説明

酸性化されたタンパク質飲料および組成物

カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物、食用酸および安定剤を含むタンパク質飲料と組成物およびその飲料と組成物を配合するプロセス、冷蔵を必要としない常温で長期保存可能なタンパク質飲料と組成物および/またはカカオポリフェノールの賞味期限が長い、飲料と組成物が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物、食用酸および安定剤を含むタンパク質飲料および組成物に関する。本発明の主題はさらに、その飲料および組成物を配合するプロセス、冷蔵を必要としない常温で長期保存可能なタンパク質飲料および組成物および/またはここに記載されるようにカカオポリフェノールの賞味期限が長い飲料および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノール化合物は、ある種の植物性素材に由来する広い部類の生物活性物質である。植物ポリフェノールは様々な健康上の利益に関連付けられてきた。プロシアニジンを含む特定のポリフェノール化合物はカカオ中に自然に生じる。抽出物、カカオ固形物およびカカオリカーを含むカカオ製品は、適切に加工されれば、カカオ中に見つかる本来のフラバノールおよびプロシアニジンの多くを保持することができる。これらのカカオポリフェノールは、摂取されると、ヒトに著しい健康上の利益を提供できる。例えば、カカオポリフェノールは、動脈の血流依存性血管拡張反応に有益な効果を有し、一酸化窒素/一酸化窒素合成酵素(NO/NOS)活性を向上させる;そのような心血管健康効果が、例えば、1997年10月9日に発行された特許文献1に報告されている。それゆえ、カカオポリフェノール含有量の多いカカオ製品を摂取すると、著しい健康上の利益が得られるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第97/36497号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、カカオポリフェノールを提供する組成物が、当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
意外なことに、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物の存在下において、ここに記載された条件下で、食用酸には、カカオ抽出物中に含まれるカカオポリフェノールの安定性を増加させること、カカオ抽出物を含む組成物の美味しさを改善すること、カカオ抽出物を含む組成物に美味しそうな色を与えること、およびいくつかの実施の形態においては、非チョコレート風味の組成物にカカオ抽出物およびカカオポリフェノールの健康上の利益を提供することを含むいくつかの利点があることが発見された。
【0006】
ある実施の形態において、本発明の主題は、タンパク質液体などのタンパク質成分、食用酸、1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物および安定剤(例えば、ペクチン)を含む食用組成物、例えば、美味しい組成物(例えば、飲料)などの飲料に関する。いくつかの実施の形態において、食用組成物は、甘味料、例えば、スクロースおよび/またはスクラロース、アセスルファムK(AceK)またはそれらの組合せなどの非栄養甘味料を含んでもよい。
【0007】
他の実施の形態において、本発明の主題は、タンパク質成分、例えば、タンパク質液体、安定剤、甘味料、例えば、スクロース、および/または非栄養甘味料(スクラロース、アセスルファムK(AceK)またはそれらの組合せなど)、クエン酸、酒石酸および/またはリンゴ酸などの食用酸、1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物および安定剤を含む非チョコレート風味の組成物に関する。この組成物は、果実香味料をさらに含んでもよい。
【0008】
さらに別の実施の形態において、前記組成物は、タンパク質成分、例えば、液体、食用酸、1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物および安定剤を含む、直ぐに飲食できる(例えば、直ぐに飲める)組成物であってよい。
【0009】
さらに他の実施の形態において、前記組成物中のポリフェノールは、長い賞味期限を有する、例えば、その組成物は、ポリフェノールの処理後の総量の75パーセント(75%)超、および例えば、常温で9ヶ月貯蔵した後に(−)−エピカテキンの処理後の量の90パーセント(90%)超を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】図1Aは、熱処理前の乳製品飲料のHPLCプロファイルを示す。
【図1B】図1Bは、6.5秒間の280°F(約138℃)での熱処理後の図1Aに示された乳製品飲料のHPLCプロファイルを示す。
【図2】図2は、貯蔵時間の関数としての(−)−エピカテキン[(−)−EC]および総フラバノール/プロシアニジン(プロファイルCF DP1〜10)レベルを示す;これらのレベルは、元の(処理後;貯蔵前)レベルの百分率として表されている;サンプルは常温(23℃)で貯蔵された。白の記号は(−)−ECを表す;黒の記号は、総フラバノール/プロシアニジンを表す;菱形は、デンプンを含まない1.5mg/gポリフェノール飲料を表す;三角形は、デンプンを含む1.5mg/gポリフェノール飲料を表す;および丸形は、デンプンを含まない2.2mg/gポリフェノール飲料を表す。
【図3】図3は、実施例3の振盪した飲料サンプルのHPLCプロファイルを示す。
【図4】図4は、4ヶ月の貯蔵後の実施例3の飲料サンプルの上清のHPLCプロファイルを表す。
【図5】図5は、4ヶ月の貯蔵後の実施例3の飲料サンプルの沈殿物のHPLCプロファイルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、天然のままでは苦く、渋い。カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する組成物は、典型的に、ココア飲料などのチョコレート風味の組成物に限られてきた。さらに、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する非チョコレート風味の組成物は、その抽出物の強い苦味と渋味のために、それほど美味しくはなかった。したがって、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する、美味しい非チョコレート風味の組成物を提供することが都合よいであろう。その上、常温で長期保存可能であり(すなわち、冷蔵を必要としない)、ポリフェノールが長い賞味期限を有する組成物(チョコレート/ココア風味および非チョコレート/ココア風味の両方を有する)を提供することが都合よいであろう。これにより、カカオポリフェノールの有用な用途が広がるであろう。
【0012】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は典型的に、水溶液に入れると、紫色から茶色になる。色合いは自然であるが、カカオ抽出物を含有する組成物を摂取する人々にとって美味しそうには見えないであろう。したがって、水溶液に入れたときに美味しそうに見える、カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含有する組成物を提供することが都合よいであろう。
【0013】
「カカオ抽出物」という用語は、カカオ豆、カカオニブ、もしくはカカオ豆かカカオニブから調製された脱脂されていない、ある程度脱脂されたまたは完全に脱脂されたカカオ固形物(例えば、ココアケーキおよびココア粉)を溶媒抽出することによって調製できるカカオポリフェノール(カテキン、エピカテキンおよび/またはプロシアニジン)を含有する溶媒由来の抽出物を称する。例えば、それに関連する開示(カカオ抽出物および抽出プロセスに関する)がここに引用される、Romanczykの米国特許第5554645号、2000年1月18日に発行された米国特許第6015913号(Kealey等)、および2001年11月6日に発行された米国特許第6312753号(Kealey等)の各明細書を参照のこと。当業者には理解されるように、抽出に使用される溶媒は様々であってよい(例えば、水性アセトン)。さらに、当業者に公知のように、カカオ抽出物(粉末形態であり得る)は、ココア飲料およびチョコレートの製造のための従来のカカオ豆加工中に調製されるココア粉とは異なる材料である。従来のカカオ加工の説明については、例えば、Industrial Chocolate Manufacture and Use, 3rd, ed., Ed S.T.Becket, Blackwell Publishing 1999を参照のこと。その上、抽出プロセスに酸が使用される場合、結果として得られるカカオ抽出物はまだ、ここに記載されるように食用酸とまだ組み合わされる、すなわち、そのカカオ抽出物中に残留するどのような酸も、本発明の組成物の食用酸成分の一部とは見なされないことが意図されている。
【0014】
「カカオフラバノール」という用語は、フラバン−3−オールモノマーのカテキンおよびエピカテキンを称する。これらのモノマーは、(+)−カテキンと(−)−エピカテキンおよびそれらのそれぞれのエピマー(例えば、(+)−エピカテキンと(−)−カテキン)並びにその代謝産物(例えば、代謝産物の説明に関して実施例2を参照)を含むそれらの誘導体を含む。当業者が認識できるように、カカオは、ガレート型および/またはガロイル化フラバノールを含まず、それゆえ、「カカオフラバノール」という用語は、没食子酸カテキン、没食子酸エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピガロカテキンなどを含まない。
【0015】
「カカオプロシアニジン」という用語は、カテキンおよび/またはエピカテキンの天然に生じるまたは合成由来のオリゴマーを称する。
【0016】
「カカオポリフェノール」へのどのような言及も、カカオフラバノールおよび/またはカカオプロシアニジンを含むものと理解すべきである。
【0017】
本発明の組成物は、典型的に、お茶、ワイン、ブドウの種または松樹皮由来のポリフェノール化合物および/または抽出物を含まない。しかしながら、これらの化合物は、本発明に使用するのに適しているかもしれない。
【0018】
また、式「A」を有するフラバノールおよびnが2から18までおよびそれ以上の整数である式「An」を有するプロシアニジンの少なくとも一方を含む組成物も本発明の範囲に含まれる。「A」は、式:
【化1】

【0019】
並びにその塩、誘導体、および酸化生成物、
を有し、式中、
Rは、3−(α)−OH、3−(β)−OH、3−(α)−O−サッカライド、3−(β)−O−サッカライド、3−(α)−O−C(O)−R1、または3−(β)−O−C(O)−R1であり;
隣接するモノマー間の結合が、4位と6位の間または4位と8位の間で起こり;
4位のモノマーへの結合がαまたはβ立体化学を有し;
X、YおよびZが、少なくとも1つの末端モノマーについて、隣接するモノマーのそこへの結合が4位にあり、必要に応じて、Y=Z=水素であるという条件で、A、水素、およびサッカライド部分からなる群より選択され;
サッカライド部分が、フェノール部分により必要に応じて置換されていてもよい単糖または二糖部分であり;
1は、少なくとも1つのヒドロキシ基により必要に応じて置換されたアリールまたはヘテロアリール部分であってよい。サッカライド部分が、グルコース、キシロース、ラムノース、およびアラビノースからなる群に由来することが都合よい。サッカライド部分並びにR、X、Y、およびZのいずれまたは全ては、任意の位置で、エステル結合を通じてフェノール部分により必要に応じて置換されていてもよい。フェノール部分は、コーヒー酸、ケイ皮酸、クマル酸、フェルラ酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸、およびシナピン酸からなる群より選択される。
【0020】
ある実施の形態において、前記組成物は、Rが3−(α)−OHおよび/または3−(β)−OHである上述した化合物の内の少なくとも1つを含む。
【0021】
「組成物」という用語は、以下に限られないが、栄養補給食品、飲料およびゲル(例えば、酸性化された乳製品ゲル)を含む。ゲルの例には、プディングおよびカスタードがある。
【0022】
「渋い」という用語は、口腔において乾燥、すぼまること(puckering)および/または粗さとして知覚される触感を称する。渋味の知覚は、始まりはゆっくりとしており、長い持続性により特徴付けられる;その知覚は、瞬時ではなく、展開に時間を要するであろう。多くの化合物が渋い感覚を引き出すが、渋味は、タンパク質を沈殿させる能力と化学的に定義される。当業者には、渋味をどのように評価および/または測定するかが分かるであろう。例えば、苦味、渋味などの特徴を評価するための官能試験方法が、当該技術分野において公知であり、例えば、国際規格(ISO)、および米国材料試験協会(ASTM)などの公認団体の推奨およびガイドラインのように実施される。Hanna Peleg et al., Bitterness and astringency of flavan-3-ol monomers, dimers and trimers, Journal of the Science of Food and Agriculture 79:1123-1128 (1999)も参照のこと。
【0023】
ここに用いたように、「美味しい」という用語は、飲料などの組成物が、飲食した際に、味覚と触感の両方に関して、心地よいまたは好ましい味を有することを意味する。例えば、「美味しい」は、苦味と渋味の要素が組成物の残りのものと調和している(すなわち、甘味と酸味と調和している)ことを意味する(苦味、渋味および後味は、当業者が認識できるように、カカオ抽出物に関連する性質である);「美味しい組成物」は、カカオ抽出物、またはカカオ香味料の存在が、その中に容易に知覚できないことも意味する。食品組成物の美味しさを評価するために、食品化学の技術分野において、嗜好尺度が日常的に使用されている。最も広く使用されてきた嗜好尺度は、例えば、「非常に嫌い」から「非常に好き」までに及ぶ、食品に関する嗜好をヒトが評定する9等尺度であり、5の中点は好きでも嫌いでもない。それゆえ、本発明の組成物は、ヒトが組成物を少なくとも5およびそれ以上、例えば、6以上と評価した場合に、「美味しい」。
【0024】
「常温で長期保存可能な(shelf-stable)」という用語は、周囲温度および周囲湿度の条件下で貯蔵される製品を称し、その製品は、包装の完全な状態が、貯蔵中、輸送中、小売店での陳列中、および家庭にあるときに維持されていれば、製造業者の指定した賞味期限中ずっと、微生物の観点から、腐ったり、安全でなくなったりしない。
【0025】
「賞味期限が長い」という句は、フラバノールおよび/またはプロシアニジンおよび/またはポリフェノールと共に使用した場合、貯蔵後の組成物中のポリフェノール系化合物の量を組成物の製造の完了後、すなわち、輸送と貯蔵の始めに存在する量と比べたときに、長期間に亘る常温(約23℃)での組成物の貯蔵後の、これらの化合物の安定性を称する。ここに記載された特定の組成物のこの性質は、組成物中の任意のポリフェノール系化合物、例えば、(−)−エピカテキンおよび/またはプロシアニジン、および貯蔵期間に関して表現することができる。この安定性は、組成物の製造後および/または輸送および貯蔵の始めのポリフェノール系化合物の量に対する、棚に貯蔵した後の維持された(または損失した)ポリフェノール系化合物の百分率として表してもよい。
【0026】
それゆえ、本発明は、タンパク質成分、例えば、液体、食用酸、安定剤および1種類以上のカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む飲料(例えば、美味しい飲料)またはゲルなどの食用組成物に関する。いくつかの実施の形態において、組成物、例えば、飲料またはゲルは、スクロースなどの甘味料を含んでもよい。この組成物は、乳製品組成物(例えば、乳系飲料またはゲル)または非乳製品組成物(例えば、豆乳またはアーモンドミルク系飲料またはゲル)であってよい。この組成物はさらに果実香味料を含んでもよい。
【0027】
「タンパク質成分」という用語は、任意のタンパク質および/またはタンパク質加水分解物を称することが意図されている。「タンパク質液体」という用語は、タンパク質または還元乾燥タンパク質を含有する任意の液体を意味することが意図されている。そのようなタンパク質液体としては、畜乳、豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク(oat milk)、粥、乳清、ヨーグルト、カゼイン、それらの還元乾燥物およびそれらの混合物が挙げられる。ここに用いたように、「ヨーグルト」は、微生物発酵により得られる製品である。本発明のある実施の形態において、タンパク質組成物は、発酵を用いずに調製される。組成物中のタンパク質レベルは、タンパク質のタイプ(例えば、タンパク質またはアミノ酸の分画/単離体)、および配合(例えば、具体的には、カルシウムのレベル)に応じて、少なくとも0.5%から、例えば、5.5%ほど高くまで、様々であってよい。飲用ではない、例えば、より固いゲルまたはヨーグルト状の粘稠度の製品について、タンパク質含有量は、タンパク質のタイプ、カルシウムのレベル、増粘剤および安定剤に応じて、8%ほど高いであろう。当業者は、所望の配合および当該技術分野における一般知識に関して、本明細書の指針を使用して、これらの条件を最適化できる。
【0028】
本発明の組成物は非チョコレート風味であってもよい。ここに用いたように、「非チョコレート風味の組成物」という用語は、その組成物が、当該組成物中に使用される抽出物および化合物がカカオ由来であっても、容易に知覚できるチョコレートまたはココアの風味を有さないことを意味し、すなわち、「非チョコレート風味」という用語は、「非ココア風味」と同じものを意味することが意図されている。それゆえ、「非チョコレート風味の組成物」は、ココア/チョコレート風味を有する、ココア粉を含有する組成物とは異なっている。
【0029】
本発明の主題の組成物は食用酸を含有する。許容される食用酸としては、以下に限られないが、クエン酸、酒石酸、乳酸、アスコルビン酸、フマル酸、リン酸、リンゴ酸およびそれらの組合せが挙げられる。ある実施の形態において、組成物は、クエン酸、酒石酸またはリンゴ酸の粉末もしくはそれらの組合せ、例えば、クエン酸とリンゴ酸の組合せを含有する。当業者が認識できるように、アスコルビン酸(VitC)は、米国の摂取目安量(RDI)の要件にしたがって、例えば、RDIの100%までを提供し、またVitCで本発明の飲料を栄養強化するために加えてもよい;しかしながら、本発明の目的に関して、VitCは、酸味料として分類すべきではない。
【0030】
いくつかの実施の形態において、タンパク質飲料または他の組成物中の酸(例えば、クエン酸)の量は、飲料中に存在するタンパク質の等電点未満のpH、例えば、等電点よりも0.2から0.4低いpHを達成するような量である。当業者には認識できるように、様々なタンパク質は異なる等電点を有する。例えば、カゼインの等電点はpH4.6であり、乳清はpH5.2であり、豆乳はpH4.5である。それゆえ、前記組成物は、4.6未満のpH、例えば、4.4未満、または4.2未満、例えば、4.0未満のpHを有してよい。ここでの指針に鑑みて、当業者は、結果として得られる飲料の風味に応じて、酸の量、特に酸の量の上限を最適化できる。例えば、酸の含有量が多すぎると、飲むのに酸っぱすぎる飲料が得られるであろう。ある実施の形態において、組成物のpHは、3.5以上、他の実施の形態において、pHは3.6以上である。組成物の例としては、3.5と4.2の間のpHまたは3.6と4.0の間のpHまたは3.8と4.0の間のpHを有するものが挙げられる。
【0031】
pHを減少させる利点としては、カカオ抽出物の苦味と渋味の減少または釣り合い、自然な赤色を組成物に与えること、組成物中のカカオポリフェノールに安定性を与えることが挙げられる。この開示の目的について、「自然な色」は以下のように定義される。
【0032】
食用酸の存在は、組成物を美味しくするように、組成物の苦味と渋味を減少させたりもする。カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物の苦味と渋味に関連する、口腔内の至る所の乾燥、すぼまることおよび粗さは、食用酸の存在により大幅に減少する。
【0033】
食用酸の存在下でのカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物は、より美味しそうな自然な赤色から栗色を組成物に与える(栗色は、カカオ抽出物の量を増加させると、赤色よりも見た目に明らかになる)。ここに用いたように、「自然な色」は、その色が、酸性pH下で、すなわち、飲料の酸性成分が存在するために、カカオ抽出物(に由来し)に固有であり、着色料を添加することによって、色を意図的に変えることによって達成されないことを意味する。ここに記載した組成物に着色料を加えてもよいが、そのような着色料(例えば、赤色40号、カーマイン)は、必要ではなく、ここに記載される組成物から排除されることが好ましい。特定の食品着色料は、副作用を生じさせるかもしれず、また他の理由で消費者にとって魅力的ではないので、このことは都合よい。それゆえ、食品着色料を含まない組成物が、本発明の範囲に含まれる。ここに用いたように、「食品着色料」という用語は、米国の食品医薬品局により定義されたものであるが、果実香味料は特別に排除する。それゆえ、本発明の組成物は、果実香味料を含有してもよい。
【0034】
本発明の組成物の利点の1つは、ポリフェノールの安定性が増加したことである。この点に関して、低いpHにより、組成物の賞味期限に亘りポリフェノールの保持率が増加する。それゆえ、ある実施の形態において、組成物は、常温での少なくとも6ヶ月、典型的には9ヶ月の貯蔵後に、(−)−エピカテキンの処理後の量の75パーセント(75%)超、例えば、80パーセント(80%)超、例えば、90パーセント(90%)超、例えば、95パーセント(95%)超を保持する。ここに用いたように、「処理後の量」という用語は、組成物の製造が完了した後、すなわち、輸送と貯蔵の期間の始まりの、ポリフェノール系化合物の量を称する。貯蔵後にポリフェノール系化合物を保持することは難題であり、カカオ抽出物を含有する組成物について、このことが実施例1に示されている。
【0035】
ここに記載された組成物は少なくとも1種類の安定剤を含有する。「安定剤」は、酸によるタンパク質の凝固を防ぐ様式でタンパク質を被覆する、覆うまたは取り囲む作用物質である。有用な安定剤としては、親水コロイドが挙げられる。安定剤の例としては、ペクチン、例えば、高メトキシルペクチンおよびカルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物が挙げられる。ここに用いたように、「ペクチン」という用語は全ての適切なペクチンを含む。ここでの指針および当該技術分野における一般知識に基づいて、当業者には、本発明に使用すべき安定剤のタイプおよび量が認識されるであろう。例えば、ペクチンは、0.35%以上で組成物に加えられる;タンパク質(カゼイン)とペクチンの比は、一般に、6以下である。
【0036】
本発明の組成物は、エピカテキン(例えば、(−)−エピカテキン)、カテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10(すなわち、プロファイル1〜10)を含むカカオ抽出物を含んでよい。ある実施の形態において、カカオ抽出物は、エピカテキンおよび/またはオリゴマー2〜10のいずれか1つおよび/またはそれらの組合せを含む。前記組成物は、必要に応じて、ココア粉、例えば、それに関連する開示(カカオ抽出プロセスに関する)がここに引用される、2000年1月18日に発行された米国特許第6015913号(Kealey等)、および2001年11月6日に発行された米国特許第6312753号(Kealey等)の各明細書に記載されているように、フラバノールおよびプロシアニジンを保持するように処理されたココア粉を含有してもよい。
【0037】
本発明の主題の組成物は、ポリフェノール系化合物、例えば、カカオポリフェノールに関連する健康上の利益を提供するために、一杯分(すなわち、製品の単位当たり)少なくとも約100ミリグラムまたは少なくとも約200mgであって、典型的に、組成物が美味しいままであるために一杯分約1000mg以下の総フラバノール含有量(モノマーとオリゴマーを含む)を有する。総フラバノール含有量は、例えば、組成物の一杯分少なくとも約200から約1000ミリグラム、または一杯分少なくとも約300から約750ミリグラム、または一杯分少なくとも約300から約600ミリグラム、または一杯分少なくとも約270mgまたは少なくとも約350ミリグラムであってよい。実施例に示されるように、飲料または他の組成物の一杯分の量は、50から250ml(例えば、150ml、100ml、50ml)、または4から12液量オンス(約120から360cc)(例えば、4オンス(約120ml)、8オンス(約240ml)、12オンス(約360ml))であってよい。典型的に、組成物は、対象、例えば、組成物を飲食するヒトに健康上の利益を与えるのに十分な量のポリフェノール系化合物を少なくとも1種類含有してよい。ある実施の形態において、組成物は、少なくとも0.05から0.45mg/gの(−)−エピカテキンおよび/または少なくとも1.5mg/gの総エピカテキン、カテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10を含有してよい;しかしながら、それより多い量も考えられる。フラバノール/プロシアニジンオリゴマープロファイル1〜10を有するカカオ抽出物が使用され、特定の量の(−)−エピカテキンが望ましい場合、当業者は、抽出物中の(−)−エピカテキンの含有量に基づいて、その量を決定することができる。例えば、抽出方法に依存して、抽出物は、25〜30%または40%の(−)−エピカテキンを含有してもよい。ある実施の形態において、組成物の美味しさを維持するために、組成物は、2.2mg/gまで、または2.5mg/g、または3mg/gまでのエピカテキンおよび/または任意のプロシアニジンオリゴマーまたは総エピカテキン、カテキンおよびプロシアニジンオリゴマー2〜10を含有してもよい。組成物のカカオポリフェノール含有量は、"Method performance adn multi-laboratory assessment of a normal phase high pressure liquid chromatography-fluorescence detection method for the quantitation of flavanols and procyanidins in cocoa and chocolate containing samples," Rebecca J. Robbins, Jadwiga Leonczak, J. Christopher, Julia Li, Cathernie Kwik-Uribe, Ronald L. Prior, and Liwei Gu, Journal of Chromatography A, 1216 (2009) 4831-4840に記載されている方法によって測定される。
【0038】
本発明の主題の組成物に使用されるカカオ抽出物は、この抽出物の粒径を減少させるために粉砕しても差し支えない。粉砕されたカカオ抽出物は、典型的に、粉砕されたカカオ抽出物のグラム当たり、少なくとも約300ミリグラムのカカオポリフェノール(プロファイル1〜10、フラバノールおよびプロシアニジンオリゴマー)、例えば、約300から約700ミリグラム、または少なくとも約400ミリグラム、または約400から約600ミリグラム、または約400から約500ミリグラムのカカオポリフェノールを含有する。本発明の主題の組成物中に存在するカカオ抽出物は、約75マイクロメートル以下、好ましくは約30マイクロメートル以下、より好ましくは約20マイクロメートル以下、最も好ましくは約10マイクロメートル以下の減少した粒径を有するであろう。この減少した粒径により、渋味がさらに減少し、これにより転じて、組成物がより美味しくなる。
【0039】
前記組成物は、甘味料、増粘剤、果実濃縮物、天然の香味料、ビタミン類、ミネラル類、緩衝剤および他の材料などの追加の要素を有してもよい。
【0040】
適切な甘味料(栄養性および非栄養性)としては、食品に一般に使用されるものが挙げられ、以下に限られないが、スクロース(例えば、サトウキビや砂糖大根からの)、デキストロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、グルコースシロップまたはその固形物、コーンシロップまたはその固形物、転化糖、加水分解ラクトース、ハチミツ、メープルシュガー、黒砂糖、モラセス、高効能甘味料、糖アルコール(ポリオール)、またはそれらの組合せが挙げられる。当該技術分野において、以下のものが高効能甘味料と認識されている:アステルパーム、チクロ、サッカリン、アセスルファム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、スクラロース、アリテーム、ステビア甘味料、グリシルリジン、タウマチン、アセスルファムK、およびその混合物。糖アルコールの例としては、当該技術分野において一般に使用されているものが挙げられ、以下に限られないが、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、およびラクチトールなどが挙げられる。特に好ましい甘味料としては、スクロースおよびスクラロース並びにスクラロースとAceKとの組合せが挙げられる。本発明の目的について、都合よい甘味料は、スクラロースの場合におけるように、甘味を提供し、かつ苦味と渋味をマスキングする(すなわち、苦味/渋味遮断薬として働く)。
【0041】
前記組成物は、天然または加工デンプン、またはそれらの混合物などの増粘剤も含有してよい。ペクチンおよびカルボキシメチルセルロースなどの特定の安定剤も、増粘効果を提供するために使用してもよい。デンプンは、加工トウモロコシデンプン、タピオカまたは米デンプンであって差し支えなく、必要に応じて、結果として得られる組成物の所望の性質に応じて、例えば、約1パーセント(1%)で加えて差し支えない。ある実施の形態において、増粘剤は、組成物の風味および渋味に関して中性である、すなわち、これらの性質に影響しない。
【0042】
前記組成物または飲料は、以下に限られないが、天然または人工の果実香味料、バニリン、スパイス類、および天然の搾られた柑橘油またはスパイスオイル、並びにそれらの組合せを含む香味料も含有してよい。果実香味料の例には、ベリー(ラズベリー、ストロベリー)、リンゴ、パイナップルまたはバナナがある。果実香味料は、果実の汁またはピューレとして提供してもよい。組成物は、ココア粉、チョコレートリカーおよび/またはチョコレート片またはかけらを使用して、ココア/チョコレート風味にしてもよく、ココア/チョコレートおよび果実香味料の組合せを含有してもよい。
【0043】
カカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む組成物の投与は、経口投与であることが好ましい。
【0044】
本発明の組成物は、ここに記載された組成物を使用し、政府規制に留意して、食品技術分野における標準方法を使用することによって調製してもよい。しかしながら、組成物に4.6以下のpHを使用し、適切な処理工程を選択することが、処理および貯蔵中にポリフェノール系化合物を維持するのに都合よい。その組成物は、有効性、包装のタイプ、費用およびバッチサイズに応じて、無菌プロセス、あるいは「高温充填および保持(hot fill and hold)」プロセスを使用して調製してもよい。
【0045】
無菌プロセスが実施例2に例示されている。酸を加える前に、安定剤(例えば、ペクチン)をタンパク質成分に加えることによって、成分を混合することが好ましく、組成物に温度処理を行う。重要なことに、酸の不在下で、および/または組成物のpHが4.6超である場合、285°F(約141℃)以上の温度での無菌熱処理が必要である(典型的に276°F(約136°)超)。しかしながら、ここに記載された組成物のpHおよび酸濃度を考えると、この処理には、より低い温度(例えば、285°F(約141℃)未満または好ましくは276°F(約136°)未満)例えば、約3秒から10秒に亘る225°F(約107℃)未満の温度、例えば、195°Fから225°F(約91℃から約107℃)の温度を使用してもよい(無菌製品を製造するためのそのような温度の適性が実施例2に記載されており、ここでは、悪い微生物活性は検出されなかった)。これらの温度により、組成物中のポリフェノール系化合物の損失が最少になる。ある実施の形態において、処理後の組成物では、処理前に組成物に加えられたポリフェノール系化合物の少なくとも80パーセント(80%)、例えば、少なくとも90パーセント(90%)、例えば、少なくとも95パーセント(95%)、例えば、少なくとも97パーセント(97%)が保持される。反対に、285°F(約141℃)以上の温度では、米国特許出願公開第2010/0055248号明細書に記載された条件下で、その中に示されるように、30〜50%が失われる(表3参照)。
【0046】
他の実施の形態において、「高温充填および保持」プロセスが使用されると、組成物は、例えば、少なくとも195°F(約91℃)、例えば、少なくとも200°F(約93℃)の温度に処理され、容器内に高温状態で入れられ、高温状態で封止され、10〜30秒間保持され、次いで、冷却される。ある実施の形態において、処理後の組成物では、処理前に組成物に加えられたポリフェノール系化合物の少なくとも80パーセント(80%)、例えば、少なくとも90パーセント(90%)、例えば、少なくとも95パーセント(95%)、例えば、少なくとも97パーセント(97%)が保持される。
【0047】
必要に応じて、上記プロセスを行う場合、酸素を除去するために、製造ラインを窒素でフラッシングしても、または真空を使用してもよい。
【0048】
ある実施の形態において、ここに記載されるように低温および低pHでの処理のために、処理後の組成物は、フラバノールおよび/またはプロシアニジン2〜10の元の(すなわち、処理前の)HPLCプロファイルを維持する。言い換えれば、そのような組成物では、(−)−エピカテキン鏡像異性体含有量の変化が最少に過ぎない(すなわち、(−)−カテキンへの転換は取るに足らない)。典型的に、ここに記載された組成物は、熱処理前にある量の(−)−カテキンを含有する(例えば、(−)−エピカテキンの(−)−カテキンに対する比は、一般に、8:1から11:1の範囲にあるであろう)。ある実施の形態において、熱処理後、この組成物では、サンプル中の(−)−エピカテキンおよび(−)−カテキンの総量に対して、(−)−カテキンの増加が1パーセント(1%)未満、または5パーセント(5%)未満、または10パーセント(10%)未満、または15パーセント(15%)未満である。
【0049】
本発明を、以下の非限定的実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0050】
実施例1
直ぐに飲める(Ready to drink )(RTD)飲料:カカオポリフェノール(CP)保持および転位へのプロセスと成分の影響
カカオポリフェノール(フラバノール/プロシアニジン)を含有する常温で長期保存可能なRTD乳製品飲料を製造するために、超高温(UHT)殺菌工程(例えば、283°F(約139℃)で3秒間)が必要である。この熱処理では、フラバノールおよびプロシアニジンのレベルが減少するだけでなく、飲料中のポリフェノール系化合物を変化させる化学反応を開始させる、すなわち、エピマー化反応を生じさせる。そのような処理の悪影響が、この実施例と、「Products containing polyphenols」と題するWoelfelおよびRobbinsの米国特許出願公開第2010/0055248号明細書[’248号明細書]に例示されている。
【0051】
試験飲料を’248号明細書の表1に記載された成分を混ぜ合わせることによって調製し、’248号明細書に記載された連続フロープロセスを使用して、6.5秒間に亘り280°F(約138℃)で処理した(このプロセスの説明図については、’248号明細書の図1を参照のこと)。14種類の異なる運転を行った。CP損失/保持およびHPLCプロファイルの分析に関するサンプルを、成分の最初の混合工程と、次いで、包装充填工程(すなわち、最終工程)で収集した。分析のためのサンプリング地点は、このプロセス(連続フロー)の性質のために限られた。
【0052】
飲料サンプルは、’248号明細書の段落56〜65に記載された分析のために調製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して分析した(Adamson et al., HPLC Method for the Quantification of Procyanidins in Cocoa and Chocolate Samples adn Correlation ot Total Antioxidant Capacity, J.Agric.Food Chem., (1999) 47:4184-4188も参照のこと)。熱処理の前後の飲料の代表的なHPLCトレースが図1Aおよび1Bに示されている(’248号明細書の図6も参照のこと)。図1Aと1Bのプロファイルを比較すると、差が観察された(熱処理前後のモノマーのピークおよび熱処理前後のダイマーのピークを比較する)。図1Bに示されたHPLCプロファイルは、「代わりのプロファイル」と称され、エピマー化反応の結果であり得る。その上、より高次のプロシアニジンオリゴマーを比べると、熱処理された飲料では、より高次のオリゴマーの量が劇的に減少している。
【0053】
総CPの損失百分率を以下のようにして計算した:損失%=(熱処理前の量(−)熱処理後の量)/熱処理前の量×100。平均で、14回の異なる運転(類似の飲料レシピで)に基づいて、総CP損失は約35%(約65%の保持)であった。より大きい損失(50%まで)も観察された(’248号明細書の表3を参照のこと)。貯蔵の最初の数ヶ月後に追加のCF損失が観察された(貯蔵の4ヶ月後にさらに35%まで)。
【0054】
高温工程は、CP含有量およびプロファイルに主要で最も強力な影響があるようである。他の成分(例えば、安定剤、香味料、CP源、クエン酸塩、リン酸塩または脂肪の含有量)は、CP保持に影響はないようであった。
【0055】
実施例2
直ぐに飲める飲料
実施例1に記載されたCP損失の欠点を克服するために、数多くの直ぐに飲める飲料に実験を行い、この点に関して、食用酸を飲料に加え、4.6未満のpHを達成することが都合よいと判断した。
【0056】
RTD飲料を調製するために、表1に列記された成分を以下の手法にしたがって混ぜ合わせた。試作品を製造して、一杯(240mL)当たり500mgまでのカカオポリフェノール(プロファイル1〜10)を送達した。一杯(1カップ)当たりのカロリーは、180〜200の範囲にあり、配合物には脂肪が実際的に含まれていなかったので、主に炭水化物源からであった。
【表1】

【0057】
安定剤であるペクチンは、室温で水中に分散させることにより(全砂糖の1/4を加えた)水和した(2%w/wの懸濁液)。乳を水で還元し(全砂糖の1/2を加えた)、完全に混合した。次いで、クエン酸溶液を調製した(水中50%w/w)。カカオポリフェノールを含有するカカオ抽出物に残りの1/4の砂糖をブレンドした。次いで、ペクチン懸濁液を乳に加え、完全に混合した。ラズベリー濃縮物をゆっくりと加え、完全に混合した。その後、酸溶液を加え、高速Silverson(登録商標)ミキサを使用して、激しく混合した。次いで、砂糖およびカカオ抽出物プレンドを加え、激しく混合した。pHを約4.0に調節し、次いで、飲料を管型熱交換器内で約155°F(約68℃)に予熱した。この製品を1000psi(約6.9MPa)と、200psi(約1.4MPa)の第2段階で均質化した。
【0058】
このRTD飲料を、密封容器内における常温で長期保存可能な酸性化食品の処理に関する米国連邦規則集の第21巻(例えば、21CFR108、110、113、114)に提供された規則に従って熱処理した。3つのバッチの製品を調製し、2つのバッチを222°F(約106℃)の殺菌温度まで加熱し、0.5の層流補正因子で、10秒間に亘りその温度に保持し、1つのバッチを10秒間に亘り197°F(約92℃)を使用して処理した。次いで、製品を135°F(約57℃)の温度まで急冷し;次いで、65°F(約18℃)の温度までさらに冷却し、最後に、無菌タンクに送って、包装前に保持する。この製品を、tba/jl−hタイプの包装材料を使用した300mlパック内に、Tetra Prisma Aseptic Model 19010v充填装置を使用して無菌包装した。
【0059】
フラバノール/プロシアニジン(1〜10プロファイル)の処理損失を評価するために、Robbins et al., Method performance and multi-laboratory assessment of a normal phase high pressure liquid chromatography-fluorescence detection method for the quantitation of flavanols and procyanidins in cocoa and chocolate containing samples, J Of Chromatography (2009) 4831-40に記載された手法を使用して、処理後の化合物の量を決定した。処理中の損失は取るに足らないほどであり、これは製品の酸性のためであった。
【0060】
飲料のある変更物を、加工デンプンを加えて(約2.0%w/w)調製した。このデンプンは、口当たりを改善するために加えられ、全砂糖の1/2と一緒に、還元された乳に加えられ、完全に混合された。
【0061】
品質管理:
21CFR 114.80(a)(1)によれば、全ての酸性化食品は、「・・・公衆衛生上重要な微生物の栄養細胞および食品が貯蔵され、流通され、販売され、ユーザにより保持される状況下で再生できる健康上重要ではない細胞を破壊するのに十分な程度まで熱処理されるものとする」。規則とのコンプライアンスを確保するために、先に記載した3つのバッチからの無菌包装製品をオレンジ血清寒天培地(米国、BDから入手できる)上で平板培養し、7日間に亘りインキュベーションした。下記の表に示されたデータに基づいて、製品は工業的に無菌であると決定された。
【表2】

【0062】
CPの賞味期限
試験サンプルを貯蔵して、カカオポリフェノールの安定性を判定した。(−)−エピカテキンおよび総CP含有量(プロファイル1〜10)の量を、上述したRobbinsの方法を使用して3、4、5、6、8および11ヶ月の貯蔵時点で測定した。室温で11ヶ月間の貯蔵後、(−)−エピカテキンの損失はほぼ<10%程度であった。総CP含有量(プロファイル1〜10)について、ほぼ<20%程度の損失が見られた。図2は、貯蔵期間に亘りこれらの結果を示している。
【0063】
実施例3
貯蔵後のRTD乳製品飲料の分析
沈殿物の存在について試験するために、実施例2において調製した飲料のサンプルを室温で4ヶ月間に亘り貯蔵した。
【0064】
沈殿物が検出された。沈殿物および上清の液相の性質を理解するために、2つの箱を撹拌せずに分析のために提出し、1つの箱を完全に振盪し、次いで、分析のために提出した。振盪により、沈殿物が減少した。
【0065】
振盪しなかったサンプルにおいて、秤量されたチーズクロス片に通して濾過し、次いで、チーズクロスを搾って、全ての上清が除去されたことを確実にすることによって、二相分離を行った。飲料の両方の分画の質量を、乾燥の前後に記録した。サンプルをタンパク質、テオブロミン、カフェイン、(−)−エピカテキン、総カカオポリフェノール(プロファイル1〜10)および鏡像異性体(エピマー化が生じた場合に評価するために)のパーセント(%)について分析した。タンパク質の%値は、テオブロミンおよびカフェインが寄与した窒素について補正した。相間のフラバノール種およびプロシアニジン種の分布をよりよく理解するために、振盪したサンプル全体からのクロマトグラムを上清サンプルおよび沈殿物サンプルと比べるように、サンプルにHPLC分析を行った。上述したRobbinsの方法を使用した。
【0066】
沈殿物と上清に分離されたサンプルについて、沈殿物は、飲料の総質量の約4%を占め、上清は、総質量の約96%を占めた。分析により、沈殿物が主にタンパク質からなることが示された。結果の概要が表3に示されている(サンプル1は、飲料成分の全てが分散された振盪サンプルを表し、サンプル2と3は、各々が別々に分析された上清と沈殿物に分離されたサンプルを表す)。
【表3】

【0067】
表3を参照すると、沈殿物は、平均で36.4%の総タンパク質、30.6%のCPプロファイル1〜10、および15.8%の総(−)−ECを含有した。
【0068】
たとえ、約31%の総カカオポリフェノール(プロファイル1〜10)が沈殿物中に存在しても、それは主に高分子量オリゴマー(テトラマー以上)からなった。
【0069】
試験サンプルの上清中と沈殿物中のフラバノール種およびプロシアニジン種の分布(mg/gおよび総CP1〜10の%として表されている)が表4に示されている。
【表4】

【0070】
上の表を参照すると、上清はモノマーが豊富であり、合計で53.27mgのモノマーを含有したのに対し、沈殿物は合計で9.68mgのモノマーを含有した。
【0071】
さらに、上記の観察が、(i)振盪サンプル(図3);(ii)上清(図4);および(iii)沈殿物(図5)のHPLCプロファイルに反映されている。
【0072】
実施例4
処理前後の鏡像異性体の(−)−カテキン含有量の分析
(−)−エピカテキンの(−)−カテキンへのエピマー化に対する熱処理の影響を評価するために、実施例2にしたがって調製したいくつかの飲料(各サンプルの処理温度が表5に示されている)を、それらの(−)−エピカテキンと(−)−カテキンの含有量について測定し、次いで、それらの比を決定した。(−)−ECと(−)−Cの総計から(−)−カテキンのパーセントも計算した。データは、表5に示されており、処理中に最小限のエピマー化が生じたことを示している(6種類の飲料の各々についての「処理前」サンプルを「処理済み」サンプルと比較のこと)。その上、棚貯蔵は、(−)−エピカテキン含有量には悪影響を及ぼさなかった。
【表5】

【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質液体、安定剤、食用酸、およびカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む直ぐに飲める飲料であって、pHが4.6未満である飲料。
【請求項2】
pHが4.2未満であることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項3】
pHが約3.5から約4.0であることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項4】
pHが約3.8から約4.0であることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項5】
前記安定剤が高メトキシルペクチンであることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項6】
前記食用酸がクエン酸であることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項7】
少なくとも100mg/一杯分のカカオフラバノールおよび/またはプロシアニジンを含むことを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項8】
少なくとも200mg/一杯分のカカオフラバノールおよび/またはプロシアニジンを含むことを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項9】
非チョコレート風味の飲料であることを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項10】
非チョコレート風味の飲料であることを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項11】
非チョコレート風味の飲料であることを特徴とする請求項3記載の飲料。
【請求項12】
乳製品飲料であることを特徴とする請求項11記載の飲料。
【請求項13】
室温で6ヶ月間貯蔵した後に(−)−エピカテキンの処理後の量の少なくとも80パーセントを維持することを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項14】
室温で9ヶ月間貯蔵した後に(−)−エピカテキンの処理後の量の少なくとも80パーセントを維持することを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項15】
室温で6ヶ月間貯蔵した後に(−)−エピカテキンの処理後の量の少なくとも90パーセントを維持することを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項16】
室温で9ヶ月間貯蔵した後に(−)−エピカテキンの処理後の量の少なくとも90パーセントを維持することを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項17】
室温で6ヶ月間貯蔵した後にフラバノールおよびプロシアニジン(プロファイル1〜10)総含有量の処理後の量の少なくとも75パーセントを維持することを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項18】
室温で9ヶ月間貯蔵した後にフラバノールおよびプロシアニジン(プロファイル1〜10)総含有量の処理後の量の少なくとも75パーセントを維持することを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項19】
タンパク質成分、安定剤、食用酸、およびカカオポリフェノールを含むカカオ抽出物を含む、常温で長期間保存可能な組成物であって、該組成物のpHが4.2未満であり、少なくとも100mg/一杯分のカカオフラバノールおよび/またはプロシアニジンを含むことを特徴とする常温で長期間保存可能な組成物。
【請求項20】
ゲルであることを特徴とする請求項19記載の常温で長期間保存可能な組成物。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−521009(P2013−521009A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−557154(P2012−557154)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/027435
【国際公開番号】WO2011/109826
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】