説明

酸素消費電極の製造方法

【課題】
比較的広い面積および比較的多いアイテムの数について連続的に操作することができ、既知の製造方法の上記欠点を有さない、特にクロルアルカリ電気分解に用いるための酸素消費電極の製造方法、および該方法、特に非粘着性剤の複雑な使用により製造された電極を見出すこと。
【解決手段】
圧縮およびプレスを、プレスローラーがタングステンカーバイドで被覆された、0.5μm以下の表面粗さを有するローラープレスを用いて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体要素上での触媒組成物の圧縮のための特定のローラーの使用による、特にクロルアルカリ電気分解に用いるための酸素消費電極の製造方法に関する。さらに、本発明は、クロルアルカリ電気分解または燃料電池技術において、上記方法により製造される酸素消費電極の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ガス拡散電極として構成され、通常、導電性支持体および触媒活性成分を含有するガス拡散層を含む、それ自体既知の酸素消費電極に由来する。
【0003】
工業規模の電気分解セル中における酸素消費電極を操作するための種々の提案が、先行技術から原理上知られている。基本的な考えは、電気分解(例えばクロルアルカリ電気分解中)の水素発生カソードを、酸素消費電極(カソード)に置き換えることである。可能なセル設計および溶液の概説は、Moussallem等による出版物「Chlor−Alkali Electrolysis with Oxygen Depolarized Cathodes: History, Present Status and Future Prospects」、J.Appl.Electrochem、第38巻、(2008年)、第1177〜1194頁に見出し得る。
【0004】
酸素消費電極(以下、略して、OCEとも称する)は、工業的電気分解槽において使用可能であるために一連の要件を充足しなければならない。従って、触媒および用いる全ての他の材料が、約32重量%の濃度を有する水酸化ナトリウム溶液および典型的には80〜90℃の温度において純酸素に、化学的に安定性でなければならない。また、電極は、通常、2m(工業規模)を越える面積の大きさを有する電気分解槽中に設置および操作されるので、高度の機械的安定性が要求される。更なる特性は、以下の通りである:高い電気伝導性、小さい層厚み、大きい内部表面積および電気分解触媒の高い電気化学活性。また、適当な疎水性および親水性細孔およびガスおよび電気分解液の伝導のための適切な細孔構造も必要であり、これは、ガス空間および液体空間が、互いに分離された状態を維持するように不浸透性である。長期安定性および低い製造コストは、工業的に使用可能な酸素消費電極が満たさなければならない更なる特定の要件である。
【0005】
酸素消費電極を製造するための好ましい方法は、DE3710168A1に記載されている。該方法では、触媒およびポリマー成分の混合物は、微細粒子へ粉砕される。次いで、粉末混合物は、圧縮されてシート状構造を形成し、次いで該シート状構造は、導電性支持体要素へプレスすることにより適用される。
【0006】
粒子のシート状構造への圧縮およびシート状構造の担体要素へのプレスは、例えばローラープレスにより、またはカレンダーにより行われる。
【0007】
DE10148599A1は、安定性シート状構造を形成する触媒およびポリマーの圧縮のための一連の特定の条件を記載する:
粉末混合物のための圧延工程中のローラーギャップは、0.2N/cm〜15N/cmの範囲のローラーの閉鎖力で一定に維持することができ、
ローラーの表面粗さは、0.05〜1.5μmであってよく、
圧延工程中のローラーの周速は、0.05〜15m/分であってよく、
ローラー直径は、15kN/cmまでの閉鎖力において30cmまでであってよく、
設定されるローラーギャップは、0.005〜0.45mmであってよく、
ローラーは冷却可能であってよい。
【0008】
DE10148599A1の教示によれば、30〜40cmの幅および2〜3mの長さを有する酸素消費電極を上記方法により製造することができる。
【0009】
EP1728896A2は、触媒およびポリマー成分の粉砕混合物が導電性担体要素へ直接適用され、次いで担体要素と共にプレスされる他の方法を開示する。
【0010】
プレス中の力は、この場合、0.01〜7kN/cmの範囲で可能な限り低く維持されるべきである。EP1728896A2は、記載のローラーを用いる製造方法が、プレスするために用いるローラーの材料、表面粗さおよび直径から独立していることを示す。
【0011】
ローラーを用いる製造方法を提供する上記の既知の方法の欠点は、圧縮触媒層がローラーの表面へ容易に付着することである。その結果、圧延工程は、比較的頻繁に中断されなければならない。ローラーは、新規な金属含有触媒混合物の付着が解消される必要があり、欠陥電極は選別される必要があり、選別された電極の有益な被覆物は、複雑な方法で再生される必要がある。
【0012】
上記欠陥は、実験室設備における小さい規模でのわずかな電極の製造についてある程度許容される。しかしながら、頻繁な中断および高い不良率を伴う上記方法は、工業規模での広い面積の電極の製造について全く不適当である。
【0013】
DE10157521A1は、プレスローラー上での触媒組成物の付着は、特定の有機化合物でのローラーの処理により、ある程度防ぐことができることを開示する。この文献によれば、物質でのローラー表面の処理により、40cmの幅および2mの長さを有する酸素消費電極を製造することが可能となる。
【0014】
しかしながら、40cmを大きく越える幅を有する電極が工業規模でのOCEの製造に要求される。典型的には1メートルを超える幅、ときには2メートルまでの幅を有する電極が、従来法による膜電気分解について従来使用される。被覆物の長さは、可能な限り製造方法により限定されるべきではない。
【0015】
DE10157521A1に記載の方法は、連続製造方法について非常に複雑であることが見出された。プレス操作は、液体でのローラーの処理のために絶えず中断する必要があり、ローラーは、有機液体で洗浄および乾燥する必要がある。周囲空気は、有機成分の蒸発により汚染され、その結果、特別な抽出および空気清浄設備がまた必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第3710168号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10148599号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1728896号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10157521号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Moussallem、「Chlor−Alkali Electrolysis with Oxygen Depolarized Cathodes: History, Present Status and Future Prospects」、J.Appl.Electrochem、第38巻、2008年、第1177〜1194頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、比較的広い面積および多くの数の品目について連続的に操作することができ、既知の製造方法、および該方法により、特に非粘着性剤の複雑な使用により製造された電極の上記欠点を有さない、特にクロルアルカリ電気分解に用いるための酸素消費電極の製造方法を見出すことである。
【0019】
本発明の実施態様の特定の目的は、材料のプレスロールへの付着により中断せずに操作することができ、これにより>1.5mの幅を有する電極を連続法により製造することができる、触媒組成物をプレスするための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的は、圧縮およびプレスを、プレスローラーがタングステンカーバイドで被覆され、0.5μm以下の表面粗さを有するローラープレスを用いて行うことにより達成される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施態様は、
a)バインダーとしての少なくとも1つのポリマーおよび触媒活性成分からなる粉末混合物を製造する工程、
b)粉末混合物を、導電性シート状担体要素へ適用する工程、および
c)粉末混合物を、担体要素上でローラーを用いて圧縮しおよび強固にする工程
を含み、圧縮行程c)に用いるローラーはタングステンカーバイドの表面被覆物を含み、およびローラー表面は0.5μm以下の粗さを有する、酸素消費電極の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の他の実施態様は、少なくとも1つのポリマーがフッ素化ポリマーを含む、上記方法である。
【0023】
本発明の他の実施態様は、少なくとも1つのポリマーがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、上記方法である。
【0024】
本発明の他の実施態様は、ローラー表面が、0.1〜0.35μmの粗さを有する、上記方法である。
【0025】
本発明の他の実施態様は、粉末混合物の圧縮c)を、2.5:1〜6:1の圧縮比で行う、上記方法である。
【0026】
本発明の他の実施態様は、粉末混合物の圧縮c)を、3:1〜4:1の圧縮比で行う、上記方法である。
【0027】
本発明の他の実施態様は、圧縮工程c)が、互いに重なりあって設置される少なくとも1組のローラーを用いる工程を含む、上記方法である。
【0028】
本発明の他の実施態様は、両方のローラーをモーターにより駆動させる、上記方法である。
【0029】
本発明の他の実施態様は、圧縮行程c)が上部ローラーおよび下部ローラーを含む少なくとも1組のローラーを用いる工程を含み、上部ローラーを下部ローラーの上に設置し、上部ローラーを、圧縮比を設定するために下部ローラーに対して移動することができるように取り付ける、上記方法である。
【0030】
本発明の他の実施態様は、粉末材料および担体要素上で圧縮行程c)の間に働く直線力が、0.2〜2kN/cmである、上記方法である。
【0031】
本発明の他の実施態様は、触媒活性成分が銀、酸化銀(I)または酸化銀(II)または銀粉末の混合物および酸化銀粉末を含む、上記方法である。
【0032】
本発明の他の実施態様は、粉末混合物は、70〜95重量%の酸化銀(I)、0〜15重量%の銀金属粉末および3〜15重量%のフッ素化ポリマーを含む、上記方法である。
【0033】
本発明の他の実施態様は、担体要素が柔軟編織布構造を含む、上記方法である。
【0034】
本発明の他の実施態様は、担体要素が、金属糸を含む柔軟編織布構造を含み、ニッケルおよび銀被覆ニッケルを更に含む、上記方法である。
【0035】
本発明の他の実施態様は、ローラー間のギャップを、力の下で0.2〜0.8mmであるように設定する、上記方法である。
【0036】
本発明の他の実施態様は、ローラーの周速が、圧縮行程c)の間、0.1〜20m/分である、上記方法である。
【0037】
本発明の他の実施態様は、ローラーの周速が、圧縮行程c)の間、1〜15m/分である、上記方法である。
【0038】
本発明の更なる他の実施態様は、上記方法により製造された電極を含む金属/空気電池または燃料電池である。
【0039】
本発明の更なる他の実施態様は、上記方法により得られた酸素消費電極である。
【0040】
本発明の更なる他の実施態様は、上記方法により製造された酸素消費電極を酸素消費カソードとして含む電気分解装置である。
【0041】
本明細書において、単数形の用語「1つの(a)」および「その(the)」は、言葉および/または内容が特に示さない限り同義であって、「1以上の(one or more)」および「少なくとも1つの(at least one)」と互換的に使用する。従って、例えば、本明細書または添付の特許請求の範囲において「1つの触媒活性成分(a catalytically active component)」と称することは、1つの触媒活性成分または1以上の触媒活性成分を指称し得る。さらに、全ての数値は、特記のない限り、用語「約」により修飾されるものと理解される。
【0042】
本発明の実施態様は、以下の工程:
a)バインダーとしての少なくとも1つのポリマー、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および触媒活性成分、好ましくは触媒活性物質として酸化銀および/または銀を含む成分からなる粉末混合物の製造工程、
b)粉末混合物の、導電性シート状担体要素への適用工程、
c)粉末混合物の、担体要素上でのローラーによる圧縮および圧密工程
を含み、圧縮行程c)に用いる圧縮ローラーは、タングステンカーバイドの表面被覆物を有し、および0.5μm以下、特に好ましくは0.1〜0.35μmのローラー表面の粗さを有することを特徴とする、酸素消費電極の製造方法を提供する。
【0043】
粉末混合物は、少なくとも触媒およびバインダーを含む。触媒として、好ましいのは、銀、酸化銀(I)または酸化銀(II)またはこれらの混合物を用いることである。バインダーは、ポリマー、好ましくはフッ素化ポリマー、特に好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。特に好ましいのは、70〜95重量%の酸化銀(I)、0〜15重量%の銀金属粉末および3〜15重量%のフッ素化ポリマー、特にPTFEを含有する粉末混合物を用いることである。
【0044】
担体要素は、特に、メッシュ、不織布、フォーム、織布、組み紐、編物、エキスパンドメタルまたは他の透過性シート状構造の形態で用いることができる。好ましいのは、柔軟編織布構造、特に金属糸から作られた柔軟編織布構造である。ニッケルおよび銀被覆ニッケルは、担体要素のための物質として特に適当である。
【0045】
粉末混合物の担体要素への調製および適用は、好ましい実施態様では、EP1728896A2に記載の方法と類似した方法で行う。
【0046】
タングステンカーバイドで被覆されたローラーは、意外にも、粉末混合物のローラーへの付着を生じさせずに、粉末で被覆された担体を十分に圧伸する。粉末組成物の均一安定性被覆物が担体要素上で得られる。
【0047】
タングステンカーバイドで被覆されたローラーは、特に、酸素消費電極の製造に好ましく用いられるPTFEの粉末混合物および銀酸化物および銀の混合物が付着する低い傾向を示す。しかしながら、付着力は、粉末混合物のローラーギャップへの良好な引き込みおよび圧縮粉末混合物の輸送を確保するのに十分である。さらに、タングステンカーバイドの硬度は、存在する任意の比較的粗い粒子(例えば酸化銀の)により損傷を受けないローラーについて十分高い。粗い酸化銀粒子は、ローラーの圧力によって、より小さい断片へと粉砕される。
【0048】
典型的にステンレス鋼から作られるローラーの被覆物は、好ましくは、フレーム容射法により、特に好ましくはプラズマ溶射法により行う。被覆物は、好ましくは、誘導的に硬化する。好ましく用いるローラーの硬度は、好ましくは、少なくとも70ロックウェルである。
【0049】
ローラーは、Ra≦0.5μm、好ましくはRa≦0.35μm、特に好ましくはRa=0.1〜0.35μmのDIN EN ISO 4287による表面粗さを有する。より大きい粗さは、電極の性能を損ない得る不均一性を電極表面上にもたらす。Ra=0.1μmよりかなり小さい粗さにおける更なる減少は、更なる優位性を電極の品質にもたらさないが、Ra=0.1μmより下の粗さの場合には、ローラーの製造および研磨についての費用が過度に増加する。
【0050】
触媒組成物の担体要素上での圧縮は、少なくとも1組のローラーからの単一パス中で行う。ここで、好ましくは、タングステンカーバイド被覆設計を、いずれのローラーについても選択する。触媒層が導電性担体要素の片側のみに存在する電極の場合には、触媒層に面する少なくとも1つのローラーだけを、タングステンカーバイドで被覆することで十分である。
【0051】
好ましい方法では、ローラーはいずれも、同一の回転の速度で積極的に駆動する。しかしながら、ローラーの1つだけを駆動し、および第2ローラーはそれ自体駆動させずに同時に動かす配置も可能である。
【0052】
しかしながら、粉末材料の圧縮c)は、原則として、本質的に平らな基材上で働く1つだけのローラーを用いて、基材またはローラーのいずれかを動かせながら行うことも可能である。
【0053】
連続法の使用は、比較的多くの電極の製造に好ましい。
【0054】
このような方法は、好ましくは、カレンダーを用いる連続被覆およびプレスを含む。特に好ましいのは、担体要素を、例えばロールから連続的に供給し、次いで、被覆物単位へ連続的に圧伸し、次いで電極粉末混合物と共にプレスする方法である。
【0055】
次いで、電極を、適当な寸法へ切断するかまたは後に切断するために巻き取ることができる。このようなシート状構造を、本明細書に記載の導電性担体の好ましい直接被覆を伴わずに製造するための連続手順は、原理上、文献DE10130441B4に概説される。
【0056】
より少ない数の品目のために、複数の電極を被覆およびプレスする少なくとも半連続法が求められる。
【0057】
組み立てられた状態でのローラーの丸みの精度は、好ましくは±0.001mm以下の偏差を有する。
【0058】
粉末材料および担体要素上で圧縮工程c)の間に働く直線力は、好ましくは0.2〜2kN/cmである。
【0059】
ローラーギャップは、好ましくは、力の下で0.2〜0.8mmとなるように設定する。
【0060】
ローラー速度(=ローラーの周速)は、圧縮工程c)の間、好ましくは0.1〜20m/分、特に好ましくは1〜15m/分である。
【0061】
2m以上までのローラー幅が可能である。ローラーは、好ましくは、加熱/冷却回路へ接続することができるように設計する。これにより、例えば、粉末混合物上での温度応力を制限することが可能となる。圧縮は、例えばPTFE/銀/酸化銀混合物を極めて容易に加工することができる80℃以下、好ましくは55℃以下、特に好ましくは30℃以下のローラーの温度にて好ましく行う。
【0062】
触媒組成物は、2.5:1〜6:1、好ましくは3:1〜4:1の圧縮比へ圧縮する。これは、3:1の比では、担体要素へ適用する触媒活性成分およびポリマーバインダーの混合物を、元の床の高さの3分の1へ圧縮することを意味する。
【0063】
新規な方法により製造される酸素消費電極は、好ましくはカソードとして、特にアルカリ金属塩化物、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、特に好ましくは塩化ナトリウムの電気分解のための電気分解セルにおいて接続する。
【0064】
あるいは、新規な方法により製造された酸素消費電極は、好ましくは、カソードとして燃料電池において接続することができる。
【0065】
従って、本発明の他の実施態様は、アルカリ性媒体において、特にアルカリ性燃料電池において酸素の還元のための新規な方法により製造された酸素消費電極の使用、幹線水処理における、例えば次亜塩素酸ナトリウムの製造のための使用、またはクロルアルカリ電気分解における、特にLiCl、KClまたはNaClの電気分解のための使用を更に提供する。
【0066】
新規な方法により製造された新規な酸素消費電極を、クロルアルカリ電気分解に、ここでは特に塩化ナトリウム(NaCl)の電気分解に、特に好ましく用いる。
【0067】
本発明の実施態様を、以下、例により図を用いて、本発明を決して制限することなく説明する。
【実施例】
【0068】
実施例1
7重量%のPTFE粉末、88重量%の酸化銀(I)および5重量%のFerroからの銀粉末型331からなる3.5kgの粉末混合物を、混合要素として星形インペラを有するEirichからの混合器、型R02中で、6000rpmの回転速度において、粉末混合物の温度が55℃を越えないように混合した。これは、混合操作を中断し、混合物を冷たい部屋において冷却することにより行った。混合は、合計3回行った。混合後、粉末混合物を、1.0のメッシュ開口を有する微細なふるいによりふるい分けした。
【0069】
次いで、ふるい分けした粉末混合物を、0.25mmのワイヤー厚みおよび0.5mmのメッシュ開口を有する銀めっきニッケルワイヤーのメッシュへ適用した。面積は25×30cmであった。適用は、2mm厚テンプレートを用いて、粉末を1mmのメッシュ開口を有するふるいにより適用しながら行った。テンプレートの厚みを越えて突出した過剰の粉末は、スクレーパーを用いて除去した。
【0070】
テンプレートの除去後、適用した粉末混合物を有する担体を、13cmの直径を有する2つの滑らかなクロムめっきローラーからなるローラープレスへ導入した。供給速度は、140cm/分であり、プレス力は、0.45kN/cmであった。電極は、プレス後、0.5mmの厚みを有した。
【0071】
上部ローラーは、触媒組成物の付着を示し、これは、幾つかの場所において、下部ローラー上においても起こった。電極は、幾つかの場所において、特に上部(被覆)側上で、十分に被覆されずに欠陥を有した。電極は、電気分解に使用することができなかった。
【0072】
実施例2
ワイヤーメッシュを、実施例1と同じ粉末混合物で処理した。
【0073】
適用した粉末混合物を有する担体を、13cmの直径を有する2つの鋼ローラーからなるローラープレスへ設置した。ローラーは、フレーム容射法によりタングステンカーバイドで被覆し、Ra=0.25μmの表面粗さ(DIN EN ISO 4287に従って計測)へ研磨した。ローラー中への供給比は、140cm/分であり、プレス力は、0.45kN/cmであり、電極は、0.52mmの厚みへ圧縮した。
【0074】
上部ローラーも下部ローラーも、触媒組成物の付着を示さなかった。電極は、欠陥を有さず、およびすぐに使えるものであった。
【0075】
広範な本発明の概念から逸脱することなく、上記の実施形態に対して変更を加えることができることは当業者に理解される。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲により定義されるような本発明の精神および範囲内での変更に及ぶことが意図されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素消費電極の製造方法であって、
a)バインダーとしての少なくとも1つのポリマーおよび触媒活性成分からなる粉末混合物を製造する工程、
b)粉末混合物を、導電性シート状担体要素へ適用する工程、および
c)粉末混合物を、担体要素上でローラーを用いて圧縮しおよび強固にする工程
を含み、圧縮行程c)に用いるローラーは、タングステンカーバイドの表面被覆物を含み、およびローラー表面は、0.5μm以下の粗さを有する、方法。
【請求項2】
少なくとも1つのポリマーは、フッ素化ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ローラー表面は、0.1〜0.35μmの粗さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
粉末混合物の圧縮c)を、2.5:1〜6:1の圧縮比で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
粉末混合物の圧縮c)を、3:1〜4:1の圧縮比で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
圧縮工程c)は、互いに重なり合って設置される少なくとも1組のローラーを用いる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ローラーはいずれも、モーターにより駆動させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
圧縮行程c)は、上部ローラーおよび下部ローラーを含む少なくとも1組のローラーを用いる工程を含み、上部ローラーを下部ローラーの上に設置し、上部ローラーを、圧縮比を設定するために下部ローラーに対して移動することができるように取り付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
粉末材料および担体要素上で圧縮行程c)の間に働く直線力は、0.2〜2kN/cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
触媒活性成分は、銀、酸化銀(I)または酸化銀(II)または銀粉末の混合物および酸化銀粉末を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
粉末混合物は、70〜95重量%の酸化銀(I)、0〜15重量%の銀金属粉末および3〜15重量%のフッ素化ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
担体要素は、柔軟編織布構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
担体要素は、金属糸を含む柔軟編織布構造を含み、ニッケルおよび/または銀被覆ニッケルを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ローラー間のギャップを、力の下で0.2〜0.8mmとなるように設定する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
圧縮行程c)の間でのローラーの周速は、0.1〜20m/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
圧縮行程c)の間でのローラーの周速は、1〜15m/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法により製造された電極を含む金属/空気電池または燃料電池。
【請求項19】
請求項1に記載の方法から得られた酸素消費電極。
【請求項20】
請求項1に記載の方法により製造された酸素消費電極を酸素消費カソードとして含む電気分解装置。

【公開番号】特開2012−188757(P2012−188757A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−53500(P2012−53500)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】