溶液(以下、吸収液と示す。)とした。この吸収液を試験管に充填して40℃に加熱し、二酸化炭素(CO)10体積%、窒素(N)ガス90体積%含む混合ガスを流速500mL/minで通気して、試験管出口でのガス中の二酸化炭素(CO)濃度を赤外線式ガス濃度測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「CGT−700」)を用いて測定し、吸収性能を評価した。試験管内のアミン水溶液へのガス導入口には、1/8インチのテフロン(登録商標)チューブ(内径:1.59mm、外径:3.17mm)を用いて行った。
また、上記のように混合ガスを40℃で吸収させた後の水溶液を80℃に加熱し、100%窒素(N)ガスを流速500mL/minで通気し、吸収液中のCO濃度を赤外線式ガス濃度測定装置を用いて測定して放出性能を評価した。
【0075】
吸収液の二酸化炭素吸収速度は、二酸化炭素の吸収を開始してから2分後の時点で計測した速度とした。
反応熱は、熱量計「DRC Evolution」(製品名、SETRAM社製)を用いて測定した。
【0076】
アミン化合物の放散性は、以下のようにして評価した。すなわち、冷却管付のフラスコ内に吸収液を投入した後、フラスコごと120℃に加熱した。そして、冷却管から放散される気体成分を回収し、回収された気体に含まれるアミン化合物の量を測定した。
【0077】
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.56molであった。また、80℃での吸収液の二酸化炭素(CO)吸収量は、アミノ化合物1mol当り0.25molであった。40℃で二酸化炭素(CO)を吸収させ、80℃で二酸化炭素(CO)を脱離させる過程で、アミノ化合物1mol当り0.31molのCOが回収された。二酸化炭素吸収速度は0.036mol/L/minであった。
【0078】
(実施例2)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールに代えて2−(2−ブチルアミノ)エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.57molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.24molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.33molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.036mol/L/minであった。
【0079】
(実施例3)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールに代えて2−(2−ペンチルアミノ)エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.55molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.25molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.30molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.036mol/L/minであった。
【0080】
(実施例4)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールに代えて2−(3−ペンチルアミノ)エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.53molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.25molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.28molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.036mol/L/minであった。
【0081】
(実施例5)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールに代えて2−(2−ヘキシルアミノ)エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.51molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.26molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.25molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.036mol/L/minであった。
【0082】
(実施例6)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールに代えて2−(3−ヘキシルアミノ)エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.50molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.27molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.23molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.034mol/L/minであった。
【0083】
(実施例7)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールの配合量を45質量%から30質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.56molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.24molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.32molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.037mol/L/minであった。
【0084】
(実施例8)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールに代えて2−(シクロブチルアミノ)エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.56molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.25molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.31molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.037mol/L/minであった。
【0085】
(実施例9)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールに代えて2−(シクロペンチルアミノ)−1−プロパノールを用い、ピペラジンに代えてピペリジンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.54molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.24molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.30molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.034mol/L/minであった。
【0086】
(実施例10)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールに代えて3−(シクロヘキシルアミノ)エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.50molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.24molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.26molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.034mol/L/minであった。
【0087】
(実施例11)
ピペラジン5質量%に代えて、ピペラジン2.5質量%、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール2.5質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.58molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.26molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.32molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.037mol/L/minであった。
【0088】
(実施例12)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールの配合量を45質量%から30質量%に変更し、ピペラジンを用いないこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.59molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.25molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.34molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.038mol/L/minであった。
【0089】
(実施例13)
2−(シクロペンチルアミノ)エタノールの配合量を45質量%から30質量%に変更し、ピペラジンの代わりに2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール5質量%を用いること以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.61molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.28molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.33molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.038mol/L/minであった。
【0090】
(比較例1)
n−ブチルジエタノールアミンを60質量%、ピペラジンを5質量%となるように水に溶解させ、50mlの水溶液(以下、吸収液と示す。)とした。その後、実施例1と同様の装置を用い、実施例1と同条件下で二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素吸収速度を測定した。
吸収液中のアミノ化合物1mol当り、40℃での二酸化炭素吸収量は0.20molであり、80℃での二酸化炭素吸収量は0.08molであり、吸収液中のアミノ化合物1mol当り0.12molの二酸化炭素が回収された。二酸化炭素吸収速度は0.023mol/L/minであった。
【0091】
表1に、実施例1〜13および比較例1について、吸収液中のアミノ化合物および反応促進剤の含有量と共に、40℃での二酸化炭素吸収量、80℃での二酸化炭素吸収量、二酸化炭素回収量、二酸化炭素吸収速度、および反応熱の測定結果を示す。なお、表1中、二酸化炭素吸収量及び二酸化炭素回収量は、吸収液に含まれるアミン化合物1mol当りの吸収量及び回収量をモル数で示したものである。
【0092】
【表1】

【0093】
表1から明らかなように、分岐状アルキル基又は環状アルキル基を有する第2級アミン化合物を用いた実施例1〜13の吸収液では、二酸化炭素吸収量、二酸化炭素回収量が高かった。また、実施例1〜13では二酸化炭素吸収速度も高く、二酸化炭素の吸収性能に優れていた。
特に、環状アルキル基を有する第2級アミン化合物を用いた実施例1、7、11は、分岐状アルキル基を有する第2級アミン化合物を用いた実施例2〜6と比較して、より反応熱が低いことが認められた。
また、放散性の評価試験では、分岐状アルキル基を有する第2級アミン化合物を用いた実施例2〜6では、1質量%程度のアミン化合物が回収されたのに対し、環状アルキル基を有する第2級アミン化合物を用いた実施例1、実施例7〜13では、アミン化合物は殆ど回収されなかった。このことから、環状アルキル基を有する第2級アミン化合物は、放散性が低く、揮発性が抑制されていることが認められた。さらに、実施例1、実施例7〜13では、実施例2〜6と同等の二酸化炭素回収量、二酸化炭素回収速度を得られることが認められた。
【0094】
一方、分岐状アルキル基または環状アルキル基を有しないアミン化合物を用いた比較例1では、二酸化炭素回収量が0.12molと低く、また二酸化炭素吸収速度も小さいことが認められた。
【符号の説明】
【0095】
1…酸性ガス除去装置、2…吸収塔、3…再生塔、4…ガス供給口、5…酸性ガス吸収剤供給口、6…ガス排出口、7…熱交換器、8…加熱器、9…ポンプ、10…吸収液冷却器、11…還流ドラム、12…還流冷却器、13…回収二酸化炭素ライン、14…還流水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される第2級アミン化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする酸性ガス吸収剤。
【化1】

・・・(1)
(上記式(1)中、R10、R11は、いずれか一方が炭素数2〜5の置換又は非置換のアルキル基を表し、他方が炭素数1〜5の置換又は非置換のアルキル基を表す。R12はヒドロキシアルキル基を表す。R10、R11はそれぞれ同一あっても異なっていてもよく、これらが結合して環式構造を形成していてもよい。R10、R11が環式構造を形成する場合、R10、R11は炭素数1〜5の置換または非置換のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で示される第2級アミン化合物において、R12が2−ヒドロキシエチル基である請求項1記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される第2級アミン化合物の含有量が10〜55質量%である請求項1又は2記載の酸性ガス吸着剤。
【請求項4】
アルカノールアミン類および/または下記一般式(2)で表されるヘテロ環状アミン化合物からなる反応促進剤をさらに含有し、前記反応促進剤の含有量が1〜20質量%である請求項1乃至3のいずれか1項記載の酸性ガス吸収剤。
【化2】

・・・(2)
(上記式(2)中、Rは水素原子または炭素数1〜4の置換もしくは非置換のアルキル基を表し、Rは炭素原子に結合した炭素数1〜4の置換または非置換のアルキル基を表す。nは1〜3の整数を表し、mは1〜4の整数を表し、pは0〜12の整数を表す。nが2〜3の場合には、窒素原子同士は直接結合していない。)
【請求項5】
前記アルカノールアミン類が2−(イソプロピルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項4記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項6】
前記ヘテロ環状アミン化合物がピペラジン類からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む請求項4又は5記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項7】
前記ピペラジン類が、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン及び2,6−ジメチルピペラジンからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項6記載の酸性ガス吸収剤。
【請求項8】
酸性ガスを含有するガスと、請求項1乃至7のいずれか1項記載の酸性ガス吸着剤とを接触させて、前記酸性ガスを含むガスから酸性ガスを除去することを特徴とする酸性ガス除去方法。
【請求項9】
酸性ガスを含有するガスと酸性ガス吸着剤とを接触させて前記ガスから酸性ガスを除去する吸収塔と、酸性ガスを吸収した前記酸性ガス吸着剤から酸性ガスを除去して該酸性ガス吸着剤を再生する再生塔と、を有し、前記再生塔で再生した前記酸性ガス吸着剤を前記吸収塔で再利用する酸性ガス除去装置であって、請求項1乃至7のいずれか1項記載の酸性ガス吸着剤を用いてなることを特徴とする酸性ガス除去装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−143745(P2012−143745A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247776(P2011−247776)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】