説明

酸性ゲル状食品

【課題】ヒアルロン酸を配合した、離水の少ない酸性ゲル状食品を提供する。
【解決手段】酸性ゲル状食品が、ヒアルロン酸及び/又はその塩、グルコン酸、及びゲル化剤を含有する。グルコン酸の含有量は、0.05〜1質量%とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸を配合した、離水の少ない酸性ゲル状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、生体、特に皮下組織に存在するムコ多糖類であり、その高い保水機能により化粧料の原料として広く利用されている。また、ヒアルロン酸の経口摂取により、生体におけるヒアルロン酸含量の低下が補なわれ、肌の保湿、弾力性、及び柔軟性が改善する効果が認められており、健康上や美容上の効果の発現を期待して、ヒアルロン酸を配合した様々な形態の食品が市販されている。
【0003】
特に、ヒアルロン酸を配合した様々な形態の食品のうち、ゲル状食品は、その弾力に富むゲル状の外観が肌の保湿、弾力性、及び柔軟性の改善を連想させるため、消費者に好まれている。
【0004】
ヒアルロン酸を配合したゲル状食品の具体例としては、例えば、特開2007−43960号公報(特許文献1)に、寒天、ゼラチン又は蒟蒻を基材とし、ヒアルロン酸、N−アセチルグルコサミン及びアスコルビン酸を主成分として前記基材中に混合し、風味の向上等の点から酸材としてクエン酸を用いたゼリー状の老化防止食品が記載されている。また、特開2010−11757号公報(特許文献2)には、ヒアルロン酸及び/又はその塩、糖アルコール及びゲル化剤を含有し、保存性を高めるためにクエン酸で酸性に調整した酸性透明ゲル状食品が記載されている。
【0005】
しかしながら、ヒアルロン酸を含有するゲル状食品において、クエン酸等の酸材を使用すると、経時的に離水が生じ、食品の外観が損なわれる場合があるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−43960号公報
【特許文献2】特開2010−11757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヒアルロン酸を含有し、酸性に調整したゲル状食品において、特に、クエン酸を用いて酸性に調整したゲル状食品においても、離水を生じ難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく、ヒアルロン酸及び/又はその塩を含有し、酸材により酸性に調整した酸性ゲル状食品の配合原料について鋭意研究を重ねた結果、酸材として、グルコン酸を使用すると、意外にも、酸性ゲル状食品における経時的な離水を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ヒアルロン酸及び/又はその塩、グルコン酸、及びゲル化剤を含有する酸性ゲル状食品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒアルロン酸及び/又はその塩を含有し、酸材により酸性に調整されている酸性ゲル状食品において、経時的な離水を防止することができる。これにより、健康や美容上の効果が期待されている酸性ゲル状食品に、市場での更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、特に規定しない限り、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0012】
本発明の酸性ゲル状食品は、ヒアルロン酸及び/又はその塩、及びゲル化剤を含有し、酸材としてグルコン酸を含有する。従来、ヒアルロン酸及び/又はその塩を含有する酸性ゲル状食品に生じていた経時的な離水を、酸材としてグルコン酸を含有することにより防止したものであり、10℃で1ヶ月保管しても全くあるいは殆ど離水が生じない。
【0013】
ここで、ヒアルロン酸とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。本発明の酸性ゲル状食品に用いるヒアルロン酸は、鶏冠、臍の緒、眼球、皮膚、軟骨等の生体組織、あるいはストレプトコッカス属等のヒアルロン酸産生微生物を培養して得られる培養液等を原料として得ることができる。ヒアルロン酸の純度は90%以上が好ましい。90%未満の場合は、酸性ゲル状食品が保管中に着色し、外観が損なわれる場合があるので好ましくない。
【0014】
ヒアルロン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が例示できる。ミネラル特有のエグ味が少ない点から、ナトリウム塩が好ましい。
【0015】
ヒアルロン酸及び/又はその塩の含有量は、それらの合計として0.01〜0.5%が好ましく、0.02〜0.5%がより好ましく、0.03〜0.5%がさらに好ましい。少な過ぎると健康あるいは美容上の効果の発現が期待できず、また、ヒアルロン酸及び/又はその塩を含有する酸性ゲル状食品において経時的な離水の発生を防止するというヒアルロン酸含有酸性ゲル特有の本発明の課題も存在しない。反対に、多過ぎると離水を十分に抑えきれない場合がある。
【0016】
一方、本発明の酸性ゲル状食品に含有させるゲル化剤としては、寒天、ジェランガム、カラギーナン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、グアガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉等の澱粉、湿熱処理澱粉、加工澱粉、寒天、蒟蒻、ペクチン、プルラン、マンナン、ガラクトマンナン、キチン、キトサン、デキストリン等を使用することができる。寒天、ジェランガム等の離水を生じやすいゲル化剤を使用した場合に、本発明の離水防止効果が顕著に発揮される。
【0017】
ゲル化剤の好ましい含有量は、目的とする酸性ゲル状食品の具体的な形態や、ゲル化剤の種類によって異なるが、通常、0.1〜5%とすることが好ましい。
【0018】
本発明の酸性ゲル状食品において、酸性の程度はpH4.6以下が好ましい。これにより、微生物の増殖を防止できるので、レトルト処理等の高温高圧加熱処理を施さなくとも常温での流通、保存が可能となり、食品の風味、食感の変化を最小限に留めることができる。
また、風味の点から、酸性ゲル状食品はpH3以上とすることが好ましい。
【0019】
本発明の酸性ゲル状食品では、好ましくはpH4.6以下の酸性にするために、酸材としてグルコン酸を含有することを特徴としている。これにより、ヒアルロン酸及び/又はその塩を合計で好ましくは0.01〜0.5%含有するゲル状食品が酸性に調整されていても、経時的に離水することを防止し、ゲル状態を安定に維持することができる。グルコン酸の含有量は、0.05〜1%とすることが好ましく、特に0.1〜0.5%とすることがより好ましい。
【0020】
また、酸材として、グルコン酸に加えて、リンゴ酸及び/又はフィチン酸を含有することが好ましい。これにより離水を一層防止することができる。グルコン酸、リンゴ酸及び/又はフィチン酸の合計量は好ましくは0.1〜1%である。これらの酸の合計量が少なすぎると、ゲル状食品をpH4.6以下の酸性としつつ離水を防止することができず、また、多すぎるとこれらの酸に固有の風味が際だち、食品全体の風味が損なわれるので好ましくない。
【0021】
本発明の酸性ゲル状食品には、酸材として上述のグルコン酸、リンゴ酸及びフィチン酸以外の酸材を含有させることができる。例えば、すっきりとした酸味を付与するためにはクエン酸を含有させることが好ましい。クエン酸は、カルボキシル基を3個有する弱酸で、レモン等の柑橘類に多く含まれ、すっきりとした酸味を有する。本発明の酸性ゲル状食品にクエン酸を含有させる態様としては、例えば、レモン果汁、グレープフルーツ果汁、クエン酸等を配合すればよい。
【0022】
ただし、クエン酸を含有させると離水が生じやすくなり、少なすぎてもすっきりした酸味を付与することが難しくなることから、クエン酸を含有させる場合、その含有量は0.05〜0.3%が好ましく、0.05〜0.15%がより好ましい。さらに、クエン酸を含有させる場合には離水を防止する点から、クエン酸1部に対しグルコン酸、リンゴ酸及びフィチン酸の含有量の合計を好ましくは0.5〜60部、より好ましくは1〜30部とする。
【0023】
本発明の酸性ゲル状食品には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸材としてさらに酒石酸、コハク酸、酢酸等の有機酸、リン酸等の無機酸を含有させることができる。
【0024】
また、本発明の酸性ゲル状食品に甘味を付与する場合、離水防止の点から、甘味剤として、ソーマチン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビアから選ばれる1種以上を使用することが好ましく、特に、ソーマチンを使用することが好ましい。これに対し、スクロース、ラクトース、ガラクトース又はグルコース等の二糖類又は単糖類を使用すると、ヒアルロン酸やその塩とゲル内の水を奪い合うためか、経時的に離水が生じる場合がある。
【0025】
ここで、ソーマチンとは、ソーマトコッカスダニエリの赤い果実の中に含まれている種子より抽出、精製される甘味タンパク質である。本発明の酸性ゲル状食品においてソーマチンの含有量は、特に限定されないが、0.0002〜0.01%が好ましく、0.0003〜0.003%がより好ましい。ソーマチンの含有量が少な過ぎると、ソーマチンによる経時的な離水防止効果を得られにくく、多すぎると所期の甘味を越えてしまい、離水防止の点からも、含有量に見合う効果を得られず経済的でない。
【0026】
本発明の酸性ゲル状食品には、本発明の効果を損わない範囲で、さらに種々の添加剤を含有することができる。例えば、オリゴ糖、デキストリン等の糖類、キシリトール、トレハロース、パラチノース等の甘味料、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、リゾリン脂質等の乳化剤、食塩、核酸、アミノ酸、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、各種ペプチド、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸等の有機酸塩、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ナイアシン等のビタミン類、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等のミネラル類又はその塩、香辛料、香料等が挙げられる。
【0027】
本発明の酸性ゲル状食品における水分含有量は、目的とする酸性ゲル状食品の具体的な形態に応じて適宜定めることができるが、ヒアルロン酸及び/又その塩とゲル化剤とがそれぞれ含水してゲルが構成されることから、通常50%以上とすることが好ましい。
【0028】
本発明の酸性ゲル状食品の製造方法は、上述の各成分を必要に応じて加熱し、常法により撹拌混合して得ることができる。
【0029】
また、本発明の酸性ゲル状食品は、離水しにくく、熱に安定であることから、デザートとして食されるゼリー、サラダのトッピング、飲料、鍋物など種々の食品に利用することができる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の酸性ゲル状食品を実施例及び比較例に基づき具体的に詳述する。
【0031】
〔実施例1〕
清水89.4部、還元水飴7部、乳酸カルシウム0.1部、グラニュ糖2部、ソーマチン0.001部、寒天0.5部、キサンタンガム0.5部、ヒアルロン酸ナトリウム(平均分子量30万、キユーピー株式会社製)0.1部、グルコン酸0.3部、クエン酸0.1部をミキサーに入れて品温80℃で加熱混合撹拌後、内容量150gのスパウトパウチに150gずつ充填した。充填後、品温10℃まで冷却することによりゲル化剤を増粘させ、pH4
の本発明の酸性ゲル状食品を調製した。
得られた酸性ゲル状食品は、10℃で1ヵ月間保存後に離水が見られず、健康や美容に関する効果の発現を連想させる綺麗なゲル状を呈していた。
【0032】
〔実施例2〜9、比較例1、2〕
酸材の種類と配合量が離水に及ぼす影響を調べるため、実施例1において、酸材の配合量を表1のように変えて、実施例2〜9及び比較例1〜2の酸性ゲル状食品を製した。
また、離水の発生を、10℃で1ヵ月間保存後に外観検査により調べ、次の基準で評価した。
A:離水が見られない場合
B:ほぼ離水が見られない場合
C:離水しておりゲル状食品としての外観を損ねている場合
結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
その結果、酸材としてグルコン酸を含有している実施例1〜9は離水しにくいこと、特に、グルコン酸の含有量が0.1〜0.5%の範囲にあると高い離水防止効果が得られた(実施例1〜4、6、8〜10)。また、グルコン酸、リンゴ酸、フィチン酸を併用すると、特に均一で美しいゲル状食品が得られた(実施例2〜4)。ヒアルロン酸Naの配合量が多いにも拘らず、実施例10と同様の高い離水防止効果が得られた(実施例9)。
【0035】
また、クエン酸との配合比率でみると、クエン酸1部に対しグルコン酸1〜30部配合した場合、特に優れた離水防止効果が得られた(実施例1〜4、6、8〜10)。
【0036】
〔実施例11〕
ソーマチン0.001部をソーマチン0.0001部に置き換えた以外は、実施例1に準じて酸性ゲル状食品を調製した。その結果、殆ど離水が見られなかった。離水防止効果は、実施例1の方が優れていた。
【0037】
〔実施例12〕
ソーマチン0.001%及び清水2%をグラニュ糖2%に置き換えた以外は、実施例1に準じて酸性ゲル状食品を調製した。その結果、殆ど離水が見られなかった。離水防止効果は、実施例1の方が優れていた。
【0038】
〔実施例13〕
ソーマチン0.001%をソーマチン0.003%に置き換えた以外は、実施例1に準じて酸性ゲル状食品を調製した。その結果、離水が見られず、実施例1よりも安定なゲル状を呈していた。
【0039】
〔実施例14〕
ソーマチン0.001%及び清水0.01%をステビア0.011%に置き換えた以外は、実施例1に準じて酸性ゲル状食品を調製した。その結果、殆ど離水が見られなかった。離水防止効果は、実施例1の方が優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸及び/又はその塩、グルコン酸、及びゲル化剤を含有することを特徴とする酸性ゲル状食品。
【請求項2】
グルコン酸を0.05〜1質量%含有する請求項1記載の酸性ゲル状食品。
【請求項3】
さらにリンゴ酸及び/又はフィチン酸を含有する請求項1又は2記載の酸性ゲル状食品。
【請求項4】
グルコン酸、リンゴ酸及びフィチン酸の含有量の合計が0.1〜1質量%である請求項3記載の酸性ゲル状食品。
【請求項5】
クエン酸を0.05〜0.3%含有し、クエン酸1質量部に対し、グルコン酸、リンゴ酸及びフィチン酸の含有量の合計が0.5〜60質量部である請求項4記載の酸性ゲル状食品。
【請求項6】
ヒアルロン酸及び/又はその塩を0.01〜0.5質量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載の酸性ゲル状食品。
【請求項7】
ソーマチン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース及びステビアの1種以上を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の酸性ゲル状食品。
【請求項8】
ソーマチンを0.0002〜0.01質量%含有する請求項7記載の酸性ゲル状食品。

【公開番号】特開2013−81420(P2013−81420A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223432(P2011−223432)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】