説明

酸性外用組成物及びそれを含む化粧料、育毛剤、外用剤用の皮膚等への浸透促進剤

【課題】医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進効果を有する酸性外用組成物、及びそれを含む化粧料、育毛剤、外用剤用の皮膚等への浸透促進剤の提供。
【解決手段】酸性多糖と水を必須成分とする酸性外用組成物が、次の効果を有する。(1)毛髪をなめらかでしなやかにし、肌のきめを整え、皮膚の緊張を高め、しわを伸ばし、肌を白くし、肌に透明感を与え、肌にうるおい感を与え、シミを薄くし、毛穴を目立たなくする美容効果、(2)脱毛を抑制し、毛髪の成長を促進する育毛効果、(3)医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進効果。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容効果、育毛効果、および医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進効果を有する酸性外用組成物、及びそれを含む化粧料、育毛剤、外用剤用の皮膚等への浸透促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性多糖には血液凝固阻害作用や細胞増殖因子の活性制御作用、ウイルスの細胞接着阻害作用、抗炎症作用、免疫賦活作用、抗ガン作用、止血作用など多彩な生理活性が知られ、医薬品や化粧料の有効成分として様々な効果が期待される。しかし、その外用剤への応用は少なく、またその効果は不十分である。化粧料の例としては、例えば硫酸多糖を有効成分とする毛穴収縮剤、及び該毛穴収縮剤を含有する毛穴目立ち抑制化粧料が提案されている(後記特許文献1参照)が、その効果は充分ではない。
育毛剤の例としては、例えば酸性多糖体から得られる水素型酸性多糖体を有効成分とする養毛剤が開示されている(後記特許文献2参照)が、効果が不十分であるとともに、製造にカチオン型イオン交換樹脂を用いて酸性多糖体の金属カチオンを水素イオンに変換するため、製造量が限られ、製造にかなりの時間と費用が必要である。
このような現状を鑑みて、本発明は製造が容易で、新規なもしくは公知のものより強い美容、育毛、もしくは医療効果を持つ酸性多糖の外用組成物を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−169322号公報
【特許文献2】特許第2583812号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進効果を有する酸性外用組成物、及びそれを含む化粧料、育毛剤、外用剤用の皮膚等への浸透促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、酸性多糖と水を必須成分とする酸性外用組成物が、(1)毛髪をなめらかでしなやかにし、肌のきめを整え、皮膚の緊張を高め、しわを伸ばし、肌を白くし、肌に透明感を与え、肌にうるおい感を与え、シミを薄くし、毛穴を目立たなくする美容効果、(2)脱毛を抑制し、毛髪の成長を促進する育毛効果、(3)医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進効果を持つことを見いだして本発明を完成した。なお、本発明でいう皮膚等には皮膚、粘膜、毛髪、爪などの表皮細胞由来組織を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の酸性外用組成物に用いる酸性多糖には、分子内に硫酸基を有する硫酸多糖と、分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖(以下、「カルボキシル多糖」という)とからなる群より選ばれる1種以上が好適に用いられる。なお、酸性多糖は溶解性の問題などから通常はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属やカルシウムなどのアルカリ土類金属の塩として使用されるが、本発明では特に断らない限り、酸性多糖はこれらの塩を含む。
硫酸多糖としては、天然の硫酸多糖、中性多糖もしくは天然の硫酸多糖を硫酸化試薬などを用いて硫酸化した半合成硫酸多糖からなる群より選ばれる1種以上が使えるが、これらに特に限定されるものではない。具体的にはカラギーナン、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、フコイダン、フノラン、ヘパリン、ポルフィランなどがあげられ、これらの1種以上が使える。もちろん、前記硫酸多糖のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、及びカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれる1種以上も使える。これらの中でカラギーナンはタンパク質反応性を有し、皮膚等の組織との親和性が高いため特に好ましい。
【0007】
カルボキシル多糖としては、天然のカルボキシル多糖、中性多糖もしくは天然多糖をカルボキシル化試薬などを用いてカルボキシル化した半合成カルボキシル多糖からなる群より選ばれる1種以上が使えるが、これらに特に限定されるものではない。具体的にはアルギン酸、カラヤガム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン、ゲランガム、ヒアルロン酸、ペクチンなどがあげられ、これらの1種以上が使える。もちろん、前記カルボキシル多糖のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、及びカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれる1種以上も使える。これらの中でアルギン酸、ヒアルロン酸もしくはペクチンが保湿性などを兼ね備えているため好ましく、アルギン酸が使用性等に優れているため特に好ましい。
【0008】
本発明の酸性外用組成物の酸性多糖の配合量は、組成物全量に対して0.001〜5重量%が好ましく、0.01〜3重量%が更に好ましい。配合量が0.001重量%以下であると美容効果、育毛効果、もしくは外用剤の皮膚等への浸透促進効果が期待できず、5重量%を超えて配合してもそれ以上の効果が期待できない。酸性多糖は血液凝固阻害作用や細胞増殖因子の活性制御作用、ウイルスの細胞接着阻害作用、抗炎症作用、免疫賦活作用、抗ガン作用、止血作用などを示すことが知られているが、いずれも体液等とほぼ同等のpH7付近での活性である。酸性多糖を酸性外用組成物として皮膚等に適用すると、(1)毛髪をなめらかでしなやかにし、肌のきめを整え、皮膚の緊張を高め、しわを伸ばし、肌を白くし、肌に透明感を与え、肌にうるおい感を与え、シミを薄くし、毛穴を目立たなくするという美容効果、(2)脱毛を抑制し、毛髪の成長を促進する育毛効果、(3)外用医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進効果を示すことは全く知られていなかった。なお、本発明の酸性外用組成物を内服あるいは注射等の外用以外の方法で投与すると、体液の緩衝作用等により酸性多糖が目的とする臓器や組織などで酸性条件で作用できなくなるため、本発明の効果は得られない。
【0009】
酸性多糖はそのままでは溶けにくいため、通常塩の形で使用され、水溶液にした場合はほぼ中性〜弱アルカリ性である。本発明の酸性外用組成物を酸性にするためには酸、あるいは酸性電気分解水を用いて酸性液とすることができる。例えば酸を用いる場合、酸性多糖が酸で分解等を受けないように酸性多糖と酸、水を混合溶解することにより容易に製造できる。水としては天然水、水道水やイオン交換水、膜濾過水、蒸留水等の精製水などが特に制限なく使用できるが、水の分子集団であるクラスターを磁気、高周波、遠赤外線などの電磁波照射や超音波照射、電圧印加、電気分解、水の高速回転などを用いて小さくした水を用いると、酸性多糖の溶解が促進されるだけでなく、調製された酸性外用組成物の皮膚等への浸透、吸収が促進されるためにより好ましい。
【0010】
酸としては無機酸と有機酸からなる群より選ばれる1種以上が使え、特に限定されるものではない。無機酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸、スルファミン酸、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウムなどがあげられ、これらの1種以上が使える。
有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の直鎖脂肪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、サリチル酸、没食子酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸等のオキシ酸などがあげられ、これらの1種以上が使える。
【0011】
酸性電気分解水としては、公知の方法により製造される酸性電気分解水を用いることができる。例えばバッチ式電気分解水製造装置の場合、陽極側に生成する水素イオンが豊富な酸性水を用いることができる。酸性電気分解水製造に用いる水は精製水、水道水等を用途に応じて適宜用いることができるが、水の電気分解効率を上げるために、塩化ナトリウム等の電解質を水に添加して電気分解を行うことが好ましい。酸性電気分解水は水の分子集団であるクラスターが小さくなっているために、酸性多糖の溶解が容易になり、調製された酸性外用組成物は酸と通常の水を用いて調製した場合に比べて皮膚等への浸透力が増し、美容効果、育毛効果もしくは外用医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進効果がより強力になる。また、酸性電気分解水は殺菌及び殺ウイルス作用に優れるため、酸性外用組成物を調製するとき、同時に殺菌が行えて便利なだけでなく、皮膚粘膜に障害を生じる可能性のある防腐剤や殺菌剤などを配合する必要がない。pH調整等のために酸性電気分解水とともに酸もしくはアルカリを用いてもよく、用いる酸もしくはアルカリは特に制限されない。
【0012】
本発明の酸性外用組成物のpHは、該組成物が皮膚に障害を与えない範囲の酸性であればよいが、pH2.0〜6.0が好ましく、pH2.5〜5.0が更に好ましい。pH2.0以下では酸性が強すぎて皮膚等への障害が生じるおそれがあり、pH6.0以上では本発明の効果が得られない。本発明の酸性外用組成物の酸性度がpH2.0〜6.0の範囲に収まるならば、水酸化ナトリウムなどのアルカリで任意の酸性度に調整することができる。
【0013】
本発明の酸性外用組成物には前記必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で通常外用剤に用いられる原料、例えばアルコール類、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、油分、香料、色素、紫外線吸収・散乱剤、生理活性物質等を用いることができる。なお、本発明でいう生理活性物質等とは、医薬として疾患の治療や予防に用いる物質とともに、美白やシミ改善、色素沈着改善、しわ伸ばしなどの美容効果を持つ物質も含む。
本発明の酸性外用組成物はそのまま皮膚等に塗布して使用できるが、ローション、乳液、ジェル、クリーム、軟膏、スプレー、貼付剤等として剤型としては外用剤であれば特に制限なく使用できる。該組成物はそれ自体が皮膚等への浸透性が強いが、該組成物を他の外用剤に配合すると、配合された外用剤の皮膚等への浸透性が増強されるため、特にべたつき感のある外用剤は、皮膚等に塗擦すると短時聞でべたつき感がなくなってさらっとした感触になり、好ましい使用感を与える。また、塗擦後は衣服等に付着することがないため、衣服等を汚すことがないだけでなく、外用医薬品等では無駄なく有効成分等が投与できる。そのため、本発明の酸性外用組成物を外用医薬品、化粧料等の外用剤に配合して皮膚等への浸透促進剤として用いると、外用剤の投与量、投与回数や投与時間などを減らしても、元の外用剤と同等の効果が得られる。
【0014】
本発明の酸性外用組成物は他の原料を加えることにより、育毛剤や化粧料としてより好適に使用できる。本発明の育毛剤を製造するには、通常の育毛剤処方の有効成分として本発明の酸性外用組成物を配合すればよく、その配合量は育毛剤全量に対して酸性多糖として0.001〜5重量%が好ましく、0.01〜3重量%が更に好ましい。酸性度はpH2.0〜6.0が好ましく、pH2.5〜5.0が更に好ましい。pHを調整する必要がある場合は、任意の酸もしくはアルカリを配合して目的とするpH値に調整することができる。本発明の育毛剤には本発明の効果を損なわない範囲で、他の育毛物質やその他の生理活性物質等を配合できる。本発明の育毛剤は通常の育毛剤と同じ使い方で使用でき、該育毛剤が頭皮全体に万遍なく行き渡るように1日1回以上塗擦すればよい。
【0015】
本発明の化粧料を製造するには、通常の化粧料処方に本発明の酸性外用組成物を配合すればよく、その配合量は化粧料全量に対して酸性多糖として0.001〜5重量%が好ましく、0.01〜3重量%が更に好ましい。本発明の化粧料の酸性度はpH2.0〜6.0が好ましく、pH2.5〜5.0が更に好ましい。pHを調整する必要がある場合は、任意の酸もしくはアルカリを配合して目的とするpH値に調整することができる。本発明の化粧料は通常の化粧料と同じように使用でき、適量を所望する部分に適用すればよい。毛髪をなめらかでしなやかにする、肌のきめを整える、皮膚の緊張を高める、肌を白くする、肌の透明感を増す、あるいは肌にうるおい感を与える効果を得るには1回の使用でもよいが、毎日の使用により効果は一層強まる。しわを伸ばす、シミを薄くする、色素沈着を改善する、あるいは毛穴を目立たなくする効果を得るには、1日1回以上、4日間以上の使用が好ましい。
【0016】
本発明の酸性外用組成物は外用医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進剤として、通常の外用剤に配合して使用でき、その配合量は外用剤全量に対して酸性多糖として0.001〜5重量%が好ましく、0.01〜3重量%が更に好ましい。該組成物を配合した外用剤の酸性度はpH2.0〜6.0が好ましく、pH2.5〜5.0が更に好ましい。pHを調整する必要がある場合は、任意の酸もしくはアルカリを配合して目的とするpH値に調整することができる。本発明の皮膚等への浸透促進剤を配合した外用剤は、通常の外用剤と同様に使用できるが、皮膚等への浸透が促進されるために、投与量、投与回数、投与時間などを減らしても、元の外用剤と同等の効果が得られる。また、生理活性物質等の外用剤において、酸性で変成、変質、活性喪失もしくは著しい活性低下などの不具合が生じない生理活性物質等であれば、その配合量を少なくできる。また従来は経皮吸収率が低かったために外用剤に利用できなかった、酸性で変成、変質、活性喪失もしくは著しい活性低下などの不具合が生じない生理活性物質等を該組成物を配合した外用剤とすれば、経皮吸収率が増加する。
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
実施例1
カラギーナン1.6重量部をエタノール2重量部で分散後、200重量部の蒸留水を徐々に加えながら溶解し、pH7.07のやや粘稠なカラギーナン水溶液を得た。該水溶液にpH0.77の希硫酸を加えて酸性度をpH4.03に調整して酸性外用組成物を得た。
【0018】
実施例 2
カラギーナン0.06重量部を0.5重量部のエタノールにより分散後、25重量部の蒸留水を徐々に加えながら溶解し、pH6.87のやや粘稠なカラギーナン水溶液を得た。該水溶液に0.1N塩酸を加えてpH4.10に酸性度を調整し、更に蒸留水を加えて全量を30重量部としてpH4.17の酸性外用組成物を得た。
【0019】
実施例 3
カラギーナン0.24重量部を0.5重量部のエタノールにより分散後、25重量部の蒸留水を徐々に加えながら溶解し、pH6.76のやや粘稠なカラギーナン水溶液を得た。該水溶液に0.1N硝酸を加えて酸性度をpH3.53に調整し、更に蒸留水を加えて全量を30重量部としてpH3.54の酸性外用組成物を得た。
【0020】
実施例 4
カラギーナン0.24重量部を30重量部の蒸留水で溶解し、さらにメチルパラベン0.03重量部を溶かしてpH6.50のやや粘稠な水溶液を得た。該水溶液にリン酸二水素ナトリウム二水和物1.5重量部を加えて溶解し、pH4.45の酸性外用組成物を得た。
【0021】
実施例 5
カラギーナン0.24重量部を、発振周波数2450MHzの電子レンジの高周波を10分間照射して水の分子集団であるクラスターを小さくした水30重量部に溶解し、さらにメチルパラベン0.03重量部を溶かしてpH7.11のやや粘稠な水溶液を得た。該水溶液にリン酸二水素ナトリウム1.5重量部を加えて溶解し、pH4.52の酸性外用組成物を得た。
【0022】
実施例 6(育毛剤)
実施例1の酸性外用組成物6.25重量部、蒸留水50.75重量部、グリセリン3重量部、エタノール40重量部を混合し、酸性多糖体を0.05%含有するpH4.98の液状の酸性外用組成物100重量部を得た。
【0023】
実施例 7(水性ジェル)
カルボキシビニルポリマー4.2重量部とメチルパラベン0.2重量部を蒸留水200重量部で膨潤、溶解し、一夜静置後pH2.47の粘性液を得た。該粘性液30重量部に実施例2の酸性外用組成物7.5重量部を加え、更に2%水酸化ナトリウム水溶液3重量部を加えてpH4.25のジェル状の酸性外用組成物を得た。
【0024】
実施例 8(化粧水)
メチルパラベン0.1重量部を蒸留水100重量部に加えて溶解し、更に実施例4の酸性外用組成物18重量部を加えてpH4.46の酸性外用組成物を得た。
【0025】
実施例 9(美容液)
実施例5の酸性外用組成物5.0重量部、アルギン酸ナトリウム0.95重量部、メチルパラベン0.095重量部、クエン酸0.014重量部、ソウハクヒエキス0.01重量部、シソエキス0.01重量部、カミツレエキス0.01重量部、ユキノシタエキス0.01重量部、ローズマリーエキス0.01重量部に精製水を加えて100重量部とし、溶解してpH5.0のやや粘稠な酸性外用組成物を得た。
【0026】
実施例 10(外用抗炎症剤)
イブプロフェンピコノールクリーム(商品名ベシカム、鳥居薬品工業社製)2.8重量部に実施例3の酸性外用組成物0.2重量部を加えて混合し、pH5.45のクリーム状の酸性外用組成物3.0重量部を得た。
【0027】
実施例 11(乳液)
市販の乳液(商品名カネボウエクササイズボディアップ(エマルジョン)、鐘紡社製)19重量部に、実施例1の酸性外用組成物1重量部を加えて混合し、PH5.85の乳液状の酸性外用組成物を得た。
【0028】
実施例 12(染毛補助剤)
過酸化水素のクリーム剤(商品名オキシ・クリームF、タカラベルモント社製)45重量部に実施例3の酸性外用組成物5重量部を加えて混合し、pH4.70のクリーム状の酸性外用組成物50重量部を得た。
【0029】
実施例 13
アルギン酸ナトリウム0.25重量部を蒸留水40重量部で溶解し、pH6.45のやや粘稠なアルギン酸ナトリウム水溶液を得た。該水溶液にpH0.77の希硫酸を加えてpH4.51に酸性度を調整し、更に蒸留水を加えて全量を50重量部としてpH4.54の酸性外用組成物を得た。
【0030】
実施例 14
アルギン酸ナトリウム0.25重量部を蒸留水40重量部で溶解し、pH6.51のやや粘稠なアルギン酸ナトリウム水溶液を得た。該水溶液に0.1N塩酸を加えて酸性度をpH4.11に調整し、蒸留水を加えて全量を50重量部としてpH4.13の酸性外用組成物を得た。
【0031】
実施例 15
アルギン酸ナトリウム0.25重量部を蒸留水40重量部で溶解し、pH6.53のやや粘稠なアルギン酸ナトリウム水溶液を得た。該水溶液に0.1N硝酸を加えて酸性度をpH3.86に調整し、蒸留水を加えて全量を50重量部としてpH3.88の酸性外用組成物を得た。
【0032】
実施例 16
アルギン酸ナトリウム0.25重量部を蒸留水50重量部で溶解し、pH6.51のやや粘稠なアルギン酸ナトリウム水溶液を得た。該水溶液にリン酸二水素ナトリウム二水和物500mgを加えてpH4.62の酸性外用組成物を得た。
【0033】
実施例 17
アルギン酸ナトリウム0.25重量部を蒸留水50重量部で溶解し、pH6.49のやや粘稠なアルギン酸ナトリウム水溶液を得た。該水溶液にリン酸二水素カリウム0.4重量部を加えてpH4.48の酸性外用組成物を得た。
本発明の酸性外用組成物を以下のように評価した。
【0034】
1.美白及び肌のきめを整える効果に関する試験
29才〜41才の19名の女性被験者が、左手の甲に実施例1〜11、及び13〜17のいずれかひとつの酸性外用組成物0.1ml(ミリリットル)を各被験者が自分で塗擦し、何も塗っていない右手の甲と比較したところ、すべての被験者で左手の甲が第三者の評価により、ただちに白く滑らかになり、美白及び肌のきめを整える効果が認められた。各被験者は1日以上あけて実施例1〜11、及び13〜17のなかのまだ試していない酸性外用組成物を同様に試験し、実施例1〜11、及び13〜17すべての酸性外用組成物に美白及び肌のきめを整える効果が認められた。実施例1、2〜5、7、9の酸性外用組成物は効果が顕著であり、特に実施例5の酸性外用組成物の効果が優れていた。この試験に用いたすべての酸性外用組成物は被験者全員がわずか数回の擦り込みでただちに皮膚に浸透した。
【0035】
2.色素沈着改善試験
市販の美白化粧品や色素沈着に対する効能を表示する内服剤等が無効であった、にきび跡の色素沈着を訴える21才、22才、23才の3名の女性被験者に、にきび跡の色素沈着部分に実施例7のジェル状の酸性外用組成物適量を1日2回毎日塗布させたところ、21才と22才の被験者は5日で、23才の被験者は8日で色素沈着が改善し、ほとんど目立たなくなった。また、被験者全員が実施例7の酸性外用組成物は10回以内の擦り込みでただちに皮膚に浸透し、全くべたつかなかった。
【0036】
3.シミ改善試験
目尻と目の下のシミを訴える38才〜61才の女性被験者6名に、実施例9の酸性外用組成物適量をシミに1日2回毎日塗布させたところ、2週間で被験者全員のシミが薄くなり、3週間以上の連続使用では2名の被験者のシミがほぼ消失した。また、被験者全員が実施例9の酸性外用組成物はわずか数回の擦り込みでただちに皮膚に浸透し、全くべたつかなかった。
【0037】
4.肌に透明感を与え肌のきめを整える効果に関する試験
29才〜51才の5名の女性被験者が、本試験開始前に両頬皮膚の40倍拡大写真をパソコン接続のCCDカメラで撮影し、実施例1、4、8、13、16のいずれかひとつの酸性外用組成物0.3mlを1日2回朝晩、顔全体に1週間塗布して8日目に両頬皮膚の40倍拡大写真を同様に撮影して比較したところ、全ての被験者で肌の透明感が認められ、皮溝、皮丘が試験開始前と比較して明瞭になり、皮膚表面の艶も増していることが確認された。特に実施例4の酸性外用組成物の効果が顕著であった。この試験に用いたすべての酸性外用組成物は被験者全員がわずか数回の擦り込みでただちに皮膚に浸透し、全くべたつかなかった。
【0038】
5.皮膚の緊張を高める効果に関する試験
21才〜37才の女性被験者10人に対し、実施例1、2〜9のいずれかひとつの酸性外用組成物0.3mlを顔全体に塗布させた。その結果、被験者全員皮膚が引き締まった感じと、頬が持ち上がる、いわゆるリフトアップ効果を認めた。同時に肌が白くなる効果も被験者全員に認められた。この試験に用いたすべての酸性外用組成物は被験者全員がわずか数回の擦り込みでただちに皮膚に浸透した。
【0039】
6.毛穴を目立たなくする効果に関する試験
第三者による観察と本人の申告の両方により、鼻の毛穴が目立つと判断された22才〜31才の別の女性被験者5人に対し、実施例2の酸性外用組成物50mgを鼻の右側に、特開2000−169322号広報の実施例2に従って製造したデキストラン硫酸ナトリウム1%ローション50mgを鼻の左側に1日1回4日間塗布させたところ、被験者全員が鼻の右側の毛穴が目立たなくなったと感じ、第三者による観察でも鼻の右側の毛穴は左側と比較して目立たないと判断された。
【0040】
7.クリームのべたつき感改善(皮膚への浸透促進)効果試験
21〜23才の女性被験者6人に対し、右手に実施例11の乳液状の酸性外用組成物を、左手に市販の乳液(商品名カネボウエクササイズボディアップ(エマルジョン)、鐘紡社製)を各々0.1g擦り込ませてべたつき感を比較した。その結果、被験者全員が実施例11の乳液状の酸性外用組成物は20回以内の擦り込みで全くべたつかなくなったのに対し、市販の乳液は40回以上擦り込んでもべたつき感がなくならなかった。また、被験者全員の右手に顕著な美白効果が認められた。
【0041】
8.肌にうるおい感を与える効果に関する試験
7才女子と12才男子の2名の被験者に対し、温水プールで1時間遊泳後、かさかさになって突っ張った感じの顔に実施例4の酸性外用組成物を各々0.2g塗布したところ、わずか数回の擦り込みで吸収され、肌がしっとりとして滑らかになり、肌にうるおい感を与える効果が認められた。
【0042】
9.育毛効果試験
特許第2583812号の実施例3養毛剤2の処方例に従って製造された水素型カラギーナン0.05%ローションを1ヶ月間使用し、脱毛抑制もしくは育毛のいずれの効果も得られなかったと訴える、地肌がやや透けて見える脱毛症状を有する33才、34才、51才の男性被験者3名に実施例6の液状の酸性外用組成物を1回1ml、1日2回毎日頭皮全体に塗布させたところ、いずれの被験者も試験開始7日以内に洗髪時の脱毛本数が本試験開始前の半分以下に減少し、脱毛抑制効果発現が非常に早かった。また、33才の被験者は投与2ヶ月目で、51才の被験者は同3ヶ月目で頭髪量が増えて地肌が目立たなくなった。この間、いずれの被験者にも副作用は全く認められなかった。
【0043】
10.薬物の皮膚浸透促進効果試験
6才と7才の両肘内側に湿疹を有する女子アトピー性皮膚炎患者に対し、右肘内側の湿疹に実施例10のクリーム状の酸性外用組成物0.2gを、左肘内側の湿疹にイブプロフェンピコノールクリーム(商品名ベシカム、鳥居薬品工業社製)0.2gを手指で30回擦り込んだ。実施例10のクリーム状の酸性外用組成物は擦り込み後べたつき感がなくなったが、イブプロフェンピコノールクリームはべたつき感が持続した。1時間後に両患者とも実施例10のクリーム状の酸性外用組成物を塗布した右肘内側の湿疹は赤みがひいて改善されていたが、イブプロフェンピコノールクリームを塗布した左肘内側は塗布前より少し赤みがひいた程度であった。
【0044】
11.染毛剤の染毛時間短縮試験
染毛剤(商品名トップモデル、タカラベルモント社製)5gと実施例12のクリーム状の酸性外用組成物5gを混合し、染毛練習用マネキンの髪に使用したところ、10分間で染毛できた。染毛後の髪は染毛前に比べて艶が良くなり、しっとりとした感じになった。一方、染毛剤(商品名トップモデル、タカラベルモント社製)5gと過酸化水素のクリーム剤(商品名オキシ・クリームF、タカラベルモント社製)5gを混合し、染毛練習用マネキンの髪に使用したところ、染毛完了まで40分間を要した。染毛後の髪は染毛前に比べて乾燥した感じになり、艶が悪くなった。
【0045】
12.毛髪をなめらかでしなやかにする効果に関する試験
髪の毛の硬さが気になるという46歳の男性に、実施例16の酸性外用組成物1gを髪全体にまんべんなく擦り込ませたところ、髪の毛が非常になめらかでしなやかになり、艶も好くなった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の酸性外用組成物は毛髪をなめらかでしなやかにし、肌のきめを整え、皮膚の緊張を高め、しわを伸ばし、肌を白くし、肌に透明感を与え、肌にうるおい感を与え、シミを薄くし、毛穴を目立たなくする美容効果を有する。また、脱毛を抑制し、毛髪の成長を促進する育毛効果、外用医薬品や化粧料等の外用剤の皮膚等への浸透促進効果を示すので、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、酸性多糖および酸を必須成分とし、皮膚に対する浸透促進作用を有する酸性外用組成物であって、
前記酸性多糖がカラギーナンであり、
かつ前記酸が硫酸、塩酸および硝酸のうちの少なくとも1種、もしくは前記水および前記酸がともに酸性電気分解水であり、
酸性多糖の配合量が、組成物全量に対して0.001〜5重量%であり、
酸性度がpH2.0〜6.0である、
酸性外用組成物。
【請求項2】
当該酸性多糖と酸の組合せが、カラギーナンと硝酸である請求項1に記載の酸性外用組成物。
【請求項3】
酸性度がpH2.5〜5.0である請求項1又は請求項2に記載の酸性外用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性外用組成物を含有する化粧料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性外用組成物を含有する、皮膚に対する浸透促進剤。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性外用組成物を含有する美白剤。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性外用組成物を含有する肌のきめ調整剤。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性外用組成物を含有するシミ改善剤。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性外用組成物を含有するしわ改善剤。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性外用組成物を含有する保湿剤。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性外用組成物を含有する育毛剤。

【公開番号】特開2012−211160(P2012−211160A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135914(P2012−135914)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2009−100892(P2009−100892)の分割
【原出願日】平成14年5月31日(2002.5.31)
【出願人】(301039505)ネオケミア株式会社 (15)
【Fターム(参考)】