説明

酸素吸収剤

【課題】酸素吸収剤としてアルミニウムの単位質量あたりの酸素吸収能を向上できるとともに、副反応による水素発生を低減化したアルミニウム系の酸素吸収剤を提供する。
【解決手段】シリコン含有量が0.2質量%以上50質量%以下であるアルミニウム−シリコン合金を、酸素吸収の主剤として含有し、さらに、酸素吸収速度を大きくするための酸化促進剤として、γ−アルミナあるいはベーマイト等の結晶性アルミニウム化合物を含有する酸素吸収剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の包装時に同梱等され、内容物の酸化劣化を防止できるアルミニウム系の酸素吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の包装体に小袋同梱等の形態で用いることで、包装体内部を無酸素状態に保ち、保存中の内容物の酸化劣化による変色、退色、味の変化やその他の性能変化等を防止できる酸素吸収剤が、近年多用されている。これらの酸素吸収剤は、例えば、鉄粉に代表される無機系酸素吸収剤を主剤としたものや、アスコルビン酸や不飽和脂肪酸等の有機系酸素吸収剤を主剤としたものが多い。
【0003】
ところで、アルミニウムは、鉄とは異なり磁気による金属検出器には検知されないため、アルミニウムを主体とした酸素吸収剤は、食品と共に密封したあとに食品の異物混入検査が可能となる利点を有する。また、アルミニウムは比較的安価で、一般に包装材料として多用されるアルミ箔やアルミ蒸着フィルムと同素材であるためゴミの分別廃棄が容易(易廃棄性)であるという利点も有する。さらに、酸素との反応活性も高い。これらのため、アルミニウムを酸素吸収剤の主剤として用いる提案もなされている。
【0004】
しかし、アルミニウムは酸化により表面に緻密な酸化被膜を形成し、この酸化被膜は酸素や水の透過性が低いことがよく知られている。つまり、酸素吸収が表面だけに限定される。そのため、アルミニウムに塩化ナトリウム等の塩類を加えたり(例えば、特許文献1参照)、アルミニウムとアルカリ金属酸化物および/又はアルカリ土類金属との混合物としたりすることで(例えば、特許文献2参照)、アルミニウムの酸素吸収量をわずかでも増加させようとする試みがなされてきた。しかし、いずれの場合も酸素吸収量は同当量の鉄と比較しても微々たるものにすぎず、アルミニウム粒子の形状や性状も酸素吸収の前後でほとんど変化がない。そのため、アルミニウムを主剤とする酸素吸収剤の実用化にはほど遠いのが実情である。
【0005】
また、アルミニウムの酸化は主に水の共存下において生じるため、アルミニウムを主剤とする酸素吸収剤では、アルミニウムが有酸素状態での水素が発生する副反応にも消費されてしまい、ただでさえ低いアルミニウムの酸素吸収への利用効率がさらに低下するという問題点があった。さらに、水素発生反応は、無酸素状態でもわずかながら生じることがあり、その場合は、酸素吸収剤として使用中に水素ガス濃度が上昇することになるため、対策が求められていた。
【特許文献1】特開平3−137935号公報
【特許文献2】特開平9−117660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酸素吸収剤として使用中に、水素ガス濃度が上昇しにくいアルミニウム系の酸素吸収剤を提案することを課題とする。好ましくはアルミニウムの単位質量あたりの酸素吸収能を大幅に向上できると共に、副反応による水素が発生しにくい酸素吸収剤を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シリコン含有量が0.2質量%以上50質量%以下であるアルミニウム−シリコン合金を、酸素吸収の主剤とすることを特徴とする酸素吸収剤である。ここで、前記アルミニウム−シリコン合金のアルミニウム含有量が、50質量%以上99.8質量%以下であることは好ましい。また、さらに、酸化促進剤を含有することは好ましい。また、前記酸化促進剤が、結晶性アルミニウム化合物であることは好ましい。また、前記結晶性アルミニウム化合物が、γ−アルミナであることは好ましい。また、前記結晶性アルミニウム化合物が、ベーマイトであることは好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酸素吸収剤等は、酸素吸収能を有し、かつ酸素吸収中の副反応による水素発生量が少ない。特に、高い酸素吸収能を有する構成とした場合であっても、水素発生が大幅に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の酸素吸収剤は、シリコン含有量が0.2質量%以上50質量%以下であるアルミニウム−シリコン合金を酸素吸収の主剤として用いる。これに含有されるアルミニウムが合金の母金属元素として酸素を吸収する機能を有する。また、その原理は不明であるが、シリコンを含有する合金とすることにより、アルミニウムによる酸素吸収はほとんど阻害されずに、一方で水素発生は大きく抑制されるという特性を有する。
【0010】
アルミニウム−シリコン合金のシリコン含有量は、0.2質量%以上50質量%以下である。この範囲で、酸素吸収特性と水素発生特性のバランスに優れる。好ましくは1質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上30質量%以下である。さらに好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
【0011】
アルミニウム−シリコン合金のアルミニウム含有量は、50質量%以上99.8質量%以下とすることが好ましい。この範囲で、十分な酸素吸収容量を確保できる。より好ましくは60質量%以上99質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上90質量%以下である。
【0012】
アルミニウム−シリコン合金に含まれる他の金属等の不純物は、酸素吸収の妨げになる傾向があるので、不純物の含有量は小さい方がよい。望ましくはアルミニウム−シリコン合金に対して5質量%以下、より望ましくは1質量%以下である。
【0013】
アルミニウム−シリコン合金の形態は特に制限されないが、単位重量あたりの表面積を大きくして酸素吸収が生じやすいようにするために、例えば、箔状、繊維状、粒子状、微粒子状、粉体状等とするのが望ましい。また、粒子や粉体等が集合した多孔質の塊状のものでもよい。酸素吸収速度を大きくするには、アルミニウム−シリコン合金1gあたりの表面積が広い形態が望ましいが、一定期間にわたって酸素吸収を安定して持続させる観点からは、表面に直接現れない体積部分もある程度確保しておくことが望ましい。製造の容易さの観点も加味すると、微粒子状とするのが望ましい。具体的には、アルミニウム粒子の平均粒径は、0.1μm以上1000μm以下とするのが好ましく、より好ましくは1μm以上300μm以下である。特に好ましくは3μm以上100μm以下である。
【0014】
アルミニウム−シリコン合金の形態を粒子状、微粒子状、粉体状等とする場合、個々のアルミニウム−シリコン合金粒子の形状は、球状、涙滴状、燐片状、針状、不定形のいずれでも良く、吸収速度、持続時間、使用アルミ量、製造の容易さ等を考慮して適宜選択すればよい。また、このようなアルミニウム−シリコン合金を用いた水分散液としても良い。アルミニウム−シリコン合金と同梱して用いうる後述の結晶性アルミニウム化合物等の他の物に関しても同様である。
【0015】
このようなアルミニウム−シリコン合金は、金属アルミニウムと金属シリコンとを溶融混合し、通常のアトマイズ法や破砕法等の各種の常法を用いて粒状化して得ることができる。また、アルミニウム−シリコン合金には、反応活性をより向上させる目的で、酸やアルカリ、表面処理剤等による前処理を行ってもよいが、行わなくとも良い。
【0016】
アルミニウム−シリコン合金は、アルミニウムが酸素吸収する特性を有するが、さらに酸化促進剤をアルミニウム−シリコン合金の表面に接触させることにより、より優れた酸素吸収特性を示すようになる。特に酸化促進剤が、後述する結晶性アルミニウム化合物である場合に、水分の共存下における酸素吸収によって、全く意外にも、表面だけではなくアルミニウム−シリコン合金の内部に至るまでほぼ完全に酸化されうるようになる。そのため、当初のアルミニウム−シリコン合金が一定の平均粒径を有する球形粒子だったとしても、十分な酸素吸収後は、ほぼ全体が、シリコンと鉄の赤さびに類似した酸化アルミニウム粉体の集合物に変化する。この集合物は容易に崩れやすく、元の形状を留めることが困難である。従って、アルミニウム当量から計算した酸素吸収の理論値(上限値)に近いところまで酸化を生ぜしめることも可能であり、酸素吸収能(酸素吸収速度、酸素吸収量)が大幅に向上する。このような意外な現象が生じる原因は不明であるが、共存する結晶性アルミニウム化合物のなんらかの作用により、アルミニウムの表面酸化被膜が破壊されると共に、新たな被膜形成が阻害されているのではないかと推測している。
【0017】
また、やはり原因は不明であるが、アルミニウムにシリコンを含有せしめて合金とすることにより、シリコンを含有しない場合とほぼ同等の酸素吸収が生じる一方で、副反応として生じうる水素の発生を大幅に抑制できるという顕著な効果を発揮する。副反応で水素が発生すると、アルミニウムの酸素吸収に対する利用効率が低減することになり、予定した酸素吸収容量が低下し、酸素吸収剤の有効期間が短縮されることになり好ましくないが、シリコンを用いることで水素発生を低減化することが可能になる。
【0018】
次に、酸素吸収剤に用いうる酸化促進剤について説明する。酸化促進剤を用いることにより、アルミニウム−シリコン合金が急速に酸化されるようになる。酸化促進剤としては、結晶性アルミニウム化合物を用いるのが好ましい。結晶性アルミニウム化合物は、X線回折法によって結晶構造が検出可能な程度に結晶化したものである。なお、アルミニウム表面に通常の空気酸化あるいは陽極酸化で生成する酸化皮膜の形態は、無定形のAl23が主となり、それに数%の電解質アニオンや水を含有した構造であることが知られている(アルミニウム技術便覧編集会編、アルミニウム技術便覧、p.86、1996年カロス社出版)。このような酸化被膜と結晶性アルミニウム化合物とは、結晶性の有無により明確に区別可能である。
【0019】
結晶性アルミニウム化合物は、水分との共存下でアルミニウム−シリコン合金を表面のみならず内部まで酸化せしめる作用を有する。結晶性アルミニウム化合物としては、アルミニウム元素と、アルミニウム元素等に結合しているその他の元素との質量比率が、1:9〜8:2の範囲内のものである。この範囲内で酸化促進作用が大きくなる。より好ましくは2:8〜7:3である。さらに好ましくは3:7〜6:4であり、最も好ましくは3:7〜5.5:4.5である。結晶性アルミニウム化合物におけるアルミニウムの酸化数は1、2、3のいずれでも良いが、酸化数3のものが好ましい。
【0020】
好適な結晶性アルミニウム化合物としては、アルミニウムの酸化物、水酸化物、アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物、酢酸塩等が挙げられ、中でも、酸化物または水酸化物が好ましい。
【0021】
アルミニウムの酸化物または水酸化物としては、α−アルミナ、γ−アルミナ、η−アルミナ、δ−アルミナ、k−アルミナ、ρ−アルミナ等の無水結晶性アルミニウム化合物や、Al(OH)3またはAl23・3H2Oで表されるギブサイト、バイヤライト、ノルストランダイト等の結晶性アルミニウム化合物の3水和物や、AlO(OH)またはAl23・H2Oで表されるべーマイト、ダイアスポア等の結晶性アルミニウム化合物の1水和物や、さらにトーダイト(5Al2a・H2O)や、アルミナゲル(Al23・nH2O)等の単体やこれらを1種以上含む混合物が拳げられる。
【0022】
酸素吸収速度を大きくするには、無水酸化物の中ではγ−アルミナが好ましく、水和物の中では1水和物が好ましい。アルミニウム酸化物は、水和物とするのがより好ましく、最も好ましくはベーマイトである。
【0023】
また、結晶性アルミニウム化合物には、酸素吸収速度をより大きくするために、アルミニウム以外の元素としてイオン化傾向の高い金属元素を1種以上含んでいてよい。イオン化傾向が高い金属元素としては、例えば、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、クロム、マンガン、鉄(II)等が挙げられる。
【0024】
結晶性アルミニウム化合物の形態は特に制限されないが、アルミニウム−シリコン合金の表面との接触点が生じやすいように、表面積が大きく分散性が高い形態とするのがよい。例えば、繊維状、粒子状、微粒子状、粉体状等が挙げられ、さらに、粒子形状としては、球状、針状、燐片状、不定形状等が拳げられる。粒子形状とする場合の平均粒径は、0.01μm以上1000μm以下とするのが好ましく、より好ましくは0.05μm以上100μm以下である。特に好ましくは0.1μm以上10μm以下である。
【0025】
結晶性アルミニウム化合物は、アルミニウム−シリコン合金との接触性を確保するために、結晶性アルミニウム化合物1gあたりの比表面積が1m2/g以上であることが好ましく、10m2/g以上であることがより好ましい。特に好ましくは50m2/g以上である。
【0026】
なお、結晶性アルミニウム化合物は、その1gを100ccの水に分散させたときのpHが、3〜11となるものであることが好ましい。このようなpHを示すように組成を調整した結晶性アルミニウム化合物を選択することで、アルミニウムと酸素との反応の副反応である水素発生反応がある程度は抑制される。より好ましくは4〜9である。
【0027】
結晶性アルミニウム化合物の製造は常法に従って行えばよく、例えば、乾式または湿式の化学反応を経て、必要により乾燥処理、焼成処理、精製処理、粉砕処理等を行って製造することができる。
【0028】
アルミニウム−シリコン合金と結晶性アルミニウム化合物とを混合する質量比率は、1:99〜99:1の範囲で定めることができる。アルミニウム−シリコン合金の比率が大きい場合は、吸収できる酸素量は多くなるが、一方で酸素吸収速度は小さくなり、特に吸収初期の吸収速度が小さくなる。結晶性アルミニウム化合物の比率が大きい場合はこの逆となる。混合する質量比率は、アルミニウム−シリコン合金の表面積なども考慮しながら酸素吸収剤に求められるスペックに応じて適宜定めればよいが、通常、アルミニウム−シリコン合金と結晶性アルミニウム化合物の質量比率は、30:70〜70:30程度とするのが好ましい。
【0029】
酸素吸収剤には、酸素吸収剤の用途に合わせて、アルミニウム−シリコン合金の酸素吸収反応に化学量論的に必要な量の水分をあらかじめ添加するようにしても良い。添加の方法としては、水を直接添加しても良いし、保水剤や担体に担持等させて添加するのが好ましい。
【0030】
保水剤は、親水性で自重より多い水分を保持してゾルやゲルを構成できる公知の増粘剤やゲル化剤であり、例えば、ポリアクリル酸塩のような合成高分子やカラギーナンのような多糖類等を挙げることができ、特に制限されない。また、担体としては、脱脂綿や不織布等の保水性のある繊維製品や、活性炭やゼオライト、珪藻土、活性白土、シリカ、タルク、石膏、ケイ酸カルシウム、塩化カルシウム、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の無機粉末あるいは無機粒状物が挙げられ、特に制限されない。保水剤や担体は一種を用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
【0031】
なお、酸素吸収剤には必ずしも水分を添加せず、酸素吸収剤と一緒に包装される食品等の被包装物から分離した水分や、包装袋の包装時に袋内に残存する空気内の水蒸気や、包装後に包装袋を透過して袋内に侵入してくる水蒸気を利用して、酸素吸収反応させるようにしても良い。
【0032】
酸素吸収剤には、本発明の効果を損ねない限りにおいて、他の水素発生抑制剤や電子レンジのスパーク防止剤、またはその他の添加剤を添加してもよい。
【0033】
酸素吸収剤は、上記の各成分を所定の比率で混合し、攪拌して均一化することにより得られる。均一化にあたっては、アルミニウム−シリコン合金や結晶性アルミニウム化合物等を同時に粉砕しながら攪拌しても良い。混合及び均一化処理は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスや炭酸ガス等を用いた無酸素雰囲気下で行うことが望ましい。酸素吸収性能の点から特に好ましいのは炭酸ガスである。
【0034】
酸素吸収剤は、公知のようにそのまま酸素透過性の紙製小袋に封入して、酸素吸収剤として包装体内に同梱することができる。酸素吸収剤は、酸素吸収能を高くすることが可能なため、少ない量で必要な酸素吸収機能を果たすことができる。そのため、その他の形態の酸素吸収剤に加工して使用するのに適している。例えば、紙製造時にバインダーと共に混ぜ込んだり、酸素透過性の樹脂を用いた樹脂ペレットや樹脂シートの製造時に練り込んだりしてもよい。また、紙や樹脂シート間に、バインダーにより加工された酸素吸収剤の層を挟み込んで、多層構造のシートやフィルムとすることができ、さらには包装体のトレーや蓋に加工してもよい。この場合、包装体の少なくとも内面部分のシートやフィルムは酸素透過性のものを用いる。包装体の外面部分のシートやフィルムは、酸素が透過しにくいものを用いるのが望ましい。必要によりシートやフィルムを水分透過性または水分不透過性とするのは任意である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例等を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は、下記実施例の具体的態様に限定されるものではない。実施例等における各種物性の測定方法および評価方法は次の通りである。
(1)酸素吸収量(VOS)と水素発生量(VHG
【0036】
室温(23℃)環境下において、初期容量1000ccの保存密閉容器(本体と蓋の材質はPMMA(アクリル)、蓋パッキンはシリコンで、容器内圧が一定になるように容積可変のもの)を用意した。この容器内に、所定量の酸素吸収性組成物を大気圧下で封入後、23℃雰囲気下に48時間放置した。酸素吸収性組成物の投入前および、投入から48時間経過後の容器内の酸素ガス濃度及び水素ガス濃度を測定した。
【0037】
なお、酸素濃度は、酸素モニター(ジコー社製、商品名:JKO−O2LJDII)により測定した。また、水素濃度は、気中・溶存水素測定装置(エイブル社製、商品名:DM−10B2)により測定した。次いで、48時間経過時点における酸素吸収量を、下記式(a)により算出した。
【0038】
OS={(CO2,0/100)×V0−(CO2,t/100)×Vt}/x ・・・(a)
((a)式において、VOSは測定開始から48時間経過時までの主剤1gあたりの酸素吸収量(cc/g)、CO2,tは48時間経過時の容器内酸素濃度(vol.%)、CO2,0は酸素吸収性組成物投入前の容器内酸素濃度(vol.%)、V0は容器の初期容積(=1000cc)、Vtは保存容器の48時間経過時における容積(cc)、xは酸素吸収性組成物1gあたりに含まれる主剤の重量(g)、をそれぞれ意味する。)
【0039】
また、測定開始から48時間経過時の水素発生量(VHG)は下記式(b)により算出した。
HG=(CH2,t/100)×Vt ・・・(b)
((b)式において、VHGは測定開始から48時間経過時(測定時)までの主剤1gあたりの水素発生量(cc/g)、CH2,tは48時間経過時における容器内水素濃度(vol.%)、Vtは保存容器の48時間経過時における容積(cc)、をそれぞれ意味する。)
(2)分散液pH
【0040】
結晶性アルミニウム化合物1gを100ccの水に浸漬し、ガラス棒でよく攪拌して分散した後、この分散液のpHをpH計(新電元工業社製、商品名:Shindengen ISFET pH計KS723)を使用して測定した。
[実施例1]
【0041】
アルミニウム−シリコン合金の粉末0.5g(エカ・グラニュラージャパン社製、グレード名:AlSi12AS<75μm、平均粒径51.98μm、アルミニウム比率88.16質量%、シリコン比率11.84質量%のもの)と、結晶性アルミニウム化合物としてベーマイト粉末1.0g(大明化学工業社製、グレード名:AE−001、平均粒径0.2μm、純度99.9%、分散液pH8.7のもの)と、純水1.5gとを、雰囲気温度23℃で混合し、薬さじで軽く攪拌して均一な酸素吸収剤の試料を作成した。
【0042】
これを用いて、上記(1)の酸素濃度と水素濃度の測定方法に従って、酸素濃度と水素濃度とを随時測定して評価した。評価結果を表1に示す。酸素吸収量が大きい一方で水素発生量は小さく、いずれの性能も優れていた。
[比較例1]
【0043】
アルミニウム−シリコン合金の粉末をアルミニウム金属の粉末(エカ・グラニュラージャパン社製、グレード名:−75μm、平均粒径48.97μm、アルミニウム比率99.9質量%以上、シリコン比率0.10質量%以下のもの)に代えた以外は、実施例1と同様にして試料を得た。これを用いて実施例1と同様にして性能を測定し評価した。結果を表1に示した。酸素吸収性能は良好であったが、酸素吸収量以上に水素ガスが発生する結果となった。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン含有量が0.2質量%以上50質量%以下であるアルミニウム−シリコン合金を、酸素吸収の主剤とすることを特徴とする酸素吸収剤。
【請求項2】
前記アルミニウム−シリコン合金のアルミニウム含有量が、50質量%以上99.8質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸素吸収剤。
【請求項3】
さらに、酸化促進剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の酸素吸収剤。
【請求項4】
前記酸化促進剤が、結晶性アルミニウム化合物であることを特徴とする請求項3に記載の酸素吸収剤。
【請求項5】
前記結晶性アルミニウム化合物が、γ−アルミナであることを特徴とする請求項4に記載の酸素吸収剤。
【請求項6】
前記結晶性アルミニウム化合物が、ベーマイトであることを特徴とする請求項4に記載の酸素吸収剤。

【公開番号】特開2008−55320(P2008−55320A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235432(P2006−235432)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】