酸素拡散係数測定装置および酸素拡散係数測定方法
【課題】多孔体表裏空間の酸素濃度差が微小な場合にも、多孔体の酸素拡散係数を精度よく測定する。
【解決手段】酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段2と、多孔体10における酸素を消費させる酸素消費手段3と、該酸素消費手段3の酸素消費量を制御する酸素消費量制御手段4と、を備え、多孔体10が、一方の面が酸素濃度検出手段2および酸素消費手段3に対向し、他方の面が所定の酸素濃度の気体に接するように配置された状態で、酸素消費手段3を、所定の酸素消費速度を満たすように酸素消費量制御手段4によって制御する。複数の酸素消費手段3が、酸素濃度検出手段2の両側に配置されていることが好ましい。
【解決手段】酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段2と、多孔体10における酸素を消費させる酸素消費手段3と、該酸素消費手段3の酸素消費量を制御する酸素消費量制御手段4と、を備え、多孔体10が、一方の面が酸素濃度検出手段2および酸素消費手段3に対向し、他方の面が所定の酸素濃度の気体に接するように配置された状態で、酸素消費手段3を、所定の酸素消費速度を満たすように酸素消費量制御手段4によって制御する。複数の酸素消費手段3が、酸素濃度検出手段2の両側に配置されていることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素拡散係数測定装置および酸素拡散係数測定方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、酸素センサの出力を用いて多孔体の酸素拡散係数を測定し算出する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔体(多孔性材料)内の細孔径などを測定する方法として種々の技術が提案されている。例えば、その一つとしては、測定対象となる多孔体を、含水状態でその一端面を所定の酸素濃度の気体に接しさせ、該多孔体の他端面をガルバニ電池式の酸素センサの陰極側に対向させておき、酸素センサの出力を用いて多孔体の酸素拡散係数を測定し算出するというものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−205797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の測定技術においては、拡散抵抗が低い等、多孔体表裏空間の酸素濃度差が微小な場合に、当該微小な酸素濃度差を酸素センサで検出しきれないことがある。こうした場合には、測定精度が低下してしまう結果、多孔体の酸素拡散係数の測定が困難であるかまたは不可となる。
【0005】
そこで、本発明は、多孔体表裏空間の酸素濃度差が微小な場合にも、多孔体の酸素拡散係数を精度よく測定することができる酸素拡散係数測定装置および酸素拡散係数測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。拡散抵抗が低い等、多孔体表裏空間の酸素濃度差が微小な場合に、従来用いられている酸素センサでは測定能力が不十分なことがある。例示すれば、上述のごときガルバニ電池式酸素センサは、酸素消費量が微小であることから、酸素濃度差を発生させるためには十分でないことがある。また、多孔体を含ませられる水は微量であるため、測定の時間が長いとそれまでに含水させていた水分が蒸発してしまうことがある。さらに、重量の測定精度を確保するにはフルスケールの小さい電子天秤を用いなければならないが、ガルバニ電池を小さく軽くすると酸素消費量が少なくなるため、拡散抵抗が低い場合に十分な酸素濃度差とならず、測定が困難になることもある。これらの点に着目してさらに検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く知見を得るに至った。
【0007】
本発明はかかる知見に基づくもので、多孔体の酸素拡散係数を測定する装置であって、酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、多孔体における酸素を消費させる酸素消費手段と、該酸素消費手段の酸素消費量を制御する酸素消費量制御手段と、を備え、多孔体が、一方の面が酸素濃度検出手段および酸素消費手段に対向し、他方の面が所定の酸素濃度の気体に接するように配置された状態で、酸素消費手段を、所定の酸素消費速度を満たすように酸素消費量制御手段によって制御するというものである。
【0008】
本発明にかかる酸素拡散係数測定装置においては、酸素消費手段により、多孔体の一方の面側空間における酸素が消費される。そうすると、この多孔体の表裏空間の酸素濃度に差がより明確に発生し、酸素濃度検出手段による酸素濃度差を精度よく測定することが可能となる。したがって、多孔体の酸素拡散係数の算出性能が向上する。
【0009】
また、一般に、多孔体の酸素濃度が酸素濃度検出手段の酸素検出限界値に近いと、測定値がなかなか安定しないことがある。この点、本発明によれば、多孔体における酸素濃度検出手段側の酸素濃度を低下させることにより、当該酸素濃度検出手段の検出値が安定するまでの時間の短縮を図ることができ、当該多孔体に含水した水が蒸発する前に測定することが可能である。
【0010】
このような酸素拡散係数測定装置においては、複数の酸素消費手段が、酸素濃度検出手段の両側に配置されていることが好ましい。酸素消費手段が単一であると消費量が十分でない場合があり、また、酸素濃度検出手段の片側にだけ設置されていると酸素消費の流れに偏りが生じる場合もある。この点、複数の酸素消費手段を酸素濃度検出手段の両側に配置した本発明によれば、酸素消費量が少ないこと、酸素消費の流れに偏りが生じることを抑制することができる。
【0011】
かかる酸素拡散係数測定装置においては、酸素消費手段として空気亜鉛電池を用いることができる。
【0012】
また、かかる酸素拡散係数測定装置は、重量測定装置の上に載置可能であって、含水した多孔体のガス拡散係数を測定可能であることが好ましい。
【0013】
上記酸素拡散係数測定装置は、前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と酸素拡散係数との関係を予め記憶する記憶手段と、測定時において前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記記憶手段で記憶した酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正する補正手段と、をさらに備えていてもよい。
【0014】
また、上記酸素拡散係数測定装置は、前記多孔体の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御する雰囲気酸素濃度制御手段をさらに備えていてもよい。
【0015】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気に酸素濃度及び湿度が一定のガスを供給するガス供給装置を備えていてもよい。
【0016】
また、前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気の温度を制御する温度制御手段、前記多孔体の雰囲気の湿度を制御する湿度制御手段、前記多孔体の雰囲気の圧力を制御する圧力制御手段の少なくともいずれかを備えていてもよい。
【0017】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気に酸素を供給する酸素供給装置と、前記酸素供給装置の酸素供給量を制御する酸素供給量制御装置と、前記多孔体の雰囲気の酸素濃度を検出する雰囲気酸素濃度検出手段と、を備え、前記雰囲気酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度に基づいて、前記酸素供給量制御装置により酸素供給量を制御して、前記酸素濃度を制御してもよい。
【0018】
前記雰囲気酸素濃度制御手段により制御される酸素濃度の変動範囲を0.03vol%以下にするようにしてもよい。
【0019】
さらに、本発明は、多孔体の酸素拡散係数を測定する方法であって、多孔体の一方の面を酸素濃度検出手段および酸素消費手段に対向させ、当該多孔体の他方の面を所定の酸素濃度の気体に接触させ、酸素消費手段によって多孔体の他方の面側の酸素を消費させ、酸素消費量制御手段によって所定の酸素消費速度を満たすように酸素消費手段を制御し、酸素濃度検出手段によって検出した多孔体の他方の面側の酸素濃度と、酸素消費手段によって消費された酸素量とに基づいて酸素拡散係数を算出する、というものである。
【0020】
この酸素拡散係数測定方法によれば、酸素消費手段によって多孔体の一方の面側空間の酸素が消費される。そうすると、多孔体表裏空間の酸素濃度に従来よりも大きな差が発生し、酸素濃度検出手段により酸素濃度差を精度よく測定することが可能となる。したがって、多孔体の酸素拡散係数の算出性能が向上する。
【0021】
上記酸素拡散係数測定方法において、前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と酸素拡散係数との関係を予め記憶しておき、測定時において前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記記憶された酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正するようにしてもよい。
【0022】
また、上記酸素拡散係数測定方法において、前記多孔体の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多孔体表裏空間の酸素濃度差が微小な場合にも、多孔体の酸素拡散係数を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態における酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図2】酸素拡散係数測定装置に配線の一例を示す図である。
【図3】カッコ内に示す酸素消費型電池の各個数の場合における酸素濃度の時間変化例を示すグラフである。
【図4】酸素消費型電池の配置例を示す図である。
【図5】酸素拡散係数測定装置を用いた測定処理の一部を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の形態を示す酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図7】補正マップの記憶装置を備えた酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図8】ρ1−ρ2とρ1−ρsとの関係を示す図である。
【図9】酸素拡散抵抗Rとρsとの関係を示す図である。
【図10】補正を行った場合と行わない場合の酸素拡散抵抗と拡散距離との関係とその理論値を示す図である。
【図11】ガス供給装置を備えた酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図12】温度制御手段を設けた酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図13】酸素供給装置を備えた酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図14】酸素濃度の制御を行った場合と行わない場合の酸素拡散抵抗Rのばらつきを示す図である。
【図15】酸素拡散抵抗の変動と雰囲気酸素濃度の変動の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1〜図5に、本発明にかかる酸素拡散係数測定装置および酸素拡散係数測定方法の一実施形態を示す。
【0027】
酸素拡散係数測定装置1は、多孔体10の酸素拡散係数を測定する装置である。本実施形態の酸素拡散係数測定装置1は、酸素センサ2、酸素消費型電池3、電流可変制御装置4などを備えている。
【0028】
酸素センサ2は、酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段として用いられている(図1参照)。ここで用いられる酸素センサ2自体は、公知のものであって構わない。酸素センサ2による検出結果は、演算装置5に送信される(図1参照)。
【0029】
酸素消費型電池3は、多孔体10における酸素を消費させる酸素消費手段として用いられている。この酸素消費型電池3の個数は1個であっても足りるが、酸素消費量をより増やすという観点からすれば複数の酸素消費型電池3を用いることが好ましい(図2参照)。単一の酸素消費型電池3で消費量が少ない場合、このようにして複数の酸素消費型電池3を配置すれば消費量を増やすことができる(図3参照)。
【0030】
また、酸素消費型電池3を複数用いる場合、直列配置も並列配置も可能であるが、これら酸素消費型電池3を、酸素センサ2を中心にして対称に配置することが好ましい(図1参照)。こうした場合、酸素消費量を増加させるばかりでなく、片側にのみ配置した場合に生じうるガスの流れの偏りを解消することが可能となる。
【0031】
電流可変制御装置4は、酸素消費型電池3における酸素消費量を制御する手段として用いられている装置である。本実施形態の電流可変制御装置4は、可変抵抗4aと電圧計4bとを備えており、抵抗値を変化させることによって酸素消費型電池3における酸素消費量を制御することが可能である(図2参照)。なお、酸素消費型電池3、電流可変制御装置4などを備えた回路には、スイッチ6などが適宜配置される(図2参照)。
【0032】
なお、上述の酸素消費型電池3の具体例は特に限られないが、例えば空気亜鉛電池などを用いた場合には、以下の反応式(数式1)に従い酸素が消費される。
【数1】
【0033】
よって、酸素拡散量Qは以下の数式2で表される。
【数2】
【0034】
したがって、多孔体10のサンプルの表裏での濃度をそれぞれρ1、ρ2とすれば、ガス拡散抵抗Rは数式3で表される。
【数3】
【0035】
また、一般に、酸素拡散係数Dは多孔体10のサンプル厚さtを用いて以下の数式4で表される。
【数4】
【0036】
よって、数式3と数式4から以下の数式5が導かれる。
【数5】
【0037】
センサによる濃度ρ2と酸素拡散量Qの測定結果を演算装置5で処理することで、酸素拡散係数Dを算出することができる。
【0038】
次に、酸素拡散係数測定装置1による測定条件について以下に説明する。例えば、市販の酸素センサの測定精度が
F.S. ±1%
のとき、1cc/min 以上の酸素消費速度が要求される。
1cc/min =8.3×10-9m3/s
ところが、酸素20%前後の空気中で酸素センサのみでは、酸素吸収速度は
3.9×10-10 m3/s
であり、2桁ほど消費量が足りないということになる。
【0039】
この点、本実施形態では、十分な酸素消費量を実現するべく、空気消費(酸素消費)装置として機能する酸素消費型電池3を導入している。すなわち、酸素消費型電池3として例えば上述のような空気亜鉛電池を用いた場合、抵抗100Ωで10mAの電流を流すことが可能であり、この10mAから換算して
5.8×10-10 m3/s
を消費することが可能である。なお、酸素消費量をさらに向上させる観点からすれば、例えば4つの酸素消費型電池3を酸素センサ2を中心とした同心円状に等間隔(90度おき)に配置することも好ましい(図4参照)。このように配置した場合には、酸素濃度が不均一となるのを抑制ないし防止することができるという利点もある。
【0040】
また、酸素消費量をさらに向上させるためには、本実施形態のように可変抵抗4aを導入することも好ましい。例えば、この可変抵抗4aの抵抗値を 500Ωにすることで、
1.2×10-8 m3/s
となり、要求されうる酸素消費速度を満たすことができる。
【0041】
続いて、酸素拡散係数測定装置1を用いて行う測定の一例をフローチャートとともに説明する(図5参照)。
【0042】
酸素拡散係数Dの測定を開始したら(ステップSP1)、校正用TP(テスト・ピース)の抵抗を測定し(ステップSP2)、測定値を検証する(ステップSP3)。検証後、必要に応じて可変抵抗4aを調整し(ステップSP4)、再度、測定値を検証する(ステップSP3)。
【0043】
検証が済んだら、試験用TPの抵抗を測定する(ステップSP5)。本実施形態では、多孔体10の一方の面を酸素センサ2および酸素消費型電池3に対向させ、尚かつ、多孔体10の他方の面を所定の酸素濃度の気体に接触させた状態とし、酸素消費型電池3によって多孔体10の他方の面側の酸素を消費させる。この際、酸素消費型電池3による所定の酸素消費速度が満たされるように当該酸素消費型電池3を適宜制御する。酸素センサ2によって多孔体10の他方の面側の酸素濃度を検出したら、当該酸素濃度の検出値と、酸素消費型電池3によって消費された酸素量とに基づき、演算装置5によって酸素拡散係数Dを算出し、測定を終了する(ステップSP6)。
【0044】
一般に、拡散抵抗が低い対処物(多孔体10)は、酸素拡散量Qが多く酸素消費量が少ないため濃度差がつき難いという一面がある。この点、本実施形態では、従来装置の酸素センサ以外に、酸素消費型電池(酸素消費手段)3を追加した構造とし、さらに、酸素消費型電池3の電流制御をすることで多孔体10の一方の面側空間における酸素消費量を増加させることにより、当該多孔体10の表裏空間の酸素濃度に従来よりも大きな差を発生させることが可能としている。こうした場合、酸素センサ2によって酸素濃度差をより精度よく測定することが可能となり、測定分解能が向上する。したがって、このような酸素拡散係数測定装置1によれば、多孔体10の酸素拡散係数の算出性能が向上する。
【0045】
また、一般に、多孔体10の酸素濃度が酸素センサ2の酸素検出限界値(図3参照)に近いと、測定値がなかなか安定しないことがある。この点、本実施形態では、多孔体10における酸素センサ2側の酸素濃度を低下させることにより、当該酸素センサ2の検出値が安定するまでの時間を短縮させることが可能である(図3参照)。したがって、当該多孔体10に含水した水が蒸発する前に測定することも可能となる。
【0046】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では酸素拡散係数測定装置1の簡単な例を示したにすぎず、この他、当該酸素拡散係数測定装置1として、重量測定装置(例えば、電子天秤)7の上に載置可能であって、含水した多孔体10のガス拡散係数(酸素拡散係数)を測定可能な装置を採用することもできる。このような酸素拡散係数測定装置1によれば、含水時における多孔体10の含水量を当該酸素拡散係数測定装置1に取り付けた状態で重量測定装置7に載せて測定することができる。こうした場合、多孔体10の含水サンプルの含水量の測定とガス拡散係数の測定とを同時に実施することが可能である(図6参照)。
【0047】
ところで、上述の実施の形態において酸素センサ2と多孔体10との間には、図7に示すように酸素消費型電池3が取り付けられた酸素導入板20がある。このため、多孔体10の一の面の酸素濃度ρ2と、酸素センサ2により検出される酸素濃度ρsとの間には、わずかながらずれが生じる。そこで、酸素拡散係数にその分の補正を加え、酸素拡散係数の測定精度を向上するようにしてもよい。
【0048】
例えば図7に示すように酸素拡散係数測定装置1が、酸素センサ2により検出される酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係を予め記憶する記憶手段としての記憶装置21をさらに備え、補正手段としての例えば演算装置5が、測定時において酸素センサ2により検出された酸素濃度と、記憶装置21に記憶されている酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正するようにする。
【0049】
この場合、例えば酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係は次のように求めてもよい。例えば先ず、上記数式3におけるρ1-ρ2を求める。具体的には酸素拡散抵抗Rが既知のサンプルを用いて、上記数式3の関係を用いてρ1-ρ2を求める。次に、酸素センサ2により酸素濃度を検出して、ρ1-ρsを求める。次に、図8に示すように、ρ1-ρ2とρ1-ρsとの関係をプロットし、補正マップM1を作成する。この補正マップM1を利用し、上記数式2、3に示すI、A、ρ1が一定である条件下で、酸素拡散抵抗Rが既知の複数サンプルに対して平衡時の酸素濃度ρsを事前に計測し、図9に示すような酸素濃度ρsと酸素拡散抵抗Rの関係を示す補正マップM2を作成する。記憶装置21には、この補正マップM2が示す関係が記憶される。
【0050】
そして、多孔体10の酸素拡散係数Dを算出する際には、酸素センサ2により検出された酸素濃度ρsから、記憶装置21の補正マップM2の関係を用いて、酸素拡散抵抗Rが算出され、当該酸素拡散抵抗Rから上記数式4と多孔体10の厚さtを用いて酸素拡散係数Dが算出される。以上の酸素拡散係数Dの算出は、演算装置5により行われる。また、図10には、この例のような補正を行った場合と行わない場合の酸素拡散抵抗Rと拡散距離(多孔体10のサンプルの厚さに相当)tの関係と、その理論値とを比較したグラフを示す。
【0051】
この例によれば、多孔体10の一の面の酸素濃度ρ1と、酸素センサ2により検出される酸素濃度ρsとのずれを踏まえて酸素拡散係数Dが算出されるので、酸素拡散係数Dの測定精度を向上できる。なお、記憶装置21に記憶される酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係は、シミュレーションにより求めてもよい。また、酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係は、本実施の形態のように、酸素濃度ρsと酸素拡散抵抗Rの関係を示す補正マップM2であってもよく、酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係を実質的に示すものであれば他のものであってもよい。
【0052】
上述の酸素拡散係数測定装置1内において、多孔体10周囲の雰囲気の湿度や酸素濃度が変動すると、多孔体10の一の面と他の面の間に発生させる酸素濃度差(ρ1−ρ2)が影響を受けることになり、それによって最終的に算出される酸素拡散係数も影響を受けることになる。そこで上述の酸素拡散係数測定装置1が、多孔体10の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御する雰囲気酸素濃度制御手段を備えていてもよい。
【0053】
かかる場合、酸素拡散係数測定装置1は、雰囲気酸素濃度制御手段として、例えば図11に示すように多孔体10の雰囲気に酸素濃度及び湿度が一定のガスを供給するガス供給装置30を備えていてもよい。酸素拡散係数装置1は、装置の少なくとも酸素センサ2、酸素消費型電池3、電流可変制御装置4、多孔体10のある領域を覆うケーシング31を有し、ガス供給装置30は、管路32を通じてケーシング31に接続されている。管路32には、例えばケーシング31へのガスの供給を制御する制御弁33が設けられている。また、ケーシング31には、ガスを外部に排気する排気口34が設けられている。管路32は、ケーシング31の上部に接続されており、排気口34は、装置1の両側のケーシング31の下部に形成されている。
【0054】
そして、酸素拡散係数Dの測定時には、ガス供給装置30からケーシング31内に酸素濃度と湿度が一定のガス、例えばエアが供給される。ケーシング31内に供給されたガスは、例えば多孔体10の周辺を通って排気口34から排出される。これにより、多孔体10の周辺雰囲気の酸素濃度及び湿度が一定に維持され、多孔体10の他の面に接する気体の酸素濃度が一定に維持される。この結果、酸素拡散係数の測定をより精度よく行うことができる。
【0055】
また、多孔体10の他方の面に接する気体の酸素濃度を制御するために、酸素拡散係数測定装置1は、雰囲気酸素濃度制御手段として、多孔体10の雰囲気の温度を制御する温度制御手段、多孔体10の雰囲気の湿度を制御する湿度制御手段、多孔体10の雰囲気の圧力を制御する圧力制御手段の少なくともいずれかを備えていてもよい。例えば図12に示すように温度制御手段は、例えばケーシング31内に設けられた温度センサ40と、当該温度センサ40により測定された温度に基づいて、ケーシング31内に温度調整された気体を供給して、ケーシング31内を設定温度に維持する気体供給装置41を有するものであってもよい。また、湿度制御手段は、例えばケーシング31内に設けられた湿度センサ50と、当該湿度センサ50により測定された湿度に基づいて、ケーシング31内に湿度調整された気体を供給して、ケーシング31内を設定湿度に維持する気体供給装置51を有するものであってもよい。さらに圧力制御手段は、例えばケーシング31内に設けられた圧力センサ60と、当該圧力センサ60により測定された圧力に基づいて、ケーシング31内に所定量の気体を供給して、ケーシング31内を設定圧力に維持する気体供給装置61を有するものであってもよい。
【0056】
かかる場合、酸素拡散係数測定装置1が、温度制御手段と、湿度制御手段、及び圧力制御手段の少なくともいずれかを備えることによって、多孔体10の他方の面に接する気体の酸素濃度を所定の値に制御して、酸素拡散係数の測定をより正確に行うことができる。
【0057】
さらに、酸素拡散係数測定装置1は、雰囲気酸素濃度制御手段として、図13に示すように多孔体10の雰囲気に酸素を供給する酸素供給装置70と、酸素供給装置70の酸素供給量を制御する酸素供給量制御装置71と、多孔体10の雰囲気の酸素濃度を検出する雰囲気酸素濃度検出手段としての雰囲気酸素センサ72を備え、雰囲気酸素センサ72により検出された酸素濃度に基づいて、酸素供給量制御装置71により酸素供給量を制御して、酸素濃度を制御するようにしてもよい。かかる場合、例えば酸素拡散係数測定装置1の多孔体10の他の面側(下面側)に、多孔体10の他の面を含む空間を覆うケーシング80を設け、酸素供給装置70は、このケーシング80に管路81を通じて接続される。酸素供給量制御装置71は、管路81に設けられる。ケーシング80には、排出口82が形成される。管路81は、ケーシング80の多孔体10の他の面に対向する位置(下面)に接続されている。ケーシング80の管路81の開口部と多孔体10との間には、邪魔板83が設けられ、管路81から流入した酸素が直接多孔体10に当たることを防止している。
【0058】
そして、酸素拡散係数Dの測定時には、酸素供給装置70から所定量の酸素が管路81を通じてケーシング80に供給される。酸素は、ケーシング80内を通って排出口82から排出される。これにより、ケーシング80内に酸素が充填され、多孔体10の他の面の酸素濃度が一定になる。この結果、酸素拡散係数の測定をより精度よく行うことができる。図14には、上述の多孔体10の雰囲気の酸素濃度制御を行った場合としない場合の酸素拡散抵抗Rのばらつきを比較するグラフを示す。また、かかる例では、多孔体10の他の面に集中的に酸素が供給されるので、少量の酸素で効果的に多孔体10の他の面の酸素濃度を制御できる。さらに邪魔板83を設けることによって、酸素の気流による乱れをなくし、酸素濃度の斑の発生を防止できる。
【0059】
また、上記雰囲気酸素濃度制御手段により制御される酸素濃度の変動範囲を0.03vol%以下にするとよい。例えば酸素拡散係数測定装置1を拡散層製造の検査手段として用いた場合、製造された拡散層の酸素拡散抵抗が目標値の20%〜50%を超えると、拡散層の発電性能が大きく低下する可能性がある。そのため、酸素拡散係数測定装置には、少なくとも10%以内の変動精度が必要になる。そこで、図15に示すように雰囲気酸素濃度の変動範囲を0.03vol%以下に抑えることが有効である。
【0060】
なお、上述の図6に示す実施の形態において、重量測定装置7上に装置1を載置して、多孔体10の含水量を測定する例を説明したが、上記酸素拡散係数の補正を行う実施の形態と多孔体10の雰囲気の酸素濃度制御を行う実施の形態においても同様に、重量測定装置7上に装置1を載置し、多孔体10の含水量を測定できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、酸素センサの出力を用いて多孔体の酸素拡散係数を測定し算出する技術に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0062】
1…酸素拡散係数測定装置、2…酸素センサ(酸素濃度検出手段)、3…酸素消費型電池(酸素消費手段)、4…電流可変制御装置(酸素消費量制御手段)、10…多孔体、D…酸素拡散係数
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素拡散係数測定装置および酸素拡散係数測定方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、酸素センサの出力を用いて多孔体の酸素拡散係数を測定し算出する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔体(多孔性材料)内の細孔径などを測定する方法として種々の技術が提案されている。例えば、その一つとしては、測定対象となる多孔体を、含水状態でその一端面を所定の酸素濃度の気体に接しさせ、該多孔体の他端面をガルバニ電池式の酸素センサの陰極側に対向させておき、酸素センサの出力を用いて多孔体の酸素拡散係数を測定し算出するというものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−205797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の測定技術においては、拡散抵抗が低い等、多孔体表裏空間の酸素濃度差が微小な場合に、当該微小な酸素濃度差を酸素センサで検出しきれないことがある。こうした場合には、測定精度が低下してしまう結果、多孔体の酸素拡散係数の測定が困難であるかまたは不可となる。
【0005】
そこで、本発明は、多孔体表裏空間の酸素濃度差が微小な場合にも、多孔体の酸素拡散係数を精度よく測定することができる酸素拡散係数測定装置および酸素拡散係数測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。拡散抵抗が低い等、多孔体表裏空間の酸素濃度差が微小な場合に、従来用いられている酸素センサでは測定能力が不十分なことがある。例示すれば、上述のごときガルバニ電池式酸素センサは、酸素消費量が微小であることから、酸素濃度差を発生させるためには十分でないことがある。また、多孔体を含ませられる水は微量であるため、測定の時間が長いとそれまでに含水させていた水分が蒸発してしまうことがある。さらに、重量の測定精度を確保するにはフルスケールの小さい電子天秤を用いなければならないが、ガルバニ電池を小さく軽くすると酸素消費量が少なくなるため、拡散抵抗が低い場合に十分な酸素濃度差とならず、測定が困難になることもある。これらの点に着目してさらに検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く知見を得るに至った。
【0007】
本発明はかかる知見に基づくもので、多孔体の酸素拡散係数を測定する装置であって、酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、多孔体における酸素を消費させる酸素消費手段と、該酸素消費手段の酸素消費量を制御する酸素消費量制御手段と、を備え、多孔体が、一方の面が酸素濃度検出手段および酸素消費手段に対向し、他方の面が所定の酸素濃度の気体に接するように配置された状態で、酸素消費手段を、所定の酸素消費速度を満たすように酸素消費量制御手段によって制御するというものである。
【0008】
本発明にかかる酸素拡散係数測定装置においては、酸素消費手段により、多孔体の一方の面側空間における酸素が消費される。そうすると、この多孔体の表裏空間の酸素濃度に差がより明確に発生し、酸素濃度検出手段による酸素濃度差を精度よく測定することが可能となる。したがって、多孔体の酸素拡散係数の算出性能が向上する。
【0009】
また、一般に、多孔体の酸素濃度が酸素濃度検出手段の酸素検出限界値に近いと、測定値がなかなか安定しないことがある。この点、本発明によれば、多孔体における酸素濃度検出手段側の酸素濃度を低下させることにより、当該酸素濃度検出手段の検出値が安定するまでの時間の短縮を図ることができ、当該多孔体に含水した水が蒸発する前に測定することが可能である。
【0010】
このような酸素拡散係数測定装置においては、複数の酸素消費手段が、酸素濃度検出手段の両側に配置されていることが好ましい。酸素消費手段が単一であると消費量が十分でない場合があり、また、酸素濃度検出手段の片側にだけ設置されていると酸素消費の流れに偏りが生じる場合もある。この点、複数の酸素消費手段を酸素濃度検出手段の両側に配置した本発明によれば、酸素消費量が少ないこと、酸素消費の流れに偏りが生じることを抑制することができる。
【0011】
かかる酸素拡散係数測定装置においては、酸素消費手段として空気亜鉛電池を用いることができる。
【0012】
また、かかる酸素拡散係数測定装置は、重量測定装置の上に載置可能であって、含水した多孔体のガス拡散係数を測定可能であることが好ましい。
【0013】
上記酸素拡散係数測定装置は、前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と酸素拡散係数との関係を予め記憶する記憶手段と、測定時において前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記記憶手段で記憶した酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正する補正手段と、をさらに備えていてもよい。
【0014】
また、上記酸素拡散係数測定装置は、前記多孔体の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御する雰囲気酸素濃度制御手段をさらに備えていてもよい。
【0015】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気に酸素濃度及び湿度が一定のガスを供給するガス供給装置を備えていてもよい。
【0016】
また、前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気の温度を制御する温度制御手段、前記多孔体の雰囲気の湿度を制御する湿度制御手段、前記多孔体の雰囲気の圧力を制御する圧力制御手段の少なくともいずれかを備えていてもよい。
【0017】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気に酸素を供給する酸素供給装置と、前記酸素供給装置の酸素供給量を制御する酸素供給量制御装置と、前記多孔体の雰囲気の酸素濃度を検出する雰囲気酸素濃度検出手段と、を備え、前記雰囲気酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度に基づいて、前記酸素供給量制御装置により酸素供給量を制御して、前記酸素濃度を制御してもよい。
【0018】
前記雰囲気酸素濃度制御手段により制御される酸素濃度の変動範囲を0.03vol%以下にするようにしてもよい。
【0019】
さらに、本発明は、多孔体の酸素拡散係数を測定する方法であって、多孔体の一方の面を酸素濃度検出手段および酸素消費手段に対向させ、当該多孔体の他方の面を所定の酸素濃度の気体に接触させ、酸素消費手段によって多孔体の他方の面側の酸素を消費させ、酸素消費量制御手段によって所定の酸素消費速度を満たすように酸素消費手段を制御し、酸素濃度検出手段によって検出した多孔体の他方の面側の酸素濃度と、酸素消費手段によって消費された酸素量とに基づいて酸素拡散係数を算出する、というものである。
【0020】
この酸素拡散係数測定方法によれば、酸素消費手段によって多孔体の一方の面側空間の酸素が消費される。そうすると、多孔体表裏空間の酸素濃度に従来よりも大きな差が発生し、酸素濃度検出手段により酸素濃度差を精度よく測定することが可能となる。したがって、多孔体の酸素拡散係数の算出性能が向上する。
【0021】
上記酸素拡散係数測定方法において、前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と酸素拡散係数との関係を予め記憶しておき、測定時において前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記記憶された酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正するようにしてもよい。
【0022】
また、上記酸素拡散係数測定方法において、前記多孔体の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多孔体表裏空間の酸素濃度差が微小な場合にも、多孔体の酸素拡散係数を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態における酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図2】酸素拡散係数測定装置に配線の一例を示す図である。
【図3】カッコ内に示す酸素消費型電池の各個数の場合における酸素濃度の時間変化例を示すグラフである。
【図4】酸素消費型電池の配置例を示す図である。
【図5】酸素拡散係数測定装置を用いた測定処理の一部を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の形態を示す酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図7】補正マップの記憶装置を備えた酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図8】ρ1−ρ2とρ1−ρsとの関係を示す図である。
【図9】酸素拡散抵抗Rとρsとの関係を示す図である。
【図10】補正を行った場合と行わない場合の酸素拡散抵抗と拡散距離との関係とその理論値を示す図である。
【図11】ガス供給装置を備えた酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図12】温度制御手段を設けた酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図13】酸素供給装置を備えた酸素拡散係数測定装置の構成例を示す図である。
【図14】酸素濃度の制御を行った場合と行わない場合の酸素拡散抵抗Rのばらつきを示す図である。
【図15】酸素拡散抵抗の変動と雰囲気酸素濃度の変動の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1〜図5に、本発明にかかる酸素拡散係数測定装置および酸素拡散係数測定方法の一実施形態を示す。
【0027】
酸素拡散係数測定装置1は、多孔体10の酸素拡散係数を測定する装置である。本実施形態の酸素拡散係数測定装置1は、酸素センサ2、酸素消費型電池3、電流可変制御装置4などを備えている。
【0028】
酸素センサ2は、酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段として用いられている(図1参照)。ここで用いられる酸素センサ2自体は、公知のものであって構わない。酸素センサ2による検出結果は、演算装置5に送信される(図1参照)。
【0029】
酸素消費型電池3は、多孔体10における酸素を消費させる酸素消費手段として用いられている。この酸素消費型電池3の個数は1個であっても足りるが、酸素消費量をより増やすという観点からすれば複数の酸素消費型電池3を用いることが好ましい(図2参照)。単一の酸素消費型電池3で消費量が少ない場合、このようにして複数の酸素消費型電池3を配置すれば消費量を増やすことができる(図3参照)。
【0030】
また、酸素消費型電池3を複数用いる場合、直列配置も並列配置も可能であるが、これら酸素消費型電池3を、酸素センサ2を中心にして対称に配置することが好ましい(図1参照)。こうした場合、酸素消費量を増加させるばかりでなく、片側にのみ配置した場合に生じうるガスの流れの偏りを解消することが可能となる。
【0031】
電流可変制御装置4は、酸素消費型電池3における酸素消費量を制御する手段として用いられている装置である。本実施形態の電流可変制御装置4は、可変抵抗4aと電圧計4bとを備えており、抵抗値を変化させることによって酸素消費型電池3における酸素消費量を制御することが可能である(図2参照)。なお、酸素消費型電池3、電流可変制御装置4などを備えた回路には、スイッチ6などが適宜配置される(図2参照)。
【0032】
なお、上述の酸素消費型電池3の具体例は特に限られないが、例えば空気亜鉛電池などを用いた場合には、以下の反応式(数式1)に従い酸素が消費される。
【数1】
【0033】
よって、酸素拡散量Qは以下の数式2で表される。
【数2】
【0034】
したがって、多孔体10のサンプルの表裏での濃度をそれぞれρ1、ρ2とすれば、ガス拡散抵抗Rは数式3で表される。
【数3】
【0035】
また、一般に、酸素拡散係数Dは多孔体10のサンプル厚さtを用いて以下の数式4で表される。
【数4】
【0036】
よって、数式3と数式4から以下の数式5が導かれる。
【数5】
【0037】
センサによる濃度ρ2と酸素拡散量Qの測定結果を演算装置5で処理することで、酸素拡散係数Dを算出することができる。
【0038】
次に、酸素拡散係数測定装置1による測定条件について以下に説明する。例えば、市販の酸素センサの測定精度が
F.S. ±1%
のとき、1cc/min 以上の酸素消費速度が要求される。
1cc/min =8.3×10-9m3/s
ところが、酸素20%前後の空気中で酸素センサのみでは、酸素吸収速度は
3.9×10-10 m3/s
であり、2桁ほど消費量が足りないということになる。
【0039】
この点、本実施形態では、十分な酸素消費量を実現するべく、空気消費(酸素消費)装置として機能する酸素消費型電池3を導入している。すなわち、酸素消費型電池3として例えば上述のような空気亜鉛電池を用いた場合、抵抗100Ωで10mAの電流を流すことが可能であり、この10mAから換算して
5.8×10-10 m3/s
を消費することが可能である。なお、酸素消費量をさらに向上させる観点からすれば、例えば4つの酸素消費型電池3を酸素センサ2を中心とした同心円状に等間隔(90度おき)に配置することも好ましい(図4参照)。このように配置した場合には、酸素濃度が不均一となるのを抑制ないし防止することができるという利点もある。
【0040】
また、酸素消費量をさらに向上させるためには、本実施形態のように可変抵抗4aを導入することも好ましい。例えば、この可変抵抗4aの抵抗値を 500Ωにすることで、
1.2×10-8 m3/s
となり、要求されうる酸素消費速度を満たすことができる。
【0041】
続いて、酸素拡散係数測定装置1を用いて行う測定の一例をフローチャートとともに説明する(図5参照)。
【0042】
酸素拡散係数Dの測定を開始したら(ステップSP1)、校正用TP(テスト・ピース)の抵抗を測定し(ステップSP2)、測定値を検証する(ステップSP3)。検証後、必要に応じて可変抵抗4aを調整し(ステップSP4)、再度、測定値を検証する(ステップSP3)。
【0043】
検証が済んだら、試験用TPの抵抗を測定する(ステップSP5)。本実施形態では、多孔体10の一方の面を酸素センサ2および酸素消費型電池3に対向させ、尚かつ、多孔体10の他方の面を所定の酸素濃度の気体に接触させた状態とし、酸素消費型電池3によって多孔体10の他方の面側の酸素を消費させる。この際、酸素消費型電池3による所定の酸素消費速度が満たされるように当該酸素消費型電池3を適宜制御する。酸素センサ2によって多孔体10の他方の面側の酸素濃度を検出したら、当該酸素濃度の検出値と、酸素消費型電池3によって消費された酸素量とに基づき、演算装置5によって酸素拡散係数Dを算出し、測定を終了する(ステップSP6)。
【0044】
一般に、拡散抵抗が低い対処物(多孔体10)は、酸素拡散量Qが多く酸素消費量が少ないため濃度差がつき難いという一面がある。この点、本実施形態では、従来装置の酸素センサ以外に、酸素消費型電池(酸素消費手段)3を追加した構造とし、さらに、酸素消費型電池3の電流制御をすることで多孔体10の一方の面側空間における酸素消費量を増加させることにより、当該多孔体10の表裏空間の酸素濃度に従来よりも大きな差を発生させることが可能としている。こうした場合、酸素センサ2によって酸素濃度差をより精度よく測定することが可能となり、測定分解能が向上する。したがって、このような酸素拡散係数測定装置1によれば、多孔体10の酸素拡散係数の算出性能が向上する。
【0045】
また、一般に、多孔体10の酸素濃度が酸素センサ2の酸素検出限界値(図3参照)に近いと、測定値がなかなか安定しないことがある。この点、本実施形態では、多孔体10における酸素センサ2側の酸素濃度を低下させることにより、当該酸素センサ2の検出値が安定するまでの時間を短縮させることが可能である(図3参照)。したがって、当該多孔体10に含水した水が蒸発する前に測定することも可能となる。
【0046】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では酸素拡散係数測定装置1の簡単な例を示したにすぎず、この他、当該酸素拡散係数測定装置1として、重量測定装置(例えば、電子天秤)7の上に載置可能であって、含水した多孔体10のガス拡散係数(酸素拡散係数)を測定可能な装置を採用することもできる。このような酸素拡散係数測定装置1によれば、含水時における多孔体10の含水量を当該酸素拡散係数測定装置1に取り付けた状態で重量測定装置7に載せて測定することができる。こうした場合、多孔体10の含水サンプルの含水量の測定とガス拡散係数の測定とを同時に実施することが可能である(図6参照)。
【0047】
ところで、上述の実施の形態において酸素センサ2と多孔体10との間には、図7に示すように酸素消費型電池3が取り付けられた酸素導入板20がある。このため、多孔体10の一の面の酸素濃度ρ2と、酸素センサ2により検出される酸素濃度ρsとの間には、わずかながらずれが生じる。そこで、酸素拡散係数にその分の補正を加え、酸素拡散係数の測定精度を向上するようにしてもよい。
【0048】
例えば図7に示すように酸素拡散係数測定装置1が、酸素センサ2により検出される酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係を予め記憶する記憶手段としての記憶装置21をさらに備え、補正手段としての例えば演算装置5が、測定時において酸素センサ2により検出された酸素濃度と、記憶装置21に記憶されている酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正するようにする。
【0049】
この場合、例えば酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係は次のように求めてもよい。例えば先ず、上記数式3におけるρ1-ρ2を求める。具体的には酸素拡散抵抗Rが既知のサンプルを用いて、上記数式3の関係を用いてρ1-ρ2を求める。次に、酸素センサ2により酸素濃度を検出して、ρ1-ρsを求める。次に、図8に示すように、ρ1-ρ2とρ1-ρsとの関係をプロットし、補正マップM1を作成する。この補正マップM1を利用し、上記数式2、3に示すI、A、ρ1が一定である条件下で、酸素拡散抵抗Rが既知の複数サンプルに対して平衡時の酸素濃度ρsを事前に計測し、図9に示すような酸素濃度ρsと酸素拡散抵抗Rの関係を示す補正マップM2を作成する。記憶装置21には、この補正マップM2が示す関係が記憶される。
【0050】
そして、多孔体10の酸素拡散係数Dを算出する際には、酸素センサ2により検出された酸素濃度ρsから、記憶装置21の補正マップM2の関係を用いて、酸素拡散抵抗Rが算出され、当該酸素拡散抵抗Rから上記数式4と多孔体10の厚さtを用いて酸素拡散係数Dが算出される。以上の酸素拡散係数Dの算出は、演算装置5により行われる。また、図10には、この例のような補正を行った場合と行わない場合の酸素拡散抵抗Rと拡散距離(多孔体10のサンプルの厚さに相当)tの関係と、その理論値とを比較したグラフを示す。
【0051】
この例によれば、多孔体10の一の面の酸素濃度ρ1と、酸素センサ2により検出される酸素濃度ρsとのずれを踏まえて酸素拡散係数Dが算出されるので、酸素拡散係数Dの測定精度を向上できる。なお、記憶装置21に記憶される酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係は、シミュレーションにより求めてもよい。また、酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係は、本実施の形態のように、酸素濃度ρsと酸素拡散抵抗Rの関係を示す補正マップM2であってもよく、酸素濃度ρsと酸素拡散係数との関係を実質的に示すものであれば他のものであってもよい。
【0052】
上述の酸素拡散係数測定装置1内において、多孔体10周囲の雰囲気の湿度や酸素濃度が変動すると、多孔体10の一の面と他の面の間に発生させる酸素濃度差(ρ1−ρ2)が影響を受けることになり、それによって最終的に算出される酸素拡散係数も影響を受けることになる。そこで上述の酸素拡散係数測定装置1が、多孔体10の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御する雰囲気酸素濃度制御手段を備えていてもよい。
【0053】
かかる場合、酸素拡散係数測定装置1は、雰囲気酸素濃度制御手段として、例えば図11に示すように多孔体10の雰囲気に酸素濃度及び湿度が一定のガスを供給するガス供給装置30を備えていてもよい。酸素拡散係数装置1は、装置の少なくとも酸素センサ2、酸素消費型電池3、電流可変制御装置4、多孔体10のある領域を覆うケーシング31を有し、ガス供給装置30は、管路32を通じてケーシング31に接続されている。管路32には、例えばケーシング31へのガスの供給を制御する制御弁33が設けられている。また、ケーシング31には、ガスを外部に排気する排気口34が設けられている。管路32は、ケーシング31の上部に接続されており、排気口34は、装置1の両側のケーシング31の下部に形成されている。
【0054】
そして、酸素拡散係数Dの測定時には、ガス供給装置30からケーシング31内に酸素濃度と湿度が一定のガス、例えばエアが供給される。ケーシング31内に供給されたガスは、例えば多孔体10の周辺を通って排気口34から排出される。これにより、多孔体10の周辺雰囲気の酸素濃度及び湿度が一定に維持され、多孔体10の他の面に接する気体の酸素濃度が一定に維持される。この結果、酸素拡散係数の測定をより精度よく行うことができる。
【0055】
また、多孔体10の他方の面に接する気体の酸素濃度を制御するために、酸素拡散係数測定装置1は、雰囲気酸素濃度制御手段として、多孔体10の雰囲気の温度を制御する温度制御手段、多孔体10の雰囲気の湿度を制御する湿度制御手段、多孔体10の雰囲気の圧力を制御する圧力制御手段の少なくともいずれかを備えていてもよい。例えば図12に示すように温度制御手段は、例えばケーシング31内に設けられた温度センサ40と、当該温度センサ40により測定された温度に基づいて、ケーシング31内に温度調整された気体を供給して、ケーシング31内を設定温度に維持する気体供給装置41を有するものであってもよい。また、湿度制御手段は、例えばケーシング31内に設けられた湿度センサ50と、当該湿度センサ50により測定された湿度に基づいて、ケーシング31内に湿度調整された気体を供給して、ケーシング31内を設定湿度に維持する気体供給装置51を有するものであってもよい。さらに圧力制御手段は、例えばケーシング31内に設けられた圧力センサ60と、当該圧力センサ60により測定された圧力に基づいて、ケーシング31内に所定量の気体を供給して、ケーシング31内を設定圧力に維持する気体供給装置61を有するものであってもよい。
【0056】
かかる場合、酸素拡散係数測定装置1が、温度制御手段と、湿度制御手段、及び圧力制御手段の少なくともいずれかを備えることによって、多孔体10の他方の面に接する気体の酸素濃度を所定の値に制御して、酸素拡散係数の測定をより正確に行うことができる。
【0057】
さらに、酸素拡散係数測定装置1は、雰囲気酸素濃度制御手段として、図13に示すように多孔体10の雰囲気に酸素を供給する酸素供給装置70と、酸素供給装置70の酸素供給量を制御する酸素供給量制御装置71と、多孔体10の雰囲気の酸素濃度を検出する雰囲気酸素濃度検出手段としての雰囲気酸素センサ72を備え、雰囲気酸素センサ72により検出された酸素濃度に基づいて、酸素供給量制御装置71により酸素供給量を制御して、酸素濃度を制御するようにしてもよい。かかる場合、例えば酸素拡散係数測定装置1の多孔体10の他の面側(下面側)に、多孔体10の他の面を含む空間を覆うケーシング80を設け、酸素供給装置70は、このケーシング80に管路81を通じて接続される。酸素供給量制御装置71は、管路81に設けられる。ケーシング80には、排出口82が形成される。管路81は、ケーシング80の多孔体10の他の面に対向する位置(下面)に接続されている。ケーシング80の管路81の開口部と多孔体10との間には、邪魔板83が設けられ、管路81から流入した酸素が直接多孔体10に当たることを防止している。
【0058】
そして、酸素拡散係数Dの測定時には、酸素供給装置70から所定量の酸素が管路81を通じてケーシング80に供給される。酸素は、ケーシング80内を通って排出口82から排出される。これにより、ケーシング80内に酸素が充填され、多孔体10の他の面の酸素濃度が一定になる。この結果、酸素拡散係数の測定をより精度よく行うことができる。図14には、上述の多孔体10の雰囲気の酸素濃度制御を行った場合としない場合の酸素拡散抵抗Rのばらつきを比較するグラフを示す。また、かかる例では、多孔体10の他の面に集中的に酸素が供給されるので、少量の酸素で効果的に多孔体10の他の面の酸素濃度を制御できる。さらに邪魔板83を設けることによって、酸素の気流による乱れをなくし、酸素濃度の斑の発生を防止できる。
【0059】
また、上記雰囲気酸素濃度制御手段により制御される酸素濃度の変動範囲を0.03vol%以下にするとよい。例えば酸素拡散係数測定装置1を拡散層製造の検査手段として用いた場合、製造された拡散層の酸素拡散抵抗が目標値の20%〜50%を超えると、拡散層の発電性能が大きく低下する可能性がある。そのため、酸素拡散係数測定装置には、少なくとも10%以内の変動精度が必要になる。そこで、図15に示すように雰囲気酸素濃度の変動範囲を0.03vol%以下に抑えることが有効である。
【0060】
なお、上述の図6に示す実施の形態において、重量測定装置7上に装置1を載置して、多孔体10の含水量を測定する例を説明したが、上記酸素拡散係数の補正を行う実施の形態と多孔体10の雰囲気の酸素濃度制御を行う実施の形態においても同様に、重量測定装置7上に装置1を載置し、多孔体10の含水量を測定できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、酸素センサの出力を用いて多孔体の酸素拡散係数を測定し算出する技術に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0062】
1…酸素拡散係数測定装置、2…酸素センサ(酸素濃度検出手段)、3…酸素消費型電池(酸素消費手段)、4…電流可変制御装置(酸素消費量制御手段)、10…多孔体、D…酸素拡散係数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔体の酸素拡散係数を測定する装置であって、
酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、
前記多孔体における酸素を消費させる酸素消費手段と、
該酸素消費手段の酸素消費量を制御する酸素消費量制御手段と、を備え、
前記多孔体が、一方の面が前記酸素濃度検出手段および前記酸素消費手段に対向し、他方の面が所定の酸素濃度の気体に接するように配置された状態で、
前記酸素消費手段を、所定の酸素消費速度を満たすように酸素消費量制御手段によって制御する、酸素拡散係数測定装置。
【請求項2】
複数の前記酸素消費手段が、前記酸素濃度検出手段の両側に配置されている、請求項1に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項3】
前記酸素消費手段として空気亜鉛電池を用いた、請求項1または2に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項4】
重量測定装置の上に載置可能であって、含水した前記多孔体のガス拡散係数を測定可能である請求項1から3のいずれか一項に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項5】
前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と酸素拡散係数との関係を予め記憶する記憶手段と、
測定時において前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記記憶手段に記憶された酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正する補正手段と、をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項6】
前記多孔体の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御する雰囲気酸素濃度制御手段をさらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項7】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気に酸素濃度及び湿度が一定のガスを供給するガス供給装置を備える、請求項6に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項8】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気の温度を制御する温度制御手段、前記多孔体の雰囲気の湿度を制御する湿度制御手段、前記多孔体の雰囲気の圧力を制御する圧力制御手段の少なくともいずれかを備える、請求項6に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項9】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、
前記多孔体の雰囲気に酸素を供給する酸素供給装置と、
前記酸素供給装置の酸素供給量を制御する酸素供給量制御装置と、
前記多孔体の雰囲気の酸素濃度を検出する雰囲気酸素濃度検出手段と、を備え、
前記雰囲気酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度に基づいて、前記酸素供給量制御装置により酸素供給量を制御して、前記酸素濃度を制御する、請求項6に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項10】
前記雰囲気酸素濃度制御手段により制御される酸素濃度の変動範囲を0.03vol%以下にする、請求項6に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項11】
多孔体の酸素拡散係数を測定する方法であって、
前記多孔体の一方の面を酸素濃度検出手段および酸素消費手段に対向させ、
当該多孔体の他方の面を所定の酸素濃度の気体に接触させ、
前記酸素消費手段によって前記多孔体の他方の面側の酸素を消費させ、
酸素消費量制御手段によって所定の酸素消費速度を満たすように前記酸素消費手段を制御し、
前記酸素濃度検出手段によって検出した前記多孔体の他方の面側の酸素濃度と、前記酸素消費手段によって消費された酸素量とに基づいて酸素拡散係数を算出する、酸素拡散係数測定方法。
【請求項12】
前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と酸素拡散係数との関係を予め記憶しておき、
測定時において前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記記憶された酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正する、請求項11に記載の酸素拡散係数測定方法。
【請求項13】
前記多孔体の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御する、請求項11または12に記載の酸素拡散係数測定方法。
【請求項1】
多孔体の酸素拡散係数を測定する装置であって、
酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、
前記多孔体における酸素を消費させる酸素消費手段と、
該酸素消費手段の酸素消費量を制御する酸素消費量制御手段と、を備え、
前記多孔体が、一方の面が前記酸素濃度検出手段および前記酸素消費手段に対向し、他方の面が所定の酸素濃度の気体に接するように配置された状態で、
前記酸素消費手段を、所定の酸素消費速度を満たすように酸素消費量制御手段によって制御する、酸素拡散係数測定装置。
【請求項2】
複数の前記酸素消費手段が、前記酸素濃度検出手段の両側に配置されている、請求項1に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項3】
前記酸素消費手段として空気亜鉛電池を用いた、請求項1または2に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項4】
重量測定装置の上に載置可能であって、含水した前記多孔体のガス拡散係数を測定可能である請求項1から3のいずれか一項に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項5】
前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と酸素拡散係数との関係を予め記憶する記憶手段と、
測定時において前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記記憶手段に記憶された酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正する補正手段と、をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項6】
前記多孔体の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御する雰囲気酸素濃度制御手段をさらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項7】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気に酸素濃度及び湿度が一定のガスを供給するガス供給装置を備える、請求項6に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項8】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、前記多孔体の雰囲気の温度を制御する温度制御手段、前記多孔体の雰囲気の湿度を制御する湿度制御手段、前記多孔体の雰囲気の圧力を制御する圧力制御手段の少なくともいずれかを備える、請求項6に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項9】
前記雰囲気酸素濃度制御手段は、
前記多孔体の雰囲気に酸素を供給する酸素供給装置と、
前記酸素供給装置の酸素供給量を制御する酸素供給量制御装置と、
前記多孔体の雰囲気の酸素濃度を検出する雰囲気酸素濃度検出手段と、を備え、
前記雰囲気酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度に基づいて、前記酸素供給量制御装置により酸素供給量を制御して、前記酸素濃度を制御する、請求項6に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項10】
前記雰囲気酸素濃度制御手段により制御される酸素濃度の変動範囲を0.03vol%以下にする、請求項6に記載の酸素拡散係数測定装置。
【請求項11】
多孔体の酸素拡散係数を測定する方法であって、
前記多孔体の一方の面を酸素濃度検出手段および酸素消費手段に対向させ、
当該多孔体の他方の面を所定の酸素濃度の気体に接触させ、
前記酸素消費手段によって前記多孔体の他方の面側の酸素を消費させ、
酸素消費量制御手段によって所定の酸素消費速度を満たすように前記酸素消費手段を制御し、
前記酸素濃度検出手段によって検出した前記多孔体の他方の面側の酸素濃度と、前記酸素消費手段によって消費された酸素量とに基づいて酸素拡散係数を算出する、酸素拡散係数測定方法。
【請求項12】
前記酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度と酸素拡散係数との関係を予め記憶しておき、
測定時において前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記記憶された酸素濃度と酸素拡散係数との関係から酸素拡散係数を補正する、請求項11に記載の酸素拡散係数測定方法。
【請求項13】
前記多孔体の他方の面が接する気体の酸素濃度を所定の値に制御する、請求項11または12に記載の酸素拡散係数測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−33016(P2013−33016A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225801(P2011−225801)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
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