説明

酸性銅電気めっき浴組成物

【課題】 高温において使用される、改良された添加剤系を含有する酸性銅電気めっき水性組成物を提案する。
【解決手段】 前記改良された添加剤系は、(a)少なくとも1種の高分子量ポリマーを含む抑制剤;(b)少なくとも1種の2価の硫黄化合物を含む光沢剤;及び(c)複素環式窒素化合物を含むレベリング剤とを含む。前記改良された電気めっき組成物は、プリント回路基板のスルーホールをめっきするのに使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抑制剤、光沢剤及びレベリング剤を含む改良された有機添加剤系を有する酸性銅めっき浴であって、特に高温において、所望の堆積物を提供することが可能な酸性銅めっき浴に関する。
【背景技術】
【0002】
電解銅めっき溶液は多くの産業用途に用いられている。例えば、電解銅めっき溶液は自動車産業において、後から塗布される装飾及び腐食防止用塗膜に対するベース層を堆積するために使用される。また、電子産業においても使用され、特にプリント回路基板の作製において使用される。回路作製において、銅はプリント回路基板表面の選択された部分及び回路基板用基材の表面間に穿たれたスルーホールの壁の上に電気めっきされる。前記スルーホールの壁は、前記プリント回路基板の回路層間に導電性を付与するために、金属化される。このように、数多くのプリント回路基板及び半導体の作製工程において、電気めっきは、銅メタライゼーションのための主な堆積手段として産業上採用されている。
【0003】
多くの工業用の銅電気めっき溶液は、堆積された銅の特性を改善する各種有機添加剤と共に、硫酸銅、ホウフッ化銅、メタンスルホン酸銅、シアン化銅又はピロリン酸銅の水溶液を含む。
【0004】
最も広く使用される銅めっき用電解質は、硫酸銅、硫酸等の酸電解質、及び各種めっき添加剤の水溶液に基づく。一般的に使用される銅メタライゼーション用添加剤は、阻害剤又は抑制剤、光沢剤又は促進剤、及び/又はレベリング剤を含む。光沢剤(又は促進剤)は、銅界面において電荷移動プロセスを促進することにより核生成プロセスを変化させ、活性成長部位を提供する。一方で、抑制剤(又は阻害剤)は陰極表面に均一に吸着し、堆積過電圧(deposition over−potential)を増加させる。換言すれば、前記有機添加剤の重要な機能の一つは、基板表面の凸部における電着速度を抑制することにより、及び/又は凹部における電着速度を加速することにより、堆積物を平坦にすることである。この吸着及び阻害は、ハロゲンイオンを存在させることによって更に向上させることができる。
【0005】
これらの有機添加剤は、所望の堆積物特性及び表面形態を得るために、(例えば、低ppmレンジにおいて)綿密に制御することも必要である。
【0006】
光沢剤は、通常、硫黄含有有機化合物を含有し、更に官能基を有していてもよく、例えば特許文献1に記載されているものが挙げられ、本明細書中に参照によりその全体を援用する。有機ポリマーは、銅電気めっき用の抑制添加剤として一般的に使用される。レベリング剤は、フェナジニウム化合物等の染料の他、ポリアミン、及びアミンとアルキレンオキシドやエピハロヒドリンとの反応生成物を含有しており、例えば特許文献2〜4に記載されているものが挙げられ、本明細書中に参照によりその全体を援用する。
【0007】
多くの場合、硫酸めっき溶液の実施温度は約華氏80度(27℃)を超えないことが推奨され、より一般的には、めっきは室温、即ち約華氏70度〜74度(21℃〜23℃)で行われる。これらの銅めっき用電解質は、室温で使用されるように設計されているため、通常、高温におけるスルーホールのめっきには適していない。多くの場合において、光沢剤は、高温で化学的変化を起こして銅めっきに対する効果を失ってしまう。他の場合においては、溶液中に湿潤剤又は抑制剤と共に使用されるレベリング剤が、特にスルーホール内部において、光沢がなく粗い層の堆積を生じさせる問題を引き起こす。高温において堆積された銅層の熱特性も悪影響を受け、信頼性性能が低下する。また、めっき後に行われるはんだ付け作業においても、不具合が生じ得る。
【0008】
プリント回路基板の作製は、気候が高温の地域において、ここ数年急激に増加している。これらの地域においては、所望の温度を維持するために、通常、冷却装置、又はその他の冷却手段が必要とされる。このため、これらの地域における当該プロセスを簡略化して、冷却装置、又はその他の冷却手段の必要性をなくすと共に所望のめっき堆積物を得ることが望まれている。
【0009】
そこで、本発明は一般に、各種めっき浴添加剤を含有する改良された酸性銅めっき浴組成物であって、特に高温において所望のめっき堆積物を提供することが可能な酸性銅めっき浴組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5252196号明細書(Sonnenberg他)
【特許文献2】米国特許公開第2007/0108062号明細書(Brunner他)
【特許文献3】米国特許公開第2006/0226021号明細書(Brunner他)
【特許文献4】米国特許公開第2004/0231995号明細書(Murao)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高温において所望のめっき堆積物を提供することが可能な有機添加剤系を有する酸性銅めっき溶液を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、改良されたレベリング剤を有する酸性銅めっき溶液を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、従来における問題点を克服する、改良された酸性銅電気めっき浴用添加剤系を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、冷却システムを必要としない、プリント回路基板上のスルーホールのメッキ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明は一般に、下記a)〜d)を含む銅電気めっき水溶液に関する:
a)少なくとも1種の可溶性銅塩、
b)酸、
c)ハロゲン化物イオン源、並びに
d)下記i)〜iii)を含む有機添加剤系:
i) 複素環式窒素化合物を含むレベリング剤、
ii) 少なくとも1種の高分子量ポリマーを含む抑制剤、及び
iii)少なくとも1種の2価の硫黄化合物を含む光沢剤。
【0016】
他の実施形態においては、本発明は、可溶性銅塩を含む銅電気めっき水溶液に用いられる改良された有機添加剤系に関し、前記添加剤系は下記a)〜c)を含む:
a)少なくとも1種の高分子量ポリマーを含む抑制剤、
b)少なくとも1種の2価の硫黄化合物を含む光沢剤、及び
c)複素環式窒素化合物を含むレベリング剤。
【0017】
更に他の実施形態においては、本発明は、高温において銅を基板上に電着する方法に関し、前記方法は、銅をめっき水溶液から前記基板上に電解堆積する工程を含み、前記めっき水溶液が下記a)並びにb)を含む:
a)可溶性銅塩、並びに
b)下記i)〜iii)を含む添加剤系:
i) 少なくとも1種の高分子量ポリマーを含む抑制剤、
ii) 少なくとも1種の2価の硫黄化合物を含む光沢剤、及び
iii)複素環式窒素化合物を含むレベリング剤。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のめっき溶液は種々の表面を銅めっきするのに有用であり、また、種々の工業用途において有用である。好ましい実施形態においては、前記溶液は、金属化スルーホールを必要とする両面・多層プリント回路基板の製造に有用である。更に、本発明のめっき溶液は、高温における銅の電解めっきに適している。そこで、本発明の以下の記載は一般に、本発明の溶液及びプロセスを用いた、プリント回路基板の作製に関する。
【0019】
プリント回路基板の作製における出発材料は、通常、銅被覆ガラス繊維強化エポキシパネル等の銅被覆プラスチックである。一実施形態においては、回路形成前に行われる基板の作製にサブトラクティブ法が用いられており、導電性スルーホールが掘削及びメタライゼーションによって前記基板に形成される。導電性スルーホールを形成する各種プロセスは、当技術分野において周知であり、多数の出版物に記載されており、例えば米国特許第4515829号明細書に記載されているものが挙げられ、本明細書中に参照によりその全体を援用する。無電解めっき法により第一の金属塗膜がスルーホール壁上に形成され、そして電解銅析出により堆積物の厚みを増加させる。或いは、電解銅は、例えば米国特許第4810333号明細書、米国特許第4895739号明細書、米国特許第4952286号明細書及び米国特許第5007990号明細書に記載されているように、適宜作製されたスルーホール壁上に直接めっきすることができ、本明細書中に参照によりその全体を援用する。
【0020】
前記プロセスにおける次工程は、本発明の記載に従い、電気めっき溶液を用いて、導電性スルーホール壁上に銅を堆積させる工程を含む。
【0021】
本発明は浴組成物、並びに、高温における銅めっきを可能にする特有の有機添加剤系を有する硫酸銅めっき用電解質を用いて、銅を電着させるプロセスに関する。本発明の前記浴組成物は、銅の基板上への電解めっきに適しており、約華氏70度〜約104度(約21℃〜40℃)の温度範囲において、プリント回路基板等の電子部品を直流めっきするのに適している。
【0022】
本発明の銅電気めっき水溶液は、通常、下記a)〜d)を含む:
a)少なくとも1種の可溶性銅塩、
b)酸、
c)ハロゲン化物イオン源、並びに、
d)下記i)〜iii)を含む有機添加剤系:
i) 複素環式窒素化合物を含むレベリング剤、
ii) 少なくとも1種の高分子量ポリマーを含む抑制剤、及び
iii)少なくとも1種の2価の硫黄化合物を含む光沢剤。
【0023】
また、本発明は、可溶性銅塩を含む銅電気めっき水溶液に用いられる、改良された有機添加剤系に関し、前記添加剤系は下記a)〜c)を含む:
a)少なくとも1種の高分子量ポリマーを含む抑制剤、
b)少なくとも1種の2価の硫黄化合物を含む光沢剤、及び
c)複素環式窒素化合物を含むレベリング剤。
【0024】
更に、本発明は、本発明の前記めっき水溶液を用いて、高温において銅を基板上に電着する方法に関する。
【0025】
前記可溶性銅塩は、通常、硫酸銅、酸化銅等の銅塩、又は同様の銅塩である。前記銅は、溶液1L当たり約10g〜約60gの銅金属が含まれる濃度で用いられ、好ましくは溶液1L当たり約10g〜約20gの銅金属が含まれる濃度で用いられる。
【0026】
前記酸は、好ましい実施形態においては硫酸であり、前記組成中、溶液1L当たり約60g〜約300gの濃度で存在し、好ましくは溶液1L当たり約150g〜約260gの濃度で存在する。
【0027】
前記ハロゲン化物イオン源は、通常、塩化物イオン源であり、前記電気めっき溶液に可溶な塩化物塩であれば、如何なるものであってもよい。好適な塩化物イオン源の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、及びこれらの1つ以上の混合物が挙げられる。本発明の各溶液中の塩化物イオン濃度は、通常、約0.02ppm〜約125ppmであり、好ましくは約30ppm〜約90ppmであり、最も好ましくは約50ppm〜約75ppmである。
【0028】
前記有機添加剤系は、通常、下記i)〜iii)を含む:
i) 1種以上の高分子量ポリマーを含む抑制剤、
ii) 1種以上の2価の硫黄含有有機化合物を含む光沢剤、及び
iii)複素環式窒素化合物を含むレベリング剤。
【0029】
前記抑制剤は、通常、1種以上のポリマー化合物を含み、該ポリマー化合物は好ましくはポリエーテル化合物である。該ポリマーは、使用される特定の光沢剤の、銅析出に対する触媒作用を誘発すると考えられ、その結果、高温において、光沢があり且つ滑らかな堆積物が形成される。好ましい実施形態においては、それぞれ単独であっても、混合されていても、交互になっていてもよいポリオキシエチレングリコール及び/又はポリオキシプロピレングリコール等の特定のアルキレンオキシドを用いることができ、その分子量は、通常、900g/mol〜5,000g/molである。より具体的には、本発明において使用可能な抑制剤は、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノブチルエーテルであるCH(CH(OCHCH)x[OCHCH(CH)]yOHであり、好ましくはエチレングリコールが50重量%であり、分子量は好ましくは約970g/mol〜1,700g/mol、より好ましくは約1,160g/mol;ポリオキシエチレンラウリルエーテルであるC1225(OCHCHOH、前記式中、nは12〜30であり、好ましくは約23、平均分子量=1,198g/mol(n=約23);及びポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテルであるC1837(OCHCHOH、前記式中、nは80〜120であり、好ましくは約100、平均分子量=4,670g/mol(n=約100)、からなる群から選択される。また、2種以上のポリマーを併用することもできる。前記抑制剤の前記めっき溶液における濃度は、約0.01g/L〜約8g/Lである。
【0030】
本発明の組成物において使用可能な光沢剤は2価の水溶性硫黄含有有機化合物の中から選択され、好ましくはスルフィド化合物であり、最も好ましくは有機スルホニウムスルホナート及び有機スルホニウムカルボキシレートである。好適な光沢剤の例としては、ビス(ジメチルチオカルバミル)スルホニウム−1−プロパンスルホナート、2−ジメチルスルホニウム−1−プロパンスルホナート、2−(ジフェニル)スルホニウム−1−ブタンスルホナート、エタンカルボン酸メチルブチルスルホニウム、ビス(ジメチルチオカルバミル)スルホニウム−1−プロパンカルボキシレート、及びこれらを1つ以上組み合わせたものが挙げられる。前記光沢剤の前記めっき溶液における濃度は、約0.01ppm〜約100ppmとすることができ、好ましくは約0.1ppm〜約20ppmである。
【0031】
本発明の前記めっき溶液において使用可能なレベリング剤は、高操作温度性を有する特定の化合物である。本発明の該改良されたレベリング剤により、高いめっき温度において、滑らかで平坦な銅堆積物が得られる。レベリング化合物は、好ましくは、水溶性金属イオン含有染料から選択される複素環式窒素化合物である。好ましい実施形態においては、前記レベリング剤は、カチオン性の水溶性染料として製造される、本質的に水不溶性の顔料である。該レベリング剤として使用可能な化合物の一例としては、クロロメチル化後に水溶性化合物として製造され且つピリジンと反応される水不溶性化合物であり、銅フタロシアニンであるA,B,C,D−テトラキス(ピリジニオメチル)銅(II)フタロシアニンクロリドが挙げられる。該化合物の組成式はC5640ClCuN12であり、分子量は約1,086g/molである。この化合物の構造を以下に示す。
【化1】

前記レベリング剤の本発明の前記めっき溶液における濃度は、通常、約0.001ppm〜約10ppmであり、より好ましくは約0.05ppm〜約5ppmである。
【0032】
本明細書に記載された酸性銅めっき浴組成物によれば、広範な陰極電流密度、例えば1平方フィート当たり約5アンペア(ASF)〜1平方フィート当たり約50アンペア(ASF)、において光沢があり且つ滑らかな堆積物を作製することができる。また、本明細書に記載される酸性銅めっき浴は、空気及び無気(エダクター)攪拌システムに適用可能である。
【0033】
エダクターは、多くの酸性銅めっき槽において、空気散布を行うことなく溶液に乱流を作り出すために使用され、プリント回路基板の場合においては、プリント回路基板の表面を横切る流体の流れをもたらすように設計される。この流体の流れは、前記めっき溶液が移動することにより生じるものであり、該移動は、該めっき溶液を少なくとも一つのエダクター型の多岐管供給ノズルに押し出す、複数のポンプによって引き起こされる。この種の攪拌の利点としては、陰極表面を横切る一様な溶液移動が得られることである。エダクターは、圧縮空気又は空気送風機を必要とせず、酸が空気中或いは排気システム中に絶えず吹き込まれているということがない、より安全な環境を提供する。
【0034】
本発明のめっき浴によれば、約華氏104度(40℃)までの高温において、滑らかで、光沢があり、平面的であり、且つ延性のある銅層が堆積される。
【0035】
本明細書に記載の電気めっき浴は、プリント回路基板のスルーホール壁の直流めっきに特に有用であり、該スルーホールとしては例えば、アスペクト比が約8:1以下であり微細分布に優れたスルーホールが挙げられる。該アスペクト比とは、プリント回路基板の厚みと、めっきされたスルーホールの直径との比である。プリント回路基板のスルーホールをめっきする際の実施電流密度は、好ましくは約10ASF〜約30ASFである。前記微細分布は、通常、約80%〜100%であり、前記スルーホールの状態とアスペクト比によって決まる。
【0036】
堆積した銅の熱特性及び機械的性質もまた優れている。めっきされたプリント回路基板の熱特性は、IPC TM−650 2.6.8に従ったはんだ衝撃試験により調べた。スルーホールに対する熱整合性は優れていた。華氏550度(288℃)において6x及び8xのはんだ衝撃を与えたところ、1.6mm厚の基板において直径がそれぞれ1.0mm、0.5mm、0.35mm、0.25mm及び0.20mmのめっきされたスルーホール、並びに、2.4mm厚の基板において直径が1.25mmのめっきされたスルーホールについて、角部のひび割れ及び胴部のひび割れは見られなかった。
【0037】
IPC TM−650 2.4.18.1に従い、Instron(登録商標)5567試験機を用いた試験において、前記堆積した銅の引張強度は約40,000psiであり、伸長率は約20%である。
【実施例】
【0038】
ここで、本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
下記表の記載に従い、めっき溶液を調製した。
【0040】
【表1】

【0041】
浴温度を約華氏98度に維持し、陰極電流密度としては20ASFを採用した。攪拌方式は無気(エダクター)方式とした。
【0042】
直径がそれぞれ0.2mm、0.25mm、0.35mm、0.50mm及び1.0mmのスルーホールを有する1.6mm厚のプリント回路基板を本発明のめっき浴により処理した。堆積した銅は、スルーホール壁上、基板表面上及びスルーホール内部において、光沢があり且つ平坦であることが観察された。基板は、前述の手続に従い、熱信頼性性能の試験を行った。288℃における6xのはんだ衝撃後、角部のひび割れ及び胴部のひび割れは観察されなかった。
【0043】
実施例2
下記表の記載に従い、めっき溶液を調製した。
【0044】
【表2】

【0045】
浴温度を約華氏104度に維持し、陰極電流密度としては25ASFを採用した。攪拌方式は空気方式とした。
【0046】
直径がそれぞれ0.30mm及び1.25mmのスルーホールを有する2.4mm厚のプリント回路基板を本発明のめっき浴により処理した。堆積した銅は、スルーホール壁上、基板表面上及びスルーホール内部において、光沢があり且つ平坦であることが観察された。基板は、前述の手続に従い、熱信頼性性能の試験を行った。288℃における6xのはんだ衝撃後、角部のひび割れ及び胴部のひび割れは観察されなかった。
【0047】
本明細書に記載された発明は、その好ましい実施形態に関し記載したものであるが、形態や細部において変更を加えることは本発明の範囲及び精神から逸脱することなく可能であることが当業者には理解されよう。例えば、本発明は、プリント回路基板の作製に関連して記載したものであるが、本発明は、高温で酸性銅めっき浴を利用することが望ましい、如何なる用途にも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の可溶性銅塩、
b)酸、
c)ハロゲン化物イオン源、並びに
d)下記i)〜iii)を含む有機添加剤系、
i) 複素環式窒素化合物を含むレベリング剤、
ii) 少なくとも1種の高分子量ポリマーを含む抑制剤、及び
iii)少なくとも1種の2価の硫黄化合物を含む光沢剤、
を含むことを特徴とする電気めっき水溶液。
【請求項2】
少なくとも1種の可溶性銅塩が、硫酸銅及び酸化銅からなる群から選択される請求項1に記載の電気めっき水溶液。
【請求項3】
酸が、硫酸を含む請求項1に記載の電気めっき水溶液。
【請求項4】
ハロゲン化物イオン源が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、及びこれらの1つ以上の組合せからなる群から選択される塩化物イオン源を含む請求項1に記載の電気めっき水溶液。
【請求項5】
複素環式窒素化合物が、水溶性金属含有染料である請求項1に記載の電気めっき水溶液。
【請求項6】
水溶性金属含有染料が、テトラキス(ピリジニオメチル)銅(II)フタロシアニンクロリドである請求項5に記載の電気めっき水溶液。
【請求項7】
少なくとも1種の高分子量ポリマーが、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノブチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びこれらの1つ以上の組合せからなる群から選択される請求項1に記載の電気めっき水溶液。
【請求項8】
少なくとも1種の高分子量ポリマーが、分子量が約5,000g/mol以下のポリマー、及び分子量が約970g/mol〜1,200g/molのポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む請求項1に記載の電気めっき水溶液。
【請求項9】
少なくとも1種の2価の硫黄化合物が、有機スルホニウムスルホナート、有機スルホニウムカルボキシレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の電気めっき水溶液。
【請求項10】
少なくとも1種の2価の硫黄化合物が、ビス(ジメチルチオカルバミル)スルホニウム−1−プロパンスルホナート、2−ジメチルスルホニウム−1−プロパンスルホナート、2−(ジフェニル)スルホニウム−1−ブタンスルホナート、エタンカルボン酸メチルブチルスルホニウム、ビス(ジメチルチオカルバミル)スルホニウム−1−プロパンカルボキシレート、及びこれらの1つ以上の組合せからなる群から選択される請求項9に記載の電気めっき水溶液。
【請求項11】
可溶性銅塩を含む銅電気めっき水溶液に用いられる添加剤系であって、前記添加剤系は、
a)少なくとも1種の高分子量ポリマーを含む抑制剤、
b)少なくとも1種の2価の硫黄化合物を含む光沢剤、及び
c)複素環式窒素化合物を含むレベリング剤、
を含むことを特徴とする添加剤系。
【請求項12】
複素環式窒素化合物が、水溶性金属含有染料である請求項11に記載の添加剤系。
【請求項13】
水溶性金属含有染料が、テトラキス(ピリジニオメチル)銅(II)フタロシアニンクロリドである請求項12に記載の添加剤系。
【請求項14】
少なくとも1種の高分子量ポリマーが、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノブチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びこれらの1つ以上の組合せからなる群から選択される請求項11に記載の添加剤系。
【請求項15】
少なくとも1種の高分子量ポリマーが、分子量が約5,000g/mol以下のポリマー、及び分子量が約970g/mol〜1,200g/molのポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む請求項11に記載の添加剤系。
【請求項16】
少なくとも1種の2価の硫黄化合物が、有機スルホニウムスルホナート、有機スルホニウムカルボキシレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項11に記載の添加剤系。
【請求項17】
少なくとも1種の2価の硫黄化合物が、ビス(ジメチルチオカルバミル)スルホニウム−1−プロパンスルホナート、2−ジメチルスルホニウム−1−プロパンスルホナート、2−(ジフェニル)スルホニウム−1−ブタンスルホナート、エタンカルボン酸メチルブチルスルホニウム、ビス(ジメチルチオカルバミル)スルホニウム−1−プロパンカルボキシレート、及びこれらの1つ以上の組合せからなる群から選択される請求項16に記載の添加剤系。
【請求項18】
高温において銅を基板上に電着する方法であって、前記方法は、
銅を、めっき水溶液から前記基板上に電解堆積する工程を含み、
前記めっき水溶液が、
a)可溶性銅塩、並びに
b)下記i)〜iii)を含む添加剤系、
i) 少なくとも1種の高分子量ポリマーを含む抑制剤、
ii) 少なくとも1種の2価の硫黄化合物を含む光沢剤、及び
iii)複素環式窒素化合物を含むレベリング剤、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
基板が、不規則な形状を有する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
基板が、スルーホールを有するプリント回路基板である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
スルーホールのアスペクト比が約8:1以下である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
銅が、約5ASF〜約50ASFの陰極電流密度において堆積される請求項18に記載の方法。
【請求項23】
酸性銅めっき浴の温度が約27℃〜約40℃である請求項18に記載の方法。
【請求項24】
めっき組成物が、硫酸を含む請求項18に記載の方法。
【請求項25】
めっき溶液が、ハロゲン化物イオン源を含む請求項18に記載の方法。
【請求項26】
ハロゲン化物イオン源が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、及びこれらの1つ以上の組合せからなる群から選択される塩化物イオン源を含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
複素環式窒素化合物が、水溶性金属含有染料である請求項18に記載の方法。
【請求項28】
水溶性金属含有染料が、テトラキス(ピリジニオメチル)銅(II)フタロシアニンクロリドである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1種の高分子量ポリマーが、分子量が約5,000g/mol以下のポリマー、及び分子量が約970g/mol〜1,200g/molのポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む請求項18に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1種の2価の硫黄化合物が、有機スルホニウムスルホナート、有機スルホニウムカルボキシレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1種の2価の硫黄化合物が、ビス(ジメチルチオカルバミル)スルホニウム−1−プロパンスルホナート、2−ジメチルスルホニウム−1−プロパンスルホナート、2−(ジフェニル)スルホニウム−1−ブタンスルホナート、エタンカルボン酸メチルブチルスルホニウム、ビス(ジメチルチオカルバミル)スルホニウム−1−プロパンカルボキシレート、及びこれらの1つ以上の組合せからなる群から選択される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
電気めっき溶液における抑制剤の濃度が、約0.01g/L〜約8.0g/Lである請求項18に記載の方法。
【請求項33】
電気めっき溶液における光沢剤の濃度が、約0.01ppm〜約100ppmである請求項18に記載の方法。
【請求項34】
電気めっき溶液におけるレベリング剤の濃度が、約0.001ppm〜約10ppmである請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2010−530928(P2010−530928A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513187(P2010−513187)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/006692
【国際公開番号】WO2009/002385
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(591069732)マクダーミッド インコーポレーテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】MACDERMID,INCORPORATED
【Fターム(参考)】