説明

酸素ポンプ素子及びこれを有する酸素供給装置

【課題】複数の固体電解質を介して両側に区分された空間を十分にガスシールするとともに、酸素ポンプ素子の急激な熱衝撃に対しても連結された金属箔部材同士を安定して結合させることを目的とする。
【解決手段】複数の酸素イオン伝導性の固体電解質7と、酸素イオン伝導性の固体電解質7の両面に形成された正負両極を構成する電極膜8、9と、前記正極側の電極膜外周部あるいは負極側の電極膜外周部と接合された金属箔部材15とを備え、複数の前記酸素ポンプ素子の電極は直列回路に構成され、複数の金属箔部材15はガラスセラミック層24を介して連結されている酸素ポンプ素子とする。これにより、複数個が直列回路に連結された場合にも十分な絶縁を維持するとともに急激な熱衝撃に対してもクラックあるいは剥離を生じることなくガスシールを維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素イオン伝導性の固体電解質を用いた酸素ポンプ素子とその素子を搭載した酸素供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の酸素ポンプは複数枚の酸素イオン導電性基板を同時に使用する場合、同じ面側の電極膜をリード線等で電気的に接続し、電源電圧を並列に印加するものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は特許文献1に記載された酸素ポンプの平面図であり、図7は酸素ポンプの断面図である。25枚の酸素イオン導電性基板1が図示され、支持部材2に固定されている。それぞれの電極膜3の周縁部からリード線4が引き出されて集結し、配線に同電位の状態で接続されている。配線からはリード線5が引き出され、電源の一方の極に接続されている。また裏面からは同様にして引き出されたリード6線が、電源のもう一方の極に接続されている。
【特許文献1】特開平8−527485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、複数個の酸素イオン導電性基板が並列に接続されているため、各リード線が集結したリード線には大きな電流が流れることになる。したがって、十分太いリード線や電気抵抗の小さな特別なリード線を使う必要があるという課題を有していた。また、接続部やスイッチ部などの抵抗が小さい部分では、発熱することもある。さらに、例えば家庭での実使用を考慮した場合、数十ボルトの電圧よりも数十アンペアの電流の方が、電源回路の構成が複雑になる(高コスト)という課題もあった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するのもので、低電流型の酸素ポンプを提供するとともに、固体電解質を介して両側に存する空間を十分にガスシールし、酸素ポンプ素子の急激な熱衝撃に対してもクラックあるいは剥離を生じることなく追随できる酸素ポンプ素子及びこれを有する酸素供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の酸素ポンプ素子は、複数の酸素イオン伝導性の固体電解質と、前記酸素イオン伝導性の固体電解質の両面に形成された正負両極を構成する電極膜と、前記正極側の電極膜外周部あるいは負極側の電極膜外周部と接合された金属箔部材とを備え、複数の前記酸素ポンプ素子の電極は直列回路に構成され、複数の前記金属箔部材はガラスセラミック層を介して連結される構成としたものである。
【0007】
これによって、複数の固体電解質を介して両側に区分された空間を十分にガスシールするとともに、酸素ポンプ素子の急激な熱衝撃に対しても連結された金属箔部材同士からのクラックあるいは剥離を生じることはない。
【0008】
また、前記酸素ポンプ素子と、直列回路に連結された前記酸素ポンプ素子に電圧を印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段を制御する電圧制御手段と、前記酸素ポンプ素子を加熱する加熱手段と、前記酸素ポンプ素子の温度を検知して前記加熱手段を制御する温度制御手段と、前記加熱手段および前記酸素ポンプ素子の熱拡散を防止する通気性の断熱手段と、前記酸素ポンプ素子を介して発生した酸素を空気と混合して所定酸素濃度の混合ガスにする混合手段とを備えたことを特徴とする酸素供給装置とすることにより、複数個の固体電解質が直列回路に連結された場合にも十分な絶縁性を維持するとともに急激な熱衝撃に対してもクラックあるいは剥離を生じることなくガスシール性を維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の酸素ポンプ素子は、複数個が直列回路に連結された場合にも十分な絶縁を維持するとともに急激な熱衝撃に対してもクラックあるいは剥離を生じることなくガスシールを維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、複数の酸素イオン伝導性の固体電解質と、前記酸素イオン伝導性の固体電解質の両面に形成された正負両極を構成する電極膜と、前記正極側の電極膜外周部あるいは負極側の電極膜外周部と接合された金属箔部材とを備え、複数の前記酸素ポンプ素子の電極は直列回路に構成され、複数の前記金属箔部材はガラスセラミック層を介して連結されていることにより、複数個が直列回路に連結された場合にも十分な絶縁性を維持するとともに急激な熱衝撃に対してもクラックあるいは剥離を生じることなく十分なガスシール性を維持することができる。
【0011】
第2の発明は、ガラスセラミック層がSiO2−B2O3−MgO−BaO系でアルカリ土類金属の酸化物を15〜25wt%含有し、アルカリ金属の酸化物を2wt%以下含有する結晶化ガラスであることにより、十分な耐熱性を有するとともに金属箔部材に対してもほぼ同等の熱膨張係数を有することができる。また結晶化ガラスで接合されるので酸素ポンプ素子による熱衝撃に対しても十分な耐久性を有することができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明におけるガラスセラミック層の熱膨張係数が、100〜120×10−7/℃であることにより、金属箔部材とほぼ同等な熱膨張係数を有しているので、実用に際しての過酷な熱衝撃からくる膨張収縮の歪に対しても対応することができる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜第3の発明の正極側あるいは負極側の電極膜外周部と接合された金属箔部材に対して、固体電解質が接する空間部を区画する区画手段として構成されることにより、必要な部品点数を増やすことなく、空間部を十分に区画できるとともに材質が薄い金属箔なので比熱も小さくすることができ、昇温および降温も短時間で行うことができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか一つの発明の固体電解質をランタンガレートとすることによって、ランタンガレートはランタンとガリウムを主成分としたペロブスカイト型複合金属酸化物であり、400℃以上で酸素イオン伝導性を有す。したがって酸素ポンプ素子の動作温度を600℃程度の比較的低温に保持することで十分な能力を得ることができるため、長期的にも酸素ポンプ素子の劣化を抑制できる。
【0015】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか一つの発明の前記電極膜と連結構造となる前記金属箔部材に対して、接合部分に導電膜層が形成されるとともに両側表面部分に前記導電膜層と連通する導電膜が所定幅形成されていることにより、酸素ポンプ素子として使用された場合、電極膜から導電膜へと大電流が流れるが、この時に発生する大きな熱量に対しても所定の幅を有した導電膜によって金属箔の酸化腐食を防御することができる。
【0016】
第7の発明は、特に、第1〜第5のいずれか一つの発明の前記電極膜と連結構造となる前記金属箔部材に対して接合部分に導電膜層が形成されるとともに片側表面部分に前記導電膜層と連通する導電膜が所定幅形成され、もう一方の表面部分にガラスセラミック膜が所定幅形成されていることにより、酸素ポンプ素子として使用された場合、電極膜から導電膜へと大電流が流れるが、この時に発生する大きな熱量に対しても所定の幅を有した導電膜によって金属箔の酸化腐食を防御することができる。また導電膜に比較すると安価で十分な機械的強度を有するので印刷パターンを工夫して曲げ強度をより向上させるような設計自由度を保持させることもできる。
【0017】
第8の発明は、特に、第6または第7のいずれか一つの発明の導電膜の幅あるいはガラスセラミック膜の幅を3〜7mmとすることによって、金属箔部材に形成された導電膜に大電流が流れることによって電極膜との接合部付近が局部的に高温になった場合にも酸化腐食を防御することができ、酸素ポンプ素子の長期安定性を向上させることができた。
【0018】
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか一つの発明の複数の酸素ポンプ素子と、直列回路に連結された前記酸素ポンプ素子に電圧を印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段を制御する電圧制御手段と、前記酸素ポンプ素子を加熱する加熱手段と、前記酸素ポンプ素子の温度を検知して前記加熱手段を制御する温度制御手段と、前記加熱手段および前記酸素ポンプ素子の熱拡散を防止する通気性の断熱手段と、前記酸素ポンプ素子を介して発生した酸素を空気と混合して所定酸素濃度の混合ガスにする混合手段とを備えた構成とすることにより、複数個の固体電解質が直列回路に連結された場合にも十分な絶縁性を維持するとともに急激な熱衝撃に対してもクラックあるいは剥離を生じることなくガスシール性を維持することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における酸素ポンプ素子となる固体電解質の断面構成図を示すものである。
【0021】
図1において、固体電解質7は置換型のランタンガレート(La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2)の焼結体を任意の厚さの平板状に成型したものであり、表面に正電極膜8と負電極膜9が酸素イオン伝導性を発現するように形成されている。ここでは固体電解質として寸法30×30mm、厚み100μmを想定して説明する。
【0022】
正電極膜8と負電極膜9には、導電性を有するペロブスカイト型複合酸化物を用いた。具体的には、Sm0.5Sr0.5CoOを有機溶剤であるセルロース系ビヒクルと混合したペーストを、スクリーン印刷により印刷膜を形成し、乾燥後、1100℃にて焼成することにより膜厚約15μmの多孔性を有した正負電極膜を形成した。
【0023】
更に、正電極膜8と負電極膜9の表面上には、Auの多孔性導電膜10、11を積層した。この場合、Auペーストを使い、スクリーン印刷により印刷膜を形成し、乾燥後、800℃にて焼成することにより膜厚約3μmの導電膜を形成した。導電膜10、11は、正負電極膜8、9間に電圧を印加した時の電位に対して固体電解質の面分布ムラを改善できる。
【0024】
図2は酸素ポンプ素子の概略構成図を示すものである。ここでは固体電解質が4個使用された酸素ポンプ素子について説明する。固体電解質7、12、13、14、金属箔部材15、16、17、18上に配置されている。個々の固体電解質は負電極膜側が導電性を有する金属箔部材と連結されている。金属箔部材としてはFe−20Cr−5Al、12μmを使用し、固体電解質の負電極膜面が露出するように開口部が設けられている。固体電解質7の正電極側は金属箔部材16と金箔部材19を介して連結され、固体電解質12の正電極側は金属箔部材17と金箔部材20を介して連結され、固体電解質13の正電極側は金属箔部材18と金箔部材21を介して連結され、金属箔部材15にはリード部22が結線され、固体電解質14にはリード部23が結線されている。個々の金属箔部材は絶縁状態で連結されているので、4個の固体電解質素子は電気回路的に直列関係で構成されている。
【0025】
図3には図2における酸素ポンプ素子のA−A’ラインに対する断面図である。図3では構造を簡略化して説明するために導電膜は図示していない。金属箔部材15と金属箔部材16はガラスセラミック層24を介して結合されている。
【0026】
固体電解質7の負電極膜面が露出するように開口部を有して配置された金属箔部材15の負電極膜面と接する周囲には導電膜25が幅5mmで形成されている。また金属箔部材15の負電極膜面と接しない周囲にも同じく導電膜26が幅5mmで形成されている。導電膜25、26はAgPdペーストを使用してスクリーン印刷により印刷膜を形成し、乾燥後、800℃にて焼成することにより膜厚約3μmの導電膜を形成した。ガラスセラミック層はSiO2−B2O3−MgO−BaO系でアルカリ土類金属の酸化物を20wt%含有し、アルカリ金属の酸化物を0.5wt%含有するガラスペーストを自動吐出装置で金属箔部材の間に吐出させた後、乾燥、800℃にて焼成することにより形成させた。焼成後に形成されるガラスセラミック層の熱膨張係数は110×10−7/℃であり、金属箔部材Fe−20Cr−5Alの熱膨張係数は115×10−7/℃である。
【0027】
固体電解質12の負電極膜面27が露出するように開口部を有して配置された金属箔部材16の負電極膜面と接する周囲には導電膜28が幅5mmで形成されている。また金属箔部材16の負電極膜面と接しない周囲にも同じく導電膜29が幅5mmで形成されている。固体電解質7の正電極膜側8は金箔部材19により固体電解質12の負電極膜側と連通する金属箔部材16の導電膜28と接合されている。さらに固体電解質12の正電極膜側30は金箔部材20により固体電解質13の負電極膜側と連通する金属箔部材17の導電膜と接合されることとなる。
【0028】
固体電解質の負電極膜側に配置される金属箔部材15、16、17、18は固体電解質で選択的に酸素を輸送する時の空間区画手段としても使用されるようになっている。リード部22およびリード部23は固体電解質の面に対して同一方向に配置されるため、酸素供給装置を製造する上で、構造的なレイアウト構成を簡素化することができる。
【0029】
図4は上記酸素ポンプ素子を使用した酸素供給装置の概略断面構成図を示すものである。固体電解質に対して空間区画手段となる金属箔部材の周囲には、電気絶縁性のガス封止剤31で支持体32に固定されている。また、正電極側および負電極側には、導線を介して電圧印加手段33が接続されており、電圧印加手段33には、電圧制御手段34が接続されている。加熱手段35を構成するヒータ36は、負電極側の表面に対向して配置され、固体電解質の温度を検知する手段37aを有する温度制御手段37が、加熱手段35に信号を送っている。
【0030】
固体電解質の温度を検知する手段37aは、温度センサーあるいは他の方法であってもよい。センサーの場合、固体電解質の近傍に配置されるかあるいは、任意の個所に配置してよい。温度制御手段37が検知する固体電解質の温度によって、温度制御手段37が、加熱手段35を構成するヒータ36の入力制御を行う。
【0031】
ヒータ36が発生する熱の損失を抑制するための通気性の断熱部材が断熱手段38および39である。ここでは、シリカとアルミナを主成分とする平板状に成型された断熱材を用いた。酸素供給装置を構成する各要素と全体の形状保持のための容器40は、負電極膜側に、通気用の開口部41を設けている。
【0032】
また、容器40の正電極膜側には、通気口42を介して、ガスの混合手段43が連結されている。混合手段43は、ガス誘導管44と、被混合ガス導入管45と、ガス混合器46と、ガスポンプ47によって構成されている。
【0033】
以上のように構成された酸素供給装置について、以下その動作、作用を説明する。まず、酸素供給装置は、室内空気等の大気中に置かれる。この時、窒素や酸素などの大気成分(以下、単に窒素、酸素とする)は、酸素ポンプ装置を構成する通気性の断熱材である断熱手段38および39の内部を通過して正電極膜側および負電極膜側の表面まで拡散した状態で安定している。
【0034】
この状態において温度制御手段37によってヒータ36に通電すると、断熱手段38および39内の固体電解質の温度が上昇する。温度制御手段37は、固体電解質が動作するに必要な温度、約600℃となるよう、ヒータ36を制御しながら通電していく。但し、この温度が限定を受けるものではなく、固体電解質の特性に合わせて、任意の温度の動作も可能である。
【0035】
固体電解質のイオン伝導可能な温度に達した時点で、正電極膜と負電極膜を介して固体電解質に電圧を印加すると、負電極膜側の表面近傍の酸素が、電気化学反応によって負電極膜から固体電解質の内部を酸素イオンとして、正電極膜へと移動し、正電極膜側の表面から酸素分子として放出される。
【0036】
この時固体電解質には低電圧大電流が流れるとともに、加わった電圧で固体電解質内部を大電流が流れることによって自己発熱する。したがって使用される金属箔部材も600℃の雰囲気温度に加えて高温状態に曝されることになる。金属箔部材の表面上形成された導電膜は大電流に対する集電性を向上させるとともに、金属箔の表面酸化に対しても効果的に防御させることができた。金属箔部材の表面上に導電膜を形成して高温酸化を防止するためには少なくとも正負電極膜との接合部から外周方向に3mm幅以上が必要であった。またあまり幅が広すぎても高価な材料の無駄を生じさせることになるので実用的には金属箔部材の表面上に形成させる導電膜の幅は3〜7mmが好ましいと考えられる。
【0037】
正電極膜の表面近傍は、純酸素に近い状態となるが、ガスリークの完全な防止ができない限り、正電極膜の表面から離れるとともに、排出された酸素はリークしたガスと自然に混合される。したがって、空間を区画する手段となる金属箔部材とガス封止剤31が、負電極膜側からのガスリークを防ぐ手段として有効に作用する。
【0038】
一方、窒素は負電極膜の側に残される。残された窒素は、断熱手段39の通気性により、大気中に拡散していくと共に、負電極膜側には新たな酸素が外部より供給される。
【0039】
正電極膜から放出される酸素ガスは、通気口42を通り、ガス混合手段43を構成することによってガス誘導管44と、被混合ガス導入管45と、ガス混合器46とによって被混合ガスと混合される。本実施例では、被混合ガスは大気である。生成される混合ガスは酸素富化ガスであり、その流量は、ガスポンプ47の吸引と排出速度によって決められる。
【0040】
また、混合ガス中の酸素濃度は、混合ガス流量と、固体電解質を流れる酸素イオン量すなわちイオン電流の大きさによって決められる。イオン電流は、固体電解質に印加される電圧の大きさによって制御できる。
【0041】
最終的に、本発明の酸素供給装置によって得られる混合ガス中の酸素濃度は、電圧制御手段34による電圧制御とガスポンプ47による混合ガス流量の制御によって実行されることになる。
【0042】
以上のように、本実施の形態では、4個の固体電解質を電気的に直列回路で連結し、正電極膜側と負電極膜側を酸素イオン伝導性を発現するように固体電解質を介して空間部を区画手段によってガスリークを抑制し、加熱昇温と電圧印加を行うことにより、酸素分子を正電極膜から放出させ、酸素富化された混合ガスを生成することとなり、電圧制御手段34による電圧制御とガスポンプ47による混合ガス流量の制御によって、任意の酸素濃度ガスを安定的に得ることができる。
【0043】
本実施例ではガラスセラミック層として、SiO2−B2O3−MgO−BaO系でアルカリ土類金属の酸化物を20wt%含有し、アルカリ金属の酸化物を0.5wt%含有するガラスを使用したが本発明に使用できるガラスセラミックはこの限りではない。金属箔部材を絶縁状態に保ちながら、急激な熱歪にも十分耐えられるものであれば良い。アルカリ金属の含有量が多くなると融点が下がり、アルカリ土類金属の含有量が多くなると結晶化温度が高くなるので、耐熱性の高い金属箔部材Fe−20Cr−5Alとの接合性を勘案し、ガラスセラミック層としてSiO2−B2O3−MgO−BaO系でアルカリ土類金属の酸化物を15〜25wt%含有し、アルカリ金属の酸化物を2wt%以下含有するガラスが好ましかった。
【0044】
また、ガラスセラミック層の熱膨張係数は100〜120×10−7/℃とすることで金属箔部材に対しても良好な密着接合性を得ることができた。
【0045】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態における酸素ポンプ素子の断面構成図を示すものである。概略の構成は実施の形態1と重複しているので異なる部分についてだけ説明を加える。固体電解質48、49の表面上に形成する電極膜および導電膜の構成は同じである。ここでは負電極膜側と連結される金属箔部材50、51に対して導電膜52、53とガラスセラミック膜54、55を設けた構成を使用している。
【0046】
ガラスセラミック膜によって固体電解質に低電圧大電流が流れ、金属箔部材側へと伝熱してきた場合にも金属箔部材を高温酸化状態から十分に防御することができた。このような用途に使用できるガラスセラミック材料としてもSiO2−B2O3−MgO−BaO系でアルカリ土類金属の酸化物を15〜25wt%含有し、アルカリ金属の酸化物を2wt%以下含有するものが好ましかった。
【0047】
また、本実施の形態では、固体電解質としてランタンガレートを使用したがこれに限定させるものではなく、イットリウムドープ型のジルコニア(YSZ)、サマリウムドープ型のセリア(SDC)などであっても良い。但し現状ではランタンガレート系の材料が酸素イオン伝導体として動作温度が低いので材料の耐久性を鑑みた場合、もっとも好ましい材料といえる。
【0048】
また、本実施の形態では、金属箔部材としてFe−20Cr−5Alの材料を使用したがこれに限定させるものではなく、高温酸化に対して耐久性を有する材料であれば他の金属箔材料を使用することができる。また厚み12μmを使用したが金属箔部材としては5〜30μmが好ましいと考えられる。
【0049】
また、本実施の形態では、金属箔部材の構成として負電極膜側に接合させて固体電解質が空間部を区画する区画手段として使用した場合についてだけ説明したが、逆に正電極膜側に接合させて空間部を区画する区画手段として使用してもよい。
【0050】
また、本実施の形態では、導電膜としてAu系、AgPd系を使用したがこれに限定させるものではなく、抵抗値の小さな耐熱性を有する材料であれば他のものも使用できる。
【0051】
また、本実施の形態では、固体電解質表面上の正負電極膜にさらに導電膜を配置した場合について説明したが、導電膜を配置しない構造についても適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明にかかる酸素ポンプ素子及びこれを有する酸素供給装置は、長期間に渡って安定した良好な電気電流特性が得られるため、酸素を利用する空気清浄機や空調機器あるいは健康促進機器、健康増進機器など広範な用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態における酸素ポンプ素子となる固体電解質の断面構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態における酸素ポンプ素子の概略構成図
【図3】図2における酸素ポンプ素子のA−A’ラインに対する断面図
【図4】本発明の第1の実施の形態における酸素供給装置の概略断面構成図
【図5】本発明の第2の実施の形態における酸素ポンプ素子の断面構成図
【図6】従来の酸素ポンプの平面図
【図7】従来の酸素ポンプの断面図
【符号の説明】
【0054】
7、12、13、14 固体電解質
8 正電極膜
9 負電極膜
15、16、17、18 金属箔部材
19、20、21 金箔部材
22、23 リード部
24 ガラスセラミック層
25、28 導電膜
33 電圧印加手段
34 電圧制御手段
35 加熱手段
37 温度制御手段
38、39 断熱手段
43 混合手段
54、55 ガラスセラミック膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の酸素イオン伝導性の固体電解質と、前記酸素イオン伝導性の固体電解質の両面に形成された正負両極を構成する電極膜と、前記正極側の電極膜外周部あるいは負極側の電極膜外周部と接合された金属箔部材とを備え、複数の前記酸素ポンプ素子の電極は直列回路に構成され、複数の前記金属箔部材はガラスセラミック層を介して連結されていることを特徴とする酸素ポンプ素子。
【請求項2】
ガラスセラミック層は、SiO2−B2O3−MgO−BaO系でアルカリ土類金属の酸化物を15〜25wt%含有し、アルカリ金属の酸化物を2wt%以下含有する結晶化ガラスであることを特徴とする請求項1記載の酸素ポンプ素子。
【請求項3】
ガラスセラミック層の熱膨張係数は、100〜120×10−7/℃であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の酸素ポンプ素子。
【請求項4】
正極側あるいは負極側の電極膜外周部と接合された金属箔部材は、固体電解質が接する空間部を区画する区画手段として構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素ポンプ素子。
【請求項5】
固体電解質は、ランタンガレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸素ポンプ素子。
【請求項6】
電極膜と連結構造となる金属箔部材は、接合部分に導電膜層が形成されるとともに両側表面部分に前記導電膜層と連通する導電膜が所定幅形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素ポンプ素子。
【請求項7】
電極膜と連結構造となる金属箔部材は、接合部分に導電膜層が形成されるとともに片側表面部分に前記導電膜層と連通する導電膜が所定幅形成され、もう一方の表面部分にガラスセラミック膜が所定幅形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素ポンプ素子。
【請求項8】
導電膜の幅あるいはガラスセラミック膜の幅は、3〜7mmであることを特徴とする請求項6または7記載の酸素ポンプ素子。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の酸素ポンプ素子と、直列回路に連結された前記酸素ポンプ素子に電圧を印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段を制御する電圧制御手段と、前記酸素ポンプ素子を加熱する加熱手段と、前記酸素ポンプ素子の温度を検知して前記加熱手段を制御する温度制御手段と、前記加熱手段および前記酸素ポンプ素子の熱拡散を防止する通気性の断熱手段と、前記酸素ポンプ素子を介して発生した酸素を空気と混合して所定酸素濃度の混合ガスにする混合手段とを備えたことを特徴とする酸素供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−69828(P2006−69828A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253866(P2004−253866)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】