説明

酸素吸収性樹脂、酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性容器

【課題】本発明の目的は、遷移金属触媒の不存在下であっても優れた酸素吸収性能を有する酸素吸収性樹脂を提供することである。
【解決手段】本発明は、少なくとも下記モノマー(A)〜(C)を共重合させて得ることができるコポリエステルである酸素吸収性樹脂を提供する。
モノマー(A):下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているジカルボン酸又はその誘導体、
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、
モノマー(B):ジオール、
モノマー(C):芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体、芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体のうち少なくとも1種。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収性樹脂、それを含む酸素吸収性樹脂組成物及びそれを用いた酸素吸収性容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装容器としては、軽量で透明且つ易成形性等の利点を有するため、各種プラスチック容器が使用されている。
プラスチック容器は、金属容器やガラス容器と比べると、酸素バリア性が劣るため、容器内に充填された内容物の化学的酸化や好気性菌による品質低下が問題になる。
これを防止するために、プラスチック容器の中には容器壁を多層構造とし、少なくとも一層を酸素バリア性に優れている樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体の層を設けているものがある。さらには、容器内部に残存する酸素及び容器外部から侵入してくる酸素を除去するために、酸素吸収層を設けた容器がある。酸素吸収層に用いられる酸素吸収剤(脱酸素剤)には、例えば、鉄粉等の還元性物質を主剤とするもの(例えば、特許文献1参照。)がある。
【0003】
しかし、鉄粉等の酸素吸収剤を樹脂に配合して、包装材料の容器壁に用いる方法は、酸素吸収性能が大きいという点では満足できるものであるが、樹脂を固有の色相に着色するために、透明性が要求される包装の分野には使用できないという用途上の制約がある。 また、樹脂系の酸素吸収性材料として、炭素−炭素不飽和結合を有する樹脂と遷移金属触媒を含む酸素吸収性樹脂組成物(例えば特許文献2〜4参照。)、及び環状オレフィン(シクロヘキセン)構造と遷移金属触媒(特にCo塩)を含む酸素吸収性樹脂組成物(例えば特許文献5及び6参照。)が開示されている。しかしながら、前者は酸素吸収に伴う分子鎖切断により低分子量の有機成分が臭気成分として発生するという問題がある。また、後者は、酸素吸収部位が環構造であるために、前者における低分子量の臭気成分の発生をある程度抑制することができるが、遷移金属触媒(Co塩)を使用しているために、想定した酸素吸収部位以外での反応も生じ易く、その結果分解物が発生する。
【0004】
【特許文献1】特公昭62−1824号公報
【特許文献2】特開2001−39475号公報
【特許文献3】特表平8−502306号公報
【特許文献4】特許3183704号公報
【特許文献5】特表2003−521552号公報
【特許文献6】特開2003−253131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、遷移金属触媒の不存在下であっても優れた酸素吸収性能を有する酸素吸収性樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも下記モノマー(A)〜(C)を共重合させて得ることができるコポリエステルである酸素吸収性樹脂を提供する。
モノマー(A):下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているジカルボン酸、又はその誘導体、
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、
モノマー(B):ジオール、
モノマー(C):芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体、芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体のうち少なくとも1種。
また、本発明は、前記酸素吸収性樹脂を含む酸素吸収性樹脂組成物を提供する。
さらに、本発明は、前記酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層を有する酸素吸収性容器を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の酸素吸収性樹脂および酸素吸収性樹脂組成物によれば、遷移金属触媒の不在下においても優れた酸素吸収性能を有することにより、低分子量の臭気成分の発生を有効に抑制しつつ、実用的な酸素吸収性能を発現する酸素吸収性材料が実現した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の酸素吸収性樹脂は、少なくとも下記モノマー(A)〜(C)を共重合させて得ることができるコポリエステルである酸素吸収性樹脂である。
モノマー(A):下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているジカルボン酸又はその誘導体、
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、
モノマー(B):ジオール、
モノマー(C):芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体、芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体のうち少なくとも1種。
【0009】
モノマー(A)の脂環構造は、環内に複素原子を含む複素環構造であってもよい。また、単環式又は多環式のいずれであってもよく、多環式の場合、該炭素を含まない環は芳香環であってもよい。脂環構造は、好ましくは3〜12員単環又は多環構造であり、より好ましくは5又は6員単環構造であり、さらに好ましくは6員単環構造である。3及び4員環構造はひずみエネルギーが大きく容易に開環して鎖状構造となり易い。また、7員環以上では環が大きくなるにつれて合成が困難となるため、工業的に使用するには不利である。特に6員環構造はエネルギー的に安定であり、合成も容易であることから好ましい。さらに、前記脂環構造は構造(a)及び構造(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を含んでおり、好ましくは構造(a)の炭素−炭素二重結合基を脂環構造に含む。
【0010】
構造(b)の複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、ホルミル基、アミド基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等が挙げられる。好ましくは、複素原子が酸素を含んでいる官能基又は該官能基から誘導される結合基であり、例えば水酸基、カルボキシル基、ホルミル基、アミド基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレア結合である。さらに好ましくは、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、エステル結合及びアミド結合である。これらの官能基及び結合基を有するモノマー(A)は、比較的簡単な合成反応により調製できるため、工業的に使用する際に有利である。
構造(b)の芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ジフェニル環などが挙げられる。好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環である。
また、構造(a)及び(b)の両方に結合し脂環構造に含まれている炭素原子は、1個の水素原子と結合していることが好ましい。炭素原子に結合している2個の水素原子のうちの一つが例えばアルキル基で置換され、その結果水素原子が1個となることにより、酸素吸収性能はさらに向上する。なお、誘導体には、エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物、置換体、オリゴマーなどが含まれる。
【0011】
モノマー(A)は、好ましくはテトラヒドロフタル酸誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸誘導体であり、より好ましくはΔ3−テトラヒドロフタル酸誘導体又はΔ3−テトラヒドロ無水フタル酸誘導体であり、さらに好ましくは4−メチル−Δ3−テトラヒドロフタル酸又は4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸である。テトラヒドロ無水フタル酸誘導体は無水マレイン酸とブタジエン、イソプレン及びピペリレン等のジエンとのディールス・アルダー反応によって非常に容易に合成することができる。例えば、トランス−ピペリレン及びイソプレンを主成分とするナフサのC5留分を無水マレイン酸と反応させた、cis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸と4−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸の混合物を、立体異性化或いは構造異性化したものが製造されている。
これらは、安価で市販されており、工業的な使用を考慮すると好ましい。4−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸を構造異性化した4−メチル−Δ3−テトラヒドロフタル酸は、モノマー(A)として好ましい。この他、モノマー(A)としては、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0012】
モノマー(B)のジオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−フェニルプロパンジオール、2−(4―ヒドロキシフェニル)エチルアルコール、α,α―ジヒドロキシ−1,3−ジイソプロピルベンゼン、o−キシレングリコール、m−キシレングリコール、p−キシレングリコール、α,α―ジヒドロキシ−1,4−ジイソプロピルベンゼン、ヒドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ナフタレンジオール、又はこれらの誘導体等が挙げられる。好ましくは、脂肪族ジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールであり、さらに好ましくは、1,4−ブタンジオールである。1,4−ブタンジオールを用いた場合は、樹脂の酸素吸収性能が高く、更に酸化の過程で生じる分解物の量も少ない。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0013】
モノマー(C)の芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェニルマロン酸、フェニレンジ酢酸、フェニレンジ酪酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、p−フェニレンジカルボン酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基が芳香環に直接結合しているジカルボン酸又はその誘導体であり、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。ここで、誘導体には、エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物、置換体、オリゴマーなどが含まれる。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。特に、モノマー(C)がテレフタル酸を含む場合が好ましく、テレフタル酸とイソフタル酸を含む場合がさらに好ましい。
モノマー(C)の芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体としては、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)酪酸、2−(4−ヒドロキシフェニル)酪酸、3−ヒドロキシメチル安息香酸、4−ヒドロキシメチル安息香酸、4−(ヒドロキシメチル)フェノキシ酢酸、4−(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、(4−ヒドロキシフェノキシ)酢酸、(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸、マンデル酸、2−フェニル乳酸、3−フェニル乳酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基及び水酸基が芳香環に直接結合しているヒドロキシカルボン酸又はその誘導体であり、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。ここで、誘導体には、エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物、置換体、オリゴマーなどが含まれる。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
モノマー(A)及び(B)とともにモノマー(C)を共重合させることによって、重縮合時のゲル化を抑え、高重合度のコポリエステルを得ることができ、押出成形性が向上する。また、Tgが高くなるとともに結晶性が高くなり、成形時のハンドリング性が向上する。すなわち、高い酸素吸収性能を有し、かつ、分解物が少ない、押出成形性とハンドリング性に優れた樹脂が得られる。
【0014】
本発明の酸素吸収性樹脂は、モノマー(A)〜(C)を共重合させることによって得ることができる。前記共重合法としては、当業者に公知の任意の方法を用いることができる。例えば、界面重縮合、溶液重縮合、溶融重縮合及び固相重縮合である。
モノマー(C)に芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体を用いたときは、樹脂中のモノマー(A)単位は、樹脂中に含まれる全てのモノマー単位の5〜40モル%である場合が好ましく、より好ましくは7.5〜35モル%、さらに好ましくは10〜30モル%である。このとき、モノマー(C)単位は10〜45モル%である場合が好ましく、より好ましくは15〜42.5モル%、さらに好ましくは20〜40モル%である。上記範囲内の場合には、ハンドリング性が向上し、かつ、優れた酸素吸収性能を有する樹脂が得られる。
モノマー(C)に芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体を用いたときは、モノマー(A)及び(C)単位の組成比は当業者が適宜選択することができる。
【0015】
さらに、上記モノマーとともに、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、多価アルコール、多価カルボン酸、又はそれらの誘導体等をモノマーとして共重合することもできる。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルペンタン二酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘキサン酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。
多価アルコール及びその誘導体としては、1,2,3−プロパントリオール、ソルビトール、1,3,5−ペンタントリオール、1,5,8−ヘプタントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール、又はこれらの誘導体が挙げられる。
多価カルボン酸及びその誘導体としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸、メソ−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。
【0016】
重合触媒は必ずとも必要としないが、チタン系、ゲルマニウム系、アンチモン系、スズ系、アルミニウム系等の通常のポリエステル重合触媒が使用可能である。また、含窒素塩基性化合物、ホウ酸及びホウ酸エステル、有機スルホン酸系化合物等の公知の重合触媒を使用することもできる。
さらに、重合の際にはリン化合物等の着色防止剤や酸化防止剤等の各種添加剤を添加することもできる。酸化防止剤を添加することにより、重合中やその後の成形加工中の酸素吸収を抑制できるため、酸素吸収性樹脂の性能低下を抑えることができる。
本発明の酸素吸収性樹脂において、前記脂環構造の比率は、好ましくは0.1〜10meq/gであり、より好ましくは0.2〜7meq/gである。上記範囲内の場合には、実用的な酸素吸収性能を有し、かつ、酸素吸収後も色相の変化や強度低下の少ない酸素吸収性樹脂が得られる。
本発明の酸素吸収性樹脂の数平均分子量は、好ましくは1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜200000である。上記範囲内の数平均分子量の場合には、加工性及び耐久性に優れたフィルムを形成することができる。
本発明の酸素吸収性樹脂は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の酸素吸収性樹脂は、押出成形や射出成形等の溶融加工用樹脂としてだけではなく、適当な溶剤に溶解させて塗料として使用することもできる。塗料として使用する場合には、例えばイソシアネート系硬化剤を配合して、2液硬化型ドライラミネート用接着剤として使用することもできる。
【0017】
本発明の酸素吸収性樹脂は、酸素との反応性が極めて高いことから、遷移金属触媒の不在下において、放射線処理を施すことなく実用的な酸素吸収性能を発現することができる。本発明の酸素吸収性樹脂の反応性は、樹脂合成時や成形加工時等、樹脂の受ける熱履歴により活性化される。積極的に熱を与えて反応性を高めたり、逆に熱履歴を抑えることにより反応を抑制したりすることも可能である。例えば、反応性を抑えた場合には、放射線照射処理を施して反応性を高めることもできる。
本発明の酸素吸収性樹脂に使用される放射線は、電子線、陽子線及び中性子線等の粒子線や、ガンマ線、X線、可視光線及び紫外線などの電磁波である。この中でも特に、低エネルギー放射線である可視光線、紫外線等の光が好ましく、より好ましくは紫外線である。紫外線の照射条件としては、例えば積算光量100〜10000mJ/cm2のUV−Aが好ましい。紫外線照射のタイミングは、特に限定されないが、酸素吸収性容器として使用する場合は、酸素吸収性能を効果的に活用するために、容器成形後、内容品を充填して密封する直前が好ましい。
【0018】
本発明の酸素吸収性樹脂は、脂環構造以外にはアリル水素を有さないのが好ましい。アリル水素は比較的引き抜かれ易いために、酸素の攻撃を受けやすい。脂環構造以外の直鎖構造部にアリル水素を有する場合には、該アリル位での酸素酸化に伴う分子鎖切断により低分子量の分解成分が生じ易くなる。
本発明の樹脂には、モノマー(A)由来の反応性の高い脂環構造以外に、他の脂環構造を含んでいてもよく、また、他の脂環構造内に、モノマー(A)由来の構造に含まれない比較的反応性の低いアリル水素を含んでいてもよい。この様な樹脂構造の場合、モノマー(A)由来の反応性の高い脂環構造で発生したラジカルの連鎖移動により、比較的反応性の低い脂環内アリル水素が活性化され、酸素吸収性能が向上することがあるため好ましい。
【0019】
本発明の酸素吸収性樹脂は、さらに他の熱可塑性樹脂を配合して酸素吸収性樹脂組成物としてもよい。前記熱可塑性樹脂としては、任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。
例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム又はブロック共重合体、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等のポリオレフィン、無水マレイン酸グラフトポリエチレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル等或いはこれらの混合物等が挙げられる。
好ましくは、前記熱可塑性樹脂はポリエチレンであり、特に、低密度ポリエチレンが好ましい。より好ましくは、エチレンと1-アルケンを共重合した線状低密度ポリエチレンである。前記酸素吸収性樹脂と線状低密度ポリエチレンをブレンドして成形したフィルム及びシートは、耐衝撃性に優れる。前記1-アルケンとして、1-プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1−オクテン及びこれらの混合物を用いることができる。
共重合する1-アルケンは、好ましくは2〜30重量%であり、より好ましくは2〜20重量%である。
共重合においては、従来からのチーグラーナッタ触媒を用いたものでもシングルサイト触媒を用いたものでも所望の分子構造を有するものであれば適宜選択することができるが、シングルサイト触媒を用いて重合することにより、確実に各分子量成分に亘って共重合組成比の変動を抑制することが防止できる。その結果、分子構造が均一となり、酸素吸収性樹脂のラジカル連鎖移動のために熱可塑性樹脂の酸化が誘発される場合にも、酸化が各分子鎖間で均一に進行することによって、分子切断による分解物の発生を抑制することができるため、好ましい。好適な触媒としては、メタロセン系触媒が挙げられる。他の触媒としてはポストメタロセン系触媒に位置づけられるオレフィン重合用触媒、特にフェノキシイミン触媒(FI触媒)が好適である。
【0020】
前記した線状低密度ポリエチレンとしては、例えば、メタロセン系触媒を重合触媒として使用したエチレンと1−ブテンの共重合体、エチレンと1−ヘキセンの共重合体、エチレンと1−オクテンの共重合体等のエチレンと1−オレフィンとの共重合体が好ましい。
これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前述した樹脂のシングルサイト触媒による重合は、工業的に可能な方法であればどのような方法でも良いが、最も広く使用されている点から液相法で行うのが好ましい。
前記熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
酸素吸収性樹脂組成物中の前記脂環構造の比率は、好ましくは0.1〜10meq/gであり、より好ましくは0.2〜7meq/gである。上記範囲内の場合には、実用的な酸素吸収性能を有し、かつ、酸素吸収後も色相の変化や強度低下の少ない酸素吸収性樹脂組成物が得られる。
【0021】
本発明の酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物には、さらにラジカル開始剤や光増感剤等の種々の添加剤を配合することができる。
ラジカル開始剤及び光増感剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン及びそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類等の一般に光開始剤として知られているものが使用される。かかる光ラジカル開始剤は、安息香酸系又は第三級アミン系等、公知慣用の光重合促進剤の一種又は二種以上と組み合わせて用いることができる。
その他の添加剤としては、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂又はゴム等の添加剤が挙げられ、それ自体公知の処方に従って添加することができる。例えば、滑剤を配合することにより、スクリューへの樹脂の食い込みが改善される。滑剤としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、流動、天然又は合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、ステアリン酸、ラウリン酸等脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系又はビスアミド系のもの、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、及びそれらの混合系が一般的に用いられる。
【0022】
本発明の酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物は、粉末、粒状又はシート等の形状で、密封包装体内の酸素吸収に使用することができる。また、ライナー、ガスケット用又は被覆形成用の樹脂やゴム中に配合して、包装体内の残留酸素吸収に用いることができる。特に、本発明の酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物は、これを含む少なくとも一層と、他の樹脂の層からなる積層体の形で酸素吸収性容器として使用することが好ましい。
【0023】
本発明の酸素吸収性容器は、上記の酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物からなる層(以下、酸素吸収層という)を少なくとも一層有している。
本発明の酸素吸収性容器を構成する酸素吸収層以外の層は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等の無機材料或いは紙等から、その使用態様や要求される機能により適宜選択できる。例えば、上述の本発明の酸素吸収性樹脂に配合できる熱可塑性樹脂の一例として列挙した熱可塑性樹脂、金属箔、無機蒸着フィルムを挙げることができる。
本発明の酸素吸収性容器においては、酸素吸収性樹脂或いは酸素吸収性樹脂組成物の効果をより高めるために、少なくとも酸素吸収層の外側には酸素バリア層を設けることが好ましい。このような構成にすることにより、外部から容器内に透過する酸素及び容器内に残存した酸素を効果的に吸収し、容器内の酸素濃度を長期間にわたって低く抑えることができる。
酸素バリア層には酸素バリア性樹脂を使用することができる。酸素バリア性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、好ましくは、25〜50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、好ましくは、99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。酸素バリア性樹脂の他の例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリグリコール酸等を挙げることができる。また、上記の酸素バリア性樹脂や他のポリアミド樹脂等に、モンモリロナイト等の無機層状化合物等を配合したナノコンポジット材も好適に使用できる。
【0024】
また、特に本発明の酸素吸収性容器がパウチ等のフィルム容器の場合には、アルミニウムなどの軽金属箔、鉄箔、ブリキ箔、表面処理鋼箔等の金属箔、蒸着法により二軸延伸PETフィルム等の基材に形成された金属薄膜や金属酸化物薄膜、又はダイヤモンドライクカーボン薄膜を酸素バリア層として用いることができる。また、二軸延伸PETフィルム等の基材フィルムに酸素バリアコーティングを施したバリアコーティングフィルムを使用することもできる。
金属薄膜を構成する材料としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、マグネシウム、錫、銅、珪素等が挙げられ、特にアルミニウムが好ましい。
金属酸化物薄膜を構成する材料としては、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウムなどが挙げられ、特にシリカとアルミナが好ましい。なお、用いられる材料は2種以上を併用してもよく、同種或いは異種材料で積層されていてもよい。
このような薄膜の蒸着は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション等の物理気相成長法(PVD法)、或いはプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等の公知の方法によって行われる。
酸素バリアコーティングを構成する材料としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド、多糖類等の高水素結合性樹脂や、塩化ビニリデン系樹脂、エポキシアミン等が挙げられる。またこれらの材料に、モンモリロナイト等の無機層状化合物等を配合することも好ましい。
また、本発明の酸素吸収性容器として、上述の酸素バリア性樹脂に酸素吸収性樹脂及び酸素吸収性樹脂組成物を配合した酸素吸収性バリア層を有するものも好ましい。この場合、必ずしも他に酸素バリア単独層および酸素吸収単独層を設ける必要が無いため、層構造を単純化できる。
【0025】
酸素吸収性容器の製造には、それ自体公知の成型法を用いることができる。
例えば、樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いて押出成形を行うことで多層フィルム、多層シート、多層パリソン又は多層パイプ等が成形できる。また、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、同時射出法や逐次射出法等の共射出成形によりボトル成型用の多層プリフォームを製造することができる。このような多層フィルム、パリソン、プリフォームをさらに加工することにより、酸素吸収性多層容器を得ることができる。
フィルム等の包装材料は、種々の形態のパウチや、トレイ・カップの蓋材として用いることができる。パウチとしては、例えば、三方又は四方シールの平パウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。製袋は公知の製袋法で行うことができる。また、フィルム又はシートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の包装容器が得られる。
多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができる。また、予め形成された単層及び多層フィルムをドライラミネーションによって積層することもできる。例えば、熱可塑性樹脂層/酸素吸収層/熱可塑性樹脂(シーラント)層から成る3層共押出フィルムに透明蒸着フィルムをドライラミネーションにより積層する、ドライラミネートにより積層した2軸延伸PETフィルム/アルミ箔の2層フィルムに酸素吸収層/シーラント層の2層をアンカー剤を介して押出コートする、又はドライラミネートにより積層したバリアコーティングフィルム/ポリエチレンの2層フィルムにポリエチレン単層フィルムをポリエチレンベースの酸素吸収性樹脂組成物を介してサンドイッチラミネーションする方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
また、パリソン、パイプ又はプリフォームを一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易にボトルやチューブを成形できる。また、パイプ、プリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等が得られる。
本発明の酸素吸収性容器は、容器壁を介して外部から透過してくる酸素を有効に遮断し、容器内に残存した酸素を吸収する。そのため、容器内の酸素濃度を長期間低いレベルに保ち、内容物の酸素が係わる品質低下を防止し、シェルフライフを向上させる容器として有用である。
特に、酸素存在下で劣化しやすい内容品、例えば、食品ではコーヒー豆、茶葉、スナック類、米菓、生・半生菓子、果物、ナッツ、野菜、魚・肉製品、練り製品、干物、薫製、佃煮、生米、米飯類、幼児食品、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、乳製品等、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、緑茶、コーヒー等、その他では医薬品、化粧品、電子部品等が挙げられるが、これらの例に限定されない。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。各値は以下の方法により測定した。
(1)数平均分子量(Mn)及び分子量分布指数(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製;HLC−8120型GPC)により、ポリスチレン換算で測定した。溶媒にはクロロホルムを使用した。
(2)コポリエステル樹脂中の各モノマー単位の組成比
核磁気共鳴分光法(1H−NMR、日本電子データム社製;EX270)により、樹脂中に含まれる酸成分の組成比を算出した。テレフタル酸由来のベンゼン環プロトン(8.1ppm)とイソフタル酸由来のベンゼン環プロトン(8.7ppm)のシグナルの面積比からモノマー(C)中のイソフタル酸の含有比を、メチルテトラヒドロ無水フタル酸から誘導されたエステル基に隣接するメチレンプロトン(4.1〜4.2ppm)とテレフタル酸及びイソフタル酸から誘導されたエステル基に隣接するメチレンプロトン(4.3〜4.4ppm)のシグナルの面積比から酸成分の組成比をそれぞれ算出した。溶媒には基準物質としてテトラメチルシランを含む重クロロホルムを使用した。
このとき、コポリエステル樹脂の組成比は、重合に使用した各モノマーの仕込み量(モル比)とほぼ同等であった。
(3)ハンドリング性
樹脂のベタつきによるブロッキングの有無を評価した。押出機ホッパー内でペレットがブロッキングするものを×、ブロッキングしないものを○とした。
(4)酸素吸収量
切り出した試験片を、内容積85cm3の酸素不透過性のスチール箔積層カップに仕込んでアルミ箔積層フィルム蓋でヒートシール密封し、22℃雰囲気下にて保存した。一定時間保存後のカップ内酸素濃度をマイクロガスクロマトグラフ装置(アジレント・テクノロジー社製;M200)にて測定し、樹脂1cm2当たりの酸素吸収量を算出した。
(5)揮発性分解物量
切り出した試験片を、内容積22cm3のヘッドスペースガスクロマトグラフィー用のバイアルに封入し、22℃雰囲気下にて保存した。一定時間保存後のバイアル内の揮発性分解物量をヘッドスペースサンプラー(ヒューレットパッカード社製;HP7694)付きガスクロマトグラフ装置(アジレント・テクノロジー社製;6890シリーズ、カラムHP−5)にて測定し、酸素吸収量1ml当りの揮発性分解物量を算出した。
【0028】
(実施例1)
攪拌装置、窒素導入管、Dean−Stark型水分離器を備えた500mlのセパラブルフラスコに、モノマー(A)として4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸を45重量%含有するメチルテトラヒドロ無水フタル酸(日立化成社製;HN−2200)を83.1g、モノマー(C)としてテレフタル酸(和光純薬社製)を126.3g、モノマー(B)として1,4−ブタンジオール(和光純薬社製)を227.1g、イソプロピルチタナート(キシダ化学社製)を0.131g、及びトルエンを20mlを、それぞれ仕込み、窒素雰囲気中150℃〜200℃で生成する水を除きながら約6時間反応させた。引き続いて反応系よりトルエンを除いた後、最終的に0.1kPaの減圧下、200℃で約6時間重合を行い、ゴム状のコポリエステル樹脂Dを得た。このときMnは約8600で、Mw/Mnは6.5であった。
得られた樹脂Dを、窒素雰囲気中50℃で0.5日間保管したところ結晶化してベタつきもなくブロッキングし難いハンドリング性に優れた樹脂が得られた。さらにこれを200℃のホットプレスにて平均厚み約270μmのシート状に成形して20cm2の試験片を切り出し、酸素吸収量の評価に供した。結果を表1に示す。
【0029】
(実施例2)
モノマー(A)を104.7g、モノマー(C)を104.7gとした以外は実施例1と同様に重合を行い、ゴム状のコポリエステル樹脂Eを得た。このときMnは約8800で、Mw/Mnは9.3であった。
得られた樹脂Eを、窒素雰囲気中50℃で0.5日間保管したところ結晶化してベタつきもなくブロッキングし難い樹脂が得られた。さらにこれを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0030】
(実施例3)
モノマー(A)を125.6g、モノマー(C)を83.7gとした以外は実施例1と同様に重合を行い、ゴム状のコポリエステル樹脂Fを得た。このときMnは約6000で、Mw/Mnは7.7であった。
得られた樹脂Fを、窒素雰囲気中50℃で0.5日間保管したところ結晶化してベタつきもなくブロッキングし難い樹脂が得られた。さらにこれを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例4)
モノマー(C)としてテレフタル酸を94.2g、イソフタル酸(和光純薬社製)を10.5gとした以外は実施例2と同様に重合を行い、ゴム状のコポリエステル樹脂Gを得た。このときMnは約8200で、Mw/Mnは9.5であった。
得られた樹脂Gを、窒素雰囲気中50℃で0.5日間保管したところ結晶化してベタつきもなくブロッキングし難い樹脂が得られた。さらにこれを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0032】
(実施例5)
モノマー(C)としてテレフタル酸を83.7g、イソフタル酸を20.9gとした以外は実施例2と同様に重合を行い、ゴム状のコポリエステル樹脂Hを得た。このときMnは約7900で、Mw/Mnは10.3であった。
得られた樹脂Hを、窒素雰囲気中50℃で0.5日間保管したところ結晶化してベタつきもなくブロッキングし難い樹脂が得られた。さらにこれを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
モノマー(A)としてHN−2200を209.4g仕込み、モノマー(C)を用いなかった以外は実施例1と同様に重合を行い、ゴム状のポリエステル樹脂Iを得た。このときMnは約5200で、Mw/Mnは27と非常に大きく、また樹脂中にゲル分を少量含んでいた。
得られた樹脂Iを、窒素雰囲気中50℃で0.5日間保管したが特に外見に変化はなく、結晶化しなかった。また表面にはベタつきがありブロッキングし易いためハンドリング性に劣っていた。ホットプレスによるシートの成形を試みたが不可能であった。
【0034】
(比較例2)
モノマー(C)としてコハク酸(キシダ化学社製)74.4gを用いた以外は実施例1と同様に重合を行い、ゴム状のコポリエステル樹脂Jを得た。このときMnは約4800で、Mw/Mnは10.1であった。
得られた樹脂Jを、窒素雰囲気中50℃で0.5日間保管したが特に外見に変化はなく、結晶化しなかった。また表面にはベタつきがありブロッキングし易いためハンドリング性に劣っていた。
これを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0035】
(実施例6)
樹脂E50重量部と熱可塑性樹脂としてシングルサイト触媒線状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂(エボリューSP0511、プライムポリマー社製)50重量部を、ラボラトリーミキシングエクストルーダー(東洋精機製作所社製;CS−194AV)を用いて200℃で溶融混錬し、窒素雰囲気中50℃で0.5日間乾燥して樹脂ブレンド物1を得た。
得られた樹脂ブレンド物1を、200℃のホットプレスにて平均厚み約270μmのシート状に成形して20cm2及び5cm2の試験片を切り出し、酸素吸収量及び揮発性分解物の評価に供した。結果を表1に示す。
【0036】
(実施例7)
樹脂E50重量部と熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂(スミカセンL705、住友化学社製)50重量部を用いた以外は実施例6と同様の処理を行い樹脂ブレンド物2を得た。
得られた樹脂ブレンド物2を、実施例6と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0037】
(実施例8)
樹脂G50重量部と熱可塑性樹脂としてLLDPE樹脂50重量部を用いた以外は実施例6と同様の処理を行い樹脂ブレンド物3を得た。
得られた樹脂ブレンド物3を、実施例6と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0038】
(実施例9)
樹脂G50重量部と熱可塑性樹脂としてLDPE樹脂50重量部を用いた以外は実施例6と同様の処理を行い樹脂ブレンド物4を得た。
得られた樹脂ブレンド物4を、実施例6と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0039】
(実施例10)
樹脂G50重量部と熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレートコポリマー(PBT)樹脂(ジュラネックス600LP、ポリプラスチックス社製)50重量部を用いた以外は実施例6と同様の処理を行い樹脂ブレンド物5を得た。
得られた樹脂ブレンド物5を、実施例6と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例11)
樹脂G50重量部と熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂(GS−pla AZ91T、三菱化学社製)50重量部を用いた以外は実施例6と同様の処理を行い樹脂ブレンド物6を得た。
得られた樹脂ブレンド物6を、実施例6と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例12)
樹脂Eを1kg調製し、窒素雰囲気中40℃で0.5日間保管し結晶化した。この粉砕物を成形温度200℃の条件でラボプラストミル(東洋精機製作所社製)を用いてTダイ法によりフィルム化し、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(ニュクレルN1035、三井・デュポンポリケミカル社製)との3層共押出フィルム(N1035(15)/樹脂E(60)/N1035(15)(括弧内は各層の厚み(μm))を得た。また、12μm透明蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(凸版印刷社製;GL−AEH)と予め片面にコロナ処理を施したLDPEフィルム(タマポリ社製;V−1)を、蒸着フィルムの蒸着面とLDPEフィルムのコロナ処理面が対向するように2液型ウレタン系接着剤(武田薬品工業社製;タケラックA−315+タケネートA−50)を用いて貼り合わせた後、50℃で3日間キュアして透明蒸着PET/LDPEの2層フィルムを得た。得られた2層フィルムのLDPE側に上述の3層共押出フィルムを熱ラミネーションにより貼り合わせることにより酸素吸収性積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムを、3層共押出フィルムが対向するように重ね合わせ、4辺をヒートシールすることにより透明平パウチを得た。この平パウチは、パウチ内の脱酸素機能を有することから、内容物の保存性に優れている。
【0043】
(実施例13)
樹脂Eを1kg調製し、窒素雰囲気中40℃で0.5日間保管し結晶化した。この粉砕物50重量部と熱可塑性樹脂としてLLDPE樹脂50重量部をドライブレンドし、出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B、東芝機械社製)を用いて、スクリュー回転数100rpmで高真空ベントを引きながら成形温度200℃でストランドを引き、樹脂ブレンド物7を得た。この樹脂は溶融粘度が高く押出成形性に優れている。
さらに、樹脂ブレンド物7を成形温度200℃の条件でラボプラストミル(東洋精機社製)を用いてTダイ法によりフィルム化し、LLDPE樹脂との3層共押出フィルム(SP0511(15)/樹脂ブレンド物7(60)/SP0511(15)(括弧内は各層の厚み(μm))を得た。さらに、実施例12と同様に酸素吸収性積層フィルムを作製し、平パウチを得た。この平パウチは、パウチ内の脱酸素機能を有することから、内容物の保存性に優れている。
【0044】
(実施例14)
樹脂Gを1kg調製し、実施例13と同様の操作を行い、樹脂ブレンド物8を得た。この樹脂は溶融粘度が高く押出成形性に優れている。
さらに、樹脂ブレンド物8を成形温度200℃の条件でラボプラストミル(東洋精機社製)を用いてTダイ法によりフィルム化し、LLDPE樹脂との3層共押出フィルム(SP0511(15)/樹脂ブレンド物8(60)/SP0511(15)(括弧内は各層の厚み(μm))を得た。さらに、実施例12と同様に酸素吸収性積層フィルムを作製し、平パウチを得た。この平パウチは、パウチ内の脱酸素機能を有することから、内容物の保存性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記モノマー(A)〜(C)を共重合させて得ることができるコポリエステルである酸素吸収性樹脂:
モノマー(A):下記構造(a)及び(b)の両方に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているジカルボン酸又はその誘導体、
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基、又は芳香環の何れか1つ、
モノマー(B):ジオール、
モノマー(C):芳香環を有するジカルボン酸又はその誘導体、芳香環を有するヒドロキシカルボン酸又はその誘導体のうち少なくとも1種。
【請求項2】
モノマー(C)に含まれるカルボキシル基及び水酸基が芳香環に直接結合している請求項1記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項3】
モノマー(C)がフタル酸又はその誘導体を含む、請求項2記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項4】
モノマー(C)がテレフタル酸を含む、請求項3記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項5】
モノマー(C)がテレフタル酸とイソフタル酸を含む、請求項4記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項6】
モノマー(A)がテトラヒドロフタル酸誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項7】
テトラヒドロフタル酸誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸誘導体が、Δ3−テトラヒドロフタル酸誘導体又はΔ3−テトラヒドロ無水フタル酸誘導体を含む、請求項6記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項8】
Δ3−テトラヒドロフタル酸誘導体又はΔ3−テトラヒドロ無水フタル酸誘導体が、4−メチル−Δ3−テトラヒドロフタル酸又は4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸を含む、請求項7記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項9】
モノマー(B)が脂肪族ジオールである、請求項1〜8のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項10】
モノマー(B)がC4以上の脂肪族ジオールを含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項11】
酸化触媒としての遷移金属塩を含有しない請求項1〜10のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂を含む酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項13】
さらに、熱可塑性樹脂を含む請求項12記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂がポリエチレンである、請求項13記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項15】
前記ポリエチレンが線状低密度ポリエチレンである、請求項14記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項16】
酸化触媒としての遷移金属塩を含有しない請求項12〜15のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂又は請求項12〜16のいずれか1項記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層を有する酸素吸収性容器。
【請求項18】
酸素吸収層の外側に酸素バリア層を有する請求項17記載の酸素吸収性容器。

【公開番号】特開2008−7739(P2008−7739A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313143(P2006−313143)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】