説明

酸素センサ

【課題】メタンガスが含まれる被測定ガスの酸素濃度を安定して測定することができる酸素センサを提供する。
【解決手段】酸素センサは、有底円筒形状のジルコニアセル50と、ジルコニアセル50のセル閉端部51の内面に設置されるとともに、基準ガスに接触する基準電極52と、ジルコニアセル50のセル閉端部51の外面に設置されるとともに、被測定ガスに接触する測定電極53と、ジルコニアセル50を覆う有底円筒形状の保護管60とを備える。保護管60のセル閉端部51の内面62には、測定電極53と当接する突部63が設けられている。また、保護管60には、測定電極53に被測定ガスを導入するとともに、測定電極53が露出した状態となる導入口64が設けられている。よって、被測定ガスが通過し易い位置に測定電極53が位置して、被測定ガスが滞留することなく測定電極53に供給されるので、被測定ガスの酸素濃度を安定して測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱処理炉等の内部の酸素濃度を測定するために用いる酸素センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱処理炉等においては、ジルコニア等の高温において酸素イオン伝導性のある固体電解質体を用いて、電気化学反応を利用した酸素濃淡電池の原理により、炉内雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を測定する酸素センサが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
固体電解質体を用いた酸素センサでは、一般に、有底円筒形状の固体電解質体の閉塞端部の内外両面に一対の白金電極を設ける。この酸素センサは、内側の白金電極を標準ガスとしての大気に接触させて基準電極とするとともに、外側の白金電極を被測定ガスである炉内雰囲気中に接触させて測定電極とする。そして、酸素センサは、これら電極間の酸素分圧の差に基づく起電力を検出することにより、被測定ガスの酸素濃度を測定する。
【0004】
また、このような酸素センサは、固体電解質体や電極、リード線等を保護するため、これらを収容する金属材料やセラミック材料等で形成された有底円筒形状の外筒管を備えている。酸素センサの測定電極は固定電解質体の先端部と外筒管の閉端部の内面との間で狭圧される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−294330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の酸素センサでは、炭酸バリウムが担持されたセラミックボールを大量に被測定電極の近傍に設置することで、白金の触媒作用によって被測定ガス中に含まれる炭化水素ガス、例えばメタンガスが分解されて酸素濃度が低下することを抑制している。
【0007】
しかしながら、上記の酸素センサは、測定電極がセラミックボールに覆われているので、被測定ガスはセラミックボールの隙間を通過して測定電極に接触することとなる。このため、被測定ガスが測定電極の周りで滞留することとなり、メタンガスが分解して測定電極に微細な炭素析出が起こるおそれがあった。そして、測定電極に炭素析出が起こると起電力が安定せず、また経時的に炭素析出が起こると測定電極からの出力がドリフトして測定結果が安定しなかった。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、メタンガスが含まれる被測定ガスの酸素濃度を安定して測定することができる酸素センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、有底円筒形状の固体電解質体と、当該固体電解質体の閉端部の内外両面に対向する一対の電極と、前記固体電解質体を収容するとともに、被測定ガスの導入口を有する有底円筒形状の外筒管とを備え、前記閉端部の内面の電極が基準ガスに接触する基準電極として機能し、前記閉端部の外面の電極が前記被測定ガスに接触する測定電極として機能し、前記閉端部の外面と前記外筒管の閉端部の内面とによって前記測定電極を狭圧する酸素センサにおいて、前記固体電解質体の閉端部及び前記測定電極が露出するように前記外筒管に前記導入口を形成したことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、固体電解質体の先端である閉端部及び測定電極が外筒管の導入口において露出、言い換えれば見える状態に外筒管に導入口が形成されるので、被測定ガスが測定電極に容易に接触させることができるとともに、測定電極の周囲に滞留することを抑制できる。よって、被測定ガスに含まれるメタンガスが分解することによる炭素析出が抑制されるので、測定電極が劣化することがなく、測定結果を安定させることが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の酸素センサにおいて、前記外筒管の閉端部の内面に前記測定電極側へ突出する突部を設け、前記突部と前記閉端部の外面とによって前記測定電極を狭圧することをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、外筒管の閉端部の内面に突部を設けたので、測定電極を閉端部の内面から離れた位置に設置することが可能となる。このため、被測定ガスが滞留する可能性がある外筒管の閉端部の内面から測定電極が離れるので、測定電極の周囲に被測定ガスが滞留することを更に抑制することができる。よって、測定結果を更に安定させることが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の酸素センサにおいて、前記測定電極は、前記閉端部の外面に設置される主測定電極と該主測定電極の外面に設置される補助測定電極とを備え、前記補助測定電極を前記主測定電極よりも大きく形成したことをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、主測定電極よりも外側に位置し、主測定電極よりも大きく形成した補助測定電極が触媒部材となり被測定ガスに含まれるメタンガスを主測定電極に到達する前に分解する。よって、測定結果を更に安定させることが可能である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸素センサにおいて、前記外筒管の先端には、外面から内面へ貫通する貫通孔を形成したことをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、外筒管の先端に貫通孔を形成したので、外筒管内に流入する被測定ガスを更に増やすことが可能となる。このため、外筒管内に被測定ガスの流れを作ることができ、測定電極の周囲に被測定ガスが滞留することを更に抑制することができる。よって、測定結果を更に安定させることが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素センサにおいて、前記外筒管の内面及び外面の少なくとも一方に触媒部材を設けたことをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、外筒管内に被測定ガスが進入する際に、触媒部材が被測定ガスに含まれるメタンガスを分解するので、測定結果を安定させることが可能である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸素センサにおいて、前記固体電解質体は、センサ本体に対して気密構造の気密ケースを介して取り付けたことをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、固体電解質体が酸素センサの本体に気密構造の気密ケースを介して取り付けられるので、固体電解質体にクラックが発生した際に、酸素センサが設置された炉内に酸素センサから流入する基準ガスを気密ケースの体積分に抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、メタンガスが含まれる被測定ガスの酸素濃度を安定して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】酸素センサの全体断面図。
【図2】酸素センサの先端断面図。
【図3】(a)酸素センサの先端側面図、(b)酸素センサの先端正面図。
【図4】酸素センサの先端断面図。
【図5】酸素センサの先端断面図。
【図6】酸素センサの先端断面図。
【図7】酸素センサの先端断面図。
【図8】酸素センサの先端断面図。
【図9】酸素センサの先端断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
図1に示されるように、酸素センサ1は、基端側から順に、図示しない測定器等に接続するためのコネクタ10と、同コネクタ10と接続される円筒形状のケース20とを備えている。そして、酸素センサ1は、ケース20に接続されるとともに、有底円筒形状のジルコニアセル50を保持する円筒形状のセル保持部材40と、同ジルコニアセル50を覆う円筒形状の保護管60とを備えている。なお、ケース20とセル保持部材40とが気密ケースとして機能する。また、保護管60が外筒管に相当する。
【0023】
コネクタ10は、フランジと一体に形成されたコネクタフランジ11に設けられている。コネクタ10の内面には、気密構造であるハーメチックシール12を介して複数の接続端子13が設けられている。接続端子13のケース20側には、リード線33が接続されている。一方、ケース20の基端外面には、コネクタフランジ11と接続されるケース接続フランジ21が溶接によって密着固定されている。コネクタフランジ11とケース接続フランジ21とは、ボルト22によって締結されている。コネクタフランジ11とケース接続フランジ21との間にメタルパッキン14が挟まれることで、コネクタフランジ11とケース接続フランジ21との間は気密構造となっている。なお、メタルパッキン14に限らず、Oリング等を採用してもよい。
【0024】
ケース20の側面には、基準ガスとしての大気を供給する円筒形状の供給路2と、センサ内に供給された大気を排出する円筒形状の排出路3とが側面に対して垂直に突出した状態で溶接によって密着固定されている。これら供給路2と排出路3との基端には、ガス流を止める手段として図示しない電磁弁が設けられている。
【0025】
ケース20の先端外面には、ケース20とセル保持部材40と密着させるためのケース接続フランジ23が溶接によって密着固定されている。一方、セル保持部材40の基端外面には、ケース接続フランジ23と接続される気密保持フランジ25が溶接によって密着固定されている。気密保持フランジ25のケース接続フランジ23に対向する面には、Oリング24を保持するリング溝26が形成されている。ケース接続フランジ23と気密保持フランジ25とは、リング溝26にOリング24が設置された状態でボルト27とナット28とによって締結されている。ケース接続フランジ23と気密保持フランジ25とは、Oリング24によって気密構造となっている。
【0026】
セル保持部材40の先端には、凹部41が形成されるとともに、同凹部41の内面に保護管60の基端外面が溶接によって密着固定されている。保護管60の外面には、酸素センサ1を熱処理炉に取り付ける際に、熱処理炉の炉壁に取り付ける炉取付フランジ66が溶接によって密着固定されている。
【0027】
セル保持部材40の基端内面には、ケース20の内部に延出する円筒形状のアダプタ30の先端外面が接続固定されている。セル保持部材40及びアダプタ30は、導電性の金属材料で形成されている。アダプタ30の内部には、供給路2からジルコニアセル50の閉端部内面まで延出して、基準ガスをジルコニアセル50の先端内部に送る基準エア管31が設けられている。ここで、基準エア管31によってジルコニアセル50の先端内部に供給された基準ガスは、ジルコニアセル50内を基端側へ排出されて、続いてアダプタ30及び取付金具34内を通過してケース20内に排出され、排出路3から外部へ排出される。
【0028】
アダプタ30の内部には、基準エア管31を連結支持するエア管連結部材32がアダプタ30の内壁に沿って摺動可能に嵌装されている。アダプタ30の基端内面には、コネクタ10に接続されたリード線33が取り付けられる導電性の金属材料からなる取付金具34が接続固定されている。取付金具34とエア管連結部材32との間には、基準エア管31をジルコニアセル50側へ付勢する付勢ばね35が設置されている。この付勢ばね35の付勢力によって基準エア管31の先端がジルコニアセル50の閉端部内面に当接されている。なお、ジルコニアセル50が固体電解質体として機能する。
【0029】
また、セル保持部材40の内部には、ジルコニアセル50を嵌装する保持空間42が形成されている。この保持空間42には、ジルコニアセル50の基端側が嵌装されるとともに、3個のバックアップリング43と2個のOリング44とが交互に設置されている。なお、セル保持部材40とジルコニアセル50との間は、バックアップリング43とOリング44とによって気密構造となっている。アダプタ30の先端内面には、ジルコニアセル50を保護管60の閉端部61側へ付勢して抑えるセル抑え部材36がアダプタ30の内壁に沿って摺動可能に嵌装されている。アダプタ30の基端側内面には、セル抑え部材36を先端側へ付勢するセル付勢ばね37を支持するばね取付突部38が全周に亘って形成されている。そして、このばね取付突部38とセル抑え部材36との間には、ジルコニアセル50を保護管60の閉端部61側へ付勢するセル付勢ばね37が設置されている。このセル付勢ばね37の付勢力によってジルコニアセル50の先端が保護管60の閉端部61内面に当接されている。
【0030】
ここで、ジルコニアセル50の先端側のセル閉端部51の内外両面には、対向する一対の電極が設置されている。すなわち、セル閉端部51の内面には、基準ガスに晒される白金からなる基準電極52が塗布されている。この基準電極52には、基準エア管31内に挿入されて、ジルコニアセル50のセル閉端部51の内面に配線されたリード線33が接続されている。一方、セル閉端部51の外面には、被測定ガスに晒される白金からなる測定電極53が形成されている。この測定電極53は、リード線33が取り付けられた取付金具34、アダプタ30、セル保持部材40、及び保護管60を介して通電される。
【0031】
図2に示されるように、ジルコニアセル50のセル閉端部51の内面に設置される基準電極52は、白金のペーストをμmオーダで貼り付けた白金ペースト52aからなる。また、ジルコニアセル50のセル閉端部51の外面に設置される測定電極53は、セル閉端部51の外面に貼り付けられる主測定電極53aと、この主測定電極53aに貼り付けられる補助測定電極53bとを備えている。主測定電極53aは、被測定ガスの濃度測定を行う。また、補助測定電極53bは、後述する突部63と主測定電極53aとの接触安定性の向上のために設けられている。主測定電極53aは、白金のペーストをμmオーダで貼り付けた白金ペーストである。補助測定電極53bは、主測定電極53aの外面にメッシュ状の白金を貼り付けた白金メッシュである。
【0032】
保護管60の閉端部61の内面62には、保護管60の基端側、言い換えればジルコニアセル50側へ突出する半球状の突部63が設けられている。この突部63には、セル付勢ばね37によって突部63側へ付勢されたジルコニアセル50の先端、言い換えれば測定電極53が押し付けられる。よって、測定電極53と突部63とは点接触に近い状態となり、測定電極53がジルコニアセル50のセル閉端部51の外面と突部63とによって、しっかりと狭圧されている。
【0033】
図3(a)に併せて示されるように、保護管60の閉端部61側の側面には、被測定ガスを保護管60内に導入する2個の導入口64が対向して設けられている。これら導入口64の基端側端面64aは測定電極53の位置よりも基端側に位置するとともに、これら導入口64の閉端部側端面64bは測定電極53の位置よりも閉端部61側に位置している。すなわち、導入口64を介して保護管60内を覗くと、測定電極53が十分見える露出した状態となっている。また、これら導入口64のセル閉端部51の閉端部側端面64bと閉端部61の内面62とは同じ位置に設定されており、被測定ガスが滞留し難くなっている。
【0034】
また、図3(b)に併せて示されるように、保護管60の閉端部61には、先端から保護管60内に貫通する貫通孔65が4個設けられている。これら貫通孔65は、突部63の周囲に突部63を囲んで配置されている。よって、被測定ガスが測定電極53に十分に導入されて、被測定ガスが測定電極53の周囲に滞留することを抑制することができる。
【0035】
次に、前述のように構成された酸素センサ1の動作について説明する。
酸素センサ1は、保護管60に設けられた導入口64及び貫通孔65を介して熱処理炉内の被測定ガスが保護管60内に導入されて、ジルコニアセル50の先端と突部63との間に介挿された測定電極53が被測定ガスに接触する。また、ジルコニアセル50のセル閉端部51内面に設けられた基準電極52が基準エア管31によって供給された基準ガスに接触する。なお、供給路2及び排出路3の電磁弁が開くと、基準エア管31、ひいてはジルコニアセル50内に基準ガスが供給される。そして、基準ガスに接触する基準電極52と被測定ガスに接触する測定電極53との間の酸素分圧の差に基づいて起電力が発生することにより、被測定ガスの酸素濃度を測定する。
【0036】
さて、本実施形態の酸素センサ1の保護管60には、突部63が設けられ、測定電極53が閉端部61の内面62から遠ざけられているので、被測定ガスが通過し易い位置に測定電極53が設置される。また、保護管60には、測定電極53が露出した状態に導入口64が設けられるとともに、閉端部61の先端から内部に貫通する貫通孔65が設けられるので、被測定ガスを滞留させることなく、測定電極53に供給させることができる。このため、測定電極53の周囲に被測定ガスが滞留することによって起きる炭化水素ガスの分解、ひいてはメタンガスの炭素析出が抑制され、起電力を安定させることができる。よって、被測定ガスの酸素濃度を安定して測定することができる。
【0037】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ジルコニアセル50のセル閉端部51及び測定電極53が保護管60の導入口64において露出、言い換えれば見える状態に保護管60に導入口64が形成されるので、被測定ガスが測定電極53に容易に接触させることができるとともに、測定電極53の周囲に滞留することを抑制できる。よって、被測定ガスに含まれるメタンガスが分解することによる炭素析出が抑制されるので、測定電極53が劣化することがなく、測定結果(起電力)を安定させることができる。
【0038】
(2)保護管60の閉端部61の内面62に突部63を設けたので、測定電極53を閉端部61の内面62から離れた位置に設置することが可能となる。このため、被測定ガスが滞留する可能性がある閉端部61の内面62から測定電極53が離れるので、測定電極53の周囲に被測定ガスが滞留することを更に抑制することができる。よって、測定結果を更に安定させることが可能となる。
【0039】
(3)保護管60の先端に貫通孔65を形成したので、保護管60内に流入する被測定ガスを更に増やすことが可能となる。このため、保護管60内に被測定ガスの流れを作ることができ、測定電極53の周囲に被測定ガスが滞留することを更に抑制することができる。よって、測定結果を更に安定させることが可能となる。
【0040】
(4)ジルコニアセル50が酸素センサ1の本体に気密構造のケース20及びセル保持部材40を介して取り付けられるので、ジルコニアセル50にクラックが発生した際に、酸素センサ1が設置された炉内に酸素センサ1から流入する基準ガスをケース20の体積分に抑えることができる。
【0041】
(5)突部63を半球状にしてその先端で測定電極53を点接触にて挟持するので、測定電極53を確実に押圧することが可能となり、セル抵抗を安定させることができる。また、突部63を半球状にしたため挟持圧による応力破損を抑制できる。
【0042】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、補助測定電極53bの外径を主測定電極53aの円形よりも小さく形成したが、図4に示されるように、補助測定電極53bの外径を主測定電極53aの円形よりも大きく形成してもよい。同構成によれば、主測定電極53aよりも大きく形成した補助測定電極53bが触媒部材となり、被測定ガスに含まれるメタンガスを主測定電極に到達する前に分解するので、測定結果を安定させることができる。
【0043】
・また、図5に示されるように、補助測定電極53bをキャップ形状に形成してもよい。すなわち、補助測定電極53bの外径端部を、セル閉端部51を覆うように形成する。同構成によれば、補助測定電極53bがセル閉端部51を覆うので、主測定電極に到達する前に被測定ガスに含まれるメタンガスをより分解して、測定結果を安定させることができる。
【0044】
・上記構成において、図6及び図7に示されるように、保護管60の内面及び外面の一方に導入口64を覆うように白金メッシュ等よりなる触媒部材67を設けてもよい。すなわち、触媒部材67はガス経路の測定電極53の前段に設置されている。同構成によれば、導入口64から保護管60内に被測定ガスが進入する際に、触媒部材67が主測定電極に到達する前に被測定ガスに含まれるメタンガスを分解するので、測定結果を安定させることができる。また、図6及び図7に示されるように、保護管60の内面及び外面の一方に導入口64を覆うように白金メッシュ等よりなる触媒部材67を設けたが、内面と外面の両方に設けても良い。同構成によれば、メタンガスを一層分解するので、測定結果を更に安定させることができる。
【0045】
・また、図8に示されるように、保護管60の内面に触媒部材67は白金等を塗布した繊維体や他の担持体を用いてもよい。同構成によれば、繊維体の隙間はメッシュよりも狭いので、被測定ガスとの接触をより増加させることができる。
【0046】
・また、図6及び図8において、保護管60の閉端部61に貫通孔65が設けられた場合、保護管60の内面に貫通孔65を覆うように白金メッシュや白金等を塗布した繊維体や他の担持体よりなる触媒部材67を設けてもよい。同構成によれば、導入口64や貫通孔65から保護管60内に被測定ガスが進入する際に、触媒部材67が主測定電極に到達する前に被測定ガスに含まれるメタンガスを分解するので、測定結果を一層安定させることができる。
【0047】
・上記構成において、触媒部材67は、ジルコニアセル50や保護管60の全周に亘って形成したが、一対の導入口64に対応させてそれぞれ設けてもよい。
・上記構成において、白金に代えて、白金合金を用いてもよい。
【0048】
・保護管60の閉端部61の内面62には、保護管60の基端側へ突出する半球状の突部63を一体に設けるようにしたが、突部63を別体に形成し保護管60の基端側へ突出するように設置してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、突部63を半球状としたが、図9に示されるように、突部63を円錐状としてもよい。すなわち、測定電極を点接触にて挟持することができる形状であれば円柱状、角柱状、角錐状等でも良い。
【0050】
・上記実施形態では、セル閉端部51の内面に白金を塗布して基準電極52としたが、白金メッシュ、白金板、又は白金泊等を挟圧保持して基準電極としてもよい。
・上記実施形態では、測定電極53を白金ペーストからなる主測定電極53aと白金メッシュからなる補助測定電極53bとから構成したが、白金ペーストからなる主測定電極53aとディスク状の白金ディスクからなる補助測定電極53bとから構成してもよい。また、測定電極53は、セル抵抗を安定させることができる構成であれば、これに限らず採用してもよい。
【0051】
・上記実施形態では、保護管60に一対の導入口64を設けたが、測定電極53が露出状態となれば、1個のみ導入口64を設けてもよい。また、保護管60に3個以上の導入口64を設けてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、貫通孔65を断面円形状としたが、断面長円形状としてもよい。
・上記実施形態では、保護管60の閉端部61に貫通孔65を4個形成したが、1,2,3個又は、5個以上形成してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、保護管60の閉端部61に貫通孔65を形成したが、導入口64によって被測定ガスが保護管60内に十分導入されるならば、省略した構成を採用してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、気密構造であるケース20及びセル保持部材40を介してジルコニアセル50をセンサ本体に取り付けたが、ジルコニアセル50からの基準ガスの漏れを検知して基準ガスの供給を停止できる場合、大気と炉内との圧力差が小さく炉内への漏れが少ない場合、気密構造の必要のない場合等であれば、気密構造を省略してもよい。
【0055】
・上記実施形態では、供給路2と排出路3との基端にガス流を止める手段として図示しない電磁弁を設けたが、逆止弁、過流防止弁、手動バルブ等の何らかのガス流を止める手段が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0056】
1…酸素センサ、20…気密ケース、21,23…ケース接続フランジ、24…Oリング、25…気密保持フランジ、26…リング溝、30…アダプタ、31…基準エア管、32…エア管連結部材、33…リード線、34…取付金具、35…付勢ばね、36…セル抑え部材、37…セル付勢ばね、38…ばね取付突部、40…セル保持部材、41…凹部、42…保持空間、43…バックアップリング、44…Oリング、50…ジルコニアセル、51…セル閉端部、52…基準電極、53…測定電極、53a…主測定電極、53b…補助測定電極、60…保護管、61…閉端部、62…内面、63…突部、64…導入口、64a…基端側端面、64b…閉端部側端面、65…貫通孔、66…炉取付フランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒形状の固体電解質体と、当該固体電解質体の閉端部の内外両面に対向する一対の電極と、前記固体電解質体を収容するとともに、被測定ガスの導入口を有する有底円筒形状の外筒管とを備え、前記閉端部の内面の電極が基準ガスに接触する基準電極として機能し、前記閉端部の外面の電極が前記被測定ガスに接触する測定電極として機能し、前記閉端部の外面と前記外筒管の閉端部の内面とによって前記測定電極を狭圧する酸素センサにおいて、
前記固体電解質体の閉端部及び前記測定電極が露出するように前記外筒管に前記導入口を形成した
ことを特徴とする酸素センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の酸素センサにおいて、
前記外筒管の閉端部の内面に前記測定電極側へ突出する突部を設け、
前記突部と前記閉端部の外面とによって前記測定電極を狭圧する
ことを特徴とする酸素センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の酸素センサにおいて、
前記測定電極は、前記閉端部の外面に設置される主測定電極と該主測定電極の外面に設置される補助測定電極とを備え、
前記補助測定電極を前記主測定電極よりも大きく形成した
ことを特徴とする酸素センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸素センサにおいて、
前記外筒管の先端には、外面から内面へ貫通する貫通孔を形成した
ことを特徴とする酸素センサ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素センサにおいて、
前記外筒管の内面及び外面の少なくとも一方に触媒部材を設けた
ことを特徴とする酸素センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸素センサにおいて、
前記固体電解質体は、センサ本体に対して気密構造の気密ケースを介して取り付けた
ことを特徴とする酸素センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−42458(P2012−42458A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153973(P2011−153973)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】