説明

酸素吸収能を有する樹脂組成物およびその樹脂組成物層を含む積層体、包装体

【課題】本発明は、熱、紫外線(UV)などにより酸素吸収を開始するトリガー機能を付与し、トリガーにより迅速に酸素吸収を開始するレスポンスが速く、酸素吸収後に発生する臭気を低減した、保存安定性や安全性に優れる、酸素吸収能を有する樹脂組成物およびその樹脂組成物層を含む積層体、包装体を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(樹脂A)、エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(樹脂B)、樹脂Aと樹脂Bの相溶化剤の効果を有する熱可塑性樹脂(樹脂C)、酸化触媒、低分子易酸化性化合物からなる樹脂組成物であって、前記樹脂Aが50〜99wt%と、前記樹脂Bと樹脂Cとを混合してなる樹脂が1〜50wt%とからなり、さらに、酸化触媒を樹脂Bに対し0.001〜2%および低分子易酸化性化合物を樹脂Bに対し0.1〜20%の範囲で配合したことを特徴とする酸素吸収能を有する樹脂組成物およびその組成物層を含む積層体、包装体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素吸収能を有する樹脂組成物およびその樹脂組成物層を含む積層体、包装体に関し、さらに詳細には、熱や紫外線(UV)等の活性エネルギー線をトリガーとして迅速に酸素吸収を開始するだけでなく、従来のポリマー型酸素吸収剤における課題とされていた臭気を低減することが可能な酸素吸収能を有する樹脂組成物およびその樹脂組成物層を含む積層体、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種内容物を包装するパッケージ事業という分野において、「パッケージ」あるいは「包装」のキーワードとしては大きく以下の内容が挙げられる。
(1)消費者に対する購買意識の付与、危険性の提示といった「表示効果」
(2)充填した内容物自体に包装体が侵されないための「内容物耐性」
(3)外部刺激に対する「内容物の保護」
【0003】
これらのキーワードは更に細分化され、細かい要求品質へと展開される。そのうち、「内容物の保護」という点で特に注目を浴びているのが、酸素や水分からの内容物の保護が挙げられる。特に最近では、食品分野、工業製品分野、医療・医薬品分野等の各分野において、酸素や水分に対する内容物の保護性が重要視されるようになってきた。その背景として、酸素については酸化による内容物の分解、変質、水分については吸湿や加水分解に伴う内容物の変質が挙げられる。
【0004】
このように酸素あるいは水分による内容物の変質を防ぐ為、様々な方法が検討されてきた。その一つが、酸素バリアあるいは水分バリア性を有する材料を用いた包装体を設計することが挙げられる。以下に酸素バリアという点で例を挙げると、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の酸素ガスバリア性に優れる熱可塑性樹脂を用いた積層体や、アルミニウム蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着などの蒸着層をポリエステル基材等に設けることで得られた蒸着フィルムを用いた積層体などが挙げられる。
【0005】
これらのバリア性基材を用いた包装体は、その高い酸素バリア性から各種用途に展開が広がっている。しかしながら、これらのバリア性基材はバリア性が高いとはいいながら、ごく微量の酸素を透過させてしまう。また、これらの包装体を用いて内容物を充填した場合、ヘッドスペースガスが存在している状態がほとんどである。最近ではヘッドスペース中に残存している酸素も内容物を劣化させるという点から、不活性ガス置換を行うことでヘッドスペース中の酸素を除去する試みが為されているが、それでも微量の酸素が残存している状況である。
【0006】
この様に、バリア性基材を通過する微量な酸素、あるいは包装体内部のヘッドスペースガス中の酸素を除去すべく、酸素吸収性樹脂組成物の開発が行われるようになってきた。このうち、最も代表的なタイプは、以下のものが挙げられる。
(1)還元鉄を熱可塑性樹脂に配合したタイプ
(2)遷移金属錯体を用いた酸素配位結合タイプ
(3)被還元性化合物の還元/酸化反応を用いた、過酸化水素化(他ガスへの変換)
(4)炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂の酸化分解あるいは酸素付加反応を用いたタイプ。
【0007】
まず、酸素吸収包材として代表的な(1)の「還元鉄を熱可塑性樹脂に配合したタイプ
」は、従来の脱酸素剤の考え方であり、還元鉄が酸化鉄に酸化反応する際に酸素を消費することを利用している。酸化に伴い消費される酸素量は極めて多く、熱可塑性樹脂に配合することで酸素吸収能力という点では非常に有効な樹脂組成物が展開される。しかしながら、「樹脂組成物としての透明性が低い」、「還元鉄の樹脂への分散不良や、酸化による褐変の影響で外観不良を伴う」、「水分をトリガーとするため、水分活性の高い内容物にしか展開できない」、「保存する内容物によっては異臭を放つ」、「還元鉄から酸化鉄への反応に伴う結晶構造の変化により、包材の破壊や組成物中の配合物が溶出する」といった課題点を有する(特許文献1参照)。
【0008】
また、(2)の「遷移金属錯体を用いた酸素配位結合タイプ」は、錯体中の遷移金属1分子に対し酸素1分子配位させる為に能力が非常に低く、酸素の配位に伴う色調変化からインジケーターとしての機能は果たすが、酸素吸収材として展開する事は極めて困難である(特許文献2、3参照)。
(3)の「被還元性化合物の還元/酸化反応を用いた過酸化水素化」については、酸素吸収後に過酸化水素を発生させる為、衛生性/安全性に問題がある。また、この反応を用いる事で熱可塑性樹脂自体が変色(色素として機能もする為)する事も課題として挙げられる(特許文献4参照)。
【0009】
このような観点から、(4)の「炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂の酸化分解あるいは酸素付加反応を用いたタイプ」が盛んに検討されるようになってきた。本出願もこのタイプに属する。このタイプの課題点は、酸素吸収能力は優れるが、酸化反応に伴う臭気の発生や膜物性の低下が問題点として挙げられる(特許文献5、6参照)。また、これらの特許文献は、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂の自動酸化を酸化触媒により促進させたものであり、酸素は吸収することは可能であるが、その制御が困難であることが挙げられる(トリガー機能が明確でないため、いつでも酸素吸収を開始してしまう)。このような課題を改善するために、UVなどの活性エネルギー線を用いて酸素吸収を開始させるトリガーシステムが提案されるようになった(特許文献7)。このシステムを用いることで、通常は、酸化防止剤などにより炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂の自動酸化を抑制させるとともに、UVなどの活性エネルギー線を照射することで、酸素吸収を開始させるといったトリガー機能を明確化することが可能になった。しかしながら、この方法は光増感剤などの成分を配合する必要があり、これらの成分の溶出性といった安全衛生性に課題を残している。また、このトリガー機能を明確化させるために、酸化防止剤を用いて熱可塑性樹脂の自動酸化を抑制させる必要があるが、その一方で、熱などによる酸素吸収のトリガー機能を発現させることが困難であるといった課題を有する。この内容は、ボイルやレトルト包材といったUVなどの活性エネルギー線を照射させることが困難な包材には展開できないことを意味する。本発明者らも、炭素−炭素二重結合を有する酸化されやすい熱可塑性樹脂を用いて、UVトリガー型の酸素吸収剤の酸素吸収能力や速度の改善について検討を行ない、良好な結果は得られはしたが、熱トリガー性という点での可能性は見出せたが、その効果は不充分であると同時に、溶出物の安全性に課題を要する光増感剤を配合しているため、更なる改良が必要とされた(特許文献8参照)。
【0010】
上述した内容は酸素吸収のトリガー付与に関するが、酸素吸収に伴い発生する臭気は改善が必須である。臭気を改善するため、その多くは消臭剤を配合するといった手段が主に検討されている。しかしながら、酸素吸収に伴う臭気の発生量は非常に多く(つまり酸化反応に伴う分解反応が顕著)、消臭剤をいくら配合しても臭気を完全に除去しきれないのが現状である(特許文献9)。
【0011】
熱可塑性樹脂(マトリックス相)と酸素吸収樹脂(ドメイン相)からなる樹脂組成物における、酸化触媒の配合部位をマトリックス相側にするか、ドメイン相側にするかといった内容の文献が見受けられる(特許文献10)。しかしながら、この樹脂組成物において
は、酸化されやすい酸素吸収樹脂を加工プロセス中に酸化させないために酸化触媒の配合部位を検討したためのものであり、酸素吸収能を発現させるために検討されたものではない。
【0012】
このように酸素吸収樹脂の登場は、今後のパッケージの内容物保存効果という点で期待される分野であるが、包装体に展開ということを考慮すると、現状としてはまだまだ改善事項が多く残されており、その改善すべき課題を下記に列挙する。
(1)熱、紫外線(UV)などにより酸素吸収を開始するトリガー機能の付与(酸素吸収包材の展開範囲を拡大)
(2)トリガーが与えられた場合の迅速に酸素吸収を開始するレスポンスの速さ(酸素吸収包材としての酸素吸収量と酸素吸収速度の両立)
(3)トリガー機能の明確化(例えば、室温では安定であるが、トリガー付与後に酸素吸収する酸素吸収包材としての保存安定性、上記(1)と(2)の機能の両立)
(4)臭気の低減(酸素吸収後に発生する臭気の低減)
(5)安全性の付与(溶出するような光増感剤を用いない)
【0013】
以下に特許文献を記す。
【特許文献1】特許第3019153号公報
【特許文献2】特公平7−82001号公報
【特許文献3】特許第2803508号公報
【特許文献4】特許第2922306号公報
【特許文献5】特許第3183704号公報
【特許文献6】特許第3064420号公報
【特許文献7】特許第3202026号公報
【特許文献8】WO2004/018564
【特許文献9】特表2002−504159公報
【特許文献10】特許第3429773公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされたものであって、熱、紫外線(UV)などにより酸素吸収を開始するトリガー機能を付与し、トリガーが与えられた場合は迅速に酸素吸収を開始するレスポンスが速く、酸素吸収後に発生する臭気を低減した、保存安定性や安全性に優れる、酸素吸収能を有する樹脂組成物およびその樹脂組成物層を含む積層体、包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、すなわち
請求項1記載の発明は、熱可塑性樹脂(樹脂A)、エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(樹脂B)、樹脂Aと樹脂Bの相溶化剤の効果を有する熱可塑性樹脂(樹脂C)
、酸化触媒、低分子易酸化性化合物からなる樹脂組成物であって、
前記樹脂Aが50〜99wt%と、前記樹脂Bと樹脂Cとを混合してなる樹脂が1〜50wt%とからなり、さらに、酸化触媒を樹脂Bに対し0.001〜2%および低分子易酸化性化合物を樹脂Bに対し0.1〜20%の範囲で配合したことを特徴とする酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記樹脂Bが、ガラス転移温度(Tg)≧50℃の化合物からなるユニット(樹脂B−1)とエチレン系不飽和結合を有する化合物からなるユニット(樹脂B−2)のブロック共重合体であって、
前記樹脂B−1が50〜99wt%と前記樹脂B−2が1〜50wt%とからなることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0017】
請求項3記載の発明は、前記樹脂B−1が、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリロニトリル、あるいはこれらの誘導体から1種以上選択され、樹脂B−2が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、あるいはこれらの誘導体から1種以上選択されることを特徴とする請求項2記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0018】
請求項4記載の発明は、前記樹脂Cが、前記樹脂Aに前記樹脂B−1からなるユニットがグラフトされたグラフト共重合体であって、
樹脂Aが50〜99wt%と樹脂B−1が1〜50wt%とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0019】
請求項5記載の発明は、前記樹脂Cが、前記樹脂Bの水素添加物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0020】
請求項6記載の発明は、前記樹脂Aと樹脂Bと樹脂Cからなる樹脂組成物の分散状態が、樹脂Cに樹脂Bが分散した分散相(α)がさらに樹脂A中に分散した構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0021】
請求項7記載の発明は、前記樹脂Cに樹脂Bが分散した分散相(α)における樹脂Bの樹脂B−2ユニットが、樹脂Bの樹脂B−1ユニットと樹脂Cの樹脂B−1ユニットからなる樹脂B−1中に分散し、さらに、その樹脂B−1からなる外殻が樹脂Cの樹脂Aユニットで被覆された構造を有することを特徴とする請求項6のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0022】
請求項8記載の発明は、前記酸化触媒および低分子易酸化性化合物が、少なくとも、分散相(α)内部に存在しすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0023】
請求項9記載の発明は、前記酸化触媒が、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、銅、セリウムなどから1種以上選択される芳香族カルボン酸塩、飽和あるいは不飽和カルボン酸塩などの遷移金属化合物塩、あるいはアセチルアセトナト、エチレンジアミン四酢酸、サレン、ポルフィリン、フタロシアニンなどの各種遷移金属錯体、から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項8記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0024】
請求項10記載の発明は、前記低分子易酸化性化合物が、高級不飽和脂肪酸あるいはその誘導体であることを特徴とする請求項8記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0025】
請求項11記載の発明は、熱可塑性樹脂(樹脂A)が、ポリエチレン、エチレン−αオ
レフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのエステル化物、あるいはそのイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはその部分けん化物あるいは完全けん化物に代表されるエチレン系共重合体、あるいはグラフト変性ポリオレフィン樹脂の、単体あるいはこれら1種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物である。
【0026】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物層を少なくとも含むことを特徴とする積層体である。
【0027】
請求項13記載の発明は、前記樹脂組成物層の厚さが5〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項12記載の積層体である。
【0028】
請求項14記載の発明は、25μm(厚さ)/m2(面積)/24h/(1.01325×105Pa)(圧力)の条件における酸素透過度が50cm3以下の熱可塑性樹脂層、金属箔層、金属蒸着熱可塑ポリマー層、無機化合物蒸着熱可塑性ポリマー層から選ばれるバリア層を少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項12または13記載の積層体である。
【0029】
請求項15記載の発明は、前記バリア層としての熱可塑性樹脂層が、ポリエステル樹脂層、ポリアミド樹脂層、ポリアクリロニトリル層、ポリビニルアルコール層、エチレン−ビニルアルコール共重合体層、ポリ塩化ビニリデン層から選ばれる熱可塑性樹脂層であることを特徴とする請求項14記載の積層体である。
【0030】
請求項16記載の発明は、前記金属箔層が、アルミニウム箔であることを特徴とする請求項14記載の積層体である。
【0031】
請求項17記載の発明は、前記金属蒸着熱可塑ポリマー層の金属が、アルミニウムであることを特徴とする請求項14記載の積層体である。
【0032】
請求項18記載の発明は、無機化合物蒸着熱可塑性ポリマー層の無機化合物が、シリカまたはアルミナであることを特徴とする請求項14記載の積層体である。
【0033】
請求項19記載の発明は、前記酸素吸収能を有する樹脂組成物層に消臭剤を配合したことを特徴とする請求項12または13記載の積層体である。
【0034】
請求項20記載の発明は、請求項12〜19のいずれか1項に記載の積層体から形成されたことを特徴とする包装体である。
【0035】
請求項21記載の発明は、少なくとも25℃以上の温度、もしくは紫外線等の活性エネルギー線により酸素吸収を開始することを特徴とする請求項20記載の包装体である。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、酸素吸収能を有する樹脂組成物は、その独特な熱可塑性樹脂のモルフォロジーの制御を行うことで、熱、紫外線(UV)などにより酸素吸収を開始するトリガー機能を付与し、トリガーが与えられた場合は迅速に酸素吸収を開始するレスポンスが速く、酸素吸収後に発生する臭気を低減した、室温での保存安定性や安全性に優れる、酸素吸
収能を有する樹脂組成物およびその樹脂組成物層を含む積層体、包装体を提供することができる。
【0037】
従来のUVトリガータイプであれば特殊な充填ラインが必要だったケースにおいても、本発明の酸素吸収能を有する樹脂組成物であれば、UVだけでなく、熱トリガー対応の包材設計も可能である。また、熱トリガーの温度制御も可能であり、ボイルやレトルト殺菌時の熱もトリガーとすることが可能であることから、トリガータイプ(UVや熱)に応じて様々な酸素吸収包材の設計を行うことが可能である。さらに、独自のモルフォロジーの制御を行うことで酸素吸収に伴う臭気も低減可能であることから広い範囲での用途展開が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明の酸素吸収能を有する樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂(樹脂A)、エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(樹脂B)、樹脂Aと樹脂Bの相溶化剤の効果を有する熱可塑性樹脂(樹脂C)、酸化触媒、低分子易酸化性化合物からなる樹脂組成物において、樹脂A:50〜99wt%、樹脂B+樹脂C:1〜50wt%、酸化触媒を樹脂Bに対し0.001〜2%、低分子易酸化性化合物を樹脂Bに対し0.1〜20%になるように配合したことを特徴とする酸素吸収能を有する樹脂組成物およびその樹脂組成物層を含む積層体、包装体としたものであり、さらに、この樹脂組成物の各樹脂(A〜C)の構造や分散状態、さらには酸化触媒や低分子易酸化性化合物の分散位置を制御することにより、下記(1)〜(5)の課題を解決したものである。
(1)熱、UVなどにより酸素吸収を開始するトリガー機能の付与
(2)トリガーが与えられた場合には、迅速に酸素吸収を開始するレスポンスの速さ
(3)トリガー機能の明確化(例:室温では安定であるが、トリガー付与後には酸素吸収など)
(4)臭気の低減
(5)安全性の付与
【0039】
樹脂組成物の主成分となる熱可塑性樹脂(樹脂A)は、酸素吸収樹脂の成形性や強度物性を支配するものであり、主にポリオレフィン系樹脂あるいはエチレン系共重合体が挙げられる。例を挙げると、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、αオレフィンがブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1などのエチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などのポリαオレフィン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどのαオレフィン−エチレン共重合体、あるいは2種以上のαオレフィンを共重合させたもの、例えばエチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ブテン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−ヘキセン共重合体なども使用可能である。また、エチレン−環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂も使用可能である。またエチレン系共重合体としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル、エチレン−(メタ)アクリル酸n−ブチル、エチレン−(メタ)アクリル酸i―ブチル、エチレン−(メタ)アクリル酸t−ブチル、エチレン−(メタ)アクリル酸の各種イオン架橋物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのエステル化物、あるいはそのイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはその部分けん化物あるいは完全けん化物、エチレン−α,β不飽和カルボン酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体などが挙げられる。また、無水マレイン酸やビニルあるいは(メタ)アクリロキシシラン化合物、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなどの反応性官能基をグラフト反応させた、グラフト変成ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、必要に応じては
各種成分を共重合させたものでも構わなく、一酸化炭素と共重合させたもの、アリル系化合物を共重合させたものなど種々に選択することができる。これらのポリオレフィンあるいはエチレン系共重合体は単体で使用しても、これら1種以上の混合物としても使用が可能である。
【0040】
エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(樹脂B)は酸素吸収に寄与する相である。その構造としては、ガラス転移温度(Tg)≧50℃の化合物からなるユニット(樹脂B−1)とエチレン系不飽和結合を有する化合物からなるユニット(樹脂B−2)のブロック共重合体であることが挙げられ、樹脂B−1:50〜99wt%、樹脂B−2:1〜50wt%の範囲であることが好ましい。このような樹脂B−1としては、ポリスチレン、ポエαメチルスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、あるいはこれらの誘導体から1種以上選択される。樹脂B−2としてはポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ2−エチルブタジエンなどの化合物から1種以上選択される。樹脂B−1、樹脂B−2ともこれらの材料に限定されるわけではなく様々なタイプの化合物を用いることが可能である。例を挙げるとスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などが挙げられ、そのブロック共重合体の構造も直鎖型や側鎖型など様々に選択することが可能である。さらにはブタジエンで例を挙げると1,2−ブタジエン、トランス1,4−ブタジエン、シス1,4−ブタジエンなどの単体あるいはこれらの共重合体などの各種構造異性体も用いることが可能である。
【0041】
樹脂B−2は樹脂Bの中でもさらに酸素吸収に寄与するユニットであり、酸化に伴う架橋/分解反応といった反応機構を考慮すると、上述した各種樹脂B−2の中でも極力酸化分解しにくいポリブタジエンをユニットとした方が好ましい。樹脂B−1は熱可塑性ゴムである樹脂B−2の加工性を改善させるために必要なユニットであると共に、ガラス転移温度(Tg)≧50℃以上にすることで、酸素吸収の熱トリガー性に温度依存性を付与することが可能である。また、ガラス転移温度(Tg)が室温よりも高いことは樹脂B−1の分子運動が室温では凍結状態であることから、酸素吸収に伴い発生した臭気をトラップすることが可能であることを意味する。またさらに樹脂B−1がポリスチレンの場合には後述する低分子量易酸化性化合物の固定化相としても寄与することが可能であることからなお有効である。樹脂Bに含まれる樹脂B−1、B−2の配合比は、加工性、酸素吸収能力、あるいは後述する他の成分との配合比との関係から、樹脂B−1:50〜99wt%、樹脂B−2:1〜50wt%の範囲であることが好ましい。樹脂Bにおける樹脂B−1、B−2におけるそれぞれの効果は、モルフォロジー制御の個所で詳細に説明する。
【0042】
樹脂Aと樹脂Bの相溶化剤の効果を有する熱可塑性樹脂(樹脂C)としては「熱可塑性樹脂(樹脂A)からなるユニット」に「樹脂B−1からなるユニット」がグラフトされたグラフト共重合体であり、樹脂Cにおける樹脂Aのユニットと樹脂B−1のユニットが、樹脂A:50〜99wt%、樹脂B−1:1〜50wt%であることを特徴とする。上述した樹脂Aと樹脂B中のB−1を例に挙げると、低密度ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂にポリスチレンやポリ(メタ)アクリル酸エステルのような熱可塑性樹脂をグラフト化させていることが挙げられる。この場合、樹脂B−1は1wt%より少ないと樹脂Bとの相溶化の効果が得られにくい。50wt%より多い場合は加工性の低下を伴う。また、樹脂Aと樹脂Bの相溶化剤として、エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(樹脂B)を水添した化合物も好適に用いることが可能であり、具体例を挙げると、樹脂Bがスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であれば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体であれば、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体が挙げられる。これらの樹脂Cを用いた効果についても樹脂Bと同様に後述する。
【0043】
この樹脂組成物に配合する添加剤として、まず遷移金属を含む化合物が挙げられる。この遷移金属を含む化合物は、酸素吸収機構の触媒として働くものである。これらの遷移金属としては、周期律3A〜7A、8、1B族の元素が挙げられ、この中でも特に、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、銅、セリウムから選ばれる1種以上の化合物が好ましい。これらの遷移金属からなる化合物としては芳香族カルボン酸塩、飽和あるいは不飽和カルボン酸塩などの遷移金属化合物塩、あるいはアセチルアセトナト、エチレンジアミン四酢酸、サレン、ポルフィリン、フタロシアニンなどの各種遷移金属錯体が挙げられる。特に、これら遷移金属の炭素数10〜20の飽和あるいは不飽和脂肪酸塩が好ましく、ステアリン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩など各種遷移金属塩あるいはこれらの誘導体がハンドリング、コストなどの面で好ましい。配合量としては上記樹脂Bに対し、これらの遷移金属化合物を0.001〜2%が挙げられる。この配合量よりも少ないと酸化に伴う酸素吸収能が低下する。これ以上の添加量でも構わないが、飽和限界を達成してしまうため、必要量としては2%が挙げられる。
【0044】
次の必須成分としては、低分子量易酸化性化合物が挙げられる。このような化合物としては高級不飽和脂肪酸が代表的なものとして上げられ、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸あるいは、これらの多価アルコール誘導体、例えば、グリセロール、ソルビトール、キシリトールなどのエステル化物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。低分子易酸化性化合物の添加量は樹脂Bに対し0.1〜20%になるように配合される。0.1%より少ないと酸素吸収能力に劣る。20%より多くても構わないが、飽和限界に達成すると共に、ブリードアウトに伴う樹脂組成物のべたつきを伴い、加工時のハンドリングが低下する恐れがある。
【0045】
本発明の酸素吸収樹脂組成物の酸素吸収を発現させるための機構を説明する前に、従来の酸素吸収剤のトリガー機能を説明すると以下の通りである。通常、エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(樹脂B)は非常に酸化されやすいがため、その加工安定性、保存安定性を付与させるため、各種酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ラクトン系など)が添加されている。この酸化防止剤が配合されていない樹脂Bは自動酸化が働くことにより酸素を消費(酸素を吸収)することが可能である。その自動酸化をより促進させるがために上述した酸化触媒を樹脂Bに配合するのが一般的な手法であり、この内容が特許文献5の内容の意味するところである。しかしながら、酸化されやすい樹脂に酸化触媒を直接配合することは、加工時における酸化の影響が最も心配される内容であり、特許文献5を見てもわかるように、樹脂Bに相当するようなエチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂に酸化触媒を配合する方法は、溶媒に熱可塑性樹脂および酸化触媒を配合し、完全に溶解均一化させた後に溶媒を除去するものであった。その内容や課題点を考慮して酸化触媒の導入位置をコントロールし、プロセスを熱プロセス化させたものが特許文献10に相当するものであり、直接酸化触媒を樹脂Bに相当するような熱可塑性樹脂に配合しなくても構わないといった内容に帰結される。また特許文献7については、エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(樹脂B)は酸化防止剤による安定化が必須を考えた上で、光増感剤を配合することにより、酸素吸収の起点になるラジカルを発生させるという考えと共に、光増感剤により発生したラジカルを酸化防止剤が消費するという考えも含まれている。
【0046】
つまり、酸素吸収包材を安定化[上記(1)]およびトリガー機構の明確化[上記(2)]を満たすためには、エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(樹脂B)に必須として配合されている各種酸化防止剤を如何にして消費させ、樹脂Bの自動酸化を促進させるか、が挙げられる。そこで、樹脂B中に含まれる酸化防止剤を消費させる方法について誠意検討を行った結果、熱やUVによって容易に分解しうる低分子量易酸化性化合物を配合し、さらに酸化触媒はこの低分子量易酸化性化合物および樹脂Bの酸化を促進させるために配合することにより、従来のような光増感剤を配合すること無しに、熱やUVによっ
て容易に樹脂B中の酸化防止剤を消費し、樹脂Bの自動酸化により酸素吸収を開始することが可能であることを見出すことができた。
【0047】
また、樹脂A、樹脂B、樹脂C、酸化触媒、低分子易酸化性化合物の配合部位(モルフォロジーの制御)を誠意検討した結果、下記構造となるようなモルフォロジーを制御することにより、上記(1)〜(5)の課題を克服することが可能となった。
【0048】
以下、各樹脂A〜Cの構造を模式的に図示する。図1は、樹脂Aの構造の一例として簡便的に直鎖型ポリオレフィンの構造を示す模式概念図である。図2は、樹脂Bの構造の一例として樹脂B−1と樹脂B−2の直鎖型ブロック構造を示す模式概念図である。図3は、樹脂Cの構造の一例として樹脂Aに相当するユニットと樹脂B−1に相当するユニットにグラフトポリマー、あるいは樹脂Bの水素添加物の構造を示す模式概念図である。図4は、樹脂Aと樹脂Bと樹脂Cからなる樹脂組成物の分散状態を示す模式概念図である。樹脂Cに樹脂Bが分散した分散相を分散相(α)とした時に、図4に示すように、モルフォロジーを制御することが好ましい。分散相(α)は樹脂Bおよび樹脂Cから形成されている。樹脂Cは樹脂Aに相当するユニット{樹脂A(C)}と樹脂B−1に相当するユニット{樹脂B−1(C)}を有し、樹脂Bは樹脂B−1と樹脂B−2を有する。つまり、樹脂Bにおける樹脂B−1と樹脂Cにおける樹脂B−1(C)が相溶系であるため、図4を見てもわかるように、見た目上樹脂B−1(これは樹脂Bと樹脂CのB−1に相当するところが双方含まれる)にB−2が分散しているように見える。つまりガラス転移点温度(Tg)≧50℃の樹脂Bに酸素吸収の起点となる樹脂B−2が被覆された構造を有することがわかる。さらに、分散相(α)は樹脂Cの樹脂Aに相当するユニット{樹脂A(C)}を有することから、そこが熱可塑性樹脂(樹脂A)と相溶するため、系全体でみると、分散相(α)がエチレン系不飽和結合を有する化合物からなるユニット(樹脂B−2)をガラス転移温度(Tg)≧50℃の化合物からなるユニット(樹脂B−1)で被覆され、さらにその外殻をさらに樹脂C中の(樹脂A)からなるユニットで被覆された構造を有することがわかる。この構造を形成させるメリットとしては、まず、樹脂B−2において酸素吸収を開始させるためには、何かしらの反応系をガラス転移温度(Tg)≧50℃の樹脂B−1を介して行う必要があることが挙げられ、これは熱トリガー性の付与[上記(3)]およびB−2で発生した臭気成分のトラップ[上記(4)]に効果を発現させるものである。また、樹脂のラジカル連鎖反応に伴う酸化は熱可塑性樹脂の分子運動性に影響を受け、ガラス転移温度が高い樹脂B−1で酸素吸収ユニットである樹脂B−2の分子運動を拘束させることで、酸素吸収に必要以上の酸化に伴う反応(分解など)を制御することが可能になる。
【0049】
実際は、図4だけでは酸素吸収は開始することができず、上述した酸化触媒および低分子易酸化性化合物を配合する必要がある。この時の酸化触媒および低分子易酸化性化合物を配合する部位としては特に限定されないが、熱可塑性樹脂(樹脂A)に、樹脂Bと樹脂Cからなる分散相(α)が分散した状態において、酸化触媒(T)および低分子易酸化性化合物(O)が双方とも分散相(α)側に、あるいは双方とも樹脂A側に、あるいは酸化触媒が樹脂A側で低分子易酸化性化合物(O)が分散相(α)側に配合されていることが、その分散位置によって得られる機能は異なるが、熱トリガー性およびUVトリガー性を付与させると共に、室温における安定性を付与させる、低分子易酸化性化合物の添加量を調整に由来する臭気成分の低減、などのことが可能であることを見出した[上記(1)、(2)、(3)]。また、熱トリガー性の場合、求められる温度に応じては比較的低温で酸素吸収を作用させたいケースも有り、さらにはボイルやレトルトなどの100℃付近で作用させたいケースも有る。その場合は、低分子易酸化性化合物の配合量をコントロールすることによって望みの温度で酸素吸収を開始するトリガー機構を付与することが可能である。より好ましくは、低分子易酸化性化合物(O)を分散相(α)に配合するメリットとしては、樹脂B中に含まれる酸化防止剤をより消費させやすくさせる効果もあるが、す
ることで、低分子易酸化性化合物のブリードアウトを抑制することが可能であることが挙げられる。通常、樹脂Aに多量の低分子量易酸化性化合物(O)を配合すると、ブリードアウトによりべたつきが生じることが多いが、分散相(α)に配合することで、そのブリードアウトが改善可能になる。恐らく、樹脂B−1との相溶性が良いことに起因すると思われる。また、温度トリガー性も一概に低分子量易酸化性化合物(O)の添加量だけで決まるものではなく、低分子量易酸化性化合物(O)を配合することによる樹脂B−1のガラス転移点の低下が温度トリガー性の温度コントロールに効いているものと推測される。ただし、樹脂B中に含まれる酸化防止剤は、低分子易酸化性化合物の酸化により消費することで本発明の酸素吸収能を有する樹脂組成物の酸素吸収機能を付与させるものであり、誠意検討を行った結果、樹脂B中に含まれる酸化防止剤は樹脂B中で消費するよりかは、樹脂A側で消費されたほうが好ましいことから、樹脂組成物あるいはこれらを用いた積層体や包装体にした場合に求められる機能に応じて、酸化触媒や低分子易酸化性化合物の配合部を決定したほうが好ましい。
【0050】
上述した構造を形成することで、熱あるいはUVのような活性エネルギー線で(酸化触媒存在下)で低分子量易酸化性化合物が消費され、その消費を抑えるべく樹脂B中の酸化防止剤が消費され、その結果樹脂Bの自動酸化が始まり、酸素吸収を発現することになる。この内容から、従来までの安全性に課題の有る光増感剤といった化合物を配合しなくても、熱トリガー性、UVトリガー性を付与することが可能である。
【0051】
必須成分ではないが、これらの樹脂組成物にはさらに酸素吸収の安定性を付与するべく、ヒンダードフェノールやリン系の酸化防止剤を添加しておいた方が好ましい。また、必要に応じては上記以外の各種添加剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤など各種添加剤を配合してもかまわない。
【0052】
これらの酸素吸収能を有する樹脂組成物の製造方法としては、最終製品の成形方法および必要とされる酸素吸収能により設定した各種所定配合量の材料を、リボンミキサー、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサーなどを用いてドライブレンドしたもの、あるいはあらかじめ混練機に搭載されている各フィーダーを用いて所定量配合したものを、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、バンバリーなどの混練機を用いて、ベースとなる熱可塑性樹脂にもよるが、融点以上240℃以下で混練することで得られる。
【0053】
本発明の酸素吸収能を有する樹脂組成物は、押出ラミネーション成形、押出キャスト成形、インフレーション成形、インジェクション成形、ダイレクトブロー成形など各種成形法を用いて積層体とすることが可能である。また上述した成形法で得られたフィルム(インフレーションなど)については後工程でドライラミネーションやウエットラミネーション、ノンソルベントラミネーションにより積層体を得ることも可能であり、またインジェクション成形でえられたプリフォームを延伸ブロー成形により多層延伸ブローボトルにすることも可能であるが、これらの成形法に限られるものではない。
【0054】
本発明の酸素吸収能を有する樹脂組成物単体は、酸素吸収能は有するが、それを構成している熱可塑性樹脂が酸素透過性の高い材料である為、酸素の透過と吸収という協奏が発生し、酸素の透過が大になる問題が発生する。そのような問題を克服するという意味でも、本樹脂組成物を用いた積層体の少なくとも一層は、酸素透過度50cm3×25μm(厚さ)/m2(面積)/24h/(1.01325×105Pa)(圧力)以下のバリア層を設けた方が好ましい。これらの材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド6やポリアミド6−ポリアミド66共重合体、芳香族ポリアミドなどのポリアミド樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂から選択される熱可塑性樹脂層、アルミ箔などの金属箔層、アルミ、シリカ、アルミ
ナなどのPVD蒸着法あるいは、ヘキサメチレンジシロキサンなどのオルガノシランやアセチレンガスやその他の炭素ガス源を用いたCVD蒸着法により得られた蒸着熱可塑性樹脂層が挙げられる。さらには、これらの蒸着層、特にPVD蒸着において、そのガスバリア性を向上させる為、ポリビニルアルコール/シラン化合物系のオーバーコート層を設けても構わない。また、蒸着層と熱可塑性樹脂層の密着性を向上させる為の各種プライマー層を設けていてもよい。
【0055】
これらのバリア層を用いることで、これらのバリア層を僅かに透過した酸素ガスを、酸素吸収能を有する樹脂組成物層が完全に吸収してくれるだけでなく、消費する透過酸素ガスの量が少ない為、包装体のヘッドスペースの酸素ガスを吸収することが可能になる。
【0056】
上述した構造を形成することで、酸素吸収に伴う課題点として挙げられた臭気は極力抑制されている。しかしながら、それでも僅かに臭気を発生している可能性があるので、その場合は消臭剤を用いることが好ましい。消臭剤としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ゼオライト、活性炭あるいはこれらの混合物からなる比表面積が大きい無機化合物を用いる、あるいは化学吸着系といわれるアミン系などの有機系消臭剤を用いる、あるいはこれらの無機系や有機系を複合させたタイプも用いることが可能である。消臭剤は上述した酸素吸収能を有する樹脂組成物に配合しても構わなく、あるいはそれ以外の積層構成を形成する層に配合してもよい。
【0057】
本発明における積層体の例を以下に記載する。積層体を構成する記号は以下に示す通りである。A:ポリオレフィン樹脂、B:酸無水物グラフト変性ポリオレフィン樹脂、C:エチレン−ビニルアルコール共重合体、D:アルミナ蒸着ポリエステルフィルム、E:アルミ箔、F:エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、G:ポリビニルアルコール系オーバーコート層、H:ウレタン系接着剤、I:ポリエステルフィルム
構成例−1:A/B/C/B/酸素吸収樹脂組成物
成形法:押出成形、射出成形、ブロー成形など。用途:シート、ボトル、カップ、トレーなど。
構成例−2:D/G/H/A/酸素吸収樹脂組成物
成形法:押出ラミネート、ドライラミネートなど。用途:軟包装体、蓋材など。
構成例−3:I/H/E/F/酸素吸収樹脂組成物
成形法:押出ラミネートなど。用途:インナーキャップなど。
構成例−4:紙/A/D/G/H/A/酸素吸収樹脂組成物
成形法:押出ラミネートなど。用途:複合紙容器など。
【0058】
上述したように、様々な構成で得られた積層体は、そのまま各種用途の包装体へ展開することが可能である。これらの例は上述した内容にかぎられないで、様々な包装形態へ展開が可能になる。また、これらの包装形態を組み合わせることで、酸素を吸収する包装体を形成することが可能になる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。本発明は、これら限定されるものではない。
【0060】
[材料]
以下の材料を用いた。
【0061】
樹脂A
・エチレン−ヘキセン−1共重合体(MI=2.2)
樹脂B
・直鎖型スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(ブタジエン:60wt%)
樹脂C
・ポリスチレンをグラフトさせたポリエチレン(ポリスチレン:30wt%)
・水添直鎖型スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(ブタジエン−60wt%の水添物)
遷移金属化合物
・ステアリン酸マンガン
低分子易酸化性化合物
・オレイン酸
【0062】
[バッチ製造]
以下に示すバッチを作成した。
【0063】
バッチ−1
樹脂B/樹脂C=35/65(重量比)になるようにドライブレンドしたものを、2軸押出機(φ=30、L/D=49)により吐出9kg/h、220℃、50rpmにてコンパウンドを行った。またコンパウンドと同時に低分子量易酸化性化合物を下記実施例に示す添加量で液添を行い、樹脂B/樹脂C/低分子量易酸化性化合物からなる組成物を作成した。
【0064】
バッチ−2
樹脂A/樹脂B=85/15になるようにドライブレンドしたものを2軸押出機(φ=30、L/D=49)により吐出9kg/h、220℃、50rpmにてコンパウンドを行った。
【0065】
バッチ−3
樹脂Aにステアリン酸マンガンを、金属換算で1%濃度になるようにドライブレンドしたものを2軸押出機(φ=30、L/D=49)により吐出9kg/h、180℃、50rpmにてコンパウンドを行った。
【0066】
バッチ−4
樹脂Cにステアリン酸マンガンを金属換算で1%濃度になるようにドライブレンドしたものを2軸押出機(φ=30、L/D=49)により吐出9kg/h、180℃、50rpmにてコンパウンドを行った。
【0067】
バッチ−5
樹脂Aに低分子量易酸化性化合物を1%濃度になるように2軸押出機(φ=30、L/D=49)により吐出9kg/h、180℃、50rpmにてコンパウンドを行った。低分子量易酸化性化合物は液添にて導入した。
【0068】
バッチ−1〜5はすべて空冷ペレタイズを行い、アルミニウム包装体に保管した(不活性ガス置換済み)。
【0069】
[フィルム製造]
下記実施例に示す配合比になるようにバッチ−1〜−5をドライブレンドした後、3種3層多層フィルム製造機により2種3層の共押出多層フィルムを製膜した。この時の層構成は、樹脂A/酸素吸収樹脂組成物層/樹脂A=15μm/30μm/15μmであり、この時の加工温度は200℃であった。
【0070】
[酸素吸収能力評価]
上記フィルムを100×100mmサイズに切り取り、それをアルミパウチ中に封入した(脱気シール)。その後空気を100ml充填し、経時における酸素吸収能力を評価した。トリガーとしては、熱トリガーとして、25℃、60℃、85℃−1hのボイル処理後25℃保管の3条件で、UVトリガーとしては高圧水銀ランプを用いて、照射エネルギー350mJ/cm2になるように照射したサンプルについて評価を行った。
【0071】
以下、[低分子量易酸化性化合物/酸化触媒の効果]についての実施例を示す。
【0072】
<実施例1>
樹脂Cとして、ポリスチレンをグラフトさせたポリエチレンを用いた。バッチ−1の製造において、低分子量易酸化性化合物を配合しなかったバッチを用いた。樹脂A/樹脂B/樹脂Cにおいて、樹脂Bのコンテントが15wt%になるように、さらに樹脂Bに対し遷移金属が金属換算で3000ppmになるように樹脂A、バッチ−1、バッチ−4をドライブレンドし、上記フィルム製造を行った。この時、酸化触媒は分散相(α)に存在し、低分子易酸化性化合物は無しである。結果を図5、6、7、8に示す。
【0073】
<実施例2>
バッチ−1の製造において、低分子量易酸化性化合物の添加量を樹脂Bに対し1.5%にした以外は実施例1と同じである。この時、酸化触媒は分散相(α)、低分子易酸化性化合物は分散相(α)に存在する。結果を図5、6、7、8に示す。
【0074】
<実施例3>
バッチ−1の製造において、低分子量易酸化性化合物の添加量を樹脂Bに対し3.0%にした以外は実施例1と同じである。この時、酸化触媒は分散相(α)、低分子易酸化性化合物は分散相(α)に存在する。結果を図5、6、7、8に示す。
【0075】
<実施例4>
バッチ−1の製造において、低分子量易酸化性化合物の添加量を樹脂Bに対し6.0%にした以外は実施例1と同じである。この時、酸化触媒は分散相(α)、低分子易酸化性化合物は分散相(α)に存在する。結果を図5、6、7、8に示す。
【0076】
<実施例5>
バッチ−1の製造において、低分子量易酸化性化合物の添加量を樹脂Bに対し9.0%にした以外は実施例1と同じである。この時、酸化触媒は分散相(α)、低分子易酸化性化合物は分散相(α)に存在する。結果を図5、6、7、8に示す。
【0077】
<実施例6>
バッチ−1の製造において、低分子量易酸化性化合物の添加量を樹脂Bに対し15.0%にした以外は実施例1と同じである。この時、酸化触媒は分散相(α)、低分子易酸化性化合物は分散相(α)に存在する。結果を図5、6、7、8に示す。
【0078】
<実施例7>
バッチ−1の製造において、低分子量易酸化性化合物の添加量を樹脂Bに対し15.0%にし、バッチ−4を配合しなかった以外は実施例1と同じである。この時、酸化触媒は無し、低分子易酸化性化合物は分散相(α)に存在する。結果を図5、6、7、8に示す。
【0079】
<実施例8>
バッチ−1の製造において、低分子量易酸化性化合物を添加せず、さらにバッチ−4を配合しなかった以外は実施例1と同じである。この時、酸化触媒は無し、低分子易酸化性
化合物も無しである。結果を図5、6、7、8に示す。
【0080】
<実施例9>
バッチ−1の製造において、低分子量易酸化性化合物を添加せず、バッチ−3および低分子量易酸化性化合物のバッチとしてバッチ−5を用い、樹脂Bに対し1.5%になるように調整した以外は実施例1と同じである。この時、酸化触媒は樹脂A、低分子易酸化性化合物も樹脂Aに存在する。酸素吸収能力の結果は実施例3,4の中間的な結果が得られたが、低分子量易酸化性化合物の存在部位が樹脂Aということもあり、フィルム製造時に、ブリードの影響でバッチ−5が非常にべたつき、ハンドリングが非常に困難であった。しかしながら、得られた多層フィルムは問題なかった。結果は実施例3と実施例4の中間的な挙動を示した。
【0081】
<実施例10>
バッチ−1の製造において低分子量易酸化性化合物を添加せず、低分子量易酸化性化合物のバッチとしてバッチ−5を用い樹脂Bに対し15.0%になるように調整した以外は実施例1と同じである。この時、酸化触媒は分散相(α)、低分子易酸化性化合物は樹脂Aに存在する。酸素吸収能力の結果は実施例6と近い結果が得られたが、低分子量易酸化性化合物の存在部位が樹脂Aということもあり、フィルム製造時にブリードの影響でバッチ−5が非常にべたつき、ハンドリングが非常に困難であったと同時に、得られた多層フィルムもべたつきが絶えなかった。結果は実施例6と類似の挙動を示した。
【0082】
<実施例11>
樹脂Cとして水添直鎖型スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を用いた以外は、実施例3と同じである。結果は実施例3と同じ挙動であった。
【0083】
図5〜図8に示すように、低分子量易酸化性化合物もしくは酸化触媒を配合しない場合は酸素吸収を示さない、あるいは自動酸化が非常に遅いのに対し、酸化触媒存在下のもと低分子量易酸化性化合物の配合量を増やすことで、UVトリガー性だけでなく、より低温下における酸素吸収能力の立ち上がりが向上することがわかる。このことは、低分子量易酸化性化合物の添加量により熱トリガーの温度をコントロール可能であることを意味し、例えば、より室温域では酸素吸収を示さず(例えば、後述する接着剤のエージングの関係など)、ボイル程度の温度で酸素吸収を示す設計にしたい場合には、低分子量易酸化性化合物の添加量を樹脂Bに対し3〜6%程度にすれば良く、またより低温で酸素吸収を発現させたい場合には(25℃など)、低分子量易酸化性化合物の添加量を9%以上に設定すれば良い。また、酸化触媒や低分子量易酸化性化合物の配合部位は、分散相(α)であろうが無かろうが非常に近い酸素吸収挙動は示すことは可能であるが、樹脂Cが存在することにより、より多くの低分子量易酸化性化合物を配合することが可能になり、より温度トリガーの低温化などに対応することが可能である。また、酸化触媒と低分子量易酸化性化合物の添加部位については、樹脂A側に配合すれば低分子量易酸化性化合物の配合量を落としても、分散相(α)側に配合した時よりも少量で同等の酸素吸収挙動を示すことが可能であるが、べたつきの問題も生じる為、目的とされる機能に応じて配合部位を調整することが好ましい。
【0084】
以下、[樹脂Cの効果]についての実施例を示す。
【0085】
<実施例12>
実施例4のフィルムを用いて、実施例1同様の評価を行った。そのうち、85℃−1hボイル処理により酸素吸収を行った後のヘッドスペースガスを、北川式ガス検知管を用いて発生ガスの定量を行った。対象ガスはアルデヒド類、酢酸類である。その評価結果を表1に示す。
【0086】
<実施例13>
実施例4記載のフィルムを製造時に、外層と内層に相当する樹脂Aに物理吸着系の消臭剤を20wt%配合した樹脂組成物を用いて、同様に多層フィルムを製膜し、実施例10と同様の評価を行った。その評価結果を表1に示す。
【0087】
<実施例14>
バッチ−2、バッチ−3、バッチ−5を用いて、樹脂Cを配合しないで、酸化触媒と低分子量易酸化性化合物の配合比が実施例4と同様になるような樹脂組成物になるように多層フィルムを製膜し、実施例12と同様の評価を行った。その評価結果を表1に示す。
【0088】
<実施例15>
実施例14の多層フィルムにおいて実施例13と同様に消臭剤を用いた。その評価結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1の結果より、樹脂C配合の有無により、酸素吸収に伴う発生ガスの成分が低減されていることが確認される。また、消臭剤を配合することによりその効果は明確になっていることも確認される。樹脂Cを配合しないケース(実施例13、14)の場合は消臭剤を配合しても、まだ臭気が大量に発生している状況であり、モルフォロジーを制御することにより臭気成分がより抑制(トラップ)する効果があることが確認される。
【0091】
以下、[包装体の作成]についての実施例を示す。
【0092】
<実施例16>
実施例13の多層フィルムを「アルミ箔積層ポリエステル基材(ポリエステル12μm、アルミ箔7μm)」からなる基材フィルムに、ポリウレタン系の接着剤を用いてドライラミネート手法により積層させた。この時のエージング温度は多層フィルムの温度トリガー性を考慮して25℃−5日間の室温エージングで接着剤を硬化させた。得られた積層体はA4サイズに切り取り、3方シールを行うことで軟包装体を作成した。この時、内容物としては溶存酸素濃度7.8ppmの蒸留水を100ml充填している(ヘッドスペースは0mlに調整)。この軟包装体を85℃−1hで保存した時の溶存酸素吸収量を評価した。結果を表2に示す。
【0093】
<実施例17>
基材フィルムを、「アルミナ蒸着ポリエステル基材(ポリビニルアルコール/シランカップリング剤系オーバーコート層有り:12μm)」とした以外は実施例14と同じである。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
上記実施例の結果を反映して、内容物として蒸留水を用いて溶存酸素吸収能力を評価したが、同様に優れた酸素吸収能力を示すことが確認された。また、フィルム自体に透明性があることから、実施例16に示す透明バリアフィルムを用いることで、内容物可視性という点でもこの酸素吸収フィルムのメリットが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明における樹脂Aの構造を示す模式概念図である。
【図2】本発明における樹脂Bの構造を示す模式概念図である。
【図3】本発明における樹脂Cの構造を示す模式概念図である。
【図4】本発明の樹脂Aと樹脂Bと樹脂Cからなる樹脂組成物の分散状態を示す模式概念図である。
【図5】本発明における酸化触媒および低分子易酸化性化合物を配合した樹脂組成物の分散状態を示す模式概念図である。
【図6】実施例1〜8における25℃保管の保存時間と酸素吸収量の関係を示すグラフである。
【図7】実施例1〜8における60℃保管の保存時間と酸素吸収量の関係を示すグラフである。
【図8】実施例1〜8における85℃−1hボイル処理後、25℃保管の保存時間と酸素吸収量の関係を示すグラフである。
【図9】350mJ/cm2紫外線照射後の保存時間と酸素吸収量の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0097】
A:熱可塑性樹脂A
A(C):熱可塑性樹脂(樹脂C)における樹脂Aユニット
B:熱可塑性樹脂B
B−1:熱可塑性樹脂Bにおける樹脂B−1ユニット
B−2:熱可塑性樹脂Bにおける樹脂B−2ユニット
C:熱可塑性樹脂C
α:樹脂Bと樹脂Cからなる分散相(α)
T:酸化触媒
O:低分子量易酸化性化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(樹脂A)、エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂(樹脂B)、樹脂Aと樹脂Bの相溶化剤の効果を有する熱可塑性樹脂(樹脂C)、酸化触媒、低分子易酸化性化合物からなる樹脂組成物であって、
前記樹脂Aが50〜99wt%と、前記樹脂Bと樹脂Cとを混合してなる樹脂が1〜50wt%とからなり、さらに、酸化触媒を樹脂Bに対し0.001〜2%および低分子易酸化性化合物を樹脂Bに対し0.1〜20%の範囲で配合したことを特徴とする酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂Bが、ガラス転移温度(Tg)≧50℃の化合物からなるユニット(樹脂B−1)とエチレン系不飽和結合を有する化合物からなるユニット(樹脂B−2)のブロック共重合体であって、
前記樹脂B−1が50〜99wt%と前記樹脂B−2が1〜50wt%とからなることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂B−1が、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリロニトリル、あるいはこれらの誘導体から1種以上選択され、樹脂B−2が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、あるいはこれらの誘導体から1種以上選択されることを特徴とする請求項2記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂Cが、前記樹脂Aに前記樹脂B−1からなるユニットがグラフトされたグラフト共重合体であって、
樹脂Aが50〜99wt%と樹脂B−1が1〜50wt%とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂Cが、前記樹脂Bの水素添加物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂Aと樹脂Bと樹脂Cからなる樹脂組成物の分散状態が、樹脂Cに樹脂Bが分散した分散相(α)がさらに樹脂A中に分散した構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂Cに樹脂Bが分散した分散相(α)における樹脂Bの樹脂B−2ユニットが、樹脂Bの樹脂B−1ユニットと樹脂Cの樹脂B−1ユニットからなる樹脂B−1中に分散し、さらにその樹脂B−1からなる外殻が樹脂Cの樹脂Aユニットで被覆された構造を有することを特徴とする請求項6記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項8】
前記酸化触媒および低分子易酸化性化合物が、少なくとも、分散相(α)内部に存在しすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項9】
前記酸化触媒が、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、銅、セリウムなどから1種以上選択される芳香族カルボン酸塩、飽和あるいは不飽和カルボン酸塩などの遷移金属化合物塩、あるいはアセチルアセトナト、エチレンジアミン四酢酸、サレン、ポルフィリン、フタロシアニンなどの各種遷移金属錯体、から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項8記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項10】
前記低分子易酸化性化合物が、高級不飽和脂肪酸あるいはその誘導体であることを特徴とする請求項8記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項11】
熱可塑性樹脂(樹脂A)が、ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのエステル化物、あるいはそのイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはその部分けん化物あるいは完全けん化物に代表されるエチレン系共重合体、あるいはグラフト変性ポリオレフィン樹脂の、単体あるいはこれら1種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の酸素吸収能を有する樹脂組成物層を少なくとも含むことを特徴とする積層体。
【請求項13】
前記樹脂組成物層の厚さが5〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項12記載の積層体。
【請求項14】
25μm(厚さ)/m2(面積)/24h/(1.01325×105Pa)(圧力)の条件における酸素透過度が50cm3以下の熱可塑性樹脂層、金属箔層、金属蒸着熱可塑ポリマー層、無機化合物蒸着熱可塑性ポリマー層から選ばれるバリア層を少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項12または13記載の積層体。
【請求項15】
前記バリア層としての熱可塑性樹脂層が、ポリエステル樹脂層、ポリアミド樹脂層、ポリアクリロニトリル層、ポリビニルアルコール層、エチレン−ビニルアルコール共重合体層、ポリ塩化ビニリデン層から選ばれる熱可塑性樹脂層であることを特徴とする請求項14記載の積層体。
【請求項16】
前記金属箔層が、アルミニウム箔であることを特徴とする請求項14記載の積層体。
【請求項17】
前記金属蒸着熱可塑ポリマー層の金属が、アルミニウムであることを特徴とする請求項14記載の積層体。
【請求項18】
無機化合物蒸着熱可塑性ポリマー層の無機化合物が、シリカまたはアルミナであることを特徴とする請求項14記載の積層体。
【請求項19】
前記酸素吸収能を有する樹脂組成物層に消臭剤を配合したことを特徴とする請求項12または13記載の積層体。
【請求項20】
請求項12〜19のいずれか1項に記載の積層体から形成されたことを特徴とする包装体。
【請求項21】
少なくとも25℃以上の温度、もしくは紫外線等の活性エネルギー線により酸素吸収を開始することを特徴とする請求項20記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−16117(P2007−16117A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198539(P2005−198539)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】