説明

酸素排除性組成物およびその使用方法

ラッカーゼ酵素をベースとする酵素的酸素排除システムを使用して、電気化学的に酸素を水に還元することによって、密封容器内の酸素を除去する、または維持する。酸素排除システムの活性化は一般に、水(液体または蒸気)の吸着によって起こり;好ましい実施形態では、アスコルベートおよびイソアスコルベート(およびそれに相当する酸)が、還元体および吸湿剤としてその2つの役割を果たすために特に有利である。酸素排除システムの能力は、酸素排除性組成物中に含有される還元体の濃度を変化させることによって操作することができる。酸素排除システムは、様々な形態(例えば、包装材料自体内のインク、ラベル、小包、パッチ、キャップ)で製造することができ、当業界で従来から使用されている装置によって、高速連続ベースで容易に製造される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の有害な酸素を制御、制限、または一掃する方法に関する。さらに具体的には、本発明は、密封環境において酸素レベルを制御するために使用される酸素排除システムであって、酸素排除に適した酵素と、還元性基質と、を含む酸素排除システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
酸化的劣化の影響のために、酸素(O)の存在下での寿命が限られている多くの製品がある。かかる製品としては、例えば、食品、飲料品、化粧品およびパーソナルケア製品、電子部品/デバイスおよび医薬品が挙げられる。多くの場合には、これらの製品は、容器からOの大部分が除去されるように、その包装時に不活性ガスでフラッシングされる。しかしながら、Oの完全な除去を、包装する時点で達成するのは難しい。製品によっては、時間が経つにつれてOがさらに発生し;更なるOが、製品使用前の保存中に包装材を通り容器内に移動する。食品用途においては、これによって、風味の変化、色の変化、光退色および微生物の増殖に伴う問題が生じる。したがって、密封容器から積極的にOを除去することができるシステムが必要とされている。
【0003】
この要求を満たすため、かつ容器または包装体における空隙容量またはヘッドスペースからOを除去することによって機能する、様々なシステムが設計されている。代替方法としては、容器を製造するために使用される材料中にシステムが組み込まれる場合、包装材料自体が容器からOを除去し、更なるOの侵入に対してバリアとしての役割も果たす。様々な酸素排除システムが包装用途において適用されているが、一般にそれらはすべて、化学的方法および酵素的方法からなる2種類の広いカテゴリーに分類することができる。
【0004】
化学的システムが、アプローチの大部分を占める。一例は、包装体内に置かれる、小包またはサッシェ中の鉄粉末の使用である(米国特許公報(特許文献1))。他のいくつかの例としては、包装材料自体に組み込まれる種々の化学物質;例えば炭酸鉄(II)(米国特許公報(特許文献2))、アスコルビン酸パルミテートおよび遷移金属(米国特許公報(特許文献3))、アスコルビン酸化合物および遷移金属触媒(米国特許公報(特許文献4))、パラジウムおよび他の白金族金属(米国特許公報(特許文献5))およびエチレン性不飽和炭化水素および遷移金属塩(米国特許公報(特許文献6))の使用が挙げられる。代替方法としては、米国特許公報(特許文献7)では、容器の内面に貼り付けられるラベルに直接、鉄が組み込まれている。しかしながら、かかるシステムは商業的に広く一般に使用されているにもかかわらず、化学的酸素排除システムには、例えばサッシェの誤摂取、毒性金属および反応副生成物の浸出の可能性、成分の法外に高いコスト、金属探知機の活性化(密封容器内で外国の対象物を検出するのに使用される場合)、ある場合には、スカベンジングを活性化するのに紫外線照射が必要であることなどの多くの問題がある。さらに、これらのシステムでは一般に、スカベンジング化学作用中に反応性種が生成する。例えば、過酸化水素、超酸化物、および他の過酸化物の中間体を含む多くの高反応性二酸素由来中間体、が、アスコルビン酸(またはその塩)の遷移金属触媒酸化において生成される。これらの種は本質的にフリーラジカルであり、自己触媒連鎖反応を開始することができる((非特許文献1)および(非特許文献2))。
【0005】
酵素的システムもまた、酸素排除システムとして有用であり;よく知られている大部分のシステムはグルコースオキシターゼをベースとする。一般に、グルコースオキシターゼシステムは、2種類の酵素:グルコースオキシターゼ(EC1.1.3.4)およびカタラーゼ(EC1.11.1.6)で構成される。グルコースオキシターゼは、グルコースのグルコン酸への酸化を触媒し、分子のOを過酸化水素(H)に変換する。カタラーゼは、高反応性かつ望ましくない過酸化物と反応させるのに必要とされる[H→HO+O]。このシステムは、密封環境からOを除去するのに有効であり、長年にわたって数多くの特許および出版物の主題であった(例えば、米国特許公報(特許文献8);米国特許公報(特許文献9);米国特許公報(特許文献10);米国特許公報(特許文献11);(特許文献12);(非特許文献3);(非特許文献4),TAPPI:ジョージア州アトランタ(Atlanta,GA)参照のこと)。Hの生成は重要な欠点のままである。また、カタラーゼを転化して、HをHOに変換することができるが、それはグルコースオキシターゼの寿命期間中ずっと活性でなければならない。カタラーゼはまた、一部の用途では望ましくない濃い色のタンパク質である。最終的に、グルコースオキシターゼは、1つの還元体(つまり、グルコース)とのみ機能し、反応生成物(つまり、グルコン酸)はpHを下げ、その結果、どちらの酵素(つまり、グルコースオキシターゼおよびカタラーゼ)も阻害される。
【0006】
開示されている他の酵素的酸素排除システムは、アスコルビン酸塩オキシダーゼ(EC1.10.3.3)およびその基質、アスコルビン酸エステルまたはアスコルビン酸のいずれかをベースとする。この酵素は、分子Oの還元によって、反応性中間体が生成されることなく、反応生成物としてHOが生じるという点から、グルコースオキシターゼを上回る利点を有する。フルーツジュース中に直接組み込むための、このシステムが提案されており、天然に存在するアスコルベートが基質としての役割を果たす((非特許文献5))。このシステムは、食品における使用もまた開示されており、還元体としての役割を果たすためにアスコルベートが添加されているか;または粉末状酵素とアスコルベートとの混合物がサッシェ型の小包中に入れられており、次いで、バッファー溶液などの液体媒質に溶解することによって活性化される(米国特許公報(特許文献13))。しかしながら、グルコースオキシターゼ酸素排除システムを上回るこれらの改善点にもかかわらず、アスコルビン酸塩オキシダーゼは、(i)特定の基質(つまり、アスコルベートまたはアスコルビン酸)が必要なこと、(ii)システムとして非常に不安定であること、(iii)工業的な量が入手不可能なこと、の酵素の不利点を有する。
【0007】
ラッカーゼは、反応性中間体を生成することなく、分子Oを直接HOに還元することができるもう1つの酵素である。しかしながら、アスコルビン酸塩オキシダーゼと異なり、ラッカーゼは、広範囲の基質と反応する。このことは、酸素排除システムの配合に融通性を与える。さらに、ラッカーゼは、工業プロセスで使用するための開発努力の対象であった。ラッカーゼは工業的に使用された結果、それは大量に市販されている。
【0008】
(特許文献14)では、濁りの形成を低減し、かつOを除去するために、おそらく、ラッカーゼに対して還元体として働く天然フェノール化合物と共に、ビールにラッカーゼを添加することが教示されている。同様に、(特許文献15)には、トマトジュース、シトラスジュースまたはアップルソース;などの加工食品から酸素を除去するための、ラッカーゼの使用が開示されている。さらにまた、ラッカーゼの基質としての役割を果たすために、アントシアニンまたはスパイス(例えば、パプリカ)を添加することができることが示唆されているが、天然の還元体が使用された。米国特許公報(特許文献16)には、マヨネーズおよびサラダドレッシングなどのオイル製品から酸素を除去するための、ラッカーゼの使用が教示されている。著者は、更なる基質をシトラスジュース、マスタード、またはパプリカの形で与えた場合に、食品が食べられなくなる前に、更なる基質をどの程度添加することができるのかの上限はあるが、酸素排除率が向上することを見出したことを記述している。
【0009】
しかしながら、上述の場合のすべてにおいて、ラッカーゼ酵素は、食品に直接混合され、酸化化学作用のすべてが食品内で起こり、それによって、臭気が発生し、外観が変化する場合がある。酸素排除能力も、食品中に天然に存在する基質の量、または食品が食用に適するように維持しながら添加することができる量によって制限される。最終的に、ラッカーゼを直接添加するには、酵素と拡散基質との反応を可能にするのために、製品をほとんど液体の状態にする必要がある(例えば、ジュース、ピューレ、またはエマルジョン)。かかる方法は、新鮮なパスタ、精肉、またはパン製品などの食品には実施できない。
【0010】
出願人は、密封容器内のO含有量を低減するのに適した酵素的酸素排除システムを開発することによって、これらの欠点を克服した。有利なことには、この酸素排除システムでは、機能的バリアを使用することによって、酵素およびその基質の酸化還元化学反応と、密封容器の内容物とが間接的に接触することが可能となる。本明細書に記載の酸素排除システムは、様々な形(例えば、包装材料自体の中のラベル、小包、ライナー、パッチ(patch)、キャップ)で製造することができる。酸素排除システムの活性化は一般に、水(液体または蒸気)の吸着によって起こり、好ましい実施形態では、アスコルベートおよびイソアスコルベート(および相当するその酸)が、還元体および吸湿剤としての2つの役割を果たすために特に有利であり、それによって、密封容器内での酸素排除システムの自己活性化が可能となる。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,992,410号明細書
【特許文献2】米国特許第6,037,022号明細書
【特許文献3】米国特許第6,228,284号明細書
【特許文献4】米国特許第6,465,065号明細書
【特許文献5】国際公開第99/05922号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5,648,020号明細書
【特許文献7】米国特許第6,139,935号明細書
【特許文献8】米国特許第2,482,724号明細書
【特許文献9】米国特許第2,765,233号明細書
【特許文献10】米国特許第3,016,336号明細書
【特許文献11】米国特許第4,996,062号明細書
【特許文献12】国際公開第91/13556号パンフレット
【特許文献13】米国特許第5,180,672号明細書
【特許文献14】国際公開第95/21240号パンフレット
【特許文献15】国際公開第96/31133号パンフレット
【特許文献16】米国特許第5,980,956号明細書
【非特許文献1】Fabian,I.and V.Csordas,Advances in Inorganic Chemistry,54:395(2003)
【非特許文献2】Davies,M.B.,Polyhedron,11(3):285(1992)
【非特許文献3】Anderssonら,Biotech.Bioeng.,78:37(2002)
【非特許文献4】Lehtonen,8th Eur.Polymers,Films,Laminations and Extrusion Coatings Conf.,Barcelona,Spain,2001,pp75−81
【非特許文献5】マツイら,日本食品科学工学会誌(Nippon Shokuhin kagaku Kogaku Kaishi)43:362(1996)
【非特許文献6】Dawson,C.R. and Tarpley,W.B.The copper oxidases.In:Sumner,J.B. and Myrback,K.(Eds.),The Enzymes,1st ed.,vol.2,Academic:New York,1951,p454−498
【非特許文献7】Malmstrom,B.G.ら,Copper−containing oxidases and superoxide dismutase.In:Boyer,P.D.(Ed.),The Enzymes, 3rd ed.,vol.12,Academic:New York,1975,p507−579
【非特許文献8】Mayer,A.M.and Harel,E.Phytochem.18:193−215(1979)
【非特許文献9】Nakamura,T.Biochim.Biophys.Acta 30:44−52 and 538−542(1958)
【非特許文献10】Reinhammar,B.and Malmstrom,B.G.,”Blue”copper−containing oxidases.In:Spiro,T.G.(Ed.),Copper Proteins,Wiley:New York,p109−149(1981)
【非特許文献11】Bertrand,T.ら,Biochemistry.41(23):7325−7333(2002)
【非特許文献12】Dawson,C.R.,K.G.Strothkamp and K.G.Krul.Ann N Y Acad Sci.258:209−220(1975)
【非特許文献13】Permeability Properties of Plastics and Elastomers,2nd Ed.,Liesl K.Massey,ed,Plastics Design Library,Norwich:NY(2003)
【非特許文献14】Barrier Polymers and Structures,Koros ed,ACS Symposium Series,American Chemical Society:Washington DC,pp 111&163(1990)
【非特許文献15】Stannett,Poly Eng & Sci,18(15):1129−1134(1978)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、種々の容器および包装体から酸素を除去するのに有用である、ラッカーゼ酵素および還元性基質で構成される酸素排除システムを含む。酸素排除システムは、容器または包装体の内容物と直接接触しないが、酸素透過性の機能的バリアによって隔離される。一部の実施形態において、酵素は、容器または包装体に導入される際に不活性状態および活性化状態で提供される。
【0013】
したがって、本発明は、
a)i)有効量のラッカーゼ酵素と、
ii)有効量の還元性基質と
を含む酸素排除性組成物と、
b)酸素透過性の機能的バリアと
を含む、酸素排除システムを提供する。
【0014】
最初、ラッカーゼ酵素は不活性状態で提供され、酵素は、乾燥または凍結によって不活性化される。
【0015】
任意選択的に、本発明の酸素排除性組成物は、ポリマーバインダー、バッファー、吸湿剤および不活性充填剤などの更なる物質を含有し得る。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、
a)木材パルプ濾紙、ガラス繊維濾紙、板紙、織布、不織布、ポリマーフィルムおよびラベル紙、ポリマー材料、マット、カード、ディスク、スポンジ、ポリマーフォームからなる群から選択される材料と、
b)本発明の酸素排除システムを含むマトリックスと
を含む組成物を提供する。
【0017】
他の実施形態において、本発明の酸素排除システムを含むインクが提供される。同様に、本発明は、本発明の酸素排除システムを含む密封容器を提供する。
【0018】
本発明の酸素排除システムを含み、かつ図1に示す構造を有するラベルもさらに提供する。
【0019】
好ましい実施形態において、本発明は、
a)内容物を有する密封容器を提供する段階と、
b)i)1)有効量のラッカーゼ酵素と、
2)有効量の還元性基質と
を含む酸素排除性組成物と、
ii)酸素透過性の機能的バリアと
を含む酸素排除システムを提供する段階であって、その機能的バリアが、容器の内容物を酸素排除システムから隔離する役割を果たす段階と、
c)密封容器の内容物と酸素排除システムを接触させて、それによって酸素が密封容器から除去される段階と
を含む、密封容器から酸素を除去する方法を提供する。
【0020】
かかる容器の一般的な内容物としては、例えば食品、飲料品、電子部品、化粧品、パーソナルケア製品、および医薬品が挙げられる。
【0021】
代替の実施形態において、本発明は、
a)i)有効量のアスコルビン酸塩オキシダーゼ酵素と、
ii)有効量の還元性基質と
を含む酸素排除性組成物と、
b)酸素透過性の機能的バリアと
を含む酸素排除システムであって、アスコルビン酸塩オキシダーゼは不活性状態であり、その不活性化された酸素排除性組成物が、解凍および水蒸気の吸着からなる群から選択される方法によって活性化される、酸素排除システムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、密封容器から酸素(O)を除去するプロセスであって:1)酵素と還元性基質とを含む酸素排除システムを提供され;2)そのシステムが密封容器の内容物と間接的に接触する;プロセスに関する。本発明は、包装材料から製造された密封容器にOが入らないようにするプロセスであって:1)その包装材料が、酵素および還元性基質で構成される酸素排除システムを含み;2)そのシステムが密封容器の内容物と間接的に接触する;プロセスも提供する。本発明は、上述のシステムを収容する物品にも関する。
【0023】
本発明は、Oを容器から除去する必要がある多くの状況で使用することができる。かかる状況は、様々な電子部品/デバイス(例えば、酸素の影響を受けやすいDVD)の保存から、航空機燃料タンクの不活性化、特定の医薬組成物の保存、嫌気性微生物を培養するための無酸素雰囲気の形成、化粧品およびパーソナルケア製品(例えば、ハンドクリーム)の変質からの保護に及ぶ。しかしながら、ラッカーゼおよびアスコルビン酸塩オキシダーゼ、および特定の還元体の性質が食品に安全であるために、本発明は、食品を保存するメカニズムとして、食品/飲料品包装において使用するのに特に魅力的である。食品包装体中にOが存在すると、食品中の成分(例えば、脂肪およびビタミン)の酸化が原因である、あるいは食品中またはその表面での酸素を必要とする微生物(例えば、好気性細菌、酵母およびカビ)の増殖が原因で食品の腐敗が起こる。したがって、酸素排除システムは、食品の貯蔵寿命をかなり延ばし、かかる製品の品質が貯蔵寿命期間中、変化しないことを確実にすることから、包装に対する酸素排除システムの開発は、食品産業の製造業者にとって重要である。
【0024】
本明細書における本発明の酸素排除システムの使用によって得られる利点としては:食品に安全な成分の使用、容易に適用される水性配合物、および薄層において酸素排除システムを適用する能力が挙げられる。さらに、酸素排除システムは、非金属性(したがって、金属探知器による外国の対象物の包含について密封容器をスクリーニングすることができる)であり、かつ電子レンジにかけてもよいことを特徴とする。
【0025】
(定義)
以下の定義は、特許請求の範囲および明細書の理解のために使用される。
【0026】
「密封容器」、「密封環境」および「包装体」とは、いずれかの種類の製品を保持するように設計された内部空間を定義し、かつ実質的に酸素不透過性である、容器または環境を意味する。容器は、パウチ、袋、缶、タンク、樽、サイロ(silo)、広口瓶、箱、封筒、ボトル、または密封ラッピングの形をとり得る(これらの例は制限されない)。内容物は、固体、液体、気体、またはその混合物であり、消費されるように作られた物質(例えば、食品、飲料品、または医薬品)、電子部品またはデバイス、微生物、化粧品およびパーソナルケア製品、無酸素雰囲気および燃料であることができる。一般に、容器は、密封前に不活性ガスでフラッシングされる。
【0027】
「不活性ガス」という用語は、すべての環境下において反応しないガスを意味することとは対照的に、包装体または容器の内容物に対して反応しないガスを意味する。したがって、本明細書における本明細書のコンテクスト内の不活性ガスは、例えば:窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素またはその混合物を指す。
【0028】
「酸素排除システム」という用語は、1)密封容器からOを積極的に除去することができ;2)容器の内容物と間接的に接触した状態にある、酸素排除性組成物を含む酵素的システムを意味する。そのシステムは一般に、密封容器内の空隙容量またはヘッドスペースからOを除去することによって機能する;あるいは、容器を製造するために使用される材料中にその系を組み込んだ場合に、包装材料自体がOを容器から除去し、更なるOの侵入に対するバリアとしても働く。
【0029】
「Oの除去」および「酸素排除」という用語は、密封容器内の分子Oが還元反応によってHOに変換されるプロセスを意味する。このプロセスの結果は:1)容器内の分子Oの量の全体的な低減;2)容器内の分子Oの量の純変化なし;または3)本発明の酸素排除システムの非存在下で観察されるであろう小さな規模の、容器内の分子Oの量の増加;である。すべての場合において、容器内の分子Oの量は、酸素排除の速度、酸素排除システムの能力、密封容器中に侵入するOの割合、および密封容器内に最初に存在するOの量に依存するだろう。
【0030】
「酸素排除性組成物」という用語は、適切な還元体を使用して、分子Oを水に還元することができる酵素から本質的になる組成物を意味する。任意に、「酸素排除性組成物」は、例えば、バッファー、ポリマーバインダー、不活性充填剤および吸湿剤および/または潮解性剤も含むことができる。
【0031】
「ラッカーゼ」は、付随的な基質の一電子酸化を有する、OからHOへの四電子還元を触媒するマルチ銅オキシドレダクターゼ酵素(EC1.10.3.2)を意味する。ラッカーゼは、本発明の酸素排除性組成物において使用するのに好ましい酵素である。
【0032】
「アスコルビン酸塩オキシダーゼ」という用語は、付随的な基質(つまり、アスコルベートまたはアスコルビン酸)の一電子酸化を有する、OからHOへの四電子還元を触媒するマルチ銅オキシドレダクターゼ酵素(EC1.10.3.3)を意味する。
【0033】
「還元性基質」、「基質」および「還元体」という用語は、本明細書において区別なく使用され、それぞれが、本発明の酸素排除性組成物中に含まれる酵素に対する電子の供給源として働くことができる物質を意味する。
【0034】
「吸湿性」という用語は、気相からの水分子を捕捉する能力を有する、固相の化合物を意味する。したがって、吸湿性化合物は、その周囲から水分を容易に吸収するだろう。関連する用語は「潮解性」であり、空気からの水分を吸収することによって、水溶液を形成する傾向、または溶解し、液状になる傾向を有すると定義される。本発明の好ましい実施形態において、還元体はそれ自体が、吸湿性および/または潮解性である。
【0035】
「機能的バリア」という用語は、その機能が、酸素排除性組成物と密封容器の内容物との直接的な接触を防ぐ材料を意味する。バリアは酸素透過性であり、かつ酸素排除性組成物の貯蔵所(repository)の構成要素、または酸素排除性組成物を含有する構成要素としての役割を果たすことができるほうがよい。一般に、機能的材料は、フィルムまたはマトリックス状のポリマー材料を含むだろう。好ましい実施形態において、機能的バリアは、密封容器の内容物が、食品、飲料品、または医薬品としてヒトに消費される場合に、食品接触に関する食品医薬品局(Food and Drug Administration)の基準を満たすだろう(21 CFR§177.1390参照)。
【0036】
「不活性化」または「不活性化された」という用語は、酸素排除性組成物または酸素排除システムの酵素が酸素排除することができない状態を意味する。一般に、この不活性化は、密封容器内での希望される酸素排除開始前に、その酵素活性を保ち、システムの早すぎる活性化を防ぐ手段として、酵素を乾燥または凍結することによって行われる。
【0037】
「活性化」または「活性化された」という用語は、本明細書に記載のように、酸素排除性組成物または酸素排除システムの酵素が酸素排除することができる状態を意味する。活性化のプロセスには、一般に、液体の水を直接接触させることによって、水蒸気を吸着させることによって、または解凍することによって、システムを再水和させるのに水が必要である。当技術分野ではよく知られているが、明確にするために、本明細書において「水蒸気」は、液体の水の蒸発または固体の氷の昇華によって生じる、気体状態の水として定義される。所定の空気試料中に存在する水蒸気の量は、絶対湿度、混合比、露点、相対湿度、特定の湿度、および蒸気圧などの概念を含む、多くの異なる方法で測定することができる。
【0038】
「インク」という用語は、溶媒、基質として分子Oを使用することができる酵素、適切な還元体、ポリマーバインダーおよび増粘剤と共に着色剤を含有する組成物を意味する。好ましい溶媒は水である。任意に、そのインクは、例えば、バッファー、不活性充填剤、顔料および吸湿剤も含み得る。インクは、線巻コーティングロッド、回転スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷およびによる塗布を含む、様々な方法によって材料に適用される。
【0039】
(酸素排除システム:概要)
本明細書における酸素排除性組成物の最低限の成分は、分子Oを直接、水に還元することができる酵素、および適切な還元性基質である。一般に、酵素は、比較的低濃度で存在するが、還元性基質の濃度はかなり高く、酸素排除システムの必要な酸素排除能力の量に応じて決定される(例えば、分子O1モルをHOに還元するのに、一般的な二電子還元性基質約2モルが必要である)。特に均一な溶液状の酸素排除性組成物は、様々な方法(例えば、印刷、吸着、吸収等)で表面に適用することができる。続いて、スカベンジング組成物が適用された表面は一般に、そのシステムが「不活性」状態になるように乾燥させる。機能的バリアの裏側に酸素排除性組成物を隔離した後、次いで、酸素排除システムが容器内に組み込まれる。酸素排除システムは、還元体が水を吸着すると、水分を有する密封容器内で自己活性化し、酸素排除が非常に濃厚な溶液中で始まる。本明細書において、本発明により達成されるスカベンジング速度は、非常にカスタマイズ可能であるが(つまり、温度、湿度、酸素排除性組成物内の成分の濃度、表面積等に基づいて)、一実施形態において、酸素排除システムを使用して、900mL容器中で酸素濃度を40時間で20.9%から0%に低減されている。
【0040】
(酸素スカベンジャー:ラッカーゼ)
ラッカーゼ(E.C.1.10.3.2)は、マルチ銅オキシドレダクターゼ(系統名:ベンゼンジオール:酸素オキシドレダクターゼ)のグループである。これらの酵素は、広範囲の基質から電子を除去することができる。しかしながら、すべての反応において、酵素は、分子Oの四電子還元を行い、HOを形成する。ラッカーゼの一般的な概要については、例えば:(非特許文献6);(非特許文献7);(非特許文献8);(非特許文献9);(非特許文献10)を参照のこと。ラッカーゼの結晶構造の洞察については、例えば(非特許文献11)を参照のこと。
【0041】
ラッカーゼは、自然界全体に広く分布しており、植物、真菌、酵母および細菌に存在するが、最もよく知られているラッカーゼ生産体は真菌に由来する。というのも、これらの酵素は、リグニンの重合および脱重合の両方にその天然の役割を果たすため、特によく研究されているからである。本明細書において本発明の目的のために適切ないくつかの真菌ラッカーゼとしては(限定されないが)、子嚢菌綱および担子菌類から単離されるラッカーゼが挙げられる。さらに具体的には、真菌ラッカーゼの例証となる源としては:アスペルギルス属(Aspergillus)、アカパンカビ属(Neurospora)、Podospora属、ボトリチス属(Botrytis)、モリノカレバタケ属(Collybia)、ツリガネタケ属(Fomes)、マツオウジ属(Lentinus)、ヒラタケ属(Pleurotus)、ホウロクタケ属(Trametes)、リゾクトニア属(Rhizoctonia)、ヒトヨタケ属(Coprinus)、パスツレラ属(Psaturella)、Myceliophthora属、Schytalidium属、タマチョレイタケ属(Polyporus)、フレビア属(Phlebia)、カワラタケ属(Coriolus)、Hydrophoropsis属、ハラタケ属(Agaricus)、Cascellum属、ツネノチャダイゴケ属(Crucibulum)、ミロテシウム(Myrothecium)、スタキボトリス(Stachybotrys)およびSporormiellaからの源が挙げられる。最も好ましいのは、カワラタケ(Trametes versicolor)、T.villosa、Myceliophthora thermophilia、Stachybotrys chartarum、アラゲカワラタケ(Coriolus hirsutus)およびC.vericolorである。ワッカー・ケミー社(Wacker Chemie)(ドイツ、ミュンヘン(Munchen,Germany);T.versicolor)、ノボザイムズ社(Novozymes)(ノースカロライナ州フランクリントン(Franklinton,NC);M.thermophilia)、ジェネンコア社(Genencor)(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,CA);S.chartarum)、シグマ・アルドリッチ社(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO);C.versicolor)、およびSynectiQ社(ニュージャージー州ドーバー(Dover,NJ);C.hirsutus)などの供給元から市販されているラッカーゼが最も好ましい。
【0042】
ラッカーゼの源は、本明細書において本発明に限定されない。したがって、真菌ラッカーゼが好ましいが、遺伝子導入酵母(例えば、ピチア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)およびルイベロマイセス属(Kluyveromyces))、遺伝子導入真菌(例えば、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)またはクリソスポリウム属(Chrysosporium))、および産生宿主としての役割を果たし、他の生物(例えば真菌由来の)からクローニングされたラッカーゼ遺伝子を発現する遺伝子導入植物から、ラッカーゼを得ることもできる。さらに、ラッカーゼは、様々な細菌(例えば、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)およびストレプトマイセス属(Streptomyces))から産生される。
【0043】
さらに、本明細書において、非天然ラッカーゼも本発明で使用することができる。これらの修飾ラッカーゼは、従来の突然変異誘発(例えば、化学物質、紫外線)または定方向進化法(directed evolution method)(例えば、in vitro突然変異誘発および選択、部位特異的突然変異誘発、エラープローンPCR)によって得られ、その技術は、ラッカーゼの特徴を改善することを目的として、タンパク質のアミノ酸配列を変更するように設計されている。改善点の例としては、基質特異性の変更または天然酵素の安定性の向上が挙げられる。
【0044】
酸素排除システムに導入されるラッカーゼの特定の源は本発明にとって重要ではないが、具体的なラッカーゼを選択するための考慮すべき要素は:1)基質との十分な活性/速度;2)時間の経過にわたる酵素の安定性;3)ラッカーゼの基質活性スペクトル;4)ラッカーゼの最適なpHおよび/または温度;5)費用;を含む。
【0045】
本発明において必要とされるラッカーゼの量は、多くの因子に依存する。例えば、
1.包装パラメーター(例えば、包装容積、初期酸素濃度、周囲温度、酸素侵入の割合、スカベンジングの所望の速度、所望の残留酸素濃度);
2.酵素関連因子(例えば、使用される特定のラッカーゼの分子量および比活性、酵素の活性の寿命);
を考慮しなければならない。
【0046】
これらの因子を合わせると、有効な酵素量は非常に大きな範囲になり、一般に還元体1モルにつき1〜10,000mgとなる。しかしながら、好ましい実施形態において、酵素は一般に、コーティング中に約1〜200μg/cmの量で存在する。
【0047】
(ラッカーゼに対する還元性基質)
本明細書において還元性基質は、ラッカーゼの銅(I)部位に電子を供与することができる化合物として定義される。ラッカーゼは、広範囲のフェノール分子、ならびに一部の小さな非フェノール分子から電子を受け取ることができることはよく知られている。ラッカーゼは様々な分子から電子を受け取ることができるが、基質活性は大きく異なる。
【0048】
還元体の活性は、ラッカーゼと候補還元体とを密封容器内で混合し、Oの減少を測定することによって調べることができる。このような測定に基づいて、一般に:
ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)は優れた基質であるが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびt−ブチル化ヒドロキノン(t−BHQ)などの同様な分子は基質としてあまり好ましくなく;
アスコルビン酸(およびその塩)およびイソアスコルビン酸(およびその塩)は良い基質であるが、その活性はpH依存性である;
ことが決定されている。
【0049】
一般的な基質は、シリンガルダジンまたは2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート)(ABTS)などのラッカーゼに対して効率的な電子供与体である低分子量化合物である。食品で使用される他の基質は、食品医薬品局によって一般に安全と認められる化合物であり(GRAS;21 CFR§182参照);限定されない例としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、エトキシキンおよびブチル化ヒドロキシアニソールが挙げられる。しかしながら、好ましい実施形態において、還元性基質は、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウムまたはアスコルビン酸ナトリウム、またはその組み合わせである。
【0050】
本発明の酸素排除システムの能力は、分子O1モルをHOに還元するのに必要な一般的な二電子還元性基質約2モルを用いて、利用可能な還元性基質の量によって決定される。当然のことながら、還元体の正確な量は重要ではないが、少なくとも上記の量が存在することが最も良い。例えば、25℃の空気1LからOをすべて除去するのに、アスコルビン酸ナトリウム(MW198)またはBHA(MW180)約3gが必要とされるだろう;当業者であれば、おおよその酸素排除能力に必要な還元体の比例量を決定することができる。好ましい実施形態において、アスコルビン酸ナトリウムを還元体として使用した場合には、それは一般に、コーティング中で約1〜20mg/cmの添加量で使用される。
【0051】
還元体が水溶性である場合には、酵素と同じバッファーに溶解させて、液体酸素排除性組成物を製造することができる。還元体が水溶性ではない場合には、適切な非極性溶媒(例えば、植物油、ポリプロピレングリコール)に溶解させ、酵素水溶液と混合して、エマルジョンを形成する。この場合には、エマルジョンの安定化を助けるために、両親媒性物質(例えば、レシチン)を添加することも望ましい。当業者であれば、Oを除去するシステムの能力を妨げない他の両親媒性化合物を容易に同定することができ、かつその目的を達成するのに必要な物質の適切な濃度を決定することができるだろう。
【0052】
(代替の酸素スカベンジャー:アスコルビン酸塩オキシダーゼ)
アスコルビン酸塩オキシダーゼ(E.C.1.10.3.3)は、マルチ銅オキシド−レダクターゼ(系統名:L−アスコルベート:酸素オキシドレダクターゼ)のグループである。これらの酵素は、アスコルベートまたはアスコルビン酸からの電子を除去することができる;しかしながら、どちらの反応においても、酵素は、分子Oの四電子還元を行い、HOを形成する。アスコルビン酸塩オキシダーゼの一般的な概要については、例えば:(非特許文献12)を参照されたい。
【0053】
最も知られているアスコルビン酸塩オキシダーゼは、植物に由来し、本明細書において本発明の目的に適したアスコルビン酸塩オキシダーゼとしては(限定されないが)、タバコ、ダイズ、キュウリ、カボチャ等から単離されたものが挙げられる。しかしながら、真菌、特にアクレモニウム属の種から単離された熱安定性アスコルビン酸塩オキシダーゼがさらに好ましい(例えば、米国特許公報(特許文献13)参照)。特定のアスコルビン酸塩オキシダーゼの選択に影響する、考慮すべき要素は、必要とされる酵素の量に影響を及ぼす因子のように、ラッカーゼについて上記で示されている要素と同様である。
【0054】
(酸素排除性組成物中に任意に含まれるバッファーおよびポリマーバインダー)
ラッカーゼおよびアスコルビン酸塩オキシダーゼの酵素活性は、適切な範囲内で反応混合物のpHを維持することによって高めることができる。このpH範囲は、異なる由来の酸素排除性酵素間で異なる。しかしながら、特定の酵素について最適な範囲を一旦、決定すれば、酸素排除性組成物にバッファーを含有させて、このpHを維持することができる。アスコルビン酸とアスコルベートとの比も、これらの化合物が還元体として使用される場合には、pHを調整するのに使用することができる。
【0055】
酵素および還元体(および任意に、非極性溶媒および両親媒性物質)の他に、酸素排除性組成物中にバインダーを含ませることも有利である。バインダーは有利なことに、酸素排除性組成物のコーティング性能(例えば、分布の均一性および表面に結合する能力)、粘度の制御、および溶液安定性を改善するように機能する。本明細書で本発明において適切なバインダーの制限されない例は:1)ネオプレン、スチレンブタジエンゴム、サーリン(Surlyn)(登録商標)、酢酸ビニルエチレンコポリマーおよび天然ゴムの分散液;2)ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびダイズタンパク質の溶液である。
【0056】
好ましい実施形態において、ポリマー分散液は、混合物を調製して数分から数日以内に凝集が起こるため、溶液よりも有用性が低い。さらに、最終的なコーティング溶液における、高いアスコルベート含有率(つまり、約25重量%まで)に対する酸素排除システムの要求条件および天然に近いpHの維持によって、ポリマー分散液の使用は制限される。ポリビニルアルコールの溶液はバインダーとしてより良く機能するが、ゲルを形成する場合が多い。したがって、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースが、低レベルの酵素(例えば、約0.02〜0.2重量%)で安定な(例えば、1〜30日間)、高粘度の溶液を形成することができ、アスコルベートの必要量(上記の)を許容できることから、バインダーとして使用するのに最も望ましい。例えば、スクリーン印刷を用いて、包装フィルム上に酸素排除性組成物をコーティングする場合には、この高粘度によって、酸素排除性組成物のコーティング性能も向上する。
【0057】
(吸湿剤)
吸湿剤は、酸素排除性組成物中に任意に含有される。これらの薬剤(例えば、フルクトース、シリカゲル、またはポリビニルアルコール)は、酸素排除性組成物を含有する脱水状態の酸素排除システムを「活性化」するプロセスにおいて有用であることから、その水吸着性に関して価値がある。組成物中に含有される場合、吸湿剤は、組成物全体に対して約1〜50重量%の量で組み込まれる。
【0058】
その他には、ナトリウム塩およびカルシウム塩が本質的に吸湿性である。このように、アスコルベートは、基質としてのその役割の他に、吸湿剤としての役割を果たす。場合によっては、アスコルベートは有利なことに、他の還元剤と混合することができる。例えば、好ましい酵素との高い活性を示す、または酸素排除システムのコーティング特性を高める、非吸湿性の還元体を特定の酸素排除性組成物においてアスコルビン酸塩と組み合わせて使用することができる。したがって、一実施形態において、酸素排除性組成物は、約0.01〜10重量%の量のラッカーゼ、約10〜99.99重量%の量のアスコルビン酸ナトリウム、および約10〜99重量%の量のBHAで構成される。
【0059】
(機能的バリア)
上記で定義されるように、機能的バリアの目的は、酸素性組成物が密封容器の内容物と直接接触しないように、確実に酸素排除性組成物を隔離することである。機能的バリアは、密封容器内のOが機能的バリアを通って拡散し、それによって、酸素排除性組成物と反応するように、酸素透過性であるべきである。
【0060】
一般に、機能的バリアの材料は、フィルム状またはマトリックス状のポリマー材料を含むだろう。使用することができる適切なポリマー材料、ならびにそれぞれのポリマーの酸素透過性に関する詳細は、1)(非特許文献13);2)(非特許文献14);および3)(非特許文献15);に記載されている。このように、例えば、本発明において適しているポリマーの非制限的なリストとしては、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、テレフタレート、ナイロン(Nylon)6(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ネオプレン(Neoprene)(登録商標)、テフロン(Teflon)(登録商標)、ポリ4−メチルペンテン−1およびポリジメチルシロキサンが挙げられる。当然のことながら、酸素排除システムおよび密封容器内の内容物に不活性であり、かつ十分な酸素透過性を有するポリマーが本明細書で本発明において使用される。
【0061】
その代わりとして、スカベンジング組成物と密封容器の内容物とが直接接触する可能性がない場合には、空気自体が適切な機能的バリアとしての役割を果たし得る。
【0062】
当然のことながら、具体的な機能的バリアを選択する前に、酸素排除システムが使用される具体的な用途を考慮しなければならない。例えば、一部の状況においては、水蒸気が材料を通過することのみを可能にする材料が、システムを活性化するのに必要とされる。というのは、液体の水が材料を通過することを可能にする材料は、酸素排除性組成物と密封容器の内容物が共有の水溶液を通って浸出するため、適切な機能的バリアではないためである。
【0063】
(表面への酸素排除システムの適用)
酸素排除性組成物は、例えば木材パルプ濾紙、ガラス繊維濾紙、板紙、織布、不織布、ポリマーフィルムおよび印刷用粘着シートを含む多くの異なる表面に適用することができる。本発明の一実施形態において、濾紙上のコーティングは、高い酸素排除率/時間を可能にすることから、ポリマーフィルム(例えば、マイラー(Mylar)(登録商標))上のコーティングよりも好ましい。多孔性が高い表面(したがって、表面積)ほど、酸素移動の速度が高くなる、表面積の違いから、この結果が生じると仮定される。この違いを補うために、それが濾紙以外の表面に適用される場合には、高表面積を有する充填剤(例えば、微顆粒セルロース、粉末分子ふるい、カーボンブラック、グラファイト、粘土、木材パルプ、活性炭)を酸素排除性組成物中に含ませることが可能である。
【0064】
酸素排除システムを適用する特定の方法は、本明細書において本発明に制限されず、包装の当業者であれば、付帯的な包装用途、容器製造の工業的方法に応じて、表面に酸素排除性組成物を適用するのに最も適した方法論を容易に決定することができるだろう。酸素排除システムを適用するための適切な方法としては、例えば:線巻コーティングロッド、回転スクリーン印刷、フレキソ印刷、吹付け塗布、ブロッティング(blotting)、浸し塗り、コーティングおよびインクジェット印刷、および当業者に公知の他の方法が挙げられる。しかしながら、いずれのシナリオにおいても、適切な量の酸素排除システムを目的の表面に適用して、システムが使用されるその密封容器内で、特定の用途に応じて定義されるように、十分な酸素排除が可能になることを確実にしなければならない(例えば、スカベンジングの所望の速度、許容可能な最高酸素濃度等)。
【0065】
(均一な酸素排除性組成物の適用)
酵素、還元体および他の任意の成分が均質な混和材料として調製された、均一な混合物として、酸素排除性組成物を表面に適用することができる。この混合物は、固体または液体の形をとることができる。例えば、多くの実施形態において、酸素排除性組成物を含有する液体溶液をインクとして使用し、グラビアローラーによって塗布することができる。
【0066】
(非均一な酸素排除性組成物の適用)
代替方法として、酸素排除性組成物の個々の成分が互いに分離されているか、あるいは個々の成分が異なる時点で表面に適用される、酸素排除システムを製造することが可能である。前者の場合には、例えば印刷ラベル上に酵素が存在し、例えば、ラベルを覆うために使用される機能的バリアフィルム上に還元体が存在する、二成分システムを製造することが可能である。酵素および還元体が互いに極めて接近しており、かつ化学的に反応することができるように、フィルムおよびラベルが互いに貼り合わされるまで、酸素排除システムは完全に組み立てられない。後者の場合には、酸素排除性組成物の個々の成分が異なる時点で表面に適用され、酵素の層を最初に表面に適用し、その表面上で酵素を乾燥させ、次いで、酵素被覆表面上に還元体のコーティングを適用することが可能である。
【0067】
(酸素排除システムの不活性化)
有利なことに、本発明の酸素排除システムおよび組成物は、乾燥または凍結状態で保存した場合に、高い安定性を有する。これによって、密封容器内の酸素排除の開始前、酵素活性が維持され、システムの早すぎる活性化が防止される。例えば、酸素排除性組成物をインクとして適用した場合には、一般に、酸素スカベンジャーとしてそれを使用する前に、インクを乾燥させる(最も好ましくは、乾燥は窒素パージと共に減圧下にて周囲温度で行われるが、これらの条件は制限されると解釈すべきではない)。同様に、本出願人は、酸素排除システムでコーティングされ、かつ乾燥雰囲気中で約11ヶ月間(保存のこの期間は、制限されることを意図するものではない)保存された濾紙片の酵素活性の最小限の減少を決定した。代替方法としては、本発明の酸素排除性組成物は、無期限の期間、冷凍庫内で保存することによって保持することができる。
【0068】
酸素排除性組成物は、表面上にそれを適用する前に、表面上に適用した後に、または密封容器内に存在する完全な酸素排除システムとして、保存することができることに留意することが重要である。
【0069】
酸素排除性組成物およびシステムを乾燥または凍結する能力は、〜であると考えられるが、酸素排除性組成物がその使用前に乾燥または凍結されることは本発明の必要条件ではない。例えば、一部の用途では、液体状態の酸素排除性組成物を容器内の表面に直接塗布し、容器を直ちに密封し、適切な酸素排除を達成することが望ましい。
【0070】
(密封容器内の酸素排除システムの「活性化」)
酵素活性を保ち、システムの早すぎる活性化を防ぐために、酸素排除システムの酸素排除性組成物をある期間乾燥させる場合には、酸素排除が望まれる密封容器中にそれを導入する直前(または直後)に組成物を「活性化」する必要がある。活性化のこのプロセスでは、システムを再水和させるのに水が必要である。一実施形態において、液体の水が、酸素排除性組成物と直接接触するか、または凍結された酸素排除性組成物の解凍による。
【0071】
一般に、酸素排除システムは、密封容器内の蒸気または機能的バリア(つまり、ポリマー膜)を通る水蒸気から水分を吸着することによって再活性化される。この場合には、スカベンジング組成物中の吸湿性成分によって水が吸着され、酸素排除性酵素を有効に再水和させ、酵素と還元体を混合し、その結果、反応がそこで起こることができる濃縮液体媒質を提供することによって、システムが活性化されると仮定される。当然のことながら、活性化のタイミングは以下の因子などの様々な因子に依存する:
・密封容器の含水量/相対湿度。具体的には、容器の含水量が高いほど、酸素排除の開始が早くなる。
・酸素排除性組成物が適用される表面。活性化の速度は、酸素排除性組成物が適用される特定の表面、還元体の添加および周囲温度によって影響を受ける。
・吸湿剤の性質。好ましい実施形態において、異なる塩は、様々な範囲の相対湿度にわたって潮解性であることから、還元体の塩のカチオン成分を慎重に選択することによって、酸素排除システムの活性化および貯蔵性を制御することが可能である。
・機能的バリアの水蒸気透過性。当技術分野でよく知られているように、機能的バリアは、様々な水蒸気透過性を有する。
【0072】
さらに、活性化プロセスを促進する手段として、酸素排除性組成物中に更なる吸湿剤(還元体自体以外の)を含ませることが有用である。
【0073】
代替方法としては、水蒸気の吸着以外の方法でシステムを活性化することが望ましい。例えば、紙製ラベル上に保持された水和酵素を機能的バリア上の乾燥還元体に積層することができる。これによって、酸素排除システムが混合および活性化される。逆に、結合水を放出し、それによってシステムの活性化を可能にするために、酸素排除性組成物をマイクロ波照射にかけることができる。
【0074】
酸素排除システムの構造の実施形態
本明細書に記載の酸素排除システムを使用して、食料品および他の物質の包装体を構成するために、多くのアプローチを用いることができる。特定のフォーマットの選択は、包装業者の必要性に基づいて決定することができる。しかしながら、すべての場合において、本発明は、酵素(つまり、ラッカーゼまたはアスコルビン酸塩オキシダーゼ)および適切な還元体を酸素排除性組成物中に含有させ、組成物は、機能的バリアを使用することによって、容器の内容物から隔離される。
【0075】
このことは、
1)酸素排除性酵素と、食品、ジュース、または医薬品などの包装内容物とが直接接触すると、ラッカーゼまたはアスコルビン酸塩オキシダーゼの酵素活性のために、内容物の酸化が促進され;
2)濃縮還元体と容器の内容物とが直接接触すると、風味または色の変化が生じる;ことから、有利である。
【0076】
本発明で使用するのに適した様々なフォーマットが以下に詳細に論述されているが、これらの例は、本明細書において本発明に限定されるものではない。包装の当業者であれば、本明細書における教示に基づいて、他の様々な包装の要求に酸素排除システムを容易に適応させることができるだろう。
【0077】
密封容器の壁内への組み込み
時間が経つにつれて徐々に、酸素は容器の壁を通り抜けるため、容器(例えば、プラスチックまたは被覆板紙)内に保存された酸素排除された製品はしばしば、再酸素化(re−oxygenation)を受けやすい。これに対抗する、特定の「高酸素バリアポリマー」が開発されている(例えば、不織布、ポリマーフィルム)。しかしながら、その酸素バリアポリマーは、費用がかさみ、容器が複雑になり、十分に効果的なわけではない。したがって、本発明の一実施形態では、その製造時に包装材料(例えば、ラミネートフィルム、コートフィルム、積層板紙、押出し被覆板紙)中に酸素排除性組成物を直接組み込むことによって、既存の技術におけるこの特定の問題を克服する。
【0078】
具体的には、酸素排除システムが密封容器の壁内に組み込まれる場合、容器の壁は、任意に接着剤で接合される、層状構造(例えば、共押出し、押出し被覆、コーティング、積層された)である。内部(例えば、食品接触)層は機能的バリアであり、その機能は、酸素排除性組成物と容器の内容物とが直接接触するのを防ぎ、かつ酸素が酸素排除性組成物と反応することができるように、機能的バリアを通って密封容器のヘッドスペースから酸素が拡散するのを可能にすることである。機能的バリアは、任意の数の層によって密封容器の外部層から分離され、最終的な構造における形、たわみ性の程度、厚さ、または層の数は制限されない。
【0079】
上述の多層構造を得るために、酸素排除性組成物は様々なポリマー中に組み込まれ、酸素排除システムを劣化させない当技術分野で公知のいずれかの方法によってコーティングまたは積層される。本発明のシステムの酸素排除性組成物が包装材料自体に組み込まれる場合、その結果として、外部の酸素の侵入に対する有効なバリアが得られる。この特徴を利用して、酸素の影響を受けやすい製品の包装に一般に使用される高バリアポリマーを強化する、またはそれに取って代わることができる。
【0080】
例えば、本明細書において本発明の包装材料を製造するための一方法は、板紙上に酸素排除性組成物をコーティングし、乾燥させる方法である。一実施形態では、酸素排除システムを含む溶液をグラビアローラーによって塗布し、次いで、被覆板紙を窒素ストリーム中で乾燥させる。得られた板紙の一方の面を低密度ポリエチレン(「LDPE」、適切な機能的バリア)で押出し被覆し、板紙の反対面を高酸素バリア層(例えば、エチレンビニルアルコールコポリマー)でコーティングし、結合層(tie layer)および多層包装材料の製造に望ましい他のポリマー層と組み合わせる。LDPE層は最終的に、密封容器の液体内容物と接触するが、酸素バリア層は、大気に面する容器の外部上にある。このように構成された容器は、内部の酸素を除去する能力を有すると同時に、酸素侵入に対する向上したバリアもまた提供する。
【0081】
他の実施形態において、酸素排除性組成物を担体ポリマーマトリックスと合わせ、フォイルラミネート基材に塗布することができる。そのポリマーマトリックスは、様々なポリマーから得ることができ、分散液、ラテックス、エマルジョン、プラスチゾル、ドライブレンド、または溶液として配合することができる。マトリックスを塗布した後、それを乾燥させて、還元活性を安定化し、かつ密封容器内で包装される製品と接触するのに適しているであろうLDPEの最終的なラミネーションを適用する(LDPEは機能的バリアとしての役割を果たす)。このように、この方法論による包装体の構造によって、例えば、パウチまたは飲料用の箱の形成に有用な積層材を製造することが可能となる。同様に、酸素排除性組成物を担体ポリマーマトリックスと合わせ、マルチコート板紙に塗布し、次いでポリマー(例えば、LDPE)の層でコーティングすることができる。かかる材料は、ジュースまたは他の液体のための容器(例えば、ジャグ(jug)、ボール箱)を製造するのにも有用であるだろう。
【0082】
(密封容器内の挿入物)
任意に、酸素排除システムの成分は、次いで容器内に入れられる挿入物(例えば、パウチ、サッシェ、封筒、キャニスター、バイアル、接着パッチ、ラベル、ガスケット、蓋、キャップ、カード、ライナー等)に組み込まれる。この挿入物は、酸素の移動を可能にし、それによって酸素排除が可能となる。機能的バリアは、酸素排除システムと容器の内容物とが直接接触するのを防ぐ。密封される容器内の挿入物の具体的な特徴およびその配置は、以下に示されるように様々である。
【0083】
(1.パウチ、サッシェ、封筒、キャニスターまたはバイアル)
具体的には、酸素排除性組成物は表面上にコーティングするか、または吸着させることができ、次いで、密封される容器内のいずれかに設置され、位置付けられ、または貼り付けられる多孔性の自己封入(self−enclosed)挿入物内に、酸素排除システムを封入することができる。多くの異なる実施形態は、包装の当業者には明らかであるだろうが、以下の実施例は説明的なものである。具体的には、液体または固体の酸素排除性組成物は:
・組成物が繊維の隙間に含有されるように、繊維で構成されるマット、カードまたはディスク;
・組成物がフォームの細孔中に含有される、スポンジまたはポリマーフォーム;
・そのマトリックスが天然ポリマー(例えば、セルロース)、合成ポリマー、粘土、高表面積金属酸化物粒子、またはその組み合わせから得ることができる、顆粒状または粒状マトリックス;に適用される。
【0084】
上記の表面のいずれかに酸素排除性組成物を適用した後、組成物は任意に、乾燥または凍結されて、活性が保たれる。続いて、湿った、乾燥した、または凍結された繊維材料、スポンジまたはマトリックスを挿入物内に封入する。挿入物は、いずれかの構造をとり(例えば、酸素透過性ポリマーシートまたはフィルムで作られたパウチ、サッシェまたは封筒;キャニスターまたはバイアル)、酸素排除性組成物を容器の内容物から分離する、少なくとも1つの機能的バリアが存在する。次いで、酸素排除性組成物を含有する挿入物を任意に、乾燥または凍結させて、活性を保つか、または密封される容器内のいずれかに配置する、位置付ける、または貼り付ける。容器内に封入し、密封した後に、酸素排除システムを凍結させて、活性を保つことができる。
【0085】
(2.パッチまたはラベル)
一部の実施形態において、酸素排除システムは、1)容器に物理的に取り付けられ、2.)消費者によって容器からシステムを容易に除去されるのを防ぐ、パッチまたはラベルの形をとる。どちらの場合にも、機能的バリアは、上述される自己封入パウチ、サッシェ、封筒、キャニスターまたはバイアルと区別される、構造の1つの面(つまり、密封される容器の内容物と接触する表面)のみに存在する。
【0086】
具体的には、パッチまたはラベルは、非液体食品(例えば、新鮮なパスタ、肉)を収容する容器において使用するのに特に適していると思われる。酸素排除性組成物は、表面上にコーティングするか、または吸着させることができ、湿った状態で使用することができ、あるいは乾燥または凍結させて、活性を保つことができる。次いで、酸素輸送の手段を提供する機能的バリアと共に、マット、カード、ディスク、スポンジ、フォーム、またはマトリックスを容器に貼り付ける。機能的バリアが、容器の内容物を酸素排除システムから隔離することを可能にするという条件で、機能的バリアは、いかなる構造もとることができる。例えば、機能的バリアは、限定されないが:本質的に気体透過性のポリマー;多孔性材料(例えば、スパンボンドポリマーまたは連続気泡フォーム);または穿孔によって透過性が付与された固体材料;である。完全な酸素排除システムは、密封される容器内のいずれかに配置、位置付け、または貼り付けることができる。
【0087】
同様な方法で、酸素排除システムが液体内容物と共に使用される場合、酸素排除性組成物の隔離は、酸素および水蒸気透過性であるが、液体の水には透過性ではないポリマーフィルムで構成される機能的バリアの裏側に組成物を配置することによって達成することができる。代替方法としては、酸素排除システムは、パッチまたはラベルの一方の面に適用することができる。酸素排除性組成物を乾燥させたら、パッチまたはラベルのコーティングされた面を容器の内側、または容器を封止するために使用されるフィルムに貼り付けることができる。または、他の実施形態において、パッチまたはラベルのコーティング面は、酸素透過性薄膜(例えば、タイベック(Tyvek)登録商標)などの機能的バリア)で覆い、次いで、多層構造を容器に貼り付けることができる。
【0088】
他の場合では、密封される容器の外側にパッチまたはラベルを貼り付けることが望ましい。この場合において、パッチまたはラベルは、穿孔の領域の上に、あるいは外面に貼り付けられたパッチまたはラベルおよびその酸素排除システムに、容器の内部から酸素を輸送する手段を提供する代替の部位の上に適用されるだろう。
【0089】
容器の壁または蓋の上へのパッチまたはラベルの物理的な配置にかかわらず、パッチまたはラベルを製造する方法は、印刷、印刷物加工またはラベル製造の当業者に知られている従来の手段をベースとするだろう(例えば、熱ボンディング、熱型押、または溶剤型、転写(transfer)、または両面接着剤を使用した積層)。同様に、ラベルまたはパッチの適用方法は従来の方法であり、包装産業で公知の手段(例えば、クロスウェブ・ラベラー)を使用して適用される、コンタクト型接着剤、ヒートシール接着剤または転写接着剤の使用を含む。
【0090】
好ましい一実施形態を図1に図示する。図1を参照し、本質的に以下の層:
機能的バリア膜(「1」)、本発明のスカベンジング組成物を含有するスカベンジャー層(「2」)、接着剤層(「3」)、接着剤間膜(「4」)、接着剤層(「5」)および剥離バッキング(「6」)(示される順序は、食品に最も近い側から包装体の外面に最も近い側である)からなる、食品を収容する容器に適した多層ラベルが示されている(図1)。
【0091】
包装の当業者はよく知っているように、パッチおよびラベル構造の数多くの他の例は、文献(例えば、米国特許公報(特許文献7)に記載されており、その多くは、必要以上の実験なしで、本発明の酸素排除システムの組み込みに適しているだろう。
【0092】
(3.フィルム、コーティング、ラップ)
本発明の他の実施形態において、酸素排除システムは、システムを収容する役割を果たす、ポリマーマトリックス中に配合することができる(かつ、マトリックスは適切な機能的バリアを提供し、それによって、容器の内容物から酸素排除性組成物の成分が隔離される)。ポリマーマトリックスは様々なポリマーから得られ、分散液、プラスチゾル、ドライブレンドまたは溶液として配合することができる。その成分は、酸素排除システムの成分を劣化させず、かつ容器の内容物に対して不活性である、当技術分野で公知の方法によってポリマー中に配合することができる。かかるポリマーマトリックスは、例えば、パッチ、ガスケット、コーティング、またはフィルムとして、密封される容器の内側に付着させることができる。パッチ、ガスケット、コーティングまたはフィルム自体が、機能的バリアを組み入れるか、または更なるコーティングまたは積層段階によって、別々に適用された機能的バリアにより覆うことができる。他の実施形態において、そのシステムは、収縮包装フィルムに適用され、かつ容器を包むのに使用される、担体ポリマーマトリックスと組み合わせることができる。
【0093】
(4.容器のクロージャー(Closure))
容器を密封するのに使用される構成要素(例えば、ガスケット、蓋のライナー、キャップ、コルク、栓)を製造するために、様々な方法が考えられる。
【0094】
一実施形態において、酸素排除性組成物は、繊維状またはスポンジ基材の表面上にコーティングするか、または吸着させて、乾燥させることができる。機能的バリアとしての役割を果たすであろう酸素透過性ポリマーでコーティングまたは積層した後に、酸素排除システムを含むマトリックスを打抜く、または切断して、ガスケットまたは蓋のライナーとして使用されるディスクが形成される。
【0095】
代替方法としては、酸素排除性組成物は、ガスケットまたは蓋のライナーを形成するために、キャップまたはクロージャー上に直接付着されて担体ポリマーマトリックスと組み合わされる。ポリマーマトリックスは、当技術分野における適切ないずれかの手段によって付着させることができ、十分な酸素排除ができるように、適切な量の酸素排除システムが付着された(例えば、速度および能力に基づいて)。
【0096】
他の実施形態において、酸素排除性組成物は、コルクまたは栓のマトリックス中に直接組み込まれるか、または組成物は、コルクまたは栓内部のリザーバー内に含有させることができる。これらの手段を用いて、コルクまたは栓を使用して、ボトルを封止することができ、酸素排除も可能となる。
【0097】
(酸素排除システムの好ましい実施形態)
本発明の酸素排除システムは、製品の貯蔵寿命を延ばすためのメカニズムとして食品/飲料製品を含む容器において使用するのに特に魅力があり(ラッカーゼおよびアスコルビン酸塩オキシダーゼおよび特定の還元体が食品に安全な性質であるため)、その用途では変化した気体環境が未処理空気の環境に比べて望ましくない、そのシステムの多くの他の用途が考えられる。これは:好気性培養(酸素排除システムを用いて、好気性の環境を作り出し、その結果、ペトリ皿、血清共栓瓶、ガスパック(gas pak)において好気性微生物を培養することができる)において;様々な電子部品/デバイス(例えば、酸素の影響を受けやすいDVD)の保管のために;化粧品およびパーソナルケア製品(例えば、ハンドクリーム)を保存するために;航空機燃料タンクを不活性化するために(燃料タンク中の引火性燃料/空気中の蒸気を防ぐため);特定の医薬組成物の包装において;そのシステムを使用することを含む。
【実施例】
【0098】
本発明はさらに、以下の実施例で定義される。本発明の好ましい実施形態を示すこれらの実施例は、単に実例として示されている。上記の論述およびこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を把握することができ、かつその精神および範囲から逸脱することなく、本発明に種々の変更および修正を加えて、様々な使用および条件にそれを適合させることができる。
【0099】
(一般的な方法)
以下で別段の指定がない限り、実施例に使用されるすべての材料は、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Corporation)(ミズーリ州セントルイス)から入手した。
【0100】
略語の意味は以下の通りである:「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「d」は日数を意味し、「μl」はマイクロリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモルを意味し、「mM」はミリモル(濃度)を意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はミクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」は単位を意味する。
【0101】
(ラッカーゼの起源および精製)
カワラタケ(Trametes versicolor)由来の粗製ラッカーゼをワッカー・ケミー社(Wacker Chemie)(ドイツ、ミュンヘン(Muenchen,Germany)から入手した。ラッカーゼ含有率は約5重量%である。ビス−トリスプロパンバッファー(pH6,20mM)中の2g/40mLの粗製試料を10分間遠心分離し、限外濾過によって不溶性物質を除去し、>100倍に濃縮して、低分子量混入物を除去した。残留するタンパク質約90%が、SDS−PAGEおよびN末端シーケンスによって決定されるようにラッカーゼである。カワラタケ(T.versicolor)は、少なくとも8つの異なるラッカーゼタンパク質に対して遺伝子を有することが知られている。本明細書において使用される物質は主に、lacIIIであり、この生物からの主要なラッカーゼである。ビス−トリスプロパンバッファー中の濃厚溶液(3.5mg/mL)として精製試料を保存し、0.2mLのアリコートで凍結させた。
【0102】
脱色デニム布において使用するために販売されている薬剤である、デニライト(DeniLite)(登録商標)II Base(商品番号NS37008)として、ノボザイムズ社(Novozymes)(ノースカロライナ州フランクリントン(Franklinton,NC)からMyceliophthora thermophilia由来のラッカーゼを入手した。デニライト(DeniLite)(登録商標)II Base(1g)を50mM MES(pH5.5)バッファー、1mM EDTAに溶解して10mLの容積にし、25℃で1時間、管を穏やかに反転させることによって懸濁した。短時間、遠心することによって沈降した酵素を不活性担体上に与えた。上清は約2mg/mLのタンパク質および4%のエトキシ化脂肪アルコール界面活性剤を含有した。
【0103】
Stachybotrys chartarum由来のラッカーゼは、濃度15.4mg/mLでジェネンコア社(Genencor)(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,CA))によって供給され、直接使用するのに十分な純度であった。
【0104】
アラゲカワラタケ(Coriolus hirsutus)由来のラッカーゼは、濃度2.4mg/mLでSynectiQ社(ニュージャージー州ドーバー(Dover,NJ))によって供給され、直接使用するのに十分な純度であった。
【0105】
(実施例1)
(液体酸素排除性組成物)
この実施例では、密封容器内のヘッドスペース酸素を有効に除去する酸素排除システムの使用が記述されており、そのシステムは、水に溶解された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸ナトリウム)で構成されている。
【0106】
具体的には、キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた空気充填瓶内に、水1.5mL中のアスコルビン酸ナトリウム640mg、カワラタケ(T.versicolor)由来ラッカーゼ(Wacker Chemie)0.4mgからなる酸素排除性組成物を入れた。時間の経過にしたがって、室温での酸素濃度を測定した。酸素濃度は初期値20.9%から58時間後には3.5%に下がった。
【0107】
(実施例2)
(紙片上の様々なラッカーゼの活性の比較)
この実施例では、紙表面に適用された液体酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸ナトリウム)を使用して達成された酸素排除を比較し、異なる由来のラッカーゼの活性をその適用可能性について試験した。
【0108】
バイオラド(Bio−Rad)タンパク質アッセイ(バイオラド社、カリフォルニア州ハーキュリーズ(Bio−Rad,Hercules,CA))を用いて、4種の異なる起源に由来するタンパク質濃度を決定し、濃度1.25mg/mLに調節した。アスコルビン酸ナトリウム(10mM MES中で500mg/mL)650μlおよび酵素100μlからなる溶液を各酵素に対して調製し、2.54×7.6cmのワットマン(Whatman)3MM濾紙片(英国、ケント(Kent,UK))に適用した。キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた別々の125mL広口瓶に各濾紙片を入れた。
【0109】
室温での酸素濃度を72時間にわたって測定した。ラッカーゼの種類および最終的な酸素濃度を以下の表に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
(実施例3)
(紙片上での種々の非アスコルベート還元体の活性の比較)
本発明の実施例では、紙表面に適用された液体酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよび還元体)を使用して達成された酸素排除を比較し、異なる非アスコルベート還元体の活性をその適用可能性について試験する。
【0112】
具体的には、密封容器内でラッカーゼおよび候補還元体を混合し、Oの減少を測定することによって、一般に安全と認められる(GRAS)様々な還元体の還元体活性を以下のように試験した;しかしながら、GRAS還元体は水溶性ではないことから、最初にカノーラ油にそれぞれを溶解し、エマルジョンを調製することが必要であった(界面活性剤としてレシチンを使用して)。このように、各エマルジョンは、以下の成分:候補還元体200〜250mg、カノーラ油500μl、レシチン(エタノール中の飽和溶液)100μl、Myceliophthora thermophilia由来ラッカーゼ(ノボザイムズ社(Novozymes)、水中で0.2〜9.5mg)100μlを含有した。成分をボルテックスで攪拌して、エマルジョンを形成し、次いで、キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた137mL広口瓶に入れられた、ワットマン(Whatman)3MM濾紙(英国、ケント(Kent,UK))の15cm紙片に適用した。
【0113】
室温、大気酸素および湿度100%で酸素排除を測定した。以下の表2に示す結果から、20時間後に残存する最終酸素%が示されている。対照の反応では、水が酵素の代わりとなり、20時間後に0.5%未満の酸素除去を示した。
【0114】
【表2】

【0115】
(実施例4)
(紙片上の還元体の組み合わせを使用した酸素排除システム)
この実施例では、紙表面に適用された液体酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよび還元体)を使用した酸素排除システムを示し、その還元体は、2つの基質(つまり、没食子酸プロピルおよびアスコルビン酸カルシウム)の組み合わせによって提供される。
【0116】
以下の成分:没食子酸プロピル400mg、アスコルビン酸カルシウム100mg、カノーラ油600μl、レシチン(エタノール中の飽和溶液)100μl、Myceliophthora thermophilia由来ラッカーゼ(ノボザイムズ社(Novozymes)、9.5mg)100μlからなる酸素排除性組成物を調製した。組成物をボルテックスで攪拌して、エマルジョンを形成し、次いで、キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた137mL広口瓶に入れられた、ワットマン(Whatman)3MM濾紙(英国、ケント(Kent,UK))の15cm紙片に適用した。
【0117】
室温、大気酸素および湿度100%で酸素排除を測定した。45時間後に、酸素レベルは20.9%から14.5%に下がった。それとは対照的に、対照反応には酵素は添加されず、酸素の除去は示されなかった。
【0118】
(実施例5)
(液体の水による酸素排除システムの活性化)
この実施例では、酸素排除システムの不活性化、次いで活性化を説明し、そのシステムは、紙表面に適用される酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸ナトリウム)で構成される。
【0119】
酸素排除性組成物を保持する濾紙片(1cm×5.5cmのワットマン(Whatman)No.4、英国、ケント)をバイアルの内側に巻き付けた。酸素排除性組成物は、精製カワラタケ(T.versicolor)由来ラッカーゼ(ワッカー・ケミー社(Wacker Chemie))3.5mg/mL溶液の3つの異なる容積からなり、一滴ずつ適用され、周囲温度にて窒素フロー中で乾燥され、続いて、pH6リン酸緩衝液中の100mMアスコルビン酸ナトリウム250μlを同じ領域にわたって一滴ずつ適用し、乾燥させた。初期酸素分圧は6.7%で固定された。
【0120】
スカベンジングは、脱イオン水150mlを添加することによって開始され、各バイアル中の酸素のパーセンテージを120分後に測定した。3つの異なる容積の酵素溶液についてのデータを以下の表3に示す。酵素を使用していない対照では、同じ時間にわたる酸素濃度の変化はごくわずかであった。
【0121】
【表3】

【0122】
(実施例6)
(水蒸気による酸素排除システムの活性化)
この実施例では、不活性化された酸素排除システムの自己活性化を説明し、そのシステムは、ポリエステルフィルムの表面に適用された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸ナトリウム)で構成される。
【0123】
具体的には、50mM MESバッファー(pH5.5)中の20%アスコルビン酸ナトリウム、ラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))3mg、および15%エルバノール(Elvanol)(登録商標)51−05ポリビニルアルコール(本願特許出願人)からなる酸素排除性組成物5mLを、No.100線巻コーティングロッドで92ゲージマイラー(Mylar)(登録商標)LBTポリエステルフィルム(本願特許出願人)の10×7cmシート上に均一に塗布した。組成物を窒素ストリーム下にて室温で乾燥させた。その結果得られた、コーティングされたマイラー(Mylar)(登録商標)シート片を、キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた、蓋で閉められた125mL瓶に入れた。その瓶は、乾燥酸素排除性組成物を再活性化するために高湿度源を提供するため、水で飽和された濾紙片も含有した。
【0124】
時間の経過にわたって、酸素濃度を測定した。酸素濃度は初期値20.9%から下がり、最終的に50時間後には12%のレベルで安定した。
【0125】
(実施例7)
(還元体の量を変化させることによる酸素排除能力の変化)
この実施例では、不活性化された酸素排除システムの自己活性化が、酸素排除性組成物で使用される還元体の量によってどのように制御されるかを示す。
【0126】
様々な量のアスコルベートをワットマン(Whatman)No.4濾紙(英国、ケント)の1cm×5.5cm濾紙片上に付着させ、酸素排除能力を試験した。具体的には、各紙片は、新たに調製されたラッカーゼ溶液(脱イオン水(マサチューセッツ州ビルリカ、Millipore社のMilli Q system)中の5mg/mLデニライト(DeniLite)(登録商標)II base(ノボザイムズ社(Novozymes))0.2mg、脱イオン水中の還元体としてのアスコルビン酸ナトリウムの新たに調製された溶液(表4で以下に示される還元体濃度)を含有した。紙片を乾燥窒素ストリーム中で1時間乾燥させた。
【0127】
酸素の影響を受けやすい電極(ニューハンプシャー州ベッドフォード(Bedford,NH)のMicroelectrodes,Inc.)がそれを通して挿入された、隔壁−密封サイドアーム(septum−sealed sidearm)を備えた同一の20mLガラス製クリンプトップバイアル(glass crimp−top vial)中に紙片をそれぞれ装入した。バイアルの上部を凍結乾燥型ゴム栓およびアルミニウム製クリンプトップで密封した。
【0128】
シリンジによってバイアルの底に脱イオン水150μlを添加することによって、酸素排除システムを活性化した。酸素排除性組成物を保持する紙片は液体の水と接触していなかった。室温、大気酸素および湿度100%で酸素排除を測定した。初期酸素は20%であった。以下の表4に示す結果から、24時間後に残存する最終酸素%が示されている。
【0129】
【表4】

【0130】
(実施例8)
(均一および非均一な酸素排除性組成物の表面への適用)
この実施例では、紙の表面に酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸ナトリウム)を適用する5通りの異なる方法を比較する。これらの方法は一般に、1)均一な溶液中に浸漬する;2)均一な溶液を吹付ける;3)還元体溶液で浸漬し、続いて酵素溶液を一滴ずつ添加する;4)還元体溶液を吹付け、続いて酵素溶液を一滴ずつ添加する;5)還元体溶液を一滴ずつ添加し、続いて酵素溶液を一滴ずつ添加する;方法として説明される。
【0131】
(浸漬方法)
酸素排除性組成物を含有する濾紙片(1×5.5cm、ワットマン(Whatman)No.4、英国、ケント)を以下の表5に示すように作製した。還元体溶液(sol’n)は、脱イオン水(マサチューセッツ州ビルリカのミリポア社(Millipore),Milli Q system)中のアスコルビン酸ナトリウム(1M)の新たに調製された溶液であり;酵素溶液は、脱イオン水中のラッカーゼ(5mg/mLデニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))の新たに調製された溶液であり;均一溶液は、脱イオン水中のアスコルビン酸ナトリウム(1M)とラッカーゼ(5mg/mLデニライト(DeniLite)(登録商標)IIbase)との新たに調製された溶液であった。濾紙片を乾燥窒素ストリーム中で1時間乾燥させた。
【0132】
【表5】

【0133】
(吹付け方法)
酵素溶液が4.3mg/mLラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base)(5mg/mLに対して)であり;均一溶液が1Mアスコルビン酸ナトリウムおよび4.3mg/mLラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base)(5mg/mLに対して)であることを除いては、上述と同様に酸素排除性組成物を含有する濾紙片を作製した。クロマトグラフィー噴霧器(VWR21428−350、容積10mL)の噴霧器リザーバーを適切な溶液で満たし、排出口から8cmに濾紙片を置き、濾紙片を5秒間吹付けにかけた。表6に、使用した方法の完全な概要を示す。
【0134】
【表6】

【0135】
(酸素排除の測定)
酸素の影響を受けやすい電極(ニューハンプシャー州ベッドフォード(Bedford,NH)のMicroelectrodes,Inc.)がそれを通して挿入された、隔壁−密封サイドアームを備えた同一の20mLガラス製クリンプトップバイアル(glass crimp−top vial)中に紙片をそれぞれ装入した。バイアルの上部を凍結乾燥型ゴム栓およびアルミニウム製クリンプトップで密封した。2本の注射針を栓に差し込み、Oセンサーが0.10%未満で安定するまで、バイアルを窒素でフラッシングした(注:注射針がこのポイントでキャップされた場合には、バイアル中の酸素含有率は安定している)。バイアルを4℃の浴中に浸し、バイアルに再び空気を加えて、一般にO7%とした。
【0136】
シリンジによってバイアルの底に脱イオン水150μlを添加することによって、酸素排除システムを活性化した。酸素排除性組成物を保持する紙片は液体の水と接触していなかった。バイアル中の酸素含有率を時間の経過にしたがって測定した。バイアル中の酸素含有率は数時間以内に下がり始めた。
【0137】
「均一な浸漬」、「還元体の浸漬」および「液滴の対照−1」紙片の間で、酸素排除の時間経過における有意な違いは認められなかった。それと対照的に、「均一な吹付け」および「還元体の吹付け」紙片は、「液滴の対照−2」紙片(20時間で50%除去)よりわずかに速く(15時間で50%除去)バイアルからOを除去した。
【0138】
(実施例9)
(ドローダウン(Draw−Down)による酸素排除性組成物の塗布)
この実施例では、酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼ、還元体およびバインダー)をタイベック(Tyvek)(登録商標)の表面に塗布するために線巻ロッドを使用したドローダウン技術を説明する。
【0139】
具体的には、1.2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HO中の2重量%溶液の粘度=100,000cps、ミズーリ州セントルイスのアルドリッチ社(Aldrich,St.Louis,MO))、14.6%アスコルビン酸ナトリウム(99+%、アルドリッチ社(Aldrich))、0.36%ラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))を含有する水溶液を、75番線巻ロッドを使用して、タイベック(Tyvek)(登録商標)2FS(本願特許出願人)の5×14cm布片上にドローダウンすることによって、酸素排除システムを製造した。ゆっくりとした窒素パージ下にて、室温の真空オーブン内で酸素排除性組成物を一晩乾燥させた。タイベック(Tyvek)(登録商標)上のコーティング量は、1.9mg/cmであることが分かった。
【0140】
(酸素排除の測定)
キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーおよび1×6cm濾紙片を含有する20mLシンチレーションバイアルを備えた100mL媒体広口瓶中に試験する酸素排除システムを入れた。広口瓶を窒素でフラッシングしてO1%未満にし、酸素レベルを少なくとも1時間モニターして、漏れを調べた。次いで、広口瓶を開けて空気にさらし、酸素レベルは約15%に上昇した。O15%および温度25℃にて、広口瓶の容積125mLは、O770μMを含有するだろう。水(1mL)をシンチレーションバイアルに入れ、広口瓶を再び密封した。広口瓶の酸素含有率を時間の経過にしたがってモニターし、酸素排除システムのスカベンジング能力を決定した。酸素排除の速度は、時間プロットに対してOの最も急勾配な部分の勾配とし、時間当たりのO(μmol)で表される。
【0141】
(酸素排除の速度)
酸素排除システム(上述のドローダウンによって製造された)を試験する場合、スカベンジング最大速度O25.5μM/時が得られた。
【0142】
(実施例10)
(スクリーン印刷による酸素排除性組成物の適用)
この実施例では、種々の表面にインク状態の酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼ、還元体混合物、およびバインダー)を適用するためのスクリーン印刷技術とドローダウン技術を比較する。
【0143】
本明細書における酸素排除性組成物は、1.2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、9.7%アスコルビン酸ナトリウム、9.7%アスコルビン酸(99%min、ミズーリ州セントルイスのシグマ社(Sigma,St.Louis,MO))、0.18%ラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))を含有する高粘度水溶液である。スクリーン印刷またはドローダウンの方法を使用して、このインクをタイベック(Tyvek)(登録商標)2FS(本願特許出願人)またはワットマン(Whatman)3MM濾紙(英国、ケント)のいずれかに適用した。具体的には、スクリーン印刷は、10×14インチ、124メッシュのマルチフィラメントポリエステルスクリーン(ノースカロライナ州ステーツビル(Statesville,NC)のSpeed Ball Art Products社)を使用して手作業で行い、ドローダウンは、75番線巻ロッドを使用して行った。すべての酸素排除性組成物をゆっくりとした窒素パージ下にて、室温の真空オーブン内で酸素排除性組成物を一晩乾燥させた。
【0144】
実施例9に記載のように、各酸素排除システムの酸素排除を決定した。その結果を以下の表7に示す。
【0145】
【表7】

【0146】
(実施例11)
(異なる表面上にコーティングされた種々の酸素排除性組成物の活性の比較)
この実施例では、ドローダウン技術を用いて種々の表面に適用された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼ、アスコルビン酸ナトリウムおよび種々のバインダー)を使用して達成された酸素排除を比較する。
【0147】
本明細書における酸素排除性組成物の溶液を、種々のシート表面(以下の表8に記載)に75番線巻ロッドを使用してドローダウンした。すべての酸素排除性組成物をゆっくりとした窒素パージ下にて、室温の真空オーブン内で酸素排除性組成物を一晩乾燥させた。
【0148】
実施例9に記載のように、各酸素排除システムの酸素排除速度を決定した。その結果を以下の表8に示す。
【0149】
【表8】

【0150】
【表9】

【0151】
(実施例12)
(異なるポリマーバインダーで製造された酸素排除性組成物の活性の比較)
この実施例では、ドローダウン技術を用いてポリマー表面に適用された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼ、アスコルベートおよびバインダー)を使用して達成された酸素排除を比較する。
【0152】
以下の表9に示すように、ラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))とアスコルベートを含有する溶液を7種の異なるバインダーのうちの1つと共に調製した。表に指定される重量パーセント(重量%)に従って最終的な酸素排除性組成物中に各バインダーを組み込んだ。次いで、タイベック(Tyvek)(登録商標)2FS(本願特許出願人)またはマイラー(Mylar)(登録商標)300D(本願特許出願人)表面のいずれかに、75番線巻ロッドを使用して、酸素排除性組成物をドローダウンした。すべての酸素排除性組成物をゆっくりとした窒素パージ下にて、室温の真空オーブン内で酸素排除性組成物を一晩乾燥させた。
【0153】
実施例9に記載のように、各酸素排除システムの酸素排除を決定した。その結果を以下の表9に示す。
【0154】
【表10】

【0155】
(実施例13)
(熱ラミネートされた酸素排除システムの活性)
この実施例では、熱ラミネートされた2つの酸素排除システムの安定性を比較し、一方の酸素排除性組成物は、ラミネート前に乾燥させることによって不活性化し、もう一方は、ラミネートする際に湿っており、活性であった。
【0156】
具体的には、2つの15cmワットマン(Whatman)3MM濾紙片を、4.5mg/mLラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))を含有する1Mアスコルビン酸カルシウムに浸漬した。一方の紙片を60℃で乾燥させ、もう一方を湿ったまま維持した。両方の紙片をヒートシール蓋のフォイル(Appeel(登録商標)、本願特許出願人)と、2FSタイベック(Tyvek)の層との間に置き、次いで圧力下にて90℃で30分間加熱して、シート材料を結合させた。キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサー;ボトル内で湿度100%を得るために水で飽和された吸取り紙;を備えた137mL瓶にそれらを入れることによって、得られた酸素排除システムを酸素排除活性について試験した。初期条件は酸素20.9%および室温であった。
【0157】
乾燥させた紙片は、ピーク酸素排除速度0.26%/時を示し、湿った紙片は、ピーク酸素排除速度わずか0.06%/時であった。
【0158】
(実施例14)
(不活性化酸素排除システムの長期間の安定性)
この実施例では、新たに製造された酸素排除システムの活性と、乾燥させ、11ヶ月間乾燥状態で保存しておいた比較可能な酸素排除システムの活性を比較した。どちらのシステムも、紙に適用された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸ナトリウム)で構成された。
【0159】
ワットマン(Whatman)3MM濾紙片(英国、ケント;1×3インチ)をラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))0.2mgを含有するアスコルビン酸ナトリウムの1M溶液で液滴状でコーティングした。紙片を真空下にて1時間乾燥させ、乾燥剤を含有する密封された箱内で窒素下にて30℃で11ヶ月間保存した。
【0160】
対照の紙片は、ラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))0.2mgを含有するアスコルビン酸ナトリウムの1M溶液で液滴状でコーティングすることによって製造した。その紙片を真空下にて1時間乾燥させた。
【0161】
「保存された紙片」および「対照の紙片」をそれぞれ、湿度100%で空気を含有し、かつキュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた別々の137mL瓶に入れた。120時間後、対照の紙片を有する瓶内のOは1%であり、保存された紙片を有する瓶内のOは3%であった。
【0162】
(実施例15)
(様々な湿度での酸素排除システムの活性化)
この実施例では、不活性化された酸素排除システムの様々な湿度での自己活性化を説明する。各システムは、紙の表面に適用された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸ナトリウム)で構成された。この分析に基づいて、酸素排除の活性化のための湿度閾値を決定することが可能であった。
【0163】
水1mL中のアスコルビン酸ナトリウム198mg、M.thermophilia由来ラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))0.25mgからなる酸素排除性組成物をワットマン(Whatman)3MM濾紙片(英国、ケント)の2.85×4.11cmカードに吸収させた。そのカードを窒素フロー下にて乾燥させ、乾燥したら、硫酸水溶液(17.9%、38.4%、または52.5%)10mLを含有する130mLガラス瓶内部の空の20mLバイアル中に入れた。硫酸溶液の濃度によって、システムの相対湿度(RH)が決定され:17.9%溶液は相対湿度90%をもたらし、38.4%溶液は相対湿度60%をもたらし、52.5%溶液は相対湿度30%をもたらす。
【0164】
キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた瓶をキャップで閉め、室温での酸素濃度(20.9%で開始)を時間の経過にしたがって測定した。以下の表10に示す結果から、68時間後の消費された酸素%が示されている。
【0165】
【表11】

【0166】
「自己活性化」するために、各酸素排除システムに必要な時間の量は相対湿度によって決定された。具体的には、湿度30%では活性化は認められなかったのに対して、相対湿度60%で18時間後、および相対湿度90%で9時間後に、酸素排除が起こり始めた。
【0167】
(実施例16)
(還元体を変化させることによる、活性化時間の調整)
この実施例では、酸素排除性組成物中に使用される特定の還元体に従って、不活性化された酸素排除システムの自己活性化をどのように制御することができるかを示す。
【0168】
(1)脱イオン水(マサチューセッツ州ビルリカのミリポア社(Millipore)、Milli Q system)で調製された50mM MES(pH5.5)中の2.5Mアスコルビン酸ナトリウムおよび5.3mg/mLラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes));または
(2)脱イオン水(Milli Q system)で調製された50mM MES(pH5.5)中の1.25Mアスコルビン酸カルシウムおよび5.3mg/mLラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base);
を含む、2種類の酸素排除性組成物を新たに調製した。
【0169】
酸素排除性組成物(0.75mL)を濾紙片(1インチ×3インチ、ワットマン(Whatman)3MM濾紙片(英国、ケント))上に液滴状で付着させ、乾燥窒素ストリーム中で1時間乾燥させた。各ストリップは、等しい添加量のアスコルベートおよびラッカーゼを含有したが、カチオンの性質および添加量は異なる。
【0170】
紙片の酸素排除性能を試験した。ねじ蓋中に挿入されたキュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた同一の137mL試験用広口瓶中に各紙片を装入することによって試験した。各瓶の底には、ワットマン(Whatman)3MM濾紙の水飽和ディスクが入れられた。4℃に保たれたチャンバ内に瓶をいれ、両方の瓶内の酸素含有率を継続的にモニターした。各瓶内の初期酸素濃度は21%であった。その結果を以下の表11に示す。
【0171】
【表12】

【0172】
(実施例17)
(瓶のキャップライナーにおける酸素排除)
この実施例では、そのシステムが、瓶のキャップサイズの紙表面に適用された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸カルシウム)で構成され、その紙が1L瓶のキャップに取り付けられた酸素排除システムの使用を説明し、瓶をビールで満たして、システムを活性について試験した。
【0173】
具体的には、サザンブロット用の紙(ペンシルバニア州ウェストチェスターのVWRインターナショナル社(VWR International,West Chester,PA))のペニーサイズの直径の濾紙ディスクをシリコーン接着剤で瓶のキャップの内側に貼り付けた。乾燥状態で、その紙は重さ0.217gであり、湿潤状態では、その重量は1.012gであった(したがって、紙の水容量は0.795gであった)。接着剤を硬化させた後、酸素排除性組成物(水中の500mg/mLアスコルビン酸カルシウム4mLおよびデニライト(DeniLite)(登録商標)II base(ノボザイムズ社(Novozymes))300μLを含有する)700μlを紙ディスクに適用した。
【0174】
2つのキュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを窒素中でプレインキュベートした。ビール(750mL)を2つの1L PETソーダ瓶それぞれに注ぎ、静置し、その結果250mLのヘッドスペースが生じた。一方の瓶は、上述の酸素排除システムを含有するキャップで閉め、「対照」の瓶は、普通のキャップで閉めた(キャップをする前に窒素ガスを使用して、各瓶内の大気をO約5%にした)。14日後、酸素排除システムを含有する瓶において、酸素レベルは0%に低下し、対照の瓶では酸素レベルは4.2%であった。
【0175】
(実施例18)
(ジュース用ジャグ(Juice Jug)における酸素排除システム)
この実施例では、そのシステムが、紙表面に適用された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸カルシウム)で構成され、接着剤付き金属キャップシールフィルムに紙が適用され、そのシステムがプラスチック製ジャグ中に挿入される、酸素排除システムの使用を説明する。
【0176】
オレンジジュースが入っている2.84Lプラスチック製ジャグを近所で購入した。ジュースを取り除き、ジャグを水で数回で洗った。ジャグに再び、水2.5Lを補充した。ねじ蓋開口部を通して窒素を流し、ヘッドスペース中に吊るされたO微小電極(MI−730、ニューハンプシャー州ベッドフォード(Bedford,NH)のMicroelectrodes,Inc.)でモニターすることによって、ジャグの蒸気空間中の酸素圧力を固定した。ヘッドスペースを窒素でフラッシングし、6%未満の酸素濃度が得られた。どちらも50mM MES(pH5.5)バッファー、1mM EDTAに溶解して、2mg/mLのラッカーゼ(デニライト(DeniLite)(登録商標)II base、ノボザイムズ社(Novozymes))1.3mL、500mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム(シグマ社(Sigma))8.7mLから、酸素排除性組成物を調製した。混合物10mLをワットマン(Whatman)3MM濾紙(英国、ケント)の20×12.5cmシート上に一滴ずつ均一に塗布した。その紙を真空下にて周囲温度で45分間乾燥させた。ホットメルト接着剤付き金属箔(Appeel(登録商標)1181、本願特許出願人)の正方形の接着剤面に、乾燥させた紙の2つのディスク、それぞれの面積約6.5cmを付けた。箔を使用して開口部を再び密封する前に、両面テープを使用して、紙のディスクを箔の内面に付けた。再密封する前に、紙ディスクを脱イオン水2滴で湿らせた。封止は、箔の裏に加熱プレートを適用することによって行った。
【0177】
PBIダンセンサー・チェックメイト(Dansensor Checkmate)9900装置(ミズーリ州カンザスシティー(Kansas City,MO)のScan American社)を使用して、キャップの底付近のジャグに付けられた接着剤付き隔壁を通して針を挿入することによって、再密封容器のヘッドスペース中の酸素含有率を一定間隔をあけてサンプリングした。ヘッドスペースの酸素分圧に対するスカベンジャーの影響を図2に示す。
【0178】
(実施例19)
(密封真空形成されたパスタ包装体における酸素排除システム)
この実施例では、そのシステムが、紙表面に適用された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼおよびアスコルビン酸カルシウム)で構成され、システムが密封真空形成パスタ包装体中に挿入された、酸素排除システムの使用を説明する。
【0179】
50mM MES(pH5.5)バッファー7mL中のアスコルビン酸ナトリウム3gおよびカワラタケ(T.versicolor)由来ラッカーゼ(ワッカー・ケミー社(Wacker Chemie))0.5mgからなる酸素排除性組成物をワットマン(Whatman)3MM濾紙(英国、ケント)の15×8cmのカードに吸収させた。ヒートシーラーで上部を再密封することによって、空の900mL真空形成パスタ包装体中に紙を密封した。包装体は、キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備え、室温での酸素濃度を時間の経過にしたがって測定した。酸素濃度は初期値20.9%から下がり、40時間後の0%で安定した。
【0180】
(実施例20)
(サッシェの形態をとる酸素排除システム)
この実施例では、そのシステムが、紙表面に適用された酸素排除性組成物(つまり、ラッカーゼ、アスコルビン酸ナトリウムおよびフルクトース)で構成され、かつ組成物がサッシェ中に挿入された、酸素排除システムの使用を説明する。
【0181】
粘土顆粒上のラッカーゼ(1g)を乳鉢および乳棒で粉砕し、次いでアスコルビン酸ナトリウム3gおよびフルクトース1gと合わせ、さらに粉砕することによって均質に混合した。混合物を2.54×7.6cmのタイベック(Tyvek)(登録商標)(本願特許出願人)パウチ内に入れ、ウッドバーナーで密封した。アスコルベート3gおよびフルクトース1gを含有する対照混合物を同様に粉砕し、タイベック(Tyvek)(登録商標)パウチに入れた。キュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた125mL広口瓶にパウチを入れた。広口瓶の底部に水で飽和させた吸取り紙の2.54cm正方形を置くことによって、スカベンジングを活性化する湿度を得た。室温酸素濃度を72時間後に測定した。対照は、20.9%から18%への酸素の減少を示し、酸素排除システムは20.9%から1.5%への減少を示した。
【0182】
(実施例21)
(アスコルビン酸塩オキシダーゼで製造された酸素排除システムの高湿度での活性化)
この実施例では、不活性化された酸素排除システムの自己活性化を説明し、そのシステムは、紙表面に適用された酸素排除性組成物(つまり、アスコルビン酸塩オキシダーゼおよびアスコルビン酸カルシウム)で構成された。
【0183】
酸素排除性組成物を含有する溶液を以下のように調製した:アスコルビン酸塩オキシダーゼ(60単位/mg、商品番号70−6071−01、マサチューセッツ州ケンブリッジのジェンザイムダイアグノスティックス社(Genzyme Diagnostics,Cambridge,MA))を最終濃度4.5mg/mLとなるように、アスコルビン酸カルシウムの1M溶液に添加した。ワットマン(Whatman)3MM濾紙片(英国、ケント;0.75×2.5インチ)を酸素排除性組成物中に浸漬し、次いで室温の窒素ストリーム下にて乾燥させた。
【0184】
湿度100%で空気を含有し、かつキュービットシステム(Qubit Systems)(オンタリオ州キングストン)気相Oセンサーを備えた137mL瓶に、乾燥させた紙片を入れた。最初の5時間の間、酸素は除去されなかった。活性化は6時間で始まり、反応が進み、酸素が除去され、24時間後に最終濃度16.3%になった。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明の酸素排除システムを含むラベル構造を示す概略図である。
【図2】ヘッドスペースの酸素分圧に対するスカベンジャーの効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)有効量のラッカーゼ酵素と、
ii)有効量の還元性基質と
を含む酸素排除性組成物と、
b)酸素透過性の機能的バリアと
を含むことを特徴とする酸素排除システム。
【請求項2】
前記ラッカーゼが不活性状態であることを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システム。
【請求項3】
前記ラッカーゼが、乾燥および凍結からなる群から選択される方法によって不活性化されることを特徴とする請求項2に記載の酸素排除システム。
【請求項4】
前記ラッカーゼが、真菌から単離されることを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システム。
【請求項5】
前記ラッカーゼが、カワラタケ(Trametes versicolor)、Myceliophthora thermophilia、Stachybotrys chartarum、Coriolus versicolorおよびアラゲカワラタケ(Coriolus hirsutus)からなる群から選択される真菌類から単離されることを特徴とする請求項4に記載の酸素排除システム。
【請求項6】
前記ラッカーゼが、組換えにより作製されることを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システム。
【請求項7】
前記還元性基質が、ブチル化ヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、シリンガルダジン、2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート)、アスコルビン酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、エトキシキン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システム。
【請求項8】
前記還元性基質が、アスコルビン酸ナトリウムとアスコルビン酸カルシウムとの組み合わせ、およびアスコルビン酸ナトリウムとアスコルビン酸との組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の酸素排除システム。
【請求項9】
前記還元性基質を凍結または乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システム。
【請求項10】
前記還元性基質が、水溶性または脂溶性であることを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システム。
【請求項11】
前記システムが、任意選択的に、ポリマーバインダー、バッファー、吸湿剤および不活性充填剤からなる群から選択される物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システム。
【請求項12】
前記バインダーが、ネオプレン、スチレンブタジエンゴム、サーリン(Surlyn)(登録商標)、酢酸ビニルエチレンコポリマー、天然ゴムの分散液、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびダイズタンパク質の溶液からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の酸素排除システム。
【請求項13】
前記吸湿剤が、フルクトース、シリカゲル、ポリビニルアルコール、アスコルビン酸塩および金属塩からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の酸素排除システム。
【請求項14】
前記機能的バリアが固体物質であることを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システム。
【請求項15】
前記機能的バリアが気体物質であることを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システム。
【請求項16】
前記固体機能的バリアがポリマー材料であることを特徴とする請求項14に記載の酸素排除システム。
【請求項17】
前記気体機能的バリアが空気であることを特徴とする請求項15に記載の酸素排除システム。
【請求項18】
前記機能的バリアが、フィルムおよびマトリックスからなる群から選択される形態であることを特徴とする請求項14に記載の酸素排除システム。
【請求項19】
前記ポリマー材料が、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、テレフタレート、ナイロン(Nylon)6(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ネオプレン(Neoprene)(登録商標)、テフロン(Teflon)(登録商標)、ポリ4−メチルペンテン−1およびポリジメチルシロキサンからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の酸素排除システム。
【請求項20】
前記充填剤が、微顆粒セルロース、粉末分子ふるい、カーボンブラック、グラファイト、粘土、木材パルプおよび活性炭からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の酸素排除システム。
【請求項21】
a)木材パルプ濾紙、ガラス繊維濾紙、板紙、織布、不織布、ポリマーフィルムおよびラベル紙、ポリマー材料、マット、カード、ディスク、スポンジ、ポリマーフォームからなる群から選択される材料と、
b)請求項1に記載の酸素排除システムを含むマトリックスと
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項22】
前記酸素排除システムが、均一な組成物、二成分システム、または別々の層として前記材料に適用されることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
酸素排除システムが、線巻コーティングロッド、回転スクリーン印刷、フレキソ印刷、吹付け塗布、ブロッティング(blotting)、浸し塗り、コーティングおよびインクジェット印刷による塗布からなる群から選択される方法によって前記材料に適用されることを特徴とする請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
請求項1に記載の酸素排除システムを含むことを特徴とするインク。
【請求項25】
請求項1に記載の酸素排除システムを含むことを特徴とする密封容器。
【請求項26】
前記容器内に挿入物を含み、その挿入物が請求項1に記載の酸素排除システムを含むことを特徴とする請求項25に記載の密封容器。
【請求項27】
前記挿入物が、ライナー、カード、サッシェ、パウチ、封筒、キャニスター、バイアル、小包、ラベル、パッチ、転写紙(decal)、ガスケット、蓋、キャップ、コルクおよび栓からなる群から選択される形をとることを特徴とする請求項26に記載の密封容器。
【請求項28】
請求項1に記載の酸素排除システムを含み、かつ図1に示す構造を有することを特徴とするラベル。
【請求項29】
前記酸素排除システムが、前記容器の壁中に直接組み込まれることを特徴とする請求項1に記載の酸素排除システムを含む密封容器。
【請求項30】
前記酸素排除システムが、ラミネートフィルム、コートフィルム、積層板紙、および押出し被覆板紙からなる群から選択される材料中に含まれることを特徴とする請求項29に記載の密封容器。
【請求項31】
前記酸素排除性組成物が、ポリマーマトリックス中に含まれることを特徴とする請求項30に記載の密封容器。
【請求項32】
前記ポリマーマトリックスが、分散液、ラテックス、エマルジョン、プラスチゾル、ドライブレンド、および溶液からなる群から選択される形態であることを特徴とする請求項31に記載の酸素排除システム。
【請求項33】
a)内容物を有する密封容器を提供する段階と、
b)i)1)有効量のラッカーゼ酵素と、
2)有効量の還元性基質と
を含む酸素排除性組成物と、
ii)酸素透過性の機能的バリアと
を含む酸素排除システムを提供する段階であって、前記機能的バリアが、前記容器の前記内容物を前記酸素排除システムから隔離する役割を果たす段階と、
c)前記密封容器の内容物と前記酸素排除システムを接触させて、それによって酸素が前記密封容器から除去される段階と
を含むことを特徴とする密封容器から酸素を除去する方法。
【請求項34】
前記内容物が、食品、飲料品、電子部品、化粧品およびパーソナルケア製品、および医薬品からなる群から選択されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記酸素排除システムが不活性状態で提供され、前記内容物を接触させると同時に活性化されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記酸素排除システムが不活性状態で提供され、前記内容物と接触した後に活性化されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記酸素排除システムが、乾燥および凍結からなる群から選択される方法によって不活性化されることを特徴とする請求項35または36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記の不活性化された酸素排除性組成物が、液体の水との接触、解凍および水蒸気の吸着からなる群から選択される方法によって活性化されることを特徴とする請求項35または36のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記還元性基質が、ブチル化ヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、シリンガルダジン、2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート)、アスコルビン酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、エトキシキン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記還元性基質が、アスコルビン酸ナトリウムとアスコルビン酸カルシウムとの組み合わせであることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記還元性基質を凍結または乾燥させることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記還元性基質が、水溶性または脂溶性であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記酸素排除システムが任意選択的に、ポリマーバインダー、バッファー、吸湿剤および充填剤からなる群から選択される物質を含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記バインダーが、ネオプレン、スチレンブタジエンゴム、サーリン(Surlyn)(登録商標)、酢酸ビニルエチレンコポリマー、天然ゴムの分散液、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびダイズタンパク質の溶液からなる群から選択されることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記吸湿剤が、フルクトース、シリカゲル、ポリビニルアルコール、アスコルビン酸塩および金属塩からなる群から選択されることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記機能的バリアが固体物質であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項47】
前記機能的バリアが気体物質であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記固体機能的バリアがポリマー材料であることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記気体機能的バリアが空気であることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記機能的バリアが、フィルムおよびマトリックスからなる群から選択される形態であることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記ポリマー材料が、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、テレフタレート、ナイロン(Nylon)6(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ネオプレン(Neoprene)(登録商標)、テフロン(Teflon)(登録商標)、ポリ4−メチルペンテン−1およびポリジメチルシロキサンからなる群から選択されることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記充填剤が、微顆粒セルロース、粉末分子ふるい、カーボンブラック、グラファイト、粘土、木材パルプおよび活性炭からなる群から選択されることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項53】
前記酸素排除システムが、木材パルプ濾紙、ガラス繊維濾紙、板紙、織布、ポリマー材料、マット、カード、ディスク、スポンジ、ポリマーフォームおよびマトリックスからなる群から選択される材料中に含まれることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項54】
前記酸素排除性組成物が、均一な組成物、二成分システム、または別々の層として前記材料に適用されることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記酸素排除性組成物が、線巻コーティングロッド、回転スクリーン印刷、フレキソ印刷、吹付け塗布、ブロッティング(blotting)、浸し塗り、コーティングおよびインクジェット印刷による塗布からなる群から選択される方法によって前記材料に適用されることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記酸素排除性組成物が、前記密封容器の壁中に含まれることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項57】
前記酸素排除性組成物が、前記密封容器内の挿入物中に含まれることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項58】
前記挿入物が、ライナー、カード、サッシェ、パウチ、封筒、キャニスター、バイアル、小包、ラベル、パッチ、転写紙(decal)、ガスケット、蓋、キャップ、コルクおよび栓からなる群から選択される形をとることを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
a)i)有効量のアスコルビン酸塩オキシダーゼ酵素と、
ii)有効量の還元性基質と
を含む酸素排除性組成物と、
b)酸素透過性の機能的バリアと
を含む酸素排除システムであって、前記アスコルビン酸塩オキシダーゼが不活性状態であり、その不活性化された酸素排除性組成物が、解凍および水蒸気の吸着からなる群から選択される方法によって活性化されることを特徴とする酸素排除システム。
【請求項60】
前記アスコルビン酸塩オキシダーゼ酵素が、植物および真菌からなる群から選択される生物から単離されることを特徴とする請求項59に記載の酸素排除システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−508132(P2007−508132A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534227(P2006−534227)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032628
【国際公開番号】WO2005/033676
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】