酸性基材上でのカチオンインクの光硬化
本発明は、コーティング化学、硬化処理技術、関連装置、およびそれらによって得られた製品を進歩させるものである。本発明は、100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光によって少なくとも部分的にカチオン硬化したコーティングと結合した基材を含む。本発明に、基材をコーティングし、塗工製品を硬化する方法および系が含まれる。また、本発明は、この硬化処理技術を利用する装置およびインクジェットプリンタを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング技術、ならびにカチオンコーティングを基材上で光硬化させるための組成物、方法、系、コンピュータプログラム、塗布技術、制御系、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の遊離基硬化処理系は、高輝度の発熱灯を伴う。歴史的に、遊離基系では、水銀光源を用いて発熱する。このため、それらは感熱基材に限定して使用される。さらに、上記のような系では、赤外線(IR)放射が基材に達して、基材が歪んだり変色したりするのを防止するために、水冷ヒートシンクおよび/またはダイクロイックフィルタを必要とすることがある。このような手段は、基材の加工をより複雑かつ高価にし、上記のような系の使用を魅力のないものにする。
【0003】
公知の紫外線(UV)遊離基硬化技術は、例えば、硬化コーティングの酸素阻害、可撓性不足、および接着性不足等の点で不適切である。公知技術の欠点としては、硬化処理および硬化率が不十分または厳格であったり、基材のスループット率が悪いことが挙げられる。さらに、公知の技術では、多次元曲面または多次元形状の物品を適切にコーティングできない。公知の方法でも、暗領域または露光が制限された領域を有する物体を適切にコーティングすることができない。
【0004】
公知のジェットプリンティング技術では、100ワット/インチ(W/in)の水銀発熱硬化光源または他の高輝度水銀発熱硬化光源を利用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コーティング技術を向上させるものであり、光硬化、暗硬化(dark cure)、および二重硬化技術を含む。本発明は、平面形状、曲面形状、多次元(3次元(3D))形状、および複雑な形状を含むがこれらに限定されないあらゆる表面形状のコーティングを可能にする。本発明は、光が遮られた部分、露光されていない暗領域、および硬化処理に用いる光源と直交する面よりも低輝度の光に露光される部分を有する表面のコーティングおよびコーティングの硬化を可能にする。本発明はまた、共有および非共有結合を形成することにより、コーティング組成物と基材または表面とを結合させる技術も含む。本発明はまた、感熱基材および感熱成分を有する物品のコーティングおよび硬化を含む。1つ以上のコーティングを単純な形状をした物品および複雑な形状をした物品に塗布することができる。本発明では、皺仕上げ、標準的なマット仕上げ、高光沢仕上げ、および/または他の所望の表面仕上げを含むがこれらに限定されない幅広い仕上げを作製することができる。本発明は、1つの以上のカチオンコーティングまたはインクを有するコーティングを含む。コーティングは、基材上に印刷またはコーティングすることができる。コーティングする基材は、酸性であっても酸を含むものであってもよい。コーティングの硬化および基材に対するコーティングの接着は、幅広い印刷速度で行なうことができる。本発明はまた、インクジェット印刷技術におけるそのような技術も向上させる。本発明は、装置系、プロセス、方法、制御系、品質管理技術、ならびに本明細書に記載のコーティングおよびインクの塗布および硬化に関連する製品を含む。
【0006】
本明細書では、範囲の端点は、それらが意味する範囲内に、本発明に関連するそれぞれの端点と僅かに異なる値を含むがそれらに限定されない当業者の知識の範囲内における他の値を含めることを認めている(換言すれば、本明細書中に示す範囲の端点は、それぞれの端点各々について、「約」または「近く」または「概ね」と表現される値を含めるものと解釈される)。本明細書中に示す範囲および割合の限界は組み合わせ可能である。例えば、特定のパラメータについて10〜2000および50〜1500の範囲が示される場合、10〜50、10〜1500、50〜2000、または1500〜2000という範囲も企図されることは言うまでもない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの実施形態は、100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光によって少なくとも一部がカチオン硬化するコーティングに結合した基材を有する組成物である。
【0008】
本発明は、広範囲の光波長の値および広範囲の光輝度の値を有する光を利用することができる。1つの実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長(「光波長」、「波長」とも言う)および約0.0003W/cm2/nm〜約0.05W/cm2/nmの光輝度(「光輝度」、「輝度」とも言う)を有する光を利用する。他の実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.02W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。さらに他の実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.01W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。またさらなる実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.008W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。
【0009】
本発明で利用可能な光源が発光する波長の範囲(例えば、分光幅、または帯域幅)は大きく変化してもよい。光源による発光のスペクトルピークの数は、1つのピークから多数のピークまで変化させることができる。後述の表1では、本発明で使用可能な光の波長範囲および値について非限定的な選択範囲を示している。各光の範囲および値は、光源が生じたピーク周辺に存在し得る波長範囲を含む所与の値の上下の値の範囲を含むものであると解釈されたい。
【0010】
さらに、光輝度は、例えば、最大で約5.0W/cm2/nmまでの値を有するようにしてもよい。従って、約0.005W/cm2/nm、0.0075W/cm2/nm、0.009W/cm2/nm、0.01W/cm2/nm、0.015W/cm2/nm、0.02W/cm2/nm、0.025W/cm2/nm、0.03W/cm2/nm、0.035W/cm2/nm、0.04W/cm2/nm、0.045以上の光輝度値を、これらの値の上下および中間の値とともに用いてもよい。約0.05W/cm2/nm、約0.075W/cm2/nm、約1.0W/cm2/nm、約3.0W/cm2/nm、約4.0W/cm2/nm、約5.0W/cm2/nm、約1.0W/cm2/nm、またはこれらよりさらに高い光輝度値を用いてもよい。これら輝度の具体例は限定を目的とするものではない。
【0011】
本発明とともに幅広い波長および輝度の組み合わせを用いることができる。従って、本明細書中に示すような波長および輝度の値の組み合わせは限定されない。
【0012】
上記コーティングの全て、一部分、または複数部分を、露光を必要としない、露光しない、または露光から独立した化学反応によって少なくとも部分的に硬化することができる。基材分子とコーティング分子間に共有結合を形成してもよい。基材分子とコーティング分子間に非共有結合を形成してもよい。いくつかの実施形態では、基材とコーティング組成物間に共有結合および非共有結合の両方を発生させることができる。
【0013】
カチオンコーティング組成物の硬化処理により、カチオン重合の産生物である高分子を生じることが可能である。本明細書では、可撓性の値は、工学歪みの%を単位とする(可撓性に関して論じる場合、%工学歪みは「%」である)。本発明によるコーティングおよび硬化処理により、コーティングにクラックを生じない工学歪み1%〜500%の範囲の可撓性を有する硬化コーティングを生じることが可能である。最大で工学歪み1000%までのより大きな可撓性を実現することができる。さらに高い可撓性も実現可能である。他の実施形態では、それぞれ、実質的にコーティングにクラックを生じない工学歪み50%、100%、200%、300%、または400%とすることができる。これらの値の上下または中間の値を実現することができる。
【0014】
本発明のコーティング組成物、硬化コーティングおよび物品は、1つ以上のコーティングを有しているか、色素、色を含んだり、クリアコートであってもよい。
【0015】
本発明の範囲には多種多様なコーティングおよび硬化プロセスが含まれる。1つの実施形態では、基材をコーティングするための進歩的なプロセスは、カチオンコーティング組成物を準備する工程と、基材を準備する工程と、100nm〜1200nm(ナノメートル)の範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nm(ワット/平方センチメートル/ナノメートル)の範囲の輝度を有する光を準備する工程と、上記基材のコーティング部を形成する少なくとも一部に上記カチオンコーティング組成物を一定量塗布する工程と、前記一定量のカチオンコーティング組成物の少なくとも第1の部分を上記光で露光することにより硬化する工程を含む。1つの実施形態では、上記プロセスは、コーティング組成物の少なくとも一部を上記光による露光を必要としない反応により硬化するさらなる工程を含む。他の実施形態では、露光なしのコーティングの乾燥が利用される。
【0016】
コーティングは、各種の硬化処理率および硬化処理速度を用いて硬化することができる。実施例15に示すように、本発明では、約100ミクロン以下(ここでも同様)の厚さに対応する量のコーティングを約1分以下の時間で硬化することができる。他の実施形態では、50ミクロン以下の量のコーティング組成物の硬化を5分以下の時間で実現することができる。他の実施形態では、約100ミクロン以下の厚さのコーティングを5分以下の時間で硬化する。さらに他の実施形態では、50ミクロン以下の厚さのコーティングを2.5分以下の時間で硬化する。
【0017】
本発明は、一定量のカチオンコーティング組成物の一部分を硬化する工程を、少なくとも部分的には、他の部分の露光とは異なる輝度の光で露光することによって実現するコーティングおよび硬化プロセスを含む。同一の物体、またはコーティングの同一表面もしくは層上で異なる硬化方法が実施されるコーティング部分の数は限定されない。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記プロセスは、コーティング組成物の分子と基材の分子間に共有結合を形成する工程を含む。他の実施形態では、上記プロセスは、コーティング組成物の分子と基材の分子間に非共有結合を形成する工程を含む。さらに他の実施形態では、上記プロセスは、基材分子とコーティング分子間に共有結合および非共有結合の両方を形成する。
【0019】
添加剤、光開始剤、および光増感剤を本発明のコーティング、インク、およびプロセスに利用することができる。1つの実施形態では、少なくとも1つの光増感剤をコーティング組成物に添加し、本明細書中に示すように露光することにより活性化してもよい。他の実施形態では、少なくとも1つの光開始剤をコーティング組成物に添加して、本明細書中に示すように露光することにより活性化してもよい。
【0020】
本発明は、二重硬化プロセスを含む。1つの実施形態では、上記プロセスは、露光しない硬化工程の前、最中、または後に、カチオンコーティング組成物の少なくとも一部を反応させる工程を含む。
【0021】
本発明はまた、コーティングを塗布する酸性基材の使用、およびコーティングプロセス中(コーティングの塗布前または当該塗布と同時)に塗布した酸とともに非酸性基材を利用すること含む。1つの実施形態では、上記コーティング法は、基材の酸性官能基で反応を行う工程を含む。上記コーティング法はまた、塗布工程の前は酸性である第1の表面部、および塗布工程の前は酸性ではない第2の表面部を含む基材を利用することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも一部分に1つ以上の酸性基材または酸が用いられるが、少なくとも他の一部分は酸性ではなく、かつ/または酸を塗布されない。基材表面に酸を塗布してもよい。1つの実施形態では、上記プロセスは、一定量の第1のカチオンコーティング組成物を塗布する前に一定量の酸を第1の表面部に塗布し、一定量の第2のカチオンコーティング組成物を、上記酸を有さない第2の表面部および/または酸性でない第2の部分に塗布する工程を含む。さらに他の実施形態では、酸をカチオンコーティングの塗布と同時に、当該塗布から時間をあまり空けずに、またはその後に塗布してもよい。
【0022】
本発明は、複数のコーティング組成物の使用、積層物の形成、および複数のコーティング層の生成を広く含む。1つの実施形態では、第1のコーティング組成物は第2のコーティング組成物と異なる。他の実施形態では、第1のコーティング組成物は第2のコーティング組成物と同じである。本発明のプロセス、方法、および装置で利用可能なコーティングまたは層の組み合わせは大幅に変更することが可能である。
【0023】
本発明はまた、差別硬化(differential cure)のためのプロセス、方法、および装置、ならびに差別硬化技術により製造された物品および製品を含む。1つの実施形態では、上記硬化プロセスは、一定量のカチオンコーティング組成物の少なくとも一部に差別硬化を行う工程を含む。
【0024】
本発明は、塗工物品における各種の仕上げを可能にする。本発明により得られ、幅広い仕上げを可能にするプロセス、方法、装置、および製品を含む。1つの実施形態では、上記硬化法は、皺加工コーティングを生成する工程を含む。
【0025】
本発明は、本明細書中に開示されるプロセス、方法、および装置によってコーティング可能な製品を幅広く含む。1つの実施形態では、本発明は、少なくとも一部が100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの輝度を有する光によってカチオン硬化したコーティングを備えた基材を有するコーティング物品を含む。これらの製品の他の非限定的な例としては、以下のうち1つ以上が挙げられるがこれらに限定されない:印刷グラフィック、屋外耐久性を有する印刷グラフィック、印刷ラベル、印刷ステッカー、および印刷文書。本発明には、表面に印刷を施した物品、ならびにコーティングまたは印刷を施した1つ以上の多次元、三次元、および/または成形表面を有する物品が広く含まれる。
【0026】
また、少なくとも一部が差別硬化によって硬化した物品を生成することができる。さらに、物品は、少なくとも一部が二重硬化によって硬化してもよい。本発明は、1つの硬化法により生成された物品、ならびに複数種の硬化および硬化法を含む発明によって生成された物品を含む。
【0027】
本発明は、生成プロセス、方法、および物品だけでなく、本発明を利用する装置、コンピュータ技術、制御系、および品質管理系も含む。本発明を用いる装置は、性質、種類、および設計が多岐にわたり、幅広い材料への印刷、コーティングおよび化学製品の塗布、ならびに製造する印刷物および物品の硬化が可能である。
【0028】
本発明は、一定量のコーティング組成物を基材に塗布するように構成された塗布器、100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、上記コーティング組成物の少なくとも一部を上記光に露光するように配置された第1の光源を有するあらゆる装置を広く含む。
【0029】
1つの実施形態では、本発明は、インクジェットプリンタを含む装置であって、一定量のコーティング組成物を基材に塗布するように構成された塗布器、および100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、上記コーティング組成物の少なくとも一部を上記光に露光するように配置された第1の光源を有する装置を含む。
【0030】
上記インクジェットプリンタは、各々が100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、一列に配置された多数の光源を有してもよい。1つの実施形態では、インクジェットプリンタは第1および第2の光源を有し、第1の光源が印刷カートリッジの第1の側に設けられ、第2の光源が当該印刷カートリッジの第2の側に設けられてもよい。1つの実施形態では、インクジェットプリンタは、一定量のコーティングが塗布される基材の移動方向と直交して配置される光源を有する。
【0031】
1つの実施形態では、上記インクジェットプリンタは塗布器を有し、ドロップオンデマンド印刷用に設計され、2〜100キロヘルツ(「kHz」)の範囲の発光周波数および約4m/s〜約50m/s(「メートル/秒」)の範囲の液滴速度で、約3〜約50ピコリットルの範囲の液滴量を塗布するように構成される。いくつかの実施形態では、上記塗布器はインクジェット印字ヘッドである。インクジェット印刷には、1、5、10、20、75、および100ピコリットルを含むがこれらに限定されないより小さな液滴量およびより大きな液滴量を用いてもよい。
【0032】
インクジェットプリンタは、本発明に含まれる各種の方式で印刷可能である。インクジェットプリンタは、ドロップオンデマンド方式であってもよい。他の実施形態では、上記インクジェットプリンタは、コーティング組成物を連続的に塗布してもよい。さらに他の実施形態では、上記インクジェットプリンタは、コーティング組成物を半連続的に塗布してもよい。インクジェットプリンタは、これらの塗布方法のいずれか1つ以上を利用することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記インクジェットプリンタは、コンピュータ制御系を有し、かつ/またはそれによって動作してもよい。上記インクジェットプリンタはまた、フィードバック機構および制御機構を有してもよい。フィードバック機構は、ノズルの状態に関する光フィードバック、画質に関する光フィードバックのうち1つ以上を含むようにすることができるがこれに限定されない。
【0034】
本発明はまた、幅広い印刷および媒体を取り扱う機能を含む。上記装置は、ロールトゥーロール方式での媒体の取り扱い、および/またはフラットベッド印刷に対応したインクジェットプリンタであってもよい。上記印刷は、剛性媒体または非剛性媒体上で実現することができる。上記プリンタは、広範かつ多様なサイズの媒体に印刷可能である。1つの実施形態では、インクジェットプリンタは、3000ft2/時間の速度で10フィート幅の媒体を印刷するように構成される。本発明には、極小サイズおよび極大サイズの物品および媒体が含まれる。
【0035】
1つの実施形態では、上記インクジェットプリンタは、自動ヘッドレジストレーションに対応する。上記インクジェットプリンタはまた、プリントトゥールート動作(print−to−route operation)に対応させてもよい。上記インクジェットプリンタは、プリントトゥーカット動作(print−to−cut operation)に対応させてもよい。
【0036】
フィードバック制御およびコンピュータ制御系は、本発明のコーティング、印刷、硬化、または材料取り扱いプロセスのいずれの時点においても利用可能である。
【0037】
1つの実施形態には、ランプ波長のフィードバック機構および制御機構を有するインクジェットプリンタが含まれる。他の実施形態には、ランプ輝度のフィードバック機構および制御機構を有するインクジェットプリンタが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明では、光硬化、暗硬化、二重硬化、差別硬化、および本明細書に開示する硬化法の組み合わせに関連するがそれらに限定されない硬化技術を含むがこれらに限定されない各種の硬化プロセスを実現することができる。本発明は、非常に遅い速度、例えば、ほぼ0ft2/hr(「平方フィート/時間」)から約6400ft2/hr以上までの範囲の1つ以上の印刷速度を含むがこれに限定されない利点を有する。本発明は、カチオンコーティング組成物および低輝度光を用いて低エネルギー硬化、エネルギー効率が良い硬化を実現することができる。本発明は、発熱性が低く、硬化処理時の面外変形、変色、または好ましくない温度依存変化に繋がる熱膨張係数を有する感熱基材を含むがこれらに限定されない感熱基材とともに利用可能である。利用する装置は、例えば、500時間を超える長い光源寿命を有する光源を用いることができる。
【0039】
本開示では下記の定義を用いる。
【0040】
本明細書で用いる「圧力」とは、プロセスおよび機器を構成する各種容器、管、および管路内の単位面積ごとに作用する力を指す。本明細書における圧力は、ポンド/平方インチ(「psig」)で表される。特に断りがない限り、本明細書において圧力に言及する場合は全てポンド/平方インチの尺度単位(psig)を用いる。特に断りがない限り、本明細書で周囲圧力に言及する場合もpsigを用いる。
【0041】
本明細書で用いる「温度」は、特に断りがない限り、摂氏温度である(「℃」、または「C」)。
【0042】
「コーティング」は、表面、基材、他の材料、または組成物に塗布され、かつ/またはその上に広げられるあらゆる量の物質またはあらゆる物質の層を含む。
【0043】
コーティングは、液体、固体、半固体、非晶質、液晶質、可塑性、重合体、塩、多相、連続相、不連続相、コロイド、陽極酸化、蒸着、およびガス蒸着を含むがこれらに限定されないあらゆる相のものとすることができる。
【0044】
「融合」(同様に、「融合している」または「融合した」)は、コーティングが最終状態(例えば、変化低減状態、低エネルギー状態、反応が実質的に完了した状態、乾燥プロセスが実質的に完了した状態)に近づき、その状態に達したときに当該コーティングが直面する遷移を含む用語である。まず、コーティングは、基材に塗布可能であり、物理組成および化学組成を有する。水分散および/または非水分散の実施形態では、コーティングを噴霧化すると、基材上で液滴となる。これらの液滴は、流動がほとんどないかまたは全くない場合、部分的に融合を維持することができる。流動状態または流動がない状態(流動が遅いまたは流動がほとんどない場合も含む)に影響する因子は、粘性、表面張力に応じた基材の湿潤または乾燥度、溶剤の蒸発による乾燥、および/または電荷消失を防ぐ静電塗装プロセスでの静電反発力を含むがこれらに限定されない。「融合」は、塗布したコーティングの流動および水平度が初期の物理構造および化学的性質から静止した最終的なまたは平衡化した物理的および化学的性質に遷移することを含む。
【0045】
図1は、一表面上の複数のカチオンコーティングを硬化するプロセスを含む本発明の一実施形態を示すプロセスフロー図である。1つのカチオンコーティングを基材に塗布してもよい。「基材」は、一定量のカチオンコーティングを塗布可能なあらゆる表面を含む。上記基材は、酸性であっても酸性でなくてもよい。上記表面に酸を添加するさらなる工程を含むか、または上記プロセスを上記表面に酸を添加せずに実行してもよい。一定量のカチオンコーティングで塗工した基材は、少なくとも部分的に、100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光に露光してもよい。そのような光に対する露光により、上記コーティングの全てまたは一部の硬化処理を実現することができる。
【0046】
上記のとおり、本発明は、光を用いてカチオンコーティングを硬化することができる。「光」は、コーティング、コーティング系、ならびにそれらの成分および構成要素と相互作用可能なあらゆる種類の電磁エネルギーを含む。「光」の定義には、物質と相互作用した際に特定可能または測定可能な変化を生じる光である「化学光」が含まれる。「光」または「放射」は、粒子線加速粒子(すなわち、電子線)等の形態の光化学的活性放射、および電磁放射(すなわち、UV放射、可視光、UV光、X線、ガンマ線)を含む。「光輝度」は、光源によって放出されるワット(W)またはミリワット(mW)の単位で表されるエネルギーに関連する測定可能な特徴である。1つの実施形態では、光は、約100nm〜約1200nmの範囲の波長および約0.0003w/cm2/nm〜0.05w/cm2/nmの範囲の輝度を有する。
【0047】
広範囲の光および光源を利用することができる。約100nm〜約1200nmの範囲の波長および約0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を用いてもよい。
【0048】
本発明では、広範囲の光波長および広範囲の光輝度の値を有する光を利用することができる。上述のとおり、1つの実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003w/cm2/nm〜約0.05W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。他の実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.02W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。さらに他の実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.01W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。またさらなる実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.008W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。
【0049】
本発明で利用可能な光源が発光する波長の範囲(すなわち、分光幅、または帯域幅)は大きく変化してもよい。光源による発光のスペクトルピークの数は、1から多数まで変化させることができる。
【0050】
本発明で使用可能な光源は、電球、蛍光光源、LED、自然光、増幅光、電磁放射、ランプ、ガス灯を含むがこれらに限定されない。ガス灯の非限定的な例としては、UV Systems社のTripleBright IIランプ(それぞれが端部に位置する一対の電極を用いた放電灯の一種であり、少量の水銀とともに密閉されている)、およびガラス管内に不活性ガスを入れたランプが挙げられる。光は、1つの光源および/または位置、多数の光源および/または位置、または一列の光源から発生させてもよい。1種類以上の光、光源、位置、構成、方向、輝度、および波長を組み合わせて同時にまたは連続して使用してもよく、使用の組み合わせまたはタイミングに制限はない。
【0051】
光源のスペクトル出力は、以下の非限定的因子のうち1つ以上に応じるようにすることができる:1つ以上の気体分子の原子構造、1つまたは複数の気体の温度、光源内のガス蒸気圧。いくつかの実施形態では、ガラス管内に配置された蛍光物質(任意で用いられる)の出力が光源の出力に影響するようにしてもよい。
【0052】
非限定的な例では、254nmの電球が、253.7nmにピークを有するようにしてもよい。この例では、254nmの電球は蛍光物質を用いておらず、その出力は、主として、水銀原子の吸収線に起因する。このため、極端に帯域幅が狭く、主要なランプピーク周辺から10nm程度の波長範囲を有する輝線をいくつか生じることができる。そのような光源が生じるピーク周辺の波長範囲は、光源の物理的特性による。よって、波長の全ての値は、それぞれの光源について示される値の上下の範囲を含むものと解釈されたい。
【0053】
他の非限定的な例では、蛍光物質を有さない306nmの電球が、312nmにピークを有するようにしてもよい。他の非限定的な例では、ガラス球の内側に蛍光物質を有する352nmの電球、およびガラス球の内側に蛍光物質を有する368nmの電球が、主要なランプピーク周辺から30〜100nm程度の波長範囲を有する光を発光するようにしてもよい。
【0054】
カチオン硬化処理に使用可能な光源は、それぞれ、以下のピーク(395/400nm、385nm、および365nm、および270nm)を含むがこれらに限定されない波長を有するようしてもよい。これらの光源は、主要なランプピーク周辺から約10〜80nmの波長範囲を有する光を発光することができる。表1は、本発明で使用可能な光の波長範囲および波長値の非限定的な選択範囲を示す。
【表1】
【0055】
表1に示す波長の値および範囲は一例であり、これらの値の上下および中間の値を用いてもよい。
【0056】
さらに、光輝度は、例えば、最大で約5.0W/cm2/nmまでの値を有してもよい。従って、約0.005W/cm2/nm、0.0075W/cm2/nm、0.009W/cm2/nm、0.01W/cm2/nm、0.015W/cm2/nm、0.02W/cm2/nm、0.025W/cm2/nm、0.03W/cm2/nm、0.035W/cm2/nm、0.04W/cm2/nm、0.045以上の光輝度値を、これらの値の上下および中間の値とともに用いることができる。約0.05W/cm2/nm、約0.075W/cm2/nm、約1.0W/cm2/nm、約3.0W/cm2/nm、約4.0W/cm2/nm、約5.0W/cm2/nm、約10.0W/cm2/nm、またはそれ以上光輝度値を用いてもよい。
【0057】
波長および輝度の幅広い組み合わせを本発明とともに利用することができる。従って、本明細書に記載するような波長および輝度の値の組み合わせは限定されない。
【0058】
「蛍光」という用語は、それによって材料(典型的には、蛍光物質)の原子が光子を吸収し、直ちにより長い波長の光子を発光する物理現象を含む。
【0059】
「蛍光灯」という用語は、低圧力水銀蒸気を介した放電を利用して紫外線(UV)エネルギーを発生するあらゆるランプを含む。蛍光灯の1つの非限定的実施形態では、UVエネルギーが、ランプを構成するガラス管内に薄層として塗布された蛍光物質材料を励起する。それらの蛍光物質は、UVエネルギーの短い波長エネルギーを長い波長エネルギーに変換する。
【0060】
「小型蛍光灯」(CFL)という用語は、片口で、曲げることにより小型化する直径が短い管を有するあらゆる蛍光灯を含む。いくつかの非限定的実施形態では、いくつかのCFLは、白熱灯の交換を容易にするために、一体型安定器および中型または細型ねじ込み口金を有する。
【0061】
「電球」という用語は、あらゆる電球、ならびに本明細書に記載の発明の範囲内にあるランプおよびあらゆる光源を含むように広く解釈されたい。広義には、「電球」は、光を発光するあらゆる光源を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、光は、「発光ダイオード」(LED)によって発光される。LEDは、電気エネルギーを直接光に変換する本発明で使用可能なあらゆる半導体材料を広く含む。
【0063】
1つの実施形態では、本発明は、カチオンコーティング、および100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を含む硬化プロセスを提供する。この実施形態では、上記光は、7.0以下のpHを有する酸性基材上または酸を含む基材上のカチオンコーティング組成物を硬化することができる。酸性基材は、pHが7.0以下の材料および/または硬化および基材に接着する(または基材と反応する)活性時のpHが7.0以下の光解離性材料もしくは処理によって変化しやすい材料を含んでもよい。利用するコーティング組成物はカチオンとすることができる。幅広い光硬化材料を用いることができる。カチオンコーティング組成物は、コーティング、インク、粉体、溶液、接着剤、乳剤、分散剤、ゾルゲル、スラリー、ならびに他の混合物および組成物を含むがこれらに限定されない。
【0064】
カチオン重合によって重合可能であり、本発明に係るハードニング可能な組成物に適した有機材料の例としては、それ自体でまたは少なくとも2つの成分の混合物として使用可能な以下のタイプのものが挙げられる:
【0065】
カチオン機構によって重合可能なエチレン系不飽和化合物。これらは、モノオレフィンおよびジオレフィン(例えば、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、およびアクロレイン)を含むがこれらに限定されない;
【0066】
ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、およびエチレングリコールジビニルエーテルを含むがこれらに限定されない);および環状ビニルエーテル(例えば、3,4−ジヒドロ−2−ホルミル−2H−ピラン(アクロレイン二量体)および2−ヒドロキシメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸エステル);
【0067】
ビニルエステル(非限定的な例として酢酸ビニルおよびステアリン酸ビニルを含むがこれらに限定されない)。
【0068】
カチオン重合によって重合可能な複素環化合物(例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、エピクロルヒドリン、一価アルコールまたはフェノールのグリシジルエーテル(例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、n−オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、およびクレシルグリシジルエーテル)、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酸化スチレン、および酸化シクロヘキセン)、オキセタン(3,3−ジメチルオキセタン、および3,3−ジ(クロロメチル)オキセタン等)、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、トリオキサンおよび1,3,6−トリオキサシクロオクタン、スピロオルトカーボネート、ラクトン(ベータ−プロピオラクトン、ガンマ−バレロラクトン、およびε−カプロラクトン)、ティラン(thiranes)(エチレンスルフィド、およびポリプレンスルフィド等)、アゼチジン(N−アシルアゼチジン(例えば、N−ベンゾイルアゼチジン)等、ならびにアゼチジンとジイソシアネート(例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、およびトルエン−2,6−ジイソシアネート)、および4,4’−ジアミノジフェニルメタンジイソシアネートの付加物)、エポキシ樹脂、ならびに側鎖にグリシジル基を有する直鎖および分岐重合体(例えば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸グリシジルエステルのホモ重合体および共重合体)。
【0069】
本発明では、架橋エポキシ樹脂を調製するために用いられるタイプのエポキシ樹脂、ジエポキシド、ポリエポキシド、およびエポキシ樹脂初期重合体を含むがこれらに限定されない重合可能な化合物が利用可能である。
【0070】
本発明のプロセスによって硬化または重合可能なエポキシ化合物は、カチオン重合することが公知の化合物、ならびに1,2−、1,3−、および1,4−環状エーテル(1,2−、1,3−、および1,4−エポキシドとも示される)を含む。使用可能な環状エーテルは、酸化シクロヘキセン等のシクロ脂肪族エポキシ(cycloaliphatic epoxies)、およびDow Chemical Co.(Midland,Mich.)から「ERL」という商品名で市販される一連の樹脂(酸化ビニルシクロヘキセン、二酸化ビニルシクロヘキセン(商品名「ERL4206」)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキセンカルボキシレート(商品名「ERL4201」)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル(商品名「ERL0400」)、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロへキサンカルボキシレート(商品名「ERL4221」)、ビス−(3,4−エポキシシクロへキシル)アジペート(商品名「ERL4289」)、ポリプロピレングリコールから変性された脂肪族エポキシ(商品名「ERL4050」および「ERL4052」)、二酸化ジペンテン(商品名「ERL4269」)、および2−(3,4−エポキシシクロ−ヘキシル−5,5−スピロ−3,−4−エポキシ)シクロヘキセン−メタ−ジオキサン(商品名「ERL4234」))を含み、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(酸化プロピレン、エピクロルヒドリン、酸化スチレン、グリシドール、Shell Chemical Co.(Houston,Tex.)から「EPON」という商品名で市販される一連のエポキシ樹脂(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(diglycidyl either)、およびこの材料の鎖延長型(「EPON828」、「EPON1001」、「EPON1004」、「EPON1007」、「EPON1009」および「EPON2002」という商品名を有するもの、または他の製造業者が市販するそれらの等価物等)を含む)、二酸化ジシクロペンタジエン、エポキシ化植物油(Elf Atochem North America,Inc.(Philadelphia,Pa.)から「VIKOLOX」および「VIKOFLEX」という商品名で市販されるエポキシ化亜麻仁油および大豆油)、「KRATON」という商品名を有するエポキシ化液体ポリマー(Shell Chemical Co.から市販される「L−207」等)、エポキシ化ポリブタジエン(Elf Atochemの「POLY BD」という商品名を有するもの等)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、フェノールホルムアルデヒドのポリグリシジルエーテル、エポキシ化フェノールノボラック樹脂(Dow Chemical Co.から「DEN431」および「DEN438」という商品名で市販されるもの等)、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂(Vantico,Inc.(Brewster,N.Y.)から「ARALDITE ECN1299」という商品名で市販されるもの等)、レゾルシノールジグリシジルエーテル、エポキシ化ポリスチレン/ポリブタジエンのブレンド(「EPOFRIEND」という商品名で市販されるもの等(例えば、Daicel USA Inc.(Fort Lee,NJ.)の「EPOFRIEND A1010」))、Shell Chemical Co.(Houston,Tex.)から「HELOXY」という商品名で市販される一連のアルキルグリシジルエーテル(アルキルC8−C10グリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER7」)、アルキルC12−C14グリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER8」)、ブチルグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER61」)、クレシルグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER62」)、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル(商品名HELOXY MODIFIER 65」)、多官能グリシジルエーテル(1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル(商品名HELOXYMODIFIER67」)、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER68」)、シクロへキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER107」)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER44」)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER48」)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER84」)、ポリグリコールジエポキシド(商品名「HELOXY MODIFIER32」)、およびビスフェノールFエポキシド)も含む。
【0071】
エポキシ樹脂は、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロへキサンカルボキシラート、ビス−(3,4−エポキシシクロへキシル)アジペート、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3−,4−エポキシ)シクロヘキセン−メタ−ジオキサンを含む「ERL」タイプの樹脂、ならびに2,2−ビス−(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニルプロパン)、およびこの材料の鎖延長型を含むビスフェノールA「EPON」タイプの樹脂を含んでもよい。複数のエポキシ樹脂を調製したものを使用することも本発明の範囲内である。
【0072】
エポキシ官能材料が、エポキシ官能シラン、ならびに二官能および多官能エポキシ末端シリコーン(Gelest Incorporated(Morrisville,PA)から市販される)を含んでもよい。例としては、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチル、トリエトキシシラン、およびビス[2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチル]−テトラメチルジシロキサンが挙げられるがこれらに限定されない。本発明では、エポキシプロポキシプロピル末端−、エポキシシクロへキシルエチル末端−、エポキシプロポキシプロピル末端−、およびエポキシプロポキシプロピル)ジメトキシシリル末端−ポリジメチルシロキサン、およびGelest Incorporatedから市販されるものも用いることができる。
【0073】
1つ以上のエポキシ樹脂を調製したものを用いることも本発明の範囲内である。異なるタイプの樹脂を任意の割合で存在させることができる。
【0074】
ヒドロキシル含有材料に、室温でのカチオン硬化に実質的に干渉しない他の官能基を任意で含有させてもよい。ヒドロキシル含有材料は、非芳香族性であるか、または芳香族的官能基を有してもよい。ヒドロキシル含有材料は、最終的なヒドロキシル含有材料が室温でのカチオン硬化に実質的に干渉しないという条件で、窒素、酸素、硫黄等の分子の骨格にヘテロ原子を任意で含有させてもよい。ヒドロキシル含有材料は、例えば、天然由来または合成によって調製したセルロース系材料から選択することができる。
【0075】
本発明の硬化性組成物に一価および多価アルコールをエポキシ樹脂の鎖延長剤として任意で加えることができる。本発明で用いるヒドロキシル含有材料は、ヒドロキシル官能基度が少なくとも1である任意の有機材料、またはヒドロキシル官能基度が少なくとも2である任意の有機材料とすることができる。
【0076】
ヒドロキシル含有材料は、2つ以上の第1または第2脂肪族ヒドロキシル基(すなわち、このヒドロキシル基は、非芳香族炭素原子と直接結合している)を含有してもよい。ヒドロキシル基は末端に位置するか、あるいは重合体または共重合体から懸垂されていてもよい。ヒドロキシル含有有機材料の分子量は、非常に低い値(例えば、32)から非常に高い値(例えば、100万以上)までとしてもよい。適切なヒドロキシル含有材料は、低分子量(すなわち、約32〜200)、中分子量(すなわち、約200〜10,000)、または高分子量(すなわち、約10,000超)を有するようにすることができる。本明細書で用いるように、全ての分子量は重量平均分子量である。
【0077】
重合可能なビニル基およびヒドロキシメチル官能基を含むカチオン重合可能な二官能性単量体は、N−メチロールアクリルアミドとすることができる。容易に重合可能なビニル基と複合化するカチオン重合可能な二官能性単量体は、例えば、イソブトキシメチルアクリルアミドとすることができる。重合可能なビニル基からなるカチオン重合可能な二官能性単量体は、例えば、N−ブトキシメチルアクリルアミド部分とすることができる。これらのアクリルアミド材料は、非織布の濡れ特性および乾燥特性を改善することができ;コーティングに関しては、耐引っ掻き性および耐傷性を向上することができ、かつ優れた耐水性および耐溶剤性を与えることができる。それらの使用により、接着剤の耐水性および耐溶剤性を改善することができる。他の用途としては、ラテックス接着剤、ペーパーコーティング、ラテックス、織物、非織布、缶コーティング、UV硬化系、フォトレジスト、およびラテックス溶液コーティング樹脂が挙げられる。
【0078】
本発明の重合可能な組成物には、あらゆるカチオン反応性ビニルエーテルを用いることができる。使用可能なビニルエーテルの例としては、International Specialty Products(Wayne,NJ.)から「RAPI−CURE DVE−3」という商品名で市販されるトリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ブタンジオールビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、International Specialty Productsから「RAPI−CURE CHVE」という商品名で市販される1,4−シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールモノビニルエーテル、4−(1−プロペニルオキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、2−クロロエチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−、イソ−、およびt−ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ヘキサンジオールジ−およびモノ−ビニルエーテル、BASF Corp.(Mount Olive,NJ.)から「TMPTVE」という商品名で市販されるトリメチロールプロパントリビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)ジビニルエーテル、BASF Corp.から「PLURIOL E200」という商品名で市販されるジビニルエーテル樹脂、エチレングリコールブチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、およびMorflex Inc.(Greensboro,N.C.)から「VECTOMER」という商品名で市販されるジビニルエーテル樹脂(例えば、ビニルエーテル末端芳香族ウレタンオリゴマー(商品名「VECTOMER 2010」および「VECTOMER 2015」)、ビニルエーテル末端脂肪族ウレタンオリゴマー(商品名「VECTOMER 2020」)、ヒドロキシブチルビニルエーテルイソフタレート(商品名「VECTOMER 4010」)、およびシクロへキサンジメタノールモノビニルエーテルグルタラート(商品名「VECTOMER 4020」))または他の製造業者からのそれらの等価物が挙げられる。複数のビニルエーテル樹脂のブレンドを用いることは本発明の範囲内である。
【0079】
1つ以上のビニルエーテル樹脂と調製した1つ以上のエポキシ樹脂を用いることも本発明の範囲内である。異なる種類の樹脂を任意の割合で存在させることができる。
【0080】
本発明とともに使用可能なカチオン化合物の他の非限定的な例としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド架橋単量体材料が挙げられる。代表的なカチオン単量体には、上記のN−メチロールアクリルアミド反応剤、ジメチルアミノエチルメタクリラート、t−ブチルアミノエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチル塩化アンモニウム、アリル−トリメチル−塩化アンモニウム、S−アリル−臭化チウロニウム、s−メサル(methul)(アリル−チウロニウム)メトスルフェート、ジアリル−ジブチル−塩化二アンモニウム、ジアリル−ジメチル−アンモニウムメトスルフェート、ジメタリル−ジエチル−リン酸アンモニウム、ジアリル−ジメチル−硝酸アンモニウム、S−アリル−(アリル−チウロニウム)ブロミド、N−メチル(4−ビニルピリジニウム)メトスルフェート、N−メチル(2−ビニルピリジニウム)メトスルフェート、アリル−ジメチル−β−メタクリルオキシエチル−アンモニウムメトスルフェート、β−メタクリルオキシメチル−トリメチル硝酸アンモニウム、β−メタクリルオキシエチル−トリメチルアンモニウム p−トルエン−スルホネート、デルタ−アクリルオキシブチル−トリブチルアンモニウムメトスルフェート、メタリル−ジメチル−O−ビニルフェニルアンモニウム−クロリド、オクチルジエチル−m−ビニルフェニル−リン酸アンモニウム、β−ヒドロキシエチル−ジプロピル−p−ビニルフェニル−臭化アンモニウム、ベンジル−ジメチル−2−メチル−5−ビニル−フェニル−リン酸アンモニウム、3−ヒドロキシプロピル−ジエチル−ビニルフェニル硫酸アンモニウム、オクタデシル−ジメチル−ビニルフェニル−アンモニウム p−トルエンスルホネート、アミル−ジメチル−3−メチル−5−ビニルフェニル−チオシアン酸アンモニウム、ビニルオキシエチル−トリエチル−塩化アンモニウム、N−ブチル−5−エチル−2−ヨウ化ビニルピリジニウム、N−プロピル−2−ビニル−キノリニウム硫酸メチル、N−ブチル−5−エチル−3−ヨウ化ビニルピリジニウム、N−プロピル−2−ビニル−キノリニウム硫酸メチル、アリル−γ−ミリスタミドプロピル−ジメチル−塩化アンモニウム、メタリル−γ−カプリルアミド−プロピル−メチル−エチル−臭化アンモニウム、アリル−γ−カプリルアミドプロピル−メチルベンジル−リン酸アンモニウム、エタリル−γ−ミリスタミドプロピル−メチル−α−ナフチルメチル−塩化アンモニウム、アリル−γ−パルミトアミドプロピル−エチル−ヘキシル硫酸アンモニウム、メタリル−γ−ラウラミドプロピルジアミル−リン酸アンモニウム、プロパリル(propallyl)−γ−ラウラミドプロピル−ジエチル−リン酸アンモニウム、メタリル−γ−カプリルアミド−プロピル−メチル−β−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム、アリル−γ−ステアラミド−プロピル−メチル−ジヒドロキシプロピル−リン酸アンモニウム、アリル−γ−ラウラミドプロピル−ベンジル−β−ヒドロキシエチル塩化アンモニウムおよびメタリル−γ−アビエタミドプロピル(abietamidopropyl)−ヘキシル−γ’−ヒドロキシプロピル−リン酸アンモニウム、ビニルジエチル−ヨウ化メチルスルホニウム、エチレン系不飽和窒素含有カチオンが含まれる。
【0081】
1つの実施形態では、コーティング組成物は、1つ以上の反応性希釈剤を含むようにすることができる。例えば、コーティング組成物は、以下の非限定的な例のうち1つ以上を含有してもよいがそれらに限定されない:無水物およびオキセタン材料(例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)−アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]−ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等のオキセタン環を有する化合物、2つ以上のオキセタン環を有する化合物、または3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチルエニル)プロパンジイルビス−(オキシメチレン))−ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン;1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン;エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル;ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル;トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル;テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)、エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水素化ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水素化ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の2つ以上のオキセタン環を有する化合物)。特に、コーティング組成物の粘性を低減するために、溶剤および希釈剤を用いてもよい。
【0082】
本発明では、光開始剤を利用してもよい。「光開始剤」(「光硬化」材料とも言う)は、特定の波長のエネルギーにさらされると、連鎖反応を開始して重合体を生成し得る反応性元素を生成する任意の薬剤を含む。ラジカル硬化反応のための光開始剤は、ベンゾイル基を含有してもよい。アリールスルホニウム(アリール「スルフォニウム」とも言う)塩は、ラジカル型およびカチオン活性中心の両方を生成することができる。
【0083】
使用可能な光開始剤は、ヨードニウム塩およびスルホニウム、塩ジアゾニウム塩(ハロゲン化オルガノとしても知られる)、およびチオキサントニウム(thioxanthonium)塩を含むがこれらに限定されない。
【0084】
本発明とともに任意の適切なヨードニウム塩を用いることができる。ヨードニウム塩は、ヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4(2−メチルプロピル)フェニル]−、ヘキサフルオロリン酸(1−)(例えば、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,New York)のIrgacure 250)を含むがこれらに限定されない。ヨードニウム塩(例えば、Irgacure 250)は、エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物、ならびにエポキシおよび/または脂環式エポキシまたはオキセタン基を有する化合物の硬化または重合を誘発可能な酸を生じる。
【0085】
有用な芳香族ヨードニウム錯塩光開始剤の例としては、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;フェニル−4−メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(4−ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(3−ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロヒ酸塩;ジ(4−フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;フェニル−2−チエニルヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;3,5−ジメチルピラゾリル−4−フェニルヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩;2,2’−ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(2,4−ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(3−カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(3−メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(3−メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(2−ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;およびジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(DPISbF6)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
本発明とともに1つ以上のスホニウム(sufonium)塩を用いることができる。アリールスホニウム(Arylsufonium)塩は、混合アリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(例えば、Dow Chemicals(Midland,Michigan)によって製造されるCyracure UVI−6976)、およびアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩(例えば、Dow Chemicals(Midland,Michigan)によって製造されるUVI−6992)を含むがこれらに限定されない。
【0087】
使用可能な他の光開始剤は、Meerkat、Polecat、およびBobcat(Meerkat、Polecat、およびBobcatの各々はParsippany,New JerseyのSun Chemicalによって製造される)を含むがこれらに限定されない。基材酸度とプロセスパラメータ(すなわち、コーティング温度、基材温度、相対湿度パーセント、光開始剤種別およびレベル、光増感剤種別およびレベル、ならびに光子浸透度および光子エネルギーレベル)を組み合わせることにより、Meerkat、Polecat、およびBobcat等(これらに限定されない)の光開始剤を用いて光開裂の有毒副産物を低減することができる。
【0088】
本発明には、任意の適切なジアゾニウム塩を光開始剤および/または相乗剤として用いることができる。複合ハロゲン化物のアリールジアゾニウム塩は、有機ハロゲン化合物と組み合わせて相乗的に機能させることができる。複合ハロゲン化物のアミノアリールジアゾニウム塩では、当該アミノ基がアリール環上で置換基として存在することができ、化合物では、上記アミノ基が複素環の一部となる。これらのアリールジアゾニウム化合物は、エポキシド光重合のための光開始剤として用いた場合、硬化処理を促進するために、露光後に加熱する必要がある。光分解の結果として有機ハロゲンとの相乗効果を実現することができる。アミノ窒素の効果を無効にして、ジアゾニウム塩由来のルイス酸を放出する酸性物質(例えば、H+X−)を得ることができる。複合触媒、2−クロロ−4−(ジメチルアミノ)−5−メトキシベンゼンジアゾニウムとの相乗効果を得るようにしてもよい。
【0089】
本発明には、任意の適切なチオキサントニウム塩光開始剤を用いることができる。チオキサントニウム塩は、10−ビフェニル−4−イル−2−イソプロピル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−10−イウムヘキサフルオロリン酸塩(例えば、Parsippany,New JerseyのSun ChemicalのMeerkat)を含むがこれに限定されない。Sun Chemicalの他のチオキサントニウム塩光開始剤としては、PolecatおよびBobcatが挙げられる。PolecatおよびBobcatチオキサントニウム塩は、光開裂副産物の移動を低減する2つの連結チオキサントニウム官能性末端基を有する。そのような光開始剤を用いて、例えば、食品と接触する用途において光開裂の有毒副産物を低減することができる。
【0090】
本発明では、相乗剤または共触媒(例えば、ベンジル、アリルおよび/またはプロパルギルアセタールおよびエーテル基を有する第3級アミンまたは光重合可能なエポキシ単量体(これらに限定されない))を用いることができる。
【0091】
光開始剤および光増感剤の活性による副産物は臭気である場合がある。いくつかの実施形態では、本発明は、光開始剤の臭気を低減するか、あるいはほぼまたは完全に除去することができる。Speedcure CPTXとともにIrgacure 250を用いることでスルフォニウム光開始剤よりも臭気を少なくすることができる。米国および世界中の食品包装業界により定義および規定されるような食物と接触する物品は、それらの化学的性質、組成、および過渡的成分に基づいて、監視、管理、および/または制限される。Sun Chemicalより市販されるPolecat、Meercat、およびBobcat等のスルフォニウム塩カチオン光開始剤は、食物に接触する物品および用途に用いることができる。食物に接触することが企図される物品を本発明の産生物として製造してもよい。
【0092】
本発明には、光解離性酸を利用することができる。これらは、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ハロゲン化芳香族化合物、ハロゲン化トリアジン、ニトロベンジルエステル、トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、およびアリールナフトキノンジアジド−4−スルホネート(「スルフォネート」とも言う)のうちいずれか1つ以上を含むがこれらに限定されない。
【0093】
無臭の硬化処理を行うために、インクに光解離性酸を添加してもよい。適切な光解離性酸を、基材または基材に塗布したコーティング層に組み込むことができ、いくつかの実施形態では、UV光を用いて活性化することにより酸性材料を放出してもよい。
【0094】
無臭の硬化処理を行うために、インクに光解離性酸を添加してもよい。光解離性酸を、基材または基材に塗布したあらゆるコーティング層に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、UV光を用いて光解離性酸を活性化することにより酸性材料を放出してもよい。光解離性酸を第1の層として直接基材(と接触する層または部分)の上に塗布することができる。
【0095】
臭気を低減するために、ヨードニウム塩光開始剤をコーティングに添加したり選択してもよい。本明細書で用いるヨードニウム塩光開始剤(例えばIrgacure 250)は、スルフォニウム塩光開始剤の光開裂副産物よりも好ましい臭気を有する光開裂副産物を生じる。本発明では、チオキサントニウム光開始剤(例えば、Meerkat、Polecat、およびBobcat(それぞれ、Parsippany,New JerseyのSun Chemicalにより製造される)を用いても光開裂副産物の毒性を低減することができる(すなわち、臭気毒性の変異誘発性を調節する制限)。光解離性酸はまた、硬化に必要な光開始剤レベルのさらなる低減、および有毒光開裂副産物のさらなる低減にも用いることができる。所与のコーティング温度、基材温度、相対湿度パーセントにおいて、例えば、本明細書に記載する光開始剤種別およびレベル(例えば、1.0%以下)およびそれらの調製物、光増感剤種別およびレベル(0.5以下)、ならびに光子浸透度および光子エネルギーレベル)とともに本発明を用いることにより差別硬化のバランスを取ることができる。
【0096】
基材またはUV光を用いて活性化する第1の塗布層に適切な光解離性酸を組み込んで酸性材料を放出してもよい。
【0097】
化学的に増幅した画像形成およびフォトレジスト材料には、光生成酸の使用が有効である。酸触媒反応は、重合体側鎖の触媒熱分解;重合体主鎖の触媒熱分解;重合体側鎖の触媒加水分解;重合体主鎖の触媒加水分解;天井温度現象に基づく解重合プロセス;求電子芳香族置換反応;および求電子転位のうち1つ以上を含むがこれらに限定されない。
【0098】
ポリエステル基材を生成するプロセスでは、単官能酸、二官能酸、三官能酸、および/または多官能酸を、酸触媒作用を施した材料を含有する単官能、二官能、三官能および/または多官能ヒドロキシルと重合してもよい。上記基材は、酸、酸性末端基、および/または上記反応による触媒作用の酸を含有する「残留酸性官能基」を持つことができる。
【0099】
カチオン硬化性材料を三成分または三元光開始剤系と組み合わせてもよい。当該光開始剤系の第1の成分は、ヨードニウム塩、すなわち、ジアリールヨードニウム塩とすることができる。このヨードニウム塩は、単量体中で可溶であることが望ましく、保存安定性を有してもよいが、これは、増感剤および供与体の存在下で溶解させた際に自然発生的に重合を促進しないことを意味する。従って、特定のヨードニウム塩の選択は、選んだ特定の単量体、増感剤、および供与体にある程度依存することになる。ヨードニウム塩は、Cl−、Br−、I−、またはC4H5SO3−等の陰イオンを含有する単塩;またはSbF5OH−もしくはAsF6−等のアンチモン酸塩、ヒ酸塩、リン酸塩、もしくはホウ酸塩を含有する金属錯塩とすることができる。所望であれば、ヨードニウム塩の混合物を用いてもよい。
【0100】
使用可能な芳香族ヨードニウム錯塩は、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩、およびジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩を含むがこれらに限定されない。
【0101】
光開始剤化合物を、樹脂系の硬化を開始するか、またはその速度を速めるために効果的な量で与えることができる。ヨードニウム開始剤は、全体組成における固体樹脂の0.05〜10.0wt%の範囲で存在させることができ、他の実施形態では、0.10〜5.0wt%、さらには0.50〜3.0wt%の範囲としてもよい。増感剤は、全体組成における樹脂化合物の約0.05〜5.0wt%の範囲で存在させることができる。増感剤は、0.10〜1.0wt%で存在させてもよい。電子供与体は、全体組成における固体樹脂の0.01〜5.0wt%、または0.05〜1.0wt%の範囲で存在させることができ、他の実施形態では、0.05〜0.50wt%としてもよい。
【0102】
光開始剤系の第2の成分は、増感剤とすることができる。増感剤は、単量体中で溶解させることができ、300nm〜1200nmより高い波長範囲の光吸収が可能であり、カチオン硬化プロセスと干渉しないように選ばれる。
【0103】
本発明には、増感剤を用いることができる。使用可能な増感剤はチオキサントンを含む。チオキサントンは、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシ−9H−チオキサンテン−9−オンSpeedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))を含むがこれらに限定されない。増感剤は、Aceto 73(Aceto Corporation(Lake Succes,NY))を含むがこれに限定されない。Speedcure CPTXと組み合わせたAceto73,9,10−ジエトキシアントラセン(CAS#68818−86−0)は、エポキシ樹脂のカチオン硬化処理においてヨードニウム塩とともに用いることができる増感剤系の1つである。
【0104】
増感剤は、以下のカテゴリーの化合物を含むがそれらに限定されない:ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族ポリ環状炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、およびピリジニウム染料。ケトン(例えば、モノケトン、またはα−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、およびp−置換アミノスチリルケトン化合物は増感剤である。高い感受性を必要とする用途では、ジュロリジニル部分を含有する増感剤を用いてもよい。ディープ硬化(deep cure)(例えば、高度に充填された複合材料の硬化)を必要とする用途では、光重合に望ましい照射波長で、約1000より低い、または約100より低い吸光係数を有する増感剤を用いてもよい。あるいは、照射時に励起波長で光吸収が低下する染料を用いてもよい。
【0105】
1つの実施形態では、ケトン増感剤は次の式を有する:ACO(X)bB(ここで、XはCOまたはCR1R2であり、R1およびR2は同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル、アルカリール、またはアラルキルとすることができ、bは0または1であり、AおよびBは同じでも異なっていてもよく、置換された(1つ以上の非干渉性置換基を有する)または置換されていないアリール、アルキル、アルカリール、またはアラルキル基であってもよく、またはAおよびBがともに環式構造を形成し、その環式構造が置換されたまたは置換されていない脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族もしくは縮合芳香族環とすることができる)。上記式のケトンとしては、モノケトン(b=0)、例えば、2,2−、4,4−、または2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ−2−ピリジルケトン、ジ−2−フラニルケトン、ジ−2−チオフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーケトン、2−フルオロ−9−フルオレノン、2−クロロチオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1−、もしくは2−アセトナフトン、9−アセチルアントラセン、2−、3−、もしくは9−アセチルフェナントレン、4−アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、バレロフェノン、2−、3−、もしくは4−アセチルピリジン、3−アセチルクマリン等が挙げられる。適切なジケトンとしては、アラルキルジケトン、例えば、アントラキノン、フェナントレンキノン、o−、m−、およびp−ジアセチルベンゼン、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、および1,8−ジアセチルナフタレン、1,5−、1,8−、および9,10−ジアセチルアントラセン等が挙げられる。適切なα−ジケトン(b=1、およびX=CO)としては、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、ベンジル、2,2’−、3,3’−、および4,4’−ジヒドロキシルベンジル、フリル、ジ−3,3’−インドリルエタンジオン、2,3−ボルナンジオン(カンファーキノン)、ビアセチル、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ナフタキノン、アセナフタキノン等が挙げられる。
【0106】
開始剤系の他の成分を電子供与体(「供与体」とも言う)とすることができる。供与体は、選んだ重合可能材料、ヨードニウム塩、および増感剤の保存安定性および性質(これらに限定されない)等の因子を考慮して選択してもよい。供与体は、アルキル芳香族ポリエーテル、またはN−アルキルアリールアミノ化合物とすることができ、当該アリール基は、1つ以上の電子求引基により置換してもよい。適切な電子求引基の例としては、カルボン酸、カルボン酸エステル、ケトン、アルデヒド、スルホン酸、スルホネート、およびニトリル基が挙げられる。
【0107】
N−アルキルアリールアミノ供与体化合物を用いてもよく、例えば、以下の構造式1の化合物を含むようにすることができる:
【化1】
【0108】
ここで、各R3、R4、およびR5は、同じであっても異なっていてもよく、H、C1−18アルキル(任意で1つ以上のハロゲン、−CN、−OH、−SH、C1−18アルコキシ、C1−18アルキルチオ、C3−18シクロアルキル、アリール、COOH、COOC1−18アルキル、(C1−18アルキル)0−1−CO−C1−18アルキル、SO3R6、CNで置換される)、またはアリール基(任意で1つ以上の電子求引基で置換される)とするか、またはR3、R4、およびR5基を接合して環を形成してもよく;Arは、1つ以上の電子求引基で置換されるアリールである。適切な電子求引基としては、−COOH、−COOR6、−SO3R6、−CN、−CO−C1−18アルキル、および−C(O)H基が挙げられ、R6は、C1−18直鎖、分岐鎖、または環状アルキル基とすることができる。
【0109】
供与体化合物は、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾイン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、および1,2,4−トリメトキシベンゼンを含むようにしてもよい。
【0110】
本発明の実施において、光開始剤、増感剤、および相乗剤を調製物およびレベルを利用することができる。光開始剤は、光源、光波長、照射量、基材温度、および/またはコーティング温度を含むがこれらに限定されないプロセス変数(パラメータ)とともに用いることができる。そのような本発明の実施により、滑らか、標準、テクスチャ加工、マット、光沢、または皺加工を含むがこれらに限定されない仕上げを有する物品を生成することができる。
【0111】
「1つの光開始剤パッケージ」(または「複数の光開始剤パッケージ」)は、例えば、1つ以上の感光カチオン化合物または感光カチオン化合物のブレンドであって、滑らか、テクスチャ加工、マット、光沢、または皺加工(これらに限定されない)仕上げをした物品を生成するように設計された1つ以上の光増感剤または光増感剤の調製物を有するもの、または有さないものを含むがこれに限定されない。
【0112】
感光カチオン材料は、例えば、感光核、感光カチオン部、および/または感光カチオン有機化合物を含むがこれらに限定されない。
【0113】
本発明で利用されるコーティング組成物としては、幅広い種類の添加剤を含むことができる。これらの添加剤を添加して、コーティング組成物、コーティング特性、および物理的性質(例えば、色、濃度、導電性、可撓性、酸化、減成(すなわち、化学製品、熱、または光によるもの)、香り、pH、および流動特性を含むがこれらに限定されない)を変更することができる。
【0114】
使用可能な添加剤としては、殺生物剤、抗菌剤、抗生物質製剤、抗真菌薬、耐光剤、磁性材料、染料、固定剤、香味料、香料、揮発性化合物、カーリング防止剤、変色防止剤、指示染料、化学線分子、金属原子、金属含有化合物、および難燃剤が挙げられるがこれらに限定されない。コーティング組成物は、例えば、色素、光開始剤、増感剤、添加剤、充填剤、劣化防止剤、および酸化防止剤のうち1つ以上を含有してもよい。
【0115】
屋外耐久性のために一般に用いられる添加剤としては、UV光安定剤および吸収剤(ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサジノン、ヒンダードベンゾエート、ヒンダードアミンまたはヒンダードアミン系光安定剤(HAL)、およびトリアジン等(これらに限定されない))が挙げられるがこれらに限定されない。酸化防止剤も屋外でのコーティング用途に用いられ、ヒンダードフェノール系、亜リン酸ブレンド、およびチオセステル(thiosester)を含むがこれらに限定されない。ラジカル捕捉剤は、屋外耐久性のために用いられるさらに他のクラスの化合物であり、トリアジンおよびヒンダードアミン(HALS)ラジカル捕捉剤を含む。
【0116】
添加剤材料の塩基性および硬化率を調節することにより、幅広い添加剤が使用可能になる。コーティング表面、コーティングバルク、およびコーティング−基材界面の硬化率で所望の物品が生成されるように、コーティングまたは基材中の光活性酸発生化合物のレベルを基材の酸的性質に合わせることができる。
【0117】
本発明には、酸化防止剤を用いることができる。使用可能な酸化防止剤としては、例えば、(Noveon Inc.(Akron,Ohio,USA)の)Good−rite(登録商標)酸化防止剤が挙げられるがこれに限定されない。
【0118】
本発明では、衛生粉体コーティングを用いることができる。抗菌粉体を用いてもよい。本発明では、高温耐熱粉体を用いることができる。シリコーン系粉体コーティングを用いてもよい。本発明では、薄膜粉体を用いることができる。0.8〜1.2ミルの範囲の粉体を用いてもよい。本発明では、UV硬化性粉体を用いることができる。本発明では、近赤外線硬化性粉体を、例えば、感熱用途において用いることができる。
【0119】
本発明のコーティング組成物には、各種の充填剤材料を用いることができる。充填剤材料は、色素としての目的以外で添加される不活性物質であってもよいがこれに限定されない。充填剤材料は、コストの削減、フィルム特性の向上、または流動および平坦化特性への影響等のために必要に応じて用いることができる。これらの充填剤は、バライト、粘土、平坦化剤、ガラス、滑石、および/またはナノ粒子耐引っ掻き性材料を含むがこれらに限定されない。
【0120】
「色素」は、他の材料を着色する任意の1つまたは複数の材料を含む。「色素性」材料としては、印刷画像用のコーティングおよびインク、ならびに色素を含む任意の材料が挙げられるがこれらに限定されない。色素は、着色力および隠蔽力を有してもよい。色素性材料は、装飾的性質を有するか、または光吸収、反射性、光沢、または仕上げ等、他の効果を与えるようにしてもよい。他の色素は、熱変色または光変色、光ルミネセンス蓄光、UV蛍光、およびIR反応等の相互作用的変化を生じる。色素性材料は、様々な目的に利用することができる。
【0121】
「高色素性」材料としては、高濃度で隠蔽力を生じる不透明度が低い色素を含有する物質が挙げられるがこれに限定されない。インクの色素レベルが高くなれば、印刷時に用いるインクを減らしても同一の色濃度が得られる。隠蔽力とは、塗工基材の発色を隠すかまたは隠蔽する着色系の能力を指し、Laneta白黒カラーチャートに対するデルタE/デルタカラーでテストされる。
【0122】
「コーティング組成物」は、広く解釈されるべきものであり、例としては、インク、粉体塗料、複合材料、溶液、混合物、乳剤、液体、ペースト、蒸着ガス、固体分散剤、乳剤、接着剤、接着促進剤、および/または導電回路が挙げられるがこれらに限定されない。
【0123】
「カチオンコーティング組成物」は、カチオン重合可能な官能化材料(例えば、任意で一価アルコールおよびポリヒドロキシルアルコールを鎖延長剤として有し、光開始剤パッケージを有し、任意で色素を有し、任意で本発明で使用可能な溶剤を有するカチオン重合可能なビニルエーテル官能化材料を任意で用いて官能化したエポキシ)を部分的に有するあらゆる組成物を含む。
【0124】
カチオンインクは、反応性希釈剤、オキセタンおよび/またはビニルエーテル、色素を有し、任意で光開始剤を有し、任意で本発明で使用可能な増感剤を有する脂環式エポキシドに基づく1つ以上の化合物を含むようにすることができる。インクとして利用されるかまたは利用可能なカチオンコーティング組成物は、カチオンインクとみなしてもよい。
【0125】
二官能性単量体を用いることもでき、これらは、少なくとも1つのカチオン重合可能な官能基、またはカチオン重合可能な単量体と共重合する官能基(例えば、エポキシ−アルコール共重合を可能にする官能基)を含んでもよいがこれらに限定されない。
【0126】
重合可能な組成物が2つ以上存在する場合、それらを任意の割合で存在させることができる。
【0127】
「色」は、物の視覚属性である。色は、光が発光、透過、または反射した結果生じる。例えば、白色は、多数の異なる波長の光から構成される。着色料としては、色の隠蔽を含む用途に適した特定の視覚属性を得るためのコーティング調合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0128】
本発明で用いるインクおよびコーティングの色としては、シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック、ライトマゼンタ、ライトシアン、グリーン、オレンジ、およびバイオレット、ならびにこれらの色のあらゆる調製したものまたは色相が挙げられるがこれらに限定されない。他の色としては、例えば、メタリック、遷移色、マイカ、パールカラー、シルバー、クロム調、および清色が挙げられるがこれらに限定されない。
【0129】
「マルチカラー」には、複数の色または色相を有するコーティング、化合物、物品、および製品が含まれる。この用語は、運転免許証、身分証明書、または識別章のセキュリティまたは偽造防止インクの用途に関連するため、顕在的な色の変化および半隠在的な偏光を含むがこれらに限定されない。ハンマートーンまたは木目は、黒を下地にして、その黒とコントラストをなす金、銀、または銅のメタリック色素を用いることによりアンティークまたは古物調に見える。この古色調に仕上げた見た目は、グラニット、コンフェッティ、ラスティ、および古色調の外観を含む様々なマルチカラー調の見た目が要求される家具および陳列物の産業分野で普及している。
【0130】
「1つのクリアコート」または「複数のクリアコート」は、色素を有さないコーティングを含む。しかしながら、クリアコートは、実質的に色に影響しない色素のような材料、ならびにナノ粒子、充填剤、および添加剤を含んでもよい。
【0131】
「メタリックコーティング」および/または「メタリック」は、基材に塗布可能なメタリックフレーク、または色素、または金属を含む。メタリックコーティングは、下地金属の外観を再現し、製品の見た目に深みを与えることができる輝きを持った明るさを加えることができる。例えば、金、クロム、またはブラスの見た目に似せた製品(屋内および屋外用家具、運動器具、芝生および園芸用具、ならびに他の製品等)に各種メタリック仕上げを用いることができる。さらに、メタリックコーティングにより、導電性を与えたり、コーティング濃度、および電磁または磁気特性を変化させることができる。
【0132】
本発明のコーティング組成物には、溶剤を用いることができる。溶剤としては、シクロヘキサノン、水、酢酸塩、ケトン、芳香族化合物、脂肪族化合物、および/またはエステルのうちいずれか1つ以上が含まれるがこれらに限定されない。
【0133】
「分散剤」は、色素表面または他の粒子の濡れを助長し、凝集を防止する溶液の成分である。分散剤はまた、色素または他の成分の濡れを助長し、組成物、混合物または溶液内においてそれらの分散を容易にする溶液または組成物の成分を含む。分散剤は、凝集を防止するか、または分散剤を含まない組成物と比較して低減することができる。分散剤は、本発明とともに利用可能である。色素および分散剤はコーティングのpHを上昇させることがあり、かつそれらが硬化工程時に酸を奪い合って硬化率に影響を及ぼすことがある。
【0134】
本発明には、超分散技術を用いることができる。
【0135】
本発明に任意で利用可能な分散剤の非限定的な例としては、溶剤ペーストおよび液体インク中での色素の分散に使用可能なCOLORBURST分散剤(Noveon Cleveland(Ohio USA))が挙げられる。分散剤は、発色および光沢を改善し、色素の取り込みを増加し、沈降防止性を改善し、温度およびせん断安定性を維持することができる。Solsperse(登録商標)およびSolplus(登録商標)(Noveon Cleveland,Ohio USA))を用いてもよい。
【0136】
本発明は、インクジェット印刷用インクを含むとともにそれを利用可能である。インクジェット印刷用インクは、混ぜ合わせて媒体に塗布して印刷画像、表示板、文書、バナー等の装飾、印刷、コーティング、および/または保護物品を生成するペインターに酷似した送出可能なカラーパレットをプリンタに提供することが可能である。
【0137】
光硬化インクは、インクジェットに適した粘性を有するものとし、反応性希釈剤、または非反応性希釈剤を用いることができる。反応性希釈剤としては、インクジェット印字ヘッドが確実に印刷できる粘性範囲でインク調合物と反応して希釈する成分を含むようにすることができる。噴射信頼度は、圧電インクジェット印字ヘッドが再現可能な滴径、液滴形状、および液滴速度で液滴を吐出するようなインクせん断応力および流動特性が得られるように設計される。光硬化処理技術の硬化処理または反応速度は、ほぼ0からミリ秒またはそれ以上の長さの時間範囲とすることができる。遊離基のインクでは、(例えば、自由体積またはインク塗膜の収縮により)単量体およびオリゴマーが重合するときに、硬化率および硬化プロセスに応じて内部応力が発生する。これは、遊離基のインク系に見られる接着不良および可撓性不足による場合が多い。カチオン光硬化インク技術は、遊離基光硬化インクよりも遅いオーダーの速度で反応し、実際に、リビング重合とみなすことができる。開始された重合は、活性光が取り除かれた後も継続可能であり暗硬化として知られる。反応カチオン部位は、開環または環ひずみ緩和重合を介して広がり、インク塗膜がより柔軟になる。
【0138】
本明細書で用いるように、基材とは一定量のコーティング組成物、またはコーティング系に含まれる他の材料を塗布可能な任意の材料である。基材は、PVC、市販の成形およびカレンダー加工を施したビニル、ならびに硬質基材を含み、非限定的な例としては、標識および特殊グラフィックの分野で用いられるもの等が挙げられるがこれらに限定されない。他の基材としては、金属、木材、プラスチック、布、コットン、ウール等、および自動車等の予め塗工された物品が挙げられる。
【0139】
「基材合成プロセス」は、塗布用の最終基材を生成するための調合、成形、鋳造、加圧成形、押出加工、前処理および/または後処理、および/またはアニーリングを含む。
【0140】
「酸性基材」は、酸性の性質または光解離性を有し、熱に不安定または処理によって変化しやすい潜酸性を有するあらゆる被コーティング材料を含む。
【0141】
「酸含有基材」とは、pHが7.0以下で、酸性の性質または光解離性を有し、熱に不安定または処理によって変化しやすい潜酸性を有するあらゆる被コーティング材料を含む。
【0142】
「感熱基材」は、物理的特性または特徴が温度に応じて変化するあらゆる基材を含む。そのような物理的特性としては、以下のうち1つ以上が挙げられるがそれらに限定されない:色、寸法、濃度、可撓性、堅牢性、硬度、粘性、脆性、仕上げ、組成、化学的性質、および見た目。感熱基材としては、面外変形、変色、化学変化、または好ましくない温度依存変化に繋がる熱膨張を有するものが挙げられるがこれに限定されない。1つの実施形態では、本発明において色温度または寸法温度感受性基材を用いて温度に関連する変化を回避することができる。
【0143】
本発明の基材は、本質的に酸性であってもなくてもよい。さらに、酸は、直接基材に塗布するか、またはコーティング組成物、もしくは、さらなる成分(例えば、添加剤、希釈剤、および本明細書中に開示する他の材料等)を有するコーティング系の塗布と関連して基材に塗布してもよい。
【0144】
基材上に酸を放出するもしくは蒸着させるか、または基材の酸性的な性質を(7.0以下のpHまで)増大させるプロセスとしては、酸または酸性溶液を用いたコーティング、プラスチック部品を射出成形する前に行う型内コーティング、コーティング前に基材に行う酸性リンス剤を用いたカーテンコーティング、酸性溶液を用いた基材の拭き取り、および/または基材に対する酸性溶液の吹きつけが挙げられるがこれらに限定されない。これらのプロセスは、(フーリエ変換赤外分光)FTIR分光法またはpHを用いて、および/または基材表面の腐食を光沢の変化で見ることによって定量化することが可能である。
【0145】
1つの実施形態では、コーティングを行う部分に火炎曝露または酸エッチングを行って基材を処理する。水分および酸を用いてポリエステル骨格をその出発ポリオールおよびポリ酸に再変換し、ポリエステル骨格の解重合を行い、基材界面のコーティングに酸を利用可能にして硬化および接着を行なうことができる。分解については表面FTIR分光法またはpHを用いて定量化することができる。
【0146】
酸性表面は、コーティングと基材表面の共有結合により接着を助長することができる。基材の酸エッチングも接着性を向上することが可能である。接着性を向上する他の方法としては、プラズマおよびコロナ処理、および/または接着促進剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0147】
所望の物品を生成するために、基材酸分とプロセスパラメータ(コーティングの塗布から露光までの時間(またはコーティング量)、印刷速度、コーティング温度、基材温度、相対湿度パーセント、コーティング厚さ、色素レベルおよび種別を含むがこれらに限定されない)とを組み合わせることができる。
【0148】
使用可能なカラーパウダーには、例えば、212°F未満の低温で硬化するものがある。これらの粉体は、感温材料、および他の硬化処理系とともに多量のエネルギーを利用可能な部分に用いることができる。パーティクルボードおよびファイバーボード等の木材材料、ならびにガラスおよびプラスチック製品とともに感熱粉体を用いることもでき、これによって、粉体コーティング仕上げを得ることができる。他の製品としては、事務用什器、キッチンキャビネット、および家庭用組立て式家具が挙げられる。電気モーター、緩衝吸収材、フォームコアドア等の予め組立てられた部品、およびプラスチック、薄板、電線、またはゴムシールを有する他の製品にも粉体コーティング仕上げをすることができる。さらに、マグネシウム等の感熱合金に粉体コーティングを行ってもよい。この技術は、揮発性有機化合物の放散を低減し、かつ環境に無害である。
【0149】
1つの実施形態では、本発明は、温度に応じて変化する特性を有する任意の材料を含む「感熱基材」および「感熱物品」のコーティングを可能にする。例えば、感熱物品としては、コロプラスト、シントラ(sintra)、スチレン、生物、細胞、上皮、表皮、血漿、眼球、水晶体、導体、および写真物品または材料が挙げられるがこれらに限定されない。
【0150】
対象をコーティングするための塗布技術は、以下の非限定的技術のうちいずれか1つ以上を含む:インクジェット、インクジェット塗膜および印刷物、ブラッシング、吹き付け、型内コーティングを行った射出成形前部品、電着またはE−コート(例えば、多層基材ならびにコーティング複合材料を形成する蒸着および塗布)。
【0151】
コーティング厚さは、用途および最終使途に依存する。ライン速度、光輝度、ならびに光開始剤種別およびレベルの調節は、基材の酸度とともに最終製品用途に合わせて行うことができる。
【0152】
本発明の範囲には、pH7.0以下の酸を塗布したまたは活性化した酸性基材、または酸による前処理をした後にコーティングを塗布し、その上にニスまたはクリアコートを塗布したものを含む。さらなる層を用いて、例えば、クロム調、遷移的なマイカカラー、柔らかな色調等の色に関する効果を発生させることができる。
【0153】
基材中の酸が、インクを噴射した後にランプに露光されて硬化処理されることにより、塗工物品が生成される。インクは、例えば、5〜20kHz以上の範囲(これに限定されない)のインクジェット周波数で噴射することができ、任意で、ライン速度を、例えば、約0ft2/hr〜約50ft2/hr、最大で約6400ft2/hr以上の範囲とすることができる。
【0154】
塗布した溶液/コーティング/インクを特徴付ける物理的特性データは、用途および最終的に必要とされる性能特性に応じて決められる。
【0155】
粘性は、反応性希釈剤トリメチロールプロパンオキセタン(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)の「TMPO」)を用いて低減した。粘性は、ISP International Specialty Chemicals(Germany)から入手した反応性希釈剤Rapicure DVE−3を用いて低減した。
【0156】
硬化処理は、上記カチオンコーティング組成物の単官能カチオン重合可能官能基、または二官能カチオン重合可能官能基、または三官能カチオン重合可能官能基、または多官能カチオン重合可能官能基を反応させる工程を含んでもよい。
【0157】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物、またはコーティング系は、一定の特徴を有する基材に均一かつ均等に塗布される。他の実施形態では、この限りでない。
【0158】
図2は、コーティングの差別塗布のためのプロセスの一実施形態を示すプロセスフロー図である。コーティングの差別塗布では、第1の部分のコーティング、塗布、または硬化処理の少なくとも1つの特徴が、第2の部分のコーティング、塗布または硬化処理の特徴と異なる。第1および第2の部分は、同じコーティング層上にあっても異なる層上にあってもよい。本発明は、コーティング、塗布技術、および硬化方法の様々な特徴およびそれらの異なった組み合わせを含む。
【0159】
図14は、Taylor Hobson社のプロフィルメータを用いて収集した本例のプロフィルメータデータから作成したプロフィルメータ変更プロファイルを示す。テスト領域上を皺に直交させながら5ミリ移動させてバレーおよびピークを測定し、プロフィルメータデータを収集した。「ピーク合計」は、マイクロメートルの単位で示される「ピークバレー」と「ピークピーク」の合計に等しい。
【0160】
図15は、本発明を用いてコーティングされる酸性、酸解離性および/または酸光解離性酸含有基材(200)を、コーティング、積層物、前処理剤、および/または接着促進剤を有する場合と有さない場合について示す。基材(200)は、酸にさらされてないか、または酸が塗布されておらず、かつ/または酸が活性化されておらず、かつ/または本明細書に記載されるようにコーティングされる前は酸性ではない第1の部分または領域(210)、および酸にさらされているか、または酸が塗布されており、かつ/またはおよび酸が活性化されており、かつ/または本明細書に記載されるようにコーティングされる前に酸性である基材(200)上の少なくとも1つの第2の部分または領域(220)を有するようにすることができる。
【0161】
図15に示す例示的な実施形態では、第1の硬化部分の硬化処理のために第1の部分または領域(210)にコーティングを塗布し、第2の硬化部分の硬化処理のために第2の部分または領域(220)にコーティングを塗布する。第1のコーティング部分または領域(210)、および第2のコーティング部分または領域(220)を硬化する。第1の硬化部分または領域、(210)、および第2の硬化部分または領域(220)には、異なる仕上げを施すことができる。硬化したコーティングの各部分または領域(210)および/または(220)に行う仕上げは、基材(200)の酸度、コーティング種別、硬化までの時間、ならびに硬化の長さおよび性質を含むがこれらに限定されない変数の組み合わせによって得られる。図15では、皺仕上げを有するテクスチャ加工表面が得られる。
【0162】
「テクスチャ」(「テクスチャズ」または「テクスチャ加工」とも言う)コーティングを用いて基材の凹凸および指紋を隠すことができる。テクスチャにより、表面に滑り止めを施す一方で、製品に触感を与えることができる。非限定的な例では、微細なサンドペーパーの調の見た目から、石目のテクスチャ、またはワニの皮膚に似たより粗い見た目まで、多様な外見をテクスチャ仕上げ機で実現することができる。
【0163】
「皺」(「(複数の)皺」または「皺加工」ともいう)仕上げは、各種のスタイルを可能にし、一定した外観を有するテクスチャクラスを含む。皺および/またはテクスチャ仕上げは、耐磨耗性および耐候性を有するようにできる。皺および/またはテクスチャ仕上げは、例えば、工具、運動器具、および店頭陳列物に用いることができる。
【0164】
図3は、積層塗布したコーティング系の断面図である。コーティングは、1つ以上の層を有するようにすることができる。コーティングは、基材表面、または他のコーティングまたはコーティング表面に塗布可能である。コーティングは、処理済または未処理の表面に塗布可能である。さらに、コーティングは、単独で塗布するか、または他の材料、固体、液体、酸、化学溶液、および気体と組み合わせて塗布することができる。本明細書中の発明には、幅広いコーティング塗布技術が含まれる。図3には、酸性および/または光解離性酸の特徴が与えられた基材を有するコーティング系が示されている。この基材は、積層したコーティング材料でコーティングされる。接着促進剤の添加、または他の前処理(例えば、酸性化(これに限定されない))の追加は、選択可能な任意の工程であり、それらの例示的な結果が図3に示されている。図3には、カチオン硬化性の酸による触媒作用を受けたコーティングの第2の層の塗布が示されている。図3には、カチオン硬化性の酸による触媒作用を受けたさらに他の付加的なコーティングのコーティング層が示されている。着色コーティングまたはクリアコートコーティングを任意で用いてもよい。任意で、既存の層上にクリアコートを塗布(または添加)してもよい。各コーティングの後、コーティングを少なくとも2回行った後、またはコーティングプロセスの任意の時点で、本明細書に開示するような露光による硬化処理を多相積層物全体に実施することができる。本発明は、任意の時点で本明細書に開示した技術を用いてコーティング、積層物、添加剤および投入材料、または製品を露光することにより、最終的なテクスチャ、仕上げ、コーティング、または製品を取得することを広く含む。
【0165】
図4は、平面ではなく、全体に渡って同じ輝度を受けない表面部分を有する表面を示す。本プロセスは、任意の時点で本明細書に開示した技術を用いてコーティング、積層物、添加剤および投入材料、または製品を露光することにより、最終的なテクスチャ、仕上げ、コーティング、または製品を取得することを広く含む。
【0166】
「硬化」は、硬化プロセス、関連する化学反応による物理変化、またはコーティング、物質または材料を硬化中に行われる活性を含む。本明細書で用いる「硬化」は、分子を組み合わせて官能基が移動可能な程度に高変換率で利用可能な反応基の変換を行う化学反応を開始することおよびそのような化学反応が行われることの両方を含む。反応剤を85〜95%変換すると、網目が形成され全ての反応基の取り込みが限定され鎖運動性が制限される。「硬化」、「硬化させる」および「硬化処理」は、上記の広義の意味の変化形であり、硬化プロセス全体の時間的進行を含む。所与の用途における「硬化」は、硬化したコーティングの所与の用途および/または最終使途のための所望のコーティング性能仕様(例えば、コーティングおよび硬化後に物品を輸送するために包装する前の耐引っ掻き性)を得るための材料に対する変化を含む。「適正な硬化」は、接着、耐化学性および耐溶剤性、ならびに画質および色品質を含むがこれらに限定されない特性を実現するためのコーティングの硬化処理を含む。「硬化」はまた、本明細書に開示する発明を実施する当業者が理解する上記用語の一般的な定義も含む。
【0167】
「硬化した」(例えば、「によって硬化した」)は、硬化プロセスが完了したことを示す用語であるか、または硬化または硬化することを実現する方法を示す。また、所与の硬化法に関連して、硬化プロセスが十分に完了した場合に「硬化した」を用いることができる。コーティングに光が当てられると、硬化または硬化率が速くなる。
【0168】
本発明は、反応性コーティング組成物の「光硬化」および「暗硬化」の両方を含む。
【0169】
本明細書で用いる「光硬化」は、露光によって生じるかまたは露光中に起こるコーティング組成物のあらゆる化学反応、乾燥、ハードニング、物理変化または変換を含むように広く解釈される。1つの実施形態では、「光硬化」は、254nmの波長で0.008W/cm2/nmのピーク輝度を有する光に露光された領域を含む。本例で用いたライトは、UV Systems,Inc.(Renton,WA)から市販されるランプ、TripleBright IIであった。実施例12でさらに説明するようなランプのスペクトル分布を、Solatell UV Spectroradiometerを用いて測定したが、その結果は図8のグラフに示している。
【0170】
1つの実施形態では、本発明は、低輝度(254nm、0.008W/cm2/nm)の光に短時間露光した7.0以下のpHを有する酸性または酸含有基材を用いる。
【0171】
1つの実施形態では、本発明の局面は、感熱物品のコーティングを可能にする。感熱物品は、温度変化とともに変化する物理的特性を持つ材料を有してもよい。
【0172】
1つの実施形態では、硬化は、0.2秒以上の露光時間で実現することができる。硬化は、光輝度および照射量、光開始剤および増感剤の調製およびレベル、基材の酸的性質、ならびにコーティングの温度、基材の温度、相対湿度パーセント、および塗布環境温度に応じて行われる。
【0173】
基材の3次元性および光子方向と直交しない向き、重合体、光開始剤、色素、および他のコーティングによる光子の反射および吸収、コーティングの厚さおよび変化による光子透過の低減によって、露光にばらつきが生じる。
【0174】
本明細書で用いる「露光しない」とは、0(すなわち、無光)から表面、物体、または材料上に光が存在するが直接的な直交方向の露光と比較して輝度が低い範囲の光を含むがそれに限定されない。基材の3次元性、光子方向と直交しない向き、色素化による反射および/または吸収、ならびにコーティングの厚さおよび変化による光子透過の低減を含むがこれらに限定されない光を制限するあらゆる状況によって露光に誤差が生じる。
【0175】
本明細書で用いる「暗硬化」は、光源に対して直接露光された表面と同じ値の光で露光することができなくなるコーティング組成物のあらゆる化学反応、乾燥、ハードニング、物理変化または変換を含むように広く解釈される。「暗領域」は、光の方向と直交する領域と異なるレベルで露光されるコーティングまたは塗工物品の一部である。本明細書では、暗領域は、直接露光される領域以外のあらゆる領域を含むように広く解釈される。暗領域は、コーティング組成物の露光されない部分である無光部分、および光源に対して直接露光される部分よりも露光が少ない領域を含む。さらに、暗領域は、陰になった領域、遮光された領域、影が落ちた領域、遮られた領域、保護された領域、または何らかの理由で光源に対して直接露光されない領域を含んでもよい。1つの実施形態では、「暗硬化」は、200nm〜1200nmの波長および0.05W/cm2/nm以下の輝度を有する光に露光された領域を含む。
【0176】
コーティング組成物を基材に塗布する場合、一定の厚さを有する。いくつかの実施形態では、照射光は、コーティングの厚さを透過することができない。そのような場合、「暗領域」は、コーティング組成物の光が到達しない(または光源からの下方照射時の輝度で光が到達しない)部分を含むように広く解釈される。
【0177】
本発明の1つの実施形態は、光硬化および暗硬化の両方によるコーティングまたはコーティングの一部の硬化を含む。この硬化処理の組み合わせは、一定量のコーティング組成物が露光によって硬化し、同じ部分の他の量のコーティング組成物が露光から独立した化学反応またはハードニングプロセスによって硬化する場合に発生し得る。暗硬化を用いる例としては、乾燥、重合および/または反応が挙げられるがこれらに限定されない。
【0178】
エポキシ樹脂は、酸のみが存在する状況において酸性基材上で「暗硬化」する。本発明によって重合可能な官能基は、単官能および二官能単量体を含む光硬化性化合物を含むがこれに限定されない。他の単量体およびオリゴマーを以下のリストから選択することができる:Poly BD 605E(エポキシ化ヒドロキシ末端ポリブタジエン)、Eponex Resin 1510(水素化ビスフェノールA−エピクロルヒドリン系エポキシ)、Cardura E−10P(2,3−エポキシプロピルネオデカン酸塩)、Heloxy修飾剤116(2−エチルヘキシルグリシジルエーテル)、Heloxy修飾剤107(シクロへキサンジメタノールジグリシジルエーテル)、Heloxy修飾剤84(プロポキシ化グリセロールトリグリシジルエーテル)、Heloxy修飾剤68(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル)、Heloxy修飾剤48(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル)、Araldite DY−D/CH(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル)、UVR−6128(ビス(3,4−エポキシシクロへキシルメチル)アジペート)、UVR−6110((3,4−エポキシシクロへキシル)メチル−3,4−エポキシシクロへキシルカルボキシレート)、UVR−6105((3,4−エポキシシクロへキシル)メチル−3,4−エポキシシクロへキシルカルボキシレート)、およびオキセタン、ならびに/またはそれらを調製したもの。
【0179】
「二重硬化」は、本明細書中において、一定量のコーティング組成物が光硬化によって硬化し、他の量が任意の他の方法によって硬化するあらゆる硬化プロセスを含むように広く解釈される。光硬化とはみなされない硬化は、乾燥および/またはハードニング、ならびに化学反応(例えば、重合反応)を含むがこれらに限定されない光から独立した化学反応を含む。
【0180】
二重硬化機構の一実施形態である「二段階硬化」では、1つの実施形態では、基材硬化プロセス(例えば、酸性基材の活性化(これに限定されない))と、光活性化した表面硬化を伴う第2のプロセスとを組み合わせてもよい。本発明には、多段階硬化も含まれる。いくつかの実施形態では、2つ以上の硬化プロセスが用いられる。いくつかの硬化プロセス、多数の硬化プロセス、または各種の硬化プロセスを用いることができる。差別硬化は、コーティング表面硬化率、コーティングバルク硬化率、および基材コーティング界面硬化率の間で硬化率に誤差がある硬化プロセスを含む。非差別または均衡硬化は、コーティング表面硬化率、コーティングバルク硬化率、および基材コーティング界面硬化率の間で硬化率が均衡しているか、または硬化率が類似している硬化を含む。
【0181】
1つの実施形態では、二段階硬化は、pHが7.0以下の基材の基材硬化プロセスと光表面硬化補助剤とを色素色または光吸収色の硬化および接着を介して組み合わせてもよい。また、「二段階硬化」は、3次元グラフィックまたは印刷部分において、光が光源と直交する領域の光と等しくない同様の低露光または「暗」領域において硬化および接着を生じさせる。カチオン化学反応が開始されると、光源が取り除かれた後も硬化を継続する。
【0182】
複数の反応プロセスを利用するあらゆるコーティング系を二重硬化系とすることができる。二重硬化系は、エポキシまたはオキセタン基の開環重合時に形成され、イソシアネート官能樹脂と反応する第2ヒドロキシル官能基を用いることができる。また、二重硬化系は、アクリレート/ラジカル光開始剤および単官能、二官能、三官能および/または多官能アクリレート材料を有するジエポキシド化合物カチオン光開始剤を含んで表面硬化と可撓性のバランスを取ってもよい。
【0183】
「基材硬化」は、基材または基材表面によって基材−コーティング界面で開始される塗布コーティングの硬化を含む。詳細には、本発明の記載どおりに塗工した場合、7.0以下のpHを有する基材の酸性特性による。
【0184】
「表面硬化」は、露光時に表面で反応基を化学変換させて不粘着性の表皮を生じる電子線(UV/EB)遊離基およびカチオン硬化処理技術を含む。
【0185】
「スルー硬化(Through cure)」は、塗布したコーティングの表面およびバルクおよび基材−コーティング界面を含む完全な硬化を含む。スルー硬化は、コーティングまたはコーティング層の断面(または厚さ)全体の硬化を含んでもよいがこれに限定されない。
【0186】
いくつかの実施形態では、コーティングの化学的性質、(カチオン重合可能材料光開始剤、増感剤、反応性希釈剤、色素形成、ならびにそれらのレベルおよび組み合わせ)、基材表面酸度、塗膜厚、光輝度、およびコーティングの塗布および塗布したコーティングの露光からの時間、ならびに塗布したコーティングをUltraBright IIの光に露光する時間を変更して、幅広いコーティング仕上げを施すことが可能である。露光時間の時間成分により、光開始コーティングの領域に当てる光の量が決定される。光がコーティングを部分的に透過するがコーティングを完全には透過しないような露光時間では、カチオン硬化を開始し、コーティングにおいて光開始剤が活性化される深さまで行うことができる。この時、硬化率に誤差を生じ、カチオン活性領域と活性されない領域とで重合速度が異なるようにすることができる。表面硬化率、バルク硬化率、および基材コーティング界面硬化率を比較して硬化率に誤差があるコーティングには、皺加工した表面を生じることができる。本発明を用いれば、コーティング膜の一部を活性化し、皺を生成する差別硬化を起こすために十分な光エネルギーにコーティング表面を曝露することができる。これは、コーティングを部分的に透過してカチオン活性させる照射量として知られる露光輝度および時間で実現される。波長、輝度、および露光時間を最適化することにより所望の結果を得ることができる。
【0187】
コーティングを塗布した時点からコーティングを露光し活性化する時点までの露光時間成分は、コーティングがカチオン活性されカチオン重合が始まるまでの時間としてもよい。コーティングは、重合が進行し重合体網目が形成されまで、流体および流動および/またはレベルを維持する。流動および/または平坦化を妨げる期間および輝度でコーティングを活性化することにより、融合していない表面を生成することができる。流動および/または平坦化を可能にする期間および輝度でコーティングを活性化することにより、融合した表面を生成することができる。融合と非融合間の範囲は広い。
【0188】
露光時間成分は、コーティングを塗布した時点からコーティングを露光して活性した時点までの時間長を含み、一方または両方を変更して各種のコーティング表面特性を有する各種のコーティング物品を生成してもよい。
【0189】
基材へのコーティングの塗布から光源に対するコーティング基材の露光までの時間を変更することにより、マット仕上げ、標準仕上げ、および光沢仕上げにまで及ぶがこれらに限定されない様々な仕上げを実現することができる。基材へのコーティングの塗布と露光までの時間差(「時差」)としては、ほぼゼロ(0)、一瞬、0.001秒、0.01秒、0.1秒、1.0秒、5.0秒、および10.0秒、ならびに25秒が挙げられるがこれらに限定されない。より長い時間差としては、30秒、1分、5分、10分、30分、1時間、または1時間超が挙げられるがこれらに限定されない。これらの値の上下および中間の値を用いることもできる。
【0190】
1つの実施形態では、基材への一定量のコーティングの塗布から基材の露光までの時差をほぼゼロ(0、または瞬時)から10秒までの範囲としてマット仕上げを実現してもよい。他の実施形態では、0.001秒〜10秒の時差を用いて標準仕上げを実現してもよい。さらに他の実施形態では、ほぼゼロ(瞬時)〜2時間、または2日間の時差を用いて光沢仕上げを実現してもよい。時差を用いる実施形態では、100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光源を用いることができる。時差は、利用する光に応じて長くしても短くしてもよい。利用する時差および光の組み合わせを最適化することにより所望の仕上げを実現することができる。
【0191】
図3は、線形の物品を示す。コーティング、積層物、前処理剤、および/または接着促進剤(20)の塗布前またはそれと同時におよび/またはその後に、酸性、酸解離性および/または光解離性酸含有基材(10)に光子(50)を当ててもよい。この時、さらなるコーティング(カチオン硬化性酸触媒)(30)を塗布し、その後にさらに別のコーティング(カチオン硬化性酸触媒、着色、またはクリアコート)(40)を塗布してもよい。物品(20)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、物品(30)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、かつ/または物品(40)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に物品に光子(50)を当ててもよい。コーティング((20、30)および/または(40))を物品(10)に塗布する前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、光子源(ランプ、光源、蛍光灯、発光ダイオード、および/または水銀蒸気放出)(60)を用いて物品(10)に光子(50)を当ててもよい。
【0192】
図4は、3次元性を有する非線形の物品を示しており、当該物品の一部は、本明細書で説明するように、同じ光に露光される他の領域と同じかまたはそれより低い光量で露光される表面部分を有する。コーティング、積層物、前処理剤、および/または接着促進剤(120)の塗布前にまたはそれと同時におよび/またはその後に、酸性、酸解離性および/または光解離性酸含有基材(100)に光子(150)を当てることができる。この時、さらなるコーティング(カチオン硬化性酸触媒)(130)を塗布し、その後にさらに別のコーティング(カチオン硬化性酸触媒、着色、またはクリアコート)(140)を塗布してもよい。物品(120)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、物品(130)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、かつ/または物品(140)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に物品に光子(150)を当ててもよい。コーティング((120、130)および/または(140))を物品(100)に塗布する前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、光子源(例えば、ランプ、光源、蛍光灯、発光ダイオード、および/または水銀蒸気放出)(160)を用いて物品(100)に光子(150)を当ててもよい。
【0193】
実施例15の結果は、本明細書に開示するコーティング技術によって、様々な色について幅広いコーティング仕上げを得ることが可能であることを示す。
【0194】
上記コーティング組成物、光開始剤の調製およびレベル、ならびに硬化技術により、滑らか、テクスチャ加工、マット、光沢、または皺加工を含むがこれらに限定されない仕上げを施すことができる。他の実施形態では、物品に以下の1つ以上の仕上げを施すことができる:光沢仕上げ、標準仕上げ、マット仕上げ、テクスチャ加工仕上げ、および/または皺加工仕上げ。
【0195】
「滑らか」コーティングは、プロフィルメータで測定したピーク平均値が10マイクロメーター以下のコーティングを含むがこれに限定されない。
【0196】
テクスチャコーティングを用いて基材の凹凸および指紋を隠すことができる。これによって、表面に滑り止めを施す一方で、製品に触感を与えることができる。非限定的な例では、微細なサンドペーパーの調の見た目から、石目のテクスチャ、またはワニの皮膚に類似したより粗い見た目まで、多様な外見を実現することができる。
【0197】
皺仕上げは、各種のスタイルを可能にし、一定した外観を有するテクスチャクラスである。これらは、耐磨耗性および耐候性を有するようにできる。これらの仕上げは、例えば、工具、運動器具、および店頭陳列物に用いることができる。
【0198】
「屋外耐久」(「屋外耐久性」とも言う)は、グラフィック、印刷物、コーティング、ならびに塗工物品および製品の特徴および/または特性であり、それらが屋外環境において所定期間性能を維持する能力を定量化および表現するものである。屋外耐久性は、なんらかのコーティングによって長年にわたって維持することが可能である。屋外耐久性に寄与し得る因子としては、接着性、色品質、表示品質、耐化学性、および耐光性が挙げられるがこれらに限定されない。屋外耐久性を有するグラフィックは、本発明によって生成可能な物品である。屋外耐久性を有するグラフィックは、屋外耐久性を有する(例えば、屋外耐久性を示す特徴および特性を有する)製品である。
【0199】
「熱安定性」は、何らかの理由により暖められ、熱せられ、または温度上昇にさらされたときに物性変化に抵抗する度合いを含む。
【0200】
「光安定性」(「日光堅牢度」とも言う)は、通常使用時に光、放射、または他の因子(例えば、日光、IR放射、電磁放射)に晒されたときに物性変化に抵抗する度合いを含む。
【0201】
「化学安定性」は、通常使用時に化学製品または他の因子(例えば、日光を含む)にさらされたときに物性変化に抵抗する度合いを含む。
【0202】
光吸収および光反射色素が競合して、コーティングに対する光子の透過深度を低減することにより、コーティング表面の硬化率、コーティングバルクの硬化率、および基材コーティング界面の硬化率を比較して差別的な硬化を生じることができる。この技術は、本発明のいくつかの実施形態で利用される。
【0203】
本発明のコーティングのカラーバリエーションは広範囲にわたるものであり制限されない。研磨したアルミニウムのブラス調の見た目等、基材またはベースコートを最も明るい色にする色調も存在する。
【0204】
一般に、無光沢から高光沢の範囲が利用可能である。滑らかで高光沢なコーティングは、画像の区別性を高くし、奥行きに錯覚をもたらしたり、濡れたような見た目にすることができる。マット仕上げは、各種基材上のスポット溶接接合部、切り傷、および擦り傷等の表面欠陥または不完全性を隠すことができる。
【0205】
マット仕上げは、硬化パラメータ(例えば、印刷速度またはスループットと、コーティング表面における照射量、塗膜厚、光開始剤および光増感剤のレベル、種別、および調製、基材酸度、ならびにコーティングの蒸着から露光までの時間差との組み合わせ)で制御することができる。
【0206】
コーティング仕上げ(すなわち、マットまたは光沢)は、コーティング表面、コーティングバルク、およびコーティング−基材界面で硬化率が等しくなるように、硬化パラメータ(例えば、印刷速度またはスループットと、コーティング表面における照射量、塗膜厚、光開始剤および光増感剤のレベル、種別、および調製、基材酸度、ならびにコーティングの蒸着から露光までの時間差との組み合わせ)で制御することができる。いくつかの実施形態は1つ以上の仕上げ(例えば、標準、光沢、マット、およびテクスチャ)を有する。
【0207】
本発明を用いてマットおよび光沢仕上げを施すことができる。マット仕上げを実現するためのインクジェットプロセスでは、コーティングの塗布からコーティングの露光までに時差がないかまたは短い時差がある。この時差が短いインクジェットプロセスでは、液滴を適所に適切な形状で留め、液滴の流動および融合を抑える。光沢仕上げを実現するためのインクジェットプロセスでは、コーティングの塗布からコーティングの露光までに液滴の流動および融合を可能にする時差がある。
【0208】
1つの実施形態では、本明細書に記載するように、表面硬化率、バルク硬化率、および基材−コーティング界面硬化率を調節し、コーティングの前にまたはそれと同時に基材に酸を加えて滑らかな膜を生じることにより高光沢仕上げを得てもよい。
【0209】
この用途には、各種の印刷製品が含まれる。印刷製品の例としては、標識、特殊グラフィック、印刷物、プラスチック製品、自動車両、トラックおよびバス、飲料容器、印刷可能な電気回路、セキュリティタグ、ラベル、3D浮き上がりグラフィック、ならびに約12〜約3.2メートル幅またはそれよりもさらに大きいフォーマットプリンタで印刷される製品が挙げられるがこれらに限定されない。
【0210】
1つの実施形態では、ステッカーが印刷される。ステッカーの例としては、ラベル、バーコードラベル、パッケージラベル、バンパーステッカー、自動車両用標識、自動車両用グラフィック、および危険有害性通知用プラカードが挙げられるがこれらに限定されない。
【0211】
屋外耐久性を有するグラフィックの例としては、標示板、バナー、車両外装用転写グラフィックキット、自動車用グラフィック、トラック用グラフィック、ワゴン車用グラフィック、ボート用グラフィック、ワゴン車用ストライプ状吹付けグラフィック、自動車用ストライプ、トラック用ストライプ、ボート用ストライプ、窓用デカールおよびピンストライプが挙げられるがこれらに限定されない。
【0212】
硬化は、FTIR、耐化学性、耐溶剤性、ゲル化率、ガラス遷移温度または接着性で測定することができる。
【0213】
色素形成の度合いは重量に基づいて測定され、通常、色素と結合材の比(P/B)で示される。色素を所与のレベルでコーティング組成物の処方に加えることにより、着色、隠蔽もしくは不透明化、および/または色濃度の付加を行うことができる。
【0214】
硬化したコーティングの可撓性は、伸び率および/または屈曲率で特徴付けることができる。
【0215】
「接着」は、ドライコーティングにより表面に付着し、気泡、剥離、ひび割れ、またはテープはがれを生じることなく固定し続ける能力を含む。「接着」はまた、「密着」および「結合」等の用語の意味も含む。他の接着プロセスとしては、水素結合、ファンデルワールス引力またはある分子と隣接する分子との間の引力である分子間引力、イオン(異極)結合、配位(供与共有)結合、吸収、引力または物理結合、溶着結合、および/または金属結合が挙げられるがこれらに限定されない。「接着」はまた、基材と後から塗布したコーティングとの密接した一体化も含む。
【0216】
図12は、静止材料基材(1)を配置または装着または内部に入れたインクジェットプリンタ、および装置基部(2)を示す。ロングランプ(3)、印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が装置基部(2)に取り付けられている。ロングランプ(3)、印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が装置基部(2)に対して「y方向」に移動可能である一方、静止材料基材(1)は静止している。印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は、装置基部(2)に対して「x方向」に移動可能である。1つの実施形態では、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は、印刷時には、インクを流すために消灯していてもよい。他の実施形態では、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は点灯していてもよい。さらに他の実施形態では、一方の印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が点灯中に他方の印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が消灯していてもよい。静止材料基材(1)の幅に応じて、ロングランプ(3)および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)の台数を1台より多くしてもよい。このため、本明細書に記載のランプを用いて照射量を増加することができる。当業者に理解されるように、光開始剤パッケージおよびレベル、色素種別およびレベル、ならびに色素のスペクトル吸収に応じて、波長、輝度、および/またはスペクトル出力が異なるランプ(3)および/または(6)を用いることができる。図12には、静止材料基材(1)が静止した非限定的構成を示している。
【0217】
図13は、装置基部(8)に対して「y方向」にロングランプ(9)、印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)、および装置基部(8)を通過可能な移動材料基材(7)を示す。ロングランプ(9)は静止している。印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は、装置基部(8)に対して「x方向」に同時に移動することができる。1つの実施形態では、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は、印刷時には、インクを流すために消灯していてもよい。他の実施形態では、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は点灯していてもよい。さらに他の実施形態では、一方の印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が点灯中に他方の印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が消灯していてもよい。移動材料基材(7)の幅に応じて、ロングランプ(9)および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)の台数を1台より多くしてもよい。このため、本明細書に記載のランプ(6)および/または(9)を用いて照射量を増加することができる。当業者に理解されるように、光開始剤パッケージおよびレベル、色素種別およびレベル、ならびに色素のスペクトル吸収に応じて、波長、輝度、および/またはスペクトル出力が異なるランプ(6)および/または(9)を用いることができる。
【0218】
1つの実施形態では、本発明は、印刷媒体と直交して搭載され、当該印刷媒体がプリンタを通過する際に照射を行う0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmのライト、または一列のライトを有するインクジェットプリンタを含む。また、プリンタは、液滴を適所に維持するために0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmのライトを印字ヘッドキャリッジの両側に搭載してもよい。この結果、当業者に理解されるように、印字ヘッドキャリッジが媒体を横切って画像を印刷する際に、インクジェット液滴が印字ヘッドキャリッジランプにより照射され、液滴流出または液滴拡散を防止または抑えることができる。プリンタは、ポンプ、バルブ、インクレベルセンサ、フィルタ、メインリザーバ、ヘッド搭載リザーバ、加熱器、熱センサ、インク脱気装置、インク再循環部、インク回収部、インク排出部、インク充填部、コンピュータ電気回路制御系、ならびに電気回路およびコンピュータ回路から構成されるがこれらに限定されないインク濾過/供給系を備えるかまたは装備してもよい。印刷メニスカスの調節は制御可能であり、メニスカスの減圧により噴射確実性を調節できる。プリンタインク塗布器は、2〜100キロヘルツの発生周波数、および4メートル/秒から最大25メートル/秒の液滴速度で3〜100ピコリットルの液滴送出容積が実現可能なドロップオンデマンドインクジェット印刷機であってもよい。プリンタは、インクと互換性のある4〜16個の印字ヘッドを有することができる。
【0219】
図5は、UV Systems社の254nmランプ、TripleBright IIの下において、22”ランプ長および4インチ(インチ=”とも表記する;例えば、4”)ランプ幅に対する中心に位置する時間の関数としての照射量をミリジュール/cm2の単位で示す。
【0220】
「暗領域」は、放射または光源と直交しない表面であって、放射と直交する表面と比較して光子またはエネルギー量が低減した表面を含む。「低露光領域」は、放射または光源と直交しない表面であって、放射と直交する表面と比較して光子またはエネルギー量が低減した表面を含む。
【0221】
「制限露光」は、全輝度における直交する露光と比較して露光が低減、低下、または減少したコーティング組成物(コーティング、または硬化すべき材料)の露光状況を含む。制限露光は、表面、バルク、および基材−コーティング界面が均一な光活性および光重合を有さなくなる原因(被照射材料に対する光源の向き、被照射材料に対する光源の構成、コーティング厚さ、色素形成、および光線透過率の低減(これらに限定されない))に起因して発生し得る。
【0222】
暗硬化の特徴としては、色素種別およびレベル、膜厚、部材または基材形状、発光方向と直交する部材または基材領域配向形式による光電磁放射の低減の結果として放射が無いか、またはそのレベルが低減した状態において、塗布されたコーティングのカチオン重合を開始する基材の潜在能力が挙げられる。
【実施例】
【0223】
本明細書中の実施例では、「5フィート」幅の媒体に対する直線印刷速度および印刷率と、印刷率ft2/hrとを下記の表2で対応させている。
【表2】
【0224】
[実施例1]
酸コーティング287−127は、カチオンコーティング組成物の第2のコーティング(本明細書中の実施例3、4、5、および6において用いられる)を塗布する前に基材に塗布され、光活性されることにより酸を放出する例示的な前処理剤を表す。酸コーティング287−127の組成は、イソプロパノール(50グラム);TMPOオキセタン(10グラム);Irgacure 250(2グラム)であった。
【0225】
[実施例2:基材の説明および調製]
基材1:ガラスを石鹸水で洗浄した後乾燥させた。4インチ×4インチのガラスプラークをイソプロパノールで拭き、コーティングを塗布する90秒±90秒前に乾燥させた。
【0226】
基材2:基材1と同様の調製後に、酢酸(99.6%氷酢酸)で拭き取りを行い、風乾した。
【0227】
基材3:基材1と同様の調製後に、「酸コーティング」287−127(実施例1に記載)を塗布し、#10ワイヤケータ(wire cater)を用いて引き延ばした。この酸コーティングを施したガラスを、さらなるコーティングを塗布する前に、後で塗布するそれらのコーティングと同じ照射量で254nmランプで露光して酸コーティングを活性化した。
【0228】
基材4:Instachange IP(3Mより市販されるビニル)。
【0229】
基材5:基材4と同様の調製後に、酢酸(99.6%氷酢酸)で拭き取りを行い、風乾した。
【0230】
基材6:基材4と同様の調製後に、「酸コーティング」287−127(実施例1)を塗布し、#10ワイヤケータを用いて引き延ばした。この酸コーティングを施したInstachangeを、さらなるコーティングを塗布する前に、後で塗布するそれらのコーティングと同じ照射量で254nmランプで露光して酸コーティングを活性化した。
【0231】
[実施例3:Black 287−126カチオン組成物]
このコーティングは以下の成分を含有し、それらをまとめて暗色のプラスチック容器に入れて光から保護した:Cyracure UVR−6110(64.6グラム)、TMPO(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のトリメチロールプロパンオキセタン)(16.2グラム)、Black pigment 10C 909(Shepherd Color Company(Cincinnati,Ohio USA)のBlack pigment 10C 909)(5.0グラム)、Irgacure 250(Irgacure 250は、Ciba Specialty Chemicals Corp.(Terrytown,New York,USA)より供給された)(3.8グラム)、Rapicure DVE−3(5.0グラム)、Speedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))(0.75グラム)、およびSilwet 7604(GE Silicones(Friendly,WV))(0.5グラム)。ULTRA−TURRAX T25を用いてこれらの成分を15分間分散させた。分散後、2.0グラムのBoltorn H2004(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のBoltorn H2004)を添加した。
【0232】
硬化をテストするために、実施例2に記載説明したように実施例3のコーティングを基材上に引き延ばした。
【0233】
その後、必要に応じて、サンプルを(図8に規定するような)光に露光するか、または無光状態で保持した。露光が完了した後、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープで接着し、1分および5分間隔でサムツイスト法を行ってコーティングの硬化を評価した。
【0234】
【表3】
【0235】
1.上記のように、ワイヤケータ#28を用いて基材上にブラックコーティングを引き延ばした。
【0236】
2.「サムツイスト」テストは、人の親指をコーティングに接触させて下方に圧力をかけながら親指の向きを90度回転させて行う。
【0237】
3.サムツイストでは以下のように判定を行なった:10=不良なし、9=表面にごく僅かな痕跡あり、8=表面に僅かな痕跡あり、6=表面に痕跡があるが膜破断なし、4=表面皮膜の破断あり、2=表皮が容易に破断、0=完全な不良。
【0238】
4.本例では、接着の割合について、「コーティング接着性テスト」後にコーティングが完全に接着(100%)している場合を100と特定し、基材に付着し続けるコーティングが0パーセントの場合を0と特定する。本明細書中の実施例では、ASTM 3359−02テスト法Aに従って「コーティング接着性テスト」を行ったが、ASTM 3359−02テスト法AにおいてX印を刻まないという変更を行っている。本明細書中の実施例におけるコーティング接着性テストに用いたテープは、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープ(3M(St.Paul,MN)から入手可能)であった。テスト法Aの7.5に従って、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープを試料で塗工表面に貼り付け、指で適切にならした。本明細書中の実施例におけるテストでは、テスト法Aの7.6に従って、テープの自由端を素早く引いて、できる限り90°近くになるように「引っ張り上げた」。接着性については、基材のテスト領域と接触し続ける膜の割合を目視によって判定した。
【0239】
5.基材の酸分によって上面と下面間の差別的な硬化のバランスが取れなかった場合に表面に深刻な皺が発生した。
【0240】
6.コーティング、硬化、およびテストが完了した時点で塗布室の温度を測定すると、71°F〜73°Fの範囲が記録された。
【0241】
7.上記チャートの印刷速度は、ランプの下でコーティングに費やした実際の時間に換算することが可能である。この計算は、5フィート幅媒体を使用し、ランプが4”の照明窓を有するものと仮定して行われる。換算は、1200を上記チャートに示す印刷速度(平方フィート/時間)で割って行う。例えば、58.5平方フィート/時間の印刷速度については、ランプの下における時間として1200/58.5、すなわち、20.51秒が示される。
【0242】
[実施例4;Magenta 287−123カチオン組成物]
以下の成分をまとめて暗色のプラスチック容器に入れ光から保護した:Cyracure UVR−6110(64.6グラム)、TMPO(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のトリメチロールプロパンオキセタン)(16.2グラム)、Toner Magenta E02(Clariant GmbH(Frankfurt,Germany)により供給されるToner Magenta E02)(4.0グラム)、Rapicure DVE−3(5.0グラム)、Irgacure 250(Irgacure 250は、Ciba Specialty Chemicals Corp.(Terrytown,New York USA)により供給された。)(3.0グラム)、Speedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))(0.75グラム)、およびSilwet 7604(GE Silicones(Friendly,WV))(0.5グラム)。ULTRA−TURRAX T25を用いてこれらの成分を15分間分散させた。分散後、2.0グラムのBoltorn H2004(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のBoltorn H2004)を添加した。
【0243】
硬化をテストするために、実施例2に記載説明したように実施例4を基材上に引き延ばした。その後、必要に応じて、サンプルを(図8に規定するような)光に露光するか、または無光状態で保持した。露光が完了した後、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープで接着し、1分および5分間隔でサムツイスト法を行ってコーティングの硬化を評価した。
【表4】
【0244】
1.上記のように、ワイヤケータ#28を用いて基材上にマゼンタコーティングを引き延ばした。
【0245】
2.サムツイストでは以下のように判定を行なった:10=不良なし、9=表面にごく僅かな痕跡あり、8=表面に僅かな痕跡あり、6=表面に痕跡があるが膜破断なし、4=表面皮膜の破断あり、2=表皮が容易に破断、0=完全な不良。
【0246】
3.コーティング、硬化、およびテストが完了した時点で塗布室の温度を測定すると、71°F〜73°Fの範囲が記録された。
【0247】
4.上記チャートの印刷速度は、ランプの下でコーティングに費やした実際の時間に換算することが可能である。この計算は、5フィート幅媒体を使用し、ランプが4”の照明窓を有するものと仮定して行われる。換算は、1200を上記チャートに示す印刷速度(平方フィート/時間)で割って行う。例えば、58.5平方フィート/時間の印刷速度については、ランプの下における時間として1200/58.5、すなわち、20.51秒が示される。
【0248】
[実施例5:Cyan 287−124カチオン組成物]
以下の成分をまとめて暗色のプラスチック容器に入れ光から保護した:Cyracure UVR−6110(64.6グラム)、TMPO(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のトリメチロールプロパンオキセタン)(16.2グラム)、Toner Cyan BG(Clariant GmbH(Frankfurt,Germany)により提供されるToner Cyan BG)(4.0グラム)、Rapicure DVE−3(5.0グラム)、Irgacure 250(Irgacure 250は、Ciba Specialty Chemicals Corp.(Terrytown,New York USA)により供給された。)(3.0グラム)、Speedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))(0.75グラム)、およびSilwet 7604(GE Silicones(Friendly,WV))(0.5グラム)。ULTRA−TURRAX T25を用いてこれらの成分を15分間分散させた。分散後、2.0グラムのBoltorn H2004(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のBoltorn H2004)を添加した。
【0249】
硬化をテストするために、実施例2に記載説明したように実施例5を基材上に引き延ばした。その後、必要に応じて、サンプルを(図8に規定するような)光に露光するか、または無光状態で保持した。露光が完了した後、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープで接着し、1分および5分間隔でサムツイスト法を行ってコーティングの硬化を評価した。
【表5】
【0250】
1.上記のように、ワイヤケータ#28を用いて基材上にシアンコーティングを引き延ばした。
【0251】
2.サムツイストでは以下のように判定を行なった:10=不良なし、9=表面にごく僅かな痕跡あり、8=表面に僅かな痕跡あり、6=表面に痕跡があるが膜破断なし、4=表面皮膜の破断あり、2=表皮が容易に破断、0=完全な不良。
【0252】
3.上記例のコーティング前に、酸コーティングの実施例1(287−127)を基材上に引き引き延ばした後、次のコーティング照射線量率に合わせて露光した。
【0253】
4.コーティング、硬化、およびテストが完了した時点で塗布室の温度を測定すると、71°F〜73°Fの範囲が記録された。
【0254】
5.上記チャートの印刷速度は、ランプの下でコーティングに費やした実際の時間に換算することが可能である。この計算は、5フィート幅媒体を使用し、ランプが4”の照明窓を有するものと仮定して行われる。換算は、1200を上記チャートに示す印刷速度(ft2/hr)で割って行う。例えば、58.5平方フィート/時間の印刷速度については、ランプの下における時間として1200/58.5、すなわち、20.51秒が示される。
【0255】
[実施例6:イエローカチオン組成物]
以下の成分をまとめて暗色のプラスチック容器に入れ光から保護した:Cyracure UVR−6110(64.6グラム)、TMPO(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のトリメチロールプロパンオキセタン)(16.2グラム)、Toner Yellow(Clariant GmbH(Frankfurt,Germany)により提供されるToner Yellow 3GP)(2.75グラム)、Rapicure DVE−3(5.0グラム)、Irgacure 250(Irgacure 250は、Ciba Specialty Chemicals Corp.(Terrytown,New York USA)により供給された。)(3.0グラム)、Speedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))(0.75グラム)、およびSilwet 7604(GE Silicones(Friendly,WV))(0.5グラム)。ULTRA−TURRAX T25を用いてこれらの成分を15分間分散させた。分散後、2.0グラムのBoltorn H2004(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のBoltorn H2004)を添加した。
【0256】
硬化をテストするために、実施例2に記載説明したように実施例6を基材上に引き延ばした。その後、必要に応じて、サンプルを(図8に規定するような)光に露光するか、または無光状態で保持した。露光が完了した後、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープで接着し、1分および5分間隔でサムツイスト法を行ってコーティングの硬化を評価した。
【表6】
【0257】
1.ワイヤケータ#28を用いて基材上にイエローコーティングを引き延ばした。
【0258】
2.サムツイストでは以下のように判定を行なった:10=不良なし、9=表面にごく僅かな痕跡あり、8=表面に僅かな痕跡あり、6=表面に痕跡があるが膜破断なし、4=表面皮膜の破断あり、2=表皮が容易に破断、0=完全な不良。
【0259】
3.上記のように軽く塗布したコーティングを用いて硬化を行った。
【0260】
4.未処理のものよりも酢酸で処理した基材に関して膜特性が著しく改善された。
【0261】
5.コーティング、硬化、およびテストが完了した時点で塗布室の温度を測定すると、71°F〜73°Fの範囲が記録された。
【0262】
6.上記チャートの印刷速度は、ランプの下でコーティングに費やした実際の時間に換算することが可能である。この計算は、5フィート幅媒体を使用し、ランプが4”の照明窓を有するものと仮定して行われる。換算は、1200を上記チャートに示す印刷速度(平方フィート/時間)で割って行う。例えば、58.5平方フィート/時間の印刷速度については、ランプの下における時間として1200/58.5、すなわち、20.51秒が示される。
【0263】
[実施例7]
実施例7:プロフィルメータ測定表および図15は、本明細書に開示する方法を利用して行ったコーティング実験についてのプロフィルメータ測定結果を含む。これらの結果および以下の実施例は、本明細書に開示するコーティング技術によって、様々な色について幅広いコーティング仕上げを得ることが可能であることを示している。本発明によって、この所望の仕上げを有する物品を生成する差別的な硬化を制御し、滑らか、テクスチャ加工、または皺加工コーティングを施した物品を生成することができる。本明細書の実施例は、本発明の用途を限定するものではなく、当業者には公知のように、色素種別、色素レベル、および光吸収特性が、光に関して光開始剤パッケージと競合することにより、表面硬化率、バルク膜硬化率、およびコーティング基材界面硬化率に関して、コーティング内で硬化率の誤差を生じることができることを示す。実施例7では、所与のコーティングを不活性ガラス表面および酸で前処理した表面に上記の割合で塗布し、上記印刷速度で硬化した時に、テクスチャ加工または滑らか仕上げが実現可能であることを示す。この実施例では、「不活性」または「不活性表面」は、コーティングおよび硬化時に酸性ではなく、かつ/またはカチオンコーティングの硬化処理または硬化率にほとんど寄与しない基材または基材表面である。
【表7】
【0264】
1.塗布詳細:プロフィルメータで表面の特徴を評価する物品を生成するために用いた印刷速度(ft2/hr)、ワイヤケータ#(WC#)、および表面処理。
【0265】
2.Taylor Hobson社のプロフィルメータを用いてプロフィルメータデータを収集した。テスト領域上を皺に直交させながら5ミリ移動させてバレーおよびピークを測定した。未加工のデータプロフィールを解析して「ピークバレー」、「ピークピーク」、および「ピーク合計」の値を求めた。
【0266】
[実施例8]
本明細書中の実施例では、基材が5フィート幅であると仮定して、印刷率をft2/hrで示している。この情報は表8(5フィート幅媒体の印刷速度対応表)に記載されている。
【表8】
【0267】
媒体幅および硬化率に基づくスループット速度の計算。
【表9】
【表10】
【0268】
[実施例9]
図5にUV Systems社の254nmランプ、TripleBright IIの照射量対時間をグラフで表した。図5の照射量対時間の傾きから、ランプの下では毎秒2.85mj/cm2の照射量が得られることが分かる。ランプの下における異なる時間に対する照射量については、以下のように計算する:2秒=5.7mj/cm2、5秒=14.25mj/cm2、10秒=28.5mj/cm2,20秒=57.0mj/cm2。
【0269】
[実施例10]
図6は、Integration Technology(115 Heyford Park,Upper Heyford,Oxon,UK OX25 5HA)のUV積算器(UV Integrator)用いて測定した直線ランプ速度に対する0.008ワット/cm2/nmの輝度におけるUV Systems社の254nmランプ、TripleBright IIのUV照射量をグラフで表す。この積算器は、電球が積算器上を移動する際に、電球の長さ22”に対して電球の中心に配置した。
【0270】
[実施例11]
図7は、Solatell社のUV Spectroradiometer(Solatell Limited(Centronic House King Henry’s Drive Croydon,CR9 0BG United Kingdom))を用いて得たデータと、Integrated Technologies社のSubZero 55水銀硬化ランプ技術を用いたGerber Scientific Products社のSolara UVインクジェット印刷機の光出力とを表す。
【0271】
[実施例12]
図8は、Solatell社のUV Spectroradiometerを用いて得たデータと、本明細書中のコーティングを硬化するために用いたUV Systems 社の254nmランプ、TripleBright IIの光出力とを表す。重要な点として、輝度がGerber Scientific Products社の最新のSolara UVインクジェット印刷機で用いる電球の輝度の1/10未満であることに留意されたい。本明細書で用いた254nmランプは、UV Systems,Inc(Renton,WA)から入手可能であり、TripleBrightというラベルが付けられていたがTripleBright IIとして構成されていた。電球長は22”(18”の石英/ガラス)であり、0.008ワット/cm2/nmの輝度で254nmのピーク波長を有していた。
【0272】
[実施例13]
本研究の一部として多数のUV光源を評価した。以下の非限定的なリストは、本明細書に記載のコーティングの硬化に使用可能な低輝度光の利用可能な範囲を示す。
【0273】
図9は、306/312nmの電球を用いたUV Syestems社のTripleBright IIのUVスペクトル分布を示す。
【0274】
図10は、254、306/312、352、368nmの電球を用いたUV Syestems社のTripleBright IIのUVスペクトル分布を示す。
【0275】
図11は、本発明の範囲に該当する市販のLED製品2つのスペクトルデータを、254nmの電球を用いたUV Systems社のTripleBright IIの出力と比較して示す。これらは、Norlux社(Carol Stream,IL)のNHX3950405005 395nm Hex LED、およびUV Process Supply社(Chicago,IL)のCureAll Linear 100 Developers Unitである。
【0276】
[実施例14]
実施例14は、移動基材構成、または静止基材および移動ロングランプ構成の直線基材投入速度に応じて計算されたコーティングの露光時間を示す。
【0277】
【0278】
特定の実施形態に関して本発明を説明したが、本説明および付属図面に照らし合わせることで、当業者には多くの代替例および変形例が明白となる。よって、添付の請求項の精神および範囲内に該当する全ての代替例および変形例が本発明に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】プロセスフロー図である。
【図2】テクスチャ加工仕上げプロセスフロー図である。
【図3】コーティングされた基材(物品)の図である。
【図4】低露光−暗硬化の描写する図である。
【図5】照射量対時間(254nmランプ(静止状態))のグラフである。
【図6】照射量対速度のグラフである。
【図7】Subzero 055のUVスペクトル輝度図である。
【図8】254nmランプのスペクトルデータである。
【図9】蛍光灯(306/312nm)のスペクトルデータである。
【図10】254nm、306/312nm、352nm、および368nmランプのスペクトルデータである。
【図11】LEDおよび蛍光灯(Norlux CureAll、蛍光灯)のスペクトルデータである。
【図12】プロセス構成(静止基材)を示す図である。
【図13】プロセス構成(移動基材)を示す図である。
【図14】プロフィルメータで測定したコーティングプロファイルである。
【図15】マルチテクスチャプロセスフロー図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング技術、ならびにカチオンコーティングを基材上で光硬化させるための組成物、方法、系、コンピュータプログラム、塗布技術、制御系、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の遊離基硬化処理系は、高輝度の発熱灯を伴う。歴史的に、遊離基系では、水銀光源を用いて発熱する。このため、それらは感熱基材に限定して使用される。さらに、上記のような系では、赤外線(IR)放射が基材に達して、基材が歪んだり変色したりするのを防止するために、水冷ヒートシンクおよび/またはダイクロイックフィルタを必要とすることがある。このような手段は、基材の加工をより複雑かつ高価にし、上記のような系の使用を魅力のないものにする。
【0003】
公知の紫外線(UV)遊離基硬化技術は、例えば、硬化コーティングの酸素阻害、可撓性不足、および接着性不足等の点で不適切である。公知技術の欠点としては、硬化処理および硬化率が不十分または厳格であったり、基材のスループット率が悪いことが挙げられる。さらに、公知の技術では、多次元曲面または多次元形状の物品を適切にコーティングできない。公知の方法でも、暗領域または露光が制限された領域を有する物体を適切にコーティングすることができない。
【0004】
公知のジェットプリンティング技術では、100ワット/インチ(W/in)の水銀発熱硬化光源または他の高輝度水銀発熱硬化光源を利用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コーティング技術を向上させるものであり、光硬化、暗硬化(dark cure)、および二重硬化技術を含む。本発明は、平面形状、曲面形状、多次元(3次元(3D))形状、および複雑な形状を含むがこれらに限定されないあらゆる表面形状のコーティングを可能にする。本発明は、光が遮られた部分、露光されていない暗領域、および硬化処理に用いる光源と直交する面よりも低輝度の光に露光される部分を有する表面のコーティングおよびコーティングの硬化を可能にする。本発明はまた、共有および非共有結合を形成することにより、コーティング組成物と基材または表面とを結合させる技術も含む。本発明はまた、感熱基材および感熱成分を有する物品のコーティングおよび硬化を含む。1つ以上のコーティングを単純な形状をした物品および複雑な形状をした物品に塗布することができる。本発明では、皺仕上げ、標準的なマット仕上げ、高光沢仕上げ、および/または他の所望の表面仕上げを含むがこれらに限定されない幅広い仕上げを作製することができる。本発明は、1つの以上のカチオンコーティングまたはインクを有するコーティングを含む。コーティングは、基材上に印刷またはコーティングすることができる。コーティングする基材は、酸性であっても酸を含むものであってもよい。コーティングの硬化および基材に対するコーティングの接着は、幅広い印刷速度で行なうことができる。本発明はまた、インクジェット印刷技術におけるそのような技術も向上させる。本発明は、装置系、プロセス、方法、制御系、品質管理技術、ならびに本明細書に記載のコーティングおよびインクの塗布および硬化に関連する製品を含む。
【0006】
本明細書では、範囲の端点は、それらが意味する範囲内に、本発明に関連するそれぞれの端点と僅かに異なる値を含むがそれらに限定されない当業者の知識の範囲内における他の値を含めることを認めている(換言すれば、本明細書中に示す範囲の端点は、それぞれの端点各々について、「約」または「近く」または「概ね」と表現される値を含めるものと解釈される)。本明細書中に示す範囲および割合の限界は組み合わせ可能である。例えば、特定のパラメータについて10〜2000および50〜1500の範囲が示される場合、10〜50、10〜1500、50〜2000、または1500〜2000という範囲も企図されることは言うまでもない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの実施形態は、100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光によって少なくとも一部がカチオン硬化するコーティングに結合した基材を有する組成物である。
【0008】
本発明は、広範囲の光波長の値および広範囲の光輝度の値を有する光を利用することができる。1つの実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長(「光波長」、「波長」とも言う)および約0.0003W/cm2/nm〜約0.05W/cm2/nmの光輝度(「光輝度」、「輝度」とも言う)を有する光を利用する。他の実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.02W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。さらに他の実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.01W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。またさらなる実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.008W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。
【0009】
本発明で利用可能な光源が発光する波長の範囲(例えば、分光幅、または帯域幅)は大きく変化してもよい。光源による発光のスペクトルピークの数は、1つのピークから多数のピークまで変化させることができる。後述の表1では、本発明で使用可能な光の波長範囲および値について非限定的な選択範囲を示している。各光の範囲および値は、光源が生じたピーク周辺に存在し得る波長範囲を含む所与の値の上下の値の範囲を含むものであると解釈されたい。
【0010】
さらに、光輝度は、例えば、最大で約5.0W/cm2/nmまでの値を有するようにしてもよい。従って、約0.005W/cm2/nm、0.0075W/cm2/nm、0.009W/cm2/nm、0.01W/cm2/nm、0.015W/cm2/nm、0.02W/cm2/nm、0.025W/cm2/nm、0.03W/cm2/nm、0.035W/cm2/nm、0.04W/cm2/nm、0.045以上の光輝度値を、これらの値の上下および中間の値とともに用いてもよい。約0.05W/cm2/nm、約0.075W/cm2/nm、約1.0W/cm2/nm、約3.0W/cm2/nm、約4.0W/cm2/nm、約5.0W/cm2/nm、約1.0W/cm2/nm、またはこれらよりさらに高い光輝度値を用いてもよい。これら輝度の具体例は限定を目的とするものではない。
【0011】
本発明とともに幅広い波長および輝度の組み合わせを用いることができる。従って、本明細書中に示すような波長および輝度の値の組み合わせは限定されない。
【0012】
上記コーティングの全て、一部分、または複数部分を、露光を必要としない、露光しない、または露光から独立した化学反応によって少なくとも部分的に硬化することができる。基材分子とコーティング分子間に共有結合を形成してもよい。基材分子とコーティング分子間に非共有結合を形成してもよい。いくつかの実施形態では、基材とコーティング組成物間に共有結合および非共有結合の両方を発生させることができる。
【0013】
カチオンコーティング組成物の硬化処理により、カチオン重合の産生物である高分子を生じることが可能である。本明細書では、可撓性の値は、工学歪みの%を単位とする(可撓性に関して論じる場合、%工学歪みは「%」である)。本発明によるコーティングおよび硬化処理により、コーティングにクラックを生じない工学歪み1%〜500%の範囲の可撓性を有する硬化コーティングを生じることが可能である。最大で工学歪み1000%までのより大きな可撓性を実現することができる。さらに高い可撓性も実現可能である。他の実施形態では、それぞれ、実質的にコーティングにクラックを生じない工学歪み50%、100%、200%、300%、または400%とすることができる。これらの値の上下または中間の値を実現することができる。
【0014】
本発明のコーティング組成物、硬化コーティングおよび物品は、1つ以上のコーティングを有しているか、色素、色を含んだり、クリアコートであってもよい。
【0015】
本発明の範囲には多種多様なコーティングおよび硬化プロセスが含まれる。1つの実施形態では、基材をコーティングするための進歩的なプロセスは、カチオンコーティング組成物を準備する工程と、基材を準備する工程と、100nm〜1200nm(ナノメートル)の範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nm(ワット/平方センチメートル/ナノメートル)の範囲の輝度を有する光を準備する工程と、上記基材のコーティング部を形成する少なくとも一部に上記カチオンコーティング組成物を一定量塗布する工程と、前記一定量のカチオンコーティング組成物の少なくとも第1の部分を上記光で露光することにより硬化する工程を含む。1つの実施形態では、上記プロセスは、コーティング組成物の少なくとも一部を上記光による露光を必要としない反応により硬化するさらなる工程を含む。他の実施形態では、露光なしのコーティングの乾燥が利用される。
【0016】
コーティングは、各種の硬化処理率および硬化処理速度を用いて硬化することができる。実施例15に示すように、本発明では、約100ミクロン以下(ここでも同様)の厚さに対応する量のコーティングを約1分以下の時間で硬化することができる。他の実施形態では、50ミクロン以下の量のコーティング組成物の硬化を5分以下の時間で実現することができる。他の実施形態では、約100ミクロン以下の厚さのコーティングを5分以下の時間で硬化する。さらに他の実施形態では、50ミクロン以下の厚さのコーティングを2.5分以下の時間で硬化する。
【0017】
本発明は、一定量のカチオンコーティング組成物の一部分を硬化する工程を、少なくとも部分的には、他の部分の露光とは異なる輝度の光で露光することによって実現するコーティングおよび硬化プロセスを含む。同一の物体、またはコーティングの同一表面もしくは層上で異なる硬化方法が実施されるコーティング部分の数は限定されない。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記プロセスは、コーティング組成物の分子と基材の分子間に共有結合を形成する工程を含む。他の実施形態では、上記プロセスは、コーティング組成物の分子と基材の分子間に非共有結合を形成する工程を含む。さらに他の実施形態では、上記プロセスは、基材分子とコーティング分子間に共有結合および非共有結合の両方を形成する。
【0019】
添加剤、光開始剤、および光増感剤を本発明のコーティング、インク、およびプロセスに利用することができる。1つの実施形態では、少なくとも1つの光増感剤をコーティング組成物に添加し、本明細書中に示すように露光することにより活性化してもよい。他の実施形態では、少なくとも1つの光開始剤をコーティング組成物に添加して、本明細書中に示すように露光することにより活性化してもよい。
【0020】
本発明は、二重硬化プロセスを含む。1つの実施形態では、上記プロセスは、露光しない硬化工程の前、最中、または後に、カチオンコーティング組成物の少なくとも一部を反応させる工程を含む。
【0021】
本発明はまた、コーティングを塗布する酸性基材の使用、およびコーティングプロセス中(コーティングの塗布前または当該塗布と同時)に塗布した酸とともに非酸性基材を利用すること含む。1つの実施形態では、上記コーティング法は、基材の酸性官能基で反応を行う工程を含む。上記コーティング法はまた、塗布工程の前は酸性である第1の表面部、および塗布工程の前は酸性ではない第2の表面部を含む基材を利用することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも一部分に1つ以上の酸性基材または酸が用いられるが、少なくとも他の一部分は酸性ではなく、かつ/または酸を塗布されない。基材表面に酸を塗布してもよい。1つの実施形態では、上記プロセスは、一定量の第1のカチオンコーティング組成物を塗布する前に一定量の酸を第1の表面部に塗布し、一定量の第2のカチオンコーティング組成物を、上記酸を有さない第2の表面部および/または酸性でない第2の部分に塗布する工程を含む。さらに他の実施形態では、酸をカチオンコーティングの塗布と同時に、当該塗布から時間をあまり空けずに、またはその後に塗布してもよい。
【0022】
本発明は、複数のコーティング組成物の使用、積層物の形成、および複数のコーティング層の生成を広く含む。1つの実施形態では、第1のコーティング組成物は第2のコーティング組成物と異なる。他の実施形態では、第1のコーティング組成物は第2のコーティング組成物と同じである。本発明のプロセス、方法、および装置で利用可能なコーティングまたは層の組み合わせは大幅に変更することが可能である。
【0023】
本発明はまた、差別硬化(differential cure)のためのプロセス、方法、および装置、ならびに差別硬化技術により製造された物品および製品を含む。1つの実施形態では、上記硬化プロセスは、一定量のカチオンコーティング組成物の少なくとも一部に差別硬化を行う工程を含む。
【0024】
本発明は、塗工物品における各種の仕上げを可能にする。本発明により得られ、幅広い仕上げを可能にするプロセス、方法、装置、および製品を含む。1つの実施形態では、上記硬化法は、皺加工コーティングを生成する工程を含む。
【0025】
本発明は、本明細書中に開示されるプロセス、方法、および装置によってコーティング可能な製品を幅広く含む。1つの実施形態では、本発明は、少なくとも一部が100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの輝度を有する光によってカチオン硬化したコーティングを備えた基材を有するコーティング物品を含む。これらの製品の他の非限定的な例としては、以下のうち1つ以上が挙げられるがこれらに限定されない:印刷グラフィック、屋外耐久性を有する印刷グラフィック、印刷ラベル、印刷ステッカー、および印刷文書。本発明には、表面に印刷を施した物品、ならびにコーティングまたは印刷を施した1つ以上の多次元、三次元、および/または成形表面を有する物品が広く含まれる。
【0026】
また、少なくとも一部が差別硬化によって硬化した物品を生成することができる。さらに、物品は、少なくとも一部が二重硬化によって硬化してもよい。本発明は、1つの硬化法により生成された物品、ならびに複数種の硬化および硬化法を含む発明によって生成された物品を含む。
【0027】
本発明は、生成プロセス、方法、および物品だけでなく、本発明を利用する装置、コンピュータ技術、制御系、および品質管理系も含む。本発明を用いる装置は、性質、種類、および設計が多岐にわたり、幅広い材料への印刷、コーティングおよび化学製品の塗布、ならびに製造する印刷物および物品の硬化が可能である。
【0028】
本発明は、一定量のコーティング組成物を基材に塗布するように構成された塗布器、100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、上記コーティング組成物の少なくとも一部を上記光に露光するように配置された第1の光源を有するあらゆる装置を広く含む。
【0029】
1つの実施形態では、本発明は、インクジェットプリンタを含む装置であって、一定量のコーティング組成物を基材に塗布するように構成された塗布器、および100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、上記コーティング組成物の少なくとも一部を上記光に露光するように配置された第1の光源を有する装置を含む。
【0030】
上記インクジェットプリンタは、各々が100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、一列に配置された多数の光源を有してもよい。1つの実施形態では、インクジェットプリンタは第1および第2の光源を有し、第1の光源が印刷カートリッジの第1の側に設けられ、第2の光源が当該印刷カートリッジの第2の側に設けられてもよい。1つの実施形態では、インクジェットプリンタは、一定量のコーティングが塗布される基材の移動方向と直交して配置される光源を有する。
【0031】
1つの実施形態では、上記インクジェットプリンタは塗布器を有し、ドロップオンデマンド印刷用に設計され、2〜100キロヘルツ(「kHz」)の範囲の発光周波数および約4m/s〜約50m/s(「メートル/秒」)の範囲の液滴速度で、約3〜約50ピコリットルの範囲の液滴量を塗布するように構成される。いくつかの実施形態では、上記塗布器はインクジェット印字ヘッドである。インクジェット印刷には、1、5、10、20、75、および100ピコリットルを含むがこれらに限定されないより小さな液滴量およびより大きな液滴量を用いてもよい。
【0032】
インクジェットプリンタは、本発明に含まれる各種の方式で印刷可能である。インクジェットプリンタは、ドロップオンデマンド方式であってもよい。他の実施形態では、上記インクジェットプリンタは、コーティング組成物を連続的に塗布してもよい。さらに他の実施形態では、上記インクジェットプリンタは、コーティング組成物を半連続的に塗布してもよい。インクジェットプリンタは、これらの塗布方法のいずれか1つ以上を利用することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記インクジェットプリンタは、コンピュータ制御系を有し、かつ/またはそれによって動作してもよい。上記インクジェットプリンタはまた、フィードバック機構および制御機構を有してもよい。フィードバック機構は、ノズルの状態に関する光フィードバック、画質に関する光フィードバックのうち1つ以上を含むようにすることができるがこれに限定されない。
【0034】
本発明はまた、幅広い印刷および媒体を取り扱う機能を含む。上記装置は、ロールトゥーロール方式での媒体の取り扱い、および/またはフラットベッド印刷に対応したインクジェットプリンタであってもよい。上記印刷は、剛性媒体または非剛性媒体上で実現することができる。上記プリンタは、広範かつ多様なサイズの媒体に印刷可能である。1つの実施形態では、インクジェットプリンタは、3000ft2/時間の速度で10フィート幅の媒体を印刷するように構成される。本発明には、極小サイズおよび極大サイズの物品および媒体が含まれる。
【0035】
1つの実施形態では、上記インクジェットプリンタは、自動ヘッドレジストレーションに対応する。上記インクジェットプリンタはまた、プリントトゥールート動作(print−to−route operation)に対応させてもよい。上記インクジェットプリンタは、プリントトゥーカット動作(print−to−cut operation)に対応させてもよい。
【0036】
フィードバック制御およびコンピュータ制御系は、本発明のコーティング、印刷、硬化、または材料取り扱いプロセスのいずれの時点においても利用可能である。
【0037】
1つの実施形態には、ランプ波長のフィードバック機構および制御機構を有するインクジェットプリンタが含まれる。他の実施形態には、ランプ輝度のフィードバック機構および制御機構を有するインクジェットプリンタが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明では、光硬化、暗硬化、二重硬化、差別硬化、および本明細書に開示する硬化法の組み合わせに関連するがそれらに限定されない硬化技術を含むがこれらに限定されない各種の硬化プロセスを実現することができる。本発明は、非常に遅い速度、例えば、ほぼ0ft2/hr(「平方フィート/時間」)から約6400ft2/hr以上までの範囲の1つ以上の印刷速度を含むがこれに限定されない利点を有する。本発明は、カチオンコーティング組成物および低輝度光を用いて低エネルギー硬化、エネルギー効率が良い硬化を実現することができる。本発明は、発熱性が低く、硬化処理時の面外変形、変色、または好ましくない温度依存変化に繋がる熱膨張係数を有する感熱基材を含むがこれらに限定されない感熱基材とともに利用可能である。利用する装置は、例えば、500時間を超える長い光源寿命を有する光源を用いることができる。
【0039】
本開示では下記の定義を用いる。
【0040】
本明細書で用いる「圧力」とは、プロセスおよび機器を構成する各種容器、管、および管路内の単位面積ごとに作用する力を指す。本明細書における圧力は、ポンド/平方インチ(「psig」)で表される。特に断りがない限り、本明細書において圧力に言及する場合は全てポンド/平方インチの尺度単位(psig)を用いる。特に断りがない限り、本明細書で周囲圧力に言及する場合もpsigを用いる。
【0041】
本明細書で用いる「温度」は、特に断りがない限り、摂氏温度である(「℃」、または「C」)。
【0042】
「コーティング」は、表面、基材、他の材料、または組成物に塗布され、かつ/またはその上に広げられるあらゆる量の物質またはあらゆる物質の層を含む。
【0043】
コーティングは、液体、固体、半固体、非晶質、液晶質、可塑性、重合体、塩、多相、連続相、不連続相、コロイド、陽極酸化、蒸着、およびガス蒸着を含むがこれらに限定されないあらゆる相のものとすることができる。
【0044】
「融合」(同様に、「融合している」または「融合した」)は、コーティングが最終状態(例えば、変化低減状態、低エネルギー状態、反応が実質的に完了した状態、乾燥プロセスが実質的に完了した状態)に近づき、その状態に達したときに当該コーティングが直面する遷移を含む用語である。まず、コーティングは、基材に塗布可能であり、物理組成および化学組成を有する。水分散および/または非水分散の実施形態では、コーティングを噴霧化すると、基材上で液滴となる。これらの液滴は、流動がほとんどないかまたは全くない場合、部分的に融合を維持することができる。流動状態または流動がない状態(流動が遅いまたは流動がほとんどない場合も含む)に影響する因子は、粘性、表面張力に応じた基材の湿潤または乾燥度、溶剤の蒸発による乾燥、および/または電荷消失を防ぐ静電塗装プロセスでの静電反発力を含むがこれらに限定されない。「融合」は、塗布したコーティングの流動および水平度が初期の物理構造および化学的性質から静止した最終的なまたは平衡化した物理的および化学的性質に遷移することを含む。
【0045】
図1は、一表面上の複数のカチオンコーティングを硬化するプロセスを含む本発明の一実施形態を示すプロセスフロー図である。1つのカチオンコーティングを基材に塗布してもよい。「基材」は、一定量のカチオンコーティングを塗布可能なあらゆる表面を含む。上記基材は、酸性であっても酸性でなくてもよい。上記表面に酸を添加するさらなる工程を含むか、または上記プロセスを上記表面に酸を添加せずに実行してもよい。一定量のカチオンコーティングで塗工した基材は、少なくとも部分的に、100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光に露光してもよい。そのような光に対する露光により、上記コーティングの全てまたは一部の硬化処理を実現することができる。
【0046】
上記のとおり、本発明は、光を用いてカチオンコーティングを硬化することができる。「光」は、コーティング、コーティング系、ならびにそれらの成分および構成要素と相互作用可能なあらゆる種類の電磁エネルギーを含む。「光」の定義には、物質と相互作用した際に特定可能または測定可能な変化を生じる光である「化学光」が含まれる。「光」または「放射」は、粒子線加速粒子(すなわち、電子線)等の形態の光化学的活性放射、および電磁放射(すなわち、UV放射、可視光、UV光、X線、ガンマ線)を含む。「光輝度」は、光源によって放出されるワット(W)またはミリワット(mW)の単位で表されるエネルギーに関連する測定可能な特徴である。1つの実施形態では、光は、約100nm〜約1200nmの範囲の波長および約0.0003w/cm2/nm〜0.05w/cm2/nmの範囲の輝度を有する。
【0047】
広範囲の光および光源を利用することができる。約100nm〜約1200nmの範囲の波長および約0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を用いてもよい。
【0048】
本発明では、広範囲の光波長および広範囲の光輝度の値を有する光を利用することができる。上述のとおり、1つの実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003w/cm2/nm〜約0.05W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。他の実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.02W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。さらに他の実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.01W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。またさらなる実施形態では、約100nm〜約1200nmの範囲の光波長および約0.0003W/cm2/nm〜約0.008W/cm2/nmの光輝度を有する光を利用する。
【0049】
本発明で利用可能な光源が発光する波長の範囲(すなわち、分光幅、または帯域幅)は大きく変化してもよい。光源による発光のスペクトルピークの数は、1から多数まで変化させることができる。
【0050】
本発明で使用可能な光源は、電球、蛍光光源、LED、自然光、増幅光、電磁放射、ランプ、ガス灯を含むがこれらに限定されない。ガス灯の非限定的な例としては、UV Systems社のTripleBright IIランプ(それぞれが端部に位置する一対の電極を用いた放電灯の一種であり、少量の水銀とともに密閉されている)、およびガラス管内に不活性ガスを入れたランプが挙げられる。光は、1つの光源および/または位置、多数の光源および/または位置、または一列の光源から発生させてもよい。1種類以上の光、光源、位置、構成、方向、輝度、および波長を組み合わせて同時にまたは連続して使用してもよく、使用の組み合わせまたはタイミングに制限はない。
【0051】
光源のスペクトル出力は、以下の非限定的因子のうち1つ以上に応じるようにすることができる:1つ以上の気体分子の原子構造、1つまたは複数の気体の温度、光源内のガス蒸気圧。いくつかの実施形態では、ガラス管内に配置された蛍光物質(任意で用いられる)の出力が光源の出力に影響するようにしてもよい。
【0052】
非限定的な例では、254nmの電球が、253.7nmにピークを有するようにしてもよい。この例では、254nmの電球は蛍光物質を用いておらず、その出力は、主として、水銀原子の吸収線に起因する。このため、極端に帯域幅が狭く、主要なランプピーク周辺から10nm程度の波長範囲を有する輝線をいくつか生じることができる。そのような光源が生じるピーク周辺の波長範囲は、光源の物理的特性による。よって、波長の全ての値は、それぞれの光源について示される値の上下の範囲を含むものと解釈されたい。
【0053】
他の非限定的な例では、蛍光物質を有さない306nmの電球が、312nmにピークを有するようにしてもよい。他の非限定的な例では、ガラス球の内側に蛍光物質を有する352nmの電球、およびガラス球の内側に蛍光物質を有する368nmの電球が、主要なランプピーク周辺から30〜100nm程度の波長範囲を有する光を発光するようにしてもよい。
【0054】
カチオン硬化処理に使用可能な光源は、それぞれ、以下のピーク(395/400nm、385nm、および365nm、および270nm)を含むがこれらに限定されない波長を有するようしてもよい。これらの光源は、主要なランプピーク周辺から約10〜80nmの波長範囲を有する光を発光することができる。表1は、本発明で使用可能な光の波長範囲および波長値の非限定的な選択範囲を示す。
【表1】
【0055】
表1に示す波長の値および範囲は一例であり、これらの値の上下および中間の値を用いてもよい。
【0056】
さらに、光輝度は、例えば、最大で約5.0W/cm2/nmまでの値を有してもよい。従って、約0.005W/cm2/nm、0.0075W/cm2/nm、0.009W/cm2/nm、0.01W/cm2/nm、0.015W/cm2/nm、0.02W/cm2/nm、0.025W/cm2/nm、0.03W/cm2/nm、0.035W/cm2/nm、0.04W/cm2/nm、0.045以上の光輝度値を、これらの値の上下および中間の値とともに用いることができる。約0.05W/cm2/nm、約0.075W/cm2/nm、約1.0W/cm2/nm、約3.0W/cm2/nm、約4.0W/cm2/nm、約5.0W/cm2/nm、約10.0W/cm2/nm、またはそれ以上光輝度値を用いてもよい。
【0057】
波長および輝度の幅広い組み合わせを本発明とともに利用することができる。従って、本明細書に記載するような波長および輝度の値の組み合わせは限定されない。
【0058】
「蛍光」という用語は、それによって材料(典型的には、蛍光物質)の原子が光子を吸収し、直ちにより長い波長の光子を発光する物理現象を含む。
【0059】
「蛍光灯」という用語は、低圧力水銀蒸気を介した放電を利用して紫外線(UV)エネルギーを発生するあらゆるランプを含む。蛍光灯の1つの非限定的実施形態では、UVエネルギーが、ランプを構成するガラス管内に薄層として塗布された蛍光物質材料を励起する。それらの蛍光物質は、UVエネルギーの短い波長エネルギーを長い波長エネルギーに変換する。
【0060】
「小型蛍光灯」(CFL)という用語は、片口で、曲げることにより小型化する直径が短い管を有するあらゆる蛍光灯を含む。いくつかの非限定的実施形態では、いくつかのCFLは、白熱灯の交換を容易にするために、一体型安定器および中型または細型ねじ込み口金を有する。
【0061】
「電球」という用語は、あらゆる電球、ならびに本明細書に記載の発明の範囲内にあるランプおよびあらゆる光源を含むように広く解釈されたい。広義には、「電球」は、光を発光するあらゆる光源を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、光は、「発光ダイオード」(LED)によって発光される。LEDは、電気エネルギーを直接光に変換する本発明で使用可能なあらゆる半導体材料を広く含む。
【0063】
1つの実施形態では、本発明は、カチオンコーティング、および100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を含む硬化プロセスを提供する。この実施形態では、上記光は、7.0以下のpHを有する酸性基材上または酸を含む基材上のカチオンコーティング組成物を硬化することができる。酸性基材は、pHが7.0以下の材料および/または硬化および基材に接着する(または基材と反応する)活性時のpHが7.0以下の光解離性材料もしくは処理によって変化しやすい材料を含んでもよい。利用するコーティング組成物はカチオンとすることができる。幅広い光硬化材料を用いることができる。カチオンコーティング組成物は、コーティング、インク、粉体、溶液、接着剤、乳剤、分散剤、ゾルゲル、スラリー、ならびに他の混合物および組成物を含むがこれらに限定されない。
【0064】
カチオン重合によって重合可能であり、本発明に係るハードニング可能な組成物に適した有機材料の例としては、それ自体でまたは少なくとも2つの成分の混合物として使用可能な以下のタイプのものが挙げられる:
【0065】
カチオン機構によって重合可能なエチレン系不飽和化合物。これらは、モノオレフィンおよびジオレフィン(例えば、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、およびアクロレイン)を含むがこれらに限定されない;
【0066】
ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、およびエチレングリコールジビニルエーテルを含むがこれらに限定されない);および環状ビニルエーテル(例えば、3,4−ジヒドロ−2−ホルミル−2H−ピラン(アクロレイン二量体)および2−ヒドロキシメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸エステル);
【0067】
ビニルエステル(非限定的な例として酢酸ビニルおよびステアリン酸ビニルを含むがこれらに限定されない)。
【0068】
カチオン重合によって重合可能な複素環化合物(例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、エピクロルヒドリン、一価アルコールまたはフェノールのグリシジルエーテル(例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、n−オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、およびクレシルグリシジルエーテル)、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酸化スチレン、および酸化シクロヘキセン)、オキセタン(3,3−ジメチルオキセタン、および3,3−ジ(クロロメチル)オキセタン等)、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、トリオキサンおよび1,3,6−トリオキサシクロオクタン、スピロオルトカーボネート、ラクトン(ベータ−プロピオラクトン、ガンマ−バレロラクトン、およびε−カプロラクトン)、ティラン(thiranes)(エチレンスルフィド、およびポリプレンスルフィド等)、アゼチジン(N−アシルアゼチジン(例えば、N−ベンゾイルアゼチジン)等、ならびにアゼチジンとジイソシアネート(例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、およびトルエン−2,6−ジイソシアネート)、および4,4’−ジアミノジフェニルメタンジイソシアネートの付加物)、エポキシ樹脂、ならびに側鎖にグリシジル基を有する直鎖および分岐重合体(例えば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸グリシジルエステルのホモ重合体および共重合体)。
【0069】
本発明では、架橋エポキシ樹脂を調製するために用いられるタイプのエポキシ樹脂、ジエポキシド、ポリエポキシド、およびエポキシ樹脂初期重合体を含むがこれらに限定されない重合可能な化合物が利用可能である。
【0070】
本発明のプロセスによって硬化または重合可能なエポキシ化合物は、カチオン重合することが公知の化合物、ならびに1,2−、1,3−、および1,4−環状エーテル(1,2−、1,3−、および1,4−エポキシドとも示される)を含む。使用可能な環状エーテルは、酸化シクロヘキセン等のシクロ脂肪族エポキシ(cycloaliphatic epoxies)、およびDow Chemical Co.(Midland,Mich.)から「ERL」という商品名で市販される一連の樹脂(酸化ビニルシクロヘキセン、二酸化ビニルシクロヘキセン(商品名「ERL4206」)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキセンカルボキシレート(商品名「ERL4201」)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル(商品名「ERL0400」)、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロへキサンカルボキシレート(商品名「ERL4221」)、ビス−(3,4−エポキシシクロへキシル)アジペート(商品名「ERL4289」)、ポリプロピレングリコールから変性された脂肪族エポキシ(商品名「ERL4050」および「ERL4052」)、二酸化ジペンテン(商品名「ERL4269」)、および2−(3,4−エポキシシクロ−ヘキシル−5,5−スピロ−3,−4−エポキシ)シクロヘキセン−メタ−ジオキサン(商品名「ERL4234」))を含み、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(酸化プロピレン、エピクロルヒドリン、酸化スチレン、グリシドール、Shell Chemical Co.(Houston,Tex.)から「EPON」という商品名で市販される一連のエポキシ樹脂(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(diglycidyl either)、およびこの材料の鎖延長型(「EPON828」、「EPON1001」、「EPON1004」、「EPON1007」、「EPON1009」および「EPON2002」という商品名を有するもの、または他の製造業者が市販するそれらの等価物等)を含む)、二酸化ジシクロペンタジエン、エポキシ化植物油(Elf Atochem North America,Inc.(Philadelphia,Pa.)から「VIKOLOX」および「VIKOFLEX」という商品名で市販されるエポキシ化亜麻仁油および大豆油)、「KRATON」という商品名を有するエポキシ化液体ポリマー(Shell Chemical Co.から市販される「L−207」等)、エポキシ化ポリブタジエン(Elf Atochemの「POLY BD」という商品名を有するもの等)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、フェノールホルムアルデヒドのポリグリシジルエーテル、エポキシ化フェノールノボラック樹脂(Dow Chemical Co.から「DEN431」および「DEN438」という商品名で市販されるもの等)、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂(Vantico,Inc.(Brewster,N.Y.)から「ARALDITE ECN1299」という商品名で市販されるもの等)、レゾルシノールジグリシジルエーテル、エポキシ化ポリスチレン/ポリブタジエンのブレンド(「EPOFRIEND」という商品名で市販されるもの等(例えば、Daicel USA Inc.(Fort Lee,NJ.)の「EPOFRIEND A1010」))、Shell Chemical Co.(Houston,Tex.)から「HELOXY」という商品名で市販される一連のアルキルグリシジルエーテル(アルキルC8−C10グリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER7」)、アルキルC12−C14グリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER8」)、ブチルグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER61」)、クレシルグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER62」)、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル(商品名HELOXY MODIFIER 65」)、多官能グリシジルエーテル(1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル(商品名HELOXYMODIFIER67」)、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER68」)、シクロへキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER107」)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER44」)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER48」)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(商品名「HELOXY MODIFIER84」)、ポリグリコールジエポキシド(商品名「HELOXY MODIFIER32」)、およびビスフェノールFエポキシド)も含む。
【0071】
エポキシ樹脂は、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロへキサンカルボキシラート、ビス−(3,4−エポキシシクロへキシル)アジペート、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3−,4−エポキシ)シクロヘキセン−メタ−ジオキサンを含む「ERL」タイプの樹脂、ならびに2,2−ビス−(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニルプロパン)、およびこの材料の鎖延長型を含むビスフェノールA「EPON」タイプの樹脂を含んでもよい。複数のエポキシ樹脂を調製したものを使用することも本発明の範囲内である。
【0072】
エポキシ官能材料が、エポキシ官能シラン、ならびに二官能および多官能エポキシ末端シリコーン(Gelest Incorporated(Morrisville,PA)から市販される)を含んでもよい。例としては、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチル、トリエトキシシラン、およびビス[2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチル]−テトラメチルジシロキサンが挙げられるがこれらに限定されない。本発明では、エポキシプロポキシプロピル末端−、エポキシシクロへキシルエチル末端−、エポキシプロポキシプロピル末端−、およびエポキシプロポキシプロピル)ジメトキシシリル末端−ポリジメチルシロキサン、およびGelest Incorporatedから市販されるものも用いることができる。
【0073】
1つ以上のエポキシ樹脂を調製したものを用いることも本発明の範囲内である。異なるタイプの樹脂を任意の割合で存在させることができる。
【0074】
ヒドロキシル含有材料に、室温でのカチオン硬化に実質的に干渉しない他の官能基を任意で含有させてもよい。ヒドロキシル含有材料は、非芳香族性であるか、または芳香族的官能基を有してもよい。ヒドロキシル含有材料は、最終的なヒドロキシル含有材料が室温でのカチオン硬化に実質的に干渉しないという条件で、窒素、酸素、硫黄等の分子の骨格にヘテロ原子を任意で含有させてもよい。ヒドロキシル含有材料は、例えば、天然由来または合成によって調製したセルロース系材料から選択することができる。
【0075】
本発明の硬化性組成物に一価および多価アルコールをエポキシ樹脂の鎖延長剤として任意で加えることができる。本発明で用いるヒドロキシル含有材料は、ヒドロキシル官能基度が少なくとも1である任意の有機材料、またはヒドロキシル官能基度が少なくとも2である任意の有機材料とすることができる。
【0076】
ヒドロキシル含有材料は、2つ以上の第1または第2脂肪族ヒドロキシル基(すなわち、このヒドロキシル基は、非芳香族炭素原子と直接結合している)を含有してもよい。ヒドロキシル基は末端に位置するか、あるいは重合体または共重合体から懸垂されていてもよい。ヒドロキシル含有有機材料の分子量は、非常に低い値(例えば、32)から非常に高い値(例えば、100万以上)までとしてもよい。適切なヒドロキシル含有材料は、低分子量(すなわち、約32〜200)、中分子量(すなわち、約200〜10,000)、または高分子量(すなわち、約10,000超)を有するようにすることができる。本明細書で用いるように、全ての分子量は重量平均分子量である。
【0077】
重合可能なビニル基およびヒドロキシメチル官能基を含むカチオン重合可能な二官能性単量体は、N−メチロールアクリルアミドとすることができる。容易に重合可能なビニル基と複合化するカチオン重合可能な二官能性単量体は、例えば、イソブトキシメチルアクリルアミドとすることができる。重合可能なビニル基からなるカチオン重合可能な二官能性単量体は、例えば、N−ブトキシメチルアクリルアミド部分とすることができる。これらのアクリルアミド材料は、非織布の濡れ特性および乾燥特性を改善することができ;コーティングに関しては、耐引っ掻き性および耐傷性を向上することができ、かつ優れた耐水性および耐溶剤性を与えることができる。それらの使用により、接着剤の耐水性および耐溶剤性を改善することができる。他の用途としては、ラテックス接着剤、ペーパーコーティング、ラテックス、織物、非織布、缶コーティング、UV硬化系、フォトレジスト、およびラテックス溶液コーティング樹脂が挙げられる。
【0078】
本発明の重合可能な組成物には、あらゆるカチオン反応性ビニルエーテルを用いることができる。使用可能なビニルエーテルの例としては、International Specialty Products(Wayne,NJ.)から「RAPI−CURE DVE−3」という商品名で市販されるトリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ブタンジオールビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、International Specialty Productsから「RAPI−CURE CHVE」という商品名で市販される1,4−シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールモノビニルエーテル、4−(1−プロペニルオキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、2−クロロエチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−、イソ−、およびt−ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ヘキサンジオールジ−およびモノ−ビニルエーテル、BASF Corp.(Mount Olive,NJ.)から「TMPTVE」という商品名で市販されるトリメチロールプロパントリビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)ジビニルエーテル、BASF Corp.から「PLURIOL E200」という商品名で市販されるジビニルエーテル樹脂、エチレングリコールブチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、およびMorflex Inc.(Greensboro,N.C.)から「VECTOMER」という商品名で市販されるジビニルエーテル樹脂(例えば、ビニルエーテル末端芳香族ウレタンオリゴマー(商品名「VECTOMER 2010」および「VECTOMER 2015」)、ビニルエーテル末端脂肪族ウレタンオリゴマー(商品名「VECTOMER 2020」)、ヒドロキシブチルビニルエーテルイソフタレート(商品名「VECTOMER 4010」)、およびシクロへキサンジメタノールモノビニルエーテルグルタラート(商品名「VECTOMER 4020」))または他の製造業者からのそれらの等価物が挙げられる。複数のビニルエーテル樹脂のブレンドを用いることは本発明の範囲内である。
【0079】
1つ以上のビニルエーテル樹脂と調製した1つ以上のエポキシ樹脂を用いることも本発明の範囲内である。異なる種類の樹脂を任意の割合で存在させることができる。
【0080】
本発明とともに使用可能なカチオン化合物の他の非限定的な例としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド架橋単量体材料が挙げられる。代表的なカチオン単量体には、上記のN−メチロールアクリルアミド反応剤、ジメチルアミノエチルメタクリラート、t−ブチルアミノエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチル塩化アンモニウム、アリル−トリメチル−塩化アンモニウム、S−アリル−臭化チウロニウム、s−メサル(methul)(アリル−チウロニウム)メトスルフェート、ジアリル−ジブチル−塩化二アンモニウム、ジアリル−ジメチル−アンモニウムメトスルフェート、ジメタリル−ジエチル−リン酸アンモニウム、ジアリル−ジメチル−硝酸アンモニウム、S−アリル−(アリル−チウロニウム)ブロミド、N−メチル(4−ビニルピリジニウム)メトスルフェート、N−メチル(2−ビニルピリジニウム)メトスルフェート、アリル−ジメチル−β−メタクリルオキシエチル−アンモニウムメトスルフェート、β−メタクリルオキシメチル−トリメチル硝酸アンモニウム、β−メタクリルオキシエチル−トリメチルアンモニウム p−トルエン−スルホネート、デルタ−アクリルオキシブチル−トリブチルアンモニウムメトスルフェート、メタリル−ジメチル−O−ビニルフェニルアンモニウム−クロリド、オクチルジエチル−m−ビニルフェニル−リン酸アンモニウム、β−ヒドロキシエチル−ジプロピル−p−ビニルフェニル−臭化アンモニウム、ベンジル−ジメチル−2−メチル−5−ビニル−フェニル−リン酸アンモニウム、3−ヒドロキシプロピル−ジエチル−ビニルフェニル硫酸アンモニウム、オクタデシル−ジメチル−ビニルフェニル−アンモニウム p−トルエンスルホネート、アミル−ジメチル−3−メチル−5−ビニルフェニル−チオシアン酸アンモニウム、ビニルオキシエチル−トリエチル−塩化アンモニウム、N−ブチル−5−エチル−2−ヨウ化ビニルピリジニウム、N−プロピル−2−ビニル−キノリニウム硫酸メチル、N−ブチル−5−エチル−3−ヨウ化ビニルピリジニウム、N−プロピル−2−ビニル−キノリニウム硫酸メチル、アリル−γ−ミリスタミドプロピル−ジメチル−塩化アンモニウム、メタリル−γ−カプリルアミド−プロピル−メチル−エチル−臭化アンモニウム、アリル−γ−カプリルアミドプロピル−メチルベンジル−リン酸アンモニウム、エタリル−γ−ミリスタミドプロピル−メチル−α−ナフチルメチル−塩化アンモニウム、アリル−γ−パルミトアミドプロピル−エチル−ヘキシル硫酸アンモニウム、メタリル−γ−ラウラミドプロピルジアミル−リン酸アンモニウム、プロパリル(propallyl)−γ−ラウラミドプロピル−ジエチル−リン酸アンモニウム、メタリル−γ−カプリルアミド−プロピル−メチル−β−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム、アリル−γ−ステアラミド−プロピル−メチル−ジヒドロキシプロピル−リン酸アンモニウム、アリル−γ−ラウラミドプロピル−ベンジル−β−ヒドロキシエチル塩化アンモニウムおよびメタリル−γ−アビエタミドプロピル(abietamidopropyl)−ヘキシル−γ’−ヒドロキシプロピル−リン酸アンモニウム、ビニルジエチル−ヨウ化メチルスルホニウム、エチレン系不飽和窒素含有カチオンが含まれる。
【0081】
1つの実施形態では、コーティング組成物は、1つ以上の反応性希釈剤を含むようにすることができる。例えば、コーティング組成物は、以下の非限定的な例のうち1つ以上を含有してもよいがそれらに限定されない:無水物およびオキセタン材料(例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)−アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]−ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等のオキセタン環を有する化合物、2つ以上のオキセタン環を有する化合物、または3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチルエニル)プロパンジイルビス−(オキシメチレン))−ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン;1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン;エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル;ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル;トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル;テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)、エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水素化ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水素化ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の2つ以上のオキセタン環を有する化合物)。特に、コーティング組成物の粘性を低減するために、溶剤および希釈剤を用いてもよい。
【0082】
本発明では、光開始剤を利用してもよい。「光開始剤」(「光硬化」材料とも言う)は、特定の波長のエネルギーにさらされると、連鎖反応を開始して重合体を生成し得る反応性元素を生成する任意の薬剤を含む。ラジカル硬化反応のための光開始剤は、ベンゾイル基を含有してもよい。アリールスルホニウム(アリール「スルフォニウム」とも言う)塩は、ラジカル型およびカチオン活性中心の両方を生成することができる。
【0083】
使用可能な光開始剤は、ヨードニウム塩およびスルホニウム、塩ジアゾニウム塩(ハロゲン化オルガノとしても知られる)、およびチオキサントニウム(thioxanthonium)塩を含むがこれらに限定されない。
【0084】
本発明とともに任意の適切なヨードニウム塩を用いることができる。ヨードニウム塩は、ヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4(2−メチルプロピル)フェニル]−、ヘキサフルオロリン酸(1−)(例えば、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,New York)のIrgacure 250)を含むがこれらに限定されない。ヨードニウム塩(例えば、Irgacure 250)は、エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物、ならびにエポキシおよび/または脂環式エポキシまたはオキセタン基を有する化合物の硬化または重合を誘発可能な酸を生じる。
【0085】
有用な芳香族ヨードニウム錯塩光開始剤の例としては、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;フェニル−4−メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(4−ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(3−ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロヒ酸塩;ジ(4−フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;フェニル−2−チエニルヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;3,5−ジメチルピラゾリル−4−フェニルヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩;2,2’−ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩;ジ(2,4−ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(3−カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(3−メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(3−メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(4−アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;ジ(2−ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩;およびジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(DPISbF6)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
本発明とともに1つ以上のスホニウム(sufonium)塩を用いることができる。アリールスホニウム(Arylsufonium)塩は、混合アリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(例えば、Dow Chemicals(Midland,Michigan)によって製造されるCyracure UVI−6976)、およびアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩(例えば、Dow Chemicals(Midland,Michigan)によって製造されるUVI−6992)を含むがこれらに限定されない。
【0087】
使用可能な他の光開始剤は、Meerkat、Polecat、およびBobcat(Meerkat、Polecat、およびBobcatの各々はParsippany,New JerseyのSun Chemicalによって製造される)を含むがこれらに限定されない。基材酸度とプロセスパラメータ(すなわち、コーティング温度、基材温度、相対湿度パーセント、光開始剤種別およびレベル、光増感剤種別およびレベル、ならびに光子浸透度および光子エネルギーレベル)を組み合わせることにより、Meerkat、Polecat、およびBobcat等(これらに限定されない)の光開始剤を用いて光開裂の有毒副産物を低減することができる。
【0088】
本発明には、任意の適切なジアゾニウム塩を光開始剤および/または相乗剤として用いることができる。複合ハロゲン化物のアリールジアゾニウム塩は、有機ハロゲン化合物と組み合わせて相乗的に機能させることができる。複合ハロゲン化物のアミノアリールジアゾニウム塩では、当該アミノ基がアリール環上で置換基として存在することができ、化合物では、上記アミノ基が複素環の一部となる。これらのアリールジアゾニウム化合物は、エポキシド光重合のための光開始剤として用いた場合、硬化処理を促進するために、露光後に加熱する必要がある。光分解の結果として有機ハロゲンとの相乗効果を実現することができる。アミノ窒素の効果を無効にして、ジアゾニウム塩由来のルイス酸を放出する酸性物質(例えば、H+X−)を得ることができる。複合触媒、2−クロロ−4−(ジメチルアミノ)−5−メトキシベンゼンジアゾニウムとの相乗効果を得るようにしてもよい。
【0089】
本発明には、任意の適切なチオキサントニウム塩光開始剤を用いることができる。チオキサントニウム塩は、10−ビフェニル−4−イル−2−イソプロピル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−10−イウムヘキサフルオロリン酸塩(例えば、Parsippany,New JerseyのSun ChemicalのMeerkat)を含むがこれに限定されない。Sun Chemicalの他のチオキサントニウム塩光開始剤としては、PolecatおよびBobcatが挙げられる。PolecatおよびBobcatチオキサントニウム塩は、光開裂副産物の移動を低減する2つの連結チオキサントニウム官能性末端基を有する。そのような光開始剤を用いて、例えば、食品と接触する用途において光開裂の有毒副産物を低減することができる。
【0090】
本発明では、相乗剤または共触媒(例えば、ベンジル、アリルおよび/またはプロパルギルアセタールおよびエーテル基を有する第3級アミンまたは光重合可能なエポキシ単量体(これらに限定されない))を用いることができる。
【0091】
光開始剤および光増感剤の活性による副産物は臭気である場合がある。いくつかの実施形態では、本発明は、光開始剤の臭気を低減するか、あるいはほぼまたは完全に除去することができる。Speedcure CPTXとともにIrgacure 250を用いることでスルフォニウム光開始剤よりも臭気を少なくすることができる。米国および世界中の食品包装業界により定義および規定されるような食物と接触する物品は、それらの化学的性質、組成、および過渡的成分に基づいて、監視、管理、および/または制限される。Sun Chemicalより市販されるPolecat、Meercat、およびBobcat等のスルフォニウム塩カチオン光開始剤は、食物に接触する物品および用途に用いることができる。食物に接触することが企図される物品を本発明の産生物として製造してもよい。
【0092】
本発明には、光解離性酸を利用することができる。これらは、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ハロゲン化芳香族化合物、ハロゲン化トリアジン、ニトロベンジルエステル、トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、およびアリールナフトキノンジアジド−4−スルホネート(「スルフォネート」とも言う)のうちいずれか1つ以上を含むがこれらに限定されない。
【0093】
無臭の硬化処理を行うために、インクに光解離性酸を添加してもよい。適切な光解離性酸を、基材または基材に塗布したコーティング層に組み込むことができ、いくつかの実施形態では、UV光を用いて活性化することにより酸性材料を放出してもよい。
【0094】
無臭の硬化処理を行うために、インクに光解離性酸を添加してもよい。光解離性酸を、基材または基材に塗布したあらゆるコーティング層に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、UV光を用いて光解離性酸を活性化することにより酸性材料を放出してもよい。光解離性酸を第1の層として直接基材(と接触する層または部分)の上に塗布することができる。
【0095】
臭気を低減するために、ヨードニウム塩光開始剤をコーティングに添加したり選択してもよい。本明細書で用いるヨードニウム塩光開始剤(例えばIrgacure 250)は、スルフォニウム塩光開始剤の光開裂副産物よりも好ましい臭気を有する光開裂副産物を生じる。本発明では、チオキサントニウム光開始剤(例えば、Meerkat、Polecat、およびBobcat(それぞれ、Parsippany,New JerseyのSun Chemicalにより製造される)を用いても光開裂副産物の毒性を低減することができる(すなわち、臭気毒性の変異誘発性を調節する制限)。光解離性酸はまた、硬化に必要な光開始剤レベルのさらなる低減、および有毒光開裂副産物のさらなる低減にも用いることができる。所与のコーティング温度、基材温度、相対湿度パーセントにおいて、例えば、本明細書に記載する光開始剤種別およびレベル(例えば、1.0%以下)およびそれらの調製物、光増感剤種別およびレベル(0.5以下)、ならびに光子浸透度および光子エネルギーレベル)とともに本発明を用いることにより差別硬化のバランスを取ることができる。
【0096】
基材またはUV光を用いて活性化する第1の塗布層に適切な光解離性酸を組み込んで酸性材料を放出してもよい。
【0097】
化学的に増幅した画像形成およびフォトレジスト材料には、光生成酸の使用が有効である。酸触媒反応は、重合体側鎖の触媒熱分解;重合体主鎖の触媒熱分解;重合体側鎖の触媒加水分解;重合体主鎖の触媒加水分解;天井温度現象に基づく解重合プロセス;求電子芳香族置換反応;および求電子転位のうち1つ以上を含むがこれらに限定されない。
【0098】
ポリエステル基材を生成するプロセスでは、単官能酸、二官能酸、三官能酸、および/または多官能酸を、酸触媒作用を施した材料を含有する単官能、二官能、三官能および/または多官能ヒドロキシルと重合してもよい。上記基材は、酸、酸性末端基、および/または上記反応による触媒作用の酸を含有する「残留酸性官能基」を持つことができる。
【0099】
カチオン硬化性材料を三成分または三元光開始剤系と組み合わせてもよい。当該光開始剤系の第1の成分は、ヨードニウム塩、すなわち、ジアリールヨードニウム塩とすることができる。このヨードニウム塩は、単量体中で可溶であることが望ましく、保存安定性を有してもよいが、これは、増感剤および供与体の存在下で溶解させた際に自然発生的に重合を促進しないことを意味する。従って、特定のヨードニウム塩の選択は、選んだ特定の単量体、増感剤、および供与体にある程度依存することになる。ヨードニウム塩は、Cl−、Br−、I−、またはC4H5SO3−等の陰イオンを含有する単塩;またはSbF5OH−もしくはAsF6−等のアンチモン酸塩、ヒ酸塩、リン酸塩、もしくはホウ酸塩を含有する金属錯塩とすることができる。所望であれば、ヨードニウム塩の混合物を用いてもよい。
【0100】
使用可能な芳香族ヨードニウム錯塩は、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩、およびジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩を含むがこれらに限定されない。
【0101】
光開始剤化合物を、樹脂系の硬化を開始するか、またはその速度を速めるために効果的な量で与えることができる。ヨードニウム開始剤は、全体組成における固体樹脂の0.05〜10.0wt%の範囲で存在させることができ、他の実施形態では、0.10〜5.0wt%、さらには0.50〜3.0wt%の範囲としてもよい。増感剤は、全体組成における樹脂化合物の約0.05〜5.0wt%の範囲で存在させることができる。増感剤は、0.10〜1.0wt%で存在させてもよい。電子供与体は、全体組成における固体樹脂の0.01〜5.0wt%、または0.05〜1.0wt%の範囲で存在させることができ、他の実施形態では、0.05〜0.50wt%としてもよい。
【0102】
光開始剤系の第2の成分は、増感剤とすることができる。増感剤は、単量体中で溶解させることができ、300nm〜1200nmより高い波長範囲の光吸収が可能であり、カチオン硬化プロセスと干渉しないように選ばれる。
【0103】
本発明には、増感剤を用いることができる。使用可能な増感剤はチオキサントンを含む。チオキサントンは、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシ−9H−チオキサンテン−9−オンSpeedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))を含むがこれらに限定されない。増感剤は、Aceto 73(Aceto Corporation(Lake Succes,NY))を含むがこれに限定されない。Speedcure CPTXと組み合わせたAceto73,9,10−ジエトキシアントラセン(CAS#68818−86−0)は、エポキシ樹脂のカチオン硬化処理においてヨードニウム塩とともに用いることができる増感剤系の1つである。
【0104】
増感剤は、以下のカテゴリーの化合物を含むがそれらに限定されない:ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族ポリ環状炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、およびピリジニウム染料。ケトン(例えば、モノケトン、またはα−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、およびp−置換アミノスチリルケトン化合物は増感剤である。高い感受性を必要とする用途では、ジュロリジニル部分を含有する増感剤を用いてもよい。ディープ硬化(deep cure)(例えば、高度に充填された複合材料の硬化)を必要とする用途では、光重合に望ましい照射波長で、約1000より低い、または約100より低い吸光係数を有する増感剤を用いてもよい。あるいは、照射時に励起波長で光吸収が低下する染料を用いてもよい。
【0105】
1つの実施形態では、ケトン増感剤は次の式を有する:ACO(X)bB(ここで、XはCOまたはCR1R2であり、R1およびR2は同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル、アルカリール、またはアラルキルとすることができ、bは0または1であり、AおよびBは同じでも異なっていてもよく、置換された(1つ以上の非干渉性置換基を有する)または置換されていないアリール、アルキル、アルカリール、またはアラルキル基であってもよく、またはAおよびBがともに環式構造を形成し、その環式構造が置換されたまたは置換されていない脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族もしくは縮合芳香族環とすることができる)。上記式のケトンとしては、モノケトン(b=0)、例えば、2,2−、4,4−、または2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ−2−ピリジルケトン、ジ−2−フラニルケトン、ジ−2−チオフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーケトン、2−フルオロ−9−フルオレノン、2−クロロチオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1−、もしくは2−アセトナフトン、9−アセチルアントラセン、2−、3−、もしくは9−アセチルフェナントレン、4−アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、バレロフェノン、2−、3−、もしくは4−アセチルピリジン、3−アセチルクマリン等が挙げられる。適切なジケトンとしては、アラルキルジケトン、例えば、アントラキノン、フェナントレンキノン、o−、m−、およびp−ジアセチルベンゼン、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、および1,8−ジアセチルナフタレン、1,5−、1,8−、および9,10−ジアセチルアントラセン等が挙げられる。適切なα−ジケトン(b=1、およびX=CO)としては、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、ベンジル、2,2’−、3,3’−、および4,4’−ジヒドロキシルベンジル、フリル、ジ−3,3’−インドリルエタンジオン、2,3−ボルナンジオン(カンファーキノン)、ビアセチル、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ナフタキノン、アセナフタキノン等が挙げられる。
【0106】
開始剤系の他の成分を電子供与体(「供与体」とも言う)とすることができる。供与体は、選んだ重合可能材料、ヨードニウム塩、および増感剤の保存安定性および性質(これらに限定されない)等の因子を考慮して選択してもよい。供与体は、アルキル芳香族ポリエーテル、またはN−アルキルアリールアミノ化合物とすることができ、当該アリール基は、1つ以上の電子求引基により置換してもよい。適切な電子求引基の例としては、カルボン酸、カルボン酸エステル、ケトン、アルデヒド、スルホン酸、スルホネート、およびニトリル基が挙げられる。
【0107】
N−アルキルアリールアミノ供与体化合物を用いてもよく、例えば、以下の構造式1の化合物を含むようにすることができる:
【化1】
【0108】
ここで、各R3、R4、およびR5は、同じであっても異なっていてもよく、H、C1−18アルキル(任意で1つ以上のハロゲン、−CN、−OH、−SH、C1−18アルコキシ、C1−18アルキルチオ、C3−18シクロアルキル、アリール、COOH、COOC1−18アルキル、(C1−18アルキル)0−1−CO−C1−18アルキル、SO3R6、CNで置換される)、またはアリール基(任意で1つ以上の電子求引基で置換される)とするか、またはR3、R4、およびR5基を接合して環を形成してもよく;Arは、1つ以上の電子求引基で置換されるアリールである。適切な電子求引基としては、−COOH、−COOR6、−SO3R6、−CN、−CO−C1−18アルキル、および−C(O)H基が挙げられ、R6は、C1−18直鎖、分岐鎖、または環状アルキル基とすることができる。
【0109】
供与体化合物は、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾイン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、および1,2,4−トリメトキシベンゼンを含むようにしてもよい。
【0110】
本発明の実施において、光開始剤、増感剤、および相乗剤を調製物およびレベルを利用することができる。光開始剤は、光源、光波長、照射量、基材温度、および/またはコーティング温度を含むがこれらに限定されないプロセス変数(パラメータ)とともに用いることができる。そのような本発明の実施により、滑らか、標準、テクスチャ加工、マット、光沢、または皺加工を含むがこれらに限定されない仕上げを有する物品を生成することができる。
【0111】
「1つの光開始剤パッケージ」(または「複数の光開始剤パッケージ」)は、例えば、1つ以上の感光カチオン化合物または感光カチオン化合物のブレンドであって、滑らか、テクスチャ加工、マット、光沢、または皺加工(これらに限定されない)仕上げをした物品を生成するように設計された1つ以上の光増感剤または光増感剤の調製物を有するもの、または有さないものを含むがこれに限定されない。
【0112】
感光カチオン材料は、例えば、感光核、感光カチオン部、および/または感光カチオン有機化合物を含むがこれらに限定されない。
【0113】
本発明で利用されるコーティング組成物としては、幅広い種類の添加剤を含むことができる。これらの添加剤を添加して、コーティング組成物、コーティング特性、および物理的性質(例えば、色、濃度、導電性、可撓性、酸化、減成(すなわち、化学製品、熱、または光によるもの)、香り、pH、および流動特性を含むがこれらに限定されない)を変更することができる。
【0114】
使用可能な添加剤としては、殺生物剤、抗菌剤、抗生物質製剤、抗真菌薬、耐光剤、磁性材料、染料、固定剤、香味料、香料、揮発性化合物、カーリング防止剤、変色防止剤、指示染料、化学線分子、金属原子、金属含有化合物、および難燃剤が挙げられるがこれらに限定されない。コーティング組成物は、例えば、色素、光開始剤、増感剤、添加剤、充填剤、劣化防止剤、および酸化防止剤のうち1つ以上を含有してもよい。
【0115】
屋外耐久性のために一般に用いられる添加剤としては、UV光安定剤および吸収剤(ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサジノン、ヒンダードベンゾエート、ヒンダードアミンまたはヒンダードアミン系光安定剤(HAL)、およびトリアジン等(これらに限定されない))が挙げられるがこれらに限定されない。酸化防止剤も屋外でのコーティング用途に用いられ、ヒンダードフェノール系、亜リン酸ブレンド、およびチオセステル(thiosester)を含むがこれらに限定されない。ラジカル捕捉剤は、屋外耐久性のために用いられるさらに他のクラスの化合物であり、トリアジンおよびヒンダードアミン(HALS)ラジカル捕捉剤を含む。
【0116】
添加剤材料の塩基性および硬化率を調節することにより、幅広い添加剤が使用可能になる。コーティング表面、コーティングバルク、およびコーティング−基材界面の硬化率で所望の物品が生成されるように、コーティングまたは基材中の光活性酸発生化合物のレベルを基材の酸的性質に合わせることができる。
【0117】
本発明には、酸化防止剤を用いることができる。使用可能な酸化防止剤としては、例えば、(Noveon Inc.(Akron,Ohio,USA)の)Good−rite(登録商標)酸化防止剤が挙げられるがこれに限定されない。
【0118】
本発明では、衛生粉体コーティングを用いることができる。抗菌粉体を用いてもよい。本発明では、高温耐熱粉体を用いることができる。シリコーン系粉体コーティングを用いてもよい。本発明では、薄膜粉体を用いることができる。0.8〜1.2ミルの範囲の粉体を用いてもよい。本発明では、UV硬化性粉体を用いることができる。本発明では、近赤外線硬化性粉体を、例えば、感熱用途において用いることができる。
【0119】
本発明のコーティング組成物には、各種の充填剤材料を用いることができる。充填剤材料は、色素としての目的以外で添加される不活性物質であってもよいがこれに限定されない。充填剤材料は、コストの削減、フィルム特性の向上、または流動および平坦化特性への影響等のために必要に応じて用いることができる。これらの充填剤は、バライト、粘土、平坦化剤、ガラス、滑石、および/またはナノ粒子耐引っ掻き性材料を含むがこれらに限定されない。
【0120】
「色素」は、他の材料を着色する任意の1つまたは複数の材料を含む。「色素性」材料としては、印刷画像用のコーティングおよびインク、ならびに色素を含む任意の材料が挙げられるがこれらに限定されない。色素は、着色力および隠蔽力を有してもよい。色素性材料は、装飾的性質を有するか、または光吸収、反射性、光沢、または仕上げ等、他の効果を与えるようにしてもよい。他の色素は、熱変色または光変色、光ルミネセンス蓄光、UV蛍光、およびIR反応等の相互作用的変化を生じる。色素性材料は、様々な目的に利用することができる。
【0121】
「高色素性」材料としては、高濃度で隠蔽力を生じる不透明度が低い色素を含有する物質が挙げられるがこれに限定されない。インクの色素レベルが高くなれば、印刷時に用いるインクを減らしても同一の色濃度が得られる。隠蔽力とは、塗工基材の発色を隠すかまたは隠蔽する着色系の能力を指し、Laneta白黒カラーチャートに対するデルタE/デルタカラーでテストされる。
【0122】
「コーティング組成物」は、広く解釈されるべきものであり、例としては、インク、粉体塗料、複合材料、溶液、混合物、乳剤、液体、ペースト、蒸着ガス、固体分散剤、乳剤、接着剤、接着促進剤、および/または導電回路が挙げられるがこれらに限定されない。
【0123】
「カチオンコーティング組成物」は、カチオン重合可能な官能化材料(例えば、任意で一価アルコールおよびポリヒドロキシルアルコールを鎖延長剤として有し、光開始剤パッケージを有し、任意で色素を有し、任意で本発明で使用可能な溶剤を有するカチオン重合可能なビニルエーテル官能化材料を任意で用いて官能化したエポキシ)を部分的に有するあらゆる組成物を含む。
【0124】
カチオンインクは、反応性希釈剤、オキセタンおよび/またはビニルエーテル、色素を有し、任意で光開始剤を有し、任意で本発明で使用可能な増感剤を有する脂環式エポキシドに基づく1つ以上の化合物を含むようにすることができる。インクとして利用されるかまたは利用可能なカチオンコーティング組成物は、カチオンインクとみなしてもよい。
【0125】
二官能性単量体を用いることもでき、これらは、少なくとも1つのカチオン重合可能な官能基、またはカチオン重合可能な単量体と共重合する官能基(例えば、エポキシ−アルコール共重合を可能にする官能基)を含んでもよいがこれらに限定されない。
【0126】
重合可能な組成物が2つ以上存在する場合、それらを任意の割合で存在させることができる。
【0127】
「色」は、物の視覚属性である。色は、光が発光、透過、または反射した結果生じる。例えば、白色は、多数の異なる波長の光から構成される。着色料としては、色の隠蔽を含む用途に適した特定の視覚属性を得るためのコーティング調合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0128】
本発明で用いるインクおよびコーティングの色としては、シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック、ライトマゼンタ、ライトシアン、グリーン、オレンジ、およびバイオレット、ならびにこれらの色のあらゆる調製したものまたは色相が挙げられるがこれらに限定されない。他の色としては、例えば、メタリック、遷移色、マイカ、パールカラー、シルバー、クロム調、および清色が挙げられるがこれらに限定されない。
【0129】
「マルチカラー」には、複数の色または色相を有するコーティング、化合物、物品、および製品が含まれる。この用語は、運転免許証、身分証明書、または識別章のセキュリティまたは偽造防止インクの用途に関連するため、顕在的な色の変化および半隠在的な偏光を含むがこれらに限定されない。ハンマートーンまたは木目は、黒を下地にして、その黒とコントラストをなす金、銀、または銅のメタリック色素を用いることによりアンティークまたは古物調に見える。この古色調に仕上げた見た目は、グラニット、コンフェッティ、ラスティ、および古色調の外観を含む様々なマルチカラー調の見た目が要求される家具および陳列物の産業分野で普及している。
【0130】
「1つのクリアコート」または「複数のクリアコート」は、色素を有さないコーティングを含む。しかしながら、クリアコートは、実質的に色に影響しない色素のような材料、ならびにナノ粒子、充填剤、および添加剤を含んでもよい。
【0131】
「メタリックコーティング」および/または「メタリック」は、基材に塗布可能なメタリックフレーク、または色素、または金属を含む。メタリックコーティングは、下地金属の外観を再現し、製品の見た目に深みを与えることができる輝きを持った明るさを加えることができる。例えば、金、クロム、またはブラスの見た目に似せた製品(屋内および屋外用家具、運動器具、芝生および園芸用具、ならびに他の製品等)に各種メタリック仕上げを用いることができる。さらに、メタリックコーティングにより、導電性を与えたり、コーティング濃度、および電磁または磁気特性を変化させることができる。
【0132】
本発明のコーティング組成物には、溶剤を用いることができる。溶剤としては、シクロヘキサノン、水、酢酸塩、ケトン、芳香族化合物、脂肪族化合物、および/またはエステルのうちいずれか1つ以上が含まれるがこれらに限定されない。
【0133】
「分散剤」は、色素表面または他の粒子の濡れを助長し、凝集を防止する溶液の成分である。分散剤はまた、色素または他の成分の濡れを助長し、組成物、混合物または溶液内においてそれらの分散を容易にする溶液または組成物の成分を含む。分散剤は、凝集を防止するか、または分散剤を含まない組成物と比較して低減することができる。分散剤は、本発明とともに利用可能である。色素および分散剤はコーティングのpHを上昇させることがあり、かつそれらが硬化工程時に酸を奪い合って硬化率に影響を及ぼすことがある。
【0134】
本発明には、超分散技術を用いることができる。
【0135】
本発明に任意で利用可能な分散剤の非限定的な例としては、溶剤ペーストおよび液体インク中での色素の分散に使用可能なCOLORBURST分散剤(Noveon Cleveland(Ohio USA))が挙げられる。分散剤は、発色および光沢を改善し、色素の取り込みを増加し、沈降防止性を改善し、温度およびせん断安定性を維持することができる。Solsperse(登録商標)およびSolplus(登録商標)(Noveon Cleveland,Ohio USA))を用いてもよい。
【0136】
本発明は、インクジェット印刷用インクを含むとともにそれを利用可能である。インクジェット印刷用インクは、混ぜ合わせて媒体に塗布して印刷画像、表示板、文書、バナー等の装飾、印刷、コーティング、および/または保護物品を生成するペインターに酷似した送出可能なカラーパレットをプリンタに提供することが可能である。
【0137】
光硬化インクは、インクジェットに適した粘性を有するものとし、反応性希釈剤、または非反応性希釈剤を用いることができる。反応性希釈剤としては、インクジェット印字ヘッドが確実に印刷できる粘性範囲でインク調合物と反応して希釈する成分を含むようにすることができる。噴射信頼度は、圧電インクジェット印字ヘッドが再現可能な滴径、液滴形状、および液滴速度で液滴を吐出するようなインクせん断応力および流動特性が得られるように設計される。光硬化処理技術の硬化処理または反応速度は、ほぼ0からミリ秒またはそれ以上の長さの時間範囲とすることができる。遊離基のインクでは、(例えば、自由体積またはインク塗膜の収縮により)単量体およびオリゴマーが重合するときに、硬化率および硬化プロセスに応じて内部応力が発生する。これは、遊離基のインク系に見られる接着不良および可撓性不足による場合が多い。カチオン光硬化インク技術は、遊離基光硬化インクよりも遅いオーダーの速度で反応し、実際に、リビング重合とみなすことができる。開始された重合は、活性光が取り除かれた後も継続可能であり暗硬化として知られる。反応カチオン部位は、開環または環ひずみ緩和重合を介して広がり、インク塗膜がより柔軟になる。
【0138】
本明細書で用いるように、基材とは一定量のコーティング組成物、またはコーティング系に含まれる他の材料を塗布可能な任意の材料である。基材は、PVC、市販の成形およびカレンダー加工を施したビニル、ならびに硬質基材を含み、非限定的な例としては、標識および特殊グラフィックの分野で用いられるもの等が挙げられるがこれらに限定されない。他の基材としては、金属、木材、プラスチック、布、コットン、ウール等、および自動車等の予め塗工された物品が挙げられる。
【0139】
「基材合成プロセス」は、塗布用の最終基材を生成するための調合、成形、鋳造、加圧成形、押出加工、前処理および/または後処理、および/またはアニーリングを含む。
【0140】
「酸性基材」は、酸性の性質または光解離性を有し、熱に不安定または処理によって変化しやすい潜酸性を有するあらゆる被コーティング材料を含む。
【0141】
「酸含有基材」とは、pHが7.0以下で、酸性の性質または光解離性を有し、熱に不安定または処理によって変化しやすい潜酸性を有するあらゆる被コーティング材料を含む。
【0142】
「感熱基材」は、物理的特性または特徴が温度に応じて変化するあらゆる基材を含む。そのような物理的特性としては、以下のうち1つ以上が挙げられるがそれらに限定されない:色、寸法、濃度、可撓性、堅牢性、硬度、粘性、脆性、仕上げ、組成、化学的性質、および見た目。感熱基材としては、面外変形、変色、化学変化、または好ましくない温度依存変化に繋がる熱膨張を有するものが挙げられるがこれに限定されない。1つの実施形態では、本発明において色温度または寸法温度感受性基材を用いて温度に関連する変化を回避することができる。
【0143】
本発明の基材は、本質的に酸性であってもなくてもよい。さらに、酸は、直接基材に塗布するか、またはコーティング組成物、もしくは、さらなる成分(例えば、添加剤、希釈剤、および本明細書中に開示する他の材料等)を有するコーティング系の塗布と関連して基材に塗布してもよい。
【0144】
基材上に酸を放出するもしくは蒸着させるか、または基材の酸性的な性質を(7.0以下のpHまで)増大させるプロセスとしては、酸または酸性溶液を用いたコーティング、プラスチック部品を射出成形する前に行う型内コーティング、コーティング前に基材に行う酸性リンス剤を用いたカーテンコーティング、酸性溶液を用いた基材の拭き取り、および/または基材に対する酸性溶液の吹きつけが挙げられるがこれらに限定されない。これらのプロセスは、(フーリエ変換赤外分光)FTIR分光法またはpHを用いて、および/または基材表面の腐食を光沢の変化で見ることによって定量化することが可能である。
【0145】
1つの実施形態では、コーティングを行う部分に火炎曝露または酸エッチングを行って基材を処理する。水分および酸を用いてポリエステル骨格をその出発ポリオールおよびポリ酸に再変換し、ポリエステル骨格の解重合を行い、基材界面のコーティングに酸を利用可能にして硬化および接着を行なうことができる。分解については表面FTIR分光法またはpHを用いて定量化することができる。
【0146】
酸性表面は、コーティングと基材表面の共有結合により接着を助長することができる。基材の酸エッチングも接着性を向上することが可能である。接着性を向上する他の方法としては、プラズマおよびコロナ処理、および/または接着促進剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0147】
所望の物品を生成するために、基材酸分とプロセスパラメータ(コーティングの塗布から露光までの時間(またはコーティング量)、印刷速度、コーティング温度、基材温度、相対湿度パーセント、コーティング厚さ、色素レベルおよび種別を含むがこれらに限定されない)とを組み合わせることができる。
【0148】
使用可能なカラーパウダーには、例えば、212°F未満の低温で硬化するものがある。これらの粉体は、感温材料、および他の硬化処理系とともに多量のエネルギーを利用可能な部分に用いることができる。パーティクルボードおよびファイバーボード等の木材材料、ならびにガラスおよびプラスチック製品とともに感熱粉体を用いることもでき、これによって、粉体コーティング仕上げを得ることができる。他の製品としては、事務用什器、キッチンキャビネット、および家庭用組立て式家具が挙げられる。電気モーター、緩衝吸収材、フォームコアドア等の予め組立てられた部品、およびプラスチック、薄板、電線、またはゴムシールを有する他の製品にも粉体コーティング仕上げをすることができる。さらに、マグネシウム等の感熱合金に粉体コーティングを行ってもよい。この技術は、揮発性有機化合物の放散を低減し、かつ環境に無害である。
【0149】
1つの実施形態では、本発明は、温度に応じて変化する特性を有する任意の材料を含む「感熱基材」および「感熱物品」のコーティングを可能にする。例えば、感熱物品としては、コロプラスト、シントラ(sintra)、スチレン、生物、細胞、上皮、表皮、血漿、眼球、水晶体、導体、および写真物品または材料が挙げられるがこれらに限定されない。
【0150】
対象をコーティングするための塗布技術は、以下の非限定的技術のうちいずれか1つ以上を含む:インクジェット、インクジェット塗膜および印刷物、ブラッシング、吹き付け、型内コーティングを行った射出成形前部品、電着またはE−コート(例えば、多層基材ならびにコーティング複合材料を形成する蒸着および塗布)。
【0151】
コーティング厚さは、用途および最終使途に依存する。ライン速度、光輝度、ならびに光開始剤種別およびレベルの調節は、基材の酸度とともに最終製品用途に合わせて行うことができる。
【0152】
本発明の範囲には、pH7.0以下の酸を塗布したまたは活性化した酸性基材、または酸による前処理をした後にコーティングを塗布し、その上にニスまたはクリアコートを塗布したものを含む。さらなる層を用いて、例えば、クロム調、遷移的なマイカカラー、柔らかな色調等の色に関する効果を発生させることができる。
【0153】
基材中の酸が、インクを噴射した後にランプに露光されて硬化処理されることにより、塗工物品が生成される。インクは、例えば、5〜20kHz以上の範囲(これに限定されない)のインクジェット周波数で噴射することができ、任意で、ライン速度を、例えば、約0ft2/hr〜約50ft2/hr、最大で約6400ft2/hr以上の範囲とすることができる。
【0154】
塗布した溶液/コーティング/インクを特徴付ける物理的特性データは、用途および最終的に必要とされる性能特性に応じて決められる。
【0155】
粘性は、反応性希釈剤トリメチロールプロパンオキセタン(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)の「TMPO」)を用いて低減した。粘性は、ISP International Specialty Chemicals(Germany)から入手した反応性希釈剤Rapicure DVE−3を用いて低減した。
【0156】
硬化処理は、上記カチオンコーティング組成物の単官能カチオン重合可能官能基、または二官能カチオン重合可能官能基、または三官能カチオン重合可能官能基、または多官能カチオン重合可能官能基を反応させる工程を含んでもよい。
【0157】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物、またはコーティング系は、一定の特徴を有する基材に均一かつ均等に塗布される。他の実施形態では、この限りでない。
【0158】
図2は、コーティングの差別塗布のためのプロセスの一実施形態を示すプロセスフロー図である。コーティングの差別塗布では、第1の部分のコーティング、塗布、または硬化処理の少なくとも1つの特徴が、第2の部分のコーティング、塗布または硬化処理の特徴と異なる。第1および第2の部分は、同じコーティング層上にあっても異なる層上にあってもよい。本発明は、コーティング、塗布技術、および硬化方法の様々な特徴およびそれらの異なった組み合わせを含む。
【0159】
図14は、Taylor Hobson社のプロフィルメータを用いて収集した本例のプロフィルメータデータから作成したプロフィルメータ変更プロファイルを示す。テスト領域上を皺に直交させながら5ミリ移動させてバレーおよびピークを測定し、プロフィルメータデータを収集した。「ピーク合計」は、マイクロメートルの単位で示される「ピークバレー」と「ピークピーク」の合計に等しい。
【0160】
図15は、本発明を用いてコーティングされる酸性、酸解離性および/または酸光解離性酸含有基材(200)を、コーティング、積層物、前処理剤、および/または接着促進剤を有する場合と有さない場合について示す。基材(200)は、酸にさらされてないか、または酸が塗布されておらず、かつ/または酸が活性化されておらず、かつ/または本明細書に記載されるようにコーティングされる前は酸性ではない第1の部分または領域(210)、および酸にさらされているか、または酸が塗布されており、かつ/またはおよび酸が活性化されており、かつ/または本明細書に記載されるようにコーティングされる前に酸性である基材(200)上の少なくとも1つの第2の部分または領域(220)を有するようにすることができる。
【0161】
図15に示す例示的な実施形態では、第1の硬化部分の硬化処理のために第1の部分または領域(210)にコーティングを塗布し、第2の硬化部分の硬化処理のために第2の部分または領域(220)にコーティングを塗布する。第1のコーティング部分または領域(210)、および第2のコーティング部分または領域(220)を硬化する。第1の硬化部分または領域、(210)、および第2の硬化部分または領域(220)には、異なる仕上げを施すことができる。硬化したコーティングの各部分または領域(210)および/または(220)に行う仕上げは、基材(200)の酸度、コーティング種別、硬化までの時間、ならびに硬化の長さおよび性質を含むがこれらに限定されない変数の組み合わせによって得られる。図15では、皺仕上げを有するテクスチャ加工表面が得られる。
【0162】
「テクスチャ」(「テクスチャズ」または「テクスチャ加工」とも言う)コーティングを用いて基材の凹凸および指紋を隠すことができる。テクスチャにより、表面に滑り止めを施す一方で、製品に触感を与えることができる。非限定的な例では、微細なサンドペーパーの調の見た目から、石目のテクスチャ、またはワニの皮膚に似たより粗い見た目まで、多様な外見をテクスチャ仕上げ機で実現することができる。
【0163】
「皺」(「(複数の)皺」または「皺加工」ともいう)仕上げは、各種のスタイルを可能にし、一定した外観を有するテクスチャクラスを含む。皺および/またはテクスチャ仕上げは、耐磨耗性および耐候性を有するようにできる。皺および/またはテクスチャ仕上げは、例えば、工具、運動器具、および店頭陳列物に用いることができる。
【0164】
図3は、積層塗布したコーティング系の断面図である。コーティングは、1つ以上の層を有するようにすることができる。コーティングは、基材表面、または他のコーティングまたはコーティング表面に塗布可能である。コーティングは、処理済または未処理の表面に塗布可能である。さらに、コーティングは、単独で塗布するか、または他の材料、固体、液体、酸、化学溶液、および気体と組み合わせて塗布することができる。本明細書中の発明には、幅広いコーティング塗布技術が含まれる。図3には、酸性および/または光解離性酸の特徴が与えられた基材を有するコーティング系が示されている。この基材は、積層したコーティング材料でコーティングされる。接着促進剤の添加、または他の前処理(例えば、酸性化(これに限定されない))の追加は、選択可能な任意の工程であり、それらの例示的な結果が図3に示されている。図3には、カチオン硬化性の酸による触媒作用を受けたコーティングの第2の層の塗布が示されている。図3には、カチオン硬化性の酸による触媒作用を受けたさらに他の付加的なコーティングのコーティング層が示されている。着色コーティングまたはクリアコートコーティングを任意で用いてもよい。任意で、既存の層上にクリアコートを塗布(または添加)してもよい。各コーティングの後、コーティングを少なくとも2回行った後、またはコーティングプロセスの任意の時点で、本明細書に開示するような露光による硬化処理を多相積層物全体に実施することができる。本発明は、任意の時点で本明細書に開示した技術を用いてコーティング、積層物、添加剤および投入材料、または製品を露光することにより、最終的なテクスチャ、仕上げ、コーティング、または製品を取得することを広く含む。
【0165】
図4は、平面ではなく、全体に渡って同じ輝度を受けない表面部分を有する表面を示す。本プロセスは、任意の時点で本明細書に開示した技術を用いてコーティング、積層物、添加剤および投入材料、または製品を露光することにより、最終的なテクスチャ、仕上げ、コーティング、または製品を取得することを広く含む。
【0166】
「硬化」は、硬化プロセス、関連する化学反応による物理変化、またはコーティング、物質または材料を硬化中に行われる活性を含む。本明細書で用いる「硬化」は、分子を組み合わせて官能基が移動可能な程度に高変換率で利用可能な反応基の変換を行う化学反応を開始することおよびそのような化学反応が行われることの両方を含む。反応剤を85〜95%変換すると、網目が形成され全ての反応基の取り込みが限定され鎖運動性が制限される。「硬化」、「硬化させる」および「硬化処理」は、上記の広義の意味の変化形であり、硬化プロセス全体の時間的進行を含む。所与の用途における「硬化」は、硬化したコーティングの所与の用途および/または最終使途のための所望のコーティング性能仕様(例えば、コーティングおよび硬化後に物品を輸送するために包装する前の耐引っ掻き性)を得るための材料に対する変化を含む。「適正な硬化」は、接着、耐化学性および耐溶剤性、ならびに画質および色品質を含むがこれらに限定されない特性を実現するためのコーティングの硬化処理を含む。「硬化」はまた、本明細書に開示する発明を実施する当業者が理解する上記用語の一般的な定義も含む。
【0167】
「硬化した」(例えば、「によって硬化した」)は、硬化プロセスが完了したことを示す用語であるか、または硬化または硬化することを実現する方法を示す。また、所与の硬化法に関連して、硬化プロセスが十分に完了した場合に「硬化した」を用いることができる。コーティングに光が当てられると、硬化または硬化率が速くなる。
【0168】
本発明は、反応性コーティング組成物の「光硬化」および「暗硬化」の両方を含む。
【0169】
本明細書で用いる「光硬化」は、露光によって生じるかまたは露光中に起こるコーティング組成物のあらゆる化学反応、乾燥、ハードニング、物理変化または変換を含むように広く解釈される。1つの実施形態では、「光硬化」は、254nmの波長で0.008W/cm2/nmのピーク輝度を有する光に露光された領域を含む。本例で用いたライトは、UV Systems,Inc.(Renton,WA)から市販されるランプ、TripleBright IIであった。実施例12でさらに説明するようなランプのスペクトル分布を、Solatell UV Spectroradiometerを用いて測定したが、その結果は図8のグラフに示している。
【0170】
1つの実施形態では、本発明は、低輝度(254nm、0.008W/cm2/nm)の光に短時間露光した7.0以下のpHを有する酸性または酸含有基材を用いる。
【0171】
1つの実施形態では、本発明の局面は、感熱物品のコーティングを可能にする。感熱物品は、温度変化とともに変化する物理的特性を持つ材料を有してもよい。
【0172】
1つの実施形態では、硬化は、0.2秒以上の露光時間で実現することができる。硬化は、光輝度および照射量、光開始剤および増感剤の調製およびレベル、基材の酸的性質、ならびにコーティングの温度、基材の温度、相対湿度パーセント、および塗布環境温度に応じて行われる。
【0173】
基材の3次元性および光子方向と直交しない向き、重合体、光開始剤、色素、および他のコーティングによる光子の反射および吸収、コーティングの厚さおよび変化による光子透過の低減によって、露光にばらつきが生じる。
【0174】
本明細書で用いる「露光しない」とは、0(すなわち、無光)から表面、物体、または材料上に光が存在するが直接的な直交方向の露光と比較して輝度が低い範囲の光を含むがそれに限定されない。基材の3次元性、光子方向と直交しない向き、色素化による反射および/または吸収、ならびにコーティングの厚さおよび変化による光子透過の低減を含むがこれらに限定されない光を制限するあらゆる状況によって露光に誤差が生じる。
【0175】
本明細書で用いる「暗硬化」は、光源に対して直接露光された表面と同じ値の光で露光することができなくなるコーティング組成物のあらゆる化学反応、乾燥、ハードニング、物理変化または変換を含むように広く解釈される。「暗領域」は、光の方向と直交する領域と異なるレベルで露光されるコーティングまたは塗工物品の一部である。本明細書では、暗領域は、直接露光される領域以外のあらゆる領域を含むように広く解釈される。暗領域は、コーティング組成物の露光されない部分である無光部分、および光源に対して直接露光される部分よりも露光が少ない領域を含む。さらに、暗領域は、陰になった領域、遮光された領域、影が落ちた領域、遮られた領域、保護された領域、または何らかの理由で光源に対して直接露光されない領域を含んでもよい。1つの実施形態では、「暗硬化」は、200nm〜1200nmの波長および0.05W/cm2/nm以下の輝度を有する光に露光された領域を含む。
【0176】
コーティング組成物を基材に塗布する場合、一定の厚さを有する。いくつかの実施形態では、照射光は、コーティングの厚さを透過することができない。そのような場合、「暗領域」は、コーティング組成物の光が到達しない(または光源からの下方照射時の輝度で光が到達しない)部分を含むように広く解釈される。
【0177】
本発明の1つの実施形態は、光硬化および暗硬化の両方によるコーティングまたはコーティングの一部の硬化を含む。この硬化処理の組み合わせは、一定量のコーティング組成物が露光によって硬化し、同じ部分の他の量のコーティング組成物が露光から独立した化学反応またはハードニングプロセスによって硬化する場合に発生し得る。暗硬化を用いる例としては、乾燥、重合および/または反応が挙げられるがこれらに限定されない。
【0178】
エポキシ樹脂は、酸のみが存在する状況において酸性基材上で「暗硬化」する。本発明によって重合可能な官能基は、単官能および二官能単量体を含む光硬化性化合物を含むがこれに限定されない。他の単量体およびオリゴマーを以下のリストから選択することができる:Poly BD 605E(エポキシ化ヒドロキシ末端ポリブタジエン)、Eponex Resin 1510(水素化ビスフェノールA−エピクロルヒドリン系エポキシ)、Cardura E−10P(2,3−エポキシプロピルネオデカン酸塩)、Heloxy修飾剤116(2−エチルヘキシルグリシジルエーテル)、Heloxy修飾剤107(シクロへキサンジメタノールジグリシジルエーテル)、Heloxy修飾剤84(プロポキシ化グリセロールトリグリシジルエーテル)、Heloxy修飾剤68(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル)、Heloxy修飾剤48(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル)、Araldite DY−D/CH(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル)、UVR−6128(ビス(3,4−エポキシシクロへキシルメチル)アジペート)、UVR−6110((3,4−エポキシシクロへキシル)メチル−3,4−エポキシシクロへキシルカルボキシレート)、UVR−6105((3,4−エポキシシクロへキシル)メチル−3,4−エポキシシクロへキシルカルボキシレート)、およびオキセタン、ならびに/またはそれらを調製したもの。
【0179】
「二重硬化」は、本明細書中において、一定量のコーティング組成物が光硬化によって硬化し、他の量が任意の他の方法によって硬化するあらゆる硬化プロセスを含むように広く解釈される。光硬化とはみなされない硬化は、乾燥および/またはハードニング、ならびに化学反応(例えば、重合反応)を含むがこれらに限定されない光から独立した化学反応を含む。
【0180】
二重硬化機構の一実施形態である「二段階硬化」では、1つの実施形態では、基材硬化プロセス(例えば、酸性基材の活性化(これに限定されない))と、光活性化した表面硬化を伴う第2のプロセスとを組み合わせてもよい。本発明には、多段階硬化も含まれる。いくつかの実施形態では、2つ以上の硬化プロセスが用いられる。いくつかの硬化プロセス、多数の硬化プロセス、または各種の硬化プロセスを用いることができる。差別硬化は、コーティング表面硬化率、コーティングバルク硬化率、および基材コーティング界面硬化率の間で硬化率に誤差がある硬化プロセスを含む。非差別または均衡硬化は、コーティング表面硬化率、コーティングバルク硬化率、および基材コーティング界面硬化率の間で硬化率が均衡しているか、または硬化率が類似している硬化を含む。
【0181】
1つの実施形態では、二段階硬化は、pHが7.0以下の基材の基材硬化プロセスと光表面硬化補助剤とを色素色または光吸収色の硬化および接着を介して組み合わせてもよい。また、「二段階硬化」は、3次元グラフィックまたは印刷部分において、光が光源と直交する領域の光と等しくない同様の低露光または「暗」領域において硬化および接着を生じさせる。カチオン化学反応が開始されると、光源が取り除かれた後も硬化を継続する。
【0182】
複数の反応プロセスを利用するあらゆるコーティング系を二重硬化系とすることができる。二重硬化系は、エポキシまたはオキセタン基の開環重合時に形成され、イソシアネート官能樹脂と反応する第2ヒドロキシル官能基を用いることができる。また、二重硬化系は、アクリレート/ラジカル光開始剤および単官能、二官能、三官能および/または多官能アクリレート材料を有するジエポキシド化合物カチオン光開始剤を含んで表面硬化と可撓性のバランスを取ってもよい。
【0183】
「基材硬化」は、基材または基材表面によって基材−コーティング界面で開始される塗布コーティングの硬化を含む。詳細には、本発明の記載どおりに塗工した場合、7.0以下のpHを有する基材の酸性特性による。
【0184】
「表面硬化」は、露光時に表面で反応基を化学変換させて不粘着性の表皮を生じる電子線(UV/EB)遊離基およびカチオン硬化処理技術を含む。
【0185】
「スルー硬化(Through cure)」は、塗布したコーティングの表面およびバルクおよび基材−コーティング界面を含む完全な硬化を含む。スルー硬化は、コーティングまたはコーティング層の断面(または厚さ)全体の硬化を含んでもよいがこれに限定されない。
【0186】
いくつかの実施形態では、コーティングの化学的性質、(カチオン重合可能材料光開始剤、増感剤、反応性希釈剤、色素形成、ならびにそれらのレベルおよび組み合わせ)、基材表面酸度、塗膜厚、光輝度、およびコーティングの塗布および塗布したコーティングの露光からの時間、ならびに塗布したコーティングをUltraBright IIの光に露光する時間を変更して、幅広いコーティング仕上げを施すことが可能である。露光時間の時間成分により、光開始コーティングの領域に当てる光の量が決定される。光がコーティングを部分的に透過するがコーティングを完全には透過しないような露光時間では、カチオン硬化を開始し、コーティングにおいて光開始剤が活性化される深さまで行うことができる。この時、硬化率に誤差を生じ、カチオン活性領域と活性されない領域とで重合速度が異なるようにすることができる。表面硬化率、バルク硬化率、および基材コーティング界面硬化率を比較して硬化率に誤差があるコーティングには、皺加工した表面を生じることができる。本発明を用いれば、コーティング膜の一部を活性化し、皺を生成する差別硬化を起こすために十分な光エネルギーにコーティング表面を曝露することができる。これは、コーティングを部分的に透過してカチオン活性させる照射量として知られる露光輝度および時間で実現される。波長、輝度、および露光時間を最適化することにより所望の結果を得ることができる。
【0187】
コーティングを塗布した時点からコーティングを露光し活性化する時点までの露光時間成分は、コーティングがカチオン活性されカチオン重合が始まるまでの時間としてもよい。コーティングは、重合が進行し重合体網目が形成されまで、流体および流動および/またはレベルを維持する。流動および/または平坦化を妨げる期間および輝度でコーティングを活性化することにより、融合していない表面を生成することができる。流動および/または平坦化を可能にする期間および輝度でコーティングを活性化することにより、融合した表面を生成することができる。融合と非融合間の範囲は広い。
【0188】
露光時間成分は、コーティングを塗布した時点からコーティングを露光して活性した時点までの時間長を含み、一方または両方を変更して各種のコーティング表面特性を有する各種のコーティング物品を生成してもよい。
【0189】
基材へのコーティングの塗布から光源に対するコーティング基材の露光までの時間を変更することにより、マット仕上げ、標準仕上げ、および光沢仕上げにまで及ぶがこれらに限定されない様々な仕上げを実現することができる。基材へのコーティングの塗布と露光までの時間差(「時差」)としては、ほぼゼロ(0)、一瞬、0.001秒、0.01秒、0.1秒、1.0秒、5.0秒、および10.0秒、ならびに25秒が挙げられるがこれらに限定されない。より長い時間差としては、30秒、1分、5分、10分、30分、1時間、または1時間超が挙げられるがこれらに限定されない。これらの値の上下および中間の値を用いることもできる。
【0190】
1つの実施形態では、基材への一定量のコーティングの塗布から基材の露光までの時差をほぼゼロ(0、または瞬時)から10秒までの範囲としてマット仕上げを実現してもよい。他の実施形態では、0.001秒〜10秒の時差を用いて標準仕上げを実現してもよい。さらに他の実施形態では、ほぼゼロ(瞬時)〜2時間、または2日間の時差を用いて光沢仕上げを実現してもよい。時差を用いる実施形態では、100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光源を用いることができる。時差は、利用する光に応じて長くしても短くしてもよい。利用する時差および光の組み合わせを最適化することにより所望の仕上げを実現することができる。
【0191】
図3は、線形の物品を示す。コーティング、積層物、前処理剤、および/または接着促進剤(20)の塗布前またはそれと同時におよび/またはその後に、酸性、酸解離性および/または光解離性酸含有基材(10)に光子(50)を当ててもよい。この時、さらなるコーティング(カチオン硬化性酸触媒)(30)を塗布し、その後にさらに別のコーティング(カチオン硬化性酸触媒、着色、またはクリアコート)(40)を塗布してもよい。物品(20)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、物品(30)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、かつ/または物品(40)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に物品に光子(50)を当ててもよい。コーティング((20、30)および/または(40))を物品(10)に塗布する前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、光子源(ランプ、光源、蛍光灯、発光ダイオード、および/または水銀蒸気放出)(60)を用いて物品(10)に光子(50)を当ててもよい。
【0192】
図4は、3次元性を有する非線形の物品を示しており、当該物品の一部は、本明細書で説明するように、同じ光に露光される他の領域と同じかまたはそれより低い光量で露光される表面部分を有する。コーティング、積層物、前処理剤、および/または接着促進剤(120)の塗布前にまたはそれと同時におよび/またはその後に、酸性、酸解離性および/または光解離性酸含有基材(100)に光子(150)を当てることができる。この時、さらなるコーティング(カチオン硬化性酸触媒)(130)を塗布し、その後にさらに別のコーティング(カチオン硬化性酸触媒、着色、またはクリアコート)(140)を塗布してもよい。物品(120)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、物品(130)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、かつ/または物品(140)のコーティング前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に物品に光子(150)を当ててもよい。コーティング((120、130)および/または(140))を物品(100)に塗布する前におよび/またはそれと同時におよび/またはその後に、光子源(例えば、ランプ、光源、蛍光灯、発光ダイオード、および/または水銀蒸気放出)(160)を用いて物品(100)に光子(150)を当ててもよい。
【0193】
実施例15の結果は、本明細書に開示するコーティング技術によって、様々な色について幅広いコーティング仕上げを得ることが可能であることを示す。
【0194】
上記コーティング組成物、光開始剤の調製およびレベル、ならびに硬化技術により、滑らか、テクスチャ加工、マット、光沢、または皺加工を含むがこれらに限定されない仕上げを施すことができる。他の実施形態では、物品に以下の1つ以上の仕上げを施すことができる:光沢仕上げ、標準仕上げ、マット仕上げ、テクスチャ加工仕上げ、および/または皺加工仕上げ。
【0195】
「滑らか」コーティングは、プロフィルメータで測定したピーク平均値が10マイクロメーター以下のコーティングを含むがこれに限定されない。
【0196】
テクスチャコーティングを用いて基材の凹凸および指紋を隠すことができる。これによって、表面に滑り止めを施す一方で、製品に触感を与えることができる。非限定的な例では、微細なサンドペーパーの調の見た目から、石目のテクスチャ、またはワニの皮膚に類似したより粗い見た目まで、多様な外見を実現することができる。
【0197】
皺仕上げは、各種のスタイルを可能にし、一定した外観を有するテクスチャクラスである。これらは、耐磨耗性および耐候性を有するようにできる。これらの仕上げは、例えば、工具、運動器具、および店頭陳列物に用いることができる。
【0198】
「屋外耐久」(「屋外耐久性」とも言う)は、グラフィック、印刷物、コーティング、ならびに塗工物品および製品の特徴および/または特性であり、それらが屋外環境において所定期間性能を維持する能力を定量化および表現するものである。屋外耐久性は、なんらかのコーティングによって長年にわたって維持することが可能である。屋外耐久性に寄与し得る因子としては、接着性、色品質、表示品質、耐化学性、および耐光性が挙げられるがこれらに限定されない。屋外耐久性を有するグラフィックは、本発明によって生成可能な物品である。屋外耐久性を有するグラフィックは、屋外耐久性を有する(例えば、屋外耐久性を示す特徴および特性を有する)製品である。
【0199】
「熱安定性」は、何らかの理由により暖められ、熱せられ、または温度上昇にさらされたときに物性変化に抵抗する度合いを含む。
【0200】
「光安定性」(「日光堅牢度」とも言う)は、通常使用時に光、放射、または他の因子(例えば、日光、IR放射、電磁放射)に晒されたときに物性変化に抵抗する度合いを含む。
【0201】
「化学安定性」は、通常使用時に化学製品または他の因子(例えば、日光を含む)にさらされたときに物性変化に抵抗する度合いを含む。
【0202】
光吸収および光反射色素が競合して、コーティングに対する光子の透過深度を低減することにより、コーティング表面の硬化率、コーティングバルクの硬化率、および基材コーティング界面の硬化率を比較して差別的な硬化を生じることができる。この技術は、本発明のいくつかの実施形態で利用される。
【0203】
本発明のコーティングのカラーバリエーションは広範囲にわたるものであり制限されない。研磨したアルミニウムのブラス調の見た目等、基材またはベースコートを最も明るい色にする色調も存在する。
【0204】
一般に、無光沢から高光沢の範囲が利用可能である。滑らかで高光沢なコーティングは、画像の区別性を高くし、奥行きに錯覚をもたらしたり、濡れたような見た目にすることができる。マット仕上げは、各種基材上のスポット溶接接合部、切り傷、および擦り傷等の表面欠陥または不完全性を隠すことができる。
【0205】
マット仕上げは、硬化パラメータ(例えば、印刷速度またはスループットと、コーティング表面における照射量、塗膜厚、光開始剤および光増感剤のレベル、種別、および調製、基材酸度、ならびにコーティングの蒸着から露光までの時間差との組み合わせ)で制御することができる。
【0206】
コーティング仕上げ(すなわち、マットまたは光沢)は、コーティング表面、コーティングバルク、およびコーティング−基材界面で硬化率が等しくなるように、硬化パラメータ(例えば、印刷速度またはスループットと、コーティング表面における照射量、塗膜厚、光開始剤および光増感剤のレベル、種別、および調製、基材酸度、ならびにコーティングの蒸着から露光までの時間差との組み合わせ)で制御することができる。いくつかの実施形態は1つ以上の仕上げ(例えば、標準、光沢、マット、およびテクスチャ)を有する。
【0207】
本発明を用いてマットおよび光沢仕上げを施すことができる。マット仕上げを実現するためのインクジェットプロセスでは、コーティングの塗布からコーティングの露光までに時差がないかまたは短い時差がある。この時差が短いインクジェットプロセスでは、液滴を適所に適切な形状で留め、液滴の流動および融合を抑える。光沢仕上げを実現するためのインクジェットプロセスでは、コーティングの塗布からコーティングの露光までに液滴の流動および融合を可能にする時差がある。
【0208】
1つの実施形態では、本明細書に記載するように、表面硬化率、バルク硬化率、および基材−コーティング界面硬化率を調節し、コーティングの前にまたはそれと同時に基材に酸を加えて滑らかな膜を生じることにより高光沢仕上げを得てもよい。
【0209】
この用途には、各種の印刷製品が含まれる。印刷製品の例としては、標識、特殊グラフィック、印刷物、プラスチック製品、自動車両、トラックおよびバス、飲料容器、印刷可能な電気回路、セキュリティタグ、ラベル、3D浮き上がりグラフィック、ならびに約12〜約3.2メートル幅またはそれよりもさらに大きいフォーマットプリンタで印刷される製品が挙げられるがこれらに限定されない。
【0210】
1つの実施形態では、ステッカーが印刷される。ステッカーの例としては、ラベル、バーコードラベル、パッケージラベル、バンパーステッカー、自動車両用標識、自動車両用グラフィック、および危険有害性通知用プラカードが挙げられるがこれらに限定されない。
【0211】
屋外耐久性を有するグラフィックの例としては、標示板、バナー、車両外装用転写グラフィックキット、自動車用グラフィック、トラック用グラフィック、ワゴン車用グラフィック、ボート用グラフィック、ワゴン車用ストライプ状吹付けグラフィック、自動車用ストライプ、トラック用ストライプ、ボート用ストライプ、窓用デカールおよびピンストライプが挙げられるがこれらに限定されない。
【0212】
硬化は、FTIR、耐化学性、耐溶剤性、ゲル化率、ガラス遷移温度または接着性で測定することができる。
【0213】
色素形成の度合いは重量に基づいて測定され、通常、色素と結合材の比(P/B)で示される。色素を所与のレベルでコーティング組成物の処方に加えることにより、着色、隠蔽もしくは不透明化、および/または色濃度の付加を行うことができる。
【0214】
硬化したコーティングの可撓性は、伸び率および/または屈曲率で特徴付けることができる。
【0215】
「接着」は、ドライコーティングにより表面に付着し、気泡、剥離、ひび割れ、またはテープはがれを生じることなく固定し続ける能力を含む。「接着」はまた、「密着」および「結合」等の用語の意味も含む。他の接着プロセスとしては、水素結合、ファンデルワールス引力またはある分子と隣接する分子との間の引力である分子間引力、イオン(異極)結合、配位(供与共有)結合、吸収、引力または物理結合、溶着結合、および/または金属結合が挙げられるがこれらに限定されない。「接着」はまた、基材と後から塗布したコーティングとの密接した一体化も含む。
【0216】
図12は、静止材料基材(1)を配置または装着または内部に入れたインクジェットプリンタ、および装置基部(2)を示す。ロングランプ(3)、印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が装置基部(2)に取り付けられている。ロングランプ(3)、印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が装置基部(2)に対して「y方向」に移動可能である一方、静止材料基材(1)は静止している。印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は、装置基部(2)に対して「x方向」に移動可能である。1つの実施形態では、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は、印刷時には、インクを流すために消灯していてもよい。他の実施形態では、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は点灯していてもよい。さらに他の実施形態では、一方の印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が点灯中に他方の印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が消灯していてもよい。静止材料基材(1)の幅に応じて、ロングランプ(3)および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)の台数を1台より多くしてもよい。このため、本明細書に記載のランプを用いて照射量を増加することができる。当業者に理解されるように、光開始剤パッケージおよびレベル、色素種別およびレベル、ならびに色素のスペクトル吸収に応じて、波長、輝度、および/またはスペクトル出力が異なるランプ(3)および/または(6)を用いることができる。図12には、静止材料基材(1)が静止した非限定的構成を示している。
【0217】
図13は、装置基部(8)に対して「y方向」にロングランプ(9)、印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)、および装置基部(8)を通過可能な移動材料基材(7)を示す。ロングランプ(9)は静止している。印字ヘッドキャリッジ(4)、印字ヘッド(5)、および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は、装置基部(8)に対して「x方向」に同時に移動することができる。1つの実施形態では、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は、印刷時には、インクを流すために消灯していてもよい。他の実施形態では、印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)は点灯していてもよい。さらに他の実施形態では、一方の印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が点灯中に他方の印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)が消灯していてもよい。移動材料基材(7)の幅に応じて、ロングランプ(9)および印字ヘッドキャリッジ内搭載ランプ(6)の台数を1台より多くしてもよい。このため、本明細書に記載のランプ(6)および/または(9)を用いて照射量を増加することができる。当業者に理解されるように、光開始剤パッケージおよびレベル、色素種別およびレベル、ならびに色素のスペクトル吸収に応じて、波長、輝度、および/またはスペクトル出力が異なるランプ(6)および/または(9)を用いることができる。
【0218】
1つの実施形態では、本発明は、印刷媒体と直交して搭載され、当該印刷媒体がプリンタを通過する際に照射を行う0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmのライト、または一列のライトを有するインクジェットプリンタを含む。また、プリンタは、液滴を適所に維持するために0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmのライトを印字ヘッドキャリッジの両側に搭載してもよい。この結果、当業者に理解されるように、印字ヘッドキャリッジが媒体を横切って画像を印刷する際に、インクジェット液滴が印字ヘッドキャリッジランプにより照射され、液滴流出または液滴拡散を防止または抑えることができる。プリンタは、ポンプ、バルブ、インクレベルセンサ、フィルタ、メインリザーバ、ヘッド搭載リザーバ、加熱器、熱センサ、インク脱気装置、インク再循環部、インク回収部、インク排出部、インク充填部、コンピュータ電気回路制御系、ならびに電気回路およびコンピュータ回路から構成されるがこれらに限定されないインク濾過/供給系を備えるかまたは装備してもよい。印刷メニスカスの調節は制御可能であり、メニスカスの減圧により噴射確実性を調節できる。プリンタインク塗布器は、2〜100キロヘルツの発生周波数、および4メートル/秒から最大25メートル/秒の液滴速度で3〜100ピコリットルの液滴送出容積が実現可能なドロップオンデマンドインクジェット印刷機であってもよい。プリンタは、インクと互換性のある4〜16個の印字ヘッドを有することができる。
【0219】
図5は、UV Systems社の254nmランプ、TripleBright IIの下において、22”ランプ長および4インチ(インチ=”とも表記する;例えば、4”)ランプ幅に対する中心に位置する時間の関数としての照射量をミリジュール/cm2の単位で示す。
【0220】
「暗領域」は、放射または光源と直交しない表面であって、放射と直交する表面と比較して光子またはエネルギー量が低減した表面を含む。「低露光領域」は、放射または光源と直交しない表面であって、放射と直交する表面と比較して光子またはエネルギー量が低減した表面を含む。
【0221】
「制限露光」は、全輝度における直交する露光と比較して露光が低減、低下、または減少したコーティング組成物(コーティング、または硬化すべき材料)の露光状況を含む。制限露光は、表面、バルク、および基材−コーティング界面が均一な光活性および光重合を有さなくなる原因(被照射材料に対する光源の向き、被照射材料に対する光源の構成、コーティング厚さ、色素形成、および光線透過率の低減(これらに限定されない))に起因して発生し得る。
【0222】
暗硬化の特徴としては、色素種別およびレベル、膜厚、部材または基材形状、発光方向と直交する部材または基材領域配向形式による光電磁放射の低減の結果として放射が無いか、またはそのレベルが低減した状態において、塗布されたコーティングのカチオン重合を開始する基材の潜在能力が挙げられる。
【実施例】
【0223】
本明細書中の実施例では、「5フィート」幅の媒体に対する直線印刷速度および印刷率と、印刷率ft2/hrとを下記の表2で対応させている。
【表2】
【0224】
[実施例1]
酸コーティング287−127は、カチオンコーティング組成物の第2のコーティング(本明細書中の実施例3、4、5、および6において用いられる)を塗布する前に基材に塗布され、光活性されることにより酸を放出する例示的な前処理剤を表す。酸コーティング287−127の組成は、イソプロパノール(50グラム);TMPOオキセタン(10グラム);Irgacure 250(2グラム)であった。
【0225】
[実施例2:基材の説明および調製]
基材1:ガラスを石鹸水で洗浄した後乾燥させた。4インチ×4インチのガラスプラークをイソプロパノールで拭き、コーティングを塗布する90秒±90秒前に乾燥させた。
【0226】
基材2:基材1と同様の調製後に、酢酸(99.6%氷酢酸)で拭き取りを行い、風乾した。
【0227】
基材3:基材1と同様の調製後に、「酸コーティング」287−127(実施例1に記載)を塗布し、#10ワイヤケータ(wire cater)を用いて引き延ばした。この酸コーティングを施したガラスを、さらなるコーティングを塗布する前に、後で塗布するそれらのコーティングと同じ照射量で254nmランプで露光して酸コーティングを活性化した。
【0228】
基材4:Instachange IP(3Mより市販されるビニル)。
【0229】
基材5:基材4と同様の調製後に、酢酸(99.6%氷酢酸)で拭き取りを行い、風乾した。
【0230】
基材6:基材4と同様の調製後に、「酸コーティング」287−127(実施例1)を塗布し、#10ワイヤケータを用いて引き延ばした。この酸コーティングを施したInstachangeを、さらなるコーティングを塗布する前に、後で塗布するそれらのコーティングと同じ照射量で254nmランプで露光して酸コーティングを活性化した。
【0231】
[実施例3:Black 287−126カチオン組成物]
このコーティングは以下の成分を含有し、それらをまとめて暗色のプラスチック容器に入れて光から保護した:Cyracure UVR−6110(64.6グラム)、TMPO(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のトリメチロールプロパンオキセタン)(16.2グラム)、Black pigment 10C 909(Shepherd Color Company(Cincinnati,Ohio USA)のBlack pigment 10C 909)(5.0グラム)、Irgacure 250(Irgacure 250は、Ciba Specialty Chemicals Corp.(Terrytown,New York,USA)より供給された)(3.8グラム)、Rapicure DVE−3(5.0グラム)、Speedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))(0.75グラム)、およびSilwet 7604(GE Silicones(Friendly,WV))(0.5グラム)。ULTRA−TURRAX T25を用いてこれらの成分を15分間分散させた。分散後、2.0グラムのBoltorn H2004(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のBoltorn H2004)を添加した。
【0232】
硬化をテストするために、実施例2に記載説明したように実施例3のコーティングを基材上に引き延ばした。
【0233】
その後、必要に応じて、サンプルを(図8に規定するような)光に露光するか、または無光状態で保持した。露光が完了した後、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープで接着し、1分および5分間隔でサムツイスト法を行ってコーティングの硬化を評価した。
【0234】
【表3】
【0235】
1.上記のように、ワイヤケータ#28を用いて基材上にブラックコーティングを引き延ばした。
【0236】
2.「サムツイスト」テストは、人の親指をコーティングに接触させて下方に圧力をかけながら親指の向きを90度回転させて行う。
【0237】
3.サムツイストでは以下のように判定を行なった:10=不良なし、9=表面にごく僅かな痕跡あり、8=表面に僅かな痕跡あり、6=表面に痕跡があるが膜破断なし、4=表面皮膜の破断あり、2=表皮が容易に破断、0=完全な不良。
【0238】
4.本例では、接着の割合について、「コーティング接着性テスト」後にコーティングが完全に接着(100%)している場合を100と特定し、基材に付着し続けるコーティングが0パーセントの場合を0と特定する。本明細書中の実施例では、ASTM 3359−02テスト法Aに従って「コーティング接着性テスト」を行ったが、ASTM 3359−02テスト法AにおいてX印を刻まないという変更を行っている。本明細書中の実施例におけるコーティング接着性テストに用いたテープは、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープ(3M(St.Paul,MN)から入手可能)であった。テスト法Aの7.5に従って、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープを試料で塗工表面に貼り付け、指で適切にならした。本明細書中の実施例におけるテストでは、テスト法Aの7.6に従って、テープの自由端を素早く引いて、できる限り90°近くになるように「引っ張り上げた」。接着性については、基材のテスト領域と接触し続ける膜の割合を目視によって判定した。
【0239】
5.基材の酸分によって上面と下面間の差別的な硬化のバランスが取れなかった場合に表面に深刻な皺が発生した。
【0240】
6.コーティング、硬化、およびテストが完了した時点で塗布室の温度を測定すると、71°F〜73°Fの範囲が記録された。
【0241】
7.上記チャートの印刷速度は、ランプの下でコーティングに費やした実際の時間に換算することが可能である。この計算は、5フィート幅媒体を使用し、ランプが4”の照明窓を有するものと仮定して行われる。換算は、1200を上記チャートに示す印刷速度(平方フィート/時間)で割って行う。例えば、58.5平方フィート/時間の印刷速度については、ランプの下における時間として1200/58.5、すなわち、20.51秒が示される。
【0242】
[実施例4;Magenta 287−123カチオン組成物]
以下の成分をまとめて暗色のプラスチック容器に入れ光から保護した:Cyracure UVR−6110(64.6グラム)、TMPO(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のトリメチロールプロパンオキセタン)(16.2グラム)、Toner Magenta E02(Clariant GmbH(Frankfurt,Germany)により供給されるToner Magenta E02)(4.0グラム)、Rapicure DVE−3(5.0グラム)、Irgacure 250(Irgacure 250は、Ciba Specialty Chemicals Corp.(Terrytown,New York USA)により供給された。)(3.0グラム)、Speedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))(0.75グラム)、およびSilwet 7604(GE Silicones(Friendly,WV))(0.5グラム)。ULTRA−TURRAX T25を用いてこれらの成分を15分間分散させた。分散後、2.0グラムのBoltorn H2004(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のBoltorn H2004)を添加した。
【0243】
硬化をテストするために、実施例2に記載説明したように実施例4を基材上に引き延ばした。その後、必要に応じて、サンプルを(図8に規定するような)光に露光するか、または無光状態で保持した。露光が完了した後、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープで接着し、1分および5分間隔でサムツイスト法を行ってコーティングの硬化を評価した。
【表4】
【0244】
1.上記のように、ワイヤケータ#28を用いて基材上にマゼンタコーティングを引き延ばした。
【0245】
2.サムツイストでは以下のように判定を行なった:10=不良なし、9=表面にごく僅かな痕跡あり、8=表面に僅かな痕跡あり、6=表面に痕跡があるが膜破断なし、4=表面皮膜の破断あり、2=表皮が容易に破断、0=完全な不良。
【0246】
3.コーティング、硬化、およびテストが完了した時点で塗布室の温度を測定すると、71°F〜73°Fの範囲が記録された。
【0247】
4.上記チャートの印刷速度は、ランプの下でコーティングに費やした実際の時間に換算することが可能である。この計算は、5フィート幅媒体を使用し、ランプが4”の照明窓を有するものと仮定して行われる。換算は、1200を上記チャートに示す印刷速度(平方フィート/時間)で割って行う。例えば、58.5平方フィート/時間の印刷速度については、ランプの下における時間として1200/58.5、すなわち、20.51秒が示される。
【0248】
[実施例5:Cyan 287−124カチオン組成物]
以下の成分をまとめて暗色のプラスチック容器に入れ光から保護した:Cyracure UVR−6110(64.6グラム)、TMPO(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のトリメチロールプロパンオキセタン)(16.2グラム)、Toner Cyan BG(Clariant GmbH(Frankfurt,Germany)により提供されるToner Cyan BG)(4.0グラム)、Rapicure DVE−3(5.0グラム)、Irgacure 250(Irgacure 250は、Ciba Specialty Chemicals Corp.(Terrytown,New York USA)により供給された。)(3.0グラム)、Speedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))(0.75グラム)、およびSilwet 7604(GE Silicones(Friendly,WV))(0.5グラム)。ULTRA−TURRAX T25を用いてこれらの成分を15分間分散させた。分散後、2.0グラムのBoltorn H2004(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のBoltorn H2004)を添加した。
【0249】
硬化をテストするために、実施例2に記載説明したように実施例5を基材上に引き延ばした。その後、必要に応じて、サンプルを(図8に規定するような)光に露光するか、または無光状態で保持した。露光が完了した後、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープで接着し、1分および5分間隔でサムツイスト法を行ってコーティングの硬化を評価した。
【表5】
【0250】
1.上記のように、ワイヤケータ#28を用いて基材上にシアンコーティングを引き延ばした。
【0251】
2.サムツイストでは以下のように判定を行なった:10=不良なし、9=表面にごく僅かな痕跡あり、8=表面に僅かな痕跡あり、6=表面に痕跡があるが膜破断なし、4=表面皮膜の破断あり、2=表皮が容易に破断、0=完全な不良。
【0252】
3.上記例のコーティング前に、酸コーティングの実施例1(287−127)を基材上に引き引き延ばした後、次のコーティング照射線量率に合わせて露光した。
【0253】
4.コーティング、硬化、およびテストが完了した時点で塗布室の温度を測定すると、71°F〜73°Fの範囲が記録された。
【0254】
5.上記チャートの印刷速度は、ランプの下でコーティングに費やした実際の時間に換算することが可能である。この計算は、5フィート幅媒体を使用し、ランプが4”の照明窓を有するものと仮定して行われる。換算は、1200を上記チャートに示す印刷速度(ft2/hr)で割って行う。例えば、58.5平方フィート/時間の印刷速度については、ランプの下における時間として1200/58.5、すなわち、20.51秒が示される。
【0255】
[実施例6:イエローカチオン組成物]
以下の成分をまとめて暗色のプラスチック容器に入れ光から保護した:Cyracure UVR−6110(64.6グラム)、TMPO(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のトリメチロールプロパンオキセタン)(16.2グラム)、Toner Yellow(Clariant GmbH(Frankfurt,Germany)により提供されるToner Yellow 3GP)(2.75グラム)、Rapicure DVE−3(5.0グラム)、Irgacure 250(Irgacure 250は、Ciba Specialty Chemicals Corp.(Terrytown,New York USA)により供給された。)(3.0グラム)、Speedcure CPTX(Aceto Corporation(Lake Succes,New York))(0.75グラム)、およびSilwet 7604(GE Silicones(Friendly,WV))(0.5グラム)。ULTRA−TURRAX T25を用いてこれらの成分を15分間分散させた。分散後、2.0グラムのBoltorn H2004(Perstorp Specialty Chemicals AB(Perstorp,Sweden)のBoltorn H2004)を添加した。
【0256】
硬化をテストするために、実施例2に記載説明したように実施例6を基材上に引き延ばした。その後、必要に応じて、サンプルを(図8に規定するような)光に露光するか、または無光状態で保持した。露光が完了した後、Scotch(登録商標)MagicTMテープカタログ#810のテープで接着し、1分および5分間隔でサムツイスト法を行ってコーティングの硬化を評価した。
【表6】
【0257】
1.ワイヤケータ#28を用いて基材上にイエローコーティングを引き延ばした。
【0258】
2.サムツイストでは以下のように判定を行なった:10=不良なし、9=表面にごく僅かな痕跡あり、8=表面に僅かな痕跡あり、6=表面に痕跡があるが膜破断なし、4=表面皮膜の破断あり、2=表皮が容易に破断、0=完全な不良。
【0259】
3.上記のように軽く塗布したコーティングを用いて硬化を行った。
【0260】
4.未処理のものよりも酢酸で処理した基材に関して膜特性が著しく改善された。
【0261】
5.コーティング、硬化、およびテストが完了した時点で塗布室の温度を測定すると、71°F〜73°Fの範囲が記録された。
【0262】
6.上記チャートの印刷速度は、ランプの下でコーティングに費やした実際の時間に換算することが可能である。この計算は、5フィート幅媒体を使用し、ランプが4”の照明窓を有するものと仮定して行われる。換算は、1200を上記チャートに示す印刷速度(平方フィート/時間)で割って行う。例えば、58.5平方フィート/時間の印刷速度については、ランプの下における時間として1200/58.5、すなわち、20.51秒が示される。
【0263】
[実施例7]
実施例7:プロフィルメータ測定表および図15は、本明細書に開示する方法を利用して行ったコーティング実験についてのプロフィルメータ測定結果を含む。これらの結果および以下の実施例は、本明細書に開示するコーティング技術によって、様々な色について幅広いコーティング仕上げを得ることが可能であることを示している。本発明によって、この所望の仕上げを有する物品を生成する差別的な硬化を制御し、滑らか、テクスチャ加工、または皺加工コーティングを施した物品を生成することができる。本明細書の実施例は、本発明の用途を限定するものではなく、当業者には公知のように、色素種別、色素レベル、および光吸収特性が、光に関して光開始剤パッケージと競合することにより、表面硬化率、バルク膜硬化率、およびコーティング基材界面硬化率に関して、コーティング内で硬化率の誤差を生じることができることを示す。実施例7では、所与のコーティングを不活性ガラス表面および酸で前処理した表面に上記の割合で塗布し、上記印刷速度で硬化した時に、テクスチャ加工または滑らか仕上げが実現可能であることを示す。この実施例では、「不活性」または「不活性表面」は、コーティングおよび硬化時に酸性ではなく、かつ/またはカチオンコーティングの硬化処理または硬化率にほとんど寄与しない基材または基材表面である。
【表7】
【0264】
1.塗布詳細:プロフィルメータで表面の特徴を評価する物品を生成するために用いた印刷速度(ft2/hr)、ワイヤケータ#(WC#)、および表面処理。
【0265】
2.Taylor Hobson社のプロフィルメータを用いてプロフィルメータデータを収集した。テスト領域上を皺に直交させながら5ミリ移動させてバレーおよびピークを測定した。未加工のデータプロフィールを解析して「ピークバレー」、「ピークピーク」、および「ピーク合計」の値を求めた。
【0266】
[実施例8]
本明細書中の実施例では、基材が5フィート幅であると仮定して、印刷率をft2/hrで示している。この情報は表8(5フィート幅媒体の印刷速度対応表)に記載されている。
【表8】
【0267】
媒体幅および硬化率に基づくスループット速度の計算。
【表9】
【表10】
【0268】
[実施例9]
図5にUV Systems社の254nmランプ、TripleBright IIの照射量対時間をグラフで表した。図5の照射量対時間の傾きから、ランプの下では毎秒2.85mj/cm2の照射量が得られることが分かる。ランプの下における異なる時間に対する照射量については、以下のように計算する:2秒=5.7mj/cm2、5秒=14.25mj/cm2、10秒=28.5mj/cm2,20秒=57.0mj/cm2。
【0269】
[実施例10]
図6は、Integration Technology(115 Heyford Park,Upper Heyford,Oxon,UK OX25 5HA)のUV積算器(UV Integrator)用いて測定した直線ランプ速度に対する0.008ワット/cm2/nmの輝度におけるUV Systems社の254nmランプ、TripleBright IIのUV照射量をグラフで表す。この積算器は、電球が積算器上を移動する際に、電球の長さ22”に対して電球の中心に配置した。
【0270】
[実施例11]
図7は、Solatell社のUV Spectroradiometer(Solatell Limited(Centronic House King Henry’s Drive Croydon,CR9 0BG United Kingdom))を用いて得たデータと、Integrated Technologies社のSubZero 55水銀硬化ランプ技術を用いたGerber Scientific Products社のSolara UVインクジェット印刷機の光出力とを表す。
【0271】
[実施例12]
図8は、Solatell社のUV Spectroradiometerを用いて得たデータと、本明細書中のコーティングを硬化するために用いたUV Systems 社の254nmランプ、TripleBright IIの光出力とを表す。重要な点として、輝度がGerber Scientific Products社の最新のSolara UVインクジェット印刷機で用いる電球の輝度の1/10未満であることに留意されたい。本明細書で用いた254nmランプは、UV Systems,Inc(Renton,WA)から入手可能であり、TripleBrightというラベルが付けられていたがTripleBright IIとして構成されていた。電球長は22”(18”の石英/ガラス)であり、0.008ワット/cm2/nmの輝度で254nmのピーク波長を有していた。
【0272】
[実施例13]
本研究の一部として多数のUV光源を評価した。以下の非限定的なリストは、本明細書に記載のコーティングの硬化に使用可能な低輝度光の利用可能な範囲を示す。
【0273】
図9は、306/312nmの電球を用いたUV Syestems社のTripleBright IIのUVスペクトル分布を示す。
【0274】
図10は、254、306/312、352、368nmの電球を用いたUV Syestems社のTripleBright IIのUVスペクトル分布を示す。
【0275】
図11は、本発明の範囲に該当する市販のLED製品2つのスペクトルデータを、254nmの電球を用いたUV Systems社のTripleBright IIの出力と比較して示す。これらは、Norlux社(Carol Stream,IL)のNHX3950405005 395nm Hex LED、およびUV Process Supply社(Chicago,IL)のCureAll Linear 100 Developers Unitである。
【0276】
[実施例14]
実施例14は、移動基材構成、または静止基材および移動ロングランプ構成の直線基材投入速度に応じて計算されたコーティングの露光時間を示す。
【0277】
【0278】
特定の実施形態に関して本発明を説明したが、本説明および付属図面に照らし合わせることで、当業者には多くの代替例および変形例が明白となる。よって、添付の請求項の精神および範囲内に該当する全ての代替例および変形例が本発明に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】プロセスフロー図である。
【図2】テクスチャ加工仕上げプロセスフロー図である。
【図3】コーティングされた基材(物品)の図である。
【図4】低露光−暗硬化の描写する図である。
【図5】照射量対時間(254nmランプ(静止状態))のグラフである。
【図6】照射量対速度のグラフである。
【図7】Subzero 055のUVスペクトル輝度図である。
【図8】254nmランプのスペクトルデータである。
【図9】蛍光灯(306/312nm)のスペクトルデータである。
【図10】254nm、306/312nm、352nm、および368nmランプのスペクトルデータである。
【図11】LEDおよび蛍光灯(Norlux CureAll、蛍光灯)のスペクトルデータである。
【図12】プロセス構成(静止基材)を示す図である。
【図13】プロセス構成(移動基材)を示す図である。
【図14】プロフィルメータで測定したコーティングプロファイルである。
【図15】マルチテクスチャプロセスフロー図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光によって少なくとも部分的にカチオン硬化したコーティングと結合した基材を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記コーティングの一部分は、少なくとも部分的には、前記光に曝す必要がなく化学反応によって硬化されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記基材の分子と前記コーティングの分子との間に共有結合が形成されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記基材の分子と前記コーティングの分子との間に非共有結合が形成されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記コーティングの組成物は、カチオン重合の産物である高分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記コーティングは、該コーティングにクラックを生じない工学歪み1%〜500%の範囲の可撓性を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記コーティングの組成物が色素を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記コーティングの組成物が有色であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記コーティングがクリアコートであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
基材をコーティングする方法であって、
カチオンコーティング組成物を準備する工程と、
基材を準備する工程と、
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を準備する工程と、
前記カチオンコーティング組成物を前記基材の少なくとも一部に一定量塗布してコーティング部分を形成する工程と、
前記光に曝すことにより、該一定量の前記カチオンコーティング組成物の少なくとも第1の部分を硬化する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記カチオンコーティング組成物の少なくとも第2の部分を、前記光に曝す必要がない反応によって硬化する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記硬化工程は、約1分以下の時間で約100ミクロン以下の厚さの量だけ前記カチオンコーティング組成物を硬化することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化工程は、少なくとも一部分において、クラックを生じない工学歪み1%〜500%の範囲の可撓性を有する硬化コーティングを産生することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記一定量の前記カチオンコーティング組成物の第2の部分を、前記第1の部分とは輝度が異なる前記光に曝して硬化する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記カチオンコーティング組成物の分子と前記基材の分子との間に共有結合を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記カチオンコーティング組成物の分子と前記基材の分子との間に非共有結合を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記カチオンコーティング組成物に含まれる光増感剤を前記光に曝して活性化させる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記カチオンコーティング組成物に含まれる光開始剤を前記光に曝して活性化させる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記硬化工程の最中に、前記光に曝さないで前記カチオンコーティング組成物の少なくとも一部分を反応させる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記基材の酸性官能基を反応させる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記基材は、前記塗布工程前には酸性である第1の表面部と、該塗布工程前には酸性ではない第2の表面部とを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記一定量の前記カチオンコーティング組成物の少なくとも一部分において差別硬化を行う工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項23】
皺コーティングを生じさせる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記基材の表面に酸を塗布する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項25】
前記一定量の前記カチオンコーティングの塗布と同時に前記基材の表面に酸を塗布する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項26】
第1のカチオンコーティング組成物を一定量塗布する前に第1の表面部に一定量の酸を塗布し、前記酸が塗布されていない第2の表面部に第2のカチオンコーティング組成物を一定量塗布する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のカチオンコーティング組成物は、前記第2のカチオンコーティング組成物とは異なることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のカチオンコーティング組成物は、前記第2のカチオンコーティング組成物と同一であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
コーティングされた物品であって、
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光によって少なくとも部分的にカチオン硬化したコーティングと結合した基材を含むことを特徴とする物品。
【請求項30】
光沢仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項31】
標準仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項32】
マット仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項33】
テクスチャ加工仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項34】
皺加工仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項35】
印刷グラフィックであることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項36】
屋外耐久性を有する印刷グラフィックであることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項37】
印刷ラベルであることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項38】
印刷ステッカーであることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項39】
印刷文書であることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項40】
印刷された表面を含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項41】
前記コーティングを施した加工表面を伴う多次元形状を有することを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項42】
差別硬化により硬化された部分を含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項43】
二重硬化により硬化された部分を含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項44】
一定量のコーティング組成物を基材に塗布するように構成された塗布器と、
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、該光に前記コーティング組成物の少なくとも一部分が曝されるように配置された第1の光源と、
を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項45】
一列に配置され、各々が100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.02W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光する複数の光源と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項46】
第2の光源と、
をさらに備え、前記第1の光源を印刷カートリッジの第1の側に設け、前記第2の光源を前記印刷カートリッジの第2の側に設けたことを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項47】
前記光源が、前記一定量のコーティング組成物が塗布される前記基材の移動方向と直交して配置されたことを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項48】
前記塗布器は、2キロヘルツ〜200キロヘルツの範囲の発光周波数および2m/s〜50m/sの範囲の液滴速度で、約3〜約500ピコリットルの範囲の液滴量を塗布するように構成されていることを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項49】
ドロップオンデマンド方式であることを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項50】
前記コーティング組成物を連続的に塗布することを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項51】
前記コーティング組成物を半連続的に塗布することを特徴とする請求項45に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項52】
コンピュータ制御系と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項53】
前記塗布器はインクジェット印字ヘッドを含むことを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項54】
ロールトゥーロール方式での媒体の取り扱いに対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項55】
剛性媒体上への印刷に対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項56】
10メートル以下の大きさの印刷媒体に対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項57】
プリントトゥールート動作に対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項58】
プリントトゥーカット動作に対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項59】
ランプ波長のフィードバック機構および制御機構と、
をさらに備えることを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項60】
ランプ輝度のフィードバック機構および制御機構と、
をさらに備えることを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項61】
一定量のコーティング組成物を基材に塗布するように構成された塗布器と、
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、該光に前記コーティング組成物の少なくとも一部分が曝されるように配置された第1の光源と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項1】
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光によって少なくとも部分的にカチオン硬化したコーティングと結合した基材を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記コーティングの一部分は、少なくとも部分的には、前記光に曝す必要がなく化学反応によって硬化されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記基材の分子と前記コーティングの分子との間に共有結合が形成されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記基材の分子と前記コーティングの分子との間に非共有結合が形成されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記コーティングの組成物は、カチオン重合の産物である高分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記コーティングは、該コーティングにクラックを生じない工学歪み1%〜500%の範囲の可撓性を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記コーティングの組成物が色素を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記コーティングの組成物が有色であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記コーティングがクリアコートであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
基材をコーティングする方法であって、
カチオンコーティング組成物を準備する工程と、
基材を準備する工程と、
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を準備する工程と、
前記カチオンコーティング組成物を前記基材の少なくとも一部に一定量塗布してコーティング部分を形成する工程と、
前記光に曝すことにより、該一定量の前記カチオンコーティング組成物の少なくとも第1の部分を硬化する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記カチオンコーティング組成物の少なくとも第2の部分を、前記光に曝す必要がない反応によって硬化する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記硬化工程は、約1分以下の時間で約100ミクロン以下の厚さの量だけ前記カチオンコーティング組成物を硬化することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化工程は、少なくとも一部分において、クラックを生じない工学歪み1%〜500%の範囲の可撓性を有する硬化コーティングを産生することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記一定量の前記カチオンコーティング組成物の第2の部分を、前記第1の部分とは輝度が異なる前記光に曝して硬化する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記カチオンコーティング組成物の分子と前記基材の分子との間に共有結合を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記カチオンコーティング組成物の分子と前記基材の分子との間に非共有結合を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記カチオンコーティング組成物に含まれる光増感剤を前記光に曝して活性化させる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記カチオンコーティング組成物に含まれる光開始剤を前記光に曝して活性化させる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記硬化工程の最中に、前記光に曝さないで前記カチオンコーティング組成物の少なくとも一部分を反応させる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記基材の酸性官能基を反応させる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記基材は、前記塗布工程前には酸性である第1の表面部と、該塗布工程前には酸性ではない第2の表面部とを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記一定量の前記カチオンコーティング組成物の少なくとも一部分において差別硬化を行う工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項23】
皺コーティングを生じさせる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記基材の表面に酸を塗布する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項25】
前記一定量の前記カチオンコーティングの塗布と同時に前記基材の表面に酸を塗布する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項26】
第1のカチオンコーティング組成物を一定量塗布する前に第1の表面部に一定量の酸を塗布し、前記酸が塗布されていない第2の表面部に第2のカチオンコーティング組成物を一定量塗布する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のカチオンコーティング組成物は、前記第2のカチオンコーティング組成物とは異なることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のカチオンコーティング組成物は、前記第2のカチオンコーティング組成物と同一であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
コーティングされた物品であって、
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光によって少なくとも部分的にカチオン硬化したコーティングと結合した基材を含むことを特徴とする物品。
【請求項30】
光沢仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項31】
標準仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項32】
マット仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項33】
テクスチャ加工仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項34】
皺加工仕上げされた部分をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項35】
印刷グラフィックであることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項36】
屋外耐久性を有する印刷グラフィックであることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項37】
印刷ラベルであることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項38】
印刷ステッカーであることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項39】
印刷文書であることを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項40】
印刷された表面を含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項41】
前記コーティングを施した加工表面を伴う多次元形状を有することを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項42】
差別硬化により硬化された部分を含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項43】
二重硬化により硬化された部分を含むことを特徴とする請求項29に記載の物品。
【請求項44】
一定量のコーティング組成物を基材に塗布するように構成された塗布器と、
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、該光に前記コーティング組成物の少なくとも一部分が曝されるように配置された第1の光源と、
を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項45】
一列に配置され、各々が100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.02W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光する複数の光源と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項46】
第2の光源と、
をさらに備え、前記第1の光源を印刷カートリッジの第1の側に設け、前記第2の光源を前記印刷カートリッジの第2の側に設けたことを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項47】
前記光源が、前記一定量のコーティング組成物が塗布される前記基材の移動方向と直交して配置されたことを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項48】
前記塗布器は、2キロヘルツ〜200キロヘルツの範囲の発光周波数および2m/s〜50m/sの範囲の液滴速度で、約3〜約500ピコリットルの範囲の液滴量を塗布するように構成されていることを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項49】
ドロップオンデマンド方式であることを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項50】
前記コーティング組成物を連続的に塗布することを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項51】
前記コーティング組成物を半連続的に塗布することを特徴とする請求項45に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項52】
コンピュータ制御系と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項53】
前記塗布器はインクジェット印字ヘッドを含むことを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項54】
ロールトゥーロール方式での媒体の取り扱いに対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項55】
剛性媒体上への印刷に対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項56】
10メートル以下の大きさの印刷媒体に対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項57】
プリントトゥールート動作に対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項58】
プリントトゥーカット動作に対応することを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項59】
ランプ波長のフィードバック機構および制御機構と、
をさらに備えることを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項60】
ランプ輝度のフィードバック機構および制御機構と、
をさらに備えることを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項61】
一定量のコーティング組成物を基材に塗布するように構成された塗布器と、
100nm〜1200nmの範囲の波長および0.0003W/cm2/nm〜0.05W/cm2/nmの範囲の輝度を有する光を発光し、該光に前記コーティング組成物の少なくとも一部分が曝されるように配置された第1の光源と、
を備えることを特徴とする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−516050(P2009−516050A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541135(P2008−541135)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/041439
【国際公開番号】WO2007/058651
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(505210137)ガーバー サイエンティフィック インターナショナル インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/041439
【国際公開番号】WO2007/058651
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(505210137)ガーバー サイエンティフィック インターナショナル インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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