説明

酸素含有ポリウレタンフォーム

【課題】 血液細胞(血小板等)の保存安定性を改良する血液細胞保存バッグおよび保存安定性改良方法を提供する。
【解決手段】 ポリオール成分とイソシアネート成分からなる混合液中に、酸素を含有させて発泡させてなり、気泡中の酸素濃度が22〜100体積%であることを特徴とする酸素含有ポリウレタンフォームを内蔵させてなる血液細胞保存バッグ;並びに、血液細胞保存バッグに、気泡中の酸素濃度が22〜100体積%の酸素含有ポリウレタンフォームを内蔵させて酸素を徐放させることを特徴とする、血液細胞の保存安定性改良方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡中の酸素濃度が高いポリウレタンフォームを内蔵してなる血液細胞(特に血小板)保存バッグに関する。さらに詳しくは、血液細胞(特に血小板)の長期保存安定性に優れた血液細胞保存バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液献血や成分献血によって得られた血液細胞、特に血小板は、濃厚血小板製剤、多血小板血漿等として保存され、その保存安定性を向上させるための手段が種々検討されている。 血小板の保存期間は、現在、我が国において3日間しか認められておらず、血小板製剤の有効利用の障害となっている。
【0003】
血小板は低温にさらすと血小板機能が不可逆的に失われるため、保存は22℃付近で行われる。しかし、22℃付近の温度では血小板のエネルギー代謝は非常に活発である。この時、血小板への酸素供給が十分に行われていると、「好気的代謝」でエネルギー代謝が維持され、代謝物として水と二酸化炭素が産出される。しかしながら、血小板への酸素供給が不十分であると、「嫌気的代謝」でエネルギー代謝が維持されてしまい、代謝物として乳酸が産出される。この乳酸により血小板浮遊液のpHが低下し、血小板機能が著しく損なわれるという問題が生じる。そのため、血小板保存バッグには高い酸素透過能が要求され、オレフィン樹脂製の保存バッグが開発されてきた(例えば、特許文献1参照)。また、該保存バッグには血小板浮遊液のpH低下を引き起こすとされている二酸化炭素の透過能の低減も要求され、各種の保存容器が開発されてきた(例えば、特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特表平9−508052
【特許文献2】特開2003−47642号公報
【特許文献3】特開2002−136572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2や3に記載の血小板保存容器は、酸素透過能は十分であるが、それと同時に二酸化炭素透過能が酸素透過能よりも高いため、血小板浮遊液のpHが低下するという問題がある。 従って、血小板保存バッグの酸素透過能を向上させ、二酸化炭素透過能を低減させることで保存バッグの外気側から血小板に酸素を供給しようとする従来技術では、血小板の安定保存期間の大幅な向上は難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、ポリオール成分とイソシアネート成分からなる混合液中に、酸素を含有させて発泡させてなり、気泡中の酸素濃度が22〜100体積%であることを特徴とする酸素含有ポリウレタンフォーム;該ポリウレタンフォームを内蔵してなる血液細胞保存バッグ;並びに、血液細胞を充填してなる血液細胞保存バッグに、気泡中の酸素濃度が22〜100体積%の酸素含有ポリウレタンフォームを含有させて酸素を徐放させることを特徴とする、血液細胞の保存安定性改良方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の酸素含有ポリウレタンフォームを内蔵してなる血液細胞保存バッグで保存した血液細胞は保存安定性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール成分とイソシアネート成分から形成されてなるポリウレタン樹脂からなる。
【0008】
[ポリオール成分]
ポリオール成分を構成するポリオール(A)には、2価〜8価またはそれ以上の、高分子ポリオール[250以上のOH当量(OH価に基づく、OH当たりの分子量)を有する]、低分子ポリオール(250未満のOH当量を有する)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
低分子ポリオールには、多価アルコール、並びに低分子OH末端ポリマー[ポリエーテ
ルポリオール(以下PTポリオールと略記)、ポリエステルポリオール(以下PSポリオ
ールと略記)等]が含まれる。
【0009】
上記多価アルコールには、以下のものが含まれる。
2価アルコール[炭素数(以下Cと略記)2〜20またはそれ以上)、例えばC2〜12
の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジ
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−、2,
3−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチ
ルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下それぞれEG、DEG、PG、D
PG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等];C6〜10の
脂環含有2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノー
ル等];C8〜20の芳香環含有2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロ
キシエチル)ベンゼン等];
3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよ
びそれらの分子内もしくは分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタ
エリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトール(以下それぞれGR、TM
P、PE、SOおよびDPEと略記)、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトー
ル、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリ
ンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[例えばショ糖、グルコース、フ
ラクトース、マンノース、ラクトース、およびグリコシド(メチルグルコシド等)];
【0010】
含窒素ポリオール(3級アミノ基含有ポリオールおよび4級アンモニウム基含有ポリオー
ル):含窒素ジオール、例えばC1〜12の脂肪族、脂環式および芳香環含有1級モノア
ミン[メチルアミン、エチルアミン、1−および2−プロピルアミン、ヘキシルアミン、
1,3−ジメチルブチルアミン、1−,2−および3−アミノヘプタン、ドデシルアミン
、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン等]のビス
ヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ビス(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒド
ロキシプロピル)化物等、例えば米国特許第4,271,217号明細書に記載の3級窒
素原子含有ポリオール]、およびそれらの4級化物[上記米国特許明細書に記載の4級化
剤またはジアルキルカーボネート(C1〜4のアルキル基を有するもの、例えばジメチル
、ジエチルおよびジ−i−プロピルカーボネート)が含まれる。)による4級化物]、例
えば上記米国特許明細書に記載の4級窒素原子含有ポリオール;および3価〜8価または
それ以上の含窒素ポリオール、例えばトリアルカノール(C2〜4)アミン(トリエタノ
ールアミン等)およびC2〜12の脂肪族、脂環式、芳香族および複素環ポリアミン[例
えばエチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、トリレンジアミン、アミノエチルピペ
ラジン]のポリヒドロキシアルキル(C2〜4)化物〔ポリ(2−ヒドロキシエチル)化
物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等[例えばテトラキス(2−ヒドロキシプロピル)
エチレンジアミン、ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン]〕、
およびこれらの上記と同様の4級化物。
【0011】
低分子OH末端ポリマーには、後述のような、PTポリオール、PSポリオールおよび
ポリウレタン(以下PUと略記)ポリオールで250未満のOH当量を有するものが含ま
れる。例えば、低重合度のアルキレンオキシド(以下AOと略記)開環重合物および活性
水素原子含有多官能化合物の低モルAO付加物[例えば後述のポリエチレングリコール、
ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(以下それぞれPEG、PP
G、PTMGと略記)等、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンおよびビスフェノールA
のエチレンオキシド(以下EOと略記)2〜4モル付加物]、低縮合度の縮合PSポリオ
ールおよびポリオールの低モルラクトン付加物[ポリカルボン酸と過剰(カルボキシル基
1個当り1モル)の多価アルコールとの縮合物(例えばジヒドロキシエチルアジペート)
およびEGのカプロラクトン1モル付加物]、並びに低重合度のPUポリオール[後述の
ポリイソシアネート(以下PIということがある。)と過剰(イソシアネート基1個当り
1モル)の多価アルコールとの反応生成物(例えば後述のTDI1モルとEG2モルとの
反応生成物)]が挙げられる。
【0012】
AOには、C2〜12またはそれ以上(好ましくはC2〜4)のAO、例えばエチレン
オキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−、2,3−および1,3−ブチレンオ
キシド、テトラヒドロフランおよび3−メチル−テトラヒドロフラン(以下それぞれEO
、PO、BO、THFおよびMTHFと略記)、1,3−プロピレンオキシド、イソBO
、C5〜12のα−オレフィンオキシド、置換AO、例えばスチレンオキシドおよびエピ
ハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)、並びにこれらの2種以上の併用(ランダム付加
および/またはブロック付加)が含まれる。
【0013】
高分子ポリオールは、通常250〜3,000またはそれ以上のOH当量を有する。該
ポリオールは、通常500〜5,000またはそれ以上、好ましくは700〜4,500
の数平均分子量(以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(G
PC)法による。]を有し;好ましくは500〜6,000、とくに700〜4,000
の重量平均分子量 (以下Mwと略記。測定はGPC法による。)を有する。その例には
、OH末端のポリマー[PT、PS、ポリアミド(以下PDと略記)、PU、ビニル系ポ
リマー(以下VPと略記) およびポリマーポリオール(以下P/Pと略記)]、および
これらの2種以上の混合物が含まれる。
OH末端のPTには、AOの開環重合物、少くとも2個(2個〜8個またはそれ以上)
の活性水素原子を有する開始剤に1種または2種以上のAOを付加させた構造を有するP
Tポリオール(AO付加物)、およびそれら(同一または異なる)の2分子またはそれ以
上をカップリング剤でカップリングさせてなるPTポリオールが含まれる。
【0014】
AO付加の開始剤には、例えば多価アルコール(前記)、ヒドロキシルアミン、アミノ
カルボン酸およびヒドロキシカルボン酸;多価フェノール;並びにポリカルボン酸(後述
)が含まれる。
【0015】
ヒドロキシルアミンには、C2〜10の、(ジ)アルカノールアミン、シクロアルカノ
ールアミンおよびアルキルアルカノールアミン、例えば2−アミノエタノール、3−アミ
ノプロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペ
ンタノール、6−アミノヘキサノール、ジエタノールアミン、ジ−n−およびi−プロパ
ノールアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノール、メチル
エタノールアミンおよびエチルエタノールアミンが含まれる。好ましいのは、2−アミノ
エタノールである。
【0016】
アミノカルボン酸には、C2〜12のもの、例えばアミノ酸[グリシン、アラニン、バ
リン、(イソ)ロイシン、フェニルアラニン等]、ω−アミノアルカン酸(例えばω−ア
ミノカプロン、ω−アミノエナント、ω−アミノカプリル、ω−アミノペルゴン、ω−ア
ミノカプリン、11−アミノウンデカンおよび12−アミノドデカン酸)、および芳香族
アミノカルボン酸(例えばo−、m−およびp−アミノ安息香酸)が含まれる。
ヒドロキシカルボン酸には、上記アミノカルボン酸に相当する(NHがOに置換った)
もの(例えばω− ヒドロキシカプロン酸、サリチル酸、p−およびm−ヒドロキシ安息
香酸)、並びにグリコール酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸およびベ
ンジル酸が含まれる。好ましいのは12−アミノドデカン酸である。
【0017】
多価フェノールには、C6〜18の2価フェノール、例えば単環2価フェノール(ハイ
ドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフ
ェノールA、F、C、B、ADおよびS、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロ
キシジフェニル−2,2−ブタン等)、および縮合多環2価フェノール[ジヒドロキシナ
フタレン(例えば1,5−ジヒドロキシナフタレン)、ビナフトール等];並びに3価〜
8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロ
ログルシノール、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレ
ノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルター
ルアルデヒド、グリオキザール、アセトン)低縮合物(例えばフェノールもしくはクレゾ
ールノボラック樹脂、レゾールの中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルター
ルアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトン
の縮合反応によって得られるポリフェノール)が含まれる。
【0018】
開始剤へのAOの付加は、通常の方法で行うことができ、無触媒、または触媒(アルカ
リ触媒、アミン触媒、酸性触媒等)の存在下(とくにAO付加の後半の段階で)に常圧ま
たは加圧下に1段階または多段階で行なわれる。2種以上のAOは、ランダム付加、ブロ
ック付加、両者の組合せ(例えばランダム付加に次いでブロック付加)のいずれでもよい

AO付加物のカップリング剤には、ポリハライド、例えばC1〜6のアルカンポリハラ
イド(例えばC1〜4のアルキレンジハライド:メチレンジクロラ イド、1,2−ジブ
ロモエタン等);エピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等);およびポリエポキシドが
含まれる。
【0019】
OH末端のPTの例には、PTジオール、例えばポリアルキレングリコール(以下PA
Gと略記)[例えばPEG、PPGおよびPTMG、ポリ−3−メチルテトラメチレンエ
ーテルグリコール]、共重合ポリオキシアルキレンジオール〔EO/PO共重合ジオール
、THF/EO共重合ジオール、THF/MTHF共重合ジオール等(重量比、例えば1
/9〜9/1)〕、芳香環含有ポリオキシアルキレンジオール[ポリオキシアルキレンビ
スフェノールA(ビスフェノールAのEOおよび/またはPO付加物等)];および3官
能以上のPTポリオール、例えばポリオキシプロピレントリオール(GRのPO付加物等
);並びにこれらの1種以上をメチレンジクロライドでカップリングしたものが含まれる

【0020】
OH末端のPSには、縮合PSポリオール、ポリラクトン(以下PLと略記 )ポリオ
ール、ヒマシ油系ポリオール[ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド)およびそのポリ
オール変性物]、およびポリカーボネートポリオールが含まれる。
縮合PSポリオールは、ポリオールとポリカルボン酸類(酸もしくはそのエステル形成
性誘導体を指す。以下同様。)(および必要によりヒドロキシカルボン酸)との重縮合ま
たはポリオールとポリカルボン酸無水物およびAOとの反応により、PLポリオールはポ
リオールを開始剤とするラクトンの開環付加(またはポリオールとヒドロキシカルボン酸
との重縮合)により、ヒマシ油のポリオール変性物はヒマシ油とポリオールとのエステル
交換反応により、そしてポリカーボネートポリオールはポリオールを開始剤とするアルキ
レンカーボネートの開環付加/重縮合、ポリオールとジフェニルもしくはジアルキルカー
ボネートの重縮合(エステル交換)、またはポリオールもしくは2価フェノール(前記の
もの:ビスフェノールA等)のホスゲン化により、製造することができる。
【0021】
PSの製造に用いるポリオールは、通常1,000以下、好ましくは30〜500のO
H当量(OH当たりのMn)を有する。その例には、上記の多価アルコ ール[ジオール
(例えばEG、1,4−BD、NPG、HDおよびDEG)および3価以上のポリオール
(GR、TMP、PE等)]、上記PTポリオール(PEG、PPG、PTMG等)、お
よびこれらの2種以上の混合物が含まれる。縮合PSポリオールの製造に好ましいのは、
ジオール、およびそれと少割合(例えば10当量%以下)の3価以上のポリオールとの併
用である。
【0022】
ポリカルボン酸には、ジカルボン酸および3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸
が含まれる。それらの例には、C2〜30またはそれ以上(好ましくはC2〜12)の飽
和および不飽和の脂肪族ポリカルボン酸、例えばC2〜15ジカルボン酸(例えばシュウ
、コハク、マロン、アジピン、スベリン、アゼライン、セバチン、ドデカンジカルボン、
マレイン、フマルおよびイタコン酸)、C6〜20トリカルボン酸(例えばトリカルバリ
ルおよびヘキサントリカルボン酸)];C8〜15の芳香族ポリカルボン酸、例えばジカ
ルボン酸(例えばテレフタル、イソフタルおよびフタル酸)、トリ−およびテトラ−カル
ボン酸(例えばトリメリットおよびピロメリット酸);C6〜40の脂環式ポリカルボン
酸(ダイマー酸等);およびスルホ基含有ポリカルボン酸[上記ポリカルボン酸にスルホ
基を導入してなるもの、例えばスルホコハク、スルホマロン、スルホグルタル、スルホア
ジピンおよびスルホイソフタル酸、およびそれらの塩(アルカリ金属、アルカリ土類金属
およびIIB族金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、並びに4級アンモニウム塩等)];
並びにカルボキシル基末端のポリマーが含まれる。
【0023】
カルボキシル基末端のポリマーには、PTポリカルボン酸、例えばポリオール[上記の多価アルコール、PTポリオール等]のカルボキシメチルエーテル(アルカリの存在下にモノクロル酢酸を反応させて得られる);およびPD、PSおよび/またはPUポリカルボン酸、例えば上記ポリカルボン酸を開始剤としてラクタムもしくはラクトン(前記)を開環重合させてなるポリラクタムポリカルボン酸およびPLポリカルボン酸、上記ポリカルボン酸類の2分子またはそれ以上をポリオール(前記)またはポリアミンもしくはポリイソシアネート(PI、後述)でカップリング(エステル化またはアミド化)させてなる縮合PSポリカルボン酸および縮合PDポリカルボン酸、および上記のポリカルボン酸類およびポリオールとPIを反応(ウレタン化およびエステル化もしくはアミド化)させてなるPUポリカルボン酸が含まれる。
【0024】
ラクタムには、C4〜15(好ましくはC6〜12)のもの、例えばカプロラクタム、
エナントラクタム、ラウロラクタムおよびウンデカノラクタム;ラクトンには、上記ラク
タムに相当する(NHがOに置換った)もの(例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラ
クトン、γ−バレロラクトン)が含まれる。
【0025】
エステル形成性誘導体には、酸無水物、低級アルキル(C1〜4)エステルおよび酸ハ
ライド、例えばコハク、マレイン、イタコンおよびフタル酸無水物 、テレフタル酸ジメ
チル、並びにマロニルジクロライドが含まれる。
縮合PSポリオールの製造に好ましいのは、ジカルボン酸類、およびそれと少割合(例
えば10当量%以下)の3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸類との併用である。
ラクトンおよびヒドロキシカルボン酸には前掲のものが含まれる。
アルキレンカーボネートには、C2〜6のアルキレン基を有するもの、例えばエチレン
およびプロピレンカーボネートが含まれる。ジアルキルカーボネートには、C1〜4のア
ルキル基を有するもの、例えばジメチル、ジエチルおよびジ−i−プロピルカーボネート
が含まれる。
【0026】
OH末端のPSの具体例には、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポ
リヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレン/プロピレン
アジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリブチレン/ヘキサメチレンアジペ
ート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポ
リエチレンアゼレート、ポリエチ レンセバケート、ポリブチレンアゼレート、ポリブチ
レンセバケート、ポリカプロラクトンジオールおよびポリヘキサメチレンカーボネートジ
オールが含まれる。
【0027】
OH末端のPDには、ポリカルボン酸類(上記)を、ヒドロキシルアミン(前記)また
はポリオール(上記)およびポリアミン(PA)(後述)と重縮合させてなる、ポリ (
エステル)アミドポリオールが含まれる。
【0028】
OH末端のPUには、ポリオールをPIで変性してなるOH末端ウレタンプレポリマー
が含まれる。ポリオールには、前記の、多価アルコール、高分子ポリオール(上記OH末
端のPTおよびPS、並びに後述のOH末端のVPおよびP/P)、並びにこれらの2種
以上の併用が含まれる。ポリオールのうち、好ましいのは高分子ポリオール(とくにOH
末端のPSおよびとくにPT)およびこれと低分子ポリオール(とくに多価アルコール)
との併用である。併用する低分子ポリオールの量は、要求される性能に応じて適宜変える
ことができるが、一般に、高分子ポリオール1当量に対して、0.01〜0.5当量、さ
らに0.02〜0.4当量とくに0.1〜0.2当量が好ましい。
OH末端ウレタンプレポリマー製造に当り、ポリオールとPIとの当量比(OH/NC
O比)は、通常1.1/1〜10/1、好ましくは1.4/1〜4/1とくに 1.4/
1〜2/1である。ポリオールとPIとは、1段で反応させても、多段で反応(例えばポ
リオールもしくはPIの一部を反応させたのち残部を反応)させてもよい。
【0029】
OH末端のVPには、ポリブタジエン系ポリオール、例えばOH末端のブタジエンホモ
ポリマーおよびコポリマー(スチレン−ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル−ブタ
ジエンコポリマー等)[1,2−ビニル構造を有するもの、1,4−トランス構造を有す
るもの、1,4−シス構造を有するもの、およびこれらの2種以上を有するもの(1,2
−ビニル/1,4−トランス/1,4−シスのモル比100〜0/100〜0/100〜
0、好ましくは10〜30/50〜70/10〜30]、並びにこれらの水素添加物(水
素添加率:例えば20〜100%);アクリルポリオール、例えばアクリル共重合体[ア
ルキル(C1〜20)(メタ)アクリレート、またはこれらと他のモノマー(スチレン、
アクリル酸等)との共重合体]にヒドロキシル基を導入したもの[ヒドロキシル基の導入
は主としてヒドロキシエチル(メタ)アクリレートによる];および部分鹸化エチレン/
酢酸ビニル共重合体が含まれる。
【0030】
P/Pは、ポリオール(前述のOH末端のPTおよび/またはPS、またはこれと前記
の多価アルコールとの混合物)中でエチレン性不飽和モノマーをその場で重合させること
により得られる。エチレン性不飽和モノマーには、アクリル系モノマー、例えば(メタ)
アクリロニトリルおよびアルキル(C1〜20またはそれ以上)(メタ)アクリレート(
メチルメタクリレート等);炭化水素(以下HCと略記)系モノマー、例えば芳香族不飽
和HC(スチレン等)および脂肪族不飽和HC(C2〜20またはそれ以上のアルケン、
アルカジエン等、例えばα−オレフィンおよびブタジエン);並びにこれらの2種以上の
併用[例えばアクリロニトリル/スチレンの併用(重量比100/0〜80/20)]が
含まれる。P/Pは、例えば5〜80%またはそれ以上、好ましくは30〜70%の重合
体含量を有する。
上記の高分子ポリオールのうちで好ましいのはPTポリオールおよびPSポリオールであ
る。
【0031】
[イソシアネート成分]
本発明におけるイソシアネート成分を構成するポリイソシアネート(B)には、2〜6個またはそれ以上(好ましくは2〜3個とくに2個)のイソシアネート基を有する、下記のポリイソシアネート(以下PIと略記することがある。)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(1)C(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族PI:
ジイソシアネート(以下DIと略記)、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘ
キサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、デカメチレン
DI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチ ルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレートおよびビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート;
3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば1,6,1 1−ウンデカントリイ
ソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3
,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リ
ジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物、2−イソシアナトエチル−2
,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−
2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等);
【0032】
(2)C4〜15の脂環式PI:
DI、例えばイソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI
(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、 メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イ
ソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5
−および/または2,6−ノルボルナンDI;
3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネー
ト;
(3)C8〜15の芳香脂肪族PI:
m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、ジエチルベンゼンDIおよびα,
α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI);
(4)C6〜20の芳香族PI:
DI、例えば1,3−および/または1,4−フェニレンDI、2,4−および/また
は2,6−トリレンDI(TDI)、4, 4’−および/または2,4’−ジフェニル
メタンDI(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート
、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナ
トビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンおよび
1,5−ナフチレンDI;
3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチ
レンポリフェニレンポリイソシアネ ート);
【0033】
(5)PIの変性体:
上記PIの変性体、例えばカルボジイミド、ウレタン、ウレア、イソシアヌレート、ウ
レトイミン、アロファネート、ビウレット、オキサゾリドンおよび/またはウレトジオン
基を有する変性体)、例えばMDI、TDI、HDI、IPDI等のウレタン変性物(ポ
リオールと過剰のPIとを反応させて得られるNCO末端ウレタンプレポリマー)、ビウ
レット変性物、イソシアヌレート変性物、トリヒドロカルビルホスフェート変性物、およ
びこれらの混合物。
ウレタン変性に用いるポリオールには、前記の多価アルコール、PTポリオールおよび
/またはPSポリオールが含まれる。好ましいのは、500以下とくに30〜200のO
H当量を有するポリオール、例えばグリコール(EG、PG、DEG、DPG等)、トリ
オール(TMP、GR等)、4官能以上の高官能ポリオール(PE、SO等)およびこれ
らのAO(EOおよび/またはPO)(1〜40モル)付加物、とくにグリコールおよび
トリオールである。ウレタン変性におけるPIとポリオールとの当量比(NCO/OH比
)は、通常1.1/1〜10/1、好ましくは1.4/1〜4/1とくに1.4/1〜2
/1である。
上記変性PIの遊離イソシアネート基含量(重量%)は通常8〜33%、好ましくは10〜30%、とくに好ましくは12〜29%である。
【0034】
[ポリウレタン樹脂]
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)からポリウレタン樹脂を形成させるに際して、(A)と(B)の割合をイソシアネート指数[(NCO基/OH基の当量比)×100]で表した場合、該指数は種々変えることができるが、ポリウレタン樹脂強度および反応率の観点から、好ましくは90〜100、さらに好ましくは95〜100、とくに好ましくは98〜100である。
また(A)と(B)の反応方法としては、ワンショット法であっても、予め(A)の一
部と(B)を反応させてNCO末端プレポリマーを形成させた後、残りの(A)と反応さ
せるか、あるいは予め(A)と、(B)の一部を反応させてOH末端プレポリマーを形成
させた後、残りの(B)と反応させるプレポリマー法であってもよい。遊離のイソシアネートの残存量を極力抑制する観点から好ましいのはプレポリマー法である。
【0035】
[ポリウレタンフォーム]
本発明のポリウレタンフォームは、気泡中の酸素濃度が22〜100体積%であることを特徴とする。酸素濃度が22%未満では後述の血液細胞保存バッグ中での酸素供給性が悪くなる。
該ポリウレタンフォームの製造方法には、(1)メカニカルフロス発泡法、(2)酸素ローディング発泡法、および(1)と(2)を組み合わせる方法が含まれる。
(1)の方法は、メカニカルフロス発泡機を用いるもので、上記ポリオール成分およびイソシアネート成分からなるポリウレタン樹脂形成性組成物を混合して反応させるに際し、混合液中に酸素を吹き込んで製造する方法である。一般的には、内面に多数の歯の付いた円筒状のステーターと、ステーター内部に同じく多数の歯の付いたローターからなるメカニカルフロス発泡機のローターが回転中に、発泡させたい材料と不活性ガス(一般的には空気、窒素であり、本発明では酸素である。)を同時に連続的に当該発泡機に注入することにより、当該発泡機の吐出口から発泡材料を連続的に吐出させる方法(特許第3083751号公報の選択図3参照)である。
【0036】
メカニカルフロス発泡機は、材料や不活性ガスの注入口が任意の数だけ設けられるため、2種類以上の材料と不活性ガスの混合が可能である。また材料は硬化性があったとしても発泡機から出た後に硬化するのであれば差し支えない。
吐出口から吐出される材料と不活性ガスの混合物は、25〜120℃に予め温度調整された型(開放型や密閉型)、あるいはこぼれないように両側を仕切られたベルトコンベア上に注型される。
型やベルトコンベアの材質は金属(アルミニウム、ステンレス等)やプラスチック(ポ
リプロピレンやポリカーボネート等)が通常使用される。
発泡後の気泡径が小さく、得られる硬化物内の密度分布が均一であるという点でメカニ
カルフロス発泡法は、ポリウレタンフォームの製造法として一般的な発泡剤発泡法より好ましい。
上記の不活性ガスとして酸素を用いることにより本発明のポリウレタンフォームを製造することができる。
【0037】
(2)の方法は、メカニカルフロス発泡機を含む一般的なポリウレタン発泡機を用いるもので、上記ポリオール成分および/またはイソシアネート成分に予め加圧下で酸素を溶解、含有させた後、これらの成分を混合して反応させ、発泡させて製造するものである。
該成分に酸素を加圧溶解させる方法は通常の一般的なエアーローディング法と同じ方法でよい。すなわち耐圧容器中で酸素の雰囲気下、該成分を撹拌しながら所定時間(通常1〜8時間、好ましくは2〜6時間)加圧(通常0.05〜1.0MPa、好ましくは0.1〜0.9MPa)する。酸素ローディングはポリオール成分もしくはイソシアネート成分のどちらか一方に対してのみ実施してもよいが、ポリウレタンフォームの気泡中の酸素濃度の観点から両成分に対して行うことが好ましい。
【0038】
(3)の方法は、上記(1)と(2)を組み合わせた方法で、予め加圧下で酸素ローディングしたポリオール成分およびイソシアネート成分の混合液中に酸素を吹き込んでメカニカルフロス発泡して製造する方法である。
(1)〜(3)の製造方法のうち、ポリウレタンフォームの気泡中の酸素濃度の観点から好ましいのは(1)または(3)の製造方法である。
【0039】
ポリオール成分およびイソシアネート成分からなるポリウレタン樹脂形成性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて整泡剤(C1)および脱水剤(C2)からなる群から選ばれる添加剤(C)を含有させることができる。
整泡剤(C1)としては、整泡効果を有するジメチルポリシロキサンや主鎖、側鎖および/または末端をポリオキシアルキレン鎖、フェニル、アルキル、アラルキルまたはアリールアルキル基等で変性した非反応性ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
(C1)には、気泡の整泡効果と連通効果のバランスに優れたもの[例えば、商品名「SZ−1931」、日本ユニカー(株)製]、整泡効果がとくに優れ独立気泡率を高める特性に優れたもの[例えば、商品名「SZ−1932」、日本ユニカー(株)製]、連通効果を有し独立気泡率を下げる特性に比較的優れたもの[例えば、商品名「SZ−1923」、日本ユニカー(株)製]等が含まれる。これらの種類、使用量を選択することにより独立気泡率を幅広く調整することができる。
(C1)のMnは、整泡効果の観点から好ましくは5,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜50,000である。
(C1)の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、通常6%以下、整泡効果
およびポリウレタン樹脂の強度の観点から好ましくは0.05〜5%、さらに好ましくは0.3〜3%、とくに好ましくは0.5〜2%である。
【0040】
脱水剤(C2)は、ポリオール(A)中に水分や湿分が混入してウレタン化反応における発泡剤となって炭酸ガスが発生することを防止し、より緻密な気泡を有するポリウレタンフォームを得ることを目的に含有させるものである。
(C2)としては、通常用いられる脱水効果を有する化合物が使用できるが、中性また
はアルカリ性で体積平均粒径が0.1〜50μmである脱水剤が好ましい。
(C2)の具体例としては、例えば酸化カルシウム、硫酸カルシウム(半水石膏)、塩
化カルシウム、モレキュラーシーブが挙げられる。これらのうち粒径が小さく組成物中へ
の微分散、および脱水効果の安定性の観点から好ましいのは硫酸カルシウム(半水石膏)
およびモレキュラーシーブ、さらに好ましいのはモレキュラーシーブである。
(C2)の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、通常20%以下、脱水効
果および組成物の適度な流動性の観点から好ましくは0.3〜15%、さらに好ましくは
0.5〜10%である。
【0041】
触媒(C3)としては、3級アミン(トリエチレンジアミン等)、金属有機酸塩[ジブチル錫ジラウレート、ジ−2エチルヘキシル鉛、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等]が挙げられる。ポリオール(A)として前記3級アミノ基含有ポリオールを用いる場合は該ポリオールが触媒効果を有することから、改めて触媒を添加することなく、いわゆる無触媒でポリウレタンフォームを得ることもできる。
(C3)の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、通常1%以下、好ましくは0.001〜0.5%、さらに好ましくは0.005〜0.3%である。
(C1)〜(C3)は、通常ポリオール成分に配合して用いられる。
【0042】
本発明のポリウレタンフォームの気泡径は、後述する血液細胞保存バッグ中での酸素供給性および気泡の安定性の観点から好ましくは0.5〜300μm、さらに好ましくは1〜200μmである。
該ポリウレタンフォームの製造において、含有させる酸素の量(体積%)は、前述のポリオール成分とイソシアネート成分の合計体積に基づいて、後述する血液細胞保存バッグ中での酸素供給性および気泡の安定性の観点から好ましくは10〜95、より好ましくは12〜85、さらに好ましくは15〜80、とくに好ましくは20〜75である。
該ポリウレタンフォームの気泡中の酸素濃度(体積%)は、22〜100%、酸素供給性の観点から好ましくは50〜100%である。該酸素濃度は、RT−Msieve 5Aカラム[RESTEK(株)製]を取り付けたガスクロマトグラフGC−2010[(株)島津製作所製]を用いて測定することができる。
【0043】
本発明のポリウレタンフォームの密度は、機械的強度および酸素供給性の観点から好ましくは0.01〜0.7g/cm3、さらに好ましくは0.03〜0.5g/cm3、とくに好ましくは0.05〜0.3g/cm3である。
また、該ポリウレタンフォームの独立気泡率は、酸素徐放性およびポリウレタンフォームの脆性低減の観点から好ましくは70〜100%、さらに好ましくは80〜100%である。該独立気泡率は、ASTM D−2856に準じてエアーピクノメーター法で測定することができる。
独立気泡率は、前記整泡剤(C1)の種類、使用量の選択に加えて、ポリウレタン樹脂形成性組成物におけるポリオール(A)およびポリイソシアネート(B)の種類等の選択によっても調整することができる。
例えば、ポリオール(A)として、比較的高官能(3価〜6価またはそれ以上)のポリオールや前記低分子ポリオール(OH当量250未満のもの)の使用割合を増す、ポリイソシアネート(B)として比較的高官能(2価〜3価またはそれ以上)のポリイソシアネートの使用割合を増す等により、独立気泡率を高めることができ、逆にポリオール(A)として、低官能(2価以下)のポリオールや前記高分子ポリオール(OH当量250以上のもの)の使用割合を増す、ポリイソシアネート(B)として低官能(2価)のポリイソシアネートの使用割合を増す等により、独立気泡率を下げることができる。
【0044】
[ポリウレタンフォームを内蔵してなる血液細胞保存バッグ]
血液細胞保存バッグは、血液細胞(血小板等)を一定期間保存するための袋状の容器である。通常塩化ビニル、ポリオレフィン等の素材からなり、形状は袋状で、通常タテ14〜22cm、ヨコ14〜22cm、充填時最大容積250〜700cm3である。
本発明のポリウレタンフォームは、通常該袋状の保存バッグの製造時に内蔵される。
【0045】
[ポリウレタンフォームを内蔵してなる血液細胞製剤]
血液細胞(血小板等)は、上記ポリウレタンフォームを内蔵させてなる血液細胞保存バッグに充填して血液細胞製剤とされる。保存バッグ中の血液細胞の体積に基づくポリウレタンフォームの割合は、酸素供給性および取り扱い性の観点から好ましくは30〜100%、さらに好ましくは40〜80%である。
上記のように、保存バッグ入り血液細胞製剤に本発明のポリウレタンフォームを内蔵することにより、血液細胞の保存安定性を著しく改良することができる。該保存安定性は血小板数、血漿pH、凝集能、低浸透圧ショック回復率およびスワーリング等で評価することができる。
【0046】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるもので
はない。なお、以下において部は重量部、%は体積%を表す。実施例、比較例において使用する原料を以下に示す。
ポリオール (A1):グリセリンのPO付加物[商品名「サンニックスGP−400
」、OH価400、三洋化成工業(株)製]
ポリオール (A2):ポリマーポリオール[商品名「サンニックスFP−202
」、OH価400、三洋化成工業(株)製]
イソシアネート(B1):ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート[商品名「ミ
リオネートMR−200」、日本ポリウレタン工業(株)製]
整泡剤 (C1−1):商品名「SZ−1931」、日本ユニカー(株)製
整泡剤 (C1−2):商品名「SZ−1932」、日本ユニカー(株)製
整泡剤 (C1−3):商品名「SZ−1923」、日本ユニカー(株)製
脱水剤 (C2−1):合成ゼオライト[商品名「PURMOL 3ST」、CU
Chemie Uetikon AG製]
触媒 (C3−1):商品名「ネオスタンU−600」、日東化成(株)製
実施例1〜4
表1に記載の配合組成で、各原料をプラネタリーミキサーに投入し、130rpmで10分間撹拌後、5分間30mmHg以下で撹拌脱泡してポリオール成分を得た。イソシアネート成分も同様にして得た。各成分とも25±1℃となるよう温度調整した。
次に、加圧可能で撹拌機付きのタンク2基の各々にポリオール成分とイソシアネート成分を入れ0.2Paで4時間、15rpmで撹拌した。
タンクからメカニカルフロス発泡機[商品名「MF−350型メカニカルフロス発泡装置」、東邦機械工業(株)製。以下同じ。]にポリオール成分とイソシアネート成分をモーノポンプで送り込み、メカニカルフロス発泡機のローターを300rpmで回転させながら、ポリオール成分およびイソシアネート成分を合計流量3L/分、また酸素を表1に記載の体積%になるような流量でミキシングヘッド入り口部に連続供給した。混合、吐出された液をミキシングヘッド出口から長さ2m、内径19mmのビニールホースを通し内寸が縦500×横500×高さ150mmの金型に注型高さ80mmとなるように注型して硬化させ、ポリウレタンフォーム成形品を得た。成形品は下記の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0047】
比較例1〜2
表1に記載の配合組成で実施例1〜4と同様にして成形品を得た。成形品は下記の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
<成形品の評価方法>
(1)密度 (単位:g/cm3
上記ポリウレタンフォーム成形品の中心部から、200×200×10mmの試験片を切り出し、20〜25℃に温調された室内で12時間以上静置後測定した試験片の重量を、3辺の長さの積より算出した体積で除して密度とした。
(2)独立気泡率(%)
ASTM D−2856に記載の方法に準じエアーピクノメーター法により測定した。
(3)気泡中酸素濃度(%)
上記ポリウレタンフォーム成形品の中心部から、20×30×10mmの試験片を切り出し、アルゴン雰囲気下の密閉瓶に入れた。150〜250℃で5分以上静置後、密閉瓶内の気体を、RT−Msieve 5Aカラム[RESTEK(株)製]を取り付けたガスクロマトグラフGC−2010[(株)島津製作所製]を用いて測定した。検量線は、少なくとも3点以上の酸素濃度既知の酸素と窒素からなる混合気体を用いて作成した。
(4)フォーム中酸素量(体積%)
ポリウレタンフォーム中の酸素量(体積%)は、下記式で表される。

フォーム中酸素量(体積%)= VO× (DJ−DF)/DJ

J:ポリウレタン樹脂密度 (g/cm3
F:ポリウレタンフォーム密度 (g/cm3
O:気泡中酸素濃度 (体積%)
【0048】
【表1】

(*1)体積%:下記式で表される。注入ガス量は25℃、1気圧のときの体積を示す。
ここにおいて注入ガスとは酸素(実施例1〜3)、酸素/窒素混合気体
(体積比50/50)(実施例4)、酸素/窒素混合気体(体積比10
/90)(比較例1)または空気(比較例2)を指す。

体積%=注入ガス量×100/(注入ガス量+ガス注入前の組成物全体積)
【0049】
実施例5〜8、比較例3〜5
実施例1〜4および比較例1〜2で得られた各ポリウレタンフォーム成形品から切り出したポリウレタンフォーム(タテ×ヨコ×厚さ=12×10×1cm)を準備し、保存バッグ用シート(タテ×ヨコ=40×30cm)を袋状に成形するに際して該ポリウレタンフォームを1個ずつ内蔵させた各保存バッグを得た。各保存バッグに、濃縮血小板(PC)5単位(血小板数1×1011個)を分注して充填し血小板製剤(K1〜K4、比K1〜比K2)を得た。該血小板製剤を22℃、60rpmで水平振盪[振盪機PR−12、TAITEC(株)製]しながら7日間保存した。保存後の血小板について以下の項目を測定して、血小板の保存安定性を評価した。ポリウレタンフォームを内臓しない血小板保存バッグを上記と同様に作成し、該保存バッグに濃縮血小板(PC)5単位を充填したものを比K3とした。
【0050】
<血小板の保存安定性評価方法>
(1)血小板数
自動血球計数装置[F−520、シスメックス(株)製]を使用して行った。
(2)血漿pH
保存後の血小板の一部を用いて、pHメーター[F8DP、(株)堀場製作所]を使用して行った。
(3)低浸透圧ショック回復率(%HSR)
血小板に1/3容量の水を加えて、紫外可視分光光度計[UV−2550、(株)島津製作所社製]で波長610nmの吸光度を測定し、水添加5分後の値と水添加直後の最大値の比から求めた。低浸透圧ショック回復率は細胞の脆弱性を示し、その数値が大きい程、血小板が変性していないことを示す。
(4)スワーリング
スワーリングとは、血小板の入ったバッグの広い面を水平に保持し、蛍光灯等にかざしながらゆっくりと円を描くように水平移動させたとき、渦巻き状のパターンが生じる現象である。この現象が容易に起こる程、血小板の変性の程度が少なく保存安定性が良好であることを示す。下記の基準で評価した。
(評価基準)
+ スワーリングが容易に起こる
± スワーリングがわずかに起こる
− スワーリングが全く起こらない
【0051】
【表2】

【0052】
表2の結果から、本発明のポリウレタンフォームを内蔵した保存バッグ入り血小板製剤(実施例5〜8)は比較の血小板製剤(比較例3〜5)に比べて、保存安定性が著しく優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のポリウレタンフォームを内臓してなる血液細胞(とくに血小板)保存バッグ入り血液細胞製剤は、保存安定性に極めて優れることから、該保存バッグは、血小板のみでなく、赤血球、血漿等の血液細胞全般用の保存バッグとして極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とイソシアネート成分からなる混合液中に、酸素を含有させて発泡させてなり、気泡中の酸素濃度が22〜100体積%であることを特徴とする酸素含有ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
ポリウレタンフォームの密度が、0.01〜0.7g/cm3である請求項1記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
ポリウレタンフォームの独立気泡率が70〜100%である請求項1または2記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載のポリウレタンフォームを内蔵させてなる血液細胞保存バッグ。
【請求項5】
請求項4記載の保存バッグに血液細胞を充填してなる血液細胞製剤。
【請求項6】
血液細胞の体積に基づくポリウレタンフォームの割合が30〜100体積%である請求項5記載の血液細胞製剤。
【請求項7】
ポリオール成分とイソシアネート成分からなる混合液中に、酸素を含有させて発泡させることを特徴とする、気泡中の酸素濃度が22〜100体積%である酸素含有ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
血液細胞を充填してなる血液細胞保存バッグに、気泡中の酸素濃度が22〜100体積%の酸素含有ポリウレタンフォームを内蔵させて酸素を徐放させることを特徴とする、血液細胞の保存安定性改良方法。

【公開番号】特開2008−214367(P2008−214367A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49273(P2007−49273)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】