説明

酸素吸収性積層体および包装容器

【課題】製袋時まで酸素吸収活性の低下を防止しうる酸素吸収性積層体、および前記酸素吸収性積層体を用いて製袋してなる酸素吸収活性に優れる包装容器を提供する。
【解決手段】外層から内層に向かって、少なくもガスバリア層10、酸素吸収層20、ヒートシール層50からなる酸素吸収性フィルムAとをこの順に積層した酸素吸収性フィルムAと、ガスバリア性剥離層Bとからなる酸素吸収性積層体100であって、前記ガスバリア性剥離層Bは、易剥離性のガスバリア層であり、前記酸素吸収性フィルムAのヒートシール層50に積層されるものであり、前記酸素吸収層20は、環化共役ジエン系重合体からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収性フィルムにガスバリア性剥離層を積層した酸素吸収性積層体に関する。より詳細には、製袋時にガスバリア性剥離層を剥離することで酸素吸収性フィルムの酸素吸収能を発揮させることができるため、前記酸素吸収性フィルムの酸素吸収活性の失活を防止できる酸素吸収性積層体、および前記酸素吸収性積層体からなる酸素吸収能に優れる包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化劣化が好ましくないとされる食品等が収容された包装体内の酸素を除去するために、酸素吸収層を積層した各種の酸素吸収性ラミネートフィルムが開発されている。
このような酸素吸収性ラミネートフィルムとして水分がトリガーである酸素吸収フィルムに、最大孔径1.0μm以下の多孔質フィルムをラミネートしたものがある(特許文献1)。ベースレジンにアルコルビン酸、ポルフィリン錯体類、大環状ポリアミン錯体などの酸素吸収剤を配合して酸素吸収性フィルムとし、これに最大孔径が1.0μm以下の多孔質フィルムを積層したものであり、果汁飲料など酸化されやすい製品の充填密封を行う包装材料として用いることができる。多孔質フィルムは、水蒸気や酸素を通すため、例えば果汁飲料中の水分と接触させると、果汁飲料に含まれる水分がトリガーとなって、果汁飲料に含まれる酸素を吸収することができる、という。
【0003】
一方、このようなトリガーを介することなく酸素吸収性能を開始する酸素吸収性ラミネートフィルムもある。例えば、酸素欠損酸化セリウム及びポリオレフィン系樹脂よりなり、前記酸素欠損酸化セリウムを10乃至60重量%含有する脱酸素剤層の一方の面に順次少なくとも保護層及び酸素バリアー層を、その他方の面にシーラント層を設け、該シーラント層面における7日後の酸素吸収能力が少なくとも0.6ml/100cm2(1atm・23℃)であることを特徴とする酸素吸収積層フィルム(特許文献2)がある。水分などのトリガーが不要であるため、乾燥食品や電子部品などの包装体の脱酸素用に使用でき、コーヒー、茶、ピーナツ、海藻、魚節粉末、調味料、乾燥野菜などの風味や香味を維持できる、という。
【0004】
トリガーを介することなく酸素吸収性能を開始する酸素吸収層は、酸素吸収層を製造した直後から雰囲気中の酸素を吸収する。このため、前記酸素吸収層を含む酸素吸収性積層フィルムを製袋して酸素吸収性包装体を製袋すると、製袋時に酸素吸収能が劣化している場合がある。このような酸素吸収性積層フィルムの製造から製袋までのハンドリング時における酸素吸収層の劣化の問題を解決するため、酸素吸収剤を制御する技術がある(特許文献3)。特許文献3は、生活環境雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、前記脱酸素剤が、酸素の強制的な引き抜きによって生じた可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部を、例えばカルボニル基である二酸化炭素などのサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞してなることを特徴とする脱酸素剤を開示するものである。前記酸素欠損を有する酸化セリウムは活性が高いため、ハンドリング時間中も酸素吸収が進行し、酸素吸収性フィルムの性能が悪くなる点に鑑みてなされたものである。可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物において、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞すると、前記サイト閉塞因子体は、酸素吸収サイトから自発的に脱離して酸素吸収能を発揮するため、ハンドリング時間を向上させることができる、という。なお、このような脱酸素剤は、前記無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後、二酸化炭素などのサイト閉塞因子体で処理し、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することで製造できる、という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−100044号
【特許文献2】特開2010−89280号
【特許文献3】特開2009−78271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載したアスコルビン酸などと相違し、特許文献2で使用する酸素欠損酸化セリウムは、水分などのトリガーを必要とせず酸素吸収性を発揮でき、水分を含まない乾燥食品や電子部品用の酸素吸収剤として好適に使用することができる。このような酸素吸収剤を使用し、例えば、少なくとも最内層にヒートシール層を有し、いずれかの層に酸素欠損酸化セリウムなどを配合した酸素吸収層を積層して酸素吸収性フィルムを調製し、得られた酸素吸収性フィルムを製袋して酸素吸収性包装容器を調製することができる。
【0007】
しかしながら、酸素欠損酸化セリウムなどのトリガーを必要としない酸素吸収剤は、酸素吸収性フィルムを調製した段階から雰囲気中の酸素を吸収するため、包装容器に製袋するまでの間に酸素吸収性能が失活する場合がある。一般に、包装容器に製袋しうる酸素吸収性フィルムは、酸素吸収層の外側にガスバリア層が積層されるため、これをロールに巻き取った製品は、酸素吸収層の両側にガスバリア層が積層され、酸素吸収層の失活は防止されると考えられる。しかしながら、製品は、単にロール状に巻き取ったに過ぎず、ロール内で酸素吸収層とガスバリア層との間に雰囲気中の酸素が挟み込まれ、酸素吸収層の表面から序々に酸素吸収性能が失活する場合がある。また、ロールの端面からも雰囲気中の酸素が吸収され、酸素吸収層が失活する場合がある。
【0008】
一方、特許文献3に記載するように、酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞してなる無機酸化物は、サイト閉塞因子体の脱離によって酸素吸収能が発揮されるため、所定時間、吸収活性の発揮を抑制でき、ハンドリング性に優れる利点がある。しかしながら、酸素吸収性包装容器は、食品、医薬品のほか、電子部品の収納など、多方面に使用されるため、安価にかつ簡便に製造できることが好ましく、上記特許文献3記載の酸素吸収剤は、調製が容易でなく製造が困難である。
【0009】
また、酸素吸収性積層体に臭気があると、内容物に臭気が移る場合があり、内容物の風味を変化させる場合がある。従って、内容物に酸素吸収性積層体が移行しない酸素吸収性積層体の開発が望まれる。
【0010】
上記現状に鑑み、酸素吸収性を有し、安価に製造でき、容器用包装材や蓋材などとして有用な酸素吸収性積層体を提供することを目的とする。
また、臭味がなく、加熱調理器として電子レンジで加熱することができる酸素吸収性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、包装容器に製袋しうる酸素吸収性積層体について詳細に検討したところ、環化共役ジエン系重合体からなる樹脂が酸素吸収性を有すること、トリガーを必要としないこのような酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収性フィルムは、フィルム調製時から酸素吸収を行うため酸素吸収活性が経時的に劣化する場合があるが、酸素吸収層の内側にガスバリア性剥離層を積層すれば、製袋時まで酸素吸収能の発現を抑制できること、このような酸素吸収性積層体は、製袋時にガスバリア性剥離層を剥離するだけで、従来の酸素吸収性フィルムと同様に製袋して包装容器を調製できること、このような酸素吸収性積層体は、ガスバリア層に、酸素吸収層とヒートシール層とを共押出しし、これにガスバリア性剥離層を積層することで簡便に調製できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち本発明は、外層から内層に向かって、少なくもガスバリア層、酸素吸収層、ヒートシール層とをこの順に積層した酸素吸収性フィルムと、ガスバリア性剥離層とからなる酸素吸収性積層体であって、前記ガスバリア性剥離層は、易剥離性のガスバリア層であり、前記酸素吸収性フィルムのヒートシール層に積層されるものであり、前記酸素吸収層は、環化共役ジエン系重合体からなることを特徴とする、酸素吸収性積層体を提供するものである。
【0013】
また本発明は、前記酸素吸収性フィルムは、前記酸素吸収層とヒートシール層との間に更に臭味バリア層とが積層されることを特徴とする、上記酸素吸収性積層体を提供するものである。
【0014】
また本発明は、前記酸素吸収層とヒートシール層とは、共押出しによる多層フィルムであることを特徴とする上記酸素吸収性積層体を提供するものである。
また本発明は、前記酸素吸収性フィルムは、前記酸素吸収層、共押出用熱可塑性樹脂層、臭味バリア層およびヒートシール層がこの順に積層された共押出フィルムであることを特徴とする、上記酸素吸収性積層体を提供するものである。
【0015】
また本発明は、前記酸素吸収性フィルムは、前記ガスバリア層の外側および/または内側に、基材樹脂層が積層されることを特徴とする、上記酸素吸収性積層体を提供するものである。
【0016】
また本発明は、上記酸素吸収性積層体を製袋してなる、包装容器を提供するものである。
また本発明は、容器本体と蓋材とからなる容器であって、蓋材は、上記酸素吸収性積層体であることを特徴とする、蓋付き包装容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の酸素吸収性積層体は、製袋時にガスバリア性剥離層を剥離することで酸素吸収能を発揮するため、製袋時まで高い酸素吸収能を維持することができる。
本発明の酸素吸収性積層体は、環化共役ジエン系重合体を酸素吸収層として使用するため、酸素吸収力が強く、かつ臭味バリア層を有するため、内容物の風味を劣化させることがない。
【0018】
また、本発明の酸素吸収性積層体は、電子レンジなどによる内容物の加熱を行うことができる。
本発明の酸素吸収性積層体は、酸素吸収性フィルムに臭味バリア層が積層される場合には、酸素吸収層の臭味が内容物に移行するのを防止でき、保存性に優れる。
【0019】
本発明の酸素吸収性積層体は、酸素吸収性層とヒートシール層とを共押出しで調製できるためラミネート接着剤による臭気の発生がなく、内容物の保存性に優れる。
本発明の酸素吸収性積層体は、ガスバリア性剥離層を酸素吸収性フィルムから剥離し、製袋して包装容器とすることができ、また蓋材として容器の一部として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る酸素吸収性積層体の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かってガスバリア層(10)、酸素吸収層(20)、およびヒートシール層(50)とをこの順に積層した酸素吸収性フィルム(A)と、ガスバリア性剥離層(B)とからなる酸素吸収性積層体(100)からなる。
【図2】本発明に係る酸素吸収性積層体の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かってガスバリア層(10)、酸素吸収層(20)、臭味バリア層(40)およびヒートシール層(50)とをこの順に積層した酸素吸収性フィルム(A)と、ガスバリア性剥離層(B)とからなる酸素吸収性積層体(100)からなる。
【図3】本発明に係る酸素吸収性積層体の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かってガスバリア層(10)、酸素吸収層(20)、熱可塑性樹脂層(30)、臭味バリア層(40)およびヒートシール層(50)とをこの順に積層した酸素吸収性フィルム(A)と、ガスバリア性剥離層(B)とからなる酸素吸収性積層体(100)からなる。
【図4】本発明に係る酸素吸収性積層体の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かって基材樹脂層(60)、ラミネート接着剤(70)、ガスバリア層(10)、酸素吸収層(20)、熱可塑性樹脂層(30)、臭味バリア層(40)およびヒートシール層(50)とをこの順に積層した酸素吸収性フィルム(A)と、ガスバリア性剥離層(B)とからなる酸素吸収性積層体(100)からなる。
【図5】本発明に係る酸素吸収性積層体の製造方法を示す図である。
【図6】従来の酸素吸収性フィルムの製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第一は、外層から内層に向かって、少なくもガスバリア層、酸素吸収層、ヒートシール層とをこの順に積層した酸素吸収性フィルムと、ガスバリア性剥離層とからなる酸素吸収性積層体であって、前記ガスバリア性剥離層は、易剥離性のガスバリア層であり、前記酸素吸収性フィルムのヒートシール層に積層されるものであり、前記酸素吸収層は、環化共役ジエン系重合体からなることを特徴とする、酸素吸収性積層体である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
(1)酸素吸収性積層体の層構成
本発明の酸素吸収性積層体は、図1に示すように、ガスバリア層(10)、酸素吸収層(20)、およびヒートシール層(50)とをこの順に積層した酸素吸収性フィルム(A)と、ガスバリア性剥離層(B)とからなる酸素吸収性積層体(100)であって、前記ガスバリア性剥離層(B)は、易剥離性のガスバリア層であり、前記酸素吸収性フィルム(A)のヒートシール層(50)に積層されてなる。酸素吸収性積層体(100)の前記ガスバリア性剥離層(B)を製袋時に剥離すると、酸素吸収層(20)からの酸素吸収が開始される。このため、酸素吸収性積層体(100)の製品から包装容器を製袋するまでの間の酸素吸収能の低下を、抑制することができる。
【0023】
本発明で使用する酸素吸収性フィルム(A)は、前記酸素吸収層(20)とヒートシール層(50)とが、共押出しで構成されてもよい。ラミネート接着剤を使用せずに積層できるため、ラミネート接着剤による臭気が内容物に移行するのを効率的に回避することができる。
【0024】
また、本発明において、前記酸素吸収性積層体(100)を構成する酸素吸収性フィルム(A)は、図2に示すように、酸素吸収層(20)とヒートシール層(50)との間に更に臭味バリア層(40)とが積層されていてもよい。この際、図3に示すように、酸素吸収層(20)、熱可塑性樹脂層(30)、臭味バリア層(40)およびヒートシール層(50)がこの順に共押出しされるものであってもよい。ラミネート接着剤を使用せずに積層できるため、ラミネート接着剤による臭気が内容物に移行するのを効率的に回避することができる。
【0025】
また、本発明の酸素吸収性積層体(100)は、前記酸素吸収性フィルム(A)として、前記ガスバリア層(10)の外側や内側に、更に基材樹脂層(60)が積層されるものを使用してもよい。基材樹脂層(60)を積層することで機械的強度を高め、耐突き刺し性などを確保することができる。この際、図4に示すように、基材樹脂層(60)とガスバリア層(10)とをラミネート接着剤(70)を介して積層するものであってもよい。ラミネート接着剤(70)を使用しても、ガスバリア層(10)によってラミネート接着剤層(70)の臭気が内容物に移行するのを防止することができる。
【0026】
また、図示しないが、前記最外層の内側には、印刷層が形成されていてもよい。これにより内容表示の他、意匠を向上させることができ、更に高い遮光性が要求される場合には白ベタ印刷などを行うことができる。
【0027】
(2)ガスバリア層
本発明では、酸素や水蒸気の透過を阻止しうる各種のガスバリア層を積層することができる。本発明におけるガスバリア層とは、少なくとも酸素透過に対するバリア性を有する層である。酸素吸収性フィルム(A)において、ガスバリア層は、溶融樹脂層であってもよく、予めフィルム状に成形されたガスバリア性フィルムやシートなどであってもよい。
【0028】
(a) ポリビニルアルコール
本発明では、ガスバリア層として、ポリビニルアルコールを好適に使用することができる。ポリビニルアルコールからなるガスバリア層の厚さに制限はないが、好ましくは15〜25μmである。
【0029】
一方、ポリビニルアルコールは単層フィルムとして使用することができるが、水溶性高分子であるため、耐水性に優れる基材フィルムにポリビニルアルコールからなる塗布膜を形成した積層フィルムであってもよい。このような基材フィルムは、後記するガスバリア性積層フィルムの項で記載する基材フィルムを好適に使用することができる。これにより、耐水性を確保することができる。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
【0030】
(b) エチレン・ビニルアルコール共重合体
本発明では、ガスバリア層として、エチレン・ビニルアルコール共重合体も好適に使用することができる。エチレン・ビニルアルコール共重合体からなるガスバリア層の厚さに制限はないが、好ましくは10〜30μmである。
【0031】
一方、エチレン・ビニルアルコール共重合体は単層フィルムとして使用することができるが、基材フィルムにエチレン・ビニルアルコール共重合体からなる塗布膜を形成した積層フィルムであってもよい。このような基材フィルムは、後記するガスバリア性積層フィルムの項で記載する基材フィルムを好適に使用することができる。これにより、機械的特性など基材フィルムに応じた各種の特性を向上させることができる。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
【0032】
(c) ガスバリア性蒸着フィルム
本発明で使用するガスバリア層として、基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設けたガスバリア性蒸着フィルムを使用することができる。
【0033】
前記基材フィルムとしては、ポリエステル系樹脂、またはポリアミド系樹脂を好適に使用することができる。基材フィルムの膜厚としては、6〜100μm、より好ましくは、9〜50μmである。前記基材フィルムには、コロナ放電処理などの表面処理がなされていてもよい。
【0034】
また、前記有機珪素化合物、金属または金属酸化物としては、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。化学気相成長法による蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Åが好適である。なお、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。また、物理気相成長法による場合、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物を蒸着することが好ましい。
【0035】
また、ガスバリア性蒸着フィルムとして、基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設け、前記蒸着膜上に、更に、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたものを使用することもできる。ガスバリア性塗布膜をポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン・ビニルアルコール共重合体と1種以上のアルコキシドとが相互に化学的に反応して強固な三次元網目状複合ポリマー層を形成しており、前記蒸着膜とが相乗的に作用し、酸素、水蒸気などの透過を阻止するガスバリア性に優れ、耐熱水性にも優れる。
【0036】
前記ガスバリア性塗布膜は、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜であり、該組成物を上記基材フィルム上の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜180℃、かつ上記の基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して形成することができる。
【0037】
上記したガスバリア性蒸着フィルムは、厚さ10〜100μmであることが好ましい。なお、このようなガスバリア性積層フィルムは、市販品を使用してもよい。例えば、大日本印刷株式会社製、商品名「IB−PET−PUB」や、商品名「IB−PET−PC」がある。
【0038】
(d)金属箔
本発明では、酸素や水蒸気の透過を阻止しうるガスバリア層として、アルミニウムなどの金属箔を使用することができる。アルミニウム箔であれば、酸素ガスバリア性と共に遮光性も確保することができる。
【0039】
(3)酸素吸収層
本発明の酸素吸収性積層体を構成する酸素吸収層としては、環化共役ジエン系重合体からなるものであり、例えば、環化共役ジエン系重合体単独でもよいし、熱可塑性樹脂に環化共役ジエン系重合体を10〜100質量%、より好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜70%含有されるものである。なお、酸素吸収層には、環化共役ジエン系重合体と共に酸化防止剤、その他を配合してもよい。
【0040】
(i)環化共役ジエン系重合体
本発明で使用する環化共役ジエン系重合体としては、共役ジエン系重合体を原料としてこれを環化反応させて得たものである。酸素吸収層が、環化共役ジエン系重合体からなることで、鎖状共役ジエン系重合体を主成分とする樹脂を使用する場合と比較して、酸素吸収反応により発生する低分子量物質の分解物が少なく、当該分解物由来のフィルム臭の発生を効果的に抑制でき、かつ安全衛生性に優れる。
【0041】
このような環化共役ジエン系重合体を形成する共役ジエン系重合体としては、共役ジエン単量体を重合したもの、または、共役ジエン単量体と共重合可能なコモノマーと共重合したものである。
【0042】
このような共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、特にイソプレンを使用することが好ましい。
【0043】
共役ジエン単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン等の鎖状オレフィン単量体;シクロペンテン、2−ノルボルネン等の環状オレフィン単量体;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のその他の(メタ)アクリル酸誘導体;等が挙げられる。これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。共役ジエン重合体の具体例としては、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、イソプレン−イソブチレン共重合体ゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム(BIR)等を挙げることができる。中でも、ポリイソプレンゴム及びポリブタジエンゴムが好ましく、ポリイソプレンゴムがより好ましい。
【0044】
共役ジエン重合体における共役ジエン単量体単位の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択されるが、通常、40モル%以上、好ましくは60モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。中でも、実質的に共役ジエン単量体単位のみからなるものが特に好ましい。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、適切な範囲の不飽和結合減少率を得ることが困難になる恐れがある。
【0045】
共役ジエン重合体の重合方法は常法に従えばよく、例えば、チタン等を触媒成分として含むチーグラー系重合触媒、アルキルリチウム重合触媒又はラジカル重合触媒等の適切な触媒を用いて、溶液重合又は乳化重合により行われる。
【0046】
本発明で用いる共役ジエン重合体環化物は、前記の共役ジエン重合体を、酸触媒の存在下に環化反応させて得ることができる。酸触媒としては、公知のものを使用することができ、例えば、硫酸;フルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、これらの無水物及びアルキルエステル等の有機スルホン酸化合物;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、エチルアンモニウムクロリド、臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、六塩化タングステン、塩化鉄等のルイス酸;等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。中でも、有機スルホン酸化合物が好ましく、p−トルエンスルホン酸やキシレンスルホン酸がより好ましい。酸触媒の使用量は、共役ジエン重合体100重量部当たり、通常、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。
【0047】
環化反応は、通常、共役ジエン重合体を炭化水素溶媒中に溶解して行う。炭化水素溶媒としては、環化反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素;等が挙げられる。これらの炭化水素溶媒の沸点は、70℃以上であることが好ましい。共役ジエン重合体の重合反応に用いる溶媒と環化反応に用いる溶媒とは、同一種であってもよい。この場合は、重合反応が終了した重合反応液に環化反応用の酸触媒を添加して、重合反応に引き続いて環化反応を行うことができる。炭化水素溶媒の使用量は、共役ジエン重合体の固形分濃度が、通常、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%となる範囲である。
【0048】
環化反応は、加圧、減圧及び大気圧のいずれの圧力下でも行うことができるが、操作の簡便性の点から大気圧下で行うことが望ましい。環化反応を、乾燥気流下、特に乾燥窒素や乾燥アルゴンの雰囲気下で行うと水分によって引き起こされる副反応を抑えることができる。環化反応における反応温度や反応時間は、特に限定されない。反応温度は、通常、50〜150℃、好ましくは70〜110℃であり、反応時間は、通常、0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間である。環化反応を行った後、常法により、酸触媒を不活性化し、酸触媒残渣を除去し、次いで炭化水素溶媒を除去して、固形状の共役ジエン重合体環化物を得ることができる。
【0049】
環化共役ジエン系重合体の環化率、すなわちプロトンNMR分析により共役ジエン重合体の環化反応前後における二重結合由来プロトンのピーク面積をそれぞれ測定し、環化反応前を100としたときの環化物中に残存する二重結合の割合を求め、計算式=(100−環化物中に残存する二重結合の割合)により表される値は、30〜95%であることが好ましい。より好ましくは50〜90%、最も好ましくは55〜85%である。
【0050】
30%を下回ると、ガラス転移温度が低くなり接着強度が低下する場合があり、逆に、95%を超えると、共役ジエン重合体環化物はその製造が困難となる場合がある。
共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量は、GPSで測定される標準ポリスチレン換算値で、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜700,000、より好ましくは30,000〜500,000である。共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量は、環化に供する共役ジエン重合体の重量平均分子量を適宜選択して調節することができる。共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量が小さすぎると、フィルムに成形し難く、機械的強度が低くなる恐れがある。共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量が大きすぎると、環化反応の際の溶液粘度が上昇して、取り扱い難くなると共に、押出成形時の加工性が低下する恐れがある。
【0051】
共役ジエン重合体環化物のゲル(トルエン不溶分)量は、通常、10重量%以下、好ましくは5重量%以下であるが、実質的にゲルを有しないことが特に好ましい。ゲル量が多いと、フィルムの平滑性を損なう恐れがある。
【0052】
(ii)熱可塑性樹脂
本発明の酸素吸収層には、0〜90質量%の範囲で熱可塑性樹脂を配合することができる。このような熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、EVOHなどのエチレン−ビニルアルコール共重合系樹脂などを例示することができる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテンなどのオレフィン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体などのエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分または完全けん化物などのその他のエチレン共重合体、これらのポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸などの酸無水物などでグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン樹脂などを例示することができる。また、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを、ポリアミド系樹脂としては、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−6とナイロン−66との共重合体などを例示することができる。更に、ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分または完全けん下物を例示することができる。
【0053】
本発明で使用する酸素吸収層は、前記環化共役ジエン系重合体で構成することができるが、上記範囲で熱可塑性樹脂を配合することで製膜が容易となり、かつ前記酸素吸収層と他の層との密着性を向上させることができる。
【0054】
(iv)他の配合物
本発明の酸素吸収性積層体を構成する酸素吸収層には、本発明の目的の達成を阻害しない範囲で、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤のような公知の添加剤を随時添加することができる。なお、これらの配合量は、添加剤の種類、必要とされる機能などに応じて決めればよい。
【0055】
この中でも酸化防止剤は、製膜時の共重合体の酸化やゲル化を防止すると共に、酸素吸収性能を制御するために添加するものである。例えば、2,6−ジ−(t−ブチル)−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2´−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系酸化防止剤、トリフェニルフォスファイト、トリス(ジノニフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン酸系酸化防止剤、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤等を好適に使用することができる。
【0056】
上記酸化防止剤の添加量は、環化共役ジエン系重合体に対して0.001〜1質量%であることが好ましい。0.001質量%を下回ると、共重合体の酸化やゲル化の防止機能および酸素吸収性能の制御機能を発現できないため好ましくなく、1質量%を超えると、共重合体との相溶性が悪く分離してしまうため好ましくない。
【0057】
本発明において、上記酸素吸収層の膜厚としては、5〜100μm、より好ましくは、10〜30μmが望ましい。
(4)ヒートシール層
ヒートシール層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
【0058】
本発明では、ポリオレフィン系樹脂を好適に使用することができる。特に、シングルサイト系メタロセン触媒を使用したポリプロピレン系ランダム共重合体が好適である。具体的には、プロピレンとエチレン、あるいは、プロピレンと1−オクテンとのブロックまたはランダムコポリマーからなるポリプロピレン系ランダム共重合体である。接着性に優れるからである。ヒートシール層を構成する樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、0.2〜4.0g/minであることが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0である。0.2g/minを下回ると、加工適性の点で不利である。一方、4.0g/minを超えると、加工適性の点で不利である。なお、本発明において、メルトフローレイト(MFR)とは、JIS K6921に準拠した手法から測定したものであり、また、密度は、JIS K7112に準拠した手法から測定したものである。
【0059】
上記のヒートシール層は、厚さ5〜60μm、好ましくは10〜30μmが望ましい。
ヒートシール層は、上記樹脂の1種からなる単層でも多層でもよく、2層以上の多層であってもよい。
【0060】
また、ヒートシール層を顔料や染料を含有する着色層と含まない層とに分離し、前記着色層として、例えば、白色顔料や染料を混練して遮光性に優れる白色樹脂層などとすることができる。
【0061】
本発明において白色樹脂層などの着色層を構成する白色系着色剤としては、白色系の各種の無機系ないし有機系の染料、顔料等の着色剤の1種ないし2種以上の混合物を使用することが望ましいものである。具体的には、例えば具体的には、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性けい酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、三酸化アンチモン、アナタス形酸化チタン、ルチル形酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、その他等の白色顔料の1種ないし2種以上を使用することができる。これらは、包装容器の美粧性を損なうことなく、太陽や蛍光灯等の透過を阻止ないし遮断し、包装袋内に充填包装した内容物の分解ないし変質、褪色、その他等の光劣化を防止することができる。着色層において、着色料の配合量は、ヒートシール層を構成する樹脂に対し、0.1〜30質量、好ましくは、0.5〜20質量%である。
【0062】
本発明では、上記白色染料または白色顔料に限定されず、他の色彩の顔料や染料を使用して着色層を形成することができる。
このような着色層を形成する場合には、着色層の厚さは厚さ5〜60μm、好ましくは10〜40μmであることが望ましい。この範囲であれば目的の着色による効果を得る事ができる。
【0063】
また、このような着色層を形成した場合には、更に、最内層に着色層がないヒートシール層を形成する。顔料や染料として無機チタンなどを混練するとヒートシール性が低下するが、ヒートシール層を2層で構成し、最内層に顔料や染料を含まない層を形成することで、ヒートシール性を確保することができる。この際の顔料や染料を含まない層の厚さは、5〜30μm、好ましくは5〜30μmである。この範囲で十分なヒートシール性を確保することができる。
【0064】
(5)ガスバリア性剥離層
本発明で使用するガスバリア性剥離層は、酸素吸収性フィルム(A)の酸素吸収層(20)の酸素吸収活性を維持するため、酸素吸収性フィルム(A)のヒートシール層に積層され、かつ酸素吸収性積層体(100)の使用時に剥離される層である。酸素ガスバリア性を有し、かつ前記ヒートシール層との剥離性に優れるものを広く使用することができる。ガスバリア性剥離層としては、溶融樹脂層であってもよく、予めフィルム状に成形したガスバリア性剥離フィルムであってもよい。また、ガスバリア性剥離フィルムは単層であっても、2層以上からなる多層であってもよい。
【0065】
ガスバリア性剥離層として、例えば、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体、これらの無機酸化物の蒸着フィルム、前記ガスバリア層の項に記載した(c)ガスバリア性蒸着フィルムなどを例示することができる。
【0066】
更に、前記ヒートシール層の項に記載した樹脂やこのような樹脂からなるフィルムやシートに、塩化ビニリデンやポリビニルアルコールなどのガスバリア性樹脂を塗工または被覆したものを好適に使用することができる。例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートに塩化ビニリデン樹脂やポリビニルアルコールを塗工したフィルムなどを使用することができる。
【0067】
上記のガスバリア性剥離層は、厚さ5〜60μm、好ましくは10〜30μmが望ましい。
本発明の酸素吸収性積層体(100)を構成する酸素吸収性フィルム(A)のヒートシール層とガスバリア性剥離層(B)とは、異種であれば剥離性を確保しつつ密に積層できる。従って、ヒートシール層(50)をポリエチレン樹脂で構成した場合、ガスバリア性剥離層としてポリプロピレン樹脂からなるフィルムにガスバリア性を有する塩化ビニリデン樹脂を塗工したものなどを使用することができる。
【0068】
(6)臭味バリア層
本発明の酸素吸収層で使用する酸素欠陥を有する酸化セリウや上記複合酸化物は、酸素吸収に際して特有の臭気を発生するため、内容物によっては風味を劣化させる場合がある。また、酸素吸収性積層体の積層において、いずれかの層の積層にラミネート接着剤を使用する場合にも接着剤臭が発生し、内容物の風味を劣化させる場合がある。そこで、酸素吸収層とヒートシール層との間に臭味バリア層を積層し、内容物の風味を維持させることが好ましい。
【0069】
前記臭味バリア層は、酸素吸収層の臭味がヒートシール層側に移行しうるのを防止でき、かつ酸素透過性を有するものであれば特に制限はない。酸素透過性を有しない場合は、内容物側の酸素を吸収することができないからである。このような臭味バリア層として、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリ乳酸樹脂、またはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂などを好適に使用することができる。
【0070】
さらに、配合用熱可塑性樹脂にメソポーラスシリカを0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜10質量%含有する樹脂からなる層であってもよい。メソポーラスシリカとしては、細孔直径が2〜50nmの細孔を有するシリカ多孔体を使用することができる。本発明で使用するメソポーラスシリカは、市販品であってもよい。例えば、太陽化学社製のメソポーラスシリカ、商品名「TMPS−1.5」、「TMPS−2.7」、「TMPS−4」などを好適に使用することができる。また、このようなメソポーラスシリカを配合する熱可塑性樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂を例示することができる。
【0071】
本発明において、上記臭味バリア層の膜厚としては、5〜100μm、より好ましくは、10〜50μmが望ましい。
(5)共押出用熱可塑性樹脂層
本発明の酸素吸収性積層体では、上記した酸素吸収層や臭味バリア層、ガスバリア層などを積層するに際して共押出用熱可塑性樹脂層を積層することができる。
【0072】
共押出用熱可塑性樹脂層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、上記したヒートシール層を構成する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂などを使用することができる。
【0073】
また、本発明では、酸素吸収層としてポリアミド系樹脂を含む場合には、共押出用熱可塑性樹脂層としては、ポリアミドに密着しうるものを好適に使用することができる。具体的にはオレフィン樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(マルチサイト触媒を使用して重合したポリマー、LLDPE)、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)使用して重合したエチレンーα・オレフィン共重合体、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂、その他等の熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上を使用することができる。上記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であり、本発明の酸素吸収性フィルムを構成するヒートシール層と同質である。上記共押出用熱可塑性樹脂によって酸素吸収層とガスバリア層、臭味バリア層などを接着することができる。
【0074】
上記したポリアミドなどに密着性に優れる共押出用熱可塑性樹脂層を構成する樹脂は、密度が0.88〜0.92であることが好ましい。その理由は、加工適性、接着性が向上するためである。このような熱可塑性樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、三菱化学社製、商品名「モディックM545」や「モディックAP P555」、三井化学社製、商品名「アドマー QF570」などがある。
【0075】
また、共押出用熱可塑性樹脂層は、これに顔料や染料を添加して、着色層とすることもできる。
このような共押出用熱可塑性樹脂層は、厚さ3〜15μm、好ましくは5〜20μmである。
【0076】
(8)基材樹脂層
本発明では、前記酸素吸収性フィルムのガスバリア層の外側や内側に、更に基材樹脂層を積層してもよい。このような基材樹脂層は、ガスバリア層と基材樹脂層とを共押出で積層してもよく、これらを熱融着性樹脂を介して接着してもよく、ラミネート用接着剤を介して積層するものであってもよい。
【0077】
基材樹脂層としては、ポリアミド系樹脂またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂を使用することができる。
ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミドであっても、芳香族ポリアミドであっても、これらを混合した組成物であってもよい。好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ‐ε‐アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ‐ε‐アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン‐6ナイロン(MXD6)などを挙げることができ、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などを挙げることができる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p‐ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。ポリアミド系樹脂は、密度が比重1.14〜1.22g/m3であることが好ましい。
【0078】
また、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートを好適に使用することができる。ポリエステル系樹脂は、比重1.00〜1.41g/m3であることが好ましい。
【0079】
本発明において、上記基材樹脂層の膜厚としては、5〜25μm、より好ましくは、5〜15μmが望ましい。
なお、上記基材樹脂層の製膜化に際して、例えば、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、離形性、難燃性、抗カビ性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0080】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0081】
(9)印刷層
本発明では、酸素吸収性積層体を構成するいずれかの層に印刷層を形成してもよく、好ましくは上記基材樹脂層に印刷層を形成することである。裏印刷によれば印刷層を保護することができる。
【0082】
印刷層としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。
【0083】
印刷方法は、グラビア印刷のほか、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。
(10)ラミネート用接着剤
上記において、基材樹脂層とガスバリア層とを積層するためにラミネート用接着剤を使用してもよい。ラミネート用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンーブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤、その他等の接着剤を使用することができる。
【0084】
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
【0085】
上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1〜10.0g/m2(乾爆状態)位が望ましい。
【0086】
(11)酸素吸収性積層体の製造方法
本発明の酸素吸収性積層体の製造方法に限定はない。しかしながら、ガスバリア層に酸素吸収層とヒートシール層とを共押出しし、前記共押出ししたヒートシール層に更にガスバリア性剥離層を積層して製造することで、端面からの酸素の侵入を回避し、より酸素吸収活性の高い、酸素吸収性積層体を製造することができる。この層構成は、外層から内層に向かって、ガスバリア層/酸素吸収層/ヒートシール層/ガスバリア性剥離層となる。
【0087】
具体的には、例えば図5に示すように、押出機A(110)に酸素吸収層用樹脂(20)を、押出機B(110')にヒートシール層用樹脂(50)を仕込む。予め、ニップロール(140)にガスバリア層(10)を移送し、前記ガスバリア層(10)にTダイ(120)を介して前記酸素吸収層用樹脂(20)とヒートシール層用樹脂(50)とを共押出しする。一方、チルロール(130)にガスバリア性剥離層(B)を供給し、前記共押出ししたヒートシール層用樹脂(50)と積層し、酸素吸収性積層体(100)を製造することができる。本発明の酸素吸収性積層体(100)は、ガスバリア性剥離層(B)によって酸素吸収層(20)の活性劣化を防止できるが、更に、凹凸を形成しやすいヒートシール層(50)の、前記凹凸に残存する酸素の酸素吸収層(20)への移動を低減できるため、端面からの酸素吸収能の劣化も防止することができる。この点をより詳細に説明する。
【0088】
まず、ガスバリア性剥離層がない酸素吸収性フィルム(A)を製造する場合には、図6に示すように、ニップロール(140)にガスバリア層(10)を移送し、前記ガスバリア層(10)にTダイ(120)を介して前記酸素吸収層用樹脂(20)とヒートシール層用樹脂(50)とを共押出しして製造することができる。この場合、ヒートシール層(50)が冷却ロール(130)に接触し、その下に酸素吸収層(20)が積層される。冷却ロール(130)は、すべり性やマット性を確保するために表面が粗面のものを使用する場合があり、冷却ロール(130)の表面の粗面に対応してヒートシール層(50)に凹凸が形成される。これをロール状に巻き取ると、前記凹凸に残存する空気がヒートシール層(50)から酸素吸収層(20)に移行して酸素吸収層(20)を失活させる。更に、このような凹凸は端面近傍にも形成されるため、酸素吸収性フィルム(A)を構成するヒートシール層(50)の端面の凹凸を通じて雰囲気中の空気が侵入し、酸素吸収性フィルム(A)を端面から失活させる。
【0089】
しかしながら、本発明によれば、冷却ロール(130)にガスバリア性剥離フィルム(B)を供給するため、前記ガスバリア性剥離フィルム(B)の平滑な表面の上にヒートシール層(50)が積層され、たとえ冷却ロール(130)の表面が粗面であってもヒートシール層(50)には凹凸が形成されず、前記凹凸への空気の残存を回避でき、更に、端面からの酸素吸収性フィルム(A)の失活も防止することができる。
【0090】
なお、酸素吸収性積層体が、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材樹脂層をアルミニウム箔などのガスバリア層に積層したものの場合には、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどにAC剤を塗工し、ポリエチレン樹脂などの共押出用熱可塑性樹脂層を介してアルミニウム箔と溶融押出によって積層して、基材樹脂層とガスバリア層とを積層することができる。更に、このような基材樹脂層とガスバリア層に酸素吸収層とヒートシール層とを共押出するに際して、前記ガスバリア層を構成するアルミニウム箔にAC剤を塗工してポリエチレン樹脂層などの共押出用熱可塑性樹脂層を積層し、このポリエチレン樹脂層を介して酸素吸収層とヒートシール層とを共押出し、前記ヒートシール層にガスバリア性剥離フィルムを積層してもよい。このように、ドライラミネーション接着剤を使用せず、溶融押出によって積層することができる。例えば、上記方法によれば、層構成が、外層から内層に向かって、基材樹脂層/AC剤/共押出用熱可塑性樹脂層/ガスバリア層/AC剤/共押出用熱可塑性樹脂層/酸素吸収層/ヒートシール層/ガスバリア性剥離層となる酸素吸収性積層体を製造することができる。
【0091】
なお、前記酸素吸収層とヒートシール層との2種共押出ししに代えて、酸素吸収層、臭味バリア層、ヒートシール層との3種共押出しし、酸素吸収層、熱可塑性樹脂層、臭味バリア層、ヒートシール層との4種共押出ししを行うこともできる。
【0092】
(12)包装容器の製造方法
本発明の包装容器は、上記酸素吸収性積層体を製袋して製造することができる。袋体は、上記酸素吸収性積層体を使用し、ガスバリア性剥離層を剥離し、酸素吸収性フィルムのヒートシール層の面を対向して重ね合わせ、しかる後、その周辺端部をヒートシールしてシール部を形成して製造することができる。その製袋方法としては、上記のような本発明に係る酸素吸収性フィルムを、折り曲げるかあるいは重ね合わせて、その内層の面を対向させ、更にその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、本発明に係る包装用容器を製造することができる。その他、例えば、自立性包装用袋(スタンディングパウチ)等も可能である。
【0093】
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0094】
本発明では、上記袋体の開口部から、例えば、内容物を充填し、しかる後、その容器内の空気を脱気して減圧状態にしながら真空包装すれば、特に包装用容器内に残存する酸素などによる酸化を効率的に防止することができる。
【0095】
(13)用途
本発明に係る酸素吸収性積層体は、強度等を有して耐久性に優れ、かつ防湿性、ヒートシール性、耐突き刺し性、透明性等にも優れ、更に、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、その内容物の充填包装適性、保存適性等を有する。
【0096】
本発明の酸素吸収性積層体は、上記のように製袋し、包装容器として使用することができる。また、容器本体と蓋材とからなる包装容器の蓋材などとしても使用することができる。容器本体が、ポリプロピレン製の碗型または舟形容器であり、その開口部のフリンジを介して上記酸素吸収性積層体を蓋材として、内容物収納後に蓋材をヒートシールして、蓋付き包装容器とすることができる。内容物として、例えば無菌米飯などがある。本発明の蓋付き包装容器に収納された無菌米飯は、容器内の酸素が酸素吸収性層によって吸収除去され、ガスバリア層によって酸素や水蒸気の透過を防止することができるため、保存性に優れる。
【実施例】
【0097】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(製造例1)
環化ジエン系共重合体の調製
攪拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シス−1,4−構造イソプレン単位が73%であるポリイソプレン300質量部をトルエン700質量部に溶解した。完全に溶解した後、p−トルエンスルホン酸2.4質量部を投入し、環化反応を行った。
【0098】
得られた環化ジエン系共重合体をペレット化し、この環化ジエン系共重合体100質量部に対して酸化防止剤として、2−t−ブチル−6−(3−t−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート0.05質量部を混合して環化ジエン系共重合体を得た。
【0099】
(実施例1)
厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「E5100」)に、厚さ7μmのアルミニウム箔をウレタン系接着剤にてドライラミネートしたバリア基材層を用いて、インラインでアルミニウム箔側にAC剤をコーティングした後、2種2層の共押出EC機を用いて、酸素吸収層として、製造例1の環化ジエン系共重合体を30質量部、ポリエチレン樹脂を70質量部からなる混練物を30μm、ヒートシール層として直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「NH745N」)を10μm、設定温度290℃にて、AC剤側に酸素吸収層が形成される様に、それぞれ共押出して、チルロール側から供給される厚さ20μmのK−OP(東セロ株式会社製、商品名「OLD」)と貼り合わせ、酸素吸収性積層体を得た。
【0100】
上記酸素吸収性積層体を3日、常温で空気中に放置し、その後、K−OPを剥離して、残った酸素吸収性フィルムを130mm×170mmの大きさに2枚切り取り、ヒートシール層がシールされる様にシール巾10mmにて四方シールして包装袋を製造した。
【0101】
上記包装袋に、20.9%酸素空気100mlを充填後、開口部をヒートシールして密封し、22℃で1週間保存後、酸素濃度計にて包装体内部の酸素濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0102】
(比較例1)
K−OP(東セロ株式会社製、商品名「OLD」)を供給しない以外は、実施例1と同様にして酸素吸収性フィルムを得た。
【0103】
次いで、この酸素吸収性フィルムを用いて、K−OPを剥離する以外は実施例1と同様にして包装袋を製造し、実施例1と同様に操作して酸素濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

(参考製造例1)
平均粒径が1.5μmの酸化セリウム粉末を、窒素ガス雰囲気下で1500℃に加熱しながら水素ガスを流して還元焼成し、不活性ガス雰囲気下で冷却して酸素欠陥を有する酸化セリウムを得た。
【0105】
(参考例1)
厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「E5100」)に、厚さ7μmのアルミニウム箔をウレタン系接着剤にてドライラミネートしたバリア基材層を用いて、インラインでアルミニウム箔側にAC剤をコーティングした後、2種2層の共押出EC機を用いて、酸素吸収層として直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「NH745N」)に製造例で得た酸化セリウムを30%混練した樹脂を30μm、ヒートシール層として直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「NH745N」)を10μm、設定温度290℃にて、AC剤側に酸素吸収層が形成される様に、それぞれ共押出して、チルロール側から供給される厚さ20μmのK−OP(東セロ株式会社製、商品名「OLD」)と貼り合わせ、酸素吸収性積層体を得て、ロール状に巻き取った。
【0106】
参考例1で得た酸素吸収性積層体を常温で空気雰囲気中に放置した後、ロールの幅方向に端部から30mmの部分について、酸素吸収性積層体の色調をK−OP層側から経時的に測定した。K−OP層からは、製造例1で製造した酸素欠陥を有する酸化セリウムの色調を観察することができる。前記酸素欠陥を有する酸化セリウムは、酸素吸収前は濃紺であり、酸素吸収に従い灰色に、更にクリーム色に変色する。濃紺であることは、酸素吸収能が失活していないことを意味する。結果を表2に示す。ガスバリア性剥離層(B)によってヒートシール層への凹凸の形成ひいては前記凹凸への空気の残存を回避でき、かつロール端面からの酸素吸収が抑制されることが判明した。
【0107】
(参考比較例1)
K−OP(東セロ株式会社製、商品名「OLD」)を供給しない以外は、参考例1と同様にして酸素吸収性フィルムを得て、ロール状に巻き取った。
【0108】
参考比較例1で得た酸素吸収性フィルムを用いて、実施例2と同様にして酸素吸収性フィルムの色調をヒートシール層側から経時的に測定した。結果を表2に示す。
【0109】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、使用時にガスバリア性剥離層を剥離することで酸素吸収性フィルムの酸素吸収能を発揮させることができるため、ハンドリング時間にかかわらず脱酸素活性の失活を防止でき、酸素吸収性積層体の製造分野、製袋分野、このような酸素吸収性積層体を使用する食品分野、電子機器分野に有用である。
【符号の説明】
【0111】
10・・・ガスバリア層、
20・・・酸素吸収層、
30・・・共押出用熱可塑性樹脂層、
40・・・臭味バリア層、
50・・・ヒートシール層、
60・・・基材樹脂層、
70・・・ラミネート接着剤層、
100・・・酸素吸収性積層体、
150・・・剥離ロール、
A・・・酸素吸収性フィルム
B・・・ガスバリア性剥離層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層から内層に向かって、少なくもガスバリア層、酸素吸収層、ヒートシール層とをこの順に積層した酸素吸収性フィルムと、ガスバリア性剥離層とからなる酸素吸収性積層体であって、
前記ガスバリア性剥離層は、易剥離性のガスバリア層であり、前記酸素吸収性フィルムのヒートシール層に積層されるものであり、
前記酸素吸収層は、環化共役ジエン系重合体からなることを特徴とする、酸素吸収性積層体。
【請求項2】
前記酸素吸収性フィルムは、前記酸素吸収層とヒートシール層との間に更に臭味バリア層とが積層されることを特徴とする、請求項1記載の酸素吸収性積層体。
【請求項3】
前記酸素吸収性フィルムは、前記ガスバリア層の外側および/または内側に、基材樹脂層が積層されることを特徴とする、請求項1または2記載の酸素吸収性積層体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の酸素吸収性積層体を製袋してなる、包装容器。
【請求項5】
容器本体と蓋材とからなる容器であって、
蓋材は、請求項1〜3のいずれかに記載の酸素吸収性積層体であることを特徴とする、蓋付き包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−35516(P2012−35516A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177830(P2010−177830)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】