説明

酸素インジケータ付脱酸素包装体

【課題】酸素インジケータの配置方法を工夫することによって、製品単体で内部の脱酸素状態を容易に確認できる酸素インジケータ付脱酸素包装体を提供する。
【解決手段】少なくとも酸素非透過性基材、酸素インジケータ層、熱融着層の順に積層された積層フィルムによって得られた酸素インジケータ付脱酸素包装体1であって、酸素インジケータ層3が、包装体を形成するためのシール部2よりも内側に少なくとも1箇所、更にはシール部あるいはシール部より外側に少なくとも1箇所配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料、及び薬品等を長期間保存するための脱酸素剤による脱酸素状態が保持されていることを検出するための酸素インジケータ付脱酸素包装体に関する。特に、内部の脱酸素状態を、製品が置かれている環境や測定者によらず、色見本等を用いずにより確実に確認できる酸素インジケータ付脱酸素包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱酸素剤を封入した脱酸素包装のピンホール、シール不良、及び脱酸素剤不良の発生によるガス雰囲気の変化を簡単に確認し得る種種の酸素インジケータが上市されている。酸素インジケータは、構成成分として酸化還元指示薬、還元剤、バインダ樹脂が主であり、この組み合わせを変えた酸素インジケータが知られている。酸素インジケータは、酸化還元指示薬が、還元型と酸化型で異なる色調を呈する性質を利用している。酸素インジケータは、周囲雰囲気中の酸素が十分に存在すると、酸素が還元剤の働きを抑制して酸化還元指示薬が酸化型構造を取るが、脱酸素剤の働きにより酸素が周囲雰囲気中に存在しなくなると、還元剤が働き、酸化還元指示薬は還元型構造となる。この色調の変化を利用して、周囲雰囲気の酸素濃度の変化を視覚的に検知することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
酸化還元指示薬を用いた酸素インジケータでは、三菱ガス化学社製のエージレスアイやエージレスアイペーパーを始めとした錠剤型・ラベル型のものや、印刷型のものが使用されている。しかしながら、このようなインジケータは、脱酸素時の色調と酸化時の色調の間に中間色が存在し、変色が時間経過に従って中間色を経由して無段階的に進むこと、インジケータが置かれている環境における光の加減や背景色によって、脱酸素色でも中間色に見えてしまったりして、判別しづらい場合が生じる。そうした場合、充填工場での充填包装後、インジケータが完全に無酸素色となったかどうかや、製品として使用される場合には、判定に困難を来たすことも考えられる。以上から、脱酸素包装体においては、脱酸素包装される場合、製品が置かれている環境や測定者によらず、また色見本等を用いずに、製品単体で簡便に脱酸素状態を確認できるものが望まれていた。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、酸素インジケータの配置方法を工夫することによって、製品単体で内部の脱酸素状態を容易に確認できる酸素インジケータ付脱酸素包装体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の第1の発明は、少なくとも酸素非透過性基材、酸素インジケータ層、熱融着層の順に積層された積層フィルムによって得られた酸素インジケータ付脱酸素包装体において、前記酸素インジケータ層が、包装体を形成するためのシール部よりも内側に少なくとも1箇所、更にはシール部あるいはシール部より外側に少なくとも1箇所配置されたことを特徴とする酸素インジケータ付脱酸素包装体である。
【0006】
そして、本発明の第2の発明は、少なくとも酸素非透過性基材、酸素インジケータ層、熱融着層の順に積層された積層フィルムによって得られた酸素インジケータ付脱酸素包装体において、色印刷層の色調が、酸素非透過性基材の一部に形成された酸素インジケータ層の無酸素色と有酸素色のうちのいずれか一方と一致していると視認できることを特徴とする酸素インジケータ付脱酸素包装体である。
【発明の効果】
【0007】
少なくとも酸素非透過性基材、酸素インジケータ層、熱融着層の順に積層された積層フィルムによって得られた酸素インジケータつき脱酸素包装体において、酸素インジケータ層が、包装体を形成するためのシール部よりも内側に少なくとも1箇所、更にはシール部あるいはシール部より外側に少なくとも1箇所配置されたことを特徴とする印刷型酸素インジケータの配置方法を用いることにより、環境や測定者によらず、色見本等を用いずに確実に製品単体で内部の脱酸素状態を容易に確認できる酸素インジケータ付き脱酸素包装体を開発した。また、無酸素色あるいは有酸素色と一致する色印刷層を形成させることにより、環境や測定者によらず、色見本等を用いずに確実に製品単体で内部の脱酸素状態を容易に確認できる酸素インジケータ付脱酸素包装体を開発した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明の酸素インジケータ付脱酸素包装体の実施の形態について具体的に説明する。
【0009】
まず、酸素インジケータの構成成分である酸化還元指示薬としては、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、ニュートラルレッド、インジゴカルミン、アシッドレッド、サフラニンT、フェノサフラニン、カプリブルー、ナイルブルー、ジフェニルアミン、キシレンシアノール、ニトロジフェニルアミン、フェロイン、N−フェニルアントラニル酸等が使用できる。
【0010】
還元剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸、エリソルビン酸塩や、D−アラビノース、D−エリスロース、D−ガラクトース、D−キシロース、D−グルコース、D−マンノース、D−フラクトース、D−ラクトース等の還元糖、第一錫塩、第一鉄塩等の金属塩等が使用可能である。
【0011】
バインダー樹脂は、pH指示薬等の構成成分を支持体上に固着するために使用するもので、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられる。
【0012】
なお、多価アルコールは、保湿剤として作用し、指示部となるインキ層中に水等の溶媒を保持して、pH指示薬の呈色反応を促進させることができるため、必要に応じて添加可能である。多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。より好ましくはグリセリンを使用することができる。
【0013】
溶媒としては、本発明のインキ組成物の各成分を均一にかつ安定に溶解または分散することのできるものが選択され、エーテル類、芳香族炭化水素、エステル類、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。特に、アルコール類が好ましい。また、色素、アルカリ性物質等を溶解させてインキ組成物とし、且つインジケーターとしての良好な発色を得るためには、水が含まれることが好ましい。
【0014】
また、酸素インジケータ層を保護し、外観不良、剥離、及び破断を防止する目的で、アンカーコート層、オーバーコート層を設けることが出来る。このアンカーコート層としては、非水溶性であり、基材とその上に形成される酸素インジケータ層との密着性が良好な材料を、オーバーコート層としては、酸素透過性、酸素インジケータ層との密着性、及び任意に酸素インジケータ層上に更に設けられ得る接着剤層または他の樹脂層との良好な密着性を有する材料を好ましく使用することが出来る。アンカーコート層、及び/またはオーバーコート層は、必要に応じて2層以上設けることも出来る。
【0015】
基材としては、酸素インジケータと反応せず、しかも試薬の呈色を阻害しないものがよい。このような基材として、例えば紙、合成紙、不織布または合成樹脂フィルム、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セロハン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びこれらのシリカ、アルミナなどの透明蒸着フィルム等を目的、使用形態に合わせて用いることができる。基材は単層でも複層でも良い。これらの基材を用いた酸素非透過性基材は、30℃70%RHにおける酸素透過度が20cc/m2 ・atm・day以下である。
【0016】
基材への酸素インジケータの積層方法としては、印刷法例えばスクリーン印刷法、凹版印刷法、およびグラビア印刷法等や、コーティング法例えばロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング等が好適に使用される。
【0017】
基材に印刷された酸素インジケータ層に積層される熱融着層の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が使用できる。熱融着層は単層でも多層でも良く、多層の場合は、その層の材質は複数種でも良い。
【0018】
次に、酸素インジケータ層の配置方法について説明する。図1は、四方シールによる酸素インジケータ付脱酸素包装体1であり、シール部2より内側に一箇所、シール部2より外側に一箇所酸素インジケータ層3,3を配置している。シール部より内側の酸素インジケータ層は、脱酸素包装されているため無酸素色を示し、シール部より外側の酸素インジケータは、大気開放状態にあるため有酸素色を示す。
【0019】
図2も、図1同様に四方シールによる酸素インジケータ付脱酸素包装体1であり、シール部2より内側に一箇所、シール部2に一箇所酸素インジケータ層3,3を配置している。シール部より内側の酸素インジケータ層は、脱酸素包装されているため無酸素色、シール部の酸素インジケータ層は、大気開放状態にあるわけではないが、大気下でシールされ、且つ、内部の脱酸素の影響を受けないようにシール部の中でも外側に配置することにより、有酸素色を示す。このような配置方法を用いることにより、例えば、大気下で脱酸素剤、内容物を充填包装した場合、充填直後はシール部より内側の酸素インジケータ層の色調は有酸素色であるが、シール部あるいはシール部より外側(常に有酸素色を示している)の酸素インジケータ層の色調と随時比べることにより、包装体内部が脱酸素状態に到達したかを確認することができる。また、製品として保管している間や使用する直前にも、色見本等を参照せずとも、製品単体で比色による色調確認ができる。
【0020】
なお、包装形態については、脱酸素包装体であれば四方シール袋に限らず、ピロー包装等、公知の方式を適用可能である。
【0021】
また、酸素インジケータ層に加えて色印刷層を形成させる場合については、図4又は図5に示すように、酸素インジケータ層3の無酸素色、有酸素色のいずれか一方と一致するような色印刷層を配置すれば、より確実に色調確認が可能となる。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明の酸素インジケータ付脱酸素包装体に係わる具体的実施例について説明する。
【0023】
<実施例1>
金属酸化物を蒸着したポリエステルフィルム12ミクロンの片側にアンカーコート層、インジケータ層、オーバーコート層をグラビア印刷法により順次積層させ、更に2液硬化型ウレタン系接着剤を介してポリエチレンフィルム60ミクロンを積層させた。得られた
積層フィルムを用いて、内容物として100ml蒸留水入りバッグと空気1000cc用の鉄系脱酸素剤を充填し、図1のような四方シール袋の実施例1の酸素インジケータ付脱酸素包装体を作製した。なお、酸素インジケータ層組成は、メチレンブルー3重量部、L−アスコルビン酸7.5重量部、ポリウレタン樹脂10重量部、グリセリン7.5重量部、赤色色素106号 0.1重量部であり、アンカーコート層、オーバーコート層組成は、白顔料10重量部、ウレタン樹脂15重量部である。
【0024】
<実施例2>
積層フィルムは実施例1と同様とし、内容物として100ml蒸留水入りバッグと空気1000cc用の鉄系脱酸素剤を充填し、図2のような四方シール袋の実施例2の酸素インジケータ付脱酸素包装体を作製した。
【0025】
<実施例3>
積層フィルムは実施例1に加え、有酸素色と同じ青色を酸素インジケータ層と同時に積層させ、内容物として100ml蒸留水入りバッグと空気1000cc用の鉄系脱酸素剤を充填し、図3(表示部は図4)のような四方シール袋の実施例3の酸素インジケータ付脱酸素包装体を作製した。
【0026】
<実施例4>
積層フィルムは実施例1に加え、無酸素色と同じピンク色を酸素インジケータ層と同時に積層させ、内容物として100ml蒸留水入りバッグと空気1000cc用の鉄系脱酸素剤を充填し、図3(表示部は図5)のような四方シール袋の実施例4の酸素インジケータ付脱酸素包装体を作製した。
【0027】
<実施例5>
積層フィルムは実施例1と同様とし、内容物として100ml蒸留水入りバッグと空気1000cc用の鉄系脱酸素剤を充填し、図3のような四方シール袋の実施例5の酸素インジケータ付脱酸素包装体を作製した。色調変化の際の比色については、別途作成した色見本を参照することとした。
【0028】
<実施例6>
積層フィルムは実施例1と同様とし、内容物として100ml蒸留水入りバッグと空気1000cc用の鉄系脱酸素剤を充填し、図3のような四方シール袋の実施例6の酸素インジケータ付脱酸素包装体を作製した。色調変化の際の比色については、色見本等を参照せずに官能で行なった。
【0029】
<評価>
次に、得られた実施例1乃至6の6種類の酸素インジケータ付脱酸素包装体について、シール部より内側に配置された酸素インジケータの色調を経時にて観察し、還元速度を測定した。なお、確認するときには、透明袋をグレーの台紙上に置いた。還元速度は、実施例1、2については、測定者がシール部より内側にある酸素インジケータとシール部あるいはシール部より外側にある酸素インジケータを比較し、明確に色調が識別できると判断した日にちとした。実施例3、4については、測定者が、色印刷部の色調と酸素インジケータ部の色調を比較し、一致あるいは明確に識別できると判断した日にちとした。実施例5については、酸素インジケータの色調を、色見本を参照して、無酸素色と認められた日にちとした。実施例6については、比較材料を用いず、官能にて無酸素色と判断した日にちとした。その評価結果を図1に示す。
【0030】
【表1】

評価結果は、表1に示すように、本発明の配置方法を用いた実施例1、2、色印刷層を
積層させた実施例3、4、色見本を用いた実施例5については、いずれの測定者においても、同じ経過日数の段階で無酸素色になっているとの判断を下していた。それに比して、実施例6の官能評価においては、被験者間でのばらつきが大きく、色調が中間色を経て徐々に変化している最中では、色調の絶対評価として個人差が生じているものと考えられる。また、背景がグレーであるために視認性が通常より悪く、個人差が生じる一因と考えられる。
【0031】
以上のことから、少なくとも酸素非透過性基材、酸素インジケータ層、熱融着層の順に積層された積層フィルムによって得られた酸素インジケータ付脱酸素包装体において、酸素インジケータ層が、包装体を形成するためのシール部よりも内側に少なくとも1箇所、更にはシール部あるいはシール部より外側に少なくとも1箇所配置されたことを特徴とする印刷型酸素インジケータ層の配置方法を用いることにより、環境や測定者によらず、色見本等を用いずに確実に製品単体で内部の脱酸素状態を容易に確認できる包装体が提供可能となった。また、無酸素色あるいは有酸素色と一致する色印刷層を形成させることにより、環境や測定者によらず、色見本等を用いずに確実に製品単体で内部の脱酸素状態を容易に確認できる酸素インジケータ付脱酸素包装体が提供可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】四方シールによる酸素インジケータ付脱酸素包装体の酸素インジケータ層の一つの配置を示す説明図である。
【図2】四方シールによる酸素インジケータ付脱酸素包装体の酸素インジケータ層の他の配置を示す説明図である。
【図3】四方シールによる酸素インジケータ付脱酸素包装体の酸素インジケータ層の他の配置を示す説明図である。
【図4】酸素インジケータ層と色印刷層との一つの配置を示す説明図である。
【図5】酸素インジケータ層と色印刷層との他の配置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1……酸素インジケータ付脱酸素包装体
2……シール部
3……酸素インジケータ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸素非透過性基材、酸素インジケータ層、熱融着層の順に積層された積層フィルムによって得られた酸素インジケータ付脱酸素包装体において、前記酸素インジケータ層が、包装体を形成するためのシール部よりも内側に少なくとも1箇所、更にはシール部あるいはシール部より外側に少なくとも1箇所配置されたことを特徴とする酸素インジケータ付脱酸素包装体。
【請求項2】
少なくとも酸素非透過性基材、酸素インジケータ層、熱融着層の順に積層された積層フィルムによって得られた酸素インジケータ付脱酸素包装体において、酸素非透過性基材の一部に形成された色印刷層の色調が、前記酸素インジケータ層の無酸素色と有酸素色のうちのいずれか一方と一致していると視認できることを特徴とする酸素インジケータ付脱酸素包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−137617(P2009−137617A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315553(P2007−315553)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】