説明

酸素インジケーター用インキ組成物およびそれを使用した酸素インジケーター並びに酸素インジケーターを含有する包装材料

【課題】本発明は、滅菌処理後も酸素インジケーター機能を失うことなく、尚且つ大気開放状態での室温保管が可能で、脱酸素包装をする必要がない、酸素インジケーター用インキ組成物およびそれを使用した酸素インジケーター並びに酸素インジケーターを含有する包装材料を提供することを目的とする。
【解決手段】高温滅菌処理時に色調が酸化色から還元色へ変化する酸素インジケーター用インキ組成物であり、該インキ組成物中の還元剤が室温では安定で、高温滅菌処理を施した場合に酸化還元色素を還元する温和な還元剤である。また、還元反応を促進させる金属触媒を添加したインキ組成物で、支持体上へ塗布、あるいは印刷することで酸素インジケーターが得られる。該支持体が、包装体を形成する外装体としたことを特徴とする酸素インジケーターを含有する包装材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収剤による脱酸素状態を判定するための酸素インジケーター用インキ組成物およびそれを使用した酸素インジケーター並びに酸素インジケーターを含有する包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素は、その反応性の高さから食品や医薬品を酸化し、製品の有効成分を変性、劣化させることが知られている。このため、多くの食品、医薬品は酸素吸収剤を包装体内に共存させることにより酸化を防止しているが、その際、酸素吸収剤の能力や包装体のピンホール、シール不良などによる酸素の進入を検知するために酸素インジケーターが包装体内に同時に投入されている。
【0003】
現在、酸化還元色素、還元剤、バインダー樹脂等の組み合わせを変えた何種類かの酸素インジケーターが上市されている。多くの酸素インジケーターは酸化還元色素が還元型と酸化型とで異なる色調を呈する性質を利用したものである。特にメチレンブルーを用いたものが多く、このメチレンブルーを用いた酸素インジケーターは、脱酸素下では還元剤の働きによって還元型、すなわち無色を呈し、大気下では酸素により酸化され、青色を呈する。
【0004】
酸素インジケーターの形状は錠剤以外に液状、インキタイプ、シート状、ペーパータイプなどが開発されており、さらには酸素吸収剤と一体化したものや包装材料と一体化したものなども開発され、投入時の省力化、検知の判別の容易化がはかられている(例えば、特許文献1参照。)。このような酸素インジケーターに使用される還元剤は、色素を還元状態に維持できるものであればいずれも使用可能であるが、金属ヒドリド等の強力な還元剤は色素を大気下でも変色させる、あるいは発色不良を引き起こすなどの不具合から好ましくない。このような観点および安全衛生性を考慮し、現在上市されている酸素インジケーターに使用される還元剤は、還元糖類を用いたものがほとんどである。
【0005】
還元糖類がその働きを発現するにはアルカリ性物質が必要であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウムなどを共存させなければならない。また、これ以外には、アスコルビン酸なども使用することができる。しかし、いずれの場合も室温下で還元作用を示すため、大気下では空気中の酸素と反応して能力低下が起きる。すなわち、室温で保管する際は酸素吸収剤を投入し、さらに酸素バリア性フィルムで密封して脱酸素包装しなければならないという作業が別途必要となり、保管条件は大きく制限される。また、脱酸素状態で保管した場合も還元糖類やアスコルビン酸はその経過時間が長くなると劣化が進行し、還元能力を維持できないことが知られている。
【0006】
一方、酸素インジケーター機能を付与した包装材料において、充填される内容物は滅菌工程を経ることがほとんどであり、ボイル・レトルトなどの高温滅菌処理を施す場合も多い。
【0007】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2001−192592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、現在上市されている酸素インジケーターに含まれる還元剤は、その安全衛生性や還元力の観点から還元糖類や還元性ビタミン類が選択される場合が殆どであるが、高温滅菌処理工程を経た後はその熱により機能を失うという欠点があり、滅菌処理後の脱酸素状態を保証することが困難となる。この場合、滅菌処理後には還元剤は失活しているため、包装体内が脱酸素状態であるにも関わらず酸素インジケーターは酸化色を示し、酸素インジケーターが正常に機能しないという問題点が生じる。また、還元糖類や還元性ビタミン類は室温で大気下放置しておくと酸化が進み、その還元能力は時間経過と共に徐々に失われていくことが知られている。そのため、室温保管時にも酸素インジケーターを常に脱酸素の状態に保つ必要があるため、脱酸素包装の手間が生じる。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、滅菌処理後も酸素インジケーター機能を失うことなく、尚且つ大気開放状態での室温保管が可能であり、脱酸素包装をする必要がない酸素インジケーター用インキ組成物およびそれを使用した酸素インジケーター並びに酸素インジケーターを含有する包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、高温滅菌処理時に色調が酸化色から還元色へ変化することを特徴とする酸素インジケーター用インキ組成物である。
【0011】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の酸素インジケーター用インキ組成物において、前記酸素インジケーター用インキ組成物に含まれる還元剤が室温では安定で、高温滅菌処理を施した場合に酸化還元色素を還元することができる温和な還元剤であることを特徴とする酸素インジケーター用インキ組成物である。
【0012】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の酸素インジケーター用インキ組成物において、前記温和な還元剤が、アミン類、還元糖類、あるいは高級アルコール類や多価アルコール類であることを特徴とする酸素インジケーター用インキ組成物である。
【0013】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載のインキ組成物に、還元反応を促進させる金属触媒を添加したことを特徴とする酸素インジケーター用インキ組成物である。
【0014】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項4記載の酸素インジケーター用インキ組成物において、前記金属触媒が、熱的に安定な遷移金属錯体であることを特徴とする酸素インジケーター用インキ組成物である。
【0015】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項4又は5記載の酸素インジケーター用インキ組成物において、前記金属触媒の濃度が、酸化還元色素1重量部に対して20重量部以下であることを特徴とする酸素インジケーター用インキ組成物である。
【0016】
本発明の請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載のインキ組成物を支持体上へ塗布、あるいは印刷することで得られることを特徴とする酸素インジケーターである。
【0017】
本発明の請求項8に係る発明は、前記支持体が、包装体を形成する外装体としたことを特徴とする請求項7記載の酸素インジケーターを含有する包装材料である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、2および請求項3の発明によれば、本発明の酸素インジケーター用インキ組成物は高温滅菌処理時に還元剤が作用して、酸化色から還元色へ変化する。さらに本発明の還元剤は、アルカリ性物質を共存させた還元糖類やアスコルビン酸とは異なり、室温で大気下に保管しても長期間安定に存在することができる。このため、本発明の酸素インジケーター用インキ組成物およびそれを使用した滅菌用包装材料は脱酸素包装を必要とせず、取り扱いが容易である。また、ボイル・レトルトなどの高温滅菌処理を施した場合には速やかにプロトンを放出して、酸化還元色素を還元色へ変化させることができる。
【0019】
請求項4、5および請求項6の発明によれば、熱的に安定な金属触媒をインキ組成物に添加することにより、還元反応を促進させることが可能となる。これにより滅菌に必要な処理時間が短い場合や、処理温度が低い場合にも対応することができ、且つ熱による色素劣化を防ぐことができる。
【0020】
請求項7および請求項8の発明によれば、本発明の酸素インジケーターインキ用組成物を塗布、あるいは印刷した支持体を含有する包装材料は、高温滅菌処理時に初めて、その能力を発現し、包装体内部の酸素検知を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1(a)は本発明に係る酸素インジケーター(3)を含有する包装材料(B)で作製した包装体の1実施例を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)における酸素インジケーター(3)を配置した部分(A)の包装材料(B)の層構成を示す拡大側断面図であり、図2は本発明に係る酸素インジケーター(3)を含有する包装材料(B)のボイル処理時のL値変化を示すグラフであり、図3は本発明に係る酸素インジケーター(3)を含有する包装材料(B)のレトルト処理時のL値変化を示すグラフであり、図4は本発明に係る酸素インジケーター(3)を含有する包装材料(B)で作製した包装体の3ヶ月保管後のレトルト処理時のL値変化を示すグラフである。
【0023】
本発明に係る酸素インジケーター用インキ組成物は、すくなくとも酸化還元色素、室温では安定な還元剤、バインダー樹脂、及び溶媒からなるものである。そして、上記インキ組成物に、さらに還元反応を促進する目的により、金属酸化物や遷移金属錯体などの金属触媒を添加したインキ組成物である。
【0024】
本発明に使用される酸化還元色素は、酸化状態と還元状態で異なる色を呈する色素であれば、特に制限はなく、いずれの公知な色素も使用することができる。具体的にはメチレンブルーの他、ニューメチレンブルー、ニュートラルレッド、インジゴカルミン、インジゴスルフォン酸カリウム塩、サフラニンT、フェノサフラニン、カプリブルー、ナイルブルー、ジフェニルアミン、ジフェニルアミンスルホン酸、キシレンシアノール、ニトロジフェニルアミン、フェロイン、ニトロフェロイン、N−フェニルアントラニル酸などが使用できる。
【0025】
本発明に使用される還元剤は、熱処理を施した場合に還元作用を発現するものであれば、いずれも使用可能であるが、金属ヒドリドなどの強力な還元剤は色素を変質させるため、好ましくない。また室温で還元作用を示すアルカリ性物質を共存させた還元糖類や、アスコルビン酸は大気中の酸素と反応し、酸素インジケーターの能力低下を引き起こす場合があるので、酸化還元色素と還元剤の組み合わせを選択することは非常に重要である。このような観点から室温では色素を還元せず、安定に存在し、大気中の酸素とは反応しない温和な還元剤を使用することが好ましい。
【0026】
係る温和な還元剤として好ましいのは、具体的にはn−ジブチルアミン、n−トリブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジアミルアミン、トリアミルアミン、n−ヘプチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミン類やモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、マルトース、ガラクトース、グルコース、フルクトース、ラクトースなどの還元糖類(アルカリ性物質を共存させない)、あるいは高級アルコールやエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリビニルアルコールなどの多価アルコール類など一般に高温で酸化されやすい物質である。特に安全衛生性や熱安定性を考慮すると、沸点の高いトリエタノールアミンやグリセロールを使用することが好ましく、その使用量は上記色素1重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましい。
【0027】
前記バインダー樹脂は、酸化還元色素、還元剤、金属触媒、溶媒を支持体上に固着するために用いられる。インキ化する際に適当なバインダー樹脂としては、具体的にはエチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、セルロースアセテートなどのセルロース誘導体やブチラール樹脂、アセタール樹脂、親水基を導入したポリエステル樹脂、その他にアクリル樹脂、ウレタン−ウレア樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。特に酸化還元色素の溶解性とボイル・レトルトなどの高温滅菌処理を考慮し、耐熱性を有する水性樹脂を使用することが好ましい。
【0028】
該バインダー樹脂は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルに代表される有機系溶剤、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールに代表される水系溶剤に溶解あるいは分散させて使用される。これら溶剤は単独でも、また複数の溶剤を混合しても良い。
【0029】
金属触媒として、熱的に安定な遷移金属錯体をインキ組成物へ添加することで、還元反応を促進することができる。具体的には、ウィルキンソン錯体に代表される均一系触媒として、ロジウム、ルテニウム、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、パラジウム、白金などのホスフィン錯体、アミン錯体、カルボニル錯体など、さらにはセリウム、マンガン、コバルト、ニッケルなどのステアリン酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩、オクテン酸塩などの脂肪酸塩錯体を使用することができる。また、上記遷移金属錯体をゼオライトなどの無機化合物に担持させた不均一系触媒を用いることも可能である。
【0030】
前記金属触媒は、酸化還元色素1重量部に対して20重量部以下であることが好ましい。金属触媒の濃度がこれより大きいと、その分散が困難であるばかりか、支持体との密着強度が低下するという現象が生じるため、好ましくない。
【0031】
本発明の酸素インジケーター用インキ組成物には、必要に応じて分散剤や消泡剤、さらには酸化還元色素以外に別途、着色剤などを添加してもよい。また、上記酸素インジケーター用インキ組成物は2液型に調整してもよい。すなわち、すくなくとも色素とバインダー樹脂からなるA液と還元剤とバインダー樹脂からなるB液を印刷直前に混合して使用することにより、インキの保存安定性を向上させることができる。さらには支持体との密着強度改善や色素の退色防止を目的に、インキ組成物の上下にアンカーコート層やオーバーコート層を設けることができる。使用できるコーティング剤としては、酸素を透過し、かつ支持体との密着性が良いもの、また紫外線吸収材料を含有するものなどで酸素インジケーターの発色を妨げないものあれば特に制限はなく、いずれも使用することができる。
【0032】
上記のインキ組成物を支持体に塗布して酸素インジケーターを作成する。塗布にあたっ
ては印刷、コーティング法などが用いられる。印刷方法は、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などが利用でき、またコーティング法としては、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ベタコーティングなどが用いられる。
【0033】
該支持体はインキ組成物と反応せず、しかも試薬の呈色性を阻害しないものであることが好ましい。具体的には、紙、合成紙、不織布、または合成樹脂フィルムなどが用いられる。前記支持体が、包装体を形成する外装体とし、酸素インジケーターを含有する包装材料である。
【0034】
また、前記酸素インジケーターを含有する包装材料は、酸素インジケーター用インキ組成物の外側には、酸素の進入を防ぐ目的から酸素バリア層を設ける必要がある。これらの材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド6やポリアミド6−ポリアミド66共重合体、MXD6などの芳香族ポリアミドに代表されるポリアミド樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂から選択される熱可塑性樹脂層、アルミ箔などの金属箔層、アルミ、シリカ、アルミナなどのPVD蒸着法あるいは、ヘキサメチレンジシロキサンなどのオルガノシランやアセチレンガス、その他の炭素ガス源を用いたCVD蒸着法により得られた蒸着熱可塑性樹脂層が挙げられる。さらに、内側には包装体を形成する際に必要なヒートシール性を有するシーラントフィルムを設ける。例えば、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂フィルムを用いる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の具体的実施例を挙げて、さらに詳しく説明するが、それに限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
(酸素インジケーター層インキ組成)
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・1.75重量部
トリエタノールアミン・・・・・・・・・・10.53重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・24.56重量部
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・42.11重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21.05重量部
(形態)
上記組成の組成物をペイントコンディショナーなどで微細分散させることにより、インキ組成物を得た。図1(b)に示すように、これを支持体である厚さ12μmのポリエステルフィルム(PET)(1)のコロナ処理面上に200線、30μmのグラビア版で2度刷りし、室温で12時間乾燥させて酸素インジケーター層(2)を設けた。上記印刷物に接着剤層(6、7)としてウレタン系2液硬化型接着剤を使用し、ドライラミネート法によりPET上下にそれぞれアルミナ蒸着フィルム(4)とシーラントフィルム(5)を積層させて、本発明の酸素インジケーター(3)を含有する包装材料(B)を得た。
【0037】
<実施例2>
(酸素インジケーター層インキ組成)
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・1.75重量部
グリセロール・・・・・・・・・・・・・・10.53重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・24.56重量部
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・42.11重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21.05重量部
上記組成のインキ組成物以外は実施例1と同様にして包装材料(B)を得た。
【0038】
<実施例3>
(酸素インジケーター層インキ組成)
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・1.67重量部
トリエタノールアミン・・・・・・・・・・10.00重量部
ステアリン酸コバルト・・・・・・・・・・・5.00重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・23.33重量部
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・40.00重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20.00重量部
上記組成のインキ組成物以外は実施例1と同様にして包装材料(B)を得た。
【0039】
<実施例4>
(酸素インジケーター層インキ組成)
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・1.67重量部
グリセロール・・・・・・・・・・・・・・10.00重量部
ステアリン酸コバルト・・・・・・・・・・・5.00重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・23.33重量部
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・40.00重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20.00重量部
上記組成のインキ組成物以外は実施例1と同様にして包装材料(B)を得た。
【0040】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0041】
<比較例1>
(酸素インジケーター層インキ組成)
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・1.49重量部
グルコース・・・・・・・・・・・・・・・・8.96重量部
水酸化ナトリウム・・・・・・・・・・・・14.93重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・20.90重量部
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・35.82重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17.90重量部
上記組成のインキ組成物以外は実施例1と同様にして包装材料(B)を得た。
【0042】
<比較例2>
(酸素インジケーター層インキ組成)
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・1.75重量部
アスコルビン酸・・・・・・・・・・・・・10.53重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・24.56重量部
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・42.11重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21.05重量部
上記組成のインキ組成物以外は実施例1と同様にして包装材料(B)を得た。
【0043】
<実験1>
実施例1〜4、及び比較例1、2で得た包装材料(B)をボイル処理(60℃−30min、80℃−30min)及びレトルト処理(121℃−10min、121℃−30min)を行い、酸素インジケーター(3)の色調の観察、およびボイル処理(60℃−30min)及びレトルト処理(121℃−30min)におけるL値の変化を測定した。その結果を表1と図2、3に示す。
【0044】
【表1】

表1は、酸素インジケーターの色調を観察した結果を記す。
【0045】
<実験2>
実施例1〜4、及び比較例1、2で得た酸素インジケーター3が図1(a)に示すように、(A)の部分に配置されている包装材料(B)を、簡易包装して、3ヶ月間室温にて保存した。その後、酸素吸収剤(8)を入れ窒素置換してから同様に製袋して、121℃、30minのレトルト処理を行い、酸素インジケーター(3)の色調の観察とL値の変化を測定した。その結果を表2と図4に示す。
【0046】
【表2】

表2は、酸素インジケーターの色調を観察した結果を記す。
【0047】
<実験結果>
表1と図2より、熱処理の温度が低い場合であっても、金属触媒を添加した実施例3及び実施例4では、速やかに透明、或いは白色へ変化した。その他の構成では完全に還元されず、色素の青色が残った。
【0048】
表1と図3より、レトルト処理を施すとすべての構成で還元色を示した。しかしながら、比較例2では還元色を維持できなかった。これは高温滅菌処理により還元剤が劣化した結果であると考察した。
【0049】
表2と図4より、実施例1〜4では脱酸素包装を行わない場合でも酸素インジケーターインキが劣化することはなく、レトルト処理においてサンプル作成直後の能力をほぼ維持していることが確認された。 これに対して、比較例1、2は3ヶ月間の保管中に大気中の酸素により還元剤が消費され、レトルト処理を施した場合も還元されず、青色から透明、白色へ変色しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1(a)は本発明に係る酸素インジケーターを含有する包装材料で作製した包装体の1実施例を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)における酸素インジケーターを配置した部分の包装材料の層構成を示す拡大側断面図である。
【図2】本発明に係る酸素インジケーターを含有する包装材料のボイル処理時のL値変化を示すグラフである。
【図3】本発明に係る酸素インジケーターを含有する包装材料のレトルト処理時のL値変化を示すグラフである。
【図4】本発明に係る酸素インジケーターを含有する包装材料で作製した包装体の3ヶ月保管後のレトルト処理時のL値変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1・・・ポリエステルフィルム(支持体)
2・・・酸素インジケーター層
3・・・酸素インジケーター
4・・・アルミナ蒸着フィルム
5・・・シーラントフィルム
6・・・接着剤層
7・・・接着剤層
8・・・酸素吸収剤
A・・・酸素インジケーターを配置した部分
B・・・包装材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温滅菌処理時に色調が酸化色から還元色へ変化することを特徴とする酸素インジケーター用インキ組成物。
【請求項2】
前記酸素インジケーター用インキ組成物に含まれる還元剤が室温では安定で、高温滅菌処理を施した場合に酸化還元色素を還元することができる温和な還元剤であることを特徴とする請求項1記載の酸素インジケーター用インキ組成物。
【請求項3】
前記温和な還元剤が、アミン類、還元糖類、あるいは高級アルコール類や多価アルコール類であることを特徴とする請求項1又は2記載の酸素インジケーター用インキ組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のインキ組成物に、還元反応を促進させる金属触媒を添加したことを特徴とする酸素インジケーター用インキ組成物。
【請求項5】
前記金属触媒が、熱的に安定な遷移金属錯体であることを特徴とする請求項4記載の酸素インジケーター用インキ組成物。
【請求項6】
前記金属触媒の濃度が、酸化還元色素1重量部に対して20重量部以下であることを特徴とする請求項4又は5記載の酸素インジケーター用インキ組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のインキ組成物を支持体上へ塗布、あるいは印刷することで得られることを特徴とする酸素インジケーター。
【請求項8】
前記支持体が、包装体を形成する外装体としたことを特徴とする請求項7記載の酸素インジケーターを含有する包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−187644(P2007−187644A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36249(P2006−36249)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】