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酸性液状栄養組成物
説明

酸性液状栄養組成物

【課題】 蛋白質、糖質、油脂をバランスよく含みながら、酸味による爽やかさがあり、見た目に爽やかな透明感がある液状栄養組成物を提供することであり、さらには粘度が低く飲みくちの良い爽やかさがあり、臭味や苦味などがなく、浸透圧が低く、乳化安定性が高い液状栄養組成物を提供すること。
【解決手段】 蛋白質、糖質、乳化剤、油脂、及び水を含む経口用液状栄養組成物であって、
蛋白質(A)の配合量が2〜11質量%、糖質(B)の配合量が10〜35質量%、乳化剤(C)と油脂(D)の配合量の合計が1〜13質量%であり、
蛋白質(A)が、コラーゲンペプチド及び分解度が23〜35である乳ペプチド、
糖質(B)が、数平均分子量が400〜900の澱粉分解物、
乳化剤(C)が、平均重合度が5以上のポリグリセリンとオレイン酸またはミリスチン酸のいずれかとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステル、
油脂(D)が、MCT
を含有し、
pHが3.0〜5.0であることを特徴とする液状栄養組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質、糖質、乳化剤、及び油脂を含みpHが3.0〜5.0の液状栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の食事を摂取できない患者への栄養補給方法として、血管に直接栄養成分を投与する静脈栄養法と呼ばれる方法が従来から知られている。しかし、長期にわたって静脈栄養法を継続すると、腸管が活動しない状態が続くため、腸管粘膜の廃用性萎縮や感染症などの合併症が指摘されている。チューブを通して栄養成分を胃または腸に投与する経腸栄養法であれば腸管の機能が維持されるが、生活の質(QOL:Quality of Life)からの観点では望ましいものではない。よって、通常の食事を摂取できない場合においても飲み込む力がある患者では、経口で飲用することがより生理的で望ましいとされる。
【0003】
しかし、これまでの液状栄養組成物は、栄養組成のみが重視され、多くの栄養成分を配合するため濃厚感のある風味、乳濁した外観をしており、患者の美味しく飲みたいという欲求に対して配慮がされておらず、かえってQOLを低下させてしまっていた。
【0004】
また、美味しく飲める液状栄養組成物であっても、通常の食事を摂取できない患者や高齢者の多くは食が細くなっており、多くの量を一度に飲みきることができない。このため、熱量をはじめとする栄養成分は可能な限り高濃度に含まれていることが望ましい。そうすることで飲み残しによる栄養補給の不足の問題を解決することもできる。無理に多くの量を飲むことはQOLの低下につながるだけでなく、胃食道逆流による肺炎を引き起こし生命に関わる重篤な問題となる。
【0005】
よって、蛋白質、糖質、油脂をバランスよく含みながら、酸味による爽やかさがあり、粘度が低く飲みくちの良い爽やかさがあり、透明感によって見た目にも爽やかな状態とすることで、良好な風味を有した液状栄養組成物が求められていた。更に飲用を目的としているため臭味や苦味などがなく、また浸透圧性の下痢を抑制するため浸透圧が低く、脂質を含む乳化物であるため乳化安定性が高いことが求められる。更には熱殺菌を受けたのちにおいても、これらの品質が保持されることが望ましい。
【0006】
このような液状栄養組成物を提供するために、従来様々な工夫がなされてきた。例えば、特許文献1には液状流動食のpHを酸性とするために、醗酵乳製品を用いた酸性流動食に関する技術が開示されている。これは、抗菌性を目的とした技術ではあるが、ヨーグルト様の風味を持つため、従来の流動食よりも風味としては爽やかな印象を患者に与えることができる。しかし、この発明のように単に流動食を酸性にするのみでは、酸によって起こるカゼイン等の蛋白質の等電点凝集により、粘度が高くなるばかりか、乳濁よりも更に透明感のない状態になってしまい、濃厚感が完全に解決されるものではなかった。
【0007】
特許文献2には、液状滅菌栄養剤に関する技術が開示されている。これは、糖質がDE(Dextrose equivalent)値25以上のデキストリン(澱粉分解物)及び脂肪を加水分解レシチンなど親水性のリン脂質で乳化させたものを、投与時に、アミノ酸及び低分子ペプチドからなる蛋白質と混合する、用時調製の液状滅菌栄養剤である。しかし、この発明では、用時調製としなかった場合、つまり、蛋白質、糖質、乳化剤、及び油脂を含む液状栄養組成物とした場合に、乳化安定性が不十分であるという問題がある。また、pH中性領域においてのみ乳化安定性が得られる乳化剤を使用しているため、酸性の液状栄養組成物とした場合の問題は解決していない。
【0008】
特許文献3には、液状高エネルギー食に関する技術が開示されている。これは、高濃度でありながら低い粘度と浸透圧を確保するため、蛋白質が分散性微粒子蛋白からなり、糖質がDE値10〜25のデキストリンからなる技術である。また実施例には乳化剤として、リゾレシチン、デカグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン酒石酸モノグリセリドを併用した例が示されている。しかし、分散性微粒子蛋白として挙げられているカゼイン粒子(ミルク蛋白濃縮物)は酸性域では等電点沈澱による激しい凝集を引き起こすので、粘度が高くなるばかりか、凝集物がざらざらとした食感となり、もはや均一な液状といえなくなり、そもそもの目的である経口用途として使用に耐えられなくなる。また乳化剤として例示されているデカグリセリン脂肪酸エステルは、3種併用されているものの1つに過ぎず、その構成脂肪酸なども詳細が明記されていないことから、酸性領域では製造直後に乳化が不安定となる。
【0009】
特許文献4には、栄養剤を酸性とすることで、チューブ詰まりや細菌汚染等が生じにくく、味や風味にバリエーションがあり摂取しやすいことを目的として、蛋白質を含有する酸性液状経腸栄養剤に関する技術が開示されている。これは、蛋白質が酸性ホエイ蛋白質分離物及びコラーゲンペプチドからなり、乳化剤が有機酸モノグリセリド及び重合度4〜10のポリグリセリンとオレイン酸とのモノエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルからなっている。しかし、酸性ホエイ蛋白質分離物は、ミネラル含有下熱殺菌を経た場合には溶解度が低下し白濁することが一般的に知られており、視覚的な透明感を得るためには更なる検討が必要である。また糖質や油脂についても通常使用されるものが列挙されているのみであり、蛋白質のみならず脂質及び糖質を含有した場合にも視覚的な透明感を得るための方法は開示されていない。また、単位容積あたりの熱量も1kcal/ml以下と少ないため、食の細い患者や高齢者が充分に飲みきれる量とはいえず、栄養補給の不足の問題も解決されない。
【0010】
以上より、蛋白質、糖質、油脂をバランスよく含みながら、酸味による爽やかさがあり、粘度が低く飲みくちの良い爽やかさがあり、透明感によって見た目にも爽やかな状態であり、飲用を目的としているため臭味や苦味などがなく、浸透圧が低く、乳化安定性が高い液状栄養組成物はこれまでになかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2005/094850号公報
【特許文献2】特開平2−142448号公報
【特許文献3】特開平7−147932号公報
【特許文献4】特開2007−126379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、以上のような背景のもとでなされたもので、蛋白質、糖質、油脂をバランスよく含みながら、酸味による爽やかさがあり、見た目に爽やかな透明感がある液状栄養組成物を提供することであり、さらには粘度が低く飲みくちの良い爽やかさがあり、臭味や苦味などがなく、浸透圧が低く、乳化安定性が高い液状栄養組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、酸性条件下で透明感がある液状栄養組成物とするために鋭意検討したところ、特定のペプチド、澱粉分解物、乳化剤、及び油脂を使用すると、透過光を遮断しにくい液状栄養組成物ができることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下の第1<1>から第9<9>の発明からなる。
【0014】
<1> 蛋白質、糖質、乳化剤、油脂、及び水を含む液状栄養組成物であって、蛋白質(A)の配合量が2〜11質量%、糖質(B)の配合量が10〜35質量%、乳化剤(C)と油脂(D)の配合量の合計が1〜13質量%であり、蛋白質(A)がコラーゲンペプチド及び分解度が23〜35である乳ペプチド、糖質(B)が数平均分子量が400〜900の澱粉分解物、乳化剤(C)が平均重合度が5以上のポリグリセリンとオレイン酸またはミリスチン酸のいずれかとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステル、油脂(D)がMCT を含有し、pHが3.0〜5.0であることを特徴とする経口用液状栄養組成物。
【0015】
<2> コラーゲンペプチド及び分解度が23〜35である乳ペプチドを蛋白質(A)全体の50質量%以上、数平均分子量が400〜900の澱粉分解物を糖質(B)全体の50質量%以上、平均重合度が5以上のポリグリセリンとオレイン酸またはミリスチン酸のいずれかとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤(C)全体の70質量%以上、MCTを油脂(D)全体の70質量%以上含む、<1>に記載の液状栄養組成物。
【0016】
<3> 油脂(D)と乳化剤(C)の質量比率が1:6〜3:1であることを特徴とする、<1>〜<2>に記載の液状栄養組成物。
【0017】
<4> MCTの構成脂肪酸としてカプリル酸及びカプリン酸を含むことを特徴とする、<1>〜<3>のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【0018】
<5> 水に対する糖質(B)の配合割合が15%以上60%以下であることを特徴とする、<1>〜<4>のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【0019】
<6> 蛋白質(A)が、コラーゲンペプチド、分解度が23〜35である乳ペプチド、及びアミノ酸からなる、<1>〜<5>のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【0020】
<7> コラーゲンペプチドの重量平均分子量が2000〜50000である、<1>〜<6>のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【0021】
<8> さらに食物繊維(E)を含み、食物繊維(E)が、難消化性デキストリン、イヌリン、及びポリデキストロースからなる群より選ばれる、1種または2種以上の食物繊維を0.1〜5質量%含有することを特徴とする、<1>〜<7>のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【0022】
<9> 加熱殺菌後の透過率が1%以上である、<1>〜<8>のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1〜9の発明によれば、蛋白質、糖質、油脂をバランスよく含みながら、酸味による爽やかさがあり、粘度が低く、飲みくちの良い爽やかさがあり、透明感によって見た目にも爽やかな状態であり、臭味や苦味などがない液状栄養組成物を提供できる。さらに、浸透圧を低くすることで、浸透圧性の下痢を抑制することができる。また、脂質を含む液状栄養組成物であっても高い乳化安定性を維持することができ、特に加熱殺菌後においても、良好な乳化安定性及び良好な透明感を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(栄養組成物)
本発明の液状栄養組成物は、流動食、濃厚流動食、経腸栄養剤、総合栄養食などの呼称でよばれる、経腸栄養法で使用される液状で流動性のある栄養組成物が代表的なものであるが、これに限られるものではない。基本組成としては、水、蛋白質、脂質、糖質、食物繊維、ビタミン、ミネラルから構成され、そのバランスは厚生労働省において策定された「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」などを参考にして、それぞれの目的に則して設定される。ただし、「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」は健常人を対象に設定されているため、1日あたりのエネルギー必要量は1350kcal〜2750kcalであるが、流動食を使用する人は、寝たきりであり基礎代謝量が低下している場合が多く、1日の必要熱量は800kcal〜1500kcalで設定されることが多い。
【0025】
(pH)
爽やかな飲み口とするためには、果汁ジュースやヨーグルト等に代表されるようにpH3.0〜5.0である。pHが3.0より小さいと酸味が強すぎて経口として適さなくなり、5.0より大きいと酸味を感じなくなり、本発明の目的を達成することができなくなる。pH4.6以下であると殺菌条件を緩和することが可能であり、栄養組成物による熱変性や殺菌コストなどによる経済上のメリットが得られることから、pH3.0〜4.6がより好ましい。酸味の強さからさらに好ましくはpH3.5〜4.5であり、本発明の栄養組成物を飲用する主な対象である高齢者は強すぎる刺激的な酸味を嫌うため、最も好ましくはpH4.0〜4.4である。
【0026】
(蛋白質(A)の概要)
蛋白質(A)は栄養学的にいう蛋白質であり、ペプチド及び遊離アミノ酸を含む。蛋白質(A)の配合量は液状栄養組成物全体の2〜11質量%とすることが好ましい。2質量%より少ないと栄養学的な価値が低くなり、11質量%より多いと蛋白質特有の味が強くなりすぎる。本発明の蛋白質(A)は、コラーゲンペプチド及び分解度が23〜35である乳ペプチドを含有すれば、本発明の目的を逸脱しない範囲で一般に食用として利用されているものを使用できるが、コラーゲンペプチド及び分解度が23〜35である乳ペプチドの含有量は蛋白質(A)全体の50質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることが特に好ましい。尚、蛋白質(A)は、実質的にペプチド及び遊離アミノ酸のみから構成されることが望ましい。ペプチドとしては例えば、コラーゲンペプチド及び乳ペプチド以外に、鶏卵、鶏肉、魚肉、豚肉、牛肉、大豆、小麦、米、トウモロコシなどの分解物が挙げられる。アミノ酸としては例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−ヒスチジンなどが挙げられる。
【0027】
(蛋白質(A)のコラーゲンペプチド)
本発明は、コラーゲンペプチドを用いることが必須である。コラーゲンペプチドはゼラチンの酸、アルカリまたは酵素による分解物であり、その重量平均分子量は2000〜50000が好ましく、最も好ましくは4000〜20000である。2000よりも小さいと遊離アミノ酸や低分子のペプチドによる苦味やえぐ味が強くなったり浸透圧が高くなったりし、50000よりも大きいとゲル化性が充分に失われず、ゲル化を生じるか粘度が高くなる。コラーゲンペプチドは容易に溶解し、酸性領域で熱殺菌を経る場合においても透明に溶解する利点を持つ。コラーゲンペプチドの由来としては、牛や豚や魚や鳥などの骨や皮や鱗や鶏冠などが挙げられる。
【0028】
(蛋白質(A)の乳ペプチド)
本発明は、分解度が23〜35である乳ペプチドを用いることが必須である。好ましくは乳ペプチドの分解度が23〜28である。分解度が35より大きいと浸透圧が上昇し、臭味又は苦味が強くなる。逆に23より小さいと、ペプチド自身が不溶化し白濁沈澱し透明性が低下したり、乳化粒子の粗大化を引き起こし乳化安定性が低下したりする。この乳化安定性が低下するメカニズムについては必ずしも明確にはなっていないが以下のようなことが考えられる。本発明は後述する乳化剤が、乳化構造を維持する重要な役割を果たす。しかし、乳蛋白質は疎水性部位と親水性部位を併せ持ち乳化機能を有するため、分解の程度が少ないと、乳化機能が残存し、乳化剤の乳化機能を阻害してしまうと考えられる。また乳ペプチドと乳化剤の疎水性部分が相互作用し、乳化剤が乳化機能を発揮できなくする可能性が考えられる。分解度が大きい乳ペプチドは油水界面や乳化剤と相互作用するだけの疎水性部位を持たないために、乳化に影響を与えないものと推測される。乳ペプチドの種類としては、総合乳蛋白質ペプチドやカゼインペプチドやホエイ(乳清)ペプチドが挙げられる。
【0029】
(分解度の測定方法)
本発明の乳ペプチドの分解度の測定方法は、一般的に用いられるOPA(o-Phthalaldehyde)法などを用いることができる。
【0030】
(蛋白質(A)のアミノ酸)
前述のようにコラーゲンペプチドなどのアミノ酸スコアの低いペプチドを使用する場合は、最終製品として一定のアミノ酸スコアを保つために遊離のアミノ酸を配合することが好ましい。例えば、ホエイペプチドとコラーゲンペプチドを1:1で混合した場合は、L−トリプトファン、L−ロイシン、L−メチオニンまたはL−システイン、L−ヒスチジン、L−バリン、L−フェニルアラニンまたはL−チロシンの配合が好ましい。アミノ酸スコアを90〜100にするためには、この中でもL−フェニルアラニンまたはL−チロシンを多量に配合しなければならないが、酸性領域ではL−フェニルアラニンのほうが溶解性や保存安定性から好ましい。
【0031】
(蛋白質(A)の栄養バランス)
本発明の蛋白質(A)は、エネルギー比率で8〜32%が好ましく、より好ましくは12〜24%、最も好ましくは12〜20%である。臨床栄養的には、PEM(Protein Energy Malnutrition;蛋白質・エネルギー低栄養状態)と呼ばれる栄養状態を起こさないため、またこの栄養状態から回復させるため、単位容積または単位熱量あたりに含まれる蛋白質成分の多いことが望まれている。PEM状態にあると、様々な疾病や術後の回復が遅れ、最近では褥瘡を発症しやすく治癒し難い問題が指摘されている。しかし、蛋白質成分が多い場合には、蛋白質の老廃物を処理する腎臓に負担がかかり、特に腎臓の機能が低下している高齢者においては血中尿素窒素が上昇するため好ましくない。また、蛋白質濃度が高いと、蛋白質自体の風味が顕著に目立つようになったり、粘度や浸透圧が上昇したりする。蛋白質濃度が低い場合は、一定の熱量を確保するため、相対的に糖質もしくは油脂を増量することが必要となり、糖質を増量した場合は後述するような食後血糖値の問題や、脂質を増量した場合は、透明性が得られなくなるなどの問題が生じる。
【0032】
(蛋白質(A)の分析法とアミノ酸スコア)
本発明の蛋白質(A)の含有量は、ケルダール法などによって窒素含量を測定することによって算出される。よって、蛋白質の消化態である遊離アミノ酸であっても、蛋白質分解物(ペプチド)であっても、栄養学的には蛋白質に含まれる。栄養補給を目的とするために、栄養学的に良質であることが望ましい。例えば、アミノ酸スコアという指標がある。本発明の栄養組成物は、使用する蛋白質のアミノ酸スコアは限定しないが、栄養組成物としては、少なくとも70以上、好ましくは80以上、最も好ましくは100である。
【0033】
(糖質(B)の概要)
本発明の糖質(B)は、数平均分子量が400〜900の澱粉分解物を含有すれば、本発明の目的を逸脱しない範囲で一般に食用として利用されているものを使用できる。糖質としては例えば、澱粉分解物以外に、ブドウ糖、果糖などの単糖類、蔗糖、乳糖、トレハロースなどの二糖類、オリゴ糖、澱粉、異性化糖、還元水飴、還元デキストリンなどが挙げられる。本発明の糖質(B)の配合量は10〜35質量%であり、10質量%より少ないと栄養学的な価値が低くなり、35質量%より多いと浸透圧や粘度が高くなりすぎる。好ましくは15〜30質量%、より好ましくは20〜30質量%である。
【0034】
(糖質(B)の澱粉分解物)
本発明は、数平均分子量が400〜900の澱粉分解物を用いることが必須である。好ましくは数平均分子量が500〜900である。400より小さいと浸透圧が上昇する。逆に900より大きいと、乳化粒径の粗大化を引き起こし、透明性を下げ、乳化安定性に悪影響を及ぼす。このメカニズムについては必ずしも明確にはなっていないが以下のようなことが考えられる。澱粉はその分子が螺旋構造をとり、その中空は疎水性であることが知られている。また代表的な食品用乳化剤であるモノアシルグリセロールが澱粉と共存すると、その中空に脂肪酸部分が入り込むことも知られている。このことから、平均分子量が大きい澱粉分解物は同様に乳化剤の脂肪酸部分を螺旋構造の中空に取り込み、乳化剤として機能できなくする可能性が考えられる。平均分子量が小さい澱粉分解物は、乳化剤が取り込まれるほどの螺旋構造ができないために、乳化に影響を与えないものと推測される。澱粉分解物とは分子量によってデキストリン、マルトデキストリン、水飴などと呼ばれるものであり、馬鈴薯、コーン、タピオカ、小麦などから得られる澱粉を、酸や酵素などで分解したものである。
【0035】
(糖質(B)の栄養バランス)
本発明の糖質(B)は、エネルギー比率で33〜84%が好ましく、より好ましくは51〜78%、最も好ましくは60〜76%である。臨床栄養的には、糖質は比較的速やかにエネルギーに変換される源であるので好ましいが、多量に配合すると食後血糖値の上昇を誘発し、糖尿病などの疾病に悪い影響を与える。また糖質濃度が高いと、粘度や浸透圧が高くなるばかりか、澱粉分解物の濃度が高い場合は後述する乳化剤の取り込みにより乳化安定性に与える悪い影響が大きくなる。糖質濃度が低い場合は、一定の熱量を確保するため、相対的に蛋白質もしくは油脂を増量することが必要となり、蛋白質を増量した場合は前述したような血中尿素窒素の問題や、脂質を増量した場合は後述するように透明性が得られなくなるなどの問題が生じる。
【0036】
(乳化剤(C)の概要)
本発明の乳化剤(C)は、平均重合度が5以上のポリグリセリンとオレイン酸またはミリスチン酸のいずれかとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有すれば、本発明の目的を逸脱しない範囲で一般に食用として利用されているものを使用できる。平均重合度が5以上のポリグリセリンとオレイン酸またはミリスチン酸のいずれかとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤(C)全体の70質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることが特に好ましい。乳化剤(C)の全量を平均重合度が5以上のポリグリセリンとオレイン酸またはミリスチン酸のいずれかとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルとすることもできる。ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤としては、例えば、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ショ糖エステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、レシチンなどが挙げられる。
【0037】
(乳化剤(C)のポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明は、平均重合度が5以上のポリグリセリンと、オレイン酸またはミリスチン酸のいずれかとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが必須である。ポリグリセリンの平均重合度は好ましくは10以上である。ポリグリセリンの平均重合度が5より小さいと微細な乳化粒子と乳化安定性が得られない。またエステルの原料とする脂肪酸は、パルミチン酸やステアリン酸などの長鎖飽和脂肪酸では微細な乳化粒子と乳化安定性が得られず、ラウリン酸などの中鎖脂肪酸では乳化剤特有の味が強くなるため経口用途として不適であるため、ミリスチン酸またはオレイン酸が必須である。また乳化剤特有の味についてはミリスチン酸よりもオレイン酸のほうが良好である。乳化剤全体における脂肪酸の割合では、オレイン酸またはミリスチン酸が50質量%以上、より好ましくは70%重量以上、最も好ましくは80質量%以上である。
【0038】
(油脂(D)の概要)
本発明の油脂(D)は、MCTを含有すれば、本発明の目的を逸脱しない範囲で一般に食用として利用されているものを使用できる。油脂としては例えば、MCT以外に、ナタネ油、大豆油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油、オリーブ油、米油、シソ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油などが挙げられる。
【0039】
(油脂(D)のMCT)
本発明は、油脂(D)が、炭素数8〜12の中鎖脂肪酸とグリセリンのトリエステルであるMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド、中鎖脂肪、中鎖脂肪油)を用いることが必須である。油脂中のMCTの割合は、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。油脂(D)の全量をMCTとすることもできる。油脂中のMCTの割合が70質量%より少ないと、微細な乳化粒子が得られず、透明感も得られなくなる。MCTを用いると微細な乳化粒子が得られることについては必ずしも明確にはなっていないが以下のようなことが考えられる。乳化構造において、油脂と乳化剤の性質が似ていると良好な乳化構造が得られるといわれている。MCTはLCT(長鎖脂肪酸トリグリセリド)と比べて水への溶解度が高く、比較的親水性の油脂であり、またその融点(凝固点)が低い。一方、前述のポリグリセリン脂肪酸エステルはグリセリンの重合度が大きいためHLB(乳化剤の親疎水性を表す指標)が高く親水性の乳化剤であり、構成脂肪酸がミリスチン酸やオレイン酸であるため融点(凝固点)が低い。よってMCTと前述のポリグリセリン脂肪酸エステルの性質は似ており良好な乳化構造が得られると考えられる。またMCTは、栄養学的にみても消化機能が衰えた患者や高齢者においても効率よく吸収され、またエネルギーに速やかに変換される特徴があり望ましい。
【0040】
(油脂(D)の栄養バランス)
本発明の油脂(D)は、エネルギー比率で8〜35%が好ましく、より好ましくは10〜25%、最も好ましくは12〜20%である。臨床栄養的には、油脂は重量あたりに含まれる熱量(9kcal/g)が蛋白質や糖質(4kcal/g)と比べ高い方が好ましいが、多量に配合すると血清脂質濃度の上昇を誘発し、動脈硬化症などの疾病に悪い影響を与える。また油脂濃度が高いと、乳化粒子による白濁の影響が大きくなり透明性の確保が困難になる。油脂濃度が低い場合には、一定の熱量を確保するため、相対的に蛋白質もしくは糖質を増量することが必要となり、蛋白質を増量した場合は前述したような血中尿素窒素の問題や、糖質を増量した場合には前述した食後血糖値の問題が生じる。
【0041】
(油脂(D)の分析法)
本発明の油脂(D)の含有量は、エーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液法、酸分解法、レーゼゴットリーブ法、ゲルベル法などによって測定されるが、極性の高い脂質も充分に回収するため、クロロホルム・メタノール混液法またはレーゼゴットリーブ法が好ましい。
【0042】
(食物繊維(E))
本発明の食物繊維(E)は、栄養組成物の生理効果を高めるため、本発明の目的を逸脱しない範囲で一般に食用として利用されているものを使用してもよい。食物繊維としては例えば、タマリンドシードガム、グァーガム、グァーガム酵素分解物、小麦胚芽、難消化性デキストリン、大豆食物繊維、プルラン、アラビアガム、ビートファイバー、低分子化アルギン酸ナトリウム、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、サイリウム種皮、セルロース、ポリデキストロース、コーンファイバー、小麦ふすまなどが挙げられる。ただし、本発明の目的である透明性を確保するために水溶性食物繊維が望ましく、その中でも難消化性デキストリン、イヌリン、ポリデキストロースにおいて微細な乳化粒子が得られやすい。
【0043】
(ペプチドの配合量と比率)
本発明の蛋白質(A)は、実質的にペプチド及びアミノ酸のみからなることが望ましい。また、アミノ酸はアミノ酸スコアを高くするための補助的に添加されるものであるため、その大部分はペプチドとして配合されることになる。そのため、ペプチドの配合量は蛋白質(A)の配合量と同等で栄養組成物全体の2〜11質量%であり、2質量%より少ないと栄養学的な価値が低くなり、11質量%より多いとペプチド特有の味が強くなる。好ましくは3〜8質量%、より好ましくは3〜7質量%である。前述のように、コラーゲンペプチドは容易に溶解し、酸性領域でミネラルを含み、熱殺菌を経る場合においても透明に溶解する有用性がある一方で、栄養学的には良質でなくアミノ酸スコアが0であることから、コラーゲンペプチドの比率を大きくすることは好ましくない。よって栄養組成物として一定のアミノ酸スコアを保つためには、乳ペプチドなどのアミノ酸スコアが良好なペプチドや遊離のアミノ酸と併用することが必要である。本発明においては、アミノ酸スコアが良好なペプチドとして、前述のように、分解度が23〜35である乳ペプチドを含む必要がある。コラーゲンペプチドと分解度が23〜35である乳ペプチドの比率は、5:1〜1:5が好ましい。より好ましくは3:1〜1:3であり、最も好ましくは2:1〜1:2である。コラーゲンペプチドの割合が多いと、アミノ酸スコアを補うための遊離アミノ酸により苦味やえぐ味が強くなり、分解度が23〜35である乳ペプチドの割合が多いと、それ自身の苦味やえぐ味が強くなり、コスト的にも不利になる。なお、ここで、分解度が23〜35である乳ペプチドは、その一部を別のアミノ酸スコアが良好なペプチドに置き換えることができる。アミノ酸スコアが良好なペプチドとは、アミノ酸スコア50以上が望ましい。より好ましくは80以上であり、最も好ましくは100以上である。
【0044】
(澱粉分解物の配合量)
本発明の糖質(B)のうちの数平均分子量が400〜900の澱粉分解物の割合は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。糖質(B)の全量を数平均分子量が400〜900の澱粉分解物とすることもできる。糖質中の数平均分子量が400〜900の澱粉分解物の割合が少ない場合は、本発明の効果が充分得られない。
【0045】
(油脂と乳化剤の総量)
本発明における油脂(D)と乳化剤(C)の総量は1〜13質量%であり、油脂と乳化剤の総量が1質量%より少ないと栄養学的な価値が低くなり、13質量%よりも多いと透明感が得られない。好ましくは2〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%である。
【0046】
(油脂と乳化剤の比率)
本発明において小さい乳化粒径を得るためには、油脂(D)と乳化剤(C)の質量比率が重要であり、1:6〜3:1が好ましく、より好ましくは1:4〜1.7:1、最も好ましくは1:3〜1.2:1である。油脂が多い場合は乳化剤特有の味が抑えられ、乳化剤が多い場合は微細な乳化粒子を得ることができる。
【0047】
(水に対する糖質の割合)
乳化による白濁は、水相部と油相部の屈折率の差異のために起こるとされている。油相部の屈折率はおおよそ1.6前後と一定であるが、水相部の屈折率は溶質の種類及び濃度に依存する。つまり、水に溶解する糖質濃度などが高ければ屈折率が高くなり、結果として水相部と油相部の屈折率の差異が小さくなり、透明性が確保されやすくなる。水の配合量を100質量%とした場合の糖質の配合量は、通常15質量%以上で、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上であり、60質量%以下が好ましい。これが60質量%を超えると、糖質過多となるだけでなく、浸透圧や粘度が高くなりすぎる。
【0048】
食物繊維(E)の配合量としては0.1質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜3質量%であり、最も好ましくは0.5質量%〜2質量%である。0.1質量%より少ないと食物繊維のもつ生理効果が得られず、5質量%より多いと臨床学的には食物繊維のもつ生理副作用が発現しやすくなる。
【0049】
本発明の栄養組成物は、蛋白質(A)の配合量が2〜11質量%、糖質(B)の配合量が10〜35質量%、乳化剤(C)と油脂(D)の配合量の合計が1〜13質量%含有するものである。さらに食物繊維(E)を含む場合は、食物繊維(E)0.1〜5質量%を含有するものである。
【0050】
(その他の原材料)
本発明の栄養組成物は、上記の必須成分以外に、ミネラル、ビタミン、酸味料、高甘味度甘味料、果汁、香料、色素を使用してもよい。
【0051】
(ミネラル)
本発明の栄養組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、セレン、クロム、モリブデン、マンガン、ヨウ素などのミネラルを含むことができる。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの提供源は、塩化物、水酸化物、リン酸塩、縮合リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、有機酸塩などが挙げられるが、本発明のpH範囲において水溶性であることが望ましい。難溶性もしくは不溶性の場合はミネラルの沈降物を発生するか、分散剤などで液中に分散させた場合でも透明性の低下が起こり好ましくない。鉄はクエン酸第一鉄Naやピロリン酸第二鉄、亜鉛や銅はグルコン酸塩、鉄、亜鉛、銅、セレン、クロム、モリブデン、マンガン、ヨウ素は酵母由来のものが用いられる。本発明は爽やかな風味を目的としているために、これにあわない塩味を呈するミネラルは過剰に配合しない方が望ましい。例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの場合はそれぞれ200mg/100ml以下が望ましい。
【0052】
(ビタミン)
本発明の栄養組成物は、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸Ca、葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、ビオチンなどのビタミンを含むことができる。
【0053】
(酸味料)
本発明において所望のpHとするために酸味料を用いることができる。食品で用いられる種々の酸味料として、リン酸、塩酸、硫酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、乳酸などがある。所望のpHとした場合の浸透圧や、酸味の味質、製造上の取扱いの安全性を加味すると、クエン酸、酒石酸、フマル酸が好ましい。なお、本発明の栄養組成物は、ペプチド、アミノ酸、糖質、ミネラル、ビタミンなど通常の飲料よりも非常に多い原材料の種類と量を配合するため、pH緩衝作用が顕著に強く、多量の酸味料を添加する必要がある。よって一般的な飲料で所望のpHとした場合の味質とは異なる。
【0054】
(高甘味度甘味料)
本発明の栄養組成物は、糖質として甘味度が15〜30程度の澱粉分解物が好ましいことから、全体の甘味が少なくなりやすい。甘味を補う高甘味度甘味料として、ネオテーム、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、ソーマチンが挙げられるが、熱や酸に弱いアスパルテームを除き、さらに本発明に特有のペプチドやアミノ酸やビタミンやミネラルからくる総合的な苦味やえぐ味のマスキングを目的とすると、ネオテーム、スクラロース、ステビア、ソーマチンが好ましく、ネオテーム、スクラロースが最も好ましい。
【0055】
(果汁)
本発明は、美味しさを訴求するため果汁などの呈味成分を添加することが好ましい。例えば、リンゴ果汁、オレンジ果汁、ブドウ果汁、パイナップル果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、キウイ果汁、ブルーベリー果汁などが挙げられ、これらを酸味料のかわりにpH調整に用いても良い。添加量としては還元時に0.1質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜10質量%であり、最も好ましくは1質量%〜5質量%である。0.1質量%より少ないと美味しさへの効果が充分でなく、30質量%より多いと果汁に含まれる糖類により許容されないほど浸透圧が上昇してしまう。
【0056】
(熱量)
本発明の液状栄養組成物の熱量は流動食1mlあたり1.0kcal以上が好ましく、より好ましくは1.2kcal以上、最も好ましくは1.5kcal以上である。臨床栄養的には、単位体積あたりの熱量を多くすることは、投与時間の短縮だけでなく、肺炎の原因として問題となっている胃食道逆流を誘発する胃への容量負荷が少ない利点がある。更には、単位容積あたりに含まれる水が少ないため、摂取水分を制限する必要がある患者にも利便性が高いなど、付加価値の高い流動食として評価されている。
【0057】
(製造方法の概要)
本発明の栄養組成物は、調合工程、均質化工程、充填工程を行うことにより製造することができる。必要に応じて殺菌工程も行っても良い。
【0058】
(製造方法・調合工程)
調合工程は水にそれぞれの原材料を溶解する工程であり、タンクの上部から原材料を投入しプロペラ攪拌により溶解させるか、溶けにくい原材料の場合は高速攪拌機もしくはパウブレンダーのような溶解ポンプで溶解させる。このときの水温は、25℃〜80℃が好ましく、より好ましくは40℃〜70℃、最も好ましくは40〜60℃である。水温が低すぎると原材料が効率的に溶解しないばかりか、そのあとの均質化工程に送液する際に加温工程がない場合には、均質化機で乳化粒子が効率的に微細化されない。また水温が高すぎると原材料は効率的に溶解できるものの、ビタミンや魚油などの熱分解しやすい成分に劣化が起こり、栄養成分などの品質において好ましくない影響がでる。
【0059】
(製造方法・均質化工程)
均質化工程は乳化粒子の微細化を行うために、高速ホモミキサー、マントンゴーリン式ホモジナイザー(低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー)、マイクロフルイダイザーなどが用いられるが、均質化能力や処理流量や製造コストから、高圧ホモジナイザーが好ましく用いられる。均質化圧力は10MPa〜150MPaが好ましく、より好ましくは30MPa〜100MPa、最も好ましくは40MPa〜80MPaである。しかし、均質化圧力を上げるよりも均質化の処理回数を増やす方が、本発明の栄養組成物には有効である。均質化の処理回数は、2回以上が好ましく、より好ましくは3回以上、最も好ましくは4回以上である。
【0060】
(製造方法・殺菌工程)
殺菌工程は、ボイル殺菌、レトルト殺菌、UHT殺菌などの加熱殺菌が用いられる。pHが4.6以下の場合は90℃15分などのボイル殺菌が用いられ、簡易な装置での殺菌が可能である。しかし、風味や栄養成分の劣化を考慮するとUHT殺菌が好ましい。UHT殺菌には直接方式と間接方式があり、間接方式にはプレート式とチューブラー式がある。直接方式は風味や栄養成分の劣化に対し特に効果を発揮するが、乳化粒子の粗大化が起き乳化安定性が低下するので、UHT殺菌間接方式が最も好ましい。pHが4.6以下の場合はUHT殺菌では、110℃1〜30秒などの殺菌条件が可能であるが、好熱好酸菌を配慮し140℃1〜10秒の処理をすることが好ましい。
【0061】
(製造方法・充填工程)
充填工程は、ボイル殺菌やレトルト殺菌の場合は殺菌前に密封容器に充填し、UHT殺菌の場合は殺菌後に無菌的に密封容器に充填する。密封容器は、ボイル殺菌やレトルト殺菌の場合は、缶やアルミパウチやソフトバッグ容器などの軟包材が挙げられ、UHT殺菌の場合はテトラパックなどが挙げられる。本発明の栄養組成物の酸化を抑制するために、ソフトバッグ容器などの軟包材の場合は、ポリ塩化ビニリデンコートや酸化アルミ(アルミナ)系透明蒸着やシリカ系透明蒸着フィルムが好ましい。またテトラパックの場合はストリップテープからの酸素透過があるため、MPMストリップテープよりもMSEストリップテープが好ましい。
【実施例】
【0062】
(官能試験)
本発明の官能試験は、製造1日後に20歳〜50歳のパネラー6名によって行った。ただし前述の好ましいpHの官能評価のみは、製造1ヶ月以内に70歳〜95歳のパネラー20名によって行った。臭味や苦味や乳化剤特有のえぐ味が全く感じられないものは「◎」、臭味や苦味や乳化剤特有のえぐ味がほとんど感じられないものは「○」、臭味や苦味や乳化剤特有のえぐ味を感じるが飲用には問題ないものは「△」、臭味や苦味や乳化剤特有のえぐ味を強く感じ飲用に値しないものは「×」とした。酸味の好ましさは、美味しく飲用できるものは「○」、酸味に刺激を感じるが飲用には問題ないものは「△」、酸味に刺激を感じ飲用に値しないものは「×」とした。
【0063】
(pH)
本発明の栄養組成物のpHの好ましい範囲は前述したとおりである。この測定は、製造1日後に栄養組成物を20〜30℃に調温し、(株)堀場製作所製pHメーターM−13により測定した。
【0064】
(粘度)
本発明の栄養組成物の粘度は、飲みやすくしたり、飲んだ後に口中に残ったりしないようにするため低い粘度とすることが好ましく、品温が20℃において15mPa・s以下が好ましく、より好ましくは10mPa・s以下である。本発明の栄養組成物の粘度は、製造1日後にブルックフィールドエンジニアリングラボラトリーズ社製B型粘度計を使用し、ローターBLアダプター・回転数30で測定した。
【0065】
(透明感・透過率)
本発明の栄養組成物の透明感は透過率として測定し、視覚的な爽やかさをだすため高い方が好ましい。1%以上が好ましく、より好ましくは3%以上であり、最も好ましくは6%以上である。本発明の透過率は、製造1日後に(有)東京電色製TC−8600を使用し、JIS Z8722に準じ、ハロゲンランプを光源とし、光学条件は積分球(150mmφ)方式0-d法により、測定方法は2度視野C・XYZフィルター方式により、試料をガラス製セル(総厚み8mm、サンプル厚み4mm)に入れ、測定面積25mmφで測定した。
【0066】
(浸透圧)
本発明の栄養組成物の浸透圧は、浸透圧性下痢などを考慮し低い方が好ましい。200mOsm/kg〜1200mOsm/kgが好ましく、より好ましくは200mOsm/kg〜1000mOsm/kgである。本発明の浸透圧の測定は、製造1日後にアドバンスインストロメンツ社製3D3を用いて測定した。
【0067】
(乳化安定性・粒径)
本発明の栄養組成物の乳化安定性は、乳化粒子の粒径で評価した。乳化粒子の粒径が小さいほど乳化安定性に優れ、大きいほど不安定であることは、ストークスの法則によって一般的に知られている(食品コロイド入門(西成勝好監訳)幸書房p93)。また、視覚的な透明感の観点からも小さいほど好ましい。乳化安定性や透明感から総合的に判断すると、1μm以下が好ましく、より好ましくは0.20μm以下、最も好ましくは0.15μm以下である。本発明の栄養組成物の粒径は、製造1日後に(株)堀場製作所製レーザー回折式粒度分布計LA−950を用いて測定した。
【0068】
(総合評価)
総合評価は、以下のようにした。官能試験の臭味、苦味、乳化剤特有のえぐ味、酸味の好ましさにおいて「△」が1つでもあったものは総合評価を「△」、「×」が1つでもあったものは「×」とした。粘度は11〜15mPa・sのものは「△」、15mPa・sより大きいものは「×」とした。透過率は1%のものは「△」、1%未満のものは「×」とした。浸透圧は1001〜1200mOsm/kgのものは「△」、1200mOsm/kg以上のものは「×」とした。粒径は殺菌前の時点で分離しているか1μmより大きいものは「×」、殺菌前の時点で1μm以下であるが殺菌後の時点で1μmより大きいものは「△」、また殺菌3日後に軽度な攪拌で再分散するクリーミングが認められたものも「△」とした。以上の基準において「×」が1つでもあれば総合評価は「×」、「×」が1つもなく「△」が1つでもあれば総合評価は「△」、「×」も「△」もなければ総合評価は「○」とした。
【0069】
(実施例1)
本発明の栄養組成物の代表例を示す。表1及び2のように、重量平均分子量5200のコラーゲンペプチド3.0質量%、分解度27のカゼインペプチド3.0質量%、L−トリプトファン0.1質量%、L−ロイシン0.2質量%、L−メチオニン0.1質量%、L−ヒスチジン0.1質量%、L−バリン0.1質量%、L−フェニルアラニン0.3質量%、数平均分子量560の澱粉分解物(デキストリン)22.0質量%、デカグリセリンモノオレイン酸エステル1.8質量%、MCT(構成脂肪酸比;カプリル酸:カプリン酸=8:2)1.7質量%、精製イワシ油0.1質量%、難消化性デキストリン1.0質量%、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1質量%、クエン酸カリウム0.1質量%、塩化カルシウム0.15質量%、硫酸マグネシウム0.25質量%、クエン酸結晶0.55質量%、ブドウ6倍濃縮透明果汁0.5質量%、スクラロース製剤0.05質量%、微量ミネラルミックス0.05質量%、ビタミンミックス0.126質量%、グレープ香料0.1質量%、クチナシ赤色素0.1質量%を、総質量2000gとなるように50℃の温水に溶解させた。これを50℃保持のまま、均質化圧70MPaで2回処理した。常温まで冷却したのちに100gずつアルミパウチに密封充填し、90℃15分でボイル殺菌した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
実施例1の評価の結果は表3のように、栄養成分は熱量1.5kcal/ml、蛋白質19エネルギー%、糖質68エネルギー%、油脂12エネルギー%、食物繊維1エネルギー%、アミノ酸スコア100である。また物性分析の結果は、殺菌前で粒径0.14μm、殺菌後でpH4.3、粘度8mPa・s、透過率7%、浸透圧950mOsm/kg、粒径0.14μmであった。官能評価は臭味と苦味ともに良好であった。
【0073】
【表3】

【0074】
(実施例2−1〜4、比較例2−1〜4)
実施例1の分解度27のカゼインペプチドを表4のように変更した以外は同様に行った。分解度20以下の乳ペプチドはいずれも透過率1%未満であり透明性が得られなかった。
【0075】
【表4】

【0076】
【表5】

【0077】
(実施例3−1〜2、比較例3−1〜3)
実施例1の澱粉分解物を表6のように変更した以外は同様に行った。その結果は表7のように、数平均分子量400より小さい澱粉分解物(麦芽糖)は浸透圧が1440mOsm/kgと高く、数平均分子量が900より大きい澱粉分解物は、乳化粒子の粒径が大きく乳化安定性に劣り、透過率も1%未満であった。
【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
(実施例4−1〜2、比較例4−1〜10)
実施例1の乳化剤を表8のように変更した以外は同様に行った。その結果は表9のように、殺菌前ではポリグリセリンの平均重合度が5以上で微細な粒径が得られ、また構成する脂肪酸が実施例1のオレイン酸以外でもミリスチン酸であれば微細な粒径が得られ乳化剤特有のえぐ味もなく良好であった。またデカグリセリンモノミリスチン酸エステルであれば、実施例1のデカグリセリンモノオレイン酸エステルと同様に殺菌後であっても微細な粒径と透明性が得られ、非常に良好であった。デカグリセリンモノラウリン酸エステルは、殺菌前の粒径は小さかったが、殺菌前からラウリン酸特有の味が強く、飲用には不可であった。グリセリン重合度が4以下やステアリン酸とのエステルなどのポリグリセリン脂肪酸エステルや、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤は、均質化後または殺菌後に直ちに油水分離を起こしたため物性分析さえも不可能であった。
【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【0083】
(実施例5−1〜4、比較例5−1〜3)
実施例1のMCT(構成脂肪酸比;カプリル酸:カプリン酸=8:2)と精製イワシ油の総量1.8質量%を表10のように変更した以外は同様に行った。その結果は表11のように、MCTであれば微細な粒径と透明性を得ることができたが、ナタネ白絞油およびナタネ硬化油およびパーム油は、透過率が1%未満に低下した。MCTの中でもカプリル酸とカプリン酸で構成されるMCTはいずれの脂肪酸組成においても微細な乳化粒子と良好な透過率を得ることができた。
【0084】
【表10】

【0085】
【表11】

【0086】
(実施例6−1〜7)
実施例1のMCT(構成脂肪酸比;カプリル酸:カプリン酸=8:2)と精製イワシ油の総量1.8質量%を全てMCTに置き換え、MCT1.8質量%に対する乳化剤の質量比率を表12のように変更した以外は同様に行った。その結果は表13のように、油脂:乳化剤の質量比率が1:3〜1.5:1で、乳化剤特有の臭味や苦味も全くなく、非常に微細な粒径と良好な透過率を得ることができた。
【0087】
【表12】

【0088】
【表13】

【0089】
(実施例7−1〜4)
実施例1のMCT(構成脂肪酸比;カプリル酸:カプリン酸=8:2)と精製イワシ油の総量1.8質量%を全てMCTに置き換え、乳化剤との質量比率を1:1に固定したまま、油脂と乳化剤の総量を表14のように変更した以外は同様に行った。その結果は表15のように、いずれも微細な乳化粒子が得られ、油脂と乳化剤の総量1.8〜7.2質量%では非常に高い透過率を得ることができた。
【0090】
【表14】

【0091】
【表15】

【0092】
(実施例8−1〜6)
実施例1の難消化性デキストリンを表16のように変更した以外は同様に行った。その結果は表17のように、いずれも微細な乳化粒子が得られ、グァーガム分解物以外では殺菌3日後においてもクリーミングの発生がなかった。なお、ここで発生したクリーミングは軽度な攪拌で再分散し、完全に油水分離を生じるような重篤な問題には至らなかった。
【0093】
【表16】

【0094】
【表17】

【0095】
(実施例9−1〜9)
実施例1の酸味料の種類と配合質量を表18のように変更した以外は同様に行った。その結果は表19のように、クエン酸、酒石酸、フマル酸、濃硫酸でより低い浸透圧とより好ましい酸味が得られた。
【0096】
【表18】

【0097】
【表19】

【0098】
(実施例10−1〜3)
実施例1の澱粉分解物と難消化性デキストリンの配合質量%を表20のように変更した以外は同様に行った。その結果は表21のように、水の配合量を100%とした場合の糖質の配合量が24以上で良好な透過率が得られ、34以上で非常に良好な透過率が得られた。
【0099】
【表20】

【0100】
【表21】

【0101】
(実施例11)
実施例1と同じ配合率で総質量を2000kgとなるように60℃の温水に溶解した。これを60℃保持のまま、均質化圧45MPaで2回処理した。そして一旦10℃まで冷却したあと、UHT殺菌間接方式(チューブラー式)にて142℃2秒で殺菌を行い、その後に更に25MPaで1回処理し、無菌的に125mlのテトラパックに充填した(表22)。その結果は表23のように、実施例1とほぼ同じ品質が得られた。
【0102】
【表22】

【0103】
【表23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白質、糖質、乳化剤、油脂、及び水を含む経口用液状栄養組成物であって、
蛋白質(A)の配合量が2〜11質量%、糖質(B)の配合量が10〜35質量%、乳化剤(C)と油脂(D)の配合量の合計が1〜13質量%であり、
蛋白質(A)が、コラーゲンペプチド及び分解度が23〜35である乳ペプチド、
糖質(B)が、数平均分子量が400〜900の澱粉分解物、
乳化剤(C)が、平均重合度が5以上のポリグリセリンとオレイン酸またはミリスチン酸のいずれかとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステル、
油脂(D)が、MCT
を含有し、
pHが3.0〜5.0であることを特徴とする液状栄養組成物。
【請求項2】
コラーゲンペプチド及び分解度が23〜35である乳ペプチドを蛋白質(A)全体の50質量%以上、数平均分子量が400〜900の澱粉分解物を糖質(B)全体の50質量%以上、平均重合度が5以上のポリグリセリンとオレイン酸またはミリスチン酸のいずれかとのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤(C)全体の70質量%以上、MCTを油脂(D)全体の70質量%以上含む、請求項1に記載の液状栄養組成物。
【請求項3】
油脂(D)と乳化剤(C)の質量比率が1:6〜3:1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液状栄養組成物。
【請求項4】
MCTの構成脂肪酸としてカプリル酸及びカプリン酸を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【請求項5】
水に対する糖質(B)の配合割合が15質量%以上60質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【請求項6】
蛋白質(A)が、コラーゲンペプチド、分解度が23〜35である乳ペプチド、及びアミノ酸からなる、請求項1〜5のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【請求項7】
コラーゲンペプチドの重量平均分子量が2000〜50000である、請求項1〜6のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【請求項8】
さらに食物繊維(E)を含み、
食物繊維(E)が、難消化性デキストリン、イヌリン、及びポリデキストロースからなる群より選ばれる、1種または2種以上の食物繊維、
を0.1〜5質量%含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の液状栄養組成物。
【請求項9】
加熱殺菌後の透過率が1%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の液状栄養組成物。


【公開番号】特開2012−136471(P2012−136471A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289819(P2010−289819)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【出願人】(000144577)株式会社三和化学研究所 (29)
【Fターム(参考)】