酸素測定信号を用いるチェーンストークス呼吸パターンの識別
方法及び装置が、酸素測定法等の血液ガス測定に基づいたチェーンストークス呼吸(「CSR」)検出を提供する。いくつかの実施形態では、処理された酸素測定信号から取得されるエポックにおいて発生する飽和度変化又は再飽和の連続期間の平均持続時間等の持続時間が求められる。CRSの発生を、持続時間と、CSR呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値と、の比較から検出することができる。閾値は、自動訓練方法によって分類器として導出される判別関数とすることができる。判別関数を、酸素測定データの周波数解析に基づきCSRに対するエポックを特徴付けるように更に実施することができる。判別関数からの距離を利用して、CSR検出の確率値を生成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年4月20日に出願された米国仮特許出願第61/170,734号の出願日の利益を主張し、その出願の開示内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本技術は、臨床判断支援ツールとして用いられる生理学的信号に対して定量的尺度を与えることによる呼吸異常の識別に関する。特に、本技術は、任意選択で流量信号と併用することもできる酸素測定(oximetry:オキシメトリ)信号の解析による、チェーンストークス呼吸(「CSR」)の識別に関する。本技術はまた、CSR識別のために確率値を提供することができる分類器の訓練にも関連することができる。本技術はまた、CSRに関連して認識可能なアーティファクトを除去することにより、酸素測定信号の読取りを改善する技法にも関連することができる。
【背景技術】
【0003】
CSRの診断は、通常、睡眠検査を行うこと、及びその結果得られる睡眠ポリグラフ(「PSG」)データを解析することを含む。完全診断PSG検査において、通常、鼻腔内流量(nasal flow)信号、呼吸努力の尺度、パルスオキシメトリ、睡眠時姿勢を含み、かつ脳波記録(「EEG」)、心電図記録(「ECG」)、筋電図記録(「EMG」)及び眼電図記録(「EOG」)を含むこともできる、さまざまな生物学的データが監視される。呼吸特性はまた、視覚的特徴からも識別され、したがって、臨床医は睡眠中の呼吸機能を評価し幾分かでもCSRがあることを診断することができる。
【0004】
チェーンストークス呼吸すなわちCSRの期間中、鼻腔内流量信号に、漸増及び漸減する一回換気量のパターンを見ることができ、それは、肺機能の直接の尺度である。この呼吸の不安定な挙動は、周期的変化を見ることができる血中酸素飽和度等、他の心肺パラメータにその存在を広げることが多い。
【0005】
臨床医による診察が最も包括的な方法であるが、これはコストがかかるプロセスであり、臨床経験及び理解に大きく依存する。患者の有効かつ効率的なスクリーニングのために、本発明の譲受人により、鼻腔内流量信号に基づいてCSRの発生する確率を計算することによりスコアリングプロセスを自動化する分類器アルゴリズムが開発された。このアルゴリズムは、2007年3月28日に出願され2006年6月29日に国際公開第2006066337号として公開された米国特許出願第11/576,210号(米国特許出願公開第20080177195号)に開示されている。この既存のアルゴリズムは、一続きの離散的な流量値が与えられるとCSRの確率が計算される、流量に基づく分類器である。流量値の線形化、フィルタリング及び呼吸事象の抽出等の一連の前処理ステップが実行される。
【0006】
分類器の概念は、対象又は対象の潜在する状態を多数のクラスのうちの1つに割り当てることが望ましい多くの分野に共通している。この概念は、例えば、音声認識(音声バイトが種々の語又は音節として分類される)、レーダー検出(視覚信号が敵の標的/味方の標的として分類される)及び医療診断(検査結果を用いて患者の病状が分類される)の分野において用いられる。分類器の設計は、パターン認識の分野に入り、分類器は教師あり型(この分類器は、教師又は「専門家」によって予め分類された訓練データから構築される)か又は教師なし型(データの自然な順序付け又はクラスタリングによって種々のクラスが決まる)とすることができる。時間信号分類は、通常、特定の時点の信号を「特徴」を用いて表すことに依拠する。特徴は、単に、或る時点における信号の本質、すなわち圧縮の形態を抽出する数である。特徴のセット(又はベクトル)は「パターン」と呼ばれる。分類器は、パターンを取得し、このパターンを適切なアルゴリズムを用いて数学的に操作することにより、複数のクラスの各々に対して確率値を生成する。パターンは、最高確率のクラスに割り当てられる。
【0007】
CSRの識別のための代替ツールとして自宅パルスオキシメトリ(home pulse oximetry)が提案されているが、これは、訓練された監視者による酸素測定信号の視覚的検査に頼っている(Staniforth他著、1998, Heart, 79:394-399)。
【0008】
Staniforth他による鬱血性心不全(「CHF」)の104人の被験者の研究(1998, Heart, 79, 394-399)では、正常対照と比較して夜間酸素測定で記録される飽和度低下指数を検査した。モデルにより、CSR−CSAを検出するために81%の特異度及び87%の感度がもたらされた。しかしながら、モデルの全体的な精度は提供されなかった。著者らは、CSR−CSAと閉塞性睡眠時無呼吸(「OSA」)とを区別するためにパルスオキシメトリを用いることができるか否かを判断しようとは試みなかった。米国特許第5,575,285号(Takanashi他)には、散乱し透過した光から血中の酸素飽和度を測定すること、及びフーリエ変換を実行して500Hz〜20kHzの周波数範囲にわたるパワースペクトルを得ることが記載されている。しかしながら、その記載された方法では、CSR患者とOSA患者との間の識別は可能ではない。
【0009】
Grant他に対する米国特許第6,839,581号(PCT出願第WO01/076459号及び米国特許出願公開第2002/0002327号)は、「Method for Detecting Cheyne-Stokes Respiration in Patients with Congestive Heart Failure」と題する。それらは合わせて、一晩の酸素測定記録を行うこと、及び酸素測定記録に対してスペクトル解析を行うことを含む、CSRに対する診断方法を提案している。パワースペクトル解析から導出されるパラメータに基づく分類木又はニューラルネットワークが、CSRの存在又は不在を判断する。
【0010】
Lynnに対する米国特許第6,760,608号は、「Oximetry System for Detecting Ventilation Instability」と題する。この特許には、時系列の酸素飽和値を生成するために用いられるパルスオキシメトリシステムが記載されている。時系列に沿った或るパターンの発生を用いて、換気の不安定性が示される。
【0011】
Lynn他に対する米国特許第7,081,095号は、「Centralized Hospital Monitoring System for Automatically Detecting Upper Airway Instability and for Preventing and Aborting Adverse Drug Reaction」と題する。この特許は、中央集中化病院救命救急システムのコンピュータ化環境におけるOSAの自動診断システムを提案している。
【0012】
Grant他に対する米国特許第7,309,314号は、「Method for Predicting Apnea-Hypopnea Index From Overnight Pulse Oximetry Readings」と題する。この特許は、パルスオキシメトリ読取値を記録し、デルタ指標、酸素飽和持続時間及び酸素測定飽和度低下事象を取得することにより、OSAの診断で用いられる無呼吸低呼吸指数(「AHI」)を予測するツールを提案している。多変量ノンパラメトリック解析及びブートストラップ集約が実行される。
【0013】
Lynnに対する米国特許第7,398,115号は、「Pulse Oximetry Relational Alarm System for Early Recognition of Instability and Catastrophic Occurrences」と題する。この特許に記載されているシステムは、a)脈拍数の低減、又はb)呼吸数の増大のいずれかに連動したO2飽和度の低減を検出することにより、起こり得る突発的発生の早期の認識によってトリガーされる警告を有している。この特許のシステムは、OSAの治療及び検出を目的としている。
【0014】
これらの従来技術によるシステムのいずれも、CSRからOSAを確実に識別するように、かつ、こうした無呼吸識別に対する試みに対して確率値を展開するように、酸素測定データを確実に解釈することはできない。
【発明の概要】
【0015】
本技術は、酸素測定法に基づくCSRの識別を強化する。本技術を、流量に基づく分類器技術システムの検出性能を向上させるために適用することができる。したがって、本技術は、CSRのスクリーニングをよりアクセスし易いものとすることを可能にすることができる。例えば、本技術を、2007年3月28日に出願され2006年6月29日に国際公開第06066337号として公開された米国特許出願第11/576,210号に記載されている検出システムに対する追加の機能として実施することができる。任意選択で、本技術は、単独で、又は流量信号若しくはそこからのデータが利用できないか若しくは品質が好ましくない場合に独立した代替法として作用することもできる。
【0016】
本技術は、現行のスクリーニングプロセスを、概して、患者に対してより快適でありかつ使用が容易であり、医師に対してより管理が容易であり、かつ/又は解析を行うのによりコストがかからないスクリーニングプロセスに置き換えることができる。
【0017】
本技術を、逐次プロセス又はアルゴリズムに関して説明する場合があるが、プロセス又はアルゴリズムを、非線形、非逐次又は非段階的プロセスを用いて実行することができ、又はプロセスの順序を変更することができることを理解することができる。本技術のこの実施形態はプロセス全体について述べるが、本技術の態様は、そのプロセスの一部のみに関連することもできる。
【0018】
酸素測定信号等、呼吸を表す信号を、データ取得システム及びメモリを含むロギングデバイスを用いて患者から記録することができる。呼吸信号を、記録デバイスによってオンボードで又はコンピュータを用いてオフラインで処理することができる。
【0019】
信号を、最初に前処理することができる。例えば、信号をフィルタリングして望ましくないノイズを除去することができ、適切な場合は、ベースラインがゼロにされる。信号を、呼吸を検出するために用いられるトランスデューサーに応じて線形にすることも可能である。特に、本技術は、酸素測定値に特有のアーティファクトを除去し、識別予測における信頼度を求めるために用いることができる酸素測定信号品質指標(QI)を展開するプロセスを含むことができる。
【0020】
別の段階では、信号は、長さの等しいn個のエポックに分割される。エポック長を、記録全体と同程度に長くすることができ、又は呼吸パターンの検出を可能にするのに実際的な程度に短くすることができる。一実施形態例では、エポック長は30分間である。
【0021】
本技術のCSR検出アルゴリズムは、代替的に、又は酸素測定と共に、MAPのmicroMesam(登録商標)等のデバイスからの鼻腔内流量信号を、パターン認識技法と合わせて用いて、CS呼吸の確率を記録された流量の各30分エポックに割り当てることができる。
【0022】
本技術は、事象特徴の計算方法を提供することができる。本方法はまた、例えばフーリエ解析により又はウェーブレット変換を使用することにより求められるスペクトル特徴の計算も含むことができる。
【0023】
CSRの別の特性、すなわち飽和遅延を用いて、遅延するが呼吸と同期する飽和度低下及び再飽和の遅延の量を、CSRの更なる指標として計算する方法を提供することができる。
【0024】
本技術はまた、CSRを識別するようにプロセッサ実装分類器を訓練し、CSRの存在を示すように酸素測定データの各エポックセグメントに対して確率値を生成する方法も含むことができる。
【0025】
本技術のいくつかの実施形態では、コンピュータにより実行される方法は、1つ又は複数のプログラムされたプロセッサによりチェーンストークス呼吸の発生を検出する。プロセッサの本方法は、測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータにアクセスすることを含むことができる。本方法はまた、血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求めることを含むことができる。本方法は、求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値と、の比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出することを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間は、再飽和期間とすることもでき、測定された血液ガス信号は酸素測定信号とすることもできる。更なる実施形態では、求められた持続時間は平均期間長とすることもでき、検出は、平均期間長が閾値を超えた場合に発生を示すこともできる。いくつかの実施形態では、閾値は判別関数を含む。発生を検出することは、任意選択で、閾値からの距離を求めること、及びその距離を更なる閾値と比較することを含むことができる。本方法はまた、任意選択で、血液ガスデータの飽和度低下周期及び再飽和周期に対して所定の周波数範囲におけるピークの存在を求めること、及び求められた存在を判別関数と比較することを含むことができる。
【0026】
本技術の実施形態はまた、チェーンストークス呼吸の発生を検出する装置も含むことができる。本装置は、測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータのためのメモリを有することができる。本装置はまた、メモリに結合されたプロセッサを有することができる。プロセッサを、(a)血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求め、(b)求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値と、の比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出するように構成することができる。この装置のいくつかの実施形態では、飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間は、測定された血液ガス信号が、任意選択のオキシメータによって測定することができる酸素測定信号である場合、再飽和期間であってもよい。いくつかの実施形態では、この求められた持続時間は平均期間長であってもよく、検出は、平均期間長が、任意選択で判別関数とすることができる閾値を超えた場合に発生を示すこともできる。また、プロセッサにおいて、装置を、更に判別関数からの距離を求め、その距離を更なる閾値と比較することによって発生を検出するように構成することもできる。更なる実施形態では、プロセッサを、血液ガスデータの飽和度低下周期及び再飽和周期に対して所定の周波数範囲におけるピークの存在を判断、その後その判断された存在を判別関数と比較するように構成することができる。
【0027】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約書及び特許請求の範囲に含まれる情報を考慮することによって明らかとなろう。
【0028】
本技術は、限定としてではなく例として、添付図面の各図に示されており、そこでは、同様の参照符号は同様の要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】半時間(1800秒間)の持続時間にわたる患者の酸素測定信号の振幅及び第1の差の例を示すグラフである。
【図2】秒で測定された時間の関数としてCSRの平均飽和持続時間を示すグラフである。
【図3】秒で測定された時間の関数としてOSAの平均飽和持続時間を示すグラフである。
【図4】スペクトル特徴が飽和度のフーリエ変換の最大値と平均値との差である、CSRのスペクトル特徴を示すグラフである。
【図5】スペクトル特徴が飽和度のフーリエ変換の最大値と平均値との差である、OSAのスペクトル特徴を示すグラフである。
【図6】代表的なCSRエポックの酸素飽和度を示すグラフである。
【図7】フーリエ等価周波数の関数としてCSRのグローバルウェーブレットスペクトル(global wavelet spectrum)を示すグラフである。
【図8】秒での時間の関数として酸素飽和度に対する計算された遅延、換気及び遅延換気を示すグラフである。
【図9】決定境界とデータの訓練セットの分布に対するその関係とを示すグラフである。
【図10】決定境界とデータの検証セットの分布に対するその関係とを示すグラフである。
【図11】決定境界とデータの検証セットの分布に対するその関係とを示すグラフである。
【図12】データの分布を変更するか又はCSRに対して酸素測定エポックを分類することに関係するプロセスステップに対する例を示すフローチャートである。
【図13】コンピュータ支援診断ツールとして、CSRの兆候に関して患者をスクリーニングする本技術の分類器の使用を概略的に示す図である。
【図14】患者ごとの受診者動作特性を示すグラフである。
【図15】本技術のいくつかの実施形態のCSR検出及び/又は訓練システムのコンポーネントの更なる図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
本技術の実施形態は、システム、デバイス、分類器及び/又は方法を含むことができる。本明細書では、実施形態例を、添付図面、特に図1〜図13及び図15を参照して説明する。
【0031】
CSRは、換気の中枢神経系制御における不安定が原因であると考えられる周期性呼吸の形態である。CSR患者の呼吸は、呼吸が無呼吸/低呼吸及び過呼吸の繰返しの症状の間で交互に起こる際に、「漸増及び漸減する」一回換気量によって特徴付けられる。圧縮したタイムスケールにおける鼻腔内流量信号の記録は、振幅変調(「AM」)波形に類似するパターンを示す。
【0032】
チェーンストークス呼吸すなわちCSRの期間中、鼻腔内流量信号において肺機能の直接的な尺度として見ることができる漸増及び漸減する一回換気量のパターンは、血中酸素飽和度等の他の心肺パラメータの周期的変化としても存在する。例えば、持続する無呼吸期間中、心肺系のダイナミクスに起因して血中酸素飽和度が低下する可能性がある。パルスオキシメトリを用いる酸素飽和度の測定値は、CSRによってもたらされる換気の上昇及び低下に似た周期的な飽和度低下及び再飽和を示す。
【0033】
CSRにおける血中酸素飽和度の周期的パターンは、逐次発生する一連の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)事象のパターンとは異なる。チェーンストークス呼吸パターンの背後にある病態生理学的機構は、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)のレベルに関連する。低いPaCO2が存在することにより、低炭酸ガス血症に応じて呼吸に対する患者の中枢性ドライブが抑制される可能性があり、これによって、通常、表在呼吸が引き起こされ、後に無呼吸閾値未満で駆動される場合に呼吸の部分的又は完全な停止(withdrawal)が引き起こされ、その結果中枢性睡眠時無呼吸(CSA)がもたらされる。無呼吸期間に続き、後にPaCO2の上昇が発生し、それにより、過度な換気応答(hyper-ventilatory response)が誘発される可能性がある。したがって、PaCO2の低下が開始する可能性があり、そこで周期が正常に繰り返す。
【0034】
この換気に対する振動応答(oscillating response)により、一回換気量が漸増及び漸減し、血中酸素飽和度が徐々に振動する結果となる可能性がある。酸素飽和度の上昇及び低下は遅延するが、通常、過換気又は低換気と同期する可能性がある。心肺相互作用に関連する中枢性呼吸ドライブの基本的な振動が、CSRの間に一意に規則的である酸素測定記録の振動をもたらす。スペクトル特徴は、酸素測定信号におけるこの規則性のパターンをCSRのマーカとして取り込むように意図されている。
【0035】
心機能障害が、CSAの原因となる危険因子であるという証拠が挙がっている。慢性鬱血性心不全(CHF)個体群において、30%〜50%にわたるCSAの有病率が報告されている(Javaheri他「Circulation」(1998;97:2154-2159)、Sin他「Am J Respir Crit Care Med」(1999;160:1101:1106))。PaCO2の高い無呼吸閾値がCSA及びCSRの発症の原因となることも立証されている。
【0036】
純粋なチェーンストークス呼吸の期間は、一般に、PSG検査において、逐次発生する一連のCSA事象として提示される。純粋なチェーンストークス呼吸を引き起こすCSAの発症は、元来は60秒間の典型的な周期長の高炭酸ガス血症である(Eckert他「Chest」(2007;131:595-607))。このCSAは、慢性痛の薬物の投与から発生する突発性CSA又は麻酔によるCSA等の他の形態とは区別されるべきである。これらの形態のCSAは、通常、周期長がはるかに短い。分類器の訓練に用いられる酸素測定記録の選択により、事前スコアリングプロセスの間に臨床専門医によって評価されスクリーニングされるように、こうしたデータは排除される。これにより、対象となる特定の形態のCSAのみが分類器の訓練に用いられることが確実になる。
【0037】
CSR対OSA
チェーンストークス呼吸(CSR)は、通常、鼻腔内流量記録又は気道流量記録等、肺機能の直接測定により観察される周期的な呼吸の形態である。心臓系と肺系との結合に起因して、CSRを、酸素測定信号により交互の飽和低下期間及び再飽和期間として特定することも可能である。したがって、酸素測定信号は、チェーンストークス呼吸の解析のために利用可能な情報の情報源を提供することができる。この手法の利益は、血中酸素飽和度を非侵襲的に測定するオキシメータの使用を含むことができ、血中酸素飽和度は、被験者の健康状態の重要な決定要因である。酸素測定記録は、CSR、又は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の状態等、酸素測定信号に同様に反映され得る他の呼吸異常の発生の兆候を提供することができる。これは、OSAからCSRを識別するために分類器の訓練中に考慮されることが好ましい。
【0038】
OSAは、一般に、上気道の虚脱によって引き起こされる可能性がある。OSA事象の間、PSG検査中の連続した呼吸努力から分かるように、中枢性呼吸ドライブは低下しない。OSA事象に続く初期段階の呼吸は、通常、一回換気量を大きくしようと努力して深く、それは、酸素飽和度の急速な上昇に関連することが多い。したがって、逐次発生する一続きのOSA事象では、迅速に再飽和している酸素飽和度は、OSAの発生を示すものと考えられる。
【0039】
OSA事象の発生は、上気道の力学的状態及び解剖学的構造に密接に関連している。OSAは、再発するように発生する可能性のある喉頭の虚脱によって駆動されるが、CSRと異なり、周期的な呼吸の形態ではない。先行するOSA事象の開始からそれに続くOSA事象の開始までの時間の長さの変動性は、CSRの周期長より短い傾向がある。OSA記録からの酸素測定は、純粋なCSR酸素測定記録の周期長に見られる典型的な規則性がない、飽和度低下及び再飽和のより一過性のパターンを見つけることができる。
【0040】
しかしながら、酸素測定信号は、身体運動又は手足の動きによってもたらされる望ましくないアーティファクトが発生しやすいことにより、CSRの診断に用いるためには禁忌である。成人の記録では、オキシメータは、一般に、指先端又は耳たぶに配置される。酸素測定信号の品質は、オキシメータの光センサのいかなる変位にも非常に影響を受けやすい。モーションアーティファクトは、通常、急激な飽和度低下及び激しい再飽和が発生する期間によって特徴付けられる。飽和度が、酸素測定記録のアーティファクト期間内にゼロパーセントであることが見つかることは珍しいことではない。この期間中は情報の損失がある可能性があり、それは不可避である可能性がある。この問題は、酸素測定信号の使用を、飽和度低下及び再飽和の急激さを考慮する検出方式を組み込むように変更することによって克服することができる。
【0041】
図1は、酸素測定信号102と、その導関数、又は、記録からの導出された酸素測定信号104との例を示す。信号は、CSR中に半時間(1800秒間)の持続時間にわたって記録された。アーティファクトの明確な事例は、ゼロ飽和度への急落及び急な回復として示されている。本技術のシステム又はデバイスでは、信号からのデータを、以下の方法のうちの1つ又は複数に従って処理することができる。
【0042】
アーティファクトを特定する
導出された酸素測定(SpO2)信号104から、信号が−10%を下回る負の値から10%よりも大きな正の値になるアーティファクト期間の開始を特定することができる。導出された酸素測定信号は、アーティファクト期間の開始及び終了の表示を提供し、この表示は、最初の急な負のスパイクとそれに続く急激な正のスパイクとによってマークされている。アーティファクトを、アーティファクトの領域にわたって線形補間することによって除去することができる。
【0043】
酸素測定信号品質指標(QI)
OSAの検出に酸素測定値を採用したが、それら検出方法は、CSRを検出する問題に移行可能ではない。CSRの存在は、換気調節における中枢の不安定性を示す。純粋なチェーンストークス呼吸では、流量は、中枢性無呼吸及び中枢性低呼吸に関連することが多い。閉塞性無呼吸とは対照的に、CSRにおける呼吸の再開は、通常、非常に緩やかであり、それにより再飽和の速度は低速になる。本技術は、平均再飽和期間と、本発明者らによる統計的解析によりCSRのみが10秒間よりも長い再飽和を明示することが分かったという事実とを利用することにより、OSAとCSRとの上記差を考慮する。
【0044】
品質指標を、導出された酸素測定(SpO2)信号104に対して、SpO2が10%等、所定の割合の閾値よりも低下する上記信号のサンプルの数Tを見つけることによって定義することができる。品質指標(QI)を、Nが考慮されるサンプルの総数である場合にT/Nの比として定義することができる。しかしながら、この比が例えば約0.75の閾値を下回る場合、品質指標をゼロに設定することができる。品質指標を比T/Nの関数として定義することも可能である。
【0045】
事象特徴の計算
アーティファクトが特定されると、それらのアーティファクトをデータから除去することができる。残っているデータの信号をローパスフィルタリングしてフィルタリングされた信号を導出することもできる。信号を、まず望ましくなくかつ関心のない高周波数成分を除去するようにフィルタリングすることができる。例えば、使用されるフィルタは、矩形窓を有するフーリエ法を用いて設計されたデジタル有限インパルス応答(「FIR」)フィルタとすることができる。いくつかの実施形態では、フィルタは、0Hz〜0.1Hzの通過帯域と、0.1Hz〜0.125Hzの遷移帯域と、0.125Hzより高い阻止帯域とを有することができる。フィルタの項の数はサンプリング周波数によって変化する。時系列を点毎にフィルタベクトルで畳み込むことによって、信号をフィルタリングすることができる。
【0046】
再飽和の次の連続する期間を検出することができる。期間の長さを、ベクトルの成分として格納することができる。そして、事象特徴を、ベクトルの成分の平均として計算することができる。事象特徴は、品質指標値に関連付けることができる。したがって、CSR検出の品質に関する情報を臨床医に提供するために、特定の事象特徴に基づくCSRの判断とともに品質指標値を出力することができる。
【0047】
酸素測定信号から事象を抽出する1つの代替形態は、2つのフィルタリングされた信号を導出し、その後それらの変化する振幅の比較を実行して飽和度低下事象又は再飽和事象を枠に入れることとすることができる。これらの導出された信号のうちの第1の信号に対するフィルタは、長期飽和信号(SLong)を表すように非常に低いカットオフ周波数を有するものとする。導出された信号のうちの第2の信号に対するフィルタは、短期飽和信号(SShort)を表すように比較的高いカットオフ周波数を有することができる。SShortがSLongの割合としての閾値より低下すると、それを、飽和度低下事象の開始を記録するためのトリガーとみなすことができる。SShortがその後SLongを上回る閾値よりも上昇すると、これを、飽和度低下事象の終了として記録するトリガーとみなすことができる。再飽和事象を取り込むために同様のプロセスを採用することができる。
【0048】
スペクトル特徴(SF)の計算
無呼吸/低呼吸と過呼吸との間の周期的交代により、飽和度低下及び再飽和が遅延するが呼吸と同期するようになることが多い。SpO2において観察される振動は複数の要因によって決まり、そのうちの1つは無呼吸の持続時間である。長い無呼吸は大きい飽和度低下に関連する。図2及び図3は、秒単位で測定された時間の関数として、OSAの平均飽和持続時間(図3)と比較したCSRの平均飽和持続時間(図2)の分布を示す。さまざまなCSR酸素測定パターンの観察により、閉塞性無呼吸の連続した期間中における酸素測定パターンの一過性の特徴とは対照的に、より高い規則性が見つけられる。フーリエ変換を用いて、スペクトル特徴は、0.083Hz〜0.03Hzに近い領域においてピークの存在を測定することができる。
【0049】
より長い周期時間にわたり飽和度低下し再飽和する傾向を、CSR異常のマーカとみなすことができる。これを、フーリエ変換技法を用いて個々の周波数成分及び高調波を求めることによって、検出又は認識することができる。深い覚醒呼吸を伴う無呼吸後のOSA事象の終了中の迅速な再飽和は、より一過性の方式の飽和度低下パターン及び再飽和パターンを与える。これにより、CSRのより規則的な飽和度低下パターン及び再飽和パターンから周波数特性が区別される。
【0050】
いくつかの実施形態では、以下のステップ例のうちのいくつか又はすべてを実施して、フーリエ変換解析を用いてスペクトル特徴を求めることができる。
1.アーティファクトを除去する
2.酸素測定信号全体を別個の30分の50%重なるエポックに分割する
3.100%から信号を減算する
4.初期値から結果の信号を減算してこの値を格納する
5.結果の信号をローパスフィルタリングする
6.フィルタリングした信号に格納した初期値を加算する
7.100%から結果の信号を減算する
8.平均値により信号をトレンド除去する
9.ユークリッドノルムを用いて結果の信号を正規化する
10.5つの半分重なっているエポックによりスペクトログラムを計算する
11.スペクトログラムの実数値及び絶対値を取得する
12.0.083Hz〜0.03Hz領域を抽出し新たなベクトルを形成する
13.スペクトル特徴(SF)を、最大値と平均値との差として計算する。
【0051】
図4及び図5は、上述したようにフーリエ変換の最大値と平均値との差として、CSR及びOSAに対するスペクトル特徴の分布をそれぞれ示す。
【0052】
ウェーブレット変換の使用
連続ウェーブレット変換を適用することにより、信号の持続時間にわたって時間周波数情報を与えることも可能である。図6は、CSRがCSRエポック等の代表的なエポックE1Inにおいて発生している酸素飽和度を示し、ウェーブレット変換されたデータにより、多くの場合、2次元データにおいて見つけるか又は検出することができるリッジになる。ウェーブレットスペクトルを、使用されるウェーブレット変換のタイプに応じて、スケール領域(無次元)からフーリエ等価周波数(Hz)に変換することができる。図7は、ウェーブレット関数としてモルレー(Morlet)ウェーブレットを用いるフーリエ等価周波数の関数としてのグローバルウェーブレットスペクトルを示す。CSRの存在が強いエポックは、0.02Hzフーリエ等価領域の周囲にスペクトルピークを見つけることが多い。これは、図7に示すように、フーリエベースのスペクトルピークに十分に対応する。したがって、本技術のいくつかの実施形態では、グローバルウェーブレットスペクトルのピークを、酸素測定信号におけるCSRの解析のためのスペクトル特徴として用いることも可能である。
【0053】
飽和の遅延
無呼吸/低呼吸と過呼吸との周期的交代により、飽和度低下及び再飽和が遅延するが呼吸と同期することになることが多い。この飽和の遅延(「DoS」)度応答は、複雑な心臓・呼吸ダイナミクスの結果である。いくつかの実施形態において、以下の方法のステップのうちのいくつか又はすべてを用いて、遅延をアルゴリズムによって抽出することができる。
1.流量信号を二乗する
2.二乗した流量信号をローパスフィルタリングする
3.結果の信号の平方根をとる
4.信号を酸素測定信号の等価周波数にダウンサンプリングして換気信号を得る
5.換気信号を絶対最大値によって正規化する
6.100%から酸素測定信号を減算する
7.絶対最大値によって正規化される
8.1.0からSpO2を減算する
9.正規化したSpO2信号をダウンサンプリングし正規化した換気信号と相互相関する
10.達成した最大相互相関に対するオフセットを見つける
11.サンプルにおける遅延を、SpO2信号の最後の指標からのサンプルの数として計算する
12.サンプルの遅延をサンプリングレートで除算して秒単位で遅延を得る。
任意選択で、上記ステップ1及びステップ3において流量信号に対し上述した二乗演算及び平方根演算を実行する代りとして、流量信号に対する絶対値演算を実施することができる。
【0054】
図8は、秒単位での時間の関数としてのフィルタリングされたSpO2信号と、計算された遅延を用いるシフトした換気信号と、をプロットすることにより、こうした計算の結果を示す。
【0055】
CSRを識別するよう分類器を訓練する
本技術の分類器を訓練するように、事象特徴及びフーリエベースのスペクトル特徴を選択することができる。実施形態例に対する訓練を、臨床診断検査の90のEmbletta記録を用いて行った。
【0056】
分類器のアルゴリズムの開発のために、睡眠ポリグラフ(PSG)データの2つの独立したセットを使用した。第1のセット(本明細書ではEssenEmbla検査と呼ぶ)は、Essen、North-Rhine Westphalia、Germanyの睡眠施設で行われた、中枢性睡眠時無呼吸(CSA)、OSA及びそれら両方の組合せを示している90人の患者を含む診断臨床試験であった。EssenEmbla検査を、訓練セットとして用いた。第2のセット(BadO)を、Bad Oeynhausen、North-Rhine Westphalia、Germanyで行った。BadOデータセットの有病率は、CSA、OSA及びそれら両方の組合せの記録も含む。これらは8時間の一晩の記録であり、後に、訓練セッションの後に分類器を評価するための試験セットとして用いた。
【0057】
分類器のアルゴリズムの訓練を容易にするために、最初に、データの両セットを臨床医が事前分類した。記録の各々を、ResMedにおいて常駐の臨床専門医により30分セグメントでスコアリングし、そこでは、優勢な事象の指定は、PSGソフトウェアを備えたコンピュータを介してオフライン目視検査によって行う。事象に対し、以下の5つの一般的なタイプの事象のうちの1つに指定した。
1.無呼吸なし
2.CSR
3.OSA
4.混合型無呼吸
5.事象の組合せ
【0058】
この事前分類プロセスの結果として、各8時間記録により、各々が優勢な事象の指定されたクラスを有する、全体で16の重ならないエポックがもたらされた。90人の患者が関与したEssenEmbla訓練セットでは、訓練に利用できる合計1440のクラスのデータがあった。30分未満のいかなる残りのエポックも評価しなかった。しかしながら、残りのエポックは、任意選択で、患者のいくつかの呼吸周期よりも長い任意の期間とすることができる。例えば、残りのエポックは5分間より長くすることができる。最も好ましい残りのエポックは30分間とすることができる。
【0059】
この事前スコアリングプロセス中、臨床専門医は、優勢な事象を求め半時間セグメントの各々に名称を割り当てるのに役立てるように、利用可能なPSGチャネル記録のうちの任意のものを利用した。これらには、鼻腔内流量、デジタル酸素測定、呼吸努力の尺度、重力式表示器による睡眠時姿勢、心拍数、脳波記録(EEG)、心電図記録(ECG)、筋電図記録(EMG)及び眼電図記録(EOG)が含まれていた。訓練セットの事前分類された名称を用いて、酸素測定及び流量記録を、コンピュータプロセッサ及びソフトウェアにより、解析のために厳密に30分間のデータの重ならないエポックにセグメント化した。その後、特定の事前分類された事象の選択されたエポックを、CSRの指標として用いられる特定の特徴を探索するために用いた。データを半時間エポックに事前分類することにより、特定の短期特徴の定量的重要性が、記録全体の長さにわたって希薄化されなかった。
【0060】
各エポックに対する時間の分割は、各CSR事象の通常の発生及び長さを考慮することに基づいていた。CSRの漸増及び漸減するパターンの平均90秒よりも長い周期長の場合、酸素飽和が同様のペースで飽和度低下し再飽和するものと仮定すると、半時間内で取り込むことができる20個の連続したCSRの周期があり、それは解析には十分であった。米国睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine:AASM)が1999年に発行したPSG診断基準の規格ガイドラインによれば、平均して、10秒よりも長い呼吸停止の事象が毎時5回〜15回見つかる場合として定義されている軽度の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が、記録に見られる。軽度のOSAがある30分間エポックでは、半時間内に少なくとも2.5の事象がある。
【0061】
決定境界を、ベイズ分類技法を用いて形成した。この方法は、正規分布データに適しており、最小限のリスクで2つのクラス(CSR及び非CSR)を最適に分離する判別式を見つけることを目的とする。決定境界を導出するために他の分類方法を用いることもできる。こうした例として、ニューラルネットワーク又はk最近傍法を挙げることができる。
【0062】
図9は、エポック毎の訓練の後の決定境界及び該決定境界とデータ分布との関係を示す。直線は、線形判別関数を表し、楕円線は、ベイズ分類に従う二次判別関数を表す。判別関数は、空間をCSR領域と非CSR領域とに分割する。
【0063】
図10及び図11は、エポック毎に検証試験データセットに適用される訓練された決定境界を示す。SpO2記録全体に対する全確率を、以下の一連のステップを用いて導出することができる。
1.以下のように、シグモイド関数を用いて垂直距離を決定境界にマッピングすることにより確率を計算する
【数1】
2.確率が0.5等の指定された閾値よりも大きい場合、エポックをCSRとして分類する
3.エポックのいずれかがCSRとして分類される場合、酸素測定記録をCSRの可能性が高いものとして分類する。
【0064】
図12は、特徴抽出及び分類に対して上述したステップ例のフローチャートである。こうした方法を、ソフトウェアとして、又は図15に更に示すような検出デバイスの回路若しくはメモリにおいて実装することができる。
【0065】
患者毎の分類及び結果
確率値
分類器が患者毎にCSRをいかによく識別するかを理解するために、分類器を、各エポックに対して2値出力(CSR又は非CSR)を単純に決定するように実装することができるが、そうする代わりに、各エポックセグメントに対して0と1との間の確率値を生成するように実装することができる。各導出された平均再飽和持続時間及びスペクトル特徴に対して、特徴空間のデータ点から決定境界まで垂直な距離を計算する。その後、この垂直距離を、以下のように確率が決定線からの距離の関数である確率値にマッピングする。
【数2】
【0066】
距離がゼロである、すなわち(d=0)で特徴値が境界と一致している場合、確率は正確に0.5である。距離が正の無限大まで増大すると、確率は漸近的に1.0に向かう傾向がある。距離が負の無限大まで増大すると、確率は漸近的に0.0に向かう傾向がある。CSRに対応する特徴空間の領域を本実施形態では判別式からの正の距離として定義することにより、CSRを、0.5よりも大きな任意の結果の確率値として定義することができる。本技術を、こうした判別関数からの距離によってCSRの存在を区別する他の値をもたらすように実施することができることが理解される。
【0067】
患者毎に酸素測定記録を分類するプロセスにおいて、分類器を実施するアルゴリズムを実装したプロセッサを、信号の全長を通して反復して、各半時間のエポックに対して確率値を計算するようにプログラムすることができ、そこでは、窓は、反復毎に半エポック(すなわち、1/4時間)増大する。反復は、すべての半時間エポックが処理され、記録のための確率値のベクトルを得ることができるまで進行する。
【0068】
単一患者/記録に対するCSの確率全体を、分類されたすべてのエポックに対して見つけられる最大確率を用いて計算することができる。その後、分類器の全体的な性能を、CSの決定のための閾値を組み込むことによって、試験セットに対して評価することができる。これは、図14に示す例等、受診者動作特性(ROC)をもたらすことができる。
【0069】
図14においてROC曲線における各点は、その隣接点にわたる確率の0.05の増加/減少を表す。最大面積は、感度が0.8148であり特異度が0.8571であるときに0.75の閾値確率で達成される。閾値確率を0.8まで更に上昇させることにより、感度を0.6667に低減して完全な特異度を達成することができる。以下の表は、患者毎の重要な性能尺度を要約している。
選択された閾値(最大面積に基づく) 0.75
感度 0.814815
特異度 0.857143
想定された事前確率 0.004
陽性的中率(PPV) 0.02069
陰性的中率(NPV) 0.99883
偽陽性率(False Alarm Rate:FAR) 0.97931
偽陰性率(False Reassurance Rate:FRR) 0.00117
陽性尤度比(LR+) 5.703704
陰性尤度比(LR−) 0.216049
【0070】
この表は、CSの患者に対して0.004の事前確率を想定することに留意されたい。この推定は、Jean-Louis Pepin他「Sleep Medicine Reviews」((2006) 10, 33-47)において報告された、年齢が65歳を超える、鬱血性心不全(CHF)を患っている米国人の0.01の有病率に基づく。CHF個体群内で、CSRに関する文献では1/3〜1/2の有病率が一般に報告されている。CHF個体群内のCSに対する有病率値を0.4とすることにより、事前確率が、0.01に0.4を掛けた0.004に等しい値として計算される。
【0071】
陽性尤度比(LR+)は、患者が全体的にみてCS陽性として分類される場合に、真にCSである患者の予備検査確率が、5.7倍上昇することを示す。同様に、陰性尤度(LR−)は、患者が全体にみてCS陰性として分類される場合、実際にCSである患者の予備検査確率は0.22倍低下することを示す。LR+及びLR−は合わせて、臨床医に対し、診断検査の強度を示す。Dan Mayerによる自身の本「Essential Evidence-Based Medicine」における診断検査の定性的強度に対する評定に従って、それぞれ6及び0.2のLR+及びLR−は「非常によい」とみなされる。したがって、患者毎の分類器例の診断性能を、「非常によい」に近いものとみなすことができる。
【0072】
応用
プログラムされたプロセッサ又は他の処理デバイスによって実装される場合のこうした分類器の1つの応用は、臨床医が、コンピュータ支援診断ツールとしてCSRの兆候がないか多数の患者をスクリーニングするのを可能にするというものである。こうした応用の一例を、在宅睡眠検査の環境で用いることができ、そこでは、睡眠医が、オキシメータを備えたApneaLink(商標)等の携帯型SDBスクリーニングデバイスを患者に支給する。好ましくは、睡眠データを、医師が後に解析するために一晩収集することができる。内科医又は臨床医によるこの解析を、オフラインで、すなわち1回又は複数回の睡眠セッションにおける測定デバイスの使用の後に行うことができる。例えば、分類器を具現化するアルゴリズムを、Somnologica(商標)(Emblaと言う名称の会社製)又はApneaLink(商標)(ResMed Limited製)等、睡眠検査解析ソフトウェア用のモジュールとして実装することができる。これにより、CSRの自動スコアリングを、酸素測定信号トレース又はグラフに対してマークすることができる。実施形態例を図13の概略図に示す。相補的特徴は、アルゴリズムによって計算される分類結果に基づいてレポートを自動に生成するモジュールである。その後、臨床医は、自身の意思決定プロセスを支援するために要約として該レポートを用いることができる。任意選択で、こうした分類器アルゴリズムを、SDBスクリーニング装置内で実施することにより、上述したようにCSの分類を有する表示メッセージ用のデータを生成することができる。
【0073】
さらに、いくつかの実施形態では、本技術の上述した酸素測定分類器を、米国特許出願公開第20080177195号に開示されている流量分類器等の流量分類器とともに用いるか又は実施することができ、上記出願の開示内容はすべて参照により本明細書に援用される。例えば、こうした実施形態では、1つ又は複数のプログラムされたプロセッサを備えたコントローラは、酸素測定分類器アルゴリズムと流量分類器アルゴリズムとの両方を含むことができる。流量分類器は、供給又は測定された流量を検出し、その後、判別関数により流量を解析し、その後、閾値量に基づいて流量を分類する。そして、コントローラによって生成されたCS確率指標は、両分類器アルゴリズムに、例えば各々からの確率データを結合することにより、両分類器から引き出された最終的な結論として両確率の平均か又はいずれかの確率の最大値に基づくもの等の方式を用いることにより、基づくことができる。こうしたコントローラは、精度を向上させ、概してより優れた結果をもたらすことができる。
【0074】
したがって、本技術の実施形態は、分類器、閾値、関数及び/又は本明細書においてより詳細に説明したアルゴリズム等、特定のCSR検出及び/又は訓練方法を実施する1つ又は複数のプロセッサを有するデバイス又は装置を含むことができる。したがって、デバイス又は装置は、集積チップ、メモリ及び/又は他の制御命令、データ若しくは情報記憶媒体を含むことができる。例えば、こうした検出及び/又は訓練方法を含むプログラムされた命令を、デバイス又は装置のメモリ内の集積チップに符号化することができる。こうした命令を同様に又は代替的に、適切なデータ記憶媒体を用いてソフトウェア若しくはファームウェアとしてロードすることができる。こうしたコントローラ又はプロセッサにより、デバイスを、酸素測定信号からのデータの処理に使用することができる。したがって、プロセッサは、本明細書においてより詳細に説明する実施形態において述べたように、CSR発生又は確率の評価を制御することができる。さらに、いくつかの実施形態では、デバイス又は装置自体を、任意選択で、血液ガス自体を測定し、その後本明細書で述べた方法を実施するように、オキシメータ又は他の血液ガス測定デバイスを備えるように実施することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ制御命令を、汎用コンピュータによって使用されるソフトウェアとしてコンピュータ可読記録媒体に含めることができ、それにより、汎用コンピュータは、ソフトウェアを汎用コンピュータにロードすると本明細書で述べた方法のうちの任意のものに従って専用コンピュータとしての役割を果たすことができる。
【0075】
図15に、実施形態の一例を示す。図では、CSR検出デバイス1501又は汎用コンピュータは、1つ又は複数のプロセッサ1508を有することができる。デバイスは、本明細書に記載したCS検出レポート、結果又はグラフをモニター又はLCDパネル等に出力するディスプレイインターフェース1510を有することも可能である。本明細書に記載した方法を起動するように、例えばキーボード、マウス等、ユーザ制御/入力インターフェース1512を設けることができる。デバイスはまた、プログラミング命令、酸素測定データ、流量データ等のデータを受け取るセンサ又はデータインターフェース1514を含むこともできる。デバイスはまた、通常、メモリ/データ記憶コンポーネントも有することができる。これらは、本明細書においてより詳細に説明したように、1522において血液ガスデータ/酸素測定信号処理(例えば、再処理方法、フィルタ、ウェーブレット変換、FFT、遅延計算)に対するプロセッサ制御命令を含むことができる。それらはまた、1524において分類器訓練方法に対するプロセッサ制御命令も含むことができる。それらはまた、1526において、血液ガスデータ及び/又は流量データに基づくCSR検出方法(例えば、特徴抽出方法、分類方法等)に対するプロセッサ制御命令も含むことができる。最後に、それらはまた、検出されたCSR事象/確率、閾値/判別関数、スペクトル特徴、事象特徴、血液ガスデータ/酸素測定データ、流量データ、CSRレポート、平均再飽和持続時間、再飽和期間等、これらの方法に対する格納されたデータ1528を含むこともできる。
【0076】
実際的かつ好ましい実施形態に対して現時点で考慮されることに関連して本技術について説明したが、本技術は、開示した実施形態には限定されるべきではなく、逆に、本技術の趣旨及び範囲内に含まれるさまざまな変更及び等価構成を包含するように意図されている。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年4月20日に出願された米国仮特許出願第61/170,734号の出願日の利益を主張し、その出願の開示内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本技術は、臨床判断支援ツールとして用いられる生理学的信号に対して定量的尺度を与えることによる呼吸異常の識別に関する。特に、本技術は、任意選択で流量信号と併用することもできる酸素測定(oximetry:オキシメトリ)信号の解析による、チェーンストークス呼吸(「CSR」)の識別に関する。本技術はまた、CSR識別のために確率値を提供することができる分類器の訓練にも関連することができる。本技術はまた、CSRに関連して認識可能なアーティファクトを除去することにより、酸素測定信号の読取りを改善する技法にも関連することができる。
【背景技術】
【0003】
CSRの診断は、通常、睡眠検査を行うこと、及びその結果得られる睡眠ポリグラフ(「PSG」)データを解析することを含む。完全診断PSG検査において、通常、鼻腔内流量(nasal flow)信号、呼吸努力の尺度、パルスオキシメトリ、睡眠時姿勢を含み、かつ脳波記録(「EEG」)、心電図記録(「ECG」)、筋電図記録(「EMG」)及び眼電図記録(「EOG」)を含むこともできる、さまざまな生物学的データが監視される。呼吸特性はまた、視覚的特徴からも識別され、したがって、臨床医は睡眠中の呼吸機能を評価し幾分かでもCSRがあることを診断することができる。
【0004】
チェーンストークス呼吸すなわちCSRの期間中、鼻腔内流量信号に、漸増及び漸減する一回換気量のパターンを見ることができ、それは、肺機能の直接の尺度である。この呼吸の不安定な挙動は、周期的変化を見ることができる血中酸素飽和度等、他の心肺パラメータにその存在を広げることが多い。
【0005】
臨床医による診察が最も包括的な方法であるが、これはコストがかかるプロセスであり、臨床経験及び理解に大きく依存する。患者の有効かつ効率的なスクリーニングのために、本発明の譲受人により、鼻腔内流量信号に基づいてCSRの発生する確率を計算することによりスコアリングプロセスを自動化する分類器アルゴリズムが開発された。このアルゴリズムは、2007年3月28日に出願され2006年6月29日に国際公開第2006066337号として公開された米国特許出願第11/576,210号(米国特許出願公開第20080177195号)に開示されている。この既存のアルゴリズムは、一続きの離散的な流量値が与えられるとCSRの確率が計算される、流量に基づく分類器である。流量値の線形化、フィルタリング及び呼吸事象の抽出等の一連の前処理ステップが実行される。
【0006】
分類器の概念は、対象又は対象の潜在する状態を多数のクラスのうちの1つに割り当てることが望ましい多くの分野に共通している。この概念は、例えば、音声認識(音声バイトが種々の語又は音節として分類される)、レーダー検出(視覚信号が敵の標的/味方の標的として分類される)及び医療診断(検査結果を用いて患者の病状が分類される)の分野において用いられる。分類器の設計は、パターン認識の分野に入り、分類器は教師あり型(この分類器は、教師又は「専門家」によって予め分類された訓練データから構築される)か又は教師なし型(データの自然な順序付け又はクラスタリングによって種々のクラスが決まる)とすることができる。時間信号分類は、通常、特定の時点の信号を「特徴」を用いて表すことに依拠する。特徴は、単に、或る時点における信号の本質、すなわち圧縮の形態を抽出する数である。特徴のセット(又はベクトル)は「パターン」と呼ばれる。分類器は、パターンを取得し、このパターンを適切なアルゴリズムを用いて数学的に操作することにより、複数のクラスの各々に対して確率値を生成する。パターンは、最高確率のクラスに割り当てられる。
【0007】
CSRの識別のための代替ツールとして自宅パルスオキシメトリ(home pulse oximetry)が提案されているが、これは、訓練された監視者による酸素測定信号の視覚的検査に頼っている(Staniforth他著、1998, Heart, 79:394-399)。
【0008】
Staniforth他による鬱血性心不全(「CHF」)の104人の被験者の研究(1998, Heart, 79, 394-399)では、正常対照と比較して夜間酸素測定で記録される飽和度低下指数を検査した。モデルにより、CSR−CSAを検出するために81%の特異度及び87%の感度がもたらされた。しかしながら、モデルの全体的な精度は提供されなかった。著者らは、CSR−CSAと閉塞性睡眠時無呼吸(「OSA」)とを区別するためにパルスオキシメトリを用いることができるか否かを判断しようとは試みなかった。米国特許第5,575,285号(Takanashi他)には、散乱し透過した光から血中の酸素飽和度を測定すること、及びフーリエ変換を実行して500Hz〜20kHzの周波数範囲にわたるパワースペクトルを得ることが記載されている。しかしながら、その記載された方法では、CSR患者とOSA患者との間の識別は可能ではない。
【0009】
Grant他に対する米国特許第6,839,581号(PCT出願第WO01/076459号及び米国特許出願公開第2002/0002327号)は、「Method for Detecting Cheyne-Stokes Respiration in Patients with Congestive Heart Failure」と題する。それらは合わせて、一晩の酸素測定記録を行うこと、及び酸素測定記録に対してスペクトル解析を行うことを含む、CSRに対する診断方法を提案している。パワースペクトル解析から導出されるパラメータに基づく分類木又はニューラルネットワークが、CSRの存在又は不在を判断する。
【0010】
Lynnに対する米国特許第6,760,608号は、「Oximetry System for Detecting Ventilation Instability」と題する。この特許には、時系列の酸素飽和値を生成するために用いられるパルスオキシメトリシステムが記載されている。時系列に沿った或るパターンの発生を用いて、換気の不安定性が示される。
【0011】
Lynn他に対する米国特許第7,081,095号は、「Centralized Hospital Monitoring System for Automatically Detecting Upper Airway Instability and for Preventing and Aborting Adverse Drug Reaction」と題する。この特許は、中央集中化病院救命救急システムのコンピュータ化環境におけるOSAの自動診断システムを提案している。
【0012】
Grant他に対する米国特許第7,309,314号は、「Method for Predicting Apnea-Hypopnea Index From Overnight Pulse Oximetry Readings」と題する。この特許は、パルスオキシメトリ読取値を記録し、デルタ指標、酸素飽和持続時間及び酸素測定飽和度低下事象を取得することにより、OSAの診断で用いられる無呼吸低呼吸指数(「AHI」)を予測するツールを提案している。多変量ノンパラメトリック解析及びブートストラップ集約が実行される。
【0013】
Lynnに対する米国特許第7,398,115号は、「Pulse Oximetry Relational Alarm System for Early Recognition of Instability and Catastrophic Occurrences」と題する。この特許に記載されているシステムは、a)脈拍数の低減、又はb)呼吸数の増大のいずれかに連動したO2飽和度の低減を検出することにより、起こり得る突発的発生の早期の認識によってトリガーされる警告を有している。この特許のシステムは、OSAの治療及び検出を目的としている。
【0014】
これらの従来技術によるシステムのいずれも、CSRからOSAを確実に識別するように、かつ、こうした無呼吸識別に対する試みに対して確率値を展開するように、酸素測定データを確実に解釈することはできない。
【発明の概要】
【0015】
本技術は、酸素測定法に基づくCSRの識別を強化する。本技術を、流量に基づく分類器技術システムの検出性能を向上させるために適用することができる。したがって、本技術は、CSRのスクリーニングをよりアクセスし易いものとすることを可能にすることができる。例えば、本技術を、2007年3月28日に出願され2006年6月29日に国際公開第06066337号として公開された米国特許出願第11/576,210号に記載されている検出システムに対する追加の機能として実施することができる。任意選択で、本技術は、単独で、又は流量信号若しくはそこからのデータが利用できないか若しくは品質が好ましくない場合に独立した代替法として作用することもできる。
【0016】
本技術は、現行のスクリーニングプロセスを、概して、患者に対してより快適でありかつ使用が容易であり、医師に対してより管理が容易であり、かつ/又は解析を行うのによりコストがかからないスクリーニングプロセスに置き換えることができる。
【0017】
本技術を、逐次プロセス又はアルゴリズムに関して説明する場合があるが、プロセス又はアルゴリズムを、非線形、非逐次又は非段階的プロセスを用いて実行することができ、又はプロセスの順序を変更することができることを理解することができる。本技術のこの実施形態はプロセス全体について述べるが、本技術の態様は、そのプロセスの一部のみに関連することもできる。
【0018】
酸素測定信号等、呼吸を表す信号を、データ取得システム及びメモリを含むロギングデバイスを用いて患者から記録することができる。呼吸信号を、記録デバイスによってオンボードで又はコンピュータを用いてオフラインで処理することができる。
【0019】
信号を、最初に前処理することができる。例えば、信号をフィルタリングして望ましくないノイズを除去することができ、適切な場合は、ベースラインがゼロにされる。信号を、呼吸を検出するために用いられるトランスデューサーに応じて線形にすることも可能である。特に、本技術は、酸素測定値に特有のアーティファクトを除去し、識別予測における信頼度を求めるために用いることができる酸素測定信号品質指標(QI)を展開するプロセスを含むことができる。
【0020】
別の段階では、信号は、長さの等しいn個のエポックに分割される。エポック長を、記録全体と同程度に長くすることができ、又は呼吸パターンの検出を可能にするのに実際的な程度に短くすることができる。一実施形態例では、エポック長は30分間である。
【0021】
本技術のCSR検出アルゴリズムは、代替的に、又は酸素測定と共に、MAPのmicroMesam(登録商標)等のデバイスからの鼻腔内流量信号を、パターン認識技法と合わせて用いて、CS呼吸の確率を記録された流量の各30分エポックに割り当てることができる。
【0022】
本技術は、事象特徴の計算方法を提供することができる。本方法はまた、例えばフーリエ解析により又はウェーブレット変換を使用することにより求められるスペクトル特徴の計算も含むことができる。
【0023】
CSRの別の特性、すなわち飽和遅延を用いて、遅延するが呼吸と同期する飽和度低下及び再飽和の遅延の量を、CSRの更なる指標として計算する方法を提供することができる。
【0024】
本技術はまた、CSRを識別するようにプロセッサ実装分類器を訓練し、CSRの存在を示すように酸素測定データの各エポックセグメントに対して確率値を生成する方法も含むことができる。
【0025】
本技術のいくつかの実施形態では、コンピュータにより実行される方法は、1つ又は複数のプログラムされたプロセッサによりチェーンストークス呼吸の発生を検出する。プロセッサの本方法は、測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータにアクセスすることを含むことができる。本方法はまた、血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求めることを含むことができる。本方法は、求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値と、の比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出することを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間は、再飽和期間とすることもでき、測定された血液ガス信号は酸素測定信号とすることもできる。更なる実施形態では、求められた持続時間は平均期間長とすることもでき、検出は、平均期間長が閾値を超えた場合に発生を示すこともできる。いくつかの実施形態では、閾値は判別関数を含む。発生を検出することは、任意選択で、閾値からの距離を求めること、及びその距離を更なる閾値と比較することを含むことができる。本方法はまた、任意選択で、血液ガスデータの飽和度低下周期及び再飽和周期に対して所定の周波数範囲におけるピークの存在を求めること、及び求められた存在を判別関数と比較することを含むことができる。
【0026】
本技術の実施形態はまた、チェーンストークス呼吸の発生を検出する装置も含むことができる。本装置は、測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータのためのメモリを有することができる。本装置はまた、メモリに結合されたプロセッサを有することができる。プロセッサを、(a)血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求め、(b)求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値と、の比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出するように構成することができる。この装置のいくつかの実施形態では、飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間は、測定された血液ガス信号が、任意選択のオキシメータによって測定することができる酸素測定信号である場合、再飽和期間であってもよい。いくつかの実施形態では、この求められた持続時間は平均期間長であってもよく、検出は、平均期間長が、任意選択で判別関数とすることができる閾値を超えた場合に発生を示すこともできる。また、プロセッサにおいて、装置を、更に判別関数からの距離を求め、その距離を更なる閾値と比較することによって発生を検出するように構成することもできる。更なる実施形態では、プロセッサを、血液ガスデータの飽和度低下周期及び再飽和周期に対して所定の周波数範囲におけるピークの存在を判断、その後その判断された存在を判別関数と比較するように構成することができる。
【0027】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約書及び特許請求の範囲に含まれる情報を考慮することによって明らかとなろう。
【0028】
本技術は、限定としてではなく例として、添付図面の各図に示されており、そこでは、同様の参照符号は同様の要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】半時間(1800秒間)の持続時間にわたる患者の酸素測定信号の振幅及び第1の差の例を示すグラフである。
【図2】秒で測定された時間の関数としてCSRの平均飽和持続時間を示すグラフである。
【図3】秒で測定された時間の関数としてOSAの平均飽和持続時間を示すグラフである。
【図4】スペクトル特徴が飽和度のフーリエ変換の最大値と平均値との差である、CSRのスペクトル特徴を示すグラフである。
【図5】スペクトル特徴が飽和度のフーリエ変換の最大値と平均値との差である、OSAのスペクトル特徴を示すグラフである。
【図6】代表的なCSRエポックの酸素飽和度を示すグラフである。
【図7】フーリエ等価周波数の関数としてCSRのグローバルウェーブレットスペクトル(global wavelet spectrum)を示すグラフである。
【図8】秒での時間の関数として酸素飽和度に対する計算された遅延、換気及び遅延換気を示すグラフである。
【図9】決定境界とデータの訓練セットの分布に対するその関係とを示すグラフである。
【図10】決定境界とデータの検証セットの分布に対するその関係とを示すグラフである。
【図11】決定境界とデータの検証セットの分布に対するその関係とを示すグラフである。
【図12】データの分布を変更するか又はCSRに対して酸素測定エポックを分類することに関係するプロセスステップに対する例を示すフローチャートである。
【図13】コンピュータ支援診断ツールとして、CSRの兆候に関して患者をスクリーニングする本技術の分類器の使用を概略的に示す図である。
【図14】患者ごとの受診者動作特性を示すグラフである。
【図15】本技術のいくつかの実施形態のCSR検出及び/又は訓練システムのコンポーネントの更なる図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
本技術の実施形態は、システム、デバイス、分類器及び/又は方法を含むことができる。本明細書では、実施形態例を、添付図面、特に図1〜図13及び図15を参照して説明する。
【0031】
CSRは、換気の中枢神経系制御における不安定が原因であると考えられる周期性呼吸の形態である。CSR患者の呼吸は、呼吸が無呼吸/低呼吸及び過呼吸の繰返しの症状の間で交互に起こる際に、「漸増及び漸減する」一回換気量によって特徴付けられる。圧縮したタイムスケールにおける鼻腔内流量信号の記録は、振幅変調(「AM」)波形に類似するパターンを示す。
【0032】
チェーンストークス呼吸すなわちCSRの期間中、鼻腔内流量信号において肺機能の直接的な尺度として見ることができる漸増及び漸減する一回換気量のパターンは、血中酸素飽和度等の他の心肺パラメータの周期的変化としても存在する。例えば、持続する無呼吸期間中、心肺系のダイナミクスに起因して血中酸素飽和度が低下する可能性がある。パルスオキシメトリを用いる酸素飽和度の測定値は、CSRによってもたらされる換気の上昇及び低下に似た周期的な飽和度低下及び再飽和を示す。
【0033】
CSRにおける血中酸素飽和度の周期的パターンは、逐次発生する一連の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)事象のパターンとは異なる。チェーンストークス呼吸パターンの背後にある病態生理学的機構は、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)のレベルに関連する。低いPaCO2が存在することにより、低炭酸ガス血症に応じて呼吸に対する患者の中枢性ドライブが抑制される可能性があり、これによって、通常、表在呼吸が引き起こされ、後に無呼吸閾値未満で駆動される場合に呼吸の部分的又は完全な停止(withdrawal)が引き起こされ、その結果中枢性睡眠時無呼吸(CSA)がもたらされる。無呼吸期間に続き、後にPaCO2の上昇が発生し、それにより、過度な換気応答(hyper-ventilatory response)が誘発される可能性がある。したがって、PaCO2の低下が開始する可能性があり、そこで周期が正常に繰り返す。
【0034】
この換気に対する振動応答(oscillating response)により、一回換気量が漸増及び漸減し、血中酸素飽和度が徐々に振動する結果となる可能性がある。酸素飽和度の上昇及び低下は遅延するが、通常、過換気又は低換気と同期する可能性がある。心肺相互作用に関連する中枢性呼吸ドライブの基本的な振動が、CSRの間に一意に規則的である酸素測定記録の振動をもたらす。スペクトル特徴は、酸素測定信号におけるこの規則性のパターンをCSRのマーカとして取り込むように意図されている。
【0035】
心機能障害が、CSAの原因となる危険因子であるという証拠が挙がっている。慢性鬱血性心不全(CHF)個体群において、30%〜50%にわたるCSAの有病率が報告されている(Javaheri他「Circulation」(1998;97:2154-2159)、Sin他「Am J Respir Crit Care Med」(1999;160:1101:1106))。PaCO2の高い無呼吸閾値がCSA及びCSRの発症の原因となることも立証されている。
【0036】
純粋なチェーンストークス呼吸の期間は、一般に、PSG検査において、逐次発生する一連のCSA事象として提示される。純粋なチェーンストークス呼吸を引き起こすCSAの発症は、元来は60秒間の典型的な周期長の高炭酸ガス血症である(Eckert他「Chest」(2007;131:595-607))。このCSAは、慢性痛の薬物の投与から発生する突発性CSA又は麻酔によるCSA等の他の形態とは区別されるべきである。これらの形態のCSAは、通常、周期長がはるかに短い。分類器の訓練に用いられる酸素測定記録の選択により、事前スコアリングプロセスの間に臨床専門医によって評価されスクリーニングされるように、こうしたデータは排除される。これにより、対象となる特定の形態のCSAのみが分類器の訓練に用いられることが確実になる。
【0037】
CSR対OSA
チェーンストークス呼吸(CSR)は、通常、鼻腔内流量記録又は気道流量記録等、肺機能の直接測定により観察される周期的な呼吸の形態である。心臓系と肺系との結合に起因して、CSRを、酸素測定信号により交互の飽和低下期間及び再飽和期間として特定することも可能である。したがって、酸素測定信号は、チェーンストークス呼吸の解析のために利用可能な情報の情報源を提供することができる。この手法の利益は、血中酸素飽和度を非侵襲的に測定するオキシメータの使用を含むことができ、血中酸素飽和度は、被験者の健康状態の重要な決定要因である。酸素測定記録は、CSR、又は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の状態等、酸素測定信号に同様に反映され得る他の呼吸異常の発生の兆候を提供することができる。これは、OSAからCSRを識別するために分類器の訓練中に考慮されることが好ましい。
【0038】
OSAは、一般に、上気道の虚脱によって引き起こされる可能性がある。OSA事象の間、PSG検査中の連続した呼吸努力から分かるように、中枢性呼吸ドライブは低下しない。OSA事象に続く初期段階の呼吸は、通常、一回換気量を大きくしようと努力して深く、それは、酸素飽和度の急速な上昇に関連することが多い。したがって、逐次発生する一続きのOSA事象では、迅速に再飽和している酸素飽和度は、OSAの発生を示すものと考えられる。
【0039】
OSA事象の発生は、上気道の力学的状態及び解剖学的構造に密接に関連している。OSAは、再発するように発生する可能性のある喉頭の虚脱によって駆動されるが、CSRと異なり、周期的な呼吸の形態ではない。先行するOSA事象の開始からそれに続くOSA事象の開始までの時間の長さの変動性は、CSRの周期長より短い傾向がある。OSA記録からの酸素測定は、純粋なCSR酸素測定記録の周期長に見られる典型的な規則性がない、飽和度低下及び再飽和のより一過性のパターンを見つけることができる。
【0040】
しかしながら、酸素測定信号は、身体運動又は手足の動きによってもたらされる望ましくないアーティファクトが発生しやすいことにより、CSRの診断に用いるためには禁忌である。成人の記録では、オキシメータは、一般に、指先端又は耳たぶに配置される。酸素測定信号の品質は、オキシメータの光センサのいかなる変位にも非常に影響を受けやすい。モーションアーティファクトは、通常、急激な飽和度低下及び激しい再飽和が発生する期間によって特徴付けられる。飽和度が、酸素測定記録のアーティファクト期間内にゼロパーセントであることが見つかることは珍しいことではない。この期間中は情報の損失がある可能性があり、それは不可避である可能性がある。この問題は、酸素測定信号の使用を、飽和度低下及び再飽和の急激さを考慮する検出方式を組み込むように変更することによって克服することができる。
【0041】
図1は、酸素測定信号102と、その導関数、又は、記録からの導出された酸素測定信号104との例を示す。信号は、CSR中に半時間(1800秒間)の持続時間にわたって記録された。アーティファクトの明確な事例は、ゼロ飽和度への急落及び急な回復として示されている。本技術のシステム又はデバイスでは、信号からのデータを、以下の方法のうちの1つ又は複数に従って処理することができる。
【0042】
アーティファクトを特定する
導出された酸素測定(SpO2)信号104から、信号が−10%を下回る負の値から10%よりも大きな正の値になるアーティファクト期間の開始を特定することができる。導出された酸素測定信号は、アーティファクト期間の開始及び終了の表示を提供し、この表示は、最初の急な負のスパイクとそれに続く急激な正のスパイクとによってマークされている。アーティファクトを、アーティファクトの領域にわたって線形補間することによって除去することができる。
【0043】
酸素測定信号品質指標(QI)
OSAの検出に酸素測定値を採用したが、それら検出方法は、CSRを検出する問題に移行可能ではない。CSRの存在は、換気調節における中枢の不安定性を示す。純粋なチェーンストークス呼吸では、流量は、中枢性無呼吸及び中枢性低呼吸に関連することが多い。閉塞性無呼吸とは対照的に、CSRにおける呼吸の再開は、通常、非常に緩やかであり、それにより再飽和の速度は低速になる。本技術は、平均再飽和期間と、本発明者らによる統計的解析によりCSRのみが10秒間よりも長い再飽和を明示することが分かったという事実とを利用することにより、OSAとCSRとの上記差を考慮する。
【0044】
品質指標を、導出された酸素測定(SpO2)信号104に対して、SpO2が10%等、所定の割合の閾値よりも低下する上記信号のサンプルの数Tを見つけることによって定義することができる。品質指標(QI)を、Nが考慮されるサンプルの総数である場合にT/Nの比として定義することができる。しかしながら、この比が例えば約0.75の閾値を下回る場合、品質指標をゼロに設定することができる。品質指標を比T/Nの関数として定義することも可能である。
【0045】
事象特徴の計算
アーティファクトが特定されると、それらのアーティファクトをデータから除去することができる。残っているデータの信号をローパスフィルタリングしてフィルタリングされた信号を導出することもできる。信号を、まず望ましくなくかつ関心のない高周波数成分を除去するようにフィルタリングすることができる。例えば、使用されるフィルタは、矩形窓を有するフーリエ法を用いて設計されたデジタル有限インパルス応答(「FIR」)フィルタとすることができる。いくつかの実施形態では、フィルタは、0Hz〜0.1Hzの通過帯域と、0.1Hz〜0.125Hzの遷移帯域と、0.125Hzより高い阻止帯域とを有することができる。フィルタの項の数はサンプリング周波数によって変化する。時系列を点毎にフィルタベクトルで畳み込むことによって、信号をフィルタリングすることができる。
【0046】
再飽和の次の連続する期間を検出することができる。期間の長さを、ベクトルの成分として格納することができる。そして、事象特徴を、ベクトルの成分の平均として計算することができる。事象特徴は、品質指標値に関連付けることができる。したがって、CSR検出の品質に関する情報を臨床医に提供するために、特定の事象特徴に基づくCSRの判断とともに品質指標値を出力することができる。
【0047】
酸素測定信号から事象を抽出する1つの代替形態は、2つのフィルタリングされた信号を導出し、その後それらの変化する振幅の比較を実行して飽和度低下事象又は再飽和事象を枠に入れることとすることができる。これらの導出された信号のうちの第1の信号に対するフィルタは、長期飽和信号(SLong)を表すように非常に低いカットオフ周波数を有するものとする。導出された信号のうちの第2の信号に対するフィルタは、短期飽和信号(SShort)を表すように比較的高いカットオフ周波数を有することができる。SShortがSLongの割合としての閾値より低下すると、それを、飽和度低下事象の開始を記録するためのトリガーとみなすことができる。SShortがその後SLongを上回る閾値よりも上昇すると、これを、飽和度低下事象の終了として記録するトリガーとみなすことができる。再飽和事象を取り込むために同様のプロセスを採用することができる。
【0048】
スペクトル特徴(SF)の計算
無呼吸/低呼吸と過呼吸との間の周期的交代により、飽和度低下及び再飽和が遅延するが呼吸と同期するようになることが多い。SpO2において観察される振動は複数の要因によって決まり、そのうちの1つは無呼吸の持続時間である。長い無呼吸は大きい飽和度低下に関連する。図2及び図3は、秒単位で測定された時間の関数として、OSAの平均飽和持続時間(図3)と比較したCSRの平均飽和持続時間(図2)の分布を示す。さまざまなCSR酸素測定パターンの観察により、閉塞性無呼吸の連続した期間中における酸素測定パターンの一過性の特徴とは対照的に、より高い規則性が見つけられる。フーリエ変換を用いて、スペクトル特徴は、0.083Hz〜0.03Hzに近い領域においてピークの存在を測定することができる。
【0049】
より長い周期時間にわたり飽和度低下し再飽和する傾向を、CSR異常のマーカとみなすことができる。これを、フーリエ変換技法を用いて個々の周波数成分及び高調波を求めることによって、検出又は認識することができる。深い覚醒呼吸を伴う無呼吸後のOSA事象の終了中の迅速な再飽和は、より一過性の方式の飽和度低下パターン及び再飽和パターンを与える。これにより、CSRのより規則的な飽和度低下パターン及び再飽和パターンから周波数特性が区別される。
【0050】
いくつかの実施形態では、以下のステップ例のうちのいくつか又はすべてを実施して、フーリエ変換解析を用いてスペクトル特徴を求めることができる。
1.アーティファクトを除去する
2.酸素測定信号全体を別個の30分の50%重なるエポックに分割する
3.100%から信号を減算する
4.初期値から結果の信号を減算してこの値を格納する
5.結果の信号をローパスフィルタリングする
6.フィルタリングした信号に格納した初期値を加算する
7.100%から結果の信号を減算する
8.平均値により信号をトレンド除去する
9.ユークリッドノルムを用いて結果の信号を正規化する
10.5つの半分重なっているエポックによりスペクトログラムを計算する
11.スペクトログラムの実数値及び絶対値を取得する
12.0.083Hz〜0.03Hz領域を抽出し新たなベクトルを形成する
13.スペクトル特徴(SF)を、最大値と平均値との差として計算する。
【0051】
図4及び図5は、上述したようにフーリエ変換の最大値と平均値との差として、CSR及びOSAに対するスペクトル特徴の分布をそれぞれ示す。
【0052】
ウェーブレット変換の使用
連続ウェーブレット変換を適用することにより、信号の持続時間にわたって時間周波数情報を与えることも可能である。図6は、CSRがCSRエポック等の代表的なエポックE1Inにおいて発生している酸素飽和度を示し、ウェーブレット変換されたデータにより、多くの場合、2次元データにおいて見つけるか又は検出することができるリッジになる。ウェーブレットスペクトルを、使用されるウェーブレット変換のタイプに応じて、スケール領域(無次元)からフーリエ等価周波数(Hz)に変換することができる。図7は、ウェーブレット関数としてモルレー(Morlet)ウェーブレットを用いるフーリエ等価周波数の関数としてのグローバルウェーブレットスペクトルを示す。CSRの存在が強いエポックは、0.02Hzフーリエ等価領域の周囲にスペクトルピークを見つけることが多い。これは、図7に示すように、フーリエベースのスペクトルピークに十分に対応する。したがって、本技術のいくつかの実施形態では、グローバルウェーブレットスペクトルのピークを、酸素測定信号におけるCSRの解析のためのスペクトル特徴として用いることも可能である。
【0053】
飽和の遅延
無呼吸/低呼吸と過呼吸との周期的交代により、飽和度低下及び再飽和が遅延するが呼吸と同期することになることが多い。この飽和の遅延(「DoS」)度応答は、複雑な心臓・呼吸ダイナミクスの結果である。いくつかの実施形態において、以下の方法のステップのうちのいくつか又はすべてを用いて、遅延をアルゴリズムによって抽出することができる。
1.流量信号を二乗する
2.二乗した流量信号をローパスフィルタリングする
3.結果の信号の平方根をとる
4.信号を酸素測定信号の等価周波数にダウンサンプリングして換気信号を得る
5.換気信号を絶対最大値によって正規化する
6.100%から酸素測定信号を減算する
7.絶対最大値によって正規化される
8.1.0からSpO2を減算する
9.正規化したSpO2信号をダウンサンプリングし正規化した換気信号と相互相関する
10.達成した最大相互相関に対するオフセットを見つける
11.サンプルにおける遅延を、SpO2信号の最後の指標からのサンプルの数として計算する
12.サンプルの遅延をサンプリングレートで除算して秒単位で遅延を得る。
任意選択で、上記ステップ1及びステップ3において流量信号に対し上述した二乗演算及び平方根演算を実行する代りとして、流量信号に対する絶対値演算を実施することができる。
【0054】
図8は、秒単位での時間の関数としてのフィルタリングされたSpO2信号と、計算された遅延を用いるシフトした換気信号と、をプロットすることにより、こうした計算の結果を示す。
【0055】
CSRを識別するよう分類器を訓練する
本技術の分類器を訓練するように、事象特徴及びフーリエベースのスペクトル特徴を選択することができる。実施形態例に対する訓練を、臨床診断検査の90のEmbletta記録を用いて行った。
【0056】
分類器のアルゴリズムの開発のために、睡眠ポリグラフ(PSG)データの2つの独立したセットを使用した。第1のセット(本明細書ではEssenEmbla検査と呼ぶ)は、Essen、North-Rhine Westphalia、Germanyの睡眠施設で行われた、中枢性睡眠時無呼吸(CSA)、OSA及びそれら両方の組合せを示している90人の患者を含む診断臨床試験であった。EssenEmbla検査を、訓練セットとして用いた。第2のセット(BadO)を、Bad Oeynhausen、North-Rhine Westphalia、Germanyで行った。BadOデータセットの有病率は、CSA、OSA及びそれら両方の組合せの記録も含む。これらは8時間の一晩の記録であり、後に、訓練セッションの後に分類器を評価するための試験セットとして用いた。
【0057】
分類器のアルゴリズムの訓練を容易にするために、最初に、データの両セットを臨床医が事前分類した。記録の各々を、ResMedにおいて常駐の臨床専門医により30分セグメントでスコアリングし、そこでは、優勢な事象の指定は、PSGソフトウェアを備えたコンピュータを介してオフライン目視検査によって行う。事象に対し、以下の5つの一般的なタイプの事象のうちの1つに指定した。
1.無呼吸なし
2.CSR
3.OSA
4.混合型無呼吸
5.事象の組合せ
【0058】
この事前分類プロセスの結果として、各8時間記録により、各々が優勢な事象の指定されたクラスを有する、全体で16の重ならないエポックがもたらされた。90人の患者が関与したEssenEmbla訓練セットでは、訓練に利用できる合計1440のクラスのデータがあった。30分未満のいかなる残りのエポックも評価しなかった。しかしながら、残りのエポックは、任意選択で、患者のいくつかの呼吸周期よりも長い任意の期間とすることができる。例えば、残りのエポックは5分間より長くすることができる。最も好ましい残りのエポックは30分間とすることができる。
【0059】
この事前スコアリングプロセス中、臨床専門医は、優勢な事象を求め半時間セグメントの各々に名称を割り当てるのに役立てるように、利用可能なPSGチャネル記録のうちの任意のものを利用した。これらには、鼻腔内流量、デジタル酸素測定、呼吸努力の尺度、重力式表示器による睡眠時姿勢、心拍数、脳波記録(EEG)、心電図記録(ECG)、筋電図記録(EMG)及び眼電図記録(EOG)が含まれていた。訓練セットの事前分類された名称を用いて、酸素測定及び流量記録を、コンピュータプロセッサ及びソフトウェアにより、解析のために厳密に30分間のデータの重ならないエポックにセグメント化した。その後、特定の事前分類された事象の選択されたエポックを、CSRの指標として用いられる特定の特徴を探索するために用いた。データを半時間エポックに事前分類することにより、特定の短期特徴の定量的重要性が、記録全体の長さにわたって希薄化されなかった。
【0060】
各エポックに対する時間の分割は、各CSR事象の通常の発生及び長さを考慮することに基づいていた。CSRの漸増及び漸減するパターンの平均90秒よりも長い周期長の場合、酸素飽和が同様のペースで飽和度低下し再飽和するものと仮定すると、半時間内で取り込むことができる20個の連続したCSRの周期があり、それは解析には十分であった。米国睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine:AASM)が1999年に発行したPSG診断基準の規格ガイドラインによれば、平均して、10秒よりも長い呼吸停止の事象が毎時5回〜15回見つかる場合として定義されている軽度の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が、記録に見られる。軽度のOSAがある30分間エポックでは、半時間内に少なくとも2.5の事象がある。
【0061】
決定境界を、ベイズ分類技法を用いて形成した。この方法は、正規分布データに適しており、最小限のリスクで2つのクラス(CSR及び非CSR)を最適に分離する判別式を見つけることを目的とする。決定境界を導出するために他の分類方法を用いることもできる。こうした例として、ニューラルネットワーク又はk最近傍法を挙げることができる。
【0062】
図9は、エポック毎の訓練の後の決定境界及び該決定境界とデータ分布との関係を示す。直線は、線形判別関数を表し、楕円線は、ベイズ分類に従う二次判別関数を表す。判別関数は、空間をCSR領域と非CSR領域とに分割する。
【0063】
図10及び図11は、エポック毎に検証試験データセットに適用される訓練された決定境界を示す。SpO2記録全体に対する全確率を、以下の一連のステップを用いて導出することができる。
1.以下のように、シグモイド関数を用いて垂直距離を決定境界にマッピングすることにより確率を計算する
【数1】
2.確率が0.5等の指定された閾値よりも大きい場合、エポックをCSRとして分類する
3.エポックのいずれかがCSRとして分類される場合、酸素測定記録をCSRの可能性が高いものとして分類する。
【0064】
図12は、特徴抽出及び分類に対して上述したステップ例のフローチャートである。こうした方法を、ソフトウェアとして、又は図15に更に示すような検出デバイスの回路若しくはメモリにおいて実装することができる。
【0065】
患者毎の分類及び結果
確率値
分類器が患者毎にCSRをいかによく識別するかを理解するために、分類器を、各エポックに対して2値出力(CSR又は非CSR)を単純に決定するように実装することができるが、そうする代わりに、各エポックセグメントに対して0と1との間の確率値を生成するように実装することができる。各導出された平均再飽和持続時間及びスペクトル特徴に対して、特徴空間のデータ点から決定境界まで垂直な距離を計算する。その後、この垂直距離を、以下のように確率が決定線からの距離の関数である確率値にマッピングする。
【数2】
【0066】
距離がゼロである、すなわち(d=0)で特徴値が境界と一致している場合、確率は正確に0.5である。距離が正の無限大まで増大すると、確率は漸近的に1.0に向かう傾向がある。距離が負の無限大まで増大すると、確率は漸近的に0.0に向かう傾向がある。CSRに対応する特徴空間の領域を本実施形態では判別式からの正の距離として定義することにより、CSRを、0.5よりも大きな任意の結果の確率値として定義することができる。本技術を、こうした判別関数からの距離によってCSRの存在を区別する他の値をもたらすように実施することができることが理解される。
【0067】
患者毎に酸素測定記録を分類するプロセスにおいて、分類器を実施するアルゴリズムを実装したプロセッサを、信号の全長を通して反復して、各半時間のエポックに対して確率値を計算するようにプログラムすることができ、そこでは、窓は、反復毎に半エポック(すなわち、1/4時間)増大する。反復は、すべての半時間エポックが処理され、記録のための確率値のベクトルを得ることができるまで進行する。
【0068】
単一患者/記録に対するCSの確率全体を、分類されたすべてのエポックに対して見つけられる最大確率を用いて計算することができる。その後、分類器の全体的な性能を、CSの決定のための閾値を組み込むことによって、試験セットに対して評価することができる。これは、図14に示す例等、受診者動作特性(ROC)をもたらすことができる。
【0069】
図14においてROC曲線における各点は、その隣接点にわたる確率の0.05の増加/減少を表す。最大面積は、感度が0.8148であり特異度が0.8571であるときに0.75の閾値確率で達成される。閾値確率を0.8まで更に上昇させることにより、感度を0.6667に低減して完全な特異度を達成することができる。以下の表は、患者毎の重要な性能尺度を要約している。
選択された閾値(最大面積に基づく) 0.75
感度 0.814815
特異度 0.857143
想定された事前確率 0.004
陽性的中率(PPV) 0.02069
陰性的中率(NPV) 0.99883
偽陽性率(False Alarm Rate:FAR) 0.97931
偽陰性率(False Reassurance Rate:FRR) 0.00117
陽性尤度比(LR+) 5.703704
陰性尤度比(LR−) 0.216049
【0070】
この表は、CSの患者に対して0.004の事前確率を想定することに留意されたい。この推定は、Jean-Louis Pepin他「Sleep Medicine Reviews」((2006) 10, 33-47)において報告された、年齢が65歳を超える、鬱血性心不全(CHF)を患っている米国人の0.01の有病率に基づく。CHF個体群内で、CSRに関する文献では1/3〜1/2の有病率が一般に報告されている。CHF個体群内のCSに対する有病率値を0.4とすることにより、事前確率が、0.01に0.4を掛けた0.004に等しい値として計算される。
【0071】
陽性尤度比(LR+)は、患者が全体的にみてCS陽性として分類される場合に、真にCSである患者の予備検査確率が、5.7倍上昇することを示す。同様に、陰性尤度(LR−)は、患者が全体にみてCS陰性として分類される場合、実際にCSである患者の予備検査確率は0.22倍低下することを示す。LR+及びLR−は合わせて、臨床医に対し、診断検査の強度を示す。Dan Mayerによる自身の本「Essential Evidence-Based Medicine」における診断検査の定性的強度に対する評定に従って、それぞれ6及び0.2のLR+及びLR−は「非常によい」とみなされる。したがって、患者毎の分類器例の診断性能を、「非常によい」に近いものとみなすことができる。
【0072】
応用
プログラムされたプロセッサ又は他の処理デバイスによって実装される場合のこうした分類器の1つの応用は、臨床医が、コンピュータ支援診断ツールとしてCSRの兆候がないか多数の患者をスクリーニングするのを可能にするというものである。こうした応用の一例を、在宅睡眠検査の環境で用いることができ、そこでは、睡眠医が、オキシメータを備えたApneaLink(商標)等の携帯型SDBスクリーニングデバイスを患者に支給する。好ましくは、睡眠データを、医師が後に解析するために一晩収集することができる。内科医又は臨床医によるこの解析を、オフラインで、すなわち1回又は複数回の睡眠セッションにおける測定デバイスの使用の後に行うことができる。例えば、分類器を具現化するアルゴリズムを、Somnologica(商標)(Emblaと言う名称の会社製)又はApneaLink(商標)(ResMed Limited製)等、睡眠検査解析ソフトウェア用のモジュールとして実装することができる。これにより、CSRの自動スコアリングを、酸素測定信号トレース又はグラフに対してマークすることができる。実施形態例を図13の概略図に示す。相補的特徴は、アルゴリズムによって計算される分類結果に基づいてレポートを自動に生成するモジュールである。その後、臨床医は、自身の意思決定プロセスを支援するために要約として該レポートを用いることができる。任意選択で、こうした分類器アルゴリズムを、SDBスクリーニング装置内で実施することにより、上述したようにCSの分類を有する表示メッセージ用のデータを生成することができる。
【0073】
さらに、いくつかの実施形態では、本技術の上述した酸素測定分類器を、米国特許出願公開第20080177195号に開示されている流量分類器等の流量分類器とともに用いるか又は実施することができ、上記出願の開示内容はすべて参照により本明細書に援用される。例えば、こうした実施形態では、1つ又は複数のプログラムされたプロセッサを備えたコントローラは、酸素測定分類器アルゴリズムと流量分類器アルゴリズムとの両方を含むことができる。流量分類器は、供給又は測定された流量を検出し、その後、判別関数により流量を解析し、その後、閾値量に基づいて流量を分類する。そして、コントローラによって生成されたCS確率指標は、両分類器アルゴリズムに、例えば各々からの確率データを結合することにより、両分類器から引き出された最終的な結論として両確率の平均か又はいずれかの確率の最大値に基づくもの等の方式を用いることにより、基づくことができる。こうしたコントローラは、精度を向上させ、概してより優れた結果をもたらすことができる。
【0074】
したがって、本技術の実施形態は、分類器、閾値、関数及び/又は本明細書においてより詳細に説明したアルゴリズム等、特定のCSR検出及び/又は訓練方法を実施する1つ又は複数のプロセッサを有するデバイス又は装置を含むことができる。したがって、デバイス又は装置は、集積チップ、メモリ及び/又は他の制御命令、データ若しくは情報記憶媒体を含むことができる。例えば、こうした検出及び/又は訓練方法を含むプログラムされた命令を、デバイス又は装置のメモリ内の集積チップに符号化することができる。こうした命令を同様に又は代替的に、適切なデータ記憶媒体を用いてソフトウェア若しくはファームウェアとしてロードすることができる。こうしたコントローラ又はプロセッサにより、デバイスを、酸素測定信号からのデータの処理に使用することができる。したがって、プロセッサは、本明細書においてより詳細に説明する実施形態において述べたように、CSR発生又は確率の評価を制御することができる。さらに、いくつかの実施形態では、デバイス又は装置自体を、任意選択で、血液ガス自体を測定し、その後本明細書で述べた方法を実施するように、オキシメータ又は他の血液ガス測定デバイスを備えるように実施することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ制御命令を、汎用コンピュータによって使用されるソフトウェアとしてコンピュータ可読記録媒体に含めることができ、それにより、汎用コンピュータは、ソフトウェアを汎用コンピュータにロードすると本明細書で述べた方法のうちの任意のものに従って専用コンピュータとしての役割を果たすことができる。
【0075】
図15に、実施形態の一例を示す。図では、CSR検出デバイス1501又は汎用コンピュータは、1つ又は複数のプロセッサ1508を有することができる。デバイスは、本明細書に記載したCS検出レポート、結果又はグラフをモニター又はLCDパネル等に出力するディスプレイインターフェース1510を有することも可能である。本明細書に記載した方法を起動するように、例えばキーボード、マウス等、ユーザ制御/入力インターフェース1512を設けることができる。デバイスはまた、プログラミング命令、酸素測定データ、流量データ等のデータを受け取るセンサ又はデータインターフェース1514を含むこともできる。デバイスはまた、通常、メモリ/データ記憶コンポーネントも有することができる。これらは、本明細書においてより詳細に説明したように、1522において血液ガスデータ/酸素測定信号処理(例えば、再処理方法、フィルタ、ウェーブレット変換、FFT、遅延計算)に対するプロセッサ制御命令を含むことができる。それらはまた、1524において分類器訓練方法に対するプロセッサ制御命令も含むことができる。それらはまた、1526において、血液ガスデータ及び/又は流量データに基づくCSR検出方法(例えば、特徴抽出方法、分類方法等)に対するプロセッサ制御命令も含むことができる。最後に、それらはまた、検出されたCSR事象/確率、閾値/判別関数、スペクトル特徴、事象特徴、血液ガスデータ/酸素測定データ、流量データ、CSRレポート、平均再飽和持続時間、再飽和期間等、これらの方法に対する格納されたデータ1528を含むこともできる。
【0076】
実際的かつ好ましい実施形態に対して現時点で考慮されることに関連して本技術について説明したが、本技術は、開示した実施形態には限定されるべきではなく、逆に、本技術の趣旨及び範囲内に含まれるさまざまな変更及び等価構成を包含するように意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素測定信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸の存在を示す方法であって、前記酸素測定信号からアーティファクト酸素測定期間を特定し除去して第2の信号を生成することと、プロセッサにより、前記第2の信号における連続的な再飽和の期間の平均長さを求め、該求められた平均長さの程度に基づいてチェーンストークス呼吸の陽性表示を生成することと、を含む方法。
【請求項2】
前記陽性表示は、前記求められた平均長さの程度が所定の閾値よりも大きい場合に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の信号をフィルタリングして高周波数を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の信号に対して周波数解析を行って、前記酸素飽和度における振動の程度を求めることを更に含み、チェーンストークス呼吸の陽性表示はより長い周期時間にわたる振動に対して生成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の信号は、前記酸素飽和度における振動の程度を求めるようにフーリエ解析され、チェーンストークス呼吸の陽性表示は、約0.02Hzのフーリエベースのスペクトルにおけるピークに対して生成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の信号は、前記酸素飽和度における振動の程度を求めるようにウェーブレット解析され、チェーンストークス呼吸の陽性表示は、より長い周期時間にわたる振動に対して生成される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
酸素測定信号及び換気流量信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸の存在を示す方法であって、
プロセッサにより、無呼吸又は低呼吸のいずれか及び過呼吸を有する換気流量レベルデータと比較された血中酸素飽和度データの遅延を求めることと、
所定の閾値を上回る求められた遅延に対してチェーンストークス呼吸の陽性表示を生成することと、
を含む方法。
【請求項8】
酸素測定信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸を識別するように分類器を訓練する方法であって、
睡眠ポリグラフデータを、各々が優勢な事象の指定されたクラスを有する重ならないエポックを取得するように事前分類することと、
プロセッサにより、酸素測定記録及び流量記録を、所定の長さの時間を有するデータの重ならないエポックにセグメント化することと、
プロセッサにより、前記エポックによって事象のチェーンストークス呼吸クラスと非チェーンストークス呼吸クラスとを識別するように、決定境界を形成することと、
を含む方法。
【請求項9】
前記所定の長さの時間が5分間よりも長い、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定の長さの時間が実質的に30分間である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
各事象に対し前記決定境界からの距離を求め、各エポックに対し前記距離を確率値に正規化すること、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の長さの時間が実質的に30分間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記長さの等しいエポックは前記記録と同程度の長さである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エポック長は、実質的に代表的な一連の低呼吸・過呼吸の長さである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酸素測定信号及び換気流量信号からチェーンストークス呼吸の存在を検出するデバイスであって、アーティファクト酸素測定期間を特定しかつ前記酸素測定信号から除去して第2の信号を生成し、前記第2の信号における連続した再飽和期間の平均長さを求め、前記平均長さが所定の閾値を超える場合、チェーンストークス呼吸の陽性表示を返す、デバイス。
【請求項16】
前記デバイスが、前記第2の信号から高周波数をフィルタリングする、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記酸素測定信号は第1の分類器によって第1の閾値のセットと比較され、前記換気流量信号は、第2の分類器により第2の閾値のセットと比較される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
1つ又は複数のプログラムされたプロセッサによりチェーンストークス呼吸の発生を検出する、コンピュータにより実行される方法であって、
測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータにアクセスすることと、
前記血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求めることと、
前記求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値との比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出することと、
を含む方法。
【請求項19】
飽和度が変化する前記1つ又は複数の連続した期間は再飽和期間を含み、前記測定された血液ガス信号は酸素測定信号を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記求められた持続時間は平均期間長を含み、前記検出することは、前記平均期間長が前記閾値を超える場合に発生を示す、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記閾値は判別関数を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記発生を検出することは、前記閾値からの距離を求めることと、該距離を更なる閾値と比較することと、を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記血液ガスデータの飽和度低下周期及び再飽和周期に対し所定周波数範囲においてピークの存在を判断することと、該判断された存在を前記判別関数と比較することと、を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
アーティファクトデータを除去するように前記血液ガスデータを処理することを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記血液ガスをオキシメータによって測定することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
チェーンストークス呼吸の発生を検出する装置であって、
測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータのためのメモリと、
前記メモリに結合され、(a)前記血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求め、(b)前記求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値との比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出するように構成されたプロセッサと、
を具備する装置。
【請求項27】
飽和度が変化する前記1つ又は複数の連続した期間は再飽和期間を含み、前記測定された血液ガス信号は酸素測定信号を含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記求められた持続時間は平均期間長を含み、前記検出することは、前記平均期間長が前記閾値を超える場合に発生を示す、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記閾値は判別関数を含む、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プロセッサは、更に前記判別関数からの距離を求め、該距離を更なる閾値と比較することにより、前記発生を検出するように構成される、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記プロセッサは、前記血液ガスデータの飽和度低下周期及び再飽和周期に対し所定周波数範囲においてピークの存在を判断し、該判断された存在を前記判別関数と比較するように更に構成される、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記プロセッサは、アーティファクトデータを除去するように前記血液ガスデータを処理するように更に構成される、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記プロセッサに結合された、前記血液ガス信号を生成するオキシメータを更に具備する、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
酸素測定信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸の存在を示す装置であって、
前記酸素測定信号からアーティファクト酸素測定期間を特定し除去して第2の信号を生成する手段と、
前記第2の信号における連続的な再飽和の期間の平均長さを求め、該求められた平均長さの程度に基づいてチェーンストークス呼吸の陽性表示を生成する手段と、
を具備する装置。
【請求項35】
酸素測定信号及び換気流量信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸の存在を示す装置であって、
無呼吸又は低呼吸のいずれか及び過呼吸を有する換気流量レベルデータと比較される血中酸素飽和度データの遅延を求める手段と、
所定の閾値を上回る求められた遅延に対してチェーンストークス呼吸の陽性表示を生成する手段と、
を具備する装置。
【請求項36】
チェーンストークス呼吸の発生を検出する装置であって、
測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータにアクセスする手段と、
前記血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求める手段と、
前記求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値と、の比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出する手段と、
を具備する装置。
【請求項1】
酸素測定信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸の存在を示す方法であって、前記酸素測定信号からアーティファクト酸素測定期間を特定し除去して第2の信号を生成することと、プロセッサにより、前記第2の信号における連続的な再飽和の期間の平均長さを求め、該求められた平均長さの程度に基づいてチェーンストークス呼吸の陽性表示を生成することと、を含む方法。
【請求項2】
前記陽性表示は、前記求められた平均長さの程度が所定の閾値よりも大きい場合に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の信号をフィルタリングして高周波数を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の信号に対して周波数解析を行って、前記酸素飽和度における振動の程度を求めることを更に含み、チェーンストークス呼吸の陽性表示はより長い周期時間にわたる振動に対して生成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の信号は、前記酸素飽和度における振動の程度を求めるようにフーリエ解析され、チェーンストークス呼吸の陽性表示は、約0.02Hzのフーリエベースのスペクトルにおけるピークに対して生成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の信号は、前記酸素飽和度における振動の程度を求めるようにウェーブレット解析され、チェーンストークス呼吸の陽性表示は、より長い周期時間にわたる振動に対して生成される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
酸素測定信号及び換気流量信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸の存在を示す方法であって、
プロセッサにより、無呼吸又は低呼吸のいずれか及び過呼吸を有する換気流量レベルデータと比較された血中酸素飽和度データの遅延を求めることと、
所定の閾値を上回る求められた遅延に対してチェーンストークス呼吸の陽性表示を生成することと、
を含む方法。
【請求項8】
酸素測定信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸を識別するように分類器を訓練する方法であって、
睡眠ポリグラフデータを、各々が優勢な事象の指定されたクラスを有する重ならないエポックを取得するように事前分類することと、
プロセッサにより、酸素測定記録及び流量記録を、所定の長さの時間を有するデータの重ならないエポックにセグメント化することと、
プロセッサにより、前記エポックによって事象のチェーンストークス呼吸クラスと非チェーンストークス呼吸クラスとを識別するように、決定境界を形成することと、
を含む方法。
【請求項9】
前記所定の長さの時間が5分間よりも長い、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定の長さの時間が実質的に30分間である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
各事象に対し前記決定境界からの距離を求め、各エポックに対し前記距離を確率値に正規化すること、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の長さの時間が実質的に30分間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記長さの等しいエポックは前記記録と同程度の長さである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エポック長は、実質的に代表的な一連の低呼吸・過呼吸の長さである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酸素測定信号及び換気流量信号からチェーンストークス呼吸の存在を検出するデバイスであって、アーティファクト酸素測定期間を特定しかつ前記酸素測定信号から除去して第2の信号を生成し、前記第2の信号における連続した再飽和期間の平均長さを求め、前記平均長さが所定の閾値を超える場合、チェーンストークス呼吸の陽性表示を返す、デバイス。
【請求項16】
前記デバイスが、前記第2の信号から高周波数をフィルタリングする、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記酸素測定信号は第1の分類器によって第1の閾値のセットと比較され、前記換気流量信号は、第2の分類器により第2の閾値のセットと比較される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
1つ又は複数のプログラムされたプロセッサによりチェーンストークス呼吸の発生を検出する、コンピュータにより実行される方法であって、
測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータにアクセスすることと、
前記血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求めることと、
前記求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値との比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出することと、
を含む方法。
【請求項19】
飽和度が変化する前記1つ又は複数の連続した期間は再飽和期間を含み、前記測定された血液ガス信号は酸素測定信号を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記求められた持続時間は平均期間長を含み、前記検出することは、前記平均期間長が前記閾値を超える場合に発生を示す、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記閾値は判別関数を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記発生を検出することは、前記閾値からの距離を求めることと、該距離を更なる閾値と比較することと、を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記血液ガスデータの飽和度低下周期及び再飽和周期に対し所定周波数範囲においてピークの存在を判断することと、該判断された存在を前記判別関数と比較することと、を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
アーティファクトデータを除去するように前記血液ガスデータを処理することを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記血液ガスをオキシメータによって測定することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
チェーンストークス呼吸の発生を検出する装置であって、
測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータのためのメモリと、
前記メモリに結合され、(a)前記血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求め、(b)前記求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値との比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出するように構成されたプロセッサと、
を具備する装置。
【請求項27】
飽和度が変化する前記1つ又は複数の連続した期間は再飽和期間を含み、前記測定された血液ガス信号は酸素測定信号を含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記求められた持続時間は平均期間長を含み、前記検出することは、前記平均期間長が前記閾値を超える場合に発生を示す、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記閾値は判別関数を含む、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プロセッサは、更に前記判別関数からの距離を求め、該距離を更なる閾値と比較することにより、前記発生を検出するように構成される、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記プロセッサは、前記血液ガスデータの飽和度低下周期及び再飽和周期に対し所定周波数範囲においてピークの存在を判断し、該判断された存在を前記判別関数と比較するように更に構成される、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記プロセッサは、アーティファクトデータを除去するように前記血液ガスデータを処理するように更に構成される、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記プロセッサに結合された、前記血液ガス信号を生成するオキシメータを更に具備する、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
酸素測定信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸の存在を示す装置であって、
前記酸素測定信号からアーティファクト酸素測定期間を特定し除去して第2の信号を生成する手段と、
前記第2の信号における連続的な再飽和の期間の平均長さを求め、該求められた平均長さの程度に基づいてチェーンストークス呼吸の陽性表示を生成する手段と、
を具備する装置。
【請求項35】
酸素測定信号及び換気流量信号によって測定される血中酸素飽和度からチェーンストークス呼吸の存在を示す装置であって、
無呼吸又は低呼吸のいずれか及び過呼吸を有する換気流量レベルデータと比較される血中酸素飽和度データの遅延を求める手段と、
所定の閾値を上回る求められた遅延に対してチェーンストークス呼吸の陽性表示を生成する手段と、
を具備する装置。
【請求項36】
チェーンストークス呼吸の発生を検出する装置であって、
測定された血液ガス信号を表す血液ガスデータにアクセスする手段と、
前記血液ガスデータから血液ガスの飽和度が変化する1つ又は複数の連続した期間の持続時間を求める手段と、
前記求められた持続時間と、チェーンストークス呼吸に起因した飽和度変化と閉塞性睡眠時無呼吸に起因した飽和度変化とを区別するように導出された閾値と、の比較から、チェーンストークス呼吸の発生を検出する手段と、
を具備する装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−523935(P2012−523935A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506278(P2012−506278)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000416
【国際公開番号】WO2010/121290
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000416
【国際公開番号】WO2010/121290
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD
【Fターム(参考)】
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