説明

酸素濃度可変空間における安全管理システム及び安全管理方法

【課題】入室者の個別的な状態等に応じて酸素濃度を調節することで、低酸素濃度化による防火性能を必要以上に損なうことなく、入室者の安全を確保することができる、酸素濃度可変空間における安全管理システム及び安全管理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】酸素濃度を可変とした対象空間1に入室する入室者の安全を管理するための安全管理システムであって、対象空間1の酸素濃度を、少なくとも通常酸素濃度と低酸素濃度との間で可変させる酸素濃度調節ユニット12と、入室者を識別するための識別情報を取得するIDカード読取装置6、7と、このIDカード読取装置6、7にて取得された識別情報に基づいて、入室者の安全確保に関する所定の制御を行う低酸素環境監視制御盤13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃度を可変とした対象空間に入室する入室者の安全を管理するための、酸素濃度可変空間における安全管理システム及び安全管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間の出入りが少ない空間を低酸素濃度化することによって、この空間における火災を未然に防ぐことができる防火システムが提案されている。このような従来の防火システムにおいては、人間の不在時には、不活性ガス供給装置を用いて対象空間に不活性ガスを充満させることによって、この対象空間を不燃焼雰囲気にし、人間の在室時には、外気供給装置を用いて対象空間に外気を供給することによって、この対象空間を人間が生存できる酸素濃度にすることができる。このシステムによれば、不燃焼雰囲気にしている時には、対象空間での火災発生を防止でき、人間が生存できる酸素濃度にしている時には、対象空間に人間が入っても健康上の支障を生じさせることがないという利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、酸素濃度を通常濃度としている状態のみならず、通常濃度よりも低くしている状態においても、室内に何らかの理由によって人間が出入りする可能性がある。例えば、低酸素濃度環境で保管されている各種のデータや美術品等を取り扱いたい場合、低酸素濃度環境で可燃物を取り扱いたい場合、低酸素濃度環境で各種の実験を行いたい場合、あるいは、低酸素濃度環境に慣れるためのトレーニングを行いたい場合が考えられる。従って、このような場合においても、人間の安全をシステム的に確保することが要望される。このため、対象空間への人間の出入りを人体センサにて検出し、人間が入室した場合には、警報装置を作動させると共に、室内に空気を供給して、酸素濃度を人間の生存に支障のない濃度に調節することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−276428号公報
【特許文献2】特開2003−102858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシステムでは、人間が入室した場合、その入室時間や個人毎の耐環境性等を全く考慮することなく一律に酸素濃度を上げていたので、入室者の健康に支障がない状態であっても酸素濃度を上げてしまうことによって、低酸素濃度化による本来の防火性能を必要以上に損ねてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、入室者の個別的な状態等に応じて酸素濃度を調節することで、低酸素濃度化による防火性能を必要以上に損なうことなく、入室者の個別的な状態に応じて当該入室者の安全を確保することができる、酸素濃度可変空間における安全管理システム及び安全管理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、酸素濃度を可変とした対象空間に入室する入室者の安全を管理するための安全管理システムであって、前記対象空間の酸素濃度を、少なくとも通常酸素濃度と低酸素濃度との間で可変させる酸素濃度調節手段と、前記入室者を識別するための識別情報を取得する識別情報取得手段と、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて、前記入室者の安全確保に関する所定の制御を行う安全確保制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項1に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、参照情報を取得する参照情報取得手段を備え、前記安全確保制御手段は、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報と、前記参照情報取得手段にて取得された前記参照情報とに基づいて、前記所定の制御を行うこと、を特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項2に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記参照情報は、前記入室者の生体状態を示す生体情報であり、前記参照情報取得手段は、前記入室者の前記生体情報を取得する生体情報取得手段であること、を特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項2又は3に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記参照情報は、前記入室者の属性を示す属性情報であり、前記参照情報取得手段は、前記入室者の前記属性情報を取得する属性情報取得手段であること、を特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項2から4のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記参照情報は、前記対象空間における前記入室者の位置を示す位置情報であり、前記参照情報取得手段は、前記入室者の前記位置情報を取得する位置情報取得手段であること、を特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項2から5のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記参照情報は、前記対象空間における火災の有無を示す火災検知情報であり、前記参照情報取得手段は、前記対象空間における火災の有無を検知する火災検知手段であること、を特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項1から6のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記安全確保制御手段による制御条件を示す制御条件情報と、少なくとも前記識別情報とを、相互に関連付けて格納する制御条件情報格納手段を備え、前記安全確保制御手段は、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて前記制御条件情報格納手段を参照することにより、当該識別情報に対応する前記制御条件情報を取得し、当該制御条件情報にて特定される前記制御条件に基づいて、前記所定の制御を行うこと、を特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項7に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記制御条件情報は、前記入室者が前記対象空間に滞在可能な時間を示す滞在可能時間情報を含み、前記安全確保制御手段は、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて前記制御条件情報格納手段を参照することにより、当該識別情報に対応する前記滞在可能時間情報を取得し、当該滞在可能時間情報にて特定される時間と、前記入室者が前記対象空間に実際に滞在している時間とを比較し、この比較結果に応じて前記所定の制御を行うこと、を特徴とする。
【0015】
また、請求項9に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項7又は8に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記制御条件情報は、前記入室者が前記対象空間に滞在可能な生体状態を特定する生体条件情報を含み、前記安全確保制御手段は、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて前記制御条件情報格納手段を参照することにより、当該識別情報に対応する前記生体条件情報を取得し、当該生体条件情報にて特定される生体状態と、前記対象空間に実際に滞在している前記入室者の生体状態とを比較し、この比較結果に応じて前記所定の制御を行うこと、を特徴とする。
【0016】
また、請求項10に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項1から9のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記入室者に対して、当該入室者による前記対象空間への滞在に関する通知を行うための通知手段を備え、前記安全確保制御手段は、前記通知手段を介して、前記入室者に対する通知を行うこと、を特徴とする。
【0017】
また、請求項11に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項1から10のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記入室者に対して、当該入室者による前記対象空間への滞在に関する警報を行うための警報手段を備え、前記安全確保制御手段は、前記警報手段を介して、前記入室者に対する警報を行うこと、を特徴とする。
【0018】
また、請求項12に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項1から11のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記入室者以外の第三者に対して、前記入室者による前記対象空間への滞在に関する報知を行うための報知手段を備え、前記安全確保制御手段は、前記報知手段を介して、前記第三者に対する報知を行うこと、を特徴とする。
【0019】
また、請求項13に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項1から12のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記安全確保制御手段は、前記酸素濃度調節手段を介して、前記対象空間の酸素濃度を上昇させること、を特徴とする。
【0020】
また、請求項14に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項5及び13に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記酸素濃度調節手段は、前記対象空間における酸素濃度を局所的に可変可能であり、前記安全確保制御手段は、前記参照情報取得手段にて取得された前記位置情報にて特定される前記入室者の位置又は当該位置周辺の酸素濃度を調節するよう、前記酸素濃度調節手段を制御すること、を特徴とする。
【0021】
また、請求項15に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムは、請求項6に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システムにおいて、前記安全確保制御手段は、前記火災検知手段にて取得された火災検知情報によって、前記対象空間に火災が発生している旨が示されている場合、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて、前記対象空間における入室者の残存を判定し、前記対象空間に入室者が残っていないと判定した場合にのみ、前記対象空間の酸素濃度が所定の不燃焼酸素濃度になるように、前記酸素濃度調節手段を制御すること、を特徴とする。
【0022】
また、請求項16に記載の酸素濃度可変空間における安全管理方法は、酸素濃度を少なくとも通常酸素濃度と低酸素濃度との間で可変とした対象空間に入室する入室者の安全を管理するための安全管理方法であって、前記入室者を識別するための識別情報を取得する識別情報取得ステップと、前記識別情報取得ステップにおいて取得された前記識別情報に基づいて、前記入室者の安全確保に関する所定の制御を行う安全確保制御ステップと、を含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、入室者の識別情報に基づいて安全監視制御を行なうことで、複数の入室者の各々にとって最適なタイミングで安全監視制御を行なうことができ、各入室者の安全性を個別的に管理することができるので、酸素濃度可変空間における安全性を向上させることができる。
【0024】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、識別情報と共に参照情報を参照して安全確保制御を行うので、入室者の安全性に関連する様々な情報を考慮した上で安全監視制御を行なうことができ、酸素濃度可変空間における安全性を一層向上させることができる。
【0025】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、識別情報と共に入室者の生体情報を参照して安全確保制御を行うので、入室者の生体状態に直接的に合致したタイミングや方法で当該入室者の安全を確保することができ、酸素濃度可変環境下における入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0026】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、識別情報と共に入室者の属性情報を参照して安全確保制御を行うので、入室者の個人の属性に直接的に合致したタイミングや方法で当該入室者の安全を確保することができ、酸素濃度可変環境下における入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0027】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、識別情報と共に入室者の位置情報を参照して安全確保制御を行うので、入室者の位置に合致した形態で当該入室者の安全を確保することができ、酸素濃度可変環境下における入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0028】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、識別情報と共に火災検知情報を参照して安全確保制御を行うので、火災発生状況に合致した形態で当該入室者の安全を確保することができ、酸素濃度可変環境下における入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0029】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、識別情報に基づいて取得した制御条件情報を用いて制御を行うことにより、この制御条件情報に応じて様々な内容の制御を弾力的に行うことができ、酸素濃度可変環境下における入室者の安全確保を行うことができる。
【0030】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、滞在可能時間情報と滞在時間との比較結果に応じて制御を行うことにより、滞在時間が滞在可能時間情報を越えそうになった場合や、滞在時間が滞在可能時間情報を越えた場合等に、通知や酸素濃度制御等の各種の制御を行うことで、時間的観点から、入室者の安全確保を図ることができる。
【0031】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、生体条件情報にて特定される生体状態と実際の生体状態との比較結果に応じて制御を行うことにより、実際の生体状態が危険状態に近づいた場合等に、通知や酸素濃度制御等の各種の制御を行うことで、生体状態の観点から、入室者の安全確保を図ることができる。
【0032】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、入室者に対する通知を行うことにより、入室者に対して対象空間からの退室を個別的に促すことができ、対象空間から安全に退室を促すことができる。
【0033】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、入室者に対する警報を行うことにより、入室者に対して対象空間からの退室を一層強く促すことができ、対象空間から安全に退室を促すことができる。特に、通知の後に警報を行うことで、退室を多段的に促すことができ、入室者の利便性や安全性を一層高めることができる。
【0034】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、入室者以外の第三者に対する報知を行うことにより、入室者が自力では退室できないような不足の事態が生じている場合においても、当該入室者を管理者に救助させることができ、対象空間から入室者を安全に退室させることができる。また、警報の後に報知を行うことで、退室を多段的に促すことができ、入室者の利便性や安全性を一層高めることができる。
【0035】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、対象空間の酸素濃度を上昇させることにより、入室者が自力で退室できない場合や、さらに管理者が不在等のために入室者を救助できない場合においても、当該入室者の生存環境を向上させることができ、入室者の安全を高めることができる。警報や報知では退室できない場合にのみ酸素濃度調節を行うことで、不用意に酸素濃度を上昇させて対象空間の防火性能を低減させるような事態を回避できる。
【0036】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、入室者の位置の酸素濃度を局所的に可変可能とすることで、入室者に対応する局所的な位置に酸素を供給して、入室者の安全を確保できると共に、不用意に広範囲における酸素濃度を上昇させて対象空間の防火性能を低減させるような事態を回避できる。
【0037】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システムによれば、火災が発生している場合において、対象空間に入室者が残っていないと判定した場合にのみ、酸素濃度を不燃焼酸素濃度とするので、対象空間に入室者が居るにも関わらず酸素濃度を低下させてしまうような事態を回避でき、入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0038】
また、本発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理方法によれば、入室者の識別情報に基づいて安全監視制御を行なうことで、複数の入室者の各々にとって最適なタイミングで安全監視制御を行なうことができ、各入室者の安全性を個別的に管理することができるので、酸素濃度可変空間における安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る酸素濃度可変空間における安全管理システム及び安全管理方法の各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。
【0040】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態は、酸素濃度を可変とした対象空間に入室する人間の安全を管理するための安全管理システム及び安全管理方法に関するものである。このシステムでは、対象空間の酸素濃度を、少なくとも通常酸素濃度と低酸素濃度との間で可変させることにより、対象空間における物の燃焼を困難又は不能として、対象空間の防火性を高めることができる。
【0041】
ここで、対象空間は、基本的に任意であるが、例えば、データセンター、美術館、博物館、文化財保管施設、貴重品倉庫等、火災発生時の消火によるダメージを避けたいとの要求が強い場所や、超高層タワーの電気室等、通常の防火設備を設けることが困難な場所、あるいは、低酸素濃度を保持することで劣化を防止したい貴重品等を保管するような施設が該当する。
【0042】
また、通常酸素濃度とは、一般大気の酸素濃度(約21%)である。また、低酸素濃度とは、基本的には、通常酸素濃度よりも低い全ての酸素濃度を含む概念である。以下の各実施の形態では、低酸素濃度をさらに3つのレベル、すなわち、(1)人間の生存が可能であるが、通常酸素濃度よりは低酸素濃度であるために燃焼性がやや低い酸素濃度(例えば、酸素濃度が約21%未満〜18%以上であり、以下、「第1の不燃焼生存酸素濃度」と称する)と、(2)人間の生存が可能であるが、第1の不燃焼生存酸素濃度よりさらに低酸素濃度であるために燃焼性が低い酸素濃度(例えば、酸素濃度が約18%未満〜15%以上であり、以下、「第2の不燃焼生存酸素濃度」と称する)と、(3)人間の生存は困難であり又は困難になる可能性があるが、不燃焼生存酸素濃度よりさらに低い酸素濃度であるために燃焼性が一層低い酸素濃度(例えば、酸素濃度が約15%未満であり、以下、「不燃焼酸素濃度」と称する)とに区分する。以下の説明では、対象空間の酸素濃度を、対象空間に入室者が入室する可能性がない場合(例えば夜間時等)には不燃焼酸素濃度として防火性を高め、対象空間に入室者が入室する可能性がある場合(例えば作業時やトレーニング時等)には第2の不燃焼生存酸素濃度として防火性に安全性を加味し、入室者の安全性を確保したい場合には第1の不燃焼生存酸素濃度や通常酸素濃度とすることで安全性をより優先する。
【0043】
このように酸素濃度を調節するため、本発明では、対象空間の酸素濃度を調節する酸素濃度調節手段を備えている。この酸素濃度調節手段は、具体的には、酸素濃度を低下させる場合には、不活性ガス又は不活性ガスを高濃度で含んだガスを導入する。ここで、不活性ガスの種類は任意であるが、以下では、窒素ガスを用いた例を説明するものとし、窒素ガス、又は、窒素ガスを通常よりも高濃度で含んだガスを、「窒素富化ガス」と称する。また、酸素濃度を上昇させる場合には、この酸素濃度調節手段は、外気、酸素、酸素を通常よりも高濃度で含んだガス、又は、対象空間における酸素濃度よりも高い酸素濃度のガスを導入する。以下では、酸素又は酸素を高濃度で含んだガスを、「酸素富化ガス」と称する。
【0044】
ここで、本発明の特徴の一つは、対象空間に入った入室者を識別するための識別情報を取得し、この識別情報と、必要に応じて参照する参照情報とに基づいて、酸素濃度調節手段を制御することにある。例えば、対象空間に入室する入室者を識別情報にて個別的に識別し、各入室者が低酸素濃度環境下に滞在している時間や生体状態を個別的に監視して、異常を生じ得るような所定条件に合致する入室者がいる場合には、当該入室者に対して退出を促すための警報等を行う。このように、入室者毎のきめの細かい安全管理を行うことができ、酸素濃度可変空間における安全性を高めることができる。
【0045】
このような識別情報としては、入室者を一意に識別するために人為的に付与した情報(以下、「入室者ID」と称する)や、入室者の人体部位から取得できる指紋、網膜パターン、静脈パターン等の生体情報とを挙げることができる。このような識別情報の取得方法としては、入室者から直接的に取得する方法(以下、「直接的方法」と称する)と、間接的に取得する方法(以下、「間接的方法」と称する)とを挙げることができる。直接的方法としては、入室者に装着させたIDタグの如き発信手段から発信される入室者IDを受信することや、入室者に自己の入室者IDを入力装置に入力してもらうことが考えられる。また、間接的方法としては、赤外線カメラ等の撮像装置にて取得された画像データに画像処理を施すことで、入室者を識別することが考えられる。
【0046】
また、識別情報と共に参照される参照情報は任意であるが、例えば、入室者の各種の状態を示す情報(以下、「入室者固有情報」と称する)や、対象空間における火災の有無の検知結果を示す情報(以下、「火災検知情報」と称する)を挙げることができる。入室者固有情報としては、各入室者の生体状態を示す情報(例えば、血圧、脈拍、血中酸素濃度等。以下、「生体情報」と称する)、各入室者が酸素濃度可変空間に滞在する際の安全性に関連し得る属性を示す情報(入室者のその日の体調や酸素濃度可変空間における滞在経験の度合い等。以下、「個人情報」と称する)、あるいは、対象空間における入室者の位置を示す情報(以下、「位置情報」と称する)を挙げることができる。火災検知情報は、対象空間における火災検知の有無のいずれかを示す。
【0047】
〔II〕各実施の形態
以下、本発明に係る各実施の形態について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0048】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、識別情報に応じて、入室者の安全確保に必要な制御を行なう形態である。
【0049】
(安全管理システムの構成)
図1は、実施の形態1に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。この図1において、対象空間1は、上下左右を壁面にて囲繞された閉鎖空間として構成されている。この対象空間1に入室する入室者は、IDカード2及びポケットベル3を装着している。また、対象空間1の一側面にはドア4が設けられており、このドア4には電子錠5が組み込まれると共に、ドア4の内側及び外側の近傍位置にはIDカード読取装置6、7が設けられている。また、対象空間1の内部には、送信アンテナ8、室内スピーカ9、及び、酸素濃度計10が設けられている。また、対象空間1の外部には、室外スピーカ11、酸素濃度調節ユニット12、及び、低酸素環境監視制御盤13が配置されている。そして、これら各部は、図示点線で示すように相互に電気的に接続されている。
【0050】
IDカード2は、入室者を識別するための入室者IDを読取り可能に記憶する記憶手段である。ここで、IDカード2における入室者IDの記録方式や、IDカード読取装置6、7による入室者IDの読取り方式は任意である。例えば、IDカード2としては、電磁誘導式又は電波式の近距離読取り用のカードを採用でき、IDカード読取装置6、7から送信された電波又は磁界が、IDカード2の内部に封止された図示しないアンテナにて受信されることにより、整流又は共振による電力がアンテナに発生する。そして、この電力を用いて、IDカード2の内部に封止された図示しない制御回路及びメモリが駆動されることで、このメモリに予め記憶された入室者IDが、アンテナを介して送信されてIDカード読取装置6、7にて受信される。
【0051】
ポケットベル3は、入室者に対して、当該入室者による対象空間1への滞在に関する通知を行うためのもので、特許請求の範囲における通知手段に対応する。このポケットベル3は、当該ポケットベル3を一意に識別するためのポケットベルIDを自己の図示しない記憶部に記憶しており、送信アンテナ8から送信されたポケットベルIDが、自己に記憶されているポケットベルIDに合致する場合には、図示しないバイブレーション機能によって振動する。なお、通知手段としては、入室者に個別的に通知を行うことができるものであれば良く、例えば、ポケットベル3に代えて、携帯電話やパーソナルコンピュータを用いることができる。この場合、ポケットベルIDに代えて、各入室者の携帯電話番号や電子メールアドレスを後述する第1の制御条件情報テーブルに格納させておき、必要に応じてこれらを用いて携帯電話を掛けたり電子メールを送信したりすることで、入室者への通知を行ってもよい。あるいは、ポケットベル3や室内スピーカ9による音声出力を行ったり、各種の表示装置による表示を行ったりしてもよい。なお、このように通知を各種の手段で行うことができる点については、後述する警報や報知についても同様である。
【0052】
電子錠5は、ドア4を開閉自在に施錠するものであり、この電子錠5が電気的に開錠された場合にのみ、ドア4を開けて対象空間1に入室することができる。対象空間1からの退室についても、入室時と同様に、電子錠5の開錠を条件としてもよいが、入室者の退室を容易化することでその安全性を高めるためには、電子錠5による開錠の有無に関わらず、ドア4を室内側から常時開閉可能としてもよい。
【0053】
IDカード読取装置6、7は、入室者が保持しているIDカード2に記録されている入室者IDを読み取るためのもので、特許請求の範囲における識別情報取得手段に対応する。
【0054】
送信アンテナ8は、通知を行いたい入室者のポケットベル3に対して、ポケットベルIDを含んだ通知信号を送信する。
【0055】
室内スピーカ9は、入室者に対して、当該入室者による対象空間1への滞在に関する警報を行うためのもので、特許請求の範囲における警報手段に対応する。
【0056】
酸素濃度計10は、対象空間1における酸素濃度を測定し、この酸素濃度を示す酸素濃度信号を低酸素環境監視制御盤13に出力する。
【0057】
室外スピーカ11は、入室者以外の第三者(ここでは、安全管理システムの「管理者」)に対して、入室者による対象空間1への滞在に関する報知を行うためのもので、特許請求の範囲における報知手段に対応する。
【0058】
酸素濃度調節ユニット12は、対象空間1の酸素濃度を、少なくとも通常酸素濃度と低酸素濃度との間で可変させるもので、特許請求の範囲における酸素濃度調節手段に対応する。この酸素濃度調節ユニット12は、例えば、酸素濃度を調節するための各種装置を、図示しない筐体の内部に収容してユニット構成されている。具体的には、この筐体に、外気を圧送するためのコンプレッサ、このコンプレッサにて圧送された外気から酸素と窒素とを分離して窒素富化ガスと酸素富化ガスとを生成する酸素分離フィルタ、この酸素分離フィルタによって生成された酸素富化ガスを貯留するための酸素富化タンク、この酸素分離フィルタによって生成された窒素富化ガスを貯留するための窒素富化タンク等を備えて構成されている。そして、酸素富化タンクに貯留した酸素富化ガスを対象空間1に放出することで、この対象空間1の酸素濃度を上げ、あるいは、窒素富化タンクに貯留した窒素富化ガスを対象空間1に放出することで、この対象空間1の酸素濃度を下げる。なお、酸素濃度調節ユニット12の各部については図示を省略する。
【0059】
低酸素環境監視制御盤13は、IDカード読取装置6、7にて取得された入室者IDに基づいて、入室者の安全確保に関する所定の制御を行うもので、特許請求の範囲における安全確保制御手段に対応する。図2は、低酸素環境監視制御盤13の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この低酸素環境監視制御盤13は、外部記憶部13a、主記憶部13b、媒体読取り部13c、入出力インターフェース(以下、入出力IF)13d、及び、制御部13eを備え、これら各部をバス13fにて相互に通信可能に接続して構成されている。
【0060】
このうち、外部記憶部13aは、低酸素環境監視制御盤13の各処理に必要になる情報を記憶するための記憶手段であり、特許請求の範囲における制御条件情報格納手段に対応する。この外部記憶部13aには、第1の制御条件情報テーブル13a、第2の制御条件情報テーブル13a、及び、入退室履歴情報テーブル13aが格納されている。さらに外部記憶部13aには、図示しない安全確保制御プログラム等の各種プログラムがインストールされている。この外部記憶部13aは、例えば、ROM(Read Only Memory)やHD(Hard Disk)の如き不揮発性記憶装置にて構成される。
【0061】
図3には第1の制御条件情報テーブル13aの構成例を示す。この第1の制御条件情報テーブル13aは、例えば、入室者ID、入室者名、及び、ポケットベルID、を相互に関連付けて構成されている。
【0062】
図4には第2の制御条件情報テーブル13aの構成例を示す。この第2の制御条件情報テーブル13aは、例えば、入室者ID及び滞在可能時間を相互に関連付けて構成されている。このうち、滞在可能時間は、入室者が対象空間1に滞在可能な時間を示す滞在可能時間情報である。この滞在可能時間は、入室者が所定の酸素濃度(ここでは、第2の不燃焼生存酸素濃度)において安全に連続的に滞在できる時間である。図4には、入室者ID=U0001の入室者の滞在可能時間は5分、入室者ID=U0002の入室者の滞在可能時間は7分、入室者ID=U0100〜U0200の入室者の滞在可能時間は3分である例を示す。入室者ID=U0100〜U0200の入室者は、例えば、外来者の入室者IDであり、他の入室者よりも短い滞在可能時間を設定することで、第2の不燃焼生存酸素濃度に不慣れな外来者の安全性を確保している。このように、滞在可能時間は、入室者毎に設定され、例えば、入室者の年齢、身体能力、低酸素濃度環境下の滞在経験等を考慮し、任意の方法にて予め決定される。なお、ここでは、滞在可能時間として、所定単位(ここでは「分」)による時間をそのまま格納しているが、例えば、入室者が滞在可能な日時を格納してもよい。
【0063】
図5には入退室履歴情報テーブル13aの構成例を示す。この入退室履歴情報テーブル13aは、対象空間1に対する入室者の入退室の履歴に関する入退室履歴情報を格納する入退室履歴情報格納手段である。この入退室履歴情報は、例えば、入室者ID、入室時刻、退室時刻、通知フラグ、警報フラグ、報知フラグ、及び、酸素濃度制御フラグ、を相互に関連付けて構成されている。入室時刻は、入室者が対象空間1に入室した時刻であり、退室時刻は、入室者が対象空間1から退室した時刻である。通知フラグは、入室者に退室を促す通知を行ったか否かを示すフラグ、警報フラグは、入室者に退室を促す警報を行ったか否かを示すフラグ、報知フラグは、入室者以外の第三者(以下、本システムの管理者)に当該入室者の退室を促す報知を行ったか否かを示すフラグ、酸素濃度制御フラグは、入室者の安全確保のために酸素濃度制御を行ったか否かを示すフラグである。これらの各種フラグは、「0」の場合には該当処理を未だ行なっていない旨を示し、「1」の場合には該当処理を既に行った旨を示す。なお、このようなフラグに代えて、該当処理を行なった日時を記録し、この日時を用いて、後述する経過時間を監視するようにしてもよい。
【0064】
また、図2に戻り、主記憶部13bは、制御部13eにおける制御実行時に使用されるメインメモリである。この主記憶部13bは、例えば、RAM(Random Access Memory)の如き揮発性記憶媒体にて構成されており、外部記憶部13aにインストールされた安全確保制御プログラム等の各種プログラムが、この主記憶部13bに必要に応じてロードされる。
【0065】
また、媒体読取り部13cは、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)やDVD(Digital Video Disk)の如き任意のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録された情報の読取を行う媒体読取手段である。安全確保制御プログラム等の各種プログラムを格納した記録媒体をこの媒体読取り部13cで読み取ることによって、これら各種プログラムを外部記憶部13aにインストールできる。なお、この他にも、安全確保制御プログラム等の各種プログラムは任意の方法でインストールでき、例えば、記録媒体を用いることなく、所定のネットワークを介してインストールできる。
【0066】
また、入出力IF13dは、低酸素環境監視制御盤13と他の各装置との間の通信を行うためのインターフェースであり、入出力手段である。例えば、入出力IF13dは、各装置との接続を行う接続端子を備えて構成されている。
【0067】
また、制御部13eは、低酸素環境監視制御盤13の各部を制御する制御手段である。この制御部13eは、例えば、CPU(Central Processing Unit)の如き中央演算処理装置や、このCPUの制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等を組合せて構成されており、主記憶部13bにロードされた安全確保制御プログラム等の各種プログラムの解釈及び実行を行うことにより、このプログラムにて規定される方法を実行する。
【0068】
この制御部13eは、機能概念的に、入退室管理処理を実行する入退室管理処理部13e、滞在監視処理を実行する滞在監視処理部13e、通知処理を実行する通知処理部13e、警報処理を実行する警報処理部13e、報知処理を実行する報知処理部13e、及び、第1の酸素濃度制御処理と第2の酸素濃度制御処理とを実行する酸素濃度制御処理部13eを備えて構成されている。これら各部の具体的処理は後述するが、特記する処理以外の処理は、制御部13eにて行われるものとする。
【0069】
(安全確保処理)
次に、上記のように構成された安全確保システムにおける安全確保処理について説明する。この処理は、対象空間1に対する入室者の入室や退室を管理するための入退室管理処理と、対象空間1の入室者を監視するための滞在監視処理とに大別される。なお、以下の説明においては、特記する場合を除いて、対象空間1の酸素濃度が、酸素濃度調節ユニット12によって第2の不燃焼生存酸素濃度に予め調節されているものとする。
【0070】
(安全確保処理−入退室管理処理)
まず、入退室管理処理について説明する。入室者が対象空間1に入室する際、自己が保有しているIDカード2をIDカード読取装置6に近づけると、このIDカード読取装置6はIDカード2に記録されている入室者IDを読み取り、この入室者IDを低酸素環境監視制御盤13に出力する(識別情報取得ステップ)。
【0071】
この低酸素環境監視制御盤13の入退室管理処理部13eは、IDカード読取装置6から入室者IDが出力されると、この入室者IDに基づいて、入室者の認証を行う。例えば、IDカード読取装置6からの入室者IDが、第1の制御条件情報テーブル13aに格納されている入室者IDのいずれかに合致した場合、入退室管理処理部13eは、入室者に入室資格があるものと判定し、対象空間1のドア4に設けた電子錠5に開錠信号を出力する。このことにより、入室者はドア4を開けて対象空間1に入室できる。また、このように入室を許可した場合、入退室管理処理部13eは、当該入室を許可した入室者の入室者IDと、公知の方法で取得したその時点の時刻(入室時刻)とを、相互に関連付けて入退室履歴情報テーブル13aに格納する。
【0072】
一方、IDカード読取装置6からの入室者IDが、第1の制御条件情報テーブル13aに格納されている入室者IDのいずれにも合致しない場合、入退室管理処理部13eは、入室者に入室資格がないものと判定し、電子錠5に開錠信号を出力せずに、図示しない表示灯を点滅等させたり、図示しないブザーを鳴動させたりすることで、入室が拒否された旨を入室者に通知する。このように、入室時の認証を行うことで、入室資格のない人間が不用意に対象空間1に入室することを防止でき、セキュリティの向上や安全性の向上を図ることができる。
【0073】
なお、この認証は、識別情報である入室者IDを用いる以外にも任意の方法で行うことができ、例えば、鍵によるドア4の開錠や暗証番号の入力による認証を行うこともできる。しかしながら、識別情報に基づいて、この入退室管理処理を行うと共に後述する滞在監視処理を行なうことで、各種の情報管理を識別情報をキーとしてリンクさせることができ、情報管理を簡素化できる。ただし、認証が不要な場合には、当該認証に関する処理は省略してもよい。
【0074】
また、入室者が対象空間1から退室する際、自己が保有しているIDカード2をIDカード読取装置7に近づけると、IDカード読取装置7はIDカード2に記録されている入室者IDを読み取り、この入室者IDを低酸素環境監視制御盤13に出力する。この低酸素環境監視制御盤13の入退室管理処理部13eは、IDカード読取装置7から入室者IDが出力されると、公知の方法で取得したその時点の時刻(退室時刻)を、この入室者IDに関連付けて入退室履歴情報テーブル13aに格納する。このことにより、入室者の退室管理を行うことができる。
【0075】
(安全確保処理−滞在監視処理)
次に、滞在監視処理について説明する。図6は滞在監視処理のフローチャートである。滞在監視処理部13eは、対象空間1に入室者が存在しているか否かを監視する(ステップSA−1)。具体的には、滞在監視処理部13eは、入退室履歴情報テーブル13aを所定間隔毎に参照し、この入退室履歴情報テーブル13aに格納されている入室者IDのうち、入室時刻が格納されている入室者IDであって、退室時刻が未だ格納されていない入室者IDが存在するか否かを判定する。
【0076】
そして、このような入室者IDが存在する場合(ステップSA−1、Yes)、滞在監視処理部13eは、当該入室者のそれまでの滞在時間と、当該入室者に対して予め設定されている滞在可能時間とを相互に比較することで、滞在時間が滞在可能時間を超えているか否かを判定する(ステップSA−2)。具体的には、滞在監視処理部13eは、入退室履歴情報テーブル13aを参照し、当該入室者の入室者IDに対応する入室時刻と、公知の方法で取得したその時点の時刻とに基づいて、入室者の滞在時間を算定する。また、滞在監視処理部13eは、この入室者の入室者IDに基づいて第2の制御条件情報テーブル13aを参照することにより、この入室者IDに対応する滞在可能時間を取得する。そして、滞在時間が滞在可能時間を超えている場合、入室者が対象空間1にこれ以上滞在した場合には、この入室者に異常が生じる可能性があると考えられるので、滞在監視処理部13eは、当該入室者の入室者IDを通知処理部13eに受け渡すことで、通知処理を起動する(ステップSA−3)。
【0077】
この通知処理部13eは、滞在監視処理部13eから受け渡された入室者IDに基づいて、第1の制御条件情報テーブル13aを参照することにより、この入室者IDに対応するポケットベルIDを取得する。そして、このポケットベルIDを含んだ通知信号を、送信アンテナ8を介して送信する。入室者が保持するポケットベル3は、自己のポケットベルIDを受信した場合には、バイブレータ機能を駆動することで振動することで、入室者に対する通知を行う(安全確保制御ステップ)。このような通知を行うことで、入室者に対して対象空間1からの退室を個別的に促すことができ、対象空間1から安全に退室を促すことができる。特に、滞在可能時間を入室者毎に設定しているので、各入室者にとって最適なタイミングで退室を促すことができ、まだ余裕がある入室者に不用意に退室を促すことや、既に限界を超えている入室者に退室が促されないような事態を防止でき、入室者の利便性や安全性を一層高めることができる。このような通知を行った場合、通知処理部13eは、入退室履歴情報テーブル13aにおいて、当該通知を行った入室者の入室者IDに対応する通知フラグを立ち上げることで、当該通知の事実を記録する。
【0078】
さらに、滞在監視処理部13eは、通知を行った入室者が、当該通知後に所定時間を経過した後もさらに対象空間1に留まっていないか否かを判定する(ステップSA−4、SA−5)。具体的には、滞在監視処理部13eは、上記通知後、当該入室者が対象空間1から退室するか否か(IDカード読取装置7から当該入室者の入室者IDが出力されるか否か。以下同じ)を監視し、通知後に所定時間(例えば2分)を経過しても退室が確認できない場合には、当該入室者の入室者IDを警報処理部13eに受け渡すことで、警報処理を起動する(ステップSA−6)。
【0079】
この警報処理部13eは、滞在監視処理部13eから受け渡された入室者IDに基づいて、当該入室者に対する警報を行う。この警報は、当該入室者に対して対象空間1からの退室を命じる旨の警報であり、例えば「滞在可能な時間を完全に超えています。本室から直ちに退室して下さい。」のような音声メッセージを室内スピーカ9を介して出力する(安全確保制御ステップ)。このような警報を行うことで、入室者に対して対象空間1からの退室を一層強く促すことができ、対象空間1から安全に退室を促すことができる。また、通知の後に警報を行うことで、退室を多段的に促すことができ、入室者の利便性や安全性を一層高めることができる。なお、このような音声出力による警報を行う際には、第1の制御条件情報テーブル13aから当該入室者の氏名を取得し、この氏名を音声合成して音声メッセージに含めてもよく、この場合には、対象空間1に複数の入室者が存在する場合においても、警報の対象者が一層明確になる(後述する報知においても同じ)。
【0080】
このような通知を行った場合、警報処理部13eは、入退室履歴情報テーブル13aにおいて、当該通知を行った入室者の入室者IDに対応する警報フラグを立ち上げることで、当該警報の事実を記録する。なお、ここでは、通知後(滞在可能時間の経過後)に所定時間が経過した時点で警報を行っているが、通知から警報までの時間についても、滞在可能時間と同様に、各入室者毎に設定することもでき、この場合には各入室者にとって最適なタイミングで警報を行うことができる。
【0081】
さらに、滞在監視処理部13eは、警報を行った入室者が、当該警報後に所定時間を経過した後も対象空間1に留まっていないか否かを判定する(ステップSA−7、SA−8)。具体的には、滞在監視処理部13eは、上記警報を行った後、当該入室者が対象空間1から退室するか否かを監視し、警報後に所定時間(例えば1分)を経過しても退室が確認できない場合には、当該入室者の入室者IDを報知処理部13eに受け渡すことで、報知処理を起動する(ステップSA−9)。
【0082】
この報知処理部13eは、滞在監視処理部13eから受け渡された入室者IDに基づいて、管理者に対する報知を行う。この報知は、管理者に対して、入室者を対象空間1から直ちに退室させるように促すための報知であり、例えば「滞在可能な時間を超えている入室者が居ます。直ちに退室させて下さい。」のような音声メッセージを室外スピーカ11を介して出力する(安全確保制御ステップ)。このような報知を行うことで、入室者が自力では退室できないような不足の事態が生じている場合においても、当該入室者を管理者に救助させることができ、対象空間1から入室者を安全に退室させることができる。また、警報の後に報知を行うことで、退室を多段的に促すことができ、入室者の利便性や安全性を一層高めることができる。
【0083】
このような報知を行った場合、報知処理部13eは、入退室履歴情報テーブル13aにおいて、当該報知を行った入室者の入室者IDに対応する報知フラグを立ち上げることで、当該報知の事実を記録する。なお、ここでは、警報後に所定時間が経過した時点で報知を行っているが、警報から報知までの時間についても、滞在可能時間と同様に、各入室者毎に設定することもでき、この場合には各入室者にとって最適なタイミングで報知を行うことができる。あるいは、警報と報知とを同時に行うようにしてもよい。
【0084】
その後、滞在監視処理部13eは、入室者が、当該報知後に所定時間を経過した後も対象空間1に留まっていないか否かを監視する。具体的には、滞在監視処理部13eは、上記報知を行った後、当該入室者が対象空間1から退室するか否かを判定する(ステップSA−10、SA−11)。そして、報知後に所定時間(例えば1分)を経過しても退室が確認できない場合には、酸素濃度制御処理部13eに第1の調節指示信号を出力することで、第1の酸素濃度制御処理を起動する(ステップSA−12)。
【0085】
この酸素濃度制御処理部13eは、対象空間1の酸素濃度を段階的に上昇させることで、入室者の安全を確保する。すなわち、低酸素濃度化による防火性能が損なわれる可能性があっても、入室者の安全性を優先的に確保するため、酸素濃度を上昇させる。具体的には、酸素濃度制御処理部13eは、酸素濃度調節ユニット12を制御し、酸素富化ガスを対象空間1に放出させることで、この対象空間1の酸素濃度を当初の第2の不燃焼生存酸素濃度(約18%未満〜15%以上)から第1の不燃焼生存酸素濃度(約21%未満〜18%以上)に上昇させる(安全確保制御ステップ)。この制御は、酸素濃度計10にて計測された対象空間1の酸素濃度をモニタしながら行うことで、一層正確に行うことができる(以下、酸素濃度の調節において同じ)。このような制御を行うことで、入室者が自力で退室できない場合や、さらに管理者が不在等のために入室者を救助できない場合においても、当該入室者の生存環境を向上させることができ、入室者の安全を高めることができる。また、警報や報知では退室できない場合にのみ酸素濃度調節を行うことで、不用意に酸素濃度を上昇させて対象空間1の防火性能を低減させるような事態を回避できる。
【0086】
次いで、滞在監視処理部13eは、入室者が、第1の不燃焼生存酸素濃度への酸素濃度調節後も対象空間1に留まっていないか否かを判定する(ステップSA−13、SA−14)。具体的には、滞在監視処理部13eは、上記第1の不燃焼生存酸素濃度への調節を行った後、当該入室者が対象空間1から退室するか否かを監視し、調節後に所定時間(例えば1分)を経過しても退室が確認できない場合には、酸素濃度制御処理部13eに第2の調節指示信号を出力することで、第2の酸素濃度制御処理を起動する(ステップSA−15)。
【0087】
この酸素濃度制御処理部13eは、対象空間1の酸素濃度をさらに段階的に上昇させることで、入室者の安全を確保する。具体的には、酸素濃度制御処理部13eは、酸素濃度調節ユニット12を制御し、酸素富化ガスを対象空間1に放出させることで、この対象空間1の酸素濃度を第1の不燃焼生存酸素濃度(約21%未満〜18%以上)から通常酸素濃度(約21%)に上昇させる(安全確保制御ステップ)。このような制御を行うことで、当該入室者の生存環境を一層向上させることができ、入室者の安全を高めることができる。特に、報知を行ってから所定時間が経過した後、対象空間1の酸素濃度を一気に通常酸素濃度に上昇させるのではなく、入室者の退室状況に応じて上昇させるので、対象空間1の酸素濃度を一気に高めてその防火性を不用意に低減することを防止できる。ただし、このような効果を無視できる場合には、ステップSA−12の第1の酸素濃度制御処理において、酸素濃度を第2の不燃焼生存酸素濃から通常酸素濃度に一気に上昇させてもよい。これにて滞在監視処理が終了する。
【0088】
実施の形態1では、このような滞在監視処理を識別情報に基づいて行なうことで、各入室者毎に個別的な滞在監視処理が行なうことができる。例えば、図7のタイミングチャートに示すように、異なる時間に入室した入室者A〜Cの各々に対して、異なるタイミングで、通知、警報、報知、第1の酸素濃度制御、あるいは、第2の酸素濃度制御を行なうことができる。このように、各入室者に対してきめの細かい安全処理を行なうことで、入室者各人の安全性を一層向上させることができる。
【0089】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、入室者の入室時の認証を行うことで、入室資格のない人間が不用意に対象空間1に入室することを防止でき、セキュリティの向上や安全性の向上を図ることができる。特に、識別情報に基づいて、入退室管理処理及び滞在監視処理を行なうことで、情報管理を簡素化できる。
【0090】
また、各入室者の識別情報に基づいて滞在監視処理を行なうことで、複数の入室者の各々にとって最適なタイミングで滞在監視処理を行なうことができ、各入室者の安全性を個別的に管理することができるので、酸素濃度可変空間における安全性を向上させることができる。
【0091】
また、滞在可能時間の経過後に、入室者への通知を行うことで、入室者に対して対象空間1からの退室を個別的に促すことができ、対象空間1から安全に退室を促すことができる。特に、滞在可能時間を入室者毎に設定しているので、各入室者にとって最適なタイミングで退室を促すことができ、まだ余裕がある入室者に不用意に退室を促すことや、既に限界を超えている入室者に退室が促されないような事態を防止でき、入室者の利便性や安全性を一層高めることができる。
【0092】
さらに、入室者への警報を行うことで、入室者に対して対象空間1からの退室を一層強く促すことができ、対象空間1から安全に退室を促すことができる。また、通知してから所定時間の経過後に警報を行うことで、退室を多段的に促すことができ、入室者の利便性や安全性を一層高めることができる。
【0093】
さらに、管理者への報知を行うことで、入室者に自力では退室できないような不足の事態が生じている場合においても、当該入室者を管理者に救助させることができ、対象空間1から入室者を安全に退室させることができる。また、警報してから所定時間の経過後に報知を行うことで、退室を多段的に促すことができ、入室者の利便性や安全性を一層高めることができる。
【0094】
さらに、酸素濃度制御を行うことで、入室者が自力で退室できない場合や、さらに管理者が不在等のために入室者を救助できない場合においても、当該入室者の生存環境を向上させることができ、入室者の安全を高めることができる。特に、対象空間1の酸素濃度を一気に通常酸素濃度に上昇させるのではなく、入室者の退室状況に応じて多段的に上昇させるので、対象空間1の酸素濃度を一気に高めてその防火性を不用意に低減することを防止できる。
【0095】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この実施の形態2は、識別情報に加えて、入室者の生体状態を示す生体情報を参照することで、入室者の安全確保に必要な制御を行なう形態である。ただし、特に説明なき構成においては実施の形態1と同様であるものとし、実施の形態1と同様の構成要素には、必要に応じて、実施の形態1で使用したものと同一名称や同一の符号を付する。
【0096】
(安全管理システムの構成)
図8は、実施の形態2に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。実施の形態2に係る安全管理システムにおいて、入室者は腕時計20を装着している。対象空間1の任意の近傍位置には、実施の形態1の低酸素環境監視制御盤13に代えて低酸素環境監視制御盤21が設けられている。
【0097】
腕時計20は、入室者の生体情報を取得する生体情報取得機能を有するもので、特許請求の範囲における参照情報取得手段及び生体情報取得手段に対応する。この腕時計20は、公知の脈拍測定機能付きの腕時計と同様に構成でき、例えば、時計機能に加えて、脈拍センサ、記憶部、及び、送信部を備えて構成されている。そして、入室者の脈拍数を所定間隔で計測し、この脈拍数を所定単位(例えば「分」)の脈拍数に換算した上で、送信部から外部に無線送信する。ただし、腕時計20の各部の図示は省略する。
【0098】
ここで、腕時計20の記憶部には、当該腕時計20を装着している入室者の入室者IDが予め記憶されており、脈拍数を送信する際には、当該入室者IDを共に送信する。このことにより、低酸素環境監視制御盤21において、腕時計20から送信された脈拍数がどの入室者の脈拍数であるのかを認識できる。あるいは、記憶部に、当該腕時計20を一意に識別するための腕時計IDを予め記憶させておき、この腕時計IDと脈拍数とを送信するようにしてもよい。そして、低酸素環境監視制御盤21には、腕時計IDと入室者IDとの相互の対応関係を予め記憶させておくことで、送信された脈拍数がどの入室者の脈拍数であるのかを特定できるようにしてもよい。なお、この腕時計に、ポケットベル3の受信機能やバイブレーション機能を設けることで、ポケットベル3を省略してもよい。あるいは、腕時計20に入室者IDの記憶機能や送信機能を設けることで、IDカード2を省略してもよい。
【0099】
低酸素環境監視制御盤21は、IDカード読取装置6、7にて取得された入室者IDと、腕時計20から送信された脈拍数とに基づいて、入室者の安全確保に関する所定の制御を行うもので、特許請求の範囲における安全確保制御手段に対応する。図9は、低酸素環境監視制御盤21の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この低酸素環境監視制御盤21の外部記憶部21aには、実施の形態1の第2の制御条件情報テーブル13aに代えて、第2の制御条件情報テーブル21aが記憶されている。また、低酸素環境監視制御盤21の制御部21bは、実施の形態1の滞在監視処理部13eに代えて、滞在監視処理部21bを備えて構成されている。
【0100】
図10には第2の制御条件情報テーブル21aの構成例を示す。この第2の制御条件情報テーブル21aは、例えば、入室者ID及び脈拍数正常範囲を相互に関連付けて構成されている。このうち、脈拍数正常範囲は、対象空間において入室者が正常に滞在可能であると認められる脈拍数の範囲を示す数値であり、特許請求の範囲における生体条件情報に対応する。この脈拍数正常範囲は、例えば、脈拍数の上限値と脈拍数の下限値とから構成されている。この脈拍数正常範囲は、入室者毎に設定され、例えば、入室者の年齢、身体能力、低酸素濃度環境下の滞在経験等を考慮し、任意の方法にて予め決定される。ここでは、脈拍数正常範囲として、所定単位(ここでは「分」)による脈拍回数をそのまま格納しているが、例えば、正常な脈拍数に関する、上昇率、低下率、あるいは、変動率等を格納してもよい。また、滞在監視処理部21bは、滞在監視処理を実行する。この滞在監視処理の具体的内容は後述するが、特記する処理以外の処理は、制御部21bにて行われるものとする。
【0101】
(安全確保処理)
次に、上記のように構成された安全確保システムにおける安全確保処理について説明する。この処理は、入退室管理処理と滞在監視処理とに大別されるが、入退室管理処理は実施の形態1と同様に行うことができるので、以下では滞在監視処理のみを説明する。
【0102】
(安全確保処理−滞在監視処理)
図11は、滞在監視処理のフローチャートである。滞在監視処理部13eは、実施の形態1に係る図6のステップSA−1と同様に、対象空間1における入室者の有無を判定し(ステップSB−1)、入室者が存在する場合(ステップSB−1、Yes)、この入室者が、当該入室者毎に設定された脈拍数正常範囲を超えて、対象空間1に入室していないか否かを監視する(ステップSB−2)。具体的には、滞在監視処理部21bは、当該入室者の入室者IDに基づいて第2の制御条件情報テーブル21aを参照することにより、この入室者IDに対応する脈拍数正常範囲を取得する。また、滞在監視処理部21bは、腕時計20から送信される脈拍数及び入室者IDを監視し、当該入室者の入室者IDと共に送信された脈拍数を受信した場合には、この脈拍数と脈拍数正常範囲とを比較することで、脈拍数が脈拍数正常範囲を逸脱しているか否かを判定する。
【0103】
そして、逸脱している場合(ステップSB−2、Yes)、入室者が対象空間1にこれ以上滞在した場合には、この入室者に異常が生じる可能性があると考えられるので、滞在監視処理部21bは、当該入室者の入室者IDを通知処理部13eに受け渡すことで、通知処理を起動する(ステップSB−3)。
【0104】
以降、実施の形態1と同様に、入室者が通知後に所定時間を経過した後も対象空間1に留まっている場合には、警報処理を行い(ステップSB−4〜SB−6)、入室者が警報後に所定時間を経過した後も対象空間1に留まっている場合には、報知処理を行い(ステップSB−7〜SB−9)、入室者が報知後に所定時間を経過した後も対象空間1に留まっている場合には、対象空間1の酸素濃度を第1の酸素濃度や第2の酸素濃度に段階的に上昇させる(ステップSB−10〜SB−15)。これにて滞在監視処理が終了する。
【0105】
ここでは、各処理を行なってから所定時間が経過した後に、次の処理を行なうようにしているが、このように警報処理、報知処理、第1の酸素濃度制御処理、あるいは、第2の酸素濃度制御処理を起動するトリガーとしては、生体情報(ここでは脈拍数)の絶対値や変化量をトリガーとして各処理を行なうようにしてもよい。例えば、第2の制御条件情報テーブル21aに、脈拍数正常範囲に加えて、さらに第2の脈拍数正常範囲(脈拍数正常範囲にて特定される範囲より、さらに広い範囲又は狭い範囲であって、入室者に異常が生じる可能性や既に異常が生じている可能性がさらに高まって居る可能性を示唆する範囲)を設定しておく。そして、通知処理後、入室者の脈拍数がさらに第2の脈拍数正常範囲を逸脱した場合に、次の警報処理を起動するようにしてもよい。あるいは、第2の制御条件情報テーブル21aに、脈拍変動率の正常範囲を設定しておき、通知処理後、入室者の脈拍変動率(例えば、入室者の脈拍数を記録しておき、この脈拍数の変化率を算定することによって求めることができる)が脈拍変動率の正常範囲を逸脱した場合に、警報処理を起動するようにしてもよい。さらには、所定時間の経過と、生体情報(ここでは脈拍数)の絶対値や変化量の両方をトリガーとしてもよく、いずれか一方や両方が基準範囲を逸脱した場合に、各処理を起動するようにしてもよい。
【0106】
また、生体情報としては、脈拍数以外にも、酸素濃度可変環境下への入室者の滞在環境に関連する任意の生体情報を用いることができ、例えば、血中酸素濃度、心電図波形、脳波、呼吸数、血圧、体温、呼吸中の炭酸ガス濃度、呼吸中の酸素濃度、入室者の身体の各部の加速度、入室者から発せられる音、あるいは、入室者の行動状態(行動分析結果による行動パターン)に関する、測定値や当該測定値の変化率を用いることができる。例えば、これらの生体情報は、入室者の身体や対象空間に取り付けた公知の測定装置や、入室者を撮像することで取得した画像データを画像処理することにて取得できる。そして、第2の制御条件情報テーブル21aには、これら各生体情報の正常時の範囲(あるいは所定の異常時の範囲)を格納し、この正常範囲を利用者の生体情報が逸脱した時に(あるいは利用者の生体情報が所定の異常範囲に該当する時に)、各処理を行なうようにしてもよい。例えば、入室者の行動状態を用いる場合、入室者の行動が所定時間以上停止した場合や睡眠状態に入ったと認識される時に、通知処理等を行なうようにしてもよい。
【0107】
また、これら生体情報の具体的な取得方法や、取得した生体情報を低酸素環境監視制御盤21に送信するための送信方法としては、公知の装置や方法を用いることができる。例えば、上記のように腕時計20に生体情報の取得機能や送信機能を組み込む他、生体情報取得専用の装置(脳波測定装置や、血圧計等)に有線又は無線の出力機能を付加し、生体情報を低酸素環境監視制御盤21に送信するようにしてもよい。また、撮像装置と画像処理装置とを組み合わせ、入室者の赤外線画像を撮像し、この赤外線画像に基づいて入室者の体温を測定したり行動分析を行ってもよく、この場合には、入室者が各種装置を装着する必要がなくなり、入室者にとっての煩わしさが軽減される。
【0108】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果に加えて、入室者の個々の生体情報に基づいて通知等の各種処理を行なうことができるので、入室者の生体状態に直接的に合致したタイミングや方法で当該入室者の安全を確保することができ、酸素濃度可変環境下における入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0109】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。この実施の形態3は、識別情報及び生体情報に加えて、入室者の属性情報を参照することで、入室者の安全確保に必要な制御を行なう形態である。ただし、特に説明なき構成においては実施の形態2と同様であるものとし、実施の形態2と同様の構成要素には、必要に応じて、実施の形態2で使用したものと同一名称や同一の符号を付する。
【0110】
(安全管理システムの構成)
図12は、実施の形態3に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。実施の形態3に係る安全管理システムにおいて、対象空間1の任意の近傍位置には、実施の形態2の低酸素環境監視制御盤21に代えて、低酸素環境監視制御盤30が設けられている。
【0111】
この低酸素環境監視制御盤30は、IDカード読取装置6、7にて取得された入室者ID、腕時計20から送信された脈拍数、及び、当該低酸素環境監視制御盤30に記憶された入室者の属性情報に基づいて、入室者の安全確保に関する所定の制御を行うもので、特許請求の範囲における参照情報取得手段、属性情報取得手段、及び、安全確保制御手段に対応する。図13は、低酸素環境監視制御盤30の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この低酸素環境監視制御盤30の外部記憶部30aには、実施の形態2の第1の制御条件情報テーブル13aや第2の制御条件情報テーブル21aに代えて、第1の制御条件情報テーブル30aと第2の制御条件情報テーブル30aとが記憶されている。また、低酸素環境監視制御盤30の制御部30bは、実施の形態2の滞在監視処理部21bに代えて、滞在監視処理部30bを備えて構成されている。
【0112】
図14には第1の制御条件情報テーブル30aの構成例を示す。この第1の制御条件情報テーブル30aは、例えば、入室者ID、入室者名、ポケットベルID、及び、経験レベル、を相互に関連付けて構成されている。このうち、経験レベルは、入室者の属性情報であり、入室者の低酸素濃度環境下における滞在経験を段階的に示す数値である。ここでは経験レベルが5から1までの5段階の数値で示されており、数値が大きい程、滞在経験が多いことを示しているものとする。
【0113】
また、図15には第2の制御条件情報テーブル30aの構成例を示す。この第2の制御条件情報テーブル30aは、例えば、経験レベル、各経験レベルに応じた適切な滞在可能時間、及び、各経験レベルに応じた適切な脈拍数正常範囲、を相互に関連付けて構成されている。
【0114】
(安全確保処理)
次に、上記のように構成された安全確保システムにおける安全確保処理について説明する。この処理は、入退室管理処理と滞在監視処理とに大別されるが、入退室管理処理は実施の形態1と同様に行うことができるので、以下では滞在監視処理のみを説明する。
【0115】
(安全確保処理−滞在管理処理)
図16は、滞在管理処理のフローチャートである。滞在監視処理部30bは、実施の形態1に係る図6のステップSA−1と同様に、対象空間1における入室者の有無を判定し(ステップSC−1)、入室者が存在する場合(ステップSC−1、Yes)、この入室者が、自己の経験レベルに応じた滞在可能時間や脈拍数正常範囲を超えて、対象空間1に入室していないか否かを監視する(ステップSC−2)。具体的には、滞在監視処理部30bは、当該入室者の入室者IDに基づいて第1の制御条件情報テーブル30aを参照することにより、この入室者IDに対応する経験レベルを取得する。そして、滞在監視処理部30bは、この経験レベルに基づいて第2の制御条件情報テーブル30aを参照することにより、この経験レベルに対応する滞在可能時間及び脈拍数正常範囲を取得する。
【0116】
そして、滞在監視処理部30bは、このように取得した滞在可能時間及び脈拍数正常範囲を用いて、実施の形態1又は実施の形態2と同様に、通知処理(ステップSC−3)、警報処理(ステップSC−4〜SC−6)、報知処理(ステップSC−7〜SC−9)、第1の酸素濃度制御処理(ステップSC−10〜SC−12)、及び、第2の酸素濃度制御処理(ステップSC−13〜SC−15)を行なう。
【0117】
この際、これら処理を起動するトリガーは、入室者の滞在時間が滞在可能時間を過ぎている場合(あるいは、警報処理以降においては、この滞在可能時間を過ぎてからさらに所定時間が経過した場合)と、入室者の脈拍数が脈拍数正常範囲を逸脱した場合(あるいは、警報処理以降においては、この脈拍数正常範囲を逸脱してからさらに所定時間が経過した場合、もしくは、入室者の脈拍数が、多段的に設定した第2の脈拍数正常範囲等の脈拍数正常範囲をさらに逸脱した場合)とのうち、いずれか一方に該当する場合としてもよく、あるいは、両方に該当する場合としてもよい。
【0118】
ここで、属性情報としては、経験レベル以外にも、酸素濃度可変環境下への入室者の滞在環境に関連する任意の属性情報を用いることができ、例えば、年齢、性別、職業、運動経験の有無やそのレベル、あるいは、肺活量を用いることができる。この他にも、属性情報としては、入室者の顔写真、身体の特徴、生年月日、対象空間における作業内容(睡眠、安静、軽作業、中作業、重作業等)を含めてもよい。そして、第2の制御条件情報テーブル30aには、滞在可能時間や脈拍数正常範囲に代えて、各入室者のこれら属性情報を考慮して決定される滞在可能時間や脈拍数正常範囲を格納しておき、各入室者の滞在時間や脈拍数がこれら滞在可能時間や脈拍数正常範囲の所定の一方や両方を逸脱した際に、各処理を起動するようにしてもよい。また、脈拍数に代えて、実施の形態2で示した他の生体情報を組み合わせてもよい。また、このような属性情報のうち、各入室者に固有の情報を用いて識別情報として利用することで、入室者の特定等を行うことができる。例えば、入室者の顔写真や身体の特徴(指紋、声紋、網膜パターン、静脈等)を予め採取して第1の制御条件情報テーブル30aに格納しておくと共に、入室者が対象空間1に入室する際にはこれらの情報を公知の装置にて取得し、取得した情報を第1の制御条件情報テーブル30aの情報と照合することで、入室者を一意に特定する。そして、この結果に基づいて、入室者の対象空間1への入室権限を判定したり、入室者の経験レベル等のを取得して、各種制御を行うことができる。この場合には、識別情報を取得するための構成(例えばIDカード2やIDカード読取装置6、7)を省略できる。あるいは、対象空間における作業内容(睡眠、安静、軽作業、中作業、重作業等)は、入室者の異常状態を検知する際に、バックグラウンド(比較対象)となる平常時の状態を特定するために用いることができる。例えば、各作業を行う際の平常時の脈拍数正常範囲を取得して予め第2の制御条件情報テーブル30aに格納しておく。そして、入室者が対象空間1で行っている作業に合致する脈拍数正常範囲を第2の制御条件情報テーブル30aから取得し、この脈拍数正常範囲と、対象空間1における入室者の実際の脈拍数正常範囲とを対比することで、入室者の異常状態を判定してもよい。このように作業内容に応じて制御条件を変えることで、入室者の作業内容に応じた安全制御を行うことができる。
【0119】
また、属性情報としては、比較的短期間で変動し得るような属性情報を用いてもよい。例えば、入室者は、自己の当日の体調を、レベル1〜5の如き複数段階のいずれかに区分し、対象空間1に入室する際に図示しない入力装置を介して第1の制御条件情報テーブル30aに入力する。一方、第1の制御条件情報テーブル30aには、各体調のレベルに合致した滞在可能時間や脈拍数正常範囲を予め格納しておき、各入室者の滞在時間や脈拍数がこれら滞在可能時間や脈拍数正常範囲の所定の一方や両方を逸脱した際に、各処理を起動するようにしてもよい。
【0120】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、実施の形態2と同様の効果に加えて、入室者の個々の属性情報に基づいて通知等の各種処理を行なうことができるので、入室者の個人の属性に直接的に合致したタイミングや方法で当該入室者の安全を確保することができ、酸素濃度可変環境下における入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0121】
〔実施の形態4〕
次に、実施の形態4について説明する。この実施の形態4は、識別情報、生体情報、及び、属性情報に加えて、入室者の位置情報を参照することで、入室者の安全確保に必要な制御を行なう形態である。ただし、特に説明なき構成においては実施の形態3と同様であるものとし、実施の形態3と同様の構成要素には、必要に応じて、実施の形態3で使用したものと同一名称や同一の符号を付する。
【0122】
(安全管理システムの構成)
図17は、実施の形態4に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。実施の形態4に係る安全管理システムにおいて、対象空間1の内部には赤外線カメラ40が設けられており、対象空間1の天井内部には酸素マスク41が設けられている。また、対象空間1の任意の近傍位置には、実施の形態3の低酸素環境監視制御盤30に代えて、低酸素環境監視制御盤42が設けられている。
【0123】
この赤外線カメラ40は、対象空間1における赤外線画像を撮像する。この赤外線カメラ40にて撮像された撮像データを、後述する画像処理部42bにて画像処理することで、対象空間1における入室者の位置を特定できる。すなわち、赤外線カメラ40及び画像処理部42bは、入室者の位置情報を取得するもので、特許請求の範囲における参照情報取得手段及び位置情報取得手段に対応する。この赤外線カメラ40の具体的構造は任意であるが、例えば、撮像素子としてショットキーバリアダイオードを備えた赤外線カメラ40を用いることができる。
【0124】
また、対象空間1は、複数の酸素供給区画に区分されており、各酸素供給区画にはそれぞれ開閉口43と酸素マスク41とが設けられている。そして、入室者に異常が生じると、当該入室者の位置に対応する開閉口43が開かれることで、当該入室者の位置に対応する酸素マスク41が開閉口43を介して対象空間1の内部に落下し、入室者が酸素マスク41を装着することが可能になる。また、各酸素マスク41は、酸素供給管を介して、酸素濃度調節ユニット12の酸素富化ガスの供給系統にそれぞれ接続されている。そして、この供給系統に設けた図示しない複数のバルブのうち、当該入室者の位置に対応するバルブを開くことで、当該入室者の位置に対応する酸素マスク41に対して酸素富化ガスが供給される。なお、図17では、酸素マスク41と酸素濃度調節ユニット12との接続管路や、開閉口43と低酸素環境監視制御盤42との接続線路を省略する。
【0125】
低酸素環境監視制御盤42は、IDカード読取装置6、7にて取得された入室者ID、腕時計20から送信された脈拍数、当該低酸素環境監視制御盤42の外部記憶部に記憶された入室者の属性情報、及び、対象空間1における入室者の位置情報に基づいて、入室者の安全確保に関する所定の制御を行うもので、特許請求の範囲における安全確保制御手段に対応する。図18は、低酸素環境監視制御盤42の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この低酸素環境監視制御盤42の外部記憶部42aには、さらに第3の制御条件情報テーブル42aが記憶されている。
【0126】
図19には第3の制御条件情報テーブル42aの構成例を示す。この第3の制御条件情報テーブル42aは、例えば、酸素供給区画ナンバー、開閉口ナンバー、及び、バルブナンバー、を相互に関連付けて構成されている。このうち、酸素供給区画ナンバーは、酸素供給区画を一意に識別するために予め付与された番号である。開閉口ナンバーは、天井に設けた開閉口43を一意に識別するために予め付与された番号である。バルブナンバーは、酸素濃度調節ユニット12の内部に設けたバルブを一意に識別するために予め付与された番号である。
【0127】
また、図18に戻り、低酸素環境監視制御盤42の制御部42bは、実施の形態3の滞在監視処理部30bと酸素濃度制御処理部13eとに代えて、滞在監視処理部42bと酸素濃度制御処理部42bとを備えて構成されている。さらに制御部42bは、画像処理部42bを備えて構成されている。この画像処理部42bは、赤外線カメラ40からの撮像データに基づいて、対象空間1における入室者の位置を特定する。この特定の具体的なロジックは任意であり、公知の人感ロジックを適用することができる。例えば、対象空間1における赤外線分布を解析し、人体の体温範囲に合致する範囲の赤外線分布を有する領域であって、人体の形状範囲に合致する範囲の赤外線分布が見られる位置を、入室者の位置であると特定することができる。特に、画像処理部42bは、対象空間1における撮像領域に、上述した酸素供給区画を重畳させることで、入室者の現在位置を酸素供給区画によって特定する。より具体的には、酸素供給区画には当該酸素供給区画を一意に識別するための酸素供給区画ナンバーが付与されており、画像処理部42bは、入室者の位置に対応する酸素供給区画ナンバーを特定する。
【0128】
(安全確保処理)
次に、上記のように構成された安全確保システムにおける安全確保処理について説明する。この処理は、入退室管理処理と滞在監視処理とに大別されるが、入退室管理処理は実施の形態1と同様に行うことができるので、以下では滞在監視処理のみを説明する。
【0129】
(安全確保処理−滞在監視処理)
図20は、滞在監視処理のフローチャートである。滞在監視処理部42bは、実施の形態3と同様に、入室者の経験レベルに基づいて滞在可能時間や脈拍数正常範囲を取得し、これらを滞在時間や脈拍数と比較することで、通知処理(ステップSD−1〜SD−3)、警報処理(ステップSD−4〜SD−6)、及び、報知処理を行なう(ステップSD−7〜SD−9)。その後、滞在監視処理部42bは、入室者が、報知後に所定時間を経過しても退室が確認できない場合には(ステップSD−10、ステップSD−11)、酸素濃度制御処理部42bに調節指示信号を出力することで、酸素濃度制御処理を起動する。
【0130】
ここで、酸素濃度制御処理部42bは、入室者の位置に対応した酸素マスク41を対象空間1に落下させると共に(ステップSD−12)、この酸素マスク41に酸素富化ガスを供給することで、対象空間1の酸素濃度を局所的に上昇させる(ステップSD−13)。具体的には、酸素濃度制御処理部42bは、画像処理部42bにて特定されるものであって入室者の位置に対応する酸素供給区画ナンバーを取得する。そして、酸素濃度制御処理部42bは、この酸素供給区画ナンバーに基づいて第3の制御条件情報テーブル42aを参照することにより、この酸素供給区画ナンバーに対応する開閉口ナンバー及びバルブナンバーを第3の制御条件情報テーブル42aから取得する。次いで、酸素濃度制御処理部42bは、この開閉口ナンバーにて特定される開閉口43を制御して開口することにより、入室者の位置に対応する酸素マスク41を対象空間1に落下させる。また同時又はその前後に、酸素濃度制御処理部42bは、このバルブナンバーにて特定されるバルブを制御することにより、対象空間1に落下させた酸素マスク41に酸素富化ガスを供給する。これにて、入室者に対応する局所的な位置に、酸素を供給することができる。
【0131】
ここでは、対象空間1の酸素濃度を局所的に制御する方法として、入室者の位置に対応する酸素マスク41を落下させて当該酸素マスク41に酸素富化ガスを供給しているが、全ての酸素マスク41を落下させると共に当該入室者の位置に対応する酸素マスク41のみに酸素富化ガスを供給するようにしてもよい。
【0132】
あるいは、酸素マスク41以外の手段を用いることも可能であり、例えば、対象空間1に複数の通気口を設けると共に、入室者の位置に最も近い通気口のみから酸素富化ガスを吹き出ようにしてもよい。特に、このように酸素富化ガスを局所的に吹き出す場合には、対象空間1の床面近傍位置に吹き出し口を設けたり、低温の酸素富化ガスを床面近傍位置に向けて放出することで、吹き出された酸素富化ガスが自己の比重によって当該床面付近に留まり易くなるので、酸素富化ガスが対象空間1の全体に拡散して防火性を低下させてしまうことを防止できる。また、対象空間1の床面付近に水平方向に略沿った衝立を設け、衝立と床面の相互間に酸素富化ガスを供給することで、この酸素富化ガスが上方に拡散することを防止してもよい。また、対象空間1において入室者が動くことが多く、当該入室者の位置を特定し難い場合には、入室者の位置に関わらず、所定の固定位置に酸素を供給してもよく、この場合には入室者が当該固定位置に行って酸素の供給を受けることができる。また、対象空間1に同時に入室する入室者の数に応じて、供給する酸素富化ガスの放出量を供給ファンのインバーターコントロールにより調節することで、省エネ運転を行うことができる。
【0133】
また、局所的な酸素濃度制御を行う場合においては、対象空間1に複数の入室者が存在する場合であっても、警報処理や報知処理の対象になった入室者に対応する位置にのみ酸素を局所的に供給することが好ましい。このため、例えば、入室者が対象空間1に入室した後、この入室者の位置を画像処理部42bの処理によって常時モニタし、複数の入室者を相互に区別可能とすることが好ましい。
【0134】
あるいは、腕時計20から発信される脈拍数を用いることで、この発信源を公知の方法で特定することで、入室者の位置を特定可能とすると共に、複数の入室者を相互に区別可能としてもよく、この場合には赤外線カメラ40を省略することができる。また、IDカード2をアクティブ型のRFIDカードとすると共に、対象空間1の内部に複数のレシーバを配置して、IDカード2から一定間隔で発信した入室者IDを複数のレシーバにて受信することで、入室者の位置を特定してもよい。
【0135】
その他、入室者の位置情報を酸素供給位置の決定以外にも用いることができ、例えば、対象空間1が広い場合、当該対象空間1の異なる複数の位置に室内スピーカ9を設け、警報を行う場合には、入室者の位置情報に基づいて当該入室者の最も近傍に位置する室内スピーカ9を介して、警報音声を出力するようにしてもよい。あるいは、報知を行う場合に、入室者の位置情報を管理者に音声出力することで、管理者に入室者の位置を知らせて、入室者の救出の迅速化を図ることができる。
【0136】
あるいは、入室者の位置情報自体ではなく、この位置情報に基づいて取得できる様々な情報に基づいて、各処理を行なってもよい。例えば、入室者の位置情報を連続的又は所定間隔で監視し、入室者の位置情報が所定時間以上経過しても変動していない場合には、入室者に何らかの異常が生じた可能性が高いと判定して、報知や酸素濃度制御を行うようにしてもよい。
【0137】
(実施の形態4の効果)
このように実施の形態4によれば、実施の形態3と同様の効果に加えて、入室者の個々の位置に基づいて通知等の各種処理を行なうことができるので、入室者の位置に合致した形態で当該入室者の安全を確保することができ、酸素濃度可変環境下における入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0138】
〔実施の形態5〕
次に、実施の形態5について説明する。この実施の形態5は、識別情報、生体情報、属性情報、及び、入室者の位置情報に加えて、火災検知情報を参照することで、入室者の安全確保に必要な制御を行なう形態である。ただし、特に説明なき構成においては実施の形態4と同様であるものとし、実施の形態4と同様の構成要素には、必要に応じて、実施の形態4で使用したものと同一名称や同一の符号を付する。
【0139】
(安全管理システムの構成)
図21は、実施の形態5に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。実施の形態5に係る安全管理システムにおいて、対象空間1の天井には火災感知器50が設けられており、対象空間1の任意の近傍位置には、実施の形態4の低酸素環境監視制御盤42に代えて、低酸素環境監視制御盤51が設けられている。
【0140】
火災感知器50は、対象空間1における火災の有無を検知するものであり、特許請求の範囲における参照情報取得手段及び火災検知手段に対応する。この火災感知器50による具体的な火災感知原理やその具体的構造は任意であり、例えば、煙粒子による光の散乱量やこの散乱量の変化率等に基づいて火災検出を行う煙感知器や、サーミスタ等の温度素子にて検出された温度やこの温度の変化率等に基づいて火災検出を行う熱感知器を用いることができる。この火災感知器50は、対象空間1における火災を検知した場合、当該火災を検知した旨を示す火災検知信号を低酸素環境監視制御盤51に出力する。
【0141】
低酸素環境監視制御盤51は、IDカード読取装置6、7にて取得された入室者ID、腕時計20から送信された脈拍数、当該低酸素環境監視制御盤51の外部記憶部に記憶された入室者の属性情報、対象空間1における入室者の位置情報、及び、火災感知器50からの火災検知信号(火災検知情報)に基づいて、入室者の安全確保に関する所定の制御を行うもので、特許請求の範囲における安全確保制御手段に対応する。図22は、低酸素環境監視制御盤51の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この低酸素環境監視制御盤51の制御部は、実施の形態4の滞在監視処理部42bに代えて、滞在監視処理部51aを備えて構成されている。
【0142】
(安全確保処理)
次に、上記のように構成された安全確保システムにおける安全確保処理について説明する。この処理は、入退室管理処理と滞在監視処理とに大別されるが、入退室管理処理は実施の形態1と同様に行うことができるので、以下では滞在監視処理のみを説明する。
【0143】
(安全確保処理−滞在監視処理)
図23は、滞在監視処理のフローチャートである。滞在監視処理部51aは、実施の形態4と同様に、対象空間1に入室者が存在するか否かを所定間隔で判定する(ステップSE−1)。そして、入室者が存在しないと判定した場合(ステップSE−1、No)、滞在監視処理部51aは、対象空間1において火災が発生しているか否かを判定する(ステップSE−2)。
【0144】
そして、火災が発生している場合(火災感知器50から火災検知信号の出力を受けた場合。以下同じ)(ステップSE−2、Yes)、滞在監視処理部51aは、当該火災発生の旨を室外スピーカ11を介して管理者に報知する(ステップSE−3)。例えば、「対象空間で火災が発生しました。入室者がいないため、直ちに酸素濃度を低下させます。」のような所定の音声メッセージを出力する。また、この際、滞在監視処理部51aによって電子錠5を制御させることでドア4を施錠し、対象空間1への入室をより確実に防止してもよい。
【0145】
そして、滞在監視処理部51aは、酸素濃度調節ユニット12を制御して対象空間1に窒素富化ガスを放出することで、対象空間1の酸素濃度を不燃焼酸素濃度に低下させる(ステップSE−4。このことにより、対象空間1で発生している火災を消火でき、あるいは、その延焼を防止できる)。
【0146】
一方、ステップSE−1において、対象空間1に入室者が存在すると判定した場合(ステップSE−1、Yes)、実施の形態4と同様に、この入室者が、当該入室者毎に設定された滞在可能時間や脈拍数正常範囲を超えて、対象空間1に入室していないか否かを判定する(ステップSE−5)。ここで、滞在可能時間や脈拍数正常範囲を超えていないと判定した場合(ステップSE−5、No)、滞在監視処理部51aは、対象空間1において火災が発生しているか否かを判定する(ステップSE−6)。そして、火災が発生している場合(ステップSE−6、Yes)、滞在監視処理部51aは、当該火災発生の旨を、ステップSE−3と同様に管理者に報知すると共に、室内スピーカ9を介して入室者に警報する(ステップSE−7)。入室者への警報は、例えば、「火災が発生しました。直ちに退室して下さい。まもなく酸素濃度を低下させます。」のような所定の音声メッセージを出力する。
【0147】
次いで、滞在監視処理部51aは、警報を行った入室者が、当該警報後に所定時間を経過した後も対象空間1に留まっていないか否かを監視する(ステップSE−8)。そして、退室が確認された場合(ステップSE−8、No)、滞在監視処理部51aは、酸素濃度調節ユニット12を制御して対象空間1に窒素富化ガスを放出することで、対象空間1の酸素濃度を不燃焼酸素濃度に低下させる。このことにより、対象空間1で発生している火災を消火でき、あるいは、その延焼を防止できる(ステップSE−4)。
【0148】
一方、ステップSE−5において、滞在可能時間や脈拍数正常範囲を超えている判定した場合(ステップSE−5、Yes)、滞在監視処理部51aは、対象空間1において火災が発生しているか否かを判定する(ステップSE−9)。そして、火災が発生している場合(ステップSE−9、Yes)、滞在監視処理部51aは、ステップSE−7と同様に、当該火災発生の旨を、管理者に報知すると共に入室者に警報する。
【0149】
この場合、滞在可能時間や脈拍数正常範囲を越えていることから、入室者に何らかの異常が発生している可能性があり、入室者は自己の力では退室できない可能性がある。このため、滞在監視処理部51aは、実施の形態4と同様に、入室者の位置に対応した酸素マスク41を対象空間1に落下させると共に(ステップSE−11)、この酸素マスク41に酸素富化ガスを供給することで、対象空間1の酸素濃度を局所的に上昇させる(ステップSE−12)。その後、滞在監視処理部51aは、上記したステップSE−8に移行して、入室者の退室が確認された場合に(ステップSE−8、No)、酸素濃度調節ユニット12を制御して対象空間1に窒素富化ガスを放出することで、対象空間1の酸素濃度を不燃焼酸素濃度に低下させる(ステップSE−4)。
【0150】
一方、ステップSE−9において、火災が発生していないと判定した場合(ステップSE−9、No)、実施の形態1に係る図6のステップSA−3〜SA−15と同様の処理を行ない(ステップSE−13)、必要に応じて、通知処理、警報処理、報知処理、及び、酸素濃度制御処理を行なう。これにて滞在監視処理が終了する。
【0151】
(実施の形態5の効果)
このように実施の形態5によれば、実施の形態4と同様の効果に加えて、火災検知結果に基づいて通知等の各種処理を行なうことができるので、火災発生状況に合致した形態で当該入室者の安全を確保することができ、酸素濃度可変環境下における入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0152】
また、火災が発生している場合において、対象空間1に入室者が残っていないと判定した場合にのみ、酸素濃度を不燃焼酸素濃度とするので、対象空間1に入室者が居るにも関わらず酸素濃度を低下させてしまうような事態を回避でき、入室者の安全性を一層向上させることができる。
【0153】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び方法は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0154】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、上記に記載されていない課題を解決したり、上記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。少なくとも、酸素濃度可変環境下における入室者の安全性を従来よりも若干でも向上できている場合や、従来と同程度の安全性を従来とは異なる手段で達成できている場合には、本願の課題は達成されている。
【0155】
(各実施の形態の相互の組み合わせについて)
上記説明した各実施の形態は、相互に組み合わせることができる。例えば、実施の形態1で示した入室者の識別情報と実施の形態5の火災検知結果とのみに基づいて、通知処理等を行うことができる。
【0156】
(制御条件情報について)
制御条件情報は、入室者や対象空間の状態に応じて適宜変更してもよい。例えば、滞在可能時間や脈拍数正常範囲は、入室者が対象空間に最初に入室する場合には長くし、その後の所定時間以内に入室者が対象空間に再度入室する場合には短くすることで、入室者が対象空間に繰り返し出入りする場合における安全性を高めることができる。具体的には、例えば、低酸素環境監視制御盤の入退室履歴情報テーブルに記録されている入室時刻や退室時刻に基づいて入室回数を算定し、この入室回数に応じて予め低酸素環境監視制御盤に記憶されている滞在可能時間や脈拍数正常範囲を、その時点の制御条件情報として設定する。
【0157】
(通知について)
入室者に退室を促したい場合のみでなく、入室者が対象空間に滞在可能なタイミングであっても、当該滞在可能である旨や、その時点における入室者の生体状態が正常である旨等を、入室者に通知してもよい。この場合には、入室者に安心感を与えることができる。
【0158】
(システム構成について)
上記各実施の形態においては、1つの対象空間を1台の低酸素環境監視制御盤で監視制御する例を示したが、1つの事業所における複数の対象空間を1台の低酸素環境監視制御盤で監視制御してもよい。さらには、集中監視センターを設け、統合化された低酸素環境監視制御盤を配設して、複数の事業所における複数の対象空間を遠隔で集中監視制御するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0159】
以上のように、本発明は、各種の建屋に設置された酸素濃度可変空間に適用され、この酸素濃度可変空間に入室している入室者の安全性を高めるために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の実施の形態1に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。
【図2】低酸素環境監視制御盤の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図3】第1の制御条件情報テーブルの構成例を示す図である。
【図4】第2の制御条件情報テーブルの構成例を示す図である。
【図5】入退室履歴情報テーブルの構成例を示す図である。
【図6】滞在監視処理のフローチャートである。
【図7】滞在監視処理のタイミングチャートである。
【図8】実施の形態2に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。
【図9】低酸素環境監視制御盤の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図10】第2の制御条件情報テーブルの構成例を示す図である。
【図11】滞在監視処理のフローチャートである。
【図12】実施の形態3に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。
【図13】低酸素環境監視制御盤の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図14】第1の制御条件情報テーブルの構成例を示す図である。
【図15】第2の制御条件情報テーブルの構成例を示す図である。
【図16】滞在管理処理のフローチャートである。
【図17】実施の形態4に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。
【図18】低酸素環境監視制御盤の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図19】第3の制御条件情報テーブルの構成例を示す図である。
【図20】滞在監視処理のフローチャートである。
【図21】実施の形態5に係る安全管理システムの全体構成を示す図である。
【図22】低酸素環境監視制御盤の主要な電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図23】滞在監視処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0161】
1 対象空間
2 IDカード
3 ポケットベル
4 ドア
5 電子錠
6、7 IDカード読取装置
8 送信アンテナ
9 室内スピーカ
10 酸素濃度計
11 室外スピーカ
12 酸素濃度調節ユニット
13、21、30、42、51 低酸素環境監視制御盤
13a、21a、30a、42a 外部記憶部
13a、30a 第1の制御条件情報テーブル
13a、21a、30a 第2の制御条件情報テーブル
42a 第3の制御条件情報テーブル
13a 入退室履歴情報テーブル
13b 主記憶部
13c 媒体読取り部
13d 入出力インターフェース
13e、21b、30b、42b 制御部
13e 入退室管理処理部
13e、21b、30b、42b、51a 滞在監視処理部
13e 通知処理部
13e 警報処理部
13e 報知処理部
13e、42b 酸素濃度制御処理部
42b 画像処理部
13f バス
20 腕時計
40 赤外線カメラ
50 火災感知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃度を可変とした対象空間に入室する入室者の安全を管理するための安全管理システムであって、
前記対象空間の酸素濃度を、少なくとも通常酸素濃度と低酸素濃度との間で可変させる酸素濃度調節手段と、
前記入室者を識別するための識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて、前記入室者の安全確保に関する所定の制御を行う安全確保制御手段と、
を備えたことを特徴とする酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項2】
参照情報を取得する参照情報取得手段を備え、
前記安全確保制御手段は、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報と、前記参照情報取得手段にて取得された前記参照情報とに基づいて、前記所定の制御を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項3】
前記参照情報は、前記入室者の生体状態を示す生体情報であり、
前記参照情報取得手段は、前記入室者の前記生体情報を取得する生体情報取得手段であること、
を特徴とする請求項2に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項4】
前記参照情報は、前記入室者の属性を示す属性情報であり、
前記参照情報取得手段は、前記入室者の前記属性情報を取得する属性情報取得手段であること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項5】
前記参照情報は、前記対象空間における前記入室者の位置を示す位置情報であり、
前記参照情報取得手段は、前記入室者の前記位置情報を取得する位置情報取得手段であること、
を特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項6】
前記参照情報は、前記対象空間における火災の有無を示す火災検知情報であり、
前記参照情報取得手段は、前記対象空間における火災の有無を検知する火災検知手段であること、
を特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項7】
前記安全確保制御手段による制御条件を示す制御条件情報と、少なくとも前記識別情報とを、相互に関連付けて格納する制御条件情報格納手段を備え、
前記安全確保制御手段は、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて前記制御条件情報格納手段を参照することにより、当該識別情報に対応する前記制御条件情報を取得し、当該制御条件情報にて特定される前記制御条件に基づいて、前記所定の制御を行うこと、
を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項8】
前記制御条件情報は、前記入室者が前記対象空間に滞在可能な時間を示す滞在可能時間情報を含み、
前記安全確保制御手段は、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて前記制御条件情報格納手段を参照することにより、当該識別情報に対応する前記滞在可能時間情報を取得し、当該滞在可能時間情報にて特定される時間と、前記入室者が前記対象空間に実際に滞在している時間とを比較し、この比較結果に応じて前記所定の制御を行うこと、
を特徴とする請求項7に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項9】
前記制御条件情報は、前記入室者が前記対象空間に滞在可能な生体状態を特定する生体条件情報を含み、
前記安全確保制御手段は、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて前記制御条件情報格納手段を参照することにより、当該識別情報に対応する前記生体条件情報を取得し、当該生体条件情報にて特定される生体状態と、前記対象空間に実際に滞在している前記入室者の生体状態とを比較し、この比較結果に応じて前記所定の制御を行うこと、
を特徴とする請求項7又は8に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項10】
前記入室者に対して、当該入室者による前記対象空間への滞在に関する通知を行うための通知手段を備え、
前記安全確保制御手段は、前記通知手段を介して、前記入室者に対する通知を行うこと、
を特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項11】
前記入室者に対して、当該入室者による前記対象空間への滞在に関する警報を行うための警報手段を備え、
前記安全確保制御手段は、前記警報手段を介して、前記入室者に対する警報を行うこと、
を特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項12】
前記入室者以外の第三者に対して、前記入室者による前記対象空間への滞在に関する報知を行うための報知手段を備え、
前記安全確保制御手段は、前記報知手段を介して、前記第三者に対する報知を行うこと、
を特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項13】
前記安全確保制御手段は、前記酸素濃度調節手段を介して、前記対象空間の酸素濃度を上昇させること、
を特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項14】
前記酸素濃度調節手段は、前記対象空間における酸素濃度を局所的に可変可能であり、
前記安全確保制御手段は、前記参照情報取得手段にて取得された前記位置情報にて特定される前記入室者の位置又は当該位置周辺の酸素濃度を調節するよう、前記酸素濃度調節手段を制御すること、
を特徴とする請求項5及び13に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項15】
前記安全確保制御手段は、前記火災検知手段にて取得された火災検知情報によって、前記対象空間に火災が発生している旨が示されている場合、前記識別情報取得手段にて取得された前記識別情報に基づいて、前記対象空間における入室者の残存を判定し、前記対象空間に入室者が残っていないと判定した場合にのみ、前記対象空間の酸素濃度が所定の不燃焼酸素濃度になるように、前記酸素濃度調節手段を制御すること、
を特徴とする請求項6に記載の酸素濃度可変空間における安全管理システム。
【請求項16】
酸素濃度を少なくとも通常酸素濃度と低酸素濃度との間で可変とした対象空間に入室する入室者の安全を管理するための安全管理方法であって、
前記入室者を識別するための識別情報を取得する識別情報取得ステップと、
前記識別情報取得ステップにおいて取得された前記識別情報に基づいて、前記入室者の安全確保に関する所定の制御を行う安全確保制御ステップと、
を含んだことを特徴とする酸素濃度可変空間における安全管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−280265(P2007−280265A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108710(P2006−108710)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】