説明

酸素付加燃料供給装置

【課題】 燃焼効率の良好な燃焼を比較的簡単な構成で実現することができる酸素付加燃料供給装置を提供する。
【解決手段】 装置本体(12)と、燃料と酸素とを混合するためのスタティックミキサー(14)とを備え、スタティックミキサーにおいて混合された酸素付加燃料を装置本体に供給し、装置本体に供給された酸素付加燃料をポンプ(20)によってスタティックミキサーに圧送することにより、酸素付加燃料を装置本体とスタティックミキサーとの間で所望の回数循環させるように構成されていることを特徴とする酸素付加燃料供給装置(10)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油、軽油、灯油等の液体燃料に酸素を付加して燃焼効率を向上させる酸素付加燃料供給装置に関する。なお、本明細書において「酸素付加燃料」とは、多量の酸素の微小気泡が混入した燃料を意味する。
【背景技術】
【0002】
重油等の液体燃料を完全燃焼させるのは容易ではなく、完全燃焼を実現すべく、種々の開発研究が行われている。そのような試みの1つとして、空気中の酸素濃度よりも酸素を増加させて燃料を燃焼させる酸素富化燃焼が知られている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−109172号公報
【特許文献2】特開2010−181131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の酸素富化燃焼を改良発展させたものであって、燃焼効率の良好な燃焼を比較的簡単な構成で実現することができる酸素付加燃料供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の酸素付加燃料供給装置は、装置本体と、燃料と酸素とを混合するためのスタティックミキサーとを備え、前記スタティックミキサーにおいて混合された酸素付加燃料を前記装置本体に供給し、前記装置本体に供給された前記酸素付加燃料をポンプによって前記スタティックミキサーに圧送することにより、前記酸素付加燃料を前記装置本体と前記スタティックミキサーとの間で所望の回数循環させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載の酸素付加燃料供給装置は、前記請求項1の装置において、前記装置本体内に配置され、上端と下端が開放した管状部材をさらに備え、前記スタティックミキサーの流出部から延びた配管が、その下端が前記管状部材の前記下端の上方に位置するように、前記管状部材内に位置決めされていることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載の酸素付加燃料供給装置は、前記請求項2の装置において、前記配管の下端に配置された漏斗管と前記配管の途中から分岐した分岐管の両方又はいずれか一方をさらに備え、前記漏斗管及び前記分岐管が前記ポンプに連結されていることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項4に記載の酸素付加燃料供給装置は、前記請求項1から請求項3までのいずれか1項の装置において、前記ポンプが渦流ポンプであることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項5に記載の酸素付加燃料供給装置は、前記請求項1から請求項4までのいずれか1項の装置において、前記スタティックミキサーが、外側部材と、前記外側部材の内部に配置される内側部材とによって形成されており、前記外側部材が、一端が端壁によって閉鎖し、他端が開放した、全体として円筒形の形状を有し、前記外側部材の前記端壁のほぼ中央に、燃料流入口が設けられ、前記端壁の内面に、前記燃料流入口から徐々に拡径するテーパ部が形作られ、前記外側部材の周壁のほぼ中央に、酸素流入口が設けられており、前記内側部材が、両端が開放し、前記外側部材の内径よりも小さな外径をもつ、全体として円筒形の形状を有し、前記内側部材の内部に、両端が内部に向かって徐々に縮径する第1及び第2テーパ部と第1及び第2テーパ部を連結する通路部とが設けられ、前記内側部材の外部に、前記内側部材を前記外側部材の内部に適所に位置決めするための第1突起と、前記外側部材の内径と前記内側部材の外径と間に微小幅の隙間が形成されるように、前記外側部材の内径と前記内側部材の外径と間の隙間よりも小さい厚さをもつ第2突起とが設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の酸素付加燃料供給装置によれば、燃料中に酸素を効率的に混合させることができるので、燃焼効率の良好な燃焼を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係る酸素付加燃料供給装置を示した全体概略図である。
【図2】図2(a)は、図1の酸素付加燃料供給装置に設置されるスタティックミキサーを示した断面図、図2(b)は、図2(a)の線2b−2bに沿った断面図、図2(c)は、図2(a)の線2c−2cに沿った断面図である。
【図3】図1の酸素付加燃料供給装置に設置される渦流ポンプを示した図である。
【図4】本発明の酸素付加燃料供給装置の有効性を検証するために実施された実験の結果を示した表である。
【図5】本発明の変形形態に係る酸素付加燃料供給装置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る酸素付加燃料供給装置について説明する。図1において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係る酸素付加燃料供給装置は、密閉された容器によって形成される装置本体12を備えている。なお、図1に示される装置本体12は、側壁12aと底壁12bによって形成される円筒形容器の頂部を上蓋12cによって閉鎖された形態を有するものとして図示されているが、装置本体12は、このような形態に限定されるものではない。
【0013】
酸素付加燃料供給装置10はまた、スタティックミキサー14を備えている。スタティックミキサー14は、スタティックミキサー14内に流入した流体を、スタティックミキサー14内に設けられたエレメント(図示せず)によって分割・転換・反転させることにより流体を混合する静止型混合器である。
【0014】
スタティックミキサー14としては、種々の型式のものが知られているが、例えば、図2に示すようなスタティックミキサー14が好ましい。図2に示されるスタティックミキサー14は、外側部材14aと、外側部材14aの内部に配置される内側部材14bとによって形成されている。外側部材14aは、一端が端壁14a1によって閉鎖し、他端が開放した、全体として円筒形の形状を有している。外側部材14aの端壁14a1のほぼ中央には、燃料流入口14a2が設けられており、端壁14a1の内面には、燃料流入口14a2から徐々に拡径するテーパ部14a3が形作られている。また、外側部材14aの周壁のほぼ中央には、酸素流入口14a4が設けられている。内側部材14bは、両端が開放し、外側部材14aの内径よりも小さな外径をもつ、全体として円筒形の形状を有している。内側部材14bの内部には、両端が内部に向かって徐々に縮径する第1テーパ部14b1、第2テーパ部14b3及び両方のテーパ部を連結する通路部14b2が設けられている。内側部材14bの外部には、内側部材14bを外側部材14aの内部に適所に位置決めするための第1突起14b4が設けられている(換言すると、外側部材14aの内径と内側部材14bの外径と間の隙間分の厚さをもつ第1突起14b4によって、内側部材14bが外側部材14aの内部に適所に位置決めされている)。また、内側部材14bの外部には、外側部材14aの内径と内側部材14bの外径と間の隙間よりも小さい厚さをもつ第2突起14b5が設けられている(これにより、外側部材14aの内径と内側部材14bの外径と間に微小幅の隙間14b6が形成されることとなる)。
【0015】
図2に示されるスタティックミキサー14では、燃料流入口14a2から流入した燃料の一部がテーパ部14b1に当たって戻され、外側部材14aの側壁、テーパ部14a3及びテーパ部14b1によって形作られる空間内で循環流が形成される。一方、酸素流入口14a4から流入した酸素は、隙間14b6近傍で発生する乱流により細分化された後、隙間14b6を経て、外側部材14aの側壁、テーパ部14a3及びテーパ部14b1によって形作られる空間内に入り、燃料の循環流に合流する際に更に細分化され、これにより燃料に酸素の微小粒が効率的に混合された状態になる。このようにして得られた酸素付加燃料が装置本体12に供給される。
【0016】
なお、スタティックミキサー14は、燃料に酸素を効率的に混合することができるものであれば、図2に示される型式のスタティックミキサー以外のものを使用してもよい。
【0017】
酸素付加燃料供給装置10はまた、燃料タンク16とスタティックミキサー14の燃料供給口とを連結する第1管路18と、第1管路18に配置され、燃料にスタティックミキサー14に圧送するためのポンプ20と、スタティックミキサー14の流出口と装置本体12の上蓋12cを貫通して装置本体12内とを連結する第2管路22と、酸素供給源24とスタティックミキサー14の酸素供給口とを連結する第3管路26とを備えている。なお、ポンプ20は、渦流ポンプを使用するのが好ましい。図3は、渦流ポンプの一例を示した図である。本装置10において渦流ポンプが好ましいのは、詳細には後述するように、大きな気泡を含んだ燃料を吸引する際に、渦流ポンプ中で発生する渦により大きな気泡を砕いて微小な粒子にし、燃料中に含まれる酸素の微小気泡の量を増大させるためである。
【0018】
酸素付加燃料供給装置10はさらに、装置本体12と第1管路18とを連結する第4管路28と、装置本体12とボイラ30とを連結する第5管路32とを備えている。
【0019】
好ましくは、装置本体12にミストセパレータ36が設置されている。ミストセパレータ36を設置したことにより、装置本体12内の大きな気泡を捕集して、燃料への一層効率的な酸素付加が可能になる。より詳細に説明すると、ミストセパレータ36には、金網製のフィルタ(図示せず)が取り付けられており、装置本体12内の大きな気泡がフィルタに接触することにより気泡が破裂し、大きな気泡に付着していた燃料が装置本体12内に落下する。このようにして落下した燃料を微小気泡(マイクロバブル)に付着させることにより、全体として燃料に付着する酸素量を増大させることができる。
【0020】
図1において、参照符号18a、26a、32aは、それぞれの管路に配置された弁を示している。また、参照符号34、34aは、第1管路18とボイラ30とを連結する第6管路、第6管路に配置される弁をそれぞれ示しており、第6管路34は、装置本体12を経ずに、燃料タンク16からボイラ30に直接燃料を供給しようとする場合に使用される。さらに、参照符号38は、流量計を示している。
【0021】
以上のように構成された酸素付加燃料供給装置10の作動について説明する。燃料タンク16から第1管路18を介して燃料がスタティックミキサー14に供給される。一方、酸素供給源24から第3管路26を介して酸素がスタティックミキサー14に供給される。スタティックミキサー14において混合された酸素付加燃料が、第2管路22を介して装置本体12に供給される。装置本体12に供給された酸素付加燃料には、微小気泡と大きな気泡が混在しているが、大きな気泡は、燃料中に留まることができず、装置本体12の上方に移行する。このような大きな気泡の一部をポンプ20により吸引して、再びスタティックミキサー14に供給することにより、大きな気泡を砕いて微小気泡にし、燃料中の微小気泡(従って、酸素)の含有量を増大させることができる。酸素付加燃料を装置本体12からポンプ20を介してスタティックミキサー14に繰り返し循環させることにより、所望程度まで酸素含有量を増大させることが可能になる。なお、渦流ポンプ20を使用することにより、渦流ポンプ20中で発生する渦により大きな気泡を砕いて微小気泡にすることができるので、一層効率的に酸素含有量を増大させることができる。
【0022】
本発明の酸素付加燃料供給装置の有効性を検証するために実験を実施した。実験に使用したボイラは、株式会社日本サーモエナー製のHKFL−400BH(最高使用水頭力0.5Map、伝熱面積9.9平方メートル、燃料消費量49.9リットル/時)である。実験では、燃料タンクとボイラの配管に流量計を、バーナー側電磁弁にタイマーカウンターをそれぞれ設置し、従来装置と本装置における燃料消費量を比較した。燃料としては、A重油を使用した。
【0023】
図4は、実験結果を示した表である。図4(a)は、5日にわたって実施した本装置ににおける燃料使用量の実験結果である(燃料使用量は、平均351.3リットル/日)。図4(b1)は、3日にわたって実施した従来装置(1)における燃料使用量の実験結果(燃料使用量は、平均413リットル/日)、図4(b2)は、同様に3日にわたって実施した従来装置(2)における燃料使用量の実験結果(燃料使用量は、平均396.8リットル/日)である。図4(c1)及び図4(c2)は、本装置と従来装置(1)、(2)との燃料使用量を比較した表である。本実験の結果、図4(c1)及び図4(c2)に示されるように、本装置を使用した場合には、従来装置(1)に対しては15%、従来装置(2)に対しては11%の燃料を削減することができた。これにより、本装置の有効性を確認することができた。
【0024】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0025】
たとえば、図5(a)に示されるように、装置本体12内に、上端と下端が開放した管状部材13を配置し、スタティックミキサー14から延びた第2管路22が管状部材13内に位置決めされ、第2管路22の下端が管状部材13の下端の上方に位置するように構成してもよい。これにより、管状部材13内に酸素付加燃料が放出されるので、ボイラ30に通ずる第5管路32の入口周辺に気泡が侵入するのが防止されるとともに、微小気泡を長時間燃料中に浮遊させることができる。
【0026】
さらに、図5(b)に示されるように、スタティックミキサー14から延びた第2管路22の下端に、第2管路22から供給される酸素付加燃料を受け入れる漏斗管15を配置し、漏斗管15を第4管路28に接続するとともに、第2管路22の途中から分岐して第4管路28に至る分岐管15aを配置してもよい。これにより、図5(a)に示される形態によって得られる効果に加えて、漏斗管15及び分岐管15aを介して大きな気泡が第4管路28を介して吸引されるため、装置本体12内の大きな気泡の量を減少させることができ、燃料中の微小気泡の量を増大させることが可能になる。漏斗管15は、図5(b)に示されるように、第2管路22の下端の径よりも大きな径を有するように形成されている。なお、漏斗管15と分岐管15aは、いずれか一方のみを設けてもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 酸素付加燃料供給装置
12 装置本体
13 管状部材
14 スタティックミキサー
14a 外側部材
14b 内側部材
15 漏斗管
15a 分岐管
16 燃料タンク
18 第1管路
20 ポンプ(渦流ポンプ)
22 第2管路
24 酸素供給源
26 第3管路
28 第4管路
30 ボイラ
32 第5管路
34 第6管路
36 ミストセパレータ
38 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
燃料と酸素とを混合するためのスタティックミキサーとを備え、
前記スタティックミキサーにおいて混合された酸素付加燃料を前記装置本体に供給し、前記装置本体に供給された前記酸素付加燃料をポンプによって前記スタティックミキサーに圧送することにより、前記酸素付加燃料を前記装置本体と前記スタティックミキサーとの間で所望の回数循環させるように構成されていることを特徴とする酸素付加燃料供給装置。
【請求項2】
前記装置本体内に配置され、上端と下端が開放した管状部材をさらに備え、前記スタティックミキサーの流出部から延びた配管が、その下端が前記管状部材の前記下端の上方に位置するように、前記管状部材内に位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載された酸素付加燃料供給装置。
【請求項3】
前記配管の下端に配置された漏斗管と前記配管の途中から分岐した分岐管の両方又はいずれか一方をさらに備え、前記漏斗管及び前記分岐管が前記ポンプに連結されていることを特徴とする請求項2に記載された酸素付加燃料供給装置。
【請求項4】
前記ポンプが渦流ポンプであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された酸素付加燃料供給装置。
【請求項5】
前記スタティックミキサーが、外側部材と、前記外側部材の内部に配置される内側部材とによって形成されており、
前記外側部材が、一端が端壁によって閉鎖し、他端が開放した、全体として円筒形の形状を有し、前記外側部材の前記端壁のほぼ中央に、燃料流入口が設けられ、前記端壁の内面に、前記燃料流入口から徐々に拡径するテーパ部が形作られ、前記外側部材の周壁のほぼ中央に、酸素流入口が設けられており、
前記内側部材が、両端が開放し、前記外側部材の内径よりも小さな外径をもつ、全体として円筒形の形状を有し、前記内側部材の内部に、両端が内部に向かって徐々に縮径する第1及び第2テーパ部と第1及び第2テーパ部を連結する通路部とが設けられ、前記内側部材の外部に、前記内側部材を前記外側部材の内部に適所に位置決めするための第1突起と、前記外側部材の内径と前記内側部材の外径と間に微小幅の隙間が形成されるように、前記外側部材の内径と前記内側部材の外径と間の隙間よりも小さい厚さをもつ第2突起とが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された酸素付加燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83375(P2013−83375A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221779(P2011−221779)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(511242339)株式会社アシタバ (1)
【Fターム(参考)】