説明

酸素供給装置

【課題】酸素排出器からの酸素の流出を迅速に停止する。
【解決手段】酸素供給部6を有する装置本体2とは別体に構成された酸素供給停止装置4を備える。酸素供給停止装置4は、装置本体2からカニューラ50に対して酸素を供給する酸素供給チューブ3において、装置本体2からカニューラ50へ酸素が供給されるのを停止可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体から酸素供給流路を介して酸素排出器に酸素を供給する酸素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酸素吸入療法等に用いられ、治療を受ける患者が酸素を鼻から吸引するためのカニューラと呼ばれる器具などに酸素を供給するために酸素供給装置が用いられている。酸素供給装置としては、例えば、空気中の窒素を吸着させて酸素濃縮ガスを生成する吸着方式の酸素濃縮装置(特許文献1参照)や、酸素ボンベ等が知られている。このような酸素供給装置は、酸素を生成または貯留する装置本体と、装置本体に接続されて、装置本体からカニューラに酸素を供給するための酸素供給チューブとを備えている。
【0003】
このような酸素供給装置において、カニューラから酸素が排出されるのを停止する場合には、装置本体の電源を停止するなどして装置本体から酸素供給チューブに対して酸素が供給されるのを停止することにより、装置本体からカニューラへ酸素が供給されるのを停止することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−136663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、装置本体から酸素供給チューブに対して酸素が供給されるのを停止するだけでは、酸素供給チューブ内に酸素が残っている。そのため、この残留した酸素が、カニューラから外部に流出しつづけるため、カニューラからの酸素の排出を完全に停止させるには時間を要していた。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、酸素排出器からの酸素の流出を迅速に停止できる酸素供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明にかかる酸素供給装置は、酸素供給源を有する装置本体と、前記装置本体から酸素排出器に対して酸素を供給するための酸素供給流路と、前記装置本体と別体に構成され、前記酸素供給流路において前記装置本体から前記酸素排出器へ酸素が供給されるのを停止可能な酸素供給停止装置とを備える。
【0008】
この酸素供給装置では、装置本体と酸素排出器との間に配置された酸素供給流路において酸素の供給を遮断できる。そして、酸素供給流路が遮断された後で、酸素排出器から流出する酸素は、酸素供給流路の遮断位置よりも酸素排出器側に残留した酸素であり、その残留した酸素の量は装置本体と酸素排出器との間にある酸素より少なくなる。よって、装置本体から酸素供給流路に対して酸素が供給されるのを停止する場合に比べて、酸素排出器からの酸素の流出を迅速に停止することができる。
【0009】
第2の発明にかかる酸素供給装置では、第1の発明にかかる酸素供給装置において、温度または煙を検知する検知手段を備えており、前記酸素供給停止装置は、前記検知手段の検知結果に基づいて、前記酸素供給流路において前記装置本体から酸素排出器に対して酸素が供給されるのを停止する。
【0010】
この酸素供給装置では、周囲温度、周囲の物体の温度、及び煙の少なくともいずれか1つを検知する検知手段の検知結果に基づいて、酸素の流出を迅速に停止できる。
【0011】
第3の発明にかかる酸素供断置では、第2の発明にかかる酸素供給装置において、前記検知手段が、前記酸素供給停止装置に設けられている。
【0012】
この酸素供給装置では、装置本体よりも酸素排出器側に位置する酸素供給停止装置に検知手段を設けることで、装置本体に検知手段を設ける場合に比べて、酸素排出器の近傍の温度または煙を検知しやすくなる。したがって、酸素の流出を迅速に停止できる。
【0013】
第4の発明にかかる酸素供給装置では、第2の発明にかかる酸素供給装置において、前記検知手段が、前記酸素供給停止装置と別体に構成されている。
【0014】
この酸素供給装置では、酸素供給停止装置を小型化できる。また、酸素供給停止装置の位置に拘わらず、酸素が排出される酸素排出器の近傍などの火災になる可能性がある場所のより近傍に検知手段を設置することが出来るため、より確実に温度または煙を検知することが出来る。さらに、温度または煙が検知できる場所以外に酸素供給停止装置を設置することができるため、酸素供給停止装置を設置する場所の制限を減らすことが出来る。
【0015】
第5の発明にかかる酸素供給装置では、第2〜第4の発明のいずれかにかかる酸素供給装置において、前記検知手段の検知結果に基づいて、前記酸素供給流路において前記装置本体から前記酸素排出器に対して酸素が供給されるのを停止する必要がある場合に、前記酸素供給停止装置によって酸素の供給が停止される前に、警報を発する警報手段をさらに備えている。
【0016】
この酸素供給装置では、実際に酸素の供給が停止される前に、使用者やその周囲にいる者に対して酸素の供給を停止させる必要性を報知できる。したがって、使用者などは、実際に酸素の供給が停止される前に、たとえば、火の気を消すなど、酸素の供給を停止させることが必要となる原因を排除できる。そのため、酸素供給の停止を回避し、酸素の供給を続けることが可能となる。
【0017】
第6の発明にかかる酸素供給装置では、第1〜第5の発明のいずれかにかかる酸素供給装置において、前記酸素供給停止装置は、前記酸素供給流路の前記酸素排出器側の端部に配置され、前記酸素排出器と前記酸素供給流路とを接続可能に構成されている。
【0018】
この酸素供給装置では、酸素供給停止装置によって酸素の供給が遮断されたとき、酸素供給流路の遮断位置よりも酸素排出器側に酸素が残ることがない。したがって、酸素排出器からの酸素の流出をより迅速に停止させることができる。
【0019】
第7の発明にかかる酸素供給装置では、第1〜第6の発明のいずれかにかかる酸素供給装置において、前記酸素供給停止装置は、前記酸素供給路において前記装置本体から前記酸素排出器に対して酸素供給が停止された状態を解除する解除手段を備えている。
【0020】
この酸素供給装置では、酸素の供給再開が可能であることが確認された後、酸素供給停止装置に設けられた解除手段を操作することで、スムーズに装置本体から酸素排出器に対する酸素の供給を再開できる。
【0021】
第8の発明にかかる酸素供給装置では、第1〜第7の発明のいずれかにかかる酸素供給装置において、前記装置本体から前記酸素供給流路に対して酸素が供給されるのを停止する本体側供給停止手段をさらに備えている。
【0022】
この酸素供給装置では、酸素供給停止装置による酸素供給停止後に酸素供給が不要となった装置本体の運転を停止することが出来る。酸素供給を停止する状況として火災等が考えられるが、酸素供給停止装置で酸素の供給を停止したとしても、火災等により酸素供給流路や酸素供給停止装置自体が破損する可能性がある。このような状況では、酸素供給停止装置で酸素の供給を停止したとしても、装置本体から酸素が供給され続けられると、破損した酸素供給流路や酸素供給停止装置から酸素が漏れる可能性がある。そのため、装置本体を停止することにより、確実に酸素の供給を停止することが可能となる。
【0023】
第9の発明にかかる酸素供給装置では、第1〜第8の発明のいずれかにかかる酸素供給装置において、前記酸素供給停止装置により、前記酸素供給路において前記装置本体から前記酸素排出器に対して酸素が供給されるのが停止される際に、外部へ信号を送信する通報手段をさらに備えている。
【0024】
この酸素供給装置では、酸素供給停止装置によって酸素の供給が停止されたことを外部に素早く知らせることができる。よって、酸素の供給の再開作業等、使用者本人ができない場合であっても、外部の人間によって行うことができる。
【0025】
第10の発明にかかる酸素供給装置では、第1〜第9の発明のいずれかにかかる酸素供給装置において、前記酸素供給停止装置により、前記酸素供給路において前記装置本体から前記酸素排出器に対する酸素の供給が停止された旨を報知する報知手段をさらに備えている。
【0026】
この酸素供給装置では、使用者に対して酸素供給停止装置によって酸素の供給が停止されたことを報知できる。
【発明の効果】
【0027】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0028】
第1の発明では、装置本体と酸素排出器との間に配置された酸素供給流路において酸素の供給を遮断できる。そして、酸素供給流路が遮断された後で、酸素排出器から流出する酸素は、酸素供給流路の遮断位置よりも酸素排出器側に残留した酸素であり、その残留した酸素の量は装置本体と酸素排出器との間にある酸素より少なくなる。よって、装置本体から酸素供給流路に対して酸素が供給されるのを停止する場合に比べて、酸素排出器からの酸素の流出を迅速に停止することができる。
【0029】
また、第2の発明では、周囲温度、周囲の物体の温度、及び煙を検知する検知手段の検知結果に基づいて、酸素の流出を迅速に停止できる。
【0030】
また、第3の発明では、装置本体よりも酸素排出器側に位置する酸素供給停止装置に検知手段を設けることで、装置本体に検知手段を設ける場合に比べて、酸素排出器の近傍の温度または煙を検知しやすくなる。したがって、酸素の流出を迅速に停止できる。
【0031】
さらに、第4の発明では、酸素供給停止装置を小型化できる。また、酸素供給停止装置の位置に拘わらず、酸素が排出される酸素排出器の近傍などの火災になる可能性がある場所のより近傍に検知手段を設置することが出来るため、より確実に温度または煙を検知することが出来る。さらに、温度または煙が検知できる場所以外に酸素供給停止装置を設置することができるため、酸素供給停止装置を設置する場所の制限を減らすことが出来る。
【0032】
また、第5の発明では、実際に酸素の供給が停止される前に、使用者やその周囲にいる者に対して酸素の供給を停止させる必要性を報知できる。したがって、使用者などは、実際に酸素の供給が停止される前に、たとえば、火の気を消すなど、酸素の供給を停止させることが必要となる原因を排除できる。そのため、酸素供給の停止を回避し、酸素の供給を続けることが可能となる。
【0033】
さらに、第6の発明では、酸素供給停止装置によって酸素の供給が遮断されたとき、酸素供給流路の遮断位置よりも酸素排出器側に酸素が残ることがない。したがって、酸素排出器からの酸素の流出をより迅速に停止させることができる。
【0034】
また、第7の発明では、酸素の供給再開が可能であることが確認された後、酸素供給停止装置に設けられた解除手段を操作することで、スムーズに装置本体から酸素排出器に対する酸素の供給を再開できる。
【0035】
加えて、第8の発明では、酸素供給停止装置による酸素供給停止後に酸素供給が不要となった装置本体の運転を停止することが出来る。酸素供給を停止する状況として火災等が考えられるが、酸素供給停止装置で酸素の供給を停止したとしても、火災等により酸素供給流路や酸素供給停止装置自体が破損する可能性がある。このような状況では、酸素供給停止装置で酸素の供給を停止したとしても、装置本体から酸素が供給され続けられると、破損した酸素供給流路や酸素供給停止装置から酸素が漏れる可能性がある。そのため、装置本体を停止することにより、確実に酸素の供給を停止することが可能となる。
【0036】
また、第9の発明では、酸素供給停止装置によって酸素の供給が停止されたことを外部に素早く知らせることができる。よって、酸素の供給の再開作業等、使用者本人ができない場合であっても、外部の人間によって行うことができる。
【0037】
また、第10の発明では、使用者に対して酸素供給停止装置によって酸素の供給が停止されたことを報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態にかかる酸素供給装置の概略図である。
【図2】図1に示す酸素供給停止装置の酸素供給時の状態を示す図である。
【図3】図1に示す酸素供給停止装置の酸素供給停止時の状態を示す図である。
【図4】図2に示す制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図2に示す制御部における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る酸素供給装置の実施形態について、図1〜図5を参照しつつ説明する。本実施形態では、空気中の窒素を吸着させて酸素濃縮ガスを生成する酸素濃縮装置に、本発明を適用した例について説明する。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の酸素濃縮装置1は、酸素吸入療法を受ける患者が酸素を鼻から吸引するために用いるカニューラ50(酸素排出器)に接続され、このカニューラ50に酸素を供給する。なお、酸素濃縮装置1は、カニューラ以外の酸素排出用の器具に接続されていてもよい。また、酸素濃縮装置1は、インターネット9を介して警備会社やメンテナンス会社など関係各所に設置された端末装置8と通信可能に接続されている。
【0041】
酸素濃縮装置1は、装置本体2と、装置本体2の酸素排出口5cに接続される可撓性の酸素供給チューブ3(酸素供給流路)と、酸素供給チューブ3の先端部に配置された酸素供給停止装置4とから構成されている。酸素供給停止装置4は、酸素供給チューブ3とカニューラ50とを連通させることができるものである。なお、酸素供給停止装置4は、有線又は無線により装置本体2と接続されており、装置本体2に対して電気信号を送ることができる。
【0042】
装置本体2は、空気吸込口5a、排気口5b、及び酸素排出口5cが形成されたケーシング5と、酸素濃縮ガスを生成する酸素供給部6(酸素供給源)と、酸素供給部6と酸素排出口5cとを接続する酸素排出流路7とを主に備えている。本実施形態の酸素供給部6は、高圧下で窒素を吸着すると共に低圧下で吸着した窒素を離脱させるゼオライトなどの吸着剤を用いることによって、酸素濃縮ガスの生成を行う。すなわち、酸素供給部6は、空気吸込口5a及び空気吸込流路6aを介してケーシング5の外部から取り込んだ空気を圧縮し、圧縮空気中の窒素を吸着して酸素濃縮ガスを生成する。そして、低圧下において吸着剤から離脱された窒素は、排気流路6b及び排気口5bを介してケーシング5の外部に排出される。酸素供給部6で生成された酸素濃縮ガスは、酸素排出流路7を介して酸素排出口5cから排出される。
【0043】
患者の体に接するため、細く且つ柔らかな素材からなるカニューラ50に比べて、酸素供給チューブ3は、太く且つ硬い材質からなる。これにより、装置本体2とカニューラ50との間の距離が離れており、酸素供給チューブ3が長くとも、酸素供給チューブ3の捩れ、潰れ、折れ等が生じるのを抑制すると共に、酸素を流れやすくできる。
【0044】
酸素供給停止装置4は、装置本体2からカニューラ50へ酸素が供給されるのを停止する装置である。本実施形態では、酸素供給停止装置4は、酸素供給チューブ3からカニューラ50へ酸素が供給されるのを停止する装置である。図2に示すように、酸素供給停止装置4は、供給側接続口41aと排出側接続口41bとが形成されたケーシング41と、供給側接続口41aと排出側接続口41bとを接続する接続流路42と、酸素供給停止装置4を制御する制御部44とを主に備えている。供給側接続口41aには、酸素供給チューブ3の酸素排出口5cに接続されている側とは反対側(カニューラ50側)の端部が接続されている。また、排出側接続口41bには、カニューラ50が接続されている。
【0045】
接続流路42には、二方弁43が設けられている。二方弁43は、制御部44から送信される信号とスプリングとによって、2つの切換位置43a、43bに切り換え可能な電磁作動式の弁である。図2に示すように、二方弁43は、励磁されていないときには、スプリングの付勢力によって切換位置43aとなり、供給側接続口41aに接続された酸素供給チューブ3と排出側接続口41bに接続されたカニューラ50とが連通する。また、図3に示すように、二方弁43は、励磁されたときには切換位置43bとなり、酸素供給チューブ3とカニューラ50との連通が遮断される。
【0046】
ケーシング41の外面には、周囲の物体が輻射する赤外線によりその物体の温度を検知する温度検知センサ45と、患者やその周囲の人に対して必要な情報を音声で報知するスピーカ46と、酸素の供給が停止された状態を解除する解除スイッチ47(解除手段)とが設けられている。
【0047】
制御部44は、図4に示すように、判断部44a、弁制御部44b、音声信号生成部44c、本体停止信号生成部44d及び通報信号生成部44eを有している。そして、制御部44には、インターネット9に接続するための通信インターフェース9aが接続されている。
【0048】
判断部44aは、温度検知センサ45による周囲の物体の温度の検知結果に基づいて、周囲に所定の温度を超える物体が有るか否か判断する。弁制御部44bは、判断部44aが、酸素供給停止装置4の周囲に所定の温度を超える物体が有ると判断したとき、二方弁43を切換位置43aから切換位置43bに切り換える。また、弁制御部44bは、二方弁43が切換位置43bにある際に解除スイッチ47が操作されると、二方弁43を切換位置43aに切り換える。
【0049】
音声信号生成部44cは、判断部44aによって、酸素供給停止装置4の周囲に所定の温度を超える物体が有ると判断されたとき、酸素の供給を停止する必要性がある旨の音声信号を生成し、スピーカ46に出力する。すなわち、音声信号生成部44c及びスピーカ46は、本発明の警報手段として機能する。また、音声信号生成部44は、弁制御部44bによって、二方弁43が切換位置43aから切換位置43bに切り換えられ、酸素供給チューブ3とカニューラ50との連通が遮断された際に、酸素供給チューブ3において装置本体2からカニューラ50に対する酸素の供給が停止された旨の音声信号を生成し、スピーカ46に出力する。すなわち、音声信号生成部44c及びスピーカ46は、本発明の報知手段としても機能する。
【0050】
本体停止信号生成部44dは、弁制御部44bによって、二方弁43が切換位置43aから切換位置43bに切り換えられた後、所定時間以内に解除スイッチ47の操作が行われない場合に、装置本体2の電源停止を指示する電気信号を生成し、装置本体2に送信する。本体停止信号生成部44dは、本発明の本体側供給停止手段に対応する。通報信号生成部44eは、弁制御部44bによって、二方弁43が切換位置43aから切換位置43bに切り換えられたときに、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止された旨の情報を示す通報信号生成し、関係各所に設置された端末装置8に対してインターネット9を介して送信する。通報信号生成部44eは、本発明の通報手段に対応する。
【0051】
ここで、図5を参照しつつ、制御部44で行われる処理手順の一例について説明する。まず、判断部44aによって、酸素供給停止装置4の周囲に所定の温度を超える物体が有るか否かの判断が行われる(ステップS1)。ステップS1での判断処理は、所定の温度を超える物体があると判断されるまで繰り返し行われる。そして、判断部44aによって所定の温度を超える物体があると判断された場合には(ステップS1:YES)、音声信号生成部44cによって、酸素の供給を停止させる必要性がある旨の音声信号が生成されると共に、この音声信号がスピーカ46に出力される(ステップS2)。このとき、スピーカ46から、例えば『高温の物体を検知しましたので、酸素の供給を停止する必要があります』等の音声が発せられる。
【0052】
なお、ステップ2において発せられた警報により、周囲に高温の物体があるので酸素の供給を停止する必要があることを知った患者やその周囲の人は、その高温の物体を遠ざけたり、患者が高温の物体から遠ざかったりするような措置をとることができる。
【0053】
ステップS2において警報を発してから所定時間経過後に、判断部44aによって、再度酸素供給停止装置4の周囲に所定の温度を超える物体が有るか否かの判断が行われる(ステップS3)。判断部44aによって所定の温度を超える物体があると判断されなかった場合には(ステップS3:NO)、上述のステップS1に戻り、所定の温度を超える物体があると判断されるまで判断部44aによる判断を繰り返す。
【0054】
一方、判断部44aによって所定の温度を超える物体があると判断された場合には(ステップS3:YES)、弁制御部44bによって、二方弁43が切換位置43aから切換位置43bに切り換えられ、酸素供給チューブ3とカニューラ50との連通が遮断される。これにより、装置本体2からカニューラ50への酸素の供給が停止される(ステップS4)。
【0055】
その後、解除スイッチ47が操作されたか否かが判断される(ステップS5)。解除スイッチ47が操作されたと判断された場合には(ステップS5:YES)、弁制御部44bによって、二方弁43が切換位置43bから切換位置43aに切り換えられ、酸素供給チューブ3とカニューラ50とが再び連通する。これにより、装置本体2からカニューラ50への酸素の供給が再開される(ステップS6)。ステップS6においてカニューラ50への酸素の供給が再開された後は、上述のステップS1に戻り、所定の温度を超える物体があると判断されるまで判断部44aによる判断を繰り返す。
【0056】
一方、所定時間以内に解除スイッチ47の操作がなされなかった場合には(ステップS5:NO)、本体停止信号生成部44dにより、装置本体2の電源停止を指示する電気信号が生成され、装置本体2に送信される(ステップS7)。さらに、通報信号生成部44eによって、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止された旨の情報を示す通報信号が生成されると共に、この通報信号が関係各所に設置された端末装置8に送信される(ステップS8)。
【0057】
以上のように、本実施形態の酸素濃縮装置1は、酸素供給部6を有する装置本体2とは別体に構成された酸素供給停止装置4を備えている。酸素供給停止装置4は、装置本体2からカニューラ50に対して酸素を供給する酸素供給チューブ3において、装置本体2からカニューラ50へ酸素が供給されるのを停止可能である。したがって、装置本体2とカニューラ50との間に配置された酸素供給チューブ3において酸素の供給を遮断できる。そして、酸素供給チューブ3が遮断された後で、カニューラ50から流出する酸素は、酸素供給チューブ3の遮断位置よりもカニューラ50側に残留した酸素であり、その残留した酸素の量は、装置本体2とカニューラ50との間にある空気より少なくなる。よって、装置本体2から酸素供給チューブ3に対して酸素が供給されるのを停止する場合に比べて、カニューラ50からの酸素の流出を迅速に停止することができる。
【0058】
また、本実施形態の酸素濃縮装置1は、周囲の物体の温度を検知する温度検知センサ45(検知手段)を備えており、酸素供給停止装置4は、温度検知センサ45の検知結果に基づいて、酸素供給チューブ3において装置本体2からカニューラ50に対して酸素が供給されるのを停止する。したがって、温度検知センサ45の検知結果に基づいて、酸素の流出を迅速に停止できる。
【0059】
さらに、本実施形態の酸素濃縮装置1では、温度検知センサ45が酸素供給停止装置4に設けられている。したがって、装置本体2がカニューラ50を装着した患者から離れた場所に設置されている場合でも、装置本体2よりもカニューラ50側に位置する酸素供給停止装置4に設けられた温度検知センサ45によって、患者の近傍の物体の温度を検知し、酸素の流出を迅速に停止できる。
【0060】
加えて、本実施形態の酸素濃縮装置1では、酸素供給停止装置4は、酸素供給チューブ3のカニューラ50側の端部に配置され、カニューラ50を酸素供給チューブ3に接続可能である。したがって、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止されたとき、酸素供給チューブ3の遮断位置よりもカニューラ50側に酸素が残ることがない。よって、カニューラ50からの酸素の流出をより迅速に停止させることができる。
【0061】
また、本実施形態の酸素濃縮装置1は、温度検知センサ45の検知結果に基づいて、酸素の供給を停止する必要性がある旨の音声信号を生成し、スピーカ46に出力する音声信号生成部44cを有している。したがって、患者やその周囲の人に対して酸素の供給を停止する必要性を報知できる。よって、実際に酸素の供給が停止される前に、酸素の供給を停止させるべき原因から回避することが出来る。そのため、酸素供給の停止を回避し、酸素の供給を続けることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態の酸素濃縮装置1では、酸素供給停止装置4は、酸素の供給が停止された状態を解除する解除スイッチ47を備えている。したがって、患者自身が確認し、酸素の供給再開が可能であると判断した場合に、酸素供給停止装置4に設けられた解除スイッチ47を操作することで、スムーズに酸素の供給を再開できる。
【0063】
加えて、本実施形態の酸素濃縮装置1は、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止された際であって、所定時間以内に解除スイッチ47の操作がなされたかった場合に、装置本体2の電源停止を指示する電気信号を生成し、装置本体2に送信する本体停止信号生成部44dを備えている。したがって、酸素供給停止装置4による酸素供給停止後に酸素供給が不要となった装置本体2の運転を停止することが出来る。酸素供給を停止する状況として火災等が考えられるが、酸素供給停止装置4で酸素の供給を停止したとしても、火災等により酸素供給チューブ3や酸素供給停止装置4自体が破損する可能性がある。このような状況では、酸素供給停止装置4で酸素の供給を停止したとしても、装置本体2から酸素が供給され続けられると、破損した酸素供給チューブ3や酸素供給停止装置4から酸素が漏れる可能性がある。そのため、装置本体2を停止することにより、確実に酸素の供給を停止することが可能となる。
【0064】
さらに、本実施形態の酸素濃縮装置1は、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止される際に、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止された旨の情報を示す通報信号生成し、関係各所に設置された端末装置8に対して送信する通報信号生成部44eを備えている。したがって、関係各所に対して酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止されたことを素早く知らせ、トラブルへの対応をすみやかに取ることができる。
【0065】
また、本実施形態の酸素濃縮装置1の音声信号生成部44dは、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止された際に、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止された旨の音声信号を生成する。したがって、患者やその周囲の人に対して酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止されたことを報知できる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0067】
例えば、上述の実施形態では、酸素供給停止装置4は、周囲物体の温度を検知する温度検知センサ45の検知結果に基づいて、酸素が供給されるのを停止する場合について説明したがこれには限定されない。酸素供給停止装置4は、周囲の温度を検知する温度検知センサや周囲の煙を検知する煙検知センサの検知結果に基づいて、酸素が供給されるのを停止するようにしてもよい。また、これら、周囲の物体の温度、周囲の温度、及び煙のうちの複数を検知可能なセンサを用いてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、温度検知センサ45が酸素供給停止装置4に設けられている場合について説明したが、温度検知センサ45の設置位置はこれに限定されるものではない。例えば、温度検知センサ45は、装置本体2に設けられていてもよいし、眼鏡等の患者が常に身につけるものに設けてもよいし、居室の天井に設けてもよい。このように、温度検知センサが酸素供給停止装置4と別体に構成されている場合には、温度検知センサからの信号は、有線または無線によって酸素供給停止装置4に送られる。
【0069】
また、上述の実施形態では、酸素供給停止装置4が、酸素供給チューブ3のカニューラ50側の端部に配置される場合について説明したが、酸素供給停止装置4は、酸素供給チューブ3の途中に設けられていてもよい。
【0070】
さらに、上述の実施形態では、酸素の供給を停止する必要性がある旨の音声信号や、酸素の供給が停止された旨の音声信号を生成し、スピーカ46に出力する音声信号生成部44cを有している場合について説明したが、音声信号生成部44cやスピーカ46はなくてもよい。また、スピーカ46の替わりに又はスピーカ46と共に振動アクチューエータ装置を設け、振動または音声と振動との両方により酸素の供給を停止させる必要性や酸素の供給が停止された旨を報知するようにしてもよい。
【0071】
加えて、上述の実施形態では、酸素供給停止装置4は、酸素の供給が停止された状態を解除する解除スイッチ47を備えている場合について説明したが、解除スイッチ47はなくてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、装置本体2の電源停止を指示する電気信号を生成し、装置本体2に送信する本体停止信号生成部44dを備えている場合について説明したが、これには限定されない。本体停止信号生成部44dによって生成される信号は、装置本体2から酸素供給チューブ3に対して酸素が供給されるのを停止させることができる信号であればよく、例えば、装置本体2に設けられた弁を閉じて、装置本体2から酸素が供給されないようにするものであってもよい。また、本体停止信号生成部44dは、なくてもよい。
【0073】
さらに、上述の実施形態では、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止されるときに、酸素供給停止装置4によって酸素の供給が停止された旨の情報を示す通報信号生成し、この通報信号を関係各所に設置された端末装置8に対してインターネット9を介して送信する通報信号生成部44eを備えている場合について説明したが、通報信号生成部44eはなくてもよい。この場合、インターネット9に接続可能となっていなくてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態で説明した制御部44で行われる処理手順は一例であり、適宜処理の省略や手順の変更を行うことができる。すなわち、例えば、ステップS2における酸素の供給を停止させる必要性の報知処理、及びステップS3における周囲に所定の温度を超える物体が有るか否かの再判断処理は省略可能である。また、ステップS8における関係各所への通報処理は、ステップS4の酸素供給停止処理の後であれば、どこで実行されてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、インターネット9を介して警備会社やメンテナンス会社など関係各所に設置された端末装置8と通信可能に接続されている場合について説明したが、これには限定されない。例えば、専用の通信ネットワークを介して関係各所に設置された端末装置8と通信可能であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、空気中の窒素を吸着させて酸素濃縮ガスを生成する吸着方式の酸素濃縮装置に本発明を適用した例を挙げて説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。本発明は、空気中の酸素を透過させて酸素濃縮ガスを生成する透過膜方式の酸素濃縮装置や、酸素ボンベや、液体酸素方式の酸素供給装置などにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明を利用すれば、酸素排出器から酸素が供給され続けるのを迅速に停止できる。
【符号の説明】
【0078】
1 酸素濃縮装置(酸素供給装置)
2 装置本体
3 酸素供給チューブ(酸素供給流路)
4 酸素供給停止装置
6 酸素供給部(酸素供給源)
44c 音声信号生成部(警報手段、報知手段)
44d 本体停止信号生成部(本体側供給停止手段)
44e 通報信号生成部(通報手段)
45 温度検知センサ(検知手段)
46 スピーカ(警報手段、報知手段)
47 解除スイッチ(解除手段)
50 カニューラ(酸素排出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素供給源を有する装置本体と、
前記装置本体から酸素排出器に対して酸素を供給するための酸素供給流路と、
前記装置本体と別体に構成され、前記酸素供給流路において前記装置本体から前記酸素排出器へ酸素が供給されるのを停止可能な酸素供給停止装置とを備えることを特徴とする酸素供給装置。
【請求項2】
周囲温度、周囲の物体の温度、及び煙の少なくともいずれか1つを検知する検知手段を備えており、
前記酸素供給停止装置は、
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記酸素供給流路において前記装置本体から酸素排出器に対して酸素が供給されるのを停止することを特徴とする請求項1に記載の酸素供給装置。
【請求項3】
前記検知手段が、前記酸素供給停止装置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の酸素供給装置。
【請求項4】
前記検知手段が、前記酸素供給停止装置と別体に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の酸素供給装置。
【請求項5】
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記酸素供給路において前記装置本体から前記酸素排出器に対して酸素が供給されるのを停止する必要がある場合に、前記酸素供給停止装置によって酸素の供給が停止される前に、警報を発する警報手段をさらに備えていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の酸素供給装置。
【請求項6】
前記酸素供給停止装置は、前記酸素供給流路の前記酸素排出器側の端部に配置され、前記酸素排出器と前記酸素供給流路とを接続可能に構成されていることを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載の酸素供給装置。
【請求項7】
前記酸素供給停止装置は、前記酸素供給路において前記装置本体から前記酸素排出器に対して酸素供給が停止された状態を解除する解除手段を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸素供給装置。
【請求項8】
前記装置本体から前記酸素供給流路に対して酸素が供給されるのを停止する本体側供給停止手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の酸素供給装置。
【請求項9】
前記酸素供給停止装置により、前記酸素供給路において前記装置本体から前記酸素排出器に対して酸素が供給されるのが停止される際に、外部へ信号を送信する通報手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の酸素供給装置。
【請求項10】
前記酸素供給停止装置により、前記酸素供給路において前記装置本体から前記酸素排出器に対する酸素の供給が停止された旨を報知する報知手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸素供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−24402(P2012−24402A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167283(P2010−167283)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)