説明

酸性染毛料組成物

【課題】地肌染まりが軽減されながら、染毛効果の高い酸性染毛料組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)等で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む酸性染毛料組成物。


(式(I)中、カギ括弧内はランダム付加、0≦a+b+c≦3、0≦d+e+f≦24、5≦g+h+i≦70である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性染毛料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
白髪染めを行った場合、毛髪が伸びるにつれて生じる新生毛部分の染色をする必要があるため、通常1〜2カ月毎に染毛を繰り返す。したがって、白髪染めには、繰り返しの染毛に対して毛髪の損傷が少ない染毛方法が好まれるため、酸性染毛料が多く用いられている。
【0003】
白髪染めは、白髪の生え際、すなわち新生毛部分が目立たないように根元から染めることが望ましい。しかしながら、毛髪の根元まで酸性染毛料を塗布することを試みると、地肌にも酸性染毛料が付着し、タンパク質と馴染みのよい酸性染毛料は地肌も染めてしまうことがあった。したがって、酸性染毛料を用いて地肌を染めることなく、白髪のみを染めるためには高度な人的技術を必要としていた。そこで、人的技術を要することなく、誰にでも地肌を染めることなく毛髪のみを染めることが可能な酸性染毛料が望まれていた。
【0004】
そのような要望に対し、地肌を染めない酸性染毛料組成物として、酸性染毛剤に地肌染まりを防止する物質を添加した組成物が知られている(例えば特許文献1〜4)。
しかしながら、地肌染まりを低減する効果と十分な染毛効果を両立することは、困難であった。また、酸性染毛料には、一般に染毛による毛髪の損傷の低減、色落ちの低減、さらには染毛処理の際に毛髪からたれない剤型とすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−105995号公報
【特許文献2】特開2009−203211号公報
【特許文献3】特開2007−284380号公報
【特許文献4】特開2002−47150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、地肌染まりが軽減されながら、染毛効果の高い酸性染毛料組成物を提供することを目的とする。
また、上記効果を有しながらも、染毛処理時に毛髪からたれることがなく、染毛時の損傷の低減および色落ちの低減をも兼ね備えた酸性染毛料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の化合物を酸性染毛料組成物中に含有させると、染毛時に地肌に付着した酸性染毛料組成物による地肌染まりを軽減するとともに高い染毛効果を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、たとえば以下の[1]〜[19]である。
[1]下記一般式(I)〜(VI)で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする酸性染毛料組成物。
【0009】
【化1】

(式(I)中、[ ]内はランダム付加、0≦a+b+c≦3、0≦d+e+f≦24、5≦g+h+i≦70である。)
【0010】
【化2】

(式(II)中、[ ]内はランダム付加、10≦j+k+l≦25、25≦m+n+o≦68である。)
【0011】
【化3】

(式(III)中、p+q+r+s=9である。)
【0012】
【化4】

(式(IV)中、t+u+v+w+x+y=25である。)
【0013】
【化5】

(式(V)中、a'+b'+c'+d'=5、e'+f'+g'+h'=65である。)
【0014】
【化6】

(式(VI)中、i'+j'+k'=20である。)
[2]前記式(I)〜(VI)で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を2〜10重量%の量で含むことを特徴とする[1]に記載の酸性染毛料組成物。
【0015】
[3]さらに、酸性染料、浸透剤、酸および増粘剤を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の酸性染毛料組成物。
[4]pHが2.5〜3.5であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【0016】
[5]前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=24、g+h+i=24である化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
[6]前記式(II)において、j+k+l=25、m+n+o=25である化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【0017】
[7]前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=16である化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
[8]前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=24、g+h+i=24である化合物と前記式(II)において、j+k+l=25、m+n+o=25である化合物とを重量比1:1で含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【0018】
[9]前記式(I)において、a+b+c=3、d+e+f=8、g+h+i=5である化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
[10]前記式(II)において、j+k+l=10、m+n+o=68である化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【0019】
[11]前記式(III)で表わされる化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
[12]前記式(IV)で表わされる化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]
のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【0020】
[13]前記式(V)で表わされる化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
[14]前記式(VI)で表わされる化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【0021】
[15]前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=16である化合物とグリセレス−26とを重量比1:1で含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【0022】
[16]前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=8である化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
[17]前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=10である化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【0023】
[18]前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=50である化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
[19]前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=70である化合物を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明の酸性染毛料組成物は、地肌染まりを軽減しながら、十分な染毛効果を発揮する。
また、本発明の酸性染毛料組成物は、毛髪を処理する際に、毛髪上での伸びが良く、毛髪に良好に絡まり、毛髪からたれることもないので、毛髪に均一に絡められた状態が保持され、効率よく、かつ、むらなく染毛を行うことができる。
【0025】
さらに、本発明の酸性染毛料組成物を用いた場合、染毛後の毛髪は、きしみがなく、指通りがよく、染毛による損傷が抑えられるとともに、毛髪洗浄時の色落ちも抑えられている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について具体的に説明する。
本願発明の酸性染毛料組成物は、下記一般式(I)〜(VI)で表わされる化合物(以下それぞれを「化合物(I)」〜「化合物(VI)」ともいう。)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、さらに必要に応じて酸性染料、浸透剤、酸および増粘剤などを含む。
【0027】
【化7】

(式(I)中、[ ]内はランダム付加、0≦a+b+c≦3、0≦d+e+f≦24、5≦g+h+i≦70である。)
【0028】
【化8】

(式(II)中、[ ]内はランダム付加、10≦j+k+l≦25、25≦m+n+o≦68である。)
【0029】
【化9】

(式(III)中、p+q+r+s=9である。)
【0030】
【化10】

(式(IV)中、t+u+v+w+x+y=25である。)
【0031】
【化11】

(式(V)中、a'+b'+c'+d'=5、e'+f'+g'+h'=65である。)
【0032】
【化12】

(上記式(VI)中、i'+j'+k'=20である。)
式(I)および(II)において、ランダム付加とは、[ ]内のオキシアルキレン単位が、式中の表記順にかかわらず任意の順序で結合していることをいう。
【0033】
(1)化合物(I)〜(VI)
本願発明の酸性染毛料組成物は、上記化合物(I)〜(VI)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。上記化合物(I)〜(VI)は、酸性染毛料組成物中で、染毛効果を妨げることなく、地肌染まりを軽減する。
【0034】
本願発明の酸性染毛料組成物は、酸性染毛料組成物全体に対して、上記化合物(I)〜(VI)からなる群から選ばれる少なくとも1種を、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜8重量%、さらに好ましくは4〜6重量%含有する。
【0035】
上記化合物(I)〜(VI)からなる群から選ばれる少なくとも1種を上記範囲で含有する酸性染毛料組成物は、地肌染まりを効果的に軽減するとともに、染毛効果を高く維持する。酸性染毛料組成物中の上記化合物(I)〜(VI)の含有量が、上記範囲より少ないと、地肌染まりが強く、上記範囲より多いと、染毛力が低下したり、剤型が安定しない。
【0036】
化合物(I)の例としては、a+b+c=0、d+e+f=24、g+h+i=24である化合物(以下「化合物(I−1)」または「PPG−24グリセリル−24」ともいう。)、
a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=16である化合物(以下「化合物(I−2)」または「PPG−16グリセリルエーテル」ともいう。)、
a+b+c=3、d+e+f=8、g+h+i=5である化合物(以下「化合物(I−3)」または「PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン」ともいう。)、
a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=8である化合物(以下「化合物(I−4)」または「PPG−8グリセリル」ともいう。)、
a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=10である化合物(以下「化合物(I−5)」または「PPG−10グリセリル」ともいう。)、
a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=50である化合物(以下「化合物(I−6)」または「PPG−50グリセリル」ともいう。)、
a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=70である化合物(以下「化合物(I−7)」または「PPG−70グリセリル」ともいう。)が挙げられる。
【0037】
化合物(II)の例としては、j+k+l=25、m+n+o=25である化合物(以下「化合物(II−1)」または「PPG−25−PEG−25トリメチロールプロパン」ともいう。)、j+k+l=10、m+n+o=68である化合物(以下「化合物(II−2)」または「PPG−68−PEG−10トリメチロールプロパン」ともいう。)が挙げられる。
【0038】
上記化合物(I)〜(VI)の中でも、化合物(I−3)、化合物(II−2)、化合物(III)(以下「PPG−9ジグリセリル」ともいう。)、化合物(IV)(以下「PPG−25ソルビトール」ともいう。)、化合物(V)(以下「PEG−5−PPG−65ペンタエリスリチル」ともいう。)、および化合物(VI)(以下「トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル」ともいう。)が好ましく、化合物(I−1)、化合物(I−2)、および化合物(II−1)がより好ましい。
【0039】
また、上記化合物(I)〜(VI)を1種以上組み合わせて用いてもよい。たとえば化合物(I−1)および(II−1)を重量比1:1で用いると、地肌染め軽減効果に優れ、特に好ましい。
【0040】
さらに、上記化合物(I)〜(VI)と他のポリオキシアルキレングリコール化合物を組み合わせてもよい。たとえば化合物(I−2)およびグリセレス−26を重量比1:1で用いても、地肌染め軽減効果が得られる。
【0041】
化合物(I)〜(VI)の各化合物毎の酸性染毛料組成物全体に対する好ましい含有量は以下の通りである。
化合物(I−1)は、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは3〜6重量%、最も好ましくは4〜6重量%である。
化合物(I−2)は、好ましくは4〜10重量%、より好ましくは4〜8重量%である。
化合物(I−3)は、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは4〜6重量%である。
化合物(I−4)は、好ましくは3〜10重量%、より好ましくは3〜6重量%である。
化合物(I−5)は、好ましくは3〜10重量%、より好ましくは3〜6重量%である。
化合物(I−6)は、好ましくは4〜8重量%、より好ましくは4〜6重量%である。
化合物(I−7)は、好ましくは4〜8重量%、より好ましくは4〜6重量%である。
化合物(II−1)は、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは3〜6重量%、最も好ましくは5〜6重量%である。
化合物(II−2)は、好ましくは3〜10重量%、より好ましくは4〜8重量%である。
化合物(III)は、好ましくは3〜10重量%、より好ましくは4〜8重量%である。
化合物(IV)は、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは5〜8重量%である。
化合物(V)は、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは4〜8重量%である。
化合物(VI)は、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは4〜5重量%である。
【0042】
(2)酸性染料
酸性染料は、毛髪に付着し、毛髪を染色する。酸性染料の例としては、法定タール色素が挙げられる。
【0043】
本発明の酸性染毛料組成物全体に対する酸性染料の含有量は、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。酸性染毛料を上記範囲の量で含有すると、毛髪を十分に染色することができる。
【0044】
(3)浸透剤
浸透剤は、毛髪内部へ酸性染料を浸透させる。浸透剤の例としては、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、α−メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、p−アニシルアルコール等の芳香族アルコール;エタノール、イソプロパノール等の脂肪族一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の脂肪族多価アルコール;炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のアルキレンカーボネート等が挙げられる。
【0045】
本発明の酸性染毛料組成物全体に対する浸透剤の含有量は、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。浸透剤を上記範囲の量で含有すると、酸性染料を毛髪に浸透させ、染毛効果を高く維持することができる。
【0046】
(4)酸
酸は、毛髪を酸性にして毛髪のケラチンタンパクをプラス帯電させ、マイナスの電荷を有する酸性染料と毛髪間にイオン結合を形成することにより、酸性染料の毛髪への付着を増加させる。酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、マンデル酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の有機酸および塩酸、リン酸等の無機酸が挙げられる。
【0047】
本発明の酸性染毛料組成物全体に対する酸の含有量は、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜7重量%含有する。酸を上記範囲の量で含有すると、酸性染料の毛髪への付着を増加させ、染毛効果を高く維持することができる。
【0048】
(5)増粘剤
増粘剤は、毛髪に酸性染毛料組成物を塗布し、一定の時間塗布した状態で保つ際に、酸性染毛料組成物がたれることなく毛髪上にとどまるように、酸性染毛料組成物の粘度を適切にする。増粘剤の例としては、アルギン酸、カラギーナン、寒天、ファーセレラン等の海藻抽出物;グアーガム、クインスシード、コンニャクマンナン、タマリンドガム、タラガム、デキストリン、デンプン、ローカストビーンガム等の種子粘質物;アラビアガム、ガッティガム、カラヤガム、トラガカントガム等の樹液粘質物;アラビノガラクタン、ペクチン、マルメロ等の果実粘質物;小麦タンパク質、大豆タンパク質等の植物系タンパク質;アルブミン、カゼイン、ゼラチン等の動物系タンパク質;キトサン、ヒアルロン酸等の動物系ムコ多糖;カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、シクロデキストリン、デキストラン、プルラン等の産生粘質物;ヒアルロン酸等の微生物系ムコ多糖;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース誘導体;デンプンリン酸エステル、デンプングリコール酸ナトリウム等のデンプン誘導体;カチオン化グアーガム、カルボキシメチル・ヒドロキシプロピル化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム等のグアーガム誘導体;カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)コポリマー、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー等のポリアクリル酸系高分子;高重合ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0049】
本発明の酸性染毛料組成物全体に対する増粘剤の含有量は、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%含有する。増粘剤を上記範囲の量で含有すると、酸性染毛料組成物は、毛髪に塗布された際に、たれることなく毛髪上にとどまり、染毛処理を好適な状態で行うことができる。
【0050】
(6)その他
本発明の酸性染毛料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、油性成分、界面活性剤、金属封鎖剤、香料、紫外線吸収剤、糖、PPT等を含んでいてもよい。
【0051】
(7)pH
本発明の酸性染毛料組成物は、pHが2〜4、好ましくは2.5〜3.5である。このようなpHは、酸およびpH調節剤の使用により調節される。pHが上記範囲にあると、十分な染毛効果が得られる。
【0052】
(8)酸性染毛料組成物の製造方法
本発明の酸性染毛料組成物は、上述した各成分を、公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散および乳化等を必要に応じて選択して行うことによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。
【0053】
(9)酸性染毛料組成物の使用態様
本発明の酸性染毛料組成物は、通常の酸性染毛料組成物と同様の態様で染毛に使用される。すなわち、本発明の酸性染毛料組成物を毛髪に塗布し、任意に加温しながら、適切な時間放置する。その後、毛髪から酸性染毛料組成物を洗い流し、毛髪を乾燥させる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例において、以下の市販品を用いた。
化合物(I−1):ユニルーブ(登録商標)50TG−32(日油株式会社製)、
化合物(I−2):ユニオール(登録商標)TG−1000(日油株式会社製)、
化合物(I−3):WILBRIDE(登録商標)S−753(日油株式会社製)、
化合物(I−4):ユニオール(登録商標)SGP−65(日油株式会社製)、
化合物(I−5):ユニオール(登録商標)TG−700(日油株式会社製)、
化合物(I−6):ユニオール(登録商標)TG−3000(日油株式会社製)、
化合物(I−7):ユニオール(登録商標)TG−4000R(日油株式会社製)、
化合物(II−1):ユニルーブ(登録商標)43TT−2500(日油株式会社製)、
化合物(II−2):ユニルーブ(登録商標)10TT−4500(日油株式会社製)、
化合物(III):ユニルーブ(登録商標)DGP−700(日油株式会社製)、
化合物(IV):ユニオール(登録商標)HS−1600D(日油株式会社製)、
化合物(V):ユニルーブ(登録商標)5TP−300KB(日油株式会社製)、
化合物(VI):ユニオックス(登録商標)GT−20IS(日油株式会社製)、
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー: SEPINOV EMT10(SEPPIC株式会社製)
【0055】
[実施例1〜160および比較例1〜28]
実施例は、表1または表21に示す酸性染毛料組成物を製造して、以下の各評価を行った。表1における成分Aは、表2〜表20に示す成分を、該表に示す各濃度で用いた。表21における成分Aは、表22に示す成分を、該表に示す各濃度で用いた。実施例1〜150および比較例1〜28において基本例とした組成物は、表1に記載された組成物の成分Aを0重量%にした組成物であり、実施例151〜160において基本例とした組成物は、表21に記載された組成物の成分Aを0重量%にした組成物である。
【0056】
実施例の各評価は、以下の方法で10人の専門テスター(美容師)により行い、各テスター毎に評点を出し、10人の評点の平均を下記評価基準に基づき判定した。
【0057】
<評価基準>
◎◎:10人のパネラーの評点の平均点が4.5点以上である。
◎:10人のパネラーの評点の平均点が3.5点以上4.5点未満である。
○:10人のパネラーの評点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人のパネラーの評点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人のパネラーの評点の平均点が1.5点未満である。
【0058】
<評価(ii)〜(viii)に用いた毛束の前処理>
毛束は、評価(iii)(iv)(vi)(vii)(viii)では、30cmの人毛黒髪毛束(BS−B3A、ビューラックス社製)を、前処理前の重さで10g用いた。評価(ii)および(v)では、12cmの人毛白髪毛束(BM−W、ビューラックス社製)を、前処理前の重さで1g用いた。
毛束は、CSトナーシャンプー(株式会社アリミノ製)でシャンプー後、流水ですすぐことにより前処理した。
【0059】
(i)地肌染まりの抑制
実施例、比較例および基本例の酸性染毛料組成物を、人間の上腕部(地肌とする)の1cm2に1g塗布し、室温で15分間放置した。その後、市販石鹸を用いて上腕部における各組成物の塗布個所を流水で洗い流した。洗い流し後、地肌染まりの少なさについて、実施例および比較例の酸性染毛料組成物を用いた場合と、基本例の酸性染毛料組成物を用いた場合とを目視で比較し、下記の基準で評点を出した。
【0060】
(評点)
5点:地肌はうっすらと染まっている程度であり、基本例の組成物を用いた場合に比べて、ほとんど地肌染まりが無い。
4点:地肌はわずかに染まっている程度であり、基本例の組成物を用いた場合に比べて、地肌染まりの軽減が容易に確認できる状態である。
3点:地肌は染まってはいるが、基本例の組成物を用いた場合に比べて、地肌染まりの軽減が確認できる状態である。
2点:基本例の組成物を用いた場合に比べて、地肌染まりのわずかな軽減がみられる状態である。
1点:基本例の組成物を用いた場合に比べて、地肌染まりの程度は同等である。
【0061】
(ii)毛束染まり
前記前処理後、タオルドライした人毛白髪毛束に実施例、比較例および基本例の酸性染毛料組成物を0.8g塗布して、ラップで包んだ。そして、45℃で15分間加温した後、25℃で5分間放置した。その後、流水で洗い流し、乾燥させた毛束の毛束染まりについて、実施例および比較例の酸性染毛料組成物を用いた場合と、基本例の酸性染毛料組成物を用いた場合とを目視で比較し、下記の基準で評点を出した。
【0062】
(評点)
5点:基本例の組成物を用いた場合と同程度に良く染まっている。
4点:基本例の組成物を用いた場合に比べるとわずかに薄い程度で良く染まっている。
3点:基本例の組成物を用いた場合に比べてやや薄く染まっているが、十分染まっている。
2点:基本例の組成物を用いた場合に比べて薄く染まっており、白茶けている。
1点:基本例の組成物を用いた場合に比べてかなり薄く染まっており、染まっているとは言い難い。
【0063】
(iii)塗布時の剤の延び
前記前処理後、タオルドライした人毛黒髪毛束に実施例および比較例の酸性染毛料組成物を10g塗布した。塗布の際の組成物の伸びの良さについて、下記の基準で評点を出した。
【0064】
(評点)
5点:組成物が毛髪上で非常に良く延び、滑るように塗布できる。
4点:組成物が毛髪上で良く延び、軽い力で塗布できる。
3点:組成物を毛髪に特に問題なく塗布できる。
2点:組成物が毛髪上でやや伸びが悪く、重たく感じる。
1点:組成物が毛髪上で伸びが悪く、毛髪に塗布が困難である。
【0065】
(iv)毛髪への塗布時の付着性
前記前処理後、タオルドライした人毛黒髪毛束に実施例および比較例の酸性染毛料組成物を10g塗布した。毛髪への組成物の付着性を観察し、下記の基準で評点を出した。
【0066】
(評点)
5点:組成物が毛髪に非常に良く絡みつき、まとわりつくような状態である。
4点:組成物が毛髪に良く絡みつき、しっかりと毛髪に塗布できる。
3点:組成物が毛髪に絡みつき、問題なく毛髪に塗布できる。
2点:組成物が毛髪表面でややはじかれ、毛髪に塗布ムラができてしまう。
1点:組成物が毛髪表面ではじかれてしまい、毛髪に塗布が困難である。
【0067】
(v)放置時のたれにくさ
前記前処理後、タオルドライした人毛白髪毛束に実施例および比較例の酸性染毛料組成物を0.8g塗布し、ラップに包んだ。そして、これを垂直にした状態で45℃で15分間加温した後、25℃で5分間放置した。その後、毛束からラップを外して毛髪上の組成物の状態を観察し、塗布直後の状態と比較し、下記の基準で評点を出した。
【0068】
(評点)
5点:毛髪上の組成物は、塗布直後の状態と全く変わらない。
4点:毛髪上の組成物は、ごくわずかな移動はあるが、塗布直後の状態からほとんど変わらない。
3点:毛髪上の組成物は、少しの移動が見られるが、染毛処理に影響はない。
2点:毛髪上の組成物は、毛髪からたれ落ちる程ではないが、塗布直後の場所から大幅に移動した。
1点:毛髪上の組成物は、毛束からたれ落ちた。
【0069】
(vi)流し時のきしみの少なさ
前記前処理後、タオルドライした人毛黒髪毛束に実施例、比較例および基本例の酸性染毛料組成物を10g塗布し、ラップで包んだ。この状態で45℃で15分間加温した後、さらに25℃で5分間放置した。その後、毛束からラップを外して組成物を毛束から流水で洗い流すときの毛髪のきしみについて、実施例および比較例の酸性染毛料組成物を用いた場合と、基本例の酸性染毛料組成物を用いた場合と比較し、下記の基準で評点を出した。
【0070】
(評点)
5点:基本例の組成物を用いた場合に比較して、毛髪のきしみがほとんどなく、流し時の指通りがよい。
4点:基本例の組成物を用いた場合に比較して、毛髪のきしみが少なく、流し時の指の引っかかりが少ない。
3点:基本例の組成物を用いた場合と毛髪のきしみの程度が同等である。
2点:基本例の組成物を用いた場合よりきしみが増し、指を通すのが困難である。
1点:基本例の組成物を用いた場合よりきしみがひどく、指が通らない。
【0071】
(vii)流し時の色落ち
前記前処理後、タオルドライした人毛黒髪毛束に実施例、比較例および基本例の酸性染毛料組成物を10g塗布し、ラップで包んだ。この状態で45℃で15分間加温した後、25℃で5分間放置した。その後、毛束からラップを外して組成物を流水で洗い流す時の流水中への色落ちについて、実施例および比較例の酸性染毛料組成物を用いた場合と、基本例の酸性染毛料組成物を用いた場合とを比較し、下記の基準で評点を出した。
【0072】
(評点)
5点:基本例の組成物を用いた場合に比較して、流水中への色落ちは確認できない。
4点:基本例の組成物を用いた場合に比較して、流水中への色落ちが少なく、気付かない程度である。
3点:基本例の組成物を用いた場合に比較して、流水中への色落ちが同等である。
2点:基本例の組成物を用いた場合に比較して、流水中への色落ちが増した。
1点:基本例の組成物を用いた場合に比較して、流水中へ多量に色落ちした。
【0073】
(viii)指通り
前記前処理後、タオルドライした人毛黒髪毛束に実施例、比較例および基本例の酸性染毛料組成物を10g塗布し、ラップで包んだ。この状態で45℃で15分間加温した後、25℃で5分間放置した。その後、毛束からラップを外して毛束から組成物を流水で洗い流し、毛束を市販のシャンプー(CSモイストシャンプー(株式会社アリミノ製))で洗浄して水洗し、市販のトリートメント(CSモイストトリートメント(株式会社アリミノ製))を塗布した後、水洗した。ドライヤーで毛束を乾燥後、毛束の指通りについて、実施例および比較例の酸性染毛料組成物を用いた場合と、基本例の酸性染毛料組成物を用いた場合とを比較し、下記の基準で評点を出した。
【0074】
(評点)
5点:基本例の組成物を用いた場合に比べ、毛髪がしっとりとし、指通りが非常に良い。
4点:基本例の組成物を用いた場合に比べ、毛髪の指通りが良い。
3点:基本例の組成物を用いた場合に比べ、毛髪の指通りの程度は同等である。
2点:基本例の組成物を用いた場合に比べ、毛髪にパサツキがあり、指通りが悪い。
1点:基本例の組成物を用いた場合に比べ、毛髪のごわつきがひどく、指通りが非常に悪い。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
【表8】

【0083】
【表9】

【0084】
【表10】

【0085】
【表11】

【0086】
【表12】

【0087】
【表13】

【0088】
【表14】

【0089】
【表15】

【0090】
【表16】

【0091】
【表17】

【0092】
【表18】

【0093】
【表19】

【0094】
【表20】

【0095】
【表21】

【0096】
【表22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)〜(VI)で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする酸性染毛料組成物。
【化1】

(式(I)中、[ ]内はランダム付加、0≦a+b+c≦3、0≦d+e+f≦24、5≦g+h+i≦70である。)
【化2】

(式(II)中、[ ]内はランダム付加、10≦j+k+l≦25、25≦m+n+o≦68である。)
【化3】

(式(III)中、p+q+r+s=9である。)
【化4】

(式(IV)中、t+u+v+w+x+y=25である。)
【化5】

(式(V)中、a'+b'+c'+d'=5、e'+f'+g'+h'=65である。)
【化6】

(式(VI)中、i'+j'+k'=20である。)
【請求項2】
前記式(I)〜(VI)で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を2〜10重量%の量で含むことを特徴とする請求項1に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項3】
さらに、酸性染料、浸透剤、酸および増粘剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項4】
pHが2.5〜3.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項5】
前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=24、g+h+i=24である化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項6】
前記式(II)において、j+k+l=25、m+n+o=25である化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項7】
前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=16である化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項8】
前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=24、g+h+i=24である化合物と前記式(II)において、j+k+l=25、m+n+o=25である化合物とを重量比1:1で含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項9】
前記式(I)において、a+b+c=3、d+e+f=8、g+h+i=5である化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項10】
前記式(II)において、j+k+l=10、m+n+o=68である化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項11】
前記式(III)で表わされる化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項12】
前記式(IV)で表わされる化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項13】
前記式(V)で表わされる化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項14】
前記式(VI)で表わされる化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項15】
前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=16である化合物とグリセレス−26とを重量比1:1で含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項16】
前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=8である化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項17】
前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=10である化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項18】
前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=50である化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項19】
前記式(I)において、a+b+c=0、d+e+f=0、g+h+i=70である化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性染毛料組成物。

【公開番号】特開2012−111705(P2012−111705A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261237(P2010−261237)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(595082283)株式会社アリミノ (38)
【Fターム(参考)】