説明

酸窒化物蛍光体、その製造方法及び発光装置

【課題】酸窒化物蛍光体、その製造方法及び発光装置を提供する。
【解決手段】本発明は酸窒化物蛍光体、その製造方法及び発光装置に関し、より詳細には下記化学式で示される結晶を含む酸窒化物蛍光体及びその製造方法、そして前記酸窒化物蛍光体を含む発光装置を提供する。本発明によれば、下記組成の化学式で示される結晶を含んで優れた発光効率を有する。
(A(l-p-q)pqabSicde:xEu2+,yRe3+,zQ
(上記式中、A、B及びCは互いに異なる金属で、+2価の金属で;Dは3族元素で;Reは+3価の金属で;Qはフラックス(flux)で;p及びqは0<p<1.0及び0≦q<1.0で;a、b、c、d及びeは1.0≦a≦2.0、0≦b≦4.0、0<c≦1.0、0<d≦1.0及び0<e≦2.0で;x、y及びzは0<x≦0.25、0≦y≦0.25及び0≦z≦0.25である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸窒化物蛍光体、その製造方法及び発光装置に関し、より詳細には特定の組成を有する酸窒化物結晶を含んで発光効率が優れた酸窒化物蛍光体、そして前記酸窒化物蛍光体を安価に製造できる製造方法、及び前記酸窒化物蛍光体を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発光装置は発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの発光素子(励起光源)と、波長変換材料としての蛍光体を含む。蛍光体は励起光源(LEDなど)により励起されて白色合成光を発光できる。一般に、蛍光体は母体と活性剤(activator)として希土類元素を含む。
【0003】
蛍光体は、例えば、酸化物蛍光体であり、(Y)3(Al,Ga)512:Ceの化学式(組成式)で示されるYAG系酸化物が主に使用されてきた。これを用いた発光装置はLEDで出る青色とYAG系酸化物蛍光体で発光する黄色の組み合わせにより白色が具現され得る。また、前記YAG系蛍光体で母体としてのYの代りにGdを、Alの代わりにGeを置換した酸化物蛍光体も提示された。
【0004】
しかし、YAG系などの酸化物蛍光体は製造工程時に高温が要求されるため原価が上昇され、また、緑色と赤色領域の発光が不足して白色への色調節が難しい問題点が指摘されている。
【0005】
また、硫化物蛍光体として、特許文献1には(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga)24:Eu2+の化学式で示される緑色蛍光体と、(Ca,Sr)S:Eu2+の化学式で示される赤色蛍光体を使用した白色発光装置が提示されている。しかし、これは460nm近辺の青色光と565nm近辺の黄緑色光との混色で白色系に発光しているが、500nm近辺の発光強度が不充分である。
【0006】
また、酸窒化物蛍光体として、特許文献2にはSi−O−N、Mg−Si−O−N、Ca−Al−Si−O−Nなどで示される酸窒化物蛍光体が提示されており、特許文献3にはEuが活性化されたCa−Al−Si−O−Nで示される酸窒化物蛍光体が提示されている。しかし、これらの蛍光体は発光輝度が低く発光装置に利用するには不充分であることが指摘されている。
【0007】
このため、特許文献4では発光効率が高く可視光の短波長側領域で効率よく発光する蛍光体としてBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される少なくとも1種以上である第2族元素;C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選択される少なくとも1種以上である第4族元素;及び活性剤(R)である希土類元素を含む結晶からなる酸窒化物蛍光体を提示している。
【0008】
しかし、前記特許文献4に提示された蛍光体は結晶が不安定で良好な発光効率(発光輝度など)を持たない問題点がある。また、前記特許文献4は出発原料として窒化物を使用しているため原材料の価格が高く、さらに窒化物の使用により高い焼成温度及び圧力が求められるため安価に普及することが難しい問題点が指摘される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002‐531956号公報
【特許文献2】特開2001‐214162号公報
【特許文献3】特開2002‐76434号公報
【特許文献4】大韓民国公開特許第2005‐0062623号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来の技術の問題点を解決するためのもので、特定の組成を有する酸窒化物結晶を含ませることで、発光効率が高く安価に普及できる酸窒化物蛍光体及びその製造方法、そして前記酸窒化物蛍光体を含む発光装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式で示される結晶を含む酸窒化物蛍光体を提供する。
【0012】
(A(l-p-q)pqabSicde:xEu2+,yRe3+,zQ
(上記式中、A、B及びCは互いに異なる金属で、+2価の金属で;
Dは3族元素で;
Reは+3価の金属で;
Qはフラックス(flux)で;
p及びqは0<p<1.0及び0≦q<1.0で;
a、b、c、d及びeは1.0≦a≦2.0、0≦b≦4.0、0<c≦1.0、0<d≦1.0及び0<e≦2.0で;
x、y及びzは0<x≦0.25、0≦y≦0.25及び0≦z≦0.25である。)
また、本発明は、
前記酸窒化物蛍光体の製造方法であり、
(1)Aの前駆体(Aは+2価の金属)、Bの前駆体(BはAと異なる金属で+2価の金属)、Cの前駆体(CはA及びBと異なる金属で+2価の金属)、Dの前駆体(Dは3族元素)、Siの前駆体、Nの前駆体、Euの前駆体、Reの前駆体(Reは+3価の金属)及びQの前駆体(Qはフラックス)を含む原料を混合するが、前記化学式を満たすように各前駆体の含量を調節して混合する第1ステップ;及び
(2)前記原料を焼成炉に投入して焼成する第2ステップを含む酸窒化物蛍光体の製造方法を提供する。
この時、前記第2ステップは、焼成炉内にアンモニアガスを5〜15mL/minで注入しつつ800℃〜1300℃まで昇温するステップa);及び
アンモニアガスの存在下に800℃〜1300℃の温度に2〜5時間の間維持するステップb)を含むことがよい。
さらに、本発明は、
励起光源;及び蛍光体を含む発光装置において、
前記蛍光体は前記本発明による酸窒化物蛍光体を含む発光装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記組成の化学式で示される結晶を含んで優れた発光効率(発光輝度等)を有する。さらに上記化学式で示される結晶は安定的である。また、本発明によれば、出発原料として金属塩などの前駆体を使用することにより低温、常圧で合成、焼結され、これにより安価に普及することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のルミネセンス及び励起スペクトルの結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例によって製造した蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のSEM画像である。
【図3】(a)は本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,zCl-]のXRDグラフで、(b)は(Sr1.9Ba0.1)SiO4(ICSD#36042)のXRDパターンとの比較結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のフラックス(Q)の種類によるルミネセンススペクトルの結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)SicONe:0.075Eu2+,0.04Cl-]のSiとNの組成比によるルミネセンススペクトルの結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:xEu2+,0.04Cl-]のEu2+濃度によるルミネセンスの相対的強度及び励起スペクトルの結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:xEu2+,0.04Cl-]のEu2+濃度によるルミネセンスの相対的強度及び励起スペクトルの結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba1-pSrp)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のBaとSrの組成比によるルミネセンススペクトルの結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:xEu2+,yRe3+,0.04Cl-(Re=Pr)]のEuとPrの組成比によるルミネセンスの相対的強度を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,yRe3+,0.04Cl-(Re=Pr)]のEuが固定された状態でPrの組成比によるルミネセンスの相対的強度を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例による緑色蛍光体が塗布された白色発光装置の発光スペクトルの結果を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Sr(1-p-q)BapCaq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のBaとCaの組成比によるルミネセンス及び励起スペクトルの結果を示すグラフである。
【図13】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Sr(1-p-q)BapCaq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のBaとCaの組成比によるルミネセンス及び励起スペクトルの結果を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba(1-p-q)SrpCaq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のSrとCaの組成比によるルミネセンス及び励起スペクトルの結果を示すグラフである。
【図15】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba(1-p-q)SrpCaq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のSrとCaの組成比によるルミネセンス及び励起スペクトルの結果を示すグラフである。
【図16】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba(1-p-q)SrpMgq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のSrとMgの組成比によるルミネセンスの相対的強度を示すグラフである。
【図17】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)BbSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のBの組成比によるルミネセンスの相対的強度を示すグラフである。
【図18】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)AlbSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のAlの組成比によるルミネセンスの相対的強度を示すグラフである。
【図19】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)GabSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のGaの組成比によるルミネセンスの相対的強度を示すグラフである。
【図20】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)LabSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-]のLaの組成比によるルミネセンスの相対的強度を示すグラフである。
【図21】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Q]のQの種類によるルミネセンスの相対的強度を示すグラフである。
【図22】本発明の実施例によって製造された蛍光体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.045Re3+,0.04Cl-]のReの種類によるルミネセンスの相対的強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明による酸窒化物蛍光体は下記化学式で示される結晶を含む。
【0016】
(A(1-p-q)pqabSicde:xEu2+,yRe3+,zQ
式中、A、B及びCは互いに異なる金属で+2価の金属であり、Dは3族元素である。また、Reは+3価の金属であり、Qはフラックス(flux)である。この時、上記化学式を構成する各元素は特定の組成比(条件式)を持つ。具体的に、上記化学式でp及びqはそれぞれ0<p<1.0及び0≦q<1.0を満たす。この時、q>0である場合、p+q<1である。また、上記化学式のa、b、c、d及びeはそれぞれ1.0≦a≦2.0、0≦b≦4.0、0<c≦1.0、0<d≦1.0及び0<e≦2.0を満たし、前記x、y及びzはそれぞれ0<x≦0.25、0≦y≦0.25及び0≦z≦0.25を満たす。
【0017】
上記化学式でAは+2価の金属のものであれば制限されない。例えば、上記化学式でAはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeなどからなる群より選択された一つ以上であることができる。
【0018】
また、上記化学式でBはA及びCと種類が異なる+2価の金属のものであれば制限されない。例えば、上記化学式でBはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeなどからなる群より選択された一つ以上であることができる。この時、好ましい具現例によって、Bの組成比、すなわち上記化学式のpは0.2≦p≦0.5を満たせばよい。これを満たす場合(0.2≦p≦0.5である場合)、優れたルミネセンス(luminescence)特性、すなわち優れた発光輝度などを持つ。また、Bの組成(p値)が増加しすぎてA対比Bの置換量が多すぎると赤方偏移(red−shift)が起きることがある。したがって、ルミネセンス特性及び赤方偏移を考慮して、上記化学式のp(Bの組成比)は0.2≦p≦0.5を満たせばよい。
【0019】
上記化学式でCはA及びBと種類が異なる+2価の金属のものであれば制限されない。例えば、上記化学式でCはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeなどからなる群より選択された一つ以上であることができる。この時、前記Cの組成比、すなわち上記化学式のqは0.1≦q≦0.5を満たせばよい。これを満たす場合(0.1≦q≦0.5である場合)、金属の種類によって異なることはあるがルミネセンス特性が向上することができる。
【0020】
本発明の好ましい具現例によって、上記化学式のAとBはBe、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeなどからなる群より選択され、前記CはMgで、前記Cの組成比qは0<q<0.6(より好ましくは0.1≦q≦0.5)を満たせばよい。また、本発明の他の具現例によって、上記化学式のAはBe、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeなどからなる群より選択された一つ以上で、BはMgで、上記化学式のp及びqはそれぞれ0<p<0.6(より好ましくは0.1≦p≦0.5)及びq=0を満たせばよい。これを満たす場合、優れたルミネセンス特性を持つ。
【0021】
また、上記化学式でDは3族元素のものであれば制限されない。例えば、上記化学式でDは+3価の金属又は非金属元素で3A族及び3B族などの元素から選択されることができる。より具体的な例を挙げると、DはB、Al、Ga、In、Ti、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuなどからなる群より選択された一つ以上であることができる。この時、[(A(1-p-q)pqa]に対するDの組成比(モル比)、すなわち上記化学式のbは0<b≦1.0を満たせばよい。また、0<b≦1.0である場合、前記Dは特に限定されないがB及びLaなどからなる群より選択されるとよい。
【0022】
一方、上記化学式で[(A(1-p-q)pqa]に対するSiの組成比(モル比)、すなわち上記化学式のcは0.3≦c≦0.9を満たせばよい。Siの組成が増加しすぎると青方偏移(blue−shift)が起きることがある。Siの組成が0.3≦b≦0.9を満たす場合、青方偏移を防止することができ、また良好なルミネセンス特性を持つことができる。前記Siの組成比、すなわち上記化学式のcは0.4≦c≦0.6を満たすことがより好ましい。また、[(A(1-p-q)pqa]に対するNの組成比(モル比)、すなわち上記化学式のeは0.4≦e≦1.2を満たすことが好ましい。より好ましくは、上記化学式のeは0.5≦e≦1.0を満たせばよい。
【0023】
上記化学式でEuは活性剤(activator)として含まれ、これは母体[(A(1-p-q)pqabSicde]に対して0.25以下のモル比(0<x≦0.25)で組成される。この時、Euの組成比、すなわち上記化学式のxは0.025≦x≦0.12を満たすことが好ましく、より好ましくは0.075≦x≦0.12を満たせばよい。これを満たす場合(好ましくは0.025≦x≦0.12、より好ましくは0.075≦x≦0.12)、優れたルミネセンスを持つ。
【0024】
また、上記化学式でReはルミネセンス特性を向上させるための補助剤(auxiliary)の役割を行うもので、このようなReは+3価の金属のものであれば制限されない。例えば、前記Reは+3価の希土類金属(好ましくはランタノイド族金属)から選択された一つ以上であり得る。より具体的な例を挙げると、上記化学式でReはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuなどからなる群より選択されればよい。この時、母体[(A(1-p-q)pqabSicde]に対するReの組成比(モル比)、すなわち化学式のyは0.0075≦y≦0.1を満たすことが好ましい。上記化学式のyは、より好ましくは0.0075≦y≦0.075、より好ましくは0.015≦y≦0.045を満たせばよい。
【0025】
上記化学式のQはフラックス(flux)で、陰イオンや陽イオンから選択され、これは結晶性を向上させることができるものであればその種類は制限されない。フラックスとしてQは例えばF、Cl、Br、I及びAtなどのハロゲン族元素(陰イオン)やB、Al、Ga、In及びTiなどの金属元素(陽イオン)などから選択されることができる。前記フラックスとしてQは、好ましくは陰イオンがよく、より好ましくはハロゲン族元素(陰イオン)から選択されることがよい。より具体的に、上記化学式でQはX-に表示され、前記XはF、Cl及びBrなどからなる群より選択された一つ以上であればさらによい。本発明によれば、フラックスQとしてハロゲン族元素(X)が添加されると、蛍光体の結晶がより安定化し、これとともにルミネセンス特性が向上することができ、また目的の波長変化を誘導(波長範囲を調節)できる。
【0026】
この時、フラックスQの濃度が高すぎると蛍光体が溶ける現象が起きて焼成温度を下げなければならない面倒が生じることがある。具体的に、母体[(A(1-p-q)pqabSicde]に対するQの組成比(モル比)、すなわち上記化学式のzが0.25を超える場合、蛍光体が溶ける現象が起きることがある。このような現象はフラックスQとしてハロゲン族元素(X)を使用する場合に発生し得る。したがって、上記化学式でzが0≦z≦0.25を満たす場合、焼成温度が高くても溶ける現象が起きないので焼成時の温度設定が自在で、これとともにルミネセンス特性が良好に改善される。好ましくは、前記Qの組成比(z)は0.02≦z≦0.15を満たすことがよく、より好ましくは0.02≦z≦0.04を満たせばよい。これを満たす場合(好ましくは0.02≦z≦0.15、より好ましくは0.02≦z≦0.04)、結晶の安定化とともに優れたルミネセンス特性を図ることができる。また、本発明の好ましい具現例によって、上記化学式のx、y及びzは0.025≦x≦0.12、0.0075≦y≦0.1及び0.02≦z≦0.15を同時に満たすと、結晶の安全性及びルミネセンス特性がより良好に改善される。
【0027】
本発明によれば、蛍光体が上記化学式で示された結晶を含んで、優れた発光効率を有する。具体的に、本発明による蛍光体は上記化学式で示されるが、前記のような組成比(モル比)及び条件式を満たす結晶を含み、様々な波長範囲で光源(光、X線などの電磁波、電子線、熱等)により励起されて発光され、優れたルミネセンス強度(発光輝度)を持つ。
【0028】
本発明による蛍光体は上記化学式の結晶を少なくとも含むが、他の蛍光物質をさらに含んでもよい。併せて、本発明による蛍光体、すなわち化学式で示される結晶は特に限定されないが、数百ナノメートル(nm)乃至数十マイクメートル(μm)の大きさ(粒度)を有することができ、好ましくは1〜30μmの大きさを有することができる。
【0029】
また、本発明による蛍光体、すなわち上記化学式で示される結晶は青緑色領域の波長範囲、例えば510〜540nmの波長範囲の青緑色領域で優れた発光特性を持つ。すなわち、本発明による蛍光体の好ましい発光波長(ルミネセンス波長範囲)は、例えば510〜540nmである。このように本発明による蛍光体は、特に青緑色領域(例えば、510〜540nmの波長範囲)で発光特性に優れ、3波長白色光デバイスの青緑色蛍光体として有用に適用され得る。
【0030】
一方、本発明による蛍光体の製造方法は、前記組成の蛍光体を安価に製造できる方法であり、少なくとも次の2つのステップを含む。
(1)Aの前駆体、Bの前駆体、Cの前駆体、Dの前駆体、Siの前駆体、Nの前駆体、Euの前駆体、Reの前駆体及びQの前駆体を含む原料を混合するステップ(第1ステップ)
(2)前記原料を焼成炉に投入して焼成するステップ(第2ステップ)
この時、第1ステップ(混合ステップ)では、上記化学式(組成比及び条件式)を満たすように各原料(前駆体)の含量(モル比)を調節して混合する。具体的に、上記化学式のp及びqはそれぞれ0<p<1.0及び0≦q<1.0を満たし、前記a、b、c、d及びeはそれぞれ1.0≦a≦2.0、0≦b≦4.0、0<c≦1.0、0<d≦1.0及び0<e≦2.0を満たし、前記x、y及びzはそれぞれ0<x≦0.25、0≦y≦0.25及び0≦z≦0.25を満たすように各原料(前駆体)の含量(モル比)を調節して混合組成する。一例として、Si前駆体の場合、[(A(1-p-q)pq)]の1.0モル(mole)乃至2.0モル基準(1.0≦a≦2.0)で0<Siモル数≦1.0(0<c≦1.0)になるようにSi前駆体を適正重量で混合する。また、他の例として、Eu前駆体の場合、[(A(1-p-q)pqabSicde]の1.0モルに対して0<Euモル数≦0.25(0<x≦0.25)になるようにEu前駆体を適正重量で混合する。
【0031】
さらに、前記第1ステップ(混合ステップ)ではボールミル及び超音波などによる前記各原料(前駆体)の混合及び粉砕などが進行されることができる。
【0032】
また、前記第2ステップ(焼成ステップ)は、焼成炉内にアンモニアガス(NH3gas)を5〜15mL/minで注入しつつ800℃〜1300℃まで昇温し、焼成炉にアンモニアガスの注入を継続しつつ800℃〜1300℃の温度で2〜5時間の間維持して焼成する方法で進行することがよい。
【0033】
前記各原料の前駆体、すなわち前記A、B、C、D、Si、N、Eu、Re及びQの前駆体は各元素の塩、酸化物、窒化物などを使用することができる。例えば、金属前駆体の場合、金属塩、金属酸化物、金属窒化物などが使用され得る。
【0034】
より具体的には金属前駆体として、前記Aの前駆体(Aは+2価の金属)、Bの前駆体(BはAと異なる金属で+2価の金属)及びCの前駆体(CはA及びBと異なる金属で+2価の金属)としてはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeの化合物(塩、酸化物、窒化物など)からなる群より選択された一つ以上を使用することができる。この時、A、B及びCの前駆体は互いに異なる化合物から選択される。特に限定されないが、一例としてA(B又はC)がBaである場合、Baの前駆体はBaを含有する化合物であり、例えば、Ba塩(例、BaCO3及びBaSO4など)、Ba酸化物(BaO)及びBa窒化物(Ba32)などからなる群より選択された一つ以上を使用することができる。他の例として、Caの前駆体はCaO、CaCO3及びCa32などから選択された一つ以上を使用することができる。
【0035】
また、前記Dの前駆体(Dは3族元素)は3A族及び3B族などの元素を含む化合物であり、例えばDの前駆体としてはB、Al、Ga、In、Ti、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの化合物(塩、酸化物、窒化物など)からなる群より選択された一つ以上を使用することができる。より具体的な例を挙げると、Dの前駆体はBN、AlN、LaN、GaN、B23、Al23、La23、及びGa23などからなる群より選択された一つ以上を使用することができる。
【0036】
また、Siの前駆体はSi塩、Si酸化物及びSi窒化物などから選択されることができる。好ましくは、Siの前駆体は原料内に窒素も供給されることができるようにSi窒化物であり、一例としてSi34などを有用に使用することができる。また、前記Nの前駆体は窒化物、例えばBN、AlN、LaN、GaN、Si34及びCa32などを使用することができるが、前記Nの前駆体は一例としてSiの前駆体としてSi窒化物(Si34など)が使用される場合は添加されないことがある。また、上記化学式の結晶に含まれた酸素(O)はいずれか一つの前駆体(一例として、Aの前駆体)として金属酸化物(金属Aの酸化物)を使用することで、組成内に含まれることができる。
【0037】
また、前記Euの前駆体としては例えばEu23及びEu2(C243などから選択された一つ以上を使用することができる。また、前記Reの前駆体としては例えばLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの化合物(塩、酸化物、窒化物など)からなる群より選択された一つ以上を使用することができる。より具体的な例を挙げると、Reの前駆体としてはLa23、CeO2、Pr611、Pr23、Gd23、Tb47、Dy23、Ho23、Er23、Nd23、Sm23、及びYb23などからなる群より選択された一つ以上を使用することができる。
【0038】
また、前記Qの前駆体(フラックス前駆体)はハロゲン塩(X前駆体)、及び金属/非金属化合物などから選択されることができる。例えば、Qの前駆体としてはBaX2、NH4X及びNaX(XはF、Cl、Br、I、Atなど)などのハロゲン塩やB23、Al23及びGa23などの金属/非金属化合物から選択されることができる。前記Qの前駆体は、好ましくはハロゲン塩から選択されればよい。
【0039】
以上のような本発明の製造方法によれば、蛍光体の出発原料が従来の窒化物より購入価格が低い前駆体(金属塩)から選択されるので必要とする製造コストが低く、特に上述のように出発原料が金属塩などの前駆体から選択されるので低温、常圧で合成(焼成)が可能である。具体的には、前記第2ステップ(焼成ステップ)では常圧下で800℃〜1300℃の低温(好ましくは1000℃以下)で焼成が可能である。これにより、本発明によれば、原料の低価購入及びエネルギー節減などで製造単価を下げることができ、蛍光体を低廉な価格に普及させることができる。
【0040】
一方、本発明による発光装置は波長変換材料として上述のような本発明の酸窒化物蛍光体を含む。具体的に、本発明による発光装置は励起光源;及び蛍光体を含むが、前記蛍光体は上述のような本発明の酸窒化物蛍光体を少なくとも含む。前記励起光源は例えば青色光などを放出(発光)する光源から選択されることができる。より具体的な例を挙げると、前記励起光源は発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、レーザダイオード(LD)、及びその他の青色光を放出(発光)する光源から選択されることができる。この時、前記励起光源の発光波長は特に限定されないが350nm〜480nmになることができる。具体的に、前記励起光源は350nm乃至480nmまでの波長範囲で光(例えば、青色光)を放出(発光)する発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)又はレーザダイオード(LD)などから選択されることができる。また、本発明による発光装置は前記励起光源と蛍光体により白色の光を具現できる。
【0041】
また、前記蛍光体はバインダー(binder)と混合された後、励起光源上にモールド(mold)されるが、前記蛍光体は特に限定されないが0.1〜30重量%で使用され得る。すなわち、蛍光体とバインダーを含むモールド組成物の全体重量を基準に前記蛍光体は0.1〜30重量%で含まれ得る。この時、前記バインダーは接着性を持つものであれば使用可能で、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの高分子を使用することができるが、これらにより制限されるものでない。
【0042】
以下、本発明の実施例を例示する。下記の実施例は本発明の理解を補助するためだけに提供されているもので、これによって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-組成の蛍光体製造
まず、下記表1に示すような成分と含量(モル数)で原料を混合組成した。次に、前記混合原料をアルミナ焼成炉(るつぼ)に入れてアンモニアガス(NH3gas)を10mL/minで注入しつつ焼成炉内の温度を10℃/minの昇温速度で900℃まで引き上げた。そして、アンモニアガス(NH3gas)の注入を継続しつつ焼成炉内の温度900℃で3時間の間維持して本実施例による結晶(蛍光体)を得た。下記表1で、フラックス(flux)としてハロゲン前駆体(BaCl2)は原料全体重量を基準にBaCl2溶液が2重量%になるように添加し、他の原料は粒度2〜4μmの粉末を使用した。各原料のモル数は下記表1と同じである。
【0044】
本実施例によって製造された蛍光体(結晶)は化学式(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-の組成を有する。製造された蛍光体に対してルミネセンス及び励起スペクトルを評価し、その結果を添付された図1に示した。
【0045】
図1に示すように約λexn=460nmでもっとも大きな強度のルミネセンスピークを示し、約λems=525nmで発光された。添付された図2は本実施例によって製造された蛍光体結晶のSEM画像である。図2に示すように、蛍光体結晶は1〜10μmの範囲の粒子大きさを持ち、前記粒子大きさの範囲は蛍光体として適切な大きさに該当する。
【表1】

【0046】
[実施例2]
(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+組成の蛍光体製造
前記実施例1に比べて、フラックス(flux)としてハロゲン前駆体(BaCl2)を使用しないことを除けば同様に実施した。本実施例による原料の組成は下記表2と同じである。
【表2】

本実施例によって製造された蛍光体は化学式(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+の組成を有する。
【0047】
[実施例3乃至8]
(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,zCl-の蛍光体製造(Qの濃度による蛍光体製造)
フラックスとしてQの濃度(Clの組成比、z値)によるルミネセンスの強度(intensity)を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、BaCl2(flux)の含量を異なるようにした。具体的に各実施例によってBaCl2(flux)の含量を異なるようにして、下記表3に示すように上記化学式のz値を変化させた。
【0048】
本実施例3乃至8によって製造された蛍光体は化学式(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,zCl-の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を測定し、その結果を下記表3に示した。この時、下記表3に示す相対的強度はz=0である前記実施例2を基準(intensity=1)とした。また、下記表3で実施例5は前記実施例1と同じ蛍光体試験片である。
【表3】

【0049】
フラックスとして添加されたハロゲン族(X)元素は結晶の安定化に寄与するが、前記表3に示すように、過量が添加された場合は蛍光体が溶ける現象が起きて発光が減少することがわかった。また、本実験例から0.02≦z≦0.15である場合に相対的強度が0.9以上で良好であることがわかり、特に0.02≦z≦0.04である場合には相対的強度が1以上でルミネセンス強度(発光効率)が非常に優れることがわかった。そしてz=0.04である場合に最も高く評価されることがわかった。
【0050】
一方、図3の(a)は実施例2、5、6及び8によって製造された(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,zCl-蛍光体のXRDパターンを示したものである。図3の(a)に示すように、BaCl2の含量が大きく増加しても測定されたピークの2θ値と強度には変化が起きていない。これは実施例8程度までのBaCl2の含量(0.44mmole)範囲内では蛍光体の結晶構造及び組成の変化を起こさないまま、ルミネセンス強度を向上させる補助剤として作用することを意味する。
【0051】
また、図3の(b)は本発明の実施例2による酸窒化物係と従来の酸化物系(Sr1.9Ba0.1)SiO4(ICSD#36042)のXRDパターンの比較グラフを示したものである。図3の(b)に示すように、本発明の実施例2による蛍光体のXRDパターン傾向は従来の酸化物系(Sr1.9Ba0.1)SiO4のXRDパターンに類似であるが、ただし、2θ値が約0.4〜1.6程度の青方偏移が起きたことがわかる。これはBaとSrとのモル比が変わり、O(酸素)の一部がN(窒素)に置換された原因によるものと予測される。そして、本発明の実施例2による酸窒化物蛍光体の結晶構造は従来の酸化物系蛍光体(Sr1.9Ba0.1)SiO4と類似の結晶構造である斜方晶系(orthorhombic)結晶構造を持つことがわかる。
【0052】
[実施例9乃至11]
(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Qの蛍光体製造(Qの種類による蛍光体製造)
フラックスとしてハロゲン前駆体(ハロゲン塩)の種類(Qの種類)によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、各原料を組成するにあたり下記表4のようにハロゲン塩(Q=Cl、F)の種類を異なるようにして使用した。この時、ハロゲン塩の含量は前記実験例で最も良好に評価された0.08mmolにしてz=0.04に固定した。
【0053】
本実施例9乃至11によって製造された蛍光体は化学式(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Q(Q=Cl、F)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を測定し、その結果を下記表4に示した。この時、下記表4に示す相対的強度はハロゲン前駆体としてBaCl2を使用した前記実施例1を基準(intensity=1)とした。そしてハロゲン前駆体を添加していない前記実施例2の相対的強度(実施例1を基準)をともに示した。また、添付された図4には実施例1(BaCl2)、実施例9(BaF2)及び実施例2(No flux)による蛍光体の同一ルミネセンス強度(1.0を基準)で励起(λems=525nm)スペクトルを示した。
【表4】

【0054】
前記表4に示すように、ハロゲン前駆体としてBaCl2(実施例1)とNH4F(実施例11)を使用した場合に優れていると評価され、最も良いのはBaCl2(実施例1)であることがわかった。また、図4に示すように、ClとFの存在有無によって約5〜8nmの波長変化が現れることがわかった。
【0055】
したがって、本実験例から蛍光体組成内にフラックスQ(ハロゲン元素)が含まれた場合にルミネセンス強度が大きくなることがわかった。すなわち、実施例1、9乃至11が無添加の実施例2より大きいルミネセンス強度を持つ。また、図4に示すようにQ(ハロゲン)の添加により波長を変化させることができることがわかった。具体的に、目的の波長によってQ(ハロゲン)の種類を異なるようにするか、添加又は無添加することによって波長範囲を調節できることがわかった。
【0056】
[実施例12乃至18]
(Ba0.5Sr0.5)SicONe:0.075Eu2+,0.04Cl-の蛍光体製造(SiとNの組成比による蛍光体製造)
SiとNの組成比(c値、e値)によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、Si34の含量を異なるようにして実施した。具体的に、各実施例によってSi34の含量(mol)を異なるようにして、下記表5に示すように上記化学式のc値とe値を変化させた。
【0057】
本実施例12乃至18によって製造された蛍光体は化学式(Ba0.5Sr0.5)SicONe:0.075Eu2+,0.04Cl-の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を測定し、その結果を下記表5に示した。この時、下記表5に示す相対的強度はc=0.45で、e=0.6である実施例16を基準(intensity=1)とした。そして、c=0.56で、e=0.75である実施例1の相対的強度を実施例16を基準(intensity=1)として表5にともに示した。また、添付された図5には前記各実施例(Si、Nの組成比)による蛍光体の励起(λems=525nm)スペクトルを示した。
【表5】

【0058】
まず、添付された図5に示すように、Siの組成が増加するほど青方偏移が起きることがわかった。また、本実験例では前記表5に示すように、(Ba0.5Sr0.5)対比Siの組成(c値)は0.3≦c≦0.9で比較的良好なルミネセンス強度を持つことがわかり、好ましくは0.45≦c≦0.56である時、そして、c=0.45である時に最適の特性を持つことがわかった。また、本実験例では(Ba0.5Sr0.5)対比Nの組成(e値)は0.4≦e≦1.2で比較的良好なルミネセンス強度を持つことがわかり、好ましくは0.6≦e≦0.75である時、そして、e=0.6である時に最適の特性を持つことがわかった。
【0059】
[実施例19乃至22]
(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:xEu2+,0.04Cl-の蛍光体製造(Eu2+の濃度による蛍光体製造)
Eu2+の濃度(組成比、x値)によるルミネセンスの強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、原料を組成するにあたりEu23の含量を異なるようにして実施した。具体的には、各実施例によってEu23の含量を異なるようにして、下記表6に示すように上記化学式のx値を変化させた。
【0060】
本実施例19乃至22によって製造された蛍光体は化学式(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:xEu2+,0.04Cl-の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を測定し、その結果を下記表6に示した。この時、下記表6に示す相対的強度はx=0.075である実施例1を基準(intensity=1)とした。また、添付された図6及び図7には前記各実施例(Eu2+の濃度)による蛍光体のルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)及び励起(λems=520nm)スペクトルを示した。
【表6】

【0061】
前記表6及び添付された図6に示すように、母体[(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75]対比Eu2+の組成はx≦0.25で相対的強度0.7以上で良好なルミネセンス強度を持つ。そして、本実験例から0.075≦x≦0.12である時に優れたルミネセンス強度を持ち、x=0.075及び0.1である時に最適の特性を持つことがわかった。また、図7に示すように、Eu2+の濃度(x値)による励起スペクトルの波長変化はほとんど無いことがわかった。
【0062】
[実施例23乃至29]
(Bal-pSrp)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-(BaとSrの組成比による蛍光体製造)
BaとSrの組成比(p値)によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、原料を組成するにあたりBaCO3とSrCO3の含量を異なるようにして実施した。具体的に、各実施例によってBaCO3とSrCO3の含量(mol)を異なるようにして下記表7に示すように上記化学式のp値を変化させた。
【0063】
本実施例23乃至29によって製造された蛍光体は化学式(Bal-pSrp)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl- の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を測定し、その結果を下記表7に示した。この時、下記表7に示す相対的強度はp=0.4である実施例25を基準(intensity=1)とした。そして、下記表7で実施例25は前記実施例1と同じ蛍光体試験片である。また、添付された図8には前記各実施例(BaとSrの組成比)による蛍光体の励起(λems=520nm)スペクトルを示した。
【表7】

【0064】
まず、添付された図8に示すようにSr組成(p値)が増加してBaイオンがSrイオンに置換されると赤方偏移が起きることがわかった。また、本実験例からp=1である場合は発光がほとんど現れないので、p<1でなければならないことがわかった。また、本実験例から前記表7に示すように、0.2≦p≦0.5で良好なルミネセンス強度を持ち、p=0.4である時、すなわちBa:Sr=0.6:0.4である時に最適の特性を持つことがわかった。
【0065】
[実施例30乃至36]
(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:xEu2+,yRe3+,0.04Cl-組成の蛍光体製造(Eu2+とRe3+の濃度による蛍光体製造)
活性剤(activator)Euの一部を補助剤Re(Pr)に置換して、EuとRe(Pr)の濃度(x値、y値)によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、原料を組成するにあたりEu23含量の一部をPr611に置き換えて実施した。具体的には、各実施例によってEu23とPr611の含量を下記表8に示すように異なるようにして上記化学式のx値とy値を変化させた。
【0066】
本実施例30乃至36によって製造された蛍光体は化学式(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:xEu2+,yRe3+,0.04Cl-(Re=Pr)の組成を有する。製造された実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を測定し、その結果を下記表8及び添付された図9に示した。この時、表8及び図9に示す相対的強度はx=0.075でy=0.0である実施例1を基準(intensity=1)とした。
【表8】

【0067】
前記表8及び添付された図9に示すように、Euの一部をPrに置換する時、所定領域では未置換時(y=0)より優れたルミネセンス強度を持ち、Prの置換量が多すぎると減少することがわかった。本実験例では前記表8及び添付された図9に示すように、Prの組成(y値)が0.0≦y≦0.1である場合に良好な特性を持つことがわかった。そして、本実験例ではEuの一部をPrに置換するが、Prの組成(y値)が特に0.015≦y≦0.045である場合に非常に優れた特性を持つことがわかった。
【0068】
[実施例37乃至42]
(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,yRe3+,0.04Cl-
組成の蛍光体製造(Re3+の濃度による蛍光体製造)
活性剤Eu2+の濃度を固定(x=0.075に固定)させ、Re3+の濃度変化(y値)によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、各原料を組成するにあたりPr611の含量を異なるようにして添加した。具体的に、各実施例によってPr611の含量を下記表9に示すように異なるようにして上記化学式のy値を変化させた。
【0069】
本実施例37乃至42によって製造された蛍光体は化学式(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,yRe3+,0.04Cl-(Re=Pr)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を測定し、その結果を下記表9及び添付された図10に示した。この時、表9及び図10に示す相対的強度はy=0である実施例1を基準(intensity=1)とした。
【表9】

【0070】
前記表9及び添付された図10に示すように、補助剤Re(=Pr)を添加する時、所定領域では無添加時(Y=)より優れたルミネセンス強度を持ち、Re(=Pr)の添加量が多すぎると減少することがわかった。特に本実験例によって(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,yRe3+,0.04Cl-組成では0.0075≦y≦0.075である時、無添加時(y=0)より良好な特性を持つことがわかり、0.015≦y≦0.045である時、非常に優れることがわかった。
【0071】
<発光ダイオード素子製造>
前記実施例による蛍光体を用いて次のように発光ダイオード素子(発光装置)を製造した。
サファイア基板上に、GaN核生成層25nm、n‐GaN層(金属:Ti/Al)1.2μm、5層のInGaN/GaN多重量子井戸層、InGaN層4nm、GaN層7nm及びp‐GaN層(金属:Ni/Au)0.11μmをそれぞれ順に形成させて青色光LEDを製造した。次に、前記青色光LED表面に前記実施例1で製造した蛍光体(緑色)をエポキシに分散させて発光ダイオード素子を製造した。前記製造された発光ダイオード素子の発光スペクトルを図11に示した。図11に示すように、本発明による蛍光体を塗布した発光ダイオード素子はGaN青色LEDの発光帯に該当する52nmでピーク点を有する青色ルミネセンス帯と緑色蛍光体で放出される525nmで主発光ピークを示すことがわかった。この時、前記素子に赤色がさらに含まれると白色光が具現され得る。
【0072】
[実施例43乃至50]
(A(1-p-q)pq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-の蛍光体製造(BとCの組成比による蛍光体製造)
上記化学式でBとCの組成比(p値、q値)によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、各原料の使用と反応温度を異なるようにした。具体的に、化学式でA=Srに固定し、B=Ba、C=Caになるようにするが、下記表10に示すようにBaとCaの比率を異なるようにしてpとq値を変化させた。そして焼成炉内の温度は1000℃にした。この時、SrとBaの前駆体はそれぞれSrCO3とBaCO3を使用するが、Caの前駆体としてはCa32を使用した。各実施例によるBaとCaの組成比(p値、q値)は下記表11と同じである。また、Si34を使用するにあたり、下記表11に示すように、各実施例によってアルファ−相(α−phase)とベータ−相(β−phase)を異なるように使用した。
【0073】
本実施例43乃至50によって製造された蛍光体は(Sr(1-p-q)BapCaq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-(0≦p≦0.5、0≦q≦0.5)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を評価し、その結果を下記表11に示した。この時、下記表11の相対的強度は実施例43(p=0.5、q=0)を基準(intensity=1)とした。そして添付された図12及び図13には本実施例による蛍光体のルミネセンス(λexn=460nm)及び励起(λems=526nm)スペクトルをそれぞれ示した。
【表10】

【表11】

【0074】
まず、添付された図13に示すようにBaイオンがCaイオンに置換されると赤方偏移が起きることがわかった。
【0075】
また、前記表11に示すように、本実験例によってA=Srに固定し、BaをCaに置換した場合、BaとCaのモル比(組成比)においては0.4≦pである時に相対的強度が0.3以上で比較的良好なルミネセンス強度を持つことがわかった。そしてSi34はベータ−相(β−phase)よりアルファ−相(α−phase)の方がより良く評価されることが分かった。
【0076】
[実施例51乃至56]
(A(1-p-q)pq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-の蛍光体製造(BとCの組成比による蛍光体製造)
上記化学式でBとCの組成比(p値、q値)によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例43と同様に実施するもが、各原料の使用と反応温度を異なるようにした。具体的に、化学式でB=Srに固定し、A=Ba又はCa、C=Ca又はBaになるようにするが、下記表12に示すようにSr、Ba及びCaの比率を異なるようにしてpとq値を変化させた。そして焼成炉内の温度は900℃にした。各実施例によるBとCの組成比(p値、q値)は下記表13と同じである。
【0077】
本実施例51乃至56によって製造された蛍光体は(A(1-p-q)pq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+、0.04Cl-(0≦p≦0.5、0≦q≦0.5、A=Ba又はCa、C=Ca又はBa)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を評価し、その結果を下記表13に示した。この時、下記表13の相対的強度は実施例51(p=0.5、q=0)を基準(intensity=1)とした。下記表13で実施例51は前記実施例1と同じ蛍光体試験片である。そして添付された図14及び図15には本実施例による蛍光体のルミネセンス(λexn=460nm)及び励起(λems=550nm)スペクトルをそれぞれ示した。
【表12】

【表13】

【0078】
表13に示すように、本実験例によってB=Srに固定し、B(Sr)をC(Ba又はCa)に置換した場合、BとCのモル比(組成比)においては0.4≦pである場合に相対的強度が0.3以上で比較的良好なルミネセンス強度を持つことがわかった。
【0079】
[実施例57乃至62]
(A(1-p-q)pq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-の蛍光体製造(BとCの種類及び組成比による蛍光体製造)
上記化学式でBとCの種類及び組成比(p値、q値)によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例43と同様に実施するが、各原料を異なるようにした。具体的に、化学式でA=Baに固定し、B=Sr、C=Mgになるようにするが、下記表14に示すようにSrとMgの比率を異なるようにしてpとq値を変化させた。各実施例によるSrとMgの組成比(p値、q値)は下記表15と同じである。
【0080】
本実施例57乃至62によって製造された蛍光体は(Ba(1-p-q)SrpMgq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-(0≦p≦0.5、0≦q≦0.5)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=400nm)を評価し、その結果を下記表15及び添付された図16に示した。この時、表15及び図16の相対的強度は実施例57(p=0.5、q=0)を基準(intensity=1)とし、実施例57は前記実施例1と同じ蛍光体試験片である。
【表14】

【表15】

【0081】
前記表15及び添付された図16に示すように、本実験例によってA=Baに固定し、B=Srを使用するが、C=Mgを使用した場合、優れたルミネセンス強度を持つことがわかった。すなわち、CとしてMgを使用するが、0<qである場合にルミネセンス強度が向上することがわかった。そして本実験例からB=Srを使用するが、CとしてMgを添加した時、0.1≦q≦0.5である場合に無添加時(q=0)より相対的強度が2.5以上で優れたルミネセンス強度を持つことがわかった。
【0082】
また、本実験例からSrをMgに置き換えた場合に優れたルミネセンス強度を持つことがわかった。すなわち、前記実施例62と同じようにSrを使用することなく、Srの代りにMgを使用した場合、実施例57に比べて相対的強度が2.5以上で優れたルミネセンス強度を持つことがわかった。この時、上記化学式は(A(1-p-q)pq)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-(A=Ba、B=Mg、0<p<1.0、q=0)に表現されることができ、より具体的には(Ba(1-p)Mgp)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-(0<p<1.0)に表現されることができる。
【0083】
[実施例63乃至65]
(Ba0.5Sr0.5)DbSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-の蛍光体製造(Dの添加による蛍光体製造)
3族元素Dの添加量(b値)によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、各原料の使用と反応温度を異なるようにした。具体的に、前記実施例1と対比してDの前駆体BNをさらに添加するが、下記表16に示すようにD(=B)の比率を異なるようにしてb値を変化させた。そして焼成炉内の温度は1000℃にした。各実施例によるD(=B)の組成比(b値)は下記表17と同じである。
【0084】
本実施例63乃至65によって製造された蛍光体は(Ba0.5Sr0.5)BbSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-(0≦b≦1.0)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を評価し、その結果を下記表17及び添付された図17に示した。この時、表17及び図17に示した相対的強度はD(=B)を添加していない実施例1(b=0)を基準(intensity=1)とした。
【表16】

【表17】

【0085】
前記表17及び添付された図17に示すように、3族元素D(=B)の添加有無及び添加量によってルミネセンス強度が変わることがわかった。本実験例ではD(=B)を添加した場合、(Ba0.5Sr0.5)対比0.25≦b≦0.5である時に無添加時(b=0)より優れたルミネセンス強度を持ち、b=0.25である時に最適の特性を持つことがわかった。
【0086】
[実施例66乃至68]
(Ba0.5Sr0.5)DbSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-の蛍光体製造(Dの種類による蛍光体製造)
3族元素Dの種類によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例63と同様に実施するが、他の種類のD前駆体を使用した。具体的に、実施例63に比べてD前駆体としてAlNを使用し、これの添加量(モル数変化、0〜2mmol)を異なるようにした。各実施例によるD(=Al)の組成比(b値)は下記表18と同じである。
【0087】
本実施例66乃至68によって製造された蛍光体は(Ba0.5Sr0.5)AlbSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-(0≦b≦1.0)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を評価し、その結果を下記表18及び添付された図18に示した。この時、表18及び図18に示した相対的強度はD(=Al)を添加していない実施例1(b=0)を基準(intensity=1)とした。
【表18】

【0088】
前記表18及び添付された図18に示すように、3族元素D(=Al)の添加有無及び添加量によってルミネセンス強度が変わることがわかった。本実験例によってDとしてAlを使用する場合、(Ba0.5Sr0.5)対比b=0または0.5である時の方がb=0.25または1である場合より良好なルミネセンス強度を持つことがわかった。
【0089】
[実施例69乃至71]
(Ba0.5Sr0.5)DbSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-の蛍光体製造(Dの種類による蛍光体製造)
3族元素Dの種類によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例63と同様に実施するが、他の種類のD前駆体を使用した。具体的に、実施例63に比べてD前駆体としてGaNを使用し、これの添加量(モル数変化、0〜2mmol)を異なるようにした。各実施例によるD(=Ga)の組成比(b値)は下記表19と同じである。
【0090】
本実施例69乃至71によって製造された蛍光体は(Ba0.5Sr0.5)GabSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-(0≦b≦1.0)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を評価し、その結果を下記表19及び添付された図19に示した。この時、表19及び図19に示した相対的強度はD(=Ga)を添加していない実施例1(b=0)を基準(intensity=1)とした。
【表19】

【0091】
前記表19及び添付された図19に示すように、3族元素D(=Ga)の添加有無及び添加量によってルミネセンス強度が変わることがわかった。本実験例によってDとしてGaを使用する場合、(Ba0.5Sr0.5)対比b=0または0.25である時の方がb=0.5または1である場合より良好なルミネセンス強度を持つことがわかった。
【0092】
[実施例72乃至74]
(Ba0.5Sr0.5)DbSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-の蛍光体製造(Dの種類による蛍光体製造)
3族元素Dの種類によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例63と同様に実施するが、他の種類のD前駆体を使用した。具体的には、実施例63に比べてD前駆体としてLaNを使用し、これの添加量(モル数変化、0〜2mmol)を異なるようにした。各実施例によるD(=La)の組成比(b値)は下記表20と同じである。
【0093】
本実施例72乃至74によって製造された蛍光体は(Ba0.5Sr0.5)LabSi0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Cl-(0≦b≦1.0)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を評価し、その結果を下記表20及び添付された図20に示した。この時、表20及び図20に示した相対的強度はD(=La)を添加していない実施例1(b=0)を基準(intensity=1)とした。
【表20】

【0094】
前記表20及び添付された図20に示すように、3族元素D(=La)の添加有無及び添加量によってルミネセンス強度が変わることがわかった。本実験例によってDとしてLaを使用する場合、(Ba0.5Sr0.5)対比0.25≦b≦0.5である時の方が無添加時(b=0)より優れたルミネセンス強度を持ち、b=0.5であるに時最適の特性を持つことがわかった。
【0095】
[実施例75乃至81]
(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Qの蛍光体製造(Qの種類による蛍光体製造)
フラックス(flux)としてQの種類によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、Qの前駆体を異なるようにした。そして反応温度は1000℃にした。各実施例によるQ前駆体の種類は下記表21と同じである。
【0096】
本実施例75乃至81によって製造された蛍光体は(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.04Q(Q=Cl、F、Br、B)の組成を有する。製造された各実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を評価し、その結果を下記表21及び添付された図21に示した。この時、表21及び図21に示した相対的強度はQ前駆体としてBaCl2を使用した実施例1(Q=Cl)を基準(intensity=1)とした。
【表21】

【0097】
前記表21及び添付された図21に示すように、フラックス(Q前駆体)の種類によってルミネセンス強度が変わることがわかった。本実験例ではQ前駆体としてハロゲン塩を使用するがBaCl2、BaF2及びNaBrを使用する場合に相対的強度が0.9以上で良好に評価されることがわかり、NaBrを使用する場合が最も優れていると評価されることがわかった。
【0098】
[実施例82乃至90]
(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:xEu2+,yRe3+,0.04Cl-の蛍光体製造(Re3+の種類による蛍光体製造)
活性剤(activator)Euの一部を補助剤Reに置換するが、Reの種類によるルミネセンス強度を確かめるために、前記実施例1と同様に実施するが、原料を組成するにあたり様々な種類のRe前駆体をさらに添加して実施した。具体的に、各実施例によって下記表22に示したようなRe前駆体をさらに添加して上記化学式のReの種類を変化させた。そして反応温度は1000℃にした。また、各実施例のEu前駆体とRe前駆体は同じ量(Eu23=0.15mmol、Re前駆体=0.03mmol)を使用して、x=0.075、y=0.045に固定した。
【0099】
本実施例82乃至36によって製造された蛍光体は化学式(Ba0.5Sr0.5)Si0.56ON0.75:0.075Eu2+,0.045Re3+,0.04Cl-(Re=Ce、Pr、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Nd、Sm、Yb)の組成を有する。製造された実施例による蛍光体に対してルミネセンスの相対的強度(λexn=460nm)を測定し、その結果を下記表22及び添付された図22に示した。この時、表22及び図22に示した相対的強度はReを添加していない実施例1(x=0.075、y=0.0)を基準(intensity=1)とした。
【表22】

【0100】
前記表22及び添付された図22に示すように、Reの種類によってルミネセンス強度が変わることがわかった。また、本実験例からReの前駆体としてPr611、Gd23、Tb47、Dy23及びYb23を使用した場合、すなわちRe=Pr、Gd、Tb、Dy、Ybである場合に無添加時(実施例1、y=0)より優れたルミネセンス強度を持つことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式で示される結晶を含む酸窒化物蛍光体。
(A(l-p-q)pqabSicde:xEu2+,yRe3+,zQ
(上記式中、A、B及びCは互いに異なる金属で、+2価の金属で;
Dは3族元素で;
Reは+3価の金属で;
Qはフラックス(flux)で;
p及びqは0<p<1.0及び0≦q<1.0で;
a、b、c、d及びeは1.0≦a≦2.0、0≦b≦4.0、0<c≦1.0、0<d≦1.0及び0<e≦2.0で;
x、y及びzは0<x≦0.25、0≦y≦0.25及び0≦z≦0.25である。)
【請求項2】
前記化学式のxは0.025≦x≦0.12を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項3】
前記化学式のyは0.0075≦y≦0.1を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項4】
前記化学式のzは0.02≦z≦0.15を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項5】
前記化学式のxは0.025≦x≦0.12を満たし、yは0.0075≦y≦0.1を満たし、zは0.02≦z≦0.15を満たすことを特徴とする酸窒化物蛍光体。
【請求項6】
前記化学式のpは0.2≦p≦0.5を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項7】
前記化学式のqは0.1≦q≦0.5を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項8】
前記化学式のbは0<b≦1.0を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項9】
前記化学式のcは0.3≦c≦0.9を満たし、eは0.4≦e≦1.2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項10】
前記化学式のA、B及びCはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeからなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項11】
前記化学式のDはB、Al、Ga、In、Ti、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項12】
前記化学式のReはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項13】
前記化学式のQはハロゲン元素であることを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項14】
前記化学式のAとBはBe、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeからなる群より選択された一つ以上で、CはMgで、前記化学式のqは0<q<0.6を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項15】
前記化学式のAはBe、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeからなる群より選択された一つ以上で、BはMgで、前記化学式のp及びqはそれぞれ0<p<0.6及びq=0を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項16】
前記蛍光体の大きさは1〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載の酸窒化物蛍光体。
【請求項17】
請求項1の記載による酸窒化物蛍光体の製造方法であり、
Aの前駆体(Aは+2価の金属)、Bの前駆体(BはAと異なる金属で+2価の金属)、Cの前駆体(CはA及びBと異なる金属で+2価の金属)、Dの前駆体(Dは3族元素)、Siの前駆体、Nの前駆体、Euの前駆体、Reの前駆体(Reは+3価の金属)及びQの前駆体(Qはフラックス)を含む原料を混合するが、前記化学式を満たすように各前駆体の含量を調節して混合する第1ステップ;及び
前記原料を焼成炉に投入して焼成する第2ステップを含む酸窒化物蛍光体の製造方法。
【請求項18】
前記第2ステップは、
焼成炉内にアンモニアガスを5〜15mL/minで注入しつつ800℃〜1300℃まで昇温するステップa);及び
アンモニアガスの存在下に800℃〜1300℃の温度に2〜5時間の間維持するステップb)を含むことを特徴とする請求項17に記載の酸窒化物蛍光体の製造方法。
【請求項19】
前記A、B及びCの前駆体はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Hg、Pb、Sn及びGeの化合物からなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする請求項17に記載の酸窒化物蛍光体の製造方法。
【請求項20】
前記Dの前駆体はB、Al、Ga、In、Ti、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの化合物からなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする請求項17に記載の酸窒化物蛍光体の製造方法。
【請求項21】
前記Reの前駆体はLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの化合物からなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする請求項17に記載の酸窒化物蛍光体の製造方法。
【請求項22】
前記Qの前駆体はハロゲン塩であることを特徴とする請求項17に記載の酸窒化物蛍光体の製造方法。
【請求項23】
励起光源;及び蛍光体を含む発光装置において、
前記蛍光体は請求項1乃至13のうちいずれか一つに記載の酸窒化物蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項24】
前記励起光源は発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)又はレーザダイオード(LD)であることを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項25】
前記励起光源の発光波長は350nm〜480nmであることを特徴とする請求項23に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2012−513520(P2012−513520A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543405(P2011−543405)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005573
【国際公開番号】WO2010/074391
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511153253)クムホ・エレクトリック・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】