説明

酸素濃縮器におけるカニューラ取付構造

【課題】酸素濃縮器へのカニューラの取り付けおよび取り外し操作が複雑化するのを抑えつつ、酸素濃縮器からのカニューラの不用意な抜けを防止すること。
【解決手段】カニューラカバー(抜け防止部材)140は、案内管131に装脱自在に係合する可撓性の第1の係合部141と、酸素出口132に挿入されるカニューラ300の側面に係合する第2の係合部142と、を有し、第1の係合部141が案内管131に係合された状態で、酸素出口132に挿入されたカニューラ300の抜け方向の動きを、第2の係合部142によって規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃縮器におけるカニューラ取付構造に関する。特に、鼻腔カニューラの酸素濃縮器からの抜けを防止する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素濃縮器として、呼吸器疾患の患者が在宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)において使用されるものがある。この種の酸素濃縮器は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
酸素濃縮器は、フィルタおよび吸気タンクを通して取り込んだ室内の空気をコンプレッサにより圧縮する。酸素濃縮器は、この圧縮空気をシーブベッド(吸着塔)を通過させることにより、圧縮空気から高濃度の酸素を分離し、さらに、高濃度酸素を加湿する。シーブベッドは、加圧空気に対して窒素を吸着し減圧空気に対して窒素を脱着する性質を持つ吸着材(例えば、ゼオライト)が充填されている。加湿後の高濃度酸素は、使用時に患者が装着する鼻腔カニューラ(以下、単にカニューラと呼ぶ)を介して患者体内に供給される。
【0004】
カニューラは、使用者の分泌物等が付きやすいので、酸素濃縮器への取り付けおよび取り外しが簡単にできるようになっており、頻繁に交換できるようになっている。具体的には、酸素濃縮器へのカニューラの取り付けは、酸素濃縮器に突設された酸素出口に、カニューラのコネクタを差し込むことで行われる。カニューラのコネクタは、可撓性を有する構成とされており、かつ、カニューラのチューブ部分よりも硬質及び又は肉厚とされている。これにより、コネクタは、酸素濃縮器の酸素出口に差し込まれたときに、酸素出口にしっかりと嵌着するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−263441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、カニューラの交換は頻繁に行われるために、カニューラの酸素濃縮器への取り付けは、カニューラを酸素濃縮器への酸素出口に差し込むといった、簡単な操作で行うことができるようになっている。
【0007】
一方で、近年、携帯型の酸素濃縮器が普及し始めており、携帯型の酸素濃縮器では、酸素濃縮器の使用中にカニューラが不用意な力で酸素濃縮器から外れてしまうといった事態が発生すると考えられる。これは、据置型の酸素濃縮器と比較して、携帯型の酸素濃縮器では、移動中にカニューラが何等かに引っ掛かってカニューラに不用意な力が加わることが多くなると考えられるからである。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、酸素濃縮器へのカニューラの取り付けおよび取り外し操作が複雑化するのを抑えつつ、酸素濃縮器からのカニューラの不用意な抜けを防止できるカニューラ取付構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカニューラ取付構造の一つの態様は、酸素濃縮器における、カニューラを取り付けるためのカニューラ取付構造であって、高濃度酸素生成部と連通しており、生成された高濃度酸素を案内する案内管と、前記案内管からT字状に分岐しており、先端に行くに従って細くなるラッパ状の酸素出口と、可撓性であり、前記案内管に装脱自在に係合する第1の係合部と、前記酸素出口に挿入されるカニューラの側面に係合する第2の係合部と、を有し、前記第1の係合部が前記案内管に係合された状態で、前記酸素出口に挿入された前記カニューラの抜け方向の動きを、前記第2の係合部によって規制する、抜け防止部材と、を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸素濃縮器へのカニューラの取り付けおよび取り外し操作が複雑化するのを抑えつつ、酸素濃縮器からのカニューラの不用意な抜けを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】酸素濃縮器の概略構成を示す図
【図2】トップケースの構成を示す図
【図3】トップケースの構成を示す図
【図4】酸素出口部の構成を示す断面図
【図5】酸素出口部に、カニューラおよびカニューラカバー(抜け防止部材)が取り付けられた状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[1]酸素濃縮器の概略構成
図1は、PSA(Pressure Swing Adsorption)式の酸素濃縮器の概略構成を示す図である。図1に示すように、PSA式の酸素濃縮器1は、空気取入部10、空気圧縮部20、PSA部30、酸素貯留部40、及び酸素供給部50を備えている。
【0014】
酸素濃縮器1において、空気取入部10から導入された原料空気は、空気圧縮部20で圧縮されて圧縮空気となり、この圧縮空気がPSA部30に送出される。
【0015】
PSA部30は、酸素より窒素を早く吸着する性質を有するゼオライト等の吸着剤が充填された2本のシーブベッド(吸着塔)33A、33Bを有している。シーブベッド33A、33Bに圧縮空気が送り込まれて加圧状態になると、窒素及び水分が吸着されて酸素だけが通過し、高濃度酸素が生成される。一方、窒素を吸着したシーブベッド33A、33Bが減圧状態(例えば大気圧)に戻されると、吸着していた窒素が脱離して放出され、シーブベッド33A、33Bの吸着能力が再生される。つまり、PSA部30において、2本のシーブベッド33A、33Bで交互に加圧減圧を繰り返すことにより、連続して高濃度酸素を生成することができる。
【0016】
PSA部30で生成された高濃度酸素は、一旦酸素貯留部40の製品タンク41に貯留された後、圧力調整部(圧力レギュレータ)42により一定圧力に調整される。そして、高濃度酸素は酸素供給部50から一定流量で放出される。酸素供給部50は、同調弁等を備えており、酸素貯留部40から送出された高濃度酸素を、使用者の呼吸に同調して酸素出口から放出する部分である。酸素出口にはカニューラが接続され、高濃度酸素はカニューラを介して使用者(患者)に供給される。
【0017】
[2]カニューラ取付構造
次に、本実施の形態における、カニューラの取付構造について、図2−図5を用いて、説明する。図2および図3は、酸素濃縮器のトップケースの構成を示す斜視図である。図4は、酸素出口部の構成を示す断面図である。図5は、酸素出口部に、カニューラおよびカニューラカバー(抜け防止部材)が取り付けられた状態を示す断面図である。
【0018】
図2に示すように、酸素濃縮器1は、本体ケース200と、トップケース100とを有する。トップケース100は、本体ケース200の上部に取り付けられる。本体ケース200には、図1で説明した、空気取入部10、空気圧縮部20、PSA部30、酸素貯留部40および酸素供給部50が収容される。
【0019】
トップケース100には、酸素濃縮器1を持ち運ぶための取っ手110、表示操作パネル120および酸素出口部130が設けられている。表示操作パネル120には、バッテリ残量やその他の酸素濃縮器1の動作状態を表示するための表示部と、酸素濃縮器のオンオフや酸素流量等を設定するための操作部と、が設けられている。
【0020】
酸素出口部130は、酸素供給部50(図1)に連通し高濃度酸素を酸素出口部130まで案内する案内管131と、案内管131からT字状に分岐しており、先端に行くに従って細くなるラッパ状の酸素出口132と、を有する。酸素出口132には、カニューラ300が挿抜自在に取り付けられる。また、案内管131は、酸素濃縮器1のケース100に回転自在に軸支されており、これにより、酸素出口132も案内管131と一体に回転自在とされている。図2は、酸素出口132が傾いた回転位置にある状態を示し、図3は、酸素出口132が直立した回転位置にある状態を示す。
【0021】
酸素出口部130には、カニューラ300の抜けを防止するための部材であるカニューラカバー140が取り付けられる。カニューラカバー140の詳細構成および取付構造については、後で詳しく説明する。
【0022】
図4は、酸素出口部130の断面図である。案内管131の一端側は酸素供給部50(図1)に連通しており、他端側は閉塞されている。酸素出口132は、案内管131からT字状に分岐している。高濃度酸素は、図中の矢印で示すように、案内管131から酸素出口132へと流れる。
【0023】
酸素出口132は、先端に行くに従って細くなるラッパ状の形状とされている。また、の酸素出口132の側面には、返し133が形成されている。これにより、酸素出口132は、カニューラ300を挿入し易く、かつ、カニューラ300(図2、図3)が抜けにくい形状とされている。
【0024】
案内管131の外面には、凹部134、135が形成されており、この凹部134、135にトップケース100の凸部が嵌合することにより、案内管131はトップケース100に回転自在に取り付けられている。
【0025】
ここで、酸素濃縮器1の使用者は、先ず、酸素出口132にカニューラ300を挿入し、次に、案内管131にカニューラカバー140(図2、図3)を取り付けるようになっている。
【0026】
カニューラカバー140は、例えば図2に示すように、可撓性であり、案内管131に装脱自在に係合する第1の係合部141と、カニューラ300の側面に係合する第2の係合部142と、を有する。第2の係合部142は、カニューラの側面に沿った切欠きである。カニューラカバー140は、第1の係合部141が案内管131に係合された状態で、酸素出口132に挿入されたカニューラ300の抜け方向の動きを、第2の係合部142によって規制する。
【0027】
図5は、酸素出口部130に、カニューラ300およびカニューラカバー(抜け防止部材)140が取り付けられた状態を示す断面図である。
【0028】
カニューラ300は、酸素出口132に挿入する部分であるコネクタ301と、鼻プロングへと繋がるチューブ302と、を有する。コネクタ301は、挿入方向である根本方向ほど拡径された、いわゆる裾拡がりの形状を有する。また、コネクタ301は、チューブ302よりも硬質及び又は肉厚とされている。これにより、コネクタ301は、酸素出口132に差し込まれたときに、酸素出口132にしっかりと嵌着して、高濃度酸素を漏らさないようになっている。
【0029】
ここで、使用者がカニューラカバー140の第1の係合部141を案内管131に係合すると、カニューラカバー140に形成された半円状の切欠きである第2の係合部142は、コネクタ301の外周面に当接する。この状態で、カニューラ300に矢印aで示す引き抜き方向に加えられても、第2の係合部142が裾拡がりのコネクタ301に係合するので、カニューラ300の酸素出口132からの抜けが防止される。
【0030】
このように、使用者は、酸素出口132にカニューラ300を挿入した後に、カニューラカバー140を案内管131に押し込むようにして第1の係合部141を案内管131に係合させるだけで、酸素出口132からのカニューラ300の抜けを防止させることができる。また、使用者は、カニューラカバー140を指で引っ張るなどして案内管131から取り外した後に、カニューラ300を矢印aの方向に引っ張るだけで、容易に、カニューラ300を取り外すことができる。
【0031】
このように、本実施の形態によれば、案内管131に装脱自在に係合する可撓性の第1の係合部141と、酸素出口132に挿入されるカニューラ300の側面に係合する第2の係合部142と、を有し、第1の係合部141が案内管131に係合された状態で、酸素出口132に挿入されたカニューラ300の抜け方向の動きを、第2の係合部142によって規制する、カニューラカバー(抜け防止部材)140を設けたことにより、酸素濃縮器1へのカニューラ300の取り付けおよび取り外し操作が複雑化するのを抑えつつ、酸素濃縮器1からのカニューラ300の不用意な抜けを防止できる。
【0032】
また、案内管131は酸素濃縮器1のケース100に回転自在に軸支されており、カニューラカバー140は、第1の係合部141が案内管131に係合し、第2の係合部142がカニューラ300の側面に係合した状態で、案内管131と一体に回転自在である、構成とした。これにより、カニューラ300の動きに合わせて案内管および酸素出口が回転するので、カニューラ300の折れを抑えることができる。加えて、カニューラカバー140も案内管131と一体に回転するので、案内管131が回転したときでもカニューラの抜けを防止できる。
【0033】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0034】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
1 酸素濃縮器
10 空気取入部
20 空気圧縮部
30 PSA部
40 酸素貯留部
50 酸素供給部
100 トップケース
110 取っ手
120 表示操作パネル
130 酸素出口部
131 案内管
132 酸素出口
133 返し
134、135 凹部
140 カニューラカバー(抜け防止部材)
141 第1の係合部
142 第2の係合部
200 本体ケース
300 カニューラ
301 コネクタ
302 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃縮器における、カニューラを取り付けるためのカニューラ取付構造であって、
高濃度酸素生成部と連通しており、生成された高濃度酸素を案内する案内管と、
前記案内管からT字状に分岐しており、先端に行くに従って細くなるラッパ状の酸素出口と、
可撓性であり、前記案内管に装脱自在に係合する第1の係合部と、前記酸素出口に挿入されるカニューラの側面に係合する第2の係合部と、を有し、前記第1の係合部が前記案内管に係合された状態で、前記酸素出口に挿入された前記カニューラの抜け方向の動きを、前記第2の係合部によって規制する、抜け防止部材と、
を具備するカニューラ取付構造。
【請求項2】
前記案内管は、前記酸素濃縮器のケースに回転自在に軸支されており、
前記抜け防止部材は、前記第1の係合部が前記案内管に係合し、前記第2の係合部が前記カニューラの側面に係合した状態で、前記案内管と一体に回転自在である、
請求項1に記載のカニューラ取付構造。
【請求項3】
前記第2の係合部は、前記カニューラの側面に沿った切欠きである、
請求項1又は請求項2に記載のカニューラ取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187197(P2012−187197A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51699(P2011−51699)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)