説明

酸性多糖類の誘導体

非多糖類カルボン酸との部分エステル、および開始多糖類の酸性基と反復単位のアルコール性基との間のエステルの同時存在を特徴とする、多糖類鎖の間に架橋を形成している酸性多糖類。プロトン性極性溶媒ホルムアミド中の均質相において、三置換された窒素の原子を含む塩基性触媒の存在下で、選択されたカルボキシル化多糖類の一価無機カチオンの塩をアルキルカルボン酸の無水物と反応させることを含む、これらの誘導体の製造方法。ホルムアミド加水分解はギ酸エステルの形成を導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非多糖類カルボン酸とのエステル、および多糖類の酸性基と反復単位のアルコール性基との間のエステルの同時存在を特徴とする、酸性自己架橋多糖類に関する。
【0002】
従来技術
それらの物理化学的および生物生化学的特徴のために、カルボキシル化多糖類(天然であれ半合成であれ)は、医薬品および化粧品産業において広範な適用についてのかなり興味深い原料を構成する。それらのいくつか、例えばヒアルロン酸(HA)は、その高レベルの生物許容性および水和性のために特に価値がある。材料の選択はしばしば、最終適用の価値および重要性に基づいて費用面と結び付けられる。
【0003】
その特徴を最適化し、そしてそれらを所望の適用にとってできるだけ適切にするために、近年これらの多糖類に対して多くの構造的変化がなされている。これらの変化は通常、反復単位のアルコール基、カルボキシル基および、存在する場合、アミノ基を含む。
【0004】
先行技術は全体として2つの具体的な構造的解決を記載している:
1)その性質および起源にかかわらず、有機酸を用いる、分子内架橋なしの、反復多糖類単位のアルコール性ヒドロキシルの単純モノエステル化;
2)反復多糖類単位のヒドロキシルと多糖類中に存在するカルボキシルとの間の自己架橋エステルの形成。
【0005】
EP0941253は、架橋しておらず、エステル化されたヒドロキシ基を有し、そして水溶液中でその粘弾性特性が有意な改変を受けない生成物を得るための、塩基性環境での無水酪酸を用いるHA誘導体の合成を記載している。この方法は、HAの第四級アンモニウム塩および非プロトン性溶媒としてのジメチルホルムアミド(DMF)の使用を含む。
【0006】
EP341745では、HAから、または、カルボキシルが種々の型のアルコール(生物学的に活性なアルコールを含む)で部分エステル化されたHAから出発して、HAの(またはそのエステル誘導体(「外部」と定義する)の)カルボキシル官能基が、反復単位のアルコール性ヒドロキシルとの分子内もしくは分子間エステルの形成に関与し、その結果、架橋(「自己架橋」と定義する)が起こり、そして出発多糖類には存在しなかった粘弾性特徴が誘導される。EP341745は、求核試薬(例えば単糖単位の−OH基)によってカルボニル炭素が結合され、同時にXが解離することを可能にする電子吸引基Xで−OH基を置換することによるカルボキシルの「活性化」によって自己架橋が得られることを教示している。カルボキシルを活性化できる記載の試薬は、ペプチド合成において活性化エステルを供給する典型的な周知の試薬、例えば、水溶性カルボジイミド、カルボニルジイミダゾール、カルボニルトリアゾール、N−ヒドロキシスクシンイミド、p−ニトロフェノール、p−ニトロフェニルトリフルオロ酢酸、および2−ハロゲン−N−アルキルピリジンの塩であり[T. Mukaiyama, Ang. Chem., 10 (18) 1979, 707-808];反応はトリエチルアミン(TEA)で触媒される。出発カルボキシル化多糖類は、非プロトン性溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶性のテトラブチルアンモニウム(TBA)塩として塩化されて、単一の反応相が得られる。同特許はまた、同反応を実施するための同非プロトン性有機溶媒におけるナトリウム塩の使用を請求している。しかし、この塩はDMFまたはDMSOのような溶媒に可溶性でないことが周知であるので、これは、当業者の知見およびこの特許に与えられる例と矛盾する。カルボキシル化多糖類に基づく生成物の物理化学的、レオロジー的、および生物学的特徴(最も広い意味での)の調節が、所望の最終適用の目的のために重要であり、そして問題は、少なくとも本発明の分野において今日まで解決されていないようであるので、調整可能な再現性のある有利な特徴、特に様々な濃度の溶液の粘度の点からのそのレオロジー特性、粘弾性および生物許容性を有する生成物に対する強く感じられる必要性が存在する。
【0007】
発明の説明
非多糖類カルボン酸とのエステル、および多糖類の酸性基とその反復単位のアルコール性基との間のエステルの同時存在を特徴とする、自己架橋多糖類誘導体を用いて、上記の目的を達成することができる事がここで見出された。ヒドロキシル基に対するエステル化および自己架橋の特徴を同時に示す化合物は、先行技術において開示されていない。
【0008】
本発明は、酸性多糖類の天然または半合成の誘導体に関し、ここで、反復単位のアルコール性基は、多かれ少なかれ広範囲に、非多糖類カルボン酸とのエステルの形態で生じ、そしてウロン酸基は、多糖類鎖中に存在する他の遊離アルコール性基によって、様々な程度に、エステル化されている。この後者の型の結合は多糖類の自己架橋を誘導し、従って最終生成物の粘弾性挙動に影響を及ぼす;アルコール性ヒドロキシルをエステル化するために使用されるアシル残基の適切な選択は、他の物理化学的特性(例えば親水性/親油性および粘度)の調節を可能にする。自己架橋度(これは調整可能であり再現性がある)は、最終生成物の特徴に影響を及ぼす(硬質ゲル、弱ゲル(weak gel)、増加した粘度を有する生成物)。その物理化学的およびレオロジー的特徴のために、本発明による誘導体を、種々のグレード(I、IIおよびIII)の医療機器の構成要素、例えば注射用皮膚充填剤、外科手術後抗付着材料、ただれおよび創傷を治癒するためのデバイスなどとして、徐放性ガレヌス製剤などにおいて使用することができる。
【0009】
レオロジー試験は、本発明による誘導体が、系の自己架橋度(これは溶液から強ゲル(strong gel)の特徴までの範囲である)に従って調節され得る粘弾性挙動を特徴とするレオロジー特性を有することを実証する。低剪断速度における粘度、およびかけられる力に対する抵抗を容易に調節することができることが見出された。最後に、本発明のポリマー混合物は、課せられた応力のレオロジー履歴の後にその粘弾性特性を回復する良好な能力(擬似塑性特性)を有することが見出された。
【0010】
本発明はまた、これらの誘導体の製造方法に関し、この方法は、プロトン性極性溶媒ホルムアミド中の均質相において、選択されたカルボキシル化多糖類の一価無機カチオン(例えばナトリウムまたはカリウム)の塩を、アルキルカルボン酸の無水物(例えば酢酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸もしくはクロトン酸の無水物等)と、三置換された窒素の原子を含む塩基性触媒、または、無機塩基(例えばリン酸のナトリウムもしくはカリウム塩、または、ナトリウムもしくはカリウムとの有機酸の塩)の存在下で反応させることを含む。無水物から誘導されるアシル残基とのエステル結合に関与するヒドロキシル残基の範囲は、0.01〜0.9×Nであり、ここでNは、反復単位中のヒドロキシルの数である。さらに、特定の反応環境においてホルムアミド加水分解により形成されるギ酸エステルは、0.2より高くなくあり得る。
【0011】
出発多糖類は、ネイティブな形態であり得るか、または存在する化学官能基に従って様々に修飾され得る。
【0012】
無機カチオン塩の直接的使用の利点は明白である。なぜなら、下記のように、それによって、DMF、DMSO、N−メチルピロリドンなどのような非プロトン性溶媒に可溶性の有機塩基(例えばTBA)の塩への多糖類の予備的変換(解重合の危険性を含む冗長で費用のかかる操作である)の必要性が排除されるからである。
【0013】
全ての試験は本発明による方法の調節可能性および再現性を確認する。この方法を使用して、溶液中でのその粘度の単純な増加(低い自己架橋度および様々なエステル化度)を示す生成物または弱ゲルから強ゲルまでの範囲の可変性の粘弾性特性を有する誘導体を得るために、どのレオロジー局面に優先順位を与えるべきかを選択することが可能である。
【0014】
本発明による酸性多糖類(酸形態またはその無機塩の形態のいずれか)は、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸から選ばれるグリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸が特に好ましい。
【0015】
本発明による多糖類の分子量は広い範囲内で、例えば10〜10ダルトンで変動し得る。
【0016】
本発明による生成物は、保湿(皮膚)化粧剤、医療機器、関節内補充療法剤、外科手術後抗付着充填材料、および創傷またはただれを被覆するための材料として使用することができる。
【0017】
本発明による生成物を、活性薬物の制御された放出または吸収のための担体として有利に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】架橋度を増加させることによってゼロ剪断粘度がどのように0.01Pa*sから100,000Pa*sまでの範囲になるか、そして、レオロジー特性の質的および量的変化がどのようにして広い剪断応力範囲にわたって起こったかを示している。
【図2】様々な系の機械的スペクトルを示す。
【図3a】回復試験の間の実施例13に記載の化合物の挙動を示す。
【図3b】回復試験の間の実施例13に記載の化合物の挙動を示す。
【図3c】回復試験の間の実施例13に記載の化合物の挙動を示す。
【0019】
以下の実施例は本発明をより詳細に例証する。
【0020】
実施例
H NMR分析を、300°K、勾配zで5mm多核プローブを装備したBruker Advance 400分光計を用いてDO中で実施する。分析は拡散配向実験(DOSY:拡散配向分光法(Diffusion Ordered Spectroscopy))も使用する。
【0021】
Rheostress Haake RS150制御応力回転レオメーターを用いてレオロジー試験を実施した。
【0022】
種々の非多糖類カルボン酸(DE)および多糖類カルボキシル(AUC)を有する多糖類アルコール性ヒドロキシルのエステル基の百分率の決定を、H NMR分光分析によってエステルおよび多糖類のモル数の間のモル比として表した。
【0023】
過剰のプロピルアミンを含有するホルムアミド中で膨潤させたエステル化架橋多糖類の試料を、周囲温度で16時間マグネチックスターラーにより撹拌する。多糖類をアセトン中の沈殿によって回収し、アセトン洗浄し、そして乾燥させる。固体をH NMRによって分析する。カルボキシルエステルを用いるアミンのアシル化反応(Michael B. Smith and Jerry March - March’s Advanced Organic Chemistry, 5th ed., Wiley Interscience, page 510)を利用して、架橋において以前に使用されたエステルを決定する;使用される穏和な条件には不安定なエステルのみが関与するので、この方法は選択的である。他のポリマーシグナルと比較して、ヒドロキシルに結合しているアシル残基のメチルおよびメチレンの異なる共鳴を利用して、ヒドロキシルに対するエステルを、再びH NMRを用いて分析する。DO中で膨潤させたゲルを含むNMRチューブの内側に数マイクロリットルのNaOD溶液を直接添加し、従って架橋エステルおよび非糖酸とのエステルの両方の完全な加水分解を誘導した後に、これらの分析を実施する。
【0024】
以下の実施例は、本発明によるいくつかの酸性自己架橋多糖類の合成の詳細を記載する。
【0025】
実施例1:架橋ヒアルロン酸、ナトリウム塩、酢酸エステルの合成;自己架橋度(AUC):0.07;エステル化度(DE):0.19(アセタート)、0.12(ホルマート)
分子量約300kD(2.49mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.00gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を室温まで冷却し、そして無水酢酸352μL(3.73mmol)およびトリエチルアミン312μL(2.24mmol)を加えた。16時間反応させた後、さらに521μLのトリエチルアミン(3.74mmol)を加え、そして系をさらに6時間攪拌した。
【0026】
次いで、一定の撹拌下で徐々にゲルを0.2M NaCl溶液100mLに移し、透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に脱塩水に対して透析した。最後にこれを凍結および凍結乾燥した。
【0027】
白色の凍結乾燥物0.94gを得た。
【0028】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.07;DE:0.19(アセタート)、0.12(ホルマート)を示した。
【0029】
実施例2: 架橋ヒアルロン酸、ナトリウム塩、酢酸エステルの合成;自己架橋度(AUC):0.05;エステル化度(DE):0.16(アセタート)、0.01(ホルマート)
分子量約300kD(2.49mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.00gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で80℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酢酸235μL(2.49mmol)およびトリエチルアミン311μL(2.23mmol)を加えた。16時間後、さらに320μLのトリエチルアミン(2.29mmol)を加え、そして系をさらに6時間攪拌した。
【0030】
次いで、一定の撹拌下で徐々にゲルを0.2M NaCl溶液70mLに移し、KHPOで中和した。約16時間攪拌した後、系を透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に脱塩水に対して透析した。最後にこれを凍結および凍結乾燥した。
【0031】
白色の凍結乾燥物0.9gを得た。
【0032】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.05;DE:0.16(アセタート)、0.01(ホルマート)を示した。
【0033】
実施例3:架橋ヒアルロン酸アセタートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.05;エステル化度(DE):0.15(アセタート)、0.05(ホルマート)
分子量約300kD(2.49mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.00gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酢酸235μL(2.49mmol)およびトリエチルアミン277μL(1.99mmol)を加えた。16時間反応させた後、さらに417μLのトリエチルアミン(3.00mmol)を加え、そして系をさらに6時間攪拌した。
【0034】
次いで、一定の撹拌下で徐々にゲルを0.2M NaCl溶液70mLに移し、次いで透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に脱塩水に対して透析した。最後にこれを凍結および凍結乾燥した。
【0035】
白色の凍結乾燥物0.98gを得た。
【0036】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.05;DE:0.15(アセタート)、0.05(ホルマート)を示した。
【0037】
実施例4:架橋ヒアルロン酸アセタートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.03;エステル化度(DE):0.12(アセタート)、0.03(ホルマート)
分子量約300kD(2.54mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.02gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酢酸120μL(1.27mmol)およびトリエチルアミン140μL(1.01mmol)を加えた。22時間後、さらに140μLのトリエチルアミン(1.01mmol)を加え、そして得られたゼラチン状の塊をさらに6時間攪拌した。
【0038】
次いで、反応混合物を0.2M NaCl溶液100mLに移し、透析膜(カットオフ12,000D)に注ぎ、そして第1に0.2M NaCl溶液に対して、第2に脱塩水に対して透析した。最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物1.00gを得た。
【0039】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.03;DE:0.12(アセタート)、0.03(ホルマート)を示した。
【0040】
実施例5:架橋ヒアルロン酸アセタートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.01;エステル化度(DE):0.05(アセタート)、0.01(ホルマート)
分子量約300kD(2.49mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.00gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酢酸82μL(0.87mmol)およびトリエチルアミン87μL(0.63mmol)を加えた。19時間後、さらに348μLのトリエチルアミン(2.52mmol)を加え、そして得られたゼラチン状の塊をさらに6時間攪拌した。
【0041】
次いで、反応混合物を脱塩水100mLに移し、透析膜(カットオフ12000D)に注ぎ、そして第1に0.2M NaCl溶液に対して、第2に脱塩水に対して透析した。最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物0.89gを得た。
【0042】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.01;DE:0.05(アセタート)、0.01(ホルマート)を示した。
【0043】
実施例6:架橋ヒアルロン酸アセタートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.03;エステル化度(DE):0.08(アセタート)、0.18(ホルマート)
分子量約300kD(4.99mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸2.00gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で80℃のホルムアミド67mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酢酸710μL(7.52mmol)およびトリエチルアミン970μL(6.97mmol)を加えた。
【0044】
2時間30分後、ゲルを0.2M NaCl溶液350mLに移し、混合物を透析膜(カットオフ12000D)に移し、まず0.2M NaClに対して、次いで脱塩水に対して徹底的に透析した。最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物2.10gを得た。
【0045】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.03;DE:0.08(アセタート)、0.18(ホルマート)を示した。
【0046】
実施例7:架橋ヒアルロン酸アセタートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.03;エステル化度(DE):0.23(アセタート)、0.19(ホルマート)
分子量約300kD(2.49mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.01gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酢酸240μL(2.54mmol)およびホルムアミド2mLに溶解したジメチルアミノピリジン0.28g(2.29mmol)の溶液を加えた。19時間後、ホルムアミド4mLに溶解したジメチルアミノピリジンをさらに0.56μL(4.58mmol)を加え、そして系をさらに5時間攪拌した。
【0047】
次いで、一定の撹拌下で徐々にゲルを0.2M NaCl溶液150mLに移し、KHPOで中和した。次いでこれを透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に脱塩水に対して透析した。最後にこれを凍結および凍結乾燥した。
【0048】
白色の凍結乾燥物1.09gを得た。
【0049】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.03;DE:0.23(アセタート)、0.19(ホルマート)を示した。
【0050】
実施例8:架橋ヒアルロン酸プロピオナートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.05;エステル化度(DE):0.06(プロピオナート)、0.07(ホルマート)
分子量約300kD(2.54mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.02gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水プロピオン酸330μL(2.57mmol)およびトリエチルアミン320μL(2.30mmol)を加えた。
【0051】
次いで反応混合物を撹拌下に約3時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに320μL(2.30mmol)加えた。2時間後、ゲルを脱塩水100mLに移し、KHPOで中和した。次いでこれを透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に脱塩水に対して透析した。
【0052】
最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物0.96gを得た。
【0053】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.05;DE:0.06(プロピオナート)、0.07(ホルマート)を示した。
【0054】
実施例9:架橋ヒアルロン酸ブチラートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.06;エステル化度(DE):0.18(ブチラート)、0.08(ホルマート)
分子量約300kD(2.52mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.00gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酪酸610μL(3.73mmol)およびトリエチルアミン310μL(2.23mmol)を加えた。
【0055】
次いで反応混合物を撹拌下に約20時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに550μL(3.95mmol)加えた。6時間後、ゲルを超純水150mLに移し、透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に超純水に対して透析した。
【0056】
最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物0.95gを得た。
【0057】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.06;DE:0.18(ブチラート)、0.08(ホルマート)を示した。
【0058】
実施例10:架橋ヒアルロン酸ブチラートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.05;エステル化度(DE):0.15(ブチラート)、0.15(ホルマート)
分子量約300kD(2.52mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.01gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酪酸490μL(3.00mmol)およびトリエチルアミン280μL(2.01mmol)を加えた。
【0059】
次いで反応混合物を撹拌下に約5時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに280μL(2.01mmol)加えた。16時間後、ゲルを超純水150mLに移し、透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に超純水に対して透析した。
【0060】
最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物1.00gを得た。
【0061】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.05;DE:0.15(ブチラート)、0.15(ホルマート)を示した。
【0062】
実施例11:架橋ヒアルロン酸ブチラートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.03;エステル化度(DE):0.08(ブチラート)、0.02(ホルマート)
分子量約300kD(2.49mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.00gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で80℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酪酸360μL(2.20mmol)およびトリエチルアミン311μL(2.23mmol)を加えた。
【0063】
次いで反応混合物を撹拌下に約16時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに311μL(2.23mmol)加えた。6時間30分後、ゲルを0.2M NaCl溶液約40mLに移し、透析膜(カットオフ12000D)に移し、脱塩水に対して徹底的に透析した。最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物0.90gを得た。
【0064】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.03;DE:0.08(ブチラート)、0.02(ホルマート)を示した。
【0065】
実施例12:架橋ヒアルロン酸ブチラートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.03;エステル化度(DE):0.10(ブチラート)、0.08(ホルマート)
分子量約300kD(2.52mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.00gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酪酸244μL(1.49mmol)およびトリエチルアミン173μL(1.24mmol)を加えた。
【0066】
次いで反応混合物を撹拌下に約16時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに208μL(1.49mmol)加えた。6時間後、ゲルを超純水100mLに移し、透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に超純水に対して透析した。
【0067】
最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物0.95gを得た。
【0068】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.03;DE:0.1(ブチラート)、0.08(ホルマート)を示した。
【0069】
実施例13:架橋ヒアルロン酸ブチラートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.02;エステル化度(DE):0.06(ブチラート)、0.05(ホルマート)
分子量約300kD(2.49mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.00gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酪酸210μL(1.28mmol)およびトリエチルアミン140μL(1.0mmol)を加えた。
【0070】
次いで反応混合物を撹拌下に17時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに320μL(3.00mmol)加えた。6時間30分後、ゲルを超純水150mLに移し、透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に超純水に対して透析した。
【0071】
最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物0.99gを得た。
【0072】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.02;DE:0.06(ブチラート)、0.05(ホルマート)を示した。
【0073】
実施例14:架橋ヒアルロン酸ブチラートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.01;エステル化度(DE):0.06(ブチラート)、0.02(ホルマート)
分子量約300kD(2.52mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.01gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酪酸125μL(0.76mmol)およびトリエチルアミン75μL(0.5mmol)を加えた。
【0074】
次いで反応混合物を撹拌下に18時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに740μL(5.32mmol)加えた。6時間後、系を脱塩水200mLに移し、KHPOで中和し、透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に水に対して透析した。
【0075】
最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物0.82gを得た。
【0076】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.01;DE:0.06(ブチラート)、0.02(ホルマート)を示した。
【0077】
実施例15:架橋酪酸、酢酸およびギ酸エステルヒアルロン酸ナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.03;エステル化度(DE):0.12(ブチラート)、0.14(アセタート)、0.06(ホルマート)
分子量約500kD(4.11mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態の注射剤グレードのヒアルロン酸1.65gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド33mLに溶解した。次いでこの溶液を室温まで冷却し、無水酪酸670μL(4.1mmol)を加えた。
【0078】
次いで反応混合物を機械的撹拌下に約30分間維持し、そして酢酸カリウム1.21g(12.3mmol)を含有するホルムアミド溶液2mLを加えた。16時間後、ゲルを超純水200mLに移し、透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に超純水に対して透析した。
【0079】
全ての反応および精製機器を、汚染を防止するために垂直層流キャビネット下に閉鎖した。ガラス器具および水は発熱物質不含であった。
【0080】
最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物1.60gを得た。
【0081】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.03;DE:0.12(ブチラート)、0.14(アセタート)、0.06(ホルマート)を示した。
【0082】
実施例16:架橋ヒアルロン酸ブチラートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.03;エステル化度(DE):0.55(ブチラート)、0.15(ホルマート)
ナトリウム塩の形態のヒアルロン酸ブチラート0.50g(酪酸化度(すなわち多糖類のモル数に対する酪酸基のモル数)約0.54に相当、MW=439g/mol、1.14mmol)を、機械的に撹拌しながら窒素流下で60℃のホルムアミド17mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水酪酸186μL(1.14mmol)およびトリエチルアミン143μL(1.03mmol)を加えた。
【0083】
次いで反応混合物を撹拌下に19時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに143μL(1.03mmol)加えた。41/2時間後、系を0.2M NaCl溶液100mLに移し、KHPOで中和した。次いでこれを透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaClに対して、第2に脱塩水に対して透析した。
【0084】
最後にこの試料を凍結および凍結乾燥し、白色の凍結乾燥物0.45gを得た。
【0085】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.03;DE:0.55(ブチラート)、0.15(ホルマート)を示した。
【0086】
実施例17:架橋ヒアルロン酸クロトナートナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.05;エステル化度(DE):0.08(クロトナート)、0.10(ホルマート)
分子量約300kD(2.54mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸1.02gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド32mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水クロトン酸380μL(2.56mmol)およびトリエチルアミン320μL(2.30mmol)を加えた。
【0087】
反応混合物を撹拌下に18時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに320μL(2.30mmol)加えた。7時間30分後、ゲルを超純水150mLに移し、透析膜(カットオフ12000D)に移し、そして第1に0.2M NaCl水溶液に対して、第2に超純水に対して透析した。
【0088】
最後にこの試料を凍結し、そして凍結乾燥により回収した。
【0089】
白色の凍結乾燥物0.45gを得た。
【0090】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.05;DE:0.08(クロトナート)、0.10(ホルマート)を示した。
【0091】
実施例18:架橋ヒアルロン酸イソバレラート(または3−メチル−ブチラート)ナトリウム塩の合成;自己架橋度(AUC):0.03;エステル化度(DE):0.08(イソバレラート)、0.02(ホルマート)
分子量約300kD(1.21mmolのモノマー単位に相当)を有するナトリウム塩の形態のヒアルロン酸0.48gを、機械的に撹拌しながら窒素流下で95℃のホルムアミド16mLに溶解した。次いでこの溶液を周囲温度まで冷却し、無水イソ吉草酸240μL(1.20mmol)およびトリエチルアミン150μL(1.08mmol)を加えた。
【0092】
反応混合物を撹拌下に16時間維持し、そしてトリエチルアミンをさらに167μL(1.20mmol)加えた。6時間後、ゲルを脱塩水100mLに移し、KHPOで中和し、NaCl 2.5gを加えた。次いでこれを透析膜(カットオフ12000D)に移し、水に対して透析した。
【0093】
最後にこの試料を凍結し、そして凍結乾燥により回収した。
【0094】
白色の凍結乾燥物0.89gを得た。
【0095】
上記の方法に従って分析した生成物は、AUC:0.03;DE:0.08(イソバレラート)、0.02(ホルマート)を示した。
【0096】
実施例19:実施例15に従って得た自己架橋ポリマーに基づく2%ヒドロゲル1.5mLを含む注射器の製造
実施例15に従って得た凍結乾燥自己架橋ポリマー30mgを2.0mL注射器中に秤量し、そして0.9%(w/V)塩化ナトリウムを含有する水溶液1.47gを加えた。全ての実験手順を、発熱物質不含材料を使用して垂直層流キャビネット下で実施した;上記の生理溶液を発熱物質不含水を使用して調製した。ポリマーを室温で24時間放置して膨潤させた。最後に注射器を、121℃まで16分間の標準熱サイクルによって滅菌した。
【0097】
エステル化され架橋された誘導体のレオロジー特徴付け
レオロジー研究は、検討されるポリマー系が、ネットワークの架橋密度に依存して広範なレオロジー挙動をどのように示すかにハイライトを与える。異なる系網状化度について実際、低剪断粘度は数十倍異なり、そして流れ曲線は粘稠性液体から弾性固体プロファイルまで劇的に変動する。さらに、粘弾性挙動は、溶液様から強ゲル様までの範囲であり、このことは本発明の目的の生成物の特性の可変性を確認する。
【0098】
方法および結果
レオロジー測定のために、本発明者らは、試料を動的(正弦曲線)または定常(直線)いずれかの剪断応力に供することのできる機械的分光計である、制御応力レオメーターを使用した。
【0099】
磁場は、空気浮遊支持された上部可動測定センサーにトルクを発生させ、それが試料にかけられる応力に変換される。同時に、結果として生じる可動測定系の回転度および速度が、光学レーザーシステムによって検出され、従って剪断応力に応答して試料が消費する歪、および剪断速度が評価される。
【0100】
使用したレオメーターは、それぞれ高または低構造化系のための、回転および振動における全ての型の測定に有用な粗面または平滑面センサーを備えた、Rheostress Haake RS150であった。全ての測定を特定の温度制御器を使用して25℃で行った。
【0101】
本発明による生成物を特徴付けするため、3つの型の測定を行った:
【0102】
流れ曲線:広範な剪断速度または剪断応力にわたる粘度の連続/定常状態測定;
【0103】
応力および周波数掃引:試料の粘弾性挙動の決定のための動的測定(振動)。線形粘弾性範囲拡大、および従って線形/非線形転移についての臨界歪値を個別化するために、特に応力掃引を行う。周波数掃引は、線形粘弾性場において、広範な周波数にわたる貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”プロファイルである機械的スペクトルを系に与える。
【0104】
− 回復掃引:特定のレオロジー履歴を受けた試料の粘弾性特性回復を評価するために:3つの測定サイクルを適用し、各々は、一定の剪断速度の適用前後の、歪の一定の振幅および周波数下での、振動工程から構成される(各サイクルの間、それぞれ100s−1、100s−1、500s−1)。
【0105】
試験を、1%(w/w)の濃度で生理食塩水中で膨潤させた試料に対して実施した。
【0106】
実施例10、13、14に記載のように調製した異なる架橋度を有する1%(w/w)の生理食塩水中のヒアルロナン酪酸エステルファミリー、および、参照標準(HAナトリウム塩、Mw=300kDa)の流れ曲線および機械的スペクトルの例(図2)をそれぞれ図1および2に示す。
【0107】
流れ曲線 − 連続定常状態試験
図1は、架橋度を増加させることによってゼロ剪断粘度がどのように0.01Pa*sから100,000Pa*sまでの範囲になるか、そして、レオロジー特性の質的および量的変化がどのようにして広い剪断応力範囲にわたって起こったかを示している。低い架橋度を有する化合物は溶液のように挙動し、一方、より架橋されるにつれてそれらはより可塑性となる。実際それらのプロファイルはニュートンに近い挙動から見かけ上可塑性の挙動までの範囲になり、狭い剪断応力範囲にわたる多数の桁の劇的な粘度低下によって特徴付けられる。
【0108】
振動試験
図2は、様々な系の機械的スペクトルを示す。線形粘弾性場を認識することができなかったので、参照および実施例14として示された最低架橋度を有する化合物については、機械的スペクトルを記録することはできなかった。
【0109】
他の2つの化合物については、溶液挙動から強ゲルプロファイルまでの転移を観察することができる。溶液は、低周波数においては弾性(G’)よりも高い粘性率(G”)を示し、一方、周波数が増加するにつれてモジュール交錯が起こる。強ゲルは、周波数の実験範囲全体にわたって、粘性よりも高い貯蔵弾性率を示す。系が構造化されるにつれてモジュール値は高くなる。
【0110】
回復試験
図3a、3b、3cに、回復試験の間の実施例13に記載の化合物の挙動を示す:各工程において弾性および粘性両方の成分の完全な回復を観察することができる。
【0111】
結論
これらの研究は、レオロジー特徴付けに付された本発明によるいくつかの代表的誘導体が、架橋度に依存して、粘性溶液から強ゲル様挙動までの範囲の様々な粘弾性挙動を示すことを証明した。さらに、完全なレオロジー作業スケジュールが適用された後の、粘弾性特性回復の高い能力が実証された。
【0112】
全ての実験結果は、本発明の化合物の合成のための、本発明の方法の大いなる柔軟性および再現性を確認する。
【0113】
得られた生成物を代表するいくつかの試料のレオロジー特徴付けの結果を表1に示す。
【表1】


(1)ゲルを、pH=5.5の0.9%NaCl水溶液中で膨潤させた;ポリマー濃度は2%(w/w)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非多糖類カルボン酸とのエステル、および多糖類の酸性基と反復単位のアルコール性基との間のエステルの同時存在を特徴とする、酸性自己架橋多糖類。
【請求項2】
少なくとも1個のウロン酸残基を含む反復単位を含む、請求項1に記載の酸性自己架橋多糖類。
【請求項3】
出発多糖類が、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸から選ばれるグリコサミノグリカンである、請求項2に記載の酸性自己架橋多糖類。
【請求項4】
カルボキシル官能基が酸または塩化形態で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性自己架橋多糖類。
【請求項5】
カルボキシル官能基がアルカリ金属、特にナトリウムで塩化されている、請求項4に記載の酸性自己架橋多糖類。
【請求項6】
10〜10ダルトンから選ばれる分子量を特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の酸性自己架橋多糖類。
【請求項7】
非多糖類カルボン酸が酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸およびクロトン酸(A群)ならびにギ酸の群から選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸性自己架橋多糖類。
【請求項8】
ヒドロキシル上のA群の酸のエステルが0.01〜0.9×Nの間の範囲の置換度を示し、ここでNは、反復単位中に存在するヒドロキシルの数であり、ギ酸エステルが0〜0.2の範囲で存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸性自己架橋多糖類。
【請求項9】
ヒドロキシル上のA群のエステルが、反復単位に関して0.01〜0.5の範囲の置換度を示す、請求項8に記載の酸性自己架橋多糖類。
【請求項10】
以下:
a)ホルムアミド中でカルボキシル化多糖類を加熱可溶化する工程;
b)10分間〜2時間の時間室温で非多糖類酸の無水物を添加する工程;
c)塩基を添加し、そして4時間〜24時間の期間室温で反応させる工程;
d)塩化ナトリウム水溶液を添加し、そしてpH6〜7.5に中和する工程;
e)反応混合物を透析により精製する工程;
f)ポリマーを凍結乾燥により回収する工程、
を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸性自己架橋多糖類の製造方法。
【請求項11】
無水物が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸およびクロトン酸から選ばれる無水物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
塩基が、三置換された窒素の原子を含む有機塩基、無機塩基、好ましくはリン酸のナトリウムもしくはカリウム塩、ナトリウムおよびカリウムとの有機酸の塩、好ましくは酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウムから選ばれる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ギ酸エステルが、請求項11に記載の無水物の1つおよび請求項12に記載の塩基の1つの存在下でのホルムアミドの加水分解から形成される、請求項10に記載の酸性自己架橋多糖類の製造方法。
【請求項14】
医療機器、保湿剤、関節内補充療法剤、外科手術における抗組織付着充填材料、ならびに創傷およびただれを被覆するための材料としての、請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸性多糖類の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate


【公表番号】特表2010−514878(P2010−514878A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543534(P2009−543534)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003973
【国際公開番号】WO2008/081255
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(501401021)シジェア ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (2)
【Fターム(参考)】